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特許7557185免疫応答を調節するGABAの能力の強化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】免疫応答を調節するGABAの能力の強化
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/197 20060101AFI20240919BHJP
   A61K 31/5517 20060101ALI20240919BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240919BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240919BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240919BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240919BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240919BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20240919BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20240919BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240919BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20240919BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20240919BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20240919BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240919BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240919BHJP
   A61K 31/515 20060101ALN20240919BHJP
   A61K 31/517 20060101ALN20240919BHJP
   A61K 31/57 20060101ALN20240919BHJP
【FI】
A61K31/197
A61K31/5517
A61K45/06
A61P37/02
A61P29/00
A61P3/10
A61P3/04
A61P21/02
A61P25/00
A61P37/06
A61P37/08
A61P11/06
A61P19/02
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/515
A61K31/517
A61K31/57
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019571282
(86)(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 US2018038428
(87)【国際公開番号】W WO2018236955
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-06-15
(31)【優先権主張番号】62/524,338
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】コーフマン ダニエル エル
(72)【発明者】
【氏名】ティアン ジデ
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/066240(WO,A1)
【文献】Clinically applicable GABA receptor positive allosteric modulators promote -cell replication,Scientific Reports,2017年03月23日,volume 7, Article number: 374,doi: 10.1038/s41598-017-00515-y
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/5517
A61K 31/197
A61P 37/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)及びGABA受容体活性化リガンドを含む、哺乳動物における炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させるための組成物であって、
PAM又はGABA受容体活性化リガンドのいずれかの因子を単独で含む組成物よりも、前記哺乳動物において炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させるのにより効果的であり、
前記PAMが、アルプラゾラムであり
前記GABA受容体活性化リガンドが、GABAでありGABAの量は、単独で使用される場合に炎症性免疫応答の減少及び/又は制御性免疫応答の促進を達成するのに十分な量であり、アルプラゾラムの量は、前記炎症性免疫応答の減少及び/又は制御性免疫応答の促進を増強するのに十分な量である、組成物。
【請求項2】
前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、IL-1、IL-12、IL-6、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、及びIL-23からなる群から選択される1以上の炎症性サイトカイン又はケモカインの下方制御を含む、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、1以上の炎症関連T細胞タイプの減少を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒトがI型糖尿病と診断されている、請求項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ヒトが前糖尿病性と診断されている、請求項に記載の組成物。
【請求項7】
前記哺乳動物が非ヒト哺乳動物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記GABA受容体活性化リガンド及び前記PAMが、相乗的に作用して炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記アルプラゾラムを、不安障害、パニック障害、及び/又はうつ病に起因する不安を治療するために使用される量よりも少ない量で含む、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
前記アルプラゾラムを、1日当たり経口で1.5mg未満、若しくは1日当たり経口で1.0mg未満、若しくは1日当たり経口で0.5mg未満の速放性錠剤として、又は1日当たり経口で0.5mg未満、若しくは1日当たり経口で約0.4mg未満、若しくは1日当たり経口で約3mg未満の徐放性錠剤として含む、請求項に記載の組成物。
【請求項11】
炎症性疾患を治療するための、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
I型糖尿病(T1D)、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、及び多発性硬化症からなる群から選択される炎症性疾患を治療するための、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
移植片を受け取った対象における移植片拒絶を予防し又は緩和させるための、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
アレルギー反応を減少させるための、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記アルプラゾラムを、CNS適応症に使用される量よりも少ない量で含む、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援についての記述
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)により授与されたDK092480の下で政府支援を受けて作成された。政府は、本発明における一定の権利を有する。
【背景技術】
【0002】
免疫系の多くの細胞は、免疫系の機能を調節する神経刺激分子の受容体を発現し、神経系と免疫系との間の連結を作る(例えば、Nio et al. (1993) J Immunol. 150:5281-5288;Torcia et al. (1996) Cell, 85:345-356を参照)。
ガンマ-アミノ酪酸(GABA)は、中枢神経系におけるユビキタスな抑制性神経伝達物質である(例えば、Erdo and Wolff (1990) J. Neurochem. 54:363-372;Olsen and Tobin (1990) Faseb J. 4:1469-1480;Kaufman and Tobin (1993) Trends Pharmacol. Sci. 14:107-109;Macdonald and Olsen (1994) Ann. Rev. Neurosci., 17:569-602;及びLuddens et al. (1995) Neuropharmacol., 34:245-254を参照)。GABAは、酵素であるグルタミン酸デカルボキシラーゼによりグルタミン酸から合成される(例えば、Erlander et al. (1991) Neuron, 7:91-100を参照)。脳の外部では、GAD及びGABA受容体は、膵島、消化管、卵巣、及び副腎髄質において報告されている(例えば、上記Erdo and Wolff (1990)を参照)。
【0003】
少なくとも2種類の神経型GABA受容体、GABAA及びGABABが存在する。GABAA受容体は、リガンド開口型イオンチャネルであり、GABAに必須のCl-チャネルを開くことによりGABAに応答する(例えば、上記Olsen and Tobin (1990);上記Macdonald and Olsen (1994);上記Luddens et al. (1995)を参照)。薬理学的には、ムシモールはGABAA受容体及び抗不安薬であるベンゾジアゼピンのアゴニストとして作用し、麻酔薬(ペントバルビタールなど)はGABAA-Cl-チャネルの開口を増強する。ビククリン及びRU5315はGABAA受容体の機能に拮抗し、ピクロトキシンはGABAA受容体Cl-チャネルをふさぐ(例えば、上記Macdonald and Olsen (1994);及び上記Luddens et al. (1995)を参照)。
対照的に、GABAB受容体はGTP結合タンパク質を介してCa2+又はK+チャネルに連結され、バクロフェンにより選択的に活性化される(例えば、BoWery (1993) Annu. Rev. Pharmacol. Toxicol. 33: 109-147を参照)。GABAB受容体は、ビククリン及びピクロトキシンに非感受性である。
GABA又はそのアゴニストの投与は、周辺的に抗体の生産を阻害し、かつin vivoのマクロファージ食作用を調節する。
【0004】
アレルギー及び自己免疫疾患、並びに移植片拒絶を包含する多くの疾患は、有害な免疫応答に起因する。例えば、現在30を超える自己免疫疾患が了知されている。これらは1型糖尿病、関節リウマチ(RA)、重症筋無力症(MG)、及び多発性硬化症(MS)を包含する、大いに衆目を集める多くの疾患を包含する。これらの疾患の特徴は、被害者の組織に対する免疫系による攻撃であり、これらの組織抗原は、免疫系の「自己」に対する耐性のために、非罹患者では非免疫原性である。自己免疫疾患においては、この耐性は明らかに損なわれ、苦しむ対象の組織は侵入者として扱われる―即ち、免疫系はこの推定される外来標的を破壊し始める。さらに、移植片拒絶はTリンパ球及びアレルギー反応に起因するが、これは悪化した免疫応答の結果でもある。あるいは、免疫応答を強化することは、多くの疾患及び感染の治療に有用である。さらに、免疫応答をリダイレクトする(redirect)ことにより、一定の疾患に対するより効果的な免疫がもたらされ得る。例えば、免疫応答を主に抗体反応から細胞障害性CD8+T細胞媒介反応にリダイレクトすることが可能な場合、ウイルス感染はより効果的に排除される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
GABAが、T細胞媒介自己免疫疾患の異なるモデルにおける自己免疫応答を阻害し得、Treg反応を強化し得、マウス及びヒトのベータ細胞アポトーシスを阻害し得、かつベータ細胞の複製を促進し得ることが発見された。これらの発見を拡大して、GABAA-受容体(GABAA-R)及びGABAB-Rの両方の活性化が、マウスのベータ細胞複製及びヒトのベータ細胞の複製もまた促進し得ることが発見された。しかしながらGABAは、in vivoでのその受容体に対する比較的低い親和性、速いオフ速度(off-rate)、及び短い半減期を有するため、治療効果のために患者は数グラムのGABAを1日に2、3回摂取する必要があり、これはやや煩わしく、かつ患者のコンプライアンスを低下させる。
GABA受容体活性化リガンド(アゴニスト)とGABAA-Rポジティブアロステリックモジュレーター(PAMS)の組み合わせが、哺乳動物におけるベータ細胞の複製、及び/又は生存、及び/又は機能(例えば、インスリン生産、血糖に対する感度など)を促進し得ることは、驚くべき発見であった。さらに、GABA受容体活性化リガンドとPAMの組み合わせが、ベータ細胞に対するこれらの効果において相乗的であることは、特に驚くべきことであった。
したがって、ここで企図する様々な実施形態は、限定されないが、以下の1以上を包含し得る:
【0006】
実施形態1:哺乳動物における炎症性免疫応答(inflammatory immune response)を減少させ及び/又は制御性免疫応答(regulatory immune response)を促進させる方法であって、前記哺乳動物に、GABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)を、前記哺乳動物における炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させるのに十分な量で投与する工程を含む、方法。ある態様によると、実施形態1は、哺乳動物における炎症性免疫応答の減少及び/又は制御性免疫応答の促進における使用のためのGABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)もまた、包含する。他の態様によると、実施形態1は、哺乳動物における炎症性免疫応答の減少及び/又は制御性免疫応答の促進のための薬を調製するための、GABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)の使用をさらに包含する。実施形態1に適用される態様が、以下に記載される実施形態2から64のそれぞれにも適用される。
【0007】
実施形態2:前記PAMが炎症性免疫応答を減少させる、実施形態1の方法。
実施形態3:前記炎症性免疫応答がT細胞の増殖を含む、実施形態1又は2に記載の方法。
実施形態4:前記PAMが制御性免疫応答を促進させる、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
実施形態5:前記制御性免疫応答がTh1媒介免疫応答の阻害を含む、実施形態1から4のいずれかに記載の方法。
実施形態6:前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、1以上の炎症性サイトカイン又はケモカインの下方制御を含む、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
実施形態7:前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、IL-1、IL-12、IL-6、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、及びIL-23からなる群から選択される1以上の炎症性サイトカイン又はケモカインの下方制御を含む、実施形態6の方法。
【0008】
実施形態8:前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、IL-1の下方制御を含む、実施形態7の方法。
実施形態9:前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、IL-12の下方制御を含む、実施形態7又は8に記載の方法。
実施形態10:前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、IL-6の下方制御を含む、実施形態7から9のいずれかに記載の方法。
実施形態11:前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、腫瘍壊死因子(TNF)の下方制御を含む、実施形態7から10のいずれかに記載の方法。
実施形態12:前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、インターフェロンガンマ(IFN-γ)の下方制御を含む、実施形態7から11のいずれかに記載の方法。
実施形態13:前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、及びIL-23の下方制御を含む、実施形態7から12のいずれかに記載の方法。
実施形態14:前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、IL-23の下方制御を含む、実施形態7から13のいずれかに記載の方法。
【0009】
実施形態15:前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、1以上の炎症関連T細胞タイプの減少を含む、実施形態1から14のいずれかに記載の方法。
実施形態16:前記1以上の炎症関連T細胞タイプの減少が、CD8+T細胞の減少を含む、実施形態15の方法。
実施形態17:前記1以上の炎症関連T細胞タイプの減少が、Tヘルパー17(Th17)細胞の減少を含む、実施形態15又は16に記載の方法。
実施形態18:前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、制御性T細胞(Tregs)の増加を含む、実施形態1から17のいずれかに記載の方法。
【0010】
実施形態19:前記GABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)が、GABA受容体活性化リガンドと併せて投与される、実施形態1から18のいずれかに記載の方法。
実施形態20:PAMとGABA受容体活性化リガンドの組み合わせが、いずれかの因子が単独で投与される場合よりも、前記哺乳動物において炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させるのにより効果的である、実施形態19の方法。
実施形態21:PAMとGABA受容体活性化リガンドの組み合わせが、いずれかの因子が単独で投与される場合よりも、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも1.2倍、又は少なくとも1.5倍、又は少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも4倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも10倍、炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させるのにより効果的である、実施形態20の方法。
【0011】
実施形態22:前記GABA受容体活性化リガンドが、単独、及び/又は前記ポジティブアロステリックモジュレーターが前記PAMが単独で使用される場合に前記PAMが設計され及び/又は承認された活性を達成するために使用される用量よりも少ない用量で使用される場合において、炎症性免疫応答の同じ減少を達成するため、及び/又は制御性免疫応答を促進するために使用される用量よりも少ない用量で使用される、実施形態19の方法。
実施形態23:前記GABA受容体活性化リガンドが、前記GABA受容体活性化リガンドが単独で使用される場合において、炎症性免疫応答の減少及び/又は制御性免疫応答の促進における同じ効果を達成するために使用される用量、約95%未満、又は約90%未満、又は約80%未満、又は約70%未満、又は約60%未満、又は約50%未満、又は約40%未満、又は約30%未満、又は約20%未満、又は約10%未満の用量で使用される、実施形態22の方法。
【0012】
実施形態24:前記ポジティブアロステリックモジュレーターが、前記PAMが単独で使用される場合に前記PAMが設計され及び/又は承認された活性を達成するために使用される用量、約95%未満、又は約90%未満、又は約80%未満、又は約70%未満、又は約60%未満、又は約50%未満、又は約40%未満、又は約30%未満、又は約20%未満、又は約10%未満の用量で使用される、実施形態22又は23に記載の方法。
実施形態25:前記GABA受容体活性化リガンドが、単独で使用され及び/又は前記ポジティブアロステリックモジュレーターが治療量以下の用量で使用される場合において、炎症性免疫応答の減少及び/又は制御性免疫応答の促進に対する同じ効果を達成するために使用される用量よりも少ない用量で使用される、実施形態22から24のいずれかに記載の方法。
【0013】
実施形態26:前記哺乳動物がヒトである、実施形態1から25のいずれかに記載の方法。
実施形態27:前記哺乳動物がI型糖尿病と診断されたヒトである、実施形態26の方法。
実施形態28:前記哺乳動物が前糖尿病性と診断されている、実施形態26の方法。
実施形態29:前記哺乳動物が非ヒト哺乳動物である、実施形態1から29のいずれかに記載の方法。
実施形態30:前記GABA受容体活性化リガンド及び前記PAMが、相乗的に作用して炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進する、実施形態1から29のいずれかに記載の方法。
【0014】
実施形態31:前記PAMが、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、キナゾリノン、及びニューロステロイドからなる群から選択される因子を含む、実施形態1から30のいずれかに記載の方法。
実施形態32:前記PAMがバルビツレートを含む、実施形態31の方法。
実施形態33:前記PAMが、アロバルビタール(5,5-ジアリルバルビツレート)、アモバルビタール(5-エチル-5-イソペンチル-バルビツレート)、アプロバルビタール(5-アリル-5-イソプロピル-バルビツレート)、アルフェナール(5-アリル-5-フェニル-バルビツレート)、バルビタール(5,5-ジエチルバルビツレート)、ブラロバルビタール(5-アリル-5-(2-ブロモ-アリル)-バルビツレート)、ペントバルビタール(5-エチル-5-(1-メチルブチル)-バルビツレート)、フェノバルビタール(5-エチル-5-フェニルバルビツレート)、セコバルビタール(5-[(2R)-ペンタン-2-イル]-5-プロプ-2-エニル-バルビツレート)からなる群から選択されるバルビツレートを含む、実施形態32の方法。
【0015】
実施形態34:前記PAMがベンゾジアゼピンを含む、実施形態31の方法。
実施形態35:前記PAMが、前記PAMが、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、ミダゾラム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、ハラゼパム、ケタゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、及びトリアゾラムからなる群から選択されるベンゾジアゼピンを含む、実施形態34の方法。
実施形態36:前記PAMがアルプラゾラムを含む、実施形態34の方法。
実施形態37:前記アルプラゾラムが、不安障害、パニック障害、及び/又はうつ病に起因する不安を治療するために使用される用量よりも少ない用量で投与される、実施形態36の方法。
実施形態38:前記アルプラゾラムが、1日当たり経口で1.5mg未満、若しくは1日当たり経口で1.0mg未満、若しくは1日当たり経口で0.5mg未満の速放性錠剤として、又は1日当たり経口で0.5mg未満、若しくは1日当たり経口で0.4mg未満、若しくは1日当たり経口で0.3mg未満の徐放性錠剤として投与される、実施形態36の方法。
【0016】
実施形態39:前記PAMがミダゾラムを含む、実施形態34の方法。
実施形態40:前記ミダゾラムが、不安を軽減するため、又は医療処置若しくは手術の前に眠気若しくは麻酔を生じさせるため、又は鎮静作用若しくは麻酔を維持するために使用される用量よりも少ない用量で投与される、実施形態39の方法。
実施形態41:前記ミダゾラムが、1mgIV未満、又は約0.8mgIV未満、又は約0.5mgIV未満、又は約0.01mg/kg IV未満、又は約0.07mg/kg IM未満、又は約0.05mg/kg IM未満、又は約0.03mg/kg IM未満、又は約0.01mg/kg未満の用量で投与される、実施形態39の方法。
【0017】
実施形態42:前記PAMがクロナゼパムを含む、実施形態34の方法。
実施形態43:前記クロナゼパムが、成人において、発作障害(欠神発作若しくはレノックス・ガストー症候群を包含する)を治療するために使用される用量よりも少ない用量、又はパニック障害(広場恐怖症を包含する)の治療をするために使用される用量よりも少ない用量で投与される、実施形態42の方法。
実施形態44:前記クロナゼパムが、1日当たり経口で約0.5mg未満、又は1日当たり経口で約0.25mg未満、又は約0.01mg/kg/日未満、又は約0.005mg/kg/日未満の用量で投与される、実施形態42の方法。
【0018】
実施形態45:前記PAMがニューロステロイドを含む、実施形態31の方法。
実施形態46:前記PAMが、アロプレグナノロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン)、及びプレグナノロンからなる群から選択されるニューロステロイドを含む、実施形態45の方法。
実施形態47:前記PAMが、Algiax AP8、Algiax Ap4、Algiax AP325、及びAlgiax AP3からなる群から選択される因子を含む、実施形態1から30のいずれかに記載の方法。
実施形態48:前記PAMがAP325を含む、実施形態47の方法。
実施形態49:前記AP325が、神経障害性疼痛又は脊髄損傷に使用する用量よりも少ない用量で投与される、実施形態48の方法。
【0019】
実施形態50:前記GABA受容体活性化リガンドがGABAを含む、実施形態19から49のいずれかに記載の方法。
実施形態51:前記GABA受容体活性化リガンドが、ホモタウリン、バマルゾール、ガバミド、GABOB、ガボキサドール、イボテン酸、イソグバシン、トランスアミノシクロペンタン-3-カルボン酸、トランス-アミノ-4-クロトン酸、THIP、イミダゾール酢酸、β-グアニジノ-プロピオン酸、ホモヒポタウリン、3-アミノプロパンスルホン酸、コウジアミン、シス-3-[(アミノイミノメチル)チオ]プロペン酸、ホモ-β-プロリン、イソニペコチン酸、ムシモール、フェニブト、ピカミロン、プロガビド、キスカラミン、プロガビド酸(SL75102)、チオムシモール、プレガバリン、ビガバトリン、6-アミノニコチン酸、XP13512、及び((±)-1-([(α-イソブタノイルオキシエトキシ)カルボニル]アミノメチル)-1-シクロヘキサン酢酸)からなる群から選択される因子を含む、実施形態19から49のいずれかに記載の方法。
【0020】
実施形態52:前記GABA受容体活性化リガンドがアルコールではない、実施形態19から51のいずれかに記載の方法。
実施形態53:前記GABA受容体活性化リガンドがカヴァラクトンではない、実施形態19から52のいずれかに記載の方法。
実施形態54:前記GABA受容体活性化リガンドがスカルキャップ又はスカルキャップ成分ではない、実施形態19から53のいずれかに記載の方法。
実施形態55:前記GABA受容体活性化リガンドがカノコソウ又はカノコソウ成分ではない、実施形態19から54のいずれかに記載の方法。
実施形態56:前記GABA受容体活性化リガンドが揮発性ガスではない、実施形態19から55のいずれかに記載の方法。
【0021】
実施形態57:前記方法が炎症性疾患を治療するために使用される、実施形態1から56のいずれかに記載の方法。
実施形態58:前記方法が、メタボリックシンドローム、並びにI型糖尿病(T1D)、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、及び多発性硬化症などの自己免疫疾患からなる群から選択される炎症性疾患を治療するために使用される、実施形態57の方法。
実施形態59:前記方法が、移植片を受け取った対象における移植片拒絶を予防し又は緩和させるために使用される、実施形態1から56のいずれかに記載の方法。
【0022】
実施形態60:前記方法がアレルギー反応を減少させるために使用される、実施形態1から56のいずれかに記載の方法。
実施形態61:前記方法が、花粉症、外因性喘息、虫刺され及び刺痛アレルギー、食物及び薬物アレルギー、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アナフィラキシー症候群、蕁麻疹、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、結節性紅斑、多型性紅斑、スティーブンス-ジョンソン症候群、皮膚壊死性細静脈炎、並びに水疱性皮膚症からなる群から選択される状態におけるアレルギー反応を減少させるために使用される、実施形態60の方法。
実施形態62:前記哺乳動物が、神経障害性疼痛、脊髄損傷、不安障害、パニック障害、うつ病に起因する不安、発作障害(欠神発作若しくはレノックス・ガストー症候群を包含する)、及び月経随伴性てんかんからなる群から選択される1以上の状態の治療を受けていない、実施形態1から61のいずれかに記載の方法。
実施形態63:前記PAMが医療処置若しくは手術の前に眠気若しくは麻酔を生じさせるために、又は鎮静作用若しくは麻酔を維持させるために投与されない、実施形態1から62のいずれかに記載の方法。
実施形態64:BBB-透過性である前記PAMが、CNS適応症に使用される用量よりも少ない用量で投与される、実施形態1から63のいずれかに記載の方法。
【0023】
定義
用語「GABA受容体活性化リガンド」は、1以上のGABA受容体のアゴニストである因子を指す。一定の実施形態においては、GABA受容体活性化リガンドは少なくともGABAA受容体のアゴニストである。
用語「GABAA受容体のポジティブアロステリックモジュレーター」又は(PAM)は、脊椎動物の中枢神経系におけるGABAA受容体タンパク質の活性を増加させる分子を指す。GABAA受容体アゴニストとは異なり、GABAA PAMは、ガンマ-アミノ酪酸(GABA)神経伝達物質分子と同じ活性部位には結合しない。様々な実施形態において、PAMはGABAA受容体を誘発し又は増強して、そのクロライドチャネルを開く。
【0024】
用語「治療量以下の用量」は、PAMに関して、PAMがもともと設計され及び/又は承認された活性のために使用する場合における、承認された及び/又は推奨された及び/又は認可された用量のPAMよりも少ない用量を指す。したがって、例えば、アルプラゾラムなどのベンゾジアゼピンの治療量以下の用量は、ベンゾジアゼピンのうつ病、パニック障害、及び/又は不安のための、承認された及び/又は推奨された及び/又は認可された用量よりも少ない用量を指す。一定の実施形態においては、治療量以下の用量は、PAMが設計され及び/又は承認された活性(例えば、うつ病、パニック障害、発作、及び/又は不安)のための推奨された用量の少なくとも90%未満、又は少なくとも約80%未満、又は少なくとも約70%未満、又は少なくとも約60%未満、又は少なくとも約50%未満、又は少なくとも約40%未満、又は少なくとも約30%未満、又は少なくとも約20%未満、又は少なくとも約10%未満である。
【0025】
語句「と併せて」又は「と組み合わせて」は、ここに記載の活性剤(例えば、1以上のGABA受容体活性化リガンド)の、1以上のここに記載の他の薬剤(例えば、1以上のPAM)と併せた使用に関連して使用した場合には、GABA受容体活性化リガンド及びPAMが投与され、その結果、有機体、特にベータ細胞での生理学的活動に少なくとも時系列の重複があることを示す。したがって、様々な実施形態において、GABA受容体活性化リガンド及びPAMを同時に及び/又は連続して投与することができる。連続投与では、2番目に投与された因子が投与され又は有機体中で活性化するときに、最初に投与された薬剤/因子が有機体に対して何らかの生理学的変化を及ぼしている限り、2番目の部分の投与前にかなりの遅延(例えば、数分又は数時間又は数日)さえあり得る。
【0026】
用語「制御性応答」は、制御性T細胞とB細胞、抗原提示細胞、及び先天性免疫系の他の細胞(及びそれらの前駆細胞)、並びにTGF-β、IL-10、IL-4、IL-13、IL-27、IL-35、IL-2、グランザイムB、及びインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼなどの分泌型抗炎症性サイトカインの機能を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、HELへの想起応答に対するGABA単独の効果を示す。T細胞増殖に対する有意な阻害効果が、0.01~1mMのGABAレベルで観察され、本発明者らの従前の研究に一致した。縦座標:3H-チミジン摂取、cpm(カウント毎分)で表す。横座標:GABA濃度、mMで表す。
図2図2は、アルプラゾラム(Xanax)単独が、試験したいずれの用量においても、T細胞増殖に対する有意な効果を有していなかったことを示す。これはGABA-Rを活性化するのにGABAが必要であること、また、(β細胞とは異なり)免疫細胞がGABA-Rを活性化するのに十分でないGABAを作り出すことと一致している。縦座標:3H-チミジン摂取、cpm(カウント毎分)で表す。横座標:アルプラゾラム(Xanax)濃度、Mで表す。
図3図3は、GABAとアルプラゾラム(Xanax)の組み合わせが、HELに応答して免疫細胞増殖(炎症性反応)をより効果的に阻害することを示す。Xanaxの非存在下でのGABAの開始点(横軸で「0」とラベルする)で、上部から下部までのカーブは、(i)Xanaxなし、(ii)10-6のXanax、(iii)3×10-7のXanax、(iv)10-7のXanax、(v)3×10-8のXanax、及び(vi)10-8のXanaxを表す。縦座標:3H-チミジン摂取、cpm(カウント毎分)で表す。横座標:GABA濃度、mMで表す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ここに記載の組成物、方法及び使用は、PAM(GABA受容体(例えば、GABAA受容体))のポジティブアロステリックモジュレーター)が、哺乳動物における炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させ得るという発見に関係する。さらに、PAMを1以上のGABA受容体活性化リガンドと組み合わせて使用することで、PAM又はGABA受容体活性化リガンドの単独での使用よりも、優位に優れた効果が提供されることもまた発見された。特定の理論に拘束されることなく、GABA受容体活性化リガンドとPAMの組み合わせが、炎症性免疫応答の減少及び/又は制御性免疫応答の促進に対する相乗効果を有すると思われる。
【0029】
したがって、一定の実施形態においては、GABA-Rアゴニストの存在、特に少量の外因性GABAの存在下では、GABA-R PAMが効果的に炎症性免疫応答を減少させ(例えば、Th1反応を阻害する)、及び/又は制御性免疫応答を促進させる(例えば、制御性T細胞(Tregs)を促進する)ことができると考えられている。したがって、一定の実施形態においては、哺乳動物において炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させる方法が提供され、当該方法は、GABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)を、哺乳動物における炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進するのに十分な量で哺乳動物に投与する工程を含む。一定の実施形態においては、PAMはGABA受容体活性化リガンドと併せて投与される。それらの実施形態によれば、哺乳動物における炎症性免疫応答の減少及び/又は制御性免疫応答の促進のための使用のための、GABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)が提供される。さらにこれらの実施形態によると、哺乳動物における炎症性免疫応答の減少及び/又は制御性免疫応答の促進のための薬の調製のための、GABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)の使用が提供される。
【0030】
特定の理論に拘束されることなく、1つの重要な結果は、併用治療がGABA-Rアゴニスト(例えば、GABA)、PAMのいずれか、又はその両方のより少ない用量を使用して免疫応答を調節し、それにより治療をより容易で(例えば、GABAの大量消費を回避する)、より効果的で、及び潜在的により安全にすることであると考えられている。
したがって、様々な実施形態において、哺乳動物における炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させる方法が提供され、当該方法は、必要とする哺乳動物に1以上のPAMをGABA受容体活性化リガンドと併せて投与する工程を伴い、この場合、GABA受容体活性化リガンドは、単独、及び/又はポジティブアロステリックモジュレーターが治療量以下の用量で使用される場合に、炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させるために使用される用量よりも少ない用量で使用される。一定の実施形態においては、両方の因子の投与は炎症性免疫応答を減少させる。一定の実施形態においては、両方の因子の投与は制御性免疫応答を促進する。
【0031】
一定の実施形態においては、GABA受容体活性化リガンド及びGABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレーターを含む医薬製剤が提供される。一定の実施形態においては、ここに記載の方法の実行のためのキットもまた企図される。様々な実施形態において、このようなキットはGABA受容体活性化リガンドを含有する容器及びGABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレーターを含有する容器、並びに任意で、とりわけここに記載の方法におけるこれらの因子の使用を教示する指示資料を含む。
【0032】
任意で1以上のGABA受容体活性化リガンドと組み合わせたPAMの使用
任意で1以上のGABA受容体活性化リガンドと組み合わせたここに記載のPAMは、免疫機能を伴う多数の疾患の治療に使用することができる。より具体的には、化合物又はその組み合わせは、炎症性応答の下方制御(例えば、Th1阻害)及び/又は制御性免疫応答(例えば、Treg反応)の促進(上方制御)が望ましい状態を治療するために使用することができる。
一定の実施形態においては、化合物は周辺的に投与される(例えば、経口投与、経皮投与、静脈内投与、皮下投与、又はポンプを使用して)。一定の実施形態においては、化合物は血液脳関門を通過することができず、したがって、中枢神経系に影響を及ぼさない。
【0033】
炎症性疾患及び/又は自己免疫疾患
ここに記載のPAMは、単独、又は1以上のGABA受容体活性化リガンドと組み合わせて、炎症を減少させ(例えば、Th1反応を阻害する)及び/又はTreg反応を強化するために使用される。一定の実施形態においては、炎症の減少は、1以上の炎症性の(例えば、炎症促進性の)サイトカイン若しくはケモカインの減少、及び/又は1以上の炎症関連T細胞タイプの減少により特徴づけられる。したがって、例えば、一定の実施形態においては、炎症の減少は例えばインターロイキン-1(IL-1)、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン-6(IL-6)腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、インターロイキン-17(IL-17)、インターロイキン-23(IL-23)などの、1以上の炎症性サイトカイン又はケモカインの減少により特徴づけられる。一定の実施形態においては、炎症の減少は例えばCD8+T細胞、Tヘルパー17(Th17)細胞などの、1以上の炎症関連T細胞タイプの減少により特徴づけられる。
このような作用は、限定されないが、メタボリックシンドローム、並びに例えばI型糖尿病(T1D)、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、及び多発性硬化症などの自己免疫疾患を包含する炎症性疾患の治療に、高度に有益であると考えられている。
【0034】
移植片拒絶
T細胞がヒトの免疫応答を開始する能力を妨げる因子が、移植片拒絶を効果的に予防し又は軽減することが示されている。さらに、移植片拒絶のプロセスの研究によって、それが少なくとも部分的には、Tリンパ球、特にCD8表面分子を持つ抗原特異的活性化に起因することが示されている。したがって、T細胞媒介免疫応答を阻害することにより、移植片のより高い耐性がもたらされる。
一定の実施形態によると、ここに記載のPAMは、単独又は1以上のGABA受容体活性化リガンドと組み合わせて、T細胞媒介炎症性免疫応答を阻害し、かつそれにより移植片のより高い耐性を促進する(例えば、移植片の生存を増加する)ために使用される。このような移植片は、限定されないが、ベータ細胞移植などを包含する。
【0035】
アレルギー
喘息又はアレルギーとして一般的に知られている多種のアトピー性又はアレルギー性障害は、T細胞活性化の効果に起因する。このようなアレルギー性障害は、例えば、花粉症、外因性喘息、虫刺され及び刺痛アレルギー、食物及び薬物アレルギー、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アナフィラキシー症候群、蕁麻疹、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、結節性紅斑、多型性紅斑、スティーブンス-ジョンソン症候群、皮膚壊死性細静脈炎、水疱性皮膚症などを包含する。特定の理論に拘束されることなく、ここに記載の方法(例えば、1以上のPAMの、単独、又は1以上のGABA受容体活性化リガンドと組み合わせた投与)は、これら及び他の状態におけるアレルギー性反応を減らすための介在に使用することができると考えられている。
【0036】
Th1細胞媒介免疫応答の阻害
上記のように、ここに記載のPAMは、単独、又は1以上のGABA受容体活性化リガンドと組み合わせて、Th1媒介免疫応答を阻害するために使用することができる。Th1細胞はIL-2及びガンマインターフェロン(γ-IFN)を生産し、かつ細胞障害性Tリンパ球(CTLs)、遅延型過敏反応(DTH)、及びマクロファージ活性化に関連するヘルパー細胞機能を媒介する。Th1細胞により生産されるIL-2は、CTL前駆体の活性化及び成熟CTLエフェクターへの分化において主要な役割を果たす。Th1細胞は、「細胞媒介」免疫と呼ばれる免疫に関与するが、これは通常ウイルス及び特定の細菌による感染に対処する。それらは、我々の細胞内部に入る病原体に対する身体の最初の防御線である。しかしながら、Th1細胞は炎症促進性である傾向があり、かつ自己免疫疾患の発症に関与している。
ここに記載の方法は、Th-1細胞媒介免疫の阻害及び/又は制御性応答の促進(例えば、Tregsを強化する)のために使用することができ、かつ限定されないが、例えば、I型糖尿病、多発性硬化症、重症筋無力症、橋本甲状腺炎、バセドウ病、クローン病、乾癬、シェーグレン症候群(Sjoren’s Syndrome)、セリアック病、関節リウマチなどの自己免疫状態を包含する病理の治療に有用であると考えられている。前述の使用は例示であり、かつ非限定的である。ここに提供される教示を使用すると、記載された方法の多数の他の用途が、当技術分野の当業者に入手可能になるであろう。
【0037】
GABAA受容体ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)
GABAA受容体のポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)は、当技術分野の当業者に周知である。例示的なPAMは、限定されないが、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール)、アベルメクチン(例えば、イベルメクチン)、バルビツレート(例えば、フェノバルビタール)、ベンゾジアゼピン、臭化物(例えば、臭化カリウム)、カルバメート(例えば、メプロバメート、カリソプロドール)、クロラロース、クロルメザノン、クロメチアゾール、ジヒドロエルゴリン(例えば、エルゴロイド(ジヒドロエルゴトキシン))、エタゼピン、エチフォキシン、イミダゾール(例えば、エトミデート)、カヴァラクトン(カヴァに含まれる)、ロレクレゾール、神経刺激性ステロイド(例えば、アロプレグナノロン、ガナキソロン)、非ベンゾジアゼピン(例えば、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン)、ペトリクロラール、フェノール(例えば、プロポフォール)、ピペリジンジオン(例えば、グルテチミド、メチプリロン)、プロパニジド、ピラゾロピリジン(例えば、エタゾレート)、キナゾリノン(例えば、メタカロン)、スカルキャップ成分(例えば、バカレインなどのフラボノイドを包含するが、これに限定されないスクテラリア種(Scutellaria sp.)の成分)、スチリペントール、スルホニルアルカン(例えば、スルホンメタン、テトロナール、トリオン)、カノコソウ成分(例えば、吉草酸、バレレン酸)、及び特定の揮発性物質/ガス(例えば、クロラール水和物、クロロホルム、ジエチルエーテル、セボフルラン)を包含する。様々な実施形態において、GABA受容体活性化リガンドと組み合わせて使用されるPAMは、アルコール、及び/又はカヴァラクトン、及び/又はスカルキャップ若しくはスカルキャップ成分、及び/又はカノコソウ若しくはカノコソウ成分、及び/又は揮発性ガスを除外する。
【0038】
一定の実施形態においては、PAMは、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、キナゾリノン、及びニューロステロイドからなる群から選択される因子を含む。一例であるが、限定的でないキノロンの例は、d(+)-ROD188((1R,2’R)-1-(2,3,4,5-テトラヒドロ-5-オキソ-2-フリル)-2-N-(p-トルエン-スルホニル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、例えば、Thomet et al.(2000) Br. J. Pharmacol., 131(4): 843-850を参照)である。例示的なバルビツレートは、限定されないが、アロバルビタール(5,5-ジアリルバルビツレート)、アモバルビタール(5-エチル-5-イソペンチル-バルビツレート)、アプロバルビタール(5-アリル-5-イソプロピル-バルビツレート)、アルフェナール(5-アリル-5-フェニル-バルビツレート)、バルビタール(5,5-ジエチルバルビツレート)、ブラロバルビタール(5-アリル-5-(2-ブロモ-アリル)-バルビツレート)、ペントバルビタール(5-エチル-5-(1-メチルブチル)-バルビツレート)、フェノバルビタール(5-エチル-5-フェニルバルビツレート)、セコバルビタール(5-[2(R)-ペンタン-2-イル]-5-プロプ-2-エニル-バルビツレート)などを包含する。
【0039】
例示的なベンゾジアゼピンは、限定されないが、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、ハラゼパム、ケタゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、トリアゾラムなどを包含する。
例示的なニューロステロイドは、限定されないが、アロプレグナノロン、及びプレグナノロンを包含する。
一定の実施形態においては、特定の使用のPAMはアルプラゾラム(XANAX(登録商標))を含む。
他の好適なPAMは、限定されないが、Algiaxにより生産されるPAM(例えば、Algiax AP8、Algiax Ap4、Algiax AP325、及びAlgiax AP3)である。
上記で特定されたPAMは、例示的であり、かつ非限定的であることを意図している。他のPAMは当技術分野の当業者に公知であり、ここに記載の方法、製剤、及びキットにおけるそれらの使用が企図されている。
【0040】
GABA受容体活性化リガンド
GABA受容体活性化リガンドは当技術分野の当業者に周知である。このようなリガンドには、例えば、GABA受容体の天然リガンドであるガンマ-アミノ酪酸(GABA)が包含される。他のGABA受容体活性化リガンドは、限定されないが、ホモタウリン、バマルゾール、ガバミド、GABOB、ガボキサドール、イボテン酸、イソグバシン、トランス-アミノシクロペンタン-3-カルボン酸、トランス-アミノ-4-クロトン酸、THIP、イミダゾール酢酸、β-グアニジノ-プロピオン酸、ホモヒポタウリン、3-アミノプロパンスルホン酸、コウジアミン、シス-3-[(アミノイミノメチル)チオ]プロペン酸、ホモ-β-プロリン、イソニペコチン酸、ムシモール、フェニブト、ピカミロン、プロガビド、キスカラミン、プロガビド酸(SL75102)、チオムシモール、プレガバリン、ビガバトリン、6-アミノニコチン酸、XP13512((±)-1-([(α-イソブタノイルオキシエトキシ)カルボニル]アミノメチル)-1-シクロヘキサン酢酸)などを包含する。
これらのGABA受容体活性化リガンドは、例示的であり、かつ非限定的であることを意図している。他のGABA受容体活性化リガンドは当技術分野の当業者に公知であり、ここに記載の方法、製剤、及びキットにおけるそれらの使用が企図されている。
【0041】
組み合わせ製剤
様々な実施形態において、製剤は、GABAA受容体の1以上のポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)及び1以上のGABA受容体活性化リガンドを含むことが企図されている。一定の実施形態においては、GABA受容体活性化リガンドは、GABA受容体活性化リガンドを単独で含む治療製剤における単位用量よりも少ない単位用量で存在し、及び/又はPAMは、PAMを単独で含む典型的な、及び/又は承認された、及び/又は推奨された治療製剤における単位用量よりも少ない単位用量で存在する。
【0042】
一定の実施形態においては、組み合わせ製剤中のPAMは、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール)、アベルメクチン(例えば、イベルメクチン)、バルビツレート(例えば、フェノバルビタール)、ベンゾジアゼピン、臭化物(例えば、臭化カリウム)、カルバメート(例えば、メプロバメート、カリソプロドール)、クロラロース、クロルメザノン、クロメチアゾール、ジヒドロエルゴリン(例えば、エルゴロイド(ジヒドロエルゴトキシン))、エタゼピン、エチフォキシン、イミダゾール(例えば、エトミデート)、カヴァラクトン(カヴァに含まれる)、ロレクレゾール、神経刺激性ステロイド(例えば、アロプレグナノロン、ガナキソロン)、非ベンゾジアゼピン(例えば、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロン、エスゾピクロン)、ペトリクロラール、フェノール(例えば、プロポフォール)、ピペリジンジオン(例えば、グルテチミド、メチプリロン)、プロパニジド、ピラゾロピリジン(例えば、エタゾレート)、キナゾリノン(例えば、メタカロン)、スカルキャップ成分(例えば、バカレインなどのフラボノイドを包含するが、これに限定されないスクテラリア種の成分)、スチリペントール、スルホニルアルカン(例えば、スルホンメタン、テトロナール、トリオン)、カノコソウ成分(例えば、吉草酸、バレレン酸)の1以上を含む。様々な実施形態において、GABA受容体活性化リガンドと組み合わせて使用されるPAMは、例えばここに記載されるような、アルコール、及び/又はカヴァラクトン、及び/又はスカルキャップ若しくはスカルキャップ成分などを除外する。
【0043】
一定の実施形態においては、組み合わせ製剤中のGABA受容体リガンドは、例えばここに記載されるような、1以上のガンマ-アミノ酪酸(GABA)、ホモタウリン、バマルゾール、ガバミド、GABOB、ガボキサドール、イボテン酸、イソグバシン、イソニペコチン酸、ムシモール、フェニブト、ピカミロン、プロガビド、キスカラミン、プロガビド酸(SL75102)、チオムシモール、プレガバリン、ビガバトリン、6-アミノニコチン酸、XP13512((±)-1-([(α-イソブタノイルオキシエトキシ)カルボニル]アミノメチル)-1-シクロヘキサン酢酸)などを包含する。
一定の実施形態においては、組み合わせ製剤はGABA及びアルプラゾラムを含む。
【0044】
活性剤(例えば、ここに記載のPAM及びGABA受容体活性化リガンド)は、「天然の」形態で、又は、必要に応じて塩、エステル、アミド、プロドラッグ、誘導体などの形態で製剤化及び投与することができ、提供される塩、エステル、アミド、プロドラッグ若しくは誘導体は薬理学的に好適であり、即ち本方法において効果的である。活性剤の塩、エステル、アミド、プロドラッグ及び他の誘導体は、有機合成化学における当業者に公知の、及びMarch (1992) Advanced Organic Chemistry; Reactions, Mechanisms and Structure, 4th Ed. N.Y. Wiley-Interscienceに記載の、及び上記の標準的手順を使用して調製することができる。
例えば、薬学的に容認可能な塩は、塩を形成することができる機能性を有するここに記載の因子(例えば、ここに記載のGABA受容体活性化リガンド及びPAM)のいずれかのために調製することができる。薬学的に容認可能な塩は、親化合物の活性を維持し、かつそれが投与され、及び文脈により投与される対象に対する、有害な又は不都合な効果を与えない、任意の塩である。
様々な実施形態において、薬学的に認容可能な塩は、有機又は無機塩基に由来し得る。塩は一価又は多価のイオンである。特に関心があるのは、無機イオン、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、及びマグネシウムである。有機塩は、アミン、特にモノ、ジ、及びトリアルキルアミン又はエタノールアミンなどのアンモニウム塩によって作成され得る。塩は、カフェイン、トロメタミン、及び同様の分子によっても形成され得る。
【0045】
塩、エステル、アミド、プロドラッグなどの薬学的活性剤の製剤方法は、当技術分野の当業者に周知である。例えば、塩は、典型的に好適な酸との反応を伴う従来の方法論を用いて遊離塩基から調製することができる。一般的に、薬剤の原型はメタノール又はエタノールなどの極性有機溶媒に溶解され、そこに酸が添加される。結果として得られた塩は、沈殿するか、極性がより低い溶媒を添加することで溶液から取り出すことができる。酸付加塩の調製に好適な酸には、限定されないが、有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸など、及び無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの両方が包含される。酸付加塩は、好適な塩基の処理により遊離塩基に再変換することができる。ここでの活性剤の、一定の特に好ましい酸付加塩には、塩酸又は臭化水素酸を使用して調製できるようなハロゲン化物塩が包含される。反対に、本発明の活性剤の塩基性塩は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミンなどの薬学的に容認可能な塩基を使用して、同様の方法で調整することができる。特に好ましい塩基性塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩、及び銅塩を包含する。
【0046】
塩基性薬物の塩形態の調製では、対イオンのpKaは、好ましくは薬物のpKaよりも少なくとも約2pH単位低い。同様に、酸性薬物の塩形態の調製では、対イオンのpKaは、好ましくは薬物のpKaよりも少なくとも約2pH単位高い。これにより、対イオンが溶液のpHをpHmaxよりも低いレベルにして塩のプラトーに達することができ、塩のプラトーでは、塩の溶解度が遊離酸又は遊離塩基の溶解度よりも優先される。医薬品有効成分(API)及び酸又は塩基のイオン化可能基のpKa単位における差の、一般化された規則は、プロトン移動をエネルギー的に有利にすることを意図している。API及び対イオンのpKaに有意な差がない場合、固体複合体が形成され得るが、水成環境では急速に不均衡になり得る(即ち、薬物及び対イオンの個々の実体に分解される)。
好ましくは、対イオンは薬学的に容認可能な対イオンである。好適な陰イオン塩の形態には、限定されないが、酢酸塩、安息香酸塩、ベンジラート(benzylate)、重酒石酸水素塩、臭化物、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート(estolate)、フマル酸塩、グルセプテート(gluceptate)、グルコン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、硫酸メチル、ムチン酸塩(mucate)、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩(エンボネート(embonate))、リン酸塩及び二リン酸塩、サリチル酸塩及び二サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシレート、トリエチオジド、吉草酸塩などが包含され、一方で好適な陽イオン塩の形態には、限定されないが、アルミニウム、ベンザチン、カルシウム、エチレンジアミン、リジン、マグネシウム、メグルミン、カリウム、プロカイン、ナトリウム、トロメタミン、亜鉛などが包含される。
【0047】
エステルの調製は、典型的には、活性剤の分子構造中に存在するヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基の官能基化を伴う。一定の実施形態においては、エステルは、典型的には遊離アルコール基のアシル置換誘導体、即ち式RCOOHのカルボン酸に由来する部分であり、式中、Rがアルキル、及び好ましくは低級アルキルである。エステルは、必要に応じて、従来の水素化分解又は加水分解手順を使用して遊離酸に再変換することができる。
アミドは、当技術分野の当業者に公知の、又は関連文献に記載の技術を使用して調製することができる。例えば、アミドは好適なアミン反応物質を使用してエステルから調製することができ、又はアンモニア若しくは低級アルキルアミンとの反応により無水物若しくは酸塩化物から調製することができる。
様々な実施形態において、ここで特定する活性剤(例えば、組み合わされたGABA受容体活性化リガンド及びPAM)は、哺乳動物における炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させるための、非経口投与、局所投与、経口投与、経鼻投与(若しくは、そうでなければ吸入)、直腸内投与、又はエアロゾル若しくは経皮などによる局所投与に有用である。
【0048】
様々な実施形態において、ここに記載の活性剤は薬学的に容認可能な担体(賦形剤)と組み合わせて、両方の因子を含有する薬理学的組成物を形成することができる。薬学的に容認可能な担体は、例えば組成物を安定化させ、又は活性剤の吸収を増加若しくは減少させるように作用する、1以上の生理学的に容認可能な化合物を含有し得る。生理学的に容認可能な化合物は、例えば、グルコース、スクロース、若しくはデキストランなどの炭水化物、アスコルビン酸若しくはグルタチオンなどの抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質、脂質などの保護及び取り込み促進剤、活性剤の除去又は加水分解を減少させる組成物、又は賦形剤若しくは他の安定剤及び/又は緩衝液を包含し得る。
特に錠剤、カプセル、ゲルキャップ(gel caps)などに有用な他の生理学的に容認可能な化合物は、限定されないが、結合剤、希釈剤/充填剤、崩壊剤、潤滑剤、懸濁剤などを包含する。
【0049】
一定の実施形態においては、経口投与剤形(例えば、錠剤)を製造するため、例えば、賦形剤(例えば、ラクトース、スクロース、デンプン、マンニトールなど)、任意の崩壊剤(例えば、炭酸カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドンなど)、結合剤(例えば、アルファデンプン、アラビアガム、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、シクロデキストリンなど)、及び任意の潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000など)が、活性成分(例えば、ここに記載のアラプロクラート及び他の化合物、又はその互変異性体若しくは立体異性体、又は前記アラプロクラート及び他の化合物、前記立体異性体、若しくは前記互変異性体の薬学的に容認可能な塩若しくは溶媒和化合物、又はその類似体、誘導体、若しくはプロドラッグ)に添加され、かつ結果として得られる組成物が、圧縮される。必要に応じて、圧縮製品は、例えば味をマスキングするための、又は腸溶性若しくは持続放出のための公知の方法を使用して、コーティングされる。好適なコーティング剤には、限定されないが、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、POLYOX(登録商標)エチレングリコール(yethylene glycol)、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びオイドラギッド(Rohm&Haas、ドイツ;メタクリル-アクリル共重合体)が包含される。
【0050】
他の薬学的に容認可能な化合物は、湿潤剤、乳化剤、分散剤、又は微生物の成長及び作用を防止するのに特に有用な防腐剤を包含する。様々な防腐剤が周知であり、かつ、例えばフェノール及びアスコルビン酸を包含する。当技術分野の当業者は、生理学的に容認可能な化合物を包含する薬学的に容認可能な担体の選択は、例えば、活性剤の投与経路及び活性剤の特定の生理化学的特性に依存することを理解するであろう。
特定の実施形態においては、賦形剤は無菌であり、かつ一般的に望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の、周知の滅菌技術により滅菌することができる。錠剤やカプセルなどの様々な経口投与剤形の賦形剤の場合、無菌性を必要としない。通常は、USP/NF基準で十分である。
【0051】
医薬組成物は、投与方法に応じて様々な単位剤形で投与することができる。好適な単位剤形は、限定されないが、粉末、錠剤、ピル、カプセル、ロゼンジ、坐薬、パッチ、点鼻薬、注射剤(injectibles)、移植可能な持続放出製剤、粘膜付着性フィルム(mucoadherent films)、局所塗り薬(topical varnishes)、脂質複合体などを包含する。
ここに記載の活性剤(例えば、GABA受容体活性化リガンド及びPAM)を含む医薬組成物は、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作成、湿式粉砕、乳化、カプセル化、封入又は凍結乾燥工程により製造することができる。医薬組成物は、薬学的に使用できる調剤への活性剤の加工を促進する1以上の生理学的に容認可能な担体、希釈剤、賦形剤、又は助剤を使用して従来の方法で製剤化することができる。好適な製剤は、選択した投与経路に依存する。
【0052】
一定の実施形態においては、組み合わされた活性剤(例えば、GABA受容体活性化リガンド及びPAM)は、経口投与のために製剤される。好適な製剤又は経口投与は、活性剤を、当技術分野で周知の経口送達に好適な薬学的に容認可能な担体と組み合わせることにより、容易に調製することができる。このような担体は、ここに記載の活性剤を、治療される患者による経口摂取のための錠剤、ピル、糖衣錠、カプレ、ロゼンジ、ゲルキャップ、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などに製剤化することを可能にする。例えば粉末、カプセル、及び錠剤などの経口固体製剤の場合、好適な賦形剤には、糖(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、及びソルビトール)、セルロース調剤(例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム)、合成ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン(PVP))、造粒剤、並びに結合剤などの充填剤を包含され得る。必要に応じて、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤を添加してもよい。必要に応じて、標準的技術を使用して固体剤形を糖衣又は腸溶コーティングしてもよい。腸溶コーティングされた粒子の調製は、例えば米国特許第4,786,505号及び4,853,230号に開示されている。
【0053】
吸入による投与の場合、活性剤(例えば、ここに記載のGABA受容体活性化リガンド及びPAM)は、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適な気体などの適切な推進剤を使用して、加圧パック又はネブライザーからのエアロゾルスプレーの形で、簡便に送達される。加圧エアロゾルの場合、計量された量を送達するためのバルブを提供することにより、用量単位を決定することができる。例えば吸入器又は注入器での使用のためのゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物とラクトース又はデンプンなどの好適な粉末基材の粉末混合物を含有するように製剤化することができる。
【0054】
一定の実施形態においては、ここに記載の活性剤は、当技術分野の当業者に周知の標準的技術に従って、全身的投与のために(例えば、注射用として)製剤化される。全身的製剤は、限定されないが、皮下、静脈内、筋肉内、髄腔内、又は腹腔内注射などの注射による投与のために設計された製剤、並びに、経皮、経粘膜経口又は肺投与のために設計された製剤を包含する。注射の場合、ここに記載の活性剤は水溶液、好ましくはハンクス液、リンガー液、若しくは生理食塩水バッファーなどの生理学的に互換性のあるバッファー、及び/又は一定のエマルジョン製剤に製剤化することができる。溶液は、懸濁剤、安定剤、及び/又は分散剤などの調合剤(formulatory agents)を含有し得る。一定の実施形態においては、活性剤は、使用前に発熱性物質除去蒸留水などの好適なビヒクルで構成するための粉末形態で提供することができる。経粘膜投与の場合、及び/又は血液/脳関門通過の場合、浸透させる関門に適切な浸透剤を製剤に使用することができる。このような浸透剤は、当技術分野で一般に知られている。注射用製剤及び浸透性製剤は、一般に滅菌され、又は実質的に滅菌された製剤である。
【0055】
これまでに記載した製剤に加えて、活性剤(例えば、ここに記載のGABA受容体活性化リガンド及びPAM)は、デポ剤として製剤してもよい。このような長時間作用性製剤は、移植(例えば、皮下又は筋肉内に)、又は筋肉内注射により投与することができる。したがって、例えば、活性剤は、好適なポリマー材料若しくは疎水性材料(例えば、容認可能なオイル中のエマルジョンとして)、又はイオン交換樹脂、又は難溶性誘導体、例えば難溶性塩として製剤化することができる。
一定の実施形態においては、ここに記載の活性剤は、従来の経皮薬剤送達システム、即ち経皮「パッチ」を使用して皮膚を通して送達することもでき、この場合活性剤は、典型的には皮膚に貼り付けられる薬剤送達デバイスとして機能する積層構造中に含有される。このような構造中では、薬剤組成物は典型的には層、又は上部バッキング層の下にある「リザーバー(reservoir)」に含有される。この文脈における用語「リザーバー」は、皮膚の表面への送達に最終的に利用可能な「活性成分」の量を指すことが理解されよう。したがって、例えば「リザーバー」は、活性成分を、パッチのバッキング層上の接着剤中、又は当技術分野の当業者に公知の任意の様々な異なるマトリックス製剤中に包含し得る。パッチは単一のリザーバーを含有してもよく、又は多数のリザーバーを含有してもよい。
【0056】
例示的な一実施形態においては、リザーバーは薬剤送達中にシステムを皮膚に貼り付けるのに役立つ、薬学的に容認可能な接触接着材料のポリマーマトリックスを含む。皮膚接触接着材料の好適な例には、限定されないが、ポリエチレン、ポリシロキサン、ポリイソブチレン、ポリアクリレート、ポリウレタンなどが包含される。あるいは、薬物含有リザーバー及び皮膚接触接着剤は分離した別個の層として存在し、リザーバーの下に接着剤を有し、この場合、上記のポリマーマトリックス、又は液体若しくはハイドロゲルリザーバーであり得、又は他の形態をとり得る。デバイスの上面として役立つこれらのラミネート中のバッキング層は、「パッチ」の主要な構造要素として機能し、かつ高い柔軟性を有するデバイスを提供することが好ましい。バッキング層に選択された材料は、活性剤及び存在する任意の他の材料に実質的に不浸透性であることが好ましい。
あるいは、他の薬学的な送達系を利用することができる。例えば、リポソーム、エマルジョン、及びマイクロエマルジョン/ナノエマルジョンは、薬学的に活性のある化合物を保護し及び送達するために使用され得る送達ビヒクルの周知な例である。ジメチルスルホキシドなどの一定の有機溶媒もまた利用することができるが、通常より高い毒性という代償が伴う。
【0057】
一定の実施形態においては、組み合わせ製剤は、GABA受容体活性化リガンド及び/又はPAMを、GABA受容体活性化リガンド及び/又はPAMを単独で使用する場合に提供される用量よりも少ない用量(単位用量)含む。一定の実施形態においては、GABA受容体活性化リガンドは、GABA受容体活性化リガンドが単独で使用された場合に、哺乳動物におい炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させるのに必要なGABA受容体活性化リガンドの、約90%未満、又は約80%未満、又は約70%未満、又は約60%未満、又は約50%未満、又は約40%未満、又は約40%未満、又は約30%未満、又は約10%未満、又は約5%未満で存在する。
一定の実施形態においては、PAMは治療量以下の用量で提供される。これは、PAMがもともと設計され及び/又は承認された活性に使用される場合に、承認され及び/又は推奨され及び/又は認可されたPAMの用量を下回る用量を指す。
【0058】
したがって、例えば、パニック障害の治療のためのアルプラゾラム(速放性錠剤)の推奨/承認された用量は、1日3回、経口で0.5mgの初回量であり、分割量で1から10mg/日の維持量を有し、かつ分割量で5から6mg/日の平均用量である。推奨/承認された用量の徐放性アルプラゾラム錠剤は、1日1回、0.5mgから1mgであり、かつ維持量は1日1回1から10mgであり、1日1回3から6mgの平均用量を有する。成人のうつ病の治療のためのアルプラゾラム(速放性錠剤)の推奨/承認された用量は、1日3回、経口で0.5mgの初回量であり、これは分割量で、経口で毎日3mgの平均有効量まで増加される。不安に対する高齢者の用量は高齢者又は衰弱した患者に1日2から3回、経口で0.25mgの初回量で提供され、2mgを超える1日の用量は、高齢者における使用には潜在的に不適切である薬品としてのビアーズ基準を満たす。
【0059】
製剤中では、治療量以下の用量は、典型的には最少の推奨/承認された単位剤形よりも少なく、例えばアルプラゾラムの場合、単位剤形として0.25mg未満であり、かつ治療法において1日に合計で0.5mg未満である。一定の実施形態においては、治療量以下の用量は、この推奨/承認された用量の90%未満、又は約80%未満、又は約70%未満、又は約60%未満、又は約50%未満、又は約40%未満、又は約30%未満、又は約20%未満、又は約10%未満である。
これらの用量は説明を意図し、かつ限定を意図していない。対象に投与されたBABA受容体活性化リガンド及びPAMの実際の用量は、体重、状態の深刻度、以前の又は同時的な治療的介在、患者の突発性疾患、及び投与経路などの物理的及び生理学的因子によって決定することができる。用量及び投与経路に応じて、好ましい用量及び/又は有効量の投与回数は、対象の反応に従って変動し得る。投与に責任のある医師は、いずれのイベントにおいても、組成物中の活性剤の濃度及び個々の対象に適した用量を決定するであろう。
【0060】
キット
一定の実施形態においては、ここに記載の方法の実施のためのキットが提供される。様々な実施形態において、キットは、GABA活性化リガンドを含有する容器、及びここに記載の通りのGABAA受容体のポジティブアロステリックモジュレーターを含有する容器を含む。一定の実施形態においては、キットはGABA及びアルプラゾラムを含む。
一定の実施形態においては、GABA受容体活性化リガンド及びPAMは、単位剤形(例えば、錠剤、カプレ、パッチなど)で提供され、及び/又は任意で1以上の薬学的に容認可能な賦形剤と組み合わせることができる。一定の実施形態においては、GABA受容体活性化リガンド及びPAMは、別個の容器で提供され得る。一定の実施形態においては、GABA受容体活性化リガンド及びPAMは、同じ容器で提供され得る。一定の実施形態においては、GABA受容体活性化リガンド及びPAMは、同じ容器で組み合わせ製剤として提供され得る。
【0061】
さらに、キットは任意で、本発明の方法の実施のための説明書を提供する、ラベル及び/又は指示資料(即ち、プロトコル)を包含する。一定のラベル又は指示資料は、1以上のPAMの、単独又は1以上のGABA受容体活性化リガンドと組み合わせた、哺乳動物において炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させるための使用を記載する。ラベル又は指示資料は任意で、好ましい用量/治療レジメン、対抗指示(counter indications)などもまた提供し得る。
指示資料は、典型的には書き出された又は印刷された資料を含む一方で、これらに限定されない。このような指示を備えることが可能であり、かつ最終使用者にそれらを伝達可能な任意の媒体が、本発明によって企図される。このような媒体は、限定されないが、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学式媒体(例えば、CD ROM)など包含する。このような媒体は、このような指示資料を提供するインターネットサイトのアドレスを包含し得る。
【0062】
実施例
以下の実施例は、説明のために提供されるものであるが、特許請求される発明を限定するものではない。
実施例1
炎症性免疫応答を抑制し及び/又は制御性免疫応答を促進させるための、PAMの、任意でGABA受容体活性化リガンドと組み合わせた使用
GABA-Rポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)は、GABAの作用を強化する。これらはGABA結合部位には結合しないが(即ち、これらはアゴニストではない)、むしろGABA-R上のその他の場所に結合する。これらはGABA-Rを活性化するためのアゴニスト機能を有しない一方で、GABAが受容体に結合した場合にGABAの作用を増強する。血液中のGABAレベルは低いため、PAM単独(例えば、外因性GABA受容体アゴニストの非存在下で)ではほとんどの周辺免疫応答に影響を与えそうにない。これに一致して、GABA-R PAMアルプラゾラム(Xanax)を長期にわたって摂取する個人が免疫抑制を有するとは報告されなかった。
【0063】
しかしながら、GABAは島(islets)の中で分泌され、かつPAM単独の投与が、島内GABA(intra-islet GABA)と相乗作用して、炎症性病理学的膵島炎を阻害し得る可能性があると考えられている。抗原提示細胞がいくらかのGABAを作り出すことができ、それが投与されたPAMと協働し得るとも考えられている。
局所的内因性GABA分泌物との相乗作用に加えて、少量の外因性GABAの存在下で、GABA-R PAMは効果的に免疫炎症性反応を減少させ(例えば、Th1反応を阻害する)、及び/又は制御性(Treg)反応を強化し得ると考えられている。免疫応答を調節するために外因性GABA及びPAMを供給するという思想は、新規であると考えられている。さらに、併用治療は、より少ない用量のGABA、PAMのいずれか又はその両方を使用して免疫応答を調節することができ、それにより治療をより簡単に(例えば、GABAの大量消費を回避する)、より効果的に、かつ潜在的により安全にする。
【0064】
方法
マウスの後ろのフードパッド(food-pad)に、50%完全フロイントアジュバント(CFA)中で卵白リゾチーム(HEL、原型外来抗原(prototypic foreign antigen))を注射した。9日後、リンパ節単核細胞を単離し、3×105単核細胞/ウェルを異なる濃度のGABA、又はPAMアルプラゾラム(Xanax)の存在下でHELに対するT細胞想起応答について、1%FCS HL-1培地で3回試験した。96時間のインキュベーション期間の最後の16時間の間に、1mCi3Hチミジンを各ウェルに添加した。
図1は、GABA単独のHELに対する想起応答への効果を示す。T細胞増殖に対する有意な阻害効果は、0.01~1mMのGABAレベルで観察された。図2は、アルプラゾラム(Xanax)単独が、試験したいずれの用量でもT細胞増殖に対する有意な効果を有しなかったことを示す。これはGABA-Rを活性化するのにGABAが必要であること、また、(β細胞とは異なり)免疫細胞がGABA-Rを活性化するのに十分でないGABAを作り出すことと一致している。
【0065】
次いで、GABAを単独で、及びGABAを異なる濃度で、異なる組み合わせのXanaxと組み合わせて試験した。図3は、GABAとXanaxの組み合わせが、HELに応答してより効果的に免疫細胞増殖(炎症性応答)を阻害することを示す。GABA単独では、0.1~1.0mM(水色の線)においてのみ有意な阻害を有していたことに注意されたい。これに対して、GABAが1×10-6MでXanaxと組み合わされた場合(オレンジ色の線)、組み合わせは、GABAが最も効果の低いGABA(単独)用量よりも10倍低いレベルである、ちょうど0.01mMで存在した場合に効果的であった。また、GABA単独が0.1~1.0mMで有意な阻害効果を有していた一方で、0.1~1mMのGABAの阻害効果は、1×10-7のXanaxの存在下では各用量でより有意に優れており、かつこれらの用量のGABAが3×10-7MのXanaxと組み合わされた場合にさらに優れていたことに注意されたい。したがって、Xanaxは炎症性免疫応答に対するGABAの阻害効果を増大させ、かつこれらの組み合わせは、いずれかの薬剤単独に比べてより優れた阻害効果を有していた。
特定の理論に拘束されることなく、これらの所見は他のGABA-R PAMに拡大され得ると考えられている。したがって、一定の実施形態においては、PAMとともに組み合わされた外因性GABA又は他のGABA-Rアゴニストは、炎症性応答を阻害するために使用される。この組み合わせが、少量のいずれか又は両方の薬剤を用いた効果的な治療を可能にし得ると考えられている。さらに、この組み合わせが制御性応答をより効果的に促進し得ると考えられている。
【0066】
ここに記載の実施例及び実施形態は、説明のみを目的としており、これを考慮して様々な修正又は変更が当技術分野の当業者に提案され、本出願の精神及び範囲並びに添付の特許請求の範囲の領域に包含されることを理解されたい。ここで引用するすべての刊行物、特許、及び特許出願は、すべての目的のために参照により全体としてここに組み込まれる。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕哺乳動物における炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させる方法であって、前記哺乳動物に、GABA A 受容体ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)を、前記哺乳動物における炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させるのに十分な量で投与する工程を含む、方法。
〔2〕前記PAMが炎症性免疫応答を減少させる、前記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記炎症性免疫応答がT細胞の増殖を含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕前記PAMが制御性免疫応答を促進させる、前記〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の方法。
〔5〕前記制御性免疫応答がTh1媒介免疫応答の阻害を含む、前記〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の方法。
〔6〕前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、1以上の炎症性サイトカイン又はケモカインの下方制御を含む、前記〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載の方法。
〔7〕前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、IL-1、IL-12、IL-6、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、及びIL-23からなる群から選択される1以上の炎症性サイトカイン又はケモカインの下方制御を含む、前記〔6〕に記載の方法。
〔8〕前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、IL-1の下方制御を含む、前記〔7〕に記載の方法。
〔9〕前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、IL-12の下方制御を含む、前記〔7〕又は〔8〕に記載の方法。
〔10〕前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、IL-6の下方制御を含む、前記〔7〕から〔9〕のいずれか一項に記載の方法。
〔11〕前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、腫瘍壊死因子(TNF)の下方制御を含む、前記〔7〕から〔10〕のいずれか一項に記載の方法。
〔12〕前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、インターフェロンガンマ(IFN-γ)の下方制御を含む、前記〔7〕から〔11〕のいずれか一項に記載の方法。
〔13〕前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、及びIL-23の下方制御を含む、前記〔7〕から〔12〕のいずれか一項に記載の方法。
〔14〕前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、IL-23の下方制御を含む、前記〔7〕から〔13〕のいずれか一項に記載の方法。
〔15〕前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、1以上の炎症関連T細胞タイプの減少を含む、前記〔1〕から〔14〕のいずれか一項に記載の方法。
〔16〕前記1以上の炎症関連T細胞タイプの減少が、CD8+T細胞の減少を含む、前記〔15〕に記載の方法。
〔17〕前記1以上の炎症関連T細胞タイプの減少が、Tヘルパー17(T h 17)細胞の減少を含む、前記〔15〕又は〔16〕に記載の方法。
〔18〕前記炎症性免疫応答の減少又は制御性免疫応答の促進が、制御性T細胞(Tregs)の増加を含む、前記〔1〕から〔17〕のいずれか一項に記載の方法。
〔19〕前記GABA A 受容体ポジティブアロステリックモジュレーター(PAM)が、GABA受容体活性化リガンドと併せて投与される、前記〔1〕から〔18〕のいずれか一項に記載の方法。
〔20〕PAMとGABA受容体活性化リガンドの組み合わせが、いずれかの因子が単独で投与される場合よりも、前記哺乳動物において炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させるのにより効果的である、前記〔19〕に記載の方法。
〔21〕PAMとGABA受容体活性化リガンドの組み合わせが、いずれかの因子が単独で投与される場合よりも、少なくとも10%、又は少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%、又は少なくとも50%、又は少なくとも60%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも100%、又は少なくとも1.2倍、又は少なくとも1.5倍、又は少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも4倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも10倍、炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進させるのにより効果的である、前記〔20〕に記載の方法。
〔22〕前記GABA受容体活性化リガンドが、単独、及び/又は前記ポジティブアロステリックモジュレーターが前記PAMが単独で使用される場合に前記PAMが設計され及び/又は承認された活性を達成するために使用される用量よりも少ない用量で使用される場合において、炎症性免疫応答の同じ減少を達成するため、及び/又は制御性免疫応答を促進するために使用される用量よりも少ない用量で使用される、前記〔19〕に記載の方法。
〔23〕前記GABA受容体活性化リガンドが、前記GABA受容体活性化リガンドが単独で使用される場合において、炎症性免疫応答の減少及び/又は制御性免疫応答の促進における同じ効果を達成するために使用される用量よりも、少なくとも約95%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約10%少ない用量で使用される、前記〔22〕に記載の方法。
〔24〕前記ポジティブアロステリックモジュレーターが、前記PAMが単独で使用される場合に前記PAMが設計され及び/又は承認された活性を達成するために使用される用量よりも、少なくとも約95%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約80%、又は少なくとも約70%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約20%、又は少なくとも約10%少ない用量で使用される、前記〔22〕又は〔23〕に記載の方法。
〔25〕前記GABA受容体活性化リガンドが、単独で使用され及び/又は前記ポジティブアロステリックモジュレーターが治療量以下の用量で使用される場合において、炎症性免疫応答の減少及び/又は制御性免疫応答の促進に対する同じ効果を達成するために使用される用量よりも少ない用量で使用される、前記〔22〕から〔24〕のいずれか一項に記載の方法。
〔26〕前記哺乳動物がヒトである、前記〔1〕から〔25〕のいずれか一項に記載の方法。
〔27〕前記哺乳動物がI型糖尿病と診断されたヒトである、前記〔26〕に記載の方法。
〔28〕前記哺乳動物が前糖尿病性と診断されている、前記〔26〕に記載の方法。
〔29〕前記哺乳動物が非ヒト哺乳動物である、前記〔1〕から〔28〕のいずれか一項に記載の方法。
〔30〕前記GABA受容体活性化リガンド及び前記PAMが、相乗的に作用して炎症性免疫応答を減少させ及び/又は制御性免疫応答を促進する、前記〔1〕から〔29〕のいずれか一項に記載の方法。
〔31〕前記PAMが、バルビツレート、ベンゾジアゼピン、キナゾリノン、及びニューロステロイドからなる群から選択される因子を含む、前記〔1〕から〔30〕のいずれか一項に記載の方法。
〔32〕前記PAMがバルビツレートを含む、前記〔31〕に記載の方法。
〔33〕前記PAMが、アロバルビタール(5,5-ジアリルバルビツレート)、アモバルビタール(5-エチル-5-イソペンチル-バルビツレート)、アプロバルビタール(5-アリル-5-イソプロピル-バルビツレート)、アルフェナール(5-アリル-5-フェニル-バルビツレート)、バルビタール(5,5-ジエチルバルビツレート)、ブラロバルビタール(5-アリル-5-(2-ブロモ-アリル)-バルビツレート)、ペントバルビタール(5-エチル-5-(1-メチルブチル)-バルビツレート)、フェノバルビタール(5-エチル-5-フェニルバルビツレート)、セコバルビタール(5-[(2R)-ペンタン-2-イル]-5-プロプ-2-エニル-バルビツレート)からなる群から選択されるバルビツレートを含む、前記〔32〕に記載の方法。
〔34〕前記PAMがベンゾジアゼピンを含む、前記〔31〕に記載の方法。
〔35〕前記PAMが、前記PAMが、アルプラゾラム、ブロマゼパム、クロルジアゼポキシド、ミダゾラム、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、ハラゼパム、ケタゾラム、ロラゼパム、ニトラゼパム、オキサゼパム、プラゼパム、クアゼパム、テマゼパム、及びトリアゾラムからなる群から選択されるベンゾジアゼピンを含む、前記〔34〕に記載の方法。
〔36〕前記PAMがアルプラゾラムを含む、前記〔34〕に記載の方法。
〔37〕前記アルプラゾラムが、不安障害、パニック障害、及び/又はうつ病に起因する不安を治療するために使用される用量よりも少ない用量で投与される、前記〔36〕に記載の方法。
〔38〕前記アルプラゾラムが、1日当たり経口で1.5mg未満、若しくは1日当たり経口で1.0mg未満、若しくは1日当たり経口で0.5mg未満の速放性錠剤として、又は1日当たり経口で0.5mg未満、若しくは1日当たり経口で0.4mg未満、若しくは1日当たり経口で0.3mg未満の徐放性錠剤として投与される、前記〔36〕に記載の方法。
〔39〕前記PAMがミダゾラムを含む、前記〔34〕に記載の方法。
〔40〕前記ミダゾラムが、不安を軽減するため、又は医療処置若しくは手術の前に眠気若しくは麻酔を生じさせるため、又は鎮静作用若しくは麻酔を維持するために使用される用量よりも少ない用量で投与される、前記〔39〕に記載の方法。
〔41〕前記ミダゾラムが、1mgIV未満、又は約0.8mgIV未満、又は約0.5mgIV未満、又は約0.01mg/kg IV未満、又は約0.07mg/kg IM未満、又は約0.05mg/kg IM未満、又は約0.03mg/kg IM未満、又は約0.01mg/kg未満の用量で投与される、前記〔39〕に記載の方法。
〔42〕前記PAMがクロナゼパムを含む、前記〔34〕に記載の方法。
〔43〕前記クロナゼパムが、成人において、発作障害(欠神発作若しくはレノックス・ガストー症候群を包含する)を治療するために使用される用量よりも少ない用量、又はパニック障害(広場恐怖症を包含する)の治療をするために使用される用量よりも少ない用量で投与される、前記〔42〕に記載の方法。
〔44〕前記クロナゼパムが、1日当たり経口で約0.5mg未満、又は1日当たり経口で約0.25mg未満、又は約0.01mg/kg/日未満、又は約0.005mg/kg/日未満の用量で投与される、前記〔42〕に記載の方法。
〔45〕前記PAMがニューロステロイドを含む、前記〔31〕に記載の方法。
〔46〕前記PAMが、アロプレグナノロン(3α-ヒドロキシ-5α-プレグナン-20-オン)、及びプレグナノロンからなる群から選択されるニューロステロイドを含む、前記〔45〕に記載の方法。
〔47〕前記PAMが、Algiax AP8、Algiax Ap4、Algiax AP325、及びAlgiax AP3からなる群から選択される因子を含む、前記〔1〕から〔30〕のいずれか一項に記載の方法。
〔48〕前記PAMがAP325を含む、前記〔47〕に記載の方法。
〔49〕前記AP325が、神経障害性疼痛又は脊髄損傷に使用する用量よりも少ない用量で投与される、前記〔48〕に記載の方法。
〔50〕前記GABA受容体活性化リガンドがGABAを含む、前記〔19〕から〔49〕のいずれか一項に記載の方法。
〔51〕前記GABA受容体活性化リガンドが、ホモタウリン、バマルゾール、ガバミド、GABOB、ガボキサドール、イボテン酸、イソグバシン、トランスアミノシクロペンタン-3-カルボン酸、トランス-アミノ-4-クロトン酸、THIP、イミダゾール酢酸、β-グアニジノ-プロピオン酸、ホモヒポタウリン、3-アミノプロパンスルホン酸、コウジアミン、シス-3-[(アミノイミノメチル)チオ]プロペン酸、ホモ-β-プロリン、イソニペコチン酸、ムシモール、フェニブト、ピカミロン、プロガビド、キスカラミン、プロガビド酸(SL75102)、チオムシモール、プレガバリン、ビガバトリン、6-アミノニコチン酸、XP13512、及び((±)-1-([(α-イソブタノイルオキシエトキシ)カルボニル]アミノメチル)-1-シクロヘキサン酢酸)からなる群から選択される因子を含む、前記〔19〕から〔49〕のいずれか一項に記載の方法。
〔52〕前記GABA受容体活性化リガンドがアルコールではない、前記〔19〕から〔51〕のいずれか一項に記載の方法。
〔53〕前記GABA受容体活性化リガンドがカヴァラクトンではない、前記〔19〕から〔52〕のいずれか一項に記載の方法。
〔54〕前記GABA受容体活性化リガンドがスカルキャップ又はスカルキャップ成分ではない、前記〔19〕から〔53〕のいずれか一項に記載の方法。
〔55〕前記GABA受容体活性化リガンドがカノコソウ又はカノコソウ成分ではない、前記〔19〕から〔54〕のいずれか一項に記載の方法。
〔56〕前記GABA受容体活性化リガンドが揮発性ガスではない、前記〔19〕から〔55〕のいずれか一項に記載の方法。
〔57〕前記方法が炎症性疾患を治療するために使用される、前記〔1〕から〔56〕のいずれか一項に記載の方法。
〔58〕前記方法が、メタボリックシンドローム、並びにI型糖尿病(T1D)、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、及び多発性硬化症などの自己免疫疾患からなる群から選択される炎症性疾患を治療するために使用される、前記〔57〕に記載の方法。
〔59〕前記方法が、移植片を受け取った対象における移植片拒絶を予防し又は緩和させるために使用される、前記〔1〕から〔56〕のいずれか一項に記載の方法。
〔60〕前記方法がアレルギー反応を減少させるために使用される、前記〔1〕から〔56〕のいずれか一項に記載の方法。
〔61〕前記方法が、花粉症、外因性喘息、虫刺され及び刺痛アレルギー、食物及び薬物アレルギー、アレルギー性鼻炎、気管支喘息、アナフィラキシー症候群、蕁麻疹、血管浮腫、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、結節性紅斑、多型性紅斑、スティーブンス-ジョンソン症候群、皮膚壊死性細静脈炎、並びに水疱性皮膚症からなる群から選択される状態におけるアレルギー反応を減少させるために使用される、前記〔60〕に記載の方法。
〔62〕前記哺乳動物が、神経障害性疼痛、脊髄損傷、不安障害、パニック障害、うつ病に起因する不安、発作障害(欠神発作若しくはレノックス・ガストー症候群を包含する)、及び月経随伴性てんかんからなる群から選択される1以上の状態の治療を受けていない、前記〔1〕から〔61〕のいずれか一項に記載の方法。
〔63〕前記PAMが医療処置若しくは手術の前に眠気若しくは麻酔を生じさせるために、又は鎮静作用若しくは麻酔を維持させるために投与されない、前記〔1〕から〔62〕のいずれか一項に記載の方法。
〔64〕BBB-透過性である前記PAMが、CNS適応症に使用される用量よりも少ない用量で投与される、前記〔1〕から〔63〕のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2
図3