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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】卵白焼成食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20240919BHJP
   A23J 1/08 20060101ALN20240919BHJP
【FI】
A23L15/00 B
A23J1/08 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023001155
(22)【出願日】2023-01-06
(65)【公開番号】P2024097595
(43)【公開日】2024-07-19
【審査請求日】2024-02-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399027004
【氏名又は名称】イセデリカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】関根 裕子
【審査官】長谷川 莉慧霞
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-055100(JP,A)
【文献】アスレシピ[online],2022年12月05日,<URL: https://web.archive.org/web/20221225065842/https://athleterecipe.com/column/31/articles/202211210000734>,[検索日:2024年04月30日], (WEBアーカイブ使用)
【文献】乾燥鶏卵白の調理科学的研究,家政学雑誌,1961年06月15日,第12巻第2号,pp. 101-104
【文献】卵白救済!大量卵白消費,クックパッド[online],2021年03月03日,<URL: https://cookpad.com/recipe/6679336> ,[検索日:2024年4月30日]
【文献】七訂 食品成分表2016,2016年04月01日,第140頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23J
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質含量が8質量%以上、水分含量が50~90質量%であり、前記タンパク質は実質的に卵白由来のタンパク質で構成され
前記タンパク質は、90質量%以上が卵白由来のタンパク質であり、
原材料として、液卵白を60質量%以上85質量%以下、乾燥卵白を2質量%以上10質量%以下、並びに、澱粉を2質量%以上10質量%以下及び/又は食用油脂を1~2質量%含み、
多層構造を有する、卵白焼成食品。
【請求項2】
糖質及び脂質を含み、糖質含量が1質量%以上15質量%以下、脂質含量が0.5質量%以上2質量%以下である、請求項1に記載の卵白焼成食品。
【請求項3】
前記卵白焼成食品は、容器に収容され、1個当たりの可食部の重量が40~80gである、請求項1に記載の卵白焼成食品。
【請求項4】
前記糖質と前記タンパク質の含有比率は、質量換算で、1:0.5~1:5である、請求項2に記載の卵白焼成食品。
【請求項5】
品温10℃における破断強度が1~8Nである、請求項1に記載の卵白焼成食品。
【請求項6】
棒状である、請求項1に記載の卵白焼成食品。
【請求項7】
前記乾燥卵白と前記澱粉の含有比は、質量換算で、1:0.1~1:3である、請求項に記載の卵白焼成食品。
【請求項8】
前記澱粉は、タピオカ澱粉、米澱粉、コーンスターチ及び小麦澱粉から選ばれる1又は2以上である、請求項に記載の卵白焼成食品。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の卵白焼成食品の製造方法であって、
液卵白を60質量%以上85質量%以下、乾燥卵白を2質量%以上10質量%以下、並びに、澱粉を2質量%以上10質量%以下及び/又は食用油脂を1~2質量%含む原材料を混合撹拌する混合工程と、
得られた混合物を焼成する焼成工程を含み、
前記焼成工程は、前記混合物を焼成し、多層構造の卵白焼成食品を作製する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵白焼成食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、栄養成分の一種であるタンパク質を手軽に摂取できる、高タンパク食品に注目が集まっている。このような高タンパク食品として、グラノーラ等の穀物バーや、大豆を主成分とする豆腐バー、鶏ささみを配合したプロテインバーなどが市場に流通している。
【0003】
また、卵は、古来より高タンパク原料として、様々な食品に加工させている。このうち、全卵を用いた玉子焼きは、工業的にも広く生産されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
そして、全卵ではなく、卵白のみを用いた卵焼成食品も開発されている。例えば特許文献2には、卵白と山芋の粉末を含有させた卵白焼が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-078455号公報
【文献】特開平3-280860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記先行技術のあるところ、より消費者に対する嗜好性を高めた、タンパク含有食品が求められている。そこで、本発明は、主として卵白に由来するタンパク質を含有した、新規な卵焼成食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、タンパク質含量が8質量%以上、水分含量が50~90質量%であり、前記タンパク質は実質的に卵白由来のタンパク質で構成される、卵白焼成食品である。
上記特徴を有する卵白焼成食品は、食感等の嗜好性に優れる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、卵白焼成食品は、糖質を含み、糖質含量が15質量%以下である。
【0009】
本発明の好ましい形態では、卵白焼成食品は、脂質を含み、脂質含量が5質量%以下である。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記糖質と前記タンパク質の含有比率は、質量換算で、1:0.5~1:5である。
【0011】
本発明の好ましい形態では、卵白焼成食品は、品温10℃における破断強度が1~8Nである。
上記特徴を有する卵白焼成食品は、全卵を用いた玉子焼きと同等の物性を有し、食感に優れる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、卵白焼成食品は、乾燥卵白を含む。
乾燥卵白を含むことで、本発明は、風味及び食感に優れた卵白焼成食品となる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、卵白焼成食品は、澱粉を含む。
澱粉を含むことで、本発明は、食感に優れた卵白焼成食品となる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記澱粉は、タピオカ澱粉、米澱粉、コーンスターチ及び小麦澱粉から選ばれる1又は2以上である。
【0015】
本発明は、卵白を含む原材料を混合撹拌する混合工程と、
得られた混合物を焼成する焼成工程を含む、卵白焼成食品の製造方法にも関する。
上記工程を備えた製造方法により、卵白焼成食品を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
開示した技術によれば、主として卵白に由来するタンパク質を含有した、新規な卵白焼成食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<卵白焼成食品>
本発明は、実質的に卵白由来のタンパク質で構成される卵白焼成食品である。本発明において、「実質的に卵白由来のタンパク質で構成される」とは、卵白焼成食品に含まれるタンパク質の大半が、卵白由来のタンパク質であることをいう。具体的には、卵白焼成食品に含まれるタンパク質の全量に対し、調味料等の添加物として含まれるものを除き90%以上、好ましくは95%、より好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上が、卵白由来のタンパク質であることが好ましい。
なお、「実質的に卵白由来のタンパク質で構成される」との特定は、卵白以外のタンパク質が混在すること、例えば、味付け用の調味料等に微量のタンパク質が含まれることを除外するものではない。
【0018】
(1)成分組成
以下、本発明の卵白焼成食品に含まれる成分組成について詳述する。成分組成は、所定の測定法により計測することができる。
【0019】
本発明の卵白焼成食品は、水分を含む。
水分含量の下限値は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上である。
また、水分含量の上限値は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下である。
また、本発明の卵白焼成食品の水分含量は、50~90質量%であることが好ましく、60~85質量%であることがより好ましく、70~80質量%であることがさらに好ましい。
水分含量を上記範囲とすることで、食感に優れた卵白焼成食品を得ることができる。
【0020】
本発明の卵白焼成食品は、タンパク質を含む。
タンパク質含量の下限値は、好ましくは8質量%以上、より好ましくは8.5質量%以上、より好ましくは9質量%以上、さらに好ましくは9.5質量%以上、特に好ましくは10質量%以上である。
また、タンパク質含量の上限値は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下の範囲で調節することができる。
タンパク質含量を上記範囲とすることで、成形性及び食感に優れた卵白焼成食品を得ることができる。
【0021】
また、タンパク質含量は、8~30質量%であることが好ましく、9~20質量%であることがより好ましく、10~12質量%であることがさらに好ましい。また、卵白焼成食品の嗜好性の観点から、タンパク質含量は、8~20質量%であることも好ましく、8~12質量%であることもより好ましい。
【0022】
本発明の卵白焼成食品は、好ましくは、脂質を含む。
脂質含量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.8質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上の範囲とすることができる。また、脂質含量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。また、脂質含量は、0.5~5質量%、より好ましくは1~3質量%とすることができる。
脂質含量を上記範囲とすることで、風味に優れた卵白焼成食品を得ることができる。
【0023】
本発明の卵白焼成食品は、好ましくは、糖質を含む。
糖質含量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上の範囲とすることができる。また、糖質含量は、好ましくは15質量%以下、より好ましくは12質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは9.5質量%以下である。また、糖質含量は、0.1~15質量%とすることができる。
糖質含量を上記範囲とすることで、風味に優れた卵白焼成食品を得ることができる。
【0024】
糖質とタンパク質の含有比率は、質量換算で、1:0.5~1:5であることが好ましく、1:0.5~1:3であることがより好ましく、1:0.8~1:2であることがより好ましく、1:1~1.5であることがさらに好ましい。
糖質とタンパク質の含有比率を上記範囲とすることで、優れた食感を有する卵白焼成食品を得ることができる。
【0025】
本発明の卵白焼成食品は、好ましくは、食物繊維を含む。
食物繊維含量は、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上である。また、食物繊維含量は、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。また、食物繊維含量は、0.001~3質量%とすることができる。
【0026】
本発明の卵白焼成食品は、好ましくは、灰分を含む。
灰分の含有量は、好ましくは0.5~5質量%、より好ましくは0.8~2質量%である。
【0027】
(2)原材料
本発明の卵白焼成食品は、卵白を含む。使用する卵白は、食用の鳥類卵であることが好ましく、例えば、鶏、ウズラ、アヒル等が挙げられる。本発明では、鶏卵を用いることが好ましい。
【0028】
また、卵白は、生卵を割卵し、卵黄を取り除いて得られる液卵白を用いてもよいし、乾燥卵白を使用してもよい。本発明では、液卵白及び乾燥卵白を何れも配合することが好ましい。液卵白及び乾燥卵白を配合することで、食感及び風味の優れた卵白焼成食品を得ることができる。
【0029】
液卵白の含有量は、原材料の総質量に対し、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上である。また、液卵白の含有量は、原材料の総質量に対し、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
液卵白の含有量を上記範囲とすることで、風味及び食感に優れた卵白焼成食品を得ることができる。
【0030】
乾燥卵白の含有量は、原材料の総質量に対し、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。
また、乾燥卵白の含有量は、原材料の総質量に対し、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
乾燥卵白の含有量を上記範囲とすることで、成形性と食感のバランスの取れた卵白焼成食品を得ることができる。
【0031】
本発明の卵白焼成食品は、澱粉を含むことが好ましい。中でも、タピオカ澱粉、米澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉から選択される1又は2以上を用いることが好ましく、タピオカ澱粉を用いることがより好ましい。
上記澱粉を用いることで、成形性及び食感のバランスの取れた卵白焼成食品を得ることができる。
【0032】
澱粉の含有量は、原材料の総質量に対し、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上である。
また、澱粉の含有量は、原材料の総質量に対し、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
澱粉の含有量を上記範囲とすることで、成形性及び食感のバランスの取れた卵白焼成食品を得ることができる。
【0033】
乾燥卵白と澱粉の含有比(配合比)は、質量換算で、1:0.1~1:3であることが好ましく、1:0.5~1:2であることがより好ましく、1:1~1:2であることがさらに好ましく、1:1~1:1.5であることが特に好ましい。
乾燥卵白と澱粉の含有比(配合比)を上記範囲内とすることで、食感及び風味に優れた卵白焼成食品を得ることができる。
【0034】
本発明の卵白焼成食品は、製造時、原材料全体の水分量に応じて加水することが好ましい。加水の量は、原材料の総量に対し8~50質量%であることが好ましく、10~35質量%であることがより好ましく、10~30質量%であることがより好ましく、15~20質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
また、本発明の卵白焼成食品は、食用油脂を含むことが好ましい。食用油脂としては、菜種油、キャノーラ油、大豆油、パーム油、綿実油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル、又はMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド、硬化油、エステル交換油等のような化学的あるいは酵素的処理等を施して得られる食用油脂が挙げられる。
本発明では、植物油を用いることが好ましく、キャノーラ油を用いることが好ましい。
【0036】
食用油脂の含有量は、質量換算で、好ましくは0.5~5質量%であり、より好ましくは1~2質量%である。
食用油脂の含有量を上記範囲とすることで、食感の優れた卵白焼成食品を得ることができる。
【0037】
本発明の卵白焼成食品は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の成分を配合することができる。具体的には、例えば、砂糖、醤油、みりん、食塩、味噌、ケチャップ、ソース、だし汁、ブイヨン、カレー粉、豆板醤、コチュジャン等の調味料、牛乳、バター、生クリーム等の乳製品、ねぎ、あさつき、大根、ほうれん草、人参等の野菜、うなぎ、ベーコン、ソーセージ等の肉類、パセリ、バジル、大蒜、ごま、とうがらし、胡椒等の香辛料、小麦粉、片栗粉、ベーキングパウダー、重曹、ふくらし粉、複合製剤、賦形剤等を配合することができる。
【0038】
また、本発明の卵白焼成食品は、山芋粉末を含まないことが好ましい。これにより、卵白焼成食品の粘度が高まり、粘つきのある好ましくない食感となることを防止することができる。
【0039】
(3)卵白焼成食品の形状・製造
本発明の卵白焼成品は、棒状であることが好ましく、直方体状であることが好ましい。このような形状とすることで、卵白焼成食品の持ち運び、喫食が容易となる。
【0040】
また、卵白焼成食品は、長手方向に垂直に切断した切断面が多層構造を有することが好ましい。多層構造の焼成食品とすることで、見た目の美観及び食感の優れた焼成食品となる。
【0041】
また、本発明の卵白焼成食品は、既存の玉子焼き等の卵焼成食品と同様の手順で製造することができる。
本発明の卵白焼成品の製造方法の好ましい形態では、該製造方法は、上記(2)に記載した原材料を撹拌混合する混合工程と、得られた混合物を焼成する焼成工程を含む。
【0042】
混合工程では、原材料を順次投入し、撹拌機を用いて均一となるまで撹拌混合することが好ましい。
焼成工程では、既存の焼成器を用いて混合物を焼成することができる。本発明では、板状に焼いた卵白を含む混合物を積層させることで、棒状の卵白焼成食品を作製することが好ましい。焼成後は、冷蔵庫等に静置し、一定期間冷却させることが好ましい。
【0043】
また、本発明の卵白焼成食品は、容器に収容されていることが好ましい。容器は密閉容器であることが好ましい。また、容器としてアルミなどの金属、紙、PETやPTPなどのプラスチック、ガラスなどを素材とする1層又は積層(ラミネート)のフィルム袋、レトルトパウチ、真空パック、アルミ容器、プラスチック容器、瓶、缶などの包装容器を用いることができるが、具体的にはプラスチック製のフィルム袋を用いることが好ましい。
フィルム包装の形態とすることで、保存性を高めることができるとともに、卵白焼成食品の持ち運び、喫食が容易となる。
【0044】
また、本発明の卵白焼成品は、経時的な変質を避けるために、容器に詰めて密封した後に、加圧及び/又は加熱などにより殺菌処理を行うことが好ましい。
【0045】
本発明の卵白焼成食品は、1個当たりの可食部の重量が、65g程度であることが好ましく、例えば、好ましくは40~80g、より好ましくは50~75g、さらに好ましくは60~70gとすることができる。
上記重量とすることで、食べきりに適した重量であるとともに、持ち運び等に適した大きさとなる。
【0046】
本発明の卵白焼成食品は、棒状であることが好ましく、直方体状であることがより好ましい。棒状である場合、長辺の長さが、5~20cmであることが好ましく、8~10cmであることがより好ましい。上記大きさは、食べきりに適し、かつ持ち運び等に適する。
【0047】
本発明の卵白焼成食品は、品温10℃における破断強度が、1~8Nであることが好ましく、2~5Nであることがより好ましく、3~5Nであることがさらに好ましい。
破断強度が上記範囲内である卵白焼成食品は、食感に優れる。
また、本発明の卵白焼成食品は、(1)に記載した組成を有することにより、上記の破断強度を備えるものであり、全卵を用いた一般的な玉子焼きと同等の食感を備える。
【0048】
破断強度の測定は、溝付き圧盤の上に置いた卵白焼成食品に、くさび形治具を1mm/secの速度で貫入させることで測定することができる。また、破断強度の測定には、テスクチャ―アナライザー(島津製作所製、卓上試験機、EZ-SX)等を用いることができる。
【実施例
【0049】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。
【0050】
<試験例1> 卵白焼成食品の製造
(1-1)製造
下記表1の液卵以外の原材料を撹拌混合後、液卵白(ろ過)を投入した。原材料をよく撹拌混合し、焼成器を用いて5層の棒状の卵白焼成食品を得た。なお、澱粉としてタピオカ澱粉を使用し、植物油としてキャノーラサラダ油を使用した。また、調味料としては、醤油・だし等を配合した。
【0051】
【表1】
【0052】
(1-2)評価
次いで、得られた卵白焼成食品を、外観、風味、食感の観点について、卵製品を専門として扱う評価員1名が、下記の基準に基づき相対的に評価した。結果は、上記表1に示す。
(外観)
〇・・・成形後に型崩れ等がおきず、外形が美しい直方体形状を維持している。
△・・・少々形状が崩れるが、直方体形状を維持している。
×・・・直方体形状とならず、外観の美しさに劣る。
(風味)
〇・・・程よい甘味があり、好ましい風味である。
△・・・やや風味に劣るが、好ましい風味である。
×・・・風味に劣る。
(食感)
〇・・・滑らかな口あたりであり、好ましい食感である。
△・・・やや口あたりに劣るが、好ましい食感である。
×・・・好ましくない食感である(水っぽい食感である、パサつきのある食感である、又はボソボソした食感である)。
【0053】
(1-3)成分分析
実施例1の卵白焼成食品について、栄養成分分析を実施した。結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
(1-4)結果及び考察
表1に示す通り、実施例1~7に示す本発明の卵白焼成食品は、成形後に型崩れ等がおきず、直方体形状を有するものであった。特に、原材料として液卵白、乾燥卵白、澱粉を含み、乾燥卵白と澱粉の配合比が1:1~1:2の実施例1~3は、卵白焼成食品は、外観、風味、及び食感の何れも、一定以上(△)の評価となり、バランスのとれた性状となった。
【0056】
また、表2の実施例1、5及び7の結果より、上記外観及び風味等に優れる卵白焼成食品は、タンパク質含量が8質量%以上であり、水分含量が50~90質量%であることが分かった。
さらに、実施例1の結果より、上記外観、風味、及び食感に優れる卵白焼成食品は、タンパク質含量が8~12質量%であり、水分含量が60~80質量%であることが分かった。また、実施例1より、脂質含量が1~3質量%、糖質含量が5~10質量%の卵白焼成食品が好ましいことが明らかとなった。
【0057】
<試験例2> 破断強度の測定
試験例1の実施例1の配合で調製した卵白焼成食品の破断強度を、以下の測定条件で測定した。
すなわち、テスクチャ―アナライザー(島津製作所製、卓上試験機、EZ-SX)を用いて、溝付き圧盤の上に冷蔵庫(庫内3℃)から出した後の卵白焼成食品(品温10℃程度)を置き、該卵白焼成食品に圧縮治具としてくさび形治具を1mm/secの速度で貫入させた。卵白焼成食品が破断した際の応力(N)を、破断強度とした。
【0058】
(測定条件)
・使用機器:EZ-SX(島津製作所製)
・ロードセル:20N
・速度:1mm/sec
・治具(上):くさび形治具、治具(下):溝付き圧盤
【0059】
また、下記表3に示す配合に従って、卵黄及び卵白を含む全卵を用いた厚焼き玉子を同様の焼成器を用いて製造し、上記測定条件により破断強度を測定した。本発明の卵白焼成食品及び厚焼き玉子の破断強度の測定結果を、表4に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
表4に示す通り、本発明の卵白焼成食品(実施例1)は、卵黄を含む全卵で製造された厚焼き玉子(参考例1~3)と同等の破断強度を有していた。これにより、本発明の卵白焼成食品は、全卵で製造された通常の玉子焼きと同程度の、卵焼成食品(玉子焼き)として好ましい物性を有することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、卵加工食品の製造に応用することができる。