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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】湿式不織布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 13/50 20060101AFI20240919BHJP
   D04H 1/4242 20120101ALI20240919BHJP
   D21H 15/02 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
D21H13/50
D04H1/4242
D21H15/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020036885
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021139064
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹村 一哉
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-117030(JP,A)
【文献】特開2004-214072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H11/00-27/42
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維長が40cm以上の炭素繊維と繊維状活性炭とを準備する準備工程、
前記炭素繊維と前記繊維状活性炭とを用いてスラリーを調製するスラリー調製工程、
及び、前記調製したスラリーを用いて湿式抄紙する湿式抄紙工程、
を含む、湿式不織布の製造方法であって、
前記繊維状活性炭は、不融化された繊維材料を賦活することにより製造されたものであり、
前記炭素繊維は前記繊維状活性炭以外のものである、湿式不織布の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の湿式不織布の製造方法であって、前記スラリー調製工程におけるスラリー中の前記繊維状活性炭と前記炭素繊維の質量比(繊維状活性炭の質量/炭素繊維の質量)が0.8~1.2(ただし、0.8を除く。)であり、
前記湿式不織布の下記方法で求められる体積抵抗率が、10Ω・cm以下である、湿式不織布の製造方法。
<湿式不織布の体積抵抗率の測定・算出方法>
抵抗値の測定機として株式会社マザーツール社製のカード型マルチメータMT-4050を用い、湿式不織布を縦5mm、横150mmの長方形にカットしたものを測定サンプルとし、当該測定サンプルの縦方向の中央かつ横方向(長手方向)の一方の端から5mmの部分と、縦方向の中央かつ横方向(長手方向)の他方の端から5mmの部分とに、それぞれ上記測定機付属のテストリードを接続し、モードつまみを抵抗測定(Ω)に合わせ、そのときの抵抗値(kΩ)を測定する。そして、得られた抵抗値を用い、下記式(1)により体積抵抗率(Ω・cm)を算出する。
体積抵抗率(Ω・cm)
=抵抗値(kΩ)×50×湿式不織布厚さ(mm)/15 ・・・式(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式不織布の製造方法に関し、特に湿式不織布の導電性能の向上に寄与し得る、湿式不織布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、入出力、演算、通信機能を有する電子機器を身体に極近接、ないしは密着した状態で使用することを意図したウェアラブルデバイスが開発されている。ウェアラブルデバイスには腕時計、メガネ、イヤホンのようなアクセサリ型の外形を有するウェアラブルデバイス、衣服に電子機能を組み込んだテキスタイル集積型のウェアラブルデバイス等が知られている。ウェアラブルデバイスには、電力供給や信号伝送等に用いられる導電性材料が必要であり、現在様々な開発がなされている。
【0003】
ウェアラブルデバイス用布帛として、伸縮性を有するストレッチャブル導電層と、前記ストレッチャブル導電層の一表面に形成されたホットメルト接着剤層とを含み、前記ストレッチャブル導電層は、エラストマーと、前記エラストマー中に充填されている導電性フィラーとを含む導電性組成物から構成されているストレッチャブル導電性フィルムが、前記ホットメルト接着剤層を介して生地に貼り付けられてなる、ウェアラブルデバイス用布帛が知られている(例えば、特許文献1参照。)。該ウェアラブルデバイス用布帛によれば、上記導電性フィルムがテキスタイル生地に容易に貼り付けることができ、かつ導電性および伸縮性を有するとされている。
【0004】
また、ウェアラブルデバイス用布帛として、編組織においてループが繋がって進む方向をコース方向又はコースと定義する編地であって、前記ループが導電糸によって形成されていると共に、弾性糸が前記コース方向で引き締め力を生じる配置で設けられており、編地の非伸長時には前記弾性糸による引き締め力によりコース方向で隣接する前記導電糸のループ同士が接触状態を保持する一方で編地のコース方向への伸長時には前記導電糸のループ同士が前記弾性糸による引き締め力に抗して離反可能となっている導電性伸縮編地が知られている(例えば、特許文献2参照。)。該導電性伸縮編地によれば、伸縮性及び柔軟性が豊富で伸長を繰り返した際の復元性をも備えた編地でありながら、伸長時と非伸長時とで電気抵抗が変化する特性を備え、更には通気性や透湿性、吸水性などを得ることも可能であることから、ウェアラブル素材として好適に使用できるとされている。
【0005】
上記特許文献1及び2の従来技術に対し、本願出願人は、繊維状炭素材料を含む、ウェアラブルデバイス用布帛の発明について、出願した(特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-1011124号公報
【文献】国際公開第2017/010236号
【文献】特願2019-115551
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者が検討したところ、特許文献1に開示されているウェアラブルデバイス用布帛は、導電性フィラーとして銀等の金属が用いられているところ、フィルムのエラストマー中に充填されている導電性フィラーが空気中に露出するため、導電性フィラーが汗等により腐食する虞があるという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に開示されている導電性伸縮編地は、導電糸がメッキ線等の金属成分が糸表面に露出したものであるところ、やはり露出した金属成分が汗等により腐食する虞があるという問題がある。
【0009】
上記特許文献1及び2の問題を解決する手段として、本発明者は、上記特許文献3において、繊維状炭素材料を含むウェアラブルデバイス用布帛とし、これにより、導電性能を示しつつ、汗等に対する耐食性に優れるものとできることを提案している。ところで、上記特許文献3では、さらに、繊維状炭素材料として、炭素繊維を用いることも提案しているところ、本発明者は、炭素繊維を用いて湿式不織布とする場合に、より一層導電性能を向上させる手法について検討した。
【0010】
そこで、本発明は、繊維状炭素材料として炭素繊維を含む湿式不織布を得る場合に、湿式不織布の導電性能の向上に寄与し得る、湿式不織布の製造方法の提供を主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく本発明者が検討したところ、炭素繊維として平均繊維長が10cm以上のものを用いて湿式抄紙法により湿式不織布を製造することにより、平均繊維長が10cm未満、例えば100mm以下の炭素繊維を用いた場合に比して得られる湿式不織布の導電性能を向上し得ることを見出した。
【0012】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.平均繊維長が10cm以上の炭素繊維を準備する準備工程、前記炭素繊維を用いてスラリーを調製するスラリー調製工程、及び、前記調製したスラリーを用いて湿式抄紙する湿式抄紙工程、を含む、湿式不織布の製造方法。
項2.平均繊維長が10cm以上の炭素繊維と繊維状活性炭とを準備する準備工程、前記炭素繊維と前記繊維状活性炭とを用いてスラリーを調製するスラリー調製工程、及び、前記調製したスラリーを用いて湿式抄紙する湿式抄紙工程、を含む、湿式不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の湿式不織布の製造方法によれば、平均繊維長が10cm以上の炭素繊維を準備する準備工程、前記炭素繊維を用いてスラリーを調製するスラリー調製工程、及び、前記調製したスラリーを用いて湿式抄紙する湿式抄紙工程、を含む、ことから、繊維状炭素材料として炭素繊維を含む湿式不織布を得る場合に、湿式不織布の導電性能の向上に寄与することができる。従って、得られる湿式不織布は、例えば、ウェアラブルデバイス用として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の湿式不織布の製造方法は、平均繊維長が10cm以上の炭素繊維を準備する準備工程、前記炭素繊維を用いてスラリーを調製するスラリー調製工程、及び、前記調製したスラリーを用いて湿式抄紙する湿式抄紙工程、を含む。以下、各工程について詳細に説明する。
【0015】
<準備工程>
1.炭素繊維
本発明の湿式不織布の製造方法において、準備工程は、平均繊維長が10cm以上の炭素繊維を準備する工程である。これにより、平均繊維長が10cm未満、例えば100mm以下等の炭素繊維を用いた場合に比して、得られる湿式不織布の導電性能を向上し得る。上記平均繊維長は、30cm以上が好ましく、40cm以上がより好ましい。上記平均繊維長の上限値は特に制限されないが、例えば、1000cm以下が挙げられ、100cm以下が好ましく挙げられる。なお、本発明において、平均繊維長は、任意に10点選んだ炭素繊維を、それぞれ拡大鏡及び画像解析装置を用いて1000倍に拡大して観察し、それぞれの繊維長を測定し、これら10点の繊維長の平均値を平均繊維長とする。
【0016】
平均繊維長が10cm以上の炭素繊維を用いることで、平均繊維長が10cm未満、例えば100mm以下の炭素繊維を用いた場合に比して、得られる湿式不織布の導電性能を向上し得る作用機序としては必ずしも定かではないが、次のように考えることができる。すなわち、炭素繊維の平均繊維長が長くなると得られる湿式不織布はより嵩高なものとなりやすく、厚さが増大する傾向にある。そして、湿式不織布平面方向の導電をみたときに、厚さが増大する分、湿式不織布の断面積が大きくなり、導電体としての抵抗が小さくなることが一因として考えられる。また、本発明者の検討によれば、平均繊維長が10cm以上の炭素繊維とすることにより、平均繊維長が10cm未満、例えば100mm以下の炭素繊維を用いた場合に比して、得られる湿式不織布は体積抵抗率も小さくなることが判明した。このことは、後述する、比較的繊維同士が密になりやすい湿式抄紙法を用いることにより、平均繊維長を長くしても炭素繊維同士の接点を多い状態に維持することができ、上記厚さが増大することも相俟って、体積抵抗率も低くなると考えられる。
【0017】
上記炭素繊維の平均繊維径は、特に制限されないが、例えば、5~30μmが挙げられ、5~20μmが好ましく挙げられる。本発明において、平均繊維径は、JIS K 1477:2007 7.3.1に準じ、反射顕微鏡によって測定及び算出をする。
【0018】
本発明の湿式不織布の製造方法において、炭素繊維は、異方性炭素繊維、等方性炭素繊維のいずれでも良い。得られる湿式不織布をウェアラブルデバイス用布帛として用いる際、湿式不織布の厚さ方向における分極性を低減させる観点からは、等方性炭素繊維を用いることが好ましい。等方性炭素繊維としては、例えば、等方性ピッチを原料として得ることができる。ここで、等方性とは、光学的に等方性であって、分子や分子の集団が無秩序に配向していることを示す。
【0019】
2.繊維状活性炭
本発明の湿式不織布の製造方法は、準備工程において、前述した炭素繊維に加え、繊維状活性炭を準備することができる。繊維状炭素材料として繊維状活性炭を組み合わせることにより、導電性能を優れたものとしつつ、ウェアラブルデバイスを身に付けるユーザーから発生する臭気成分等の吸着性能を向上させやすくなる。
【0020】
繊維状活性炭の種類としては、特に制限されないが、例えば、ポリアクリロニトリル系、レーヨン系、フェノール樹脂系、石炭ピッチ系、石油ピッチ系等の繊維を不融化し、炭化処理した後、水蒸気、二酸化炭素を含有する雰囲気中、所定温度で所定時間保持することによって賦活することにより製造される任意の繊維状活性炭を採用することができる。本発明の製造方法により得られる湿式不織布の導電性能をより一層低いものとする観点から、これらの中でも、石炭ピッチ系、石油ピッチ系、ポリアクリロニトリル系の繊維状活性炭が好ましい。繊維状活性炭は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本発明において用いる繊維状炭素材料の比表面積としては、特に制限されない。中でも、得られる湿式不織布の導電性能をさらに高め得る観点から、繊維状炭素材料の比表面積は、500~4000m/g、好ましくは500~2000m/g、より好ましくは500~1000m/gが挙げられる。なお、本発明において、比表面積は、窒素を被吸着物質として用いたBET法(1点法)により測定される値である。
【0022】
本発明において、繊維状活性炭の平均繊維径としては、特に制限されないが、例えば、5~30μmが挙げられ、導電性能と、炭塵に起因するざらつきの抑制と、をより両立させる観点から、10~20μmが好ましく挙げられる。なお、繊維状活性炭の平均繊維径は、JIS K 1477:2007 7.3.1に準じ、反射顕微鏡によって測定及び算出をする。
【0023】
また、本発明において、繊維状活性炭の平均繊維長としては、特に制限されない。例えば、平均繊維長が1cm以上のものを使用することができ、1~100cmが好ましく挙げられる。繊維状活性炭の平均繊維長は、任意に10点選んだ繊維状活性炭を、それぞれ拡大鏡及び画像解析装置を用いて1000倍に拡大して観察し、それぞれの繊維長を測定し、これら10点の繊維長の平均値を平均繊維長とする。
【0024】
3.その他の材料
本発明の湿式不織布の製造方法の準備工程において、炭素繊維、繊維状活性炭その他の繊維状炭素材料以外のその他の材料、例えば、湿式不織布のバインダー成分や骨材として寄与し得る材料を準備することができる。当該その他の材料として、パルプが挙げられる。パルプとしては、木質パルプ等のセルロース系パルプ、アクリル系パルプ等が挙げられる。また、当該その他の材料として、融点が200℃以下の合成樹脂材料、及び/又は融点が200℃以上の合成樹脂材料等を準備することができる。当該繊維状炭素材料以外の材料としては、パルプ、ポリエステル系繊維、及びポリオレフィン系繊維の組合せとすることが好ましい。
【0025】
<スラリー調製工程>
本発明の湿式不織布の製造方法は、準備工程で準備した炭素繊維、必要に応じてさらに準備した繊維状活性炭や前述したその他の材料を用いてスラリーを調製するスラリー調製工程を含む。
【0026】
スラリー調製工程は、具体的には、パルパーを用いて、上記準備した原料を離解し、混合する。
【0027】
スラリーにおいて、不揮発成分中における炭素繊維の含有量としては、5~95質量%が挙げられる。また、繊維状活性炭を加える場合は、上記炭素繊維の含有量は5~30質量%が好ましく、18~26質量%がより好ましい。また、繊維状活性炭を加える場合、不揮発成分中における繊維状活性炭の含有量としては、10~40質量%が好ましく、15~23質量%がより好ましい。また、繊維状活性炭を加える場合、繊維状活性炭と炭素繊維の質量比(繊維状活性炭の質量/炭素繊維の質量)としては、0.5~4が好ましく、0.8~1.2がより好ましい。また、炭素繊維、繊維状活性炭その他の繊維状炭素材料以外の材料の含有量としては、45~70質量%が好ましく、47~70質量%がより好ましく、49~70質量%がさらに好ましい。繊維状炭素材料以外の材料の含有量をこのような範囲とすることにより、湿式不織布は地合がより優れたものとなり、ウェアラブルデバイスとして用いるときのユーザーの装着感がより優れたものとなる。
【0028】
<湿式抄紙工程>
本発明の湿式不織布の製造方法は、前記調製したスラリーを用いて湿式抄紙する湿式抄紙工程を含む。湿式抄紙工程は、常法によりおこなえばよい。例えば、湿式抄紙工程は、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びカレンダーパートを含むものとすることができ、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びカレンダーパートをこの順で含むものとすることがより好ましい。また、必要に応じて、ワイヤーパートの前に、本発明の効果を損なわない範囲で、リファイナーやビーターによる解繊をおこなうことができる。湿式抄紙工程において、得られる湿式不織布の秤量を、30~80g/mに調整することが好ましく、40~70g/mに調整することがより好ましい。また、湿式抄紙工程において、得られる湿式不織布の厚さを、0.1~0.5mmに調整することが好ましく、0.2~0.35mmに調整することがより好ましい。
【0029】
<得られる湿式不織布の導電性能>
本発明の製造方法により得られる湿式不織布は、特定の炭素繊維を含むことから、導電性能を示す。本発明の製造方法により得られる湿式不織布が有する導電性能の好適な例として、以下の方法で求められる体積抵抗率が、好ましくは20Ω・cm以下、より好ましくは10Ω・cm以下が挙げられる。
【0030】
<湿式不織布の体積抵抗率の測定・算出方法>
抵抗値の測定機として株式会社マザーツール社製のカード型マルチメータMT-4050を用い、湿式不織布を縦5mm、横150mmの長方形にカットしたものを測定サンプルとし、当該測定サンプルの縦方向の中央かつ横方向(長手方向)の一方の端から5mmの部分と、縦方向の中央かつ横方向(長手方向)の他方の端から5mmの部分とに、それぞれ上記測定機付属のテストリードを接続し、モードつまみを抵抗測定(Ω)に合わせ、そのときの抵抗値(kΩ)を測定する。そして、得られた抵抗値を用い、下記式(1)により体積抵抗率(Ω・cm)を算出する。
体積抵抗率(Ω・cm)
=抵抗値(kΩ)×50×湿式不織布厚さ(mm)/15 ・・・式(1)
【0031】
<本発明の製造方法で得られる湿式不織布の用途>
本発明の製造方法で得られる湿式不織布は、特定の炭素繊維を含むことから、導電性能を示す。従って、上記湿式不織布は、ウェアラブルデバイス用として好適である。本発明の製造方法で得られる湿式不織布が適用されるウェアラブルデバイスとしては特に制限されないが、例えば、本発明の製造方法で得られる湿式不織布が、ユーザーの皮膚に接触又は密着するように配置されている、ウェアラブルデバイスが挙げられる。具体的には、本発明の製造方法で得られる湿式不織布がユーザーの生体情報センサーとして用いられるウェアラブルデバイス、上記湿式不織布が衣服圧や足裏の圧力等を測定するセンサーとして用いられるウェアラブルデバイスが挙げられる。また、本発明の製造方法で得られる湿式不織布は、炭素材料が繊維状であるため、屈曲性にも優れたものとすることができる。従って、例えば、本発明の製造方法で得られる湿式不織布が、屈曲性を有するウェアラブルデバイスの配線部として用いられる、ウェアラブルデバイスとすることもできる。さらに、ウェアラブルデバイスとして、本発明の製造方法で得られる湿式不織布がキャパシタ電極として用いられるものを除くものとすることもできる。
【実施例
【0032】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0033】
(実施例1)
<準備工程>
繊維状炭素材料として、平均繊維長が50cmの炭素繊維(大阪ガスケミカル株式会社製、品名:ドナカーボS-210、平均繊維径13μmの等方性ピッチ炭素繊維)、及び繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-7、比表面積850m/g、平均繊維径17μm、平均繊維長50cm)、繊維状炭素材料以外の材料として、木質パルプ、ポリエチレンテレフタレート繊維、及びポリオレフィン系繊維を準備した。
【0034】
<スラリー調製工程>
上記準備した各材料を、不揮発成分の質量比が、炭素繊維/繊維状活性炭/(木質パルプ+ポリエチレンテレフタレート繊維+ポリオレフィン系繊維)=10/30/60となるようにして、パルパーを用いて離解、混合し、均一に分散したスラリーを調製した。
【0035】
<湿式抄紙工程>
調製したスラリーをリファイナーに通してからワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、湿式抄紙法により湿式不織布を製造した。
【0036】
(比較例1)
炭素繊維として、平均繊維長が5.5mmの炭素繊維(大阪ガスケミカル株式会社製、品名:ドナカーボS-232、平均繊維径13μmの等方性ピッチ炭素繊維)としたほかは、実施例1と同様の条件にておこない、比較例1の湿式不織布を製造した。
【0037】
(実施例2)
<準備工程>
繊維状炭素材料として、平均繊維長が50cmの炭素繊維(大阪ガスケミカル株式会社製、品名:ドナカーボS-210、平均繊維径13μmの等方性ピッチ炭素繊維)、及び繊維状活性炭(ユニチカ株式会社製、品名;アドールA-7、比表面積850m/g、平均繊維径17μm、平均繊維長50cm)、繊維状炭素材料以外の材料として、木質パルプ、ポリエチレンテレフタレート繊維、及びポリオレフィン系繊維を準備した。
【0038】
<スラリー調製工程>
上記準備した各材料を、不揮発成分の質量比が、炭素繊維/繊維状活性炭/(木質パルプ+ポリエチレンテレフタレート繊維+ポリオレフィン系繊維)=20/20/60となるようにして、パルパーを用いて離解、混合し、均一に分散したスラリーを調製した。
【0039】
<湿式抄紙工程>
調製したスラリーをリファイナーに通してからワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、湿式抄紙法により湿式不織布を製造した。
【0040】
(比較例2)
炭素繊維として、平均繊維長が5.5mmの炭素繊維(大阪ガスケミカル株式会社製、品名:ドナカーボS-232、平均繊維径13μmの等方性ピッチ炭素繊維)としたほかは、実施例2と同様の条件にておこない、比較例2の湿式不織布を製造した。
【0041】
評価方法
各実施例及び比較例につき、以下の方法により評価をおこなった。
【0042】
<湿式不織布の1mあたりの質量>
JIS L 1913:2010 6.2に準じて、湿式不織布の単位面積当たりの質量(g/m)を秤量した。
【0043】
<湿式不織布の厚さ>
湿式不織布を10cm×15cmmの長方形にカットしたものを測定サンプルとし、該サンプルの四隅において厚み測定器(株式会社ミツトヨ製ダイヤルシックネスゲージ)を用いて、該不織布の厚さを測定し、得られた四隅の厚さの測定値4点の平均値をシートの厚さ(mm)とした。
【0044】
<湿式不織布の抵抗値及び体積抵抗率>
抵抗値の測定機として株式会社マザーツール社製のカード型マルチメータMT-4050を用い、湿式不織布を縦5mm、横150mmの長方形にカットしたものを測定サンプルとし、当該測定サンプルの縦方向の中央かつ横方向(長手方向)の一方の端から5mmの部分と、縦方向の中央かつ横方向(長手方向)の他方の端から5mmの部分とに、それぞれ上記測定機付属のテストリードを接続し、モードつまみを抵抗測定(Ω)に合わせ、抵抗値(kΩ)を測定した。そして、得られた抵抗値を用い、下記式により体積抵抗率(Ω・cm)を算出した。
体積抵抗率(Ω・cm)
=抵抗値(kΩ)×50×湿式不織布厚さ(mm)/15
【0045】
各実施例及び比較例の物性等を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、をそれぞれ比較すると、実施例1及び2は、平均繊維長が10cm以上の炭素繊維を準備する準備工程、前記炭素繊維を用いてスラリーを調製するスラリー調製工程、及び、前記調製したスラリーを用いて湿式抄紙する湿式抄紙工程、を含む、湿式不織布の製造方法により製造されたことから、抵抗値及び体積抵抗率がともに低くなり、繊維状炭素材料として炭素繊維を含む湿式不織布を得る場合に、湿式不織布の導電性能の向上に寄与することが明らかとなった。