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特許7557266いくつかのトランスデューサを有する、ユーザによって知覚可能な振動を生成するシステムに関する位相フィルタを決定する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】いくつかのトランスデューサを有する、ユーザによって知覚可能な振動を生成するシステムに関する位相フィルタを決定する方法
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20240919BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H04S7/00 310
H04R3/00 310
【請求項の数】 16
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019237647
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2020109963
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】1900039
(32)【優先日】2019-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520000261
【氏名又は名称】フォルシア クラリオン エレクトロニクス ヨーロッパ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー オリビエ クラインハンス
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-223895(JP,A)
【文献】特開昭57-184400(JP,A)
【文献】特開2015-012366(JP,A)
【文献】特開2011-097561(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04S 1/00- 7/00
H04R 3/00- 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電気信号および第2電気信号を供給するように構成される信号ソースと、
前記第1電気信号をユーザによって知覚可能な振動に変換する第1トランスデューサ(16)および前記第2電気信号をユーザによって知覚可能な振動に変換する第2トランスデューサ(18)を有する1つのペアのトランスデューサ(14)と、を有する、ユーザによって知覚可能な振動を生成するシステム(2)に関する位相フィルタを決定する方法であって、
前記位相フィルタは、前記第1電気信号と前記第2電気信号との間における相対的な位相シフトを導入するべく、提供され、該方法は、
- 少なくとも1つの決定された知覚位置(P1)について、周波数の関数として、前記知覚位置(P1)において生成される前記振動の特性パラメータの複数のスペクトル計測を実行するステップであって、それぞれのスペクトル計測は、前記第1電気信号(S1)と前記第2電気信号(S2)との間の個々の位相シフト値について実行される、ステップと、
- それぞれの周波数ごとに、前記スペクトル計測を実行するのに使用された前記位相シフト値のうちから位相シフト値を選択することにより、実行されたスペクトル計測から前記位相フィルタを決定するステップと、を有し、
前記スペクトル計測を実行するステップは、
いくつかの別個の知覚位置において前記スペクトル計測を実行するステップと、
ちょうど2回のスペクトル計測を実行するステップであって、前記2回のスペクトル計測に使用される前記位相シフト値は、0およびπである、ステップと、を有し、
前記位相フィルタを決定するステップは、異なる知覚位置(P1、P2)と関連する位相フィルタの平均として位相フィルタを決定するステップを有し
該方法は、
前記2つの異なる知覚位置(P1、P2)における前記スペクトル計測を実行するステップと、
- πの位相シフトが、それぞれの前記知覚位置(P1、P2)における前記特性パラメータの増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、
- πの位相シフトが、それぞれの前記知覚位置(P1、P2)における前記特性パラメータの減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値0、
- πの位相シフトが、他の知覚位置における前記特性パラメータを大幅に変更することなしに、1つの知覚位置における前記特性パラメータの増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、および/または、
- πの位相シフトが、他の知覚位置において、前記特性パラメータの、例えば、-3dBなどの、減少閾値未満の減少をもたらしつつ、1つの聴取位置において、前記特性パラメータの、例えば、+3dBなどの、増大閾値を超える増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、という基準のうちの1つまたは複数に従って、前記周波数の関数として、前記位相フィルタによって取り入れられる値を決定するステップ、あるいは、
- πの位相シフトが、それぞれの前記知覚位置(P1、P2)における前記特性パラメータの減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、
- πの位相シフトが、それぞれの前記知覚位置(P1、P2)における前記特性パラメータの増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値0、
- πの位相シフトが、他の知覚位置における前記特性パラメータを大幅に変更することなしに、1つの知覚位置における前記特性パラメータの減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、および/または、
- πの位相シフトが、他の知覚位置において、前記特性パラメータの、例えば、+3dBなどの、増大閾値未満の増大をもたらしつつ、1つの聴取位置において、前記特性パラメータの、例えば、-3dBなどの、減少閾値を超える減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、という基準のうちの1つまたは複数に従って、前記周波数の関数として、前記位相フィルタによって取り入れられる値を決定するステップと、をさらに有する、決定方法。
【請求項2】
2つのトランスデューサ間の位相差の値は、前記基準のいずれもが適用不能であるそれぞれの周波数に対し、+π/2または-π/2の値に等しくなるように選定される、請求項に記載の決定方法。
【請求項3】
前記位相フィルタは、πの位相シフトが、それぞれ、前記特性パラメータの増大または減少をもたらす周波数に対して、πの位相シフトを、πの位相シフトが、それぞれ、前記特性パラメータの減少または増大をもたらす周波数に対して、ゼロの位相シフトを、他の周波数に対して、ゼロの位相シフトを、取ることにより、決定される、請求項に記載の決定方法。
【請求項4】
前記スペクトル計測は、前記位相シフト値間に規則的なインターバルを有する一連の前記位相シフト値によって、それぞれの前記知覚位置(P1、P2)において実行される、請求項1に記載の決定方法。
【請求項5】
前記スペクトル計測は、連続するスペクトル計測間において前記位相シフトを増分させて変化させることにより、連続して実行される、請求項に記載の決定方法。
【請求項6】
前記スペクトル計測を実行するステップは、それぞれの知覚位置においてN回の計測を実行するステップを有し、前記位相シフト値間に2π/Nのインターバルが有り、Nは実数である、請求項またはに記載の決定方法。
【請求項7】
前記位相フィルタを決定するステップは、第1位相フィルタを決定するステップと、前記第1位相フィルタをアンラッピングおよび/またはスムージングするステップと、を有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の決定方法。
【請求項8】
前記スペクトル計測を実行するステップは、いくつかの別個の知覚位置においてスペクトル計測を実行するステップを有し、前記決定するステップは、前記異なる知覚位置(P1、P2)と関連する前記スペクトル計測の平均から前記位相フィルタを決定するステップを有する、請求項1乃至のいずれか一項に記載の決定方法。
【請求項9】
前記特性パラメータは、前記振動の振幅である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の決定方法。
【請求項10】
前記振動は、サウンド振動であり、前記第1トランスデューサ(16)および前記第2トランスデューサ(18)は、電気音響トランスデューサである、請求項1乃至のいずれか一項に記載の決定方法。
【請求項11】
前記振動は、接触によって知覚可能であり、および/または固体の前記振動に起因して音波を生成することができる、前記固体の機械的な振動である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の決定方法。
【請求項12】
前記第1電気信号(S1)および前記第2電気信号(S2)を供給する電気信号のソースと、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の決定方法に従って決定された前記位相フィルタを実装することにより、前記第1電気信号(S1)と前記第2電気信号(S2)とを相対的に位相シフトするように構成されるフィルタリングモジュール(10)と、
前記フィルタリングモジュール(10)によって相互の関係で位相シフトされた前記第1電気信号(S1)および前記第2電気信号(S2)をそれぞれ振動に変換する前記第1トランスデューサ(16)および前記第2トランスデューサ(18)を有する少なくとも1つのペアのトランスデューサ(14)を介して振動を生成するステップと、を有する振動生成システム(2)を使用して、ユーザによって知覚可能な振動を生成する方法。
【請求項13】
前記第1電気信号(S1)および前記第2電気信号(S2)を供給するように構成される信号ソースと、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の決定方法に従って決定された前記位相フィルタを実装することにより、前記第1電気信号(S1)と前記第2電気信号(S2)とを相対的に位相シフトするように構成されるフィルタリングモジュール(10)と、
前記フィルタリングモジュール(10)によって相互の関係で位相シフトされた前記第1電気信号(S1)および前記第2電気信号(S2)をそれぞれブロードキャストする第1電気音響トランスデューサ(16)および第2電気音響トランスデューサ(18)を有する少なくとも1つのペアの電気音響トランスデューサ(14)を有するブロードキャスト組立体(12)を介して、前記位相フィルタ(10)によってフィルタリングされた前記第1電気信号(S1)および前記第2電気信号(S2)をブロードキャストするステップと、を有するステレオシステム(2)を使用して、サウンドを再生する方法。
【請求項14】
振動生成システム、特に、ステレオシステム(2)、に関するフィルタリングモジュールであって、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の決定方法によって取得された前記位相フィルタを実装するように構成される、フィルタリングモジュール。
【請求項15】
前記第1電気信号(S1)および前記第2電気信号(S2)を供給する電気信号のソースと、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の決定方法に従って決定された前記位相フィルタを実装するように構成され、前記第1電気信号(S1)と前記第2電気信号(S2)との間における相対的な位相シフトを導入するように構成される、フィルタリングモジュール(10)と、
前記位相フィルタ(10)によって相互の関係で位相シフトされた前記第1電気信号(S1)および前記第2電気信号(S2)をそれぞれ受け取る前記第1トランスデューサ(16)および前記第2トランスデューサ(18)を有する少なくとも1つのペアのトランスデューサ(14)と、を有する、振動を生成するシステム(2)。
【請求項16】
前記第1電気信号(S1)および前記第2電気信号(S2)を供給するように構成される信号ソース(4)と、
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の決定方法に従って決定された前記位相フィルタを実装することにより、前記第1電気信号(S1)と前記第2電気信号(S2)とを相対的に位相シフトするように構成されるフィルタリングモジュール(10)と、
前記フィルタリングモジュール(10)によって相互の関係で位相シフトされた前記第1電気信号(S1)および前記第2電気信号(S2)をそれぞれブロードキャストする第1電気音響トランスデューサ(16)および第2電気音響トランスデューサ(18)を有する少なくとも1つのペアの電気音響トランスデューサ(14)を有するブロードキャスト組立体(12)を介して、前記フィルタリングモジュール(10)によってフィルタリングされた前記第1電気信号(S1)および前記第2電気信号(S2)をブロードキャストするステップと、を有する、ステレオシステム(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチチャンネル振動生成システムに関する、ユーザによって知覚可能な(perceptible)振動を生成する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
「マルチチャンネル」とは、複数のトランスデューサによって生成された個々の電気信号から、別個のトランスデューサにより、別個の地点(point)において、振動が生成される、ことを意味し、この場合、異なるトランスデューサによって生成された振動は、同一の知覚地点においてユーザによって知覚可能である。
【0003】
ユーザによって知覚可能な振動を生成する一例は、空間レンダリングによるサウンドイメージ(sound image)の再生、即ち、サウンドソースの空間分布の再構成(reconstitution)、のために、ステレオシステム、即ち、それぞれのチャンネルが個別の電気オーディオ信号を供給する2つのチャンネルと、少なくとも1つのペアの電気音響(electroacoustic)トランスデューサ(または、スピーカ)と、を有するサウンド再生(sound reproduction)システムであって、その2つの電気音響トランスデューサは、それぞれ、2つの電気オーディオ信号のうちの1つを個別に受け取る、サウンド再生システム、を使用したサウンド(sound)の再生(即ち、ユーザの聴覚によって知覚可能な、ガス、特に、空気、の振動)である。
【0004】
聴取者が、2つの電気音響トランスデューサから等距離に配置される際には、聴取者は、両方の電気音響トランスデューサによって放出されたサウンドを同時に知覚し、この結果、聴取者は、空間レンダリングを知覚できる。
【0005】
しかしながら、聴取者は、一般に、2つの電気音響トランスデューサから等距離には配置されない。
【0006】
これには、例えば、自動車におけるケースが該当し、この場合、一般に、座席が、車両の中央長手方向軸との関係で(relative to)横方向にずれており(being offset)、したがって、それぞれの乗員が、1つの電気音響トランスデューサよりも、もう1つの電気音響トランスデューサに、相対的に近接する状態で、2つの電気音響トランスデューサが自動車の両側に配置される。
【0007】
この結果、2つの電気音響トランスデューサによって生成されたサウンドは、1つの電気音響トランスデューサによって生成されたサウンドともう1つの電気音響トランスデューサによって生成されたサウンドとの間に時間シフトを有する状態で、聴取者に到達する。
【0008】
これにより、中心からずれた聴取位置(listening position)に位置する聴取者に到達する、電気音響トランスデューサによって生成されたサウンドの位相シフトが発生し、この位相シフトは、周波数に依存する。
【0009】
この位相シフトは、聴取者によって知覚可能な、望ましくない効果を生成しうる。
【0010】
これらの望ましくない効果を回避または制限するべく、1つの可能な解決策は、2つの電気音響トランスデューサによって生成されたサウンドが実質的に同相で聴取者に到達するように、電気音響トランスデューサに送信される信号を聴取者に可能な限り近接するように遅延させる、というものである。
【0011】
しかしながら、単純な遅延の適用は、常に満足できるものではない。さらには、例えば、自動車内のケースにおけるように、いくつかの別個の聴取位置が在る際には、遅延の適用は、1つの聴取位置における聴取を改善しうるが、他の聴取位置において、聴取を悪化させる可能性がある。
【0012】
米国特許出願公開第033092号明細書には、2つのチャンネル間において位相シフトPを分散させることによる、即ち、P/2という位相シフトを1つのチャンネルに適用し、-P/2という位相シフトをもう1つのチャンネルに適用することによる、ステレオシステムの2つのチャンネルを有する位相シフトPの適用が開示されている。
【0013】
仏国特許出願公開第2865096号明細書には、車両の原位置において(in situ)実施される計測からの「頭部相対伝達関数(HRTF:Head Relative Transfer Function)」型の位相フィルタの決定が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的の1つは、いくつかのトランスデューサによって振動を生成するシステムに関する位相フィルタを決定する方法であって、当該位相フィルタが振動の知覚を改善できる方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これを目的として、本発明は、第1電気信号および第2電気信号を供給するように構成される信号ソースと、第1電気信号をユーザによって知覚可能な振動に変換する第1トランスデューサおよび第2電気信号をユーザによって知覚可能な振動に変換する第2トランスデューサを有する1つのペアのトランスデューサと、を有する、ユーザによって知覚可能な振動を生成するシステムに関する位相フィルタを決定する方法を提案し、位相フィルタは、第1電気信号と第2電気信号との間における相対的な位相シフトを導入するべく提供され、当該方法は、
- 少なくとも1つの決定された知覚位置(perception position)について、周波数の関数として(as a function of)、この知覚位置において生成される振動の特性パラメータの複数のスペクトル計測を実行するステップであって、それぞれのスペクトル計測は、第1電気信号と第2電気信号との間の個々の位相シフト値について実行される、ステップと、
- それぞれの周波数ごとに、スペクトル計測を実行するのに使用された位相シフト値のうちから位相シフト値を選択することにより、実行されたスペクトル計測から位相フィルタを決定するステップと、を有する。
【0016】
いくつかの位相シフト値に対する振動の特性パラメータのスペクトル計測の実行は、それぞれの周波数ごとに、スペクトル計測の結果の関数として、計測を実行するのに使用された位相シフト値のうちから位相シフト値を選択することによる、位相フィルタの決定を可能にする。この結果、例えば、ステレオシステムによって再生され、聴取者によって知覚される、サウンドイメージの空間レンダリングの改善が可能である。
【0017】
特定の実施形態によれば、位相シフトを決定する方法は、個々に、または、任意の技術的に可能な1つもしくは複数の組合せに従って、考慮される、以下のオプションの特徴のうちの1つもしくは複数を有する。
- スペクトル計測を実行するステップは、ちょうど2回のスペクトル計測を実行するステップを有する、
- 2回のスペクトル計測に使用される位相シフト値は、0およびπである、
- この決定方法は、2つの別個の知覚位置におけるスペクトル計測を実行するステップと、πの位相シフトが、それぞれの知覚位置における特性パラメータの増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、πの位相シフトが、それぞれの知覚位置における特性パラメータの減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値0、πの位相シフトが、他の知覚位置における特性パラメータを大幅に変更することなしに、1つの知覚位置における特性パラメータの増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、および/または、πの位相シフトが、他の知覚位置において、特性パラメータの、例えば、-3dBなどの、減少閾値未満の減少をもたらしつつ、1つの知覚位置において、特性パラメータの、例えば、+3dBなどの、増大閾値を超える増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、という基準(criteria)のうちの1つまたは複数に従って、周波数の関数として、位相フィルタによって取り入れられる(assumed)値を決定するステップと、を有する、
- この決定方法は、2つの別個の知覚位置においてスペクトル計測を実行し、πの位相シフトが、それぞれの知覚位置における特性パラメータの減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、πの位相シフトが、それぞれの知覚位置における特性パラメータの増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値0、πの位相シフトが、他の知覚位置における特性パラメータを大幅に変更することなしに、1つの知覚位置における特性パラメータの減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、および/または、πの位相シフトが、他の知覚位置において、特性パラメータの、例えば、+3dBなどの、増大閾値未満の増大をもたらしつつ、1つの知覚位置において、特性パラメータの、例えば、-3dBなどの、減少閾値を超える減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、という基準の1つまたは複数に従って、周波数の関数として、位相フィルタによって取り入れられる値を決定する、
- 2つのトランスデューサ間の位相差の値は、上述の基準のいずれもが適用不能であるそれぞれの周波数に対し、+π/2または-π/2の値に等しくなるように選定される、
- 位相フィルタは、πの位相シフトが、それぞれ、特性パラメータの増大または減少をもたらす周波数に対して、πの位相シフトを、πの位相シフトが、それぞれ、特性パラメータの減少または増大をもたらす周波数に対して、ゼロの位相シフト(nil phase shift)を、その他の周波数に対して、ゼロの位相シフトを、取る(taking)ことにより、決定される、
- スペクトル計測は、位相シフト値間に規則的なインターバルを有する一連の位相シフト値によって、それぞれの知覚位置において実行される、
- スペクトル計測は、連続するスペクトル計測間において位相シフトを増分させて(incrementally)変化させることにより、連続して実行される、
- スペクトル計測を実行するステップは、それぞれの知覚位置においてN回の計測を実行するステップを有し、この場合、位相シフト値間に2π/Nのインターバルが有り、Nは実数である、
- 位相フィルタを決定するステップは、第1位相フィルタを決定するステップと、第1位相フィルタをアンラッピングおよびスムージングするステップと、を有する、
- スペクトル計測を実行するステップは、いくつかの別個の知覚位置においてスペクトル計測を実行するステップを有し、位相フィルタを決定するステップは、異なる知覚位置と関連する位相フィルタの平均として位相フィルタを決定するステップを有する、
- スペクトル計測を実行するステップは、いくつかの別個の知覚位置においてスペクトル計測を実行するステップを有し、決定するステップは、異なる知覚位置と関連するスペクトル計測の平均から位相フィルタを決定するステップを有する、
- 特性パラメータは、振動の振幅である、
- 振動は、サウンド振動であり、第1トランスデューサおよび第2トランスデューサは、電気音響トランスデューサである、ならびに、
- 振動は、接触(touch)によって知覚可能であり、固体の振動に起因して音波を生成することができる、固体の機械的振動である。
【0018】
又、本発明は、第1電気信号および第2電気信号を供給する電気信号のソースと、以上において定義された決定方法に従って決定された位相フィルタを実装することにより、第1電気信号と第2電気信号とを相対的に位相シフトするように構成されるフィルタリングモジュールと、フィルタリングモジュールによって相互の関係で位相シフトされた第1電気信号および第2電気信号をそれぞれ振動に変換する第1トランスデューサおよび第2トランスデューサを有する少なくとも1つのペアのトランスデューサを介して振動を生成するステップと、を有する振動生成システムを使用して、ユーザによって知覚可能な振動を生成する方法に関する。
【0019】
又、本発明は、第1オーディオ信号および第2オーディオ信号を供給するように構成される信号ソースと、以上において定義された決定方法に従って決定された位相フィルタを実装することにより、第1オーディオ信号と第2オーディオ信号とを相対的に位相シフトするように構成されるフィルタリングモジュールと、フィルタリングモジュールによって相互の関係で位相シフトされた第1オーディオ信号および第2オーディオ信号をそれぞれブロードキャストする第1電気音響トランスデューサおよび第2電気音響トランスデューサを有する少なくとも1つのペアの電気音響トランスデューサを有するブロードキャスト組立体(assembly)を介して、位相フィルタによってフィルタリングされた第1オーディオ信号および第2オーディオ信号をブロードキャストするステップと、を有するステレオシステムを使用してサウンドを再生する方法に関する。
【0020】
本発明は、振動生成システム、特に、ステレオシステム、に関するフィルタリングモジュールにさらに関係し、フィルタリングモジュールは、以上において定義された決定方法によって取得された位相フィルタを実装するように構成される。
【0021】
又、本発明は、第1電気信号および第2電気信号を供給する電気信号のソースと、以上において定義された決定方法に従って決定された位相フィルタを実装するように構成され、第1オーディオ信号と第2オーディオ信号との間における相対的な位相シフトを導入するように構成されるフィルタリングモジュールと、位相フィルタによって相互の関係で位相シフトされた第電気信号および第2電気信号をそれぞれ受け取る第1トランスデューサおよび第2トランスデューサを有する少なくとも1つのペアのトランスデューサと、を有する、振動を生成するシステムに関する。
【0022】
又、本発明は、第1電気オーディオ信号および第2電気オーディオ信号を供給するように構成される信号ソースと、以上において定義された決定方法に従って決定された位相フィルタを実装することにより、第1オーディオ信号と第2オーディオ信号とを相対的に位相シフトするように構成されるフィルタリングモジュールと、フィルタリングモジュールによって相互の関係で位相シフトされた第1オーディオ信号および第2オーディオ信号をそれぞれブロードキャストする第1電気音響トランスデューサおよび第2電気音響トランスデューサを有する少なくとも1つのペアの電気音響トランスデューサを有するブロードキャスト組立体を介して、フィルタリングモジュールによってフィルタリングされた第1オーディオ信号および第2オーディオ信号をブロードキャストするステップと、を有するステレオシステムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】サウンドを再生するステレオシステムと、ステレオシステムの位相フィルタを決定する組立体と、の概略図である。
図2】1つの聴取位置において、ステレオシステムによって生成された2つのオーディオ信号間の2つの異なる位相シフト値について実行された、周波数の関数としての2つの音圧(acoustic pressure)スペクトル計測を示すグラフである。
図3図2のグラフに示される2つの計測間の差によって決定された、周波数の関数としての、逆位相における音圧の変動を示すグラフである。
図4図2のグラフに示される計測から決定された位相フィルタを示すグラフである。
図5図4の位相フィルタのスムージングによって取られた位相フィルタを示すグラフである。
図6】1つの聴取位置において、複数の異なる位相シフト値について実行された、周波数の関数としての音圧スペクトル計測を示すグラフである。
図7】それぞれの非ゼロの(non-nil)位相シフト値ごとに、周波数の関数として、ゼロの(nil)位相シフトとの関係で、音圧の変動を示すグラフであり、それぞれの音圧の変動は、図6のグラフの曲線から決定される。
図8図6のグラフにおいて示される計測から決定された位相フィルタを示すグラフである。
図9図8の位相フィルタのアンラッピング(unwrapping)によって取得された位相フィルタを示すグラフである。
図10図9の位相フィルタのスムージングによって取得された位相フィルタを示すグラフである。
図11】2つの別個の聴取位置について決定された2つの位相フィルタを示す図8のグラフに類似したグラフである。
図12図11の2つの位相フィルタの平均として取得された位相フィルタを示す類似のグラフである。
図13図12の位相フィルタのアンラッピングによって取得された位相フィルタを示すグラフである。
図14図13の位相フィルタのスムージングによって取得された位相フィルタを示すグラフである。
図15】音響パネルによってサウンドを生成するシステムの概略図である。
図16】触覚(haptic)フィードバックを有するシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明およびその利点については、非限定的な例としてのみ提供され、添付図面を参照して実施される、以下の説明を参照することにより、さらに十分に理解することができよう。
【0025】
本発明は、一般に、いくつかの別個の電気信号から同時に別個の振動を生成するべく構成される振動生成システムを使用して、ユーザによって知覚可能な振動を生成することに関し、この場合、それぞれの電気信号は、個々のトランスデューサによって振動に変換される。
【0026】
生成された振動は、例えば、ユーザの聴覚によって知覚可能な音響振動(もしくは、サウンド)であり、または、ユーザによる接触によって知覚可能な固体の機械的振動などである。
【0027】
振動を生成するシステムは、例えば、ユーザによって知覚可能なサウンドを生成するように構成されるステレオシステムである。
【0028】
以下、本発明を例示するべく、ステレオシステムに適用された例示のための一実施形態について説明することとする。
【0029】
図1に示されるステレオシステム2は、オーディオファイルまたはオーディオストリームから、第1オーディオ信号S1を第1チャンネル6に供給し、第2オーディオ信号S2を第2チャンネル8に供給するように構成される電気信号ソース4を有する。
【0030】
電気オーディオ信号は、サウンドを表す電気信号であり、電気音響トランスデューサによってサウンドに変換することができる。
【0031】
オーディオファイルは、例えば、データ媒体(コンピュータメモリやCD-ROMなど)上において記録される。オーディオファイルは、例えば、オーディオソース4によって読み取られることができる。
【0032】
例えば、オーディオストリームは、例えば、インターネットまたは無線電気通信ネットワークなどの、通信ネットワークを利用して、オーディオソース4により、受け取ることができる。オーディオストリームからのオーディオ信号の生成は、一般に、ストリーミングと呼称される。
【0033】
ステレオシステム2の第1チャンネル6および第2チャンネル8は、オーディオ信号S1、S2をサウンドに変換するように提供された電気音響トランスデューサに、これらのオーディオ信号S1、S2を送信するように構成される。
【0034】
ステレオシステム2は、ステレオシステム2によってブロードキャストされるサウンド再生を改善するべく、第1オーディオ信号S1および/または第2オーディオ信号S2を相互の関係で位相シフトさせるようにこれらをフィルタリングするように構成されるフィルタリングモジュールを有し、この場合、第1オーディオ信号S1と第2オーディオ信号S2との間に導入される相対的な位相シフトは、周波数に依存する。
【0035】
フィルタリングモジュール10は、一つの信号の位相シフトを他の信号との関係で導入するために、第1オーディオ信号S1および/または第2オーディオ信号S2をフィルタリングするべく、第1チャンネル6および/または第2チャンネル8上において配置され、この場合、相対的な位相シフトは、周波数の関数である。
【0036】
ステレオシステム2は、少なくとも1つのペアの電気音響トランスデューサ14を有するブロードキャスト組立体12を有し、それぞれのペアの電気音響トランスデューサ-スピーカ14は、第1オーディオ信号S1を音響に変換するべく第1チャンネル6に接続された第1電気音響トランスデューサ16と、第2オーディオ信号S2をサウンドに変換するべく第2チャンネル8に接続された第2電気音響トランスデューサ18と、を有する。
【0037】
第1電気音響トランスデューサ16および第2電気音響トランスデューサ18は、それぞれ、フィルタリングモジュール10による位相シフトの後に、第1オーディオ信号S1および第2オーディオ信号S2を受け取る。
【0038】
ステレオシステム2は、中心線Lとの関係で中心からずれた(または、オフセットされた)少なくとも1つの聴取位置P1、P2と関連付けられ、これらのそれぞれの地点は、電気音響トランスデューサのペア14の第1電気音響トランスデューサ16および第2電気音響トランスデューサ18から等距離に位置する。
【0039】
それぞれの中心からずれた聴取位置P1、P2は、第1電気音響トランスデューサ16および第2電気音響トランスデューサ18のうちの一方よりも、他方に、相対的に近接している。
【0040】
ステレオシステム2は、例えば、自動車20内に配置され、それぞれのペアの電気音響トランスデューサ14の第1電気音響トランスデューサ16および第2電気音響トランスデューサ18は、車両20の両側に配置され、1つの聴取位置P1は、例えば、運転席に対応し、他の聴取位置P2は、例えば、助手席に対応する。
【0041】
位相フィルタの決定組立体24は、例えば、聴取位置P1において、または、2つの聴取位置P1、P2のそれぞれにおいて、などのように、少なくとも1つの聴取位置において知覚されるサウンドを計測するように構成される計測装置26を有する。
【0042】
計測装置26は、例えば、マイクロフォンなどの、少なくとも1つのサウンドセンサ28、30と、ステレオシステム2によるサウンドの再生中にそれぞれのサウンドセンサ28、30によって供給される信号の計測から位相フィルタを決定するように構成される決定モジュール(determining module)32と、を有する。
【0043】
計測装置26は、原位置において、即ち、ステレオシステム2の使用構成内において、ここでは、車両の内側レイアウト(ダッシュボード、センターコンソール、内側ルーフ、座席、ドアトリムなど)を有する車両20内において、スペクトル計測を実行するように、構成される。
【0044】
計測装置26は、それぞれの検討対象の聴取位置P1、P2において、音圧のスペクトル計測を取るように、構成される。
【0045】
音圧のスペクトル計測は、サウンドの放出と、周波数の関数としての(as a function of)それぞれの検討対象の聴取位置P1における音圧の計測と、から構成される。「スペクトル」という用語は、音圧が、それぞれの周波数ごとに決定される、ことを意味する。
【0046】
特に、決定モジュール32は、スペクトル計測値を抽出するべく、サウンドのブロードキャスト中に、それぞれのサウンドセンサ28、30によって供給される計測信号を分析するように、構成される。
【0047】
オプションとして、決定モジュール32は、位相フィルタ10の伝達関数を決定する方法中にオーディオ信号が再生されるように、オーディオファイルまたはオーディオストリームをソース4に供給するべく、構成される。
【0048】
音圧のスペクトル計測を実行するのに使用されるオーディオ信号は、好ましくは、広帯域信号であり、即ち、例えば、ピンクノイズなどのように、大きな周波数帯域にわたる周波数を含む信号である。ピンクノイズは、そのスペクトル密度が、オクターブ帯域にわたって一定である、ランダム信号である。
【0049】
例示用の一実施形態において、使用されるオーディオ信号は、同一のモノ信号から取得され、この場合、2つのチャンネル6、8間には、相対的な位相シフトが適用される。
【0050】
決定組立体24は、ステレオシステム2の使用中にステレオシステム2によって再生されるサウンド記録の空間レンダリングを改善する、という目的で、フィルタリングモジュール10によって実装されうる位相フィルタを決定する方法の実装を可能にする。
【0051】
位相フィルタを決定する方法は、第1オーディオ信号S1を第1電気音響トランスデューサ16に送信し、第2オーディオ信号S2を第2電気音響トランスデューサに送信することにより、少なくとも1つの決定された聴取位置P1、P2について、複数のスペクトル計測を実行するステップを有し、第1オーディオ信号S1および第2オーディオ信号S2のうちの一つの信号は、他の信号S1を位相シフトさせることにより取得されるか、または位相シフトされた第1オーディオ信号に対応し、それぞれのスペクトル計測は、第1オーディオ信号S1と第2オーディオ信号S2との間の個々の位相シフトについて実行される。
【0052】
それぞれのスペクトル計測中に、第1オーディオ信号S1と第2オーディオ信号S2との間の位相シフトは、予め定められる。これは、周波数のすべてに適用された同一の位相シフト、または、周波数の関数である位相シフトに関わりうる。
【0053】
相対的な位相シフトは、位相シフトを第1オーディオ信号S1および第2オーディオ信号S2のうちの一方の信号のみに適用することにより、または、第1オーディオ信号S1と第2オーディオ信号S2との間において位相シフトを分散させる(distributing)ことにより、取得することができる。
【0054】
スペクトル計測のうちの少なくとも1つは、非ゼロの位相シフトによって実行される。
【0055】
スペクトル計測を実行するステップは、ステレオシステム2を較正するための位相によって実行され、この場合、フィルタリングモジュール10の位相フィルタは、未だ決定されていない。
【0056】
決定方法は、それぞれの周波数ごとに、スペクトル計測を実行するのに使用された位相シフト値のうちから位相シフトを選択することにより、スペクトル計測を実行するステップにおいて実行されたスペクトル計測の関数として、位相フィルタを決定するステップを有する。
【0057】
したがって、いくつかの位相シフト値について実行されたスペクトル計測によって、それぞれの周波数ごとに、使用された位相シフト値のうちから、最も適切な位相シフト値を選択することができる。
【0058】
スペクトル計測は、原位置において実行される。これは、スペクトル計測が、サウンドを生成するべくステレオシステム2を使用することによって実行されることを意味し、このステレオシステム2は、その位相フィルタが未だ決定されてはいないフィルタリングモジュール10を除いて、その使用環境に、および、その使用構成に、在る。
【0059】
原位置におけるスペクトル計測によって、セルがブロードキャストされる環境の考慮が可能であり、この環境は、サウンドの伝播と、したがって、それぞれの聴取位置における空間レンダリングと、に影響を及ぼす。
【0060】
この影響は、特に、例えば、ここでは、自動車の乗員コンパートメントの表面上などの、環境の表面上におけるサウンドの反射に関係する。
【0061】
スペクトル計測を実行するべく、ちょうど2つの異なる位相シフト値、特に、ゼロの位相シフト(nil phase shift)およびπの位相シフト(phase shift of π)、または、少なくとも3つの異なる位相シフト値、を使用することにより、空間レンダリングを改善するための決定方法を実装することができる。
【0062】
以下、図2図5を参照し、2つの位相シフト値を有する、聴取位置、ここでは、聴取位置P1、に適した位相フィルタの決定について説明する。
【0063】
図2は、x軸において周波数を示し、y軸において音圧(または、サウンド振幅)を示し、2つの曲線、即ち、ゼロの位相シフトについて聴取位置P1において実行されたスペクトル計測を示す第1曲線C1と、πの位相シフトについて聴取位置P1において実行されたスペクトル計測を示す第2曲線C2と、を示す、グラフである。又、πの位相シフトは、「逆位相(phase opposition)」とも呼称される。
【0064】
図2に示されるように、聴取位置P1において最大音圧を供給する位相シフトは、周波数の関数として変化する。
【0065】
図2において、これは、特定の(certain)周波数において、第1曲線C1が第2曲線C2を上回り(これらの周波数において、ゼロの位相シフトが、πの位相シフトよりも大きな音圧を供給する)、その他の周波数について、第2曲線C2が第1曲線C1を上回る(これらの周波数において、πの位相シフトが、ゼロの位相よりも大きな音圧を供給する)という事実に対応する。
【0066】
図3は、x軸において周波数を示し、y軸において音圧を示し、それぞれの周波数ごとの図2のグラフの第2曲線C2と第1曲線C1との間の差に対応する音圧の変動曲線(acoustic pressure variation curve)D1を示す、グラフである。
【0067】
位相シフト値と関連する音圧の変動は、ゼロの位相シフトとの関係で、その位相シフト値が寄与する、それぞれの周波数ごとの音圧の変動を表す。
【0068】
第2曲線C2が第1曲線C1を上回るように位置する際に、差分曲線D1は、ゼロを上回るように位置し、第2曲線C2が第1曲線C1を下回るように位置する際に、差分曲線D1は、ゼロ未満に位置する。
【0069】
例示用の一実施形態によれば、決定するステップは、検討対象の聴取位置P1における音圧を最大にするように、位相フィルタを決定するステップを有する。
【0070】
換言すれば、これは、位相フィルタが、それぞれの周波数ごとに、スペクトル計測を実行するのに使用される2つの位相シフト値、ここでは、即ち、ゼロの位相シフトおよびπの位相シフト、のうちから、最大音圧を供給する位相シフト値を選定することによって決定されることを意味する。
【0071】
図4は、x軸において周波数を示し、y軸において位相シフトを示し、それぞれの周波数ごとに、ゼロの位相シフトとπの位相シフトとの間において聴取位置P1における音圧を最大にするものを選定して、図2に示される計測から決定された位相フィルタF1を示す、グラフである。
【0072】
この位相フィルタF1は、通常の動作(normal operation)中に、ステレオシステム2のフィルタリングモジュール10によって使用可能である。
【0073】
しかしながら、このような位相フィルタF1は、サウンド再生品質を劣化させうるアーチファクトを生成する可能性を有する突然の位相シフトの変動を有する。
【0074】
好ましくは、位相フィルタF1は、決定するステップにおいて決定された第1位相フィルタであり、決定方法は、第2位相フィルタを取得するべく、第1位相フィルタF1をスムージングするステップを有する。
【0075】
スムージングは、位相シフト変動の制限を可能にする。スムージングは、例えば、オクターブの3分の1によるスムージングなどである。
【0076】
図5は、x軸において周波数を示し、y軸において位相シフトを示し、図4の第1位相フィルタF1のオクターブの3分の1のスムージングから結果として取得された第2位相フィルタF2を示す、グラフである。
【0077】
この第2位相フィルタF2は、通常の動作中に、ステレオシステム2のフィルタリングモジュール10によって使用可能である。
【0078】
所定の聴取位置、ここでは、聴取位置P1、におけるサウンドの再生を改善するための、決定された位相フィルタを適用することによって、他の聴取位置、ここでは、聴取位置P2、におけるサウンドの再生を劣化させる可能性がある。
【0079】
両方の聴取位置、ここでは、聴取位置P1およびP2、におけるサウンドの再生を改善するべく、妥協(compromise)をもたらす位相フィルタを決定することができる。
【0080】
スペクトル計測を生成するステップが、2つの聴取位置P1、P2のそれぞれについて実行される。
【0081】
次に、例示用の一実施形態において、位相シフトの選定が、それぞれの周波数ごとに、2つの聴取位置P1、P2のそれぞれにおいて音圧を最大にする位相シフトと、2つの聴取位置P1、P2のそれぞれにおいてそれぞれの位相シフトが寄与する音圧の変動と、の両方の関数として、決定される。
【0082】
例えば、それぞれの周波数ごとの位相シフトの選定は、次の基準のうちから選定された1つまたは複数の基準を適用することにより、実施される。
- πの位相シフトが、それぞれの聴取位置(P1、P2)におけるサウンド圧力(sound pressure)の増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値π(基準1)、
- πの位相シフトが、それぞれの聴取位置(P1、P2)におけるサウンド圧力の減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値0(基準2)、
- πの位相シフトが、他の聴取位置におけるサウンド圧力を大幅に変更することなく、1つの聴取位置におけるサウンド圧力の増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値π(基準3)、および/または、
- πの位相シフトが、例えば、-3dBなどの、減少閾値未満の他の聴取位置におけるサウンド圧力の減少をもたらしつつ、例えば、3dBなどの、増大閾値を上回る1つの聴取位置におけるサウンド圧力の増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値π(基準4)。
【0083】
上述の4つの基準のうちの1つのみを適用することが可能であり、または、上述の4つの基準のうちの複数のものを組合せて適用することも可能であり、具体的には、上述の4つの基準のうちの2つもしくは3つの基準を適用することが可能であり、または、上述の基準の4つのすべてを適用することもできる。
【0084】
好適な一実施形態において、位相フィルタを決定するステップは、基準1および基準2の適用を有し、これに加えて、基準3の適用をも有する。
【0085】
基準4において、予め定められた閾値は、例えば、-3dBなどの閾値であり、これは、音圧の2による除算に対応する。
【0086】
基準3において、「大幅な減少を伴わない」という表現は、音圧の変動が、知覚が困難なほどに十分に小さいことを意味する。例えば、音圧の減少は、1dB未満である。
【0087】
オプションとして、上述の基準のいずれもが充足されない、それぞれの周波数について、満足できる妥協を見出すべく、S1およびS2のオーディオ信号間の+π/2または-π/2の位相シフトを検討することができる。
【0088】
このケースは、πの位相シフトが、大幅に、または、予め定められた閾値を超えて、2つの聴取位置P1、P2のうちの一方において、音圧を増大させ、2つの聴取位置P1、P2のうちの他方において、音圧を減少させる、周波数に対応する。
【0089】
一変形において、位相フィルタは、なんらの位相シフトをも適用しないものとして選定される。
【0090】
以下、図6図14を参照し、3つ以上の位相シフトを有する、聴取位置、ここでは、聴取位置P1、に適した位相フィルタの決定について説明する。
【0091】
決定方法は、音圧スペクトル計測を実行するのに使用されるN個の異なる位相シフト値によって実行され、Nは、例えば、整数などの、実数である。
【0092】
好ましくは、位相シフト値は、一連の連続する位相シフト値間に規則的なインターバルまたは増分を有する、一連のN個の位相シフト値を定義する。
【0093】
好ましくは、位相シフト値の1つは、0である。
【0094】
決定方法は、例えば、-πと+πとの間の一連のN個の位相シフト値によって、N回の音圧スペクトル計測を実行するステップを有し、この場合、一連のそれぞれの位相シフト値は、π/Nの増分を以前の位相シフト値に加算することによって取得される。
【0095】
例示用の一実施形態において、位相シフト値は、[-π;-(N-1)π/N;…-π/N;0;π/N;…(N-1)π/N]である。他の例示用の実施形態において、位相シフト値は、[-(N-1)π/N;…-π/N;0;π/N;…(N-1)π/N;π]である。
【0096】
スペクトル計測は、例えば、位相シフト値により、増大または減少する方向において、連続して実行される。換言すれば、スペクトル計測は、-πという位相シフト値から、+πという位相シフト値に到達する時点まで、π/Nの増分だけ、それぞれのスペクトル計測と次のスペクトル計測との間において、位相シフト値を増大させることにより、または、逆に、+πという位相シフト値から、-πという位相シフト値に到達する時点まで、それぞれのスペクトル計測と次のスペクトル計測との間において、π/Nの増分だけ、位相シフト値を減少させることにより、実行される。
【0097】
当然のことながら、異なる順序において、スペクトル計測を実行することが可能であり、これは、位相フィルタの決定の結果に影響を及ぼさない。
【0098】
図6は、x軸において周波数を示し、y軸において音圧を示し、それぞれが、一連の位相シフト値のうちの個々の位相シフト値について聴取位置P1において実行されたスペクトル計測を示す、曲線C1、C2、...、CNが示される、グラフである。
【0099】
図7は、x軸において周波数を示し、y軸において音圧を示し、それぞれが、非ゼロの位相シフト値について実行されたスペクトル計測とゼロの位相シフト値について実行されたスペクトル計測との間の差を表す、変動曲線D2、D3、...、DNを示す、グラフである。
【0100】
例示用の一実施形態によれば、位相シフトを決定するステップは、それぞれの周波数ごとに、スペクトル計測を実行するのに使用される位相シフト値のうちから、検討対象の聴取位置、ここでは、聴取位置P1、において最強の音圧をもたらす位相シフト値を選択するステップを有する。
【0101】
図8は、x軸において周波数を示し、y軸において位相シフトを示し、結果として取得された第2位相フィルタF1を示す、グラフである。
【0102】
この位相フィルタF1は、ステレオシステム2において、さらに詳しくは、フィルタリングモジュール10内において、使用可能である。
【0103】
しかしながら、このような位相フィルタは、すべての周波数において、大きな位相シフトホップをもたらし、これは、ステレオシステム2によって実行されるサウンド再生を損傷する可能性を有するアーチファクトをもたらしうる。
【0104】
例示用の一実施形態によれば、決定方法は、第1位相フィルタ、ここでは、位相フィルタF1、を決定するステップと、ステレオシステム2のフィルタリングモジュール10における実装に適した位相フィルタを取得するための、第1位相フィルタF1をアンラッピング(unwrapping)および/または第1位相フィルタF1をスムージングするステップと、を有する。
【0105】
アンラッピング動作は、それ自体が周知であり、位相シフトが、モジュロ2πとして表現される、即ち、位相シフト値Xが、位相シフト値X+M×2πに等しく、ここで、Mは、自然整数である、という事実を活用するステップから構成される。
【0106】
アンラッピング動作は、例えば、πに等しい、などの、予め定められたホップ閾値を上回るすべてのホップを防止するべく、1つの値を他の等価な値によって置換するように伝達関数を変更するステップを有する。
【0107】
図9は、x軸において周波数を示し、y軸において位相シフトを示し、図8の第1位相フィルタF1をアンラッピングすることによって取得された第2位相フィルタF2を示す、グラフである。
【0108】
この第2位相フィルタF2は、フィルタリングモジュール10において位相フィルタとして使用可能である。
【0109】
図10は、x軸において周波数を示し、y軸において位相シフトを示し、図9の第2位相フィルタF2をスムージングすることによって取得された第3位相フィルタF3を示す、グラフである。
【0110】
第3位相フィルタF3は、フィルタリングモジュール10において位相フィルタとして使用可能である。
【0111】
所定の聴取位置、ここでは、聴取位置P1、においてサウンドの再生を改善するために決定された位相フィルタを適用することによって、他の聴取位置、ここでは、聴取位置P2、におけるサウンドの再生が劣化する可能性を有する。
【0112】
両方の聴取位置、ここでは、聴取位置P1およびP2、におけるサウンドの再生を改善するべく、満足できる妥協をもたらす位相フィルタを決定することができる。
【0113】
図11は、第1位置P1について決定された第1位置位相フィルタFP1と、第2位置P2について決定された第2位置位相フィルタFP2と、を示す、図8のものに類似したグラフであり、この場合、第1位置位相フィルタFP1および第2位置位相フィルタFP2のそれぞれは、それぞれの周波数ごとに、スペクトル計測に使用された位相シフト値のうちから、検討対象の位置において最大音圧を獲得する位相値を選択することにより、決定される。
【0114】
例示用の一実施形態によれば、位相フィルタは、第1位置位相フィルタFP1と第2位置位相フィルタFP2との平均として決定される。
【0115】
この例示用の実施形態によれば、それぞれの周波数fごとに、位相フィルタF(f)の値は、値(FP1(f)+FP2(f))/2に等しいものとして選定される。
【0116】
あるいは、この代わりに、位相フィルタは、検討対象の聴取位置、ここでは、P1およびP2、における音圧の平均から決定される。次いで、位相フィルタは、それぞれの周波数ごとに、スペクトル計測に使用された位相シフト値のうちから、検討対象の聴取位置において最大平均音圧を獲得する位相シフト値を選択することにより、決定される。
【0117】
所与の周波数において、第1位置位相フィルタFP1の値と第2位置位相フィルタFP2の値との間の差が、πより大きい場合、有意な平均値を取得するべく、オフセットが必要であることに留意されたい。
【0118】
図12は、図11の、第1位置位相フィルタFP1の平均として、および第2位置位相フィルタFP2の関数として、取得された第1位相フィルタF1を示すグラフである。
【0119】
例示用の一実施形態によれば、決定方法は、第1位相フィルタを決定するステップと、ステレオシステム2のフィルタリングモジュール10における実装に適した位相フィルタを取得するため、第1位相フィルタをアンラッピングおよび/または第1位相フィルタをスムージングするステップと、を有する。
【0120】
図13は、x軸において周波数を示し、y軸において位相シフトを示し、図12の第1位相フィルタF1をアンラッピングすることによって取得された第2位相フィルタF2を示す、グラフである。
【0121】
第2位相フィルタF2は、フィルタリングモジュール10において位相フィルタとして使用可能である。
【0122】
図14は、x軸において周波数を示し、y軸において位相シフトを示す、図13の第2位相フィルタF2をスムージングすることによって取得された第3位相フィルタF3を示す、グラフである。
【0123】
第3位相フィルタF3は、フィルタリングモジュール10において使用可能である。
【0124】
上述の決定方法の例示用の実施形態に従って決定された位相フィルタは、通常の動作中に、ステレオシステム2を使用してサウンドを再生するべく、使用可能である。
【0125】
したがって、本発明は、一般に、第1オーディオ信号S1および第2オーディオ信号S2を供給するように構成される信号ソースと、上記において定義される決定方法に従って決定された位相フィルタを実装することにより、第1オーディオ信号S1と第2オーディオ信号S2とを相対的に位相シフトするように構成されるフィルタリングモジュール10と、フィルタリングモジュール10によって相互の関係で位相シフトされた第1オーディオ信号S1および第2オーディオ信号S2をそれぞれブロードキャストする第1電気音響トランスデューサ16および第2電気音響トランスデューサ18を有する少なくとも1つのペアの電気音響トランスデューサを有する再生組立体12を介して、第1オーディオ信号S1および第2オーディオ信号S2をブロードキャストするステップと、を有するステレオシステムを使用してサウンドを再生する方法に関する。
【0126】
又、本発明は、上述の決定方法に従って決定された位相フィルタを実装するように構成されるステレオシステムにも関する。
【0127】
したがって、本発明は、一般に、第1オーディオ信号S1および第2オーディオ信号S2を供給するように構成される信号ソースと、上述の決定方法に従って決定された位相フィルタを実装することにより、第1オーディオ信号S1と第2オーディオ信号S2とを相対的に位相シフトするように構成されるフィルタリングモジュールと、フィルタリングモジュール10によって相互の関係で位相シフトされた第1オーディオ信号S1および第2オーディオ信号(S2)をそれぞれブロードキャストする第1電気音響トランスデューサ16および第2電気音響トランスデューサ18を有する少なくとも1つのペアの電気音響トランスデューサ14を有する再生組立体12を介して、フィルタリングモジュール10によってフィルタリングされた第1オーディオ信号S1および第2オーディオ信号S2をブロードキャストするステップと、を有するステレオシステム2に関する。
【0128】
フィルタリングモジュール10は、例えば、コンピュータメモリ内において記録することが可能であり、コンピュータプロセッサにより、特定用途集積回路(ASIC:Application-Specific Integrated Circuit)により、または、例えばフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)などのプログラム可能な論理回路により、実行可能であるソフトウェアアプリケーションによって生成されたデジタルフィルタである。
【0129】
プログラム可能なフィルタリングモジュール10は、決定方法に従って決定された位相フィルタの実装を容易にする。
【0130】
一変形において、フィルタリングモジュール10は、電子コンポーネント(抵抗器、コンデンサ、インダクタンス、トランジスタなど)によって形成された電子回路の形態において生成されたアナログフィルタモジュールである。
【0131】
本発明によれば、最適化された音圧により、または、音響周波数のスペクトルのすべての周波数(即ち、人間の耳によって知覚可能な、即ち、約20Hz~20kHzの、周波数)について満足できる妥協に従って、満足できるサウンド再生を取得することを可能にする位相フィルタを決定することができる。
【0132】
位相フィルタは、サウンドを多かれ少なかれ吸収しうる、ステレオシステム2がサウンドをブロードキャストする空間の表面、特に、これらの表面の幾何形状およびこれらの表面の特性、を考慮することにより、原位置において実行される計測から決定される。
【0133】
位相フィルタは、所定の聴取位置について決定することが可能であり、または、2つの聴取位置についての妥協を生み出すことができる。
【0134】
本発明は、生成される音圧を1つまたは複数の聴取位置において最大にすることを可能にする、ステレオシステムに、及び位相フィルタの決定に、限定されるものではない。
【0135】
その他の例示用の実施形態およびその他の変形が考慮されうる。
【0136】
記述される例示用の実施形態において、ステレオシステム2は、単一のペアの電気音響トランスデューサ14を有する。
【0137】
当然のことながら、決定方法は、それぞれのペアの電気音響トランスデューサが、オーディオソースの1つのチャンネルのオーディオ信号をブロードキャストする1つの電気音響トランスデューサとオーディオソースの他のチャンネルのオーディオ信号をブロードキャストする他の電気音響トランスデューサとを有する限り、複数のペアの電気音響トランスデューサによって実装することができる。
【0138】
さらに、上述の例において、位相フィルタは、音圧、即ち、振動の振幅、を増大させるように、決定される。
【0139】
一変形において、決定方法は、少なくとも1つの聴取地点における音圧の決定を可能にする伝達関数を決定するべく、使用されることができる。
【0140】
少なくとも1つの聴取地点において音圧を増大させるべく記述される様々な例および変形は、上記聴取地点において音圧を減少させるべく、同様に適用可能である。
【0141】
例えば、2回のスペクトル計測を実行するべく、上記2つの聴取地点が検討され、0およびπという位相シフト値のみが使用される際には、上述のそれぞれの周波数に対して位相シフトを選定するための基準1~4は、次の通りである。
- πの位相シフトが、それぞれの聴取位置(P1、P2)におけるサウンド圧力の減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値π(基準1)、
- πの位相シフトが、それぞれの聴取位置(P1、P2)におけるサウンド圧力の増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値0(基準2)、
- πの位相シフトが、他の聴取位置におけるサウンド圧力を大幅に変更することなしに、1つの聴取位置におけるサウンド圧力の減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値π(基準3)、および/または、
- πの位相シフトが、例えば、+3dBなどの、増大閾値未満の他の聴取位置におけるサウンド圧力の増大をもたらしつつ、例えば、-3dBなどの、減少閾値を超える1つの聴取位置におけるサウンド圧力の減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値π(基準4)。
【0142】
当然のことながら、位相フィルタを決定するためのその他の基準および位相フィルタのその他の処理ステップ(アンラッピングやスムージングなど)は、適用可能なままである。
【0143】
3回を超える回数のスペクトル計測が、それぞれの聴取位置について実施される際には、位相フィルタを決定するステップは、それぞれの周波数ごとに、スペクトル計測を実行するのに使用された位相シフト値のうちから、検討対象の聴取位置における最弱の音圧をもたらす位相シフト値を選択するステップを有する。位相フィルタのその他のステップ(アンラッピングやスムージングなど)は、適用可能なままである。
【0144】
さらには、いくつかの聴取位置が検討される際には、位相フィルタは、それぞれの周波数ごとに、スペクトル計測に使用された位相シフト値のうちから、検討対象の聴取位置における最低平均音圧を獲得する位相シフト値を選択することにより、第1位置位相フィルタおよび第2位置位相フィルタの平均として、または、検討対象の聴取位置における音圧の平均から、決定することができる。
【0145】
少なくとも1つの聴取地点における音圧の減少は、例えば、マイクロフォン34が配置される聴取地点におけるサウンド振幅を決定するための、オーディオ信号のフィルタリングを可能にする(図1)。
【0146】
このようなマイクロフォン34は、例えば、ステレオシステム2によるサウンドの再生の際に、ユーザの音声(voice)を記録するべく、使用される。
【0147】
このような記録は、例えば、所謂、ステレオシステム2の「ハンズフリー」機能のユーザの場合に実行され、その際には、電話ネットワークを介してユーザと話すもう1人の人物の音声が、ステレオシステム2によって再生され、ユーザの音声は、電話ネットワークを介してもう1人の人物に送信されるように、マイクロフォン34によって記録される。
【0148】
このようなハンズフリー機能の使用中には、ステレオシステム2によって再生されるもう1人の人物の音声が、マイクロフォン34によって記録され、電話ネットワークを通じて、もう1人の人物に再度返送されることになり、この結果、エコー現象が生成される。
【0149】
マイクロフォン34が配置される地点における、ステレオシステム2によって生成される音響振幅を最小にすることは、このエコー現象の減少を可能にする。
【0150】
同様に、特定の車両は、ユーザが車両の特定の機能を音声によって制御でき、ユーザによって発話された音声コマンドを検出するべくマイクロフォン34を有する、音声コマンドシステムを装備する。
【0151】
音声コマンドシステムは、車両のステレオシステム2がサウンドを再生する際に、妨害される(disrupted)可能性がある。
【0152】
マイクロフォン34の位置に対応する聴取地点においてサウンド振幅を減少させるための位相フィルタの決定は、これらの妨害の減少を可能にする。
【0153】
又、その他のタイプのサウンド再生システムに対する適用も可能である。
【0154】
例えば、特定の車両の座席には、所謂、「スマート」ヘッドレスト、具体的には、座席に着座したユーザの頭部の近傍においてサウンドをブロードキャストする内蔵スピーカ、が提供される。このような座席は、例えば、自動車、コーチバス、航空機などにおいて設置することができる。
【0155】
このような座席では、設計の制約に起因し、スピーカは、ヘッドレスト上のユーザの頭部の理論位置を通過する中央垂直方向プレーンとの関係で非対称に配置される可能性がある。
【0156】
この結果、スピーカによってブロードキャストされるサウンドのモノ成分(mono components)(即ち、サウンドイメージの中心に位置するものとしてユーザによって知覚されるべく意図された成分)が、中心から外れることになる。
【0157】
本発明に従って位相フィルタを決定する方法は、このようなスピーカによってブロードキャストされたサウンドのモノ成分のサウンドイメージの再センタリング(re-center)を可能にする位相フィルタの決定を可能にする。
【0158】
これを目的として、位相フィルタは、それぞれの周波数ごとにヘッドレスト上の頭部の理論位置を通過する中央垂直方向プレーンに位置する聴取位置における音圧を最大にするように、決定される。
【0159】
さらに、本発明は、ステレオシステムに限定されるものではなく、より一般には、振動を生成するべく、いくつかのトランスデューサを有するシステムに対して適用される。
【0160】
振動は、例えば、ステレオシステムの例におけるように、音響振動であるか、または、ユーザの接触によって知覚可能であるか、もしくは、結果として、ユーザの聴覚によって知覚可能な音響振動を生成可能である、固体(solid)の振動である。
【0161】
振動は、例えば、サウンド再生システムの場合における聴取位置、または、接触によって知覚可能な固体の振動の場合における接触位置、に対応する、少なくとも1つの知覚位置において、ユーザによって知覚される。
【0162】
したがって、本発明は、一般に、第1電気信号および第2電気信号を供給するように構成される信号ソースと、第1電気信号をユーザによって知覚可能な振動に変換する第1トランスデューサおよび第2電気信号をユーザによって知覚可能な振動に変換する第2トランスデューサを有する1つのペアのトランスデューサと、を有する振動を生成するシステムの位相フィルタを決定する方法に関し、位相フィルタは、第1電気信号と第2電気信号との間における相対的な位相シフトを導入するべく、提供され、この方法は、
- 少なくとも1つの決定された知覚位置について、周波数の関数として、この知覚位置において生成された振動の特性パラメータの複数のスペクトル計測を実行するステップであって、それぞれのスペクトル計測は、第1電気信号と第2電気信号との間の個々の位相シフト値について実行される、ステップと、
- それぞれの周波数について、スペクトル計測を実行するのに使用された位相シフト値のうちから位相シフト値を選択することにより実行されたスペクトル計測から位相フィルタを決定するステップと、を有する。
【0163】
又、本発明は、一般に、第1電気信号および第2電気信号を供給するための電気信号のソースと、上述の決定方法に従って決定された伝達関数を実装することにより、第1電気信号と第2電気信号とを相対的に位相シフトするように構成される位相フィルタと、位相フィルタによって相互の関係で位相シフトされた第1電気信号および第2電気信号をそれぞれ振動に変換する第1トランスデューサおよび第2トランスデューサを有する少なくとも1つのペアのトランスデューサを介して振動を生成するステップと、を有する振動を生成するシステムを使用して、ユーザによって知覚可能な振動を生成する方法にも関する。
【0164】
又、本発明は、一般に、第1電気信号および第2電気信号を供給するための電気信号のソースと、上述の決定方法に従って決定された位相フィルタを実装し、第1電気信号と第2電気信号との間における相対的な位相シフトを導入するように構成されるフィルタリングモジュールと、位相フィルタによって相互の関係で位相シフトされた第1電気信号および第2電気信号をそれぞれ受け取る第1トランスデューサおよび第2トランスデューサを有する少なくとも1つのペアのトランスデューサと、を有する振動を生成するシステムにも関する。
【0165】
ステレオシステムについて記述される例示用の実施形態は、特に、ちょうど2回のスペクトル計測もしくは2回を超える回数のスペクトル計測によって、ならびに/または、1つもしくは複数の知覚位置の考慮によって、例えば、位相フィルタ平均もしくはスペクトル計測平均を取るなどにより、それぞれの周波数ごとに位相シフト値を選択するための基準を適用することによって、一般に、振動を生成するシステムについて、具体的には、2回のスペクトル計測もしくは2回を超える回数のスペクトル計測を有する実施形態の変形について、同様に適用される。
【0166】
同一の要素に対する参照符号が保持される、図15に示される一例によれば、位相フィルタを決定する方法は、第1電気信号S1および第2電気信号S2を生成するための電気信号ソース4と、サウンド再生パネル36と、電気信号からサウンド再生パネル36内において機械的振動を生成するように構成される少なくとも2つの別個のトランスデューサ16、18と、を有するサウンド再生システム2のフィルタリングモジュール10の位相フィルタを決定するべく、使用可能であり、この場合、それぞれのトランスデューサ16、18は、サウンド再生パネル36上の個々の位置において配置され、トランスデューサ16、18によってサウンド再生パネル36内において生成される機械的振動は、サウンド再生パネル36によるサウンドの放出をもたらす。
【0167】
サウンド再生パネル36は、例えば、リグノセルロース材料、特に、合板、などの、固い材料から製造される。
【0168】
トランスデューサ16、18に供給される電気信号S1、S2の位相シフトは、サウンド再生パネル36によるサウンドのブロードキャストの有効性およびサウンド再生パネル36によって放出されるサウンドの指向性に対して影響を及ぼしうる。
【0169】
したがって、この決定方法は、2つのトランスデューサ16、18が提供されたサウンド再生パネル36によって生成されるサウンドの有効性および/または指向性の調節を可能にする位相フィルタの決定を可能にする。
【0170】
上述の例において、位相フィルタを決定する方法は、サウンド再生システム、即ち、音響信号を生成するシステム、に適用される。
【0171】
同一の要素に対する参照符号が保持される、図16に示される一例によれば、位相フィルタを決定する方法は、固体38内において振動2を生成するシステムに対して適用可能であり、この場合、振動は、固体38の知覚表面38A上におけるユーザによる接触によって知覚されるのに適しており、振動を生成するシステム2は、固体38の2つの別個の地点において、固体38内において振動を生成するように構成される少なくとも2つのトランスデューサ16、18を有する。
【0172】
振動を生成するシステム2は、第1電気信号S1および第2電気信号S2を供給するための電気信号のソース4と、本発明による決定方法に従って決定された位相フィルタを実装することにより、第1電気信号S1と第2電気信号S2とを相対的に位相シフトするように構成されるフィルタリングモジュール10と、フィルタリングモジュール10によって相互の関係で位相シフトされた第1電気信号S1および第2電気信号S2をそれぞれ振動に変換する第1トランスデューサ16および第2トランスデューサ18を有する少なくとも1つのペアのトランスデューサ14を介して振動を生成するステップと、を有する。
【0173】
このような固体内において振動を生成するシステム2は、例えば、触知(tactile)情報をユーザに送信するべく、ユーザによる接触によって知覚可能な振動の生成を可能にする触覚フィードバックシステムである。
【0174】
このような振動を生成するシステム2は、例えば、固体38の触知表面上において触覚フィードバックを生成することにより、ユーザがコマンド入力できるべく、マンマシンインターフェイス装置に統合される。
【0175】
マンマシンインターフェイス装置は、例えば、接触感知スクリーン、特に、パーソナルコンピュータ、デジタルタブレット、スマートフォン、または自動車のマルチメディアシステムの接触感知スクリーンである。
【0176】
固体38の決定された知覚地点40における、固体38内において生成された振動をより良好に知覚できるべく、検討対象の知覚地点40における振動の振幅を最大にするように、相互の関係で、2つのトランスデューサ16、18に供給される電気信号S1、S2を位相シフトさせることができる。
〔構成1〕
第1電気信号および第2電気信号を供給するように構成される信号ソースと、
前記第1電気信号をユーザによって知覚可能な振動に変換する第1トランスデューサ(16)および前記第2電気信号をユーザによって知覚可能な振動に変換する第2トランスデューサ(18)を有する1つのペアのトランスデューサ(14)と、を有する、ユーザによって知覚可能な振動を生成するシステム(2)に関する位相フィルタを決定する方法であって、
前記位相フィルタは、前記第1電気信号と前記第2電気信号との間における相対的な位相シフトを導入するべく、提供され、該方法は、
少なくとも1つの決定された知覚位置(P1)について、周波数の関数として、前記知覚位置(P1)において生成される前記振動の特性パラメータの複数のスペクトル計測を実行するステップであって、それぞれのスペクトル計測は、前記第1電気信号(S1)と前記第2電気信号(S2)との間の個々の位相シフト値について実行される、ステップと、
それぞれの周波数ごとに、前記スペクトル計測を実行するのに使用された前記位相シフト値のうちから位相シフト値を選択することにより、実行されたスペクトル計測から位相フィルタを決定するステップと、を有する方法。
〔構成2〕
前記スペクトル計測を実行するステップは、ちょうど2回のスペクトル計測を実行するステップを有する、構成1に記載の決定方法。
〔構成3〕
前記2回のスペクトル計測に使用される前記位相シフト値は、0およびπである、構成2に記載の決定方法。
〔構成4〕
2つの別個の知覚位置(P1、P2)におけるスペクトル計測を実行するステップと、
πの位相シフトが、それぞれの知覚位置(P1、P2)における前記特性パラメータの増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、
πの位相シフトが、それぞれの知覚位置(P1、P2)における前記特性パラメータの減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値0、
πの位相シフトが、他の知覚位置における前記特性パラメータを大幅に変更することなしに、1つの知覚位置における前記特性パラメータの増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、および/または、
πの位相シフトが、他の知覚位置において、前記特性パラメータの、例えば、-3dBなどの、減少閾値未満の減少をもたらしつつ、1つの聴取位置において、前記特性パラメータの、例えば、+3dBなどの、増大閾値を超える増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、という基準のうちの1つまたは複数に従って、前記周波数の関数として、前記位相フィルタによって取り入れられる値を決定するステップと、を有する、構成3に記載の決定方法。
〔構成5〕
2つの別個の知覚位置(P1、P2)においてスペクトル計測を実行するステップと、
πの位相シフトが、それぞれの知覚位置(P1、P2)における前記特性パラメータの減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、
πの位相シフトが、それぞれの知覚位置(P1、P2)における前記特性パラメータの増大をもたらす、それぞれの周波数に対して値0、
πの位相シフトが、他の知覚位置における前記特性パラメータを大幅に変更することなしに、1つの知覚位置における前記特性パラメータの減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、および/または、
πの位相シフトが、他の知覚位置において、前記特性パラメータの、例えば、+3dBなどの、増大閾値未満の増大をもたらしつつ、1つの聴取位置において、前記特性パラメータの、例えば、-3dBなどの、減少閾値を超える減少をもたらす、それぞれの周波数に対して値π、という基準のうちの1つまたは複数に従って、前記周波数の関数として、前記位相フィルタによって取り入れられる値を決定するステップと、を有する、構成3に記載の決定方法。
〔構成6〕
2つのトランスデューサ間の前記位相差の値は、前記基準のいずれもが適用不能であるそれぞれの周波数に対し、+π/2または-π/2の値に等しくなるように選定される、構成3または4に記載の決定方法。
〔構成7〕
前記位相フィルタは、πの位相シフトが、それぞれ、前記特性パラメータの増大または減少をもたらす周波数に対して、πの位相シフトを、πの位相シフトが、それぞれ、前記特性パラメータの減少または増大をもたらす周波数に対して、ゼロの位相シフトを、他の周波数に対して、ゼロの位相シフトを、取ることにより、決定される、構成2または3に記載の決定方法。
〔構成8〕
前記スペクトル計測は、位相シフト値間に規則的なインターバルを有する一連の位相シフト値によって、それぞれの知覚位置(P1、P2)において実行される、構成1に記載の決定方法。
〔構成9〕
前記スペクトル計測は、連続するスペクトル計測間において前記位相シフトを増分させて変化させることにより、連続して実行される、構成7に記載の決定方法。
〔構成10〕
前記スペクトル計測を実行するステップは、それぞれの知覚位置においてN回の計測を実行するステップを有し、前記位相シフト値間に2π/Nのインターバルが有り、Nは実数である、構成7または8に記載の決定方法。
〔構成11〕
前記位相フィルタを決定するステップは、第1位相フィルタを決定するステップと、前記第1位相フィルタをアンラッピングおよび/またはスムージングするステップと、を有する、構成1乃至10のいずれかに記載の決定方法。
〔構成12〕
前記スペクトル計測を実行するステップは、いくつかの別個の知覚位置においてスペクトル計測を実行するステップを有し、前記位相フィルタを決定するステップは、異なる前記知覚位置(P1、P2)と関連する位相フィルタの平均として位相フィルタを決定するステップを有する、構成1乃至11のいずれかに記載の決定方法。
〔構成13〕
前記スペクトル計測を実行するステップは、いくつかの別個の知覚位置においてスペクトル計測を実行するステップを有し、前記決定するステップは、前記異なる知覚位置(P1、P2)と関連する前記スペクトル計測の平均から位相フィルタを決定するステップを有する、構成1乃至12のいずれかに記載の決定方法。
〔構成14〕
前記特性パラメータは、前記振動の振幅である、構成1乃至13のいずれかに記載の決定方法。
〔構成15〕
前記振動は、サウンド振動であり、前記第1トランスデューサ(16)および前記第2トランスデューサ(18)は、電気音響トランスデューサである、構成1乃至14のいずれかに記載の決定方法。
〔構成16〕
前記振動は、接触によって知覚可能であり、固体の振動に起因して音波を生成することができる、前記固体の機械的な振動である、構成1乃至15のいずれかに記載の決定方法。
〔構成17〕
第1電気信号(S1)および第2電気信号(S2)を供給する電気信号のソースと、
構成1乃至16のいずれかに記載の決定方法に従って決定された位相フィルタを実装することにより、前記第1電気信号(S1)と前記第2電気信号(S2)とを相対的に位相シフトするように構成されるフィルタリングモジュール(10)と、
前記フィルタリングモジュール(10)によって相互の関係で位相シフトされた前記第1電気信号(S1)および前記第2電気信号(S2)をそれぞれ振動に変換する第1トランスデューサ(16)および第2トランスデューサ(18)を有する少なくとも1つのペアのトランスデューサ(14)を介して振動を生成するステップと、を有する振動生成システム(2)を使用して、ユーザによって知覚可能な振動を生成する方法。
〔構成18〕
第1オーディオ信号(S1)および第2オーディオ信号(S2)を供給するように構成される信号ソースと、
構成1乃至16のいずれかに記載の決定方法に従って決定された位相フィルタを実装することにより、前記第1オーディオ信号(S1)と前記第2オーディオ信号(S2)とを相対的に位相シフトするように構成されるフィルタリングモジュール(10)と、
前記フィルタリングモジュール(10)によって相互の関係で位相シフトされた前記第1オーディオ信号(S1)および前記第2オーディオ信号(S2)をそれぞれブロードキャストする第1電気音響トランスデューサ(16)および第2電気音響トランスデューサ(18)を有する少なくとも1つのペアの電気音響トランスデューサ(14)を有するブロードキャスト組立体(12)を介して、前記位相フィルタ(10)によってフィルタリングされた前記第1オーディオ信号(S1)および前記第2オーディオ信号(S2)をブロードキャストするステップと、を有するステレオシステム(2)を使用して、サウンドを再生する方法。
〔構成19〕
振動生成システム、特に、ステレオシステム(2)、に関するフィルタリングモジュールであって、構成1乃至16のいずれかに記載の決定方法によって取得された位相フィルタを実装するように構成される、フィルタリングモジュール。
〔構成20〕
第1電気信号(S1)および第2電気信号(S2)を供給する電気信号のソースと、
構成1乃至16のいずれかに記載の決定方法に従って決定された位相フィルタを実装するように構成され、前記第1オーディオ信号(S1)と前記第2オーディオ信号(S2)との間における相対的な位相シフトを導入するように構成される、フィルタリングモジュール(10)と、
前記位相フィルタ(10)によって相互の関係で位相シフトされた前記第1電気信号(S1)および前記第2電気信号(S2)をそれぞれ受け取る第1トランスデューサ(16)および第2トランスデューサ(18)を有する少なくとも1つのペアのトランスデューサ(14)と、を有する、振動を生成するシステム(2)。
〔構成21〕
第1電気オーディオ信号(S1)および第2電気オーディオ信号(S2)を供給するように構成される信号ソースと、
構成1乃至16のいずれかに記載の決定方法に従って決定された位相フィルタを実装することにより、前記第1オーディオ信号(S1)と前記第2オーディオ信号(S2)とを相対的に位相シフトするように構成されるフィルタリングモジュール(10)と、
前記フィルタリングモジュール(10)によって相互の関係で位相シフトされた前記第1オーディオ信号(S1)および前記第2オーディオ信号(S2)をそれぞれブロードキャストする第1電気音響トランスデューサ(16)および第2電気音響トランスデューサ(18)を有する少なくとも1つのペアの電気音響トランスデューサ(14)を有するブロードキャスト組立体(12)を介して、前記フィルタリングモジュール(10)によってフィルタリングされた前記第1オーディオ信号(S1)および前記第2オーディオ信号(S2)をブロードキャストするステップと、を有する、ステレオシステム(2)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16