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特許7557301開回路電圧検出装置、バッテリシステム、及び開回路電圧検出方法
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  • 特許-開回路電圧検出装置、バッテリシステム、及び開回路電圧検出方法 図1
  • 特許-開回路電圧検出装置、バッテリシステム、及び開回路電圧検出方法 図2
  • 特許-開回路電圧検出装置、バッテリシステム、及び開回路電圧検出方法 図3
  • 特許-開回路電圧検出装置、バッテリシステム、及び開回路電圧検出方法 図4
  • 特許-開回路電圧検出装置、バッテリシステム、及び開回路電圧検出方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】開回路電圧検出装置、バッテリシステム、及び開回路電圧検出方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240919BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20240919BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240919BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240919BHJP
   B60L 3/00 20190101ALN20240919BHJP
   B60L 50/60 20190101ALN20240919BHJP
   B60L 58/12 20190101ALN20240919BHJP
【FI】
H01M10/48 P
G01R19/00 B
H02J7/00 X
H02J7/02 X
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/12
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020128959
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022025842
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105572427(CN,A)
【文献】特開2009-073266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-3/12
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
G01R19/00-19/32
G01R31/36-31/396
H01M10/42-10/48
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの無負荷状態における端子電圧である開回路電圧を検出する制御手段を備えた開回路電圧検出装置であって、
前記制御手段は、前記バッテリに対して電流がゼロに収束する予め定められた正弦波により充放電を繰り返し実行した後に、端子電圧を開回路電圧として検出する
ことを特徴とする開回路電圧検出装置。
【請求項2】
バッテリと、
請求項1に記載の開回路電圧検出装置と、
を備えることを特徴とするバッテリシステム。
【請求項3】
バッテリの無負荷状態における端子電圧である開回路電圧を検出する制御工程を備えた開回路電圧検出方法であって、
前記制御工程では、前記バッテリに対して電流がゼロに収束する予め定められた正弦波により充放電を繰り返し実行した後に、端子電圧を開回路電圧として検出する
ことを特徴とする開回路電圧検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開回路電圧検出装置、バッテリシステム、及び開回路電圧検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリが無負荷状態であるときの開回路電圧を用いて、バッテリの充電率を求めることが行われている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-126258号公報
【文献】特開2012-149947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、バッテリの無負荷状態において開回路電圧を検出しようとしても、検出直前の充放電状態に応じて過電圧の変化が測定値に加わるため、早期に真の開回路電圧を検出することが困難であった。すなわち、充電時に高くなった端子電圧が充電停止後にゆっくりと真の開回路電圧に近づくと共に、放電時に低くなった端子電圧が放電停止後にゆっくりと真の開回路電圧に近づくことから、早期に正確な開回路電圧を検出することが困難であった。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、より早期により正確な開回路電圧を検出することができる開回路電圧検出装置、バッテリシステム、及び開回路電圧検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る開回路電圧検出装置は、バッテリの無負荷状態における端子電圧である開回路電圧を検出する制御手段を備えた開回路電圧検出装置であって、前記制御手段は、前記バッテリに対して電流がゼロに収束する予め定められた正弦波により充放電を繰り返し実行した後に、端子電圧を開回路電圧として検出する。
【0007】
本発明に係るバッテリシステムは、バッテリと、上記に記載の開回路電圧検出装置と、を備える。
【0008】
本発明に係る開回路電圧検出方法は、バッテリの無負荷状態における端子電圧である開回路電圧を検出する制御工程を備えた開回路電圧検出方法であって、前記制御工程では、前記バッテリに対して電流がゼロに収束する予め定められた正弦波により充放電を繰り返し実行した後に、端子電圧を開回路電圧として検出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より早期により正確な開回路電圧を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る開回路電圧検出装置を含むバッテリシステムを示す構成図である。
図2】過電圧の様子を示すグラフである。
図3図1に示したMCUによる充放電電流の制御の様子を示す図である。
図4図1に示したMCUによる充放電電流の制御の他の例を示す図である。
図5】本実施形態に係る開回路電圧検出方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0012】
図1は、本実施形態に係る開回路電圧検出装置を含むバッテリシステムを示す構成図である。図1に示すバッテリシステム1は、例えば電気自動車等に搭載されるものであって、より早期に正確性が高い開回路電圧を検出するためのものである。このようなバッテリシステム1は、電池(バッテリ)10と、開回路電圧検出装置Dとを備えている。開回路電圧検出装置Dは、電流センサ20と、電圧センサ30と、MCU(制御手段)40と、充放電部50と、D/A変換器60と、A/D変換器71,72とを備えている。
【0013】
電池10は、充放電可能な二次電池であって、例えばリチウムイオン電池が採用されている。このようなリチウムイオン電池は、負極側から、例えば負極集電体、負極活物質、セパレータ、正極活物質、及び正極集電体の順に構成され、負極活物質と正極活物質との間には電解液が浸透している。リチウムイオン電池は、放電時において負極側でリチウムがイオン化し、リチウムイオンが電解液を通じて負極活物質から正極活物質へ移動すると共に、リチウムのイオン化により電子が放出されて放電電流が流れる。また、リチウムイオン電池は、充電時において上記と逆の反応を起こす。すなわち、充電電流によって負極側に電子が供給され、リチウムイオンが電解液を通じて正極活物質から負極活物質へ移動し、負極側でリチウムイオンが電子を受け取る還元反応を起こす。
【0014】
電流センサ20は、上記したような充電電流及び放電電流を検出するものである。電流センサ20は、検出した充電電流や放電電流に応じたアナログ信号を第1A/D変換器71に出力する。第1A/D変換器71は入力信号をデジタル化してMCU40に送信する。
【0015】
電圧センサ30は、電池10の電圧を検出するものである。電圧センサ30は、検出した電圧に応じたアナログ信号を第2A/D変換器72に出力する。第2A/D変換器72は入力信号をデジタル化してMCU40に送信する。
【0016】
MCU40は、バッテリシステム1の全体を制御するものである。このMCU40は、D/A変換器60を通じて充放電部50に接続されている。充放電部50は例えばモータ等の負荷、及び回生電流を出力可能なインバータ等又は他のDC電源等を有して構成され、充放電が可能とされた部位である。このような充放電部50はMCU40からの指示によって、電池10から放電電流を受け入れたり電池10に対して充電電流(回生電流)を供給したりする。
【0017】
さらに、本実施形態においてMCU40は、電池10の無負荷状態における端子電圧である開回路電圧を検出する。無負荷状態は、電流センサ20からの信号に基づいて判断される。また、端子電圧は電圧センサ30からの信号に基づいて検出される。
【0018】
ここで、充電中のリチウムイオン電池は、1)正極活物質内で電子を放出してイオン化し、2)電解液中を移動し、3)負極活物質内で電子を受け取りリチウム金属に戻る。このため、充電状態から無負荷状態になると、1)正極活物質内の電位勾配やリチウム放出偏在、2)電解液中のリチウムイオンの移動に伴う慣性、3)負極活物質内の電位勾配やリチウム収容偏在等が安定状態となるまでの過渡期間において電池の端子電圧が変化し続ける(上記した過電圧)。放電時も同様である。このような過電圧は電池10を長時間放置することで影響が略ゼロとなる。
【0019】
図2は、過電圧の様子を示すグラフである。図2に示すように、真の開回路電圧OCVが特定の値であるときに、例えば時刻T1において充電電流I1で電池10が充電されると、電池10の端子電圧は真の開回路電圧OCVよりも高い電圧V1となってしまう。その後、充電が終了して充電電流I0(充電電流ゼロ)となり、或る程度経過した時刻Taになったとしても、過電圧の影響は略ゼロとなっておらず、例えば端子電圧は電圧Vaとなり、電圧V1よりも低いものの真の開回路電圧OCVよりも高い電圧となってしまう。
【0020】
その後、充電電流I0が継続して時刻T2(充電電流がI0となってから例えば8時間程度経過した時刻)になると、過電圧の影響は略ゼロとなり、端子電圧は真の開回路電圧OCVと略同じとなる。このため、充電が停止してから或る程度長い時間が経過するまでは端子電圧を検出しても真の開回路電圧OCVを検出することができず、早期に正確な開回路電圧を検出することが困難であった。
【0021】
そこで、本実施形態に係るMCU40は、信号待ち等の無負荷状態になると、電池10に対してゼロに収束させながら充放電を繰り返し実行した後に、端子電圧を開回路電圧として検出する。これにより、充電方向に発生した過電圧を放電方向に発生した過電圧でキャンセルする操作を繰り返すこととなり、長時間待つことなく過電圧の影響を略ゼロに近づけることができる。
【0022】
図3は、図1に示したMCU40による充放電電流の制御の様子を示す図である。図3に示すように、MCU40は、まず充放電部50を制御して、1C充電を実行した後に1C放電を実行させる。次いで、MCU40は、0.7C充電、0.7C放電、0.4C充電、0.4C放電、0.2C充電、及び0.2C放電を実行させ、これらの実行後に電圧センサ30によって検出される端子電圧を開回路電圧として検出する。なお、これらの充放電は例えば数秒で実行可能であり、数秒程度の充放電により端子電圧を真の開回路電圧OCVに近づけることができる。
【0023】
図4は、図1に示したMCU40による充放電電流の制御の他の例を示す図である。図4に示すように、MCU40は、図3に示したような矩形波に限らず、ゼロに収束していく正弦波により充放電を繰り返し実行することが好ましい。すなわちMCU40は、例えば1C充電、0.85C放電、0.7C充電、0.55C放電、0.4C充電、0.3C放電、0.2C充電、及び0.1C放電のように、振幅が次第に小さくなるような正弦波により充放電を繰り返して、より適切に過電圧の影響を抑えるようにしている。
【0024】
なお、電池10の種類によって充放電に対する過電圧発生の感度が異なるため、過電圧の影響を抑えるための印加電流(充放電電流)や印加期間は可変とされる(適宜に設定される)ことが好ましい。
【0025】
図5は、本実施形態に係る開回路電圧検出方法を示すフローチャートである。なお、図5に示すフローチャートは、例えば開回路電圧検出装置Dが電気自動車に搭載される場合、車両イグニッションスイッチがオフされるまで、繰り返し実行される。
【0026】
まず、図5に示すように、MCU40は、電流センサ20からの信号に基づいて電池10が無負荷状態であるかを判断する(S1)。電池10が無負荷状態でない場合(S1:NO)、無負荷状態であると判断するまで、この処理が繰り返される。
【0027】
一方、電池10が無負荷状態である場合(S1:YES)、MCU40は、図3及び図4に示すようにして、ゼロに収束させながら充放電を繰り返し実行する(S2)。次いで、MCU40は、電圧センサ30からの信号に基づいて、開回路電圧を検出する(S3)。その後、図5に示す処理は終了する。
【0028】
このようにして、本実施形態に係る開回路電圧検出装置D、バッテリシステム1及び開回路電圧検出方法によれば、電池10に対してゼロに収束させながら充放電を繰り返し実行した後に、端子電圧を開回路電圧として検出するため、例えば走行中の信号待ちや滑空状態での無負荷を検出した場合に、充放電を繰り返して過電圧の影響を抑え、端子電圧を真の開回路電圧OCVに近づけてから、端子電圧を検出することができる。これにより、過電圧の影響が収まるまで長期間待つことなく、より早期により正確な開回路電圧を検出することができる。
【0029】
また、ゼロに収束する正弦波により充放電を繰り返し実行することでキャンセル状態とするため、収束正弦波という、より過電圧の影響を抑えるのに適した充放電を行うこととなり、より正確な開回路電圧を検出することができる。
【0030】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、周知及び公知の技術を組み合わせてもよい。
【0031】
例えば本実施形態においては、図3及び図4に示すように、ゼロに収束する充放電を行っているが、図3及び図4に示す例に限らず、例えば充放電の順序を逆にして放電を先に行ってもよいし、図3に示す1つの矩形波内で電流値を変更させてもよい。
【0032】
さらに、本実施形態に係るMCU40は、電池10が無負荷状態となったときに、充放電電流の過去の履歴に基づいて充放電電流が互いにキャンセル状態となっていると判断した場合に、ゼロに収束する充放電を繰り返し実行することなく端子電圧を開回路電圧として検出してもよい。これにより、ゼロに収束する充放電を不要とできるからである。なお、キャンセル状態であるか否かについては、例えば、過去の充放電電流に対して、過去に遡るほど小さくなる重み付けを行い、充放電の差分が所定値以内となるか否かに基づいて判断するとよい。
【符号の説明】
【0033】
1 :バッテリシステム
10 :電池(バッテリ)
40 :MCU(制御手段)
D :開回路電圧検出装置
図1
図2
図3
図4
図5