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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】照明器具
(51)【国際特許分類】
   F21K 9/66 20160101AFI20240919BHJP
   F21V 19/00 20060101ALI20240919BHJP
   F21V 33/00 20060101ALI20240919BHJP
   F21V 3/04 20180101ALI20240919BHJP
   F21K 9/232 20160101ALI20240919BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20240919BHJP
   F21V 3/10 20180101ALI20240919BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240919BHJP
【FI】
F21K9/66
F21V19/00 150
F21V19/00 170
F21V33/00 470
F21V3/04 600
F21K9/232
F21V3/00 510
F21V3/10 330
F21Y115:10
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024522448
(86)(22)【出願日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2023047362
【審査請求日】2024-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2022212889
(32)【優先日】2022-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】512115047
【氏名又は名称】バイオメディカルネット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124017
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 晃秀
(72)【発明者】
【氏名】小山 光広
(72)【発明者】
【氏名】綾部 華織
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0073686(US,A1)
【文献】特開平9-173862(JP,A)
【文献】特開平10-269814(JP,A)
【文献】中国実用新案第201680239(CN,U)
【文献】特開平8-102290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/66
F21V 19/00
F21V 33/00
F21V 3/04
F21K 9/232
F21V 3/00
F21V 3/10
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブと、
前記バルブ内に設けられた光源と、
前記バルブの外表面で、かつ、前記光源から発した光が当たる領域に設けられた光触媒部と、
前記バルブの表面に設けられ、かつ、前記光源から発した光が当たる領域の少なくとも一部に設けられた銅層とを含み、
前記光触媒部は、前記光源から発した光が当たることにより電子を励起させると共に、電荷を発生させ、かつ、空気中の水分と発生して活性酸素および水酸化ラジカルの少なくとも一方を発生させるものであり、
前記光源から発する光は、365~375nmの波長範囲内にある光を含むものである照明器具。
【請求項2】
請求項1において、
前記光触媒部は、酸化チタンを含む照明器具。
【請求項3】
請求項1において、
前記銅層は、リング状に設けられている照明器具。
【請求項4】
請求項1において、
前記銅層の厚みは、0.3~0.5mmである照明器具。
【請求項5】
請求項1において、
前記銅層は、リン青銅からなる照明器具。
【請求項6】
請求項1において、
前記銅層は、帯状の銅体をバルブに巻き付け、接着させて構成されている照明器具。
【請求項7】
請求項1において、
前記光触媒部と、前記銅層とは、隣接している照明器具。
【請求項8】
請求項1において、
前記光源は、365~375nmの波長範囲内にピークがある第1のLEDを含み、前記第1のLEDの出力は、0.4~0.6Wである照明器具。
【請求項9】
請求項1において、
前記光源は、可視光を発光する第2のLEDを含み、前記第2のLEDの出力は40~100Wである照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒機能が付与された照明器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光触媒が設けられた照明器具が提案されている(特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-169866号公報
【文献】特開2000-208098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、安全な空気清浄、抗ウィルス機能または殺菌機能を有する照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の照明器具は、
バルブと、
前記バルブ内に設けられた光源と、
前記バルブの外表面で、かつ、前記光源から発した光が当たる領域に設けられた光触媒部と、
前記バルブの表面に設けられ、かつ、前記光源から発した光が当たる領域の少なくとも一部に設けられた銅層とを含み、
前記光触媒部は、前記光源から発した光が当たることにより電子を励起させると共に、電荷を発生させ、かつ、空気中の水分と発生して活性酸素および水酸化ラジカルの少なくとも一方を発生させるものであり、
前記光源から発する光は、365~375nmの波長範囲内にある光を含むものである。
【0006】
本発明において、前記光触媒部は、酸化チタンを含むことができる。
【0007】
本発明において、前記銅層は、リング状に設けられていることができる。
【0008】
本発明において、前記銅層の厚みは、0.3~0.5mmであることができる。
本発明において、前記銅層は、リン青銅からなることができる。
【0009】
本発明において、前記銅層は、帯状の銅体をバルブに巻き付け、接着させて構成されていることができる。
【0010】
本発明において、前記光触媒部と、前記銅層とは、隣接していることができる。
【0011】
本発明において、前記光源は、365~375nmの波長範囲内にある光を発することができる第1のLEDを含み、前記第1のLEDの出力は、0.4~0.6Wであることができる。
【0012】
本発明において、前記光源は、可視光を発光する第2のLEDを含み、前記第2のLEDの出力は40~100Wであることができる。
【0013】
本発明の照明器具は、
バルブと、
前記バルブ内に設けられた光源と、
前記バルブの外表面で、かつ、前記光源から発した光が当たる領域に設けられた光触媒部と、を含み、
前記光触媒部は、銅紛を含み、かつ、前記光源から発した光が当たることにより電子を励起させると共に、電荷を発生させ、かつ、空気中の水分と発生して活性酸素および水酸化ラジカルの少なくとも一方を発生させるものであり、
前記光源から発する光は、365~375nmの波長範囲内にある光を含むものである。
【0014】
本明細書中において、「A~B」は、「A以上B以下」を意味するものとする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、安全な空気清浄、抗ウィルス機能または殺菌機能を有する照明器具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係る照明器具を示す。
図2】実施例に係るLED電球を示す写真である。
図3】実施例に係る紫外線LEDおよび白色LEDの実装写真を示す。消灯時の写真である。
図4】実施例に係る紫外線LEDおよび白色LEDの実装写真を示す。点灯時の写真である。
図5】SARS-CoV-2 試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
1.照明器具の構成
【0019】
照明器具10は、図1に示すように、バルブ12と、バルブ12内に設けられた光源と、バルブ12の外表面で、かつ、光源から発した光が当たる領域に設けられた光触媒部14とを含む。
【0020】
光触媒部14は、光源から発した光が当たることにより電子を励起させると共に、電荷を発生させ、かつ、空気中の水分と発生して活性酸素および水酸化ラジカルの少なくとも一方を発生させるものである。光触媒部14は、たとえば、酸化チタンを含むことができ、より具体的にはチタニア(商品名、インフィテック株式会社製)る。光触媒部14は、バルブ12に塗布することで形成することができる。
【0021】
光源から発する光は、365~375nmの波長範囲内にある光を含むものとすることができる。具体的には、光源は、365~375nmの波長範囲内にある光を発することができる第1のLEDを含むことができ、第1のLEDの出力は、0.4~0.6Wとすることができる。また、光源は、可視光を発光する第2のLEDを含むことができ、第2のLEDの出力は40~100Wとすることができる。第1のLEDを中心に1個配置し、第1のLEDの周囲に第2のLED(たとえば白色LED)を配置することができる。
【0022】
照明器具10は、バルブ12の表面に設けられ、かつ、光源から発した光が当たる領域の少なくとも一部に設けられた銅層16を含むことができる。銅層16は、リング状に設けられていることができる。銅層16の厚みは、0.3~0.5mmであることができる。銅層16は、リン青銅からなることができる。銅層16は、帯状の銅体をバルブ12に巻き付け、接着させて構成されていることができる。
【0023】
光触媒部14と、銅層16とは、隣接していることができる。
【0024】
照明器具10の構造は、公知の電球の構造を採用することができる。光触媒部14は、照明器具10が電球であれば、半球面領域に設けることができる。銅層16は、照明器具10が電球であれば半球面の口金18側に設けることができる。光源を設置する領域は特に限定されず、公知の設置箇所に設けることができる。
【0025】
2.作用効果
【0026】
光触媒は、光に反応してウィルスや細菌、臭いの元や有害物質までも分解除去する物質である。光触媒に光が当たると、光を吸収し電子と正孔を形成し、それらは空気中の水分に反応し、活性酸素や水酸化ラジカルに変化して、強い酸化力でウィルスや細菌類、臭い成分や有害物質を分解する。分子をバラバラにすることで、高い除菌効果・抗ウィルス性・消臭効果・室内空気汚染ガスの分解力などを発揮することになる。
【0027】
分解された分子は空気中の酸素などと結合し、二酸化炭素や水になるため、人体に影響を与える心配がなく安全である。光触媒(酸化チタン)をより効果的に作用させるため、電球内に可視光光源(たとえばLED)に加えて、紫外線光源(たとえばLED)を実装することで、効率よく酸化チタンに作用させることができる。
【0028】
また、バルブ12に銅層16(たとえば銅リング等)を装着する事で、電荷を帯びた銅イオンが発生し、光触媒と銅イオンの効果で、空中の細菌類も分解される。
【0029】
たとえば、ウィルス不活化実験で効果が実証されているUVA-LED(365nm)を搭載した場合、人がいる空間においても問題なく使用が可能である。人体への影響がなく、照射時間を長く取る事によって、UVC殺菌灯(254nm)に相当する殺菌効果を得ることもできる。
【0030】
3.変形例
【0031】
上記の実施の形態では、銅層16を設けたが、銅層16を設けずに、光触媒部14に銅粉および銀紛の少なくとも一方を添加してもよい。また、銅層16を設けるとともに、光触媒部14に銅粉および銀紛の少なくとも一方を添加してもよい。
【実施例1】
【0032】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0033】
1.照明器具
照明器具の光源は、図2に示すLED電球とし、図3に示すように1個の紫外線LED(日亜化学株式会社製、商品名「NVSU119C U375」)20と、12個の白色LED22とにより構成した。12個の白色LED22は、図2に示すように、紫外線LED20の周りに配置した。電球の直径は65mmとし、長さは120mmとした。光束は810lm、色温度は5000K、平均演色評価数(Ra)は80とした。定格電圧は100V、周波数は50/60Hzとした。定格電力は、7.6Wとした。定格出力は125mAとした。バルブ(電球)に銅粉および銀紛が添加されている光触媒液(商品名「TITANIA1.0」)を塗布した。紫外線LEDの駆動電流は約50mAとした。
【0034】
2.供試微生物
供試微生物は、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)とした。SARS-CoV-2は、人由来分離株であり、唾液よりVero細胞を用いて分離培養後、リアルタイムPCRを用いてSARS-CoV-2遺伝子の増幅の確認(厚生労働省通知法)を行ったウイルス株である。培養細胞は、Vero細胞(アフリカミドリザルの腎臓上皮由来株化細胞である。
【0035】
3. 試験手順及び方法
(1)区の設定
区の設定は、表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
(2)試験設定
試験環境として30cm×30cm×60cmのボックスを用意した。60mm径シャーレにウイルス液(ウイルス培養液:原液)3mLを薄く満たし、試験機材から30cmの距離となるようにボックス内部にフタを空けて設置し試験開始とした。 対照区は試験開始直後及び区の設定に従いシャーレ内のウイルス液を回収した。 試験区は試験機材を稼働させた上で、区の設定に従いシャーレ内のウイルス液を回収した。
【0038】
(3)ウイルス感染価の測定
回収したウイルス液は細胞維持培地を用いてそれぞれ10倍段階希釈し、96wellプレートに培養した細胞に100μLずつ接種した。 判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
【0039】
(4)評価
試験結果において、検査時点ごとに、対照区に対する試験区の減少率(%)を算出し、効果を確認した。 なお、本試験において減少率は以下の式で算出した。
減少率(%)= {(対照区-試験区)/対照区}×100
【0040】
4.結果と考察
SARS-CoV-2に対する試験結果を表2及び図5に示す。表1はSARS-CoV-2 試験結果(TCID50/mL)である。図5は、表2のデータをグラフにしたものである。
【0041】
【表2】
対照区では試験開始から、開始後24時間までの間にウイルス量の自然衰退が見られた(108.5 →103.1 TCID50/mL)。 試験区では開始後8時間で104.7 TCID50/mL(減少率:99.0%)抗ウイルス活性値「2.0」24時間で102.5 TCID50/mL(減少率:75.3%)抗ウイルス活性値「0.6」となった。 以上の結果より、SARS-CoV-2に対して8時間の反応で99.0%の感染価の減少が見られた。
【0042】
本実施の形態は、本発明の範囲内において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
10 照明器具
12 バルブ
14 光触媒部
16 銅層
18 口金
20 紫外線LED
22 白色LED

【要約】
安全な空気清浄、抗ウィルス機能または殺菌機能を有する照明器具を提供する。
照明器具10は、バルブ12と、バルブ12内に設けられた光源と、バルブ12の外表面で、かつ、光源から発した光が当たる領域に設けられた光触媒部14と、バルブ12の表面に設けられ、かつ、光源から発した光が当たる領域の少なくとも一部に設けられた銅層16を含む。光触媒部14は、光源から発した光が当たることにより電子を励起させると共に、電荷を発生させ、かつ、空気中の水分と発生して活性酸素および水酸化ラジカルの少なくとも一方を発生させるものである。光触媒部14は、たとえば、酸化チタンを含むことができる。光源から発する光は、365~375nmの波長範囲内にある光を含むものであることができる。

図1
図2
図3
図4
図5