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7557257縦軸線に関して複数方向の可撓性を高めた構成のラケット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】縦軸線に関して複数方向の可撓性を高めた構成のラケット
(51)【国際特許分類】
   A63B 49/02 20150101AFI20240919BHJP
   A63B 102/02 20150101ALN20240919BHJP
【FI】
A63B49/02
A63B102:02
【請求項の数】 23
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018191199
(22)【出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2019155060
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-07-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-06-13
(31)【優先権主張番号】62/641,600
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/012,283
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591079915
【氏名又は名称】ウィルソン・スポーティング・グッズ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Wilson Sporting Goods Co.
【住所又は居所原語表記】130 East Randolph Street, Suite 600 Chicago, IL 60601 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム ディー セヴェラ
(72)【発明者】
【氏名】デイル ジェイ ツヴァック
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ティー カプヘイム
(72)【発明者】
【氏名】エロイザ エム コンポスティーゾ
【合議体】
【審判長】川俣 洋史
【審判官】桐山 愛世
【審判官】殿川 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-299516(JP,A)
【文献】特開平5-96030(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0176021(EP,A2)
【文献】米国特許第3809402(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第0145820(EP,A1)
【文献】特開平6-63183(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0029793(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B49/00-51/16
A63B55/00-60/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸線に沿って延び且つラケット横曲げ試験及びラケット前後曲げ試験で試験可能なテニスラケットであって、前記ラケット横曲げ試験は、ストリングベッド、グリップ、及びエンドキャップを該ラケットのハンドル部から取り外した後、前記ハンドル部上にある縦方向の第1箇所で該ラケットを第1向きで第1試験治具に取り付けステップと、フープの12時の位置でヘッド部の遠位端領域にある該ラケットの第2箇所にクランプを装着するステップと、撓み表示器を前記クランプに動作可能に係合するステップと、3kgの第1ウェイトを前記縦方向に沿って該ラケットの前記近位端から20インチ(508mm)の距離にある前記ヘッド部の側方領域上の該ラケットの第3箇所に付加するステップと、前記第1ウェイトを除去して前記縦軸線に関する該ラケットの横方向撓み測定値を得るステップとを含み、前記ラケット前後曲げ試験は、前記ストリングベッド、前記グリップ、及び前記エンドキャップを該ラケットの前記ハンドル部から取り外した後、前記縦方向の第1箇所で該ラケットを第2向きで前記第1試験治具に取り付けるステップと、前記フープの前記12時の位置で前記ヘッド部の前記遠位端領域にある該ラケットの第4箇所に2.8kgの第2ウェイトを付加するステップと、前記撓み表示器を前記フープの前記12時の位置で前記ヘッド部の前記遠位端領域の上側にある該ラケットの第5箇所に動作可能に係合するステップと、前記第2ウェイトを除去して前記縦軸線に関する前後方向撓み測定値を得るステップとを含み、前記縦軸線に関して90°回転させて前記第1向きから前記第2向きにされるラケットにおいて、該ラケットは、
前記ヘッド部、前記ハンドル部、及び前記ヘッド部と前記ハンドル部との間に位置決めされたスロート部を含むフレームを備え、前記ヘッド部は、ストリングベッド平面を画定する前記フープを形成し、前記スロート部は一対のスロート要素を含み、該ラケットの少なくとも前記ヘッド部及び前記スロート部は、繊維複合材料で少なくとも部分的に形成され、前記横曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面と平行且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると6.0mm以上の横方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項2】
請求項1に記載のテニスラケットにおいて、前記ラケット前後曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面に対して垂直且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると前記縦軸線に関して8.5mm以上の前後方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項3】
請求項1に記載のテニスラケットにおいて、前記ラケット横曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面と平行且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると6.5mm以上の横方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項4】
請求項2に記載のテニスラケットにおいて、前記ラケット横曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面と平行且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると6.5mm以上の横方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項5】
請求項1に記載のテニスラケットにおいて、前記ラケット横曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面と平行且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると7.0mm以上の横方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項6】
請求項2に記載のテニスラケットにおいて、前記ラケット横曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面と平行且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると7.0mm以上の横方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項7】
請求項2に記載のテニスラケットにおいて、前記ラケット前後曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面に対して垂直且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると前記縦軸線に関して9.0mm以上の前後方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項8】
請求項2に記載のテニスラケットにおいて、前記ラケット前後曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面に対して垂直且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると前記縦軸線に関して10.0mm以上の前後方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項9】
請求項1に記載のテニスラケットにおいて、該ラケットは、ラケット捩り安定性試験で試験可能であり、前記ラケット捩り安定性試験は、前記ストリングベッド、前記グリップ、及び前記エンドキャップを該ラケットの前記ハンドル部から取り外した後、前記ハンドル部上の第6箇所及び前記ヘッド部上の第7箇所それぞれで該ラケットに第2試験治具及び第3試験治具をそれぞれ取り付けステップと、前記第2試験治具から延びるアームに6.9kgの第3ウェイトを前記縦軸線から40cmの距離で付加して該ラケットに捩り荷重を加えるステップと、前記第3所定ウェイトを除去して前記縦軸線に関する角度振れ量を得るステップとを含み、前記ラケット捩り安定性試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記縦軸線に関して5.5°未満の角度振れを有するテニスラケット。
【請求項10】
請求項9に記載のテニスラケットにおいて、前記ラケット捩り安定性試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記縦軸線に関して5.0°以下の角度振れを有するテニスラケット。
【請求項11】
請求項1に記載のテニスラケットにおいて、前記繊維複合材料は、複数のプライ配列を含み、該プライ配列のそれぞれは、一方が前記繊維複合材料の単層に沿った縦軸線である複合軸線に関して第1角度を規定する第1複数繊維を有し他方が前記複合軸線に関して第2角度を規定する第2複数繊維を有する一対のプライを含み、前記第1角度及び前記第2角度は、前記複合軸線に関して逆の角度極性を有すること以外は実質的に同じであり、前記ヘッド部は、重なり合った少なくとも3つのプライ配列を含み、少なくとも4つのプライ配列のうち少なくとも2つの前記第1角度及び前記第2角度は、35°以上であるテニスラケット。
【請求項12】
請求項11に記載のテニスラケットにおいて、前記少なくとも3つのプライ配列のうち少なくとも2つの前記第1角度及び前記第2角度は、40°以上であるテニスラケット。
【請求項13】
請求項11に記載のテニスラケットにおいて、前記少なくとも3つのプライ配列のうち少なくとも2つの前記第1角度及び前記第2角度は、45°以上であるテニスラケット。
【請求項14】
請求項1に記載のテニスラケットにおいて、前記ヘッド部は、前方フープ表面及び後方フープ表面を含み、前記前方フープ表面と前記後方フープ表面との間の距離は、ビーム高さ距離であり、前記ヘッド部は、19mm以上の最大ビーム高さ距離を有するテニスラケット。
【請求項15】
請求項1に記載のテニスラケットにおいて、該ラケットは、ラケット振動試験で試験可能であり、前記ラケット振動試験は、ハンマー、加速度計、及びモーダル解析中に両端自由条件で該ラケットを支持するモーダル解析フレームを含む、モーダル解析システムを利用し、前記ラケット振動試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、130Hz以下の振動を有するテニスラケット。
【請求項16】
縦軸線に沿って延び且つラケット横曲げ試験及びラケット前後曲げ試験で試験可能なテニスラケットであって、前記ラケット横曲げ試験は、ストリングベッド、グリップ、及びエンドキャップを該ラケットのハンドル部から取り外した後、前記ハンドル部上にある縦方向の第1箇所で該ラケットを第1向きで第1試験治具に取り付けステップと、フープの12時の位置でヘッド部の遠位端領域にある該ラケットの第2箇所にクランプを装着するステップと、撓み表示器を前記クランプに動作可能に係合するステップと、3kgの第1ウェイトを前記縦方向に沿って該ラケットの前記近位端から20インチ(508mm)の距離にある前記ヘッド部の側方領域上の該ラケットの第3箇所に付加するステップと、前記第1ウェイトを除去して前記縦軸線に関する該ラケットの横方向撓み測定値を得るステップとを含み、前記ラケット前後曲げ試験は、前記ストリングベッド、前記グリップ、及び前記エンドキャップを該ラケットの前記ハンドル部から取り外した後、前記縦方向の第1箇所で該ラケットを第2向きで前記第1試験治具に取り付けるステップと、前記フープの前記12時の位置で前記ヘッド部の前記遠位端領域にある該ラケットの第4箇所に2.8kgの第2ウェイトを付加するステップと、前記撓み表示器を前記フープの前記12時の位置で前記ヘッド部の前記遠位端領域の上側にある該ラケットの第5箇所に動作可能に係合するステップと、前記第2ウェイトを除去して前記縦軸線に関する前後方向撓み測定値を得るステップとを含み、前記縦軸線に関して90°回転させて前記第1向きから前記第2向きにされるラケットにおいて、該ラケットは、
前記ヘッド部、前記ハンドル部、及び前記ヘッド部と前記ハンドル部との間に位置決めされたスロート部を含むフレームを備え、前記ヘッド部は、ストリングベッド平面を画定する前記フープを形成し、前記ヘッド部は、前方フープ表面及び後方フープ表面を含み、前記前方フープ表面と前記後方フープ表面との間の距離は、ビーム高さ距離であり、前記ヘッド部は、20mm以上の最大ビーム高さ距離を有し、前記スロート部は一対のスロート要素を含み、前記横曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面と平行且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると6.0mm以上の横方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項17】
請求項16に記載のテニスラケットにおいて、前記ラケット前後曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面に対して垂直且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると前記縦軸線に関して8.5mm以上の前後方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項18】
請求項16に記載のテニスラケットにおいて、前記ラケット横曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面と平行且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると6.5mm以上の横方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項19】
請求項17に記載のテニスラケットにおいて、前記ラケット横曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面と平行且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると6.5mm以上の横方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項20】
請求項16に記載のテニスラケットにおいて、前記ラケット横曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面と平行且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると7.0mm以上の横方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項21】
請求項17に記載のテニスラケットにおいて、前記ラケット横曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面と平行且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると7.0mm以上の横方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項22】
請求項17に記載のテニスラケットにおいて、前記ラケット前後曲げ試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記ストリングベッド平面に対して垂直且つ前記縦軸線に対して垂直な方向で測定すると前記縦軸線に関して10.0mm以上の前後方向撓みを有するテニスラケット。
【請求項23】
請求項16に記載のテニスラケットにおいて、該ラケットは、ラケット捩り安定性試験で試験可能であり、前記ラケット捩り安定性試験は、前記ストリングベッド、前記グリップ、及び前記エンドキャップを該ラケットの前記ハンドル部から取り外した後、前記ハンドル部上の第6箇所及び前記ヘッド部上の第7箇所それぞれで該ラケットに第2試験治具及び第3試験治具をそれぞれ取り付けステップと、前記第2試験治具から延びるアームに6.9kgの第3ウェイトを前記縦軸線から40cmの距離で付加して該ラケットに捩り荷重を加えるステップと、前記第3所定ウェイトを除去して前記縦軸線に関する角度振れ量を得るステップとを含み、前記ラケット捩り安定性試験での該ラケットの試験時に、該ラケットは、前記縦軸線に関して5.5°未満の角度振れを有するテニスラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してスポーツ用ラケットに関する。特に、本発明は、捩り安定性を維持しつつ、少なくともラケットのストリングベッドと平行な第1方向及びラケットのストリングベッドに対して垂直な第2方向でラケットの縦軸線に関する曲げに対する抵抗を低減した構成のラケットに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本願は、米国特許法第119条の下で、2018年3月12日付けで出願されたSevera他による「縦軸線に関して複数方向に可撓性を高めた構成のラケット(RACKET CONFIGURED WITH INCREASED FLEXIBILITY IN MULTIPLE DIRECTIONS WITH RESPECT TO A LONGITUDINAL AXIS)」と題する同時係属中の米国仮特許出願第62/641,600号からの優先権を主張し、その全開示を参照により本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
テニスラケット等のスポーツ用ラケットは、よく知られており、通常はスロート部によりハンドル部に結合されたヘッド部を有するフレームを含む。ヘッド部は、複数の横ストリングセグメントと交互に編み込まれた複数の縦ストリングセグメントを有するストリングベッドを支持する。
【0004】
プレーヤーは概して、自身のラケットからより高いコントロール、より大きなパワー、及び/又はより良い感触を得ることを求め続ける。熟練度の高いプレーヤーは、通常はテニスボールのインパクト時にボールにスピンをかけようとする。ボールにスピン(トップスピン又はバックスピン)をかけることができれば、プレー中にボールをコントロールしてより大きなパワーでボールを打つプレーヤーの能力を増大させることができる。例えば、テニスボールにトップスピンをかけることにより、プレーヤーは、より速くスウィングし、より強くテニスボールを打つことができる一方、テニスボールをコート内でインプレー状態に保つことができる。ボールにトップスピンをかけることにより、プレーヤーは、より高く打ち上げ、より速くスウィングし、ボールにネットを越えさせ、ボールをインプレー状態に保つことができる。熟練したテニスプレーヤーは、「球持ち」、すなわちインパクト時のラケットとボールとの接触時間が長いという感覚又は感触を与えるラケットも求める。球持ちが良ければ、ラケットの反応性だけでなく、ボールにスピンをかける能力を含むそのコントロールも向上する。熟練度の高いテニスプレーヤーがテニスボールにトップスピンをかけるのに用いるスウィングは、引き上げ動作を前方にスウィングする動作と組み合わせたものを含む。このようなトップスピンスウィング中にラケットのヘッド部を上方且つ前方に動かすことで、ボールインパクトの時間窓が短くなるので、トップスピンスウィングは、より水平なスウィングよりも上手に行いにくい。ボールにトップスピンをかけるのに用いられるラケットの引き上げ動作は、インパクト時にラケットに対する横荷重もさらに生む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ラケットは、ラケットの性能及びプレー性の向上のために常に設計されている。多くの既存のラケットは、ラケットの性能の向上のために高いラケットフレームビーム高さと、ラケットの剛性を高める他のラケットの幾何形状とを含む。他の既存のラケットは、ストリングベッドのサイズの増大及びラケットの性能の向上のために、拡大サイズのストリングベッド(すなわち、大きなヘッドサイズ)を支持する拡大サイズのフープ部を組み込んでいる。しかしながら、ラケットのヘッドサイズが大きくなると、ラケットの慣性極モーメントも大きくなる。慣性極モーメントが大きいラケットほど、特にネットプレー又はサーブリターン時に慣性モーメントが小さいラケットよりも操作し難くなり得る。他の既存のラケットは、ラケットの性能の向上のためにストリングベッドを構成する縦及び横ストリングセグメントを延長しようとする設計を含む。しかしながら、ラケットの性能及びプレー性をさらに向上させるラケットが依然として必要とされている。
【0006】
コントロールの向上、パワーの増大、及び/又は感触の改善等の性能向上をもたらすラケットを提供することが必要とされ続けている。トップスピンスウィングの引き上げ動作を含む全ての形態のラケットスウィング動作を改善しようとする、ラケット設計の改良の必要性は変わらない。ラケットの性能全体に悪影響を及ぼすことなく、「スウィートスポット」を拡大したストリングベッドを有し且つ「球持ち」を良くするラケットが必要とされ続けている。ラケットヘッドの慣性極モーメントを増大させることもラケットの操作性に悪影響を及ぼすこともなく、スウィートスポットが広く「球持ち」が良いラケットを提供することが有利であろう。伝統的なスポーツ用ラケットの設計から外観及び設計が激しく逸脱していない、スウィートスポットが広いストリングベッドを有するラケットも必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、縦軸線に沿って延び且つ横曲げ試験及び前後曲げ試験で試験可能なテニスラケットを提供する。横曲げ試験は、縦方向の第1箇所でラケットを第1向きで第1試験治具に取り付けるステップと、ラケットの第2箇所にクランプを装着するステップと、撓み表示器をクランプに動作可能に係合するステップと、所定の第1ウェイトをラケットの第3箇所に付加するステップと、第1ウェイトを除去して縦軸線に関するラケットの横方向撓み測定値を得るステップとを含む。前後曲げ試験は、縦方向の第1箇所でラケットを第2向きで第1試験治具に取り付けるステップと、ラケットの第4箇所に所定の第2ウェイトを付加するステップと、撓み表示器をラケットの第5箇所に動作可能に係合するステップと、第2ウェイトを除去して縦軸線に関する前後方向撓み測定値を得るステップとを含む。ラケットは、縦軸線に関して90°回転させて第1向きから第2向きにする。ラケットは、ヘッド部、ハンドル部、及びヘッド部とハンドル部との間に位置決めされたスロート部を含むフレームを備える。ヘッド部は、ストリングベッド平面を画定するフープを形成する。ラケットの少なくともヘッド部及びスロート部は、繊維複合材料で少なくとも部分的に形成される。スロート部は一対のスロート要素を含む。横曲げ試験でのラケットの試験時に、ラケットは、ストリングベッド平面と平行且つ縦軸線に対して垂直な方向で測定すると6.0mm以上の横方向撓みを有する。
【0008】
本発明の好ましい形態の主な態様によれば、前後曲げ試験でのラケットの試験時に、ラケットは、ストリングベッド平面に対して垂直且つ縦軸線に対して垂直な方向で測定すると縦軸線に関して9.0mm以上の前後方向撓みを有する。
【0009】
本発明の好ましい形態の主な態様によれば、テニスラケットは、縦軸線に沿って延び且つ前後曲げ試験及び捩り安定性試験で試験可能である。前後曲げ試験は、縦方向の第1箇所でラケットを第1向きで第1試験治具に取り付けるステップと、撓み表示器をラケットの第2箇所に動作可能に係合するステップと、所定の第1ウェイトをラケットの第3箇所に付加するステップと、所定の第1ウェイトを除去して縦軸線に関する前後方向撓み測定値を得るステップとを含む。捩り安定性試験は、ラケットの第4箇所及び第5箇所それぞれでラケットに第2試験治具及び第3試験治具をそれぞれ取り付けるステップと、第2試験治具から延びるアームに所定の第2ウェイトを付加してラケットに捩り荷重を加えるステップと、所定の第2ウェイトを除去して縦軸線に関する角度振れ量を得るステップとを含む。ラケットは、ヘッド部、ハンドル部、及びヘッド部とハンドル部との間に位置決めされたスロート部を含むフレームを備える。ヘッド部は、ストリングベッド平面を画定するフープを形成する。ラケットの少なくともヘッド部及びスロート部は、繊維複合材料で少なくとも部分的に形成される。スロート部は一対のスロート要素を含む。前後曲げ試験でのラケットの試験時に、ラケットは、ストリングベッド平面に対して垂直且つ縦軸線に対して垂直な方向で測定すると縦軸線に関して9.0mm以上の前後方向撓みを有する。捩り安定性試験でのラケットの試験時に、ラケットは、縦軸線に関して5.5°未満の角度振れを有する。
【0010】
本発明の好ましい形態の別の主な態様によれば、テニスラケットは、縦軸線に沿って延び且つヘッド部、ハンドル部、及びヘッド部とハンドル部との間に位置決めされたスロート部を含むフレームを含む。ヘッド部は、ストリングベッド平面を画定するフープを形成する。スロート部は一対のスロート要素を含む。ラケットの少なくともヘッド部及びスロート部は、繊維複合材料で少なくとも部分的に形成される。繊維複合材料は、複数のプライ配列を含む。プライ配列のそれぞれは、一方が複合軸線に関して第1角度を規定する第1複数繊維を有し他方が複合軸線に関して第2角度を規定する第2複数繊維を有する一対のプライを含む。第1角度及び第2角度は、複合軸線に関して逆の角度極性を有すること以外は実質的に同じである。ヘッド部は、重なり合った少なくとも3つのプライ配列を含み、この少なくとも3つのプライ配列のうち少なくとも2つの第1角度及び第2角度は、35°以上である。
【0011】
本発明の好ましい形態の別の主な態様によれば、スポーツ用ラケットは、ラケット振動試験で試験可能である。ラケット振動試験は、ハンマー、ラケットに取り外し可能に装着された加速度計、及びモーダル解析中に両端自由条件でラケットを支持するモーダル解析フレームを含む、モーダル解析システムを利用する。ラケットは、縦軸線に沿って延び且つヘッド部、ハンドル部、及びヘッド部とハンドル部との間に位置決めされたスロート部を含むラケットフレームを備える。ヘッド部は、ストリングベッド平面を画定するフープを形成する。スロート部は一対のスロート要素を含む。ラケットの少なくともヘッド部及びスロート部は、繊維複合材料で少なくとも部分的に形成される。ヘッド部は、前方フープ表面及び後方フープ表面を含む。前方フープ表面と後方フープ表面との間の距離は、ビーム高さ距離である。ヘッド部は、19mm以上の最大ビーム高さ距離を有する。ラケット振動試験でのラケットの試験時に、ラケットは、130Hz以下の振動を有する。
【0012】
本発明は、以下の詳細な説明を以下に記載する添付図面と共に読めばさらに十分に理解されるであろう。図面において、同様の符号は同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施態様によるラケットの正面図である。
図2】グリップ及びエンドキャップなしで示す図1のラケットの等角図である。
図3図1のラケットの側面図である。
図4図4Aは、本発明の好ましい一実施態様によるブラダー及びマンドレルに巻き付ける前の一対の繊維複合材料プライの一部を示す斜視図である。図4Bは、本発明の好ましい一実施態様によるブラダー及びマンドレルに巻き付ける前の編組繊維複合材料層の一部を示す斜視図である。
図5】ブラダー及びマンドレルの周囲での成形前の繊維複合材料層のレイアップ又は配列の一部の側面図である。
図6】マンドレル及びブラダーと共に示す図5の繊維複合材料層のレイアップの上面側面斜視図である。
図7】マンドレルを除去してラケットの形状に近付くよう湾曲させた図6の繊維複合材料層のレイアップ、及びヨーク繊維複合レイアップの上面側面斜視図である。
図8】ラケット成形型に入れる前の図7の繊維複合材料層のレイアップの上面側面斜視図である。
図9】ラケット成形型に入る繊維材料層のレイアップの上面側面分解図である。
図10】ラケット横曲げ試験アセンブリ、及び第1ウェイトをラケットに付加してラケット横曲げ試験を受けているストリングなしのラケットの側面斜視図である。
図11】ラケットのヘッド部の遠位領域に取り外し可能に装着されたクランプ、及び図10のラケット横曲げ試験アセンブリの下でクランプに係合している撓み計の上面側面斜視図である。
図12】第1ウェイトをラケットから除去した図10のラケット横曲げ試験アセンブリの側面斜視図である。
図13】ラケット前後曲げ試験アセンブリ、及び第2ウェイトをラケットのヘッド部の遠位領域に付加してラケット前後曲げ試験を受けているラケットの側面斜視図である。
図14図13のラケット前後曲げ試験アセンブリの下の撓み計及びラケットに付加した第2ウェイトの上面側面斜視図である。
図15】第2ウェイトをラケットから除去した図13のラケット前後曲げ試験アセンブリの側面図である。
図16】ラケット捩り安定性試験アセンブリ、及び第3ウェイトをラケット捩り安定性アセンブリに付加してラケット捩り安定性試験を受けているラケットの上面側面斜視図である。
図17図16のラケット捩り安定性試験アセンブリの第1端の側面斜視図である。
図18】ラケット捩り安定性試験アセンブリ、及び第3ウェイトをラケット捩り安定性試験アセンブリから除去して図16のラケット捩り安定性試験を受けているラケットの上面側面斜視図である。
図19】ラケットで行われている振動解析試験の上端斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1図3では、スポーツ用ラケットを全体的に10で示す。図1のラケット10はテニスラケットとして構成されている。ラケット10は、縦軸線16に沿って延び且つヘッド部18、ハンドル部20、及びヘッド部18とハンドル部20とを結合するスロート部22を含むフレーム12を含む。フレーム12は、軽量で耐久性のある材料、好ましくは炭素繊維複合材料で形成された管状構造体である。
【0015】
ヘッド部18は、内周壁及び外周壁24、26を含む管状構造体である。ヘッド部18は、遠位領域28、第1及び第2側方領域30、32、及び近位領域34等の領域に分割することができ、これらが共同で、ストリングベッド14を収容し且つ支持するストリングベッド面積38を有するフープ36を画定する。好ましい一実施態様では、近位領域34はヨーク40を含む。ストリングベッド面積38は、ラケット10のヘッドサイズとも称される。好ましい実施態様では、ラケット10のヘッドサイズ又はストリングベッド面積38は、93平方インチ~120平方インチの範囲内にある。他の実施態様では、ラケット10のヘッドサイズは、98平方インチ~115平方インチの範囲内にあり得る。他の実施態様では、他のヘッドサイズを用いることもでき、本発明の下にあることが意図される。ストリングベッド面積38は、最大縦寸法a及び最大横寸法bを有する。フープ36は、例えば略楕円形、略涙滴形、略円形、略洋梨形、及びこれらの組み合わせを含む、任意の閉曲線形状であり得る。実施態様によっては、最大縦寸法aは、最大横寸法bの1.2倍以上であり得る(a≧1.2×b)。他の実施態様では、最大縦寸法aは、最大横寸法bの1.25倍以上である(a≧1.25×b)。他の実施態様では、最大縦寸法aは、最大横寸法bの1.2倍未満であり得る。
【0016】
ヨーク40は、ヘッド部18の第1側方領域30から第2側方領域32まで延びる細長い管状構造部材である。一実施態様では、ヨーク40は、近位領域34を画定するフレーム12と一体的に形成される。例えば、ヨークは、ラケット10のフレーム12と共に繊維複合材料で形成され成形及び硬化されてもよい。代替的な好ましい実施態様では、ヨーク40は、接着剤、ファスナ、接合、及びこれらの組み合わせを用いてフレーム12に接続されてもよい。ヨーク40は、炭素繊維複合材料等の軽量で耐久性のある材料で形成される。代替的に、ヨーク40は、例えば他の複合材料、合金、高分子材料、木材、及びこれらの組み合わせ等の、他の材料で形成されてもよい。
【0017】
好ましい実施態様では、第1及び第2側方領域30、32は、ヘッド部18から下方に延びて、スロート部22の第1及び第2スロート管42、44を形成する。第1及び第2スロート管42、44は、収束してさらに下方に延びてハンドル部20を形成する。したがって、こうした実施態様では、フレーム12は、その中央領域で湾曲してヘッド部18を形成する1つの連続材料(例えば繊維複合材料)管とすることができ、続いて連続材料管の各側がスロート領域22で相互に向かって収束することができ、連続管の端部領域を並べて配置してハンドル部20のベース構造を形成することができる。こうした実施態様では、フレーム12は、一体構造として形成される。ハンドル部20は、パレット46、グリップ48、及びエンドキャップ50をさらに含み得る。他の実施態様では、ハンドル部20は、第1及び第2スロート管の延長部分を含まない管状構造体であり得る。こうした実施態様では、ハンドル部は、フレームのスロート部又はヘッド部とは別個の管状構造体であって、従来のファスナ、成形技術、接合技術、接着剤、又はこれらの組み合わせを用いてスロート部に装着され得る。他の実施態様では、ハンドル部は、従来のパレットの外面の形状に形成されることにより、パレットを用いる必要をなくすことができる。
【0018】
他の実施態様では、ヘッド部18は、従来のファスナ、接着剤、機械的接合、熱的接合、又はこれらの組み合わせを用いてスロート部22及びヨーク40の一方又は両方に直接接続され得る。一実施態様では、ヘッド部18は、エラストマー等の振動及び衝撃吸収材料によりスロート部及びヨークの一方又は両方から分離され得る。
【0019】
ラケット10は、ストリングベッド14を支持するよう構成され、複数の縦ストリングセグメント52を複数の横ストリングセグメント54と交互に編織することにより形成される。ストリングベッド14は、ストリングセグメント52と54との間の間隔を一定にして略均一であることが好ましい。代替的に、ストリングベッド14の縦及び横ストリングセグメントの間隔がストリングベッド14の中心(又はストリングベッド若しくはストリングベッド面積の幾何学的中心付近)で最も密であれば、ストリングベッドに多少の間隔のばらつきがあってもよい。縦及び横ストリングセグメント52、54は、1本の連続したラケットストリングから、又は2本以上のラケットストリングから形成され得る。ラケットストリングは、引張強度が高い可撓性材料で形成される。好ましい実施態様では、ラケットストリングは、ポリエステル材料、ナイロン、天然ガット材料、及び/又は合成ガット材料で形成され得る。ラケットストリングは、モノフィラメント構成で形成されてもマルチフィラメント構成で形成されてもよく、さまざまな異なる直径(又はゲージ)で形成することができる。好ましくは、ラケットストリングの直径は、1.10mm~1.55mmの範囲内にある。
【0020】
フープ36の内周壁及び外周壁24、26は、ラケットストリングを収容するストリング孔59を含み得る。ストリング孔59は、ラケットストリング又はラケットストリング及びグロメットの組み合わせの直径よりも僅かに大きなサイズ、又はラケットストリング及び/又はグロメットの動き又は撓みに適応するサイズであり得る。ラケット10のヘッド部18は、1つのストリング孔から別のストリング孔へ延びるラケットストリングを支持し且つ保護する1つ又は複数のグロメット又はバンパーガードも含み得る。さらに、ストリング孔59の数を変えることで、ストリング配列又は縦ストリングセグメント52及び横ストリングセグメント54の数を異ならせて、異なるストリングパターンを得ることができる。図3を参照すると、ヘッド部18の内周壁及び外周壁24、26は、前方フープ表面25から後方フープ表面27まで測定される最大ビーム高さ距離dを規定することができる。一実施態様では、最大ビーム高さ距離dは19mm以上である。他の実施態様では、最大ビーム高さ距離dは20mm以上であり得る。他の実施態様では、最大ビーム高さ距離dは21mm以上であり得る。さらに他の実施態様では、最大ビーム高さ距離dは22mm以上であり得る。
【0021】
図1図3を参照すると、縦及び横ストリングセグメント52、54は、ラケットストリングのうちストリングベッド14を構成する部分を指す。ストリングベッド14は、ストリングベッド平面56(又は第1平面)の辺りに延びてこれを略画定する。ストリングベッド平面(又は第1平面)56は、縦軸線16を通って延びる。ストリングベッド平面(又は第1平面)56に対して垂直な第2平面58も、縦軸線16を通って延びる。ストリングベッド平面56は、ストリングの有無を問わずラケットに存在する。
【0022】
従来のテニスラケットは、通常は繊維複合材料及び/又はアルミニウムで形成され、通常はラケットの縦軸線に関する撓みに抵抗する剛性構造体となるよう形成される。剛性のラケット構成は、ラケットのパワー及び/又はコントロールを向上させると思われるので、概して望ましいと考えられる。従来、ラケットの剛性は概して、ラケットの縦軸線に沿った曲げ、及びストリングベッドに関して前後方向のストリングベッドに関する曲げに対するラケットの抵抗を指す。ラケット剛性は、通常は前後曲げ試験(又はラケット剛性試験)で測定され、この試験では、ストリングベッド(及びストリングベッド平面)を地面に対して略水平に位置決めしてラケットのハンドル部を試験治具に緊締固定し、ストリングベッド平面に対して垂直な方向でヘッド部の遠位領域に荷重を加える。荷重は、縦軸線及びストリングベッド平面に関してラケットを曲げ、撓わせ、又は撓ませる。撓み量を測定して、ラケットの剛性レベルを確認する。
【0023】
高品質のラケットは、通常は高レベルの捩り安定性を提供するようにも設計される。捩り安定性のあるラケットは、テニスボールでのオフセンターインパクト時にラケットのヘッド部の回転運動に抵抗し、これはラケットのコントロールを向上させる。したがって、従来のラケット設計は、所定のラケット重量又は重量範囲で高レベルのラケット剛性及び捩り安定性を有するラケットを製造しようとするものである。
【0024】
ラケット10のフレーム12のヘッド部18及びスロート部22の形状及び幾何形状も、ラケットの剛性レベル及び/又は捩り安定性に寄与する。例えば、ラケットビーム高さが高いラケットは、概してラケットビーム高さが低いラケットよりも高剛性である。スロート管42及び44の形状及び幾何形状も、ラケットの剛性に影響を及ぼし得る。
【0025】
従来のラケット設計とは逆に、本発明の共同発明者らが特定し開発したラケット構成は、所望のレベルの捩り安定性を維持しつつ、ラケットの縦軸線及びストリングベッド平面に関するラケットの剛性を高め且つ縦軸線及び(ストリングベッド平面に対して垂直な)第2平面に関する横方向ラケット剛性を低減したものである。従来のラケット設計及び期待される結果とは逆に、本発明の共同発明者らによれば、ストリングベッド平面及びストリングベッド平面に対して垂直な第2平面に関してラケットの縦軸線に沿った縦方向撓みを増加させて製造されたラケットが、コントロールの向上及び/又はパワーの増大と共に大幅に改善された感触を生み出すことが分かった。例えば、縦軸線16及びストリングベッド平面56及び/又は第2平面58に関する可撓性を高めた本発明の実施態様は、ラケットの球持ち、コントロール、及び性能を向上させることができる。他の実施態様では、縦軸線16及び第2平面58に関する可撓性を高めると、ラケット10は、トップスピンスウィングの実行時にラケットに加わる横荷重等の横荷重に応答して撓うことができる。本発明のラケットは、特にトップスピンスウィング中に著しく良い感触、及びボールとの相互作用が増大した感覚を与え、プレーヤーにとってのコントロールの向上及びパワーの増大を得ることができる。
【0026】
本発明の共同発明者らが開発した改良型の繊維複合ラケット構成は、高レベルの捩り安定性を維持しつつ、縦軸線に関する撓みレベルを上げた(剛性を低減させた)ラケットの製造を可能にする。
【0027】
本発明の一実施態様では、スロート管42及び44の形状及び幾何形状は、ストリングベッド平面56及び第2平面58に関するラケット10の可撓性に寄与する一方で、ラケット10の捩り安定性に寄与する。本発明の別の実施態様では、ヘッド部18及びスロート部22の形成に用いられる繊維複合材料のレイアップは、ストリングベッド平面56及び第2平面58に関するラケット10の可撓性の向上に寄与する一方で、ラケット10の高レベルの捩り安定性を維持する。
【0028】
本明細書では、「繊維複合材料」又は「複合材料」という用語は、樹脂を浸透させた複数の繊維を指す。繊維は、シート状、層状、若しくはプライ状に同軸上に並べられてもよく、又はシート状若しくは層状に編成又は織成されてもよく、且つ/又は細断されて1つ又は複数の層にランダムに分散されてもよい。1つのプライが、通常は数百本又は数千本の繊維束を含み、繊維束は、当初未硬化の樹脂中で相互に同軸上に平行に延びるように最初に配置される。繊維束のそれぞれが複数の繊維を含む。繊維は、炭素等の高引張強度材料で形成される。代替的に、繊維は、例えばガラス、グラファイト、ホウ素、玄武岩、キャロット(carrot)、Kevlar(登録商標)、Spectra(登録商標)、ポリパラフェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール(PBO)、麻、亜麻、他の天然繊維、及びこれらの組み合わせ等の他の材料で形成され得る。好ましい実施態様では、樹脂は、エポキシ又はポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂であることが好ましい。他の好ましい実施態様では、樹脂は熱可塑性樹脂であり得る。複合材料は、通常はマンドレル及び/又は同等の構造体に巻き付けられ、熱及び/又は圧力下で硬化される。硬化中、樹脂は、流れて繊維のマトリックス全体に完全に分散し広がるよう構成される。複数の層又はプライ構成では、繊維は、縦軸線16に関してそれぞれ異なる方向に並べられてもよく、且つ/又は層毎に組物又は織物にされてもよい。
【0029】
図4Aを参照すると、繊維複合材料層60の一部が図示されている。層60は、1つ又は2つの繊維複合材料プライ62(62a及び62b)により形成される。繊維複合材料プライ62は、樹脂68中に繊維64及び繊維束66を配置したものを指し、繊維64及び繊維束66は、繊維64及び繊維束66が相互に略同軸上に延び且つ相互に略平行であるように配置及び整列される。繊維64及び繊維束66は、プライ62に沿って延び且つ複合軸線70等の軸線に関して略同じ角度を形成するよう形成されることが好ましい。プライ62は通常、軸線70に関して繊維64及び繊維束66が定める角度のサイズ及び極性により少なくともある程度は識別される。図4Aに示すように、プライ62aは、+45°アングルプライで整列した繊維64及び繊維束66を有し、プライ62bは、-45°アングルプライで整列した繊維64及び繊維束66を有する。他の実施態様では、プライ62は、+30°アングルプライ、-30°アングルプライ、+45°アングルプライ、-45°アングルプライ、+40°アングルプライ、-40°アングルプライ、+35°アングルプライ、-35°アングルプライ、(軸線に対して垂直に延びる)90°アングルプライ、及び(軸線と平行に延びる)0°アングルプライを規定する繊維64及び繊維束66含み得る。プライについては他の+又は-の角度も用いることができる。したがって、本願では、単一プライ62は、繊維複合材料単層において、プラスすなわち+45°又はマイナスすなわち-30°等、その単層に沿った縦軸線に関して実質的に同じ方向に繊維束66同士が延びるものを指す。略同じ角度だが逆の極性で配置された繊維64を有する一対のプライ62で形成された層60を、プライ配列と称する。このパターンは、通常は繊維複合材料全体に延びる。繊維束66及び繊維64の交互角度配置は、繊維複合材料で形成されている部品又は構造の構造的完全性を達成し且つ維持するのに重要である。2つのプライ62a及び62bの重なり領域は、一旦硬化されたら繊維複合材料が所望の強度、耐久性、靭性、及び/又は信頼性を有することを確実にするのに不可欠であり得る。
【0030】
従来の繊維複合材料ラケットは、ごく一部が90°プライを有する層であることを除いて、30°以下の両角度極性を有するプライを含む繊維複合層で形成される。30°以下の角度値のプライを有する層が用いられる理由は、層をこのように配列すると、所望の高レベルの剛性を得ることができ、大きな未切断の繊維複合材料シートからのプライの準備又は切断時に出る製造廃棄物も少なくできるからである。従来のラケット設計の教示が30°よりも大きな角度極性を有するプライを否定している理由は、このように大きな角度のプライがラケットの剛性に悪影響を及ぼすと思われ、不必要な材料浪費をもたらし、それがラケットの製造費を不必要に増加させると思われたからである。
【0031】
加熱/成形及び硬化中、樹脂54は、プライ62間及び繊維束66内を流れることができる。プライ62は、通常は0.002インチ~0.015インチの範囲内の厚さを有することが好ましい。他の実施態様では、他の厚さ範囲を用いることもできる。
【0032】
図4Bを参照すると、他の実施態様では、層60の1つ又は複数が複数の編組繊維62cを含み得る。編組繊維62cは、レイアップ軸70に関して+及び-の極性で35°以上の角度で延び得る。他の実施態様では、編組繊維62cは、レイアップ軸70に関して(+及び-の極性で)40°以上の角度で延び得る。
【0033】
図5を参照すると、マンドレル74に巻き付けられるか又はその周囲に形成される層60の例示的な配置が図示されている。図5の例示的な配置は、本発明の例示的な実施態様でのラケットフレームの一般的なレイアッププロセスを示すためのものであり、包括的であると考えられるものではない。他の層数、他の層長さ、他の層幅、他の層形状、他の層繊維角度値、他の層順序、及びこれらの組み合わせを含む層60の他の配置が、本発明に基づき考えられる。フレーム12の形成に用いられるプライ62の数は、2個~150個の範囲内にあり得る。好ましい実施態様では、フレーム12又はそのヘッド部18及びスロート部22の形成に用いられるプライ62の数は、10プライ以上である。他の実施態様では、他のプライ数を用いることができる。
【0034】
マンドレル74は、概して成形部品の内面を形成する形状の、繊維複合材料層60を巻き付けるか又は張り付けることができるコアとして働く物体である。一実施態様では、マンドレル74は、角がアール状の略矩形の断面積を有する長尺体である。他の実施態様では、マンドレルは他の断面形状を有し得る。ブラダー76が、マンドレル74に被せられてその外面に適合する。各層60が、ブラダー76及びマンドレル74の周囲に巻き付けられるか又は形成され、ブラダー76及びマンドレル74の形態又は形状に従う。図5の配置例では、層60aを最初に巻き付け、次に層60bを巻き付け、以下同様にした層(層60a~60k)が図示されている。重要なことだが、層60の大部分が45°の角度方向を有する(層60a、60b、60d、60e、60h、及び60k)。層(60a、60b、60d~60f、及び60h~60k)のそれぞれが、同じ角度値を有するが極性が逆である一対のプライを含む(例えば、60aは、+45°の角度で延びる繊維を有する1つのプライと、-45°の角度で延びる繊維を有する別のプライとを含む)。さらに、45°の角度方向を有する層(層60a、60b、60d、60e、60h、及び60k)は、レイアップ(又は複数のプライ配列)の総層数のうち長寸層60を形成する。したがって、角度が大きい層は、概してレイアップの全長に沿って延びるので、成形及び硬化されると、角度が大きい層はヘッド部、スロート部、及びハンドル部にわたって延びる。
【0035】
他の実施態様では、他の層60の数、層60の長さ、及び層60の角度方向を用いることができる。本発明の実施態様では、複数の層60(又はプライ配列)が、高角度のプライ、すなわち複合軸線70に関して35°以上の角度を有するプライを含む。一実施態様では、少なくとも4つの層の繊維複合材料レイアップ80(図6参照)のうち少なくとも2つの層(又はプライ配列)が、複合軸線70に関して35°以上の角度で延びる繊維を有する少なくとも2つのプライ62(35°層又はプライ配列)をそれぞれ含み得る。別の実施態様では、少なくとも4つの層60の繊維複合材料レイアップ80のうち少なくとも2つの層(又はプライ配列)が、複合軸線70に関して40°以上の角度で延びる繊維を有する少なくとも2つのプライ62(40°層又はプライ配列)をそれぞれ含み得る。別の実施態様では、少なくとも4つの層のレイアップ80のうち少なくとも2つの層(又はプライ配列)60が、複合軸線70に関して45°以上の角度で延びる繊維を有する少なくとも2つのプライ62(45°層又はプライ配列)をそれぞれ含み得る。他の実施態様では、少なくとも4つの層60の繊維複合材料レイアップ80(又は複数のプライ配列)が、少35°以上の層である少なくとも3つの層60を含み得る。別の実施態様では、少なくとも4つの層60のレイアップ80が、40°以上の層である少なくとも3つの層60を含み得る。別の実施態様では、少なくとも4つの層60の繊維複合材料レイアップ(又は複数のプライ配列)が、45°以上の層である少なくとも3つの層60を含み得る。
【0036】
他の実施態様では、レイアップ80すなわち複数のプライ配列は、少なくとも5つの層60、少なくとも6つの層60、少なくとも7つの層60、及びそれ以上の数の層を含み得る。このようなレイアップでは、35°以上の角度である層60の数は、少なくとも3層、又は4層、又は5層以上であり得る。他の実施態様では、レイアップ80すなわち複数のプライ配列は、少なくとも5つの層60、少なくとも6つの層60、少なくとも7つの層60、及びそれ以上の数の層を含むことができ、40°以上の角度である層60の数は、少なくとも3層、又は4層、又は5層以上であり得る。さらに他の実施態様では、レイアップすなわち複数のプライ配列は、少なくとも5つの層60、少なくとも6つの層60、少なくとも7つの層60、及びそれ以上の数の層を含むことができ、45°以上の角度である層60の数は、少なくとも3層、又は4層、又は5層以上であり得る。
【0037】
好ましい実施態様では、ハイアングル層(35°以上のアングル層、40°以上のアングル層、又は45°以上のアングル層)の長さは、ラケット10のヘッド部18のレイアップの全長の40%以上にわたって延びる。他の実施態様では、ハイアングル層の長さは、ラケット10のヘッド部18のレイアップの全長の50%以上にわたって延びる。他の実施態様では、ハイアングル層の長さは、ラケット10のヘッド部18のレイアップの全長の70%以上にわたって延びる。好ましい実施態様では、層60すなわちプライ配列の長さは、成形及び硬化されるとハイアングル層(35°以上のアングル層、40°以上のアングル層、又は45°以上のアングル層)がラケット10の少なくともヘッド部18にわたって延びるように十分に長くすることができる。他の実施態様では、層60すなわちプライ配列の長さは、成形及び硬化されるとハイアングル層(35°以上のアングル層、40°以上のアングル層、又は45°以上のアングル層)がラケット10の少なくともヘッド部18及びスロート部22にわたって延びるように十分に長くすることができる。
【0038】
一実施態様では、レイアップすなわち複数のプライ配列の層60の50%以上が炭素繊維で形成され得る。別の実施態様では、レイアップの層60すなわちプライ配列の75%以上が炭素繊維で形成され得る。一実施態様では、レイアップ80のハイアングル層(35°以上のアングル層、40°以上のアングル層、又は45°以上のアングル層)のそれぞれが、樹脂を含み、100g/m以上の単位面積当たりの繊維重量を有する。別の実施態様では、レイアップ80のハイアングル層(35°以上のアングル層、40°以上のアングル層、又は45°以上のアングル層)のそれぞれが、樹脂を含み、120g/m以上の単位面積当たりの繊維重量を有する。
【0039】
図6を参照すると、層60がブラダー76及びマンドレル74の周りに巻き付けられるか又はレイアップされると、プライ62は平坦なシート状に配置されなくなるので、繊維束66及び繊維64は略平行な線に従わなくなる、又は略平行な線を規定しなくなる。正確には、繊維束66及び繊維64は、相互に隣接し、実質的に同じ隣接経路を辿るように湾曲状又は他の形態になる。例えば、プライ62がブラダー76及びマンドレル74に巻き付けられると、プライ62は、略円筒状又は管状の形状になることができ、繊維束66及び繊維64は、(プライ62内のそれらの角度に応じて)同じ円筒経路を辿るか又は螺旋経路を規定し得る。繊維64同士は、相互に隣接したまままであり、相互に並び、且つプライ62の単一の平面又は他の小さな有限部分において断面で見た場合に例えば本質的に平行である(又は同軸上にさえある)実質的に同様の経路を辿る。
【0040】
一実施態様では、マンドレル74は、ブラダー76及びマンドレル74に巻き付けられた複数の層60からのマンドレル74の引き抜き又は除去を容易にするためのプルタブ82を含み得る。図6のレイアップ80は未硬化である。一実施態様では、マンドレル74は、プルタブ82を用いて、ブラダー及びレイアップ80から抜き取る、引き抜く、又は他の方法で除去することができる。
【0041】
図7及び図8を参照すると、マンドレル74がブラダー76及びレイアップ80から除去されたら、未硬化のレイアップ80をラケットフレーム形状に緩やかに位置決めすることができる。繊維複合材料の未硬化ヨークレイアップ84を、硬化したレイアップ80の隣に位置決めするために準備することができる。図8に示すように、レイアップは、ラケットフレームに似せた形状にすることができ、ヨークレイアップ84は、レイアップ80に取り付けることができる。一実施態様では、ヨークレイアップ84とレイアップ80との接続点に付加的な比較的短い繋ぎ材又は繋ぎ用プライを加えることができる。他の実施態様では、ヨークレイアップは、成形前にレイアップ80に取り付けられた予備成形ヨーク構造体で置き換えられ得る。
【0042】
図9を参照すると、未硬化レイアップ80及び未硬化ヨークレイアップ84は、ラケット成形型90の金型キャビティ88内に位置決めされる。供給ライン86をブラダー76に取り付けて、空気又は他のガスをブラダーに供給することができ、ラケット成形型90のコマをレイアップ80及びヨークレイアップ84の周りに位置決めすることができる。ブラダー76を空気又は他のガスにより所定の圧力まで加圧することができ、続いてラケット成形型90を炉又は窯で所定の温度に加熱することができる。熱及び圧力を受けると、レイアップ80及びヨークレイアップ84の樹脂68の粘度が低下し、樹脂68は、金型キャビティ88内のレイアップ80及びヨークレイアップ84のプライ62を流通してより均一な構造を作り出し、繊維64は、金型キャビティの形状に位置決めされる。第1所定時間後に、ラケット成形型90取り下ろしてレイアップ80及びヨークレイアップ84を放冷する。第2所定時間後に、ラケット成形型90を開いてラケットフレーム12を型90から取り出す。ラケット10のフレーム12は、260gm~355gmの範囲内の重量を有し得る。他の実施態様では、ラケットのフレームは180gm~370gmの範囲外の重量を有し得る。
【0043】
ハイアングル層60(35°以上のアングル層、40°以上のアングル層、45°以上のアングル層、又は60°以上のアングル層)をテニスラケット10のフレーム12のレイアップ80に組み込むことで、ラケットの感触及びプレー性を意外なほど大幅に改善する性能特徴の特有の組み合わせが得られる。ハイアングル層60をテニスラケット10のフレーム12のレイアップ80に組み込むことで、ラケット捩り安定性試験で高レベルの捩り安定性を維持しつつ、前後方向ラケット剛性試験で大きな変位量、横方向ラケット剛性試験で大きな変位量を有するラケット10を得ることができる。したがって、本発明の実施態様に従って作製されたラケットは、所望量の捩り安定性を維持しつつ、縦軸線14、ストリングベッド平面56、及び第2平面58に関して低い又は低減した縦剛性を示すことができる。この属性の組み合わせは、ラケット構成に特有のものであり、格別な感触、プレー性、コントロール、及び/又はパワーを有するラケットが得られる。
【0044】
本発明に従って作製されたラケットは、ラケットの使用者にいくつかの大きな利点を提供することができる。(1)ストリングベッド平面56に関して前後方向でラケット縦軸線に関して測定されたラケット撓み、及び(2)第2平面58に関して横方向でラケットの縦軸線に関して測定されたラケット撓み等の特徴が、本発明に従って作製されたラケットの使用により実質的に増大し得る。さらに、本発明に従って作製されたラケットは、所望のレベルの捩り安定性と、ラケットの感触を改善する非常に低い周波数値とを示す。さらに、本発明に従って作製されたラケットは、かかるラケットの感触の改善に寄与する比較的低い振動レベルを示す。
【0045】
本発明に従って作製されたラケットは、ラケット横曲げ試験での試験時に、ストリングベッド平面と平行且つ縦軸線に対して垂直な方向に測定すると6.0mm以上の横方向撓みを提供し得る。したがって、本発明に従って作製されたラケットは、ストリングベッド平面と平行且つ縦軸線に対して垂直な方向の縦軸線に関する曲げに対する抵抗が低減している。他の実施態様では、本発明に従って作製されたラケットは、ラケット横曲げ試験での試験時に、ストリングベッド平面と平行且つ縦軸線に対して垂直な方向で測定すると6.5mm以上の横方向撓みを提供し得る。さらに、他の実施態様では、本発明に従って作製されたラケットは、ラケット横曲げ試験での試験時に、ストリングベッド平面と平行且つ縦軸線に対して垂直な方向で測定すると7.0mm以上の横方向撓みを提供し得る。
【0046】
本発明に従って作製されたラケットは、ラケット前後曲げ試験での試験時に、ストリングベッド平面に対して垂直且つ縦軸線に対して垂直な方向で測定すると9.0mm以上の前後方向撓みを提供し得る。したがって、本発明に従って作製されたラケットは、ストリングベッド平面に対して垂直且つ縦軸線に対して垂直な方向の縦軸線に関する曲げに対して抵抗が低減している。他の実施態様では、本発明に従って作製されたラケットは、ラケット前後曲げ試験での試験時に、ストリングベッド平面に対して垂直且つ縦軸線に対して垂直な方向で測定すると10.0mm以上の前後方向撓みを提供し得る。他の実施態様では、本発明に従って作製されたラケットは、ラケット前後曲げ試験での試験時に、ストリングベッド平面に対して垂直且つ縦軸線に対して垂直な方向で測定すると10.5mm以上の前後方向撓みを提供し得る。さらに、他の実施態様では、本発明に従って作製されたラケットは、ラケット前後曲げ試験での試験時に、ストリングベッド平面に対して垂直且つ縦軸線に対して垂直な方向で測定すると11.0mm以上の前後方向撓みを提供し得る。
【0047】
本発明に従って作製されたラケットは、ラケット捩り安定性試験での試験時に、5.5°未満の角度振れも提供し得る。他の実施態様では、本発明に従って作製されたラケットは、ラケット捩り安定性試験での試験時に、5.0°以下の角度振れを提供し得る。
【0048】
さらにまた、本発明に従って作製されたラケットは、135Hz以下のモーダル解析からの周波数値を提供し得る。他の実施態様では、本発明に従って作製されたラケットは、130Hz以下のモーダル解析からの周波数値を提供し得る。他の実施態様では、本発明に従って作製されたラケットは、120Hz以下のモーダル解析からの周波数値を提供し得る。さらに他の実施態様では、本発明に従って作製されたラケットは、115Hz以下のモーダル解析からの周波数値を提供し得る。
【0049】
図10図12に示すように、Wilson Sporting Goods Co.は、ラケット撓み試験アセンブリ100を用いてラケット横曲げ試験を行った。ラケット横曲げ試験では、ラケットの横方向可撓性、すなわちラケットの縦軸線16及び第2平面58に関する曲げに対するラケットの抵抗を測定する。「ラケット横曲げ試験」という用語は、以下の説明に合う試験を意味する。ストリングベッド、グリップ、及びエンドキャップを、ラケットのハンドル部から取り外す。ラケット横曲げ試験では、ラケットのハンドル部を第1箇所104で、ラケット10の縦軸線16が地面と平行であり且つラケット10のストリング平面56が地面に対して垂直である第1向きで、第1試験治具102にしっかりと取り付ける。一実施態様では、第1試験治具102は空気圧クランプであり得る。他の実施態様では、他の形態の試験治具を用いることができる。図10及び図11を参照すると、試験用クランプ106を、フープ36の12時の位置でラケット10のヘッド部18の遠位端領域18にある第2箇所108で、ラケット10に取り外し可能に緊締固定する。試験用クランプ106は、重量が50グラム未満の軽量クランプであり、イリノイ州オーロラのMitutoyoによるDigimatic(商標)インジケータモデルID-150ME等のデジタル撓み表示器114の感知プローブ112と動作可能に係合する水平に位置決めされた側面110を含む。デジタル撓み表示器114の感知プローブ112が側面110と係合する場所は、ヘッド部18の遠位端領域28の(12時の位置にある)遠位端面から40mmに位置決めされる。第1ウェイト116をラケット10の第3箇所118に付加する。第3箇所は、ラケット10の縦軸線16に沿ってラケット10の近位端から20インチの距離で、フープ36の概ね3時の位置にあるヘッド部18の第2側方領域32に位置決めされる。第1ウェイト116は3kgのウェイトであり、これは、ラケットの第3箇所118に付加されるとラケット10を縦軸線16に関して撓ませる。感知プローブ112をクランプ106の側面110と係合するよう位置決めし、デジタル撓み表示器114をゼロに合わせる。図12を参照すると、第1ウェイト116をラケット10から除去し、横方向撓み測定値をデジタル撓み表示器114から得る。図10図12に示すラケットはストリングなしであり、ラケット横曲げ試験はストリングありのラケットでも行うことができるが、請求項に係る発明では、ラケット横曲げ試験で試験されるラケットはストリングなしである。
【0050】
図13図15に示すように、Wilson Sporting Goods Coは、ラケット前後曲げ試験アセンブリ130を用いてラケット前後曲げ試験(ラケット剛性試験又はラケット剛性指数試験とも称する)を行った。ラケット前後曲げ試験では、ストリングベッド平面56に関して前後方向のラケットの可撓性、すなわちラケットの縦軸線16及びストリングベッド平面56に関する曲げに対するラケットの抵抗を測定する。「ラケット前後曲げ試験」という用語は、以下の説明に合う試験を意味する。ストリングベッド、グリップ、及びエンドキャップをラケット10のハンドル部から取り外す。図13及び図14を参照すると、ラケット前後曲げ試験では、ラケット10のハンドル部20を第1箇所104で、ラケット10の縦軸線16が地面と平行であり且つラケット10のストリング平面56も地面と平行である第2向きで、第1試験治具102にしっかりと取り付ける。換言すれば、ラケット10を第1向きから第2向きへ縦軸線16に関して90°回転させる。第2ウェイト122をラケット10の第4箇所124に付加する。第4箇所は、フープ36の概ね12時の位置にあるラケット10のヘッド部18の遠位端領域28である。イリノイ州オーロラのMitutoyoによるDigimatic(商標)インジケータモデルID-150ME等のデジタル撓み表示器114の感知プローブ112を、12時の位置でラケット10のヘッド部18の遠位端領域28の上側にある第5箇所126に合わせる。第2ウェイト122は2.8kgのウェイトであり、これは、第4箇所でラケットに付加されると縦軸線16及びストリングベッド平面54に関してラケット10を撓ませる。感知プローブ112を第5箇所126でヘッド部18の遠位端領域28の上側と係合するよう位置決めし、デジタル撓み表示器114をゼロに合わせる。図15を参照すると、第2ウェイト122をラケット10から除去し、ラケット撓み測定値をデジタル撓み表示器114から得る。「前後」という用語は、ラケットの本来のストリングベッド平面56及び縦軸線16から垂直な両方向のラケットの撓みを指すことが意図される。前後ラケット曲げ試験では、ラケットのヘッド部の遠位端に第2ウェイトを付加すると、ラケットは後方向に下に撓む。続いて第2ウェイトを除去すると、ラケットは前方向に上に動く。前進運動の総量が、撓み測定値(又はラケットの剛性値)である。図13図15に示すラケットはストリングなしであり、ラケット前後曲げ試験はストリングありのラケットでも行うことができるが、請求項に係る発明では、ラケット前後曲げ試験で試験されるラケットはストリングなしである。
【0051】
図16図18に示すように、Wilson Sporting Goods Co.は、ラケット捩り安定性試験アセンブリ140を用いてラケット捩り安定性試験も行った。ラケット捩り安定性試験は、ラケット10をラケット10の第6及び第7箇所148、150にそれぞれ取り付けるための第2及び第3試験治具144、146を有するフレーム142を含む。「ラケット捩り安定性試験」という用語は、以下の説明に合う試験を意味する。ストリングベッド、グリップ、及びエンドキャップをラケット10のハンドル部20から取り外す。ラケット10を、ラケット10の縦軸線16及びストリングベッド平面54を地面と平行にして、第2及び第3試験治具144、146に位置決めする。第2試験治具144は、ハンドル部20に緊締固定し、ラケット10の縦軸線16に関する第2治具144(及び第2治具144にクランプされたハンドル部20)の枢動又は回転運動を可能にするようフレーム142に枢着する。第2試験治具144は、第2試験治具144及び縦軸線16から径方向に突出又は延出するアーム152をさらに含む。アーム152は、第3ウェイト156を縦軸線16から所定の距離で受けるための1つ又は複数のインデックス154を含む。一実施態様では、第3ウェイトは6.9kgのウェイトであり、所定の距離は縦軸線16から40cmである。第3試験治具146は、ラケット10のストリングベッド平面56を地面と平行に位置決めした固定位置にラケット10のヘッド部18を緊締固定する。フロリダ州サニベルのBarry Wixey DevelopmentによるWixey(商標)デジタル角度計モデル番号WO300、タイプ2等のデジタル傾斜計160を、縦軸線16で第2試験治具144に取り外し可能に取り付ける。第3ウェイト156を、軸線16から40cmの所定の距離でアーム152に付加する。アーム152に付加された第3ウェイト156は、ラケット10のハンドル部20に捩り荷重をかけ、フレーム142及び縦軸線16に関して第2試験治具144(及びハンドル20)を回転させる。図18を参照すると、デジタル傾斜計160がゼロに合わせられ、第3ウェイト156が除去されている。縦軸線16に関するアーム152及びハンドル部20の角度振れ又は運動を測定する。図16図18に示すラケットはストリングなしであり、ラケット捩り安定性試験はストリングありのラケットでも行うことができるが、請求項に係る発明では、ラケット捩り安定性試験で試験されるラケットはストリングなしである。
【0052】
本発明の利点は、本発明の実施態様に従って作製されたラケット及びいくつかの既存のラケットモデルに対するラケット横曲げ試験、ラケット前後曲げ試験、及びラケット捩り安定性試験の実施により示された。以下の表1は、合計22本のラケットに対するラケット横曲げ試験、ラケット前後曲げ試験、及びラケット捩り安定性試験の結果を記載したものであり、ラケットのうち3本は本発明のプロトタイプであり、19本は既存の従来技術のラケットモデルである。ラケットは全てストリングなしで試験した。
【0053】
【表1】
【0054】
既存の従来技術ラケットは、複数の旧ラケットモデル及び複数の現行ラケットモデルを含み、これら全てが繊維複合材料で少なくとも部分的に形成されている。試験した旧ラケットモデルは、以下のラケットを含む:Wilson(登録商標)Profile(登録商標)、Wilson(登録商標)Profile(登録商標)Comp(商標)、Wilson(登録商標)Ultra(登録商標)2、Wilson(登録商標)Ultra(登録商標)2MP、Wilson(登録商標)Ultra(登録商標)85、Wilson(登録商標)Ultra(登録商標)100、Wilson(登録商標)Galaxy(商標)、Wilson(登録商標)Hammer(登録商標)6.2、Wilson(登録商標)ProStaff(登録商標)5.5 SI、Wilson(登録商標)Sting(商標)、Wilson(登録商標)Aggressor(登録商標)、及びPrince(登録商標)Graphite MP。Wilson(登録商標)ブランドのラケットモデルは、1980年~2018年にイリノイ州シカゴのWilson Sporting Goods Coから製造されたものとした。Prince(登録商標)Graphite MPラケットは、ニューヨーク州のABG-Prince OPCO, LLCの1983年製とした。試験した現行の従来技術ラケットモデルは、以下のラケットを含む:Wilson(登録商標)Blade(登録商標)98、Babolat(登録商標)Pure Drive(商標)、Babolat(登録商標)Aero(商標)、Head(登録商標)Radical(登録商標)Tour(商標)、Head(登録商標)Radical(登録商標)MP、及びPrince(登録商標)Tour(商標)100。Babolat(登録商標)ブランドのラケットは、フランス国リヨンのBabolat VSにより製造されたものとした。Head(登録商標)ブランドのラケットは、オーストリア国ケネルバッハのHEAD Sport GmbHにより製造されたものとした。
【0055】
本発明の態様に従って作製された3本のプロトタイプラケットを、フレックスプロトタイプ1、フレックスプロトタイプ3、及びフレックスプロトタイプ2と称する。3本のプロトタイプは、複数の45°層を含む繊維複合材料のフレームを含む。3本のフレックスプロトタイプラケットは、全て長さが27インチである。フレックスプロトタイプ1及びフレックスプロトタイプ3ラケットのそれぞれのヘッドサイズすなわちストリングベッド面積38は、102平方インチであり、フレックスプロトタイプ2のヘッドサイズは、98平方インチであった。
【0056】
3本のプロトタイプラケットの全てが、既存の従来技術ラケットと比べてラケット横曲げ試験で非常に高い横曲げを示した。3本のプロトタイプラケットの全てが、6.0mm以上、6.5mm以上、及び7.0mm以上の横方向撓みを示した。3本のプロトタイプフレックスラケットのうち最低の横方向撓み値(フレックスプロトタイプ3)は、19本の既存の従来技術ラケットモデルのうち最高の横方向撓み値よりも22パーセントを超えて大きかった。他の2本のプロトタイプのフレックスプロトタイプラケット、フレックスプロトタイプ2及びフレックスプロトタイプ1は、それぞれ7.7mm及び10.5mmの横方向撓みを示し、これらは19本の既存の従来技術ラケットモデルの最高横方向撓み値よりもそれぞれ35パーセント及び84パーセントを超えて大きい。さらに、3本のフレックスプロトタイプラケットの平均横方向撓み測定値(8.4mm)は、ラケット横曲げ試験からの19本の従来技術ラケットの平均横方向撓み測定値(4.1mm)の2倍よりも大きかった。
【0057】
3本のプロトタイプラケットの全てが、既存の従来技術ラケットと比べてラケット前後曲げ試験で非常に高い前後方向撓み値、すなわち曲げも示した。3本のプロトタイプラケットの全てが、8.0mm以上、8.5mm以上、9.0mm以上、9.5mm以上、10.0mm以上、10.5mm以上、及び11.0mm以上の前後方向撓みを示した。3本のプロトタイプフレックスラケットのうち最低の前後方向撓み値(フレックスプロトタイプ3)は、19本の既存の従来技術ラケットモデルの最高の前後方向撓み値よりも45パーセントを超えて大きかった。他の2本のプロトタイプのフレックスプロトタイプラケット、フレックスプロトタイプ2及びフレックスプロトタイプ1は、それぞれが12.1mmの前後方向撓みを示し、これは19本の既存の従来技術ラケットモデルの最高の前後方向撓み値よりも57パーセントを超えて大きい。さらに、3本のフレックスプロトタイプラケットの平均前後方向撓み測定値(11.8mm)は、ラケット前後曲げ試験からの19本の従来技術ラケットの平均前後方向撓み測定値(5.7mm)の2倍よりも大きい。
【0058】
ラケット捩り安定性試験での3本のプロトタイプフレックスラケット及び19本の既存の従来技術ラケットの試験結果は、独自の非常に高い横曲げ可撓性及び前後曲げ可撓性にも関わらず、プロトタイプラケットが高レベルの捩り安定性を維持することを示す。本発明の実施態様では、ラケットは、所望のレベルの捩り安定性を維持しつつ、かつてないレベルの横方向可撓性及び前後方向可撓性を提供することができる。したがって、本発明に従って作製されたラケットは、高レベルの捩り安定性を維持しつつ、特にプレー中にボールにスピンをかけるプレーヤーにコントロールレベルの向上と共に格別な感触を与える。高レベルの捩り安定性により、本発明に従って作製されたラケットは、オフセンターヒット時でも非常に優れたコントロールを与える。
【0059】
3本のフレックスプロトタイプラケットがラケット捩り安定性試験で示した捩り撓み測定値は、フレックスプロトタイプ3のプロトタイプラケットで3.9°、フレックスプロトタイプ2及びフレックスプロトタイプ1のプロトタイプラケットで4.9°であった。3本のフレックスプロトタイプラケットのラケット捩り安定性試験からの撓み測定値は、5.5°未満及び5.0°未満である。19本の既存の従来技術ラケットのラケット捩り安定性試験での平均捩り安定性測定値は、4.4°であり、これは3本のプロトタイプフレックスラケットの上下0.5°以内である。
【0060】
本発明に従って作製されたラケットは、低い衝撃及び振動エネルギーと改善された感触とを使用者に与える低振動特性を示すことが有利であり得る。本発明の実施態様に従って作製された3本のプロトタイプラケット(フレックスプロトタイプ1、フレックスプロトタイプ3、及びフレックスプロトタイプ2)及び19本の既存の従来技術ラケットに対して、モーダル解析を行った。図18を参照すると、モーダル解析は、コンピュータ又はプロセッサ182、メモリ184、信号解析装置186、ハンマー188、加速度計189、及びモーダル解析フレーム190を含むモーダル解析システム180を利用する。モーダル解析システム180は、カリフォルニア州サンノゼのSpectral Dynamics, Inc.により提供されたSTARモーダルソフトウェア等のモーダル解析ソフトウェアコードを含む。信号解析装置186は、同じくSpectral Dynamics, Inc.により提供されたCougar Dynamics信号解析装置であり得る。モーダル解析フレーム190は、ゴムバンド191等を用いて両端自由条件でラケット10を吊下させることができる。他の実施態様では、モーダル解析フレームは、モーダル解析のためのラケットの両端自由吊下を可能にする他の構造体又は支持体であり得る。加速度計189は、ラケット10のフレーム12に取り外し可能に装着される。各ラケット10を、モーダル解析フレーム190に両端自由条件で吊下し、ハンマー188を用いてラケット10の周囲の複数の試験位置でラケット10に衝突させて、加速度計189から加速度を測定した。加速度計189は、ハンマー打撃からの振動を感知して信号解析装置に信号を送る。振動解析装置186は、プロセッサ182及びメモリ184に動作可能に接続される。モーダル解析により、ラケット10の振動周波数値が得られる。
【0061】
以下の表2に示すモーダル解析振動結果は、本発明の実施態様に従って作製されたラケットで、19本の既存の従来技術ラケットよりも大幅に低い周波数値が得られることを示す。本発明の実施態様に従って製造されたラケットは、140Hz未満の周波数値を示す。本発明の他の実施態様では、ラケット10は135Hz未満の周波数値を示す。本発明の他の実施態様では、ラケット10は130Hz未満の周波数値を示す。本発明の他の実施態様では、ラケット10は125Hz未満の周波数値を示す。本発明の他の実施態様では、ラケット10は120Hz未満の周波数値を示す。本発明の他の実施態様では、ラケット10は115Hz未満の周波数値を示す。本発明の他の実施態様では、ラケット10は110Hz未満の周波数値を示す。3本のフレックスプロトタイプラケットのモーダル解析により示されたラケット周波数値は、114Hz、115Hz、及び127Hzであり、これらの全てが、同じくモーダル解析で測定された19本の既存の従来技術ラケットよりも大幅に低い。19本の既存の従来技術ラケットの周波数値は、140Hz~191Hzの範囲であり、これは3本のフレックスプロトタイプの値のうちの最高周波数値(フレックスプロトタイプ2)よりも10パーセント~36パーセント高い。19本の既存の従来技術ラケットの周波数値は、残りの2本のフレックスプロトタイプラケットの周波数値よりも21パーセント~66パーセント以上高い。本発明の実施態様に従って作製されたラケットの周波数値が大幅に低いことで、使用者に改善された感触を与えるラケットを得ることができると共に、経時的なプレーヤーの疲労の軽減に役立つことができる。
【0062】
【表2】
【0063】
本発明の具現は、高レベルの捩り安定性を維持しつつラケットの横方向及び前後方向の可撓性を増加させることにより、ラケットの性能を大幅に向上させる。本発明に従って作製されたラケットは、プレーヤーに、特にプレー中にボールにトップスピンをかけようとするプレーヤーに、感触に優れ球持ちのよいラケットを提供する。本発明に従って作製されたラケットは、トップスピンスウィングの実施中にラケットに加わる横荷重に対応して撓い、こうしたトップスピンスウィング中のラケットのプレー性及び性能を向上させる。本発明は、高レベルの捩り安定性を維持しつつ、横方向可撓性を高め、前後方向可撓性を高め、且つラケット振動レベルを低減したラケットを提供する。本発明に従って作製されたラケットは、ラケットの慣性モーメントに悪影響を及ぼす大幅に大きなヘッドサイズを必要とすることなく、ラケットのプレー性及び性能を向上させる。結果として、熟練度の高いプレーヤーに特に適した大幅に改良されたラケットが得られる。
【0064】
本発明の好ましい実施態様を説明及び図示したが、当業者であれば他の数々の構成を想到し得る。したがって、本発明は、上述したものに制限されるのではなく、添付の特許請求項の範囲及び趣旨によってのみ制限される。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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