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特許7557292燃料電池発電システム、制御装置、及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】燃料電池発電システム、制御装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20240919BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20240919BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20240919BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240919BHJP
   H01M 8/04089 20160101ALI20240919BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20240919BHJP
   H01M 8/0444 20160101ALI20240919BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240919BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20240919BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20240919BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240919BHJP
【FI】
H01M8/04746
C01B3/02 H
H01M4/92
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/04089
H01M8/04313
H01M8/0444
H01M8/04537
H01M8/0612
H01M8/0656
H01M8/10 101
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020116476
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022022770
(43)【公開日】2022-02-07
【審査請求日】2023-02-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100125151
【弁理士】
【氏名又は名称】新畠 弘之
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】松永 温
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】橘高 大悟
(72)【発明者】
【氏名】辻 正洋
(72)【発明者】
【氏名】菊池 勇
(72)【発明者】
【氏名】大塚 尚登
(72)【発明者】
【氏名】中森 洋二
(72)【発明者】
【氏名】干鯛 将一
(72)【発明者】
【氏名】霜鳥 宗一郎
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-200985(JP,A)
【文献】特開2009-212040(JP,A)
【文献】特開2006-236741(JP,A)
【文献】特開2002-352836(JP,A)
【文献】特開2003-308849(JP,A)
【文献】特開2008-091102(JP,A)
【文献】特開平09-115537(JP,A)
【文献】特開2010-287483(JP,A)
【文献】特開2002-208420(JP,A)
【文献】特開2019-200839(JP,A)
【文献】特開2015-149247(JP,A)
【文献】特開2005-035967(JP,A)
【文献】特開2002-329519(JP,A)
【文献】特表2014-509771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00 - 6/34
C25B 1/00 - 9/77
C25B 13/00 - 15/08
H01M 4/86 - 4/98
H01M 8/04 - 8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質ガス、副生水素ガス及び水素ガスのうちの少なくとも一つを用いて発電可能な燃料電池と、
再生可能エネルギーによる発電電力、及び前記燃料電池の発電電力の少なくとも一方を用いて、蓄電する蓄電池と、
前記再生可能エネルギーによる発電電力、及び前記燃料電池の発電電力の少なくとも一方を用いて、水から前記水素ガス及び酸素ガスを生成し、前記水素ガスを前記燃料電池に供給可能な水電解装置と、
前記水電解装置が生成した前記水素ガスを蓄える水素タンクと、
前記改質ガス、前記副生水素ガス及び前記水素ガスのうちの少なくとも一つを前記燃料電池に供給可能である燃料ガス導入部と、
前記燃料電池及び前記蓄電池の供給電力を制御するとともに、前記水素ガスの供給量に応じて前記燃料ガス導入部を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記蓄電池の蓄電残量に応じて、
前記再生可能エネルギーによる発電電力が余剰電力として余剰する場合には、前記蓄電残量の蓄電池上限値に基づき、前記余剰電力による前記蓄電池への充電と、前記水電解装置による前記水素の製造とを切り替え、
前記再生可能エネルギーによる発電電力が余剰しない場合には、前記蓄電池上限値よりも小さな値である蓄電池下限値に基づき、前記蓄電池からの放電と、前記燃料電池による発電とを切り替え
前記制御装置は、前記改質ガスの組成に基づき、前記副生水素ガスの供給量の制御を前記燃料ガス導入部に対しておこなう、燃料電池発電システム。
【請求項2】
原料ガスを改質することにより前記改質ガスを生成する改質器を更に備え、
前記原料ガスは、天然ガス、液化石油ガス、プロパンガス、メタンガス、バイオガス、メタノールのなかの少なくとも一つを含む、請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項3】
前記燃料ガス導入部は、更に都市ガス、及び液化天然ガスの少なくとも一方を供給可能であり、
前記制御装置は、前記原料ガスの組成に基づき、前記都市ガス、及び前記液化天然ガスの少なくとも一方の供給量を制御する、請求項2に記載の燃料電池発電システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記燃料電池へ供給する前記水素ガスの備蓄量が所定値以下である場合に、前記改質ガスの供給量を増加させる制御を前記燃料ガス導入部に対して行う、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の燃料電池発電システム。
【請求項5】
前記再生可能エネルギーによる発電電力が余剰しない場合には、
前記制御装置は、前記蓄電池の残量が下限値よりも少ない場合に、前記燃料電池に前記水素タンクから供給される前記水素ガスにより発電を行なわせる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の燃料電池発電システム。
【請求項6】
前記制御装置は、原料ガスから前記改質ガスの生成を行う場合に、外部備蓄タンク内の原料ガス組成あるいは前記改質ガス組成の少なくとも一つに基づき、前記水素タンクから水素ガスを前記改質ガスに添加供給する、請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項7】
前記制御装置は、原料ガスとしてバイオガスから前記改質ガスの生成を行う場合に、外部備蓄タンク内のバイオガス組成あるいは前記改質ガス組成の少なくとも一つに基き、前記水素タンクから水素ガスを前記改質ガスに添加供給する、請求項1に記載の燃料電池発電システム。
【請求項8】
前記再生可能エネルギーによる発電電力が余剰しない場合には、
前記制御装置は、前記蓄電池の残量が下限値よりも少ない場合、且つ前記水素タンクに貯蔵する水素ガス残量が下限値よりも少ない場合に、前記燃料電池に前記改質ガスを用いて発電を行なわせる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の燃料電池発電システム。
【請求項9】
改質ガス、副生水素ガス及び水素ガスのうちの少なくとも一つを用いて発電可能な燃料電池と、
再生可能エネルギーによる発電電力、及び前記燃料電池の発電電力の少なくとも一方を用いて、蓄電する蓄電池と、
前記再生可能エネルギーによる発電電力、及び前記燃料電池の発電電力の少なくとも一方を用いて、水から前記水素ガス及び酸素ガスを生成し、前記水素ガスを前記燃料電池に供給可能な水電解装置と、
前記水電解装置が生成した前記水素ガスを蓄える水素タンクと、
前記改質ガス、前記副生水素ガス及び前記水素ガスのうちの少なくとも一つを前記燃料電池に供給可能である燃料ガス導入部と、
前記燃料電池及び前記蓄電池の供給電力を制御するとともに、前記水素ガスの供給量に応じて前記燃料ガス導入部を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記蓄電池の蓄電残量に応じて、
前記再生可能エネルギーによる発電電力が余剰電力として余剰する場合には、前記蓄電残量の蓄電池上限値に基づき、前記余剰電力による前記蓄電池への充電と、前記水電解装置による前記水素の製造とを切り替え、
前記再生可能エネルギーによる発電電力が余剰しない場合には、前記蓄電池上限値よりも小さな値である蓄電池下限値に基づき、前記蓄電池からの放電と、前記燃料電池による発電とを切り替え
前記制御装置は、前記改質ガスの組成に基づき、前記燃料電池への水素含有ガスが所定量に達するように、前記副生水素ガスの供給量を制御する、燃料電池発電システム。
【請求項10】
前記燃料電池の燃料極触媒層は、耐一酸化炭素被毒性、耐硫黄被毒性、及び耐窒素被毒性の貴金属含有触媒の少なくとも一方を含む、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の燃料電池発電システム。
【請求項11】
前記酸素ガスを蓄える酸素タンクを更に備え、
前記燃料電池に前記酸素タンクから前記酸素ガスを供給する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の燃料電池発電システム。
【請求項12】
前記制御装置は、前記燃料電池の燃料ガスとして、前記改質ガスまたは前記副生水素ガスの少なくとも1つを供給し、前記燃料電池で発電した電力により、前記水電解装置を稼働させて前記水素ガスを生成する制御を行う、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の燃料電池発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池発電システム、制御装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界規模で発生している異常気象の原因として地球温暖化が影響している。この要因として、従来の産業活動による大気中の二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量が増加傾向にあることが懸念されている。このため、これら温室効果ガスの排出量を低減することが持続可能な社会を実現するための課題の一つとして考えられている。従来の石油・石炭等の化石エネルギーに替わり、太陽光や風力等の自然エネルギーを再生可能エネルギーとして利活用するための電力変換・送電・貯蔵を行う各種電力発電システムが有効な手段の一つとして注目されており研究開発が進められている。一方、自然由来のエネルギーは天候や季節による気象環境の影響を受け易く太陽光や風力による電力変換システムでは時間変動が発生しており、電力の需給バランスによっては余剰電力や電力不足が起きる場合があった。
【0003】
これに対して、電力需給バランスの安定化を図るための燃料電池発電システムでは、余剰電力を蓄電池に充電したり、余剰電力を利用した水電解装置と燃料電池とを組合せたりしている。ところが、電力需要が一時的に増大すると、蓄電池から供給可能な電力量が一時的に不足したり、燃料電池の発電に供給するための貯蔵水素ガスが不足したりする場合がある。一方で、余剰電力が発生して、水素を貯蔵する間は、燃料電池は停止しており、燃料電池発電システムの稼働率が低下してしまう恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-73835号公報
【文献】特開2013-73835号公報
【文献】特開2013-73835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、燃料電池発電システムの稼働率の低下を抑制可能な燃料電池発電システム、制御装置、及び制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態に係る燃料電池発電システムは、燃料電池と、蓄電池と、水電解装置と、燃料ガス導入部と、制御装置と、を備える。燃料電池は、改質ガス、副生水素ガス及び水素ガスのうちの少なくとも一つを用いて発電可能である。水電解装置は、再生可能エネルギーによる発電電力、及び燃料電池の発電電力の少なくとも一方を用いて、水から水素ガス及び酸素ガスを生成し、水素ガスを燃料電池に供給可能である。燃料ガス導入部は、改質ガス、副生水素ガス及び水素ガスのうちの少なくとも改質ガスを燃料電池に供給可能である。制御装置は、燃料電池及び蓄電池の供給電力を制御するとともに、水素ガスの供給量に応じて燃料ガス導入部を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃料電池発電システムの稼働率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】燃料電池発電システムの構成を説明するブロック図。
図2】制御装置の構成を示すブロック図。
図3】電力需要と、水電解装置、蓄電池、及び燃料電池の発電の状態との関係を模式的に示す図。
図4】発電制御部の制御動作の一例を示すフローチャート。
図5】混合制御部の制御動作の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る燃料電池発電システム、制御装置、及び制御方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号又は類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0010】
図1は、本実施形態に係る燃料電池発電システム1の構成を説明するブロック図である。図1に示すように、本実施形態に係る燃料電池発電システム1は、原料ガスを用いて発電可能なシステムであり、水電解装置10と、水素タンク12と、酸素タンク14と、蓄電池16と、燃料電池18と、空気ブロアー20と、貯湯ユニット22と、燃料ガス導入部24と、制御装置28とを、備える。また、燃料ガス導入部24は、改質ガス、副生水素ガス、及び水素ガスを燃料電池18に供給可能であり、改質器24bと、備蓄タンク24aと、センサ24c、24dとを有する。原料ガスは、水素ガスを含まないが化学反応などにより水素ガスの生成が可能なガス、又は水素比率の低いガスである。水素比率とは、不純物を含み得る水素ガス中の水素(水素分子)の比率である。図1には、更に配管P2~P22と、制御装置28に制御される可動弁V2~V12とが図示されている。燃料電池発電システム1には、再生可能エネルギーによる発電電力で再生可能電力が供給される。また、電力系統とも接続され、系統電力の供給を受けることも可能である。
【0011】
水電解装置10は、配管P2を介して水素タンク12と連通し、配管P6を介して酸素タンク14と連通する。水電解装置10は、燃料電池発電システム1からの供給可能電力から電力系統などへの供給電力を差し引いた余乗電力を利用して水を電気分解し、水素ガスおよび酸素ガスを生成する。また、この水電解装置10は、燃料電池18による発電電力、及び再生可能エネルギーによる発電電力により水の電気分解を行うことも可能である。
【0012】
水電解装置10は、水電解部として電気化学反応を伴う水の電気分解を行う各種の水電解セル、例えばアルカリ水電解型セルや固体高分子水電解型セルを有する。アルカリ水電解型セルや固体高分子水電解型セルでは、例えば酸化極と還元極が電解質を挟み互いに対向した配置で構成されている。固体高分子水電解セルの場合、酸化極ではセル外部から酸化極内に水電解用の水を供給し、触媒反応を伴う電気分解で酸素ガスと水素イオンおよび電子を分離生成する。そして、水素イオンは水電解セルの電解質内を移動して対向する還元極に到達すると外部回路を経由して移動した電子と結合して水素ガスを生成する。
【0013】
水電解装置10が生成した水素ガスは、配管P2を介して水素タンク12に供給される。また、水電解装置10が生成した酸素ガスは、配管P6を介して酸素タンク14に供給される。
【0014】
水素タンク12は、配管P4を介して可動弁V2に接続され、外部に水素ガスを供給することも可能である。また、水素タンク12は、配管P5、可動弁V6、及び配管P12を介して燃料電池18に連通している。配管P12は、燃料電池18と備蓄タンク24aとの間に、可動弁V6、V8、V10、及び改質器24bを介して接続されている。
【0015】
酸素タンク14は、配管P8、可動弁V4及び配管P11を介して燃料電池18に連通している。
【0016】
蓄電池16は、再生可能エネルギーによる発電電力、及び燃料電池18による発電電力の少なくとも一方を用いて、蓄電する。また、この蓄電池14は、連繋する電力系統から充放電を行うことが可能である。
【0017】
燃料電池18は、配管P12を介して供給される水素含有ガス、及び配管P11を介して供給される酸素含有ガスを用いて発電し、連繋する電力系統に放電可能である。この燃料電池18は、水電解装置10、及び蓄電池16に発電電力を供給可能である。
【0018】
燃料電池18は、例えば固体高分子電解質型燃料電池である。固体高分子電解質型燃料電池の場合には、燃料電池18は、燃料極と酸化剤極が固体高分子電解質膜を挟み一体化した燃料電池単セルがセパレータを介して互いに複数積層された燃料電池スタックを有する。燃料電池単セルは、燃料極と、酸化剤極とを、有する。そして、燃料電池セルは、化学式1で示す反応により発電する。すなわち、水素含有ガスは、燃料極側のガス流路を流れ、燃料極反応をおこす。また、酸素含有ガスは、酸化剤極側のガス流路を流れ、酸化剤極反応をおこす。
【化1】
【0019】
また、燃料電池18を構成する燃料極触媒層には、耐一酸化炭素被毒性、耐硫黄被毒性、あるいは耐窒素被毒性を有する貴金属触媒の少なくとも一つが含まれる。これらの耐一酸化炭素被毒性、耐硫黄被毒性、あるいは耐窒素被毒性の貴金属含有触媒として、例えば白金とルテニウムを含む合金触媒粒子をカーボン粒子等の担体に担持させた燃料電池用途の電極触媒を使用可能である。また、電極触媒はこれらに限定されず、例えばNi,Co,Cr,Cu,Mn等を含んでもよい。これらの耐一酸化炭素被毒性や耐硫黄被毒性、あるいは耐窒素被毒性を有する燃料極触媒層の構成により、燃料電池18に供給される改質ガスに触媒活性性能を低下させる一酸化炭素ガスや硫黄含有ガス、あるいはアンモニア由来の窒素含有ガスが含まれる様な場合であっても電池反応を安定させた性能を維持可能となる。
【0020】
さらにまた、燃料電池18の冷却用に用いられた冷却水は、温度上昇し、温水として排出される。この温水は、配管P16を介して貯湯ユニット22に貯水される。空気ブロアー20は、空気を配管P10及び可動弁V4を介して燃料電池18に供給可能である。貯湯ユニット22は、燃料電池18から供給される温水を貯湯するとともに、外部に供給可能である。
【0021】
ここで、燃料ガス導入部24の詳細を説明する。備蓄タンク24aには、配管P22を介して供給された原料ガスが備蓄される。この原料ガスは、例えば天然ガス、液化石油ガス、プロパンガス、メタンガス、バイオガス、メタノールの少なくとも一つである。なお、備蓄タンク24aを設けずに、配管P22を可動弁V12に接続しもよい。
【0022】
可動弁V12には、配管P20を介して都市ガス、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)などが供給される。すなわち、この可動弁V12は、制御装置28の制御に従い、備蓄タンク24aから供給されるガスと、配管P20を介して供給されるガスの混成量を調整可能である。
【0023】
改質器24bは、配管P12及び可動弁V12を介して供給されるガスを改質する。すなわち、この改質器24bは、天然ガス、液化石油ガス、プロパンガス、メタンガス、バイオガス、メタノール、都市ガス、液化天然ガスに対応する化学反応により、水素含有ガスを生成する。改質器24bは、可動弁V10、V8,V6、及び配管P12を介して燃料電池18に改質ガスを供給する。また、可動弁V8には、配管P18を介して、副生水素が供給される。
【0024】
センサ24cは、配管P12を流れる原料ガスの組成を検出する。このセンサ24cは、原料ガスの組成情報を含む信号を制御装置28に出力する。同様に、センサ24dは、配管P12を流れる改質ガスの組成を検出する。このセンサ24dは、改質ガスの組成情報を含む信号を制御装置28に出力する。
【0025】
ここで、図2に基づき、制御装置28の詳細を説明する。
図2は、制御装置28の構成例を示すブロック図である。制御装置28は、は、CPU(Central Processing Unit)等の演算部とRAM(Random Access Memory)等の記憶部(図示せず)とを有し、記憶部に格納されているシステムプログラムや制御プログラムなどを読み出して記憶部に展開し、当該プログラムに従って各機器の動作を制御する。すなわち、この制御装置28は、送受信部280と、発電制御部282と、混合制御部284と、弁制御部286と、を有する。
【0026】
送受信部280は、燃料電池発電システム1内の各機器との間で信号の送受信を行う。なお、本実施形態に係る送受信部280が取得部に対応する。
【0027】
発電制御部282は、燃料電池発電システム1に対する需要電力に応じて、水電解装置10と、蓄電池16と、燃料電池18と、を制御する。なお、発電制御部282の制御例の詳細を図3、及び図4を用いて後述する。
【0028】
混合制御部284は、改質ガス、及び水素ガスの少なくとも一方の状態に応じて、燃料ガス導入部24を制御し、改質ガス、及び水素ガスの少なくとも一方の供給量を調整する。より詳細には、この混合制御部284は、改質ガスの組成に基づき、水素ガスの供給量を燃料ガス導入部24に対して制御する。混合制御部284の制御例の詳細を、図5を用いて後述する。
弁制御部286は、発電制御部282及び混合制御部284の制御情報に基づき、可動弁V2~V12を制御する。
【0029】
図3は、燃料電池発電システム1に対する電力需要と、水電解装置10、蓄電池16、及び燃料電池18の発電の状態との関係を模式的に示す図である。横軸は時間を示し、縦軸は、太陽光発電(PV)や風力発電等の再生可能エネルギーによる供給電力に加えて、燃料電池発電システム1の供給電力を含めた電力系統の電力量を示す。電力需要曲線L10は、燃料電池発電システム1に対する電力需要を示す。領域A10は、燃料電池発電システム1と並行して再生可能エネルギーにより電力系統に供給される電力量を示し、領域A12は、蓄電池16の発電電力量を示し、領域A14及びA16は、燃料電池18の発電の発電電力量を示す。領域A14は、水素タンク12から供給された水素ガス、副生水素ガスの少なくとも一方による発電量を示す。また、領域A16は、改質ガスによる発電電力を示す。一方で、領域B10は、燃料電池発電システム1を含む電力系統内における余剰電力を示す。この余剰電力により、水電解装置10が水素ガスを生成している例を示している。
【0030】
図3に示すように、燃料電池発電システム1の制御装置28では、需要電力に応じて段階的に水電解装置10、蓄電池16、及び燃料電池18を制御する。より詳細には、例えば領域A10に示す再生可能エネルギーにより発電された電力量と領域A12に示す蓄電池16の発電電力量とが余剰する場合に、余剰電力により水電解装置10が水素ガスを生成する。時間経過に従い、電力需要が増加し、余剰電力が不足する時点で、水電解装置10による水電解を停止し、領域A14における燃料電池18の発電を開始する。更に、時間の経過とともに、需要電力が増加し、領域A10に示す再生可能エネルギーにより発電された電力量と、領域A12に示す蓄電池16の発電電力量と、領域A14における燃料電池18の発電電力量とでは電力量が不足する場合に、燃料電池18は、領域A16に示す改質ガスも用いた発電により電力量を補完する。
【0031】
燃料電池18の発電電力量の不足には、例えば水素タンク12の貯蔵水素量が下限値に達し、水素ガスが不足する場合も含まれる。この場合、燃料電池18は、水素タンク12の貯蔵水素量が下限値に達すると、領域A16に示す改質ガスのみでも発電可能であり、需要電力に対する電力量が不足しないように運用可能である。このように、燃料電池18は、水素ガスの供給量に応じて領域A16に示す改質ガスによる発電も可能である。
【0032】
これらの説明から分かるように、本実施形態に係る燃料電池発電システム1では、需要電力に応じて段階的に水電解装置10、蓄電池16、及び燃料電池18を制御することにより、安定した電力供給がより効率的に行える。このように、発電制御部282は、燃料電池発電システム1に対する需要電力に応じて、段階的に水電解装置10と、蓄電池16と、燃料電池18と、を制御する。
【0033】
図4は、発電制御部282の制御動作の一例を示すフローチャートである。
まず、発電制御部282は、燃料電池発電システム1に供給される再生可能エネルギーにより発電された電力(A)が需要電力(B)よりも大きいか否かを判定する(ステップS100)。電力(A)が需要電力(B)以下である場合(ステップS100のN)、発電制御部282は、蓄電池16の蓄電残量が蓄電池下限値よりも大きいか否かを判定する(ステップS102)。蓄電池16の残量が蓄電池下限値以上である場合(ステップS102のN)、発電制御部282は、蓄電池16に放電をさせる制御を行い(ステップS104)、処理を終了する。
【0034】
一方で、蓄電池16の残量が蓄電池下限値より小さい場合(ステップS102のY)、発電制御部282は、燃料電池18の水素残量が水素残量下限値よりも大きいか否かを判定する(ステップS106)。水素残量が水素残量下限値以上である場合(ステップS106のN)、発電制御部282は、燃料電池18に発電をさせる制御を行う(ステップS108)、処理を終了する。
【0035】
一方で、水素残量が水素残量下限値より小さい場合(ステップS106のY)、発電制御部282は、燃料電池18に改質ガスを用いた発電をさせる制御を行う(ステップS110)。この場合、弁制御部286は、発電制御部282及び混合制御部284の制御情報に基づき、可動弁V6~12を解放させ、改質ガスを燃料電池18に供給する制御を行い(ステップS110)、処理を終了する。
【0036】
一方で、電力(A)が需要電力(B)より大きい場合(ステップS100のY)、発電制御部282は、蓄電池16の蓄電残量が蓄電池上限値よりも小さいか否かを判定する(ステップS112)。蓄電池16の残量が蓄電池上限値よりも小さい場合(ステップS112のY)、発電制御部282は、電力(A)と需要電力(B)と差分電力を蓄電池16に充電させる制御を行う。
【0037】
次に、発電制御部282は、蓄電池16の蓄電残量が蓄電池下限値よりも小さいか否かを判定する(ステップS116)。蓄電池16の蓄電残量が蓄電池下限値よりも小さい場合(ステップS116のY)、発電制御部282は、燃料電池18の発電電力を用いて、蓄電池16の充電を行い、処理を終了する。
【0038】
一方で、蓄電池16の蓄電残量が蓄電池下限値以上である場合(ステップS116のN)、処理を終了する。
【0039】
一方で、蓄電池16の残量が蓄電池上限値以上である場合(ステップS112のN)、発電制御部282は、燃料電池18の水素残量が最大水素貯蔵量よりも小さいか否かを判定する(ステップS120)。水素残量が最大水素貯蔵量よりも小さい場合(ステップS120のY)、発電制御部282は、水電解装置10に水素ガスを生成させる制御を行い(ステップS122)、処理を終了する。
【0040】
一方で、燃料電池18の水素残量が最大水素貯蔵量以上である場合(ステップS120のN)、発電制御部282は、処理を終了する。このように、発電制御部282は、需要電力と、蓄電池16、及び燃料電池18との状態に応じて各装置の制御を行う。
【0041】
図5は、混合制御部284の制御動作の一例を示すフローチャートである。ここでは、可動弁V6~12を解放させ、改質ガスを燃料電池18に供給する場合の制御例を説明する。
【0042】
まず、混合制御部284は、センサ24cから供給される原料ガスの組成の情報を取得する(ステップS200)。続けて、混合制御部284は、原料ガスの組成に応じて、都市ガス又は液化天然ガスの混成割合を決定する(ステップS202)。混合制御部284は、例えば改質後の水素含有ガス量が所定量に達するように、都市ガス又は液化天然ガスの混成割合を決定する
【0043】
次に、混合制御部284は、センサ24dから供給される改質ガスの組成情報を取得する(ステップS204)。続けて、混合制御部284は、改質ガスの組成に応じて、副生水素ガスの混成割合を決定する(ステップS206)。混合制御部284は、例えば混成後の水素含有ガス量が所定量に達するように、副生水素ガスの混成割合を決定する。このように、水素ガスのみでの発電電力量が不足する場合には、改質ガスを加えることにより、燃料電池18の発電量を増加させることが可能となる。この場合、改質ガスの組成に応じて、副生水素ガスの混成割合を決定するので、改質ガスの水素含有量が少なくとも、所定量の水素含有ガスを燃料電池18に供給可能となる。さらに、原料ガスの組成に応じて、都市ガス又は液化天然ガスの混成割合を決定するので、原料ガスの水素ガス原量が少なくとも、所定量の水素ガスの原料となるガスを改質器24bに供給可能となる。
【0044】
このように、燃料電池発電システム1による水素ガス貯蔵が無い場合や、また水電解装置10を稼働させ水素ガスを貯蔵中の場合であっても、改質ガスまたは副生水素を燃料ガスとして燃料電池18に供給できる。このため、燃料電池18の発電を定常的に行うことが可能となり、安定した電力供給を行える。例えば、図3に示す様に再エネ電力や蓄電池の放電、および水素ガス発電で供給する電力量が、需要量に対して不足する(図3の需要曲線の領域A16)場合においても、天候等に影響されずに、燃料電池18の発電を安定して行うことが可能となる。これにより、燃料電池発電システム1の稼働率の低下が抑制される。
【0045】
また、天候等により変動の大きい自然由来の再生可能エネルギーによる余剰電力を用いて水電解装置10により水素ガスに変換して蓄積している状態と並行して、燃料電池18は生成した改質ガスや副生水素ガスにより所定の電力出力を保持して発電することが可能となる。このため、燃料電池18の稼働率が向上する。さらにオフグリッド地域などで系統電力がない場所で電力が不足した場合に、水電解装置10、蓄電池16、及び改質ガス等での備蓄タンク24aからの燃料供給による燃料電池18との併用システムにより、貯蔵水素ガスの不足分を補完する多様な原料ガス種が選択可能となる。これにより、生成した改質ガスを用いた燃料電池18の発電を安定して行うことが可能となる。このため、燃料電池発電システム1の稼働率の低下が抑制される。なお、本実施形態では、電力系統から隔離された地域をオフグリッドと称する。
【0046】
さらに、生成した改質ガスを用いた燃料電池18の発電を安定して行うことができるので、オフグリッド地域で水電解装置10と蓄電池16との電力容量の適正化が可能となる。これにより、より高いエネルギー利用効率で自立機能を達成するシステムを構築でき、コスト低減が可能となる。また、緊急時にも、貯蔵水素以外の燃料ガスを外部の供給手段、例えば備蓄タンク24aや移動式補給タンク(不図示)により供給することで給電が可能となる。
【0047】
以上のように、本実施形態に係る燃料電池発電システム1は、制御装置28が、改質ガス、及び水素ガスの少なくとも一方の状態に応じて、改質ガス、及び水素ガスの少なくとも一方の燃料電池18への供給量を制御することとした。これにより、水素ガスの供給量が不足する場合には、改質ガスの供給量を増加させることにより燃料電池18の発電量を増加できる。また、改質ガス
の水素ガス含有量が少ない場合には、副生水素ガスの供給量を増加することで、燃料電池18の発電量を増加できる。このように、燃料電池18の発電を安定して行うことが可能となり、燃料電池発電システム1の稼働率の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0048】
1:燃料電池発電システム、12:水素タンク、14:酸素タンク、18:燃料電池、24:燃料ガス導入部、24b:改質器、28:制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5