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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】レギュレータ
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/10 20060101AFI20240919BHJP
   F16K 17/30 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
G05D16/10 J
F16K17/30 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020175662
(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公開番号】P2022066999
(43)【公開日】2022-05-02
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000153122
【氏名又は名称】株式会社ニッキ
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末永 直也
(72)【発明者】
【氏名】會澤 修太郎
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-067216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/00 -16/20
F16K 17/18 -17/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部に貫通して形成した通路における一方の開口端を高圧流体の導入口、他方の開口端を減圧流体の取出口とし、
記導入口の内方に弁座シートを内側に有するとともに前記通路の軸線方向への貫通孔を形成した弁座シート保持部材からなる弁座を配置し、
前記弁座よりも下流側の前記通路に調圧室を形成し、
記弁座シートに密接可能な先端面を有するとともに両端を開放した筒状の連通通路を有する調圧弁体と前記調圧弁体の前記取出口側の外周に包囲して形成されたピストン部とからなるピストン部調圧弁が前記通路の軸線方向に摺動可能に配置され、且つ前記ピストン部が、前記ピストン部の周囲において前記調圧室と同軸上に並行して設けられた大気室内に配置された所定の荷重を有する調圧ばねにより記導入口から前記高圧流体が導入される方向に付勢されており、
前記導入口から導入される前記高圧流体が、前記調圧弁体に形成された前記連通通路を通過して前記調圧室へ導入されて、前記ピストン部に作用する流体の圧力による荷重と、前記ピストン部に作用する前記調圧ばねによる荷重が釣り合うことにより前記弁座シートと前記調圧弁体の開口面積を変化させて前記調圧室の流体圧力を制御することで所望の圧力に調整した流体を前記取出口から取り出すことを可能にし
前記ピストン部調圧弁を形成する前記調圧弁体と前記ピストン部が別体に形成されており、
前記導入口から前記通路に挿入可能な前記調圧弁体と前記取出口から前記通路に挿入可能な前記ピストン部とが、互いに軸線方向位置で嵌合して後、圧入または溶接の少なくとも一方の手段にて固定され
前記調圧弁体の外周部における調圧範囲より外れた上流位置に前記ピストン部への嵌合部より突出させた段差を設けることで、前記調圧弁体と前記ピストン部との固定が解除された場合に、前記調圧室に導入されて前記ピストン部に作用する流体の圧力による荷重により、前記ピストン部が前記調圧弁体の前記段差を押し、前記調圧弁体を閉じることを特徴とするレギュレータ。
【請求項2】
前記段差が記嵌合部よりも大径部とすることにより形成されていることを特徴とする請求項1記載のレギュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧の流体を所望の圧力に減圧する際に用いられるレギュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
調圧室内の圧力変動によりピストン部を介して調圧調圧弁体を開閉し、高圧流体の流量を制御するレギュレータは例えば実開昭52-92436号公報に提示されているように旧くから知られており、例えば燃料タンクに貯留したCNGなどの高圧燃料をエンジンに供給する際などの調圧器などに利用されている。
【0003】
図5は前記従来のレギュレータの一例を示すものであり、本体部1に貫通して形成した筒状の通路2における一方の開口端を高圧流体の導入口21、他方の開口端を減圧流体の取出口22としており、前記導入口21および取出口22には高圧流体を気密に導入するための入口カバー23および調圧した調圧流体を気密に取り出すための出口カバー24がそれぞれ配置されている。
【0004】
また、内側に弁座シート31が設置されるとともに前記通路2の軸線方向への貫通孔32を形成した隔壁であるシート保持部材33を有する弁座3が前記通路2における前記導入口21の内方に配置されており、前記通路2の前記弁座シート31の下流側に調圧室4が形成されている。
【0005】
更に、前記通路2と前記取出口22との間に前記弁座3の弁座シート31に密接可能な先端面51を有するとともに両端を開放した筒状の連通通路52を有する調圧弁体5と前記調圧弁体5の前記通路2における取出口22側の外周に包囲して形成された前記調圧弁体5よりも大径のピストン部6とからなるピストン部調圧弁7が前記通路2の軸線方向に摺動可能に配置されている。
【0006】
更にまた、前記ピストン部6にはその周囲において前記調圧室4と同軸上に並行して設けられた大気室61内に配置された所定の荷重を有する調圧ばね8により前記通路2の導入口21方向に付勢されている構成であり、前記導入口21から導入される高圧流体が前記弁座3の弁座シート保持部材33に形成した貫通孔32を介して前記弁座シート31に向かい合うように設けられた連通通路52が形成された調圧弁体5を通過して調圧室4へ導入され前記調圧弁体5と接合されたピストン部6に作用する流体の圧力による荷重と調圧室4とは逆側にピストン部6に作用する調圧ばね8による荷重が釣り合うことにより前記弁座シート31と調圧弁体5の開口面積を変化させて前記調圧室4の流体圧力を制御することで所望の圧力に調整した流体を取出口22から取り出すものである。
【0007】
ところで、前記図5に示した従来のレギュレータの減圧構造においては、組み立て時に前記出口カバー24を取り付ける前の取出口22から、調圧ばね8を挿入し、その後ピストン部調圧弁7を挿入することになり調圧ばね8の荷重が作用する弁座シート保持部材33、弁座シート31、ピストン部調圧弁7、本体部1の各寸法公差や調圧ばね8のセット点の荷重バラツキにより、製品間の個体差が大きかった。
【0008】
また、流量遮断時には弁座シート31の平面に対し調圧弁体5の円筒先端を押付けるため、弁座シート31の接触面の平面度やピストン部調圧弁7の軸に対する弁座シート31の調圧弁体5への接触面の直角度、調圧弁体5と弁座シート31の軸ずれによって、局部的な応力発生による弁座シート31の破損やリーク不良等による機能損失に発展する問題があった。
【0009】
そこで、本出願人は、特願2017-193078号(特開2019-67216号公報)において、前記問題点を解決して、調圧ばね8の荷重が弁座シート保持部材33、弁座シート31、ピストン部調圧弁7、本体部1の各寸法公差や調圧ばね8のセット点の荷重バラツキによる製品間の個体差をなくすとともに、弁座シート31の破損やリーク不良等による機能損失のないレギュレータを提案した。
【0010】
この公報に提示された従来のレギュレータは、図6および図7に示すように、ピストン部調圧弁7を形成する弁座シート31に密接する円筒状の調圧弁体5とその外周に包囲して形成される調圧ばね8を作用させる円筒体からなるピストン部6とが別体に形成されており、前記別体に形成されているピストン部調圧弁7を形成する調圧弁体5とその外周に包囲して形成されるピストン部6が密接状態で圧接可能な口径に差し込み可能に形成されており、組み立て時にピストン部6と分離した前記調圧弁体5を導入口21から通路2に挿入し、ピストン部6を取出口22から通路2に挿入し、通路2内で互いに軸線方向に所定位置に嵌挿することで両者の仮止めを可能とし、組立時に導入口21から通路2に挿入した調圧弁体5と取出口22から通路2に挿入したピストン部6を互いに所望の軸線方向位置で嵌合し、調圧ばね8の荷重が指定荷重になった位置で調圧弁体5とピストン部6とを例えば溶接または圧入などの手段により固着させてピストン部調圧弁7を構成するものである。
【0011】
従って、関連部品である弁座シート保持部材33,弁座シート31、ピストン部6、調圧弁体5、本体部1の各寸法や調圧ばね8の荷重バラツキ等があったとしても一定荷重にてセットが可能となり、製品間の個体差を極力小さくすることが可能であり、特に、本実施の形態では、組立時に調圧ばね8の荷重を測定しながら指定荷重位置で調圧弁体5とピストン部6とが固定可能であり、通常は溶接などで固定するが、調圧弁体5とピストン部6とが互いに圧接して嵌合可能な場合において、使用する流体の圧力がさして高圧でなければ圧入状態で嵌合させた仮止め状態で強度と気密性を確保でき、溶接処理を廃止することでコスト低減も図れるなどの利点を有している。
【0012】
しかしながら、前記従来のレギュレータはピストン部調圧弁7を互いに別部品である調圧弁体5とピストン部6とで構成し、これを互いに所定の調節位置で圧入、溶着により固着して一体に形成しているため、予期せずに図7に示した接合部の圧入,溶接による固着部9が破損した場合に、図8に示すように、調圧弁体5を閉方向に付勢しているピストン部6に架設した調圧ばね8が調圧弁体5を閉じる方向に力を付加することができず、調圧弁体が常時開状態となり、導入口21から導入される高圧流体が調圧されずに取出口22からレギュレータの下流に流れ、下流部品の破損,気密漏れにつながるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】実開昭52-92436号公報
【文献】特開2019-67216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、前記従来のピストン部と調圧弁を互いに別部品である調圧弁体とピストン部で構成し、これを互いに所定の調節位置で圧入、溶着により固着して一体に形成しているレギュレータにおいて、予期せず固着部が破損したとしても、調圧弁体が閉成して調圧室の異常圧力上昇を防止し安全性を確保して、取出口から高圧流体が下流に流れ、下流部品の破損,気密漏れを防止し、安全性を確保するレギュレータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するためになされた本発明であるレギュレータは、本体部に貫通して形成した筒状の通路における一方の開口端を高圧流体の導入口、他方の開口端を減圧流体の取出口とし、前記通路における前記導入口の内方に弁座シートを内側に有するとともに前記通路の軸線方向への貫通孔を形成した弁座シート保持部材からなる弁座を介して調圧室を配置し、前記通路の前記調圧室と前記取出口との間に前記弁座シートに密接可能な先端面を有するとともに両端を開放した筒状の連通通路を有する調圧弁体と前記調圧弁体の前記通路における取出口側の外周に包囲して形成されたピストン部とからなるピストン部調圧弁が前記通路の軸線方向に摺動可能に且つ前記ピストン部の周囲において前記調圧室と同軸上に並行して設けられた大気室内に配置された所定の荷重を有する調圧ばねにより前記通路における導入口方向に付勢されており、前記導入口から導入される高圧流体が前記調圧弁体の弁座シート保持部材に形成した貫通孔を介して弁座シートと前記弁座シートに向かい合うように設けられた調圧室へ導入されて連通通路が形成された調圧弁体を通過して前記調圧弁体と接合されたピストン部に作用する流体の圧力による荷重と調圧室とは逆側にピストン部に作用する調圧ばねによる荷重が釣り合うことにより前記弁座シートと調圧弁体の開口面積を変化させて前記調圧室の流体圧力を制御することで所望の圧力に調整した流体を取出口から取り出すとともに、前記ピストン部調圧弁を形成する前記弁座シートに密接する調圧弁体とその外周に包囲して形成される前記調圧ばねを作用させるピストン部が別体に形成されており、前記導入口から通路に挿入した前記調圧弁体と前記取出口から通路に挿入したピストン部を互いに所望の軸線方向位置で嵌合して後、圧入または溶接の少なくとも一方の手段にて固定したレギュレータであって、前記調圧弁体の外周部の調圧範囲より外れた上流位置に前記ピストン部への嵌合部より突出させた段差を設けることで前記導入口から通路に挿入した前記調圧弁体と前記取出口から通路に挿入したピストン部との固定が解除された場合に、調圧室がある一定の圧力に達したとき、前記調圧ばねの付勢力によりピストン部が調圧弁体の段差を押し、調圧弁体を閉じることで調圧室の異常圧力上昇を防止し安全性を確保することができることを特徴とする。
【0016】
また、本発明において、前記段差が前記調圧弁体の外周部に一体に形成された大径部により形成されている場合には、前記段差を例えば切削加工や絞り加工などにより容易に加工することができるとともに、前記調圧弁体とピストン部との固定が解除された場合に調圧弁体がピストン部に確実に係止させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ピストン部調圧弁を互いに別部品である調圧弁体とピストン部とで構成し、これを互いに所定の調節位置で圧入、溶着により固着して一体に形成しているレギュレータにおいて、予期せずに調圧弁体とピストン部との接合部の圧入,溶接による固着部が破損した場合に、ピストン部が調圧弁体を閉じる方向に付勢して、調圧弁体が閉状態となり、導入口から導入される高圧流体が調圧されずに取出口からレギュレータの下流に流れ、下流部品の破損,気密漏れにつながるという問題を生じない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明における好ましい実施の形態の閉弁時を示す断面図。
図2図1に示した実施の形態の調圧弁体を示す拡大側面図。
図3図1に示した実施の形態の開弁時を示す断面図。
図4図1に示した実施の形態の調圧弁体とピストン部との接合部の圧入,溶接による固着部が破損した場合を示す断面図。
図5】従来例の閉弁時を示す断面図。
図6】異なる従来例の閉弁時を示す断面図。
図7図6に示した従来例の開弁時を示す断面図。
図8図6に示した従来例における調圧弁体とピストン部との接合部の圧入,溶接による固着部が破損した場合を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
図1乃至図3は、本発明における好ましい実施の形態を示すものであり、全体の構成は前記図6乃至図8に示した従来例とほぼ同様であり、それらの部分については詳細な説明を省略する。また、前記従来例と同一構成部には同一符号を付して説明する。
【0021】
そして、本実施の形態が前記図6乃至図8に示した従来例と異なる点は、前記調圧弁体5の外周部の調圧範囲(図2に示したPar)より少し外れた上流位置に前記ピストン部6への嵌合部53より突出させた段差54を設けた点である。
【0022】
このような構成を有する本実施の形態によれば、ピストン部6と調圧弁体5を互いに別部品である構成したことで、弁座シート保持部材33、弁座シート31、ピストン部6、調圧弁体5、本体部1の各寸法や調圧ばね8の荷重バラツキ等があったとしても一定荷重にてセットが可能となり、製品間の個体差を極力小さくすることが可能であり、特に、本実施の形態では、組立時に調圧ばね8の荷重を測定しながら指定荷重位置で調圧弁体5とピストン部6とが固定可能であり、通常は溶接などで固定するが、調圧弁体5とピストン部6とが互いに圧接して嵌合可能な場合において、使用する流体の圧力がさして高圧でなければ圧入状態で嵌合させた仮止め状態で強度と気密性を確保でき、溶接処理を廃止することでコスト低減も図れるなどの利点を有している。
【0023】
そして、前記調圧弁体5とピストン部6とが互いに所定の調節位置で圧入、溶着により固着して一体に形成した固着部9が予期せずに破損してピストン部6と調圧弁体5が離脱した場合に、調圧弁体5がフリーになり、前記図4に示したように、前記導入口21から導入される高圧流体が前記弁座3の弁座シート保持部材33に形成した貫通孔32を介して前記弁座3よりも下流側の通路2に設けられた調圧室4へ導入され、前記調圧室4に導入されて前記ピストン部6に作用する高圧流体がある一定の圧力に達したとき、前記調圧ばね8の付勢力に抗してピストン部6が調圧弁体5の段差54を押し、調圧弁体5先端面51が弁座シート31に着座して閉弁する。
【0024】
そのため、それ以上の調圧室4内の異常圧力上昇を防止し、高圧流体が調圧されずにレギュレータ下流に流れ、下流部品の破損,気密漏れなどをなくして安全性を確保することができる。
【0025】
尚、本実施の形態は、前記段差54が調圧弁体5の外周部に一体に形成された大径部により形成されており、前記段差54を例えば切削加工、絞り加工、圧延加工などにより容易に加工することができるとともに、調圧弁体5とピストン部6との固定が解除された場合に調圧弁体5がピストン部6に確実に係止させることができるが、段部54はこれに限らず例えば突起やリングなど(図示せず)のように調圧弁体5の外周部に突出されていればよく、また、調圧弁体5と一体に限らず別体に形成してもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0026】
1 本体部、2 通路、3 弁座、4 調圧室、5 調圧弁体、6 ピストン部、7 ピストン部調圧弁、8 調圧ばね、9 固着部、21 導入口、22 取出口、23 入力カバー、24 出口カバー、31 弁座シート、32 貫通孔、33 弁座シート保持部材、51 先端面、52 連通通路、53 嵌合部、54 段部、61 大気室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8