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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/335 20060101AFI20240919BHJP
   B41J 2/345 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B41J2/335 101Z
B41J2/345 K
B41J2/345 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020158862
(22)【出願日】2020-09-23
(65)【公開番号】P2022052452
(43)【公開日】2022-04-04
【審査請求日】2023-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-284958(JP,A)
【文献】特開2008-235768(JP,A)
【文献】特開平10-129020(JP,A)
【文献】特開平06-319013(JP,A)
【文献】特開昭63-158711(JP,A)
【文献】特開平05-016408(JP,A)
【文献】特開昭58-153674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/315 - 2/345
B41J 2/42 - 2/425
B41J 2/475 - 2/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに反対側を向く第1主面および第1裏面を有する第1基板と、
前記第1主面の上に配置され、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、
前記第1主面の上に配置され、且つ前記抵抗体層に導通する電極層と、
前記第1基板に対して副走査方向の上流側に隣接して配置され、互いに反対側を向く第2主面および第2裏面を有する第2基板と、
前記第2主面の上に配置され、前記各発熱部に電流を流すか否かを制御する駆動ICと、
前記第1基板および前記第2基板を支持する放熱部材と、
前記第2主面の上に配置された配線パターンと、
前記電極層および前記配線パターンそれぞれに導通し、且つ前記第1主面の上および前記第2主面の上に跨って配置されており、前記電極層よりも可撓性が高い可撓性配線層と、を備え
前記電極層は、各々が前記発熱部に接する複数の個別電極を含み、
前記可撓性配線層は、前記複数の個別電極それぞれに接し、且つ前記主走査方向に間隔を隔てて並んだ複数の可撓性配線部を含み、
前記配線パターンは、前記駆動ICに接続された複数の個別配線部を含み、
前記複数の可撓性配線部は、前記複数の個別配線部それぞれに接しており、
前記放熱部材は、平坦な第1支持面を有し、
前記第1基板の前記第1裏面が前記第1支持面に支持されており、
前記第2基板は、前記第1基板に対して前記副走査方向の上流側に並んでおり、
前記第2基板の前記第2裏面が前記第1支持面に支持されており、
前記第1基板および前記第2基板は、前記副走査方向において隙間を介して並び、
前記隙間を埋める樹脂部をさらに備え、
前記可撓性配線層は、前記樹脂部の上に跨って配置されており、
前記可撓性配線層は、フレキシブル導電ペーストの塗膜からなる、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記可撓性配線部は、前記個別電極の上に積層された第1端部と、前記個別配線部の上に積層された第2端部と、前記第1端部および第2端部の双方に繋がり、前記第1主面の上および前記第2主面の上に積層された連絡部と、を有する、請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記駆動ICを覆う保護樹脂を備える、請求項1または2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記保護樹脂は、前記複数の可撓性配線部を覆う、請求項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記可撓性配線層は、Agを含む材料からなる、請求項1ないしのいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のサーマルプリントヘッドの一例が開示されている。サーマルプリントヘッドは一般に、基板上に主走査方向に並ぶ多数の発熱部を備えている。各発熱部は、基板の主面上に形成された抵抗体層上に、抵抗体層の一部を露出させるように電極層を積層することで形成されている。電極層に通電することにより、上記抵抗体層の露出部(発熱部)がジュール熱により発熱する。発熱部にはプラテンローラによって印刷媒体が押圧され、当該発熱部の発熱によって、印刷媒体に印字ドットが形成される。
【0003】
特許文献1に開示されたサーマルプリントヘッドは、複数の発熱部が配置された基板(第1基板)と、駆動IC等が搭載された基板(第2基板)と、を備えている。駆動ICは、複数のボンディングワイヤによって、第1基板上の電極層および第2基板上の配線パターンに接続されている。駆動ICおよび複数のボンディングワイヤは、保護樹脂によって覆われており、当該保護樹脂は、第1基板上および第2基板上に配置されている。
【0004】
上記構成によれば、保護樹脂は、複数のボンディングワイヤを覆うために、基板から突出する高さが比較的大きくなる。そうすると、印刷媒体を搬送するためのプラテンローラが上記保護樹脂に干渉するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-166824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、プラテンローラとの干渉を抑制し、不具合を回避するのに適したサーマルプリントヘッドを提供することを主たる課題とする。
【0007】
本開示によって提供されるサーマルプリントヘッドは、互いに反対側を向く第1主面および第1裏面を有する第1基板と、前記第1主面の上に配置され、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、前記第1主面の上に配置され、且つ前記抵抗体層に導通する電極層と、前記第1基板に対して副走査方向の上流側に隣接して配置され、互いに反対側を向く第2主面および第2裏面を有する第2基板と、前記第2主面の上に配置された配線パターンと、前記電極層および前記配線パターンそれぞれに導通し、且つ前記第1主面の上および前記第2主面の上に跨って配置されており、前記電極層よりも可撓性が高い可撓性配線層と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、プラテンローラとの干渉などの不具合を防止することができる。
【0009】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
図2図1に示すサーマルプリントヘッドの要部拡大平面図である。
図3図1のIII-III線に沿う概略断面図である。
図4図3の部分拡大図である。
図5】伸縮性配線部の形成手順を説明するための部分拡大平面図である。
図6図5のVI-VI線に沿う断面図である。
図7】伸縮性配線部の形成手順を示し、図5に続く手順を表す部分拡大平面図である。
図8図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9】伸縮性配線部の形成手順を示し、図7に続く手順を表す部分拡大平面図である。
図10図9のX-X線に沿う断面図である。
図11】伸縮性配線部の形成手順を示し、図9に続く手順を表す部分拡大平面図である。
図12図11のXII-XII線に沿う断面図である。
図13図1に示すサーマルプリントヘッドの変形例を示す、図3と同様の断面図である。
図14図1に示すサーマルプリントヘッドの変形例を示す、図2と同様の要部拡大平面図である。
図15図14のXV-XV線に沿う断面図である。
図16】本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
図17図16のXVII-XVII線に沿う概略断面図である。
図18図17の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。図面の各々は、模式的に描かれている。さらに各図面は、省略された部分および誇張された部分を含むことがある。
【0012】
本開示において、「ある物Aがある物Bに形成されている」および「ある物Aがある物B上に形成されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接形成されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに形成されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに配置されている」および「ある物Aがある物B上に配置されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接配置されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに配置されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物B上に位置している」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに接して、ある物Aがある物B上に位置していること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物が介在しつつ、ある物Aがある物B上に位置していること」を含む。また、「ある物Aがある物Bにある方向に見て重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。
【0013】
<第1実施形態>
図1図4は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA1は、第1基板1、絶縁層19、保護層2、電極層3、抵抗体層4、第2基板5、可撓性配線層6、複数の駆動IC7、樹脂部71、保護樹脂78および放熱部材8を備えている。サーマルプリントヘッドA1は、プラテンローラ99(図3参照)によって搬送される印刷媒体(図示略)に印刷を施すプリンタに組み込まれるものである。印刷媒体としては、たとえばバーコードシートやレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。
【0014】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。図2は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。図3は、図1のIII-III線に沿う概略断面図である。図4は、サーマルプリントヘッドA1の要部断面図であり、図3の一部を拡大した断面図である。図1および図2においては、理解の便宜上、保護層2を省略している。図2においては、理解の便宜上、保護樹脂78を省略している。また、これらの図において、第1基板1の長手方向(主走査方向)をx方向とし、短手方向(副走査方向)をy方向とし、厚さ方向をz方向として説明する。また、y方向については、図1図2の下方(図3図4の右方)を印刷媒体が送られてくる「上流」とし、図1図2の上方(図3図4の左方)を印刷媒体が排出される「下流」とする。また、z方向については、図3図4の上方(方向zを示す矢印が指す方向)を「上方」とし、その反対方向を「下方」とする。以下の図においても同様である。
【0015】
図3に示すように、サーマルプリントヘッドA1において、第1基板1および第2基板5は、放熱部材8上で、y方向に隣接して搭載されている。第1基板1上には、後に詳説する構成により、x方向に配列される複数の発熱部41が配置されている。この発熱部41は、第2基板5に搭載された駆動IC7により選択的に発熱駆動され、後述するコネクタ59を介して外部から送信される印字信号にしたがって、プラテンローラ99によって発熱部41に押圧される印刷媒体に印字を行う。
【0016】
第1基板1は、電極層3および抵抗体層4を支持するものである。第1基板1の大きさは限定されないが、一例を挙げると、x方向の寸法は、たとえば50mm~150mm程度、y方向の寸法は、たとえば3mm~5mm程度、z方向の寸法は、たとえば725μm程度である。第1基板1において、y方向の駆動IC7に近い側が上流側であり、駆動IC7から遠い側が下流側である。印刷媒体は、プラテンローラ99によって、y方向の上流側から下流側に搬送される。
【0017】
本実施形態において、第1基板1は、単結晶半導体からなり、たとえばSiによって形成されている。図3および図4に示すように、第1基板1は、第1主面11および第1裏面12を有する。第1主面11および第1裏面12は、z方向において互いに反対側を向いている。第1主面11はz方向の上方を向き、第1裏面12はz方向の下方を向く。第1主面11は、x-y平面(x方向とy方向で規定される平面、他の平面も同様)に沿って広がっており、x-y平面に略平行な平面である。第1主面11は、(100)面である。電極層3および抵抗体層4は、第1主面11側に設けられている。
【0018】
第1基板1は、凸部13を有する。凸部13は、第1主面11からz方向に突出しており、x方向に延びている。凸部13は、第1主面11のy方向下流側寄りに形成されている。凸部13は、y-z平面に沿う断面の形状が、x方向に一様である。凸部13は、z方向下方側の端部におけるy方向の寸法が、たとえば500μm程度であり、z方向上方側の端部(後述する頂面131)におけるy方向の寸法が、たとえば200μm程度である。また、凸部13のz方向の寸法は、たとえば150μm程度である。
【0019】
図4に示すように、凸部13は、頂面131および一対の傾斜面132を有する。頂面131は、第1主面11と平行であり、略平面である。頂面131は、z方向視において、x方向に長く延びる細長矩形状である。上記凸部13のz方向の寸法は、頂面131と第1主面11とのz方向における離間距離である。一対の傾斜面132は、y方向において頂面131を挟んでいる。また、一対の傾斜面132はそれぞれ、第1主面11と頂面131とに繋がり、y方向においてこれらに挟まれている。各傾斜面132は、頂面131からy方向に離れるほど低位となるように第1主面11および頂面131に対して傾斜している。換言すると、一対の傾斜面132は、第1主面11からz方向に遠ざかるにつれて(図中で上方に移動するにつれて)、y方向において互いに近づく。各傾斜面132は、略平面である。第1主面11に対する各傾斜面132の傾斜角は、たとえば54.7度である。各傾斜面132は、(111)面である。
【0020】
上記構成の凸部13は、たとえば第1基板1の基板材料の表面の一部に所定のマスクを配置し、当該基板材料の表面に異方性エッチングを施すことにより形成される。凸部13の形成の際には、たとえばアルカリ水溶液を用いた異方性エッチングを行う。このアルカリ水溶液としては、たとえばKOH(水酸化カリウム)やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)などが挙げられる。
【0021】
図4に示すように、絶縁層19は、第1主面11および凸部13を覆っている。絶縁層19は、第1基板1を抵抗体層4および電極層3に対してより確実に絶縁するためのものである。絶縁層19は、第1基板1において抵抗体層4または電極層3が形成される領域に形成されていればよい。絶縁層19は、絶縁性材料からなり、たとえばSiO2またはSiN(窒化ケイ素)からなり、好適にはTEOS-SiO2(TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)を原材料として形成されたSiO2)が採用される。絶縁層19の厚さは特に限定されず、たとえば1μm~15μm程度である。上記絶縁層19は、たとえばCVDを用いて第1主面11上および凸部13上にTEOS-SiO2を堆積させることにより形成される。
【0022】
抵抗体層4は、図4に示すように、絶縁層19上に形成され、第1基板1の第1主面11の上に配置されている。抵抗体層4は、絶縁層19を挟んで、第1主面11および凸部13にわたって形成されている。抵抗体層4は、たとえばTaN(窒化タンタル)からなる。抵抗体層4の厚さは特に限定されず、たとえば0.02μm~0.1μm程度である。
【0023】
抵抗体層4は、図2および図4に示すように、複数の発熱部41を含む。複数の発熱部41は、抵抗体層4のうち後述する電極層3に覆われずに露出する部分である。複数の発熱部41は、各々に選択的に通電されることにより、印刷媒体を局所的に加熱する。複数の発熱部41は、x方向に沿って並んで配列されており、x方向において互いに離間している。複数の発熱部41は、凸部13の頂面131に配置されている。複数の発熱部41のy方向における形成領域は、凸部13の頂面131のy方向の一部または全部を含んだ領域とされる。
【0024】
電極層3は、抵抗体層4(複数の発熱部41)に通電するための導通経路を構成する。電極層3は、抵抗体層4に積層され、第1主面11上に配置されている。電極層3は、抵抗体層4よりも抵抗値が小さい金属材料からなり、たとえばCu(銅)からなる。電極層3の厚さは特に限定されず、たとえば0.3μm~2.0μm程度である。なお、電極層3は、Cu層と、Ti(チタン)層とが積層された構成であってもよい。この場合、Ti層は、Cu層と抵抗体層4との間に介在し、たとえば厚さ100nm程度である。
【0025】
電極層3は、図1図2および図4に示すように、複数の個別電極31および共通電極32を含んでいる。抵抗体層4のうち、複数の個別電極31と共通電極32との間において電極層3から露出した部分が、複数の発熱部41となっている。z方向視における各個別電極31および共通電極32の各形状、すなわち、各個別電極31および共通電極32の形成領域は、図1および図2の例示に限定されない。
【0026】
複数の個別電極31はそれぞれ、概ねy方向に延びる帯状である。複数の個別電極31は、x方向において互いに分離している。各個別電極31は、各発熱部41よりもy方向上流側に配置されている。図4に表れているように、本実施形態では、各個別電極31のy方向下流側の先端は、y方向上流側の傾斜面132上まで延びている。各個別電極31のy方向上流側の先端には、電極パッド部311が形成されている。電極パッド部311は、第2基板5に搭載される駆動IC7と後述する可撓性配線部61を介して接続される部分である。
【0027】
共通電極32は、図2および図4に示すように、共通部321および複数の共通電極帯状部322を含んでいる。共通部321は、複数の共通電極帯状部322を共通に繋げる。共通部321は、図1に示すように、複数の発熱部41のy方向下流側に形成された領域と、複数の発熱部41のx方向の両側に形成された領域と、を含み第1基板1の周縁付近を迂回するように形成されている。
【0028】
図2に示すように、複数の共通電極帯状部322は、互いに離間し、x方向に沿って並んでいる。各共通電極帯状部322のy方向上流側の先端は、各個別電極31のy方向下流側の先端に対して所定間隔を隔てて対向させられている。よって、各共通電極帯状部322のy方向上流側の先端と、各個別電極31のy方向下流側の先端との間において、個別の抵抗体層4である各発熱部41が電極層3から露出する。図4に表れているように、図示した例では、共通電極帯状部322のy方向上流側の先端は、y方向下流側の傾斜面132上まで延びている。
【0029】
上記抵抗体層4および上記電極層3は、絶縁層19上に抵抗体膜および電極膜を形成し、当該電極膜および抵抗体膜に選択的なエッチングを施すことにより形成される。上記抵抗体膜の形成は、たとえばスパッタリングなどの薄膜形成技術により、絶縁層19上にTaNの薄膜を形成することによって行う。上記抵抗体膜は、絶縁層19の全面を覆う。上記電極膜の形成は、たとえばめっきやスパッタリングによりCuからなる層を形成することによって行う。上記電極膜は、上記抵抗体膜の全面を覆う。なお、上記電極膜の形成では、上記抵抗体膜上にTi層を形成した後、Cu層を形成した構成でもよい。上記電極膜および上記抵抗体膜に選択的なエッチングを施すと、上記電極膜および上記抵抗体膜が部分的に除去される。これにより、x方向に分離された抵抗体層4と、複数の発熱部41を残して抵抗体層4を覆う電極層3とが形成される。複数の発熱部41は、凸部13の上に形成される。
【0030】
保護層2は、図4に示すように、電極層3および抵抗体層4を覆っている。保護層2は、絶縁性材料からなり、たとえばSiO2、SiN、SiC(炭化ケイ素)、AlN(窒化アルミニウム)のいずれかあるいはそれら2つ以上の積層体からなる。保護層2の厚さは特に限定されず、たとえば1μm~5μm程度である。保護層2は、図4に示すように、z方向に貫通するパッド用開口21を有する。パッド用開口21は、複数の個別電極31に設けた電極パッド部311をそれぞれ露出させている。
【0031】
上記保護層2の形成は、たとえばCVDを用いて、第1基板1上の絶縁層19、電極層3および抵抗体層4のそれぞれの上にたとえばSiNを堆積させることにより行われる。その後、パッド用開口21を形成するために、保護層2をエッチング等により部分的に除去する。
【0032】
第2基板5は、図1および図3に示すように、第1基板1に対してy方向上流側に隣接して配置されている。第2基板5は、たとえばPCB基板である。第2基板5の形状等に特に限定されず、本実施形態において、第2基板5は、図1に示すように、z方向視においてx方向を長手方向とする細長矩形状である。図3に示すように、第2基板5には、駆動IC7およびコネクタ59が搭載されている。
【0033】
第2基板5は、第2主面51および第2裏面52を有する。本実施形態において、第2主面51は、第1基板1の第1主面11と同じ側を向く面であり、第2裏面52は、第1基板1の第1裏面12と同じ側を向く面である。第2基板5には、配線パターン53が形成されている。詳細形状は図示しないが、配線パターン53は、第2基板5の少なくとも第2主面51上に配置されており、複数の個別配線部531および複数の信号配線部532を含む。配線パターン53は、たとえばCuなどの抵抗値が小さい金属材料からなる。
【0034】
複数の個別配線部531は、複数の個別電極31それぞれと駆動IC7との導通経路を構成する。複数の個別配線部531は、第2主面51のy方向下流側端部付近に配置されており、x方向に配列されるとともに各々がy方向に延びている。各個別配線部531のy方向上流側端部は、z方向に見て駆動IC7と重なっている。
【0035】
複数の信号配線部532は、複数の個別配線部531に対してy方向上流側に配置されており、たとえば駆動IC7とコネクタ59とに接続される。複数の信号配線部532は、x方向に配列されるとともに各々がy方向に延びている。各信号配線部532のy方向下流側端部は、z方向に見て駆動IC7と重なっている。
【0036】
駆動IC7は、図1図4に示すように、第2基板5の第2主面51上に搭載されている。駆動IC7は、各個別電極31にそれぞれ電流を流すか否かを制御する。詳細には、駆動IC7は、各個別電極31と接地電極との間の接続をオンまたはオフにすることによって、各発熱部41に電流を流すか否かを制御する。図1に示すように、本実施形態では、第2基板5上に複数の駆動IC7が搭載されている。当該複数の駆動IC7は、x方向において間隔を隔てて配置される。本実施形態において、駆動IC7は、フリップチップ実装により第2主面51上に配置される。図4に示すように、駆動IC7の実装面(第2基板5と対向する面)には、たとえばはんだバンプからなる複数の導電性接合材70が配置されており、導電性接合材70は、配線パターン53(個別配線部531あるいは信号配線部532)に導通接合されている。
【0037】
コネクタ59は、サーマルプリントヘッドA1をプリンタの制御部(図示略)に電気的に接続するために用いられる。コネクタ59は、図3に示すように、第2基板5に取り付けられており、第2基板5の配線パターン(図示略)に接続されている。
【0038】
放熱部材8は、図3および図4に示すように、第1基板1および第2基板5を支持しており、複数の発熱部41により生じた熱の一部を外部へと放熱するために設けられる。放熱部材8はたとえばAl(アルミニウム)等の金属からなるブロック状の部材である。本実施形態において、放熱部材8は、第1支持面81を有する。第1支持面81は、平坦面であり、z方向の上方を向いている。第1支持面81には、第1基板1の第1裏面12および第2基板5の第2裏面52が接合されている。これにより、第1基板1の第1裏面12および第2基板5の第2裏面52は、第1支持面81に支持されている。
【0039】
図4に示すように、第1基板1および第2基板5は、y方向において隙間G1を介して並んでいる。当該隙間G1は、第1基板1および第2基板5を放熱部材8上に配置する際に形成される。隙間G1のy方向の寸法は特に限定されず、たとえば10μm~20μm程度である。
【0040】
本実施形態において、上記隙間G1には、樹脂部71が充填されている。樹脂部71は、たとえばエポキシ樹脂などの絶縁性材料からなり、隙間G1を埋めている。
【0041】
可撓性配線層6は、第1基板1側と第2基板5側とを接続する配線であり、第1基板1の第1主面11上および第2基板5の第2主面51上に跨って配置されている。可撓性配線層6は、電極層3および配線パターン53それぞれに接続されており、電極層3よりも可撓性が高い導電性材料により構成される。より具体的には、可撓性配線層6は、電極層3などの金属配線層と比べて柔軟性が大きく、伸縮や捻りを繰り返しても顕著な抵抗値の上昇は生じない性質を有する。
【0042】
このような可撓性配線層6は、フレキシブル導電ペーストの塗膜からなる。可撓性配線層6の構成材料は特に限定されないが、たとえばシリコーン系樹脂やポリエステル系樹脂などの柔軟性を有する樹脂系材料とAg(銀)、Cu、Ti、Ni(ニッケル)、Alなどの導電性金属粉末とを含んで構成される。可撓性配線層6の材料としては、たとえば信越化学工業社製のフレキシブルシリコーン銀ペースト(型番:SCP-101、SCP-201、X-32-3814-3)や東洋紡社製のストレッチャブル導電ペーストを採用することができる。なお、可撓性配線層6の厚さは特に限定されず、たとえば1μm~20μm程度である。
【0043】
図2図4に示すように、本実施形態では、可撓性配線層6は、複数の可撓性配線部61を含む。複数の可撓性配線部61は、x方向に間隔を隔てて並んでおり、各々がy方向に延びている。複数の可撓性配線部61は、複数の個別電極31それぞれと、複数の個別配線部531それぞれと、に接する。より具体的には、可撓性配線部61は、第1端部611、第2端部612および連絡部613を有する。第1端部611は、可撓性配線部61のy方向下流側の端部であり、個別電極31の電極パッド部311上に積層されている。第2端部612は、可撓性配線部61のy方向上流側の端部であり、個別配線部531上に積層されている。連絡部613は、第1端部611および第2端部612の双方に繋がる。連絡部613は、第1主面11上、第2主面51上および樹脂部71上に跨って積層されている。
【0044】
駆動IC7は、複数の個別配線部531および複数の可撓性配線部61を介して、各個別電極31の各電極パッド部311にそれぞれ接続されている。また、駆動IC7は、複数の信号配線部532を介してコネクタ59に接続されている。駆動IC7には、コネクタ59を介して外部から送信される印字信号、制御信号および駆動IC7を動作させるための電源(接地電位を含む)が入力される。複数の発熱部41は、印字信号および制御信号にしたがって個別に通電されることにより、選択的に発熱させられる。
【0045】
保護樹脂78は、図3および図4に示すように、駆動IC7および複数の可撓性配線部61を覆っており、第1基板1と第2基板5とに跨るように形成されている。保護樹脂78の構成材料は特に限定されず、たとえばエポキシ樹脂などの黒色の絶縁性材料が用いられる。この保護樹脂78と比べて上記の可撓性配線層6は可撓性が高い。
【0046】
次に、可撓性配線層6の形成手順の一例について、図5図12を参照しつつ、以下に説明する。
【0047】
図5図6は、放熱部材8の第1支持面81上に第1基板1および第2基板5が接合された状態を示す。第1基板1の第1主面11には、上記の抵抗体層4、電極層3および保護層2が配置されている。第2基板5の第2主面51には、上記の配線パターン53および駆動IC7が配置されている。第1基板1および第2基板5は、y方向において隙間G1を介して並んでいる。
【0048】
次に、図7図8に示すように、隙間G1に樹脂部71を構成する樹脂材料を充填し、硬化させる。これにより、隙間G1を埋める樹脂部71が形成される。
【0049】
次いで、図9図10に示すように、可撓性導電膜6Aを形成する。可撓性導電膜6Aの形成は、たとえばAgを主成分として含むフレキシブルAgペースト(フレキシブル導電ペースト)を印刷し、硬化させることによって行う。当該硬化させる処理としては、たとえば加熱やUV照射を挙げることができる。可撓性導電膜6Aは、第1基板1の第1主面11上、第2主面51の第2主面51上および樹脂部71上に跨って形成される。ここで、可撓性導電膜6Aは、第1基板1、第2基板5および樹脂部71に密着している。また、可撓性導電膜6Aは、y方向に一定幅でx方向に延びており、複数の個別電極31それぞれの電極パッド部311と複数の個別配線部531それぞれのy方向下流側端部とに重なっている。
【0050】
次いで、図11図12に示すように、可撓性導電膜6Aを部分的に除去することにより、複数の可撓性配線部61を含む可撓性配線層6を形成する。可撓性配線層6の形成は、たとえば可撓性導電膜6Aの適所にレーザを照射することにより行う。当該レーザ照射により、可撓性導電膜6Aのうち複数の電極パッド部311の隣接相互間ないし複数の個別配線部531の隣接相互間が除去される。これにより、各々がy方向に延び、且つx方向において互いに分離された複数の可撓性配線部61が形成される。
【0051】
ここで、各可撓性配線部61のy方向下流側の端部(第1端部611)は電極パッド部311上に積層されており、各可撓性配線部61のy方向上流側の端部(第2端部612)は個別配線部531上に積層されている。第1端部611と第2端部612とに繋がる連絡部613は、第1主面11上、第2主面51上および樹脂部71上に跨って積層されている。
【0052】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0053】
サーマルプリントヘッドA1は、第1基板1の第1主面11上および第2基板5の第2主面51上に跨って配置された可撓性配線層6を備える。可撓性配線層6は、第1主面11上に配置された電極層3、および第2主面51上に配置された配線パターン53それぞれに導通している。可撓性配線層6は、電極層3よりも可撓性が高い。本実施形態では、第1基板1上の電極層3と第2基板5側とを導通接続するために、可撓性配線層6が用いられ、この可撓性配線層6を保護樹脂78が覆っている。可撓性配線層6は、第1基板1および第2基板5の双方に密着しており、第1基板1および第2基板5による拘束を受けやすい。可撓性配線層6は、可撓性に優れるため、第1基板1と第2基板5との相対位置が変化しても当該相対位置の変化に追従しやすい。このような構成によれば、サーマルプリントヘッドA1の製造時において、たとえば可撓性配線層6の形成後に第1基板1および第2基板5の間で相対位置に変化が生じても、可撓性配線層6は当該相対位置の変化に追従しやすい。また、サーマルプリントヘッドA1の使用時においては、たとえば発熱部41の発熱によって第1基板1や第2基板5の温度が上昇し、これら第1基板1および第2基板5の間で歪が生じても、可撓性配線層6は当該歪に追従しやすい。したがって、第1基板1および第2基板5の間で生じた歪等に起因して可撓性配線層6が断線するといった不具合を回避することができる。
【0054】
また、可撓性配線層6は、第1主面11および第2主面51上に形成されたフレキシブル導電ペーストの塗膜からなり、たとえばボンディングワイヤと比べて、第1主面11および第2主面51からz方向の上方に突出する高さが低い。このような構成によれば、可撓性配線層6を覆う保護樹脂78のz方向上方への突出高さを低くすることができ、印刷媒体を搬送するためのプラテンローラ99との干渉を防止することができる。
【0055】
可撓性配線層6は、x方向に間隔を隔てて並んだ複数の可撓性配線部61を含む。複数の可撓性配線部61は、電極層3の複数の個別電極31それぞれに接する。第2基板の第2主面51上には駆動IC7が配置されている。第2主面51上に形成された配線パターン53は、複数の個別配線部531を含み、複数の可撓性配線部61は、複数の個別配線部531それぞれに接する。このような構成によれば、複数の個別電極31それぞれに接する複数の発熱部41は、複数の可撓性配線部61を介して選択的に発熱させることができる。
【0056】
可撓性配線部61は、第1端部611、第2端部612および連絡部613を有する。第1端部611は電極パッド部311(個別電極31)上に積層されており、第2端部612は個別配線部531上に積層されている。連絡部613は、第1端部611および第2端部612の双方に繋がり、第1主面11上および第2主面51上に積層されている。このような構成によれば、各可撓性配線部61によって、第1主面11上の個別電極31と第2主面51上の個別配線部531とを適切に導通接続することができる。
【0057】
サーマルプリントヘッドA1において、保護樹脂78は、フリップチップ実装された駆動IC7および複数の可撓性配線部61を覆っている。このような構成によれば、たとえばボンディングワイヤおよび駆動ICを保護樹脂で覆う場合と比べて、保護樹脂78がz方向の上方へ突出する高さを低くすることができる。このような構成によれば、印刷媒体を搬送するためのプラテンローラ99との干渉を防止することができる。
【0058】
第1基板1の第1裏面12および第2基板5の第2裏面52は、放熱部材8の第1支持面81に支持されている。第1基板1および第2基板5はy方向において隙間G1を介して並んでおり、樹脂部71が当該隙間G1を埋めている。可撓性配線部61は、第1基板1上および第2基板5上に加え、樹脂部71上にも跨って配置される。このような構成によれば、x方向に並んだ複数の可撓性配線部61について、x方向において互いに分離した状態で適切に配置することができる。
【0059】
<第1実施形態の変形例>
図13図15は、上記した第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドA1の変形例を示している。なお、図13以降の図面において、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0060】
本変形例のサーマルプリントヘッドA11においては、電極層3および抵抗体層4の構成が上記実施形態と異なり、グレーズ層23を更に備えている。
【0061】
本変形例において、第1基板1は、たとえばAl23などのセラミックからなる。第1基板1の第1主面11上には、グレーズ層23、電極層3、抵抗体層4および保護層2が配置されている。第1基板1の寸法は特に限定されないが、第1基板1のz方向の寸法は、たとえば0.6mm~1mm程度とされる。
【0062】
グレーズ層23は、第1基板1上に配置されており、例えば非晶質ガラスなどのガラス材料からなる。グレーズ層23は、一定の厚みを有するように形成されており、グレーズ層23の厚みは、たとえば50μm~200μm程度である。グレーズ層23は、ガラスペーストを第1基板1の第1主面11上に厚膜印刷したのちに、これを焼成することにより形成されている。なお、本変形例で図示したグレーズ層23は、平らな膜状とされている。平らな膜状のグレーズ層23に代えて、緩やかな円弧を含む弓形の断面形状を有するグレーズ層を形成してもよい。また、平らな膜状のグレーズ層23の上に、緩やかな円弧を含む弓形の断面形状を有するグレーズ層を形成してもよい。上記弓形の断面形状を有するグレーズ層は、第1基板1上においてx方向に沿って延びる帯状とされ、上記弓形の断面形状を有するグレーズ層の上に後述の抵抗体層4(複数の発熱部41)が配置される。
【0063】
電極層3は、図14に示すように、複数の個別電極31および共通電極32を含んでいる。各個別電極31は、電極パッド部311および個別電極帯状部312を有する。個別電極帯状部312は、y方向に延びた帯状部分である。複数の個別電極31における個別電極帯状部312は、y方向下流側に延びており、x方向に等ピッチで配列されている。
【0064】
共通電極32は、共通部321および複数の共通電極帯状部322を含んでいる。複数の共通電極帯状部322は、各々が共通部321からy方向上流側に延びており、個別電極31の隣り合う2つの個別電極帯状部312の間に位置している。
【0065】
抵抗体層4は、電極層3を構成する材料よりも抵抗率が高い、たとえば酸化ルテニウムなどからなり、x方向に沿って延びる帯状に形成されている。図14に示すように、抵抗体層4は、共通電極32の複数の共通電極帯状部322と複数の個別電極31の個別電極帯状部312とに交差している。さらに、抵抗体層4は、共通電極32の複数の共通電極帯状部322と複数の個別電極31の個別電極帯状部312に対して第1基板1とは反対側に積層されている。抵抗体層4のうち各共通電極帯状部322と各個別電極帯状部312とに挟まれた部位が、電極層3によって部分的に通電されることにより発熱する発熱部41とされている。1個の個別電極帯状部312を挟んで隣り合う2個の発熱部41の発熱によって1個の印字ドットが形成される。
【0066】
抵抗体層4は、たとえば酸化ルテニウムなどの抵抗体を含む抵抗体ペーストを厚膜印刷し、これを焼成することによって形成される。抵抗体層4の厚さは特に限定されず、たとえば3μm~10μm程度である。
【0067】
本変形例のサーマルプリントヘッドA11においても、可撓性配線層6は、第1主面11上の電極層3および第2主面51上の配線パターン53それぞれに導通している。また、可撓性配線層6は、第1基板1および第2基板5の双方に密着しており、当該可撓性配線層6を保護樹脂78が覆っている。このような構成によれば、サーマルプリントヘッドA11の製造時や使用時において、たとえば第1基板1と第2基板5との相対位置に変化が生じても、当該相対位置の変化に起因して可撓性配線層6が断線するといった不具合を回避することができる。また、可撓性配線層6は、第1主面11および第2主面51上に形成されたフレキシブル導電ペーストの塗膜からなり、たとえばボンディングワイヤと比べて、第1主面11および第2主面51からz方向の上方に突出する高さが低い。このような構成によれば、可撓性配線層6を覆う保護樹脂78のz方向上方への突出高さを低くすることができ、印刷媒体を搬送するためのプラテンローラ99との干渉を防止することができる。その他、サーマルプリントヘッドA11においても、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1に関して上述したのと同様の作用効果を奏する。
【0068】
<第2実施形態>
図16図18は、本開示の第2実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA2は、第2基板5の配置が上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と異なっている。
【0069】
本実施形態において、放熱部材8は、図17図18に示すように、第2支持面82を有する。第2支持面82は、第1支持面81に対して直角であり、y方向上流側を向く平坦面である。本実施形態では、この放熱部材8の第2支持面82に第2基板5の第2裏面52が接合されており、第2裏面52は第2支持面82に支持されている。第2基板5の厚さ方向はy方向に沿っており、第2主面51がy方向上流側を向き、第2裏面52がy方向下流側を向く。
【0070】
本実施形態では、第2基板5は、y方向に見てz方向の上方(第1基板1の第1基板1よりも第1裏面12から遠ざかる方向)へ突出しない。図示した例では、第1基板1において第1主面11および第1裏面12の双方に繋がり、且つy方向上流側に位置する端面14は、第2支持面82と面一状である。また、第2基板5において第2主面51および第2裏面52の双方に繋がり、且つz方向の上方に位置する端面54は、第1支持面81と面一状である。
【0071】
詳細な図示は省略するが、本実施形態においても、複数の可撓性配線部61は、x方向に間隔を隔てて配置される。図18に示すように、可撓性配線部61の連絡部613は、第1主面11上、第2主面51上および端面14,54に跨って形成されている。保護樹脂78は、駆動IC7および複数の可撓性配線部61を覆っている。本実施形態では、保護樹脂78は、第1主面11上、第2主面51上および端面14,54に跨るように形成されている。
【0072】
本実施形態のサーマルプリントヘッドA2においても、可撓性配線層6は、第1主面11上の電極層3および第2主面51上の配線パターン53それぞれに導通している。また、可撓性配線層6は、第1基板1および第2基板5の双方に密着しており、当該可撓性配線層6を保護樹脂78が覆っている。このような構成によれば、サーマルプリントヘッドA2の製造時や使用時において、たとえば第1基板1と第2基板5との相対位置に変化が生じても、当該相対位置の変化に起因して可撓性配線層6が断線するといった不具合を回避することができる。可撓性配線層6は、フレキシブル導電ペーストの塗膜からなり、本実施形態のように第1主面11および第2主面51が異なる方向を向く場合でも第1主面11上および第2主面51上に跨って形成することができる。
【0073】
また、第2基板5の第2裏面52が放熱部材8の第2支持面82(y方向を向く面)に支持された構成によれば、図示されたように第1主面11からz方向の上方に突出する高さをより低く抑えることができる。このことは、プラテンローラ99との干渉を防止するうえでより好ましい。さらに、本実施形態の第2基板5の配置によれば、サーマルプリントヘッドA2のz方向視(第1基板1の厚さ方向視)のサイズを小さくすることができる。その他、サーマルプリントヘッドA2においても、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1に関して上述したのと同様の作用効果を奏する。
【0074】
本開示に係るサーマルプリントヘッドは、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係るサーマルプリントヘッドの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0075】
本開示は、以下の付記に関する構成を含む。
【0076】
〔付記1〕
互いに反対側を向く第1主面および第1裏面を有する第1基板と、
前記第1主面の上に配置され、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、
前記第1主面の上に配置され、且つ前記抵抗体層に導通する電極層と、
前記第1基板に対して副走査方向の上流側に隣接して配置され、互いに反対側を向く第2主面および第2裏面を有する第2基板と、
前記第2主面の上に配置された配線パターンと、
前記電極層および前記配線パターンそれぞれに導通し、且つ前記第1主面の上および前記第2主面の上に跨って配置されており、前記電極層よりも可撓性が高い可撓性配線層と、を備える、サーマルプリントヘッド。
〔付記2〕
前記電極層は、各々が前記発熱部に接する複数の個別電極を含み、
前記可撓性配線層は、前記複数の個別電極それぞれに接し、且つ前記主走査方向に間隔を隔てて並んだ複数の可撓性配線部を含む、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記3〕
前記第2主面の上に配置され、前記各発熱部に電流を流すか否かを制御する駆動ICを備え、
前記配線パターンは、前記駆動ICに接続された複数の個別配線部を含み、
前記複数の可撓性配線部は、前記複数の個別配線部それぞれに接する、付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記4〕
前記可撓性配線部は、前記個別電極の上に積層された第1端部と、前記個別配線部の上に積層された第2端部と、前記第1端部および第2端部の双方に繋がり、前記第1主面の上および前記第2主面の上に積層された連絡部と、を有する、付記3に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記5〕
前記駆動ICを覆う保護樹脂を備える、付記3または4に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記6〕
前記保護樹脂は、前記複数の可撓性配線部を覆う、付記5に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記7〕
前記第1基板および前記第2基板を支持する放熱部材を備える、付記3ないし6のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記8〕
前記放熱部材は、平坦な第1支持面を有し、
前記第1基板の前記第1裏面が前記第1支持面に支持されている、付記7に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記9〕
前記第2基板は、前記第1基板に対して前記副走査方向の上流側に並んでおり、
前記第2基板の前記第2裏面が前記第1支持面に支持されている、付記8に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記10〕
前記第1基板および前記第2基板は、前記副走査方向において隙間を介して並び、
前記隙間を埋める樹脂部を備え、
前記可撓性配線部は、前記樹脂部の上に跨って配置される、付記9に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記11〕
前記放熱部材は、前記第1支持面に対して直角であり、且つ前記副走査方向の上流側を向く平坦な第2支持面を有し、
前記第2基板の前記第2裏面が前記第2支持面に支持されており、
前記第2基板は、前記副走査方向に見て前記第1主面よりも前記第1裏面から遠ざかる方向へ突出しない、付記8に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記12〕
前記可撓性配線層は、Agを含む材料からなる、付記1ないし11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記13〕
前記可撓性配線層は、フレキシブル導電ペーストの塗膜からなる、付記1ないし12のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【符号の説明】
【0077】
A1,A11,A2:サーマルプリントヘッド
1 :第1基板
11 :第1主面
12 :第1裏面
13 :凸部
131 :頂面
132 :傾斜面
14 :端面
19 :絶縁層
2 :保護層
21 :パッド用開口
23 :グレーズ層
3 :電極層
31 :個別電極
311 :電極パッド部
312 :個別電極帯状部
32 :共通電極
321 :共通部
322 :共通電極帯状部
34 :櫛歯部
4 :抵抗体層
41 :発熱部
5 :第2基板
51 :第2主面
52 :第2裏面
53 :配線パターン
531 :個別配線部
532 :信号配線部
54 :端面
59 :コネクタ
6 :可撓性配線層
6A :可撓性導電膜
61 :可撓性配線部
611 :第1端部
612 :第2端部
613 :連絡部
7 :駆動IC7
70 :導電性接合材
71 :樹脂部
78 :保護樹脂
8 :放熱部材
81 :第1支持面
82 :第2支持面
99 :プラテンローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18