(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】演算装置および射出成形システム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240918BHJP
B29C 45/42 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/42
(21)【出願番号】P 2023543489
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2021030804
(87)【国際公開番号】W WO2023026324
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2024-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】関 直朗
(72)【発明者】
【氏名】山脇 拓人
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-007471(JP,A)
【文献】特開2003-291186(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 45/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動金型(30)からエジェクタピン(58)を突出する突出動作を実行させる射出成形機(12)に用いられるパラメータを演算する演算装置(72)であって、
前記突出動作の完了後、取出装置(14)が前記可動金型から成形品を取り出すまでの間に前記取出装置で生じる負荷を取得する負荷取得部(80)と、
取得された前記負荷に基づいて、前記突出動作が終了するときの、前記エジェクタピンを型閉じ方向(DA)に駆動するエジェクタロッド(54)の駆動終了位置を決定する決定部(82、821)と、
を備える、演算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の演算装置であって、
前記決定部(82)は、取得された前記負荷の最大値が閾値未満である場合に、前記突出動作による前記エジェクタピンの移動距離が短くなるように、前記駆動終了位置を決定する、演算装置。
【請求項3】
請求項2に記載の演算装置であって、
前記決定部は、デフォルト設定された前記移動距離が所定量ずつ徐々に短くなるように、前記駆動終了位置を決定する、演算装置。
【請求項4】
請求項3に記載の演算装置であって、
前記負荷の最大値が前記閾値以上になった場合、前記決定部は、1つ前に決定した前記駆動終了位置を、次に決定すべき前記駆動終了位置とする、演算装置。
【請求項5】
請求項1に記載の演算装置であって、
前記決定部(821)は、取得された前記負荷が閾値を超えた場合に、前記突出動作による前記エジェクタピンの移動距離が長くなるように、前記駆動終了位置を決定する、演算装置。
【請求項6】
請求項5に記載の演算装置であって、
前記決定部は、デフォルト設定された前記移動距離が所定量ずつ徐々に長くなるように、前記駆動終了位置を決定する、演算装置。
【請求項7】
請求項6に記載の演算装置であって、
前記負荷の最大値が前記閾値未満になった場合、前記決定部は、現在の前記駆動終了位置を、次に決定すべき前記駆動終了位置とする、演算装置。
【請求項8】
請求項2~7のいずれか1項に記載の演算装置であって、
ユーザの操作に応じて、前記閾値を変更する変更部(92)
を備える、演算装置。
【請求項9】
請求項3に従属する請求項8に記載の演算装置であって、
前記変更部は、ユーザの操作に応じて、前記所定量を変更する、演算装置。
【請求項10】
請求項6に従属する請求項8に記載の演算装置であって、
前記変更部は、ユーザの操作に応じて、前記所定量を変更する、演算装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の演算装置であって、
前記決定部(82、821)は、前記射出成形機で繰り返し実行されるサイクルごとに、前記駆動終了位置を決定する、演算装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の演算装置であって、
決定された前記駆動終了位置となるように、前記エジェクタロッドを駆動するための駆動力を発生する駆動源の設定を変更する設定変更部(84)
を備える、演算装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の演算装置であって、
前記演算装置は、前記射出成形機の制御装置(26)に備えられる、演算装置。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の演算装置であって、
前記演算装置は、前記取出装置の制御装置(98)に備えられる、演算装置。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の演算装置であって、
前記演算装置は、前記射出成形機および前記取出装置に接続された外部機器(100)の制御装置(102)に備えられる、演算装置。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の演算装置と、前記射出成形機と、前記取出装置と、を備える射出成形システム(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に用いられるパラメータの演算に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、金型から成形品を突出させて金型から成形品を取り出す。特開2021-37645号公報には、可動金型から成形品を取り出すためのエジェクタ機構を有する射出成形機が開示されている。このエジェクタ機構では、エジェクタロッドの外周面に形成されるボールねじがモータにより回転され、この回転に応じて、ボールねじに螺合するボールねじナットと、ボールねじナットに固定されたエジェクタ板とが移動する。これにより、エジェクタ板に取り付けられたエジェクタピンが金型から突出し、金型から成形品が取り出される。
【発明の概要】
【0003】
ところで、エジェクタピンを金型から突出する突出動作の完了時におけるエジェクタピンの位置を設定する場合がある。この場合、エジェクタピンが成形品に接触する様子を作業者が確認する必要がある。また、金型から成形品を確実に剥がすという要請があるため、突出動作の完了時に金型から突出するエジェクタピンの突出量が大きくなるように、突出動作の完了時のエジェクタピン位置を決定する傾向にある。その結果、1つの成形品の製造に要する射出成形機のサイクルが長期化するという課題がある。
【0004】
本発明は、上述した課題を解決することを目的とする。
【0005】
本発明の第1の態様は、可動金型からエジェクタピンを突出する突出動作を実行させる射出成形機に用いられるパラメータを演算する演算装置であって、前記突出動作の完了後、取出装置が前記可動金型から成形品を取り出すまでの間に前記取出装置で生じる負荷を取得する負荷取得部と、取得された前記負荷に基づいて、前記突出動作が終了するときの、前記エジェクタピンを型閉じ方向に駆動するエジェクタロッドの駆動終了位置を決定する決定部と、を備える。
【0006】
本発明の第2の態様は、上記の演算装置と、前記射出成形機と、前記取出装置と、を備える射出成形システムである。
【0007】
本発明の態様によれば、エジェクタピンが成形品に接触する様子を作業者が確認していなくても、突出動作の完了時に金型から突出するエジェクタピンの突出量を小さくすることができる。その結果、射出成形機のサイクルが長期化することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、射出成形システムの構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、突出装置の構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、エジェクタピンが突き出ている様子を示す図である。
【
図4】
図4は、成形品が取り出される様子を示す図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態における射出成形機の一部の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態における演算装置の演算処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2実施形態における射出成形機の一部の構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態における演算装置の演算処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、変形例1の演算装置を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、変形例2の射出成形システムを示すブロック図である。
【
図11】
図11は、変形例3の射出成形システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、射出成形システム10の構成を示す模式図である。射出成形機12は、成形品を成形する機器である。射出成形機12は、水平方向に延在する設置面上に設置可能な横型射出成形機であってもよいし、水平と交差する方向に延在する設置面上に設置可能な縦型射出成形機であってもよい。
図1は、射出成形機12が横型射出成形機である場合の例を示している。射出成形システム10は、射出成形機12と、取出装置14とを備える。
【0010】
射出成形機12は、成形品を成形する機器である。射出成形機12は、サイクルごとに成形品を繰り返し成形する。1つのサイクルにおいて、射出成形機12は、型閉じ動作、射出動作、保圧動作、計量動作、型開き動作および突出動作を実行する。
【0011】
型閉じ動作は、金型16を閉じる動作である。射出動作は、金型16のキャビティに成形材料を射出する動作である。保圧動作は、金型16のキャビティに射出された成形材料に圧力を付与する動作である。計量動作は、次の成形サイクルの準備として成形材料を計量する動作である。型開き動作は、金型16を開く動作である。突出動作は、金型16から成形品を突出する動作である。
【0012】
取出装置14は、成形品を把持し、把持した成形品を取り出す装置である。取出装置14は、把持動作と、取出動作とを実行する。把持動作は、成形品を把持する動作である。把持動作は、射出成形機12の突出動作よりも後に実行されてもよく、射出成形機12の突出動作よりも前に実行されてもよい。本実施形態では、把持動作は、射出成形機12の突出動作よりも前に実行される。取出動作は、金型16から成形品を取り出す動作である。取出動作は、射出成形機12の突出動作よりも後に実行される。
【0013】
本実施形態では、取出装置14として、ロボットを用いるが、ロボットに限定されない。取出装置14は、把持動作を実行する把持装置18を有する。把持装置18は、エンドエフェクタとも称される。把持装置18は、指または爪等を用いて成形品をチャックする装置であってもよいし、負圧または磁力等を用いて成形品を吸着する装置であってもよい。
【0014】
射出成形機12は、金型16と、型締装置20と、射出装置22と、突出装置24と、制御装置26とを有する。
【0015】
金型16は、成形品を成形するための型枠である。金型16は、固定金型28と可動金型30とを有する。固定金型28および可動金型30は、型締装置20の固定プラテン32と可動プラテン34との間に配置される。固定金型28は、可動プラテン34に向く固定プラテン32の面上に設けられる。可動金型30は、固定プラテン32に向く可動プラテン34の面上に設けられる。
【0016】
型締装置20は、型閉じ動作および型開き動作を実行する装置である。型締装置20は、固定プラテン32と、可動プラテン34と、リアプラテン36と、複数のタイバー38とを有する。
【0017】
固定プラテン32とリアプラテン36とは、射出成形機12の機台40に間隔をあけて設置される。固定プラテン32とリアプラテン36との間には、複数のタイバー38が配置される。複数のタイバー38は、互いに間隔をあけて略平行に配置される。複数のタイバー38の各々の一端部は固定プラテン32に取り付けられ、複数のタイバー38の各々の他端部はリアプラテン36に取り付けられる。複数のタイバー38の各々は、可動プラテン34を貫通する。
【0018】
可動プラテン34は、固定プラテン32とリアプラテン36との間に配置される。可動プラテン34は、ガイドレール42をスライド可能なスライド部44に設置される。ガイドレール42は、タイバー38と略平行な状態で、射出成形機12の機台40に設置される。可動プラテン34は、スライド部44のスライドに応じて、型閉じ方向DAおよび型開き方向DBの双方向へ移動可能である。
【0019】
型締装置20が型閉じ動作を実行すると、可動プラテン34は、駆動源から伝達される駆動力によって型閉じ方向DAに移動する。この可動プラテン34の移動に応じて、可動金型30は、固定金型28に押し付けられることで金型16に型締力が付与される。一方、型締装置20が型開き動作を実行すると、可動プラテン34は、駆動源から伝達される駆動力によって型開き方向DBに移動する。この可動プラテン34の移動に応じて、可動金型30は、固定金型28から離間する。駆動源は、モータであってもよいし、コンプレッサーであってもよい。コンプレッサーは、油圧式コンプレッサーであってもよいし、空圧式コンプレッサーであってもよい。本実施形態では、駆動源がモータである場合について説明する。
【0020】
射出装置22は、射出動作、保圧動作および計量動作を実行する装置である。射出装置22は、インラインスクリュ式の射出装置であってもよいし、プランジャ式の射出装置であってもよい。
図1は、射出装置22がインラインスクリュ式の射出装置である場合の例を示している。射出装置22は、ノズル46と、シリンダ48と、スクリュー50と、ホッパ52と、を有する。
【0021】
ノズル46は、金型16に向くシリンダ48の端部に取り付けられる。ノズル46は、アダプタを介して、シリンダ48の端部に取り付けられてもよい。ノズル46は、シリンダ48の内部と連通する。シリンダ48の内部には、スクリュー50が挿通される。シリンダ48には、ホッパ52が接続される。ホッパ52からシリンダ48の内部に成形材料が供給される。
【0022】
シリンダ48およびスクリュー50は、金型16に向かって延びている。スクリュー50は、回転可能である。また、スクリュー50は、ノズル46に向かって前進し、かつ、ノズル46から後退可能である。射出装置22が射出動作を実行すると、スクリュー50は、シリンダ48内で非回転の状態で前進する。射出装置22が保圧動作を実行すると、スクリュー50に背圧が付与される。この場合、スクリュー50は、静止していてもよい。射出装置22が計量動作を実行すると、スクリュー50は、シリンダ48内で回転しながら後退する。なお、スクリュー50は、非回転の状態で後退してもよい。
【0023】
突出装置24は、突出動作を実行する装置である。
図2は、突出装置24の構成を示す模式図である。突出装置24は、エジェクタロッド54と、エジェクタプレート56と、エジェクタピン58とを有する。エジェクタロッド54の数は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。エジェクタピン58の数は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。
図2の例では、エジェクタロッド54の数が1つであり、エジェクタピン58の数が2つである場合が示されている。2つのエジェクタピン58は同じ構成であるため、以下、1つのエジェクタピン58のみに関して説明する。
【0024】
エジェクタロッド54およびエジェクタプレート56は、可動金型30の内部に形成された空間に配置される。エジェクタロッド54およびエジェクタプレート56は、型閉じ方向DAおよび型開き方向DBの双方向へ移動可能である。
【0025】
エジェクタピン58は、固定金型28に向くエジェクタプレート56の面から型閉じ方向DAに向かって延びている。エジェクタピン58は、可動金型30の型閉じ方向DAに沿って形成されたピン孔60に挿通される。エジェクタピン58は、エジェクタプレート56に固定されており、エジェクタプレート56と一緒に型閉じ方向DAまたは型開き方向DBに移動する(
図2および
図3参照)。
【0026】
突出動作の開始時におけるエジェクタピン58の先端は、可動金型30のピン孔60に位置する(
図2参照)。突出動作完了時におけるエジェクタピン58の先端は、可動金型30から突出する。つまり、突出動作の開始時から完了時までの間に、エジェクタピン58の先端は、可動金型30のキャビティ面61から固定金型28に向けて突出する(
図3参照)。なお、可動金型30のキャビティ面61とは、金型16のキャビティを構成する可動金型30の面のことをいう。
【0027】
突出装置24が突出動作を実行すると、エジェクタロッド54は、駆動源から伝達される駆動力によって型閉じ方向DAに移動し、エジェクタプレート56を押す。エジェクタプレート56は、エジェクタロッド54に押されて型閉じ方向DAに移動する。これにより、エジェクタプレート56に固定されるエジェクタピン58が可動金型30から突出し、成形品が可動金型30から離れる(
図4参照)。駆動源は、モータであってもよいし、コンプレッサーであってもよい。コンプレッサーは、油圧式コンプレッサーであってもよいし、空圧式コンプレッサーであってもよい。本実施形態では、駆動源がモータである場合について説明する。
【0028】
突出動作が完了した後、エジェクタロッド54は、駆動源から伝達される駆動力によって型開き方向DBに移動する。この場合、エジェクタプレート56は、バネ(図示せず)の弾性力によって型開き方向DBに移動する。これにより、エジェクタプレート56に固定されるエジェクタピン58は可動金型30のピン孔60に引っ込む。
【0029】
制御装置26は、射出成形機12を制御する装置である。制御装置26は、型締装置20を制御することで、型締装置20に型閉じ動作または型開き動作を実行させる。また、制御装置26は、射出装置22を制御することで、射出装置22に射出動作、保圧動作または計量動作を実行させる。さらに、制御装置26は、突出装置24を制御することで、突出装置24に突出動作を実行させる。
【0030】
型開き動作と突出動作とは同期して実行されなくてもよいし、同期して実行されてもよい。型開き動作と突出動作とが同期して実行されない場合、制御装置26は、まず、型締装置20に型開き動作を実行させる。型開き動作の完了後、取出装置14による把持動作が実行され、成形品が把持装置18に把持される。その後、制御装置26は、突出装置24に突出動作を実行させる。突出動作が実行されている期間は、成形品は把持装置18に把持された状態にある。この状態では、突出動作時における成形品の位置は、型閉じ方向DAに動く傾向にある。このため、把持装置18は、フローティングの状態であってもよい。フローティングの状態とは、外力に応じて把持装置18の位置が変化し得る状態である。
【0031】
型開き動作と突出動作とが同期して実行される場合、制御装置26は、まず、型締装置20に1次の型開き動作を実行させて、固定金型28と可動金型30との間に、把持装置18を配置するための空間を確保する。1次の型開き動作の完了後、取出装置14による把持動作が実行され、成形品が把持装置18に把持される。その後、制御装置26は、型締装置20および突出装置24に同期動作を実行させる。すなわち、制御装置26は、型締装置20に2次の型開き動作を実行させながら、突出装置24に突出動作を実行させる。突出動作が実行されている期間は、成形品は把持装置18に把持された状態にある。なお、同期動作では、2次の型開き動作の開始タイミングと、突出動作の開始タイミングとは、同じであってもよいし、異なってもよい。さらに、2次の型開き動作の完了タイミングと、突出動作の完了タイミングとは、同じであってもよいし、異なってもよい。
【0032】
型開き動作に代えて引き動作が採用され、引き動作と突出動作とが同期して実行されてもよい。引き動作は、把持装置18に把持される成形品を型閉じ方向DAに引く動作である。この場合、制御装置26は、まず、型締装置20に型開き動作を実行させる。型開き動作の完了後、制御装置26は、取出装置14による引き動作に同期して、突出装置24に突出動作を実行させる。
【0033】
以下、制御装置26のさらに詳細な処理内容に関して、第1実施形態と第2実施形態とに分けて説明する。
【0034】
(第1実施形態)
図5は、第1実施形態における射出成形機12の一部の構成を示すブロック図である。制御装置26は、モータ制御部62を有する。モータ制御部62は、射出成形機12に備えられるモータを制御する。このモータ制御部62は、第1モータ制御部64と、第2モータ制御部66とを含む。
【0035】
第1モータ制御部64は、突出装置24に備えられたピン駆動用モータ68を制御することで、突出装置24に突出動作を実行させる。ピン駆動用モータ68は、エジェクタピン58を駆動するためのモータである。ピン駆動用モータ68の駆動によって発生する駆動力は、エジェクタロッド54に伝達される。エジェクタロッド54に伝達される駆動力によって、エジェクタロッド54がエジェクタプレート56を押す。これにより、エジェクタプレート56に固定されるエジェクタピン58が型閉じ方向DAに移動する。つまり、第1モータ制御部64は、ピン駆動用モータ68を制御することで、エジェクタロッド54およびエジェクタプレート56を介して、エジェクタピン58を型閉じ方向DAに移動させる。
【0036】
第2モータ制御部66は、型締装置20に備えられた金型駆動用モータ70を制御することで、型締装置20に型開き動作または型閉め動作を実行させる。金型駆動用モータ70は、可動金型30を駆動するためのモータである。金型駆動用モータ70の駆動によって発生する駆動力は、可動プラテン34に伝達される。可動プラテン34に伝達される駆動力によって、可動プラテン34と可動金型30とが型閉じ方向DAまたは型開き方向DBに移動する。つまり、第2モータ制御部66は、金型駆動用モータ70を制御することで、可動プラテン34および可動金型30を型閉じ方向DAまたは型開き方向DBに移動させる。
【0037】
本実施形態の制御装置26には、演算装置72がさらに備えられる。演算装置72は、突出動作に用いられるパラメータを演算する。演算装置72は、情報処理部74と、記憶部76とを有する。情報処理部74は、例えば、CPU、GPU等のプロセッサによって構成される。記憶部76は、RAM等の揮発性メモリと、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク等の不揮発性メモリとを含む。記憶部76の少なくとも一部が、プロセッサに備えられていてもよい。
【0038】
情報処理部74は、位置取得部78と、負荷取得部80と、決定部82と、設定変更部84とを有する。位置取得部78、負荷取得部80、決定部82および設定変更部84は、記憶部76に記憶されているプログラムを情報処理部74が処理することで実現されてもよい。また、位置取得部78、負荷取得部80、決定部82および設定変更部84の少なくとも1つが、ASIC、FPGA等の集積回路によって実現されてもよい。また、位置取得部78、負荷取得部80、決定部82および設定変更部84の少なくとも1つが、ディスクリートデバイスを含む電子回路によって構成されてもよい。
【0039】
位置取得部78は、位置センサ86から出力される信号に基づいて、ピン駆動用モータ68の位置を取得する。また、位置取得部78は、突出動作が完了したときに取得したピン駆動用モータ68の位置を示す位置情報を記憶部76に記憶する。位置センサ86としては、例えば、エンコーダ、リニアスケール、カメラ等が挙げられる。エンコーダは、ピン駆動用モータ68に備えられてもよい。
【0040】
負荷取得部80は、負荷取得用センサ90から出力される信号に基づいて、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの間に取出装置14で発生する負荷を取得する。また、負荷取得部80は、取得した負荷を示す負荷情報を記憶部76に記憶する。負荷取得用センサ90は、取出装置14に備えられる。負荷取得用センサ90は、取出装置14が有する把持装置18に備えられてもよい。
【0041】
負荷取得用センサ90は、取出動作を実行するために用いられる取出用モータのトルクを検出するトルクセンサであってもよい。この場合、負荷取得部80は、トルクセンサから出力される信号に基づいて、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの取出用モータのトルクを取得する。
【0042】
負荷取得用センサ90は、取出動作を実行するために用いられる取出用モータに出力される電流(駆動電流)を検出する電流センサであってもよい。この場合、負荷取得部80は、電流センサから出力される信号に基づいて、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの取出用モータの電流を取得する。負荷取得部80は、電流センサから出力される信号に基づいて、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの取出用モータのトルクまたは電圧(駆動電圧)を演算して取得してもよい。
【0043】
負荷取得用センサ90は、取出動作を実行するために用いられる取出用モータの位置を検出する位置センサであってもよい。この場合、負荷取得部80は、位置センサから出力される信号に基づいて、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの取出用モータの位相を取得する。
【0044】
負荷取得用センサ90は、取出動作時に発生する取出荷重を検出する力センサであってもよい。この場合、負荷取得部80は、力センサから出力される信号に基づいて、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの取出荷重を取得する。
【0045】
負荷取得用センサ90は、成形品の歪みを検出する歪センサであってもよい。この場合、負荷取得部80は、歪センサから出力される信号に基づいて、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの成形品の歪みを取得する。
【0046】
負荷取得用センサ90は、取出動作を実行するために付与される油圧、空圧等の流体圧を検出する圧力センサであってもよい。この場合、負荷取得部80は、圧力センサから出力される信号に基づいて、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの流体圧を取得する。
【0047】
負荷取得部80は、以上で述べたトルク、電流、電圧、位相、取出荷重、成形品の歪みおよび流体圧のうちの少なくとも1つを、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの間に取出装置14で発生する負荷として取得し得る。また、負荷取得部80は、トルク、電流、電圧、位相、取出荷重、成形品の歪み、流体圧以外の物理量を、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの間に取出装置14で発生する負荷として取得し得る。要するに、負荷取得部80は、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの間に取出装置14で発生する負荷として、1種類以上の物理量を取得し得る。
【0048】
負荷取得部80が取得する負荷の大きさは、可動金型30からの成形品の剥離度に応じて変化する。すなわち、可動金型30からの成形品の剥離度が小さくなればなるほど、負荷取得部80が取得する負荷の大きさは大きくなる。具体的には、突出動作によって成形品が可動金型30から完全に剥がれていれば、負荷取得部80が取得する負荷は殆どゼロに近い。逆に、成形品が可動金型30と完全に密着している場合には、負荷取得部80が取得する負荷は大きい。一方、可動金型30からの成形品の剥離度は、突出動作の開始から完了までのエジェクタピン58の移動距離に応じて変化する。すなわち、突出動作の開始から完了までのエジェクタピン58の移動距離が短くなればなるほど、可動金型30からの成形品の剥離度は小さくなる。このように、負荷取得部80が取得する負荷の大きさと、可動金型30からの成形品の剥離度と、突出動作の開始から完了までのエジェクタピン58の移動距離とは、密接に関係している。
【0049】
決定部82は、負荷取得部80で取得された負荷の最大値を閾値と比較する。負荷の最大値が閾値未満の場合は、決定部82は、突出動作によるエジェクタピン58の移動距離が短くなるように、突出動作が完了したときのエジェクタロッド54の駆動終了位置を決定する。例えば、決定部82は、突出動作が完了したときに位置取得部78で取得されたピン駆動用モータ68の位置から、型開き方向DBに所定量ずらした位置を、突出動作が完了したときのエジェクタロッド54の駆動終了位置として決定する。
【0050】
決定部82は、射出成形機12で繰り返し実行されるサイクルごとにエジェクタロッド54の駆動終了位置を決定してもよい。この場合、決定部82は、負荷取得部80でサイクルごとに取得される負荷の最大値をその都度閾値と比較する。負荷の最大値が閾値以上となるまで、決定部82は、エジェクタロッド54の駆動終了位置をサイクルごとに決定し続ける。つまり、負荷の最大値が閾値以上となるまで、決定部82は、サイクル毎に前回のサイクルで決定したエジェクタロッド54の駆動終了位置を所定量ずつ型開き方向DBにずらしていく。これにより、取出動作の実行時に取出装置14で発生する負荷を極力抑えながら、エジェクタピン58の移動距離を短くすることができる。
【0051】
このように、決定部82は、負荷の最大値が閾値以上になるまで、サイクルごとに突出動作が完了したときのエジェクタロッド54の駆動終了位置を決定し、デフォルト設定されたエジェクタピン58の移動距離を所定量ずつ徐々に短くさせ得る。
【0052】
負荷の最大値が閾値以上になった場合は、決定部82は、1つ前のエジェクタロッド54の駆動終了位置を、次のサイクルにおけるエジェクタロッド54の駆動終了位置として決定する。
【0053】
設定変更部84は、決定された駆動終了位置となるように、エジェクタロッド54の駆動源の設定を変更する。駆動源は、エジェクタロッド54を駆動するための駆動力を発生する。本実施形態の駆動源は、モータ制御部62(第1モータ制御部64)である。設定変更部84は、エジェクタロッド54の駆動終了位置としてモータ制御部62(第1モータ制御部64)に現在設定されている設定位置を、決定部82で決定された駆動終了位置に変更する。
【0054】
次に、第1実施形態における演算装置72の演算方法を説明する。
図6は、第1実施形態における演算装置72の演算処理の流れを示すフローチャートである。演算装置72の演算処理は、射出成形機12で繰り返されるサイクルごとに実行されてもよいし、1番目のサイクルから指定されたサイクルまで実行されてもよいし、1または2以上の指定されたサイクルでのみ実行されてもよい。
図6のフローチャートでは、1つのサイクルにおいて1回の突出動作が実行される場合の演算処理が示されている。
【0055】
固定金型28と可動金型30との間に配置された把持装置18によって、可動金型30のキャビティ面61に付着する成形品が把持され、かつ、突出装置24による突出動作が開始された以降に、演算装置72の演算処理が開始される。
【0056】
ステップS1において、演算装置72は、第1モータ制御部64にデフォルト設定されたエジェクタロッド54の駆動終了位置と、位置取得部78で取得されるピン駆動用モータ68の位置とに基づいて、突出動作が完了したか否かを判定する。位置取得部78で取得されるピン駆動用モータ68の位置が、デフォルト設定されたエジェクタロッド54の駆動終了位置になった場合、演算装置72は、突出動作が完了したと判定する。突出動作が完了したと判定された場合、演算処理はステップS2に進む。
【0057】
なお、デフォルト設定されたエジェクタロッド54の駆動終了位置を演算装置72が取得する取得方法は特に限定されない。例えば、演算装置72は、第1モータ制御部64の記憶部から駆動終了位置を読み出して取得してもよい。また、演算装置72は、射出成形機12を制御装置26が制御するためのプログラムを解析して駆動終了位置を取得してもよい。また、演算装置72は、ユーザの操作に応じて入力部から入力される値を駆動終了位置として取得してもよい。
【0058】
ステップS2において、負荷取得部80は、負荷取得用センサ90を用いて、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの間に、取出装置14が受ける負荷を取得する。また、負荷取得部80は、取得した負荷を示す負荷情報を記憶部76に記憶する。負荷情報が取得されると、演算処理はステップS3に進む。
【0059】
ステップS3において、決定部82は、ステップS2で取得された負荷の最大値を閾値と比較する。ここで、負荷の最大値が閾値未満の場合、演算処理はステップS4に進む。一方、負荷の最大値が閾値以上の場合、演算処理はステップS5に進む。
【0060】
ステップS4において、決定部82は、突出動作によるエジェクタピン58の移動距離が短くなるように、突出動作が完了したときのエジェクタロッド54の駆動終了位置を決定する。エジェクタロッド54の駆動終了位置が決定されると、演算処理はステップS6に進む。
【0061】
ステップS5において、決定部82は、1つ前のサイクルで決定したエジェクタロッド54の駆動終了位置を、次のサイクルにおけるエジェクタロッド54の駆動終了位置として決定する。エジェクタロッド54の駆動終了位置が決定されると、演算処理はステップS6に進む。
【0062】
ステップS6において、設定変更部84は、ステップS4またはステップS5で決定された駆動終了位置となるように、駆動源の設定を変更する。本実施形態では、設定変更部84は、ピン駆動用モータ68の駆動終了位置として第1モータ制御部64に現在設定されている設定位置を、ステップS4またはステップS5で決定された駆動終了位置に変更する。設定位置が変更されると、演算処理は、終了する。
【0063】
なお、ステップS2で取得された負荷の最大値が閾値以上の場合、演算装置72は、把持装置18による把持動作、または、取出装置14による取出動作を停止させてもよい。
【0064】
以上説明したように、演算装置72は、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの間に取出装置14で発生する負荷を取得する。また、演算装置72は、取得した負荷の最大値が閾値未満である場合には、エジェクタピン58の移動距離が短くなるように、突出動作完了時におけるエジェクタロッド54の駆動終了位置を決定する。これにより、エジェクタピン58が成形品に接触する様子を作業者が確認していなくても、突出動作の完了時に金型16から突出するエジェクタピン58の突出量を小さくすることができる。その結果、射出成形機12のサイクルが長期化することを抑制することができる。
【0065】
本実施形態の演算装置72は、ピン駆動用モータ68を制御するモータ制御部62の第1モータ制御部64に現在設定されている設定位置を、決定したエジェクタロッド54の駆動終了位置に変更する。これにより、作業者に設定変更作業を行わせることなく、突出動作の完了位置を自動的に設定することができる。
【0066】
なお、演算装置72が、射出成形機12で繰り返し実行されるサイクルごとにエジェクタロッド54の駆動終了位置を決定する場合、取出装置14で発生する負荷を必要最小限に抑えつつも、エジェクタピン58の移動距離を短くすることができる。
【0067】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態における射出成形機12の一部の構成を示すブロック図である。
図7では、第1実施形態において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本実施形態では、第1実施形態と重複する説明は省略する。
【0068】
本実施形態の演算装置72では、第1実施形態の決定部82に代えて、決定部821が新たに備えられる。
【0069】
決定部821は、負荷取得部80で取得された負荷の最大値を閾値と比較する。負荷の最大値が閾値を超えた場合は、決定部82は、突出動作によるエジェクタピン58の移動距離が長くなるように、突出動作が完了したときのエジェクタロッド54の駆動終了位置を決定する。例えば、決定部821は、突出動作が完了したときに位置取得部78で取得されたピン駆動用モータ68の位置から、型閉じ方向DAに所定量ずらした位置を、突出動作が完了したときのエジェクタロッド54の駆動終了位置として決定する。
【0070】
本実施形態では、決定部821は、負荷取得部80で取得される負荷の最大値を、単位時間毎に閾値と比較する。負荷の最大値が閾値以下となるまで、決定部821は、エジェクタロッド54の駆動終了位置を決定し続ける。つまり、負荷の最大値が閾値以下となるまで、決定部821は、エジェクタロッド54の駆動終了位置を所定量ずつ型閉じ方向DAにずらしていく。これにより、デフォルト設定されたエジェクタピン58の移動距離を、1つのサイクル内で所定量ずつ徐々に長くさせ得る。その結果、取出動作の実行時に取出装置14で発生する負荷を極力抑えながら、エジェクタピン58の移動距離を短くすることができる。
【0071】
負荷の最大値が閾値以下になった場合は、決定部821は、現在のエジェクタロッド54の駆動終了位置を、次の突出動作におけるエジェクタロッド54の駆動終了位置として決定する。
【0072】
次に、第2実施形態における演算装置72の演算方法を説明する。
図8は、第2実施形態における演算装置72の演算処理の流れを示すフローチャートである。
図8では、第1実施形態において説明したステップと同等のステップには同一の符号が付されている。なお、本実施形態では、第1実施形態と重複する説明は省略する。
【0073】
本実施形態の演算処理では、第1実施形態のステップS3に代えて、ステップS30が新たに備えられる。また、本実施形態の演算処理では、第1実施形態のステップS4に代えて、ステップS40が新たに備えられる。さらに、本実施形態の演算処理では、第1実施形態のステップS5に代えて、ステップS50が新たに備えられる。
【0074】
ステップS30において、決定部821は、ステップS2で取得された負荷の最大値を閾値と比較する。ここで、負荷の最大値が閾値を超える場合、演算処理はステップS40に進む。一方、負荷の最大値が閾値以下の場合、演算処理はステップS50に進む。
【0075】
ステップS40において、決定部821は、突出動作によるエジェクタピン58の移動距離が長くなるように、突出動作が完了したときのエジェクタロッド54の駆動終了位置を決定する。エジェクタロッド54の駆動終了位置が決定されると、演算処理はステップS6に進む。
【0076】
ステップS50において、決定部821は、現在のエジェクタロッド54の駆動終了位置を、次に決定すべきエジェクタロッド54の駆動終了位置として決定する。エジェクタロッド54の駆動終了位置が決定されると、演算処理はステップS6に進む。
【0077】
以上説明したように、演算装置72は、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの間に取出装置14で発生する負荷を取得する。また、演算装置72は、取得した負荷の最大値が閾値を超える場合には、エジェクタピン58の移動距離が長くなるように、突出動作完了時におけるエジェクタロッド54の駆動終了位置を決定する。これにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、エジェクタピン58が成形品に接触する様子を作業者が確認していなくても、突出動作の完了時に金型16から突出するエジェクタピン58の突出量を小さくすることができる。その結果、射出成形機12のサイクルが長期化することを抑制することができる。
【0078】
〔変形例〕
上記の実施形態は、下記のように変形してもよい。
【0079】
(変形例1)
図9は、変形例1の演算装置72を示すブロック図である。
図9では、第1実施形態(または第2実施形態)において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は省略する。
【0080】
本変形例の演算装置72は、変更部92をさらに有する。変更部92は、ユーザ操作に応じて、決定部82で用いられる閾値を変更する。この変更部92には操作部94が接続される。
【0081】
操作部94は、ユーザ操作に応じて入力された値を変更部92に出力する。操作部94の具体例として、マウス、キーボード等が挙げられる。表示画面上に配置されるタッチパネル等によって、操作部94が構成されてもよい。ユーザ操作に応じて入力された値が操作部94から変更部92に出力された場合、変更部92は、決定部82で現在設定されている閾値を、ユーザ操作に応じて入力された値に変更する。
【0082】
このように、変更部92は、ユーザ操作に応じて、決定部82で用いられる閾値を変更することで、射出成形機12、金型16、取出装置14の種類等に応じて、突出動作の完了時におけるエジェクタピン58の突出量を調整することができる。
【0083】
さらに、変更部92は、ユーザの操作に応じて、エジェクタピン58の移動距離を徐々に短く(または長く)する所定量を変更してもよい。このようにしても、射出成形機12、金型16、取出装置14の種類等に応じて、突出動作の完了時におけるエジェクタピン58の突出量を調整することができる。
【0084】
(変形例2)
図10は、変形例2の射出成形システム10を示すブロック図である。
図10では、実施形態(第1実施形態および第2実施形態)において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は省略する。
【0085】
本変形例の射出成形システム10では、射出成形機12と取出装置14とが通信線96に接続される。通信線96は、有線であってもよいし、無線であってもよい。射出成形機12の制御装置26と取出装置14の制御装置98とは通信線96を介して各種の情報を相互に送受信する。
【0086】
本変形例では、演算装置72は、射出成形機12の制御装置26に備えられる実施形態に代えて、取出装置14の制御装置98に備えられる。
【0087】
演算装置72の位置取得部78(
図5参照)は、通信線96を介して位置センサ86から出力される信号を受信する。位置取得部78は、この信号に基づいて、実施形態と同様に、突出動作の完了時におけるピン駆動用モータ68の位置を取得し得る。
【0088】
演算装置72の負荷取得部80(
図5参照)は、通信線96を介して負荷取得用センサ90から出力される信号を受信する。負荷取得部80は、この信号に基づいて、実施形態と同様に、突出動作が完了してから取出動作が完了するまでの間に取出装置14が受ける負荷を取得し得る。
【0089】
演算装置72の設定変更部84(
図5参照)は、ピン駆動用モータ68の駆動終了位置として現在設定されている位置を、決定部82(
図5参照)で決定された駆動終了位置に変更する命令を、通信線96を介して第1モータ制御部64(
図5参照)に与える。これにより、設定変更部84は、決定部82で決定された駆動終了位置を、射出成形機12に備えられる第1モータ制御部64に設定し得る。
【0090】
このように、演算装置72が取出装置14に備えられても、実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、エジェクタピン58が成形品に接触する様子を作業者が確認していなくても、突出動作の完了時に金型16から突出するエジェクタピン58の突出量を小さくすることができる。その結果、射出成形機12のサイクルが長期化することを抑制することができる。
【0091】
(変形例3)
図11は、変形例3の射出成形システム10を示すブロック図である。
図11では、変形例2において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態および変形例2と重複する説明は省略する。
【0092】
本変形例の射出成形システム10は、射出成形機12および取出装置14とは異なるパーソナルコンピュータ等の外部装置100をさらに備える。外部装置100は、通信線96に接続される。外部装置100の制御装置102は、通信線96を介して、射出成形機12の制御装置26および取出装置14の制御装置98と各種の情報を送受信する。
【0093】
本変形例では、演算装置72は、外部装置100の制御装置102に備えられても、取出装置14の制御装置98に備えられる変形例2の場合と同様にして演算処理を実行し得る。したがって、演算装置72が外部装置100に備えられても実施形態と同様の効果が得られる。
【0094】
ところで、通信線96には、射出成形システム10とは異なる射出成形システムにおける他の射出成形機および他の取出装置が接続されていてもよい。他の射出成形機および他の取出装置の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。この場合、制御装置102は、射出成形機12と、1または複数の他の射出成形機とに用いられるパラメータを管理してもよい。また、制御装置102に備えられた演算装置72は、射出成形機12に備えられるピン駆動用モータ68の駆動終了位置と、1または2以上の他の射出成形機に備えられるピン駆動用モータの駆動終了位置とを決定してもよい。
【0095】
(変形例4)
上記の実施形態および変形例は、矛盾の生じない範囲で任意に組み合わされてもよい。
【0096】
〔発明〕
上記の実施形態および変形例から把握しうる発明として、以下、第1の発明および第2の発明を記載する。
【0097】
(第1の発明)
第1の発明は、可動金型(30)からエジェクタピン(58)を突出する突出動作を実行させる射出成形機(12)に用いられるパラメータを演算する演算装置(72)であって、突出動作の完了後、取出装置(14)が可動金型から成形品を取り出すまでの間に取出装置で生じる負荷を取得する負荷取得部(80)と、取得された負荷に基づいて、突出動作が終了するときの、エジェクタピンを型閉じ方向(DA)に駆動するエジェクタロッド(54)の駆動終了位置を決定する決定部(82、821)と、を備える。
【0098】
これにより、エジェクタピンが成形品に接触する様子を作業者が確認していなくても、突出動作の完了時に金型から突出するエジェクタピンの突出量を小さくすることができる。その結果、射出成形機のサイクルが長期化することを抑制することができる。
【0099】
決定部(82)は、取得された負荷の最大値が閾値未満である場合に、突出動作によるエジェクタピンの移動距離が短くなるように、駆動終了位置を決定してもよい。これにより、成形品に過度な負荷を与えることなく成形品を突出させることができる範囲内で、エジェクタピンの突出量を調整することができる。
【0100】
決定部(82)は、デフォルト設定された移動距離が所定量ずつ徐々に短くなるように、駆動終了位置を決定してもよい。これにより、取出装置で発生する負荷を必要最小限に抑えつつ、エジェクタピンの移動距離を短くすることができる。
【0101】
負荷の最大値が閾値以上になった場合、決定部(82)は、1つ前に決定した駆動終了位置を、次に決定すべき駆動終了位置としてもよい。これにより、射出成形機の作動中に、突出動作を実行しても成形品が金型から剥がれないといった事態の発生を未然に防止することができる。
【0102】
決定部(821)は、取得された負荷が閾値を超えた場合に、突出動作によるエジェクタピンの移動距離が長くなるように、駆動終了位置を決定してもよい。これにより、成形品に過度な負荷を与えることなく成形品を突出させることができる範囲内で、エジェクタピンの突出量を調整することができる。
【0103】
決定部(821)は、デフォルト設定された移動距離が所定量ずつ徐々に長くなるように、駆動終了位置を決定してもよい。これにより、取出装置で発生する負荷を必要最小限に抑えつつ、エジェクタピンの移動距離を短くすることができる。
【0104】
負荷の最大値が閾値未満になった場合、決定部(821)は、現在の駆動終了位置を、次に決定すべき駆動終了位置としてもよい。これにより、射出成形機の作動中に、突出動作を実行しても成形品が金型から剥がれないといった事態の発生を未然に防止することができる。
【0105】
演算装置は、ユーザの操作に応じて、閾値を変更する変更部(92)を備えてもよい。これにより、射出成形機、金型、取出装置の種類等に応じて、突出動作の完了時におけるエジェクタピンの突出量を調整することができる。
【0106】
変更部は、ユーザの操作に応じて、上記の所定量を変更してもよい。これにより、射出成形機、金型、取出装置の種類等に応じて、突出動作の完了時におけるエジェクタピンの突出量を調整することができる。
【0107】
決定部(82、821)は、射出成形機で繰り返し実行されるサイクルごとに、駆動終了位置を決定してもよい。これにより、射出成形機の作動中に、エジェクタピンの突出量を微調整することができる。
【0108】
決定された駆動終了位置となるように、エジェクタロッドを駆動するための駆動力を発生する駆動源の設定を変更する設定変更部(84)を備えてもよい。これにより、作業者に設定変更作業を行わせることなく、突出動作の完了位置を自動的に設定することができる。
【0109】
演算装置は、射出成形機の制御装置(26)に備えられてもよい。これにより、制御装置(26)以外の制御装置に演算装置を備えなくても、射出成形機のサイクルが長期化することを抑制することができる。
【0110】
演算装置は、取出装置の制御装置(98)に備えられてもよい。これにより、射出成形機の制御装置(26)に演算装置を備えなくても、射出成形機のサイクルが長期化することを抑制することができる。
【0111】
演算装置は、射出成形機および取出装置に接続された外部機器(100)の制御装置(102)に備えられてもよい。これにより、射出成形機および取出装置に演算装置を備えなくても、射出成形機のサイクルが長期化することを抑制することができる。
【0112】
(第2の発明)
第2の発明は、射出成形システム(10)であって、上記の演算装置と、射出成形機と、取出装置と、を備える。上記の演算装置を備えているため、エジェクタピンが成形品に接触する様子を作業者が確認していなくても、突出動作の完了時に金型から突出するエジェクタピンの突出量を小さくすることができる。その結果、射出成形機のサイクルが長期化することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0113】
10:射出成形システム 12:射出成形機
14:取出装置 16:金型
18:把持装置 20:型締装置
22:射出装置 24:突出装置
26、98、102:制御装置 28:固定金型
30:可動金型 34:可動プラテン
54:エジェクタロッド 58:エジェクタピン
62:モータ制御部 68:ピン駆動用モータ
70:金型駆動用モータ 72:演算装置
78:位置取得部 80:負荷取得部
82、821:決定部 84:設定変更部
86:位置センサ 90:負荷取得用センサ
92:変更部 100:外部装置