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  • 特許-レーザ加工装置の数値制御装置 図1
  • 特許-レーザ加工装置の数値制御装置 図2
  • 特許-レーザ加工装置の数値制御装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】レーザ加工装置の数値制御装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/08 20140101AFI20240918BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240918BHJP
   B23K 26/0622 20140101ALI20240918BHJP
   G05B 19/416 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B23K26/08 Z
B23K26/00 M
B23K26/0622
G05B19/416 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023531297
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2021024985
(87)【国際公開番号】W WO2023276115
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】八木 順
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-212886(JP,A)
【文献】特開2010-271433(JP,A)
【文献】特開昭59-042194(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/08
B23K 26/00
B23K 26/0622
G05B 19/416
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工ヘッドとワークを相対移動させながら、前記レーザ加工ヘッドから出射するパルスレーザによって前記ワークを加工するレーザ加工装置を制御する数値制御装置であって、
加工プログラムに基づいて、前記相対移動の速度を制御する速度指令を生成する速度指令生成部と、
前記速度指令に応じて、少なくとも前記パルスレーザの周波数、デューティを含むレーザ出力指令値を生成するレーザ指令生成部と、
前記周波数に基づいて前記パルスレーザの周期指令を算出し、前記周期指令に対して、前記レーザ加工装置の性能の制限によって変化した変化後周期指令の変化率を計算する変化率演算部と、
前記変化率を用いて、前記速度指令生成部が生成した前記速度指令を調整する速度調整部と、を備える
数値制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の数値制御装置であって、
前記変化後周期指令は、前記周期指令に対する前記レーザ加工装置の性能の制限を反映させるモデルに基づいて、前記変化率演算部の模擬計算によって算出される。
【請求項3】
請求項2に記載の数値制御装置であって、
前記レーザ加工装置の性能の制限は、前記周期指令に対する前記レーザ加工装置の分解能の制限である。
【請求項4】
請求項1に記載の数値制御装置であって、
前記変化後周期指令として、前記レーザ加工装置の試運転において実測された前記パルスレーザの周期実測値を用いる、又は前記周期実測値に基づいて算出された値を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置の数値制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パルスレーザを利用して被加工物に等間隔で穴を開ける技術が知られている。例えば、特許文献1の3頁の左上欄から左下欄には「第4図(a)は移動手段により移動される被加工物(9)の移動速度を示し、…。第4図(b)はパルス発生器からの出力の大きさ、即ち周波数の大きさを示しており、電圧-周波数変換器(15)からの出力信号の大きさ、即ち周波数の大きさを示すものであり、被加工物(9)の移動速度に応じて変化している。ここで、被加工物(9)の送り速度をV、電圧-周波数変換器(15)の出力波形の周波数をF、第3図に示す設定器(16)の出力、即ち設定ピッチをP’とすると、
F=V/P’と表せ、
これからピッチはP’=V/F ……(1)となる。
また、実際に形成される穴(10)のピッチをPとすると、
P=V/Fという関係があり、上記(1)式よりP=P’となり、ピット設定器(14)の出力はピッチPを設定することができ、被加工物の移動速度Vが変化しても一定のピッチの穴(10)を被加工物(9)に開けることができることになる。」と記載されている。
上述した穴開けのほか、現在、半導体製品の加工、ガラスレンズの加工など、様々な精密加工にもパルスレーザを活用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭59-42194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、装置性能の制限を受け、レーザ加工ヘッドと被加工物の相対移動速度の変化に合わせてパルスレーザの周波数を変化させても、周波数が高くなると、装置が出力するパルスレーザの周期が周波数の変化に追従できず、その変化は不連続になる。
【0005】
図3は、従来技術における問題点を表すグラフである。横軸はレーザ加工ヘッドの送り速度を示す。図3には3つのグラフがあるが、「パルス周波数」グラフは、パルスレーザの周波数の変化を示す。被加工物に一定のピッチでレーザを照射して加工を行うために、レーザ加工ヘッドの送り速度に比例してレーザのパルス周波数を変化させる制御をする。「パルス周期」グラフは、レーザ加工装置が出力するパルスレーザの周期の変化を示す。「パルス周期ごとの走査距離」グラフは、パルスレーザの各周期の間にレーザ加工ヘッドが走行する距離の変化を示す。以下、パルスレーザの各周期の間にレーザ加工ヘッドが走行する距離を「パルス距離間隔」ということもある。
【0006】
パルス周期がパルス周波数の逆数であるので、パルス周波数がレーザ加工ヘッドの送り速度に比例して直線的に変化する場合、パルス周期が滑らかな双曲線に沿って連続的に変化するはずである。しかし、レーザ加工装置は、パルス周期指令に対する分解能の制限など各種制限を受け、パルス周波数に基づいて算出されたパルス周期指令に追従できない。その結果、図3に示したように、レーザ加工装置が出力するパルスレーザの周期が不連続に変化し、グラフに段差が現れる。パルス周波数が高ければ高いほど、パルス周期グラフに現れる段差が顕著になる。
【0007】
その影響を受けて、「パルス周期ごとの走査距離」グラフにも段差が現れる。すなわち、パルス距離間隔が一定になれず、パルスレーザによって照射するスポットの間隔が一定になれない。それによって、レーザ加工の精度が悪くなり、加工された部分に欠陥が形成されるなどの課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態に係る数値制御装置は、レーザ加工ヘッドとワークを相対移動させながら、前記レーザ加工ヘッドから出射するパルスレーザによって前記ワークを加工するレーザ加工装置を制御する数値制御装置であって、加工プログラムに基づいて、前記相対移動の速度を制御する速度指令を生成する速度指令生成部と、前記速度指令に応じて、少なくとも前記パルスレーザの周波数、デューティを含むレーザ出力指令値を生成するレーザ指令生成部と、前記周波数に基づいて前記パルスレーザの周期指令を算出し、前記周期指令に対して、前記レーザ加工装置の性能の制限によって変化した変化後周期指令の変化率を計算する変化率演算部と、前記変化率を用いて、前記速度指令生成部が生成した前記速度指令を調整する速度調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記の実施形態によれば、パルス周期の変化が不連続であっても、パルスレーザによって加工面に照射するスポットの間隔が一定になれる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態における数値制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態の効果を説明する模式図である。
図3】従来技術における問題点を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0012】
<実施形態1>
図1は、本発明の一実施形態における数値制御装置の構成を示すブロック図である。この実施形態の数値制御装置は、レーザ加工ヘッド14から出射するパルスレーザによってワークを加工するレーザ加工装置10を制御する数値制御装置20である。当該レーザ加工装置10は、レーザ加工ヘッド14から出射するパルスレーザを制御するレーザ制御部11と、レーザ加工ヘッド14とワークを相対移動させる駆動軸13を制御する駆動軸制御部12を有する。本実施形態の説明を簡潔にするために、本実施形態において、ワークが固定され、駆動軸制御部12が制御する駆動軸13がレーザ加工ヘッド14だけを移動させることとする。すなわち、レーザ加工ヘッド14の送り速度(移動速度)がレーザ加工ヘッド14とワークの相対移動速度である。
【0013】
図1に示したように、数値制御装置20は、プログラム解析部22と、速度指令生成部23と、レーザ指令生成部24と、変化率演算部25と、速度調整部26と、備える。プログラム解析部22は、加工プログラム21を解析して、解析した情報を関連する部分に送る。例えば、レーザ加工ヘッド14の送り速度に関する情報であれば、速度指令生成部23に送り、パルスレーザの周波数に関する情報であれば、レーザ指令生成部24に送る。
【0014】
速度指令生成部23は、プログラム解析部22が解析した加工プログラム21に基づいて、レーザ加工ヘッド14の送り速度を制御する速度指令Fを生成する。速度指令生成部23は、生成した速度指令Fをレーザ指令生成部24と速度調整部26に送る。レーザ指令生成部24は、パルスレーザのパワーコントロールができる。レーザ指令生成部24は、速度指令Fに応じて、少なくともパルスレーザの周波数、デューティを含むレーザ出力指令値を生成する。例えば、レーザ指令生成部24は、次の数式1によって、速度指令Fに比例したパルスレーザの周波数指令値fを生成して、変化率演算部25とレーザ制御部11に送る。
【数1】
数式1において、Dは定数であり、レーザ加工装置10が目指す、パルスレーザの各周期の間にレーザ加工ヘッド14が走行する距離である。以下、定数Dを「目標パルス距離間隔」ともいう。
【0015】
レーザ制御部11は、レーザ指令生成部24からの周波数指令値fに基づいて、パルスレーザの周期指令T(=1/f)を算出して、レーザ加工ヘッド14が出射するパルスレーザを制御する。
【0016】
変化率演算部25は、レーザ指令生成部24からの周波数指令値fに基づいて、パルスレーザの周期指令T(=1/f)を算出する。なお、変化率演算部25は、周期指令Tに対して、レーザ加工装置10の性能の制限によって変化した変化後周期指令T’の周期変化率Rを計算して、速度調整部26に送る。周期変化率Rは、下記の数式2によって計算される。
【数2】
但し、nは任意の自然数である。T(n)は、レーザ加工装置10の性能の制限を受けて周期指令の変化(周波数指令値fに基づいて算出された周期指令(1/f)から外れること)が始まる直前の時点の周期指令を指す。T’(n+a)は、周期指令が変化している間の各時点の変化後周期指令T’である。aは「1、2、3、…」などの自然数である。時間に対する速度指令Fの変化率(加速度)が変わる場合、新しい加速度におけるT(n)を用いる必要がある。
【0017】
速度調整部26は、周期変化率Rを用いて、速度指令生成部23が生成した速度指令Fを調整して、調整後速度指令F’を生成して駆動軸制御部12に送る。速度調整部26は、下記の数式3に基づいて速度指令を調整する。
【数3】
但し、F(n)は、T(n)に対応するn時点の速度指令Fである。
【0018】
変化後周期指令T’は、周期指令Tに対するレーザ加工装置10の性能の制限を反映させるモデルに基づいて、変化率演算部25の模擬計算によって算出される。例えば、変化率演算部25は、周期指令Tに対するレーザ加工装置10の分解能の制限を反映させるモデルに基づいて、変化後周期指令T’を算出する。以下、レーザ加工装置10の分解能の制限、及びそれを反映させた変化後周期指令T’の計算方法について説明する。
【0019】
例えば、レーザ加工装置10の周期指令Tに対する分解能Sが0.5μsであり、変化率演算部25が周波数指令値fに基づいて算出したn時点のパルスレーザの周期指令T(n)が0.5μsであり、(n+1)時点の周期指令T(n+1)が0.6μsであり、(n+2)時点の周期指令T(n+2)が0.7μsであり、(n+3)時点の周期指令T(n+3)が0.8μsであり、(n+4)時点の周期指令T(n+4)が0.9μsであり、(n+5)時点の周期指令T(n+5)が1.0μsであり、(n+6)時点の周期指令T(n+6)が1.1μsであるとする。なお、時間に対する速度指令Fの変化率(加速度)が一定であるとする。また、レーザ制御部11が周波数指令値fに基づいて算出する周期指令Tも同様である。
【0020】
算出された周期指令Tの中、n時点の周期指令T(n)=0.5μs及び(n+5)時点の周期指令T(n+5)=1.0μsが分解能S(0.5μs)の整数倍なので、レーザ加工装置10は、その周期指令の変化に追従でき、周期指令のとおりにパルスレーザを制御することができる。しかし、他の時点における周期指令の値(0.6~0.9及び1.1μs)が分解能S(0.5μs)の整数倍ではないので、レーザ加工装置10は、その周期指令の変化に追従できない。その結果、レーザ加工装置10は、(n+1)から(n+4)時点については、その前に分解能Sの整数倍になったn時点の周期指令(0.5μs)でパルスレーザを制御し、(n+6)時点については、その前に分解能Sの整数倍になった(n+5)時点の周期指令(1.0μs)でパルスレーザを制御することになる。
【0021】
そのため、実際にパルスレーザを制御する周期指令が図3の「パルス周期」グラフのように、段階的に変化する。その結果、たとえ数式1に基づいて周波数指令値fを生成してパルスレーザを制御しても、パルス距離間隔が目標パルス距離間隔Dのように、一定になることができない。
【0022】
本実施形態は、次の数式4によって、レーザ加工装置10の分解能の制限を反映させて、実際にパルスレーザを制御する周期指令に近似する変化後周期指令T’を算出する。
【数4】
数式4において、floorはC言語などにおいて使用される関数であって、数値の小数点以下を切り捨てる関数である。なお、前述したように、Sは周期指令Tに対するレーザ加工装置10の分解能であり、Tは周波数指令値fに基づいて算出された周期指令である。
【0023】
例えば、上述した例における(n+2)時点の周期指令T(n+2)=0.7μs、S=0.5μsの場合について、数式4を用いて計算すると、変化後周期指令T’が次の数式5に示されるように0.5μsになる。
【数5】
更に、数式4を用いて、上述した例の他の時点の変化後周期指令T’を計算すると、(n+1)から(n+4)時点の変化後周期指令T’は全て0.5μsであり、(n+5)と(n+6)時点の変化後周期指令T’は1.0μsである。
【0024】
この結果は、周期指令Tの値が分解能Sの整数倍ではないときに、レーザ加工装置10がその前に分解能Sの整数倍になった時点の周期指令を用いてパルスレーザを制御することと同じである。すなわち、数式4で示したモデルによって、レーザ加工装置10の分解能の制限が周期指令に対して及ぼす影響を反映させることができる。
【0025】
そこで、本実施形態において、変化率演算部25は、数式4によって変化後周期指令T’を算出し、数式2によって周期変化率Rを計算して速度調整部26に送る。速度調整部26は、周期変化率Rを用いて、数式3によって速度指令Fを調整して、調整後速度指令F’を生成する。駆動軸制御部12は、調整後速度指令F’に基づいて、レーザ加工ヘッド14の送り速度を制御する。
【0026】
上述した例において、周期指令T(n)=0.5μsは、数式2における「T(n)」に相当し、すなわち、周期指令の変化が始まる直前の時点の周期指令である。なお、(n+1)~(n+6)は、数式2における「(n+a)」に相当し、これらの時点で周期指令が変化して算出された周期指令(1/f)から外れて、変化後周期指令T’(n+a)となる。そのうち、(n+5)時点において、変化後周期指令T’(n+5)が周期指令T(n+5)に等しく、1.0μsである。すなわち、(n+5)時点において、実際にパルスレーザを制御する周期指令が周波数指令値fに基づいて算出された周期指令(1/f)と一致しており、算出された周期指令(1/f)から外れていない。しかし、数式2と3を用いて制御を行う計算において、このような時点における周期指令を変化後周期指令T’として扱うのが便利であり、数式4を用いてこのような時点の変化後周期指令T’を計算しても正しく状況を反映できる結果が得られる。よって、本実施形態において、このように、周期指令が変化している間に存在し、算出された周期指令(1/f)と一致する周期指令についても変化後周期指令T’として扱うことにする。
【0027】
図2は本実施形態の効果を説明する模式図である。図2の上部は、時間に伴う各パラメータの変化を示す模式図である。図2の下部は、各調整後速度指令F’の下で、パルスレーザの各周期にレーザ加工ヘッドが走行する距離、すなわち、調整後パルス距離間隔D’を示す模式図である。図2は、レーザ加工ヘッドの送り速度を制御する速度指令Fが直線的に下がる例を示す。
【0028】
図2に示したように、パルスレーザの周期実測値Taは、時間に対する変化が不連続であり、段差が現れる。一方、変化後周期指令T’を用いて、数式2と数式3によって算出された調整後速度指令F’の変化にも、周期実測値Taに対応する段差が現れる。図2の一番上に示したように、調整後速度指令F’を用いて、レーザ加工ヘッド14の送り速度を制御すると、送り速度が変化しても、調整後パルス距離間隔D’が一定の値に維持される。すなわち、パルスレーザの各周期の間にレーザ加工ヘッドが走行する距離が一定に制御される。
【0029】
この結果は、次の数式6を用いて、計算によって確認することもできる。
【数6】
例えば、図2において、周期実測値Taの左側の点列の値が0.5μsであり、中央の点列の値が1.0μsであり、右側の点列の値が1.5μsであるとする。なお、「F60000」、「F30000」及び「F20000」で示したように、調整後速度指令F’の左側の点列の値が60000mm/minであり、中央の点列の値が30000mm/minであり、右側の点列の値が20000mm/minであるとする。左側の点列で対応する周期実測値Taが0.5μsで、調整後速度指令F’が60000mm/minであるので、この2つの値を数式6に入れて計算すると、D’=0.5μmになる。中央の点列及び右側の点列についても同様の計算をすると、同様にD’=0.5μmの結果になる。
【0030】
図2の下部は、異なる送り速度の下でも、パルスレーザの各周期の間にレーザ加工ヘッドが走行する距離が一定に制御できることをイメージした模式図である。図2において、周期実測値Taを示す点列の間隔、及びレーザビームを表す点列の間隔は、対応するパルスレーザの各周期の大きさをイメージしている。
【0031】
本実施形態に係る数値制御装置は、周期指令Tに対するレーザ加工装置10の性能の制限を反映させるモデルに基づいて、変化率演算部25の模擬計算によって変化後周期指令T’を算出し、周期指令Tに対する変化後周期指令T’の周期変化率Rを計算して、周期変化率Rを用いて速度指令Fを調整することによって、異なる送り速度の下でも、パルスレーザの各周期の間にレーザ加工ヘッド14が走行する距離を一定に制御することができ、パルスレーザによって加工面に照射するスポットの間隔を一定に制御することができる。
【0032】
<実施形態2>
本実施形態は、実施形態1の変形である。本実施形態に係るレーザ加工装置及びその数値制御装置は、図1に示したレーザ加工装置10及び数値制御装置20の構成を有することができる。よって、実施形態1と同じ機能を有する構成要素について、その説明を省略する。
【0033】
本実施形態と実施形態1の主な違いは、周期変化率Rを計算する数式2に用いる変化後周期指令T’として、レーザ加工装置10の試運転において実測されたパルスレーザの周期実測値Taを用いることである。すなわち、変化率演算部25は、モデルに基づいて変化後周期指令T’を算出するのではなく、記憶された周期実測値Taを用いて周期変化率Rを計算して、速度調整部26に送る。速度調整部26は、当該周期変化率を用いて、数式3に基づいて速度指令を調整する。周期実測値Taに測定誤差等がある場合、測定誤差等を低減する処理を行い、周期実測値Taに基づいて算出された値を用いて周期変化率Rを計算してもよい。
【0034】
周期実測値Taは、レーザ加工装置10の様々な性能制限を受けた値なので、それを用いて計算した周期変化率Rによって速度指令Fを調整すると、より正確に調整後パルス距離間隔D’を一定に制御することができる。
【0035】
数値制御装置20の各構成は、その動作を記述するプログラムと、当該プログラムを実行するCPUと、から構成してよい。また、数値制御装置20をコンピュータで構成し、そのコンピュータのCPUが、数値制御装置20の各構成の機能を記述したプログラムを実行することによって、各構成を実現してもよい。
【0036】
上記実施形態において、変化率演算部25とレーザ制御部11がそれぞれ周波数指令値fに基づいて周期指令Tを算出するとしたが、レーザ指令生成部24が周期指令Tを算出して、変化率演算部25とレーザ制御部11に送ることにしてもよい。
【0037】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載の範囲に限定されるものではない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることができることは当業者にとって明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。例えば、上記実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであるが、本発明は必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。なお、各実施形態の構成の一部について、他の構成によって置換することも可能であり、それを削除することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 レーザ加工装置
11 レーザ制御部
12 駆動軸制御部
13 駆動軸
14 レーザ加工ヘッド
20 数値制御装置
21 加工プログラム
22 プログラム解析部
23 速度指令生成部
24 レーザ指令生成部
25 変化率演算部
26 速度調整部
D 目標パルス距離間隔
D’ 調整後パルス距離間隔
f 周波数指令値
F 速度指令
F’ 調整後速度指令
R 周期変化率
S 周期指令の分解能
T 周期指令
T’ 変化後周期指令
Ta 周期実測値
図1
図2
図3