(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】引出し付きキャビネット
(51)【国際特許分類】
A47B 88/00 20170101AFI20240919BHJP
A47B 88/95 20170101ALI20240919BHJP
【FI】
A47B88/00
A47B88/95
(21)【出願番号】P 2022062842
(22)【出願日】2022-04-05
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390013321
【氏名又は名称】株式会社ダイドー
(74)【代理人】
【識別番号】100080746
【氏名又は名称】中谷 武嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100217881
【氏名又は名称】中谷 由美
(72)【発明者】
【氏名】山本 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】山田 和義
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第211984498(CN,U)
【文献】特開2012-019886(JP,A)
【文献】特開2016-055124(JP,A)
【文献】特開2011-250875(JP,A)
【文献】特開2008-245913(JP,A)
【文献】中国実用新案第209862906(CN,U)
【文献】独国特許出願公開第102006015685(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 88/00
A47B 88/95
A47B 88/944
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
引出し(1)の前板(10)を、上下方向中間位置の左右水平状一軸心(L
1 )廻りに、鉛直状姿勢(Sv )と前方傾倒状姿勢(Sc )との間で揺動自在として、引出し本体(2)の前端(2F)に枢着し、
引出し閉塞状態から、上記前板(10)の上端縁(10T)を人の手で前方へ引く外力(F
10)を付与した際に、上記一軸心(L
1 )廻りに上記前板(10)が揺動し、該前板(10)の下端縁後面(17)の一部が、キャビネット本体(3)の前方開口部(3A)の近傍の固定部に、当接状として蹴って、その当接蹴り上げ点が梃子の支点(P
1 )を形成すると共に、前板(10)の上記上端縁(10T)を梃子の力点(P
2 )とし、かつ、上記一軸心(L
1 )を梃子の荷重点(P
3 )として、引出し本体(2)を前方へ初動させる初動引出し力(F
2 )を、発生させる梃子機構(Z)を、具備する
ことを特徴とする引出し付きキャビネット。
【請求項2】
上記前方開口部(3A)の近傍の固定部が、キャビネット本体(3)の側板の前端面である請求項1記載の引出し付きキャビネット。
【請求項3】
引出し(1)の前板(10)を、左右水平状の一軸心(L
1 )廻りに、鉛直状姿勢(Sv )と前方傾倒状姿勢(Sc )との間で揺動自在として、引出し本体(2)の前端(2F)に枢着し、
さらに、前板(10)の下端縁後面(17)には、後方突出状の支点形成用当り部材(18)を、付設し、
前板(10)の上端縁(10T)から上記当り部材(18)までの上下間隔寸法を(H
10)とすると、上記当り部材(18)から上方へ、0.2 ・H
10以上かつ0.5 ・H
10以下の範囲に上記一軸心(L
1 )を、配設し、
さらに、キャビネット本体(3)には、上記支点形成用当り部材(18)が当接自在な受け具(8)が、固設され、
引出し閉塞状態から、上記前板(10)の上端縁(10T)を人の手で前方へ引く外力(F
10)を付与した際に、上記一軸心(L
1 )廻りに上記前板(10)が揺動し、上記支点形成用当り部材(18)が上記受け具(8)に当接状として蹴って、その当接蹴り上げ点が梃子の支点(P
1 )を形成すると共に、前板(10)の上記上端縁(10T)を梃子の力点(P
2 )とし、かつ、上記一軸心(L
1 )を梃子の荷重点(P
3 )として、引出し本体(2)を前方へ初動させる初動引出し力(F
2 )を、発生させる梃子機構(Z)を、具備する
ことを特徴とする引出し付きキャビネット。
【請求項4】
上記受け具(8)は、前方下方向を向いた受止め用の勾配面(9)を有する請求項3記載の引出し付きキャビネット。
【請求項5】
前方へ揺動した上記前板(10)を、鉛直状姿勢(Sv )に復元するための弾発力を付与する戻し用引張バネ(21)と、該前板(10)の上記復元する速度を減じるように制御するダンパ(23)を、上記前板(10)の裏面(10B)側の空間(24)内に配設した請求項1又は3記載の引出し付きキャビネット。
【請求項6】
上記前板(10)の裏面(10B)側の空間(24)内に、上方開口状の物品収納用ポケット部材(30)が配設されると共に、
該ポケット部材(30)は、引出し本体(2)に支持され、該ポケット部材(30)及び収納物品の荷重は上記前板(10)に負荷されないよう構成された請求項1又は3記載の引出し付きキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引出し付きキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチン等に設置される引出し付きキャビネットについて、引出しを閉塞位置に引き戻して保持する引き戻し装置が提案され、かつ、一般家庭にも広く普及している(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2015-526209号公報
【文献】特表2017-530821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2等で提案されている引出しの引き戻し装置は、複数の引出し前板が同一鉛直面上に並び、美感も優れ、かつ、最終閉塞位置に楽に(自動的に)引き戻される等の利点もある。
しかしながら、最終閉塞位置の状態から引出しの前板に人の手を掛けて、引き出す際、女性や高齢者にとっては、力不足のため、困難となる場面も発生していた。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題点を解決して、最終閉塞位置から、女性や身体弱者でも、容易に、かつ、スムースに、引出しを引き出すことが可能な引出し付きキャビネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、引出しの前板を、上下方向中間位置の左右水平状一軸心廻りに、鉛直状姿勢と前方傾倒状姿勢との間で揺動自在として、引出し本体の前端に枢着し;引出し閉塞状態から、上記前板の上端縁を人の手で前方へ引く外力を付与した際に、上記一軸心廻りに上記前板が揺動し、該前板の下端縁後面の一部が、キャビネット本体の前方開口部の近傍の固定部に、当接状として蹴って、その当接蹴り上げ点が梃子の支点を形成すると共に、前板の上記上端縁を梃子の力点とし、かつ、上記一軸心を梃子の荷重点として、引出し本体を前方へ初動させる初動引出し力を、発生させる梃子機構を、具備する。
また、上記前方開口部の近傍の固定部が、キャビネット本体の側板の前端面である。
【0007】
また、本発明は、引出しの前板を、左右水平状の一軸心廻りに、鉛直状姿勢と前方傾倒状姿勢との間で揺動自在として、引出し本体の前端に枢着し;さらに、前板の下端縁後面には、後方突出状の支点形成用当り部材を、付設し;前板の上端縁から上記当り部材までの上下間隔寸法をH10とすると、上記当り部材から上方へ、0.2 ・H10以上かつ0.5 ・H10以下の範囲に上記一軸心を、配設し;さらに、キャビネット本体には、上記支点形成用当り部材が当接自在な受け具が、固設され;引出し閉塞状態から、上記前板の上端縁を人の手で前方へ引く外力を付与した際に、上記一軸心廻りに上記前板が揺動し、上記支点形成用当り部材が上記受け具に当接状として蹴って、その当接蹴り上げ点が梃子の支点を形成すると共に、前板の上記上端縁を梃子の力点とし、かつ、上記一軸心を梃子の荷重点として、引出し本体を前方へ初動させる初動引出し力を、発生させる梃子機構を、具備する。
【0008】
また、上記受け具は、前方下方向を向いた受止め用の勾配面を有する。
また、前方へ揺動した上記前板を、鉛直状姿勢に復元するための弾発力を付与する戻し用引張バネと、該前板の上記復元する速度を減じるように制御するダンパを、上記前板の裏面側の空間内に配設した。
また、上記前板の裏面側の空間内に、上方開口状の物品収納用ポケット部材が配設されると共に;該ポケット部材は、引出し本体に支持され、該ポケット部材及び収納物品の荷重は上記前板に負荷されないよう構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、前板の上端縁を、人の手によって前方へ引けば、前板は一軸心廻りに揺動して、前板の下端縁後面の一部が、キャビネット本体の前方開口部の近傍の固定部に、当接状として、蹴って、引出しは、その反力で軽く前方へ初動させることができる。
また、本発明によれば、前板の上端縁を、人の手で前方へ引けば、前板は一軸心廻りに揺動して、前板の下端縁に付設された回転輪が、キャビネット本体の(固定した)受け具に、蹴って、引出しは、その反力で軽く前方へ初動させることが、できる。しかも、側面から見て、前板は一本の直線状梃子として、一軸心廻りに揺動し、前記反力は、数倍に増大して、引き戸の前方移動を開始させ得る。
引き戸の後端付近には、(前述の)引き戻し装置が一般的に設けられているため、引き戸の前方への初動が重い。このような重い初動を、楽々と行って、女性や身体弱者を助けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】引出しの閉塞位置にある状態を示す一部破断斜視図である。
【
図2】引き戸の前板を前方へ倒した状態を示す一部破断斜視図である。
【
図3】引き戸を大きく前方へ引いた状態を示す一部破断斜視図である。
【
図4】引き戸が最も引き出された状態を示す一部破断斜視図である。
【
図5】断面側面図であって、(A)は前板とその背面空間部を示す断面側面図、(B)はベクトルを付加して示す要部の拡大断面側面図である。
【
図6】前板を前方へ揺動させた状態と作用を説明した、前板とその背面空間部を示す断面側面図である。
【
図8】前板とその背面空間の要部断面側面図である。
【
図9】前板を前方へ揺動させた状態を示す要部側面図である。
【
図12】当接部材を示す一部断面側面図であって、(A)は回転輪の場合を示し、(B)は固定摺り部材の場合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示の実施形態に基づき本発明を詳説する。
図1~
図4は、引出し付きキャビネットCを例示し、引出し1を、キャビネット本体3から前方へ引出してゆく際の各状態を、斜視図にて順次示す。
【0012】
引出し1は、前板10と向こう板(先板)11と底板12と側面フレーム(側板)13,13とを有し、上方開口状の物品収納空間部14を備えている。
4,4は左右のスライドレールを示し、このスライドレール4の外筒体4Aは、キャビネット本体3の一部を構成するように固設され、内挿体4Bは、引出し1の左右側板13に固設されている。
なお、キャビネット本体3は、前面側に開口部3Aを有する。図例では、前面帯板材3Bを有し、その下端縁が上記開口部3Aの上辺を形成している。
【0013】
そして、前板10を、水平状の一軸心L
1 廻りに、揺動自在として、引出し本体2の前端2Fに枢着している。
即ち、
図1(
図4)に示した前板10の鉛直状姿勢Sv と、
図2(
図3)に示した前方傾倒状姿勢Sc との間で、揺動自在として、引出し本体2の前端2Fに、ピン20をもって、一軸心L
1 廻りに揺動自在として、枢着されている。
【0014】
図5~
図10に示したように、引出し本体2の側板13の前端に固着された上方起立板片15に、前板10の裏面に固着されるチャンネル材16を、ピン20にて、枢着している。
このように、引出し1の前板10を、左右水平状の一軸心L
1 廻りに、鉛直状姿勢Sv と前方傾倒状姿勢Sc との間で揺動自在として、引出し本体2の前端2Fに枢着している。
【0015】
そして、前板10は、その下端縁10Zの後面17に、(後述の支点を形成するための)支点形成用当り部材18が付設されている。
この支点形成用当り部材18としては、
図12(A)に示すような小さな回転輪5を取付金具6にて水平軸心廻りに回転自在に枢着し、又は、
図12(B)に示すように、低摩擦係数の材質(プラスチック又は軟質金属等)の先端丸味のある固定摺り部材7をもって、構成する。
【0016】
そして、前板10の上端縁10Tから上記当り部材18までの上下間隔寸法をH
10とすると、上記当り部材18から0.2 ・H
10以上かつ0.5 ・H
10以下の範囲に、上記一軸心L
1 (ピン20)を配設する。
即ち、
図5(A)(B)に於て、当り部材18から一軸心L
1 (ピン20)までの上下間隔寸法をH
2 とすれば、
0.2 ・H
10≦H
2 ≦0.5 ・H
10 (数式1)
とするのが良い。
さらには、
0.25・H
10≦H
2 ≦0.4 ・H
10 (数式2)
とするのが、一層、望ましい。
(このような数式1,数式2に設定した理由については、後述する。)
【0017】
次に、キャビネット本体3には、上記支点形成用当り部材18が当接する受け具8が固設されている。図例では、スライドレール4の外筒体4Aの先端に、下方前方を向いた勾配面9を有する受け具8が固設されている。スライドレール4の外筒体4Aはキャビネット本体3に固設されて、キャビネット本体3の一構成材である。
そして、
図5に示した引出し閉塞状態から、前板10の上端縁10Tを人の手で前方へ引く外力F
10を付与した際に、一軸心L
1 廻りに前板10が揺動して、
図6に示した如く、支点形成用当り部材18が、固定受け具8に当接状として蹴り上げる。
【0018】
即ち、この当接蹴り上げ点が梃子の支点P1 を構成する。
さらに、前板10の上端縁10Tは梃子の力点P2 であって、人の手によって外力F10が加えられる。
しかも、一軸心L1 (ピン20)は、引出し1を前方へ引き出すための初動引出し力F2 を生ずる梃子の荷重点P3 となっている。
【0019】
このように、
図5(A)(B)に示した如く、梃子の支点P
1 と力点P
2 と荷重点P
3 が配設されて、引出し1を前方へ初動―――
図1,
図5に示した閉塞状態から初めてスライドを開始する初動―――を行うための、
図5(B)に示した初動引出し力F
2 を発生させる梃子機構Zを、本発明は、具備している。
特に、本発明の梃子機構Zは、「第2種」の梃子機構Zと呼称されるものであって、大きな倍率―――即ち、F
2 /F
10―――をもって、初動引出し力F
2 を、発生できる。
【0020】
次に、本発明の別の実施形態について、以下説明すると、前述の実施形態に於ける支点形成用当り部材18(回転輪5)、及び、受け具8を、省略した構成とする。それ以外は前述の実施形態と同様であるので、
図1~
図11の図面を参照しつつ、説明する場合もある。
即ち、別の実施形態では、前板10の下端縁後面17の一部が、キャビネット本体3の前方開口部3Aの近傍の固定部に、当接状として、蹴り上げる。
当り部材18及び受け具8が省略されるので、弾性片を、下端縁後面17の一部に貼ったり、キャビネット本体3の固定部に貼って、傷付き防止と騒音発生を防止するのも望ましい。
【0021】
キャビネット本体3の前方開口部3Aの近傍の「固定部」としては、キャビネット本体3の左右の側板の前端面が望ましい。あるいは、キャビネット本体3の前方開口部3Aに、左右の柱部が有れば、その柱部を、「固定部」とする。また、スライドレール4の(固定した)外筒体4Aを前方へ延長させて、先端を「固定部」とすることもできる。このとき先端の「固定部」には、緩衝用の弾性栓を付設することで、傷付き防止や騒音防止を図るのが望ましい。
【0022】
次に、
図6に示すように、前方へ揺動した前板10を、
図5(A)に示した鉛直姿勢に復元(復帰)させるための弾発力を付与する戻り用引張バネ21が、設けられている。
即ち、この引張バネ21は、その上端21Aが、前板10の裏面10Bから突設された取付片22に、止着され、かつ、下端21Bが、引出し本体2の前端2Fの下方部位に、止着されている。
この引張バネ21の上下方向中心軸心は、前板10が枢着された一軸心L
1 よりも、後方位置―――即ち、
図5,
図6における右方向位置―――に在ることによって、常時、鉛直姿勢に前板10を復元させる弾発付勢力を発生する。
【0023】
さらに、引張バネ21の弾発付勢力によって、前板10が、
図6の揺動傾斜状態から、
図5の鉛直姿勢に復元する速度を減じて、操作する人の安全を確保するためのダンパ23が、付設されている。
このダンパ23は、例えば、絞り小孔(オリフィス)を有するピストンを内蔵した油圧シリンダ構造のものである。
引張バネ21及びダンパ23は、
図5(A)と
図6から判るように、前板10の裏面10B側の空間24内に、配設されている。
【0024】
次に、30は上方開口状の物品収納用ポケット部材である。このポケット部材30は、前板10の裏面10B側の空間24内に、配設される。しかも、このポケット部材30は、引出し本体2に支持される。即ち、引出し本体2の側板13の前端に固着された前記上方起立板片15にポケット部材30が支持される。しかし、前板10に支持されていない。
詳しく説明すれば、
図8に於て、引出し本体2の側板13の前端から上方へ起立状として、固着された板片15は、上辺15Aから、側面視が傾斜状のスリット溝15Sが切欠形成されている。このスリット溝15Sは下方後方に傾斜状に形成されている。
【0025】
他方、ポケット部材30は、左右側面に、横断面円形の短軸31,31が突設されて、この短軸31が上方起立板片15のスリット溝15Sに落し込み状として、差込まれる。従って、ポケット部材30は、上方起立板片15が固設された引出し本体2に保持されている。しかも、ポケット部材30の下端は、引出し本体2の前端下方部位にて、当接状に支持されている(図示省略)。
即ち、ポケット部材30、及び、それに収納された物品の全荷重は、前板10に負荷されず、前板10が
図5(A)から
図6のように前方へ傾動する際、及び、
図6から
図5(A)に逆に起立させる際に、ポケット部材30と収納物品の全荷重の影響が及ばず、軽快に、傾動と起立を行うことが、可能である。
しかも、スリット溝15Sの傾斜角度の大小の設定によって、
図6に示した如く、前板10の傾斜角度に対し、ポケット部材30の傾斜(傾倒)角度を、所望の割合に、自由に設定できる。
【0026】
ところで、
図5(A)と
図6と
図8等において、説明したところの戻し用引張バネ21、ダンパ23、取付片22、等の主たる機能部品は、(露出せずに)
図10と
図11に示したような略角筒状の包囲ケーシング35の内部に収納するように構成している。
しかも、略角筒状の包囲ケーシング35の前面壁36には、後付け作業にて―――即ち、
図10のような組立ユニット化した後に―――(図外の)前板10を当接して、取付孔37,37に取着することが可能な構成である。
なお、前板10の裏面10Bには頭部付きボルトを固着しておいて、上記取付孔37,37に押込んで係止させれば、迅速かつ容易に前板10を取付け得る。
【0027】
なお、
図1~
図4、及び、それ以外の図面に於て、前板10の上端縁10Tに、人の手にて外力F
10を付与し易くするために、切欠き凹所や小窓を形成したり、取っ手や、コの字型引き杆を付設するも、望ましい。その場合、前記上下間隔寸法H
10計測基準位置としての「上端縁」とは、切欠き凹所の下辺、小窓の上下中心位置、取っ手や引き杆の付設高さ位置が、該当する。
【0028】
本発明は、以上詳述したように、引出し1の前板10を、上下方向中間位置の左右水平状一軸心L1 廻りに、鉛直状姿勢Sv と前方傾倒状姿勢Sc との間で揺動自在として、引出し本体2の前端2Fに枢着し;引出し閉塞状態から、上記前板10の上端縁10Tを人の手で前方へ引く外力F10を付与した際に、上記一軸心L1 廻りに上記前板10が揺動し、該前板10の下端縁後面17の一部が、キャビネット本体3の前方開口部3Aの近傍の固定部に、当接状として蹴って、その当接蹴り上げ点が梃子の支点P1 を形成すると共に、前板10の上記上端縁10Tを梃子の力点P2 とし、かつ、上記一軸心L1 を梃子の荷重点P3 として、引出し本体2を前方へ初動させる初動引出し力F2 を、発生させる梃子機構Zを、具備するので、梃子機構Zは、第2種梃子として働き、大きな初動引出し力F2 が引出し本体2に作用する。従って、引出し本体2は最終閉塞位置に引き戻す装置が付設されているとしても、女性や子供や身体弱者でも、容易かつスムースに、引出し本体2を(前板10と共に)引き出すことができる。
しかも、前板10の上端縁10Tを人の手で前方へ引く力F10を与えると、前板10は揺動しつつ、前板10の下端縁後面17と、キャビネット本体3の前方の固定部とが当接状として蹴上げ、軽快かつスムースに、引出し本体2の前方初動を開始する。その後、上端縁10Tを手で持ったままで、前方移動を連続的にスムースに行うことができる。
【0029】
また、上記前方開口部3Aの近傍の固定部が、キャビネット本体3の側板の前端面であるので、特別な部材を付設せずに済み、せいぜい傷付き防止弾性片を貼る程度で済む。
【0030】
また、引出し1の前板10を、左右水平状の一軸心L1 廻りに、鉛直状姿勢Sv と前方傾倒状姿勢Sc との間で揺動自在として、引出し本体2の前端2Fに枢着し;さらに、前板10の下端縁後面17には、後方突出状の支点形成用当り部材18を、付設し;前板10の上端縁10Tから上記当り部材18までの上下間隔寸法をH10とすると、上記当り部材18から上方へ、0.2 ・H10以上かつ0.5 ・H10以下の範囲に上記一軸心L1 を、配設し;さらに、キャビネット本体3には、上記支点形成用当り部材18が当接自在な受け具8が、固設され;引出し閉塞状態から、上記前板10の上端縁10Tを人の手で前方へ引く外力F10を付与した際に、上記一軸心L1 廻りに上記前板10が揺動し、上記支点形成用当り部材18が上記受け具8に当接状として蹴って、その当接蹴り上げ点が梃子の支点P1 を形成すると共に、前板10の上記上端縁10Tを梃子の力点P2 とし、かつ、上記一軸心L1 を梃子の荷重点P3 として、引出し本体2を前方へ初動させる初動引出し力F2 を、発生させる梃子機構Zを、具備するので、梃子機構Zは、第2種梃子として働き、大きな初動引出し力F2 が引出し本体2に作用する。従って、引出し本体2を最終閉塞位置に引き戻す(引き戻し)装置が付設されていたとしても、女性や子供や身体弱者でも、容易かつスムースに、引出し本体2を(前板10と共に)引き出すことが可能となる。
【0031】
しかも、前板10の上端縁10Tを人の手で前方へ引く外力F10を与えると、前板10は揺動しつつ、当り部材18が受け具8に当接し(蹴り上げ)軽快に引出し本体2の前方への初動を開始し、前板10の上端縁10Tを手で持ったままで、前方移動を連続的に、かつ、自然な感じでスムースに、行い得る。
しかも、初動引出し力F2 は、人の手で前板10の上端縁10Tを前方へ引く外力F10の2倍~5倍もの大きな値になって、女性や身体弱者でも十分に軽く引出し1を引出すことができる。なお、0.2 ・H10未満の位置に一軸心L1 を配設すると、前板10を過大に前方へ傾動させねばならず、人の手で上端縁10Tを動かす距離が過大となって、操作が急に面倒となる。逆に、0.5 ・H10を越える位置に一軸心L1 を配設すると、上端縁10Tを人の手で前方へ引く力(外力F10)が過大に感じられて、力の弱い人をサポートできない。
【0032】
また、上記受け具8は、前方下方向を向いた受止め用の勾配面9を有するので、一軸心L1 廻りに揺動する当り部材18が勾配面9に確実に当り(蹴り上げして)、かつ、当り部材18は勾配面9に沿って比較的長い時間を接触しつつ、引出し本体2を前方へ移動(引出し作動)させ得る。
【0033】
また、前方へ揺動した上記前板10を、鉛直状姿勢Sv に復元するための弾発力を付与する戻し用引張バネ21と、該前板10の上記復元する速度を減じるように制御するダンパ23を、上記前板10の裏面10B側の空間24内に配設した構成であるので、引出した後に前方傾倒状姿勢Sc の前板10から手を離すと、スムースかつ静かに前板10が鉛直状姿勢Sv に復元してゆく。従って、台所等においては、優雅な高級感を使用者に与えることもできる。
【0034】
また、上記前板10の裏面10B側の空間24内に、上方開口状の物品収納用ポケット部材30が配設されると共に;該ポケット部材30は、引出し本体2に支持され、該ポケット部材30及び収納物品の荷重は上記前板10に負荷されないよう構成されているので、前板10の一軸心L1 廻りの揺動が軽快かつスムースとなる。しかも、前方傾倒状姿勢Sc では、前板10の裏面10Bの近くにポケット部材30の上方開口部が存在して、収納物品の識別、及び、物品の出し入れが楽に行い得る。
【符号の説明】
【0035】
1 引出し
2 引出し本体
2F 前端
3 キャビネット本体
8 受け具
9 勾配面
10 前板
10B 裏面
10T 上端縁
10Z 下端縁
17 下端縁後面
18 当り部材
21 戻し用引張バネ
23 ダンパ
24 空間
30 ポケット部材
F2 初動引出し力
F10 前方へ引く外力
H10 上下間隔寸法
L1 一軸心
P1 梃子の支点
P2 力点
P3 荷重点
Sc 前方傾倒状姿勢
Sv 鉛直状姿勢
Z 梃子機構