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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/12 20060101AFI20240919BHJP
   H05K 5/06 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
F16J15/12 A
H05K5/06 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020191465
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080414
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000228383
【氏名又は名称】日本ガスケット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】新井 博之
(72)【発明者】
【氏名】内田 健二
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-236198(JP,A)
【文献】特開2003-336743(JP,A)
【文献】特開平11-101347(JP,A)
【文献】実開昭63-166760(JP,U)
【文献】特開2017-117534(JP,A)
【文献】国際公開第2015/170519(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00-15/14
H02K 5/00-5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の部材のシール面と、他方の部材のシール面との間に介在されて、それらの間のシールを維持するガスケットであって、
剛性を有する材料からなる基材と、該基材における少なくとも上記一方の部材のシール面と他方の部材のシール面に当接する箇所に設けられたゴムシールとを備え、
上記基材は鉄製又はSUS製の線材からなり、上記ゴムシールは、線材の全周および長手方向全域を被覆して設けられており、
上記ゴムシールの厚さは上記線材の外周面から0.8mm以上に設定されており、
さらに、上記一方の部材のシール面はアルミダイカストの鋳肌のままの状態となっていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
一方の部材のシール面と、他方の部材のシール面との間に介在されて、それらの間のシールを維持するガスケットであって、
剛性を有する材料からなる基材と、該基材における少なくとも上記一方の部材のシール面と他方の部材のシール面に当接する箇所に設けられたゴムシールとを備え、
上記基材は、SUS製の薄板を切断してなる複数の分割部材から構成されるとともに、隣り合う分割部材の境界部が溶接されることで全体として枠状に形成されており、
該基材全体の上面及び下面に、輪郭の全域にわたって無端状の上記ゴムシールが上記境界部と交差して固着されており、
上記ゴムシールの上記基材の上面と下面からの厚さが0.8mm以上に設定されており、
さらに、上記一方の部材のシール面はアルミダイカストの鋳肌のままの状態となっていることを特徴とするガスケット。
【請求項3】
上記一方の部材はモーターのハウジングであって、該ハウジングの表面であるシール面がアルミダイカストの鋳肌のままの状態となっており、上記他方の部材はPCU(パワーコントロールユニット)のケーシングであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスケットに関し、より詳しくは、例えば電気自動車のモーターのハウジングとPCU(パワーコントロールユニット)のケーシングとの間に介在されて、それらの間のシールを維持するガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の部材と他方の部材との間に介在されて両者の間のシールを維持するガスケットとして、一般的にゴム製のOリングが用いられている。
また、従来、薄板状のカーボンの一面に、被シール面の輪郭に合わせてゴムシールを連続させて設けたガスケットも提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6066457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来知られているゴムリング及び液状のガスケットは次のような問題があった。すなわち、両部材の間にゴムリングを装着する場合には、ゴムリング自体に剛性がないので、シール面の輪郭に沿ってOリングを装着する際の作業効率が悪いという問題があった。また、シール面に接着性のある液状ガスケットを塗布して組み付ける場合には、保守管理の際に上記部材のシール面に接着性のある液状ガスケットが強く張り付いているので、液状ガスケットを剥離させる必要があり、これも作業性が非常に悪いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した事情に鑑み、請求項1に記載した本発明は、一方の部材のシール面と、他方の部材のシール面との間に介在されて、それらの間のシールを維持するガスケットであって、
剛性を有する材料からなる基材と、該基材における少なくとも上記一方の部材のシール面と他方の部材のシール面に当接する箇所に設けられたゴムシールとを備え、
上記基材は鉄製又はSUS製の線材からなり、上記ゴムシールは、線材の全周および長手方向全域を被覆して設けられており、
上記ゴムシールの厚さは上記線材の外周面から0.8mm以上に設定されており、
さらに、上記一方の部材のシール面はアルミダイカストの鋳肌のままの状態となっていることを特徴とするものである。
また、請求項2に記載した本発明は、一方の部材のシール面と、他方の部材のシール面との間に介在されて、それらの間のシールを維持するガスケットであって、
剛性を有する材料からなる基材と、該基材における少なくとも上記一方の部材のシール面と他方の部材のシール面に当接する箇所に設けられたゴムシールとを備え、
上記基材は、SUS製の薄板を切断してなる複数の分割部材から構成されるとともに、隣り合う分割部材の境界部が溶接されることで全体として枠状に形成されており、
該基材全体の上面及び下面に、輪郭の全域にわたって無端状の上記ゴムシールが上記境界部と交差して固着されており、
上記ゴムシールの上記基材の上面と下面からの厚さが0.8mm以上に設定されており、
さらに、上記一方の部材のシール面はアルミダイカストの鋳肌のままの状態となっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
このような構成によれば、ガスケット全体が剛性を備えているので、着脱作業が容易であって、かつ、シール性が良好なガスケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例を示す要部の断面図。
図2図1に示したガスケット全体の平面図。
図3】本発明のガスケットの他の実施例を示す断面図。
図4】本発明のガスケットの他の実施例を示す平面図。
図5図4および図6のVI―VI線に沿う断面図。
図6図4の要部の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施例について本発明を説明すると、図1ないし図2において、1は全体として略長方形の枠状に形成されたガスケットである。このガスケット1は、モーターのハウジング2とPCU(パワーコントロールユニット)のケーシング3との間に介在されて、それらの間のシールを維持するようになっている。
モーター及びPCUはともに電気自動車に搭載されるものであって、モーターのハウジング2は全体として立方体形状となっており、他方、PCUのケーシング3は、下面全域が開口した箱型となっている。図1において、ケーシング3の右側が外部であって、左側がケーシング3の内部となる。
モーターのハウジング2はアルミダイカスト製であって、その上面2Aは鋳肌のままなので多数の微小な凹凸がある粗面となっている。そして、ハウジング2の上面2Aの輪郭に沿った外周部分が枠状のシール面2Bとなっている。他方、PCUのケーシング3もアルミダイカスト製であって、その開口部の輪郭となる下面が枠状のシール面3Aとなっている。
ガスケット1は、下方側となるハウジング2のシール面2Bと上方側となるケーシング3のシール面3Aとの間に装着されるものであって、全体として略長方形の枠状となっている。
本実施例のガスケット1は、無端状に連続して一体に形成された鉄製又はSUS製の基材となる芯材6と、この芯材6の全周及び長手方向全域を所定の厚さで被覆したゴムシール7とによって構成されている。
芯材6の断面形状は円形であって、その直径は0.5~2mm程度に設定されている。他方、芯材6を被覆したゴムシール7も断面円形となっており、その直径(外径)は3~6mm程度に設定されている。このゴムシール7の厚さは、0.8mm以上に設定されている。ゴムシール7の材料としては、NBR、EPDMを含む通常のゴム、発泡ゴム、エストラマーを用いる。
本実施例においては、基材となる芯材6として鉄製又はSUS製の線材を用いているので、ガスケット1全体として剛性を備えており、図2に示す枠状の形状が常時、維持されるようになっている。
【0009】
以上のように構成されたガスケット1を上記シール面2B、3Aの間に組み付ける際には、図2に示すように、枠状に維持されたガスケット1を、先ず下方側となるハウジング2のシール面2Bに設置させる。この時、ガスケット1全体として剛性を備えて枠状に維持されているので、ガスケット1の全域をシール面2Bの全域にわたって容易に装着させることができる。
その後、ケーシング3のシール面3Aをガスケット1に設置させた後に、ハウジング3とケーシング2の所要箇所を締結用のボルトとナットによって連結する。
これにより、ガスケット1のゴムシール7の下面側の箇所が弾性変形して、ハウジング3のシール面3Bに密着するとともに、ゴムシール7の上面側となる箇所も押圧されて、ケーシング3のシール面3Aに密着する。
このように、組付け完了時に両シール面2B、3A間にガスケット1全体が挟持されることにより、ゴムシール7が弾性変形することで両シール面2B、3Aに密着し、それらの間のシールが確実に維持されるようになっている。
本実施例においては、ガスケット1をシール面2B、3A間に組み付ける際には、ガスケット1自体が剛性を有して両シール面2B、3Aの輪郭に応じた形状に維持されているので、作業者はガスケット1の装着作業を容易に行うことができる。
また、ハウジング2のシール面2Bがアルミダイカストの鋳肌のままの粗面である場合も、ゴムシール7が弾性変形してシール面2Bの凹凸に応じて密着することができる。そのため、モーターのハウジング2は、鋳造後において上面2A、及びシール面2Bの表面を研磨する作業を必要としない。つまり、本実施例のガスケット1を用いることにより、従来では必要であった鋳造後におけるハウジング2の表面仕上げ作業を省略することが可能となる。その分だけ、モーターのハウジング2の製造コストを低減させることができる。
さらに、組付け後に時間が経過して、ガスケット1を交換する場合においてはシール面2B、3Aに接着剤を塗布していないので、古いガスケット1を容易に取り外すことができ、その後、新しいガスケット1も上述したように容易に装着することができる。そのため、本実施例によれば、従来と比較して、着脱が容易で、かつ、シール性が良好なガスケット1を提供することができる。
【0010】
次に図3の(a)~(s)は、本発明の他の実施例としてのガスケット1の断面形状を示したものである。これらに共通するのは、剛性を有する鉄製又はSUS製の芯材6を備え、その芯材6の全周及び長手方向全域を被覆するゴムシール7を備えていることである。そして、ゴムシール7における少なくとも上面側と下面側、つまり、前述したハウジング2のシール面2B側とケーシング3のシール面3A側は、実質的に同じ厚さのゴムシール7で被覆された構成となっている。なお、図3における各図においては、図1に示した実施例と対応する部材に同じ番号を付している。
これらの図3に示した各ガスケット1であっても上記図1ないし図2に示した実施例と同様の作用、効果を得ることが可能である。
【0011】
次に、図4ないし図6は、本発明のさらに別の実施例を示したものである。上記図1ないし図2の実施例では、基材として断面円形の芯材6と、それに被覆したゴムシール7とでガスケット1を構成していたが、この図4ないし図6の実施例においては、前述したシール面2B,3Aの輪郭に対応させて薄板状で幅の狭い基材11と、その上面11Aと下面11Bとに長手方向にわたって無端状に固着したゴムシール17A、17Bとから構成している。
この実施例では、基材11の材料となるSUS板の歩留まりを向上させるために、基材11を複数に分割した分割部材11a~11fで構成するようにしてあり、隣り合う位置の分割部材の境界部11X(当接箇所)を溶接することで、全体として段付枠状をした基材11を構成している。
本実施例では、隣り合う分割部材の境界部11Xを溶接することで、全体として枠状をした基材11を一体となるように製造し、その後に、その基材11の下面11Aと上面11Bの幅方向の中央に長手方向に連続する無端状のゴムシール17A、17Bを固着するようにしている。
換言すると、基材11の複数個所には、その長手方向と直交する方向の溶接個所が存在するが(図4図6を参照)、それらの箇所と交差してそこを覆うようにして基材11の上面11Aと下面11Bにゴムシール17A、17Bが固着されている。
ゴムシール17A、17Bの材料は、上記実施例で示したものと同じ材料を用いることができ、あるいは、CIPGを用いる。
基材11の幅は4~10mm、厚さは0.15~0.4mmを想定している。また、ゴムシールとしてはCIPGを採用する場合の厚さは0.8mm以上に設定されており、幅は厚さの50%~150%に設定されている。また、図5に示すように、ゴムシール17A、17Bの断面形状は、前述したシール面2B、3Aに接触する側がR形状に形成されている。
このように、基材11の上面11A、下面11Bの幅方向の中央には、長手方向に連続する無端状のゴムシール17A、17Bを固着させてあるので、ガスケット1を両シール面2B、3Aの間に組み付けると、ゴムシール17A、17Bがシール面2B、3Aに密着することになる。
また、基材11はSUS製であって剛性を備えているので、全体として枠状に形状が維持されている。
したがって、この図4図6に示した実施例のガスケット1であっても、上記図1ないし図2に示した実施例と同様の作用、効果を得ることができる。
しかも、この実施例においては、材料となるSUS板を、基材11を構成するための複数の直線状をした分割部材11a~11fとして用意すればよいので、材料費が高価なSUSを無駄なく、歩留まりよく材料取りすることができる。
また、隣り合う分割部材の境界部11Xは溶接されているが、その部分の表面処理をすることなくゴムシール17A、17Bで覆って上面11A、下面11Bに固着させることができる。つまり、境界部11Xの溶接箇所のバリ取り作業は不要である。そのため、材料となるSUS板を歩留まりよく活用することができ、比較的安価にガスケット1を製造することが可能である。
なお、図1の実施例では鉄製又はSUS製の芯材6を用いていたが、代わりにゴムシール7より硬質な樹脂あるいはゴムを用いても良い。また、図4ないし図6では、基材として薄板状のSUSを用いていたが、薄板状のSUSを用いる代わりに、最初から全体として枠状に切り出した樹脂シートを用いてもよい。この場合にも、図4ないし図6の実施例と同様に、上面と下面にゴムシール17A、17Bを固着する。
【0012】
また、上述した実施例は、モーターのハウジング2とPCUのケーシング3の間にガスケット1を介在させる場合を説明しているが、これに限定されるものではなく、一方の部材と他方の部材のシールを維持すべき箇所に本実施例のガスケット1を介在させて、両部材間のシールを維持することができる。
【符号の説明】
【0013】
1…ガスケット 2…ハウジング
2B…シール面 3…ケーシング
3A…シール面 6…芯材
7…ゴムシール 11…基材
11A…上面 11B…下面
17A、17B…ゴムシール
図1
図2
図3
図4
図5
図6