(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】通信プログラム、通信システム、送信側端末、受信側端末
(51)【国際特許分類】
H04L 45/243 20220101AFI20240919BHJP
H04L 49/201 20220101ALI20240919BHJP
【FI】
H04L45/243
H04L49/201
(21)【出願番号】P 2020108817
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】518133544
【氏名又は名称】株式会社ディジオ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕基
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-223375(JP,A)
【文献】特表2004-529533(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0047446(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信側端末と受信側端末とがネットワークを介して接続可能な通信システムにおいて、
前記送信側端末は、一又は複数の送信側ネットワークと一又は複数の通信回線を介して接続可能な一又は複数の
送信接続部を備え、
前記送信側端末を構成するコンピュータを、
対象データのパケットデータを複数生成する複製部、
前記複製部により生成された複数のパケットデータを、
前記送信側端末が備える複数の送信接続部から同時に送信する同時送信部、として機能させ、
前記受信側端末は、一又は複数の受信側ネットワークと一又は複数の通信回線を介して接続可能な一又は複数の
受信接続部を備え、
前記受信側端末を構成するコンピュータを、
前記送信側端末から送信された複数のパケットデータを、前記
受信接続部を介して受信する受信部、
前記複数のパケットデータのうち、前記受信部が先に受信したパケットを用いて前記対象データを復元するパケット処理部、として機能させ、
前記送信側ネットワークと前記受信側ネットワークのうちの少なくとも一方が複数のネットワークにより構成され、
当該複数のネットワークは、第1のプロバイダにより提供されるネットワークと、前記第1のプロバイダとは異なる第2のプロバイダにより提供されるネットワークと、を含む
ことを特徴とする通信プログラム。
【請求項2】
前記同時送信部は、
前記複製部により生成された複数のパケットデータを、前記送信側端末が備える一の送信接続部から同時に送信し、
前記受信部は、
前記送信側端末から送信された複数のパケットデータを、前記受信側端末が備える複数の受信接続部を介して受信する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信プログラム。
【請求項3】
送信側端末と受信側端末とがネットワークを介して接続された通信システムにおいて、
前記送信側端末は、
一又は複数の送信側ネットワークと一又は複数の通信回線を介して接続可能な複数の送信接続部と、
対象データのパケットデータを複数生成する複製部と、
前記複製部により生成された複数のパケットデータを、前記送信側端末が備える複数の送信接続部から同時に送信する同時送信部と、を備え、
前記受信側端末は、
一又は複数の受信側ネットワークと一又は複数の通信回線を介して接続可能な受信接続部と、
前記送信側端末から送信された複数のパケットデータを、前記受信接続部を介して受信する受信部と、
前記複数のパケットデータのうち、前記受信部が先に受信したパケットを用いて前記対象データを復元するパケット処理部と、を備え、
前記送信側ネットワークと前記受信側ネットワークのうちの少なくとも一方が複数のネットワークにより構成され、
当該複数のネットワークは、第1のプロバイダにより提供されるネットワークと、前記第1のプロバイダと異なる第2のプロバイダにより提供されるネットワークと、を含む
ことを特徴とする通信システム。
【請求項4】
前記同時送信部は、
前記複製部により生成された複数のパケットデータを、前記送信側端末が備える一の送信接続部から同時に送信し、
前記受信部は、
前記送信側端末から送信された複数のパケットデータを、前記受信側端末が備える複数の受信接続部を介して受信する
ことを特徴とする
請求項3に記載の通信
システム。
【請求項5】
一又は複数の受信側ネットワークと一又は複数の通信回線を介して接続可能な一又は複数の受信接続部と、送信側端末から送信された複数のパケットデータを、前記受信接続部を介して受信する受信部と、前記複数のパケットデータのうち、前記受信部が先に受信したパケットを用いて対象データを復元するパケット処理部と、を備えた受信側端末と、ネットワークを介して接続された送信側端末において、
一又は複数の送信側ネットワークと一又は複数の通信回線を介して接続可能な一又は複数の送信接続部と、
対象データのパケットデータを複数生成する複製部と、
前記複製部により生成された複数のパケットデータを、前記送信接続部から同時に送信する同時送信部と、を備え、
前記送信側ネットワークと前記受信側ネットワークのうちの少なくとも一方が複数のネットワークにより構成され、
当該複数のネットワークは、第1のプロバイダにより提供されるネットワークと、前記第1のプロバイダとは異なる第2のプロバイダにより提供されるネットワークと、を含む
ことを特徴とする
送信側端末。
【請求項6】
一又は複数の送信側ネットワークと一又は複数の通信回線を介して接続可能な一又は複数の送信接続部と、対象データのパケットデータを複数生成する複製部と、前記複製部により生成された複数のパケットデータを、前記送信接続部から同時に送信する同時送信部と、を備えた送信側端末と、ネットワークを介して接続された受信側端末において、
一又は複数の受信側ネットワークと一又は複数の通信回線を介して接続可能な一又は複数の受信接続部と、
前記送信側端末から送信された複数のパケットデータを、前記受信接続部を介して受信する受信部と、
前記複数のパケットデータのうち、前記受信部が先に受信したパケットを用いて前記対象データを復元するパケット処理部と、を備え、
前記送信側ネットワークと前記受信側ネットワークのうちの少なくとも一方が複数のネットワークにより構成され、
当該複数のネットワークは、第1のプロバイダにより提供されるネットワークと、前記第1のプロバイダとは異なる第2のプロバイダにより提供されるネットワークと、を含む
ことを特徴とする
受信側端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末間で映像や音声をリアルタイムに送受信を行う通信システム、通信装置、及びこれらの通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、撮影手段(カメラ)により動画(映像)を撮影したり、マイクにより音声を集音しながら、これらの映像や音声を、インターネットなどのネットワークを介してスマートフォンやパーソナルコンピュータ(PC)などの端末機器に送信し、当該端末機器側で受信しながらリアルタイム再生する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようにインターネットを用いたリアルタイム再生では、規定されている転送速度(帯域幅ともいう)とは、ほぼ無関係にデータの伝達が遅延する問題や、当該遅延に起因する問題が生じる。
これらの問題について
図15及び
図16を参照しながら説明する。
すなわち、動画や音声等の対象データを、インターネットを介して送信側から受信側に送る場合、送信側端末では、対象データを一定量毎の単位データであるパケットに時間分割(パケット化)してパケットデータを生成しつつ、各パケットのヘッダに時系列情報(以下、パケット番号という)や送付先のIPアドレス(宛先情報)等を付して送信する処理が実行され、受信側端末では、受信した各パケットをパケット番号に従って組み立てることで対象データを復元する処理(パケット通信)が行われる(
図15参照)。
なお、インターネット通信におけるプロトコルには、TCP(Transmission Control Protocol)方式やUDP(User Datagram Protocol)方式があるが、ここでは、UDP方式が用いられ、当該UDP方式に基づいてパケット通信が実行されるものとする。
パケット通信においては、例えば、1つの回線で複数のパケットを送受信したり、パケットを複数の回線でバラバラに送受信することができる。
パケット通信は、ネットワーク資源を多くの利用者で共有しながら、効率よくデータの送受信を行うことができるが、パケット単位でデータの送受信が行われるために、パケットによっては長い遅延が生じたり、受信時間にばらつき(以下、ジッタともいう)が生じ易い。
このため、パケット通信においては、一般に、受信側において、遅延の最悪値を想定し、その遅延時間以上の長さのデータをバッファ(メモリ)に記憶しながら再生する処理(バファリングともいう)が実行される。
バファリングによれば、遅延やジッタが原因で音声や映像の再生が途切れること(瞬断)を防ぐことができる。
【0005】
例えば、音声「あ・・・い・・・う・・・」を対象データとして送信側PCから受信側PCに送信する場合について説明を加える。
ここで、音声「あ・・・い・・・う・・・」は、
図16(a)に示すように、それぞれが0.5秒連続する「あ」、「い」、「う」の有音区間と、有音区間と有音区間との間において、それぞれが0.5秒連続する無音区間(図中の空白部分)によって構成されているものする。
なお、正確には「有音区間」は、「あ」、「い」、「う」の音声と周囲音とが混在する区間であり、「無音区間」は、「あ」「い」「う」などの音声が含まれない周囲音のみの区間である。
また、この対象データを送信する際には、当該対象データをパケットデータに変換して送信するところ、当該パケットデータは、
図16(a)に示すように、0.1秒単位に分割されたパケットにより構成され、各パケットにそれぞれ図示するパケット番号が付されるものとする。
【0006】
ここで、
図16(b)に示すように、「あ・・・い・・・う・・・」のパケットデータは、送信側端末の「パケット送信」により「ネットワーク」に送信され、当該「ネットワーク」を経て受信側端末において「パケット受信」される。
これらの各パケットの中には、「あ・・・」のように、パケット送信時から0.2秒後に(つまり遅滞なく)受信側端末において受信される場合もあるが、「い・・・」のように、一部のパケットがネットワークを通過する過程で遅延するものがある。
具体的には、「い・・・」の冒頭パケット(パケット番号11)は、ネットワークにおける通過時間が0.8秒かかっており、これにより「パケット送信」時から「パケット受信」までに1秒の遅延が生じている(
図16(b)参照)。
この場合、何ら措置をせず、受信順にパケットを再生すると「い・・・」の冒頭パケットに欠損(パケットロス)が生じ、「い・・・」の冒頭音が途切れると共に「プチッ」というノイズ音が発生するなどの品質の低下が生じる(
図16(c)参照)。
このような問題に対し、想定されるパケットの遅延時間(この場合少なくとも0.8秒)のバファリングを設けることで、「い・・・」の音が途切れることはなくなる(
図16(d)参照)。
しかしながら、この場合、「い・・・」だけでなく、「あ・・・い・・・う・・・」のすべての音が、バファリング時間分遅れて再生されることになる(
図16(d)参照)。
このようなタイムラグは、リアルタイム再生(生放送)など、再生に即時性が求められる場合には特に問題となる。
【0007】
受信側端末において、一部のパケットがバファリング時間内に受信されなかった場合に、送信側端末に対して当該パケットの再送信要求を行う方法も用いられる。
しかしながら、再送信要求によってパケットが再送信された場合には、そのパケットが受信される時間は更に遅延するためバファリング時間をより長く設定する必要があり、全体の遅延を増加させる。
事実、インターネットを用いた生放送のサービスでは、リアルタイムで音声や映像の再生が行われているのではなく、十数秒~三十秒ほど遅延したものが再生されている。
例えば、動画ライブ配信サービス「You Tube(登録商標) Live」では、想定される最長のジッタよりも更に長い時間のバファリング時間(標準で約17秒)が用いられている。
このほか、送ったはずのパケットがネットワーク等の経路の途中に存在する伝送機器などにより破棄されることにより発生するパケットロスもある。
このパケットロスは、通信環境によっては数パーセントの確率で発生することが知られており、規格上は許容されているものの、再生品質を低下するものに他ならない。
しかしながら、このパケットロスは、言い換えれば、パケットの遅延時間が無限となる状態であるため、バファリングでは防ぐことはできない。
【0008】
本発明は、従来の問題を解決するために提案されたものであり、インターネット回線などのネットワークを介したパケットの送受信において、バファリングによらずにパケットロスや遅延・ジッタの発生を低減することが可能な通信プログラム、通信システム、及び通信装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明の通信プログラムは、送信側端末と受信側端末とがネットワークを介して接続可能な通信システムにおいて、前記送信側端末は、一又は複数の送信側ネットワークと一又は複数の通信回線を介して接続可能な一又は複数の送信接続部を備え、前記送信側端末を構成するコンピュータを、対象データのパケットデータを複数生成する複製部、前記複製部により生成された複数のパケットデータを、前記送信側端末が備える複数の送信接続部から同時に送信する同時送信部、として機能させ、前記受信側端末は、一又は複数の受信側ネットワークと一又は複数の通信回線を介して接続可能な一又は複数の受信接続部を備え、前記受信側端末を構成するコンピュータを、前記送信側端末から送信された複数のパケットデータを、前記受信接続部を介して受信する受信部、前記複数のパケットデータのうち、前記受信部が先に受信したパケットを用いて前記対象データを復元するパケット処理部、として機能させ、前記送信側ネットワークと前記受信側ネットワークのうちの少なくとも一方が複数のネットワークにより構成され、当該複数のネットワークは、第1のプロバイダにより提供されるネットワークと、前記第1のプロバイダとは異なる第2のプロバイダにより提供されるネットワークと、を含むようにしてある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パケットロスや遅延・ジッタの発生を低減することができ、ネットワークを介した動画や音声等の送受信や再生を好適に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る通信システムの基本構成図である。
【
図2】本発明の通信装置の一例である送信側端末及び受信側端末のハードウェア構成図である。
【
図3】第1実施形態に係る通信システムのネットワーク概略図である。
【
図4】第1実施形態に係る通信システムの具体的構成の一例を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る通信システムの機能ブロック図である。
【
図6】第1実施形態に係る通信システムにおけるパケットデータの送受信の態様を示す図である。(a)は音声「あ・・・い・・・う・・・」のパケットデータの構成を示しており、(b)はパケットデータをバックボーンA経由で送受信した場合を示しており、(c)はパケットデータをバックボーンB経由で送受信した場合を示しており、(d)受信側端末において先に受信したパケットを再生(バファリングせずに再生)した場合を示している。
【
図7】第2実施形態に係る通信システムのネットワーク概略図である。
【
図8】第2実施形態に係る通信システムの具体的構成の一例を示す図である。
【
図9】第2実施形態に係る通信システムの機能ブロック図である。
【
図10】第3実施形態に係る通信システムのネットワーク概略図である。
【
図11】第3実施形態に係る通信システムの具体的構成の一例を示す図である。
【
図12】第3実施形態に係る通信システムの機能ブロック図である。
【
図13】第4実施形態に係る通信システムの具体的構成の一例を示す図である。
【
図14】第5実施形態に係る通信システムの具体的構成の一例を示す図である。
【
図16】従来の通信システムにおけるパケットデータの送受信の態様であって、従来の通信システムにおける問題を示す図である。(a)は音声「あ・・・い・・・う・・・」のパケットデータの構成を示しており、(b)はパケットデータの送受信態様を示しており、(c)は受信側端末においてパケットをバファリングせずに再生した場合の問題を示しており、(d)はパケットを受信側端末においてバファリングせずに再生した場合の問題を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の通信システム1の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0013】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係る通信システム1について説明する。
図1は、第1実施形態に係る通信システム1の基本構成図である。
図1に示すように、通信システム1は、送信側端末10と受信側端末20とを備え、これらが光回線などの固定インターネット回線(以下、インターネット回線という)や移動体通信網などのネットワーク30を介して通信可能に接続されて構成される。
また、
図1に示すように、この通信システム1では、動画や音声等の対象データを送信側端末10から受信側端末20に送信する場合、送信側端末10では、対象データを一定量毎の単位データである「パケット」に時間分割(パケット化)して「パケットデータ」を生成しつつ、各パケットのヘッダに時系列情報(以下、パケット番号という)や送付先のIPアドレス(以下、宛先情報ともいう)等を付して送信する処理が実行され、受信側端末20では、受信した各パケットをパケット番号に従って組み立てることで対象データを復元するパケット通信が採用されている。
なお、本発明において、インターネット通信におけるプロトコルはUDP方式が用いられており、当該UDP方式に基づいてパケット通信が実行されるものとする。
【0014】
図2は、送信側端末10及び受信側端末20のハードウェア構成図である。
送信側端末10及び受信側端末20は、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータなどの端末機器(本発明の通信装置にも相当)であり、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信部14と、入力装置15と、出力装置16とを備えるコンピュータである。
プロセッサ11は、制御部、演算部、レジスタ等を含む中央処理部(CPU)を備え、コンピュータ全体を制御する。
プロセッサ11は、プログラム及びデータ等を、ストレージ13や通信部14からメモリ12に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。
メモリ12は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM、EPROM、EEPROM、RAM等である。
【0015】
ストレージ13は、コンピュータが読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ等である。
通信部14は、有線又は無線による通信回線を介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えば、ネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュール等である。
送信側端末10及び受信側端末20は、LANケーブル等の接続が可能なイーサネット(登録商標)端子あるいは無線通信モジュールを備えており、それぞれの通信部14は、LANケーブルや無線通信回線等を介して接続されたインターネット回線を介して通信を実行することができる。
「無線通信モジュール」には、移動体通信網との無線通信モジュール、Wi-Fi(登録商標)との無線通信モジュール、USB外付けもしくはPC内蔵のSIM入りの無線通信モジュールなどの各種無線通信モジュールを含む。
また、送信側端末10及び受信側端末20が、USB端子を備えている場合は、USB端子に接続されたスマートフォンのデザリング機能を利用して同様の通信を実行することもできる。
【0016】
入力装置15は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、マイクロフォン、キーボード、マウス、スイッチ、ボタン、センサなど)である。
例えば、送信側端末10において、当該端末に接続されたマイクロフォンにより音声を入力することができる。
出力装置16は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ヘッドフォン、スピーカ、モニター、ディスプレイ、表示パネル、LEDランプなど)である。
例えば、受信側端末20において、当該端末に接続されたヘッドフォンやスピーカから音声を出力することができる。
【0017】
図3は、第1実施形態に係る通信システム1のネットワーク概略図である。
図4は、第1実施形態に係る通信システム1の具体的構成の一例を示す図である。
これらの図に示すように、第1実施形態の通信システム1は、送信側において独立した2本のインターネット回線を備えることで、送信側ネットワークを二重化した構成としている。
具体的には、送信側端末10は、プロバイダAにより提供されるネットワークA(インターネット回線A)と通信回線を介して接続されると共に、プロバイダAとは異なるプロバイダBにより提供されるネットワークB(インターネット回線B)と通信回線を介して接続される。
受信側端末20は、プロバイダZにより提供される1つのネットワークZと接続される。
ネットワークAとネットワークZとは、バックボーンAを介して接続されており、ネットワークBとネットワークZとは、バックボーンBを介して接続されている。
なお、「プロバイダ」は、インターネットサービスプロバイダ(ISP)の略称であり、インターネットサービスを提供、管理、運営、管轄等を行うインターネット接続事業者のことをいう。
「プロバイダ」には、固定電話網、光回線、移動体通信網の提供、管理、運営、管轄等を行う通信キャリア(通信回線事業者)を含むものとする。
「プロバイダZ」の「Z」は、「任意」を意味する。すなわち、「プロバイダZ」は、「任意のプロバイダ」を意味するものであり、プロバイダAやプロバイダBと同じプロバイダでもよく、異なるプロバイダでもよい。
「バックボーン」とは、プロバイダ間を結ぶ基幹通信網、すなわち、あるプロバイダが提供するネットワークと他のプロバイダが提供するネットワークとを結ぶコアネットワークのことである。
【0018】
図4に示すように、ここでは、送信側PC(送信側端末10)に接続されたマイクロフォンからの入力音声を、ネットワーク30(送信側ネットワーク及び受信側ネットワーク)を経由して受信側PC(受信側端末20)に送信することで、受信側PC(受信側端末20)に接続したヘッドフォン等から、その音声を再生するケースを一例として説明する。
なお、音声に限らず、送信側端末10の内蔵カメラ等により撮影された動画(映像)を送信したり、動画及び音声を送信することで、これらを受信側端末20で再生するケースにも適用することができる。
音声や動画以外にも、送受信可能な様々なデータであれば適用することができる。
【0019】
図4に示すように、送信側端末10及び受信側端末20は、ネットワークとの接続手段(本発明の接続部)としてイーサネット端子を備えている。
送信側端末10は、送信側ネットワークであるインターネット回線が二重化されていることに対応して、2つのイーサネット端子を備えている。
具体的には、送信側端末10は、プロバイダAにより提供されるネットワークA(インターネット回線A)と接続するためのイーサネット端子Aと、プロバイダBにより提供されるネットワークB(インターネット回線B)と接続するためのイーサネット端子Bと、を備えている。
受信側端末20は、受信側ネットワークであるインターネット回線が1つであることに対応して、1つのイーサネット端子を備えている。
具体的には、受信側端末20は、プロバイダZにより提供されるネットワークZ(インターネット回線Z)と接続するためのイーサネット端子Zを備えている。
【0020】
送信側端末10及び受信側端末20は、より具体的には、ブロードバンドルータを介してネットワークと接続される。
ブロードバンドルータは、プロバイダにより提供されるネットワーク(事業者側ネットワーク)と、ユーザ側ネットワークとの中継装置であり、一般的には、ユーザ宅内において回線終端装置の配下に設けられる。
以下、送信側において、ネットワークAにおけるブロードバンドルータをブロードバンドルータAといい、ネットワークBにおけるブロードバンドルータをブロードバンドルータBという。受信側において、ネットワークZにおけるブロードバンドルータをブロードバンドルータZという。
ブロードバンドルータAのWAN側ポートにはインターネット回線Aが接続される。
ブロードバンドルータAのLAN側ポートには送信側端末10が接続される。具体的には、LAN側ポートには、LANケーブルなどの通信ケーブルの一端が接続され、その他端が送信側端末10のイーサネット端子Aに接続される。
同様に、ブロードバンドルータBにおいて、WAN側ポートにはインターネット回線Bが接続され、LAN側ポートには送信側端末10(イーサネット端子B)が接続される。
ブロードバンドルータZにおいて、WAN側ポートにはインターネット回線Zが接続され、LAN側ポートには受信側端末20(イーサネット端子Z)が接続される。
【0021】
なお、「インターネット回線」は、例えば、利用者が、所定のプロバイダにインターネットサービスの利用申請を行うことで開通させることができ、「ブロードバンドルータ」は、そのプロバイダから提供されるものや別に用意したものを用いることができる。
つまり、ネットワークA(インターネット回線A)は、プロバイダAに利用申請を行うことで構成することができ、ネットワークB(インターネット回線B)は、プロバイダBに利用申請を行うことで構成することができる。
また、ブロードバンドルータを用いず、他の装置(モデム等)を用いることもできる。
また、イーサネット端子は、端末機器に予め内蔵されているものを用いてもよく、USBインタフェース等を介して外付けしたものやPCに内蔵された無線通信モジュールを用いることもできる。
【0022】
図5は、第1実施形態に係る通信システム1の機能ブロック図である。
(送信側端末10)
送信側端末10は、
図5に示すように、複製部50と、同時送信部51と、接続部52と、を備える。
このうち、接続部52は、第1接続部521と第2接続部522とにより構成される。
第1接続部521は、具体的には、イーサネット端子Aであり、プロバイダAにより提供されるネットワークAとの接続を行う。
第2接続部522は、具体的には、イーサネット端子Bであり、プロバイダBにより提供されるネットワークBとの接続を行う。
【0023】
送信側端末10は、プロセッサ11がプログラム(本発明の通信プログラム)を実行して各部を制御することで、以下に述べる機能が実現される。
複製部50は、対象データのパケットデータを複数生成する。
ここでは、マイクロフォンから入力した音声「あ・・・い・・・う・・・」と同じ音声データ「あ・・・い・・・う・・・」を複製し、当該複製によって得られた2つの音声データ「あ・・・い・・・う・・・」をそれぞれ0.1秒間隔のパケットに分割(パケット化)してパケットデータを生成するものとする。
なお、パケット化→複製の手順でもよい。
【0024】
同時送信部51は、複製部50により生成された複数のパケットデータを、複数の接続部52からそれぞれ同時に送信する。
具体的には、第1のパケットデータ「あ・・・い・・・う・・・」を第1接続部521(イーサネット端子A)から送信すると同時に、第2のパケットデータ「あ・・・い・・・う・・・」を第2接続部522(イーサネット端子B)から送信する。
例えば、それぞれのパケットデータの送信開始タイミングを同時にすればよく、つまりは、それぞれの冒頭パケット(パケット番号1のパケット)の送信開始タイミングを同時にすればよい。
送信される各パケットには、宛先情報やパケット番号等が格納されたヘッダが付される。
第1のパケットデータ及び第2のパケットデータの各パケットには、いずれも、受信側のネットワークZに接続されているブロードバンドルータZ向けの宛先情報が付されるように、送信側端末10での操作によって当該宛先情報が設定される。
具体的には、ブロードバンドルータZに付されるグローバルIPアドレスが設定される。
なお、グローバルIPアドレスは、インターネット回線Zの申請時にプロバイダZから提供される。
これにより、第1のパケットデータの各パケットは、第1接続部521から送信(パケット送信)された後、「送信側ネットワークA」→「バックボーンA」→「受信側ネットワークZ」といった経路(A経路ともいう)を経由して、ブロードバンドルータZの中継を経て、受信側端末20(イーサネット端子Z)において受信(パケット受信)可能になる。
第2のパケットデータの各パケットは、第2接続部522から送信(パケット送信)された後、「送信側ネットワークB」→「バックボーンB」→「受信側のネットワークZ」といった経路(B経路ともいう)を経由して、ブロードバンドルータZの中継を経て、受信側端末20(イーサネット端子Z)において受信(パケット受信)可能になる。
【0025】
(受信側端末20)
受信側端末20は、
図5に示すように、パケット処理部60と、受信部61と、接続部62と、を備える。
このうち、接続部62は、受信側ネットワークと通信回線を介して接続するための接続手段である。
接続部62は、具体的には、イーサネット端子Zであり、プロバイダZにより提供されるネットワークZとの接続を行う。
【0026】
受信側端末20は、プロセッサ11がプログラム(本発明の通信プログラム)を実行して各部を制御することで、以下に述べる機能が実現される。
受信部61は、送信側端末10から送信された複数のパケットデータを、接続部62を介して受信する。
【0027】
パケット処理部60は、送信側端末10から送信された複数のパケットデータのうち、受信部61が先に受信したパケットを用いて対象データを復元する。
例えば、送信側端末10の第1接続部521から送信された第1のパケットデータの各パケットは、A経路を経由して受信され、他方、送信側端末10の第2接続部522から送信された第2のパケットデータの各パケットは、B経路を経由して受信されるところ、例えば、第1のパケットデータにおけるパケット番号1のパケットが、第2のパケットデータにおけるパケット番号1のパケットよりも先に受信した場合には、第1のパケットデータにおけるパケット番号1のパケットを採用し、第2のパケットデータにおけるパケット番号1のパケットは採用しない(例えば破棄する)。
なお、受信側のネットワークZは1回線であるため、当該ネットワークZ内でパケットロスが無い限り、ネットワークZへの到達順に従って、受信側端末20においてパケットが受信されることになる。
パケット番号2以降についても同様の処理を行う。
そして、採用したパケットをパケット番号に従って組み立てることによって元の対象データを再生可能に復元することができる。
これにより、送信側端末10に接続されたマイクロフォンから入力された音声「あ・い・う・・・」を、受信側端末20に接続されたヘッドフォン等で再生することができる。
【0028】
図6は、マイクロフォンから入力した音声「あ・・・い・・・う・・・」を送信側端末10から受信側端末20に向けて送信する場合の説明図である。
図6(a)は、
図16(a)と同様であるため、関連する説明は、既述の説明(「発明が解決しようとする課題」)を参照するものとして省略する。
【0029】
図6(b)は、第1のパケットデータ「あ・・・い・・・う・・・」が、送信側端末10から送信されてからA経路を経由して受信側端末20により受信されるまでのパケット毎の受信時間を示している。
同図に示すように、各パケットの中には、「あ・・・」のように、パケット送信時から0.2秒後に(つまり遅滞なく)受信側端末20において受信される場合もあるが、「い・・・」のように、一部のパケットがA経路を通過する過程で遅延する結果、受信が遅延するものがある。
具体的には、「い・・・」の冒頭パケット(パケット番号11のパケット)は、ネットワークの通過が0.8秒遅延することで、「パケット送信」時から「パケット受信」までに1秒の時間を要するものとなっている(
図6(b)参照)。
【0030】
他方、
図6(c)は、第2のパケットデータ「あ・・・い・・・う・・・」が、送信側端末10から送信されてからB経路を経由して受信側端末20により受信されるまでのパケット毎の受信時間を示している。
同図に示すように、この場合、「い・・・」の各パケットは、パケット送信時から0.2秒後に(つまり遅滞なく)受信側端末において受信されている。
詳細には、「い・・・」の冒頭パケット(パケット番号1のパケット)は、遅延することなく受信側端末20において受信されている。
【0031】
このように、第1のパケットデータと第2のパケットデータを送信側から同時に送信した場合、一方のネットワークA(バックボーンA等を含む)においては一部のパケットについて長時間の遅延が一定の確率(数%)で発生するが、他方のネットワークB(バックボーンB等を含む)において、そのパケットと同じパケットに対し長時間の遅延が発生する確率は極めて少ない。パケット破棄によるパケットロスも同様である。
図6(b)及び
図6(c)は、そのことを端的に示すものである(経過時間1.1秒時等参照)。
例えば、1つのネットワークにおける長時間遅延やパケットロスの発生確率を3%とすると、本実施形態のように2つのネットワークにおける長時間遅延やパケットロスの発生確率は概ね0.09%(=3%×3%)となる。
【0032】
図6(d)は、受信側端末20において先に受信したパケットをバファリングせずに再生した場合を示している。
すなわち、同図は、A経路を経由して送信されたパケットと、B経路を経由して送信されたパケットのうち、最先に受信したパケットを組み立てつつ元のデータ「あ・・・い・・・う・・・」を再生した場合における再生時の経過時間を示している。
同図に示すように、「あ・・・い・・・う・・・」は、遅滞なく(送信時から0.2秒後)、かつ、途切れ(パケットロス)もなく再生されている。
つまり、バファリングを設けていないため、バファリング時間を待たずに再生することで遅延することなく再生ができる。
これは、パケットの長時間遅延やパケットロスは、パケット全体としてはごく一部(数%程度)の事象であり、他のほとんどのパケットは比較的最小の遅延で受信されるからである。
すなわち、このような事象に基づけば、複数の異なるプロバイダによって提供される複数のネットワークやバックボーンをパケットが通過する際、同じパケット(パケット番号が同じパケット)が共に長時間遅延したりパケットロスが発生する確率は極めて低いため、バファリングをせずとも、途切れ(瞬断)なくデータを再生することができる。
以上のように、本発明の第1実施形態に係る通信システム1は、送信側ネットワークを二重化することで、送信側ネットワーク全体として長時間遅延やパケットロスの発生を低減するものであり、これにより、ネットワークを介した動画や音声のリアルタイム再生を、遅延や途切れのない高品質で、かつ、安定的に実行することができる。
【0033】
これに対し、従来の通信システムにおいて、具体的な効果や実現性のある二重化構成は実現されていなかった。
例えば、ネットワーク資源は事業者(通信事業者、プロバイダ等)の管理下にあるため、ユーザが容易に実現できるものではなかった。
また、仮に、あるプロバイダが提供するインターネットサービスを複数加入することで二重化を図ったとしても、パケットは、オペレーティングシステムによってどちらか一方のネットワークのみを介して送受信されるため、そのネットワークにおいて発生するパケットの長時間遅延やパケットロスの問題を解消することはできない。
第1実施形態の通信システム1は送信側ネットワークを二重化し、送信側では、異なるプロバイダが提供する複数の送信側ネットワークを介して、複製された複数のパケットデータを同時送信し、受信側では、最先の受信パケットに基づいて元のデータを復元するようにしている。
このため、第1実施形態の通信システム1によれば、従来の通信システムにおいて想定される、これらの問題を効果的に解決することができる。
なお、第1実施形態の通信システム1は、受信側ネットワークは1回線であるため、当該ネットワーク内で発生した長時間遅延やパケットロスの問題を解消することはできないが、これについては、受信側ネットワークを二重化した第2実施形態や第3実施形態に係る通信システム1によって対応することができる。
【0034】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る通信システム1について説明する。
なお、通信システム1の基本構成や、送信側端末10及び受信側端末20のハードウェア構成は、第1実施形態と共通するため、詳細な説明は省略する。
【0035】
図7は、第2実施形態に係る通信システム1のネットワーク概略図である。
図8は、第2実施形態に係る通信システム1の具体的構成の一例を示す図である。
これらの図に示すように、第2実施形態の通信システム1は、受信側において2本の独立したインターネット回線を備えることで、受信側ネットワークを二重化した構成としている。
具体的には、受信側端末10が、プロバイダAにより提供されるネットワークA(インターネット回線A)と通信回線を介して接続されると共に、プロバイダBにより提供されるネットワークB(インターネット回線B)と通信回線を介して接続される。
なお、ネットワークAとネットワークZとは、バックボーンAを介して接続されており、ネットワークBとネットワークZとは、バックボーンBを介して接続されている。
送信側端末10は、プロバイダZにより提供される1つのネットワークZと接続される。
【0036】
図8に示すように、送信側端末10及び受信側端末20は、ネットワークとの接続手段(本発明の接続部)としてイーサネット端子もしくは無線通信モジュールを備えている。
送信側端末10は、送信側ネットワークが1つであることに対応して、1つのイーサネット端子を備えている。
具体的には、送信側端末10は、プロバイダZにより提供されるネットワークZ(インターネット回線Z)と接続するためのイーサネット端子Zを備えている。
受信側端末20は、受信側ネットワークが二重化されていることに対応して、2つのイーサネット端子もしくは無線通信モジュールを備えている。
具体的には、受信側端末20は、プロバイダAにより提供されるネットワークA(インターネット回線A)と接続するためのイーサネット端子Aと、プロバイダBにより提供されるネットワークB(インターネット回線B)と接続するためのイーサネット端子Bと、を備えている。
【0037】
送信側端末10及び受信側端末20は、より具体的には、ブロードバンドルータを介してネットワークと接続される。
以下、送信側において、ネットワークZにおけるブロードバンドルータをブロードバンドルータZという。受信側において、ネットワークAにおけるブロードバンドルータをブロードバンドルータAといい、ネットワークBにおけるブロードバンドルータをブロードバンドルータBという。
ブロードバンドルータZにおいて、WAN側ポートにはインターネット回線Zが接続され、LAN側ポートには送信側端末10(イーサネット端子Z)が接続される。
ブロードバンドルータAにおいて、WAN側ポートにはインターネット回線Aが接続され、LAN側ポートには受信側端末20(イーサネット端子A)に接続される。
ブロードバンドルータBにおいて、WAN側ポートにはインターネット回線Bが接続され、LAN側ポートには受信側端末20(イーサネット端子B)が接続される。
【0038】
図9は、第2実施形態に係る通信システム1の機能ブロック図である。
【0039】
(送信側端末10)
送信側端末10は、
図9に示すように、複製部50と、同時送信部51と、接続部52と、を備える。
このうち、接続部52は、送信側ネットワークと通信回線を介して接続するための接続手段である。
接続部52は、具体的には、イーサネット端子Zであり、プロバイダZにより提供されるネットワークZとの接続を行う。
【0040】
送信側端末10は、プロセッサ11がプログラム(本発明の通信プログラム)を実行して各部を制御することで、以下に述べる機能が実現される。
複製部50は、対象データのパケットデータを複数生成する。
同時送信部51は、複製部50により生成された複数のパケットデータを、接続部52から受信側端末20に向けてそれぞれ同時に送信する。
具体的には、第1のパケットデータ「あ・・・い・・・う・・・」を接続部52(イーサネット端子A)から送信すると同時に、第2のパケットデータ「あ・・・い・・・う・・・」を接続部52から送信する。
第1のパケットデータの各パケットには、ブロードバンドルータA向けの宛先情報が付されるように、送信側端末10での操作によって当該宛先情報が設定される。
具体的には、ブロードバンドルータAに付されるグローバルIPアドレスが設定される。
第2のパケットデータの各パケットには、ブロードバンドルータB向けの宛先情報が付されるように、送信側端末10での操作によって当該宛先情報が設定される。
具体的には、ブロードバンドルータBに付されるグローバルIPアドレスが設定される。
これにより、第1のパケットデータの各パケットは、接続部52から送信(パケット送信)された後、「送信側ネットワークZ」→「バックボーンA」→「受信側ネットワークA」といった経路(以下、経路Aともいう)を経由して、ブロードバンドルータAの中継を経て、受信側端末20(イーサネット端子A)において受信(パケット受信)可能になる。
第2のパケットデータの各パケットは、接続部52から送信(パケット送信)された後、「送信側ネットワークZ」→「バックボーンB」→「受信側ネットワークB」といった経路(以下、経路Bともいう)を経由して、ブロードバンドルータBの中継を経て、受信側端末20(イーサネット端子B)において受信(パケット受信)可能になる。
【0041】
(受信側端末20)
受信側端末20は、
図9に示すように、パケット処理部60と、受信部61と、接続部62と、を備える。
接続部62は、受信側ネットワークと通信回線を介して接続するための接続手段であり、複数の受信側ネットワークに対応して第1接続部621と第2接続部622とを備える。
第1接続部621は、具体的には、イーサネット端子Aもしくは無線通信モジュールであり、プロバイダAにより提供されるネットワークAとの接続を行う。
第2接続部622は、具体的には、イーサネット端子Bもしくは無線通信モジュールであり、プロバイダBにより提供されるネットワークBとの接続を行う。
【0042】
受信側端末20は、プロセッサ11がプログラム(本発明の通信プログラム)を実行して各部を制御することで、以下に述べる機能が実現される。
受信部61は、送信側端末10から送信された複数のパケットデータを、接続部62を介して受信する。
具体的には、経路Aを経由して受信した第1のパケットデータを、第1接続部621を介して受信し、経路Bを経由して受信した第2のパケットデータを、第2接続部622を介して受信する。
【0043】
パケット処理部60は、送信側端末10から送信された複数のパケットデータのうち、受信部61が先に受信したパケットを用いて対象データを復元する。
例えば、第1のパケットデータの各パケットは、経路Aを経由し、第1接続部621を介して受信され、他方、第2のパケットデータの各パケットは、経路Bを経由し、第2接続部622を介して受信されるところ、例えば、第1のパケットデータにおけるパケット番号1のパケットが、第2のパケットデータにおけるパケット番号1のパケットよりも先に受信した場合には、第1のパケットデータにおけるパケット番号1のパケットを採用し、第2のパケットデータにおけるパケット番号1のパケットは採用しない(例えば破棄する)。
パケット番号2以降についても同様の処理を行う。
そして、採用したパケットをパケット番号に従って組み立てることによって元の対象データを再生可能に復元することができる。
これにより、送信側端末10に接続されたマイクロフォンから入力された音声「あ・・・い・・・う・・・」を、受信側端末20に接続されたヘッドフォン等で再生することができる。
【0044】
以上のように、第1実施形態の通信システム1は受信側ネットワークを二重化し、送信側では、複製された複数のパケットデータを同時送信し、受信側では、異なるプロバイダが提供する複数の受信側ネットワークを介して最先の受信パケットに基づいて元のデータを復元するようにしている。
これにより、受信側ネットワーク全体として長時間遅延やパケットロスの発生を低減することができ、ネットワークを介した動画や音声の再生の品質や即時性を高めることができる。
【0045】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る通信システム1について説明する。
なお、通信システム1の基本構成や、送信側端末10及び受信側端末20のハードウェア構成は、第1実施形態と共通するため、詳細な説明は省略する。
【0046】
図10は、第3実施形態に係る通信システム1のネットワーク概略図である。
図11は、第3実施形態に係る通信システム1の具体的構成の一例を示す図である。
これらの図に示すように、第3実施形態の通信システム1は、送信側と受信側においてそれぞれ独立した2本のインターネット回線を備えることで、送信側ネットワークと受信側ネットワークをそれぞれ二重化した構成としている。
具体的には、送信側端末10が、プロバイダAにより提供されるネットワークA(インターネット回線A)と通信回線を介して接続されると共に、プロバイダBにより提供されるネットワークB(インターネット回線B)と通信回線を介して接続される。
受信側端末20は、プロバイダCにより提供されるネットワークC(インターネット回線C)と通信回線を介して接続されると共に、プロバイダDにより提供されるネットワークD(インターネット回線D)と通信回線を介して接続される。
ネットワークAとネットワークCとは、バックボーンA-Cを介して接続されており、ネットワークAとネットワークDとは、バックボーンA-Dを介して接続されている。
ネットワークBとネットワークCとは、バックボーンB-Cを介して接続されており、ネットワークBとネットワークDとは、バックボーンB-Dを介して接続されている。
【0047】
図11に示すように、送信側端末10及び受信側端末20は、ネットワークとの接続手段(本発明の接続部)としてイーサネット端子もしくは無線通信モジュールを備えている。
送信側端末10は、送信側ネットワークが二重化されていることに対応して、2つのイーサネット端子もしくは無線通信モジュールを備えている。
具体的には、送信側端末10は、プロバイダAにより提供されるネットワークA(インターネット回線A)と接続するためのイーサネット端子Aと、プロバイダBにより提供されるネットワークB(インターネット回線B)と接続するためのイーサネット端子Bと、を備えている。
受信側端末20は、受信側ネットワークが二重化されていることに対応して、2つのイーサネット端子を備えている。
具体的には、受信側端末20は、プロバイダCにより提供されるネットワークC(インターネット回線C)と接続するためのイーサネット端子Cと、プロバイダDにより提供されるネットワークD(インターネット回線D)と接続するためのイーサネット端子Dと、を備えている。
【0048】
送信側端末10及び受信側端末20は、より具体的には、ブロードバンドルータを介してネットワークと接続される。
以下、送信側において、ネットワークAにおけるブロードバンドルータをブロードバンドルータAといい、ネットワークBにおけるブロードバンドルータをブロードバンドルータBという。受信側において、ネットワークCにおけるブロードバンドルータをブロードバンドルータCといい、ネットワークDにおけるブロードバンドルータをブロードバンドルータDという。
ブロードバンドルータAにおいて、WAN側ポートにはインターネット回線Aが接続され、LAN側ポートには送信側端末10(イーサネット端子A)が接続される。
ブロードバンドルータBにおいて、WAN側ポートにはインターネット回線Bが接続され、LAN側ポートには送信側端末10(イーサネット端子B)が接続される。
ブロードバンドルータCにおいて、WAN側ポートにはインターネット回線Cが接続され、LAN側ポートには受信側端末20(イーサネット端子C)が接続される。
ブロードバンドルータDにおいて、WAN側ポートにはインターネット回線Dが接続され、LAN側ポートには受信側端末20(イーサネット端子D)が接続される。
【0049】
図12は、第3実施形態に係る通信システム1の機能ブロック図である。
【0050】
(送信側端末10)
送信側端末10は、
図12に示すように、複製部50と、同時送信部51と、接続部52と、ネットワーク選択部53と、を備える。
接続部52は、送信側ネットワークと通信回線を介して接続するための接続手段であり、複数の送信側ネットワークに対応して第1接続部521と第2接続部522とを備える。
第1接続部521は、具体的には、イーサネット端子Aであり、プロバイダAにより提供されるネットワークAとの接続を行う。
第2接続部522は、具体的には、イーサネット端子Bであり、プロバイダBにより提供されるネットワークBとの接続を行う。
【0051】
送信側端末10は、プロセッサ11がプログラム(本発明の通信プログラム)を実行して各部を制御することで、以下に述べる機能が実現される。
複製部50は、対象データのパケットデータを複数生成する。
例えば、複製部50は、対象データのパケットデータを2つ~4つ複製することができる。
同時送信部51は、複製部50により生成された複数のパケットデータを、複数の接続部52から受信側端末20に向けてそれぞれ同時に送信する。
【0052】
例えば、2つのパケットデータを送信する場合、第1のパケットデータを第1接続部521(イーサネット端子A)から送信すると同時に、第2のパケットデータを第2接続部522(イーサネット端子B)から送信する。
第1のパケットデータには、ブロードバンドルータC向けの宛先情報が付される。
第2のパケットデータには、ブロードバンドルータD向けの宛先情報が付される。
これにより、第1のパケットデータの各パケットは、第1接続部521から送信(パケット送信)された後、「送信側ネットワークA」→「バックボーンA-C」→「受信側ネットワークC」といった経路(以下、経路A-Cともいう)を通過し、ブロードバンドルータCの中継を経て、受信側端末20(イーサネット端子C)において受信(パケット受信)可能になる。
第2のパケットデータの各パケットは、第2接続部522から送信(パケット送信)された後、「送信側ネットワークB」→「バックボーンB-D」→「受信側ネットワークD」といった経路(以下、経路B-Dともいう)を通過し、ブロードバンドルータDの中継を経て、受信側端末20(イーサネット端子D)において受信(パケット受信)可能になる。
【0053】
例えば、4つのパケットデータを送信する場合、第1のパケットデータ及び第2のパケットデータを第1接続部521(イーサネット端子A)から同時送信すると同時に、第3のパケットデータ及び第4のパケットデータを第2接続部522(イーサネット端子B)から同時送信する。
第1のパケットデータには、ブロードバンドルータC向けの宛先情報が付される。
第2のパケットデータには、ブロードバンドルータD向けの宛先情報が付される。
第3のパケットデータには、ブロードバンドルータC向けの宛先情報が付される。
第4のパケットデータには、ブロードバンドルータD向けの宛先情報が付される。
これにより、第1のパケットデータの各パケットは、第1接続部521から送信(パケット送信)された後、「送信側ネットワークA」→「バックボーンA-C」→「受信側ネットワークC」を通過し、ブロードバンドルータCの中継を経て、受信側端末20(イーサネット端子C)において受信(パケット受信)可能になる。
第2のパケットデータの各パケットは、第1接続部521から送信(パケット送信)された後、「送信側のネットワークA」→「バックボーンA-D」→「受信側ネットワークD」を通過し、ブロードバンドルータDの中継を経て、受信側端末20(イーサネット端子D)において受信(パケット受信)可能になる。
第3のパケットデータの各パケットは、第2接続部522から送信(パケット送信)された後、「送信側ネットワークB」→「バックボーンB-C」→「受信側ネットワークC」を通過し、ブロードバンドルータCの中継を経て、受信側端末20(イーサネット端子C)において受信(パケット受信)可能になる。
第4のパケットデータの各パケットは、第2接続部522から送信(パケット送信)された後、「送信側ネットワークB」→「バックボーンB-D」→「受信側ネットワークD」を通過し、ブロードバンドルータDの中継を経て、受信側端末20(イーサネット端子D)において受信(パケット受信)可能になる。
つまり、これら4つのパケットデータを送信する場合、4本のバックボーンA-C、A-D、B-C、B-Dによる、「たすき掛け」状の経路を経由して各パケットが送受信される。
【0054】
ネットワーク選択部53は、送信側端末10での操作によってパケットの通信経路(すなわち、通過するネットワーク)を選択可能とする機能である。
すなわち、ネットワーク選択部53は、同時送信部51により送信されるパケットデータを、第1のプロバイダにより提供されるネットワークを経由させる第1経路と、第2のプロバイダにより提供されるネットワークを経由させる第2経路と、のうちのいずれか一方又は双方を選択可能にしてある。
具体的には、例えば、パケットデータが2つの場合において、第1接続部521から送信する第1のパケットデータをプロバイダCにより提供されるネットワークC(つまり経路A-C)を経由させたい場合には、各パケットにブロードバンドC向けの宛先情報が付されるように設定すればよく、第2接続部522から送信する第2のパケットデータをプロバイダDにより提供されるネットワークD(つまり経路B-D)を経由させたい場合には、各パケットにブロードバンドD向けの宛先情報が付されるように設定すればよい。
また、パケットデータが4つの場合において、第1接続部521から送信する第1のパケットデータをプロバイダCにより提供されるネットワークC(つまり経路A-C)を経由させたい場合には、各パケットにブロードバンドC向けの宛先情報が付されるように設定すればよく、第1接続部521から送信する第2のパケットデータをプロバイダDにより提供されるネットワークD(つまり経路A-D)を経由させたい場合には、各パケットにブロードバンドD向けの宛先情報が付されるように設定すればよく、第2接続部522から送信する第3のパケットデータをプロバイダCにより提供されるネットワークC(つまり経路B-C)を経由させたい場合には、各パケットにブロードバンドC向けの宛先情報が付されるように設定すればよく、第2接続部522から送信する第4のパケットデータをプロバイダDにより提供されるネットワークD(つまり経路B-D)を経由させたい場合には、各パケットにブロードバンドD向けの宛先情報が付されるように設定すればよい。
つまり、宛先情報の設定によって、任意のネットワーク(受信側)や経路を経由させることができる。
なお、送信側端末10において、パケットデータの送信元として、第1接続部521か第2接続部522かを選択することもでき、これによっても、任意のネットワーク(送信側)や経路を経由させることもできる。
これにより、例えば、使用中のネットワークにおいて、帯域幅使用率の増加、パケットロス率の増加、回線切断などの障害発生に関する情報などを知得した場合は、宛先情報を変更するなどの操作によって、使用するネットワークやその数を設定・変更することができ、これにより、帯域幅使用率の軽減、パケットロス率の低下、障害の回避等、ネットワークの最適化を図ることができる。
なお、パケットデータは、2つや4つに限らず、3つや5つ以上のパケットデータを同時送信することもでき、この場合、任意のネットワークや経路を指定して経由させることもできる。
【0055】
ネットワーク選択部53は、ネットワークの選択を自動的に実行することもできる。
すなわち、ネットワーク選択部53は、同時送信部51により送信するパケットデータを、第1のプロバイダにより提供されるネットワークを経由して送信させる第1経路と、第2のプロバイダにより提供されるネットワークを経由して送信させる第2経路と、のうちのいずれか一方又は双方を、パケットの受信状況に応じて選択することもできる。
具体的には、受信側端末20の受信状況送信部63により送信されたパケットの受信状況に関する情報基づいて、第1経路と、第2経路と、のうちのいずれか一方又は双方を選択させることができる。
【0056】
(受信側端末20)
受信側端末20は、
図12に示すように、パケット処理部60と、受信部61と、接続部62と、を備える。
接続部62は、受信側ネットワークと通信回線を介して接続するための接続手段であり、複数の受信側ネットワークに対応して第1接続部621と第2接続部622とを備える。
第1接続部621は、具体的には、イーサネット端子Aであり、プロバイダAにより提供されるネットワークAとの接続を行う。
第2接続部622は、具体的には、イーサネット端子Bであり、プロバイダBにより提供されるネットワークBとの接続を行う。
【0057】
受信側端末20は、プロセッサ11がプログラム(本発明の通信プログラム)を実行して各部を制御することで、以下に述べる機能が実現される。
受信部61は、送信側端末10から送信された複数のパケットデータを、接続部62を介して受信する。
2つのパケットデータの場合、第1のデータパケットの各パケットは、経路A-Cを経由し、第1接続部621を介して受信され、他方、第2のパケットデータの各パケットは、経路B-Dを経由し、第2接続部622を介して受信される。
4つのパケットデータの場合、第1のパケットデータの各パケットは、経路A-Cを経由し、第1接続部621を介して受信され、第2のパケットデータの各パケットは、経路A-Dを経由し、第2接続部622を介して受信され、第3のパケットデータの各パケットは、経路B-Cを経由し、第1接続部621を介して受信され、第4のパケットデータの各パケットは、経路B-Dを経由し、第2接続部622を介して受信される。
【0058】
パケット処理部60は、送信側端末10から送信された複数のパケットデータのうち、受信部61が先に受信したパケットを用いて対象データを復元する。
2つのパケットデータの場合、第1のパケットデータにおけるパケット番号1のパケットが、第2のパケットデータにおけるパケット番号1のパケットよりも先に受信した場合には、第1のパケットデータにおけるパケット番号1のパケットを採用し、第2のパケットデータにおけるパケット番号1のパケットは採用しない(例えば破棄する)。
4つのパケットデータの場合、第1~第4のパケットデータにおけるパケット番号1のパケットについては、第1のパケットデータにおけるパケットが最先に受信した場合には、当該パケットを採用し、第2~第4のパケットデータにおけるパケット番号1のパケットは採用しない。
パケット番号2以降についても同様の処理を行う。
そして、採用したパケットをパケット番号に従って組み立てることによって元の対象データを再生可能に復元することができる。
これにより、送信側端末10に接続されたマイクロフォンから入力された音声「あ・・・い・・・う・・・」を、受信側端末20に接続されたヘッドフォン等で再生することができる。
【0059】
受信状況送信部63は、受信側端末20におけるパケットの受信状況に関する情報を送信側端末10に送信する。
例えば、帯域幅使用率、パケットロス率、回線切断の有無などを取得・監視し、これらの情報を「パケットの受信状況に関する情報」として送信側端末10に送信する。
送信側端末10は、ネットワーク選択部53に、受信側端末20から受信したパケットの受信状況に関する情報に基づいて、第1経路と、第2経路と、のうちのいずれか一方又は双方を選択させる。
例えば、受信側端末20から受信した情報に基づき、帯域幅使用率が所定の閾値を超過した場合や、パケットロス率が所定の閾値を超過した場合や、回線切断を検知した場合は、自動的に宛先情報を変更するなどによって、使用するネットワークやその数を設定・変更することができ、これにより、帯域幅使用率の軽減、パケットロス率の低下、障害の回避等、ネットワークの最適化を自動的に図ることができる。
例えば、経路A-C、経路A-D、経路B-C、経路B-Dにかかる「たすき掛け」状の経路を経由して各パケットが送受信されている状態において、帯域幅使用率が上限基準値を超過した場合には、経路A-Dや経路B-Cを経由したパケットの送受信を取りやめ、経路A-Cと経路B-Dを介してパケットの送受信を行うように制御したり、経路A-Cと経路B-Dを介してパケットが送受信されている状態において、帯域幅使用率が下限基準値を下回った場合には、経路A-Dや経路B-Cを経由したパケットの送受信に加え、経路A-Dや経路B-Cを経由したパケットの送受信を開始させるように制御することができる。
すなわち、複数のネットワークを並列に設けて並行処理を行いつつ、トラフィックの増加や回線性能の不安定化などが原因で発生する通信瞬断のリスクを未然に回避可能な「自動最適化」を採用することで、安定した通信を提供できるようにしている。
【0060】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る通信システム1について説明する。
なお、通信システム1の基本構成や、送信側端末10及び受信側端末20のハードウェア構成は、第1実施形態と共通するため、詳細な説明は省略する。
【0061】
図13は、第4実施形態に係る通信システム1の具体的構成の一例を示す図である。
同図に示すように、第4実施形態の通信システム1は、送信側において独立したインターネット回線を3本備えることで、送信側ネットワークを三重化した構成としている。
第4実施形態の通信システム1においても、前述の実施形態と同様、送信側端末10において、対象データのパケットデータを3つ生成し、当該3つのパケットデータを、イーサネットA~Cから同時に送信する。
これにより、第1~第3のパケットデータを、送信側ネットワークA~Cをそれぞれ経由させて受信側に送信することができる。
受信側端末20において、送信側端末10から送信された第1~第3のパケットデータのうち、先に受信したパケットを用いて対象データを復元する処理を実行する。
第4実施形態の通信システム1によれば、前述の各実施形態に比べ、併用回線(併用ネットワーク)を増やしているため、遅延・ジッタ(以下、まとめて「遅延等」ともいう)やパケットロスの発生を一層低減することができる。
これは、複数の異なるプロバイダによって提供される複数のネットワークをパケットが通過する際、同じパケット(パケット番号が同じパケット)が共に長時間遅延したりパケットロスが発生する確率は極めて低く、併用回線(併用ネットワーク)の数を多くするほどその確率を低くすることができるからである。
なお、これに限らず、送信側のインターネット回線を四本以上備えることで、送信側ネットワークを四重化以上に構成することもできる。
また、受信側回線(受信側ネットワーク)を三重化したり四重化以上にすることもできる。
また、送信側回線(送信側ネットワーク)と受信側回線(受信側ネットワーク)を共に三重化したり四重化以上にすることもできる。
また、第4実施形態においても、送信側端末10にネットワーク選択部53の機能を備え、受信側端末20に受信状況通知部63の機能を備えることもできる。
これにより、多重ネットワークを並列に設けて多重処理を行いつつ、トラフィックの増加や回線性能の不安定化などが原因で発生する通信瞬断のリスクを未然に回避可能な「自動最適化」が実現でき、安定した通信を提供することができる。
【0062】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る通信システム1について説明する。
なお、通信システム1の基本構成や、送信側端末10及び受信側端末20のハードウェア構成は、第1実施形態と共通するため、詳細な説明は省略する。
【0063】
図14は、第5実施形態に係る通信システム1の具体的構成の一例を示す図である。
同図に示すように、第5実施形態の通信システム1は、移動体通信事業者(以下、無線キャリアという。)が提供する無線通信回線(移動体通信網)を併用した構成としている。
つまり、本発明の通信システム1は、有線と無線とを混在した構成にすることもできる。
具体的には、光回線等の固定インターネット回線(インターネット回線A)と、無線キャリアXにより提供される無線ネットワークX、及び、無線キャリアYにより提供される無線ネットワークYと、の3重に送信側ネットワークが構成されている。
このような構成は、光回線等の固定インターネット回線が1本しか利用できないような環境(場所)の場合に有効である。
すなわち、このような環境下にあっては、スマートフォン(スマホともいう)やモバイルルータの無線キャリアが提供する無線通信回線を併用することで、固定インターネット回線1本で通信を行うよりも遅延等やパケットロスの発生を低減させることができる。
特に、第5実施形態の通信システム1は、ドコモ(登録商標)などの無線キャリアXと、ソフトバンク(登録商標)などの無線キャリアYといった、異なる無線キャリアにより提供される複数の無線通信回線(無線ネットワーク)を併用した構成にしている。
この場合、無線基地局Xと無線基地局Yの地理的な位置が異なるとすると、スマホXと無線基地局Xの間の電波経路と、スマホYと無線基地局Yの間の電波経路とは異なるため、仮に一方の電波経路において電波障害によりパケットロスが発生したとしても、他方の電波経路において電波障害によりパケットロスが発生している確率は低い。
このため、無線キャリアにより提供される無線通信回線が1回線の場合よりも遅延等やパケットロスの発生を低減させることができる。
なお、これに限らず、固定インターネット回線と無線通信回線の二重化であってもよく、無線通信回線のみで二重化もしくは3重化以上の構成でもよい。
この他、固定インターネット回線と無線通信回線をそれぞれ何回線にするかは、任意に定めることができる。
また、第5実施形態においても、送信側端末10にネットワーク選択部53の機能を備え、受信側端末20に受信状況通知部63の機能を備えることもできる。
これにより、有線と無線の混在するネットワークを並列に設けて並行処理を行いつつ、トラフィックの増加や回線性能の不安定化などが原因で発生する通信瞬断のリスクを未然に回避可能な「自動最適化」が実現でき、安定した通信を提供することができる。
【0064】
以上のように、本発明の通信システムにおいては、送信側と受信側ネットワークのうちの一方又は双方を二重化(又は多重化)し、送信側では、複製された複数のパケットデータを同時に送信し、受信側では、先に受信したパケットに基づいて元のデータを復元するようにしている。
すなわち、本発明の通信システムは、あるネットワークでは、パケット単位で、パケットロスや長時間遅延が発生しても、他のネットワークでは、同じパケットでパケットロスや長時間遅延が発生する確率は極めて低いことに鑑み、送信側からは、複製した複数のパケットデータを、それぞれのネットワークに向けて、それぞれ同時送信し、受信側では、複数のパケットのうち、先に受信したパケットを採用するようにしている。
このような構成の通信システムによれば、動画や音声の再生をバファリングによる遅延なしに実行することができる。
従って、パケットの遅延等や欠損(パケットロス)を低減させることができ、動画や音声のリアルタイム再生を、途切れ(瞬断)や遅延のない高品質で、かつ安定的に実行することができる。
【0065】
以上、本発明の通信プログラム、通信システム、及び通信装置について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明の通信プログラム等は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、送信側端末10の内蔵カメラ又は外付けのカメラ等により撮影された動画(映像)を受信側端末20で再生するケースにも適用することができる。
この場合、パケットロスや遅延等による動画フレームの欠損の発生を低減することができる。
また、第3実施形態において説明した「自動最適化」の構成を、第2実施形態の通信システム1に適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、動画、音声のインターネット生放送、生中継、ストリーミングに好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1 通信システム
10 送信側端末
50 複製部
51 同時送信部
52 接続部
521 第1接続部
522 第2接続部
53ネットワーク選択部
20 受信側端末
60 パケット処理部
61 受信部
62 接続部
621 第1接続部
622 第2接続部
63 受信状況通知部
30 ネットワーク