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特許7557267インピーダンス調整装置及びインピーダンス調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】インピーダンス調整装置及びインピーダンス調整方法
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/40 20060101AFI20240919BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20240919BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240919BHJP
   C23C 16/505 20060101ALN20240919BHJP
【FI】
H03H7/40
H05H1/46 R
H01L21/302 101B
C23C16/505
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019238643
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021108413
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】森井 龍哉
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-73247(JP,A)
【文献】国際公開第2018/187292(WO,A1)
【文献】特開2016-66593(JP,A)
【文献】特表2003-532986(JP,A)
【文献】特開2017-69823(JP,A)
【文献】特表2018-504864(JP,A)
【文献】特開2020-156043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0083022(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 7/40
H05H 1/46
H01L 21/3065
C23C 16/505
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から負荷に出力される交流電圧の伝送路の中途に配置され、前記交流電源から見た負荷側のインピーダンスを調整するインピーダンス調整装置であって、
前記交流電源は、振幅が相互に異なる第1交流電圧及び第2交流電圧を交互に出力しており、
可変インピーダンス回路と、
前記交流電源が出力している交流電圧が第1交流電圧に切替わった場合に、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを第1目標値に変更する第1変更部と、
前記交流電源が出力している交流電圧が第2交流電圧に切替わった場合に、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを、前記第1目標値とは異なる第2目標値に変更する第2変更部と、
を備え、
前記第1交流電圧に関する第1情報を繰り返し取得する第1取得部と、
前記第1取得部が取得した第1情報に基づいて、前記交流電源から見た前記負荷側の第1インピーダンス、又は、前記交流電源から見た前記第1交流電圧の第1反射係数を算出する第1数値算出部と、
前記第1交流電圧が出力される複数の第1期間を含む算出期間内に、前記第1取得部が取得した複数の第1情報に基づいて、前記第1数値算出部が算出した複数の第1インピーダンス又は複数の第1反射係数の平均値を算出する第1平均値算出部と、
前記第1平均値算出部が算出した平均値に基づいて前記第1目標値を決定する第1決定部と、
前記可変インピーダンス回路は、コンデンサ及びスイッチが直列に接続された複数の直列回路を有し、
前記複数の直列回路は並列に接続されており、
前記第1変更部及び第2変更部それぞれは、前記可変インピーダンス回路が有する一又は複数のスイッチを各別にオン又はオフに切替えることによって、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを前記第1目標値及び第2目標値に変更し、
前記第1数値算出部は、各第1期間の開始後、予め設定された待ち時間が経過した後、算出期間に含まれる各第1期間内で第1情報を繰り返し取得する
インピーダンス調整装置。
【請求項2】
前記第2交流電圧に関する第2情報を繰り返し取得する第2取得部と、
前記第2取得部が取得した第2情報に基づいて、前記交流電源から見た前記負荷側の第2インピーダンス、又は、前記交流電源から見た前記第2交流電圧の第2反射係数を算出する第2数値算出部と、
前記算出期間内に、前記第2取得部が取得した複数の第2情報に基づいて、前記第2数値算出部が算出した複数の第2インピーダンス又は複数の第2反射係数の平均値を算出する第2平均値算出部と、
前記第2平均値算出部が算出した平均値に基づいて前記第2目標値を決定する第2決定部と
を備え、
前記算出期間は、前記複数の第1期間と、前記第2交流電圧が出力される複数の第2期間とを含み、
前記第2数値算出部は、各第2期間の開始後、予め設定された待ち時間が経過した後、算出期間に含まれる各第2期間内で第2情報を繰り返し取得する
請求項1に記載のインピーダンス調整装置。
【請求項3】
前記第1数値算出部における待ち時間は、前記可変インピーダンス回路の1つまたは複数のスイッチをオンまたはオフに切替える切替え時間と、1つまたは複数のスイッチがオンまたはオフに切り替えられた後に前記可変インピーダンス回路のコンデンサの静電容量が安定する安定化時間との合計時間よりも長い
請求項1に記載のインピーダンス調整装置。
【請求項4】
前記第2数値算出部における待ち時間は、前記可変インピーダンス回路の1つまたは複数のスイッチをオンまたはオフに切替える切替え時間と、1つまたは複数のスイッチがオンまたはオフに切り替えられた後に前記可変インピーダンス回路のコンデンサの静電容量が安定する安定化時間との合計時間よりも長い
請求項2に記載のインピーダンス調整装置。
【請求項5】
振幅が相互に異なる第1交流電圧及び第2交流電圧を、交流電源が負荷に交互に出力する電源システムにて、可変インピーダンス回路のインピーダンスを変更することによって、前記交流電源から見た前記負荷側のインピーダンスを調整するインピーダンス調整方法であって、
前記交流電源が出力する交流電圧が前記第1交流電圧に切替わった場合に、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを第1目標値に変更し、
前記交流電源が出力する交流電圧が前記第2交流電圧に切替わった場合に、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを、前記第1目標値とは異なる第2目標値に変更し、
前記第1交流電圧に関する第1情報を繰り返し取得し、
取得した第1情報に基づいて、前記交流電源から見た前記負荷側の第1インピーダンス、又は、前記交流電源から見た前記第1交流電圧の第1反射係数を算出し、
前記第1交流電圧が出力される複数の第1期間を含む算出期間内に、取得した複数の第1情報に基づいて、算出した複数の第1インピーダンス又は複数の第1反射係数の平均値を算出し、
算出した平均値に基づいて前記第1目標値を決定し、
前記可変インピーダンス回路は、コンデンサ及びスイッチが直列に接続された複数の直列回路を有し、
前記複数の直列回路は並列に接続されており、
前記可変インピーダンス回路が有する一又は複数のスイッチを各別にオン又はオフに切替えることによって、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを前記第1目標値及び第2目標値に変更し、
各第1期間の開始後、予め設定された待ち時間が経過した後、算出期間に含まれる各第1期間内で第1情報を繰り返し取得する
処理をコンピュータが実行するインピーダンス調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインピーダンス調整装置及びインピーダンス調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数が高い交流電圧が交流電源から負荷に出力される電源システムの1つとして、振幅が相互に異なる第1交流電圧及び第2交流電圧を負荷に交互に出力する電源システム(例えば特許文献1を参照)が提案されている。特許文献1に記載の電源システムでは、交流電源から負荷に出力される第1交流電圧及び第2交流電圧の伝送路の中途に、交流電源から見た負荷側のインピーダンスを調整するインピーダンス調整装置が配置されている。
【0003】
インピーダンス調整装置は、伝送路の中途に配置されたリアクタンス素子のリアクタンスを調整することによって、交流電源から見た負荷側のインピーダンスを調整する。インピーダンス調整装置は、第1交流電圧及び第2交流電圧の両方の情報に基づいて、負荷側のインピーダンスを算出する。インピーダンス調整装置は、交流電源から見た負荷側のインピーダンスが、算出した負荷側のインピーダンスであるとして、例えば、交流電源から見た交流電圧の反射係数がゼロとなるリアクタンス素子のリアクタンスを算出する。インピーダンス調整装置は、算出したリアクタンスに基づいて、リアクタンスの目標値を決定し、リアクタンス素子のリアクタンスを、決定した目標値に変更する。これにより、実際の反射係数は小さい値に維持される。所謂、インピーダンス整合が行われる。結果、負荷側に効率よく電力を供給することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-90759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のインピーダンス調整装置は、第1交流電圧及び第2交流電圧の両方の情報に基づいて負荷側のインピーダンスを算出し、実際の負荷側のインピーダンスが、算出した負荷側のインピーダンスであるとしてリアクタンス素子のリアクタンスを調整する。しかし、算出された負荷側のインピーダンスは、第1交流電圧が出力されている場合における負荷側のインピーダンスではなく、第2交流電圧が出力されている場合における負荷側のインピーダンスでもない。このため、特許文献1に記載の電源システムでは、反射係数がゼロとなることはなく、常時、交流電源に戻る反射波が存在する。このため、反射波を低減させることによって、効率よく負荷側に電力を供給することが望まれている。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、振幅が相互に異なる第1交流電圧及び第2交流電圧を負荷に交互に出力する電源システムにおいて発生する反射波を低減することができるインピーダンス調整装置及びインピーダンス調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るインピーダンス調整装置は、交流電源から負荷に出力される交流電圧の伝送路の中途に配置され、前記交流電源から見た負荷側のインピーダンスを調整するインピーダンス調整装置であって、前記交流電源は、振幅が相互に異なる第1交流電圧及び第2交流電圧を交互に出力しており、可変インピーダンス回路と、前記交流電源が出力している交流電圧が第1交流電圧に切替わった場合に、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを第1目標値に変更する第1変更部と、前記交流電源が出力している交流電圧が第2交流電圧に切替わった場合に、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを、前記第1目標値とは異なる第2目標値に変更する第2変更部とを備える。
【0008】
本発明の一態様に係るインピーダンス調整装置は、前記第1交流電圧に関する第1情報を繰り返し取得する第1取得部と、前記第1取得部が取得した第1情報に基づいて、前記交流電源から見た前記負荷側の第1インピーダンス、又は、前記交流電源から見た前記第1交流電圧の第1反射係数を算出する第1数値算出部と、前記第1交流電圧が出力される複数の第1期間を含む算出期間内に、前記第1取得部が取得した複数の第1情報に基づいて、前記第1数値算出部が算出した複数の第1インピーダンス又は複数の第1反射係数の平均値を算出する第1平均値算出部と、前記第1平均値算出部が算出した平均値に基づいて前記第1目標値を決定する第1決定部とを備える。
【0009】
本発明の一態様に係るインピーダンス調整装置は、前記第2交流電圧に関する第2情報を繰り返し取得する第2取得部と、前記第2取得部が取得した第2情報に基づいて、前記交流電源から見た前記負荷側の第2インピーダンス、又は、前記交流電源から見た前記第2交流電圧の第2反射係数を算出する第2数値算出部と、前記算出期間内に、前記第2取得部が取得した複数の第2情報に基づいて、前記第2数値算出部が算出した複数の第2インピーダンス又は複数の第2反射係数の平均値を算出する第2平均値算出部と、前記第2平均値算出部が算出した平均値に基づいて前記第2目標値を決定する第2決定部とを備え、前記算出期間は、前記複数の第1期間と、前記第2交流電圧が出力される複数の第2期間とを含む。
【0010】
本発明の一態様に係るインピーダンス調整装置では、前記可変インピーダンス回路は、コンデンサ及びスイッチが直列に接続された複数の直列回路を有し、前記複数の直列回路は並列に接続されており、前記第1変更部及び第2変更部それぞれは、前記可変インピーダンス回路が有する一又は複数のスイッチを各別にオン又はオフに切替えることによって、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを前記第1目標値及び第2目標値に変更する。
【0011】
本発明の一態様に係るインピーダンス調整方法では、振幅が相互に異なる第1交流電圧及び第2交流電圧を、交流電源が負荷に交互に出力する電源システムにて、可変インピーダンス回路のインピーダンスを変更することによって、前記交流電源から見た前記負荷側のインピーダンスを調整するインピーダンス調整方法であって、前記交流電源が出力する交流電圧が前記第1交流電圧に切替わった場合に、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを第1目標値に変更し、前記交流電源が出力する交流電圧が前記第2交流電圧に切替わった場合に、前記可変インピーダンス回路のインピーダンスを、前記第1目標値とは異なる第2目標値に変更する処理をコンピュータが実行する。
【0012】
上記の態様に係るインピーダンス調整装置及びインピーダンス調整方法にあっては、第1交流電圧が出力されている間、可変インピーダンス回路のインピーダンスは第1目標値である。第2交流電圧が出力されている間、可変インピーダンス回路のインピーダンスは第2目標値である。第1目標値は、例えば、第1交流電圧が出力されている場合において交流電源から見た反射係数が最小値となるインピーダンスに調整される。第2目標値は、例えば、第2交流電圧が出力されている場合において交流電源から見た反射係数が最小値となるインピーダンスに調整される。この場合、負荷側のインピーダンスは、常時、適切なインピーダンスに調整されているため、反射波の低減が実現される。
【0013】
上記の態様に係るインピーダンス調整装置にあっては、複数の第1期間を含む算出期間が経過した場合に第1インピーダンスの平均値を算出する。第1期間が経過する都度、平均値を算出する必要がないため、平均値を算出する回路として、算出速度が遅い安価な回路を用いることができる。算出期間内において、第1情報を繰り返し取得する期間が長い。このため、負荷が例えばプラズマ発生器である場合、プラズマ発生器におけるプラズマの微小な変動によって、第1インピーダンスが大きく変動することはない。
【0014】
上記の態様に係るインピーダンス調整装置にあっては、複数の第2期間を含む算出期間が経過した場合に第2インピーダンスの平均値を算出する。第2期間が経過する都度、第2インピーダンスの平均値を算出する必要がないため、平均値を算出する回路として、算出速度が遅い安価な回路を用いることができる。算出期間内において、第2情報を繰り返し取得する期間が長い。このため、負荷が例えばプラズマ発生器である場合、プラズマ発生器におけるプラズマの微小な変動によって、第2インピーダンスが大きく変動することはない。
【0015】
上記の態様に係るインピーダンス調整装置にあっては、可変インピーダンス回路は、コンデンサ及びスイッチが直列に接続された複数の直列回路を有し、これらの直列回路は並列に接続されている。複数のスイッチを各別にオン又はオフに切替えることによって、可変インピーダンス回路のインピーダンスを容易に変更することができる。
【発明の効果】
【0016】
上記の態様によれば、振幅が相互に異なる第1交流電圧及び第2交流電圧を負荷に交互に出力する電源システムにおいて発生する反射波を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態1における電源システムの要部構成を示すブロック図である。
図2】高周波電源の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図3】算出回路の算出処理の手順を示すフローチャートである。
図4】算出回路の算出処理の手順を示すフローチャートである。
図5】マイコンの要部構成を示すブロック図である。
図6】容量変更処理の手順を示すフローチャートである。
図7】目標値決定処理の手順を示すフローチャートである。
図8】インピーダンス調整装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
図9】実施の形態2における電源システムの要部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
<電源システムの構成>
図1は、実施の形態1における電源システム1の要部構成を示すブロック図である。電源システム1は、高周波電源10、プラズマ発生器11、高周波検出器12、インピーダンス調整装置13及び同期信号出力器14を備える。高周波電源10は、伝送路Taを介してプラズマ発生器11に接続されている。伝送路Taの中途に高周波検出器12及びインピーダンス調整装置13が配置されている。高周波検出器12は、高周波電源10とインピーダンス調整装置13との間に位置する。高周波電源10及びプラズマ発生器11は接地されている。
なお、伝送路Taは、高周波電源10からプラズマ発生器11に至るまでの伝送路を示している。このため、図1では、高周波検出器12及び後述するコイル20が伝送路Ta上に配置されている。
【0019】
同期信号は、ハイレベル電圧及びローレベル電圧によって構成される同期信号を高周波電源10及びインピーダンス調整装置13に出力している。高周波電源10は、同期信号出力器14から入力された同期信号に基づいて、周波数が高い交流電圧を出力する交流電源である。
【0020】
図2は、高周波電源10の動作を説明するためのタイミングチャートである。図2は、同期信号の電圧の推移と、高周波電源10が出力した交流電圧の波形と、高周波電源10が出力する交流電力の推移とが示されている。これらの推移と、波形とについて、横軸は時間を示す。図2では、ハイレベル電圧及びローレベル電圧それぞれは、「H」及び「L」によって示されている。図2以外の図においても、ハイレベル電圧及びローレベル電圧それぞれは「H」及び「L」によって示されている。
【0021】
図2に示すように、同期信号は、ローレベル電圧とハイレベル電圧とが周期的に切替えられている。同期信号のデューティ、即ち、1周期において、同期信号がハイレベル電圧を示す期間が占める割合は種々の値に固定されている。図2の例では、デューティは60%である。
【0022】
高周波電源10は、同期信号がハイレベル電圧を示す場合、振幅が第1振幅B1である第1交流電圧を出力する。高周波電源10は、同期信号がローレベル電圧を示す場合、振幅が第2振幅B2である第2交流電圧を出力する。高周波電源10は、第1交流電圧及び第2交流電圧を交互に出力する。第1振幅B1及び第2振幅B2は、一定値であり、予め設定されている。第1振幅B1は第2振幅B2とは異なっている。図2の例では、第1振幅B1は第2振幅B2よりも大きい。第1交流電圧及び第2交流電圧の周波数は、共通の周波数であり、工業用のRF(Radio Frequency)帯に属する400kHz、2MHz、13.56MHz、27.12MHz、40.68MHz又は60MHz等の周波数である。
【0023】
高周波電源10は、高周波検出器12及びインピーダンス調整装置13を介して第1交流電圧及び第2交流電圧をプラズマ発生器11に出力する。このとき、高周波電源10が出力した第1交流電圧及び第2交流電圧は伝送路Taを伝送する。高周波電源10の出力インピーダンスは、例えば実部のみによって表される。この場合、出力インピーダンスは例えば50オームである。
【0024】
高周波電源10は、第1交流電圧を出力することによって、第1交流電力P1を出力し、第2交流電圧を出力することによって、第2交流電力P2を出力する。第1交流電力P1及び第2交流電力P2は、一定値であり、ゼロWを超えている。第1交流電力P1は第2交流電力P2とは異なっている。図2の例では、第1交流電力P1は、第2交流電力P2よりも大きい。
【0025】
図1に示すプラズマ発生器11は、高周波電源10から入力された第1交流電圧及び第2交流電圧を用いてプラズマを発生させる。プラズマ発生器11のタイプが容量結合型である場合、プラズマ発生器11は、板面が互いに対向する板状の上側電極及び下側電極を有する。高周波電源10が出力した第1交流電圧及び第2交流電圧は上側電極に交互に印加される。下側電極は接地されている。第1交流電圧及び第2交流電圧の印加により、上側電極及び下側電極間でプラズマが発生する。なお、上側電極が接地され、下側電極に第1交流電圧及び第2交流電圧が交互に出力されてもよい。
【0026】
プラズマ発生器11のタイプが誘導結合型である場合、プラズマ発生器11はコイルを有する。コイルの一端が接地されている。高周波電源10が出力した第1交流電圧及び第2交流電圧はコイルの他端に交互に印加される。これにより、コイル内でプラズマが発生する。
【0027】
プラズマ発生器11が発生させたプラズマは、エッチング又はCVD(Chemical Vapor Deposition)等の処理に用いられる。プラズマ発生器11では、処理が実行されている間、プラズマの状態が時間の経過とともに変化する。プラズマの状態が変化した場合、プラズマ発生器11のインピーダンスが変化する。
【0028】
高周波電源10が第1交流電圧を出力している場合において、高周波電源10から見たプラズマ発生器11側のインピーダンスを第1インピーダンスと記載する。同様の場合において、高周波電源10から見たプラズマ発生器11側の第1交流電圧の反射係数を第1反射係数と記載する。高周波電源10が第2交流電圧を出力している場合において、高周波電源10から見たプラズマ発生器11側のインピーダンスを第2インピーダンスと記載する。同様の場合において、高周波電源10から見たプラズマ発生器11側の第2交流電圧の反射係数を第2反射係数と記載する。反射係数は複素数である。反射係数の絶対値は、ゼロ以上であり、かつ、1以下である。
【0029】
第1インピーダンス及び第2インピーダンスそれぞれは、高周波電源10の出力端からプラズマ発生器11側を見たインピーダンス、又は、インピーダンス調整装置13における第1交流電圧及び第2交流電圧の入力端からプラズマ発生器11側を見たインピーダンスである。インピーダンス調整装置13の入力端は、高周波電源10の出力端に相当する。第1インピーダンス及び第2インピーダンスそれぞれは、インピーダンス調整装置13のインピーダンスとプラズマ発生器11のインピーダンスとの合成インピーダンスである。
【0030】
高周波検出器12は、高周波電源10が第1交流電圧を出力している第1期間中、第1交流電圧に関する第1パラメータを周期的に検出する。高周波検出器12は、第1パラメータを検出し、検出した第1パラメータを示す第1パラメータ情報を生成する。インピーダンス調整装置13は第1パラメータ情報を高周波検出器12から取得する。同様に、高周波検出器12は、高周波電源10が第2交流電圧を出力している第2期間中、第2交流電圧に関する第2パラメータを周期的に検出し、検出した第2パラメータを示す第2パラメータ情報を生成する。インピーダンス調整装置13は第2パラメータ情報を高周波検出器12から取得する。
【0031】
インピーダンス調整装置13は、第1パラメータ情報に基づいて第1インピーダンス又は第1反射係数を算出し、第2パラメータ情報に基づいて、第2インピーダンス又は第2反射係数を算出する。第1パラメータ情報及び第2パラメータ情報それぞれは、第1情報及び第2情報に相当する。
【0032】
第1パラメータの一例として、第1交流電圧、第1交流電圧に対応する第1交流電流、並びに、第1交流電圧及び第1交流電流の位相差が挙げられる。第1パラメータの他例として、プラズマ発生器11に向かう第1交流電圧の進行波電力(又は進行波電圧)と、プラズマ発生器11で反射して高周波電源10に向かう反射波電力(又は反射波電圧)とが挙げられる。第2パラメータは第1パラメータと同様である。第1パラメータの例の説明において、第1交流電圧を第2交流電圧に置き換えることによって、第2パラメータの例を説明することができる。
【0033】
インピーダンス調整装置13は、自装置のインピーダンスを変更することによって、第1インピーダンス及び第2インピーダンスを調整する。前述したように、インピーダンス調整装置13は、第1パラメータ情報に基づいて、第1インピーダンス又は第1反射係数を算出し、第2パラメータ情報に基づいて、第2インピーダンス又は第2反射係数を算出する。
【0034】
インピーダンス調整装置13は、算出結果に基づいて、第1期間中、第1インピーダンスが高周波電源10の出力インピーダンスの複素共役となるように、又は、反射係数が最小値となるように自装置のインピーダンスを変更する。インピーダンス調整装置13は、第1インピーダンスが出力インピーダンスの複素共役とならない場合、第1インピーダンスが出力インピーダンスの複素共役に最も近い値となるように、自装置のインピーダンスを調整する。
【0035】
インピーダンス調整装置13は、算出結果に基づいて、第2期間中、第1期間中に行ったインピーダンスの変更と同様の変更を行う。第1期間中に行うインピーダンス調整装置13のインピーダンスの変更の説明において、第1インピーダンスを第2インピーダンスに置き換えることによって、第2期間中に行うインピーダンスの変更を説明することができる。
【0036】
<インピーダンス調整装置13の構成>
インピーダンス調整装置13は、コイル20、可変コンデンサ回路21、コンデンサ22、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)23及び算出回路24を有する。コイル20は、伝送路Taの中途に配置されている。コイル20において、高周波検出器12側の一端に可変コンデンサ回路21の一端が接続されている。コイル20において、プラズマ発生器11側の一端にコンデンサ22の一端が接続されている。可変コンデンサ回路21及びコンデンサ22の他端は接地されている。
【0037】
コイル20、可変コンデンサ回路21及びコンデンサ22によって構成される回路は、π型の回路である。インピーダンス調整装置13が有する回路は、π型の回路に限定されず、L型又はT型等であってもよい。L型の回路の一例として、コイル20及びコンデンサ22の直列回路の一端又は他端に可変コンデンサ回路21の一端が接続され、かつ、可変コンデンサ回路21の他端が接地されている回路が挙げられる。L型の回路の他例として、コイル20及び可変コンデンサ回路21の直列回路の一端又は他端にコンデンサ22の一端が接続され、かつ、コンデンサ22の他端が接地されている回路が挙げられる。
【0038】
T型の回路の例として、コイル20と、図示しないコイルとが直列に接続され、コイル20及びコイル間の接続ノードに可変コンデンサ回路21の一端が接続され、かつ、可変コンデンサ回路21の他端が接地されている回路が挙げられる。
以下では、インピーダンス調整装置13がπ型の回路を有する例を説明する。
【0039】
可変コンデンサ回路21は、並列に接続されたn個のコンデンサ回路A1,A2,・・・,Anを有する。nは2以上の整数である。コンデンサ回路A1,A2,・・・,Anそれぞれは、コンデンサ30、PINダイオード31及び駆動部32を有する。コンデンサ回路A1,A2,・・・,Anそれぞれでは、コンデンサ30の一端がコイル20の一端に接続されている。コンデンサ30の他端は、PINダイオード31のアノードに接続されている。PINダイオード31のカソードは接地されている。このように、コンデンサ30及びPINダイオード31は直列に接続されている。コンデンサ30及びPINダイオード31間の接続ノードに駆動部32が接続されている。
【0040】
n個のコンデンサ回路A1,A2,・・・,Anの並列は、厳密な並列を意味せず、実質的な並列を意味する。従って、例えば、コンデンサ回路A1の両端間に、コンデンサ回路A2及び図示しない抵抗の直列回路が接続されてもよい。
【0041】
駆動部32は、接地電位を基準とした正の電圧をPINダイオード31のアノードに印加する。これにより、PINダイオード31に順方向電圧が印加される。駆動部32は、更に、接地電位を基準とした負の電圧をPINダイオード31のアノードに印加する。これにより、PINダイオード31に逆方向電圧が印加される。
【0042】
PINダイオード31では、P型、I型及びN型の半導体層が接合されている。I型の半導体は真性半導体である。P型及びN型の半導体層の間にI型の半導体層が配置されている。P型及びN型それぞれの半導体層にアノード及びカソードが設けられている。PINダイオード31はスイッチとして機能する。
【0043】
駆動部32がPINダイオード31に順方向電圧を印加した場合、PINダイオード31の両端間の抵抗値は十分に小さな値に低下し、PINダイオード31はオンに切替わる。駆動部32がPINダイオード31に逆方向電圧を印加した場合、PINダイオード31の両端間の抵抗値は十分に大きな値に上昇し、PINダイオード31はオフに切替わる。以上のように、駆動部32は、自身に接続されているPINダイオード31をオン又はオフに切替える。PINダイオード31がオンである場合、交流電圧はPINダイオード31を通過することができる。PINダイオード31がオフである場合、交流電圧はPINダイオード31を通過することができない。
【0044】
マイコン23は、可変コンデンサ回路21が有するn個の駆動部32にハイレベル電圧又はローレベル電圧を出力している。各駆動部32は、マイコン23から入力されている電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わった場合、PINダイオード31をオンに切替える。各駆動部32は、マイコン23から入力されている電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わった場合、PINダイオード31をオフに切替える。
【0045】
オンであるPINダイオード31の数が2以上である場合、可変コンデンサ回路21の容量は、オンである複数のPINダイオード31に接続されている複数のコンデンサ30の容量の総和で表される。オンであるPINダイオード31の数が1である場合、可変コンデンサ回路21の容量はオンであるPINダイオード31に接続されているコンデンサ30の容量で表される。
【0046】
コンデンサ回路Ai(i=1,2,・・・,n)が有するコンデンサ30の容量は、正の実数値と、2の(i-1)乗との積で表される。これにより、可変コンデンサ回路21の容量を、前述した実数値刻みで調整することができる。実数値が1pFである場合、可変コンデンサ回路21の容量を1pF刻みで調整することができる。
以上のように、可変コンデンサ回路21は、容量、即ち、インピーダンスを変更することができる回路であり、可変インピーダンス回路として機能する。可変コンデンサ回路21の容量は、可変インピーダンス回路のインピーダンスに相当する。
【0047】
同期信号出力器14は、同期信号を、高周波電源10だけではなく、マイコン23及び算出回路24に出力している。算出回路24は、高周波検出器12から第1パラメータ情報及び第2パラメータ情報を取得する。算出回路24が取得した第1パラメータ情報又は第2パラメータ情報が示す第1パラメータ又は第2パラメータは、取得時点における第1パラメータ又は第2パラメータに実質的に一致する。マイコン23は、第1インピーダンス及び第2インピーダンスの算出の開始を指示する開始信号を算出回路24に出力する。
【0048】
算出回路24は、例えばFPGA(field-programmable gate array)によって構成され、第1インピーダンス又は第1反射係数の平均値である第1平均値を算出し、かつ、第2インピーダンス又は第2反射係数の平均値である第2平均値を算出する算出処理を実行する。算出処理では、算出回路24は、マイコン23から開始信号が入力されてから算出期間が経過するまで、第1パラメータ情報及び第2パラメータ情報を繰り返し取得する。算出期間は、同期信号のk(k:2以上の整数)周期であり、複数の第1期間と複数の第2期間とを含む。算出回路24は、第1パラメータ情報を取得する都度、第1インピーダンス又は第1反射係数を算出し、第2パラメータ情報を取得する都度、第2インピーダンス又は第2反射係数を算出する。算出期間が経過した場合、算出回路24は第1平均値及び第2平均値を算出し、算出した第1平均値及び第2平均値を示す平均情報をマイコン23に出力する。
【0049】
マイコン23は、算出回路24から平均情報が入力された場合、算出回路24から入力された平均情報が示す第1平均値及び第2平均値に基づいて、可変コンデンサ回路21の容量に関する第1目標値及び第2目標値を決定する。
【0050】
前述したように、マイコン23は、可変コンデンサ回路21が有するn個の駆動部32に出力している出力電圧をハイレベル電圧又はローレベル電圧に切替えることによって、可変コンデンサ回路21が有するn個のPINダイオード31を各別にオン又はオフに切替える。マイコン23は、n個のPINダイオード31を各別にオン又はオフに切替えることによって、可変コンデンサ回路21の容量を容易に変更することができる。マイコン23は、同期信号がハイレベル電圧に切替わった場合、即ち、第1期間が開始した場合、容量を第1目標値に変更する。マイコン23は、同期信号がローレベル電圧に切替わった場合、即ち、第2期間が開始した場合、容量を第2目標値に変更する。
以下では、算出回路24及びマイコン23の動作を詳細に説明する。
【0051】
<算出回路24の算出処理>
図3及び図4は、算出回路24の算出処理の手順を示すフローチャートである。ここでは、第1インピーダンスの第1平均値、及び、第2インピーダンスの第2平均値を算出する算出処理を説明する。
【0052】
算出処理では、算出回路24は、マイコン23から開始信号が入力されたか否かを判定する(ステップS1)。算出回路24は、開始信号が入力されていないと判定した場合(S1:NO)、ステップS1を再び実行し、開始信号が入力されるまで待機する。算出回路24は、開始信号が入力されたと判定した場合(S1:YES)、同期信号の電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わったか否かを判定する(ステップS2)。
【0053】
算出回路24は、同期信号の電圧がハイレベル電圧に切替わっていないと判断した場合(S2:NO)、ステップS2を再び実行し、同期信号の電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わるまで待機する。算出回路24は、同期信号の電圧がハイレベル電圧に切替わったと判定した場合(S2:YES)、同期信号の電圧がハイレベル電圧に切替わってから待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS3)。待機時間は、一定値であり、予め設定されている。算出回路24は、例えば、図示しないタイマを用いてステップS3を実行する。この場合、タイマは、同期信号の電圧がハイレベル電圧に切替わってから経過した時間を計測する。
【0054】
算出回路24は、待機時間が経過していないと判断した場合(S3:NO)、ステップS3を再び実行し、待機時間が経過するまで待機する。前述したように、マイコン23は、同期信号がハイレベル電圧に切替わった場合、可変コンデンサ回路21の容量を第1目標値に変更する。算出回路24は、待機時間が経過するまで待機することによって、容量が第1目標値に変更してから容量が安定するまで待機する。待機時間は第1期間及び第2期間よりも十分に短い。
【0055】
算出回路24は、待機時間が経過したと判定した場合(S3:YES)、高周波検出器12から第1パラメータ情報を取得し(ステップS4)、取得した第1パラメータ情報が示す第1パラメータに基づいて、第1インピーダンスを算出する(ステップS5)。次に、算出回路24は、同期信号の電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わったか否かを判定する(ステップS6)。算出回路24は、同期信号の電圧がローレベル電圧に切替わっていないと判定した場合(S6:NO)、ステップS4を再び実行する。算出回路24は、同期信号の電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わるまで、第1パラメータ情報を繰り返し取得し、第1インピーダンスを繰り返し算出する。
【0056】
算出回路24は、同期信号の電圧がローレベル電圧に切替わったと判定した場合(S6:YES)、ステップS3と同様に、待機時間が経過したか否かを判定する(ステップS7)。タイマを用いる場合、タイマは、同期信号の電圧がローレベル電圧に切替わってから経過した時間を計測する。
【0057】
算出回路24は、待機時間が経過していないと判断した場合(S7:NO)、ステップS7を再び実行し、待機時間が経過するまで待機する。前述したように、マイコン23は、同期信号がローレベル電圧に切替わった場合、可変コンデンサ回路21の容量を第2目標値に変更する。算出回路24は、待機時間が経過するまで待機することによって、容量が第2目標値に変更してから容量が安定するまで待機する。
【0058】
算出回路24は、待機時間が経過したと判定した場合(S7:YES)、高周波検出器12から第2パラメータ情報を取得し(ステップS8)、取得した第2パラメータ情報が示す第2パラメータに基づいて、第2インピーダンスを算出する(ステップS9)。次に、算出回路24は、同期信号の電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わったか否かを判定する(ステップS10)。算出回路24は、同期信号の電圧がハイレベル電圧に切替わっていないと判定した場合(S10:NO)、ステップS8を再び実行する。算出回路24は、同期信号の電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わるまで、第2パラメータ情報を繰り返し取得し、第2インピーダンスを繰り返し算出する。
【0059】
算出回路24は、同期信号の電圧がハイレベル電圧に切替わったと判定した場合(S10:YES)、ステップS2において同期信号がハイレベル電圧に切替わったと判定してから、算出期間が経過したか否かを判定する(ステップS11)。前述したように、算出期間はk周期であるので、同期信号がハイレベル電圧に切替わったタイミングで算出期間が経過する。算出回路24は、例えば、タイマを用いてステップS11を実行する。この場合、タイマは、ステップS2において同期信号がハイレベル電圧に切替わってから経過した時間を計測する。
【0060】
算出回路24は、算出期間が経過していないと判定した場合(S11:NO)、ステップS4を再び実行し、第1インピーダンス及び第2インピーダンスを算出する。算出回路24は、算出期間が経過したと判定した場合(S11:YES)、算出期間中に算出した複数の第1インピーダンスの第1平均値を算出し(ステップS12)、算出期間中に算出した複数の第2インピーダンスの第2平均値を算出する(ステップS13)。次に、算出回路24は、ステップS12,S13で算出した第1平均値及び第2平均値を示す平均情報をマイコン23に出力する(ステップS14)。
【0061】
算出回路24は、ステップS14を実行した後、算出処理を終了する。算出回路24は、算出処理を終了した後、算出処理を再び開始し、マイコン23から開始信号が入力されるまで待機する。
【0062】
以上のように、算出回路24は、算出期間中、第1パラメータ情報及び第2パラメータ情報を繰り返し取得する。算出回路24は、取得した第1パラメータ情報に基づいて第1インピーダンスを算出し、取得した第2パラメータ情報に基づいて第2インピーダンスを算出する。算出回路24は、算出期間内に取得した複数の第1パラメータ情報に基づいて算出した複数の第1インピーダンスの平均値を算出するとともに、算出期間内に取得した複数の第2パラメータ情報に基づいて算出した複数の第2インピーダンスの平均値を算出する。算出回路24は、第1取得部、第1数値算出部、第1平均値算出部、第2取得部、第2数値算出部及び第2平均値算出部として機能する。
【0063】
第1反射係数の第1平均値、及び、第2反射係数の第2平均値を算出する算出処理は、第1インピーダンスの第1平均値、及び、第2インピーダンスの第2平均値の算出処理と同様である。第1インピーダンス及び第2インピーダンスの算出処理の説明において、第1インピーダンス及び第2インピーダンスそれぞれを第1反射係数及び第2反射係数に置き換えることによって、第1反射係数及び第2反射係数の算出処理を説明することができる。
【0064】
算出回路24は、処理を実行する処理素子、例えば、CPU(Central Processing Unit)を有する構成であってもよい。この場合、算出回路24では、図示しない記憶部にコンピュータプログラムが記憶されており、処理素子はコンピュータプログラムを実行することによって算出処理を実行する。
【0065】
コンピュータプログラムは、算出回路24の処理素子が読み取り可能に記憶媒体に記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体から読み出されたコンピュータプログラムが算出回路24の記憶部に書き込まれる。記憶媒体は、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。光ディスクは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、又は、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)等である。磁気ディスクは、例えばハードディスクである。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部装置からコンピュータプログラムをダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラムを記憶部に書き込んでもよい。
【0066】
<マイコン23の構成>
図5は、マイコン23の要部構成を示すブロック図である。マイコン23は、入力部40,41、出力部42,43、記憶部44及び制御部45を有する。これらは、内部バス46に接続されている。入力部40は、更に、同期信号出力器14に接続されている。入力部41及び出力部42それぞれは、更に、算出回路24に接続されている。出力部43は、更に、n個のコンデンサ回路A1,A2,・・・,Anが有するn個の駆動部32に各別に接続されている。
【0067】
同期信号出力器14は入力部40に同期信号を出力している。出力部42は、制御部45の指示に従って、開始信号を算出回路24に出力する。算出回路24は、平均情報を入力部41に出力する。出力部43は、n個の駆動部32に、ハイレベル電圧又はローレベル電圧を出力している。出力部43は、制御部45の指示に従って、n個の駆動部32に出力している電圧を、ハイレベル電圧又はローレベル電圧に各別に切替える。
【0068】
記憶部44には、第1目標値を示す第1目標値情報と、第2目標値を示す第2目標値情報とが記憶されている。第1目標値情報及び第2目標値情報それぞれが示す第1目標値及び第2目標値は制御部45によって更新される。記憶部44には、コンピュータプログラムPが記憶されている。制御部45は、処理を実行する処理素子、例えば、CPUを有する。制御部45の処理素子は、コンピュータプログラムPを実行することによって、可変コンデンサ回路21の容量を変更する容量変更処理と、第1目標値及び第2目標値を決定する目標値決定処理とを並行して実行する。
【0069】
コンピュータプログラムPは、制御部45の処理素子が読み取り可能に記憶媒体Eに記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体Eから読み出されたコンピュータプログラムPがマイコン23の記憶部44に書き込まれる。記憶媒体Eは、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部装置からコンピュータプログラムPをダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラムPを記憶部44に書き込んでもよい。
制御部45が有する処理素子の数が2以上であってもよい。この場合、複数の処理素子が容量変更処理及び目標値決定処理を協同で実行してもよい。
【0070】
<容量変更処理>
図6は容量変更処理の手順を示すフローチャートである。容量変更処理では、制御部45は、同期信号出力器14から入力部40に出力されている同期信号の電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わったか否かを判定する(ステップS21)。制御部45は、同期信号の電圧がハイレベル電圧に切替わっていないと判定した場合(S21:NO)、ステップS21を再び実行し、同期信号の電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わるまで待機する。
【0071】
制御部45は、同期信号の電圧がハイレベル電圧に切替わったと判定した場合(S21:YES)、第1目標値情報が示す第1目標値を読み出す(ステップS22)。次に、制御部45は、一又は複数のPINダイオード31を各別にオン又はオフに切替えることによって、可変コンデンサ回路21の容量を、ステップS22で読み出した第1目標値に変更する(ステップS23)。ここで、一又は複数のPINダイオード31は、第1目標値への変更のために、切替えが必要な全てのPINダイオード31である。制御部45は、出力部43に指示して、一又は複数のPINダイオード31に対応する一又は複数の駆動部32への出力電圧を各別にハイレベル電圧又はローレベル電圧に切替えさせる。これにより、制御部45は、一又は複数のPINダイオード31のオン又はオフへの切替えを実現する。ステップS23が実行された場合、第1インピーダンスが変更される。
【0072】
制御部45は、ステップS23を実行した後、同期信号出力器14が入力部40に出力している同期信号の電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わったか否かを判定する(ステップS24)。制御部45は、同期信号の電圧がローレベル電圧に切替わっていないと判定した場合(S24:NO)、ステップS24を再び実行し、同期信号の電圧がローレベル電圧に切替わるまで待機する。
【0073】
制御部45は、同期信号がローレベル電圧に切替わったと判定した場合(S24:YES)、第2目標値情報が示す第2目標値を読み出す(ステップS25)。次に、制御部45は、ステップS23と同様に、一又は複数のPINダイオード31をオン又はオフに切替えることによって、可変コンデンサ回路21の容量を、ステップS25で読み出した第2目標値に変更する(ステップS26)。ここで、一又は複数のPINダイオード31は、第2目標値への変更のために、切替えが必要な全てのPINダイオード31である。ステップS25が実行された場合、第2インピーダンスが変更される。
【0074】
制御部45は、ステップS26を実行した後、容量変更処理を終了する。制御部45は、容量変更処理を終了した後、再び、容量変更処理を実行し、同期信号がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わるまで待機する。
【0075】
以上のように、容量変更処理では、制御部45は、同期信号の電圧がハイレベル電圧に切替わった場合、即ち、高周波電源10が出力している交流電圧が第1交流電圧に切替わった場合に、可変コンデンサ回路21の容量を第1目標値に変更する。制御部45は、同期信号の電圧がローレベル電圧に切替わった場合、即ち、高周波電源10が出力している交流電圧が第2交流電圧に切替わった場合に、可変コンデンサ回路21の容量を第2目標値に変更する。制御部45は、第1変更部及び第2変更部として機能する。
【0076】
<目標値決定処理>
図7は目標値決定処理の手順を示すフローチャートである。制御部45は、算出回路24から入力部41に平均情報が入力された場合に目標値決定処理を実行する。ここでは、第1インピーダンスの第1平均値及び第2インピーダンスの第2平均値を示す平均情報が入力された場合に実行される目標値決定処理を説明する。
【0077】
目標値決定処理では、制御部45は、入力部41に入力された平均情報が示す第1インピーダンスの第1平均値に基づいて、第1インピーダンスが、高周波電源10の出力インピーダンスの複素共役となる第1容量を算出する(ステップS31)。次に、制御部45は、ステップS31で算出した第1容量に基づいて第1目標値を決定する(ステップS32)。ここで、第1目標値は、可変コンデンサ回路21において実現することができる容量であって、算出した第1容量に一致するか、又は、算出した第1容量に最も近い容量である。制御部45は第1決定部としても機能する。
【0078】
次に、制御部45は、第1目標値情報が示す第1目標値を、ステップS32で決定した第1目標値に更新する(ステップS33)。ステップS33が実行された後においては、第1期間が開始した場合、可変コンデンサ回路21の容量は、ステップS32で決定した第1目標値に変更される。
【0079】
次に、制御部45は、入力部41に入力された平均情報が示す第2インピーダンスの第2平均値に基づいて、第2インピーダンスが、高周波電源10の出力インピーダンスの複素共役となる第2容量を算出する(ステップS34)。次に、制御部45は、ステップS34で算出した第2容量に基づいて第2目標値を決定する(ステップS35)。ここで、第2目標値は、可変コンデンサ回路21において実現することができる容量であって、算出した第2容量に一致するか、又は、算出した第2容量に最も近い容量である。制御部45は第2決定部としても機能する。
【0080】
次に、制御部45は、第2目標値情報が示す第2目標値を、ステップS35で決定した第2目標値に更新する(ステップS36)。ステップS36が実行された後においては、第2期間が開始した場合、可変コンデンサ回路21の容量は、ステップS35で決定した第2目標値に変更される。
【0081】
制御部45は、ステップS36を実行した後、出力部42に指示して、開始信号を算出回路24に出力させる(ステップS37)。これにより、算出回路24は、算出処理において、第1インピーダンス及び第2インピーダンスを繰り返し算出し、算出した複数の第1インピーダンスの第1平均値と、算出した複数の第2インピーダンスの第2平均値とを算出する。
制御部45は、ステップS37を実行した後、目標値決定処理を終了する。
【0082】
第1反射係数の第1平均値及び第2反射係数の第2平均値を示す平均情報が入力された場合に実行される目標値決定処理は、第1インピーダンスの第1平均値及び第2インピーダンスの第2平均値を示す平均情報が入力された場合に実行される目標値決定処理と同様である。第1反射係数及び第2反射係数の目標値決定処理のステップS31では、第1反射係数がゼロとなる第1容量を算出する。第1反射係数及び第2反射係数の目標値決定処理のステップS35では、第2反射係数がゼロとなる第2容量を算出する。出力部42が開始信号を算出回路24に出力した場合、算出回路24は、第1反射係数及び第2反射係数を繰り返し算出し、算出した複数の第1反射係数の第1平均値と、算出した複数の第2反射係数の第2平均値とを算出する。
【0083】
<インピーダンス調整装置13の動作>
図8は、インピーダンス調整装置13の動作を説明するためのタイミングチャートである。図8には、同期信号の電圧の推移が示されるとともに、算出回路24、マイコン23及び駆動部32が実行する処理が時系列で示されている。これらの横軸には時間が示されている。図8では、第1インピーダンス又は第1反射係数の算出を第1算出と記載し、第2インピーダンス又は第2反射係数の算出を第2算出と記載している。図8には、kが2である例、即ち、算出期間が同期信号の2周期である例が示されている。
【0084】
図8に示すように、同期信号の電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わった場合、マイコン23は、一又は複数の駆動部32に指示して、一又は複数のPINダイオード31をオン又はオフに切替えさせる。これにより、可変コンデンサ回路21の容量が、第1目標値情報が示す第1目標値に変更される。同期信号の電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わった場合、マイコン23は、一又は複数の駆動部32に指示して、一又は複数のPINダイオード31をオン又はオフに切替えさせる。これにより、可変コンデンサ回路21の容量が、第2目標値情報が示す第2目標値に変更される。
【0085】
従って、高周波電源10が第1交流電圧を出力している第1期間中、可変コンデンサ回路21の容量は第1目標値情報が示す第1目標値である。高周波電源10が第2交流電圧を出力している第2期間中、可変コンデンサ回路21の容量は第2目標値情報が示す第2目標値である。
【0086】
図8に示すように、マイコン23の出力部42が算出回路24に開始信号を出力した後において、同期信号の電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わった場合、算出期間が開始される。算出回路24は、算出期間中、第1インピーダンス又は第1反射係数を繰り返し算出するとともに、第2インピーダンス又は第2反射係数を繰り返し算出する。マイコン23は、k個の第1期間それぞれにおいて、同期信号の電圧がハイレベル電圧に切替わってから待機時間が経過した後、第1インピーダンス又は第1反射係数を繰り返し算出する。マイコン23は、k個の第2期間それぞれにおいて、同期信号の電圧がローレベル電圧に切替わってから待機時間が経過した後、第2インピーダンス又は第2反射係数を繰り返し算出する。
【0087】
一又は複数のPINダイオード31をオン又はオフに切替える時間を切替え時間と記載する。一又は複数のPINダイオード31をオン又はオフに切替えてから可変コンデンサ回路21の容量が安定するまでにかかる時間を安定時間と記載する。待機時間は、切替え時間及び安定時間の合計時間よりも長い。このため、算出回路24が取得する第1パラメータ情報が示す第1パラメータは、可変コンデンサ回路21の容量が安定している状態で高周波検出器12が検出した第1パラメータである。同様に、算出回路24が取得する第2パラメータ情報が示す第2パラメータは、可変コンデンサ回路21の容量が安定している状態で高周波検出器12が検出した第2パラメータである。
【0088】
算出回路24は、算出期間が経過した場合、算出期間中に算出した複数の第1インピーダンス又は複数の第1反射係数に基づいて、第1平均値を算出する。更に、算出回路24は、算出期間中に算出した複数の第2インピーダンス又は複数の第2反射係数に基づいて、第2平均値を算出する。算出回路24は、算出した第1平均値及び第2平均値を示す平均情報をマイコン23の入力部41に出力する。算出回路24は、平均情報を出力した後、算出を停止する。算出回路24は、開始信号が再び入力された後において、同期信号の電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わった場合に算出を再開する。
【0089】
マイコン23の制御部45は、入力部41に平均情報が入力された場合、入力された平均情報が示す第1平均値及び第2平均値それぞれに基づいて、第1目標値及び第2目標値を決定する。制御部45は、第1目標値情報及び第2目標値情報が示す第1目標値及び第2目標値を、決定した第1目標値及第2目標値に更新する。更新が行われた後においては、第1目標値又は第2目標値は変更される。
【0090】
<インピーダンス調整装置13の効果>
前述したように、高周波電源10が第1交流電圧を出力している第1期間中、可変コンデンサ回路21の容量は第1目標値に調整され、高周波電源10が第2交流電圧を出力している第2期間中、可変コンデンサ回路21の容量は第2目標値に調整される。この場合、高周波電源10から見たプラズマ発生器11側のインピーダンスは、常時、適切なインピーダンスに調整されている。このため、反射波の低減が実現され、プラズマ発生器11に効率よく電力を供給することができる。
【0091】
また、算出回路24は、複数の第1期間と複数の第2期間とを含む算出期間が経過した場合に、第1インピーダンス及び第2インピーダンスの平均値を算出する。第1期間が経過する都度、第1インピーダンスの平均値を算出する必要がなく、第2期間が経過する都度、第2インピーダンスの平均値を算出する必要もない。このため、算出回路24として、算出速度が遅い安価な回路を用いることができる。
【0092】
更に、算出期間内において、算出回路24が第1パラメータ情報を繰り返し取得する期間が長いので、プラズマ発生器11におけるプラズマの状態の微小な変動によって、第1インピーダンスが大きく変動することはない。同様に、算出期間内において、算出回路24が第2パラメータ情報を繰り返し取得する期間が長いので、プラズマ発生器11におけるプラズマの状態の微小な変動によって、第2インピーダンスが大きく変動することはない。
【0093】
<なお書き>
可変コンデンサ回路21は、自身のインピーダンスを変更することが可能な回路として機能すればよい。このため、可変コンデンサ回路21の代わりに、自身の抵抗値及びリアクタンス、又は、自身のリアクタンスを変更することが可能な回路を用いてもよい。算出回路24が第1期間中に算出する第1インピーダンスの数は1であってもよい。算出回路24が第2期間中に算出する第2インピーダンスの数も1であってもよい。
【0094】
算出期間に含まれる同期信号の周期の数、即ち、kの値は1であってもよい。この場合、算出回路24が第1期間中に算出する第1インピーダンスの数は2以上であり、算出回路24が第2期間中に算出する第2インピーダンスの数も2以上である。インピーダンス調整装置13において、算出回路24が実行する処理を、マイコン23の制御部45が実行してもよい。この場合、高周波検出器12からインピーダンス調整装置13のマイコン23にパラメータ情報が出力される。
【0095】
算出期間以外の期間においても、算出回路24は、第1インピーダンス及び第2インピーダンス、又は、第1反射係数及び第2反射係数を繰り返し算出してもよい。この構成では、算出期間以外の期間において算出された第1インピーダンス及び第2インピーダンス、又は、第1反射係数及び第2反射係数が使用されることはない。PINダイオード31はスイッチとして機能すればよい。このため、PINダイオード31の代わりに、FET(Field Effect Transistor)、バイポーラトランジスタ又はリレー接点等を用いてもよい。高周波電源10が交流電圧を出力する負荷は、プラズマ発生器11に限定されず、例えば、非接触電力伝送装置であってもよい。
【0096】
(実施の形態2)
実施の形態1において、プラズマ発生器11のタイプが容量結合型である場合、上側電極及び下側電極の一方は接地されている状態で、上側電極及び下側電極の他方に第1交流電圧及び第2交流電圧が交互に印加される。しかしながら、上側電極及び下側電極の両方に交流電圧を印加してもよい。
以下では、実施の形態2について、実施の形態1と異なる点を説明する。後述する構成を除く他の構成については、実施の形態1と共通している。このため、実施の形態1と共通する構成部には実施の形態1と同一の参照符号を付し、共通する構成部の説明を省略する。
【0097】
<電源システム1の構成>
図9は、実施の形態2における電源システム1の要部構成を示すブロック図である。実施の形態2における電源システム1は、実施の形態1と同様に、高周波電源10、プラズマ発生器11、高周波検出器12、インピーダンス調整装置13及び同期信号出力器14を備える。これらの接続は実施の形態1と同様である。
【0098】
実施の形態2における電源システム1は、更に、高周波電源50、高周波検出器51及びインピーダンス調整装置52を備える。実施の形態2におけるプラズマ発生器11は、注入容器60、上側電極61及び下側電極62を有する。図9では、注入容器60の断面が示されている。注入容器60は、箱体状をなし、2つの貫通孔を有する。一方の貫通孔からガスが注入容器60内に注入される。他方の貫通孔から物質が排出される。上側電極61及び下側電極62それぞれは、板状をなし、注入容器60内に収容されている。上側電極61の板面は、下側電極62の板面と対向している。
【0099】
上側電極61はインピーダンス調整装置13に接続される。インピーダンス調整装置13において、図1に示すように、コイル20、可変コンデンサ回路21及びコンデンサ22によってπ型の回路が形成されている場合、コイル20のコンデンサ22側の一端が上側電極61に接続される。高周波電源10、プラズマ発生器11、高周波検出器12、インピーダンス調整装置13及び同期信号出力器14は、実施の形態1と同様に作用し、上側電極61には、第1交流電圧及び第2交流電圧が交互に印加される。
【0100】
高周波電源50は、伝送路Tbを介してプラズマ発生器11の下側電極62に接続されている。伝送路Tbの中途に高周波検出器51及びインピーダンス調整装置52が配置されている。高周波検出器51は、高周波電源50とインピーダンス調整装置52との間に位置する。高周波電源50は接地されている。
【0101】
高周波電源50は、周波数が高い交流電圧を出力する交流電源である。高周波電源50が出力する交流電圧の周波数は、工業用のRF帯に属する400kHz、2MHz、13.56MHz、27.12MHz、40.68MHz又は60MHz等の周波数である。高周波電源50は、高周波検出器51及びインピーダンス調整装置52を介して交流電圧をプラズマ発生器11の下側電極62に出力する。このとき、高周波電源50が出力した交流電圧は伝送路Tbを伝送する。高周波電源50の出力インピーダンスは、例えば実部のみによって表される。この場合、出力インピーダンスは例えば50オームである。
【0102】
高周波電源50が出力する交流電圧の振幅は固定されている。この交流電圧の周波数は、第1交流電圧及び第2交流電圧の周波数と一致していてもよいし、異なっていてもよい。プラズマ発生器11において、注入容器60内にガスが注入されている状態で、第1交流電圧及び第2交流電圧が上側電極61に交互に印加され、かつ、下側電極62に交流電圧が印加された場合、上側電極61及び下側電極62間でプラズマが発生する。下側電極62の上側電極61側の板面に処理対象物Wが配置されている。プラズマ発生器11内では、プラズマを用いて処理対象物Wにエッチング又はCVD等の処理を施す。
【0103】
実施の形態2においては、同期信号出力器14は、同期信号を、高周波電源10、高周波検出器12及びインピーダンス調整装置13だけではなく、高周波検出器51及びインピーダンス調整装置52にも出力する。図9の上側に記載されている高周波電源10が出力している交流電圧が変更された場合、高周波電源50から見たプラズマ発生器11側のインピーダンスは、高周波電源10から見たプラズマ発生器11側のインピーダンスと同様に変化する。
【0104】
高周波電源50から見たプラズマ発生器11側のインピーダンスは、高周波電源50の出力端からプラズマ発生器11側を見たインピーダンス、又は、インピーダンス調整装置52における交流電圧の入力端からプラズマ発生器11側を見たインピーダンスである。インピーダンス調整装置52の入力端は、高周波電源50の出力端に相当する。高周波電源50から見たプラズマ発生器11側のインピーダンスは、インピーダンス調整装置52のインピーダンスとプラズマ発生器11のインピーダンスとの合成インピーダンスである。
【0105】
高周波検出器51及びインピーダンス調整装置52それぞれは、高周波検出器12及びインピーダンス調整装置13と同様に動作する。高周波検出器51及びインピーダンス調整装置52に関しては、第1パラメータは、高周波電源10が第1交流電圧を出力している第1期間中において高周波電源50が出力している交流電圧に関するパラメータである。第2パラメータは、高周波電源10が第2交流電圧を出力している第2期間中において高周波電源50が出力している交流電圧に関するパラメータである。
【0106】
ここで、パラメータの一例として、高周波検出器51を介して伝送する交流電圧及び交流電流、並びに、これらの位相差が挙げられる。パラメータの他例として、高周波電源50からプラズマ発生器11に向かう交流電圧の進行波電力(又は進行波電圧)と、プラズマ発生器11で反射して高周波電源50に向かう反射波電力(又は反射波電圧)とが挙げられる。
【0107】
<インピーダンス調整装置13の効果>
実施の形態2においても、インピーダンス調整装置13は、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0108】
<なお書き>
実施の形態2において、高周波電源10,50それぞれが印加する2つの電極は、下側電極62及び上側電極61であってもよい。また、実施の形態2における電源システム1は、高周波電源50、高周波検出器51及びインピーダンス調整装置52の代わりに、高周波電源10、高周波検出器12、インピーダンス調整装置13及び同期信号出力器14を備えてもよい。この場合、一方の高周波電源10が上側電極61に第1交流電圧及び第2交流電圧を交互に印加し、他方の高周波電源10が下側電極62に第1交流電圧及び第2交流電圧を交互に印加する。
【0109】
この場合、2つの同期信号出力器14が出力する2つの同期信号について、ローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わる立上り時点、又は、ハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わる立下り点が一致している。更に、2つの同期信号について、一方の周期は、他方の周期のm倍である。mは自然数である。以上のように構成された電源システム1であっても、インピーダンス調整装置13は、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0110】
実施の形態1,2で記載されている技術的特徴(構成要件)はお互いに組み合わせ可能であり、組み合わせすることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
開示された実施の形態1,2はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0111】
10 高周波電源(交流電源)、11 プラズマ発生器(負荷)、13 インピーダンス調整装置、21 可変コンデンサ回路(可変インピーダンス回路)、24 算出回路(第1取得部、第1数値算出部、第1平均値算出部、第2取得部、第2数値算出部、第2平均値算出部)、45 制御部(第1変更部、第2変更部、第1決定部、第2決定部)、Ta 伝送路
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