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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】自動操舵制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20240919BHJP
   B62D 101/00 20060101ALN20240919BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20240919BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D101:00
B62D119:00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020168084
(22)【出願日】2020-10-02
(65)【公開番号】P2022060077
(43)【公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹原 裕生
(72)【発明者】
【氏名】八鍬 英徳
(72)【発明者】
【氏名】茂木 啓輔
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-144764(JP,A)
【文献】特開2019-014369(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102941851(CN,A)
【文献】特開2019-107944(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 101/00
B62D 119/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を目標進行路に沿って走行させる自動操舵制御を行う自動操舵制御装置であって、
外部環境認識装置と、
走行制御装置とを備え、
前記外部環境認識装置は、前記車両が走行する車線を区画する左右の区画線を検出可能な区画線検出部と、前記車線の道路形状と対応関係を有する情報であって前記左右の区画線以外の情報である形状情報を検出可能な形状情報検出部とを含み、
前記走行制御装置は、前記車両の走行状態を制御する走行制御を実行する走行制御部と、前記走行制御部からの指令信号に基づいて前記車両の操舵角を制御する操舵角制御部とを含み、
前記走行制御部は、前記左右の区画線の両方に基づいて実行される前記自動操舵制御である両側区画線制御と、前記左右の区画線の一方のみ基づいて実行される前記自動操舵制御である片側区画線制御とを実行可能であり、
前記区画線検出部によって前記左右の区画線の両方が検出された第1の場合には、前記走行制御部は、前記両側区画線制御を実行し、
前記区画線検出部によって前記左右の区画線の一方のみが検出区画線として検出された第2の場合には、前記走行制御部は、前記検出区画線の情報と前記形状情報とを比較して、前記片側区画線制御を実行するか否かを判定する判定処理を実行し、前記判定処理は、前記自動操舵制御が実行されていない状態において実行されることを特徴とする自動操舵制御装置。
【請求項2】
前記走行制御部は、前記第2の場合には、前記左右の区画線の一方に対応する前記検出区画線の情報と前記形状情報に基づいて、前記検出区画線の信頼度を算出し、前記判定処理において前記信頼度を用いることを特徴とする請求項に記載の自動操舵制御装置。
【請求項3】
車両を目標進行路に沿って走行させる自動操舵制御を行う自動操舵制御装置であって、
外部環境認識装置と、
走行制御装置とを備え、
前記外部環境認識装置は、前記車両が走行する車線を区画する左右の区画線を検出可能な区画線検出部と、前記車線の道路形状と対応関係を有する情報であって前記左右の区画線以外の情報である形状情報を検出可能な形状情報検出部とを含み、
前記走行制御装置は、前記車両の走行状態を制御する走行制御を実行する走行制御部と、前記走行制御部からの指令信号に基づいて前記車両の操舵角を制御する操舵角制御部とを含み、
前記走行制御部は、前記左右の区画線の両方に基づいて実行される前記自動操舵制御である両側区画線制御と、前記左右の区画線の一方のみ基づいて実行される前記自動操舵制御である片側区画線制御とを実行可能であり、
前記区画線検出部によって前記左右の区画線の両方が検出された第1の場合には、前記走行制御部は、前記両側区画線制御を実行し、
前記区画線検出部によって前記左右の区画線の一方のみが検出区画線として検出された第2の場合には、前記走行制御部は、前記検出区画線の情報と前記形状情報とを比較して、前記片側区画線制御を実行するか否かを判定する判定処理を実行し、
前記走行制御部は、前記第2の場合には、前記左右の区画線の一方に対応する前記検出区画線の情報と前記形状情報に基づいて、前記検出区画線の信頼度を算出し、前記判定処理において前記信頼度を用い、
前記走行制御部は、前記自動操舵制御が実行されていない状態において前記信頼度が高い場合には前記片側区画線制御を実行し、前記自動操舵制御が実行されていない状態において前記信頼度が低い場合には前記片側区画線制御を実行しないことを特徴とする自動操舵制御装置。
【請求項4】
前記形状情報は、前記車線に沿って延在するものの情報であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の自動操舵制御装置。
【請求項5】
前記形状情報は、前記車線に隣接する縁石の情報、前記車線を含む道路の道路端の情報、および前記車線に隣接する隣接車線と対応関係を有する情報のうち、少なくとも1つの情報であることを特徴とする請求項に記載の自動操舵制御装置。
【請求項6】
車両を目標進行路に沿って走行させる自動操舵制御を行う自動操舵制御装置であって、
外部環境認識装置と、
走行制御装置とを備え、
前記外部環境認識装置は、前記車両が走行する車線を区画する左右の区画線を検出可能な区画線検出部と、前記車線の道路形状と対応関係を有する情報であって前記左右の区画線以外の情報である形状情報を検出可能な形状情報検出部とを含み、
前記走行制御装置は、前記車両の走行状態を制御する走行制御を実行する走行制御部と、前記走行制御部からの指令信号に基づいて前記車両の操舵角を制御する操舵角制御部とを含み、
前記走行制御部は、前記左右の区画線の両方に基づいて実行される前記自動操舵制御である両側区画線制御と、前記左右の区画線の一方のみ基づいて実行される前記自動操舵制御である片側区画線制御とを実行可能であり、
前記区画線検出部によって前記左右の区画線の両方が検出された第1の場合には、前記走行制御部は、前記両側区画線制御を実行し、
前記区画線検出部によって前記左右の区画線の一方のみが検出区画線として検出された第2の場合には、前記走行制御部は、前記検出区画線の情報と前記形状情報とを比較して、前記片側区画線制御を実行するか否かを判定する判定処理を実行し、
前記自動操舵制御装置は、更に、前記車線の幅の情報を取得する車線幅取得部を含む道路情報取得装置を備え、
前記走行制御部は、前記第2の場合には、前記左右の区画線の一方に対応する前記検出区画線の情報と前記車線の幅の情報とを用いて、前記片側区画線制御を実行することを特徴とする自動操舵制御装置。
【請求項7】
前記自動操舵制御は、前記車両を前記車線内に維持する車線維持制御であることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1項に記載の自動操舵制御装置。
【請求項8】
車両を目標進行路に沿って走行させる自動操舵制御を行う自動操舵制御装置であって、
外部環境認識装置と、
走行制御装置とを備え、
前記外部環境認識装置は、前記車両が走行する車線を区画する左右の区画線を検出可能な区画線検出部と、前記車線の道路形状と対応関係を有する情報であって前記左右の区画線以外の情報である形状情報を検出可能な形状情報検出部とを含み、
前記走行制御装置は、前記車両の走行状態を制御する走行制御を実行する走行制御部と、前記走行制御部からの指令信号に基づいて前記車両の操舵角を制御する操舵角制御部とを含み、
前記走行制御部は、前記左右の区画線の両方に基づいて実行される前記自動操舵制御である両側区画線制御と、前記左右の区画線の一方のみ基づいて実行される前記自動操舵制御である片側区画線制御とを実行可能であり、
前記区画線検出部によって前記左右の区画線の両方が検出された場合には、前記走行制御部は、前記両側区画線制御を実行し、
前記区画線検出部によって前記左右の区画線の一方のみが検出区画線として検出された場合には、前記走行制御部は、前記検出区画線の情報と前記形状情報とを比較して、前記片側区画線制御を実行するか否かを判定する判定処理を実行し、
前記自動操舵制御は、前記車両を前記車線内に維持する車線維持制御であり、
前記自動操舵制御装置は、更に、前記車両の走行状態の情報を検出する走行状態検出部を備え、
前記走行状態検出部は、前記車両の車速を検出可能であり、
前記走行制御部は、前記両側区画線制御が実行されている状態において、前記左右の区画線と前記車速に基づいて前記操舵角を算出し、前記左右の区画線の各々の曲率の差が第1の閾値以上になり且つ前記操舵角が第2の閾値以上になる場合には、前記両側区画線制御を中止して、前記片側区画線制御を実行することを特徴とする自動操舵制御装置。
【請求項9】
前記片側区画線制御は、前記左右の区画線のうちの曲率が小さい方の区画線に基づいて実行されることを特徴とする請求項に記載の自動操舵制御装置。
【請求項10】
車両を目標進行路に沿って走行させる自動操舵制御を行う自動操舵制御装置であって、
外部環境認識装置と、
走行制御装置とを備え、
前記外部環境認識装置は、前記車両が走行する車線を区画する左右の区画線を検出可能な区画線検出部と、前記車線の道路形状と対応関係を有する情報であって前記左右の区画線以外の情報である形状情報を検出可能な形状情報検出部とを含み、
前記走行制御装置は、前記車両の走行状態を制御する走行制御を実行する走行制御部と、前記走行制御部からの指令信号に基づいて前記車両の操舵角を制御する操舵角制御部とを含み、
前記走行制御部は、前記左右の区画線の両方に基づいて実行される前記自動操舵制御である両側区画線制御と、前記左右の区画線の一方のみ基づいて実行される前記自動操舵制御である片側区画線制御とを実行可能であり、
前記区画線検出部によって前記左右の区画線の両方が検出された場合には、前記走行制御部は、前記両側区画線制御を実行し、
前記区画線検出部によって前記左右の区画線の一方のみが検出区画線として検出された場合には、前記走行制御部は、前記検出区画線の情報と前記形状情報とを比較して、前記片側区画線制御を実行するか否かを判定する判定処理を実行し、
前記自動操舵制御は、前記車両を前記車線内に維持する車線維持制御であり、
前記走行制御部は、前記両側区画線制御が実行されている状態において、前記左右の区画線のうちの一方の曲率が所定の閾値以上になる場合には、前記両側区画線制御を中止して、前記片側区画線制御を実行することを特徴とする自動操舵制御装置。
【請求項11】
前記片側区画線制御は、前記左右の区画線のうちの曲率が小さい方の区画線に基づいて実行されることを特徴とする請求項10に記載の自動操舵制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を目標進行路に沿って走行させる自動操舵制御を行う自動操舵制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両においては、自動運転の技術を利用した自動運転制御装置や運転支援装置が開発され実用化されている。このような装置の1つとして、自動操舵制御装置が知られている。自動操舵制御装置は、車両の操舵角を制御することによって、車両を目標進行路に沿って走行させる自動操舵制御を実行する。自動操舵制御では、例えば車両に搭載したカメラによる車線の認識結果に基づいて車両の目標位置が設定され、車両が目標位置の軌跡に沿って走行するように車両の操舵角が制御される。
【0003】
自動操舵制御装置は、車両の目標位置を例えば車線の中央に設定することによって、自車両を車線に沿って走行させる車線維持制御を実行することができる。このような自動操舵制御装置は、例えば特開2015-058903号公報に開示されている。特開2015-058903号に開示された技術では、CCDカメラによって撮像した画像から、左右の白線(区画線)を認識し、左白線と右白線の中間に設定された目標コースに沿って走行するように、車両を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-058903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように車線維持制御は、左右の区画線に基づいて車両を制御する。車線維持制御中に左右の区画線の一方が検出できなくなった場合には、例えば、検出された1つの区画線と、それまで検出していた左右の区画線から算出される道幅を用いて、車線維持制御を継続することが可能である。しかし、車線維持制御が行われていない状況下で、左右の区画線の一方しか検出されない場合には、車線の形状を特定することができなかった。そのため、この場合には、車線維持制御を開始することができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、左右の区画線の一方しか検出されない場合においても自動操舵制御を実行することができる自動操舵制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の自動操舵制御装置は、車両を目標進行路に沿って走行させる自動操舵制御を行う自動操舵制御装置であって、外部環境認識装置と、走行制御装置とを備え、前記外部環境認識装置は、前記車両が走行する車線を区画する左右の区画線を検出可能な区画線検出部と、前記車線の道路形状と対応関係を有する情報であって前記左右の区画線以外の情報である形状情報を検出可能な形状情報検出部とを含み、前記走行制御装置は、前記車両の走行状態を制御する走行制御を実行する走行制御部と、前記走行制御部からの指令信号に基づいて前記車両の操舵角を制御する操舵角制御部とを含み、前記走行制御部は、前記左右の区画線の両方に基づいて実行される前記自動操舵制御である両側区画線制御と、前記左右の区画線の一方のみ基づいて実行される前記自動操舵制御である片側区画線制御とを実行可能であり、前記区画線検出部によって前記左右の区画線の両方が検出された第1の場合には、前記走行制御部は、前記両側区画線制御を実行し、前記区画線検出部によって前記左右の区画線の一方のみが検出区画線として検出された第2の場合には、前記走行制御部は、前記検出区画線の情報と前記形状情報とを比較して、前記片側区画線制御を実行するか否かを判定する判定処理を実行し、前記判定処理は、前記自動操舵制御が実行されていない状態において実行される
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、左右の区画線の一方しか検出されない場合においても自動操舵制御を実行することができる自動操舵制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る自動操舵制御装置を搭載する車両の概略の構成を示す説明図である。
図2】本発明の第1の実施の形態におけるロケータユニットの構成を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の第1の実施の形態におけるカメラユニットの構成を示す機能ブロック図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る自動操舵制御装置の要部の構成を示す機能ブロック図である。
図5】本発明の第1の実施の形態における両側区画線制御を説明するための説明図である。
図6】本発明の第1の実施の形態における第1の態様の片側区画線制御を説明するための説明図である。
図7】本発明の第1の実施の形態における第2の態様の片側区画線制御を説明するための説明図である。
図8】本発明の第1の実施の形態における走行環境の画像の一例を示す説明図である。
図9】本発明の第1の実施の形態における形状情報の一例を示す説明図である。
図10】本発明の第1の実施の形態における自動操舵制御の実行判定処理を示すフローチャートである。
図11】本発明の第1の実施の形態における判定処理を示すフローチャートである。
図12】本発明の第2の実施の形態における切替処理を説明するための説明図である。
図13】本発明の第2の実施の形態における切替処理を示すフローチャートである。
図14】本発明の第3の実施の形態における切替処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。始めに、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る自動操舵制御装置を搭載する車両の概略の構成について説明する。図1に示したように、車両1には、左前輪FLと、右前輪FRと、左後輪RLと、右後輪RRとが設けられている。以下、左右前輪FL,FRが駆動輪且つ操舵輪として構成された場合を例にとって説明する。
【0011】
車両1には、更に、例えばラックアンドピニオン機構等のステアリング機構2が設けられている。ステアリング機構2には、タイロッド3を介して左右前輪FL,FRが連設されていると共に、先端にステアリングホイール4が固設されたステアリングシャフト5が連設されている。左右前輪FL,FRは、運転者によるステアリングホイール4の操作によって、ステアリング機構2を介して、左右方向に転舵される。
【0012】
車両1には、更に、電動パワーステアリング装置(以下、EPS装置と記す。)6が設けられている。EPS装置6は、電動パワーステアリングモータ(以下、EPSモータと記す。)7と、電動パワーステアリング制御ユニット(以下、EPS制御ユニットと記す。)8とを含んでいる。なお、図1では、EPS制御ユニットをEPS_ECUと記している。EPSモータ7は、図示しない伝達機構を介して、ステアリングシャフト5に連接されている。
【0013】
車両1には、更に、操舵トルクセンサ9が設けられている。操舵トルクセンサ9は、ステアリングシャフト5に介装されたトーションバー5aの捩れ角から、運転者によってステアリングホイール4に入力される操舵トルクを検出する。操舵トルクセンサ9は、EPS制御ユニット8に接続されている。
【0014】
EPS制御ユニット8は、操舵トルクセンサ9や後述する車速センサ等の検出結果に基づいて、運転者の操舵トルクをアシストするアシストトルクを設定する。また、EPS制御ユニット8は、設定したアシストトルクがステアリングシャフト5に付加されるように、EPSモータ7を制御する。
【0015】
車両1には、更に、自動操舵制御ユニット11と、ロケータユニット15と、カメラユニット21が設けられている。EPS制御ユニット8、自動操舵制御ユニット11、ロケータユニット15およびカメラユニット21は、CAN(Controller Area Network)等の車内ネットワーク10に接続されている。図示しないが、車内ネットワーク10には、更に、エンジン制御ユニット、変速機制御ユニット、ブレーキ制御ユニット等の、車両1の走行状態を制御する複数の電子制御ユニットが接続されている。
【0016】
自動操舵制御ユニット11は、車両1を目標進行路に沿って走行させる自動操舵制御を行う自動操舵制御装置の制御部である。自動操舵制御ユニット11は、自動操舵制御の実行時には、車両1の目標操舵角に基づいて目標トルクを設定し、設定した目標トルクに対応する指令信号をEPS制御ユニット8に送信する。EPS制御ユニット8は、受信した指令信号に基づいて、設定した目標トルクがステアリングシャフト5に付加されるように、EPSモータ7を制御する。
【0017】
自動操舵制御ユニット11には、車両1の操舵角と操舵方向を検出する操舵角センサ13と、車両1の走行状態の情報を検出する走行状態検出部14が接続されている。ロケータユニット15には、上記走行状態検出部14と、複数の測位衛星から発信される測位信号を受信するGNSS受信機16が接続されている。走行状態検出部14は、車両1の車速を検出する車速センサ14A、車両1の前後左右の加速度を検出する加速度センサ14B、車両1の角速度または角加速度を検出するジャイロセンサ14C等の、複数のセンサを含んでいる。
【0018】
自動操舵制御ユニット11は、例えば、運転者が自動操舵制御のためのスイッチをオンにする操作等を検出したときに、自動操舵制御を実行する。また、自動操舵制御ユニット11は、ハンドル操作等の運転者による所定の運転操作や、自動操舵制御の解除スイッチの操作等を検出したときに、自動操舵制御を解除する。なお、車両1の操舵角、操舵トルク、アシストトルク、目標トルクの各々の正負は、車両1が左方向に曲がるか右方向に曲がるかによって定義される。
【0019】
ロケータユニット15は、道路地図上の自車位置を推定する装置である。ここで、図2を参照して、ロケータユニット15の構成について説明する。図2は、ロケータユニット15の構成を示す機能ブロック図である。ロケータユニット15は、自車位置を推定するロケータ演算部17を含んでいる。ロケータ演算部17には、走行状態検出部14とGNSS受信機16が接続されている。
【0020】
ロケータユニット15は、更に、ロケータ演算部17に接続され、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶された記憶媒体が接続されている。以下、この記憶媒体を、道路地図データベース18と言う。道路地図データベース18は、HDD等の大容量記憶媒体によって構成されている。道路地図データベース18は、例えば自動運転を行う際に必要な車線データとして、道路種別(例えば、一般路、山岳路、高速道路、および競技用走行路等)、車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度等のデータによって構成されている。
【0021】
ロケータ演算部17は、例えば、ドライバが設定した目的地に基づき、現在地から目的地までのルート地図情報を道路地図データベース18に格納されている地図情報から取得すると共に、GNSS受信機16で受信した測位信号に基づいて車両1の位置座標を取得する。そして、ロケータ演算部17は、取得した位置座標をルート地図情報上にマップマッチングして、道路地図上の自車位置を推定すると共に走行車線を特定する。
【0022】
本実施の形態では特に、ロケータ演算部17は、車両1が走行する車線の幅の情報を取得する車線幅取得部17Aを含んでいる。車線幅取得部17Aは、上述のように特定した走行車線の車線幅を、道路地図データベース18から取得する。
【0023】
カメラユニット21は、車両1の外部環境を認識する装置である。ここで、図1および図3を参照して、カメラユニット21について詳しく説明する。図3は、カメラユニット21の構成を示す機能ブロック図である。カメラユニット21は、メインカメラ22aとサブカメラ22bとを含むステレオカメラによって構成された車載カメラ22と、画像処理部23と、区画線検出部24と、形状情報検出部25とを含んでいる。
【0024】
カメラ22a,22bは、例えば、車室内におけるフロントガラスの近傍において、それぞれ、車幅方向の中央から所定の間隔をあけて配置されている。カメラ22a,22bは、それぞれ、CCDまたはCMOS等の撮像素子を含んでいる。撮像素子は、車両1が走行している進行方向の前方の走行環境の画像を撮像する。
【0025】
画像処理部23は、カメラ22a,22bによって撮像された一対のアナログ画像を所定の輝度階調のデジタル画像に変換する。また、画像処理部23は、メインカメラ22aによって撮像された画像に基づいて基準画像データを生成し、サブカメラ22bによって撮像された画像に基づいて比較画像データを生成する。そして、画像処理部23は、基準画像データと比較画像データの差分に基づいて、車両1から対象物までの距離である距離データを算出する。
【0026】
区画線検出部24は、車両1が走行する車線を区画する左右の区画線を検出することができるように構成されている。具体的には、区画線検出部24は、車両1が走行する車線の左右両側に描画されている車線区画線を認識すると共に、車線区画線の認識結果に基づいて、車両1の車幅方向の位置である車両横位置と、目標横位置と、車両1が走行する車線の曲率(以下、車線曲率と記す。)と、車線に対する車両1のヨー角(以下、対車線ヨー角と記す。)を算出する。目標横位置は、例えば、左右の車線区画線から規定される車線の中央である。
【0027】
区画線検出部24は、例えば以下のようにして、車線曲率を算出する。まず、基準画像データと比較画像データに基づいて、仮想道路平面を生成する。次に、距離データに基づいて、生成した仮想道路平面上に、左右の車線区画線の内側エッジをプロットする。次に、左右の内側エッジの曲率を算出する。次に、左右の内側エッジの曲率に基づいて、車線曲率を算出する。
【0028】
形状情報検出部25は、走行環境の画像に基づいて、車両1が走行する車線の道路形状と対応関係を有する情報であって、左右の区画線以外の情報である形状情報を検出することができるように構成されている。形状情報は、車線に沿って延在するものの情報であり、例えば、車線に隣接する縁石の情報、車線を含む道路の道路端の情報、および車線に隣接する隣接車線と対応関係を有する情報のうち、少なくとも1つの情報である。
【0029】
EPS制御ユニット8、自動操舵制御ユニット11、ロケータユニット15(道路地図データベース18を除く)およびカメラユニット21(カメラ22a,22bを除く)は、それぞれ、例えば、CPU、ROMおよびRAM等を備えたマイクロコンピュータを主体として構成されている。ROMにはシステム毎に設定されている動作を実現するための制御プログラムが記憶されている。EPS制御ユニット8、自動操舵制御ユニット11、ロケータユニット15およびカメラユニット21の機能は、CPUがROMから制御プログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0030】
次に、図4を参照して、本実施の形態に係る自動操舵制御装置100の構成について説明する。図4は、自動操舵制御装置100の要部の構成を示す機能ブロック図である。自動操舵制御装置100は、道路情報取得装置であるロケータユニット15と、外部環境認識装置であるカメラユニット21と、走行制御装置とを備えている。走行制御装置は、走行制御部と、操舵角制御部とを含んでいる。走行制御部は、車両の走行状態を制御する走行制御を実行するものであり、主に自動操舵制御ユニット11によって構成されている。操舵角制御部は、走行制御部(自動操舵制御ユニット11)からの指令信号に基づいて車両1の操舵角を制御するものであり、主にEPS装置6によって構成されている。
【0031】
自動操舵制御ユニット11は、左右の区画線の両方に基づいて実行される自動操舵制御である両側区画線制御と、左右の区画線の一方のみ基づいて実行される自動操舵制御である片側区画線制御とを実行することができる。本実施の形態では特に、上記の自動操舵制御は、車両1を車線内に維持する車線維持制御である。
【0032】
自動操舵制御ユニット11は、判定部31と、車線維持制御部32と、目標トルク算出部33とを含んでいる。判定部31は、カメラユニット21の区画線検出部24と形状情報検出部25から、左右の区画線の情報と形状情報を取得し、これらの情報に基づいて、車線維持制御を実行するか否かを判定する。
【0033】
車線維持制御部32は、両側区画線制御と片側区画線制御とを実行するための制御部である。車線維持制御部32は、判定部31における判定結果を取得して、車線維持制御として、両側区画線制御と片側区画線制御のいずれかを実行する。両側区画線制御を実行する場合には、車線維持制御部32は、カメラユニット21の区画線検出部24から、車両横位置、目標横位置、車線曲率および対車線ヨー角等の情報を取得すると共に、これらの情報と、操舵角センサ13が検出した操舵角と、車速センサ14Aが検出した車速とを用いて、車両1から所定の距離(前方注視距離)だけ前方に離れた所定の位置における車両1の目標位置と推定位置を算出する。
【0034】
片側区画線制御を実行する場合には、車線維持制御部32は、カメラユニット21の区画線検出部24によって検出された左右の区画線のうちの一方(以下、検出区画線と記す。)の情報を取得すると共に、車線の幅の情報を取得する。車線の幅の情報は、ロケータユニット15のロケータ演算部17の車線幅取得部17Aから取得してもよいし、過去に検出した左右の区画線から算出した車線の幅の情報であってもよい。車線維持制御部32は、検出区画線の情報と車線の幅の情報とを用いて、車両横位置、目標横位置、車線曲率および対車線ヨー角等を算出すると共に、算出した車両横位置、目標横位置、車線曲率および対車線ヨー角等と、操舵角センサ13が検出した操舵角と、車速センサ14Aが検出した車速とを用いて、車両1から所定の距離(前方注視距離)だけ前方に離れた所定の位置における車両1の目標位置と推定位置を算出する。
【0035】
車線維持制御部32は、更に、目標位置と推定位置の偏差の絶対値が減少するように車両1の目標操舵角を算出する。ここで、目標操舵角の算出方法の一例について説明する。まず、車線維持制御部32は、車両1を車線曲率に沿って走行させるための第1の初期目標操舵角を算出する。次に、車線維持制御部32は、対車線ヨー角を所定の目標ヨー角に一致させるための第2の初期目標操舵角を算出する。次に、車線維持制御部32は、目標位置から推定位置までの車両1の車幅方向の偏差である横位置偏差を算出すると共に、横位置偏差を0にするための第3の初期目標操舵角を算出する。次に、車線維持制御部32は、第1ないし第3の初期目標操舵角の和を、目標操舵角として算出する。
【0036】
目標トルク算出部33は、車線維持制御部32から目標操舵角を取得して、目標操舵角と、操舵角センサ13が検出した操舵角とを用いて、自動操舵制御(車線維持制御)において車両1を転舵させるためのトルクであって、操舵角を目標操舵角にするためにステアリングシャフト5に付加するトルクである目標トルクを算出する。そして、目標トルク算出部33は、目標トルクと対応関係を有する指令信号を、EPS装置6のEPS制御ユニット8に送信する。
【0037】
EPS制御ユニット8は、目標トルクに対応する指令信号を受信して、受信した指令信号に基づいて、上記の目標トルクがステアリングシャフト5に付加されるように、EPSモータ7を制御する。その結果、車両1の操舵角が制御される。なお、EPS制御ユニット8が受信する指令信号は、結果的に目標トルクがステアリングシャフト5に付加される信号であればよく、操舵角を制御する信号であってもよい。
【0038】
次に、本実施の形態における片側区画線制御の態様について説明する。始めに、比較のために、両側区画線制御について説明する。図5は、両側区画線制御を説明するための説明図である。両側区画線制御では、左側の区画線LLと右側の区画線LRが検出される。区画線LL,LRが検出されることにより、車線の形状を特定することが可能である。また、区画線LL,LRが検出されることにより、車両横位置および目標横位置を特定することが可能である。車両横位置および目標横位置は、区画線LLから車両1までの間隔CLと、区画線LRから車両1までの間隔CRから算出される。
【0039】
図6は、第1の態様の片側区画線制御を説明するための説明図である。図6には、左側の区画線LLのみが検出区画線として検出された例を示している。第1の態様の片側区画線制御では、車線維持制御部32は、まず、カメラユニット21の区画線検出部24から、検出区画線の情報を取得する。次に、車線維持制御部32は、ロケータユニット15のロケータ演算部17の車線幅取得部17Aから車線の幅Wの情報を取得する。次に、車線維持制御部32は、区画線LLと車線の幅Wとを用いて、右側の区画線LRに相当する仮想の曲線L1を想定する。次に、車線維持制御部32は、仮想の曲線L1を右側の区画線LRと見なして、車線の形状を特定すると共に、車両横位置および目標横位置を特定する。第1の態様の片側区画線制御では、仮想の曲線L1から車両1までの間隔CR1を算出し、間隔CRの代わりに間隔CR1を用いて車両横位置および目標横位置等を算出する。第1の態様の片側区画線制御は、ロケータユニット15によって道路地図上の自車位置を推定することができる場合に実行可能である。
【0040】
図7は、第2の態様の片側区画線制御を説明するための説明図である。第2の態様の片側区画線制御内容は、基本的には、第1の態様と同じである。ただし、第2の態様では、車線維持制御部32は、過去に検出した左右の区画線から算出した車線の幅Wの情報を取得する。なお、車線の幅Wの情報は、例えば、自動操舵制御ユニット11または他の制御ユニットに設けられた図示しない記憶部(RAM等)に記憶されている。第2の態様の片側区画線制御は、例えば、直前に両側区画線制御が実行されて、車線の幅Wの情報が記憶部に記憶されている場合に実行可能である。
【0041】
次に、図8および図9を参照して、形状情報について説明する。図8は、走行環境の画像の一例を示す説明図である。図9は、形状情報の一例を示す説明図である。図8において、符号200は画像を示し、符号201は車両1が走行する車線を示し、符号202は車線201に隣接する縁石を示し、符号203は車線201を含む道路の道路端を示し、符号204は車線201に隣接する隣接車線を示し、符号205は歩道を示している。また、符号LLは、車線201を区画する左側の区画線を示し、符号LRは、車線201を区画する右側の区画線を示している。
【0042】
形状情報検出部25は、図8に示した画像200から、縁石202、道路端203および隣接車線204を抽出して、縁石202、道路端203および隣接車線204を、車線201の道路形状と対応関係を有する情報として検出する。図9において、符号202,203,204を付した太線は、抽出した縁石202、道路端203および隣接車線204を示している。
【0043】
形状情報検出部25は、抽出した縁石202、道路端203および隣接車線204の各々の曲率を算出することができるように構成されている。これらの曲率の算出方法は、例えば、区画線検出部24によって算出される左右の区画線の曲率(左右の内側エッジの曲率)の算出方法と同じである。
【0044】
次に、自動操舵制御装置100の動作について説明する。始めに、図10を参照して、自動操舵制御の実行判定処理について説明する。図10に示した実行判定処理では、まず、自動操舵制御ユニット11の判定部31が、カメラユニット21の区画線検出部24から情報を取得して、左右の区画線の両方が検出された否かを判定する(ステップS11)。左右の区画線の両方が検出された場合(Y)、自動操舵制御ユニット11の車線維持制御部32が、両側区画線制御を実行する(ステップS12)。
【0045】
ステップS11において左右の区画線の両方が検出されなかった場合(N)、判定部31は、左右の区画線のいずれかが検出された否かを判定する(ステップS13)。左右の区画線のいずれかが検出された場合(Y)、判定部31は、判定処理を実行する(ステップS14)。判定処理については、後で詳しく説明する。
【0046】
ステップS12の実行後、ステップS14の実行後、あるいはステップS13において左右の区画線のいずれかが検出されなかった場合(N)、自動操舵制御ユニット11が、自動操舵制御(車線維持制御)を終了するか否かを判定する(ステップS15)。ステップS15において終了すると判定された場合(Y)には、自動操舵制御を終了する。ステップS15において終了しないと判定された場合(N)には、ステップS11に戻る。
【0047】
次に、図11を参照して、図10に示した判定処理(ステップS14)について説明する。判定処理では、まず、判定部31が、カメラユニット21の形状情報検出部25から情報を取得して、形状情報が検出されたか否かを判定する(ステップS21)。
【0048】
ステップS21において形状情報が検出された場合(Y)、判定部31は、区画線検出部24から検出区画線の情報を取得すると共に、形状情報検出部25から形状情報を取得して、検出区画線の信頼度を算出する(ステップS22)。信頼度は、検出区画線の曲率またはヨー角と、形状情報検出部25によって抽出された縁石202、道路端203および隣接車線204等のうちのいずれかの曲率またはヨー角とを用いて算出される。信頼度は、例えば、検出区画線と形状情報の各々の対応するパラメータ同士の差(曲率の差またはヨー角の差)の絶対値であってもよい。
【0049】
次に、判定部31は、信頼度を用いて、検出区画線が信頼できるか否かを判定する(ステップS23)。例えば、信頼度が、検出区画線と形状情報の対応するパラメータ同士の差の絶対値である場合、判定部31は、この絶対値が小さい場合には、信頼度が高いすなわち検出区画線が信頼できると判定し、この絶対値が大きい場合には、信頼度が低いすなわち検出区画線が信頼できないと判定する。
【0050】
ステップS23において検出区画線が信頼できると判定された場合(Y)、車線維持制御部32が、片側区画線制御を実行する(ステップS24)。ステップS24の実行後、ステップS21において形状情報が検出されない場合(N)、あるいはステップS23において検出区画線が信頼できないと判定された場合(N)、判定処理を終了する。
【0051】
次に、本実施の形態に係る自動操舵制御装置100の作用および効果について説明する。前述のように、本実施の形態では、区画線検出部24によって左右の区画線の一方のみが検出区画線として検出された場合には、判定部31は、検出区画線の情報と形状情報とを比較して、片側区画線制御を実行するか否かを判定する判定処理を実行する。これにより、本実施の形態によれば、左右の区画線の一方しか検出されない場合においても自動操舵制御(車線維持制御)を実行することができる。
【0052】
上記の判定処理は、自動操舵制御(車線維持制御)が実行されていない状態において実行されるものであってもよい。すなわち、自動操舵制御(車線維持制御)を開始または再開しようとしたときに、左右の区画線の一方しか検出されない場合には、車線の幅を特定することができないと共に、検出区画線の曲率またはヨー角が、実際の車線の曲率またはヨー角と一致するか否か判断することができない。これに対し、上記の判定処理によれば、検出区画線が信頼できるか否かを判定することができる。本実施の形態では、車線維持制御部32は、自動操舵制御(車線維持制御)が実行されていない状態において信頼度が高い場合には片側区画線制御を実行し、自動操舵制御(車線維持制御)が実行されていない状態において信頼度が低い場合には片側区画線制御を実行しない。これにより、本実施の形態によれば、左右の区画線の一方しか検出されない場合においても自動操舵制御(車線維持制御)を開始または再開することができる。
【0053】
また、本実施の形態では、検出区画線の情報と車線幅取得部17Aが取得した車線の幅の情報とを用いて、片側区画線制御(第1の態様の片側区画線制御)を実行することをできる。これにより、本実施の形態によれば、特に、自動操舵制御(車線維持制御)を開始または再開しようとしたときに、左右の区画線の一方しか検出されない場合においても、片側区画線制御を実行することができる。
【0054】
なお、両側区画線制御が実行されている状態において、左右の区画線の一方のみが検出区画線として検出された場合には、上記の判定処理を行ってもよいし、判定処理を行わずに片側区画線制御を実行してもよい。この場合、第2の態様の片側区画線制御を実行してもよい。
【0055】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態では、自動操舵制御ユニット11は、所定の条件を満たした場合に、両側区画線制御を中止して、片側区画線制御を実行する切替処理を実行する。以下、図12を参照して、切替処理について説明する。図12は、切替処理を説明するための説明図である。図12は、車両1が走行する車線の前方右側に右折レーンまたは分岐車線が存在する場合の例である。
【0056】
右折レーンまたは分岐車線の手前では、左側の区画線LLと右側の区画線LR1に基づいて算出された、車両横位置、目標横位置、車線曲率および対車線ヨー角等のパラメータを用いて両側区画線制御が実行される。車両1が右折レーンまたは分岐車線に接近すると、右側の区画線として、右折レーンまたは分岐車線の区画線LR2が検出される場合がある。この場合、区画線LLと区画線LR2に基づいて上記のパラメータが算出されるため、車線維持制御を実行している場合には、区画線LR2に起因して目標横位置が本来の目標横位置(例えば、車線の中央)からずれてしまう。その結果、図12における破線の矢印で示したように、車両1の進行方向がずれてしまう。
【0057】
本実施の形態では、車線維持制御の実行中に、上記のように車両1がずれることを防止するために、右折レーンまたは分岐車線に接近する際には、自動操舵制御ユニット11は、両側区画線制御を中止して、片側区画線制御を実行する切替処理を実行する。ここで、左右の区画線のうち曲率が大きい方の区画線は、右折レーンまたは分岐車線の区画線LR2であると推定できる。そのため、片側区画線制御では、左右の区画線のうち曲率が小さい方の区画線LLに基づいて、車線維持制御が実行される。これにより、図12における実線の矢印で示したように、車両1の進行方向をずらさずに車線維持制御を実行することができる。
【0058】
右折レーンまたは分岐車線の通過後、右側の区画線LR3が検出された場合には、自動操舵制御ユニット11の車線維持制御部32は、片側区画線制御を中止して、両側区画線制御を実行する。
【0059】
上記の説明は、車両1が走行する車線の前方左側に左折レーンまたは分岐車線が存在する場合にも当てはまる。
【0060】
なお、第1の実施の形態で説明したように、片側区画線制御の態様としては、第1の態様と第2の態様がある。切替処理によって実行される片側区画線制御の態様は、第1の態様であってもよいし、第2の態様であってもよい。
【0061】
次に、第1の実施の形態における図4と、図13を参照して、切替処理に関連する自動操舵制御装置100の動作について説明する。図13は、切替処理を示すフローチャートである。図13に示した切替処理は、両側区画線制御の実行中に、所定の間隔で実行される。
【0062】
切替処理では、まず、自動操舵制御ユニット11の判定部31が、カメラユニット21の区画線検出部24から情報を取得して、左右の区画線の各々の曲率の差(以下、曲率差と記す。)を算出すると共に、車速センサ14Aから車速を取得して、左右の区画線と車速に基づいて操舵角を算出する(ステップS31)。判定部31が算出する操舵角は、目標操舵角と現在の実舵角との差であってもよい。
【0063】
次に、判定部31は、曲率差が第1の閾値以上か否かを判定する(ステップS32)。なお、曲率差の符号は正である。曲率差が第1の閾値以上である場合(Y)、判定部31は、操舵角が第2の閾値以上か否かを判定する(ステップS33)。なお、操舵角は、正の値である。操舵角が第2の閾値以上である場合(Y)、自動操舵制御ユニット11の車線維持制御部32は、両側区画線制御を中止して、片側区画線制御を実行する(ステップS34)。
【0064】
ステップS34の実行後、ステップS32において曲率差が第1の閾値未満の場合(N)、あるいはステップS33において操舵角が第2の閾値未満の場合(N)、切替処理を終了する。
【0065】
上述のように、本実施の形態では、切替処理において操舵角を用いている。これにより、本実施の形態によれば、操舵角がある程度変化する前に、片側区画線制御を実行することができる。
【0066】
また、操舵角は、車速に依存して変化する。そのため、本実施の形態では、車速に応じて片側区画線制御を実行するタイミングを変更しているとも言える。本実施の形態によれば、特に、車速が比較的速い場合に、片側区画線制御に切り替えるタイミングが遅れることを防止することができる。
【0067】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
【0068】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態では、切替処理の内容が、第2の実施の形態と異なっている。以下、第1の実施の形態における図4と、図14を参照して、本実施の形態における切替処理に関連する自動操舵制御装置100の動作について説明する。図14は、切替処理を示すフローチャートである。図14に示した切替処理は、両側区画線制御の実行中に、所定の間隔で実行される。
【0069】
本実施の形態における切替処理では、まず、自動操舵制御ユニット11の判定部31が、カメラユニット21の区画線検出部24から、左右の区画線の各々の曲率の情報を取得して、各曲率が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS41)。なお、各曲率は、正の値である。本実施の形態では特に、各曲率は、所定の区間内の区画線の候補となる点の情報から算出される曲率であってもよい。また、各曲率は、上記の所定の区間を所定の距離だけずらしながら算出された曲率であってもよい。所定の距離は、所定の区間よりも短くてもよい。
【0070】
ステップS41において各曲率の一方が閾値以上になる場合(Y)、自動操舵制御ユニット11の車線維持制御部32は、両側区画線制御を中止して、片側区画線制御を実行する(ステップS42)。
【0071】
ステップS42の実行後、あるいはステップS41において各曲率が閾値未満の場合(N)、切替処理を終了する。
【0072】
本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第2の実施の形態と同様である。
【0073】
本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。例えば、本発明の自動操舵制御は、車線逸脱防止制御等の車線維持制御以外の制御であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…車両、2…ステアリング機構、3…タイロッド、4…ステアリングホイール、5…ステアリングシャフト、6…EPS装置、7…EPSモータ、8…EPS制御ユニット、9…操舵トルクセンサ、10…車内ネットワーク、11…自動操舵制御ユニット、13…操舵角センサ、14…走行状態検出部、14A…車速センサ、14B…加速度センサ、14C…ジャイロセンサ、15…ロケータユニット、16…GNSS受信機、17…ロケータ演算部、17A…車線幅取得部、18…道路地図データベース、21…カメラユニット、22…車載カメラ、23…画像処理部、24…区画線検出部、25…形状情報検出部、31…判定部、32…車線維持制御部、33…目標トルク算出部、100…自動操舵制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14