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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】デザイン段ボールとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B31F 7/00 20060101AFI20240919BHJP
   B65D 5/42 20060101ALI20240919BHJP
   B65D 65/42 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B31F7/00
B65D5/42 C
B65D65/42 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020209437
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2022096376
(43)【公開日】2022-06-29
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】520498697
【氏名又は名称】株式会社そら
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【弁理士】
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】内藤 千裕
【審査官】▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-109725(JP,U)
【文献】特開2016-011349(JP,A)
【文献】登録実用新案第3107309(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31F 7/00
B65D 5/42
B65D 65/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルート(中芯、メディアム)の少なくとも一つの表面に接着剤を用いてライナーを貼合した段ボールであって、上記ライナーの少なくとも一部分をフルートに接着させずに切り抜き、ライナーから立ち上げ可能な立ち上げ部とした段ボールの製造方法であって、
上記ライナーの上記立ち上げ部に対応する箇所に接着防止層を形成または配置することで、上記立ち上げ部に対応する上記ライナーの裏側表面上に非接着領域を形成し、その後に接着剤を用いて上記ライナーをフルートに貼合せ、この貼合せ後に、上記ライナーの表面側から上記非接着領域の外縁部に沿ってライナーのみをハーフカット(半抜き加工)することを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デザイン性に優れた積層包装材料、特に段ボールと、その製造方法とに関するものである。
本発明は特に、デザイン性に優れた紙製の包装材料(紙器)、特に段ボール製の紙器と、その製造方法とに関するものである。
【0002】
本発明のデザイン性に優れた段ボールは図柄を立体的に表示することができるので商品を収容した容器として好ましく使用できる。容器にはその中に収容された商品を表す図柄、例えば野菜、青果、肉類、魚類等の生鮮食品、菓子類、麺類等の食品、生花、玩具、文具等の任意の商品の図柄や、その商品のイメージを向上させる図柄を印刷し、少なくともその一部を立体化することができる。
【0003】
本発明のデザイン性に優れた段ボールは立体的デザインを有する展示ボート、ウエルカムボード等として利用できる。
【背景技術】
【0004】
紙器のデザイン性や機能性を向上させるためのアイデアは古くからいろいろ提案されている。
【0005】
[特許文献1](公開実用新案平成2-16722号公報)には、箱の表面に描いた図案の一部を立体的に跳ね起こすことで情緒的にアピール性の強い容器とすることは記載されている。
しかし、この跳ね起こし部分は容器の一部を切り抜いて取出口とした部分に対応するため容器の輸送中等に内容物が取出口から落下する危険がある。
【0006】
[特許文献2](特許第4346409号公報)には波状をなす中芯の両面にライナーを貼着した段ボールにおいて、表裏のライナーに異なるものを使用し、絵柄の輪郭を打ち抜き、その両端に回転軸となる罫線入りの繋部を設け、絵柄の両端いずれの繋部においても、罫線の一側方の絵柄の輪郭が外側に、他側方の絵柄の輪郭が内側に位置するようにし、絵柄を両端の繋部の罫線を軸にして反転させると、絵柄は裏ライナーが表向きとなって、罫線の両側方が共に表ライナーの表側に重なって露出するようにしたことを特徴とする絵柄反転段ボールが記載されている。
しかし、この容器の場合にも絵柄の輪郭を打ち抜くため、容器を反転させた時に内容物が取出口から落下する危険がある。
【0007】
段ボール紙の波形中芯(フルート)を外部から目視可能にするというアイデアも公知である。[特許文献3](実用新案登録第第3067774号公報)には段ボール紙の波形中芯を額縁として利用する画面構成材が記載されている。
しかし、この特許文献3では除去したライナーは破棄され、装飾としては利用されていない。
【0008】
本発明者は段ボールのザイン性を向上させ、段ボールの用途をさらに広げることを研究し、本発明を完成させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】公開実用新案平成2-16722号公報
【文献】特許第4346409号公報
【文献】実用新案登録第第3067774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、ザイン性および機能性に優れた段ボールを提供することにある。
本発明はさらに、上記のザイン性および機能性に優れた段ボールを製造するための新規な製造方法を提供する。
本発明はさらに、上記のデザイン性に優れた段ボールから作られる、輸送中や使用中に内容物が容器から外に落下する恐れがない容器を提供する。
本発明はさらに、上記のデザイン性に優れた段ボールから作られる展示ボードを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の対象は、フルート(中芯、メディアム)の少なくとも一方の表面に接着剤を用いてライナーを貼合した段ボールにおいて、ライナーの少なくとも一部分をフルートに接着させずに切り抜き、ライナーから立ち上げ可能な立ち上げ部としたことを特徴とするデザイン性に優れた段ボールにある。
【0012】
上記の立ち上げ部はその一部を段ボールと連結した状態で残すか、および/または、立ち上げ部全体を除去してフルートがデザイン状に露出したデザイン段ボールとして使用することもできる。
【0013】
上記の立ち上げ部をライナーの表面上に描かれた連続した図柄の一部分とすることで図柄のデザイン性をさらに向上させることができる。
【0014】
本発明の第2の対象は、上記段ボールから成る容器にある。
【0015】
上記容器には容器の中に収容された商品を表す図柄、商品のイメージを向上させる図柄にすることができる。また、容器の中に収容された商品とは直接関係ないデザイン画像を印刷することもできる。
【0016】
上記図柄は任意であるが、動物および/または植物および/または昆虫の画像を含む図柄にすることができる。
【0017】
商業利用する場合には、上記図柄は箱に収容された商品、例えばリンゴ、バナナ等の青果例、サケやカニ等の魚類、和菓子、ケーキ等の菓子類を含む食料品、生花、玩具、文具、ユリやバラ等の生花、玩具、文具、工業製品等の任意の商品の図柄にすることができる。
【0018】
ペットの葬儀に使うボックスで使用する場合にはペットが好きだったもの、例えばぬいぐるみや人形等の図柄にすることもできる。シンデレラ城や恐竜等の遊園地の土産用パッケージに本発明を適用することもできる。
【0019】
本発明の第3の対象は、上記段ボールから成る展示ボードやウエルカムボード等を含むボード類にある。
【0020】
展示ボード、例えば結婚式等で使用する段ボールの場合には、段ボールの表面に新郎新婦が思いのままに装飾・デコレーションをし、さらに段ボールを抽選ボードとして使用することができる。その場合には立ち上げ部の裏側の段ボール側表面上に1等、2等の表示を記載しておき、立ち上げ部を順次開けて行くことでビンゴのように楽しむこともできる。
【0021】
販売促進やアートの分野では、上記図柄は人物、建物、風景、動植物、昆虫、爬虫類、サイエンスを含む任意の図柄にすることができる。本発明は、平面を有する動物および/または植物および/または昆虫の図柄に特に適している。
【0022】
上記の立ち上げ部は段ボールの表裏ライナーの一方または両方に描かれた図柄や印刷画像の一部分を構成するのが好ましい。例えば、ライナーの表面に描かれた模様の中を飛び回る蝶の羽の部分で立ち上げ部を構成することができる。また、お花畑の絵柄の中の花の絵柄あるいは緑の草原を表す草や茎の部分にすることができる。
【0023】
本発明の第2の対象は、上記段ボールで作られた容器、特に紙器にある。
【0024】
本発明の第3の対象は、上記段ボールの製造方法にある。本発明は、フルート(中芯、メディアム)の少なくとも一つの表面上に接着剤を用いてライナーを貼合した段ボールであって、上記ライナーの少なくとも一部分をフルートに接着させずに切り抜き、ライナーから立ち上げ可能な立ち上げ部とした段ボールの製造方法であって、上記立ち上げ部に対応する上記ライナーの裏側表面上に非接着領域を形成し、その後に、接着剤を用いてライナーをフルートに貼合せ、この貼合せ後に、ライナーの表面側から上記着領域の外縁部に沿ってライナーのみをハーフカット(半抜き加工)することを特徴とする方法を提供する。
【0025】
上記非接着領域は種々の方法で形成することができる。例えば、上記非接着領域は上記立ち上げ部に対応する上記ライナーの裏側表面上に接着防止層を形成することで形成できる。この接着防止層はフルートにライナーを接着するための接着剤をはじく性質を有する「弾きニス」を塗布して形成できる。接着防止層と接着剤層の塗布の順番を逆にすることも可能である。
【0026】
接着防止層として非接着剥離シートを配置して上記非接着領域を形成することもできる。この場合には、ライナーをフルートに接着する前に、上記立ち上げ部に対応する上記ライナーの裏側表面上に非接着剥離シートから成る剥離シートパーツを配置し、ライナーをフルートに接着剤を用いて貼合せした後に、ライナーの表面側から上記剥離シートパーツの外縁部に沿ってライナーのみをハーフカット(半抜き加工)し、ライナーの下側から上記剥離シートパーツを抜き出せばよい。
【発明の効果】
【0027】
本発明の段ボールは立体構造を取ることができるので、ザイン性に優れた包装容器、展示パネル、養生シート、建材、教材、工芸材料,その他の材料として使用できる。
【0028】
本発明の段ボールは製品を収容する紙製の容器(紙器)、特に箱で有用である。
【0029】
本発明の段ボールは、例えば結婚式で使用するウエルカムボードとして使用できる。本発明の段ボールはさらに、展示会場の立体展示パネルとして使用できる。引っ越し時に使用する養生シートで矢印等を立体表示するのに使用することもできる。
【0030】
本発明の段ボールから作られた容器は輸送中や使用中に内容物が容器から外に落下したり、散ったりする恐れがなく、しかもデザイン性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明のデザイン性に優れた段ボールから作った箱(1)の一つの実施例の斜視図。
図2】[図1]の「立ち上げ部(20)」の一つの実施例の概念的横断面図。
図3】[図1]の「立ち上げ部(20)」の別の実施例の概念的横断面図。
図4】本発明のデザイン性に優れた段ボールの製造方法の一つの実施例を示す概念図。
図5】単板から出発する本発明のデザイン性に優れた段ボールの製造方法一つの実施例を示す概念図。
図6】[図1]のデザイン性に優れた段ボールの箱(1)を製造する際に使用した印刷図柄(2)の平面図(写真)で、印刷工程(21)の印刷ロールパターンに相当する。なお、第1図には印刷図柄(2)の一部しか現れていない。
図7】[図6]の印刷図柄(2)に対応する弾けニス領域(15)を形成するための弾けニス塗布パターの平面図(写真)で、弾きニス塗布機(23)の塗布ロールパターンに相当する。
図8】両面段ボールに本発明を適用した場合のデザイン性に優れた段ボールの製造方法の一つの実施例の概念図。
図9】[図8]の方法で得られる段ボールの「立ち上げ部(20)」の概念的横断面図。
図10】立ち上げ部(20)を除去してフルートが外部から見えるようにしたデザイン段ボール箱の一つの実施例の斜視図。
図11】[図10]のデザイン段ボール箱の印刷図柄(2)の平面図(写真)。
図12】[図10]のデザイン段ボール箱の弾けニス塗布パターの平面図(写真)
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の段ボールは両面段ボール、片面段ボール、複両面段ボールにすることができる。
【0033】
本発明は段ボールに関するものであるが、本発明は多層構造を有する積層材料に適用できる。本発明は段ボールの他に複数の層を有する紙器、例えば貼箱、印刷箱、簡易箱で使用する材料にも適用できる。
【0034】
本発明の段ボールは紙製の段ボールに適しているが、プラスチック製の段ボールにも適用可能である。
【0035】
一般に、段ボールはフルートとライナーとから成るが、フルートとライナーの間に追加の層を入れることができ、また、追加層をライナーの一部にすること(換言すれば、ライナーを互いに接着された複数の層で構成すること)もできる。例えば、ライナーをライナー本体と着色追加層との2層で構成し、本発明の「立ち上げ部」の切り抜き作業時に、ライナー本体のみをハーフカットし、追加層をフルートに接着させたまま残すこともできる。
【0036】
本発明では、ライナーの少なくとも一部分を立ち上げ部とすることによって、立ち上げ部に対応する領域でフルートを目視することができる。追加層を有する場合には、「立ち上げ部」を立ち上げた時にフルートではなく着色追加層が見える。着色追加層を使用することで、立ち上げ部の立体体感を観察者に強調することもできる。例えば、立ち上げ部で魚のサケを立体的に見せ、着色追加層で海を表現することができる。
【0037】
また、ハーフカット時の深さを調節することで着色追加層を有する部分と有さない部分とを混在させることもできる。
【0038】
本発明のデザイン性に優れた段ボールでは、ライナーの少なくとも一部分をライナーから立ち上げ部とするために、立ち上げ部に対応する上記ライナーの裏側表面上に非接着領域を形成し、その後に、接着剤を用いてライナーをフルートに貼合せ、この貼合せ後にライナーの表面側から上記着領域の外縁部に沿ってライナーのみをハーフカット(半抜き加工)する。非接着領域の形成と接着剤のトフ順番を逆にして、ライナーをフルートに貼合せる前に、上記ライナーの裏側表面上またはフルートの山部に接着剤を塗布し、上記ライナーの裏側表面上の立ち上げ部に対応する部分に非接着領域を形成することもできる。
【0039】
本発明の段ボールは段ボールの製造メーカーの既存の製造ラインを用いて製造できる。また、紙器のメーカーが段ボールにライナーを貼り合わせる工程で本発明の方法を使用することで本発明のデザイン性に優れた段ボールを製造することもできる。さらに、市販の両面段ボールに追加のシートを貼り付けて本発明のデザイン性に優れた展示ボード、養生シート、ウエルカムボード等にすることができる。
【0040】
本発明のデザイン性に優れた段ボールを段ボールの製造メーカーの製造ラインで作る場合には、シングルフェーサーから来る片面段ボールに反対側ライナー(以下、便宜上、「表面ライナー」という)を貼り付けるダブルフェーサのステーションで本発明方法を適用できる。実際には、将来「立ち上げ部」となる領域に対応する表面ライナーの裏側表面上(またはフルートの山部)の領域に「弾きニス」を塗布する。この場合、片面段ボールに対する「弾きニス」を塗布した領域の位置の相対位置を正確に記憶しておくためにレジスターマーク(見当トンボ、角トンボ)を表面ライナー(または片面段ボール)の裁ち落とし部分に形成する。次いで、シングルフェーサーから来る片面段ボールのフルート上に「弾きニス」を塗布した表面ライナーを、接着剤(糊)を用いてフルート上に貼り合わせる。この貼合せ後に、表面ライナーの表面側から「弾きニス」を塗布した領域の外縁部に沿って表面ライナーのみをハーフカット(半抜き加工)する。このハーフカット操作は上記レジスターマークを参照してカッティングマシンを用いて容易に実施できる。「立ち上げ部」は最終ユーザーが指やヘラ等で立ち上げるまで段ボールから分離することはない。
【0041】
接着剤(糊)の塗布と「弾きニス」の塗布の順番とを逆にすることもできる。すなわち、最初にフルートの山部または表面ライナーの全面に接着剤(糊)を塗布し、その後に、将来「立ち上げ部」となる領域に対応する表面ライナーの裏側表面上(またはフルートの山部)の領域に「弾きニス」を塗布するか、逆に、最初に将来「立ち上げ部」となる領域に対応する表面ライナーの裏側表面上(またはフルートの山部)の領域に「弾きニス」を塗布し、その後に、フルートの山部または表面ライナーの全面に接着剤(糊)を塗布することもできる。いずれの場合にも、「弾きニス」塗布部分では接着剤(糊)は弾かれて付着しない。
【0042】
紙器メーカーの場合には、片面段ボールに表面ライナーを貼り合わせる工程で本発明方法を使用できる。実際には、市販の片面段ボールにライナーを貼り付ける時に、将来「立ち上げ部」となる領域に対応する表面ライナーの裏側表面上(またはフルートの山部上)の領域に「弾きニス」を塗布する。この場合、片面段ボールに対する「弾きニス」を塗布した領域の位置の相対位置を正確に記憶しておくためにレジスターマーク(見当トンボ、角トンボ)を表面ライナー(または片面段ボール)の裁ち落とし部分に形成する。次いで、片面段ボールのフルート上に「弾きニス」を塗布済した表面ライナーを貼り合わせる。最後に、「立ち上げ部」のハーフカット(半抜き加工)は上記レジスターマークを参照してカッティングマシンを用いて実施する。
【0043】
展示ボード、養生シート、ウエルカムボード等の場合にも上記2つの場合と同様な方法で本発明を実施できる。例えば、光沢紙、ケント紙等からなる表面層と着色紙からなる追加層とから成る2層構造のライナーを例えば市販の両面段ボール(片面段ボールでもよい)に貼り付ける場合を考える。この場合には、将来「立ち上げ部」となる領域に対応する表面層の裏側表面上(または追加層上)の領域に「弾きニス」を塗布する。両面段ボールに対する「弾きニス」を塗布した領域の位置の相対位置を正確に記憶しておくためにレジスターマーク(見当トンボ、角トンボ)をライナー(または両面段ボール)の裁ち落とし部分に形成しておく。次いで、ライナーを両面段ボール上に貼り合わせる。この場合には、追加層全体が両面段ボール上に貼付けられるが「弾きニス」を塗布済した領域では表面層と追加層とは非接着状態になっている。最後の「立ち上げ部」のハーフカット(半抜き加工)では表面層のみをカットする。従って、「立ち上げ部」を立ち上げた時には着色した追加層が露出される。フルートを露出させるか、着色追加層を露出させるかは任意である。領域毎に露出部分を変えることもできる。
【0044】
「立ち上げ部」は段ボール表面に印刷する図柄の一部にすることができる。例えば、「立ち上げ部」を蝶の羽の形にすることができる。この場合、「立ち上げ部」の一部はカットせずに表面ライナーに接続させておくのが好ましい。「接続部」は少なくとも一つ残すのが好ましく、複数、例えば2つの「接続部」を残すことでできる。「立ち上げ部」と「接続部」の組み合わせで多様な立体模様を形成することができる。多数の「立ち上げ部」を同心円状に配置することで例えば菊の花弁を立体的に表現することができる。
【0045】
「立ち上げ部」を分離用タブとして利用することもできる。例えば、段ボール容器内部をX線検査した後に、「立ち上げ部」をX線検査等の検査済みを表すタブとして回収することができる。この場合には、「立ち上げ部」のを破断して回収する。ダブルフェーサの所に「立ち上げ部」への印刷ユニットを設けることで、回収するタブに段ボール容器内部の物品の情報を印刷しておくこともできる。
【0046】
さらに、無線タグを貼り付ける無線タグ貼付けステーションをダブルフェーサの所に設けて、「立ち上げ部」を段ボール容器内部の物品の情報を輸送完了最終確認タグとして回収することもできる。
【0047】
本発明のデザイン性に優れた段ボールは幼児保育、教育、介護、医療の現場で図柄や情報を表示する手段として有利に利用できる。幼児用段ボールではキャラクターを立体的に表現できる。本発明のデザイン性に優れた段ボールは教育用ボード、運動会用ボード等として使用できる。介護や医療現場では使い捨て患者用具の材料として有利に使用できる。
【実施例
【0048】
以下、添付の図面を参照して本発明の特定実施例を説明するが、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0049】
図1]は本発明のデザイン性に優れた段ボールから作った紙の箱(1)の一つの実施例の斜視図で、箱(1)の表面には蝶の図柄(2)が描かれている。この実施例で蝶の図柄(2)の羽の部分が「立ち上げ部」(20)となって箱(1)の表面から飛び出している。この場合、立ち上げ部(20)となった蝶の図柄(2)の羽の部分に対応するライナーの領域でフルート(13)が露出して見える。
【0050】
図2]と[図3]は[図1]の立ち上げ部(20)の構成を示す概念的横断面図で、立ち上げ部(20)は段ボールから立ち上げた状態で示してある。この実施例の段ボールは、フルート(13)に接着剤(14)を介して下側ライナー(11)が接着された片側段ボールに、本発明方法で作られた表面ライナー(12)を貼り付けたものであるが、立ち上げ部(20)の領域では接着剤(14)の上に非接着層(15)が形成されていて、表面ライナー(12)がフルート(13)に接着しないようになっている。非接着層(15)は「弾きニス」を塗布することで形成できる。非接着層(15)を形成する物質としては「弾きニス」「シリコン塗料」「フッ素樹脂組成物」等が使用できる。
【0051】
図2]では、最初に将来「立ち上げ部」となる領域に対応する表面ライナーの裏側表面上の領域に「弾きニス」を塗布し、その後に、フルートの山部または表面ライナーの全面に接着剤(糊)を塗布した場合で、「弾きニス」を塗布した部分では接着剤(糊)が弾かれて付着していない。
【0052】
図3]は、最初にフルートの山部または表面ライナーの全面に接着剤(糊)を塗布し、その後に、将来「立ち上げ部」となる領域に対応する表面ライナーの裏側表面上の領域に「弾きニス」を塗布した場合で、この場合には「弾きニス」塗布部分では接着剤(糊)は付着能を無くしている。
【0053】
図4]は[図3]に示す本発明方法を段ボールの製造メーカーまたは製箱メーカーの製造ラインに適用した場合の概念図である。この実施例では片面段ボール上に表面ライナー(12)を貼り合わせる。なお、接着剤層(14)と弾きニス領域(15)の塗布の順番を逆にすることで[図2]に示す本発明方法を[図4]で用いることもできる。
【0054】
図4]に示す実施例では、最初に印刷工程(21)で表面ライナー(12)の表面上にカラー印刷機等を用いてインキ(2')で所望の図柄(2)を印刷する。
【0055】
次に、グルーマシン(22)で表面ライナー(12)の背面側の全面に接着剤(14')を塗布して接着剤層(14)を形成する。
【0056】
本発明ではグルーマシン(22)の下流に弾きニス塗布機(23)を配置し、表面ライナー(12)の表面に印刷された図柄(2)に対応する表面ライナー(12)の背面の領域上に弾きニス(15')を塗布して弾きニス領域(15)を形成する。この場合には、レジスターマーク(見当トンボ、角トンボ、29、[図7]参照)を参照して表面ライナー(12)の表面に印刷された図柄(2)と表面ライナー(12)の背面に塗布される弾きニス塗布領域(15)を一致させる。このレジスターマーク(29、図8参照)は表面ライナー(12)の裁ち落とし部分に形成しておくことができる。
【0057】
図4]の○で囲った部分は弾きニス塗布機(23)を出た後の表面ライナー(12)の層構成を拡大して示したもので、表面ライナー(12)の表面上に図柄(2)が存在し、表面ライナー(12)の背面上に接着剤層(14)と弾きニス塗布領域(15)とが形成され、弾きニス塗布領域(15)の位置は図柄(2)の位置に対応していることが理解できよう。[図4]のAとBは表面ライナー(12)の表面に塗布された印刷図柄(2)と表面ライナー(12)の背面に塗布された弾きニス塗布領域(15)の平面概念図で、印刷図柄(2)と弾きニス塗布領域(15)とが表面ライナー(12)の表裏面で一致していることを表している。
【0058】
次いで、印刷図柄(2)と弾きニス塗布領域(15)とを表裏両面に有する表面ライナー(12)は、貼合せ機(24)で接着剤(14)によって片面段ボール(10)上に貼り合わされる。この片面段ボール(10)ではフルート(13)が下側ライナー(11)上に接着されている。
【0059】
貼合せ機(24)で貼り合わされて得られる両面段ボールはスリッタースコアラー(25)、カッター(26)等の通常の製造ユニットを通って送られて所望の段ボールとなる。
【0060】
本発明ではハーフカットするカッティングマシン(27)がさらに配置されている。カッティングマシン(27)は上記で得られた両面段ボールの表面ライナー(12)の弾きニス塗布領域(15)をハーフカットするためのものである。本発明では、上記弾きニス塗布機(23)の所で表面ライナー(12)の表面上に印刷された図柄(2)と表面ライナー(12)の背面に塗布した弾きニス塗布領域(15)とが整合させてあるので、ハーフカット時に表面ライナー(12)の表面に印刷された図柄(2)の立ち上げ部(20)の領域をハーフカットラインすることで表面ライナー(12)の背面に塗布された弾きニス領域(15)も正確にカットされるということは理解できよう。ハーフカットは図柄(2)の立ち上げ部(20)の位置を検出して実施するか、表面ライナー(12)の裁ち落とし部分に形成してある上記レジスターマークを参照できる。
【0061】
図4]のCは、カッティングマシ(27)を出た後の段ボールの表面ライナー(12)から「立ち上げ部(20)」を立ち上げた時の概念的平面図で、表面ライナー(12)の平面から図柄(2)の一部が「立ち上げ部」(20)となって立ち上がり、その部分でフルート(13)が露出しているのが分かる。
【0062】
図示した実施例では印刷装置(21)、塗布装置(22、23)、圧着装置(24)等をロールで表しているが、ロール式の装置に限定されるものではない。各ユニットはコンピュター制御で統一して運転される。当業者は各ユニットを多段にしたり、非連続プロセス(バッチ処理)にすることが適宜できる。
【0063】
図5]は本発明のデザイン性に優れた段ボールをバッチ処理で製造する場合の概念図である。この場合には表面ライナー(12)となる例えばA版、B版等の単板から出発する。
【0064】
最初に表面ライナー(12)の表面に印刷機(21)で図柄を印刷する。印刷図柄(2)の一つの例が[図5]に示してある。この図柄(2)は例えばデジタル印刷機、インクジェット印刷機、グラビア印刷機、オフセット印刷機等の任意の印刷機で印刷できる。
【0065】
次いで、グルーマシン(22)を用いて印刷図柄(2)(表面側)を有する表面ライナー(12)の背面側の全面に接着剤を塗布して接着剤層(14)を形成する。
【0066】
さらに、弾きニス塗布機(23)へ送り、表面ライナー(12)の背面上の印刷図柄(2)の立ち上げ部(20)の領域に対応する面積の弾きニス領域(15)に弾きニスを塗布する。この場合には、レジスターマーク(29)を参照して表面ライナー(12)の表面に印刷された図柄(2)の立ち上げ部(20)と表面ライナー(12)の背面に塗布される弾きニス塗布領域(15)とを一致させる。このレジスターマークは表面ライナー(12)の裁ち落とし部分に形成しておくことができる。
【0067】
図6]は[図1]の蝶の図柄が印刷されたデザイン段ボールの箱(1)を製造する際に使用した印刷図柄(2)の平面図(写真)である。[図1]にはこの印刷図柄(2)の一部しか見えていない。
図7]は[図6]の印刷図柄(2)の立ち上げ部(20)に対応する弾けニス領域(15)を形成するための弾けニス塗布パターの平面図(写真)である。
【0068】
次に、印刷図柄(2)と接着剤層(14)とを有する表面ライナー素材(12')を段ボール(10)上に貼り合わせる。この貼り合わせはマニュアルでも貼合せ機械を用いて行うことができる。段ボール(10)は片面段ボールでも両面段ボールでもよい。この貼り合わせによって段ボール(10)の表面上に表面ライナー素材(12')が接着される。
【0069】
次に、表面ライナー素材(12')が接着された段ボール(10)をカッティングマシ(27)にセットし、表面ライナー(12)の弾きニス領域(15)に対応する面積をハーフカットする。上記弾きニス塗布機(23)の所で面ライナー(12)の表面に印刷された図柄(2)と表面ライナー(12)の背面に塗布される弾きニス塗布領域(15)とを整合させてあるので、ハーフカット時に表面ライナー(12)の表面に印刷された図柄(2)の立ち上げ部(20)をハーフカットすることで表面ライナー(12)の背面に塗布された弾きニス領域(15)も正確にカットされる。このカットは表面ライナー(12)の裁ち落とし部分に形成してある上記のレジスターマークを参照して行うことができる。
【0070】
図5]の製造方法は種々変形できる。例えば、弾きニスを塗布する代わり印刷図柄(2)の立ち上げ部(20)のバターンにカットした非接着性フィルムのパーツを貼り付け、表面ライナー(12)から印刷図柄(2)の立ち上げ部(20)をハーフカットした後に非接着性フィルムのパーツを取り出すこともできる。この場合には非接着性フィルムのパーツを正確に位置するための工夫が非になる。別の変形実施例では、弾きニスを塗布する代わりに、接着剤層(14)をパターン化する。例えば、印刷図柄(2)の立ち上げ部(20)のネガパターンで接着剤を塗布して、印刷図柄(2)の立ち上げ部(20)に接着剤層(14)が塗布されないようにする。
【0071】
図8]は両面段ボールを用いて本発明のデザイン性に優れた段ボールを製造する方法の別の実施例を示す概念図である。[図8]に示す実施例の場合には表面ライナー(12)を上側層(31)と下側層(30)の2層構造とし、[図4]で表面ライナー(12)に施したものと同様な処理を上側層(31)に施す。なお、[図8]には印刷工程(21)、グルーマシン(22)および弾きニス塗布機(23)の詳細は記載していないが、[図4]と同様な装置を使用できる。
【0072】
図8]に示す実施例では、最初に印刷工程(21)で表面ライナー(12)の上側層(31)の表面上にカラー印刷機等を用いてインキで所望の図柄(2)を印刷する。[図8]では図柄(2)を星印(スターマーク)で表してある。
【0073】
次に、グルーマシン(22)で上側層(31)の背面側の全面に接着剤(34')を塗布して接着剤層(34)を形成する。
【0074】
この実施例ではグルーマシン(22)の下流に弾きニス塗布機(23)を配置し、上側層(31)の表面に印刷された図柄(2)の立ち上げ部(20)に対応する部分の上側層(31)の背面の領域上に弾きニス領域(15)を形成する。この場合には、レジスターマーク(29)を参照して上側層(31)の表面に印刷された図柄(2)と上側層(31)の背面に塗布される弾きニス領域(15)を一致させる。このレジスターマークは上側層(31)の裁ち落とし部分に形成しておくことができる。
【0075】
図8]に示す実施例では弾きニス塗布機(23)下流で下側層(30)が供給され、この下側層(30)は圧着ロール(28)によって上記接着剤層(34)を介して上側層(31)上に貼り合わされる。それによって印刷図柄(2)を表面上に有し、弾きニス領域(15)を裏面上に有する上側層(31)と、それに貼合わされた下側層(30)との積層体(40)が形成される。
【0076】
図8]の○で囲った拡大断面図は上記積層体(40)の層構成を示している。上側層(31)の表面上に図柄(2)が存在し、上側層(31)の背面上に接着剤層(34)と弾きニス塗布領域(15)とが形成され、弾きニス塗布領域(15)の位置が図柄(2)の位置に対応していることが理解できよう。
【0077】
次に、貼合せ機(24)において片面段ボール(10)が供給され、接着剤(36)を介して上記積層体(40)上に片面段ボール(10)が貼り合わされる。この片面段ボール(10)には下側ライナー(11)上にフルート(13)が接着されている。
【0078】
貼合せ機(24)で貼り合わされた両面段ボールは[図4]に示したスリッコースコアラー、カッター等の通常の製造ユニットを通って送られて本発明のデザイン性に優れた段ボールとなる。
【0079】
図9]は[図8]の方法で得られる段ボールの「立ち上げ部(20)」の概念的横断面図で、[図9]は[図3]に対応する。[図9]に示した実施例では、最初に上側層(31)の表面に印刷された図柄(2)の立ち上げ部(20)に対応する部分の上側層(31)の背面の領域上に弾きニス領域(15)が形成され、次に、上側層(31)の表面に印刷された図柄(2)の立ち上げ部(20)に対応する部分の上側層(31)の背面の領域上に弾きニス領域(15)が形成されている。
【0080】
図10]は立ち上げ部(20)を除去して段ボールのフルート(13)が外部から見えるようにしたデザイン段ボール箱の一つの実施例の斜視図である。この実施例では印刷図柄(2)は幾何学模様をカラー印刷したアートデザインである。
【0081】
図10]は[図9]の印刷図柄(2)の平面図(写真)で、[図4]と同様に、表面ライナー(12)の表面に印刷される。本発明の立ち上げ部(20)はアートデザインの模様の一部として描かれている。この立ち上げ部(20)は後で除去される。
【0082】
図11]は[図9]の立ち上げ部(20)に対応する部分の弾けニス塗布パターの平面図(写真)で、このニス塗布パターは印刷図柄(2)に対応する領域の表面ライナー(12)の背面側に塗布される。
【0083】
図10]~[図12]に示した実施例は、製造後に立ち上げ部(20)を除去した点を除く点以外は[図4]および[図5]で説明した方法と同様な方法で製造できる。この実施例は段ボールのフルート(13)を見せてアートデザインとして利用するものである。
【0084】
以上、添付図面を参照して本特許を説明したが、本特許が図示した実施例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0085】
1 箱
2 図柄
10 段ボール
11 下側ライナー
12 表面ライナー
13 フルート
14 接着剤層
15 非接着層(弾きニス)
20 立ち上げ部
21 印刷工程
22 グルーマシン
23 弾きニス塗布機
24 貼合せ機
25 スリッタースコアラー
26 カッター
27 カッティングマシン
29 レジスターマーク(トンボ)
30 下側層
31 上側層
40 積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12