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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ユニット内蔵用複合アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/52 20060101AFI20240919BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240919BHJP
   H01Q 5/371 20150101ALI20240919BHJP
【FI】
H01Q1/52
H01Q21/06
H01Q5/371
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021060125
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156434
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2024-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000165848
【氏名又は名称】原田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124257
【弁理士】
【氏名又は名称】生井 和平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/102967(WO,A1)
【文献】特開2011-109190(JP,A)
【文献】特開2008-017047(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2117274(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/52
H01Q 21/06
H01Q 5/371
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニットに内蔵するための複合アンテナ装置であって、該ユニット用複合アンテナ装置は、
ユニットの回路基板の端辺近傍に配置される第1給電部と、
ユニットの回路基板上の第1給電部と異なる位置の端辺近傍に配置される第2給電部と、
前記第1給電部に接続されるTELアンテナであって、ユニットの回路基板に直角に立設されると共に開放端が上面視で回路基板の端辺近傍上に沿って少なくとも第2給電部方向に延在する部位を有するモノポールアンテナエレメントからなる、TELアンテナと、
前記第2給電部に接続され異なる周波数帯のエレメントを複数有する複共振アンテナであって、ユニットの回路基板に直角に立設されると共に異なる周波数帯のエレメントが上面視で回路基板の端辺近傍上に沿ってTELアンテナに近い側から遠い側に向かって周波数帯の高い順に配置される、複共振アンテナと、
を具備することを特徴とするユニット内蔵用複合アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のユニット内蔵用複合アンテナ装置において、前記TELアンテナは、導電性板状体からなり開放端に向かってテーパする切先形状を有することを特徴とするユニット内蔵用複合アンテナ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のユニット内蔵用複合アンテナ装置において、前記TELアンテナは、第1給電部から上面視で回路基板の端辺近傍上に沿って第2給電部とは反対方向もテーパする切先形状を有することを特徴とするユニット内蔵用複合アンテナ装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のユニット内蔵用複合アンテナ装置において、前記TELアンテナは、モノポールアンテナエレメントと回路基板のグラウンドとの間を所定の長さとギャップで近接させることを特徴とするユニット内蔵用複合アンテナ装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載のユニット内蔵用複合アンテナ装置において、前記TELアンテナは、ユニットの回路基板に平行に頂部を折り曲げる逆L型エレメント又は逆F型エレメントで構成されることを特徴とするユニット内蔵用複合アンテナ装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載のユニット内蔵用複合アンテナ装置において、前記TELアンテナは、さらに、頂部に接続されモノポールアンテナエレメントよりも低い周波数帯のLow Band用エレメントを有することを特徴とするユニット内蔵用複合アンテナ装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載のユニット内蔵用複合アンテナ装置において、前記複共振アンテナは、2.4GHz帯エレメント及び5GHz帯エレメントを有する無線LANアンテナであることを特徴とするユニット内蔵用複合アンテナ装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7の何れかに記載のユニット内蔵用複合アンテナ装置において、前記複共振アンテナは、TELアンテナに対して垂直方向且つユニットの回路基板に平行に頂部を折り曲げる逆L型エレメント又は逆F型エレメントで構成されることを特徴とするユニット内蔵用複合アンテナ装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れかに記載のユニット内蔵用複合アンテナ装置であって、該ユニット内蔵用複合アンテナ装置は、第1給電部、第2給電部、TELアンテナ及び複共振アンテナを一組として複数用いるMIMOとして構成されることを特徴とするユニット内蔵用複合アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はユニット内蔵用複合アンテナ装置に関し、特に、車両に搭載される通信機ユニット等のユニットに内蔵する複数の周波数帯に対応可能なユニット内蔵用複合アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等の移動体に対して移動体通信ネットワークを用いて情報提供サービスを行うテレマティクスが知られている。テレマティクスは、例えばエアバッグが稼働した際の自動緊急通報や、車両盗難時の追跡機能、交通情報配信といったものに利用されている。テレマティクスサービスを利用するためには、車両に通信機ユニットとアンテナユニットを搭載する必要があった。ここで、通信機ユニットは、車両とクラウドとの間や車両間、さらには搭乗者の携帯端末との間の無線通信の信号送受信や制御を行うためのものである。そして、アンテナユニットは、このような種々の無線通信を行うために、TELアンテナや無線LANアンテナ、Bluetooth(登録商標)アンテナ等、種々の周波数帯に対応したアンテナエレメントを有している。これらの通信機ユニットとアンテナユニットは、同軸ケーブルで接続され、例えば車両のダッシュボード内に配置されていた。また、アンテナユニットのみ車両ルーフ内に配置される場合もあった。
【0003】
アンテナユニットは、その中に種々の周波数帯に対応したアンテナエレメントが複数配置されることになるが、複数のアンテナエレメント同士の干渉の影響により、感度や指向性に問題が生ずる場合がある。例えば特許文献1では、アンテナユニット内の体積全体を利用して複数のアンテナエレメントを配置する際のアンテナエレメント同士の干渉の影響を減らしたものが開示されている。
【0004】
近年では、第4世代移動体通信ネットワークだけでなく第5世代移動体通信ネットワーク実現のためのMIMO等のように、さらに複数のアンテナエレメントが必要となっている。さらに、燃費向上のため車両の軽量化の需要も高まっており、通信機ユニットやアンテナユニットの小型化も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-33571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
テレマティクスサービスを利用するための通信機ユニットやアンテナユニットに対してより小型化・軽量化を目指した場合、通信機ユニットにアンテナエレメントを内蔵することが考えられる。しかしながら、例えば特許文献1のようなアンテナユニット内の体積全体を利用できるものであれば、アンテナエレメント同士の干渉の影響を軽減可能であるが、通信機ユニット等のユニットにアンテナエレメントを内蔵しようとした場合には、限られたスペースに効率良くアンテナエレメントを配置しなければならず、ユニット内の限られたスペースにおいてアンテナエレメント同士の干渉の影響を考慮しなければならない。
【0007】
このようなユニット内蔵用の複数のアンテナエレメントに対して、アンテナエレメント同士の干渉の影響を考慮したものはこれまで存在していなかった。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ユニットに内蔵してもアンテナエレメント同士の干渉の影響を軽減し最適なインピーダンス整合が可能なユニット内蔵用複合アンテナ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明によるユニット内蔵用複合アンテナ装置は、ユニットの回路基板の端辺近傍に配置される第1給電部と、ユニットの回路基板上の第1給電部と異なる位置の端辺近傍に配置される第2給電部と、第1給電部に接続されるTELアンテナであって、ユニットの回路基板に直角に立設されると共に開放端が回路基板の端辺近傍上に沿って少なくとも第2給電部方向に延在する部位を有するモノポールアンテナエレメントからなる、TELアンテナと、第2給電部に接続され異なる周波数帯のエレメントを複数有する複共振アンテナであって、ユニットの回路基板に直角に立設されると共に異なる周波数帯のエレメントが回路基板の端辺近傍上に沿ってTELアンテナに近い側から遠い側に向かって周波数帯の高い順に配置される、複共振アンテナと、を具備するものである。
【0010】
ここで、TELアンテナは、導電性板状体からなり開放端に向かってテーパする切先形状を有するものであれば良い。
【0011】
また、TELアンテナは、第1給電部から上面視で回路基板の端辺近傍上に沿って第2給電部とは反対方向もテーパする切先形状を有するものであっても良い。
【0012】
また、TELアンテナは、モノポールアンテナエレメントと回路基板のグラウンドとの間を所定の長さとギャップで近接させるものであれば良い。
【0013】
また、TELアンテナは、ユニットの回路基板に平行に頂部を折り曲げる逆L型エレメント又は逆F型エレメントで構成されるものであっても良い。
【0014】
また、TELアンテナは、さらに、頂部に接続されモノポールアンテナエレメントよりも低い周波数帯のLow Band用エレメントを有するものであっても良い。
【0015】
また、複共振アンテナは、2.4GHz帯エレメント及び5GHz帯エレメントを有する無線LANアンテナであれば良い。
【0016】
また、複共振アンテナは、TELアンテナに対して垂直方向且つユニットの回路基板に平行に頂部を折り曲げる逆L型エレメント又は逆F型エレメントで構成されるものであっても良い。
【0017】
また、本発明のユニット内蔵用複合アンテナ装置は、第1給電部、第2給電部、TELアンテナ及び複共振アンテナを一組として複数用いるMIMOとして構成されても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明のユニット内蔵用複合アンテナ装置には、アンテナエレメント同士の干渉の影響を軽減し最適なインピーダンス整合が可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明のユニット用複合アンテナ装置の全体像を説明するための概略斜視図である。
図2図2は、本発明のユニット用複合アンテナ装置のTELアンテナと複共振アンテナの配置関係を説明するための概略側面図である。
図3図3は、本発明のユニット用複合アンテナ装置のVSWR特性グラフである。
図4図4は、さらなる比較例のVSWR特性である。
図5図5は、さらなる比較例のVSWR特性である。
図6図6は、本発明のユニット用複合アンテナ装置のTELアンテナや複共振アンテナの他の構成例を説明するための概略斜視図である。
図7図7は、本発明のユニット用複合アンテナ装置のTELアンテナや複共振アンテナのさらに他の構成例を説明するための概略斜視図である。
図8図8は、本発明のユニット用複合アンテナ装置をMIMOとして構成した例を説明するための概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明のユニット用複合アンテナ装置の全体像を説明するための概略斜視図である。図示の通り、本発明のユニット用複合アンテナ装置は、第1給電部10と、第2給電部20と、TELアンテナ30と、複共振アンテナ40と、から主に構成されている。ここで、ユニット1は、例えば通信機ユニットであり、回路基板2と、回路基板2に載置される通信回路部3を有するものである。図示例では、ユニット1は、各種コネクタ等と共に通信回路部3が方形状の回路基板2に載置され、立方体からなるケース内に収容されているものを示した。このようなユニット1が、例えば車両のダッシュボード内等に配置される。本発明のユニット用複合アンテナ装置は、このようなユニット1内の限られたスペースに各種アンテナを配置させるものである。
【0021】
第1給電部10は、ユニット1の回路基板2の端辺近傍に配置されている。即ち、ユニット1の回路基板2の端辺の空いたスペースをアンテナ用の回路基板としても利用している。第1給電部10は、後述のTELアンテナ用の給電部である。図示例では、回路基板2の短辺の端辺近傍に第1給電部10が配置される例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第1給電部10は長辺の端辺近傍に配置されても良い。TELに用いられる周波数帯域は、低周波数領域から広い帯域が必要であるため、回路基板2のグラウンドはなるべく大きいものが好ましい。
【0022】
第2給電部20は、ユニット1の回路基板2上の第1給電部10と異なる位置に配置されるものである。第2給電部20は、後述の複共振アンテナ40用の給電部である。第2給電部20は、例えば第1給電部10が配置される回路基板の辺と同じ辺の端辺近傍に配置されれば良い。図示例では、回路基板2の短辺の端辺近傍に第2給電部20が配置される例を示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、第2給電部20は長辺の端辺近傍に配置されても良い。
【0023】
TELアンテナ30は、第1給電部10に接続されるものである。TELアンテナ30は、モノポールアンテナエレメントからなるものである。TELアンテナ30は、具体的には、例えば第5世代移動体通信ネットワークのSub6(6GHz帯以下の周波数帯)に対応したアンテナであれば良い。TELアンテナ30は、ユニット1の回路基板2に直角に立設される。そして、図示例のTELアンテナ30のモノポールアンテナエレメントの開放端は、上面視で回路基板2の端辺近傍上に沿って第2給電部20方向に延在している部位を有する。即ち、TELアンテナ30は、例えば逆L型エレメントであり、回路基板2に直角に立設されその後90度折り曲げて回路基板2に平行となるような形状を有しており、回路基板2に平行となる部分が回路基板2の端辺に平行に第2給電部20方向に延在している。
【0024】
複共振アンテナ40は、第2給電部20に接続されるものである。複共振アンテナ40は、例えばモノポールアンテナエレメントからなるものであり、異なる周波数帯のエレメントを複数有するものである。具体的には、例えば2.4GHz帯及び5GHz帯の無線LANアンテナや、Bluetooth(登録商標)アンテナ、キーレスエントリ用のアンテナ等、種々の周波数帯に対応可能なエレメントを有するものである。第2給電部20は、これらの異なる周波数帯のエレメントに対する共通給電部となるものである。複共振アンテナ40は、ユニット1の回路基板2に直角に立設される。そして、複共振アンテナ40の異なる周波数帯のエレメントが、上面視で回路基板2の端辺近傍上に沿ってTELアンテナ30に近い側から遠い側に向かって周波数帯の高い順に配置される。即ち、例えば5GHz帯の無線LANアンテナのほうが2.4GHz帯の無線LANアンテナよりもTELアンテナ30に近い側に配置される。
【0025】
図2を用いてTELアンテナ30と複共振アンテナ40の配置の詳細について説明する。図2は、本発明のユニット用複合アンテナ装置のTELアンテナと複共振アンテナの配置関係を説明するための概略側面図であり、図2(a)-図2(c)はTELアンテナの変形例である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示例では、何れもTELアンテナ30は、モノポールアンテナエレメントとして、導電性板状体からなり開放端に向かってテーパする切先形状を有するものを示した。これはボウタイアンテナとして機能するものである。図1に示されるような線状エレメントでは、ユニット内の限られたスペースでは帯域確保やインピーダンス調整が難しい場合には、TELアンテナを板状体として広帯域化したり、以下に詳説するようにインピーダンス整合させたりすることで、限られたスペース内で最適な配置が可能となる。
【0026】
図2(a)に示される例は、TELアンテナ30が、頂部が回路基板2に平行であり、図面上右側端部が回路基板2に直角であり、左側に向かってテーパする切先形状を有している。そして、TELアンテナ30は、モノポールアンテナエレメントと回路基板2のグラウンドとの間を所定の長さとギャップで近接させている。具体的には、TELアンテナ30の回路基板2のグラウンドとの間の所定の長さとギャップで近接させている位置の略中央に第1給電部10が配置されるように、TELアンテナ30が構成されている。TELアンテナ30と回路基板2のグラウンドをあえて結合させることにより、TELアンテナ30のインピーダンス整合を行うことが可能となる。即ち、TELアンテナ30が回路基板2に近接する位置の所定の長さとギャップを調整することにより、インピーダンス整合させている。
【0027】
また、図2(b)に示される例は、TELアンテナ30が、Low Band用エレメント33を有している。TELアンテナ30の開放端に向かってテーパする切先形状を有するモノポールアンテナの共振帯域である例えば1452MHz乃至5000MHzの周波数帯よりも低い周波数帯に対応するマルチバンドアンテナとするために、TELアンテナ30を構成するモノポールアンテナエレメントにLow Band用エレメント33を付加している。Low Band用エレメント33は、具体的には699MHz乃至960MHzの周波数帯に対応するものである。図2(b)に示されるLow Band用エレメント33は、複共振アンテナ40から遠い側の頂部31に接続されている。そして、複共振アンテナ40から遠い側の頂部31側から複共振アンテナ40側に向かって延在している。また、Low Band用エレメント33は、必要なエレメント長を確保するために、複共振アンテナ40側に折り曲げ形成した後、さらに先端を折り返しても良い。また、図示例ではLow Band用エレメント33を複共振アンテナ40側に向かって延在させていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、Low Band用エレメント33の接続位置は、複共振アンテナ40側の頂部に接続されても良い。さらに、Low Band用エレメント33の開放端を回路基板2の他の端辺に沿う方向に延在させても良い。このように、配置位置はユニット1内の通信回路部3の配置位置やスペースに応じて適宜調整可能である。
【0028】
さらに、図2(c)に示される例は、TELアンテナ30が、第1給電部10から上面視で回路基板2の端辺近傍上に沿って第2給電部20とは反対方向もテーパする切先形状を有している。即ち、TELアンテナは、開放端が上面視で回路基板2の端辺近傍上に沿って第2給電部20方向だけでなく、第2給電部とは反対方向も切先形状を有しているモノポールアンテナエレメントである。TELアンテナ30のモノポールアンテナエレメントの形状を、ユニット1内のスペースに応じて適宜調整することで、インピーダンスマッチングが可能である。
【0029】
そして、図2(a)-図2(c)に示される何れの複共振アンテナ40も、上面視で回路基板2の端辺近傍上に沿ってTELアンテナ30に近い側から遠い側に向かって周波数帯の高い順に配置されている。複共振アンテナ40は、例えば2.4GHz帯エレメント41と5GHz帯エレメント42を有する無線LANアンテナからなるものである。図示例の無線LANアンテナも導電性板状体からなり、2.4GHz帯エレメント41がI字型に形成され、5GHz帯エレメント42がL字型に形成されるものを示した。5GHz帯エレメント42は、2.4GHz帯エレメント41の途中から枝分かれして延在している。そして、図示の通り、複共振アンテナ40の2.4GHz帯エレメント41と5GHz帯エレメント42は、回路基板2の端辺近傍上に沿ってTELアンテナ30に近い側から遠い側に向かって周波数の高い順に配置される。即ち、5GHz帯エレメント42のほうがTELアンテナ30に近い側に配置されている。このように配置することで、TELアンテナ30と複共振アンテナ40のそれぞれのアンテナ同士の干渉の影響を軽減し最適なインピーダンス整合が可能となる。
【0030】
以下、図3を用いて本発明のユニット用複合アンテナ装置の効果を説明する。図3は、本発明のユニット用複合アンテナ装置のVSWR特性グラフである。図中、実線の黒線が本発明のユニット用複合アンテナ装置のTELアンテナの特性であり、実線のグレー線が本発明のユニット用複合アンテナ装置の複共振アンテナの特性である。なお、TELアンテナは複共振アンテナから遠い側の頂部に接続されるLow Band用エレメントを有するものを用いた。また、複共振アンテナは具体的には2.4GHz帯エレメントと5GHz帯エレメントの無線LANアンテナを用いた。比較例1として、複共振アンテナの5GHz帯エレメントのほうがTELアンテナから遠い側に配置された場合のVSWR特性を点線で示した。点線の黒線が比較例1のTELアンテナの特性であり、点線のグレー線が比較例1の複共振アンテナの特性である。
【0031】
図3に示される通り、複共振アンテナの5GHz帯付近において、比較例1に比べて本発明のユニット用複合アンテナ装置のほうが、VSWR特性が低くインピーダンス整合が最適であることが分かる。また、図示していないが、本発明のユニット用複合アンテナ装置では、5GHz帯付近で20dB以上のアイソレーションが取れていることが分かった。
【0032】
次に、さらなる比較のために、TELアンテナが複共振アンテナに近い側の頂部に接続されるLow Band用エレメントを有するものを用いた場合のVSWR特性を図4に示す。図4は、TELアンテナのLow Band用エレメントが複共振アンテナに近い側の頂部に接続された場合のVSWR特性である。図中、本発明のユニット用複合アンテナ装置の複共振アンテナの5GHz帯エレメントのほうがTELアンテナから遠い側に配置された場合のVSWR特性を実線で示した。実線の黒線が本発明のユニット用複合アンテナ装置のTELアンテナの特性であり、実線のグレー線が本発明のユニット用複合アンテナ装置の複共振アンテナの特性である。また、比較例2として、複共振アンテナの5GHz帯エレメントのほうがTELアンテナから近い側に配置された場合の特性を点線で示した。点線の黒線が比較例3のTELアンテナの特性であり、点線のグレー線が比較例3の複共振アンテナの特性である。
【0033】
図4を参照して分かる通り、Low Band用エレメントの接続位置が複共振アンテナに近い側の頂部に接続された場合であっても、複共振アンテナがTELアンテナに近い側から遠い側に向かって周波数帯の高い順に配置される本発明のユニット用複合アンテナ装置の構成がTELアンテナも複共振アンテナもVSWR特性が良いことが分かる。
【0034】
さらなる比較のために、TELアンテナと複共振アンテナの位置を入れ替えた場合のVSWR特性を図5に示す。図5は、TELアンテナと複共振アンテナの位置を入れ替え、複共振アンテナをTELアンテナの開放端とは反対側に配置した場合のVSWR特性である。即ち、TELアンテナの切先形状とは反対側の回路基板に直角な辺側に複共振アンテナを配置した。また、Low Band用エレメントは、複共振アンテナに遠い側の頂部に接続された例である。比較例3として、複共振アンテナの5GHz帯エレメントのほうがTELアンテナから遠い側に配置された場合のVSWR特性を実線で示した。実線の黒線が比較例3のTELアンテナの特性であり、実線のグレー線が比較例3の複共振アンテナの特性である。また、比較例4として、複共振アンテナの5GHz帯エレメントのほうがTELアンテナから近い側に配置された場合の特性を点線で示した。点線の黒線が比較例4のTELアンテナの特性であり、点線のグレー線が比較例4の複共振アンテナの特性である。
【0035】
図5を参照して分かる通り、複共振アンテナをTELアンテナの開放端とは反対側に配置した場合、TELアンテナのVSWR特性が図3図4の本発明の例と比較して比帯域が狭く、1400MHz帯を十分に確保できなくなっていることが分かる。なお、図2(c)に示されるような、TELアンテナが左右にテーパする切先形状を有している場合には、複共振アンテナはTELアンテナのどちらに配置しても良い。しかしながら、この場合であっても、複共振アンテナの周波数帯の高い側がTELアンテナ側に配置されるのが好ましい。
【0036】
次に、本発明のユニット用複合アンテナ装置のTELアンテナや複共振アンテナの他の構成例について説明する。図6は、本発明のユニット用複合アンテナ装置のTELアンテナや複共振アンテナの他の構成例を説明するための概略斜視図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示例では、通信回路部の図示は省略し、回路基板2の一部とTELアンテナ30と複共振アンテナ40を示した。まず、TELアンテナ30は、Low Band用エレメント33を有する。そして、Low Band用エレメント33は、複共振アンテナ40から遠い側の頂部31に接続され、複共振アンテナ40側に向かって延在している。さらに、Low Band用エレメント33を含め頂部31が、ユニット1の回路基板2に平行に折り曲げられる逆L型エレメントからなるものである。TELアンテナ30の頂部31を折り曲げることで、低背化することが可能となる。なお、TELアンテナは、さらに短絡部を設けた逆F型エレメントとして構成しても良い。
【0037】
また、複共振アンテナ40は、図示の通り、TELアンテナ30に対して垂直方向且つユニット1の回路基板2に平行に頂部43を折り曲げる逆L型エレメントであっても良い。即ち、複共振アンテナ40の低周波数帯側のエレメント(2.4GHzエレメント41)の開放端側を、TELアンテナ30に対して垂直方向に90度折り曲げている。これによりTELアンテナ30と同様に複共振アンテナ40も低背化することが可能となる。なお、図示例では周波数帯の低いエレメント(2.4GHz帯エレメント41)がよりエレメント長が長くなるため折り曲げて逆L型エレメントとして構成しているが、本発明はこれに限定されず、必要により周波数帯の高いエレメント(5GHz帯エレメント42)のほうも逆L型エレメントで構成しても良い。また、複共振アンテナ40は、必要により短絡部を設けた逆F型エレメントで構成されても良い。
【0038】
さらに、図7を用いて本発明のユニット用複合アンテナ装置のTELアンテナや複共振アンテナのさらに他の構成例について説明する。図7は、本発明のユニット用複合アンテナ装置のTELアンテナや複共振アンテナのさらに他の構成例を説明するための概略斜視図である。図中、図6と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示例では、TELアンテナ30は、頂部31がユニット1の回路基板2に平行に折り曲げられる逆L型エレメントからなるものである。そしてTELアンテナ30は、Low Band用エレメント33を有すが、Low Band用エレメント33は、複共振アンテナ40に近い側の頂部31に接続され、複共振アンテナ40とは反対側に向かって延在している。そして、Low Band用エレメント33を含め頂部31が、ユニット1の回路基板2に平行に折り曲げられる逆L型エレメントからなるものである。この例でも、TELアンテナ30の頂部31を折り曲げることで、低背化することが可能となる。なお、TELアンテナは、さらに短絡部を設けた逆F型エレメントとして構成しても良い。
【0039】
また、図7に示される複共振アンテナ40は、2.4GHz帯エレメント41よりもさらに低い周波数帯用のエレメント44を有している例を示した。図示の通り、周波数帯の高い順にTELアンテナ30に近い側から遠い側に配置されれば良い。図示例の低周波数帯用エレメント44は、回路基板2に平行に頂部を折り曲げると共にさらに先端部を折り曲げてエレメント長を確保した例を示した。
【0040】
次に、図8を用いて、本発明のユニット用複合アンテナ装置をMIMOとして構成した例を説明する。図8は、本発明のユニット用複合アンテナ装置をMIMOとして構成した例を説明するための概略斜視図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、この例は、第1給電部10、第2給電部20、TELアンテナ30及び複共振アンテナ40を一組として複数用いるMIMOとして構成されている。図示例では、第1給電部10、第2給電部20、TELアンテナ30及び複共振アンテナ40の組と、第1給電部10'、第2給電部20'、TELアンテナ30'及び複共振アンテナ40'の組の2組の構成のMIMOの例を示した。なお、TELアンテナ30,30'は、Low Band用エレメント33,33'を有する逆L型エレメントとして構成したものを示した。
【0041】
具体的には、図面上、第1給電部10は回路基板2の左側の端辺近傍に配置される一方、第1給電部10'は回路基板2の右側の端辺近傍に配置されている。各第1給電部10,10'は、それぞれユニット1の回路基板2を中心に点対称に配置されている。これにより、各エレメントを物理的になるべく離すことが可能となるため、エレメント同士のアイソレーションを確保可能となる。
【0042】
ここで、ユニット1に内蔵する複合アンテナ装置においては、ユニット1内に配置される通信回路部3やバッテリ等の影響により、アンテナの配置位置によって波長短縮やインピーダンスのずれが生じ得る。したがって、例えばTELアンテナ30に接続されているLow Band用エレメント33と、TELアンテナ30'に接続されているLow Band用エレメント33'では、図示のようにその長さを変えている。このように、MIMOにおいて適宜同等の受信信号が得られるように、TELアンテナや複共振アンテナのエレメント長等を調整することが可能である。
【0043】
なお、本発明のユニット内蔵用複合アンテナ装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0044】
1 ユニット
2 回路基板
3 通信回路部
10 第1給電部
20 第2給電部
30 TELアンテナ
31 頂部
33 Low Band用エレメント
40 複共振アンテナ
41 2.4GHz帯エレメント
42 5GHz帯エレメント
43 頂部
44 低周波数帯用エレメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8