IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カルティエ クリエイション ステューディオ ソシエテ アノニムの特許一覧

<>
  • 特許-連結システムを有する装飾品 図1
  • 特許-連結システムを有する装飾品 図2
  • 特許-連結システムを有する装飾品 図3
  • 特許-連結システムを有する装飾品 図4
  • 特許-連結システムを有する装飾品 図5
  • 特許-連結システムを有する装飾品 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】連結システムを有する装飾品
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/00 20060101AFI20240918BHJP
   A44C 5/14 20060101ALI20240918BHJP
   F16B 39/32 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A44C5/00 501Z
A44C5/14 F
F16B39/32 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023535722
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2021070280
(87)【国際公開番号】W WO2022128176
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】20215801.0
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506059942
【氏名又は名称】カルティエ インターナショナル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ボレ-フェイゾー マルク
(72)【発明者】
【氏名】デュモン フランク
(72)【発明者】
【氏名】ジャニエ セバスチャン
【審査官】葛谷 光平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-044614(JP,U)
【文献】特開昭60-023617(JP,A)
【文献】特開平07-197925(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03590372(EP,A1)
【文献】米国特許第02553889(US,A)
【文献】米国特許第06102639(US,A)
【文献】特表2012-511671(JP,A)
【文献】特表2018-513319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/00-5/14
F16B 39/28-39/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者に装着されるために互いに結合されることを意図された少なくとも1つの部品(3、4)の少なくとも2つの部分(5、6)を含む装飾品(1)であって、前記装飾品(1)は、各部分(5、6)を通過し、螺合によって前記2つの部分(5、6)を互いに押圧するように意図されたねじ(8)・ナット(9)アセンブリを含む連結システム(7)を含むこと、並びに前記連結システム(7)は、前記装飾品(1)を使用者に装着及び取り外しをし続けるために、前記2つの部分(5、6)の外側に配置されたねじ(8)の頭部(18)を回転することによって前記ねじ(8)・ナット(9)アセンブリが螺合及び螺合解除され続けることができるが、所定のトルクを下回るときに前記ねじ(8)と前記ナット(9)との間の相対的な変位を弾性的に防止するように、可撓性安全装置(13)を含むことを特徴とする、装飾品(1)。
【請求項2】
前記可撓性安全装置(13)は、所定のトルクを下回るときに前記ねじ(8)と前記ナット(9)との間の相対的な変位が防止される複数の離散的な相対位置を提供するために、前記ねじ(8)と前記ナット(9)との間に取り付けられた少なくとも1つの歯部(15)・可撓性爪(16)アセンブリを含む請求項1に記載の装飾品(1)。
【請求項3】
前記歯部(15)は前記ナット(9)に形成され、前記可撓性爪(16)は前記ねじ(8)に一体になっている請求項2に記載の装飾品(1)。
【請求項4】
前記歯部(15)は、前記ナット(9)の雌ねじ山(10)と同軸に周方向に延在する請求項3に記載の装飾品(1)。
【請求項5】
前記可撓性爪(16)は、雄ねじ山(14)の延長部において前記ねじ(8)の自由端に取り付けられている請求項3又は請求項4に記載の装飾品(1)。
【請求項6】
前記ねじ(8)の前記自由端は、前記ねじ(8)を前記可撓性爪(16)と一体回転させるように、前記可撓性爪(16)を受け入れるための受け入れ手段(19)を含む、請求項5に記載の装飾品(1)。
【請求項7】
前記可撓性爪(16)は、前記受け入れ手段(19)内に取り付けられているように意図された複数のほぞ(27)を含む、請求項6に記載の装飾品(1)。
【請求項8】
前記複数のほぞ(27)は、応力下で前記複数のほぞ(27)を互いに近づけることができるように意図された複数の可撓性アーム(28)によって接続される、請求項7に記載の装飾品(1)。
【請求項9】
前記可撓性爪(16)は、前記歯部(15)と協働するように意図された径方向の停止部(29)を含む、請求項3から請求項8のいずれか1項に記載の装飾品(1)。
【請求項10】
前記歯部(15)は前記ねじ(8)に形成され、前記可撓性爪(16)は前記ナット(9)に一体になっている請求項2に記載の装飾品(1)。
【請求項11】
前記歯部(15)は、前記ねじ(8)の雄ねじ山(14)と同軸に周方向に延在する請求項10に記載の装飾品(1)。
【請求項12】
前記可撓性爪(16)は、前記ナット(9)の雌ねじ山(10)から突出して取り付けられている請求項10又は請求項11に記載の装飾品(1)。
【請求項13】
前記可撓性爪(16)は、前記ナット(9)と共に回転するように前記ナット(9)に取り付けられている請求項12に記載の装飾品(1)。
【請求項14】
各歯部(15)・可撓性爪(16)アセンブリは、複数の可撓性爪(16)と協働する歯部(15)を含む請求項2から請求項13のいずれか1項に記載の装飾品(1)。
【請求項15】
前記可撓性安全装置(13)は、10Nmm未満の所定のトルクを下回るときに、前記ねじ(8)の位置を螺合解除方向における前記ナット(9)の位置に対して弾性的に維持するように構成されている請求項1から請求項14のいずれか1項のいずれか1項に記載の装飾品(1)。
【請求項16】
前記可撓性安全装置(13)は、1Nmm超の所定のトルクを上回るときに、螺合方向における前記ナット(9)の変位に対する前記ねじ(8)の変位を可能にするように構成されている請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の装飾品(1)。
【請求項17】
前記可撓性安全装置(13)の螺合方向の前記所定のトルクは、螺合解除方向の前記所定のトルクと等しい請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の装飾品(1)。
【請求項18】
前記可撓性安全装置(13)は、螺合方向及び/又は螺合解除方向において前記ねじ(8)・ナット(9)アセンブリの異なる螺合貫通量で作用する請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の装飾品(1)。
【請求項19】
金又は白金等の少なくとも1種の貴金属をベースとする材料から全体的に又は部分的に作製されている請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の装飾品(1)。
【請求項20】
ブレスレットである請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の装飾品(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジュエリー物品等の装飾品のすべて又は一部を形成する少なくとも1つの部品の2つの部分、特に、好ましくは対応する形状を有するそのような部分を連結するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特に装身具(ジュエリー)の分野では、例えば、ネックレス又はブレスレットを閉じるために、ねじ・ナットアセンブリを使用することができる。そのような用途では、装身具を清掃するために、又は定期的に交換するために、使用者から装身具を取り除くために、ねじ・ナットアセンブリを何度も螺合する(ねじ込む)こと及び螺合解除する(螺合を緩める)ことが可能でなければならない。
【0003】
この可逆的な閉鎖は、不適時に螺合解除すること、従って装身具の全部又は一部の偶発的な紛失をもたらす可能性があることが観察されている。加えて、使用される材料が、例えば、金等の貴金属から作製されている場合、このカテゴリの材料の機械的特性は、螺合解除に向かう傾向がより高い(弾性限界、ヤング率、クリープ、硬度等)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、例えばジュエリー物品等の装飾品を形成する少なくとも1つの部品の2つの部分を連結するためのシステムを備えた装飾品であって、このシステムの各ねじ・ナットアセンブリは、定期的に螺合及び螺合解除され続けることができるが、しかしながら、使用者が上記装飾品を形成する部品の全部又は一部を気付かずに失うことを防ぐために、ねじ・ナットアセンブリの偶発的な螺合解除を回避、又は少なくとも制限する装飾品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的のために、本発明は、使用者に装着されるために互いに結合されることを意図された少なくとも1つの部品の少なくとも2つの部分を含む装飾品であって、この装飾品は、各部分を通過し、螺合によって上記2つの部分を互いに対して押圧することが意図されたねじ・ナットアセンブリを含む連結(インターロック)システムを含むこと、並びにこの連結システムは、ねじ・ナットアセンブリが螺合及び螺合解除され続けることができるが、所定のトルクを下回るときにねじとナットとの間の相対的な変位を弾性的に防止するように、可撓性安全装置を含むことを特徴とする装飾品に関する。
【0006】
本発明によれば有利には、可撓性安全装置は、使用者の動きがねじ・ナットアセンブリを偶発的に螺合解除することを防止する。有利には、この可撓性安全装置は、常に可逆的閉鎖を可能にし、加えて、それゆえ有利には、ねじは、使用者が実際に望むときにのみ、例えばねじ回し等のツールを使用して螺合解除することができる。
【0007】
それゆえ、各部を充分な力で互いに押圧することがあまり重要でなくなり、これは、装飾品を紛失することを恐れて過剰のトルクを働かせてナットの雌ねじ山(taraudage)及び/又はねじの雄ねじ山(filet)を損傷することを回避する。さらには、金等の貴金属の場合、そのような過剰のトルクは、ねじの頭部(ヘッド)を損傷するリスクも増加させ、又はねじ回しが偶発的にねじの頭部から滑り出る場合、ねじの周囲の領域をマーキングする(傷付ける)リスクさえも増加させる。
【0008】
本発明は、以下の任意選択の特徴の1つ以上を、単独で又は組み合わせてさらに含んでもよい。
【0009】
上記可撓性安全装置は、好ましくは、所定のトルクを下回るときにねじとナットとの間の相対的な変位が防止される複数の離散的な(不連続な)相対位置を提供するために、ねじとナットとの間に取り付けられた少なくとも1つの歯部・可撓性爪(フィンガー、doigt)アセンブリを含む。螺合及び螺合解除する時に、使用者は、連続する安定した位置を感じ、使用者がねじに誘導される回転振幅をより認識することができるようになることも理解される。
【0010】
代替形態によれば、歯部はナットに形成され、可撓性爪はねじに一体になっており、又は逆に、歯部はねじに形成され、可撓性爪はナットに一体になっている。
【0011】
代替形態の第1部によれば、歯部は、好ましくは、ナットの雌ねじ山と同軸に周方向に延在し、可撓性爪は、雄ねじ山の延長部においてねじの自由端に取り付けられている。より正確には、可撓性爪は、例えば、ねじと共に回転するようにねじに取り付けることができる。
【0012】
代替形態の第2部によれば、歯部は、好ましくは、ねじの雄ねじ山と同軸に周方向に延在し、可撓性爪は、ナットの雌ねじ山から突出して取り付けられている。より正確には、可撓性爪は、例えば、ナットと共に回転するようにナットに取り付けることができる。
【0013】
各歯部・可撓性爪アセンブリは、歯部の複数の歯にわたってアセンブリを弾性的にブロックするように複数の可撓性爪と同時に協働する単一の歯部を含んでもよい。歯部・可撓性爪アセンブリの幾何学的形状に依存して、螺合方向の所定のトルクは、螺合解除方向の所定のトルクよりも小さいか、等しいか、又は大きいことが可能である。好ましくは、螺合方向の所定のトルクは、螺合解除方向の所定のトルクよりも小さい。
【0014】
上記可撓性安全装置は、所定のトルクを下回るときに、ねじの位置を螺合解除方向におけるナットの位置に対して弾性的に維持するように構成することができる。螺合解除方向の所定のトルクは、10Nmm未満、好ましくは8Nmm未満、さらにより好ましくは5Nmm未満、言い換えれば、例えば特に9Nmm、8Nmm、7Nmm、6Nmm、5Nmm、4Nmm、3Nmm、2Nmm又は1Nmmに等しくすることができる。
【0015】
上記可撓性安全装置は、所定のトルクを上回るときに、螺合方向におけるナットの変位に対するねじの変位を可能にするように構成することができる。螺合方向の所定のトルクは、1Nmm超、好ましくは3Nmm超、さらにより好ましくは4Nmm超、言い換えれば、例えば特に1.5Nmm、2Nmm、2.5Nmm、3Nmm、3.5Nmm、4Nmm、4.5Nmm、5Nmm、5.5Nmm、6Nmm、6.5Nmm又は7Nmmに等しくすることができる。
【0016】
上記可撓性安全装置の螺合方向の所定のトルクは、上記2つの部分を互いに対して締め付ける又は緩めるための同じ又は同様の力を提供するために、螺合解除方向のトルクと等しくすることができる。
【0017】
上記可撓性安全装置は、螺合方向及び/又は螺合解除方向においてねじ・ナットアセンブリの異なる(様々な)螺合貫通量(penetration)で作用することができ、これにより、使用者は、装飾品を形成する部品の全部又は一部を失うリスクなしに、上記2つの部分が互いに押圧される(押し付けられる)力を選択することができる。
【0018】
上記連結システム及び/又は装飾品は、少なくとも1種の貴金属をベースとする材料から全体的又は部分的に作製することができる。従って、貴金属は金又は白金であることができる。非限定的な例として、ねじ及び/若しくはナット並びに/又は歯部及び/若しくは可撓性爪は、貴金属(又はその合金の1つ)をベースとする材料から作製することができる。
【0019】
最後に、当該装飾品は、ブレスレット、例えば一片の装身具類又はファインジュエリーであることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照して、例として与えられ、決して限定するものではない以下の説明を読むことによって明らかになるであろう。
【0021】
図1図1は、本発明に係る連結システムを含むことができる装飾品の模式図である。
図2図2は、本発明に係る連結システムによってブロックされる前の部品の2つの部分の斜視図である。
図3図3は、連結システムと、互いに押圧される2つの部分との分解図である(システムが組み立てられるとき、様々な構成要素の位置は必ずしもそれぞれの位置に対応しない)。
図4図4は、図1の面IV-IVに沿った断面図である。
図5図5は、本発明に係る可撓性安全装置の歯部・可撓性爪アセンブリの斜視図である。
図6図6は、2つの部分を互いに押圧する本発明に係る連結システムを有する装飾品の部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
様々な図において、同一又は類似の要素は同じ参照符号を有し、場合によっては添え字が付加されている。それゆえ、それらの構造及び機能は体系的に説明されない。
【0023】
本明細書の残りの部分では、向きは図の向きである。特に、用語「上」、「下」、「左」、「右」、「上方」、「下方」、「前方」及び「後方」は、概して、図の表現の方向に関して使用されている。
【0024】
「皮革製品」は、ブレスレット、バッグ、ベルト、鞍(例えば、乗馬用のもの)、馬具(例えば、乗馬用のもの)等、皮革をベースとするすべての種類の物品を意味する。
【0025】
「織物物品」は、織物、バッグ、衣服、ブレスレット、ベルト、パラシュート等のテキスタイル材料をベースとするあらゆる種類の物品を意味する。
【0026】
「ジュエリー物品」は、ブレスレット、ネックレス、ベルト等の非貴金属の装飾石を含んでもよいすべての種類の装飾品又は装飾用物品を意味する。
【0027】
「ファインジュエリー物品」は、ブレスレット、ネックレス、ベルト等の貴石又は半貴石を含んでもよいすべての種類の装飾品又は装飾用物品を意味する。
【0028】
「時計物品」は、クロック(置時計、掛時計)、小型クロック、ウォッチ(腕時計、懐中時計)等の、時間を測定又は計測するためのあらゆる種類の計器を意味する。
【0029】
「…をベースとする」は、所与の要素の総質量又は総重量の少なくとも50%を形成する材料又は合金を意味する。
【0030】
本発明は、装飾タイプの物品1、例えばジュエリー物品又はファインジュエリー物品を形成する少なくとも1つの部品3、4の2つの部分5、6を連結するためのシステム7を提供することを目的としている。それゆえ、物品1は1つ以上の部品を含むことが理解される。図1に示す例では、装飾品1は、2つの部品3、4から形成されるジュエリー物品のブレスレットを形成し、各部品は貴金属製のハーフリングの形態にある。本発明によれば、部品3、4の各対の部分5、6は、連結システム7を含むことができる。図1に示す例では、1つの対のみが連結システム7を含み、第2の対は、好ましくはピボット型接続部を有する関節部を含む。
【0031】
従って、少なくとも2つの部分5、6は、装飾品1を使用者に装着されるために、連結システム7によって互いに結合されることが意図されている。より正確には、連結システム7は、図4及び図6に示すように、螺合によって2つの部分5、6を互いに押圧するように意図された少なくとも1つのねじ8・ナット9アセンブリを含む。図2図6に示す例では、部分5、6は、部分5、6の間の接触付近を含めて2つの部品3、4が互いに嵌合した一定断面のリングを形成することを意図した相補的な形状を有することが分かる。
【0032】
各ねじ8・ナット9アセンブリは、各部分5、6を通過し、言い換えれば特に、ねじ8は、部分5、6の穴11、12を通過し、ナット9は、部分5の穴11を横切ることができず、従って、部分5、6は、互いに対して押圧されることができる。図4に示す例では、ねじ8及びナット9を部品4の厚さに螺合するために、すなわち、ねじ8の回転軸Xに沿った連結システム7の厚さを低減するために、ナット9が部分6の穴12を通過することが分かる。
【0033】
本発明によれば有利には、連結システム7は、所定のトルクを下回るときにねじ8とナット9との間の相対的な変位を弾性的に防止する可撓性安全装置13を含む。
【0034】
可撓性安全装置13は、特に使用者の動きがねじ8・ナット9アセンブリを偶発的に螺合解除することを防止する。より正確には、可撓性安全装置13は、10Nmm未満、好ましくは8Nmm未満、さらにより好ましくは5Nmm未満、言い換えれば、例えば特に9Nmm、8Nmm、7Nmm、6Nmm、5Nmm、4Nmm、3Nmm、2Nmm又は1Nmmに等しい所定のトルクを下回るときに、ねじ8の位置を螺合解除方向におけるナット9の位置に対して弾性的に維持するために使用することができる。加えて、1Nmm超、好ましくは3Nmm超、さらにより好ましくは4Nmm超、言い換えれば、例えば特に1.5Nmm、2Nmm、2.5Nmm、3Nmm、3.5Nmm、4Nmm、4.5Nmm、5Nmm、5.5Nmm、6Nmm、6.5Nmm又は7Nmmに等しい所定のトルクを上回るときに、可撓性安全装置は、螺合方向におけるナット9の変位に対するねじ8の変位を可能にする。
【0035】
それゆえ、螺合方向の所定のトルクは、螺合解除方向の所定のトルクよりも小さいことが好ましいことがわかる。しかしながら、所定のトルクは、螺合及び螺合解除について同じであってもよく、又は螺合方向の所定のトルクは、螺合解除方向の所定のトルクよりも大きくてもよい。それゆえ、ねじ8は、有利には、使用者が実際に望むときにのみ、例えばねじ回し(図示せず)等の適切なツールを使用して螺合解除ことができる。本発明によれば、可撓性安全装置13は、螺合方向及び/又は螺合解除方向においてねじ8・ナット9アセンブリの異なる螺合貫通量において作用し、これにより、使用者は、装飾品を形成する部品の全部又は一部を失うリスクなしに、2つの部分5、6が互いに押圧される力を選択することができる。
【0036】
ねじ8及び/又はナット9は、部品3、4と同様に、金(若しくはその合金の1つ)及び/又は白金(若しくはその合金の1つ)をベースとするもの等の貴金属材料(貴重材料)で作ることができる。好ましくは、ねじ8及びナット9は、少なくとも1種の貴金属をベースとする材料から作製され、さらにより好ましくは、部品3、4と同じ組成を有する少なくとも1種の貴金属をベースとする材料から作製されている。
【0037】
それゆえ、ナット9の位置に対するねじ8の位置が可撓性安全装置13によって有利に維持されることになるので、部分5、6を充分な力で互いに押圧することはあまり重要でなくなることが理解される。例えば、装飾品1を紛失することを恐れて過剰すぎるとも思われる特定のトルクを及ぼすという必要がないことによって、ナット9の雌ねじ山及び/又はねじ8の雄ねじ山への損傷は回避することができるように直ちに思われる。加えて、金等の貴金属の場合、そのような過剰のトルクが回避されるので、ねじ回しが偶発的にねじ8の頭部18から滑り出る場合に、ねじ8の頭部18を損傷するリスク、又はねじ8の周囲の部分5、6をマーキングするリスクが低減される。
【0038】
可撓性安全装置13は、好ましくは、複数の離散的な相対位置を提供して、その離散的な相対位置について所定のトルクを下回るときにねじ8とナット9との間で相対的な変位が防止されるように、ねじ8とナット9との間に取り付けられた少なくとも1つの歯部15・可撓性爪16アセンブリを含む。螺合及び螺合解除時に、使用者は、連続する安定した位置を感じ、ねじ8上に誘導されるX軸に沿った回転振幅をより認識することが可能になることも理解される。歯部15・可撓性爪16アセンブリの幾何学的形状に応じて、螺合方向の所定のトルクは、螺合解除方向の所定のトルクよりも小さいか、等しいか、又は大きいことが可能である。好ましくは、螺合方向の所定のトルクは、2つの部分5、6を互いに対して締め付ける又は緩めるための同じ又は同様の力を提供するために、螺合解除方向の所定のトルクに等しい。
【0039】
加えて、歯部15及び/又は可撓性爪16は、好ましくは、金(若しくはその合金の1つ)及び/又は白金(若しくはその合金の1つ)をベースとするもの等の貴金属材料で作られる。ねじ8、ナット9、歯部15及び可撓性爪16の間で、貴金属材料と非貴金属材料とのすべての組み合わせも可能である。例えば、非限定的に、ねじ8のみが貴金属から作製されてもよいし、又は上述の構成要素のすべてが貴金属から作製されてもよい。
【0040】
代替形態によれば、歯部15はナット9に形成され、可撓性爪16はねじ8と一体になっているか、又は逆に、歯部15はねじ8に形成され、可撓性爪16はナット9と一体になっている。
【0041】
代替形態の第1部によれば、歯部15は、好ましくは、ナット9の雌ねじ山と同軸に形成され、可撓性爪16は、雄ねじ山の延長部においてねじ8の自由端に取り付けられている。より正確には、可撓性爪16は、例えば、ねじ8と共に回転するようにねじ8に取り付けることができる。
【0042】
代替形態の第2部によれば、歯部15は、好ましくは、ねじ8の雄ねじ山と同軸に形成され、可撓性爪16は、ナット9の雌ねじ山から突出して取り付けられている。より正確には、可撓性爪16は、例えばナット9と共に回転するようにナット9に取り付けることができる。
【0043】
本発明をより明確に示すために、代替形態の第1部を図2図6に示す。従って、図5の例では、ナット9は略環状の形状を有し、その外径は雄ねじ山17を含む。ナット9は、第1の内径に、ねじ8の雄ねじ山14と結合するように意図された雌ねじ山10をさらに含み、回転軸Xに沿った延長部には、第1の内径よりも大きい第2の内径に、可撓性爪16と結合するように意図された歯部15を含む。
【0044】
歯部15の(X軸に沿った)軸方向幅は、可撓性安全装置13が、螺合方向及び/又は螺合解除方向においてねじ8・ナット9アセンブリの異なる螺合貫通量で作用することを可能にする。従って、可撓性爪16は、ねじ8の端部で一体になっている(固定されている)ので、歯部15に対して軸方向に「前方」又は「後方」に移動することになる。好ましくは、歯部15の(X軸に沿った)軸方向幅は、図4及び図6に示されているように2つの部分5、6が互いに対して押圧される位置と、以下で説明するようにねじ8が螺合解除されてナット9から離れることができる限界となる位置との間で、ねじ8・ナット9アセンブリの螺合方向及び/又は螺合解除方向においてすべての螺合貫通量で可撓性安全装置13を作用させるのに充分大きい。
【0045】
ねじ8は、部分5を部分6に近づけるための部分5に対する停止部(止め)として作用するように意図された頭部18を含む。ねじ8は、回転軸Xに沿った延長部において、雄ねじ山14と、好ましくは頭部18の反対側の端部に、ねじ8を可撓性爪16と一体回転させるように可撓性爪16を受け入れるための受け入れ手段19を含む。図2図6に示す例では、受け入れ手段19は、2つの略上下方向の(vertical)溝を含む。明らかに、受け入れ手段19は、特に可撓性爪16を受け入れる部分の形状に応じて異なってもよい。
【0046】
図3及び図4に示すように、可撓性爪16が歯部15の略円筒形の容積の内側に留まることを保証するために、ねじ8に対して可撓性爪16を保持するための手段21も設けられる。図6に示される例における保持手段21は、雄ねじ山14と同軸にねじ8に雌ねじ山22を含み、これにピン25が結合される。ピン25は、回転軸Xに沿った可撓性爪16の移動を制限することによってピン25のプレート24が歯部15の略円筒形の容積の内側に留まるように、雌ねじ山22と係合するように意図された雄ねじ山23を含む。ピン25をねじ8に螺合するのを容易にするために、プレート24の周囲に2つのノッチ(切り欠き)が形成されていることが分かる。明らかに、受け入れ手段21は、特に可撓性爪16を受け入れる部分の形状に応じて異なってもよい。
【0047】
図2図6に示す例では、可撓性爪16は、受け入れ手段19内に、典型的には、ねじ8の端部の実質的に上下方向の溝によって取り付けられているように意図された2つのほぞ27を含む実質的に環状の部分によって形成される。2つのほぞ27は、特に可撓性爪16の停止部29を歯部15から離れるように移動させることができる回転軸Xに向かう変位によって、応力下でほぞ27を互いに近づけることができるように意図された2つの半環状の可撓性アーム28によって互いに接続される。図5及び図6に示すように、使用されるほぞ27及び付随して関連する受け入れ手段19は、1つのアセンブリ構成のみが可能であるように、異なる形状(幾何学的形状、寸法等)であってもよい。その結果、ほぞ27は、組み立て中にフールプルーフ装置(日本語の用語「ポカヨケ」によって知られているときもある)として作用することができる。
【0048】
明らかに、可撓性爪16は、特に歯部15の形状に応じて異なってもよい。従って、可撓性爪16は、図5の実質的に環状の部分よりも単純であることができる。従って、可撓性爪16はねじ8の端部と一体に作ることができ(もはや、ほぞ27又は受け入れ手段19を必要としない)、実質的に1つの可撓性アーム28及び時計のジャンパのような停止部29のみを含むことが可能である。一体に作られることなく、可撓性爪16は、単一の可撓性アーム28がストッパ29を一端に備える(ほぞ27及び受け入れ手段19を必要とする)略C字形であってもよい。逆に、可撓性爪16は、図5の実質的に環状の部分よりも複雑であってもよい。
【0049】
図2図6に示す例では、カバー20が、連結システム7との接触中に使用者を保護するために設けられていることも分かる。従って、図3及び図4に示すように、カバー20は、ナット9の雄ねじ山17と結合するように意図された雌ねじ山26を含んでもよい。カバー20は、図1図4に示すように、ボウルの形状の中実の(開口部等がない)部品とすることができる。しかしながら、明らかに、カバー20は、本発明の範囲から逸脱しない範囲で、使用者を保護し続けながら、歯部15・可撓性爪16アセンブリ等の連結システム7の少なくとも一部を見ることができるように、開口部を備えることができる。最後に、連結システム7は、本発明の範囲から逸脱しない範囲で、ナット9上にカバー20又は雄ねじ山17を有さなくてもよい。
【0050】
その結果、図2の位置では、好ましくは、ねじ8はナット9から取り外すことができず、言い換えれば、ナット9からさらに離れることができる限界となる停止部(図示せず)と協働する。この位置において、例えば、装飾品1を使用者の手首の周りに置いた後、使用者は、2つの部分5、6を一緒に動かして、部分5を部分6とねじ8の頭部18との間で、穴11によって案内され、好ましくは滑らせることによって、接合する。次いで、使用者は、本発明によれば有利には、例えば頭部18に形成されたノッチ等の形状に係合されたねじ回しを使用してねじ8を螺合することができる。使用者が可撓性安全装置13の所定のトルクよりも大きい力を加えるとすぐに、連結システム7を螺合するか又は螺合解除して、部分5、6をそれぞれ互いに押圧するか又は反対にそれらを互いに離れるように移動させるように、ねじ8はナット9に対して移動されることが可能である。
【0051】
螺合及び螺合解除時に、歯部15の第1の歯が可撓性爪16を通り過ぎるとすぐに、使用者は、連続する安定した位置を感じ、使用者がねじ8に誘導される回転振幅をより認識できるようになる。使用者は、部分5、6をあまり大きい力で一緒に押圧する必要性を感じず、これは、ナット9の雌ねじ山10及び/又はねじ8の雄ねじ山14だけでなく、頭部18及び部分5、6を損傷することも回避する。
【0052】
最後に、本発明によれば有利には、可撓性安全装置13は、各ねじ8・ナット9アセンブリが定期的に螺合及び螺合解除され続けることを可能にするが、使用者が装飾品1の全部又は一部を気付かずに失うことを防ぐために、ねじ8・ナット9アセンブリのあらゆる偶発的な螺合解除を回避する。
【0053】
本発明は、提示された実施形態及び変形形態に限定されず、他の実施形態及び変形形態は当業者には明らかであろう。従って、実施形態及び変形例は、本発明の範囲から逸脱しない範囲で、ともに組み合わせることができる。非限定的な例として、可撓性安全装置13は、いくつかの歯部15・可撓性爪16アセンブリを含むことができる。
【0054】
加えて、特に、各歯部15・可撓性爪16アセンブリは、歯部15の複数の歯にわたってアセンブリを弾性的にブロックするように複数の可撓性爪16又は複数の停止部29と同時に協働する単一の歯部15を含むことができる。
【0055】
さらには、本発明は、装飾ジュエリー物品又はファインジュエリー物品1に限定されない。従って、本発明は、例えば、時計製造、皮革製品、食器、銃器又は筆記用具等の他の分野にも適用できる。従って、本発明に係る装飾品1は、ジュエリー物品又はファインジュエリー物品を形成する代わりに、例えば、時計製品、織物製品又は皮革製品を形成することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6