(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】流体温調システム
(51)【国際特許分類】
F25B 7/00 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
F25B7/00 E
(21)【出願番号】P 2022577823
(86)(22)【出願日】2021-01-26
(86)【国際出願番号】 JP2021002565
(87)【国際公開番号】W WO2022162723
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2024-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】594185097
【氏名又は名称】伸和コントロールズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164688
【氏名又は名称】金川 良樹
(72)【発明者】
【氏名】山脇 正勝
(72)【発明者】
【氏名】上田 禎一郎
【審査官】森山 拓哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/095381(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/141722(WO,A1)
【文献】特開平03-263556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
前記起動時における前記低温側冷凍機の運転時間が第3の運転時間を越えた後、
前記起
動後の前記流体の冷却が行われ、前記中温側第1蒸発器での前記中温側冷媒の蒸発温度は、前記起動時のときよりも低い温度に変更される、請求項1に記載の流体温調システム。
【請求項6】
前記起動時において、(0)前記流体通流装置のポンプが駆動され、前記流体通流装置
内で前記流体が通流され、その後、前記(1)~(3)の動作が行われる、請求項1に記
載の流体温調システム。
【請求項9】
前記低温側冷媒は、R508Aを含み、前記低温側膨張弁によって膨張されることにより、-70℃以下まで降温される、請求項1に記載の流体温調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、ヒートポンプ式の冷凍装置によって流体を冷却する流体温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
JP2014-97156は三元冷凍装置を開示する。
【0003】
三元冷凍装置は、それぞれ圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器を有する高温側冷凍機、中温側冷凍機及び低温側冷凍機を備えており、高温側冷凍機は高温側冷媒を循環させ、中温側冷凍機は中温側冷媒を循環させ、低温側冷凍機は低温側冷媒を循環させる。また、高温側冷媒と中温側冷媒とを熱交換させる高中側カスケードコンデンサが高温側冷凍機の蒸発器及び中温側冷凍機の凝縮器によって構成され、中温側冷媒と低温側冷媒とを熱交換させる中低側カスケードコンデンサが中温側冷凍機の蒸発器及び低温側冷凍機の凝縮器によって構成される。
【0004】
このような三元冷凍装置は、低温側冷凍機の蒸発器によって極めて低温の温度域まで気体や液体を冷却し、冷却した気体や液体によって温度制御対象を極めて低温の温度域まで冷却することができる。温度制御対象は空間であってもよいし、特定の物体であってもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
三元冷凍装置は、温度制御対象を目標冷却温度まで安定的に冷却するために、各冷凍機において高性能な圧縮機が必要となる場合がある。特に低温側冷凍機の圧縮機に関しては、高性能であることに加え、極めて低温の低温側冷媒に対する耐久性能(耐冷性能)を確保するための特殊構造が必要な場合も生じ得る。そのため、装置全体のサイズが過度に大型化したり、圧縮機が入手困難となることによる製造コストの増加や工期遅延が生じたりする場合がある。
【0006】
本発明は上記実情を考慮してなされたものであり、所望温度までの温度制御対象の冷却を容易に且つ安定的に実現できる流体温調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態にかかる流体温調システムは、
高温側圧縮機、高温側凝縮器、高温側膨張弁及び高温側蒸発器が、この順に高温側冷媒を循環させるように接続された高温側冷凍回路を有する高温側冷凍機と、
中温側圧縮機、中温側凝縮器、中温側第1膨張弁及び中温側第1蒸発器が、この順に中温側冷媒を循環させるように接続された中温側冷凍回路を有するとともに、前記中温側冷凍回路における前記中温側凝縮器の下流側で且つ前記中温側第1膨張弁の上流側の部分から分岐し、前記中温側第1蒸発器の下流側で且つ前記中温側圧縮機の上流側の部分に接続され、前記中温側冷凍回路から分岐する前記中温側冷媒を通流させる分岐流路、前記分岐流路に設けられた中温側第2膨張弁、及び前記分岐流路において前記中温側第2膨張弁よりも下流側に設けられた中温側第2蒸発器を含むカスケード用バイパス回路を有する中温側冷凍機と、
低温側圧縮機、低温側凝縮器、低温側膨張弁及び低温側蒸発器が、この順に低温側冷媒を循環させるように接続された低温側冷凍回路を有する低温側冷凍機と、
流体を通流させる流体通流装置と、を備え、
前記高温側冷凍機の前記高温側蒸発器と前記中温側冷凍機の前記中温側凝縮器とが、前記高温側冷媒と前記中温側冷媒との熱交換を可能とする第1カスケードコンデンサを構成し、
前記中温側冷凍機の前記中温側第2蒸発器と前記低温側冷凍機の前記低温側凝縮器とが、前記中温側冷媒と前記低温側冷媒との熱交換を可能とする第2カスケードコンデンサを構成する。
そして、当該流体温調システムは、前記流体通流装置が通流させる流体を、前記中温側冷凍機の前記中温側第1蒸発器によって冷却した後、前記低温側冷凍機の前記低温側蒸発器によって冷却する。
【0008】
上記流体温調システムでは、流体通流装置が通流させる流体が、中温側冷凍機の中温側第1蒸発器によって冷却(プレクール)された後、中温側第1蒸発器よりも大きい冷凍能力を出力し得る低温側冷凍機の低温側蒸発器によって冷却される。
これにより、上記流体温調システムは、温度制御対象物に対する目標の所望温度までの冷却を実現する際に、低温側冷凍機において高性能な圧縮機を採用した単純な三元冷凍装置よりも容易に製作され得ることで、所望温度までの温度制御対象の冷却を容易に且つ安定的に実現できる。
【0009】
前記低温側冷凍回路における前記低温側凝縮器の下流側で且つ前記低温側膨張弁の上流側の部分と、前記低温側冷凍回路における前記低温側蒸発器の下流側で且つ前記低温側圧縮機の上流側の部分とが、各前記部分を通過する前記低温側冷媒の熱交換を可能とする内部熱交換器を構成してもよい。
【0010】
この構成では、低温側凝縮器から流出し、低温側膨張弁に流入する前の低温側冷媒と、低温側蒸発器から流出し、低温側圧縮機に流入する前の低温側冷媒とが、内部熱交換器において互いに熱交換する。これにより、低温側凝縮器から流出した低温側冷媒を低温側膨張弁に流入する前に冷却することができ、低温側蒸発器から流出した低温側冷媒を低温側圧縮機に流入する前に加熱することができる。その結果、低温側蒸発器の冷凍能力を簡易的に高くすることができ、且つ低温側圧縮機の耐久性能(耐冷性能)の確保に対する負担を軽減できる。そのため、低温側圧縮機の能力を過剰に高めなくても所望の冷却を実現し易くなるため、製作容易性を向上させることができる。
【0011】
前記低温側冷媒は、R23であり、前記低温側膨張弁によって膨張されることにより、-70℃以下まで降温されてもよい。
【0012】
前記低温側冷媒は、R1132a又はR508Aであり、前記低温側膨張弁によって膨張されることにより、-70℃以下まで降温されてもよい。
【0013】
前記低温側冷媒は、R1132a又はR508Aを含み、前記低温側膨張弁によって膨張されることにより、-70℃以下まで降温されてもよい。
【0014】
前記中温側冷媒と、前記低温側冷媒は、同じ冷媒でもよい。
【0015】
また、前記中温側圧縮機によって圧縮される前記中温側冷媒は、前記第1カスケードコンデンサで凝縮されて、前記中温側第1膨張弁及び前記中温側第2膨張弁に送られるように分岐されてもよい。そして、前記中温側第1膨張弁は前記中温側冷媒を膨張させ、前記中温側第2膨張弁は前記中温側冷媒を膨張させ、同時に、前記低温側膨張弁が、前記低温側冷媒を膨張させてその温度を低下させてもよい。そして、これにより、前記流体通流装置が通流させる流体を、前記中温側冷凍機の前記中温側第1蒸発器によって冷却した後、前記低温側冷凍機の前記低温側蒸発器によって冷却してもよい。
【0016】
また、流体温調システムの起動時において、以下(1)~(3)の動作がなされてもよい。
(1)一定の所定回転数で前記高温側圧縮機が駆動するように前記高温側冷凍機が運転され、
(2)次いで、前記高温側冷凍機の運転時間が第1の運転時間を越えた後、一定の所定回転数で前記中温側圧縮機が駆動するように前記中温側冷凍機が運転され、前記中温側第1膨張弁及び前記中温側第2膨張弁がともに開状態とされ、
(3)次いで、前記中温側冷凍機の運転時間が第2の運転時間を越えた後、一定の所定回転数で前記低温側圧縮機が駆動するように前記低温側冷凍機が運転される。
【0017】
この場合、前記低温側冷凍機の運転時間が第3の運転時間を越えた後、前記流体の温度に応じて、前記高温側圧縮機の回転数、前記中温側圧縮機の回転数及び前記低温側圧縮機の回転数のうちの少なくともいずれかを変化させてもよい。
【0018】
また、前記起動時において、前記中温側第1蒸発器での前記中温側冷媒の蒸発温度は、前記低温側蒸発器での前記低温側冷媒の蒸発温度よりも高い温度に設定されてもよい。
【0019】
また、前記低温側冷凍機の運転時間が第3の運転時間を越えた後、前記流体の温度に応じて、前記高温側圧縮機の回転数、前記中温側圧縮機の回転数及び前記低温側圧縮機の回転数のうちの少なくともいずれかを変化させもよい。そして、前記中温側第1蒸発器での前記中温側冷媒の蒸発温度は、前記起動時のときよりも低い温度に変更されてもよい。
【0020】
また、一実施の形態にかかる冷凍装置は、
第1圧縮機、第1凝縮器、第1膨張弁及び第1蒸発器が、この順に第1冷媒を循環させるように接続された第1冷凍回路を有するとともに、前記第1冷凍回路における前記第1凝縮器の下流側で且つ前記第1膨張弁の上流側の部分から分岐し、前記第1蒸発器の下流側で且つ前記第1圧縮機の上流側の部分に接続され、前記第1冷凍回路から分岐する前記第1冷媒を通流させる分岐流路、前記分岐流路に設けられたカスケード用膨張弁、及び前記分岐流路において前記カスケード用膨張弁よりも下流側に設けられたカスケード用蒸発器を含むカスケード用バイパス回路を有する第1冷凍機と、
第2圧縮機、第2凝縮器、第2膨張弁及び第2蒸発器が、この順に第2冷媒を循環させるように接続された第2冷凍回路を有する第2冷凍機と、を備え、
前記第1冷凍機の前記カスケード用蒸発器と前記第2冷凍機の前記第2凝縮器とが、前記第1冷媒と前記第2冷媒との熱交換を可能とするカスケードコンデンサを構成する。
当該冷凍装置は、温度制御対象を、前記第1冷凍機の前記第1蒸発器によって冷却した後、前記第2冷凍機の前記第2蒸発器によって冷却してもよい。
【0021】
また、一実施の形態にかかる冷凍装置は、
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が、この順に冷媒を循環させるように接続された冷凍回路を備え、
前記冷凍回路における前記凝縮器の下流側で且つ前記膨張弁の上流側の部分と、前記冷凍回路における前記蒸発器の下流側で且つ前記圧縮機の上流側の部分とが、各前記部分を通過する前記冷媒の熱交換を可能とする内部熱交換器を構成する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、所望温度までの温度制御対象の冷却を容易に且つ安定的に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施の形態にかかる流体温調システムの概略図である。
【
図2】
図1の流体温調システムを構成する中温側冷凍機及び低温側冷凍機の拡大図である。
【
図3】
図1の流体温調システムを構成する低温側冷凍機の拡大図である。
【
図4】
図1の流体温調システムの起動時の動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態にかかる流体温調システム1の概略図である。本実施の形態に係る流体温調システム1は、多元式冷凍装置10と、流体を通流させる流体通流装置20と、制御装置30と、を備えている。流体温調システム1は、多元式冷凍装置10によって流体通流装置20が通流させる流体を冷却する。本実施の形態では、多元式冷凍装置10によって流体通流装置20が通流させる液体を冷却するが、流体通流装置20は気体を通流させてもよく、多元式冷凍装置10は気体を冷却してもよい。
【0026】
制御装置30は、多元式冷凍装置10及び流体通流装置20に電気的に接続されており、多元式冷凍装置10及び流体通流装置20の動作を制御する。制御装置30は、例えばCPU、ROM、RAM等を含むコンピュータであってもよく、記憶されたコンピュータプログラムに従い多元式冷凍装置10及び流体通流装置20の動作を制御してもよい。
【0027】
本実施の形態にかかる流体温調システム1は、流体通流装置20が通流させる流体を-70℃以下、好ましく-80℃以下まで冷却するように構成されるが、流体温調システム1の冷凍能力や冷却可能温度は特に限られるものではない。
【0028】
<多元式冷凍装置>
多元式冷凍装置10は三元式冷凍装置であり、それぞれヒートポンプ式の冷凍機として構成される高温側冷凍機100と、中温側冷凍機200と、低温側冷凍機300と、を備えている。
【0029】
高温側冷凍機100と中温側冷凍機200との間には第1カスケードコンデンサCC1が構成され、中温側冷凍機200と低温側冷凍機300との間には第2カスケードコンデンサCC2が構成される。これにより、多元式冷凍装置10は、高温側冷凍機100が循環させる高温側冷媒によって中温側冷凍機200が循環させる中温側冷媒を冷却可能であり、冷却された中温側冷媒によって低温側冷凍機300が循環させる低温側冷媒を冷却可能である。
【0030】
(高温側冷凍機)
高温側冷凍機100は、高温側圧縮機101、高温側凝縮器102、高温側膨張弁103及び高温側蒸発器104が、この順に高温側冷媒を循環させるように配管部材(パイプ)によって接続された高温側冷凍回路110と、高温側ホットガス回路120と、冷却用バイパス回路130と、を有している。
【0031】
高温側冷凍回路110では、高温側圧縮機101が、高温側蒸発器104から流出した基本的には気体の状態の高温側冷媒を圧縮して、昇温及び昇圧させた状態で高温側凝縮器102に供給する。高温側凝縮器102は、高温側圧縮機101で圧縮された高温側冷媒を冷却水によって冷却すると共に凝縮し、所定の温度の高圧の液体の状態にして、高温側膨張弁103に供給する。
【0032】
本実施の形態の形態では、高温側凝縮器102に冷却水供給管40が接続され、冷却水供給管40から供給される冷却水によって高温側冷媒が冷却される。高温側冷媒を冷却するための冷却水としては、水が用いられてよいし、その他の冷媒が用いられてもよい。また、高温側凝縮器102は空冷式の凝縮器として構成されてもよい。
【0033】
高温側膨張弁103は、高温側凝縮器102から供給された高温側冷媒を膨張させることにより減圧させて、膨張前に対して降温及び降圧させた気液混合又は液体の状態の高温側冷媒を高温側蒸発器104に供給する。高温側蒸発器104は、中温側冷凍機200の後述する中温側凝縮器202と共に第1カスケードコンデンサCC1を構成し、供給された高温側冷媒を、中温側冷凍機200が循環させる中温側冷媒と熱交換させて中温側冷媒を冷却する。中温側冷媒と熱交換した高温側冷媒は昇温して理想的には気体の状態となり、高温側蒸発器104から流出して再び高温側圧縮機101で圧縮される。
【0034】
高温側ホットガス回路120は、高温側冷凍回路110における高温側圧縮機101の下流側で且つ高温側凝縮器102の上流側の部分から分岐して、高温側膨張弁103の下流側で且つ高温側蒸発器104の上流側の部分に接続されるホットガス流路121と、ホットガス流路121に設けられた流量調節弁122と、を有している。
【0035】
高温側ホットガス回路120は、流量調節弁122の開閉及び開度調節に応じて、高温側圧縮機101から流出した高温側冷媒を高温側膨張弁103が膨張させた高温側冷媒に混合させることで、高温側蒸発器104の冷凍能力を調節する。すなわち、高温側ホットガス回路120は、高温側蒸発器104の容量制御のために設けられている。高温側冷凍機100では、高温側ホットガス回路120を設けることで高温側蒸発器104の冷凍能力を迅速に調節することが可能となっている。
【0036】
冷却用バイパス回路130は、高温側冷凍回路110における高温側凝縮器102の下流側で且つ高温側膨張弁103の上流側の部分から分岐して、高温側圧縮機101に接続される冷却用流路131と、冷却用流路131に設けられた冷却用膨張弁132と、を有している。冷却用バイパス回路130は、高温側凝縮器102から流出した高温側冷媒を膨張させ、膨張前に対して降温させた高温側冷媒により、高温側圧縮機101を冷却することができる。
【0037】
以上のような高温側冷凍機100で用いられる高温側冷媒は特に限られるものではないが、温度制御対象に対する目標冷却温度に応じて適宜決められる。本実施の形態では、流体通流装置20が通流させる流体を-70℃以下、好ましく-80℃以下まで冷却し、冷却された流体によって温度制御対象を冷却するために、高温側冷媒としてR410Aが用いられるが、高温側冷媒の種類は特に限られるものではない。高温側冷媒としては、R32、R125、R134a、R407C、HFO系、CO2、アンモニア等が用いられてもよい。また、高温側冷媒は混合冷媒でもよい。また、R410A、R32、R125、R134a、R407C、混合冷媒等において、オイルキャリアとして、n-ペンタンが添加された冷媒が用いられてもよい。n-ペンタンが添加された場合には、高温側圧縮機101の潤滑のためのオイルを冷媒とともに好適に循環させることができ、高温側圧縮機101を安定的に運転させることができる。また、オイルキャリアとして、プロパンが添加されてもよい。
【0038】
(中温側冷凍機)
中温側冷凍機200は、中温側圧縮機201、中温側凝縮器202、中温側第1膨張弁203及び中温側第1蒸発器204が、この順に中温側冷媒を循環させるように配管部材(パイプ)により接続された中温側冷凍回路210と、カスケード用バイパス回路220と、中温側ホットガス回路230と、を有している。
【0039】
中温側冷凍回路210では、中温側圧縮機201が、中温側第1蒸発器204から流出した基本的には気体の状態の中温側冷媒を圧縮して、昇温及び昇圧させた状態で中温側凝縮器202に供給する。中温側凝縮器202は、上述したように高温側冷凍機100の高温側蒸発器104と共に第1カスケードコンデンサCC1を構成しており、供給された中温側冷媒を、第1カスケードコンデンサCC1において高温側冷媒によって冷却すると共に凝縮し、所定の温度の高圧の液体の状態にして、中温側第1膨張弁203に供給する。
【0040】
中温側第1膨張弁203は、中温側凝縮器202から供給された中温側冷媒を膨張させることにより減圧させて、膨張前に対して降温及び降圧させた気液混合又は液体の状態の中温側冷媒を中温側第1蒸発器204に供給する。中温側第1蒸発器204は、供給された中温側冷媒を、流体通流装置20が通流させる流体と熱交換させて当該流体を冷却する。流体通流装置20が通流させる流体と熱交換した中温側冷媒は昇温して理想的には気体の状態となり、中温側第1蒸発器204から流出して再び中温側圧縮機201で圧縮される。
【0041】
カスケード用バイパス回路220は、中温側冷凍回路210における中温側凝縮器202の下流側で且つ中温側第1膨張弁203の上流側の部分から分岐し、中温側第1蒸発器204の下流側で且つ中温側圧縮機201の上流側の部分に接続され、中温側冷凍回路210から分岐する中温側冷媒を通流させる分岐流路221と、分岐流路221に設けられた中温側第2膨張弁223と、分岐流路221において中温側第2膨張弁223よりも下流側に設けられた中温側第2蒸発器224と、を有している。
【0042】
中温側第2膨張弁223は、中温側冷凍回路210から分岐した中温側冷媒を膨張させることにより減圧させて、膨張前に対して降温及び降圧させた気液混合又は液体の状態の中温側冷媒を中温側第2蒸発器224に供給する。中温側第2蒸発器224は、低温側冷凍機300の後述する低温側凝縮器302と共に第2カスケードコンデンサCC2を構成しており、供給された中温側冷媒を、低温側冷凍機300が循環させる低温側冷媒と熱交換させて低温側冷媒を冷却する。低温側冷媒と熱交換した中温側冷媒は昇温して理想的には気体の状態となり、第2カスケードコンデンサCC2から流出して、中温側第1蒸発器204から流出した中温側冷媒と合流する。
【0043】
中温側ホットガス回路230は、中温側冷凍回路210における中温側圧縮機201の下流側で且つ中温側凝縮器202の上流側の部分から分岐して、カスケード用バイパス回路220における中温側第2膨張弁223の下流側で且つ中温側第2蒸発器224の上流側の部分に接続されるホットガス流路231と、ホットガス流路231に設けられた流量調節弁232と、を有している。
【0044】
中温側ホットガス回路230は、流量調節弁232の開閉及び開度調節に応じて、中温側圧縮機201から流出した中温側冷媒を中温側第2膨張弁223が膨張させた中温側冷媒に混合させることで、第2カスケードコンデンサCC2(中温側第2蒸発器224)の冷凍能力を調節する。すなわち、中温側ホットガス回路230は、第2カスケードコンデンサCC2の容量制御のために設けられている。中温側冷凍機200では、中温側ホットガス回路230を設けることで第2カスケードコンデンサCC2の冷凍能力を迅速に調節することが可能となっている。
【0045】
以上のような中温側冷凍機200で用いられる中温側冷媒は特に限られるものではないが、高温側冷媒の場合と同様に、温度制御対象に対する目標冷却温度に応じて適宜決められる。本実施の形態では、流体通流装置20が通流させる流体を-70℃以下、好ましく-80℃以下まで冷却するために、中温側冷媒としてR23が用いられるが、中温側冷媒の種類は特に限られるものではない。
【0046】
(低温側冷凍機)
低温側冷凍機300は、低温側圧縮機301、低温側凝縮器302、低温側膨張弁303及び低温側蒸発器304が、この順に低温側冷媒を循環させるように配管部材(パイプ)により接続された低温側冷凍回路310と、低温側ホットガス回路320と、を有している。
【0047】
低温側冷凍回路310では、低温側圧縮機301が、低温側蒸発器304から流出した基本的には気体の状態の低温側冷媒を圧縮して、昇温及び昇圧させた状態で低温側凝縮器302に供給する。低温側凝縮器302は、上述したように中温側冷凍機200の中温側第2蒸発器224と共に第2カスケードコンデンサCC2を構成しており、供給された低温側冷媒を、第2カスケードコンデンサCC2において中温側冷媒によって冷却すると共に凝縮し、所定の温度の高圧の液体の状態にして、低温側膨張弁303に供給する。
【0048】
低温側膨張弁303は、低温側凝縮器302から供給された低温側冷媒を膨張させることにより減圧させて、膨張前に対して降温及び降圧させた気液混合又は液体の状態の低温側冷媒を低温側蒸発器304に供給する。低温側蒸発器304は、供給された低温側冷媒を、流体通流装置20が通流させる流体と熱交換させて当該流体を冷却する。流体通流装置20が通流させる流体と熱交換した低温側冷媒は昇温して理想的には気体の状態となり、低温側蒸発器304から流出して再び低温側圧縮機301で圧縮される。
【0049】
低温側ホットガス回路320は、低温側冷凍回路310における低温側圧縮機301の下流側で且つ低温側凝縮器302の上流側の部分から分岐して、低温側膨張弁303の下流側で且つ低温側蒸発器304の上流側の部分に接続されるホットガス流路321と、ホットガス流路321に設けられた流量調節弁322と、を有している。
【0050】
低温側ホットガス回路320は、流量調節弁322の開閉及び開度調節に応じて、低温側圧縮機301から流出した低温側冷媒を低温側膨張弁303が膨張させた低温側冷媒に混合させることで、低温側蒸発器304の冷凍能力を調節する。すなわち、低温側ホットガス回路320は、低温側蒸発器304の容量制御のために設けられている。低温側冷凍機300では、低温側ホットガス回路320を設けることで低温側蒸発器304の冷凍能力を迅速に調節することが可能となっている。
【0051】
また、低温側冷凍機300では、低温側冷凍回路310における低温側凝縮器302の下流側で且つ低温側膨張弁303の上流側の第1部分311と、低温側冷凍回路310における低温側蒸発器304の下流側で且つ低温側圧縮機301の上流側の第2部分312とが、各部分311,312を通過する低温側冷媒同士の熱交換を可能とする内部熱交換器IEを構成している。
【0052】
内部熱交換器IEにおいては、低温側凝縮器302から流出し、低温側膨張弁303に流入する前の低温側冷媒と、低温側蒸発器304から流出し、低温側圧縮機301に流入する前の低温側冷媒とが互いに熱交換する。これにより、低温側凝縮器302から流出した低温側冷媒を低温側膨張弁303に流入する前に冷却することができ、低温側蒸発器304から流出した低温側冷媒を低温側圧縮機301に流入する前に加熱することができる。その結果、低温側蒸発器304の冷凍能力を簡易的に高くすることができ、且つ低温側圧縮機301の耐久性能(耐冷性能)の確保に対する負担を軽減できる。
【0053】
以上のような低温側冷凍機300で用いられる低温側冷媒は特に限られるものではないが、高温側冷媒及び中温側冷媒の場合と同様に、温度制御対象に対する目標冷却温度に応じて適宜決められる。本実施の形態では、流体通流装置20が通流させる流体を-70℃以下、好ましく-80℃以下まで冷却するために、低温側冷媒としてR23が用いられるが、低温側冷媒の種類は特に限られるものではない。
【0054】
ここで、本実施の形態における中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300は共に、R23を用いるが、中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300では互いに異なる冷媒が用いられてもよい。また、超低温の冷却を実現する場合、中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300の少なくともいずれかにおいて、R23に代えて、R1132aが用いられてもよい。R1132aは、その沸点が大気圧下で約-83℃以下であり、-70℃以下まで降温可能であるため、極めて低温の冷却を行う際に好適に用いられ得る。しかも、R1132aの地球温暖化係数(GWP)は極めて低いため、環境に優しいに装置を構成することができる。また、中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300の少なくともいずれかにおいて、R23に代えて、R508Aが用いられてもよい。
【0055】
また、中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300の少なくともいずれかにおいて、R23とその他の冷媒とを含む混合冷媒や、R1132aとその他の冷媒とを含む混合冷媒が用いられてもよい。
例えば、中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300の少なくともいずれかにおいては、R1132aと、CO2(R744)とを混合させた混合冷媒が用いられてもよい。この場合、極めて低温の冷却と地球温暖化係数の抑制を実現しつつ、取り扱いも容易になり得る。
また、中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300の少なくともいずれかにおいて、R1132aと、R744と、R23とを混合させた混合冷媒が用いられてもよい。
【0056】
また、中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300の少なくともいずれかにおいては、例えば、R23、R1132a、又はこれらの少なくともいずれかを含む混合冷媒に、n-ペンタンが添加された冷媒が用いられてもよい。n-ペンタンはオイルキャリアとして機能するため、添加された場合には、圧縮機201,301の潤滑のためのオイルを冷媒とともに好適に循環させることができ、圧縮機201,301を安定的に運転させることができる。また、オイルキャリアとして、プロパンが添加されてもよい。
【0057】
<流体通流装置>
続いて流体通流装置20について説明する。本実施の形態における流体通流装置20は、流体が通流する流体流路21と、流体流路で流体を通流させるための駆動力を付与するポンプ22と、を有している。本実施の形態における流体流路21は、中温側冷凍機200の中温側第1蒸発器204に接続され、低温側冷凍機300の低温側蒸発器304に接続され、さらには温度制御対象50に接続されている。
【0058】
ポンプ22から流出した流体は、中温側第1蒸発器204において中温側冷媒によって冷却された後、低温側蒸発器304において低温側冷媒によって冷却される。その後、流体は、温度制御対象50に供給され、ポンプ22に戻る。本実施の形態では、ポンプ22から流出した流体が温度制御対象50を通過した後にポンプ22に戻るが、流体通流装置20はこのような構成に限られるものではない。例えば流体通流装置20は、ポンプ22から流出した流体を温調して温度制御対象50に供給し、その後、排出するようになっていてもよい。
【0059】
流体通流装置20が通流させる流体は特に限られるものではないが、本実施の形態では、超低温用のブラインが用いられる。
【0060】
温度制御対象50は種々のものが想定されるが、例えば半導体製造装置のステージであってもよいし、半導体が実装された基板を載せるための部材であってもよい。また、流体通流装置20が気体を通流させる場合には、温度制御対象50は空間であってもよい。
【0061】
<動作>
次に、流体温調システム1の動作の一例を説明する。
【0062】
流体温調システム1を動作させる際には、まず、制御装置30の指令により、高温側冷凍機100の高温側圧縮機101、中温側冷凍機200の中温側圧縮機201、低温側冷凍機300の低温側圧縮機301、及び流体通流装置20のポンプ22が駆動される。これにより、高温側冷凍機100において高温側冷媒が循環し、中温側冷凍機200において中温側冷媒が循環し、低温側冷凍機300において低温側冷媒が循環し、流体通流装置20において液体が通流する。
【0063】
制御装置30は、冷却の動作の際、高温側冷凍機100における高温側膨張弁103、流量調節弁122及び冷却用膨張弁132、中温側冷凍機200における中温側第1膨張弁203、中温側第2膨張弁223及び流量調節弁232、低温側冷凍機300における低温側膨張弁303及び流量調節弁322の開度を適宜調節することができる。なお、上記各弁は、本実施の形態において、外部信号に基づいて開度を調節可能な電子膨張弁である。
【0064】
高温側冷凍機100では、高温側圧縮機101が圧縮させた高温側冷媒が高温側凝縮器102で凝縮されて、高温側膨張弁103に供給される。高温側膨張弁103は、高温側凝縮器102が凝縮した高温側冷媒を膨張させて降温し、高温側蒸発器104に供給する。高温側蒸発器104は、上述したように中温側冷凍機200の中温側凝縮器202と共に第1カスケードコンデンサCC1を構成しており、供給された高温側冷媒を、中温側冷凍機200が循環させる中温側冷媒と熱交換させて中温側冷媒を冷却する。
【0065】
中温側冷凍機200では、中温側圧縮機201が圧縮させた中温側冷媒が第1カスケードコンデンサCC1において凝縮されて、
図2に示される分岐点BPにおいて分岐して、矢印に示すように、中温側第1膨張弁203と、中温側第2膨張弁223とに送られる。中温側第1膨張弁203は、第1カスケードコンデンサCC1が凝縮した中温側冷媒を膨張させて降温し、中温側第1蒸発器204に供給する。一方、中温側第2膨張弁223は、第1カスケードコンデンサCC1が凝縮した中温側冷媒を膨張させて降温し、中温側第2蒸発器224に供給する。
【0066】
そして、中温側第1蒸発器204は、中温側冷媒によって、流体通流装置20が通流させる流体を冷却する。中温側第2蒸発器224は、上述したように低温側冷凍機300の低温側凝縮器302と共に第2カスケードコンデンサCC2を構成しており、供給された中温側冷媒を、低温側冷凍機300が循環させる低温側冷媒と熱交換させて低温側冷媒を冷却する。
【0067】
低温側冷凍機300では、低温側圧縮機301が圧縮させた低温側冷媒が第2カスケードコンデンサCC2において凝縮されて、
図3に示されるように内部熱交換器IEを経て低温側膨張弁303に送られる。低温側膨張弁303は、内部熱交換器IEを通過した低温側冷媒を膨張させて降温し、低温側蒸発器304に供給する。そして、低温側蒸発器304は、低温側冷媒によって、流体通流装置20が通流させる流体を冷却する。
【0068】
すなわち、本実施の形態では、中温側圧縮機201によって圧縮される中温側冷媒は、中温側第1凝縮器202(第1カスケードコンデンサCC1)で凝縮されて、中温側第1膨張弁203及び中温側第2膨張弁223に送られるように分岐される。そして、中温側第1膨張弁203は中温側冷媒を膨張させ、中温側第2膨張弁223は中温側冷媒を膨張させ、同時に、低温側膨張弁303が、低温側冷媒を膨張させてその温度を低下させる。これにより、流体通流装置20が通流させる流体を、中温側冷凍機200の中温側第1蒸発器204によって冷却した後、低温側冷凍機300の低温側蒸発器304によって冷却する。
【0069】
また、内部熱交換器IEにおいては、低温側凝縮器302から流出し、低温側膨張弁303に流入する前の低温側冷媒と、低温側蒸発器304から流出し、低温側圧縮機301に流入する前の低温側冷媒とが互いに熱交換する。これにより、低温側凝縮器302から流出した低温側冷媒に過冷却度が付与され得る。
【0070】
以下では、流体温調システム1の起動時の動作について説明する。
【0071】
図4を参照し、本実施の形態では、流体温調システム1は、起動時に以下の動作(0)~(3)を順に行う。
【0072】
(0)まず、ポンプ22が駆動され、流体通流装置20内で流体が通流する。
(1)次いで、ポンプ22の運転時間が所定時間を越えた後、一定の所定回転数で高温側圧縮機101が駆動するように高温側冷凍機100が運転される。
(2)次いで、高温側冷凍機100の運転時間が第1の運転時間を越えた後、一定の所定回転数で中温側圧縮機201が駆動するように中温側冷凍機200が運転される。この際、中温側第1膨張弁203及び中温側第2膨張弁223がともに開状態とされる。
(3)次いで、中温側冷凍機200の運転時間が第2の運転時間を越えた後、一定の所定回転数で低温側圧縮機301が駆動するように低温側冷凍機300が運転される。
【0073】
起動時における高温側冷凍機100の運転(1)では、高温側膨張弁103が所定の開度で開かれ、流量調節弁122は閉じられる。
【0074】
起動時における中温側冷凍機200の運転(2)では、中温側第1膨張弁203及び中温側第2膨張弁223がともに、所定の開度で開状態とされる。一方で、流量調節弁232は閉じられる。
【0075】
起動時における低温側冷凍機300の運転(3)では、低温側膨張弁303が所定の開度で開かれ、流量調節弁322は閉じられる。
【0076】
また、本実施の形態では、中温側冷媒と、低温側冷媒とが同じ冷媒である。しかし、上記起動時において、中温側第1蒸発器204及び中温側第2蒸発器224での中温側冷媒の蒸発温度は、低温側蒸発器304での低温側冷媒の蒸発温度よりも高い温度に設定される。
【0077】
中温側第1蒸発器204での中温側冷媒の蒸発温度は、中温側第1膨張弁203の開度を調整することにより変更可能である。中温側第2蒸発器224での中温側冷媒の蒸発温度は、中温側第2膨張弁223の開度を調整することにより変更可能である。低温側蒸発器304での低温側冷媒の蒸発温度は、低温側膨張弁303の開度を調整することにより変更可能である。
【0078】
そして、起動時における低温側冷凍機300の運転(3)において、低温側冷凍機300の運転時間が第3の運転時間を越えた後、流体温調システム1は、流体通流装置20で通流する流体の温度に応じて、高温側圧縮機101の回転数、中温側圧縮機201の回転数及び低温側圧縮機301の回転数のうちの少なくともいずれかを変化させる。
詳しくは、高温側圧縮機101の回転数、中温側圧縮機201の回転数及び低温側圧縮機301の回転数は、ポンプ22から吐出される流体の温度と目標温度との差分に応じて変更される。目標温度は、制御装置30に記録されている。
【0079】
すなわち、低温側冷凍機300の運転時間が第3の運転時間を越えた後においては、圧縮機の自動制御(自動運転)が開始される。本実施の形態では、この自動制御が開始されると、中温側第1蒸発器204での中温側冷媒の蒸発温度が、起動時のときよりも低い温度に変更される。また、自動制御運転中においては、流量調節弁122、流量調節弁232及び流量調節弁322も制御される。そして、起動後においては、流体温調システム1は、流体通流装置20が通流させる流体を、中温側第1蒸発器204によって冷却した後、低温側蒸発器304によって冷却する。
【0080】
以上に説明した流体温調システム1では、流体通流装置20が通流させる流体が、中温側冷凍機200の中温側第1蒸発器204によって冷却(プレクール)された後、中温側第1蒸発器204よりも大きい冷凍能力を出力し得る低温側冷凍機300の低温側蒸発器304によって冷却される。これにより、流体温調システム1は、温度制御対象に対する目標の所望温度までの冷却を実現する際に、低温側冷凍機300において高性能な圧縮機を採用した単純な三元冷凍装置よりも容易に製作され得ることで、所望温度までの温度制御対象の冷却を容易に且つ安定的に実現できる。
【0081】
起動時においては、高温側冷凍機100、中温側冷凍機200および低温側冷凍機300が段階的にこの順番で運転を開始する。そして、起動時において、中温側第1蒸発器204及び中温側第2蒸発器224での中温側冷媒の蒸発温度は、低温側蒸発器304での低温側冷媒の蒸発温度よりも高い温度に設定される。これにより、例えば常温のブラインを冷却する場合に、中温側圧縮機201及び低温側圧縮機301が過負荷状態になることを回避でき、安全に且つ効率的に、所望温度まで温度制御対象を冷却できる。
【0082】
また、内部熱交換器IEにおいては、低温側凝縮器302から流出し、低温側膨張弁303に流入する前の低温側冷媒と、低温側蒸発器304から流出し、低温側圧縮機301に流入する前の低温側冷媒とが互いに熱交換する。これにより、低温側凝縮器302から流出した低温側冷媒を低温側膨張弁303に流入する前に冷却することができ、低温側蒸発器304から流出した低温側冷媒を低温側圧縮機301に流入する前に加熱することができる。その結果、低温側蒸発器304の冷凍能力を簡易的に高くすることができ、且つ低温側圧縮機301の耐久性能(耐冷性能)の確保に対する負担を軽減できる。そのため、低温側圧縮機301の能力を過剰に高めなくても所望の冷却を実現し易くなるため、製作容易性を向上させることができる。
【0083】
なお、本実施の形態における中温側冷凍機200及び低温側冷凍機300は、二元式の冷凍装置として構成された場合でも有用である。すなわち、中温側冷凍機200を第1冷凍機として備えるとともに、低温側冷凍機300を第2冷凍機として備える以下のような二元式の冷凍装置も有用である。
【0084】
第1圧縮機、第1凝縮器、第1膨張弁及び第1蒸発器が、この順に第1冷媒を循環させるように接続された第1冷凍回路を有するとともに、前記第1冷凍回路における前記第1凝縮器の下流側で且つ前記第1膨張弁の上流側の部分から分岐し、前記第1蒸発器の下流側で且つ前記第1圧縮機の上流側の部分に接続され、前記第1冷凍回路から分岐する前記第1冷媒を通流させる分岐流路、前記分岐流路に設けられたカスケード用膨張弁、及び前記分岐流路において前記カスケード用膨張弁よりも下流側に設けられたカスケード用蒸発器を含むカスケード用バイパス回路を有する第1冷凍機と、
第2圧縮機、第2凝縮器、第2膨張弁及び第2蒸発器が、この順に第2冷媒を循環させるように接続された第2冷凍回路を有する第2冷凍機と、を備え、
前記第1冷凍機の前記カスケード用蒸発器と前記第2冷凍機の前記第2凝縮器とが、前記第1冷媒と前記第2冷媒との熱交換を可能とするカスケードコンデンサを構成する、冷凍装置。
この際、温度制御対象を、前記第1冷凍機の前記第1蒸発器によって冷却した後、前記第2冷凍機の前記第2蒸発器によって冷却することが良い。
【0085】
また、本実施の形態における低温側冷凍機300は、以下のような単元式の冷凍装置として構成された場合でも有用である。
【0086】
圧縮機、凝縮器、膨張弁及び蒸発器が、この順に冷媒を循環させるように接続された冷凍回路を備え、
前記冷凍回路における前記凝縮器の下流側で且つ前記膨張弁の上流側の部分と、前記冷凍回路における前記蒸発器の下流側で且つ前記圧縮機の上流側の部分とが、各前記部分を通過する前記冷媒の熱交換を可能とする内部熱交換器を構成する、冷凍装置。
【0087】
なお、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、上述の実施の形態においては種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0088】
1…流体温調システム、10…多元式冷凍装置、20…流体通流装置、21…流体流路、22…ポンプ、30…制御装置、40…冷却水供給管、50…温度制御対象、100…高温側冷凍機、101…高温側圧縮機、102…高温側凝縮器、103…高温側膨張弁、104…高温側蒸発器、110…高温側冷凍回路、120…高温側ホットガス回路、121…ホットガス流路、122…流量調節弁、130…冷却用バイパス回路、131…冷却用流路、132…冷却用膨張弁、200…中温側冷凍機、201…中温側圧縮機、202…中温側凝縮器、203…中温側第1膨張弁、204…中温側第1蒸発器、210…中温側冷凍回路、220…カスケード用バイパス回路、221…分岐流路、223…中温側第2膨張弁、224…中温側第2蒸発器、230…中温側ホットガス回路、231…ホットガス流路、232…流量調節弁、300…低温側冷凍機、301…低温側圧縮機、302…低温側凝縮器、303…低温側膨張弁、304…低温側蒸発器、310…低温側冷凍回路、311…第1部分、312…第2部分、320…低温側ホットガス回路、321…ホットガス流路、322…流量調節弁、CC1…第1カスケードコンデンサ、CC2…第2カスケードコンデン、IE…内部熱交換器