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  • 特許-セラミックスによって作られた物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】セラミックスによって作られた物品
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/58 20060101AFI20240918BHJP
   G04B 37/22 20060101ALI20240918BHJP
   G04B 19/12 20060101ALI20240918BHJP
   G04B 1/08 20060101ALI20240918BHJP
   G04B 29/02 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C04B35/58 014
G04B37/22 V
G04B19/12 A
G04B1/08
G04B29/02 B
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023511635
(86)(22)【出願日】2021-07-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 EP2021071130
(87)【国際公開番号】W WO2022063462
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】20198345.9
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ベルトヴィル,ベルナール
(72)【発明者】
【氏名】ファレ,ヤン
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108752005(CN,A)
【文献】特開平10-007464(JP,A)
【文献】特開平01-294514(JP,A)
【文献】特開2022-080276(JP,A)
【文献】特開平01-131086(JP,A)
【文献】特開平02-157169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00-35/84
G04B 37/22
G04B 19/12
G04B 1/08
G04B 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
いくつかのセラミックス相からなるセラミックス材料によって作られた物品であって、
前記セラミックス材料は、Ti、Zr、Hf、V、Nb及びTaから選択される一又は複数の元素の窒化物及び/又は炭窒化物を含む多数セラミックス相と、ケイ化ジルコニウム及び/又はケイ化アルミニウムによって形成される単一の少数セラミックス相とから構成され
前記多数セラミックス相の割合は、60~98重量%であり、
前記少数セラミックス相全体の割合は、2~40重量%である
ことを特徴とする物品。
【請求項2】
前記多数セラミックス相の割合は、65~97重量%であり、
前記少数セラミックス相全体の割合は、3~35重量%である
ことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記多数セラミックス相の割合は、70~96重量%であり、
前記少数セラミックス相全体の割合は、4~30重量%である
ことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記多数セラミックス相の割合は、75~95重量%であり、
前記少数セラミックス相全体の割合は、5~25重量%である
ことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記多数セラミックス相が、Ti、Zr、Hf、V、Nb及びTaから選択される一又は複数の元素の窒化物及び炭窒化物を含む場合、前記窒化物及び炭窒化物の割合はそれぞれ、前記セラミックス材料全体に対して20~70重量%である
ことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記窒化物及び炭窒化物の割合はそれぞれ、前記セラミックス材料全体に対して25~60重量%である
ことを特徴とする請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記多数セラミックス相は、窒化チタン及び/又は炭窒化チタンを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項8】
CIELAB比色空間において、L*成分が、60~85、または65~80、である
ことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項9】
色が黄色であり、CIELAB色空間において、a*成分が+1~+7、b*成分が+20~+35である
ことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項10】
色が赤ピンク色であり、CIELAB比色空間において、a*成分が+2~+15、b*成分が+2~+10である
ことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項11】
HV30硬度が500以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項12】
HV30硬度が800~1800である
ことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項13】
靭性KICが、2MPa・m1/2以上、または2.5MPa・m1/2以上、である
ことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記セラミックス材料は、合計100重量%に対して、
TiN又はTiCNを75~85重量%含む多数セラミックス相と、ZrSi2を15~25重量%含む少数セラミックス相、又は
TiN又はTiCNを85~95重量%含む多数セラミックス相と、ZrSi2を5~15重量%含む少数セラミックス相
のいずれかの配分である
ことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項15】
計時器用部品からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の物品。
【請求項16】
ミドル部、底部、ベゼル、押し部品、リュウズ、リストレットリンク、表盤、針及び表盤インデックスからなる群から選択される外側部品、又はプレート、ブリッジ及び振動錘からなる群から選択されるムーブメントの部品である
ことを特徴とする請求項15に記載の物品。
【請求項17】
物品を製造する方法であって、
60~98重量%の粉末であってTi、Zr、Hf、V、Nb及びTaから選択される一又は複数の元素の窒化物及び/又は炭窒化物の粉末全体で2~40重量%の粉末であってケイ化ジルコニウム及び/又はケイ化アルミニウムによって形成された少なくとも1種類の粉末と、から構成される混合物を作るステップa)と、
前記物品の形状を前記混合物に与えることによってブランクを形成するステップb)と、
1200~2100℃、または1400~1900℃、の温度で、30分~20時間、または15分~3時間、前記ブランクを焼結するステップc)とを順次的に含む
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
ステップa)の粉末の混合物の割合は、合計100重量%に対して、
TiN又はTiCNを75~85重量%、ZrSi2を15~25重量%、又は
TiN又はTiCNを85~95重量%、ZrSi2を5~15重量%
のいずれかの配分である
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス相のみからなる複合材料によって作られた、物品、特に携行型時計(例、腕時計、懐中時計)における外側部品又はムーブメントの部品、に関する。本発明は、さらに、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの外側部品は、複合セラミックス材料によって作られ、この複合セラミックス材料には、とりわけ、硬度が非常に高く、このために、ひっかき傷が付きにくいという利点がある。文献には、主にアルミナのような酸化物を含み、これに炭化物が加えられた複合材料が記載されている。この複合材料は、例えば、Al23を70重量%、補強材として用いられるTiCを30重量%含む複合材料からなる。これらの複合材料には、ステンレス鋼やセラメルのような他の材料と比べて、ほとんど又はまったく金属光沢性がないという特徴があり、このことが、このような光沢性が望まれる装飾品においては不利になることがある。
【0003】
また、窒化チタン又は炭窒化チタンをベースとする材料も知られている。これらの材料は、融点、例えば、TiNでは2930℃、が非常に高いために、低い拡散係数に関連して、緻密化することが非常に難しい。したがって、SPS焼結(スパークプラズマ焼結)や加圧焼結法(焼結HIP)のような、フラッシュとしても知られている急速焼結法、又はHIP(熱間等方圧加圧法)のような焼結後に非常に高い圧力や高温下において圧密化を行う手法に頼る必要がある。また、これらの焼結プロセスでは、複雑な形状の部品を得ることができない。この問題を解決する方法として、例えば、金属バインダーとして作用する金属元素を添加してTiN又はTiCNをベースとするセラメルを作ることを伴うものがある。したがって、数%のニッケル又はコバルトを添加することのおかげで、より低い温度、典型的には、1500℃の範囲、における圧密化が可能となる。しかし、これらの元素には、アレルギー誘発性が高いという課題があり、これによって、皮膚と接触することを意図しない物品における用途に限定されてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以下の基準を満たすように最適化された組成及び製造方法を用いて複合材料とも呼ばれるセラミックス材料を提供することによって、上述の課題を解決することを目的とする。すなわち、
- ニッケルやコバルトのようなアレルゲン元素の使用を避ける。
- 金属光沢性が高い(65≦L*≦85)。
- 焼結完了時の物品のブランクの形状を保つために、高圧に頼らずに、大気圧、真空、ガス分圧において、緻密化することができる。
- 好ましくはKICが2.5MPa・m1/2以上であるように、十分な靭性を有しつつ、硬度が、500HV30以上、好ましくは800HV30以上、より好ましくは1000HV30以上、である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このために、本発明は、いくつかのセラミックス相からなる材料によって作られた物品に関し、この材料は、IVB族、すなわち、Ti、Zr及びHf、及びVB族、すなわち、V、Nb及びTaから選択される一又は複数の元素の窒化物及び/又は炭窒化物を含む多数セラミックス相と、少なくとも1種類の少数セラミックス相とを含む。多数セラミックス相の割合は、60~98重量%である。少数セラミックス相において、単一の少数セラミックス相がケイ化ジルコニウム及び/又はケイ化アルミニウムによって形成され、又はいくつかの少数セラミックス相がそれぞれ、IVB族(Ti、Zr、Hf)、VB族(V、Nb、Ta)及びVIB族(Cr、Mo、W)から選択される一又は複数の元素の炭化物と、酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムとによって形成される。前記少なくとも1種類の少数セラミックス相全体の割合は、2~40重量%である。
【0006】
このようにして作った複合材料は、研磨後に、金属バインダーとしてニッケル又はコバルトを用いるステンレス鋼又はセラメルにおいて観察されるものと同様な金属光沢性を有する。これらの複合材料には、Niのようなアレルゲン元素を含まないという他の利点もある。また、これらの複合材料は、非磁性化でありつつ、硬度が高く、外側部品を作るために十分な靭性を有する。また、これらの複合材料を、プレスや射出成形のような伝統的な粉末冶金プロセスによって、又は3D印刷のような三次元的部品の製造に特化した様々なプロセスによって、成形して、「網に近い形状」の部品を得ることができる。多かれ少なかれ複雑な形状の部品を、最終的に、大気圧下、真空下、又はガス分圧下、すなわち、大きな圧力に頼ることなく、1400~1900℃の温度で、圧密化することができる。
【0007】
また、このセラミックス材料によって作られた物品は、組成に応じて黄色から赤ピンク色までの色合いを有し、塊において色が美しいという利点がある。
【0008】
添付の図面を参照しながら例として与えられる好ましい実施形態についての以下の説明を読むことによって、本発明の他の特徴及び利点を理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るセラミックス材料によって作られたミドル部を備える計時器を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、セラミックス相のみからなる複合材料によって作られた物品に関する。この物品は、携行型時計、宝飾品、リストレットなどの構成要素のような装飾性物品であることができ、一般的には、移動体電話の外殻のような携行型要素の外側部分であることができる。携行型時計の分野では、この物品は、ミドル部、底部、ベゼル、リュウズ、ブリッジ、押し部品、リストレットリンク、表盤、針、表盤インデックスなどの外側部品であることができる。図1に、説明のために、本発明に係るセラミックス材料によって作られたミドル部を示している。また、この物品は、プレートや振動錘のような、ムーブメントの部品からなることもできる。
【0011】
このセラミックス材料は、Ti、Zr、Hf、V、Nb及びTaから選択される一又は複数の元素の窒化物及び/又は炭窒化物によって構成する多数相と、一又は複数種類の少数相とを含む。このセラミックス材料は、ケイ化ジルコニウム及び/又はケイ化アルミニウム、又はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWから選択される一又は複数の元素の炭化物と、酸化ジルコニウム(Zr)及び/又は酸化アルミニウム(Al)との組み合わせ、のいずれかであることができる。好ましくは、前記多数相は、窒化チタン及び/又は炭窒化チタンによって構成している。好ましくは、前記少数相はそれぞれ、ケイ化ジルコニウム及び/又はケイ化アルミニウム、又は炭化タングステン及び/又は炭化バナジウムと、酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムとの組み合わせ、のいずれかによって構成している。
【0012】
前記多数相の割合は、60~98重量%であり、すべての少数相の割合は、2~40重量%である。好ましくは、前記多数相の割合は、65~97重量%、好ましくは70~96重量%、より好ましくは75~95重量%である。前記多数相を補う、すべての少数相の割合は、好ましくは3~35重量%、より好ましくは4~30重量%、より好ましくは5~25重量%である。前記多数相がTi、Zr、Hf、V、Nb及びTaから選択される一又は複数の元素の窒化物及び炭窒化物を含む場合、この窒化物及び炭窒化物の割合はそれぞれ、セラミックス材料全体に対して、好ましくは20~70重量%、より好ましくは25~60重量%、である。セラミックス材料が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWから選択される一又は複数の元素の炭化物と、酸化物(Al23及び/又はZrO2)である2種類の少数相を含む場合、それらの割合はそれぞれ、セラミックス材料全体に対して、好ましくは3~35重量%、より好ましくは5~25重量%である。
【0013】
前記セラミックス物品は、粉末の混合物から出発して焼結することによって作られる。この製造方法は、以下のステップを含む。すなわち、
a)場合によって湿った環境下において、異なるセラミックス粉末による混合物を作るステップである。これらの出発粉末は、好ましくは、d50が45μm未満である。場合によって混合をグラインダーにおいて行うことができ、このグラインダーは、粉砕後に、粉末の粒子のd50を数μm(<5μm)の範囲の大きさまで小さくする。Ti、Zr、Hf、V、Nb及びTaから選択される一又は複数の元素の窒化物及び/又は炭窒化物の粉末の割合は、これらの粉末のすべてに対して、60~98重量%、好ましくは65~97重量%、より好ましくは70~96重量%、より好ましくは75~95重量%である。ケイ化ジルコニウム及び/又はケイ化アルミニウムの粉末、又はTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo及びWの炭化物の粉末、及び酸化ジルコニウム及び/又は酸化アルミニウムの粉末の割合は、2~40重量%、好ましくは3~35重量%、より好ましくは4~30重量%、より好ましくは5~25重量%である。例えば、粉末の混合物の割合は、合計100重量%に対して、
- TiN又はTiCNを75~85重量%、ZrSi2を15~25重量%
- TiN又はTiCNを85~95重量%、ZrSi2を5~15重量%
- TiN又はTiCNを75~85重量%、WC又はVCを5~15重量%、ZrO2又はAl23を5~15重量%
- TiNを40~55重量%、TiCNを25~35重量%、WC又はVCを5~15重量%、ZrO2を5~15重量%のいずれかの配分であることができる。
【0014】
b)場合によって、上記の混合物と有機バインダー系(パラフィン、ポリエチレンなど)を含む第2の混合物を作ることができる。
c)例えば射出成形、プレス、3D印刷によって、所望の物品の形状を混合物に与えることによってブランクを形成する。
【0015】
d)ガス分圧下、真空下又は大気圧下において、1200~2100℃、好ましくは1400~1900℃、の温度で、10分~20時間、好ましくは15分~3時間、の時間、ブランクを焼結する。このステップの前に、前記混合物がバインダー系を含む場合に、60~500℃の温度範囲にて脱バインダーする脱バインダーステップを行うことができる。本発明の組成物のおかげで、低圧下における焼結が可能になるが、本発明は、HIP(熱間等方圧加圧法)圧密化を後で行っても行わなくてもよい、SPS(スパークプラズマ焼結)又は焼結HIPによって行うことを排除するものではない。
【0016】
このようにして得られたブランクを冷却し研磨する。また、研磨の前にこのブランクを加工して、所望の物品を得ることもできる。
【0017】
この製造方法によって得られる物品は、出発粉末の重量%に近い重量%で、多数相と少数相を含む。しかし、例えば、汚染又は焼結中の変態の後に、ベース粉末と焼結によって得られる材料の間で、組成と割合におけるわずかな変動があることもあり得る。例えば、炭化物が窒化物と反応して炭窒化物を形成することがあり得る。
【0018】
前記物品は、CIELAB色空間(CIE Number 15, ISO 7724/1, DIN 5033 Teil 7, ASTM E-1164の標準に準拠)において、材料が光を反射する形態を表す輝度成分L*が、60~85、好ましくは65~80、より好ましくは70~75である。好ましくは、前記物品は、色が黄色であり、a*成分(赤色成分)が+1~+7、b*成分(黄色成分)が+20~+35である。好ましくは、前記物品は、色が赤ピンク色であり、a*成分が+2~+15であり、b*成分が+2~+10である。
【0019】
前記セラミックス材料は、構成成分のタイプ及び割合に応じて、HV30硬度が、500以上、好ましくは800~1800である。前記セラミックス材料は、靭性KICが、2MPa・m1/2以上、好ましくは2.5MPa・m1/2以上であり、この値は、8MPa・m1/2までなることができる。この靭性は、以下の式による硬度のインデンテーションの対角線の4端における亀裂の長さの測定に基づいて決められる。
【0020】
【数1】
【0021】
ここで、Pは与えられた負荷[N]、aは半対角[m]、lは測定された亀裂長さ[m]である。
【0022】
以下の例を用いて、本発明に係る方法及びそれによって得られる材料について説明する。
【0023】
7種の粉末の混合物を溶媒の存在下においてミル中で調製した。混合物をバインダーなしで作った。この混合物を、粉末の組成に依存する温度で、真空下において又は60mbar(6000N/m2)のアルゴン又は窒素の流れの下において、プレスし焼結することによって成形した。焼結後、試料を研磨した。下の表1は、組成物、焼結パラメーター、機械的性質(HV30、KIC)及びLab比色値を含む。斜体と太字体の値は、硬度が800ビッカースよりも高く、靭性が2.5MPa・m1/2よりも高く、L*指数が70よりも高い又は黄色の度合いが高いものについてb*指数が20よりも高い、という基準を満たしている。
【0024】
試料の表面に対してHV30の硬度測定を行い、硬度測定に基づいて上記のように粘度を決めた。
【0025】
KONICAMINOLTA CM-5分光光度計を用いて、研磨された試料に対してLab比色分析値を以下の条件で測定した。すなわち、傾きが8、8mm径のMAV測定領域にて、SCI(正反射成分を含む:specular component included)及びSCE(正反射成分を除く:specular component excluded)測定を行った。
【0026】
例1
このセラミックス材料は、多数相として窒化チタン(TiN)、少数相として20重量%までのケイ化ジルコニウム(ZrSi2)を含むセラミックス複合材料からなる。伝統的な焼結とは対称的に、この複合材料は、本発明に従って、スパークプラズマ焼結(SPS)によって緻密化されたものである。測定された硬度は、1328ビッカース(HV30)で、靭性は4.3MPa・m1/2であった。
【0027】
例2
このセラミックス材料は、多数相として窒化チタン(TiN)と、少数相として10重量%までのケイ化ジルコニウム(ZrSi2)を含むセラミックス複合材料からなる。この90TiN-10ZrSi2複合材料は、SPS及び伝統的な焼結の両方によって緻密化されたものである。これが伝統的な焼結によって焼結されたときに、SPS焼結に比べて硬度の低下が観察され、1302から863ビッカースまで低下したが、良好な靭性を維持した(4.2MPa・m1/2に対して4.4MPa・m1/2)。一方、伝統的な焼結によって、輝度指数(L*)が高くなって(74.5に対して66.2)はるかに優れた輝度が得られた。また、伝統的な焼結のおかげで、黄色成分b*の値がわずかに高くなった黄色味が得られた。
【0028】
例3
このセラミックス材料は、多数相として炭窒化チタン(TiCN)と、少数相として10重量%までのケイ化ジルコニウム(ZrSi2)を含むセラミックス複合材料からなる。この90TiCN-10ZrSi2複合材料は、硬度が低下して590ビッカースであったが、b*値が27.29に達するほどの最も顕著な黄色を達成した。
【0029】
例4
このセラミックス材料は、80TiN-10WC-10Al23の重量比で、窒化チタン(TiN)を多数相とし、炭化タングステン(WC)と酸化アルミニウム(Al23)を少数相とするセラミックス複合材料からなる。伝統的な焼結によって緻密化され圧力入力なしで得られた、このような複合材料は、美しい金属光沢性(L*=72.8)を維持しつつ、硬度が938ビッカース、靭性が3.6MPam1/2、a*が1.7、b*が26.2の値であるような強い黄色であった。
【0030】
例5
このセラミックス材料は、重量比で80TiN-10WC-10ZrO2の割合で、窒化チタン(TiN)を多数相とし、炭化タングステン(WC)と二酸化ジルコニウム(ZrO2)を少数相とするセラミックス複合材料からなる。この複合材料は、最大硬度が1187ビッカース、測定された輝度L*が72.9である。このようなセラミックス複合材料の色は黄色であり、指数a*及びb*の値はそれぞれ、1.48及び26.0であった。したがって、酸化アルミニウム(例4)を二酸化ジルコニウムによって置き換えることのおかげで、249ビッカースの分、硬度を高めることができた。
【0031】
例6
このセラミックス材料は、重量比で80TiN-10VC-10ZrO2の割合で、窒化チタン(TiN)を多数相とし、炭化バナジウム(VC)と二酸化ジルコニウム(ZrO2)を少数相とするセラミックス複合材料からなる。この複合材料は、硬度が1275ビッカース、測定された輝度L*が71.8であった。このようなセラミックス複合材料の色は黄色で、a*及びb*の値はそれぞれ、2.9及び23.4であった。したがって、炭化タングステン(例5)を炭化バナジウムに置き換えることのおかげで、約7%分、硬度を増加させることができた。
【0032】
例7
このセラミックス材料は、重量比で48TiN-32TiCN-10WC-10ZrO2の割合で、多数相として窒化チタン(TiN)と炭窒化チタン(TiCN)、少数相として炭化タングステン(WC)と二酸化ジルコニウム(ZrO2)を含むセラミックス複合材料からなる。このような複合材料は、指数a*及びb*がそれぞれ、7.52及び8.02である赤ピンク色であった。測定された硬度は、非常に高く、すなわち、1727ビッカースであり、SPS焼結で得られる硬度とほぼ同じであった。この増加は、炭化タングステンの添加に直接起因する。
【0033】
【表1】
図1