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特許7557120情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20240919BHJP
   A63F 13/65 20140101ALI20240919BHJP
   A63F 13/79 20140101ALI20240919BHJP
   A63F 13/825 20140101ALI20240919BHJP
【FI】
G06T19/00 A
A63F13/65
A63F13/79
A63F13/825
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024032730
(22)【出願日】2024-03-05
【審査請求日】2024-03-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524084263
【氏名又は名称】REVOCS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】谷嶋 直美
(72)【発明者】
【氏名】夏目 理江
【審査官】渡部 幸和
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108499110(CN,A)
【文献】特開2010-017453(JP,A)
【文献】特表2021-526282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 19/00 - 19/20
A63F 13/00 - 13/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対象のDNA塩基配列情報を含む第1ゲノム情報を取得するゲノム取得部と、
前記ゲノム取得部で取得した前記第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正して第1修正ゲノム情報を得る変異修正部と、
前記第1修正ゲノム情報に基づき仮想キャラクタの形質情報を含む仮想キャラクタ情報を生成するキャラクタ生成部と、
を有し、
前記キャラクタ生成部は、
前記仮想キャラクタの基本となる形質が設定された第1表現型テーブルと、
前記第1修正ゲノム情報の前記DNA塩基配列情報の染色体番号、塩基ポジション及び遺伝子型に対応付けして前記仮想キャラクタの前記形質情報が設定される第2表現型テーブルと、
前記塩基ポジションと遺伝子型の前記変異情報とに対応付けて前記仮想キャラクタの形質変化情報が設定されている第3表現型テーブルと
を用いて、
前記第1修正ゲノム情報のDNA塩基配列情報内の塩基ポジションのそれぞれについて、前記遺伝子型の変異情報に対応した前記形質変化情報を特定し、当該特定した前記形質変化情報を基に前記第1表現型テーブルで設定された形質を変化させた前記仮想キャラクタ情報を生成する
情報処理装置。
【請求項2】
前記変異修正部は、前記DNA塩基配列情報と病的変異との対応を予め設定した病的変異データベースを参照して前記DNA塩基配列情報から病的変異情報を修正し、前記第1修正ゲノム情報を得る、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
複数のDNA塩基配列情報のそれぞれの一部を引き継ぎ新たなDNA塩基配列情報を得るゲノム継代部をさらに備え、
前記ゲノム取得部は、第2対象のDNA塩基配列情報を含む第2ゲノム情報を取得し、
前記変異修正部は、前記ゲノム取得部で取得した前記第2ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正して第2修正ゲノム情報を得て、
前記ゲノム継代部は、前記第1修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報と、前記第2修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報とのそれぞれの一部を引き継いだDNA塩基配列情報を含む第3ゲノム情報を生成し、
前記キャラクタ生成部は、前記第3ゲノム情報に基づき新たな仮想キャラクタ情報を生成する、
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記ゲノム継代部は、前記第1修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から模擬的に減数分裂した第1配偶子情報と、前記第2修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から模擬的に減数分裂した第2配偶子情報とを合体させて前記第3ゲノム情報を生成する、
請求項3記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記キャラクタ生成部は、
前記第1表現型テーブル、前記第2表現型テーブル及び前記第3表現型テーブルを用いて、
前記第3ゲノム情報のDNA塩基配列情報内の塩基ポジションのそれぞれについて、前記遺伝子型の変異情報に対応した前記形質変化情報を特定し、当該特定した前記形質変化情報を基に前記第1表現型テーブルで設定された形質を変化させた前記新たな仮想キャラクタ情報を生成する
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
第1対象のDNA塩基配列情報を含む第1ゲノム情報を取得するゲノム取得工程と、
前記ゲノム取得工程で取得した前記第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正して第1修正ゲノム情報を得る変異修正工程と、
前記第1修正ゲノム情報に基づき仮想キャラクタの形質情報を含む仮想キャラクタ情報を生成するキャラクタ生成工程と、
を有し、
前記キャラクタ生成工程は、
前記仮想キャラクタの基本となる形質が設定された第1表現型テーブル、
前記第1修正ゲノム情報の前記DNA塩基配列情報の染色体番号、塩基ポジション及び遺伝子型に対応付けして前記仮想キャラクタの前記形質情報が設定される第2表現型テーブル、
前記塩基ポジションと遺伝子型の前記変異情報とに対応付けて前記仮想キャラクタの形質変化情報が設定されている第3表現型テーブルと
を用いて、
前記第1修正ゲノム情報のDNA塩基配列情報内の塩基ポジションのそれぞれについて、前記遺伝子型の変異情報に対応した前記形質変化情報を特定し、当該特定した前記形質変化情報を基に前記第1表現型テーブルで設定された形質を変化させた前記仮想キャラクタ情報を生成する
情報処理方法。
【請求項7】
複数のDNA塩基配列情報のそれぞれの一部を引き継ぎ新たなDNA塩基配列情報を得るゲノム継代工程をさらに備え、
前記ゲノム取得工程は、第2対象のDNA塩基配列情報を含む第2ゲノム情報を取得し、
前記変異修正工程は、前記ゲノム取得工程で取得した前記第2ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正して第2修正ゲノム情報を得て、
前記ゲノム継代工程は、前記第1修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報と、前記第2修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報とのそれぞれの一部を引き継いだDNA塩基配列情報を含む第3ゲノム情報を生成し、
前記キャラクタ生成工程は、前記第3ゲノム情報に基づき新たな仮想キャラクタ情報を生成する、
請求項6記載の情報処理方法。
【請求項8】
コンピュータに、
第1対象のDNA塩基配列情報を含む第1ゲノム情報を取得するゲノム取得ステップと、
前記ゲノム取得ステップで取得した前記第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正して第1修正ゲノム情報を得る変異修正ステップと、
前記第1修正ゲノム情報に基づき仮想キャラクタの形質情報を含む仮想キャラクタ情報を生成するキャラクタ生成ステップと、
を実行させるプログラムであって、
前記キャラクタ生成ステップは、
前記仮想キャラクタの基本となる形質が設定された第1表現型テーブルと、
前記第1修正ゲノム情報の前記DNA塩基配列情報の染色体番号、塩基ポジション及び遺伝子型に対応付けして前記仮想キャラクタの前記形質情報が設定される第2表現型テーブルと、
前記塩基ポジションと遺伝子型の前記変異情報とに対応付けて前記仮想キャラクタの形質変化情報が設定されている第3表現型テーブルと
を用いて、
前記第1修正ゲノム情報のDNA塩基配列情報内の塩基ポジションのそれぞれについて、前記遺伝子型の変異情報に対応した前記形質変化情報を特定し、当該特定した前記形質変化情報を基に前記第1表現型テーブルで設定された形質を変化させた前記仮想キャラクタ情報を生成する処理を前記コンピュータに実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲノム情報を利用した情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータやゲーム機器において、仮想キャラクタを用いて仮想空間内を動き回ったり、仮想キャラクタを用いてゲームを進行したりすることが行われる。仮想キャラクタを生成する技術として、特許文献1には、違和感のない仮想キャラクタを簡単に生成可能な仮想キャラクタ生成装置及びプログラムが開示される。この仮想キャラクタ生成装置は、入力データを受け付ける入力データ受付手段と、画像データ又は音声データからなる第1データと前記第1データの印象特定に用いられる印象識別器とを記憶する第1記憶部と、前記第1データと異なる種別からなるそれぞれの印象が対応付けられた複数の第2データを記憶する第2記憶部と、前記第1記憶部を参照して、前記入力データ受付手段が受け付けた前記入力データの印象を特定する印象特定手段と、前記第2記憶部を参照して、前記印象特定手段により特定した前記印象に対応付けられた第2データを選定する選定手段と、前記入力データ受付手段が受け付けた前記入力データと、前記選定手段により選定された前記第2データとにより仮想キャラクタが生成される仮想キャラクタ生成手段と、を備える。
【0003】
特許文献2には、写真中の人物に基づいて仮想キャラクタが変化する、より楽しいVR画像を提供することができる方法及び装置が開示される。この装置は、シーンの写真を撮るための写真装置と、前記シーン内の人物を識別するための識別装置と、前記識別された人物の情報に基づいて仮想キャラクタを生成するための仮想キャラクタ生成装置であって、前記仮想キャラクタがビデオゲームで利用可能である仮想キャラクタ生成装置と、前記シーン内の前記仮想キャラクタを含む仮想画像を生成するための仮想画像生成装置とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-043841号公報
【文献】特開2020-123277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
仮想キャラクタには人のような個性を持たせつつ、容姿を自由に設定することができる楽しさがある。一方、単調な性格および容姿の選択だけでは遊興心が高まらず飽きてしまい、仮想キャラクタへの思い入れも弱くなってしまう。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、多種多様で思い入れの強い仮想キャラクタを生成するための情報を得ることができる情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1対象のDNA塩基配列情報を含む第1ゲノム情報を取得するゲノム取得部と、前記ゲノム取得部で取得した前記第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正して第1修正ゲノム情報を得る変異修正部と、前記第1修正ゲノム情報に基づき仮想キャラクタの形質情報を含む仮想キャラクタ情報を生成するキャラクタ生成部と、を有し、前記キャラクタ生成部は、前記仮想キャラクタの基本となる形質が設定された第1表現型テーブルと、前記第1修正ゲノム情報の前記DNA塩基配列情報の染色体番号、塩基ポジション及び遺伝子型に対応付けして前記仮想キャラクタの前記形質情報が設定される第2表現型テーブルと、前記塩基ポジションと遺伝子型の前記変異情報とに対応付けて前記仮想キャラクタの形質変化情報が設定されている第3表現型テーブルとを用いて、前記第1修正ゲノム情報のDNA塩基配列情報内の塩基ポジションのそれぞれについて、前記遺伝子型の変異情報に対応した前記形質変化情報を特定し、当該特定した前記形質変化情報を基に前記第1表現型テーブルで設定された形質を変化させた前記仮想キャラクタ情報を生成する、情報処理装置である。
【0008】
このような構成によれば、第1対象のDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正した第1修正ゲノム情報に基づき形質が設定される仮想キャラクタ情報を自動的に生成できるようになる。
【0009】
好適には、変異修正部は、DNA塩基配列情報と病的変異との対応を予め設定した病的変異データベースを参照してDNA塩基配列情報から病的変異情報を修正し、第1修正ゲノム情報を得る、情報処理装置である。これにより、第1対象の病的変異情報が仮想キャラクタ情報の生成に反映されない。
なお第1対象は、人、人以外も含む。第1対象の例(本人)、第2対象の例(パートナー)である。
また、変異情報は、的、病的以外も含む。
仮想キャラクタ情報はレンダリングされていないもの(情報のみ)である。
仮想キャラクタは、仮想キャラクタ情報をレンダリングして表したものである。
【0010】
好適には、キャラクタ生成部は、DNA塩基配列情報と形質情報との対応を予め設定した表現型データベースを参照して仮想キャラクタ情報を生成する、情報処理装置である。これにより、表現型データベースによってDNA塩基配列情報と形質情報との対応の設定自由度が高まる。
【0011】
好適には、複数のDNA塩基配列情報のそれぞれの一部を引き継ぎ新たなDNA塩基配列情報を得るゲノム継代部をさらに備え、ゲノム取得部は、第2対象のDNA塩基配列情報を含む第2ゲノム情報を取得し、変異修正部は、ゲノム取得部で取得した第2ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正して第2修正ゲノム情報を得て、ゲノム継代部は、第1修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報と、第2修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報とのそれぞれの一部を引き継いだDNA塩基配列情報を含む第3ゲノム情報を生成し、キャラクタ生成部は、第3ゲノム情報に基づき新たな仮想キャラクタ情報を生成する、情報処理装置である。これにより、第1対象と第2対象との遺伝が模擬的に行われた新たな仮想キャラクタ情報が生成される。
【0012】
好適には、ゲノム継代部は、第1修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から模擬的に減数分裂した第1配偶子情報と、第2修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から模擬的に減数分裂した第2配偶子情報とを合体させて第3ゲノム情報を生成する、情報処理装置である。これにより、実際の配偶子の形成を模擬的に行って得た2つの配偶子を合体させて、第1対象のゲノム情報と第2対象のゲノム情報とを引き継ぎつつ、多種多様なゲノム情報を含む仮想キャラクタ情報が生成される。
【0013】
本発明は、第1対象のDNA塩基配列情報を含む第1ゲノム情報を取得するゲノム取得工程と、前記ゲノム取得工程で取得した前記第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正して第1修正ゲノム情報を得る変異修正工程と、前記第1修正ゲノム情報に基づき仮想キャラクタの形質情報を含む仮想キャラクタ情報を生成するキャラクタ生成工程とをコンピュータが実行し、前記キャラクタ生成工程は、
前記仮想キャラクタの基本となる形質が設定された第1表現型テーブル、前記第1修正ゲノム情報の前記DNA塩基配列情報の染色体番号、塩基ポジション及び遺伝子型に対応付けして前記仮想キャラクタの前記形質情報が設定される第2表現型テーブル、前記塩基ポジションと遺伝子型の前記変異情報とに対応付けて前記仮想キャラクタの形質変化情報が設定されている第3表現型テーブルと
を用いて、 前記第1修正ゲノム情報のDNA塩基配列情報内の塩基ポジションのそれぞれについて、前記遺伝子型の変異情報に対応した前記形質変化情報を特定し、当該特定した前記形質変化情報を基に前記第1表現型テーブルで設定された形質を変化させた前記仮想キャラクタ情報を生成する処理を前記コンピュータが実行する情報処理方法である。

【0014】
このような構成によれば、第1対象のDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正した第1修正ゲノム情報に基づき形質が設定される仮想キャラクタ情報を生成できるようになる。
【0015】
好適には、複数のDNA塩基配列情報のそれぞれの一部を引き継ぎ新たなDNA塩基配列情報を得るゲノム継代工程をさらに備え、ゲノム取得工程は、第2対象のDNA塩基配列情報を含む第2ゲノム情報を取得することを有し、変異修正工程は、ゲノム取得工程で取得した第2ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正して第2修正ゲノム情報を得ることを有し、ゲノム継代工程は、第1修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報と、第2修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報とのそれぞれの一部を引き継いだDNA塩基配列情報を含む第3ゲノム情報を生成することを有し、キャラクタ生成工程は、第3ゲノム情報に基づき新たな仮想キャラクタ情報を生成することを有する、情報処理方法である。これにより、第1対象と第2対象との遺伝が模擬的に行われた新たな仮想キャラクタ情報が生成される。
【0016】
本発明は、コンピュータに、第1対象のDNA塩基配列情報を含む第1ゲノム情報を取得するゲノム取得ステップと、前記ゲノム取得ステップで取得した前記第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正して第1修正ゲノム情報を得る変異修正ステップと、前記第1修正ゲノム情報に基づき仮想キャラクタの形質情報を含む仮想キャラクタ情報を生成するキャラクタ生成ステップと、を実行させるプログラムであって、前記キャラクタ生成ステップは、前記仮想キャラクタの基本となる形質が設定された第1表現型テーブルと、前記第1修正ゲノム情報の前記DNA塩基配列情報の染色体番号、塩基ポジション及び遺伝子型に対応付けして前記仮想キャラクタの前記形質情報が設定される第2表現型テーブルと、前記塩基ポジションと遺伝子型の前記変異情報とに対応付けて前記仮想キャラクタの形質変化情報が設定されている第3表現型テーブルと を用いて、前記第1修正ゲノム情報のDNA塩基配列情報内の塩基ポジションのそれぞれについて、前記遺伝子型の変異情報に対応した前記形質変化情報を特定し、当該特定した前記形質変化情報を基に前記第1表現型テーブルで設定された形質を変化させた前記仮想キャラクタ情報を生成する処理を前記コンピュータに実行させるプログラムである。

【0017】
このような構成によれば、第1対象のDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正した第1修正ゲノム情報に基づき形質が設定される仮想キャラクタ情報を生成できるようになる。
【0018】
好適には、複数のDNA塩基配列情報のそれぞれの一部を引き継ぎ新たなDNA塩基配列情報を得るゲノム継代ステップをさらに備え、ゲノム取得ステップは、第2対象のDNA塩基配列情報を含む第2ゲノム情報を取得することを有し、変異修正ステップは、ゲノム取得ステップで取得した第2ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正して第2修正ゲノム情報を得ることを有し、ゲノム継代ステップは、第1修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報と、第2修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報とのそれぞれの一部を引き継いだDNA塩基配列情報を含む第3ゲノム情報を生成することを有し、キャラクタ生成ステップは、第3ゲノム情報に基づき新たな仮想キャラクタ情報を生成することを有する、情報処理プログラムである。これにより、第1対象と第2対象との遺伝が模擬的に行われた新たな仮想キャラクタ情報が生成される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、多種多様で思い入れの強い仮想キャラクタを生成する情報を得る情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本実施形態に係る情報処理装置の構成を例示するブロック図である。
図2図2は、ゲノム情報を用いた仮想キャラクタ情報の生成方法を例示するフローチャートである。
図3図3は、複数のゲノム情報を用いた仮想キャラクタ情報の生成方法を例示するフローチャートである。
図4図4は、本人のゲノム情報を用いた仮想キャラクタ情報の生成方法の流れを示す図である。
図5図5は、ゲノム情報の変異型の例を示す図である。
図6図6は、ゲノム情報の変異除去方法の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、表現型テーブル(野生型)および表現型テーブル(ゲノム型)の例を示す図である。
図8図8は、表現型テーブル(変異型)の例を示す図である。
図9図9は、複数のゲノム情報を用いた仮想キャラクタ情報の生成方法の具体例を説明する図である。
図10図10、複数のゲノム情報を用いた仮想キャラクタ情報の生成方法の具体例を説明する図である。
図11図11は、複数のゲノム情報から継代子孫のゲノム情報への変異の例を示す図である。
図12図12は、複数のゲノム情報から継代子孫のゲノム情報への変異の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0022】
(情報処理装置)
図1は、本実施形態に係る情報処理装置の構成を例示するブロック図である。
本実施形態に係る情報処理装置1は、DNA(デオキシリボ核酸)の塩基配列情報に基づき仮想キャラクタ情報DTを生成する装置である。ここで、仮想キャラクタは、コンピュータやゲーム装置で用いられる画面上に表示されてもよいし、仮想現実空間内に例えばアバターとして表示されてもよい。また、仮想キャラクタは、フィギアやロボットとして展開されてもよい。すなわち、情報処理装置1は、仮想キャラクタを構成するための情報(仮想キャラクタ情報DT)を生成する。
【0023】
情報処理装置1は、ゲノム取得部10、変異修正部20、キャラクタ生成部30を備える。これらの各部は物理的に同じ筐体内に設けられていてもよいし、全てが同じ筐体内に設けられておらず、少なくともいずれかが物理的に離れた位置に設けられ、ネットワークを介して接続される構成でもよい。
【0024】
ゲノム取得部10は、第1対象のDNA塩基配列情報を含む第1ゲノム情報を取得する。例えば、ゲノム情報は、第1対象の検体T1をゲノム解析部11によって解析することで得られ、ゲノムデータベースDB1に保存されている。第1ゲノム情報には、DNA塩基配列情報のほか、染色体情報、が含まれていてもよい。ゲノム取得部10は、ゲノムデータベースDB1に保存された第1ゲノム情報をネットワーク(図示せず)を介して取得する。なお、ゲノム取得部10は、ゲノム解析部11を含む構成であってもよい。
【0025】
ここで、ゲノム情報を得るための検体T1は人の細胞でもよいし、人以外の動植物などから得たものであってもよい。本実施形態では、第1対象を人(本人)として、人の細胞から採取したゲノム情報を用いる場合を例として説明する。
【0026】
ゲノム情報はDNAの塩基配列で表されるDNA塩基配列情報を含む。DNA塩基配列情報は、形質を特定する遺伝子情報を含む。DNAは二重螺旋構造であり、4種類の塩基(アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)およびシトシン(C))の配列によって特定される。人のゲノム情報はDNAを凝縮した23本の染色体に収納される。人の場合、染色体は父親および母親から受け継いだ46本(23対)の染色体を持っている。遺伝は、父親の染色体から減数分裂した配偶子と、母親の染色体から減数分裂した配偶子との組み合わせによって遺伝子が引き継がれることである。本実施形態では、このようなゲノム情報や遺伝の仕組みを模擬的に実現する計算(プログラム)で行い、仮想キャラクタ情報DTを生成する。
【0027】
変異修正部20は、ゲノム取得部10で取得した第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正して、第1修正ゲノム情報を得る。第1ゲノム情報には、染色体の変異やDNAの塩基配列に変異(例えば、病的な変異)が含まれる場合がある。ゲノム情報の変異については、染色体やDNAの塩基配列について変異を特定するための情報が予め変異データベースDB2に登録されている。変異修正部20は、変異データベースDB2を参照して、ゲノム取得部10で取得した第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報からから染色体の情報や、DNAの塩基配列において変異が認められる部分について異変を取り除くような修正を行う。
【0028】
キャラクタ生成部30は、変異修正部20で修正して得た第1修正ゲノム情報に基づき仮想キャラクタの形質情報を含む仮想キャラクタ情報DTを生成する。キャラクタ生成部30は、DNA塩基配列情報と形質情報との対応を予め設定した表現型データベースDB3を参照して仮想キャラクタ情報DTを生成する。表現型データベースDB3には、ゲノム型に対応した形質情報が登録されている。例えば、DNA塩基配列情報(塩基ポジション、塩基タイプ)と対応付けされた、身長、握力、視力、容姿、体の色などの形質と、対立遺伝子の優性/劣性の区別が表現型データベースDB3に登録されている。なお、対立遺伝子の優性/劣性は、顕性/潜性とも言う。
【0029】
キャラクタ生成部30は、表現型データベースDB3を参照し、第1修正ゲノム情報のDNA塩基配列情報と対応する形質情報および優性/劣性の区別を抽出し、抽出した形質情報に合致した仮想キャラクタ情報DTを生成する。この際、対立遺伝子が優性の場合には、例えば乱数によっていずれか遺伝子型に基づく形質を選択して仮想キャラクタ情報DTを生成する。
【0030】
このような情報処理装置1によれば、第1対象のDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正した第1修正ゲノム情報に基づき形質が設定される仮想キャラクタ情報DTを生成することができる。第1対象を人として、その人のDNA塩基配列情報に基づき仮想キャラクタ情報DTが生成されるため、多種多様で思い入れの強い仮想キャラクタを作り出すことが可能となる。
【0031】
情報処理装置1は、ゲノム継代部40をさらに備えていてもよい。ゲノム継代部40は、複数のDNA塩基配列情報のそれぞれの一部を引き継ぎ新たなDNA塩基配列情報を得る。すなわち、ゲノム継代部40は、第1対象(本人)のDNA塩基配列情報を含む第1ゲノム情報と、第2対象(パートナー)のDNA塩基配列情報を含む第2ゲノム情報とに基づき新たなDNA塩基配列情報を含む第3ゲノム情報を得る。
【0032】
第1ゲノム情報および第2ゲノム情報のそれぞれはゲノム取得部10によって取得される。第2ゲノム情報は、第2対象(パートナー)の検体T2をゲノム解析部11によって解析することで得られ、ゲノムデータベースDB1に保存されている。また、ゲノム解析部11がゲノム取得部10に含まれる場合には、ゲノム取得部10のゲノム解析部11で解析した検体T2の第2ゲノム情報を取得する。
【0033】
変異修正部20は、第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正して第1修正ゲノム情報を得るとともに、第2ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から所定の変異情報を修正して第2修正ゲノム情報を得る。
【0034】
ゲノム継代部40は、変異修正部20から出力される第1ゲノム情報および第2ゲノム情報を得て、第3ゲノム情報を生成する。第3ゲノム情報を生成する一例として、ゲノム継代部40は、第1修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から模擬的に減数分裂した第1配偶子情報と、第2修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から模擬的に減数分裂した第2配偶子情報とを合体させて第3ゲノム情報を生成する。模擬的な減数分裂を行う際、実際の減数分裂と同様に染色体の乗換えや遺伝子の組換えをランダムに発生させてもよい。これにより、実際の配偶子の形成を模擬的に行って得た2つの配偶子を合体させて、第3ゲノム情報を生成することができる。
【0035】
キャラクタ生成部30は、ゲノム継代部40によって生成された第3ゲノム情報に基づき、新たな仮想キャラクタ情報DTを生成する。キャラクタ生成部30は、表現型データベースDB3を参照し、第3ゲノム情報のDNA塩基配列情報と対応する形質情報および対立遺伝子の優性/劣性の区別を抽出し、抽出した形質情報および対立遺伝子の優性/劣性の区別に基づき仮想キャラクタ情報DTを生成する。
【0036】
例えば、表現型データベースDB3には、身長、握力、視力、容姿、体の色などの形質と、DNA塩基配列情報(塩基ポジション、塩基タイプ)との対応付けとともに、DNA塩基配列情報に対応した対立遺伝子の優性/劣性の区別が登録されている。キャラクタ生成部30は、表現型データベースDB3を参照し、第3ゲノム情報のDNA塩基配列情報と対応する形質情報を抽出するとともに、そのDNA塩基配列情報と対応する対立遺伝子の優性/劣性の区別に応じて第1対象(本人)の遺伝子情報から引き継いだ形質を採用するか、第2対象(パートナー)の遺伝子情報から引き継いだ形質を採用するかを選択して、新たな仮想キャラクタの形質を決定する仮想キャラクタ情報DTを生成する。対立遺伝子の優性/劣性が優性の場合、例えば乱数を用いて第1対象の遺伝子型を用いるか、第2対象の遺伝子型を用いるかの選択を行う。これにより、実際の遺伝と同様な多様性を持たせた仮想キャラクタ情報DTの生成を行うことが可能となる。
【0037】
仮想キャラクタ情報DTを用いて例えばレンダリングすることでコンピュータの画面上に仮想キャラクタとして表現することができる。また、仮想キャラクタ情報DTを用いて特有の性格や動作が行われるフィギアやロボットなどの機械を構成することもできる。
【0038】
(情報処理方法)
図2は、ゲノム情報を用いた仮想キャラクタ情報の生成方法を例示するフローチャートである。
先ず、ステップS101に示すように、第1ゲノム情報の取得を行う(ゲノム取得工程)。このステップでは、第1対象のDNA塩基配列情報を含む第1ゲノム情報を取得する。
【0039】
次に、ステップS102に示すように、第1ゲノム情報に修正すべき変異があるか否かの判断を行う。例えば、第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から、予め定められた変異になり得る塩基配列が含まれる場合、その塩基配列を修正すべきであると判断する。また、第1ゲノム情報に染色体の情報が含まれる場合、染色体の変異が含まれていれば、それを修正すべきであると判断する。修正すべき変異がある場合にはステップS103へ進み、修正すべき変異がない場合にはステップS104へ進む。
【0040】
ステップS103では、ゲノム情報の修正を行う(変異修正工程)。このステップでは、例えば、第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報のうち、変異している塩基配列を予め定められたゲノム配列に修正して第1修正ゲノム情報を得る処理を行う。また、染色体に変異が含まれる場合、染色体の変異を修正して第1修正ゲノム情報を得る。
【0041】
次に、ステップS104に示すように、仮想キャラクタ情報の生成を行う(キャラクタ生成工程)。このステップでは、第1修正ゲノム情報に基づき仮想キャラクタの形質情報を含む仮想キャラクタ情報を生成する処理を行う。なお、ステップS102の処理で修正すべき変異がないと判断された場合には、ステップS104では、第1ゲノム情報に基づき仮想キャラクタの形質情報を含む仮想キャラクタ情報の生成を行う。
【0042】
図3は、複数のゲノム情報を用いた仮想キャラクタ情報の生成方法を例示するフローチャートである。
先ず、ステップS201に示すように、第1ゲノム情報の取得を行う(ゲノム取得工程)。このステップでは、第1対象(本人)のDNA塩基配列情報を含む第1ゲノム情報を取得する。
【0043】
次に、ステップS202に示すように、第1ゲノム情報に修正すべき変異があるか否かの判断を行う。例えば、第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から、予め定められた変異になり得る塩基配列が含まれる場合、その塩基配列を修正すべきであると判断する。また、第1ゲノム情報に染色体の情報が含まれる場合、染色体の変異が含まれていれば、それを修正すべきであると判断する。修正すべき変異がある場合にはステップS203へ進み、修正すべき変異がない場合にはステップS204へ進む。
【0044】
ステップS203では、第1ゲノム情報の修正を行う(変異修正工程)。このステップでは、第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報のうち、変異している塩基配列を予め定められたゲノム配列に修正して第1修正ゲノム情報を得る処理を行う。また、染色体に変異が含まれる場合、染色体の変異を修正して第1修正ゲノム情報を得る。
【0045】
次に、ステップS204に示すように、模擬的な減数分裂で第1配偶子情報を生成する。すなわち、第1修正ゲノム情報または第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から実際の減数分裂と同様な処理を模擬的に行い、第1配偶子情報を得る処理を行う。この際、実際の減数分裂と同様に染色体の乗換えや遺伝子の組換えをランダムに発生させて第1配偶子情報を得てもよい。
【0046】
次に、ステップS205からステップS208に示す処理で、第2ゲノム情報の取得(ゲノム取得工程)、ゲノム配列情報の修正(変異修正工程)、第2配偶子情報の生成を行う。これらの処理では、先に説明した第1ゲノム情報に対する処理(ステップS201からステップS204)と同様な処理を第2ゲノム情報に対して行う。
【0047】
次に、ステップS209に示すように、模擬的な合体で第3ゲノム情報を生成する(ゲノム継代工程)。このステップでは、第1修正ゲノム情報または第1ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から模擬的に減数分裂した第1配偶子情報と、第2修正ゲノム情報または第2ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から模擬的に減数分裂した第2配偶子情報とを合体させて第3ゲノム情報を生成する。模擬的な減数分裂を行う際、実際の減数分裂と同様に染色体の乗換えや遺伝子の組換えをランダムに発生させてもよい。これにより、実際の配偶子の形成を模擬的に行って得た2つの配偶子を合体させて、第3ゲノム情報を生成することができる。
【0048】
次に、ステップS210に示すように、仮想キャラクタ情報の生成を行う。このステップでは、第3ゲノム情報に基づき新たな仮想キャラクタの形質情報を含む仮想キャラクタ情報を生成する処理を行う。例えば、表現型データベースを参照し、第3ゲノム情報のDNA塩基配列情報と対応する形質情報および対立遺伝子の優性/劣性の区別を抽出し、抽出した形質情報および対立遺伝子の優性/劣性の区別に基づき仮想キャラクタ情報を生成する。対立遺伝子の優性/劣性が優性の場合、例えば乱数を用いて第1対象の遺伝子型を用いるか、第2対象の遺伝子型を用いるかの選択を行う。これにより、実際の遺伝と同様な多様性を持たせた仮想キャラクタ情報DTの生成を行うことが可能となる。
【0049】
(情報処理プログラム)
上記説明した情報処理方法は、コンピュータに実行させる情報処理プログラムとして実現される。
すなわち、情報処理プログラムは、図2に示すステップS101に示す処理をゲノム取得ステップ、ステップS103に示す処理を変異修正ステップ、ステップS104に示す処理をキャラクタ生成ステップとしてコンピュータに実行させる。また、図3に示すステップS201、ステップS205に示す処理をゲノム取得ステップ、ステップS203、ステップS207に示す処理を変異修正ステップ、ステップS209に示す処理をゲノム継代ステップ、ステップS210に示す処理をキャラクタ生成ステップとしてコンピュータに実行させる。
【0050】
(具体例)
図4から図8は、ゲノム情報を用いた仮想キャラクタ情報の生成方法の具体例を説明する図である。
図4には、本人のゲノム情報を用いた仮想キャラクタ情報の生成方法の流れが示される。
図5は、ゲノム情報の変異型の例を示す図である。
図6は、ゲノム情報の変異除去方法の一例を示すフローチャートである。
図7(a)には、表現型テーブル(野生型)TB1の一部が例示され、図5(b)には、表現型テーブル(ゲノム型)TB2の一部が例示される。
図7(a)に例示する表現型テーブル(野生型)TB1、図5(b)に例示する表現型テーブル(ゲノム型)TB2および図6に例示する表現型テーブル(変異型)TB3は、表現型データベースDB3に含まれる。
図8には、表現型テーブル(変異型)の一部が例示される。
【0051】
先ず、第1対象である本人の血液などの検体を採取し、ゲノム解析装置(変異解析プログラム)によって本人のゲノム情報(第1ゲノム情報)を得る。第1ゲノム情報には本人のDNA塩基配列情報が含まれる。第1ゲノム情報の取得はゲノム取得部10(図1参照)で行われる。
【0052】
次に、取得した本人のゲノム情報(第1ゲノム情報)から病的変異を除去する。病的変異の除去は変異修正部20(図1参照)で行われる。これにより、第1修正ゲノム情報を得る。例えば、標準的なDNA塩基配列とは異なる塩基配列(塩基の置換、塩基の一部欠損、塩基の一部増幅、塩基の転座など)があり、そこが病気と関連する塩基変化(病的変異情報)であった場合、標準的な塩基配列に修正する。ゲノム情報に病的変異が含まれるか否かは、変異データベースDB2(図1参照)に含まれる病的変異データベース(図示せず)を参照することで行われる。
【0053】
図5(a)には、単純塩基置換(単塩基、複数塩基)の例が示される。リファレンスとなる塩基配列と、検体から採取した本人のゲノム情報(第1ゲノム情報)の塩基配列とを比較して、同じ塩基ポジションに対応した塩基の種類が異なる部分が単純塩基置換の変異型となる。この変異型は、置換している塩基ポジションと塩基の種類とで表される。
【0054】
図5(b)には、塩基の一部欠損の例が示される。リファレンスとなる塩基配列と、リファレンスとなる塩基配列と、検体から採取した本人のゲノム情報(第1ゲノム情報)の塩基配列とを比較して、欠損している塩基ポジションがある場合、一部欠損の変異型となる。この変異型は、欠損している塩基ポジションのスタート・エンドによって表される。
【0055】
図5(c)には、塩基の一部増幅の例が示される。リファレンスとなる塩基配列と、検体から採取した本人のゲノム情報(第1ゲノム情報)の塩基配列とを比較して、同じ塩基配列が重複している部分がある場合、一部増幅の変異型となる。この変異型は、重複している塩基ポジションのスタート・エンドによって表される。
【0056】
図5(d)には、塩基の転座の例が示される。リファレンスとなる塩基配列と、検体から採取した本人のゲノム情報(第1ゲノム情報)の塩基配列とを比較して、別の染色体の一部の塩基配列と置き換わっている部分がある場合、塩基の転座の変異型となる。この変異型は、転座している2箇所の塩基ポジションによって表される。
【0057】
図6に示すように、変異除去方法では、検体から採取した本人のゲノム情報(第1ゲノム情報)を得て、第1ゲノム情報と、リファレンスとなる塩基配列との比較を行う(ステップS301)。図5(a)から(d)に例示する変異型について、リファレンスとなる塩基配列、変異型および変異型と病原性有無との関係が変異データベースDB2に記憶される。第1ゲノム情報に変異があるか否かは、変異データベースDB2に記憶されたリファレンスと第1ゲノム情報との比較によって行われる。
【0058】
この比較によって変異があり、その変異が変異データベースDB2に記憶された病的変異に該当する場合(ステップS302でYes)、その変異を除去(標準的な塩基配列に修正)する処理を行う。病的変異に該当しない場合(ステップS302でNo)、または病的変異を除去した後は、仮想キャラクタ情報の生成へ進む。
【0059】
次に、第1修正ゲノム情報に基づき仮想キャラクタの形質情報を含む仮想キャラクタ情報を生成する。仮想キャラクタ情報の生成はキャラクタ生成部30(図1参照)によって行われる。仮想キャラクタ情報の生成は、表現型データベースDB3に含まれる表現型テーブル(野生型、ゲノム型)TB1、TB2および表現型テーブル(変異型)TB3を参照して行われる。
【0060】
図7(a)に示すように、表現型テーブル(野生型)TB1には基本となる形質が設定される。この例では、身長、右手握力、視力、右足の状態、体の色について基本となる形質が設定される。図7(a)に示す表現型テーブル(野生型)TB1をゲノム型と対応させたテーブルが図7(b)に示す表現型テーブル(ゲノム型)TB2である。表現型テーブル(ゲノム型)TB2では、染色体番号、塩基ポジション、遺伝子型に対応付けして形質が設定される。例えば、染色体番号1の塩基ポジション12,345,678の遺伝子型Aは身長に対応している。この場合、表現型データベース(野生型)TB1の身長に設定される100mが基本の(変異していない)仮想キャラクタ情報の身長となる。同様に、図7(a)および(b)に示す表現型テーブル(野生型)TB1および表現型テーブル(ゲノム型)TB2に基づき、変異のない場合の仮想キャラクタ情報が設定される。
【0061】
本人のゲノム情報から本人の仮想キャラクタ情報を生成する場合、この表現型テーブル(ゲノム型)TB2と図8に示す表現型テーブル(変異型)TB3とを参照して基本となる仮想キャラクタ情報から形質変化を持たせた仮想キャラクタ情報を生成する。例えば、本人のゲノム情報として、染色体番号1、塩基ポジション12,345,678の遺伝子型が、野生型のAからTに変異していた場合、それに対応する形質変化として、例えば身長を10%アップさせる。なお、対立遺伝子が優性の場合には、例えば乱数によっていずれか遺伝子の遺伝子型を選択して、その遺伝子型に基づく形質変化(または変化せず)を行う。
【0062】
この生成された仮想キャラクタ情報によって本人の仮想キャラクタC1が生成可能となる。仮想キャラクタC1は、仮想空間内で表示させたり、ゲーム画面上でプレーヤーとしてゲームを進行させたりすることができる。仮想キャラクタC1は本人のゲノム情報に基づき生成されていることから、ユニークで思い入れの強いアバター等として利用可能である。また、仮想キャラクタ情報に基づき特有の性格を有するフィギアやロボットなどの機械(実体物)を作成することもできる。
【0063】
(複数のゲノム情報を用いる例)
以下の例では、2つの対象のゲノム情報を用いてゲノム継代する場合を例示するが、3つ以上の対象のゲノム情報を用いてゲノム継代してもよい。
図9および図10は、複数のゲノム情報を用いた仮想キャラクタ情報の生成方法の具体例を説明する図である。
図9および図10には、複数のゲノム情報を用いた仮想キャラクタ情報の生成方法の流れが示される。
【0064】
複数のゲノム情報から仮想キャラクタ情報を生成するには、先ず、図9に示すように、第1対象である本人の血液などの検体を採取し、ゲノム解析装置(変異解析プログラム)によって本人のゲノム情報(第1ゲノム情報)を得る。第1ゲノム情報には本人のDNA塩基配列情報が含まれる。また、第2対象であるパートナーの血液などの検体を採取し、ゲノム解析装置(変異解析プログラム)によって本人のゲノム情報(第2ゲノム情報)を得る。第2ゲノム情報にはパートナーのDNA塩基配列情報が含まれる。
【0065】
次に、取得した本人のゲノム情報(第1ゲノム情報)から病的変異を除去する。また、取得したパートナーのゲノム情報(第2ゲノム情報)から病的変異を除去する。これにより、第1修正ゲノム情報および第2修正ゲノム情報を得る。病的変異の除去は、図4から図8により説明した方法と同様である。
【0066】
次に、第1修正ゲノム情報に基づき模擬的な減数分裂を行い、第1配偶子情報を生成する。また、第2修正ゲノム情報に基づき模擬的な減数分裂を行い、第2配偶子情報を生成する。ここでは、第1修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から実際の減数分裂と同様な処理を模擬的に行い、第1配偶子情報を得る。また、第2修正ゲノム情報に含まれるDNA塩基配列情報から実際の減数分裂と同様な処理を模擬的に行い、第2配偶子情報を得る。配偶子情報を得る際、実際の減数分裂と同様に染色体の乗換えや遺伝子の組換えをランダムに発生させてもよい。
【0067】
次に、ペアとなる配偶子の選択を行う。例えば、相同染色体(染色体番号の同じもの)となる第1配偶子情報と第2配偶子情報とがペアとなるように選択を行う。この選択の後、図10に示すように、模擬的な合体を行う。例えば、第1配偶子情報および第2配偶子情報のうちペアとして選択されたものどうし(相同染色体どうし)を合体する。これにより、継代のゲノム情報である第3ゲノム情報を生成する。
【0068】
次に、継代のゲノム情報である第3ゲノム情報に基づき新たな仮想キャラクタの形質情報を含む仮想キャラクタ情報を生成する。例えば、表現型データベースDB3に含まれる表現型テーブル(野生型、ゲノム型)TB1、TB2および表現型テーブル(変異型)TB3を参照し、第3ゲノム情報のDNA塩基配列情報と対応する形質情報および対立遺伝子の優性/劣性の区別を抽出し、抽出した形質情報および対立遺伝子の優性/劣性の区別に基づき継代子孫の仮想キャラクタ情報を生成する。対立遺伝子の優性/劣性が優性の場合、例えば乱数を用いて本人の遺伝子型を用いるか、パートナーの遺伝子型を用いるかの選択を行う。これにより、本人の仮想キャラクタC1の形質と、パートナーの仮想キャラクタC2の形質とを引き継ぎつつ、塩基配列の変異によって多様に変化した形質を持った継代子孫の仮想キャラクタC3を誕生させることができる。
【0069】
(複数のゲノム情報による変異の例)
図11および図12は、複数のゲノム情報から継代子孫のゲノム情報への変異の例を示す図である。
図11に示すように、本人のゲノム情報(第1ゲノム情報または第1修正ゲノム情報)およびパートナーのゲノム情報(第2ゲノム情報または第2修正ゲノム情報)のそれぞれには、染色体番号、塩基ポジション、遺伝子型が示される。遺伝子型には対立遺伝子の遺伝子型の情報も含まれる。例えば、本人のゲノム情報の一つとして、染色体番号1、塩基ポジション12,345,678の対立遺伝子の遺伝子型はそれぞれT/Aである。また、パートナーのゲノム情報の一つとして、染色体番号1、塩基ポジション12,345,678の対立遺伝子の遺伝子型はそれぞれT/Aである。
【0070】
これらのゲノム情報に模擬的な減数分裂の処理を行うことで本人およびパートナーのそれぞれの配偶子情報が得られる。例えば、本人のゲノム情報の一つである染色体番号1、塩基ポジション12,345,678の対立遺伝子の遺伝子型T/Aに対して模擬的な減数分裂を行うと、染色体番号1、塩基ポジション12,345,678の対立遺伝子の遺伝子型Tを含む本人の配偶子情報(第1配偶子情報)が得られる。
【0071】
ここで、対立遺伝子の遺伝子型のT/Aのうちいずれの遺伝子型を選択するかは、例えば乱数によって決定される。これにより、減数分裂において対立遺伝子のいずれかがランダムに選択され、多様性が生じることになる。
【0072】
また、パートナーのゲノム情報についても同様であり、例えば、パートナーのゲノム情報の一つである染色体番号1、塩基ポジション12,345,678の対立遺伝子の遺伝子型T/Aに対して模擬的な減数分裂を行うと、染色体番号1、塩基ポジション12,345,678の対立遺伝子の遺伝子型Aを含むパートナーの配偶子情報(第2配偶子情報)が得られる。一例として、同じ塩基ポジションの対立遺伝子の遺伝子型は、本人の配偶子情報ではTが選択され、パートナーの配偶子情報ではAが選択されている。他の塩基ポジションの対立遺伝子の遺伝子型も同様な処理によってそれぞれ選択される。
【0073】
この本人の配偶子情報と、パートナーの配偶子情報とを合体させることで継代子孫のゲノム情報(第3ゲノム情報)が得られる。すなわち、第1配偶子情報および第2配偶子情報において同じ染色体番号および塩基ポジションのそれぞれの遺伝子型を合体することで継代子孫のゲノム情報が得られる。例えば、本人の配偶子情報における染色体番号1、塩基ポジション12,345,678の対立遺伝子の遺伝子型Tと、パートナーの配偶子情報における同染色体番号、同塩基ポジションの対立遺伝子の遺伝子型Aとを合体することで、染色体番号1、塩基ポジション12,345,678の対立遺伝子の遺伝子型T/Aが得られる。図11に示す継代子孫のゲノム情報に示す1/0、0/1、0/0、1/1は、対立遺伝子の遺伝子型のそれぞれについて野生型から変異したか否かを示す情報である。「1」は変異したことを示し、「0」は変異していないことを示す。
【0074】
継代子孫のゲノム情報を得ると、これに基づいて継代子孫の仮想キャラクタ情報が生成される。図12に示すように、継代子孫のゲノム情報に基づき表現型テーブル(変異型)を参照して、継代子孫の仮想キャラクタ情報の形質情報が決定される。説明の便宜上、表現型テーブル(変異型)に示す「>」は、「>」の左側に示す野生型の遺伝子型から、右側に示す遺伝子型に変異したことを表している。また、表現型テーブル(変異型)には、対立遺伝子の優性/劣性についても示される。
【0075】
例えば、継代子孫のゲノム情報の一つである染色体番号1、塩基ポジション12,345,678の対立遺伝子の一方の遺伝子型は、野生型のAからTに変異している。この対立遺伝子の優性/劣性の区別は優性であるため、例えば乱数によって選択される。その結果、本例ではTが選択されたため、表現型テーブル(変異型)の設定により身長を10%アップさせる。表現型テーブル(野生型)の身長は100mに設定されているため、生成される継代子孫のゲノム情報に基づく形質の身長は110mとなる。
【0076】
また、継代子孫のゲノム情報の他の一つである染色体番号1、塩基ポジション56,789,012の対立遺伝子の一方の遺伝子型は、野生型のCからAに変異している。この対立遺伝子の優性/劣性の区別は劣性であり、図11に示す同染色体番号、同塩基ポジションでの対立遺伝子の遺伝子型はAとCとで異なることから、表現型テーブル(野生型)の形質が維持され、右手握力は野生型の5tから変化しないことになる。同様な形質変化が他のゲノム情報についても適用され、継代子孫の表現型が形成される。
【0077】
このように、本実施形態では、本人のゲノム情報とパートナーのゲノム情報とを用いて実際の遺伝の仕組みを模擬的に行い、本人とパートナーとの遺伝子情報を引き継ぎつつ、本人およびパートナーとは異なる形質を持つ継代子孫の仮想キャラクタを生成できる情報を得ることができるようになる。本実施形態によって生成可能な仮想キャラクタは、例えばコンピュータの仮想空間に登場させたり、ゲームを進行させたりすることができる。また、コンピュータ上で更なる継代子孫の仮想キャラクタを誕生させて進化(または退化)を楽しむこともできる。これにより、例えば、オリジナリティのあるゲームキャラクタを自動的に生成でき、より面白いゲームを作ることができるようになる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態によれば、多種多様で思い入れの強い仮想キャラクタを生成する情報を得る情報処理装置1、情報処理方法および情報処理プログラムを提供することが可能となる。
【0079】
なお、上記に本実施形態およびその適用例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、上記で説明した表現型テーブル(野生型)、表現型テーブル(ゲノム型)表現型テーブル(変異型)は一例であり、これらは任意に設定可能である。また、変異修正部20によって修正を行う変異は病的変異に限定されない。修正すべき変異は予め変異データベースDB2に登録しておくことができ、修正すべき変異の塩基ポジションや塩基配列について任意に設定することが可能である。また、遺伝子型の選択が必要な場合に乱数以外の方法(例えば、所定の関数、自然条件(気候、地域性など))で選択を行ってもよい。また、前述の実施形態またはその適用例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0080】
1…情報処理装置、10…ゲノム取得部、11…ゲノム解析部、20…変異修正部、30…キャラクタ生成部、40…ゲノム継代部、C1…本人の仮想キャラクタ,C2…パートナーの仮想キャラクタ、C3…継代子孫の仮想キャラクタ、DB1…ゲノムデータベース、DB2…変異データベース、DB3…表現型データベース、DT…仮想キャラクタ情報、T1…検体(本人)、T2…検体(パートナー)、TB1…表現型テーブル(野生型)、TB2…表現型テーブル(ゲノム型)、TB3…表現型テーブル(変異型)
【要約】
【課題】多種多様で思い入れの強い仮想キャラクタを生成する情報を得る情報処理装置1、情報処理方法および情報処理プログラムを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様は、第1対象のDNA塩基配列情報を含む第1ゲノム情報を取得するゲノム取得部10と、ゲノム取得部10で取得した第1ゲノム情報に含まれる所定の変異情報を修正して第1修正ゲノム情報を得る変異修正部20と、第1修正ゲノム情報に基づき仮想キャラクタの形質情報を含む仮想キャラクタ情報DTを生成するキャラクタ生成部30と、を備えた、情報処理装置1である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12