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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】航空機用空気入りラジアルタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20240919BHJP
   B60C 15/04 20060101ALI20240919BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20240919BHJP
   B60C 9/02 20060101ALI20240919BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B60C15/06 K
B60C15/04 D
B60C15/00 K
B60C15/06 N
B60C9/02 A
B60C9/08 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020092584
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021187235
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】小川 岳
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】中村 真明
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-200504(JP,A)
【文献】特開2008-087572(JP,A)
【文献】再公表特許第2015/156405(JP,A1)
【文献】特開昭62-286809(JP,A)
【文献】特開2014-019267(JP,A)
【文献】特開2003-080908(JP,A)
【文献】特開2003-039919(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/030121(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部のそれぞれに埋設された、一対のケーブルビードからなるビードコアと、
前記一対のビードコアのタイヤ径方向外側にそれぞれ配置された、一対のビードフィラーと、
前記一対のビードコア間をトロイダル状に跨る、2枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、を備えた航空機用空気入りラジアルタイヤであって、
タイヤ幅方向断面視において、
前記ビードコアと前記カーカスとの間に、前記ビードコアの少なくとも一部を覆う1層のみの補強層が配置され、
前記補強層は、前記ビードフィラーのタイヤ幅方向内側且つ前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側端までの領域から、前記ビードコアの中心よりタイヤ幅方向内側且つ前記ビードコアの中心よりタイヤ径方向内側の領域まで延在し、
前記補強層の一端は、前記ビードフィラーのタイヤ幅方向内側且つ前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側端までの領域に存在し、
前記補強層の他端は、前記ビードコアの中心よりタイヤ幅方向内側且つ前記ビードコアの中心よりタイヤ径方向内側の領域に存在することを特徴とする、航空機用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
前記補強層の前記コードは、タイヤ子午線方向に対して20°以下の角度で傾斜する、請求項1に記載の航空機用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】
前記補強層は、芯部が鞘部に包囲された複合コードのゴム引き層である、請求項1又は2に記載の航空機用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項4】
前記芯部は、ポリプロピレンからなり、
前記鞘部は、ポリエチレン-ポリプロピレン共重合体からなる、請求項3の記載の航空機用空気入りラジアルタイヤ。
【請求項5】
2枚以上のカーカスプライのうち前記ビードフィラーよりタイヤ幅方向内側の領域で該ビードフィラーに最も隣接するカーカスプライの端は、前記ビードコアの中心からタイヤ径方向外側を0°として、タイヤ幅方向内側に向かって45°~90°の領域に位置する、請求項1~4のいずれか一項に記載の航空機用空気入りラジアルタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用空気入りラジアルタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
航空機用空気入りラジアルタイヤは、高内圧で使用されるため、使用時にビード部の歪みが大きくなる。このため、耐圧性を向上させることが求められている。
【0003】
特に、近年では、航空機用空気入りラジアルタイヤの軽量化の観点から、カーカスプライの枚数を減らす場合もある(例えば、特許文献1)。このような場合には、カーカス1枚当たりの負担が大きくなるため、特に耐圧性に対するさらなる対策が望まれる。
【0004】
また、ゴム物品の補強材として、有機繊維や金属材料などが種々検討され、従来、接着剤組成物を被覆してゴムとの接着性を向上したコード材料が提案されている。例えば、特許文献2には、芯部はポリプロピレンからなり、鞘部は、ゴムに熱融着が可能なポリエチレン-ポリプロピレン共重合体から芯鞘型繊維が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5361061号公報
【文献】国際公開第2015/156405号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐圧性を向上させた、航空機用空気入りラジアルタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
本発明の航空機用空気入りラジアルタイヤは、
一対のビード部のそれぞれに埋設された、一対のケーブルビードからなるビードコアと、
前記一対のビードコアのタイヤ径方向外側にそれぞれ配置された、一対のビードフィラーと、
前記一対のビードコア間をトロイダル状に跨る、2枚以上のカーカスプライからなるカーカスと、を備え、
タイヤ幅方向断面視において、
前記ビードコアと前記カーカスとの間に、前記ビードコアの少なくとも一部を覆う補強層を配置したことを特徴とする。
【0008】
本明細書において、「適用リム」とは、米国のTRA(The Tire and Rim Association, Inc.)が発行する、最新版のAIRCRAFT YEAR BOOKまたは最新版のEDI(Engineering Design Information for Aircraft Tires)(本明細書における数値の記載は、2017年度版を使用)に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(Design Rim)を指すが、上記規格に記載のないサイズの場合は、タイヤに適用されるリムをいう。
また、「規定内圧」とは、上記規格に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
【0009】
ここで、前記補強層は、
前記ビードフィラーのタイヤ幅方向内側且つ前記ビードフィラーのタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側端までの領域から、
少なくとも、前記ビードコアよりタイヤ幅方向内側且つ前記ビードコアのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向内側の領域まで
延在することが好ましい。
【0010】
ここで、前記補強層の前記コードは、タイヤ子午線方向に対して20°以下の角度で傾斜することが好ましい。
【0011】
また、前記補強層は、芯部が鞘部に包囲された複合コードのゴム引き層であることが好ましい。
【0012】
上記の場合、前記芯部は、ポリプロピレンからなり、前記鞘部は、ポリエチレン-ポリプロピレン共重合体からなることが好ましい。
【0013】
また、2枚以上のカーカスプライのうち前記ビードフィラーよりタイヤ幅方向内側の領域で該ビードフィラーに最も隣接するカーカスプライの端は、前記ビードコアの中心からタイヤ径方向外側を0°として、タイヤ幅方向内側に向かって45°~90°の領域に位置することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐圧性を向上させた、航空機用空気入りラジアルタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態にかかる航空機用空気入りラジアルタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
図2図1のビード部を含む領域の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態にかかる航空機用空気入りラジアルタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)のタイヤ幅方向断面図である。図1は、タイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態(以下、基準状態ともいう)を示している。図2は、図1のビード部を含む領域の拡大図である。
【0018】
図1に示すように、本例のタイヤは、一対のビード部1と、該ビード部1に連なる一対のサイドウォール部2と、両サイドウォール部2間を連なるトレッド3と、を備えている。また、本例のタイヤは、一対のビード部1にトロイダル状に跨るカーカス4と、該カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配置されたベルト5と、を備えている。
【0019】
図1図2に示すように、本例のタイヤは、一対のビード部1にそれぞれ埋設されたビードコア1aを有している。図示例では、ビードコア1aは、環状のケーブルビードからなる。図示例では、ビードコア1aは、断面円形状である。ビードワイヤは、例えば、高炭素の鋼線を用いることができる。
【0020】
また、本例では、ビードコア1aのタイヤ径方向外側にビードフィラー1bが配置されている。図示例では、ビードフィラー1bは、タイヤ径方向内側から外側に向かって、タイヤ幅方向の幅が先細りする、断面略三角形状をなしているが、ビードフィラー1bは、様々な断面形状とすることができる。ビードフィラー1bは、例えば、1種類以上の任意の既知の硬ゴムを用いることができる。
【0021】
図1図2に示すように、本例のタイヤは、2枚以上の(図示例では7枚の)カーカスプライ4a~4gからなるカーカス4(ラジアルカーカス)を備えている。具体的には、カーカス4は、本例では、ビードフィラー1bに対してタイヤ幅方向内側に(最も近く)隣接する1枚のプライ4a、1枚以上(図示例で4枚)のターンアッププライ4b、4c、4d、4e、及び1枚以上(図示例で2枚)のダウンプライ4f、4gを備えている。プライ4aは、一対のビードコア1a間をトロイダル状に跨るカーカス本体部からなる。ターンナッププライ4b、4c、4d、4eは、一対のビードコア1a間をトロイダル状に跨るカーカス本体部及び該カーカス本体部から延びてビードコア1a周りにタイヤ幅方向内側から外側に巻き上げられたカーカス巻き上げ部を有する。図示例では、ターンアッププライ4b、4c、4d、4eの巻き上げ部の端は、いずれもビードコア1aの中心よりタイヤ幅方向外側に位置している。一方で、ターンアッププライ4b、4c、4d、4eの巻き上げ部の端の少なくともいずれかが、ビードコア1aの中心よりタイヤ幅方向内側に位置していても良く、例えば、ビードコア1aのタイヤ幅方向内側端が位置するタイヤ幅方向位置に位置することもできる。ダウンプライ4f、4gは、一対のビードコア1a間をトロイダル状に延び、ターンナッププライ4b~4eを覆っている。図示例では、ダウンプライ4f、4gは、ビードコア1aのタイヤ幅方向内側端よりタイヤ幅方向内側まで延びているが、ダウンプライの少なくともいずれかが、ビードコア1aのタイヤ径方向内側端よりタイヤ幅方向外側で終端することもでき、ビードコア1aのタイヤ径方向内側端が位置するタイヤ径方向位置で終端することもできる。各カーカスプライは、有機繊維等からなるコードを用いて形成することができるが、スチールコードを用いることもできる。カーカス4のクラウン部においては、タイヤ径方向外側から、カーカスプライ4g、4f、4a、4b、4c、4d、4eの順に配置されている。また、ビードコア1aよりもタイヤ径方向内側では、タイヤ径方向外側から、カーカスプライ4b、4c、4d、4e、4f、4gの順に配置されている。
【0022】
図1図2に示すように、2枚以上のカーカスプライのうちビードフィラー1bよりタイヤ幅方向内側の領域で該ビードフィラー1bに最も隣接するカーカスプライ(図示例ではプライ4a)の端は、ビードコア1aの中心からタイヤ径方向外側を0°として、タイヤ幅方向内側に向かって45°~90°の領域(図2に示す角度θが45°~90°の領域)に位置している。
なお、ターンアッププライ4b~4eのカーカス巻き上げ部の端は、タイヤ径方向の位置をずらして配置しており、これにより、カーカス巻き上げ部の端に起因する故障の発生をより一層抑制することができる。図示例では、外周側のカーカスプライの端が内周側のカーカスプライの端よりタイヤ径方向外側に位置するようにして、タイヤ径方向の位置をずらしているが、この場合には限られず、様々な配置でタイヤ径方向の位置をずらすことができる。あるいは、ターンアッププライ4b~4eのカーカス巻き上げ部の少なくとも一部の端のタイヤ径方向の位置を揃えても良い。
なお、プライ4aは、プライ4b~4eと同様に、ターンアッププライとすることも好ましい。特には限定されないが、一例としては、プライ4aの巻き上げ部の端は、ビードコアのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向外側に位置させることができる。このとき特に限定はされないが、プライ4aの巻き上げ部の端をプライ4bの巻き上げ部の端よりもタイヤ径方向内側に位置するようにすることができる。
【0023】
さらに、ダウンプライ4f、4gの端も、タイヤ幅方向の位置をずらして配置しており、これにより、ダウンプライの端に起因する故障の発生をより一層抑制することができる。図示例では、内周側のダウンプライ4fの端が、外周側のダウンプライ4gの端より、タイヤ幅方向内側に位置している。一方で、内周側のダウンプライ4fの端が、外周側のダウンプライ4gの端より、タイヤ幅方向外側に位置していても良く、あるいは、タイヤ幅方向の位置を揃えても良い。
【0024】
図示例では、ベルト5は、5層のベルト層5a~5eから構成され、タイヤ径方向内側から順に、ベルト層5a、5b、5c、5d、5eの順に積層されている。図示例では、ベルト層5a、5b、5c、5d、5eの順にベルト層のタイヤ幅方向の幅が大きい。一方で、本発明では、ベルト構造は特に限定されず、ベルト層の層数、各ベルト層のタイヤ幅方向の幅等は、適宜設定することができる。また、適宜、タイヤ周方向に延びるコードのゴム引き層からなるベルト補強層を、例えばベルト5のタイヤ径方向外側又は内側に配置することもできる。
【0025】
また、図1図2に示すように、本実施形態のタイヤは、ビードコア1aとカーカス4との間に、ビードコアの少なくとも一部を覆う補強層6を配置している。
補強層6は、ビードフィラー1bのタイヤ幅方向内側且つビードフィラー1bのタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側端までの領域から、少なくとも、ビードコア1aよりタイヤ幅方向内側且つビードコア1aのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向内側の領域まで延在している。
図示例では、補強層6は、ビードフィラー1bのタイヤ幅方向内側且つビードフィラー1bのタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側端までの領域から、ビードコア1aの中心よりタイヤ幅方向内側且つビードコア1aの中心よりタイヤ径方向内側の領域まで延在しているが、ビードコア1aの中心よりタイヤ幅方向外側且つビードコア1aの中心よりタイヤ径方向内側の領域まで延在しも良く、あるいは、ビードコア1aの中心よりタイヤ幅方向外側且つビードコア1aの中心よりタイヤ径方向外側の領域まで延在しても良い。また、補強層6のタイヤ径方向外側端は、ビードフィラー1bのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向外側に位置していてもよい。
本例では、補強層6は、芯部が鞘部に包囲された複合コードのゴム引き層である。また、本例では、芯部は、ポリプロピレンからなり、鞘部は、ポリエチレン-ポリプロピレン共重合体からなる。
【0026】
以下、本実施形態の航空機用空気入りラジアルタイヤの作用効果について説明する。
【0027】
本発明者らが、課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、ビードフィラーに対してタイヤ幅方向内側に隣接する領域では、タイヤの内圧充填時において、カーカスプライがタイヤ径方向外側へと引っ張られる力を受けること、及び、ビードコアに隣接する領域では、ビードコアからの拘束力によってタイヤ径方向内側へ引っ張られる力を特に強く受けることが判明した。これは、ビードコアがタイヤ径方向外側への引っ張りや回転に対する高い剛性を有しているためである。従って、ビードフィラーに対してタイヤ幅方向内側に隣接する領域においては、ビードコアに最も近いカーカスプライの歪みが大きくなることを突き止めた。
一方で、ビードコアに隣接する領域においては、カーカスプライの歪みは、ビードコアにより拘束されているため相対的に小さくなる。また、ビードフィラーのタイヤ幅方向外側に隣接するカーカスプライは、ビードコアに隣接するターンアッププライは端が存在するため相対的に歪は小さくなる。
【0028】
そこで、本実施形態の航空機用空気入りラジアルタイヤでは、ビードコア1aとカーカス4との間に、ビードコアの少なくとも一部を覆う補強層6を配置している。これにより、カーカスプライ4a、4bに対するビードコア1aによる拘束力を緩和して、ビードフィラー1bのタイヤ幅方向内側の領域でカーカスプライに生じる歪みを低減して、タイヤの耐圧性を向上させることができる。
特に本実施形態では、補強層6は、ビードフィラー1bのタイヤ幅方向内側且つビードフィラー1bのタイヤ径方向外側端からタイヤ径方向内側端までの領域から、少なくとも、ビードコア1aよりタイヤ幅方向内側且つビードコア1aのタイヤ径方向外側端よりタイヤ径方向内側の領域まで延在している。このため、上記のカーカスプライに生じる歪みを低減する効果をより確実にして、タイヤの耐圧性をより一層向上させることができる。
【0029】
ところで、上記のような補強層を設けた場合には、該補強層の端において故障が発生する可能性があることが考えられる。
そこで、上記実施形態のように、補強層は、芯部が鞘部に包囲された複合コードのゴム引き層であることが好ましい。補強層の端から生じる故障を抑制することができるからである。
ここで、芯部は、高融点樹脂(例えば、JIS-K-7121に従って測定した融点が150℃以上のもの)からなり、鞘部は、該高融点樹脂よりも融点の低いオレフィン系重合体からなることが好ましい。また、樹脂体の長手方向端部において、高融点樹脂の端面が、オレフィン共重合体により被覆されて、該オレフィン系重合体とゴムとが融着されてなることが好ましい。
芯部は、オレフィン系重合体が、エチレン又はプロピレンを含む単量体を付加重合させたオレフィン系ランダム共重合体であることが好ましく、エチレン-プロピレンランダム共重合体であることも好ましく、この場合、好適には、エチレン-プロピレンランダム共重合体における、プロピレン含量が99.7モル%~20モル%であり、エチレン含量が0.3モル%~80モル%である。また、エチレン又はプロピレンを含む単量体を付加重合させたオレフィン系ランダム共重合体が、エチレン系ランダム共重合体であることが好ましい。
上記高融点樹脂は、特にポリプロピレン樹脂であることが好ましく、また該高融点樹脂よりも融点の低いオレフィン系重合体は、エチレンとプロピレンのランダム共重合体であることが好ましい。
また、上記実施形態のように、芯部は、ポリプロピレンからなり、鞘部は、ポリエチレン-ポリプロピレン共重合体からなることが好ましい。補強層の端から生じる故障をさらに抑制することができるからである。
さらに、補強層の繊度は、好適には100dtex以上5000dtex以下であり、補強層がゴム引き層の内部で実質的に交錯せず、かつ、1本または10本以内の束からなることが好ましい。さらにまた、オレフィン系重合体の、ラマン分光法で測定される結晶性パラメータが-0.06以下であることが好ましく、ラマン分光法で測定されるラマンバンドの偏光方向に対するバンド強度比より求めた配向パラメータが13以下であることが好ましい。
補強層のコードの延在方向のヤング率(引張歪み5%時)は、1500~1800MPaであることが好ましい。
特には限定されないが、一例として、補強層は、上記に例示したような芯部の材料及び鞘部の材料、及び芯部用、鞘部用の例えば径50mmの単軸押出機を用いて、芯成分の紡糸温度を例えば265℃とし、鞘成分の紡糸温度を例えば225℃として、口径が例えば1.5mmの芯鞘型複合紡糸口金を用いて、鞘芯比率が質量比率で例えば4:6となるように、芯成分の吐出量が例えば19.5g/分、鞘成分の吐出量が例えば13.0g/分で溶融紡糸し、例えば98℃の熱水浴で、例えば3.5倍で延伸し、例えば速度90m/分で巻取りを行ない、例えば繊度550dtexの芯鞘型複合モノフィラメントを得ることにより、製造することができる。
【0030】
ここで、補強層のコードは、タイヤ子午線方向に対して20°以下の角度で(-20°~+20°の角度で)傾斜することが好ましい。
【0031】
また、上記の実施形態のように、上記基準状態における、タイヤ幅方向断面視において、2枚以上のカーカスプライのうちビードフィラー1bよりタイヤ幅方向内側の領域で該ビードフィラー1bに最も隣接するカーカスプライ4aの端は、ビードコアの中心からタイヤ径方向外側を0°として、タイヤ幅方向内側に向かって45°~90°の領域に位置していることが好ましい。ビードフィラー1bに対してタイヤ幅方向内側に隣接するカーカスプライ4aの端を上記の領域に配置することで、ビードコア1aからの拘束力を、ビードフィラー1bに対しタイヤ幅方向内側に隣接するカーカスプライ4a及びそれに隣接するカーカスプライのそれぞれに分担させることができるため、それぞれのカーカスプライのビードコアからの拘束力が大きくなり過ぎることがなくなり、それぞれのカーカスプライのビードフィラーに隣接する領域において発生する大きな歪を抑制して、タイヤの耐圧性を向上させることができるからである。
【0032】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、ビード部に適宜チェーファー等の補強部材をさらに配置することもできる。また、例えば、本発明では、ビードフィラーに対してタイヤ幅方向内側に隣接するプライをターンアッププライとしても良い。
【符号の説明】
【0033】
1:ビード部、 1a:ビードコア、 1b:ビードフィラー、
2:サイドウォール部、 3:トレッド、
4:カーカス、 4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g:カーカスプライ、
5:ベルト、 5a、5b、5c、5d、5e:ベルト層、
6:補強層
図1
図2