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特許7557245荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の製造及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の製造及び使用
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20240919BHJP
   B65D 65/46 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B01J13/00 A
B65D65/46 BRQ
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024113310
(22)【出願日】2024-07-16
【審査請求日】2024-07-16
(31)【優先権主張番号】202410407297.7
(32)【優先日】2024-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514262886
【氏名又は名称】江南大学
【氏名又は名称原語表記】JIANGNAN UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No. 1800 Lihu Avenue, Bin Hu District, Wuxi, Jiangsu, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】姚 衛蓉
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲うぃ▼良
(72)【発明者】
【氏名】于 航
(72)【発明者】
【氏名】袁 少鋒
(72)【発明者】
【氏名】杜 宇航
(72)【発明者】
【氏名】陳 宇倫
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-073632(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113004559(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106619210(CN,A)
【文献】特表2014-505969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
B65D 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)から(3)のステップを含むことを特徴とする、荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の製造方法。
(1)荷葉精油ピッカリングエマルションの製造:
荷葉精油を希釈して、希釈した荷葉精油を取得し、希釈した荷葉精油とゼラチンナノ粒子溶液とを混合し、乳化して、荷葉精油ピッカリングエマルションを取得する。ここで、荷葉精油ピッカリングエマルション中の希釈した荷葉精油の体積分率は1~8%であり、乳化条件は、12000~14000rpmで85~95s均一に乳化することである。
(2)荷葉表面のミクロ構造を有するポリジメチルシロキサンテンプレートの製造:
ポリジメチルシロキサン(PDMS)溶液と硬化剤とを混合し、ポリジメチルシロキサン混合溶液を取得し、ポリジメチルシロキサン混合溶液を乾燥荷葉が固定された容器に入れ、硬化させ、乾燥荷葉を除去してPDMSテンプレートを取得する。
(3)荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の製造:
ステップ(1)で製造した荷葉精油ピッカリングエマルションをゼラチン、グリセリンと混合し、撹拌し、超音波処理して成膜溶液を取得し、成膜溶液をステップ(2)で製造したPDMSテンプレートに入れ、乾燥させて薄膜を取得し、次に、カルナバワックス溶液を薄膜の荷葉生体模倣構造を有する側に塗布し、荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜を取得する。ここで、成膜溶液におけるゼラチンの質量分率は1~4%であり、グリセリンの質量分率は1~2%である。
【請求項2】
ステップ(1)のゼラチンナノ粒子溶液の製造方法において、
ゼラチンを水中に溶解してゼラチン溶液を取得し、ここで、ゼラチン溶液中のゼラチンの質量分率は2~5%であり、
ゼラチン溶液にアセトンを加え、静置し、溶液が層分離した後、上層の乳白色液体を取って水中に再溶解し、混合液を取得し、混合液のpHを11.0~12.0に調整し、アセトンを加え、撹拌を継続し、さらにゲニピン粉末を加え、撹拌を継続し、撹拌終了後に分離して下層の沈殿を取得し、下層の沈殿を水中に分散させてゼラチンナノ粒子を取得し、
ゼラチンナノ粒子をpH7.5~8.5の塩化ナトリウム(NaCl)溶液と混合してゼラチンナノ粒子溶液を得ることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ステップ(1)のゼラチンナノ粒子溶液中のNaClの濃度は45~55mmol/Lであることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
ステップ(2)のポリジメチルシロキサン混合溶液中のポリジメチルシロキサン溶液と硬化剤との質量比は9~10:1であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
ステップ(3)のカルナバワックス溶液の製造方法において、カルナバワックスをn-ヘキサンに入れ、60~65℃に加熱し、カルナバワックス溶液を取得し、ここで、カルナバワックスとn-ヘキサンとの使用量の比は、20~30mg:4~6mLであることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法により製造された荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜。
【請求項7】
請求項6に記載の荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜を含む包装材料、ウェアラブル材料又は分解性材料。
【請求項8】
食品、医薬品、農業製品又は織物分野における請求項6に記載の荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の使用。
【請求項9】
下記の(1)から(3)のステップを含むことを特徴とする、荷葉精油を用いてゼラチン生体模倣包装膜の機械的強度及び疎水性を同時に向上させる方法。
(1)荷葉精油ピッカリングエマルションの製造:
荷葉精油を希釈して、希釈した荷葉精油を取得し、希釈した荷葉精油とゼラチンナノ粒子溶液とを混合し、乳化して、荷葉精油ピッカリングエマルションを取得する。ここで、荷葉精油ピッカリングエマルション中の希釈した荷葉精油の体積分率は1~8%であり、乳化条件は、12000~14000rpmで85~95s均一に乳化することである。
(2)荷葉表面のミクロ構造を有するポリジメチルシロキサンテンプレートの製造:
ポリジメチルシロキサン溶液と硬化剤とを混合し、ポリジメチルシロキサン混合溶液を取得し、ポリジメチルシロキサン混合溶液を乾燥荷葉が固定された容器に入れ、硬化させ、乾燥荷葉を除去してPDMSテンプレートを取得する。
(3)荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の製造:
ステップ(1)で製造した荷葉精油ピッカリングエマルション、ゼラチン、グリセリンを混合し、撹拌し、超音波処理して成膜溶液を取得し、成膜溶液をステップ(2)で製造したPDMSテンプレートに入れ、乾燥させて薄膜を取得し、次に、カルナバワックス溶液を薄膜の荷葉生体模倣構造を有する側に塗布し、荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜を取得する。ここで、成膜溶液におけるゼラチンの質量分率は1~4%であり、グリセリンの質量分率は1~2%である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の製造及び使用に関し、食品包装材料の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、科学技術の絶え間ない進歩と人々の環境保護に対する意識の高まりに伴い、環境に優しい、自然で分解可能な包装材料の開発が急速に進んでいる。植物精油は、天然の活性物質としてその豊富な機能性のため広く研究され、使用されている。現在、オレガノ精油、ヨモギ精油、ローズマリー精油、シナモン精油などが製膜に使用されており、製造された膜は抗菌、鮮度保持などのさまざまな機能を有する。しかし、膜の中の精油物質は、安定性が低く、揮発しやすく、酸化劣化しやすいなどの欠点を有するため、植物精油の使用が制限されている。
【0003】
ゼラチンは、無臭、無色の水溶性タンパク質であって、コラーゲンの部分的又は完全な加水分解によって生成されるものである。それは、通常、豚、牛、魚、家禽のコラーゲンから抽出され、タンパク質の加水分解プロセスから得られる高分子量の生体ポリマーである。ゼラチンは、広く入手可能であり、安価で、水結合能力、ゲル形成能力、水蒸気バリア、膜形成能力、泡形成能力、乳化傾向などの機能的特性を有することによって、人気の高い天然高分子材料となっており、医薬品、食品、包装材料その他の産業で広く使用されている。
【0004】
ゼラチン、植物精油を用いて包装膜を製造する方法が提出されている。例えば、特許CN116217985Bには、ゼラチン、精油を用いて抗菌包装膜を製造することが開示されている。中国公開CN110396224Aには、シナモン精油ピッカリングエマルションを用いて抗菌包装膜を製造することが開示されている。上記の文献では、単純なゼラチン又はゼラチンと他のポリマーの簡単な複合体を用いて包装膜を製造しているが、食品の賞味期限を延長する作用が小さく、かつゼラチンは高水溶性及び高粘度を有するため、自然の気象条件や空気の湿度に大きく影響されるため、ゼラチン包装膜の疎水性が低いという問題が解決されておらず、実際の使用では大きな欠点が存在する。
【0005】
そこで、ゼラチンを用いて良好な抗菌性能、機械的特性、疎水性を有する包装膜を製造できる方法は、高い実用価値と経済価値を有する
【発明の概要】
【0006】
上記の問題を解決するために、本発明は、ゼラチン膜に荷葉精油を加えることによりゼラチン膜の機械的特性を効果的に向上させる。荷葉精油は、ピッカリングエマルションの形態で薄膜において精油の徐放を実現するとともに、薄膜に静菌性及び抗酸化活性を付与し、食品の保存期限を延長することができる。これに基づいて、新鮮な荷葉の表面ミクロ構造を成膜転写することにより、超疎水性、低細菌付着性を有する荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜を製造することができる。本発明は、荷葉精油の応用ギャップを埋め、荷葉精油の応用をさらに広げる。
【0007】
本発明の第一の目的は、荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の製造方法を提供することにある。この方法は、下記のステップを含む。
(1)荷葉精油ピッカリングエマルションの製造:
荷葉精油を希釈して、希釈した荷葉精油を取得し、希釈した荷葉精油とゼラチンナノ粒子溶液とを混合し、乳化して、荷葉精油ピッカリングエマルションを取得する。ここで、荷葉精油ピッカリングエマルション中の希釈した荷葉精油の体積分率は1~8%であり、乳化条件は、12000~14000rpmで85~95s均一に乳化することである。
(2)荷葉表面のミクロ構造を有するポリジメチルシロキサンテンプレートの製造:
ポリジメチルシロキサン(PDMS)溶液と硬化剤とを混合し、ポリジメチルシロキサン混合溶液を取得し、ポリジメチルシロキサン混合溶液を乾燥荷葉が固定された容器に入れ、硬化させ、乾燥荷葉を除去してPDMSテンプレートを取得する。
(3)荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の製造:
ステップ(1)で製造した荷葉精油ピッカリングエマルションをゼラチン、グリセリンと混合し、撹拌し、超音波処理して成膜溶液を取得し、成膜溶液をステップ(2)で製造したPDMSテンプレートに入れ、乾燥させて薄膜を取得し、次に、カルナバワックス溶液を薄膜の荷葉生体模倣構造を有する側に塗布し、荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜を取得する。ここで、成膜溶液におけるゼラチンの質量分率は1~4%であり、グリセリンの質量分率は1~2%である。
【0008】
一実施形態では、ステップ(1)の荷葉精油は、荷葉から抽出されたものであり、主な成分は、ヌシフェリン、α-カンホレンアルデヒド、シスカリオフィレン、トランスカリオフィレン、ジュニペレン、ロンギフォーレン、スクラレオールなどであり、無色から淡黄色の透明な液体であり、荷葉の特徴的な匂いを有する。
【0009】
一実施形態では、ステップ(1)のゼラチンナノ粒子溶液の製造方法において、
ゼラチンを水中に溶解してゼラチン溶液を取得する。ここで、ゼラチン溶液中のゼラチンの質量分率は2~5%であり、
ゼラチン溶液にアセトンを加え、静置し、溶液が層分離した後、上層の乳白色液体を取って水中に再溶解し、混合液を取得し、混合液のpHを11.0~12.0に調整し、アセトンを加え、撹拌を継続し、さらにゲニピン粉末を加え、撹拌を継続し、撹拌終了後に分離して下層の沈殿を取得し、下層の沈殿を水中に分散させてゼラチンナノ粒子を取得し、
ゼラチンナノ粒子をpH7.5~8.5の塩化ナトリウム(NaCl)溶液と混合してゼラチンナノ粒子溶液を得る。
【0010】
一実施形態では、ステップ(1)のゼラチンナノ粒子溶液中のNaClの濃度は45~55mmol/Lである。
【0011】
一実施形態では、前記水は、好ましくは、脱イオン水である。
【0012】
一実施形態では、ステップ(1)の荷葉精油の希釈は、無水エタノールで荷葉精油を希釈する。
【0013】
一実施形態では、ステップ(1)のゲニピン粉末とゼラチンとの質量比は0.08~0.1:1である。
【0014】
一実施形態では、ステップ(2)のポリジメチルシロキサン混合溶液中のポリジメチルシロキサン溶液と硬化剤との重量比は9~10:1である。
【0015】
一実施形態では、ステップ(2)の乾燥荷葉の製造方法において、新鮮な荷葉表面をエタノール及び超純水で順に洗浄し、洗浄した荷葉を天日乾燥し、8cm×8cmの正方形に切り出す。
【0016】
一実施形態では、ステップ(2)のPDMSテンプレートのサイズは、100mm×100mm×20mmである。
【0017】
一実施形態では、ステップ(3)のカルナバワックス溶液の製造方法において、カルナバワックスをn-ヘキサンに加え、60~65℃に加熱してカルナバワックス溶液を取得する。ここで、カルナバワックスと、n-ヘキサンとの使用量の比は、20~30mg:4~6mLである。
【0018】
一実施形態では、ステップ(3)の撹拌の回転速度は500~800rpm、時間は4~6hである。
【0019】
本発明の第二の目的は、上記のいずれか1つの方法により製造された荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜を提供することにある。
【0020】
一実施形態では、荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜に含まれる成分は、荷葉精油、ゼラチンナノ粒子、ゼラチン、グリセリン及びカルナバワックスである。
【0021】
本発明の第三の目的は、前記荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜を含む包装材料、ウェアラブル材料又は分解性材料を提供することにある。
【0022】
一実施形態では、包装材料は、果物・野菜、生鮮食品の包装に使用され、果物・野菜、生鮮食品の賞味期限を延長することができる。
【0023】
本発明の第四の目的は、食品、医薬品、農業製品又は織物分野における上記荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の使用を提供することにある。
【0024】
本発明の第五の目的は、荷葉精油を用いてゼラチン生体模倣包装膜の機械的強度及び疎水性を同時に向上させる方法を提供することにある。この方法は、下記のステップを含む。
(1)荷葉精油ピッカリングエマルションの製造:
荷葉精油を希釈して、希釈した荷葉精油を取得し、希釈した荷葉精油とゼラチンナノ粒子溶液とを混合し、乳化して、荷葉精油ピッカリングエマルションを取得する。ここで、荷葉精油ピッカリングエマルション中の希釈した荷葉精油の体積分率は1~8%であり、乳化条件は、12000~14000rpmで85~95s均一に乳化することである。
(2)荷葉表面のミクロ構造を有するPDMSテンプレートの製造:
PDMS溶液と硬化剤とを混合し、ポリジメチルシロキサン混合溶液を取得し、ポリジメチルシロキサン混合溶液を乾燥荷葉が固定された容器に入れ、硬化させ、乾燥荷葉を除去してPDMSテンプレートを取得する。
(3)荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の製造:
ステップ(1)で製造した荷葉精油ピッカリングエマルション、ゼラチン、グリセリンを混合し、撹拌し、超音波処理して成膜溶液を取得し、成膜溶液をステップ(2)で製造したPDMSテンプレートに入れ、乾燥させて薄膜を取得し、次に、カルナバワックス溶液を薄膜の荷葉生体模倣構造を有する側に塗布し、荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜を取得する。ここで、成膜溶液におけるゼラチンの質量分率は1~4%であり、グリセリンの質量分率は1~2%である。
本発明の有益な効果
【0025】
本発明は、ゼラチン膜に荷葉精油を加え、新鮮な荷葉表面ミクロ構造の成膜転写技術を利用し、カルナバワックスをスプレーすることにより、超疎水性、高機械的強度、優れた抗菌性及び低細菌付着性を有する精油薄膜が製造される。本発明は、荷葉精油の応用ギャップを埋め、荷葉精油の応用をさらに広げる。
【0026】
具体的には、
(1)本発明では、荷葉を使用し、環境に優しく無公害の表面処理方式により生体模倣荷葉表面構造を有する荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜を製造し、従来のゼラチン膜が水に溶解しやすく、疎水性が低いという問題を解決し、本発明の荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜は、製造方法のコストが低く、操作が簡単であり、簡単な転写、キャスティング成形の方法により製造することができる。
(2)本発明では、特定の乳化剤(ゼラチンナノ粒子溶液)及び荷葉精油を選択して荷葉精油ピッカリングエマルションを形成し、この荷葉精油ピッカリングエマルションを用いてゼラチン膜を改質することにより、得られた荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜は、優れた機械的特性、抗酸化性及び静菌性能を有し、従来のゼラチン複合膜では、良好な機械的特性、静菌性を同時に達成することが難しいという問題が解決される。
(3)本発明で使用した原料は、いずれも無毒で、生分解性、生体適合性が良好であるなどの利点を有し、製造された荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜は、果物・野菜の防腐、鮮度維持に適用でき、生鮮食品の賞味期限を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施例1のゼラチンナノ粒子と荷葉精油ピカリングナノエマルションの粒度分布図である。ここで、Aはゼラチンナノ粒子の粒度分布であり、Bは異なる濃度の荷葉精油ピッカリングエマルションの粒度分布である。
図2】実施例3のPDMSテンプレート、荷葉表面構造を有するゼラチン精油薄膜(GL-LEO/L)のミクロ構造を示す。ここで、AはPDMSテンプレートの表面ミクロ構造であり、BはGL-LEO/L薄膜の表面ミクロ構造であり、CはGL-LEO/L薄膜の横断面のミクロ構造であり、Dは荷葉生体模倣構造のミクロ画像である。
図3】実施例3の薄膜GL、GL/L、GL-LEO、GL-LEO/L、GL-LEO/L/CWの厚さのデータ図である。
図4】実施例3の薄膜GL、荷葉表面構造を有するゼラチン薄膜GL/L、GL-LEO/L、GL-LEO/L/CWの機械的特性のデータ図である。ここで、Aは薄膜のTSであり、Bは薄膜のEABである。
図5】実施例3の薄膜GL、GL-LEO/L、GL-LEO/L/CWの水接触角のデータ図である。
図6】実施例3の薄膜GL、GL-LEO/L、GL-LEO/L/CWの水蒸気透過率のデータ図である。
図7】実施例3の薄膜GL-LEO/L/CWの放出を示す図である。ここで、Aは10%エタノール中での薄膜の精油放出状況を示し、Bは50%エタノール中での薄膜の精油放出状況を示す。
図8】実施例3の薄膜GL及びGL-LEO/L/CWの抗細菌付着効果を示す図である。ここで、Aは大腸菌の薄膜GL上の付着状況を示し、Bは大腸菌の荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣膜GL-LEO/L/CW上の付着状況を示し、Cは黄色ブドウ球菌の薄膜GL上の付着状況を示し、Dは黄色ブドウ球菌の荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣膜GL-LEO/L/CW上の付着状況を示す。
図9】実施例3の薄膜GL及びGL-LEO/L/CWの抗菌効果を示す図である。ここで、Aは薄膜GLの大腸菌に対する抑制状況を示し、Bは荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣膜GL-LEO/L/CWの大腸菌に対する抑制状況を示し、Cは薄膜GLの黄色ブドウ球菌に対する抑制状況を示し、Dは荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣膜GL-LEO/L/CWの黄色ブドウ球菌に対する抑制状況を示す。
図10】比較例1においてTween-40、Tween-80水溶液を用いて製造された荷葉精油薄膜を示す。ここで、AはTween-40水溶液を用いて製造された薄膜であり、BはTween-80水溶液を用いて製造された薄膜である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施例を説明する。以下の実施例は、本発明をより良好に説明するためのものであり、本発明を制限するものではない。
【0029】
本発明に関係する機器
ZEN3600ナノレーザー粒度分布計(Malvern Instruments Ltd.(英国));電気送風乾燥器(型番GZX-9070MBE,河北天検工程機器有限公司);ビデオ光学式接触角測定器(型番OCA15EC,Delphi Instrument Co.,Ltd.(ドイツ));冷陰極電界放射型走査型電子顕微鏡(型番SU8100,株式会社日立ハイテク);紫外可視分光光度計(型番T9,北京普析通用機器有限責任公司);制御可能な恒温恒湿試験箱(東莞市匯泰機械有限公司);物性測定装置(型番TA.XT-Plus,英国Stable Micro Systems社);ハンドヘルドデジタルスパイラルマイクロメーター(ミツトヨ社、スペイン)。
【0030】
原料の購入先
荷葉精油:広州普朗斯生物科技有限公司
タイム精油:上海マクリーン試薬会社(上海麦克林試剤公司)
チョウジ精油:上海マクリーン試薬会社
シナモン精油:上海マクリーン試薬会社
ゲニピン粉末:上海マクリーン試薬会社、純度98%
PDMS(ポリジメチルシラン)及び硬化剤は型番SYLGARD184のシリコーンゴムセットであり、米国ダウコーニング社から購入した。
【0031】
実施例で使用した溶液は、特に指定されていない限り、水を溶媒とし、水は、好ましくは脱イオン水である。
【0032】
実施例1:ゼラチンナノ粒子及び荷葉精油ピッカリングエマルションの製造
(1)ゼラチンナノ粒子の製造
1.250gのゼラチンを45℃で25.0mLの脱イオン水に溶解してゼラチン溶液を得た。25.0mLのアセトンを加え、溶液が層分離するまで静置した。上層の乳白色液体を取って25.0mLの脱イオン水に再溶解して混合液を得た。NaOH溶液を用いて混合液のpHを12.0に調整し、50℃で撹拌を継続し、1.0mL/minの速度で75.0mLのアセトンを滴下した。0.125gのゲニピン粉末を加え、50℃で5h引き続き撹拌し、撹拌終了後、10000rpmで35min遠心分離して下層の沈殿を取得し、脱イオン水で下層の沈殿を3回洗浄し、下層の沈殿を脱イオン水に分散させ、残留したアセトンをゆっくりと揮発させ、ゼラチンナノ粒子(GLNP)を得た。
【0033】
(2)荷葉精油ピッカリングエマルションの製造
(1)で製造したゼラチンナノ粒子を取り、ゼラチンナノ粒子をpH8.0、濃度50mmol/Lの塩化ナトリウム溶液と混合し、20.0mg/mLのゼラチンナノ粒子溶液を製造した。
荷葉精油と無水エタノールとを体積比1:1で混合し、希釈した荷葉精油(LEO)を得た。希釈した荷葉精油とゼラチンナノ粒子溶液とを混合し、それぞれ希釈した荷葉精油の体積分率が1%、2%、4%、6%、8%の混合液を製造した。混合液を13000rpmで90s均一に乳化し、荷葉精油ピッカリングエマルションを得た。
【0034】
(3)荷葉精油ピッカリングエマルションの性能測定
25℃の条件下で動的光散乱(DLS)装置を用いて(2)で製造した異なる体積分率の荷葉精油ピッカリングエマルションの液滴サイズ分布及び多分散性指数(PDI)を測定し、ピッカリングエマルションにおける希釈した荷葉精油の体積分率に基づいて荷葉精油ピッカリングエマルションサンプルをそれぞれLEO 1%、LEO 2%、LEO 4%、LEO 6%、LEO 8%と命名した。
【0035】
粒度及びZeta電位の結果を表1に示す。表1から分かるように、全ての荷葉精油ピッカリングエマルションのPDI値はいずれも0.5未満であり、荷葉精油ピッカリングエマルションが良好な分散性を有することを示している。
【0036】
表1:荷葉精油ナノエマルションの粒度状況
【0037】
ゼラチンナノ粒子の粒度分布及び異なる濃度の荷葉精油ピッカリングエマルションの粒度分布の結果を図1に示す。図1のAから分かるように、ゼラチンナノ粒子の粒径は主に80~120nmに分布し、そのうち、GLNP1、GLNP2、GLNP3はそれぞれ(1)で製造したゼラチンナノ粒子の3つの並行対照である。図1のBから分かるように、荷葉精油ピッカリングエマルションの粒径はLEO含有量につれて増大してから減少し、LEOの体積分率が4%を超えると、その粒径の平均値は減少し始め、荷葉精油が十分に乳化していないことによる可能性がある。
【0038】
実施例2:荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の製造
1、荷葉表面ミクロ構造を有するPDMSテンプレートの製造
新鮮な荷葉表面をエタノール及び超純水で順に洗浄し、洗浄した後、荷葉を天日乾燥させ、8cm×8cmの正方形に切り出して乾燥荷葉とした。次に、両面テープで乾燥荷葉を10cm×10cmの角型シャーレの底部に固定した。シリコーンゴムセットにおける20mLポリジメチルシロキサン(PDMS)溶液と硬化剤とを質量比10:1で混合し、ポリジメチルシロキサン混合溶液を得た。次に、ポリジメチルシロキサン混合溶液の全部を8cm×8cmの正方形荷葉が固定された角型シャーレに入れ、静置して15min脱気し、角型シャーレをオーブン中に置いて60℃で4h静置し、PDMS溶液を硬化し、荷葉を除去してPDMSテンプレート(100mm×100mm×20mm)を得た。
【0039】
2、荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の製造
実施例1で製造した荷葉精油ピッカリングエマルションLEO 8%に1.5wt%のゼラチン、1wt%のグリセリンを加え、磁気撹拌機を用いて60℃で1h撹拌し、撹拌後の溶液を15min超音波処理して成膜溶液を得た。15mL成膜溶液を取り、PDMSテンプレートに入れ、40℃で6h乾燥させ、次に、薄膜を剥離した。
25mgカルナバワックスを5mLのn-ヘキサンに加え、60℃に加熱して完全に溶解し、カルナバワックス溶液を得た。スプレーボトルで全てのカルナバワックス溶液を薄膜における荷葉生体模倣構造を有する側に10回スプレーし、表面に荷葉ミクロ構造がある超疎水性の荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜を得た。GL-LEO/L/CWと命名した。
前記ステップに基づいて、荷葉精油を添加せず、PDMSテンプレートを使用せず、カルナバワックスをスプレーせずにゼラチン及びグリセリンのみが添加した薄膜を製造し、GLと命名した。PDMSテンプレートを使用せず、カルナバワックスをスプレーせずに荷葉精油が添加した薄膜を製造してGL-LEOと命名した。荷葉精油を添加せず、カルナバワックスをスプレーせず、PDMSテンプレートを使用して荷葉生体模倣構造を有する薄膜を得てGL/Lと命名した。カルナバワックスをスプレーせずに荷葉生体模倣構造を有しかつ荷葉精油が添加した薄膜を得てGL-LEO/Lと命名した。製造された薄膜のサイズは、いずれも8cm×8cmであった。
【0040】
実施例3:異なる膜サンプルの性能の測定
実施例2で製造したPDMSテンプレート及び異なる包装膜GL-LEO/L/CW、GL、GL-LEO、GL/L、GL-LEO/Lを取り、その性能を測定した。
【0041】
(1)ミクロ構造の測定
実施例2のPDMSテンプレート及びGL-LEO/Lを取り、GL-LEO/Lを適切なサイズに切り出し、ゴールドスプレー処理した後、電界放射型走査型電子顕微鏡により薄膜の表面及び横断面のトポグラフィーを観察した。
結果を図2に示す。図2のAから分かるように、PDMSテンプレートには均一な空洞を有し、かつ図2のBに示される薄膜表面上の突起と相補的であり、PDMSテンプレート上に逆荷葉表面ミクロ構造の転写に成功したことを示している。図2のC及び図2のDから分かるように、薄膜の横断面は緻密であり、かつ片側に微細な突起を有し、荷葉表面のミクロ構造の転写に成功したことを示している。
【0042】
(2)厚さの測定
ハンディデジタル厚さ計を用いて実施例2で製造した包装膜GL、GL/L、GL-LEO、GL-LEO/L、GL-LEO/L/CWを測定した。各層の膜から8つの点をランダムに選択して測定し、平均値±標準偏差(SD)を膜厚さとして計算した。
結果を図3に示す。図3から分かるように、薄膜GL、GL/L、GL-LEO、GL-LEO/L、GL-LEO/L/CWの厚さは、それぞれ0.093mm、0.25mm、0.13mm、0.42mm、0.51mmであった。薄膜の厚さは、荷葉精油の添加により顕著に増加し、カルナバワックスのスプレーによっても薄膜の厚さが増加した。
【0043】
(3)機械的特性の試験
テクスチャーアナライザを用いて実施例2で製造した包装膜GL、GL/L、GL-LEO/L、GL-LEO/L/CWの4種類の薄膜に対して引張強さ(EAB)及び破断伸び(TS)を含む機械的特性を測定した。
【0044】
滑らかでシワのない薄膜サンプルを6cm×1cmの矩形ストライプに切り出し、テクスチャーアナライザに装着し、初期把握距離を30mmとし、1mm/sの一定速度で矩形ストライプの機械的性能を測定した。
【0045】
TS及びEABは下記式に従って算出した。各サンプルは並行して3回測定した。結果は±SDの平均値で表す。
TS(MPa)=Fmax/d×w
式中、Fmaxは薄膜サンプルを破壊するのに必要な最大力(N)であり、dは薄膜の厚さ(mm)であり、wは薄膜の幅(mm)である。
EAB%=(L-L)/L×100
式中、Lは薄膜の断裂時での把握長(mm)であり、Lは薄膜の初期把握長(mm)である。
【0046】
結果を図4に示す。図4から分かるように、薄膜(GL)と比較して、荷葉表面ミクロ構造を有する薄膜(GL/L)は、引張強さ(TS)及び断裂伸び(EAB)が顕著に減少し、荷葉表面構造が薄膜の機械的特性を低下させたことを示している。しかし、荷葉精油ピッカリングエマルションを添加した薄膜(GL-LEO/L、GL-LEO/L/CW)は、TS及びEABが薄膜と比較して増加し、荷葉精油ピッカリングエマルションの添加が薄膜の機械的特性を向上できることを示している。また、薄膜にカルナバワックスをスプレーした後、その表面に形成されたワックス層も膜の機械的特性に対してある程度の効果を有することを示している。
【0047】
(4)水接触角(WCA)の測定
アナライザを用いて実施例2で製造したGL、GL-LEO/L、GL-LEO/L/CWに対して表面WCAを測定した。薄膜サンプルを破片(2cm×2cm)に切り出し、スライドグラスに固定し、次に、注射器で薄膜の表面に1滴(約10μL)の超純水を加え、そのWCAを測定した。
【0048】
結果を図5に示す。図5から分かるように、荷葉生体模倣構造の添加により薄膜の水接触角が大幅に大きくなり、薄膜表面の親水性が低下し、接触角が130°を超え、カルナバワックスをスプレーした後、接触角は150°を超え、超疎水性の効果に達した。
【0049】
(5)膜の透湿性の測定
重量法により膜GL、GL-LEO/L、GL-LEO/L/CWの水蒸気透過性(WVP)を測定した。膜を4cm×4cmのブロックに切り出し、マイクロメータによりブロック上の5つのランダムな点の厚さを測定し、平均値を算出した。膜を用いて10mLの超純水が入った透湿カップ(30mm×50mmの秤量瓶)を密封し、透湿カップをシリカゲルが入った乾燥器に入れた。定期的に透湿カップの重量を監視し、透湿カップの重量減少と時間との関係曲線を作成し、曲線の直線部分から水蒸気伝達速度を計算した。
下記算式によりWVPを計算する。
WVP=(slope/A×X)/ΔP
式中、slopeは、線形回帰(R>0.99)により質量変化と時間の線形曲線から算出された傾きであり、Xは膜サンプルの平均厚さであり、Aは透湿カップ上に被覆される膜の面積であり、ΔPは膜表面の両側の水蒸気分圧差である。
【0050】
結果を図6に示す。図6から分かるように、GLとGL-LEO/Lを比較すると、荷葉精油ピカリングナノエマルションの添加により、薄膜に3次元ネットワーク構造を有することで水蒸気の透過率が増加した。しかし、カルナバワックスをスプレーした後、その表面に形成されたワックス層は、薄膜の水蒸気透過率を顕著に減少させ、水蒸気に対するバリア能力を向上させた。
【0051】
(6)荷葉精油の放出特性の試験
実施例2で製造した荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜GL-LEO/L/CWの放出特性を試験した。GL-LEO/L/CW薄膜を室温乾燥器中で15日間保存し、薄膜を2×2cmのストリップ状を切り出して異なる放出溶液(10%v/v及び50%v/vエタノール)に入れた。両者のエタノール濃度溶液は、それぞれ水溶性システム(10%v/vエタノール)及び脂溶性システム(50%v/vエタノール)をシミュレートした。異なる時間間隔(1、2、3、4、5、6h)で放出溶液の268nmでのLEOの吸光度を測定し、放出されたLEOの含有量を監視した。
【0052】
結果を図7に示す。図7から分かるように、エタノールでシミュレートした放出系において、時間が経つにつれて、系内の荷葉精油の濃度は徐々に増加し、この薄膜が持続的に荷葉精油を放出することを示している。
【0053】
(7)細菌付着試験
実施例2で製造した薄膜GL及びGL-LEO/L/CWを取り、その細菌付着効果を測定した。両面テープで2枚の薄膜の背面を接着し、両面ともミクロ生体模倣構造である薄膜を作成し、1cmのサンプルを切り出して試験した。野菜や肉によく見られる大腸菌及び黄色ブドウ球菌を選択して細菌付着試験を行った。無菌生理食塩水を用いて2種類の菌液を10CFU/mLに希釈した。サンプルを5mLの希釈した細菌溶液に入れ、2min振盪し、薄膜が細菌溶液中の細菌と接触することを確認し、ピンセットでサンプルを取り出し、耳洗いボールで10s洗浄した。次に、精製したサンプルを5mL生理食塩水が入った無菌試験管に加えて2h振り混ぜ、100μLの混合溶液を取ってプレートカウント寒天培地上に均一に塗布し、37℃で24h培養し、コロニーの数を観察することによって細菌の付着状況を判断した。
【0054】
結果を図8に示す。プレート上のコロニー数から分かるように、荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜は、顕著な細菌付着防止作用を有する。
【0055】
(8)抗菌性能の測定
実施例2で製造した薄膜GL及びGL-LEO/L/CWを取り、その抗菌効果を測定した。選択された菌株(黄色ブドウ球菌、大腸菌)をLB培地中で培養し、37℃で24h振盪して活性化させた。600nmでの吸光度が0.6になるように無菌水で活性化した細菌懸濁液を希釈し、さらに懸濁液を連続して10000倍に希釈し、抗菌試験を行った。GL及びGL-LEO/L/CWを無菌水に溶解し、200μL及び100μLの希釈した細菌懸濁液を取って混合し、37℃で30min振盪しながら培養した後、100μLの混合溶液を取ってLB培地に均一に塗布し、37℃で24h培養し、コロニー数を観察することによって、荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の薄膜の抗菌活性を評価した。
【0056】
結果を図9に示す。図9から分かるように、荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜(GL-LEO/L/CW)は、大腸菌及び黄色ブドウ球菌のいずれにも良好な抑制効果を有する。
【0057】
比較例1:異なる安定系で製造した包装膜
実施例1に基づいて、ゼラチンナノ粒子溶液をそれぞれ体積分率2%v/vのTween-40水溶液、体積分率2%v/vのTween-80水溶液に調整し、次に、希釈した荷葉精油を2%v/vのTween-40水溶液又は体積分率2%v/vのTween-80水溶液と混合して混合液を取得し、希釈した荷葉精油の体積分率が1%の混合液を製造した。次に、13000rpmで90s均一に乳化し、ピッカリングエマルションを得た。
さらに実施例2の方法に従ってピッカリングエマルションを用いて荷葉精油薄膜を製造した。
【0058】
結果を図10に示す。図10から分かるように、体積分率2% v/vのTween-40及びTween-80水溶液で製造された荷葉精油薄膜は、性質が不安定で、表面に明らかな油状液体の析出が見られた。
【0059】
比較例2:異なる精油で製造した包装膜
実施例1に基づいて、荷葉精油をそれぞれタイム精油、チョウジ精油及びシナモン精油に変更してタイム精油ピッカリングエマルション、チョウジ精油ピッカリングエマルション及びシナモン精油ピッカリングエマルションを製造した。さらに、実施例2の方法に従って、タイム精油ピッカリングエマルション、チョウジ精油ピッカリングエマルション及びシナモン精油ピッカリングエマルションを用いてタイム精油薄膜、チョウジ精油薄膜及びシナモン精油薄膜を製造した。
【0060】
比較例3:蜜蝋で生体模倣薄膜を製造した。
実施例2に基づいて、カルナバワックスを蜜蝋に変更して薄膜を製造し、GL-LEO/L/BWと命名した。
【0061】
比較例2と比較例3で得られた膜に対して機械的強度及び水接触角を測定した。結果を表2に示す。
【0062】
表2:異なる精油及びワックスを用いて製造された薄膜の性能
注:表中のアルファベットが同じである場合、両者に有意差がないことを示し(p>0.05)、アルファベットが異なる場合、両者に有意差があることを示す(p<0.05)。
【0063】
表2の結果から分かるように、タイム精油、チョウジ精油及びシナモン精油を用いて製造された薄膜は、機械的強度及び疎水性がいずれも低く、蜜蝋を用いて製造された薄膜GL-LEO/L/BWは、機械的強度が薄膜GL-LEO/L/CWと顕著な違いがないが、疎水性が低く、その接触角(WCA)が比較的小さく、150°を超える超疎水性の状態に達しなかった。
【0064】
比較例4:アラビアゴムを用いて生体模倣薄膜を製造した。
実施例1に基づいて、ゼラチンをアラビアゴムに変更してアラビアゴム荷葉精油ピッカリングエマルションを製造した。さらに、実施例2の方法に従って、アラビアゴム荷葉精油ピッカリングエマルションを用いて荷葉精油薄膜を製造し、その機械的特性及び疎水性を試験した。
【0065】
試験した結果、アラビアゴムを用いて製造された荷葉精油薄膜は、機械的強度及び疎水性がいずれもゼラチンを用いて製造された荷葉精油薄膜よりも悪かった。
【0066】
以上の実施例は、本発明の範囲を制限するものではなく、説明されたステップもその実行順序を制限するものではない。当業者が従来技術に基づいて本発明に加えた自明な改良も本発明の特許請求の範囲に定められる保護範囲に含まれる。
【要約】
本発明は、荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜の製造及び使用に関し、食品包装材料の分野に属する。本発明は、ゼラチン膜に荷葉精油を加えることによりゼラチン膜の機械的特性を効果的に向上させる。荷葉精油は、ピッカリングエマルションの形態で薄膜において精油の徐放を実現するとともに、薄膜に静菌性及び抗酸化活性を付与し、食品の保存期限を延長することができる。これに基づいて、新鮮な荷葉の表面ミクロ構造を成膜転写することにより、超疎水性、低細菌付着性を有する荷葉精油-ゼラチン複合生体模倣包装膜を製造することができる。本発明は、荷葉精油の応用ギャップを埋め、荷葉精油の応用をさらに広げる。
【選択図】図1
図1
図2
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図10