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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 287/00 20060101AFI20240919BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C08F287/00
C08F2/44 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020101174
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021195410
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000190611
【氏名又は名称】日東シンコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】平山 大介
(72)【発明者】
【氏名】藤井 弘文
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-077384(JP,A)
【文献】特表2018-535290(JP,A)
【文献】特開2007-002167(JP,A)
【文献】特表2005-506430(JP,A)
【文献】特開2016-011361(JP,A)
【文献】特開2018-115225(JP,A)
【文献】特開2008-233653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2、251-289
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子鎖の片末端にヒドロキシ基を有するスチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体と、
イソボルニル(メタ)アクリレートと、
飽和分岐鎖状炭化水素構造と1つの(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する、単官能の飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、
を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記単官能の飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーが、イソノニル(メタ)アクリレート又はイソデシル(メタ)アクリレートの少なくとも一方である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光照射によって硬化する硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光照射によって硬化する硬化性組成物としては、例えば、水添ポリブタジエンジオールまたは水添ポリイソプレンジオールから合成された数平均分子量が1,000~20,000であるウレタンアクリレート(A)と、単官能(メタ)アクリレートモノマー(B)と、380nm以上の波長で吸収帯域を持つ開始剤(C)と、を含む硬化性組成物であって、(C)成分の含有量が(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対し10~15重量部である硬化性組成物が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の硬化性組成物は、電子回路上に塗布されたうえで、光の照射によって硬化され、電子回路被覆用途において使用される。
特許文献1に記載の硬化性組成物は、LED光源からの光であっても硬化され、良好な防湿性及び電気絶縁性などを有し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-024761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の硬化性組成物が硬化した硬化物は、必ずしも十分な柔軟性を有しないことから、例えば硬化被膜となった硬化物が割れなどを生じる場合がある。従って、硬化後の硬化物の柔軟性が良好となり得る硬化性組成物が要望されている。
【0006】
上記の問題点等に鑑み、本発明は、硬化後の硬化物が良好な柔軟性を有することができる硬化性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明に係る硬化性組成物は、
ポリオレフィンブロック構造とポリスチレンブロック構造とを分子中に有するブロック共重合体と、
飽和環状炭化水素構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、
飽和鎖状炭化水素構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、
を含むことを特徴とする。
上記の硬化性組成物によれば、硬化した後の硬化物が良好な柔軟性を有し得る。
【0008】
本発明に係る硬化性組成物において、前記ブロック共重合体が、分子鎖の末端にヒドロキシ基を有することが好ましい。これにより、硬化性組成物が硬化した後の硬化物の柔軟性がより良好となり得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る硬化性組成物によれば、柔軟性が良好な硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る硬化性組成物の一実施形態について説明する。
【0011】
本実施形態の硬化性組成物は、ポリオレフィンブロック構造とポリスチレンブロック構造とを分子中に有するブロック共重合体と、
飽和環状炭化水素構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、
飽和鎖状炭化水素構造と(メタ)アクリロイル基とを分子中に有する飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、を含む。
【0012】
上記のブロック共重合体は、ポリオレフィンブロック構造とポリスチレンブロック構造とを分子中に有する。上記のブロック共重合体は、分子鎖の両末端部にポリスチレンブロック構造をそれぞれ有し、これらポリスチレンブロック構造の間にポリオレフィンブロック構造を有する。
【0013】
ポリオレフィンブロック構造は、エーテル基やエステル基などの極性基を含まず、炭化水素基のみで構成される。斯かる炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和炭化水素基であってもよい。斯かる炭化水素基は、飽和炭化水素基及び不飽和炭化水素基の両方を含んでいてもよい。ポリオレフィンブロック構造の大半は、飽和炭化水素で構成されていることが好ましい。
なお、本実施形態の硬化性組成物をより硬化させるという点では、ポリオレフィンブロック構造が不飽和炭化水素基を含んでもよく、一方、本実施形態の硬化性組成物の硬化物がより良好な耐熱性や耐候性を有することができるという点では、ポリオレフィンブロック構造における不飽和炭化水素基の割合は少ない方が好ましい。例えば、硬化性組成物の総質量に対して、ポリオレフィンブロック構造の不飽和炭化水素基の割合は、10質量%以下であってもよく、5質量%以下であってもよい。
【0014】
ポリオレフィンブロック構造は、構成単位として、エチレン、プロピレン、1,3-ブタジエン(及びその水素添加体)、イソプレン(及びその水素添加体)などの構成単位を有する。ポリオレフィンブロック構造は、通常、飽和結合で構成されているが、不飽和結合を一部に有してもよい。構成単位としては、エチレン、プロピレン、ブチレン(-CHCH(CHCH)―)が好ましい。換言すると、ポリオレフィンブロック構造は、エチレン、プロピレン、及び、ブチレンのうち少なくとも1種を構成単位として有することが好ましい。
【0015】
ポリオレフィンブロック構造において、各構成単位は、ランダムに配列していてもよい。換言すると、各構成単位は、異なる複数種のモノマーがランダム重合によって分子鎖に組み込まれたものであってもよい。
例えば、ポリオレフィンブロック構造は、エチレン構成単位及びプロピレン構成単位のランダム配列構造を含んでもよい。
【0016】
ポリオレフィンブロック構造における重合度は、例えば、100以上1,000以下である。
【0017】
各ポリスチレンブロック構造は、構成単位として、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジエチルスチレンなどの構成単位を有する。構成単位としては、これらのうち1種又は複数種を含む。構成単位としては、スチレン、α-メチルスチレンの構成単位が好ましい。換言すると、各ポリスチレンブロック構造は、スチレン又はα-メチルスチレンの少なくとも一方を構成単位として有することが好ましい。
【0018】
各ポリスチレンブロック構造の重合度は、例えば、50以上100以下である。
【0019】
上記のブロック共重合体としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン・ブテン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)などが挙げられる。上記のブロック共重合体としては、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)が好ましい。
【0020】
上記のブロック共重合体におけるポリスチレンブロック構造の割合は、10質量%以上50質量%以下であってもよく、20質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0021】
上記のブロック共重合体は、分子鎖の末端にヒドロキシ基を有することが好ましい。上記のブロック共重合体は、分子鎖の両末端にそれぞれヒドロキシ基を有してもよく、いずれか一方の末端(片末端)にヒドロキシ基を有してもよい。
分子鎖の末端にヒドロキシ基を有することにより、上記のブロック共重合体と、上記の飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマー及び飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとの相溶性が向上することから、硬化性組成物が硬化した後の硬化物が、より良好な柔軟性及び低透湿性を有する。
なお、他方の末端は、重合開始剤の残基などであってもよい。
【0022】
なお、上記のブロック共重合体は、イソシアネート基やグリシジル基といった反応性基を分子中に含まない。また、上記のブロック共重合体の主鎖中には、ウレタン結合やアミド結合などを構成する窒素(N)、及び、スルホニル基などを構成する硫黄(S)が含まれていない。
上記のブロック共重合体は、通常、架橋構造を有さず、また、変性されていない。
【0023】
上記のごとく分子鎖の片末端にヒドロキシ基を有するブロック共重合体の好ましい分子構造を模式的に示すと、下記の式(1)で表される。式(1)は、SEEPSの片末端にヒドロキシ基を有する構造を表す。なお、下記式(1)において、pは、50以上100以下、qは、100以上500以下、rは、400以上1,000以下、sは、50以上100以下、mは、500以上1,500以下であってもよい。
【0024】
【化1】
【0025】
上記のブロック共重合体は、例えば10,000以上100,000以下の数平均分子量を有してもよい。
【0026】
上記のブロック共重合体としては、市販製品を使用できる。例えば、製品名「クレイトン G1650」(クレイトン社製)、製品名「セプトン HG252」(クラレ社製 分子鎖の片末端に-OH基を有する)などを使用できる。
【0027】
本実施形態の硬化性組成物は、上述したように、飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとを含む。
【0028】
飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、飽和環状炭化水素構造(炭素原子のみで形成された環状部分の構造)を含む1価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化化合物であることが好ましい。
飽和環状炭化水素構造を含む1価アルコールの炭素数は、8以上15以下であることが好ましい。飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、ベンゼン環、並びに、エーテル結合(-CH-O-CH-)、-OH基、及び-COOH基などの極性基のいずれも分子中に含まないことが好ましい。
【0029】
飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に(メタ)アクリレート基を1つ有する単官能モノマーであることが好ましい。飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーにおいて、飽和環状炭化水素構造は、ヘテロ原子を含まず、4~8の炭素原子で各炭素環が形成された構造であってもよい。飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、単環式、二環式、多環式であってもよい。二環式又は多環式の飽和環状炭化水素構造が、2以上の炭素原子を共有していてもよい。なお、二環式又は多環式の飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーでは、少なくとも1つの環構造が飽和アルキル構造であればよく、例えばすべての環構造が飽和アルキル構造であってもよい。飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーにおいて、飽和環状炭化水素構造の炭素には、メチル基又はエチル基がさらに結合していてもよい。
【0030】
飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート(ノルボルナン構造を含有)、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレート(ノルボルナン構造を含有)、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート(ノルボルナン構造を含有)、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート(ノルボルナン構造を含有)、アダマンチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0031】
飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、上記のモノマーのうち、ノルボルナン構造を含むモノマーが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、又は、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレートの少なくとも一方が、より好ましい。
【0032】
上記の硬化性組成物が飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含むことによって、斯かる飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーが上記のブロック共重合体をより十分に硬化性組成物において溶解させることができる。
【0033】
飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、炭素数が8以上15以下の飽和鎖状炭化水素を分子中に有する(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましく、炭素数が8以上12以下の飽和鎖状炭化水素を分子中に有する(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、ベンゼン環、並びに、エーテル結合(-CH-O-CH-)、-OH基、及び-COOH基などの極性基のいずれも分子中に含まないことが好ましい。
飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に(メタ)アクリレート基を1つ有する単官能モノマーであることが好ましい。飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーにおいて、飽和鎖状炭化水素構造は、C及びH以外の原子を含まず、7~11の炭素原子で構成された飽和鎖状炭化水素構造であってもよい。
上記の硬化性組成物が飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含むことによって、硬化性組成物が硬化した硬化物の柔軟性をより向上させることができる。
【0034】
飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーにおいて、飽和鎖状炭化水素構造は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。換言すると、飽和鎖状炭化水素構造は、飽和直鎖状炭化水素構造であってもよく、飽和分岐鎖状炭化水素構造であってもよい。さらに換言すると、飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、飽和直鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーであってもよく、飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。
飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、硬化性組成物において上記のブロック共重合体をより十分に溶解させ得るという点で、飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。これにより、硬化物を担持する基材、硬化物の厚さ、又は、硬化反応条件などの影響をあまり受けずに、より均一に近い硬化物被膜を得ることができる。
【0035】
本実施形態の硬化性組成物において、飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとの合計質量100質量部に対する、飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーの割合は、好ましくは30質量部以上95質量部以下である。
これにより、電気絶縁性能と柔軟性(伸び性能)とをよりバランス良く兼ね備えた硬化物を得ることができる。
【0036】
飽和直鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーの炭化水素構造は、飽和直鎖状アルキル構造であればよい。
具体的には、飽和直鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。
【0037】
飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーの炭化水素構造は、飽和分岐鎖状アルキル構造であればよく、iso構造、sec構造、neo構造、又は、tert構造であり得る。
具体的には、飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、イソヘプチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記飽和分岐鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、ブロック共重合体との溶解性がより良好である点、また、より均一に近い硬化被膜を得られやすいという点で、イソノニル(メタ)アクリレート、又は、イソデシル(メタ)アクリレートの少なくとも一方が、好ましい。
【0038】
上述した硬化性組成物には、飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーの1種が単独で、又は2種以上が組み合わされて配合されてもよい。飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーも同様である。
なお、飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び、飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、市販されている製品を使用できる。
【0039】
本実施形態の硬化性組成物において、上記のブロック共重合体、飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマー、及び、飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーの合計100質量部に対して、ブロック共重合体の割合は、10質量部以上25質量部以下であることが好ましい。
【0040】
本実施形態の硬化性組成物は、重合反応を光照射によって開始させる光重合開始剤を含む。
【0041】
光重合開始剤は、照射された光(紫外線等)によってラジカルを発生する化合物であれば、特に制限されない。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光開始剤、ベンゾイン系光開始剤、ベンゾフェノン系光開始剤、チオキサントン系光開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光開始剤等が挙げられる。
光重合開始剤としては、市販品を使用することができる。
【0042】
なお、本実施形態の硬化性組成物は、必要に応じて、光増感剤、重合禁止剤、酸化防止剤、染料、顔料、蛍光体などを含み得る。
本実施形態の硬化性組成物は、好ましくは、無機粉体又は樹脂粉体といった粉体を含まない。
【0043】
上記の硬化性組成物は、一般的な方法によって製造できる。例えば、上記のブロック共重合体と、飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマーと、飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、光重合開始剤とを、混合して撹拌することによって製造できる。
【0044】
本実施形態の硬化性組成物は、紫外線などの光の照射によって硬化された硬化物となって使用される。例えば、被覆されることとなる電子回路に、上記の硬化性組成物を塗工した後、紫外線などの光を照射して組成物を硬化させ、硬化物の被覆膜を形成する。
【0045】
硬化反応を進めるために照射する光としては、紫外線を使用できる。光源としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、LEDランプなどを使用できる。照射強度としては、例えば、10~10,000mW/cmを採用できる。
【0046】
上記の硬化性組成物が塗工されて被覆される対象物としては、例えば、精密機器に使用される実装基板上の電子回路や端子、自動車や自転車や鉄道や航空機や船舶などに搭載する実装基板上の電子回路や端子、モバイル機器(携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等)に使われる実装基板上の電子回路や端子、屋外機器(給湯器、エアコン室外機等)に利用される基板の電子回路や端子、洗濯機や温水洗浄便座、食器洗い乾燥器等の水周り機器に使用される実装基板上の電子回路や端子等が挙げられる。
【0047】
本実施形態の硬化性組成物は上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の硬化性組成物に限定されるものではない。
即ち、一般的な硬化性組成物において用いられる種々の形態が、本発明の効果を損ねない範囲において、採用され得る。
【実施例
【0048】
次に実験例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
以下のようにして、各配合原料を混合して硬化性組成物を製造した。
【0050】
<原料>
(A)ブロック共重合体
・(A-1)スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体
(SEBS)
製品名「クレイトン G1650」(クレイトン社製)(スチレン30質量%含有、数平均分子量67,000)
・(A-2)スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体
(SEEPS)
製品名「セプトン HG252」(クラレ社製)(スチレン28質量%含有、数平均分子量55,000)
:分子鎖の片末端に-OH基を有する(SEEPS-OH と表記)
(B)飽和シクロアルキル(メタ)アクリレートモノマー
・(B-1)イソボルニルアクリレート(IBXA 市販製品)
・(B-2)ジシクロペンタニルアクリレート
製品名「ファンクリルFA-513AS」日立化成工業社製
(C)飽和鎖状アルキル(メタ)アクリレートモノマー
・(C-1)イソノニルアクリレート(INAA 市販製品)分岐鎖状
・(C-2)イソデシルアクリレート(IDAA 市販製品)分岐鎖状
(その他)
・光重合開始剤 製品名「IRGACURE 907」 IGMResins社製
・光増感剤(2,4-ジエチルチオキサントン)
製品名「KAYACURE DETX-S」日本化薬社製
【0051】
(実施例1・3、参考例2・4、比較例)
表1に示す配合量で、上記の原料を80℃で3時間撹拌して、硬化性組成物を製造した。
【0052】
【表1】
【0053】
以下に示すようにして、実施例、参考例、及び比較例で製造した各硬化性組成物を評価した。詳しくは、製造した各硬化性組成物の粘度、硬化物の引張伸び率、引張弾性率、透湿度、体積抵抗率を調べた。
なお、一般的には、体積抵抗率が高いほど、硬化がより十分に進行したことを示す。
【0054】
<組成物の粘度>
東機産業社製E型回転粘度計:RE-85Rを用いて以下条件で測定した。
測定温度:25℃、ロータ:1.34°、R24
【0055】
<硬化>
硬化後の硬化物の厚さが100μmとなるように、0.3×130×180mmのブリキ板に各組成物を塗工した。光によって硬化させる試料については、500WのUVランプによって積算光量が1,000mJ/cmの光強度となるように紫外線を照射した。
【0056】
<硬化物(硬化塗膜)の引張伸び率>
離型処理されたPETフィルム上に、上記の硬化処理と同様にして硬化物(硬化塗膜)を形成した。次に、硬化塗膜からPETフィルムを剥離して、硬化塗膜をJISダンベル2号形状に切断した。そして、チャック間距離:20mm、クロスヘッド速度:300mm/分の測定条件で引張伸び率を測定した。
なお、伸び率(%)を下記式によって算出した。
伸び率(%)=(破断伸び量(mm)-20)/20 ×100
【0057】
<硬化物(硬化塗膜)の引張弾性率>
上記のごとき硬化処理によって形成した硬化物(硬化塗膜)について、引張強度(N)/変異伸び量(mm)が最大となる傾きSをもとめ、以下の式によって引張弾性率を算出した。
引張弾性率(MPa)=
S(引張強度(N)/変異伸び量(mm))/(厚み(mm)×幅(mm)×20
【0058】
<硬化物(硬化塗膜)の透湿度>
JIS K8123に従って、吸湿条件40℃でカップ法にて測定をおこなった。
【0059】
<硬化物(硬化塗膜)の体積抵抗率>
上記のようにしてブリキ板上で硬化させた各硬化物(硬化塗膜)上に、ペースト状の銀の導電性塗料を円状(直径30mm)に塗布した。60℃で30分間乾燥して上側電極を形成した。一方、基材として使ったブリキ板を下側電極とした。DC100Vの電圧を印加して60秒後の抵抗値を求めた。そして、電極面積に抵抗値を乗じ、硬化物(硬化膜)の厚さで除して、体積抵抗率を求めた。
【0060】
上記の試験によって評価した結果を表1に示す。
表1に示された評価結果から把握されるように、各実施例の硬化性組成物は、硬化物の引張伸び率が十分に高く、硬化後の柔軟性が良好であった。
各実施例の硬化性組成物が硬化された硬化物では、アクリレートモノマー同士が重合して高分子化されているものの、ブロック共重合体はアクリレートモノマーと反応しない状態で存在すると考えられる。これにより、硬化物は良好な柔軟性を有すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の硬化性組成物は、例えば、電子回路を硬化物で被覆するために、電子回路に塗布された後、光照射されて硬化され、硬化物となって好適に使用される。本発明の硬化性組成物は、例えば、絶縁被膜用硬化性組成物として好適に使用される。