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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】加熱装置及び画像処理装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020138572
(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公開番号】P2022034734
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 秀治
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-101364(JP,A)
【文献】特開2016-206477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のベルトと、
前記ベルトの内側に設けられ、前記ベルトの内周面に接する発熱部材と、
前記ベルトの内側に設けられ、前記発熱部材に接続される遮蔽部材と、
前記発熱部材と接触して支持する支持部材と、を備え、
前記発熱部材は、前記ベルトの内周面に沿う円弧状に形成され前記ベルトの内周面に接する湾曲部と、前記湾曲部の周方向の端部から折り曲げられ前記支持部材に直に支持される折り曲げ部と、を備え、
前記折り曲げ部は、前記支持部材を差し込み可能に開口する貫通孔を有し、
前記発熱部材は、磁性材料により形成され、
前記遮蔽部材は、非磁性材料により形成され、
前記支持部材は、前記遮蔽部材を支持しない
加熱装置。
【請求項2】
前記湾曲部の円弧中心は、前記折り曲げ部の表面を含む同一平面上に配置される
請求項に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記湾曲部の周方向の端部は、前記折り曲げ部の表面を含む同一平面上に配置される
請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の加熱装置を備える
画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、加熱装置及び画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置は、ベルトの熱によりトナー(記録剤)をシートに定着させる加熱装置を備える。加熱装置は、ベルトを電磁誘導加熱方式により加熱する。加熱装置は、ベルトの発熱量の不足を補うため、ベルトの内周面に接する発熱部材を備える。発熱部材は、電磁誘導加熱時の磁束を集中させ、ベルトの発熱量を増加させる。加熱装置は、電磁誘導加熱時の磁束を遮蔽するため、発熱部材に接続される遮蔽部材を備える。加熱装置は、遮蔽部材を支持する支持部材を備える。支持部材が遮蔽部材を介して発熱部材を支持する場合、支持位置を基準とした発熱部材の寸法は遮蔽部材及び発熱部材の2部材にまたがった公差を含む。2部材にまたがった公差を含むと、発熱部材の寸法精度を向上することができない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-224230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、発熱部材の寸法精度を向上することができる加熱装置及び画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の加熱装置は、ベルトと、発熱部材と、遮蔽部材と、支持部材と、を持つ。ベルトは、筒状を有する。発熱部材は、前記ベルトの内側に設けられる。発熱部材は、前記ベルトの内周面に接する。遮蔽部材は、前記ベルトの内側に設けられる。遮蔽部材は、前記発熱部材に接続される。支持部材は、前記発熱部材と接触して支持する。発熱部材は、湾曲部と、折り曲げ部と、を備える。湾曲部は、前記ベルトの内周面に沿う円弧状に形成される。湾曲部は、前記ベルトの内周面に接する。折り曲げ部は、前記湾曲部の周方向の端部から折り曲げられる。折り曲げ部は、前記支持部材に直に支持される。折り曲げ部は、前記支持部材を差し込み可能に開口する貫通孔を有する。前記発熱部材は、磁性材料により形成される。前記遮蔽部材は、非磁性材料により形成される。前記支持部材は、前記遮蔽部材を支持しない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の画像処理装置の模式図。
図2】第1実施形態の加熱装置の模式図。
図3】第1実施形態の支持部材の周辺斜視図。
図4】第1実施形態の発熱部材の模式図。
図5】第1実施形態の支持部材の説明図。
図6】第2実施形態の支持先端の斜視図。
図7】第3実施形態の支持部材の周辺斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の加熱装置及び画像処理装置を、図面を参照して説明する。
まず、図1から図5を参照して、第1実施形態について説明する。
図1は、第1実施形態の画像処理装置1の模式図である。
例えば、画像処理装置1は複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)である。画像処理装置1は、用紙などのシート状の記録媒体(以下「シート」という。)上に形成された画像を読み取ってデジタルデータ(画像ファイル)を生成する。画像処理装置1は、デジタルデータに基づいて、トナーを用いてシート上に画像を形成する。
【0008】
画像処理装置1は、表示部2、画像読取部3、シート供給部4、画像形成部5、シート反転部6及び制御部7を備える。
表示部2は、出力インターフェースとして動作し、文字や画像の表示を行う。表示部2は、入力インターフェースとしても動作し、ユーザから指示を受け付ける。例えば、表示部2は、タッチパネル式の液晶ディスプレイである。
【0009】
例えば、画像読取部3は、カラースキャナである。カラースキャナには、CIS(Contact Image Sensor)やCCD(Charge Coupled Devices)等がある。画像読取部3は、センサを用いて、シート上に形成されている画像を読み取り、デジタルデータを生成する。
【0010】
シート供給部4は、画像出力に用いられるシートを画像形成部5に対して供給する。シート供給部4は、給紙カセット10と、ピックアップローラ11と、を備える。給紙カセット10は、シートPを収納する。ピックアップローラ11は、給紙カセット10からシートPを取り出す。
【0011】
画像形成部5は、トナーを用いてシート上に画像を形成する。画像形成部5は、画像読取部3によって読み取られた画像データ又は外部機器から受信した画像データに基づいて画像を形成する。例えば、シート上に形成される画像は、ハードコピー、プリントアウト等と称される出力画像である。
【0012】
画像形成部5は、中間転写体20、作像部21、一次転写ローラ22、二次転写部23及び加熱装置24を備える。
【0013】
画像形成部5における転写には、第1転写工程及び第2転写工程がある。第1転写工程では、一次転写ローラ22は、各作像部21の感光体ドラム上のトナーによる画像(トナー像)を中間転写体20に転写する。第2転写工程では、二次転写部23は、中間転写体20上に積層された各色のトナーによって画像をシートに転写する。
【0014】
中間転写体20は、無端状のベルトである。中間転写体20は、図1の矢印A方向に回転している。中間転写体20の表面にはトナーの画像が形成される。
作像部21は、各色(例えば5色)のトナーを用いて画像を形成する。作像部21は、中間転写体20に沿って複数設置されている。
【0015】
一次転写ローラ22は、作像部21が形成したトナー像を中間転写体20に転写する。
二次転写部23は、二次転写ローラ25及び二次転写対向ローラ26を備える。二次転写部23は、中間転写体20上に形成されたトナー像をシートに転写する。
【0016】
加熱装置24は、シート上に転写されたトナー像を、加熱及び加圧によってシートに定着させる。加熱装置24によって画像が形成されたシートは、排紙部8から装置外部に排出される。
【0017】
シート反転部6は、加熱装置24の側方に配置される。シート反転部6は、シートの表裏を反転する。例えば、シートの表裏反転は、シートの表裏両面に対し画像を形成する場合に行われる。
制御部7は、画像処理装置1の各構成要素を制御する。
【0018】
次に、加熱装置24について説明する。
図2は、第1実施形態の加熱装置24の模式図である。図3は、第1実施形態の支持部材42,43の周辺斜視図である。図2においては、遮蔽部材及び支持部材等の図示を省略している。
図2に示すように、加熱装置24は、ベルト30、ベルト内部機構31、プレスローラ32及び誘導電流発生部33を備える。
【0019】
ベルト30は、筒状のエンドレスベルトである。例えば、ベルト30は、基層上に、発熱部である発熱層(導電層)及び離型層を順次積層して形成される。例えば、基層は、ポリイミド樹脂(PI)により形成される。例えば、発熱層は、銅(Cu)等の非磁性金属により形成される。例えば、離型層は、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂(PFA)等のフッ素樹脂により形成される。なお、ベルト30は、発熱層を備えていれば、層構造を限定されない。
【0020】
ベルト内部機構31は、ベルト30の内側に配置される。ベルト内部機構31は、発熱部材40、遮蔽部材41(図3参照)、支持部材42,43(図3参照)、フレーム44、ニップパッド45、サーモスタット46、ホルダ47、第1付勢部材48及び第2付勢部材49を備える。
【0021】
発熱部材40は、ベルト30の内周面に接する。発熱部材40は、ベルト30を挟んで誘導電流発生部33と対向する。発熱部材40は、磁性材料により形成される。例えば、発熱部材40は、発熱層よりも低いキュリー点の整磁合金により形成される。例えば、発熱部材40は、キュリー点が220℃~230℃である鉄、ニッケル合金等の整磁合金製の薄肉金属部材により形成される。例えば、発熱部材40の剛性は、遮蔽部材41の剛性よりも高い。
【0022】
なお、発熱部材40は、鉄、ニッケル及びステンレス等の磁性特性を備える薄肉金属部材により形成されてもよい。発熱部材40は、磁性特性を備えれば、磁性粉末を含む樹脂等で形成されてもよい。発熱部材40は、磁性材料(フェライト)により形成されてもよい。
【0023】
発熱部材40は、ベルト30の軸方向(以下「ベルト軸方向」という。)に長手を有する。発熱部材40は、ベルト30の内周面に沿って湾曲している。発熱部材40は、湾曲部50、第1折り曲げ部51及び第2折り曲げ部52を備える。湾曲部50、第1折り曲げ部51及び第2折り曲げ部52は、同一の部材で一体に形成される。
【0024】
湾曲部50は、ベルト30の内周面に沿う円弧状に形成される。湾曲部50は、ベルト30の内周面に接する。湾曲部50の曲率半径は、ベルト30の曲率半径よりも小さい。
湾曲部50の外周面には、窒化クロム及びダイヤモンドライクカーボン(DLC)等のメッキまたはコートが施されていてもよい。窒化クロム及びDLC等のメッキまたはコートを施すことによって、湾曲部50とベルト30との摺動性が向上する。
【0025】
第1折り曲げ部51は、湾曲部50の周方向の第1端部55から内側に折り曲げられている。第1折り曲げ部51は、ベルト軸方向に複数(例えば本実施形態では2つ)設けられる。第1折り曲げ部51は、支持部材42,43(図3参照)に直に支持される。第1折り曲げ部51は、円環状の環状部57を有する。環状部57は、ベルト軸方向に沿う揺動軸(不図示)に支持される。発熱部材40は、揺動軸を中心に揺動可能とされる。
【0026】
第2折り曲げ部52は、湾曲部50の周方向の第2端部56から内側に折り曲げられている。第2折り曲げ部52は、ベルト軸方向に複数(例えば本実施形態では2つ)設けられる。第2折り曲げ部52は、第1付勢部材48の第1端部に接続される。例えば、第1付勢部材48は、圧縮ばね等の弾性部材である。第1付勢部材48の第2端部は、ステイ59に接続される。ステイ59は、フレーム44に固定される。発熱部材40は、第1付勢部材48によってベルト30に対して押圧されている。
【0027】
図3に示すように、遮蔽部材41は、発熱部材40に接続される。例えば、遮蔽部材41は、アルミニウム及び銅等の非磁性材料により形成される。例えば、遮蔽部材41は、厚み0.4mm程度のアルミニウム材により形成される。遮蔽部材41は、誘導電流発生部33(図2参照)からの磁束を遮蔽する。遮蔽部材41は、ベルト30(図2参照)の内側に引き回される信号線(不図示)へのノイズを抑制する。
【0028】
遮蔽部材41は、ベルト軸方向に長手を有する。遮蔽部材41は、湾曲部50の内周面に沿う円弧状に形成される。遮蔽部材41は、遮蔽本体60及び接続爪61を備える。
遮蔽本体60は、湾曲部50の内周面に沿う円弧状に形成される。遮蔽本体60は、湾曲部50の内周面に接する。遮蔽本体60の曲率半径は、湾曲部50の曲率半径と略同じである。
【0029】
接続爪61は、遮蔽本体60の周方向の両端部から内側に折り曲げられている。接続爪61は、遮蔽本体60の長手方向(ベルト軸方向)に間隔をあけて複数(例えば本実施形態では2つ)設けられる。各接続爪61は、第1折り曲げ部51及び第2折り曲げ部52のそれぞれの接続孔54に取り付けられる。図3においては、第1折り曲げ部51に設けられた接続孔54の一つを示す。
【0030】
図2に示すように、ニップパッド45は、ベルト30をプレスローラ32に対して押圧する。ニップパッド45は、フレーム44に固定される。ニップパッド45は、ベルト30とプレスローラ32との間にニップ65を形成する。ニップパッド45は、ニップ65を形成するニップ形成面66を有する。ニップ形成面66は、ベルト軸方向から見てベルト30の内側に向けて湾曲する。ニップ形成面66は、ベルト軸方向から見てプレスローラ32の外周面に沿って湾曲する。
【0031】
例えば、ニップパッド45は、シリコンゴム及びフッ素ゴム等の弾性材料により形成される。ニップパッド45は、ポリイミド樹脂(PI)、ポリフェニレンサルファド樹脂(PPS)、ポリエーテルサルフォン樹脂(PES)、液晶ポリマ(LCP)及びフェノール樹脂(PF)等の耐熱性樹脂により形成されてもよい。
【0032】
例えば、ベルト30とニップパッド45との間には、シート状の摩擦軽減部材(不図示)が配置される。例えば、摩擦軽減部材は、摺動性が良く耐摩耗性に優れるシート部材及び離型層等で形成される。摩擦軽減部材は、ベルト内部機構31に固定的に支持される。摩擦軽減部材は、走行するベルト30の内周面に摺接する。摩擦軽減部材は、潤滑性のある以下のシート部材により形成されてもよい。例えば、前記シート部材は、フッ素樹脂を含浸させたガラス繊維シートからなるものでもよい。例えば、摩擦軽減部材は、シリコンオイル等の潤滑油を含んでいてもよい。
【0033】
サーモスタット46は、加熱装置24の安全装置として機能する。サーモスタット46は、発熱部材40の温度を検知する。サーモスタット46は、発熱部材40が異常発熱し、遮断閾値まで温度上昇したときに作動する。サーモスタット46の作動によって、誘導電流発生部33への電流が遮断される。誘導電流発生部33への電流が遮断されることによって、加熱装置24が異常発熱することを防止する。
【0034】
サーモスタット46は、第2付勢部材49の第1端部に接続される。例えば、第2付勢部材49は、圧縮ばね等の弾性部材である。第2付勢部材49の第2端部は、ホルダ47に接続される。ホルダ47は、フレーム44に固定される。サーモスタット46は、第2付勢部材49によって発熱部材40に対して押圧されている。サーモスタット46は、第2付勢部材49の押圧によって発熱部材40の揺動に追従する。発熱部材40の揺動に追従することによって、サーモスタット46は常に発熱部材40に接する。例えば、遮蔽部材41(図3参照)においてサーモスタット46に対向する部位は開口していてもよい。例えば、サーモスタット46は、遮蔽部材41の開口を通じて発熱部材40に直に接することに限らず、遮蔽部材41を介して発熱部材40に接してもよい。
【0035】
プレスローラ32は、不図示の加圧機構によりベルト30を加圧する。例えば、プレスローラ32は、芯金の周囲に耐熱性のシリコンスポンジ及びシリコンゴム層等を備える。例えば、プレスローラ32の表面には、離型層が配置される。離型層は、PFA樹脂等のフッ素系樹脂により形成される。
【0036】
ベルト30及びプレスローラ32は、モータ等の駆動部(不図示)によって駆動される。プレスローラ32は、モータ駆動により矢印Q方向に回転する。ベルト30及びプレスローラ32の当接時において、ベルト30は、プレスローラ32に従動して、矢印R方向に回転する。ベルト30及びプレスローラ32の離反時において、ベルト30は、モータ駆動により、矢印R方向に回転する。
【0037】
ベルト軸方向から見て、ベルト30の回転中心とプレスローラ32の回転中心とを通る仮想直線を第1直線Jとする。ベルト軸方向から見て、第1直線Jと直交しかつベルト30の回転中心を通る仮想直線を第2直線Kとする。ベルト軸方向から見て、発熱部材40は、第2直線Kよりも誘導電流発生部33側に配置される。
【0038】
誘導電流発生部33は、ベルト30の外部に配置される。誘導電流発生部33は、ベルト30と対向する。誘導電流発生部33は、ベルト30を介して発熱部材40と対向する。誘導電流発生部33は、不図示のコイルを備える。コイルには、不図示のインバータ駆動回路から高周波電流が印加される。コイルに高周波電流を流すことによって、コイルの周囲には高周波磁界が発生する。高周波磁界の磁束によって、ベルト30が加熱される。
【0039】
コイルが発生する磁束によって、発熱部材40とベルト30との間には磁束が発生する。発熱部材40とベルト30との間に発生した磁束によって、ベルト30が加熱される。発熱部材40は、キュリー点を超えると強磁性から常磁性に変化する。発熱部材40がキュリー点を超えると、発熱部材40と発熱層とを通る磁路を形成しなくなり、ベルト30の加熱をアシストしなくなる。発熱部材40を整磁合金で形成することによって、キュリー点を境に、低温時はベルト30の昇温を補助しつつ、高温時はベルト30の過度な昇温を抑制できる。
【0040】
次に、発熱部材40について説明する。
図4は、第1実施形態の発熱部材40の模式図である。図4においては、発熱部材40の第2折り曲げ部52の図示を省略する。図4に示すように、発熱部材40は、ベルト軸方向から見て円弧状の湾曲部50を有する。発熱部材40は、湾曲部50の周方向の第1端部55から径方向内側に折り曲げられる第1折り曲げ部51を有する。第1折り曲げ部51は、第1端部55から径方向内側に延びる直線状を有する。ベルト軸方向から見て、湾曲部50の円弧中心Cは、第1折り曲げ部51の表面を含む同一面上に配置される。ここで、第1折り曲げ部51の表面は、第1折り曲げ部51の外面のうち湾曲部50の外周面に連なり、湾曲部50の内周面と対向する面とは反対側の面を意味する。すなわち、第1折り曲げ部51の表面は、湾曲部50の内周面とは対向しない。
【0041】
湾曲部50の周方向の第2端部56(端部)は、第1折り曲げ部51の表面を含む同一面上に配置される。ここで、湾曲部50の周方向の第2端部56は、湾曲部50の周方向の端部55,56のうち第1折り曲げ部51が設けられた側(第1端部55側)とは反対側の端部を意味する。すなわち、湾曲部50の周方向の第2端部56は、第1折り曲げ部51を有しない。
【0042】
ベルト軸方向から見て、湾曲部50の円弧中心C、第1折り曲げ部51の表面及び湾曲部50の周方向の第2端部56を通る仮想直線を第3直線Lとする。図2に示すように、ベルト軸方向から見て、第3直線Lは、第2直線Kに対して平行に配置される。ベルト軸方向から見て、第3直線Lは、第2直線Kよりも誘導電流発生部33側に配置される。
【0043】
次に、支持部材42,43について説明する。
図3に示すように、支持部材42,43は、発熱部材40の第1折り曲げ部51を直に支持する。支持部材42,43は、遮蔽部材41を直に支持しない。支持部材42,43は、発熱部材40と接触する。支持部材42,43は、遮蔽部材41と接触しない。例えば、支持部材42,43は、厚み0.5mm程度のステンレス材(SUS)により形成されることが好ましい。支持部材42,43において発熱部材40と接触する部分は、バリ等がないように処理されていることが好ましい。
【0044】
支持部材42,43は、複数設けられる。支持部材42,43は、一つの第1折り曲げ部51につき2つ設けられる。第1折り曲げ部51は、支持部材42を差し込み可能に開口する貫通孔53を有する。貫通孔53は、発熱部材40の揺動方向Vに開口している。貫通孔53は、ベルト軸方向に長手を有する長方形状をなしている。複数の支持部材42,43は、第1支持部材42及び第2支持部材43を含む。
【0045】
第1支持部材42は、第1折り曲げ部51の貫通孔53に差し込まれる。第1支持部材42は、第1支持本体70及び第1支持先端71を備える。
【0046】
第1支持本体70は、第1ベルト軸方向から見て断面L字状を有する。第1支持本体70は、ボルト等の締結部材79によってフレーム44に固定される。
【0047】
第1支持先端71は、第1支持本体70のフレーム44とは反対側の部分から延びて第1折り曲げ部51の貫通孔53を突き出る。第1支持先端71は、第1折り曲げ部51の貫通孔53に差し込まれる。
【0048】
第2支持部材43は、第1支持部材42において第1折り曲げ部51の貫通孔53を突き出た部分(第1支持先端71の突出部)と対向する。第2支持部材43は、第2支持本体80及び第2支持先端81を備える。
【0049】
第2支持本体80は、第1ベルト軸方向から見て第1支持本体70よりも小さいL字状を有する。第2支持本体80は、締結部材79によって第1支持本体70と共にフレーム44に固定される。すなわち、第1支持本体70及び第2支持本体80は、共通の締結部材79によって固定される。
【0050】
第2支持先端81は、第2支持本体80のフレーム44とは反対側の部分から第1折り曲げ部51に向けて延びる。第2支持先端81は、第1折り曲げ部51において貫通孔53の隣の部分(ベルト軸方向の隣接部)に対向する。第2支持先端81は、第1折り曲げ部51の貫通孔53に差し込まれない。第2支持先端81は、ベルト軸方向において第1支持先端71よりも内側に配置される。
【0051】
図5は、第1実施形態の支持部材42,43の説明図である。図5は、第1支持部材42の第1支持先端71が第1折り曲げ部51の貫通孔53を突き出る部分をベルト軸方向に対して直交する面で切断した断面を含む図に相当する。
図5に示すように、第1支持先端71及び第2支持先端81は、互いに同一平面上に配置される。第1支持先端71及び第2支持先端81において厚み方向の両面は、それぞれ同一平面上に配置される。第1支持先端71及び第2支持先端81は、ベルト軸方向から見て互いに重なる。第1支持先端71及び第2支持先端81は、互いに同じ厚みを有する。
【0052】
例えば、揺動方向Vにおける第1支持本体70と第1折り曲げ部51との間隔は、発熱部材40の最大揺動量以上の大きさに設定される。例えば、第1支持先端71が第1支持本体70から延びる方向の長さは、発熱部材40の最大揺動量以上の大きさに設定される。例えば、揺動方向Vにおける第2支持本体80と第1折り曲げ部51との間隔は、発熱部材40の最大揺動量以上の大きさに設定される。例えば、揺動方向Vにおける第2支持先端81と第1折り曲げ部51との間隔は、発熱部材40の最大揺動量以上の大きさに設定される。
【0053】
以上に説明されたように、実施形態の加熱装置24は、ベルト30と、発熱部材40と、支持部材42,43と、を備える。ベルト30は、筒状を有する。発熱部材40は、ベルト30の内側に設けられる。発熱部材40は、ベルト30の内周面に接する。支持部材42,43は、発熱部材40と接触して支持する。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
支持部材42,43が発熱部材40を間接的に支持する場合に対して、支持位置を基準とした発熱部材40の寸法は複数部材にまたがった公差を含まない。すなわち、発熱部材40単体の公差を含めば足りる。したがって、発熱部材40の寸法精度を向上することができる。
【0054】
加熱装置24は、ベルト30の内側に設けられ、発熱部材40に接続される遮蔽部材41を更に備える。発熱部材40は、磁性材料により形成される。遮蔽部材41は、非磁性材料により形成される。支持部材42,43は、遮蔽部材41を支持しない。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
支持部材42,43が遮蔽部材41を介して発熱部材40を支持する場合に対して、支持位置を基準とした発熱部材40の寸法は遮蔽部材41及び発熱部材40の2部材にまたがった公差を含まない。すなわち、発熱部材40単体の公差を含めば足りる。したがって、発熱部材40の寸法精度を向上することができる。加えて、遮蔽部材41により、電磁誘導加熱時の磁束を遮蔽することができる。例えば、遮蔽部材41により、ベルト30の内側に引き回される信号線(不図示)へのノイズを抑制することができる。
【0055】
発熱部材40は、ベルト30の内周面に沿う円弧状に形成されベルト30の内周面に接する湾曲部50と、湾曲部50の周方向の第1端部55から折り曲げられ支持部材42,43に直に支持される第1折り曲げ部51と、を備える。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
湾曲部50の周方向の第1端部55からの折り曲げにより、第1折り曲げ部51は発熱部材40のなかで剛性が高い。支持部材42,43が高剛性の第1折り曲げ部51を直に支持することで、加熱装置24の組立時または保守時のハンドリングで第1折り曲げ部51を誤って変形させてしまうことを抑制することができる。
【0056】
湾曲部50の円弧中心Cは、第1折り曲げ部51の表面を含む同一平面上に配置されることで、以下の効果を奏する。
湾曲部50の円弧中心C及び第1折り曲げ部51の表面を位置決め基準とすることができるため、発熱部材40の寸法管理がしやすくなる。
【0057】
湾曲部50の周方向の第2端部56は、第1折り曲げ部51の表面を含む同一平面上に配置されることで、以下の効果を奏する。
湾曲部50の円弧中心C及び第1折り曲げ部51の表面に加えて湾曲部50の周方向の第2端部56を位置決め基準とすることができるため、発熱部材40の寸法管理がより一層しやすくなる。例えば、湾曲部50の円弧中心C、第1折り曲げ部51の表面及び湾曲部50の周方向の第2端部56を定盤に安定して配置することができるため、発熱部材40の寸法管理時に位置決め用の治具等が不要となる。
【0058】
第1折り曲げ部51は、第1支持部材42を差し込み可能に開口する貫通孔53を有することで、以下の効果を奏する。
第1折り曲げ部51の貫通孔53に第1支持部材42を差し込むことにより、第1折り曲げ部51を容易に直に支持することができる。
【0059】
発熱部材40は、揺動可能とされる。貫通孔53は、発熱部材40の揺動方向Vに開口している。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
支持部材42,43が発熱部材40の揺動を邪魔しないため、発熱部材40をスムーズに揺動させることができる。
【0060】
支持部材42,43は、複数設けられる。複数の支持部材42,43は、第1支持部材42及び第2支持部材43を含む。第1支持部材42は、第1折り曲げ部51の貫通孔53に差し込まれる。第2支持部材43は、第1支持部材42において第1折り曲げ部51の貫通孔53を突き出た部分と対向する。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
第2支持部材43により、発熱部材40の揺動による第1支持部材42の脱落を抑制することができる。
【0061】
第1支持先端71及び第2支持先端81は、互いに同一平面上に配置されることで、以下の効果を奏する。第1支持先端71及び第2支持先端81がそれぞれ発熱部材40の揺動を邪魔しないため、発熱部材40をスムーズに揺動させることができる。
【0062】
画像処理装置1は、前述された加熱装置24を備える。
加熱装置24は、発熱部材40の寸法精度を向上することができる。したがって、画像処理装置1は、画像品質を向上させることができる。
【0063】
次に、図6を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
第2支持先端は、ベルト軸方向において第1支持先端よりも内側にのみ配置されることに限らない。第2実施形態は、第2支持先端がベルト軸方向において第1支持先端の両側に配置される点で第1実施形態と異なる。
【0064】
図6は、第2実施形態の支持先端271,281の斜視図である。
図6に示すように、第1支持先端271は、ベルト軸方向の中央において突出する凸部272を有する。第2支持先端281は、ベルト軸方向において第1支持先端271の凸部272を両側から挟む凹形状を有する。第2支持先端281は、第1支持先端271の凸部272に対応する凹部282を有する。第1支持先端271の凸部272及び第2支持先端281は、ベルト軸方向から見て互いに重なる。図6において、符号Wは第1支持先端271の凸部272及び第2支持先端281の重なり部分を示す。
【0065】
第2実施形態によれば、第1支持先端271の凸部272及び第2支持先端281は、ベルト軸方向から見て互いに重なることで、以下の効果を奏する。
第1支持先端271及び第2支持先端281がそれぞれ発熱部材40の揺動を邪魔しないため、発熱部材40をスムーズに揺動させることができる。
【0066】
次に、図7を参照して第3実施形態について説明する。第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成については説明を省略する。
支持部材は、複数設けられることに限らない。第3実施形態は、支持部材が1つのみ設けられる点で第1実施形態と異なる。
【0067】
図7は、第3実施形態の支持部材342の周辺斜視図である。
図7に示すように、発熱部材40は、1つの支持部材342によって直に支持される。
【0068】
支持部材342は、発熱部材40の第1折り曲げ部51を差し込み可能に開口するスリット343を有する。スリット343は、ベルト軸方向において支持部材342の内側に開口する。スリット343は、ベルト軸方向に長手を有する。スリット343の幅は、第1折り曲げ部51の厚みよりも大きい。第1折り曲げ部51は、貫通孔53を有しない。
【0069】
第3実施形態によれば、支持部材342が1つのみ設けられることで、以下の効果を奏する。
支持部材が複数設けられる場合と比較して、部品点数を低減し、低コストを図ることができる。
【0070】
次に、実施形態の変形例について説明する。
実施形態の加熱装置は、発熱部材に接続される遮蔽部材を備える。これに対して、加熱装置は、遮蔽部材を有しなくてもよい。
【0071】
実施形態の発熱部材は、湾曲部、第1折り曲げ部及び第2折り曲げ部を備える。これに対して、発熱部材は、第2折り曲げ部を有しなくてもよい。例えば、発熱部材の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0072】
実施形態の湾曲部の円弧中心は、折り曲げ部の表面を含む同一平面上に配置される。これに対して、湾曲部の円弧中心は、折り曲げ部の表面とは異なる平面上に配置されてもよい。
【0073】
実施形態の湾曲部の周方向の端部は、折り曲げ部の表面を含む同一平面上に配置される。これに対して、湾曲部の周方向の端部は、折り曲げ部の表面とは異なる平面上に配置されてもよい。
【0074】
実施形態の折り曲げ部は、支持部材を差し込み可能に開口する貫通孔を有する。これに対して、折り曲げ部は、貫通孔を有しなくてもよい。
【0075】
実施形態の発熱部材は、揺動可能とされる。これに対して、発熱部材は、揺動不能とされてもよい。
【0076】
実施形態の画像処理装置は画像形成装置である。これに対して、画像処理装置は消色装置であってもよい。画像処理装置が消色装置である場合、加熱装置は、消色トナーによりシートに形成された画像を消色(消去)する処理を行う。
【0077】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、支持部材が発熱部材と接触して支持することで、支持部材が発熱部材を間接的に支持する場合に対して、支持位置を基準とした発熱部材の寸法は複数部材にまたがった公差を含まない。したがって、発熱部材の寸法精度を向上することができる。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0079】
1…画像処理装置、24…加熱装置、30…ベルト、40…発熱部材、41…遮蔽部材、42…第1支持部材(支持部材)、42…第2支持部材(支持部材)、50…湾曲部、51…第1折り曲げ部(折り曲げ部)、53…貫通孔、56…第2端部(湾曲部の周方向の端部)、342…支持部材、C…円弧中心、V…揺動方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7