(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ポジショナ
(51)【国際特許分類】
B23K 37/047 20060101AFI20240918BHJP
B23Q 1/54 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B23K37/047 501B
B23Q1/54
(21)【出願番号】P 2023531143
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2021024329
(87)【国際公開番号】W WO2023275925
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】菊地 要
(72)【発明者】
【氏名】本門 智之
(72)【発明者】
【氏名】及川 暁寛
(72)【発明者】
【氏名】井上 俊彦
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/029670(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/001146(WO,A1)
【文献】特開2021-30265(JP,A)
【文献】特開2018-176410(JP,A)
【文献】特開2012-250242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/047
B23Q 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、
該第1部材に対して、所定の軸線回りに回転可能に支持された回転テーブルと、
前記軸線に対して平行にオフセットして配置され前記回転テーブルを回転駆動するモータと、
前記第1部材と前記回転テーブルとの間に配置され、前記モータの回転を減速して前記回転テーブルに伝達する減速機と、
前記回転テーブルに電源を供給する電源ケーブルとを備え、
前記第1部材および前記減速機が、前記軸線を含む領域に該軸線に沿う方向に貫通する中空部を備え、
前記第1部材の前記回転テーブルとは反対側の表面の前記中空部の径方向外方に、前記電源ケーブルの一端を着脱可能な集電ブラシを着脱可能に固定するブラシ取付部が設けられ、
前記電源ケーブルは、前記軸線から離れた前記第1部材の前記表面付近から、前記回転テーブルから離れる方向に延び、U字状に湾曲させられた後、前記軸線に沿って前記中空部内を貫通し、一端が前記回転テーブルに着脱可能に固定されているポジショナ。
【請求項2】
水平な被設置面に設置されるベースを備え、
前記第1部材が、前記軸線に直交する水平な第1軸線回りに前記ベースに対して回転可能に支持される軸部を備えるとともに、該軸部の端部から前記第1軸線を含む領域に該第1軸線に沿って延び、前記表面に開口する中空経路を備え、
前記電源ケーブルが前記中空経路を貫通して、外部の電源装置に接続される請求項1に記載のポジショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポジショナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
水平な被設置面に設置されるベースと、水平な回転軸線回りにベースに対して回転可能に支持された回転テーブルとを備える1軸のポジショナが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このポジショナにおいては、回転テーブルを回転駆動するモータが回転テーブルの回転軸線に対して平行にオフセットして配置されている。そして、モータの回転を減速して回転テーブルに伝達する減速機は、回転軸線を含む領域に中空部を有している。
【0003】
中空部には、回転軸線に沿う方向に貫通して、一端が回転テーブルに固定された円筒状の導電性のシャフトが配置され、シャフトの他端の外周面には集電ブラシが接触させられている。集電ブラシには、一端が外部の溶接用電源の負電極に接続される外部ケーブルの他端が接続されている。この場合、回転テーブルが無限に回転駆動されても、シャフトの外周面と集電ブラシとの接触によって溶接用電源と回転テーブルとの電気的な接続が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
集電ブラシおよび導電性のシャフト等の装備はコストが高くつくとともに、集電ブラシとシャフトとの摩擦による摩耗粉の発生、集電ブラシの摩耗等の問題がある。すなわち、回転テーブルを比較的小さな回転角度範囲で動作させる用途では、集電ブラシ等を装備しない形態が好ましく、回転テーブルを比較的大きな回転角度範囲で動作させる用途では、集電ブラシ等を装備する形態が好ましい。したがって、両形態を容易に切り替え可能とすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、第1部材と、該第1部材に対して、所定の軸線回りに回転可能に支持された回転テーブルと、前記軸線に対して平行にオフセットして配置され前記回転テーブルを回転駆動するモータと、前記第1部材と前記回転テーブルとの間に配置され、前記モータの回転を減速して前記回転テーブルに伝達する減速機と、前記回転テーブルに電源を供給する電源ケーブルとを備え、前記第1部材および前記減速機が、前記軸線を含む領域に該軸線に沿う方向に貫通する中空部を備え、前記第1部材の前記回転テーブルとは反対側の表面の前記中空部の径方向外方に、前記電源ケーブルの一端を着脱可能な集電ブラシを着脱可能に固定するブラシ取付部が設けられ、前記電源ケーブルは、前記軸線から離れた前記第1部材の前記表面付近から、前記回転テーブルから離れる方向に延び、U字状に湾曲させられた後、前記軸線に沿って前記中空部内を貫通し、一端が前記回転テーブルに着脱可能に固定されているポジショナである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るポジショナを示す斜視図である。
【
図3】
図1のポジショナの第1部材を回転テーブルとは反対の背面側から見た図である。
【
図4】
図3の第1部材の第2中空部内にシャフトを配置し、第1部材の背面側の表面に集電ブラシを取り付けた状態を示す図である。
【
図5】
図4の状態を示すポジショナの縦断面図である。
【
図6】本開示の第2実施形態に係るポジショナを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の第1実施形態に係るポジショナ1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るポジショナ1は、
図1に示されるように、床面等の水平な被設置面に設置されるベース2と、水平な第1軸線A回りにベース2に対して回転可能に支持された第1部材3と、第1部材3を回転駆動する第1駆動機構4とを備えている。
【0009】
また、ポジショナ1は、第1軸線Aに直交する第2軸線(所定の軸線)B回りに第1部材3に対して回転可能に支持された回転テーブル5と、回転テーブル5を回転駆動する第2駆動機構6とを備えている。さらに、ポジショナ1は、
図2に示されるように、回転テーブル5を溶接用の負電極に接続する電源ケーブル(線条体)7および加圧空気等の流体を供給する配管(線条体)8を備えている。
【0010】
ベース2は、第1軸線A方向に間隔をあけて平行に配置される平板状の第1支持部9および第2支持部10を備えている。第1部材3は、第1支持部9と第2支持部10との間に、両持ち梁状に掛け渡されている。第1部材3は、軸受11によって第1支持部9に第1軸線A回りに回転可能に支持される第1軸部(軸部)12と、後述する第1減速機18によって第2支持部10に第1軸線A回りに回転可能に支持される第2軸部13とを備えている。
【0011】
第1軸部12には、端面から第1軸線Aに沿って延びる第1中空部14が設けられている。第1支持部9には、第1軸線A方向に貫通する貫通孔15が設けられている。貫通孔15には内孔16aを有する円筒状のスリーブ16が嵌合され、スリーブ16は第1支持部9に固定されている。また、スリーブ16は、第1軸部12の端面側から第1中空部14内に挿入され、スリーブ16の外周面と第1中空部14の内周面との間に嵌合された軸受11によって、第1軸部12を第1軸線A回りに回転可能に支持している。
【0012】
第1軸部12に設けられた第1中空部14は、軸受11により支持されている部分よりも第2支持部10側において、第1軸線Aに交差する方向に延びて、第1部材3の回転テーブル5とは反対側の表面(以下、背面ともいう。)側に開口している。これにより、第1支持部9の第1軸線A方向の外側から、スリーブ16の内孔16aおよび第1中空部14を経由して、第1支持部9と第2支持部10との間において第1部材3の背面側に貫通する中空経路50が構成されている。
【0013】
第1駆動機構4は、ベース2の第2支持部10に固定される第1モータ17と、第1モータ17のモータシャフト17aの回転を減速して第1部材3に伝達する第1減速機18とを備えている。第1モータ17は、第2支持部10の外側から第2支持部10に設けられた貫通孔19にモータシャフト17aを貫通させて第2支持部10の外面に固定されている。モータシャフト17aの中心軸は第1軸線Aに一致している。
【0014】
第1減速機18は、第2支持部10の内面側に固定された固定部材20と、固定部材20に対して第1軸線A回りに回転させられる出力軸部材21とを備えている。固定部材20および出力軸部材21の内部には、モータシャフト17aに固定されたギヤ22に噛み合うギヤを含む複数枚のギヤ(図示略)が収容されている。出力軸部材21は第1部材3の第2軸部13の端面に固定されている。
【0015】
図2において、符号23は第1部材3に設けられた突起、符号24はベース2に固定され突起23を突き当てるストッパである。第1部材3が第1軸線A回りに回転したときに第1部材3に設けられた突起23を突き当てるストッパ24をベース2に設けることにより、第1部材3の回転角度範囲を1回転よりも小さい大きさに制限している。
【0016】
回転テーブル5は、ワーク等を載置する載置面5aを備え、導電性の材料により構成され、円板状に形成されている。回転テーブル5は、中心軸を第2軸線Bに一致させた位置に配置され、後述する第2減速機によって、第1部材3に、第2軸線B回りに回転可能に支持されている。
【0017】
第2駆動機構6は、
図2および
図3に示されるように、第2軸線Bに対して平行にオフセットして第1部材3に固定された第2モータ(モータ)25と、第2モータ25のモータシャフト(図示略)の回転を減速して回転テーブル5に伝達する第2減速機(減速機)26とを備えている。第2モータ25は、第1部材3における中空経路50の開口50a側(背面側)の表面に固定されている。第2減速機26は、第1部材3と回転テーブル5との間に配置されている。第2軸線Bに対してオフセットした第2モータ25のモータシャフトの回転は、歯車34によって一旦減速された後に第2減速機26においてさらに減速されて回転テーブル5に伝達される。第2駆動機構6には第1駆動機構4のようなストッパ24は設けられていない。
【0018】
回転テーブル5、第2減速機26および第1部材3は、第2軸線Bを含む領域に、第2軸線Bに沿って貫通する第2中空部(中空部)27を備えている。第2中空部27の第2軸線B方向の一端は、回転テーブル5の載置面5a側に開口し、他端は第1部材3の中空経路50の開口50aと同じ背面側の表面に開口している。
【0019】
図2および
図3に示されるように、第2中空部27の背面側の開口の周囲に位置する第1部材3の背面側の表面(回転テーブル5とは反対側の表面)には、後述する集電ブラシ28を着脱可能に取り付け可能なブラシ取付部29が設けられている。集電ブラシ28は、
図4および
図5に示されるように、例えば、カーボン製のブラシ部30と、ブラシ部30を第2中空部27の径方向外方から径方向内方に向かって押圧するバネ(図示略)を備える押付け部31とを備えている。集電ブラシ28は、電源ケーブル7を着脱可能に接続する端子28aを備えている。
【0020】
ブラシ取付部29は、押付け部31を第2軸線Bに沿う方向に密着させる座面29aと、座面29aに設けられ、押付け部31をネジ32によって第1部材3に固定するための1以上のネジ孔29bとを備えている。ブラシ取付部29は、第2軸線B回りの周方向に間隔をあけて2か所に設けられている。
図3に示す例では、ブラシ取付部29は第2中空部27を径方向に挟み、周方向に180°離れた位置に配置されている。
【0021】
回転テーブル5における第2中空部27の開口には、
図2に示されるように、開口を閉塞する位置に導電性の材料からなるアダプタ33が、回転テーブル5の載置面5a側から着脱可能に固定されている。
アダプタ33には、後述するように電源ケーブル7および配管8を接続可能な端子35および貫通孔36が設けられている。
【0022】
図中、符号37は、第1部材3に固定されたオイルシール38によって、第2減速機26内部および歯車34の配置されている潤滑空間を密封するために、第2中空部27を第2軸線B方向に貫通して配置された円筒状のスリーブ部材である。また、符号39は、第2減速機26と回転テーブル5とを電気的に絶縁する絶縁プレート、符号40は、ボルト48と回転テーブル5とを電気的に絶縁する絶縁ワッシャである。絶縁プレート39および絶縁ワッシャ40は、電気的な絶縁材料、例えば、絶縁性の樹脂により構成されている。
【0023】
電源ケーブル7および配管8は、
図2に示されるように、第2支持部10側面に設置された配電ボックス41に一端が固定されている。外部に配置された電源装置(図示略)および流体供給源(図示略)が配電ボックス41において電源ケーブル7および配管8に接続されることにより、回転テーブル5の負電極への接続および回転テーブル5への流体を供給が可能となる。
【0024】
また、配電ボックス41には、第1モータ17および第2モータ25に接続するモータケーブル(図示略)の一端も固定されている。配電ボックス41におけるモータケーブルの一端には、外部に配置された制御装置(図示略)から延びてくるケーブル(図示略)が接続される。
【0025】
第1モータ17用のモータケーブルの他端は、配電ボックス41に近接している第1モータ17に接続される。電源ケーブル7および配管8は、第2モータ25に接続する第2モータ25用のモータケーブルとともに、配電ボックス41から、例えば、ベース2の下部を通過して第1支持部9側に導かれた後、第1支持部9の外側から中空経路50内に導入されている。
【0026】
中空経路50内に導入された電源ケーブル7等の線条体は、中空経路50内において第1軸線A近傍を第1軸線Aに沿って延びた後、第1部材3の背面側の開口50aから中空経路50の外側に引き出されている。
第1部材3の背面側の開口50aから引き出された第2モータ25用のモータケーブルは、第1部材3に固定されている第2モータ25に接続されている。
【0027】
第1部材3の背面側の開口50aから引き出された電源ケーブル7等の線条体は、第2軸線Bから離れた第1部材3の表面付近から、回転テーブル5から離れる方向に延びた後、U字状に約180°湾曲させられている。湾曲した電源ケーブル7等の線条体は、第2軸線Bに沿って延び、第2中空部27の背面側の開口から第2中空部27内に導入され、他端がアダプタ33に着脱可能に固定されている。
【0028】
電源ケーブル7等の線条体の180°湾曲した部分は第2軸線Bに沿う方向の位置が第2モータ25のヘッド側の端部よりも回転テーブル5側に配置されている。すなわち、電源ケーブル7等の線条体は、第2モータ25のヘッド側の端部を超えない位置において180°折り返されている。
【0029】
第2中空部27を貫通する電源ケーブル7および配管8は、第2軸線B付近を第2軸線Bに沿ってほぼ真っ直ぐに貫通する。第1部材3の開口50aから引き出された位置から回転テーブル5のアダプタ33に接続される位置まで間のU字状に湾曲した電源ケーブル7および配管8は、周囲の部材と干渉せずに変位し得る自由状態となっている。
【0030】
このように構成された本実施形態に係るポジショナ1の作用について、以下に説明する。
本実施形態に係るポジショナ1によれば、回転テーブル5に固定されたアダプタ33に電源ケーブル7および配管8が接続されているので、回転テーブル5の載置面5aに搭載されたワークを負電極に接続し、流体を供給することができる。
【0031】
この場合において、第1駆動機構4の作動によって、ベース2に対して第1部材3を第1軸線A回りに回転させることにより、ワークの第1軸線A回りの傾斜角度を変更することができる。また、第2駆動機構6の作動によって、第1部材3に対して回転テーブル5を第2軸線B回りに回転させることにより、ワークの第2軸線B回りの角度を変更することができる。
【0032】
ベース2に対して第1部材3が第1軸線A回りに回転することにより、中空経路50に配置されている部分の電源ケーブル7および配管8には捩り力が作用する。中空経路50内の電源ケーブル7および配管8は第1軸線A近傍を第1軸線Aに沿って延びているので、この部分を捩り変形させることにより、捩り力を吸収することができる。
特に、ベース2に対する第1部材3の第1軸線A回りの回転は、ワークの水平面に対する傾斜角度を変化させるものであり、突起23およびストッパ24によって回転角度範囲が制限されているため、電源ケーブル7および配管8に大きな捩り力が作用することはない。
【0033】
一方、第1部材3に対して回転テーブル5を第2軸線B回りに回転させると、アダプタ33によって回転テーブル5に固定されている電源ケーブル7および配管8に捻じり力が作用する。第2軸線B回りの回転テーブル5の回転角度範囲が比較的大きい場合には、電源ケーブル7および配管8には比較的大きな捩り力が作用する。
【0034】
本実施形態によれば、第1部材3における中空経路50の開口50aからアダプタ33までの電源ケーブル7等の線条体は、U字状に180°折り返されることにより、比較的長い範囲にわたって自由状態となっている。したがって、回転テーブル5が第2軸線B回りに回転して第2軸線B回りの捩り力を受けても、第1部材3の開口50aからアダプタ33までの電源ケーブル7等の線条体の自由状態の部分を捩り変形または曲げ変形させることにより、捩り力を効果的に吸収することができる。これにより、電源ケーブル7等の線条体にかかる負荷を軽減することができる。
【0035】
すなわち、回転テーブル5が第2軸線B回りに所定の角度、例えば、±180°程度の比較的大きな回転角度範囲内において回転する用途である場合には、電源ケーブル7等の線条体にかかる負荷を軽減した可動ケーブル等として利用することができる。そして、この場合には、無限の回転を許容する集電ブラシおよびシャフトは不要であり、これらを装着しないことによって、コストを低減し、保守を容易にすることができるという利点がある。
【0036】
一方、ポジショナ1が、回転テーブル5を第2軸線B回りに無限に回転させることが必要な用途あるいは、例えば、360°を超える比較的大きな回転角度範囲で回転テーブル5を回転させることが必要な用途に使用される場合には、以下の通りに設定する。
まず、アダプタ33を回転テーブル5から取り外して、アダプタ33に接続されていた電源ケーブル7および配管8を取り外し、第2中空部27から引き出す。また、回転テーブル5に対して固定されたスリーブ部材37を取り外す。
【0037】
次いで、
図5に示されるように、導電性の材料からなる円筒状のシャフト42と、シャフト42の内孔42a内に配置されるロータリジョイント43とを装着した他のアダプタ44を、回転テーブル5に取り付ける。他のアダプタ44を回転テーブル5に取り付けると、シャフト42およびロータリジョイント43は、第2軸線Bと同軸に第2中空部27を貫通して配置される。このとき、シャフト42の先端が、第2中空部27の背面側の開口から外部に突出した位置に配置される。シャフト42の外径はスリーブ部材37の外径と同一であり、オイルシール38による潤滑空間の密封が維持される。
【0038】
また、
図4および
図5に示されるように、第1部材3に設けられたブラシ取付部29に集電ブラシ28を取り付ける。
集電ブラシ28は、押付け部31をブラシ取付部29に固定することにより、第1部材3に取り付けられる。ブラシ部30は、押付け部31のバネによって、第1部材3の背面側に露出しているシャフト42の外周面に径方向外方から押し付けられる。
【0039】
最後に、アダプタ33から取り外されていた電源ケーブル7を端子28aによって集電ブラシ28に接続し、配管8をロータリジョイント43に接続する。
これにより、回転テーブル5が第2軸線B回りに回転させられると、回転テーブル5とともにシャフト42が回転させられ、シャフト42の外周面とブラシ部30との接触が維持される。したがって、集電ブラシ28により、回転テーブル5が無限に回転しても、電源ケーブル7を固定したままの状態で回転テーブル5を負電極に接続し続けることができる。
【0040】
本実施形態によれば、ブラシ取付部29が第2中空部27を径方向に挟んだ2か所に設けられていることにより、シャフト42を挟んだ両側から対向する方向に、シャフト42の外周面に対してブラシ部30を押し付けることができる。これにより、シャフト42に作用するブラシ部30の押し付け力を相殺してシャフト42に偏った力が作用しないようにすることができる。
【0041】
また、ロータリジョイント43に配管8を接続することにより、回転テーブル5が第2軸線B回りに回転しても流体の流路を接続状態に維持することができる。したがって、回転テーブル5の回転角度に関わらず、回転テーブル5に流体を供給し続けることができる。
【0042】
この場合において、アダプタ33に直接接続されていた電源ケーブル7等の線条体は、U字状に湾曲させられることにより、可動するための十分な余長を有していたので、集電ブラシ28あるいはロータリジョイント43に接続する場合においても十分な長さを有する。
そして、電源ケーブル7および配管8は比較的太く、硬質であるが、上述のように十分な長さを有するために容易に曲げることができ、集電ブラシ28およびロータリジョイント43に接続するための取り回しを容易に行うことができる。
【0043】
したがって、用途の変更により、集電ブラシ28およびロータリジョイント43を装着する必要が生じても、電源ケーブル7等の線条体を交換することなく、簡易に装着することができる。すなわち、回転テーブル5の必要な回転角度範囲が小さい場合等の集電ブラシ28を装着しない形態から、回転テーブル5の必要な回転角度範囲が大きい場合等の集電ブラシ28を装着した形態へ、あるいはその逆へと容易に切り替えることができるという利点がある。
【0044】
集電ブラシ28に接続される電源ケーブル7およびロータリジョイント43に接続される配管8は、回転テーブル5の回転に関わらず静止状態に維持される。この場合には、第1部材3の中空経路50の開口50aから引き出された電源ケーブル7等は、結束バンド46またはクランプ部材等によって第1部材3に動かないように固定することが好ましい。
【0045】
次に、本開示の第2実施形態に係るポジショナ51について、図面を参照して以下に説明する。本実施形態の説明において、第1実施形態に係るポジショナ1と構成を共通とする箇所には同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
第1実施形態においては、回転テーブル5を第1軸線Aおよび第2軸線B回りに回転可能に支持する2軸のポジショナを例示した。これに代えて、本実施形態に係るポジショナ51は、
図6に示されるように、ベース2に対して回転テーブル5をその中心軸C回りに回転させるだけの1軸のポジショナである。この場合には、ベース2が第1部材3に対応する。
【0047】
本実施形態に係るポジショナ51においては、配電ボックス41から延びる電源ケーブル7等の線条体の長手方向の途中位置が回転テーブル5の中心軸Cから離れた位置において回転テーブル5の背面側に近接する位置においてクランプ部材47によって固定される。電源ケーブル7等の線条体は、クランプ部材47によって固定された位置から、回転テーブル5から離れる方向に湾曲させられた後、U字状に180°湾曲させられて、回転テーブル5の中心軸Cに沿って第2中空部(中空部)27内に導入されている。第2中空部27に導入された電源ケーブル7等の線条体は、回転テーブル5のアダプタ33に直接接続される。
【0048】
本実施形態に係るポジショナ51においても、回転テーブル5の回転角度範囲が大きい場合には、シャフト42とロータリジョイント43とを回転テーブル5に取り付け、ブラシ取付部29に集電ブラシ28を取り付けることにより、形態を容易に切り替えることができる。この場合に、電源ケーブル7等の線条体は、可動するための十分な余長を有していたので、集電ブラシ28あるいはロータリジョイント43に接続する場合においても十分な長さを有する。そして、電源ケーブル7等の線条体が比較的太く、硬質であっても、長い線条体は比較的容易に曲げることができ、集電ブラシ28およびロータリジョイント43に接続するための取り回しを容易に行うことができるという利点がある。
【0049】
なお、上記各実施形態に係るポジショナ1,51においては、第1部材3の第2中空部27の径方向外方に周方向に間隔をあけて2か所のブラシ取付部29を設けたが、これに代えて、1箇所または3箇所以上でもよい。複数設けることにより、1つのブラシ部30とシャフト42との接触が不良となっても、他のブラシ部30とシャフト42との接触により、電気的な接続を維持することができるという冗長性を保有することができる。
【0050】
また、3以上の集電ブラシ28を取り付ける場合にも、ブラシ取付部29を、回転テーブル5の中心軸回りの周方向に等間隔をあけて配置することが好ましい。これにより、ブラシ部30からシャフト42に付与される押し付け力を相殺して偏りをなくすことができる。
【0051】
また、回転テーブル5の中心軸回りに周方向に等間隔をあけてブラシ取付部29を配置することに代えて、押し付け力の偏りが許容できる場合には、1箇所または周方向に不等間隔に複数箇所配置してもよい。また、複数の集電ブラシ28を周方向に間隔をあけた位置に配置することに代えて、周方向の同一位置に、回転テーブル5の中心軸に沿う方向に並べて複数の集電ブラシ28を配置してもよい。これにより、集電ブラシ28の冗長性を維持しながら、回転テーブル5の中心軸回りにおける集電ブラシ28の設置スペースを小さくすることができる。
【0052】
また、ブラシ取付部29として、押付け部31を回転テーブル5の中心軸A,Cに沿う方向に密着させる座面29aを備えることとした。この場合、座面29aは中心軸A,Cに直交する平面に沿って形成される。これに代えて、座面29aを回転テーブル5の中心軸A,Cに平行な平面に沿って形成してもよい。
【0053】
また、本実施形態においては、回転テーブル5に固定されるアダプタ33に、電源ケーブル7と配管8とを接続する場合について説明したが、これに加えて、信号ケーブルを接続してもよい。回転テーブル5を無限に回転させる用途において、ロータリジョイント43によって信号ケーブルを接続状態に維持することができる。
【0054】
また、本実施形態においては、
図4および
図5に示されるように、第1部材3の背面側の表面に固定された第2モータ25、ブラシ取付部29、第1中空部14の開口50aおよび第2中空部27の開口を覆う位置に防塵カバー45を設けることにしてもよい。これにより、第1中空部14の開口50aから取り出される電源ケーブル7、第2モータ25のモータケーブル、配管8、第1中空部14の開口50aおよび第2中空部27の開口を、外部に露出しないように保護することができる。
【0055】
また、ブラシ取付部29に集電ブラシ28を取り付けた場合には、集電ブラシ28およびシャフト42も防塵カバー45内に配置することができる。これにより、ブラシ部30とシャフト42との間に外部からの塵埃が付着することを防止できるとともに、ブラシ部30あるいはシャフト42の摩耗粉が外部に飛散することを防止することもできる。
【0056】
また、電源ケーブル7等の線条体の湾曲部分が第2モータ25のヘッド側の端部を超えない位置において折り返されていることにより、第2モータ25を含めた第1部材3の背面側を覆う防塵カバー45の高さを最小限に抑えることができる。これにより、第1部材3の第1軸線A回りの回転時における、防塵カバー45とベース2との干渉を防止しつつ、ポジショナ1のコンパクト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0057】
1、51 ポジショナ
2 ベース(第1部材)
3 第1部材
5 回転テーブル
7 電源ケーブル
12 第1軸部(軸部)
25 第2モータ(モータ)
26 第2減速機(減速機)
27 第2中空部(中空部)
28 集電ブラシ
29 ブラシ取付部
50 中空経路
A 第1軸線
B 第2軸線(所定の軸線)
C 中心軸(所定の軸線)