(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】分岐流路閉塞装置及び分岐流路閉塞方法
(51)【国際特許分類】
F16L 55/132 20060101AFI20240919BHJP
F16K 43/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
F16L55/132
F16K43/00
(21)【出願番号】P 2020071237
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】592239394
【氏名又は名称】川崎市
(73)【特許権者】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】森下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松永 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】志村 友行
(72)【発明者】
【氏名】横関 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博教
【審査官】広瀬 雅治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-038227(JP,A)
【文献】特開2005-133887(JP,A)
【文献】実公昭45-024841(JP,Y1)
【文献】実公昭48-004094(JP,Y1)
【文献】特開2017-083019(JP,A)
【文献】特開2000-249285(JP,A)
【文献】特開2012-189111(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/132
F16K 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管から分岐した分岐管部の流路を閉塞する分岐流路閉塞装置であって、
前記分岐管部と前記流体管との接続部分に係止される係止機構と、
前記分岐管部の流路を閉塞可能な弾性部材を有するシール機構と、
前記係止機構及び前記シール機構を支持する軸部材と、
前記軸部材が密封状態で挿入された状態で前記分岐管部に装着される作業ケースと、
前記作業ケースに
取外し自在に固定され、前記軸部材を保持する保持部材と、を備え、
前記シール機構は、前記弾性部材の内部に流体を流入させる流体流入部を有しており、前記流体流入部から流体が流入することにより前記弾性部材を膨張させて前記分岐管部の流路を閉塞する分岐流路閉塞装置。
【請求項2】
前記シール機構は、一対の上フランジ部と一対の下フランジ部とをさらに有しており、
前記弾性部材は、前記一対の上フランジ部に挟持される第一環状部と、前記一対の下フランジ部に挟持される第二環状部と、前記第一環状部と前記第二環状部とを接続し、前記流体流入部から流体が流入することにより膨張する膨張部と、を有している請求項1に記載の分岐流路閉塞装置。
【請求項3】
前記軸部材は、前記係止機構を操作する操作軸と、前記流体流入部に流体を供給する流体軸と、を含む2軸構造であり、
前記操作軸と前記流体軸とに亘って前記係止機構の係止状態の解除を防止する解除防止機構が設けられている請求項1又は2に記載の分岐流路閉塞装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の分岐流路閉塞装置を用いた分岐流路閉塞方法であって、
作業弁により前記分岐管部の流路を閉塞する仮閉塞工程と、
前記仮閉塞工程の後、前記分岐管部に接続された既設流体機器を撤去する撤去工程と、
前記既設流体機器が撤去された前記分岐管部に、前記係止機構及び前記シール機構を有する前記軸部材が密封状態で挿入された前記作業ケースを装着する装着工程と、
前記作業弁を開弁した後、前記軸部材を操作して前記係止機構を前記接続部分に係止する係止工程と、
前記弾性部材の内部に流体を供給して、前記分岐管部の流路を閉塞する閉塞工程と、を含む分岐流路閉塞方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管から分岐した分岐管部の流路を閉塞する分岐流路閉塞装置、及び、分岐流路閉塞装置を用いた分岐流路閉塞方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体管(水道管等)の分岐管部に設置された開閉弁(補修弁等)や開閉弁の上部に設置された空気弁又は消火栓等で構成される既設の流体機器が耐用年数を経過した等の理由により、新規の流体機器に交換される(流体機器が更新される)ときに用いられる分岐流路閉塞装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の分岐流路閉塞装置は、外側操作軸と、外側操作軸に内挿された内側操作軸と、外側操作軸及び内側操作軸の操作により分岐管部と流体管との接続部分に係止される抜止め係止手段と、外側操作軸を内側操作軸に対して相対移動させることにより拡径方向に弾性変形させて分岐管部の流路を閉塞するシール材と、を備えている。この外側操作軸及び内側操作軸は、継ぎ足し連結可能に分割されており、作業空間が小さな場所においても作業効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の分岐流路閉塞装置は、外側操作軸を内側操作軸に対して相対移動させてシール材を拡径方向に弾性変形させる際、作業用ケース上部に取り付けられた油圧ジャッキによる大きな駆動力が必要となり、作業効率を高める上で改善の余地がある。また、シール材を拡径方向に弾性変形させて分岐管部の流路を閉塞しているため、シール材の非圧縮状態と圧縮状態との差だけ軸方向の寸法を確保しなければならず大型化すると共に、分岐管部の内径に合わせてシール材の径方向寸法を調整する必要があり、分岐管部に分岐流路閉塞装置を適用する上での自由度が低いものであった。
【0006】
そこで、作業効率の高いコンパクトな分岐流路閉塞装置及び分岐流路閉塞方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る分岐流路閉塞装置の特徴構成は、流体管から分岐した分岐管部の流路を閉塞する分岐流路閉塞装置であって、前記分岐管部と前記流体管との接続部分に係止される係止機構と、前記分岐管部の流路を閉塞可能な弾性部材を有するシール機構と、前記係止機構及び前記シール機構を支持する軸部材と、前記軸部材が密封状態で挿入された状態で前記分岐管部に装着される作業ケースと、前記作業ケースに取外し自在に固定され、前記軸部材を保持する保持部材と、を備え、前記シール機構は、前記弾性部材の内部に流体を流入させる流体流入部を有しており、前記流体流入部から流体が流入することにより前記弾性部材を膨張させて前記分岐管部の流路を閉塞する点にある。
【0008】
本構成では、分岐管部と流体管との接続部分に係止される係止機構により、流体圧による軸部材の上方向への移動が防止され、分岐管部の流路を閉塞するシール機構により軸部材の下方向の移動が防止される。その結果、この分岐流路閉塞装置を分岐管部に装着すれば、分岐管部からの流体の流出を防止した状態で流体機器を交換することができる。
【0009】
本構成におけるシール機構は、弾性部材内部に流体を流入させる流体流入部を有しており、この流体流入部から流体が流入することにより弾性部材を膨張させて分岐管部の流路を閉塞する。つまり、従来のようにシール材を圧縮して拡径方向に弾性変形させるものではなく、流体圧により膨張させている。その結果、油圧ジャッキ等の大きな駆動力を要せず、流体流入部より流体を供給するだけで良いので、作業効率を高めることができる。しかも、シール機構を流体圧により膨張させる弾性部材で構成すれば、流体圧を変更するだけで自由に膨張量を変更することが可能となり、装置の軸方向寸法を大きくすること無く、あらゆる内径の分岐管部に対応することができる。このように、作業効率の高いコンパクトな分岐流路閉塞装置を提供できた。
【0010】
他の特徴構成は、前記シール機構は、一対の上フランジ部と一対の下フランジ部をさらに有しており、前記弾性部材は、前記一対の上フランジ部に挟持される第一環状部と、前記一対の下フランジ部に挟持される第二環状部と、前記第一環状部と前記第二環状部とを接続し、前記流体流入部から流体が流入することにより膨張する膨張部と、を有している点にある。
【0011】
本構成のように、シール機構を上フランジ部と下フランジ部と弾性部材とで構成すれば、簡素な構造となる。また、一対の上フランジ部及び一対の下フランジ部で弾性部材の両端(第一環状部及び第二環状部)を挟持しているので、膨張部が膨張したときの姿勢を安定させることができる。
【0012】
他の特徴構成は、前記軸部材は、前記係止機構を操作する操作軸と、前記流体流入部に流体を供給する流体軸と、を含む2軸構造であり、前記操作軸と前記流体軸とに亘って前記係止機構の係止状態の解除を防止する解除防止機構が設けられている点にある。
【0013】
本構成のように、操作軸と流体軸の2軸で構成すれば、係止機構とシール機構を夫々独立して操作することが可能となり、機構を複雑に構成する必要がない。また、操作軸と流体軸とに亘って解除防止機構を設ければ、係止機構における係止状態が維持されるため、分岐流路閉塞装置が流体圧により離脱することを防止できる。
【0015】
本構成のように操作軸と流体軸とを保持する保持部材を設ければ、2軸構造であっても軸部材の姿勢を効率的に安定させることができる。
【0016】
本発明に係る分岐流路閉塞方法の特徴構成は、前記分岐流路閉塞装置を用いた分岐流路閉塞方法であって、作業弁により前記分岐管部の流路を閉塞する仮閉塞工程と、前記仮閉塞工程の後、前記分岐管部に接続された既設流体機器を撤去する撤去工程と、前記既設流体機器が撤去された前記分岐管部に、前記係止機構及び前記シール機構を有する前記軸部材が密封状態で挿入された作業ケースを装着する装着工程と、前記作業弁を開弁した後、前記軸部材を操作して前記係止機構を前記接続部分に係止する係止工程と、前記弾性部材の内部に流体を供給して、前記分岐管部の流路を閉塞する閉塞工程と、を含む点にある。
【0017】
本方法では、分岐管部と流体管との接続部分に係止機構を係止することにより、流体圧による軸部材の上方向への移動が防止され、シール機構に流体を供給して分岐管部の流路を閉塞することにより軸部材の下方向の移動が防止される。その結果、分岐流路閉塞装置を分岐管部に装着して閉塞工程を実行した後は、流体機器を容易に交換することができる。
【0018】
さらに、本方法におけるシール機構は、シール材を圧縮して拡径方向に弾性変形させるものではなく、弾性部材を流体圧により膨張させている。その結果、油圧ジャッキ等の大きな駆動力を要せず、シール機構に流体を供給するだけで良いので、作業効率を高めることができる。しかも、シール機構を流体圧により膨張させる弾性部材で構成すれば、流体圧を変更するだけで自由に膨張量を変更することが可能となり、装置の軸方向寸法を大きくすること無く、あらゆる内径の分岐管部に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】本実施形態に係る分岐流路閉塞装置を示す側断面図である。
【
図4】分岐流路閉塞装置の初期状態を示す側断面図である。
【
図5】分岐流路閉塞装置の係止機構を作動させた状態を示す側断面図である。
【
図6】分岐流路閉塞装置のシール機構を作動させた状態を示す側断面図である。
【
図7】仮閉塞工程及び撤去工程を示す側面図である。
【
図9】係止工程及び閉塞工程を示す側断面図である。
【
図14】別実施形態1に係る仮閉塞工程を示す側面図である。
【
図15】別実施形態2に係る分岐流路閉塞装置を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明に係る分岐流路閉塞装置及び分岐流路閉塞方法の実施形態について、図面に基づいて説明する。本実施形態では、流体機器を構成する空気弁及び仕切弁を更新するために分岐流路閉塞装置を用いる一例を説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下において、重力方向を下、重力方向とは反対方向を上として説明することがある。
【0021】
図1に示すように、水道管1(流体管の一例)の途中に径方向外側に突出形成された分岐管部2の連結フランジ部2cに、仕切弁3(既設流体機器の一例)の上流側(下側)の連結フランジ部3aが、ボルト,ナットにより脱着自在に水密状態で締付け固定されている。また、仕切弁3の下流側(上側)の連結フランジ部3bには、空気弁6(既設流体機器の一例)の連結フランジ部6aが、ボルト,ナットにより水密状態で締付け固定されている。
【0022】
本実施形態では、水道管1内の上水(流体の一例)の流れを維持した不断水状態のまま、設定耐久年数に至った又は劣化による漏水や故障等の理由により、後述する分岐流路閉塞装置Xを用いて既設の仕切弁3及び空気弁6を新規の補修弁8及び空気弁9(新規流体機器)に更新する(
図13参照)。
【0023】
図2には、分岐流路閉塞装置Xの側断面図が示されている。分岐流路閉塞装置Xは、上述した水道管1から分岐した分岐管部2の流路を閉塞する。分岐流路閉塞装置Xは、分岐管部2と水道管1との接続部分2aに係止される係止機構4(
図9も参照)と、分岐管部2の流路を閉塞可能なシール機構5(
図9も参照)と、係止機構4及びシール機構5を支持する軸部材7と、軸部材7を保持する保持部材15と、を備えている。詳細は後述するが、本実施形態におけるシール機構5は、内部に上水等の流体が流入する流体流入部51を有しており、流体流入部51から流体が流入することにより径方向外側に膨張して分岐管部2の流路を閉塞する。また、本実施形態における軸部材7は、係止機構4を操作する操作軸7Aと、流体流入部51に流体を供給する流体軸7Bと、を含む2軸構造となっている。
【0024】
係止機構4は、下流側端部に設けられ、操作軸7Aが移動自在に内挿された板状部材41と、上流側端部に設けられ、操作軸7Aが移動不能に内挿された筒体42と、板状部材41と筒体42との間に配置されたスプリング43と、板状部材41と筒体42との間で、スプリング43の径方向外側に揺動自在に接続された複数の係止リンク44(本実施形態では周方向に2箇所)と、を有している。
【0025】
板状部材41は、下流側端面がシール機構5に接続され、上流側端面が係止リンク44の一端に接続されている。複数の係止リンク44に包囲された板状部材41の中央部分には、操作軸7Aが軸方向に移動可能に挿入されている。
【0026】
筒体42は、操作軸7Aの上流側端部に形成された雄ねじ部7Aaが挿入されており、外周面の周方向2箇所には、上流側の係止リンク44の他端が揺動自在に枢支連結されている。また、筒体42の操作軸7Aに対する上流側への移動を規制するストッパー用のナット42aが、操作軸7Aの雄ねじ部7Aaに螺合されている。筒体42は、スプリング43の付勢力により、ナット42aに当接した状態が維持されている。
【0027】
図5に示すように、係止リンク44は、操作軸7Aの下流側(上方側)への移動に連動して、拡径姿勢に張り出すことが可能である。
図9に示すように、拡径姿勢の係止リンク44は、シール機構5による分岐流路閉塞箇所よりも上流側における分岐管部2の内周壁面、つまり、分岐管部2の内周面の分岐流路開口周縁(接続部分2a)に対して係合する。このとき、筒体42は、スプリング43の付勢力により、ナット42aに当接した状態が維持されていることから、板状部材41との距離が短縮される。
【0028】
図2に戻り、シール機構5は、一対の上フランジ部5Aと、一対の下フランジ部5Bと、上フランジ部5Aと下フランジ部5Bとの間に配置された弾性部材5Cと、を有している。
【0029】
一対の上フランジ部5Aは、第一フランジ部5Aaと、第一フランジ部5Aaに対して複数(本実施形態では4つ)のボルト52で連結された第二フランジ部5Abと、で構成されている。第一フランジ部5Aa及び第二フランジ部5Abには、流体軸7Bの内部と連通する貫通孔としての流体流入部51が形成されている。この流体流入部51は、ボルト52と操作軸7Aとの間の位置で、第一フランジ部5Aa及び第二フランジ部5Abに貫通して形成されている。一対の下フランジ部5Bは、第三フランジ部5Baと、第三フランジ部5Baに対して複数(本実施形態では4つ)のボルト53で連結された第四フランジ5Bbと、で構成されている。
【0030】
第一フランジ部5Aaと第四フランジ5Bbとは、操作軸7Aが内挿される中空筒部材54で一体化されている。また、第二フランジ部5Ab及び第三フランジ部5Baの中央部分の内周面には、夫々操作軸7Aとの間を密封するOリングSa,Sbが設けられている。さらに、第二フランジ部5Ab及び第三フランジ部5Baは、夫々の上流側端面(下面)及び下流側端面(上面)の外周側に、環状溝55a,55bが形成されている。
【0031】
図2~
図3に示すように、弾性部材5Cは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)のような耐久性に優れた合成ゴム等で構成されており、一対の上フランジ部5Aに挟持される第一環状部56と、一対の下フランジ部5Bに挟持される第二環状部57と、第一環状部56と第二環状部57とを接続し、流体流入部51から流体が流入することにより膨張する膨張部58と、を有している。
【0032】
第一環状部56及び第二環状部57には、夫々一対の上フランジ部5Aを連結するボルト52、及び、一対の下フランジ部5Bを連結するボルト53が挿入される複数の貫通孔56a,57aが周方向に等間隔に設けられている。一対の上フランジ部5Aに挟まれた第一環状部56はボルト52により固定され、一対の下フランジ部5Bに挟まれた第二環状部57はボルト53により固定される。
【0033】
膨張部58は、
図4に示す初期状態において、第一環状部56と第二環状部57との間で径方向内側に窪んだ凹環状に形成されている。この構成により、中空筒部材54の外周面、第一フランジ部5Aaの上流側端面、第四フランジ5Bbの下流側端面及び膨張部58の内面で囲まれる密封空間が、流体導入空間Wとなっている。
図6に示すように、流体軸7Bから流体流入部51を介して流体導入空間Wに導入された流体により、膨張部58が流体圧を受けて径方向外側に膨張する。膨張部58の膨張率や強度については、分岐管部2の構造や内径に応じて設計されている。
【0034】
図2に戻り、操作軸7Aは、後述する作業ケース30の天板部30bに固定される保持部材15の中央部を、水密状態で軸方向に摺動自在に貫通する棒状部材で構成されている。空気弁6の上面から構造物の天井壁Rまでの作業用空間の高さが制限されているため、この作業用空間の制限高さに対応して軸方向で複数に分割された分割操作軸7A1,7A2で構成されている(
図1も参照)。操作軸7Aは、係止機構4,シール機構5及び保持部材15が設けられた第一分割操作軸7A1と、第一分割操作軸7A1の上端部に対して雄雌ねじ連結で構成される連結部11で接続される第二分割操作軸7A2と、を少なくとも有している。また、第二分割操作軸7A2の上端部に対して更に分割操作軸を連結することが可能である。
【0035】
本実施形態では、第一分割操作軸7A1に対して係止機構4,シール機構5及び保持部材15を組付けるに際し、第一分割操作軸7A1が更に3分割される。具体的には、第一分割操作軸7A1は、係止機構4が設けられた下操作軸7A1aと、シール機構5が設けられた中操作軸7A1bと、保持部材15が設けられた上操作軸7A1cとで構成されている。下操作軸7A1aは、一端にナット42aが螺合した雄ねじ部7Aaが設けられ、他端が一対の下フランジ部5BにOリングSbを介して水密状態に内挿されている。中操作軸7A1bは、一端が中空筒部材54に内挿された状態で下操作軸7A1aの上端に連結され、他端が一対の上フランジ部5AにOリングSaを介して水密状態に内挿されている。上操作軸7A1cは、一端が保持部材15に水密状態で内挿された状態で中操作軸7A1bの上端に連結され、他端が第二分割操作軸7A2に連結部11を介して接続可能に構成されている。
【0036】
流体軸7Bは、後述する作業ケース30の天板部30bに固定される保持部材15の中央部よりやや径方向外側を、水密状態で軸方向に貫通する中空棒状部材で構成されている。流体軸7Bは、操作軸7Aと同様に、作業用空間の制限高さに対応して軸方向で複数に分割された流体軸7B1,7B2で構成されている。流体軸7Bは、下端部が流体流入部51に接続され、中央部分に保持部材15が設けられた第一分割流体軸7B1と、第一分割流体軸7B1の上端部に対して雄雌ねじ連結で構成される連結部12で接続される第二分割流体軸7B2と、を少なくとも有している。第二分割流体軸7B2の上端部には、上水道等の流体供給機構13から流体を供給するためのカプラ13aが接続されている。なお、第二分割流体軸7B2の上端部に対して更に分割操作軸を連結することが可能である。
【0037】
操作軸7Aと流体軸7Bとに亘って係止機構4の係止状態の解除を防止する解除防止機構10が設けられている。解除防止機構10は、操作軸7Aが内挿される円環筒状の第一カラー部材10Aと、流体軸7Bが内挿される円環筒状の第二カラー部材10Bと、で構成されている。第一カラー部材10Aは、外周面に貫通孔が形成された第一筒本体10Aaと、筒本体10Aaの貫通孔に螺合される第一止めボルトBaとを有している。同様に、第二カラー部材10Bは、外周面に貫通孔が形成された第二筒本体10Baと、筒本体10Baの貫通孔に螺合される第二止めボルトBbとを有している。解除防止機構10は、第二カラー部材10Bが第二止めボルトBbにより流体軸7Bに固定された状態で、係止機構4の係止リンク44が分岐管部2の内周面の分岐流路開口周縁に対して係合した後、第一カラー部材10Aを第二カラー部材10Bに当接させて第一止めボルトBaにより操作軸7Aに固定する。その結果、係止機構4の係止状態の解除が防止される。
【0038】
保持部材15は、操作軸7Aと流体軸7Bとを保持し、後述する作業ケース30の天板部30bにボルトBで固定される円盤状部材で構成されている。この保持部材15は、中央部分で操作軸7Aが挿入される操作軸用貫通孔15aと、操作軸用貫通孔15aよりも径方向外側で流体軸7Bが挿入される流体軸用貫通孔15bとが形成されている。操作軸用貫通孔15a及び流体軸用貫通孔15bには、夫々の内周面に内周シール部材Sc,Sdが装着されており、これらシール部材Sc,Sdにより操作軸7A及び流体軸7Bが保持部材15に対して水密状態に保持されている。また、保持部材15の外周面(天板部30bの環状溝)には、外周シール部材Seが設けられており、作業ケース30の天板部30bと保持部材15との隙間からの漏水が防止される。
【0039】
上述した分岐流路閉塞装置Xは、作業ケース30に装着して用いられる。作業ケース30は、端部が径方向外側に突出した連結フランジ部30aを有する筺体であり、連結フランジ部30aの反対側に中央部分が開口された天板部30bを有している。また、作業ケース30の側壁には、不図示の掻取り清掃具で掻き取られた錆瘤等を外部に排出する排水バルブ22が接続されている。
【0040】
天板部30bは、円環筒状の外周壁部30baと、外周壁部30baの上端を径方向内側に突出させた環状突出部30bbと、が一体形成されている。外周壁部30baの内周面には、上述した外周シール部材Seが装着される環状溝が形成されており、環状突出部30bbには、保持部材15を固定するためのボルトBが挿入される複数の貫通孔が形成されていると共に流体軸7Bと干渉しないように凹状部30bcが形成されている。
【0041】
また、作業ケース30の天板部30bには、係止機構4,シール機構5及び保持部材15が装着されている軸部材7が自重で下降することを防止する下降規制具24が設けられている。下降規制具24は、操作軸7A及び流体軸7Bを挾持固定可能な一対の挾持板24Aと、両挾持板24Aを挾持状態に締付け固定する六角頭付きボルト24Bと、挾持板24Aと天板部30bとの間隔を調整する間隔調整ボルト24Cと、で構成されている。
【0042】
続いて、
図7~
図13を用いて、分岐流路閉塞方法及び流体機器更新方法を説明する。
【0043】
分岐流路閉塞方法は、
図7に示すように、既設の仕切弁3(作業弁の一例、既設流体機器の一例)により分岐管部2の流路を閉塞する仮閉塞工程と、仮閉塞工程の後、分岐管部2に接続された既設の空気弁6(既設流体機器の一例)を撤去する撤去工程と、
図8に示すように、空気弁6が撤去された分岐管部2に、係止機構4及びシール機構5が接続された軸部材7が密封状態で挿入された作業ケース30を装着する装着工程と、
図9に示すように、仕切弁3を開弁した後、軸部材7を操作して係止機構4を分岐管部2の分岐流路開口周縁(接続部分2a)に係止する係止工程と、弾性部材5Cに流体を供給して、分岐管部2の流路を閉塞する閉塞工程と、を含んでいる。
【0044】
さらに、流体機器更新方法は、
図10に示すように、閉塞工程の後、分岐流路閉塞装置Xを残置した状態で作業ケース30を撤去する第一撤去工程と、
図11に示すように、第一撤去工程の後、補修弁8(新設流体機器)と作業ケース30とを分岐管部2に設置する第一設置工程と、
図12に示すように、第一設置工程の後、補修弁8により分岐管部2の流路を閉塞して分岐流路閉塞装置Xを撤去する第二撤去工程と、
図13に示すように、空気弁9(新設流体機器)を補修弁8に設置する第二設置工程と、を含んでいる。
【0045】
図7に示すように、仮閉塞工程では、既設の仕切弁3の弁体3cを移動させて分岐管部2の流路を閉塞する。既設の仕切弁3の老朽化等により弁体3cが固着して移動できない場合は、
図14に示すように、締付け輪16を両連結フランジ部2c,3aの外周面に装着する。この締付け輪16は、略半円弧状の一対の締付け分割輪16Aと一つの締付け分割輪16Aに固定された仕切板弁16Cとを有しており、両連結フランジ部2c,3aの締ボルト,ナットの緩み操作した後、各締付け分割輪16Aの周方向両端部に固着された連結片16B同士をボルト,ナットで引寄せ固定する。そして、仕切板弁16Cの弁板16Caを両連結フランジ部2c,3aの間に挿入することにより、分岐管部2の流路を閉塞する。分岐管部2の流路を閉塞した後は、撤去工程で、既設の空気弁6を撤去する。図示しないが、仮閉塞工程の後、清掃機が装着された作業ケース30を仕切弁3の下流側の連結フランジ部3bに装着し、分岐管部2の内面を清掃する。このとき、既設の仕切弁3の弁体3cが固着して移動できない場合は、作業ケース30と仕切弁3との間に作業用仕切弁(不図示)を設置する。
【0046】
次いで、
図8に示すように、装着工程では、仕切弁3の下流側の連結フランジ部3bに、作業ケース30の連結フランジ部30aをボルト,ナットで固定する。作業ケース30の内部には、係止機構4及びシール機構5が収容されており、係止機構4及びシール機構5を支持する軸部材7(操作軸7A及び流体軸7Bの2軸)は、保持部材15により保持され、下降規制具24により挟持固定されている。このとき、
図2に示すように、シール機構5の膨張部58は、第一環状部56と第二環状部57との間で径方向内側に窪んでおり、係止機構4の係止リンク44は、作業ケース30の内部に縮径姿勢で収容されている。
【0047】
次いで、
図9に示すように、仕切弁3を開弁して下降規制具24の六角頭付きボルト24Bを緩めた後、不図示のレバーブロック(登録商標)等により軸部材7を操作して、係止機構4及びシール機構5を下降させる。そして、第二分割操作軸7A2及び第二分割流体軸7B2の上端部が作業ケース30の天板部30bに位置するまで、係止機構4及びシール機構5が下降したとき、第二分割操作軸7A2及び第二分割流体軸7B2に第三分割操作軸7A3及び第三分割流体軸7B3を連結する。次いで、係止機構4が分岐管部2の分岐流路開口周縁(接続部分2a)に位置するまで、レバーブロック(登録商標)等により第三分割操作軸7A3及び第三分割流体軸7B3を操作した後、第三分割操作軸7A3及び第三分割流体軸7B3に、第一カラー部材10Aが装着された第四分割操作軸7A4、及び、第二カラー部材10Bとカプラ13aが装着された第四分割流体軸7B4を連結する。このように、構造物の天井壁Rまでの作業用空間の高さが制限されている場合でも、この作業用空間の制限高さに対応して複数に分割された軸部材7を用いることで作業効率を高めることができる。
【0048】
次いで、係止工程では、操作軸7Aを引き上げ操作して係止機構4を分岐管部2の分岐流路開口周縁(接続部分2a)に係止させる。より詳細に説明すると、操作軸7Aを下流側(上方側)へ引き上げて移動させることにより、係止機構4の係止リンク44を拡径姿勢にし、分岐管部2の内周面の分岐流路開口周縁に対して係合させる。次いで、下降規制具24の六角頭付きボルト24Bを締付けて、軸部材7(操作軸7A及び流体軸7Bの2軸)を挟持固定する。その結果、下降規制具24により、軸部材7(操作軸7A及び流体軸7Bの2軸)の自重による落下が防止される。
【0049】
次いで、閉塞工程では、弾性部材5Cに流体を供給して、分岐管部2の流路を閉塞する。より詳細に説明すると、流体供給機構13からカプラ13aを介して流体軸7B内に流体を供給し、流体流入部51から流体導入空間Wに流体を導入する(
図6も参照)。その結果、膨張部58が流体圧を受けて径方向外側に膨張し、分岐管部2の内面に密着して分岐管部2の流路を閉塞する。このように、本実施形態の閉塞工程では、油圧ジャッキ等の大きな駆動力を要せず、流体流入部51より流体を供給するだけで良いので、作業効率を高めることができる。しかも、シール機構5を流体圧により膨張する弾性部材5Cで構成すれば、流体圧を変更するだけで自由に膨張量を変更することが可能となり、装置の軸方向寸法を大きくすること無く、あらゆる内径の分岐管部2に対応することができる。
【0050】
次いで、
図10に示すように、操作軸7Aに設置されている第一カラー部材10Aの第一止めボルトBaを緩め、第一カラー部材10Aが流体軸7Bに固定されている第二カラー部材10Bに当接するまで下降させた後、第一止めボルトBaを締め付ける(
図2も参照)。次いで、第一撤去工程では、分岐流路閉塞装置Xを残置した状態で作業ケース30及び仕切弁3を撤去する。より詳細に説明すると、作業ケース30の天板部30bのボルトBを取外して、天板部30bと保持部材15との固定を解除し、作業ケース30の連結フランジ部30aと仕切弁3の下流側の連結フランジ部3bとを固定するボルト,ナットを取外して、作業ケース30を撤去する。そして、分岐管部2の連結フランジ部2cと仕切弁3の上流側の連結フランジ部3aとを固定するボルト,ナットを取外して、仕切弁3を撤去する。このとき、分岐管部2と水道管1との接続部分2aに係止機構4を係止させることにより、流体圧による軸部材7の上方向への移動が防止され、シール機構5に流体を供給して分岐管部2の流路を閉塞することにより軸部材7の下方向の移動が防止される。さらに、解除防止機構10を構成する第二カラー部材10Bが第一カラー部材10Aに当接することにより、操作軸7Aが自重により下降して係止リンク44が縮径し、係止機構4の係止状態が解除されることが防止される。また、解除防止機構10の径方向寸法は、作業ケース30の天板部30bの開口径及び仕切弁3の内径よりも小さく、保持部材15の径方向寸法は、仕切弁3の内径よりも小さいため、作業ケース30及び仕切弁3を確実に撤去することができる。
【0051】
次いで、
図11に示すように、第一設置工程では、第一撤去工程の後、新規の補修弁8を分岐管部2にボルト,ナットにより締結して設置すると共に、作業ケース30を新規の補修弁8にボルト,ナットにより締結して設置する。そして、作業ケース30の天板部30bと保持部材15とをボルトBにより固定し、作業ケース30内を密閉状態に維持する。次いで、操作軸7Aに設置されている第一カラー部材10Aの第一止めボルトBaを緩め、操作軸7Aを下降させて、係止機構4の係止リンク44を縮径させると共に、流体流入部51からの流体導入を停止して、弾性部材5Cに作用する流体圧を低下させて弾性部材5Cを縮径させる(
図12も参照)。次いで、レバーブロック(登録商標)等により軸部材7を操作して、係止機構4及びシール機構5を上昇させる。このとき、分割された軸部材7の連結を順番に解除しながら、係止機構4及びシール機構5が作業ケース30内に収容されるまで、軸部材7を上昇させる。
【0052】
次いで、
図12に示すように、第二撤去工程では、係止機構4及びシール機構5が作業ケース30内に収容された状態で、補修弁8により分岐管部2の流路を閉塞して分岐流路閉塞装置Xを撤去する。最後に、
図13に示すように、第二設置工程では、空気弁9(新設流体機器)を補修弁8に設置して、流体機器の更新が完了する。
【0053】
[その他の実施形態]
(1)
図15に示すように、中空棒状に形成した操作軸7Aを介して中空筒部材54の内部に流体を供給することにより、係止機構4の係止リンク44を拡径させても良い。詳細に説明すると、中操作軸7A1bと下操作軸7A1aとの間に円柱状の可動部材70を接続して、中空筒部材54の内部に流体を供給することにより可動部材70を上昇させて係止リンク44を拡径させる。可動部材70には、操作軸7Aの内部と連通するT字状の連通路70aが形成されており、連通路70aに流入した流体は、可動部材70と中空筒部材54との隙間を介して中空筒部材54の流体貯留空間70bに供給される。そして、流体貯留空間70bの流体圧が可動部材70の受圧面70cに作用し、可動部材70を操作軸7Aと共に上昇させ、係止リンク44を拡径させる。そして、上述した実施形態と同様に、流体軸7Bから流体流入部51を介して流体導入空間Wに導入された流体により、膨張部58を径方向外側に膨張させて分岐管部2の流路を閉塞する。
【0054】
(2)上述した第一環状部56及び第二環状部57は、膨張部58と一体の弾性部材5Cで構成せずに、金属等で構成された第一環状部56及び第二環状部57を弾性部材5Cとしての膨張部58と接続しても良い。
(3)上述した流体流入部51は、上フランジ部5Aに形成せずに、下フランジ部5Bに形成しても良い。
(4)上述した保持部材15に代えて、シール機構5に操作軸7A及び流体軸7Bを保持する機構を設けても良い。
(5)上述した解除防止機構10を省略して、操作軸7Aを把持する機構を別途設けても良い。
(6)上述した実施形態では、軸部材7を操作軸7Aと流体軸7Bの2軸構造としたが、操作軸7Aの内部に流体を流通させることにより流体軸としても機能させる1軸構造としても良い。
(7)上述した実施形態では、流体として上水が流通する水道管1を用いて説明したが、上水以外の液体や、ガス等の気体が流通する流体管としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、流体管から分岐した分岐管部の流路を閉塞する分岐流路閉塞装置、及び、分岐流路閉塞装置を用いた分岐流路閉塞方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 :水道管(流体管)
2 :分岐管部
2a :接続部分
3 :仕切弁(既設流体機器、作業弁)
4 :係止機構
5 :シール機構
5A :上フランジ部
5B :下フランジ部
5C :弾性部材
6 :空気弁(既設流体機器)
7 :軸部材
7A :操作軸
7B :流体軸
10 :解除防止機構
15 :保持部材
30 :作業ケース
51 :流体流入部
56 :第一環状部
57 :第二環状部
58 :膨張部
X :分岐流路閉塞装置