(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】比表面積を低下させた粉体の製造方法及び粉体製造装置
(51)【国際特許分類】
C01F 11/18 20060101AFI20240918BHJP
B01D 53/18 20060101ALI20240918BHJP
C04B 14/28 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C01F11/18 B
B01D53/18 110
C04B14/28
(21)【出願番号】P 2024077933
(22)【出願日】2024-05-13
【審査請求日】2024-05-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000228660
【氏名又は名称】日本コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】早川 康之
【審査官】安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-046013(JP,A)
【文献】特表2019-528222(JP,A)
【文献】特開2023-127647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 11/18
B01D 53/18
C04B 14/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレッシュコンクリート用の混和材またはアスファルト混合物用のフィラー材である粉体を製造する、比表面積を低下させた粉体の製造方法であって、
カルシウムイオンを含む溶液に対して二酸化炭素を含むガスを供給することで前記
カルシウムイオンと炭酸イオンとを反応させて中間体を生成する反応工程と、
前記中間体を前記溶液から分離して
前記粉体である炭酸塩鉱物粉体を生成する分離工程と、を備え、
前記反応工程中
の前記中間体が形成され始めた後に、前記中間体の
表面をコーティングして比表面積を低下させるための界面活性剤を前記溶液に添加する
ことを特徴とする比表面積を低下させた粉体の製造方法
。
【請求項2】
フレッシュコンクリート用の混和材またはアスファルト混合物用のフィラー材である粉体を製造する粉体製造装置であって、
カルシウムイオンを含む溶液が導入される反応槽と、
この反応槽に導入された前記溶液に対して二酸化炭素を含むガスを供給するガス供給手段と、
このガス供給手段により前記ガスを前記溶液に対して供給しているときに、前記
カルシウムイオンと炭酸イオンとの反応により生じる中間体の
表面をコーティングしてこの中間体の比表面積を低下させるための界面活性剤を
、前記中間体の形成が開始された後に前記溶液に添加する添加手段と、
前記中間体を前記溶液から分離して
前記粉体である炭酸塩鉱物粉体を生成する分離手段と、
を備えることを特徴とする粉体製造装置
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体である炭酸塩鉱物粉体を製造する比表面積を低下させた粉体の製造方法及び粉体製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばコンクリート製造工程で発生するコンクリートスラッジに対して加水撹拌し、溶出したカルシウム成分に対して二酸化炭素を反応させることにより炭酸カルシウムを得て、その炭酸カルシウムを分離・脱水することにより粉体として生成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように製造された粉体は、粒径が1~100μm程度であり、表面に不規則な凹凸があり、また微小な孔も全面に散らばって存在しているので、比表面積(BET比表面積)が非常に大きく、5~50m2/g程度である。そのため、この粉体を例えばフレッシュコンクリートの混和材として用いた場合やアスファルト混合物のフィラー材として用いた場合に、コンクリート配合における混和剤(薬様)やアスファルト乳剤、添加剤の多くが粉体表面の凹凸や孔に付着し、必要な性能を得るための使用量が多く、製造単価が高くなるという課題がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、比表面積を低下させた粉体を容易に製造可能な比表面積を低下させた粉体の製造方法及び粉体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の比表面積を低下させた粉体の製造方法は、フレッシュコンクリート用の混和材またはアスファルト混合物用のフィラー材である粉体を製造する、比表面積を低下させた粉体の製造方法であって、カルシウムイオンを含む溶液に対して二酸化炭素を含むガスを供給することで前記カルシウムイオンと炭酸イオンとを反応させて中間体を生成する反応工程と、前記中間体を前記溶液から分離して前記粉体である炭酸塩鉱物粉体を生成する分離工程と、を備え、前記反応工程中の前記中間体が形成され始めた後に、前記中間体の表面をコーティングして比表面積を低下させるための界面活性剤を前記溶液に添加する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、比表面積を低下させた粉体を製造可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態の粉体製造装置の例を模式的に示す説明図である。
【
図2】同上粉体製造装置を用いて比表面積を低下させた粉体の製造方法により製造された粉体である炭酸塩鉱物粉体の一部を拡大して模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1において、1は粉体製造装置である。粉体製造装置1は、原素材を用い、二酸化炭素を固定化した乾燥状態の粉体である炭酸塩鉱物粉体2(以下、単に粉体2という)を製造する二酸化炭素固定化装置である。
【0011】
原素材は、二酸化炭素と反応し得る金属元素を含む。金属元素は、例えばカルシウム(Ca)、あるいはマグネシウム(Mg)等の、炭酸イオンと反応して炭酸塩鉱物をなすものであり、本実施の形態ではカルシウムの例について説明する。
【0012】
原素材としては、例えば遠心成形コンクリート二次製品製造時、例えば遠心成形後に発生するコンクリートスラッジやその固体分等を用いてもよいし、生コンプラントにおける残コンクリート(残コン)、あるいは戻りコンクリート(戻りコン)のスラッジを用いてもよいし、採掘された石灰石を粉砕及び焼成した生石灰等を用いてもよい。
【0013】
原素材は、加水撹拌されることで、金属イオン、本実施の形態ではカルシウムイオンが溶出したスラリー状のコンクリートスラッジ水や石灰乳等の溶液(飽和水溶液)3として用いられる。
【0014】
本実施の形態において、溶液3は供給手段4を介して反応槽5に導入される。供給手段4は、溶液3の供給源と接続された配管及び供給量を調整するためのバルブ等を有する。
【0015】
反応槽5は、例えば竪型サイロ等とも呼ばれ、上下方向に長手状に形成されている。反応槽5には、ガス供給手段6が配置されている。
【0016】
ガス供給手段6は、二酸化炭素を含むガスGを反応槽5内の溶液3に対してバブリングすることで気泡により溶液3を撹拌し、二酸化炭素の電離によって生じた炭酸イオンを溶液3のカルシウムイオンと反応させることにより二酸化炭素を固定化させた炭酸塩鉱物、本実施の形態では炭酸カルシウム(CaCO3)である中間体7を得るためのものである。ガス供給手段6は、ガス供給源と接続された配管、バルブ、及び、ノズル等を有する。ガス供給手段6は、反応槽5の下部に接続され、ガスGを反応槽5の下部から所定時間に亘り噴出させる。ガス供給手段6によるガスGの噴出は、連続的でもよいし断続的でもよい。
【0017】
ガス供給手段6により供給されるガスGは、例えばボイラや発電所等のガス供給源からの排ガスが好適に利用される。
【0018】
また、反応槽5には、添加手段8を介して界面活性剤Sが溶液3に添加される。添加手段8は、例えば界面活性剤Sの供給源と接続された配管及び供給量を調整するためのバルブ等を有する。
【0019】
界面活性剤Sは、
図2に示されるように、中間体7の表面の微細な凹凸や孔をコーティングするコーティング部Cを形成することにより、比表面積(BET比表面積)を低下させるためのコーティング剤である。界面活性剤Sとしては、任意のものを用いてよいが、例えば脂肪酸系統の界面活性剤等が好適に用いられる。界面活性剤Sは、
図1に示されるように、液状として溶液3に供給されることで、コーティング部C(
図2)を均一に形成することが可能になる。本実施の形態において、界面活性剤Sは、例えば原液の100倍溶液、つまり1%溶液が用いられる。
【0020】
さらに、反応槽5には、分離手段である脱水手段9が接続されている。脱水手段9は、反応槽5に沈澱した中間体7を直接得て、この中間体7を脱水(水切り)及び乾燥させて溶液3から分離し、粉体2とするものである。脱水手段9は、反応槽5の下部に沈澱した中間体7を得るよう、反応槽5の下部に接続されている。
【0021】
次に、本実施の形態の粉体製造装置1による粉体2の製造方法(二酸化炭素固定化方法)について説明する。
【0022】
まず、供給手段4を介して溶液3を反応槽5に所定量、例えば20m3(20,000L)導入し、ガス供給手段6により、二酸化炭素を含むガスGを溶液3に常温で所定時間、例えば45分間、加圧供給することで、溶液3中のカルシウムイオンが、二酸化炭素の電離によって生じた炭酸イオンと反応し、炭酸カルシウムが生成されて、二酸化炭素が中間体7に固定化されていく(反応工程)。
【0023】
このとき、反応槽5では、ガス供給手段6からのガスの供給の開始から所定時間、例えば5~10分程度が経過した時点で中間体7が形成され始めることに伴い溶液3が白濁してくる。そこで、添加手段8を介して界面活性剤Sを所定量、例えば溶液3の1/100~1/20量、本実施の形態では200~1000L(原液量2~10L)を溶液3に添加する。つまり、ガス供給手段6からの溶液3へガスGを供給しているときに界面活性剤Sを添加し、界面活性剤Sが添加された後もガス供給手段6から溶液3へのガスGの供給は継続することとなる。添加された界面活性剤Sにより、生成された中間体7の表面がコーティングされて比表面積(BET比表面積)が低下するとともに、中間体7の凝集化が阻害されて微小な中間体7が製造されることとなる。
【0024】
そして、ガス供給手段6からのガスの供給が終了し、反応槽5の下部に沈澱した中間体7は、反応槽5から脱水手段9へと排出され、脱水手段9において脱水すなわち溶液3から分離されて乾燥され、粉体2が製造される(分離工程)。脱水手段9を経て製造された粉体2の含水率は粉体2の用途に応じて設定してよい。
【0025】
製造された粉体2は、基本的に軽質炭酸カルシウムからなり、その表面が界面活性剤Sからなるコーティングにより覆われた、1~100μm程度の粒径の粒体である。
【0026】
このように、金属イオンを含む溶液3に対して二酸化炭素を含むガスGを供給することで金属イオンと炭酸イオンとを反応させて中間体7を生成する反応工程中に、中間体7の比表面積を低下させるための界面活性剤Sを溶液3に添加することにより、比表面積(BET比表面積)を例えば1/5~1/100に低下させた粉体2を容易に製造することが可能になる。
【0027】
そして、このように製造された粉体2は、例えばフレッシュコンクリートまたはコンクリート混練時の混和材、アスファルト化合物用のフィラー材等として適用することにより、混練作業等が容易となるだけでなく、混和剤やアスファルト乳剤等の添加剤の投入量を減らすことができ、製品単価を下げることができるとともに、これらの適用により二酸化炭素を固定化した固定物の利活用が可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1 粉体製造装置
2 粉体である炭酸塩鉱物粉体
3 溶液
5 反応槽
6 ガス供給手段
7 中間体
8 添加手段
9 分離手段である脱水手段
G ガス
S 界面活性剤
【要約】
【課題】比表面積を低下させた粉体を容易に製造可能な比表面積を低下させた粉体の製造方法及び粉体製造装置を提供する。
【解決手段】金属イオンを含む溶液3に対して二酸化炭素を含むガスGを供給することで金属イオンと炭酸イオンとを反応させて中間体7を生成する反応工程と、中間体7を溶液3から分離して粉体である炭酸塩鉱物粉体2を生成する分離工程と、を備える。反応工程中に、中間体7の比表面積を低下させるための界面活性剤Sを溶液3に添加する。
【選択図】
図1