(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/335 20060101AFI20240919BHJP
B41J 2/345 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B41J2/335 101B
B41J2/345 A
B41J2/345 B
(21)【出願番号】P 2020170260
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】木▲瀬▼ 信和
(72)【発明者】
【氏名】藤田 明良
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-145164(JP,A)
【文献】特開平04-250074(JP,A)
【文献】実開平02-133349(JP,U)
【文献】特開2000-246935(JP,A)
【文献】特開平02-158350(JP,A)
【文献】米国特許第06133929(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/335
B41J 2/345
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に支持され、かつ、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、
前記基板に支持され、かつ、前記複数の発熱部への通電経路を構成する配線層と、
を備えており、
前記配線層は、前記複数の発熱部の各々に副走査方向の一方から繋がる第1電極部と、各々が前記複数の発熱部の各々に副走査方向の他方から繋がる第2電極部と、を含み、
前記複数の発熱部の各々は、前記基板の厚さ方向に見て、副走査方向において中央部に位置する副走査中央部と、副走査方向において前記副走査中央部を挟んで配置された一対の副走査側方部と、を含み、
前記一対の副走査側方部は、一方が前記第1電極部に繋がり、他方が前記第2電極部に繋がっており、
前記副走査中央部の副走査方向単位抵抗値は、前記一対の副走査側方部の各々の副走査方向単位抵抗値よりも小さく、
前記副走査中央部の前記副走査方向単位抵抗値は、前記副走査中央部の副走査方向における単位長さ当たりの抵抗値であり、
前記一対の副走査側方部の各々の前記副走査方向単位抵抗値は、前記一対の副走査側方部の各々の副走査方向における単位長さ当たりの抵抗値であ
り、
前記複数の発熱部の各々は、前記副走査中央部を覆う被覆部を含み、
前記被覆部は、前記抵抗体層よりも抵抗値が小さく、且つ前記副走査中央部の主走査方向の一方の端部から他方の端部まで直線的に繋がっている、
ことを特徴とするサーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記副走査中央部の主走査方向に沿う寸法は、前記一対の副走査側方部の主走査方向に沿う各寸法よりも大きい、
請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記副走査中央部は、前記一対の副走査側方部の各々よりも、主走査方向の両側に突き出ている、
請求項2に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記複数の発熱部の各々は、主走査方向において中央部に位置する主走査中央部と、主走査方向において前記主走査中央部を挟んで配置された一対の主走査側方部と、を含み、
前記主走査中央部および前記一対の主走査側方部はそれぞれ、前記第1電極部および前記第2電極部に繋がっており、
前記主走査中央部の主走査方向単位抵抗値は、前記一対の主走査側方部の各々の主走査方向単位抵抗値よりも大きく、
前記主走査中央部の前記主走査方向単位抵抗値は、前記主走査中央部と前記第1電極部または前記第2電極部のいずれか一方との主走査方向における接触長当たりの抵抗値であり、
前記一対の主走査側方部の各々の前記主走査方向単位抵抗値は、前記一対の主走査側方部の各々と前記第1電極部または前記第2電極部のいずれか一方との主走査方向における接触長当たりの抵抗値である、
請求項1ないし
請求項3のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記主走査中央部の副走査方向に沿う寸法は、前記一対の主走査側方部の副走査方向に沿う各寸法よりも大きい、
請求項4に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記厚さ方向に見て、前記一対の主走査側方部の各々と前記第1電極部との境界は、前記主走査中央部と前記第1電極部との境界よりも、副走査方向の他方に位置する、
請求項5に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記厚さ方向に見て、前記一対の主走査側方部の各々と前記第2電極部との境界は、前記主走査中央部と前記第2電極部との境界よりも、副走査方向の一方に位置する、
請求項5または
請求項6のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記基板と前記抵抗体層との間に挟まれた絶縁層をさらに備える、
請求項4ないし
請求項7のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記主走査中央部には、前記厚さ方向に見て副走査方向の一方から他方に繋がるスリットが形成されており、
前記主走査中央部は、前記スリットにより主走査方向に分離された一対の分離部を含み、
前記一対の分離部は、前記厚さ方向に見て、主走査方向に前記絶縁層を挟んで配置されている、
請求項8に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記抵抗体層は、前記基板上に形成され、
前記配線層は、前記抵抗体層の一部を露出させつつ前記抵抗体層上に積層された第1導体層と、前記第1導体層の一部を露出させつつ前記第1導体層上に積層された第2導体層とを含み、
前記第2導体層は、副走査方向における単位長さ当たりの抵抗値が前記複数の発熱部の各々よりも小さく、
前記第1導体層は、副走査方向における単位長さ当たりの抵抗値が前記複数の発熱部の各々と前記
第2導体層との間をとる、
請求項1ないし
請求項9のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
前記第1導体層の構成材料は、Tiを含み、
前記第2導体層の構成材料は、Cuを含む、
請求項10に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
前記第1電極部および前記第2電極部はそれぞれ、前記第1導体層のうちの前記第2導体層から露出した部分が、前記厚さ方向に見て前記複数の発熱部の各々に繋がっている、
請求項10または
請求項11のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
前記基板は、前記厚さ方向の一方を向く主面と、前記主面から突き出し、かつ、主走査方向に伸びる凸部とを有し、
前記複数の発熱部の各々は、前記凸部の上に形成されている、
請求項1ないし
請求項12のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
前記基板上に形成され、前記抵抗体層および前記配線層を覆う保護層をさらに備える、請求項1ないし
請求項13のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
前記基板は、単結晶半導体からなる、
請求項1ないし
請求項14のいずれか一項に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項16】
前記単結晶半導体は、Siである、
請求項15に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項17】
基板と、
前記基板に支持され、かつ、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、
前記基板に支持され、かつ、前記複数の発熱部への通電経路を構成する配線層と、
を備えており、
前記配線層は、前記複数の発熱部の各々に副走査方向の一方から繋がる第1電極部と、各々が前記複数の発熱部の各々に副走査方向の他方から繋がる第2電極部と、を含み、
前記複数の発熱部の各々は、前記基板の厚さ方向に見て、主走査方向において中央部に位置する主走査中央部と、主走査方向において前記主走査中央部を挟んで配置された一対の主走査側方部と、を含み、
前記主走査中央部および前記一対の主走査側方部はそれぞれ、前記第1電極部および前記第2電極部に繋がっており、
前記主走査中央部の主走査方向単位抵抗値は、前記一対の主走査側方部の各々の主走査方向単位抵抗値よりも大きく、
前記主走査中央部の前記主走査方向単位抵抗値は、前記主走査中央部と前記第1電極部または前記第2電極部のいずれか一方との主走査方向における接触長当たりの抵抗値であり、
前記一対の主走査側方部の各々の前記主走査方向単位抵抗値は、前記一対の主走査側方部の各々と前記第1電極部または前記第2電極部のいずれか一方との主走査方向における接触長当たりの抵抗値であ
り、
前記主走査中央部には、前記厚さ方向に見て副走査方向の一方から他方に繋がるスリットが形成されており、
前記主走査中央部は、前記スリットにより主走査方向に分離された一対の分離部を含む、
ことを特徴とするサーマルプリントヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のサーマルプリントヘッドの一例が開示されている。同文献に記載されたサーマルプリントヘッドは、支持基板と、抵抗体層(発熱抵抗体層)と、配線層(電極層)と、を備えている。支持基板は、抵抗体層および配線層を支持する。抵抗体層および配線層は、支持基板上に積層されている。抵抗体層は、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する。配線層は、複数の発熱部に通電するための通電経路を構成する。配線層は、副走査方向において、複数の発熱部を挟んで対向する。各発熱部は、支持基板の厚さ方向に見てたとえば矩形状をなす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のサーマルプリントヘッドにおいては、発熱部における発熱温度分布は、発熱部の中央部分がピークとなっている。これは、発熱部の中央部分が相対的に放熱されにくく、発熱時の熱が当該中央部分に集中するからである。しかしながら、発熱部の発熱量が一定以上になると、印字媒体への印字濃度が飽和するため、必要以上の発熱は印字効率を低下させることになる。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、発熱部の中央部分における熱集中を緩和して、印字効率を向上させることができるサーマルプリントヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、基板と、前記基板に支持され、かつ、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、前記基板に支持され、かつ、前記複数の発熱部への通電経路を構成する配線層と、を備えており、前記配線層は、前記複数の発熱部の各々に副走査方向の一方から繋がる第1電極部と、各々が前記複数の発熱部の各々に副走査方向の他方から繋がる第2電極部と、を含み、前記複数の発熱部の各々は、前記基板の厚さ方向に見て、副走査方向において中央部に位置する副走査中央部と、副走査方向において前記副走査中央部を挟んで配置された一対の副走査側方部と、を含み、前記一対の副走査側方部は、一方が前記第1電極部に繋がり、他方が前記第2電極部に繋がっており、前記副走査中央部の副走査方向単位抵抗値は、前記一対の副走査側方部の各々の副走査方向単位抵抗値よりも小さく、前記副走査中央部の前記副走査方向単位抵抗値は、前記副走査中央部の副走査方向における単位長さ当たりの抵抗値であり、前記一対の副走査側方部の各々の前記副走査方向単位抵抗値は、前記一対の副走査側方部の各々の副走査方向における単位長さ当たりの抵抗値であることを特徴とする。
【0007】
本開示の第2の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、基板と、前記基板に支持され、かつ、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、前記基板に支持され、かつ、前記複数の発熱部への通電経路を構成する配線層と、を備えており、前記配線層は、前記複数の発熱部の各々に副走査方向の一方から繋がる第1電極部と、各々が前記複数の発熱部の各々に副走査方向の他方から繋がる第2電極部と、を含み、前記複数の発熱部の各々は、前記基板の厚さ方向に見て、主走査方向において中央部に位置する主走査中央部と、主走査方向において前記主走査中央部を挟んで配置された一対の主走査側方部と、を含み、前記主走査中央部および前記一対の主走査側方部はそれぞれ、前記第1電極部および前記第2電極部に繋がっており、前記主走査中央部の主走査方向単位抵抗値は、前記一対の主走査側方部の各々の主走査方向単位抵抗値よりも大きく、前記主走査中央部の前記主走査方向単位抵抗値は、前記主走査中央部と前記第1電極部または前記第2電極部のいずれか一方との主走査方向における接触長当たりの抵抗値であり、前記一対の主走査側方部の各々の前記主走査方向単位抵抗値は、前記一対の主走査側方部の各々と前記第1電極部または前記第2電極部のいずれか一方との主走査方向における接触長当たりの抵抗値であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示のサーマルプリントヘッドによれば、発熱部の中央部分における熱集中を緩和して、印字効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
【
図2】
図2に示す平面図の一部を拡大した要部平面図である。
【
図3】
図2の一部(領域III)を拡大した要部拡大平面図である。
【
図4】第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを備えるサーマルプリンタの部分拡大断面図であって、
図1のIV-IV線に沿う断面図である。
【
図5】
図4に示す断面の一部を拡大した要部断面図であって、
図2のV-V線に沿う断面図である。
【
図6】
図5の一部を拡大した要部拡大断面図である。
【
図7】第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す要部断面図である。
【
図8】第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す要部断面図である。
【
図9】第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す要部拡大断面図である。
【
図10】第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す要部断面図である。
【
図11】第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す要部断面図である。
【
図12】第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す要部断面図である。
【
図13】第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す要部断面図である。
【
図14】第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドの製造方法の一工程を示す要部拡大断面図である。
【
図15】第2実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【
図16】第3実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【
図17】第4実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【
図18】
図17のXVIII-XVIII線に沿う要部拡大断面図である。
【
図19】第5実施形態にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【
図21】変形例にかかる発熱部を示す要部拡大平面図である。
【
図22】変形例にかかる発熱部を示す要部拡大平面図である。
【
図23】変形例にかかる発熱部を示す要部拡大平面図である。
【
図24】変形例にかかる発熱部を示す要部拡大平面図である。
【
図25】変形例にかかる発熱部を示す要部拡大平面図である。
【
図26】変形例にかかる発熱部を示す要部拡大平面図である。
【
図27】変形例にかかる配線層を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示のサーマルプリントヘッドの好ましい実施の形態について、図面を参照して、以下に説明する。以下の説明において、同一あるいは類似の構成要素については、同じ符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
図1~
図6は、第1実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA1を示している。サーマルプリントヘッドA1は、ヘッド基板1、絶縁層19、保護層2、配線層3、抵抗体層4、接続基板5、複数のボンディングワイヤ61、複数のドライバIC7、保護樹脂78および放熱部材8を備えている。サーマルプリントヘッドA1は、印刷媒体(図示略)に印字を施すサーマルプリンタPr(
図4参照)に組み込まれるものである。サーマルプリンタPrは、サーマルプリントヘッドA1およびプラテンローラ91を備える。プラテンローラ91は、サーマルプリントヘッドA1に正対する。印刷媒体は、サーマルプリントヘッドA1とプラテンローラ91との間に挟まれ、このプラテンローラ91によって、副走査方向に搬送される。このような印刷媒体としては、たとえばバーコードシートやレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。サーマルプリントヘッドA1は、後に詳述する構成によって、抵抗体層4に複数の発熱部41Aが形成されており、複数の発熱部41Aを選択的に発熱駆動させることで、印刷媒体に印字を行う。プラテンローラ91に代えて、平坦なゴムからなるプラテンを使用してもよい。このプラテンは、大きな曲率半径を有する円柱状のゴムにおける、断面視して弓形状の一部分を含む。本開示において、「プラテン」という用語は、プラテンローラ91と平坦なプラテンとの双方を含む。
【0012】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。
図2は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部平面図である。
図3は、
図2の一部(領域III)を拡大した部分拡大図である。
図4は、サーマルプリントヘッドA1を備えるサーマルプリンタPrの部分拡大断面図であって、
図1のIV-IV線に沿う断面図である。
図5は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部断面図であって、
図2のV-V線に沿う断面図である。
図6は、
図5の一部を拡大した部分拡大図である。
図1~
図3においては、保護層2を省略している。
図2においては、複数のボンディングワイヤ61および保護樹脂78を省略している。これらの図において、ヘッド基板1の厚さ方向をz、主走査方向をx、副走査方向をyとする。厚さ方向z、主走査方向xおよび副走査方向yは、互いに直交する。
図1~
図3においては、副走査方向yの図中下側が上流側であり、図中上側が下流側である。
図4~
図6においては、副走査方向yの図中右側が上流側であり、図中左側が下流側である。
【0013】
ヘッド基板1は、配線層3および抵抗体層4を支持する。ヘッド基板1は、主走査方向xを長手方向とする細長矩形状である。ヘッド基板1の大きさは、特に限定されないが、一例を挙げると、厚さ(厚さ方向zの寸法)が725μmであり、主走査方向xの寸法が50mm以上150mm以下であり、副走査方向yの寸法が2.0mm以上5.0mm以下である。
【0014】
ヘッド基板1は、単結晶半導体からなる。サーマルプリントヘッドA1における当該単結晶半導体は、たとえばシリコン(Si)である。ヘッド基板1は、単結晶半導体ではなく絶縁材料(たとえばアルミナなどのセラミックス)で構成されていてもよい。ヘッド基板1は、
図4~
図6に示すように、第1主面11および第1裏面12を有する。第1主面11および第1裏面12は、厚さ方向zに離間し、かつ、厚さ方向zにおいて互いに反対側を向く。配線層3および抵抗体層4は、第1主面11上に設けられる。
【0015】
ヘッド基板1は、
図4~
図6に示すように、凸部13を有する。凸部13は、第1主面11から厚さ方向zに突出しており、主走査方向xに長く伸びている。図示された例においては、凸部13は、ヘッド基板1の副走査方向y下流寄りに形成されている。凸部13は、ヘッド基板1の一部であることから、単結晶半導体であるSiからなる。
【0016】
凸部13は、
図6に示すように、頂部130、一対の第1傾斜部131A,131Bおよび一対の第2傾斜部132A,132Bを有する。
【0017】
頂部130は、凸部13のうち、第1主面11からの厚さ方向zに沿う距離が最も大きい部位である。頂部130は、たとえば第1主面11と略平行な面である。頂部130は、厚さ方向z視において、主走査方向xに長く伸びる細長矩形状である。
【0018】
一対の第1傾斜部131A,131Bは、
図6に示すように、頂部130の副走査方向y両側に繋がっている。第1傾斜部131Aは、副走査方向yの上流側から頂部130に繋がる。第1傾斜部131Bは、副走査方向yの下流側から頂部130に繋がる。
図6に示すように、一対の第1傾斜部131A,131Bはそれぞれ、第1主面11に対して、角度α1だけ傾斜している(第1傾斜角度α1を以て傾斜している)。一対の第1傾斜部131A,131Bはそれぞれ、厚さ方向z視において主走査方向xに長く伸びる細長矩形状の平面である。なお、凸部13は、一対の第1傾斜部131A,131Bに繋がり、頂部130の主走査方向x両端に隣接する傾斜部(図示略)を有していてもよい。
【0019】
一対の第2傾斜部132A,132Bは、
図6に示すように、一対の第1傾斜部131A,131Bに対して、副走査方向yにおいて頂部130と反対側から繋がる。第2傾斜部132Aは、副走査方向yにおいて、第1傾斜部131Aと第1主面11とに挟まれている。第2傾斜部132Aは、副走査方向yの上流側から第1傾斜部131Aに繋がり、副走査方向yの下流側から第1主面11に繋がる。第2傾斜部132Bは、副走査方向yにおいて、第1傾斜部131Bと第1主面11とに挟まれている。第2傾斜部132Bは、副走査方向yの下流側から第1傾斜部131Bに繋がり、副走査方向yの上流側から第1主面11に繋がる。
図6に示すように、一対の第2傾斜部132A,132Bはそれぞれ、第1主面11に対して、角度α2だけ傾斜している(第2傾斜角度α2を以て傾斜している)。角度α2は、角度α1よりも大きい。一対の第2傾斜部132A,132Bはそれぞれ、厚さ方向z視において主走査方向xに長く伸びる細長矩形状の平面である。一対の第2傾斜部132A,132Bはそれぞれ、第1主面11に繋がっている。なお、凸部13は、一対の第2傾斜部132A,132Bに繋がり、頂部130の主走査方向x両端の主走査方向x外方に位置する傾斜部(図示略)を有していてもよい。
【0020】
ヘッド基板1において、第1主面11は(100)面である。後述の製造方法によって形成された凸部13においては、第1主面11に対する各第1傾斜部131A,131Bの角度α1(
図6参照)は、たとえば30.1度であり、第1主面11に対する各第2傾斜部132A,132Bの角度α2(
図6参照)は、たとえば54.7度である。凸部13の厚さ方向z寸法は、たとえば150μm以上300μm以下である。
【0021】
絶縁層19は、
図5および
図6に示すように第1主面11および凸部13を覆っている。絶縁層19は、ヘッド基板1の第1主面11をより確実に絶縁するためのものである。絶縁層19の構成材料としては、たとえばTEOS(オルトケイ酸テトラエチル)を原料ガスとして成膜されるSiO
2(TEOS-SiO
2)が採用される。TEOS-SiO
2の代わりに、他の方法(たとえば熱酸化)によって成膜されたSiO
2(酸化膜)やSiN(窒化膜)が採用されてもよい。絶縁層19の厚さは特に限定されないが、その一例を挙げるとたとえば5μm以上15μm以下(好ましくは10μm以上15μm以下)である。
【0022】
配線層3は、複数の発熱部41Aに通電するための通電経路を構成する。配線層3は、ヘッド基板1に支持されている。配線層3は、
図5および
図6に示すように、抵抗体層4上に積層されている。なお、配線層3の形状および配置は、図示された例に限定されない。配線層3は、
図1および
図2に示すように、共通電極31、複数の個別電極32および複数の中継電極33を有する。
【0023】
複数の中継電極33の各々は、
図2および
図3に示すように、2つの帯状部331および連結部332を含む、2つの帯状部331は、副走査方向yに伸びる帯状である。2つの帯状部331は、互いに略平行に配置された状態で主走査方向xに離間している。2つの帯状部331はそれぞれ、隣接する発熱部41Aにそれぞれ接続している。
図2および
図3に示す例では、2つの帯状部331はそれぞれ、副走査方向yの下流側から各発熱部41Aに繋がっている。2つの帯状部331の主走査方向xの各寸法は、略同じである。連結部332は、2つの帯状部331のそれぞれに繋がる端部と、副走査方向yにおいて反対側の端部に接続されている。連結部332は、主走査方向xに伸びる帯状である。複数の中継電極33は、それぞれが開口を副走査方向y上流側に向けたコの字形状をなし、主走査方向xに等ピッチで配列されている。複数の中継電極33はそれぞれ、複数の発熱部41Aの副走査方向y下流側に位置する。
【0024】
共通電極31は、
図2に示すように、複数の直行部311、複数の分岐部312、複数の帯状部313、および、連結部314を含む。複数の直行部311はそれぞれ、副走査方向yに伸びる帯状である。複数の直行部311は、主走査方向xに等ピッチで配列されている。複数の直行部311の各先端側(副走査方向y下流側)には、分岐部312および2つの帯状部313が設けられている。当該2つの帯状部313は、隣接する発熱部41Aにそれぞれ接続している。
図2および
図3に示す例では、当該2つの帯状部313はそれぞれ、副走査方向yの上流側から発熱部41Aに繋がっている。各帯状部313の主走査方向xの寸法は、各帯状部331の主走査方向xの寸法と略同じである。また、帯状部313は、副走査方向yに見て帯状部331に重なる。複数の分岐部312はそれぞれ、各直行部311の先端に接続される。複数の分岐部312はそれぞれ、副走査方向yにおいて2つの帯状部313に繋がる各端部と反対側の端部に、各直行部311が接続されている。2つの帯状部313はそれぞれ、副走査方向yの上流側から発熱部41Aに繋がっている。連結部314は、複数の直行部311の基端側(副走査方向y上流側)に位置して、主走査方向xに沿って伸びている。連結部314には、複数の直行部311がそれぞれ繋がっている。連結部314は、ボンディングワイヤ61および接続基板5の配線を介して、コネクタ59に接続されており、駆動電圧が印加される。
【0025】
複数の個別電極32はそれぞれ、共通電極31に対して逆極性となる。複数の個別電極32は、
図2に示すように、主走査方向xに離間して配列されている。複数の個別電極32はそれぞれ、
図2に示すように、帯状部321およびボンディング部322を含む。各個別電極32において、帯状部321は、副走査方向yに伸びる帯状であり、発熱部41Aの副走査方向y上流側に位置する。
図3に示す例では、帯状部321は、先端側(副走査方向y下流側)で発熱部41Aに接続されている。帯状部321の主走査方向xの寸法は、各帯状部331の主走査方向xの寸法と略同じである。また、帯状部321の副走査方向y下流側の端部は、副走査方向yに見て帯状部331に重なる。各個別電極32において、ボンディング部322は、帯状部321の副走査方向y上流側の端部に設けられている。ボンディング部322は、ボンディングワイヤ61を介して、複数のドライバIC7のいずれかの出力パッド72(後述)のいずれかに接続している。
【0026】
サーマルプリントヘッドA1では、
図2に示すように、共通電極31の各直行部311が、2つの個別電極32の帯状部321に挟まれて配置されている。各中継電極33の2つの帯状部331の一方が接続される発熱部41Aは、共通電極31に接続しており、当該中継電極33の2つの帯状部331の他方が接続される発熱部41Aは、複数の個別電極32のいずれかに接続している。したがって、各個別電極32が通電することで、これに接続する発熱部41Aと、当該発熱部41Aに中継電極33を介して接続する発熱部41Aとに電流が流れて、これらの発熱部41Aが発熱する。つまり、2つの発熱部41Aが同時に発熱する。サーマルプリントヘッドA1では、各発熱部41Aが通電したとき、各発熱部41Aには、副走査方向yに沿って電流が流れる。
【0027】
配線層3(共通電極31、複数の個別電極32および複数の中継電極33のそれぞれ)は、
図5および
図6に示すように、厚さ方向zに積層された第1導体層301および第2導体層302を含んで構成されている。
【0028】
第1導体層301は、
図5および
図6に示すように、抵抗体層4上に形成されている。第1導体層301は、副走査方向yにおける単位長さ当たりの抵抗値が、抵抗体層4よりも低抵抗であり、かつ、第2導体層302よりも高抵抗な材料からなる。好ましくは、第1導体層301の電気伝導率は、たとえば10
-6~10
-7Ωmである。また、好ましくは、第1導体層301の熱伝導度は、たとえば100W/mよりも小さい。第1導体層301の構成材料としては、たとえばTi(チタン)が採用されるが、Tiの代わりに、Ta、Ga、Sn、PtIr、Pt、Tl(タリウム)、V(バナジウム)あるいはCrなどを採用してもよい。第1導体層301の形成方法は特に限定されないが、たとえばスパッタリング法やCVD法、めっきなどによって形成され、採用される構成材料により適宜選定される。たとえば、第1導体層301の構成材料がTiの場合、第1導体層301はスパッタリング法により形成される。第1導体層301の厚さは特に限定されないが、その一例を挙げると0.1μm以上0.2μm以下である。
【0029】
第2導体層302は、
図5および
図6に示すように、第1導体層301上に形成されている。第2導体層302は、第1導体層301を部分的に覆っている。よって、第1導体層301は第2導体層302から露出する部分がある。第2導体層302は、副走査方向yにおける単位長さ当たりの抵抗値が、抵抗体層4および第1導体層301よりも低抵抗な材料からなる。好ましくは、第2導体層302の電気抵抗率は、たとえば10
-7Ωm以下である。また、第2導体層302は、第1導体層301よりも熱伝導度が高い材料からなる。好ましくは、第2導体層302の熱導電度は、たとえば100W/m以上である。第2導体層302の構成材料は、たとえばCuが採用されるが、Cuの代わりに、Cu合金、Al、Al合金、Au、Ag、NiあるいはW(タングステン)などを採用してもよい。第2導体層302の形成方法は特に限定されないが、たとえばスパッタリング法やCVD法、めっきなどによって形成され、採用される構成材料により適宜選定される。たとえば、第2導体層302の構成材料がCuの場合、第2導体層302はスパッタリング法により形成される。なお、第2導体層302の構成材料がAu、Ag、Niである場合、一般的にはめっきにより形成されるが、この場合、第2導体層302は、シード層(たとえばCu)などを含んでいてもよい。第2導体層302は、第1導体層301よりも厚い。第2導体層302の厚さは、使用する材料、配線層3に流れる電流の値などに依存する。第2導体層302の厚さの一例を挙げると0.5μm以上5μm以下である。
【0030】
サーマルプリントヘッドA1では、
図3に示すように、各帯状部313(共通電極31)、各帯状部321(各個別電極32)、および、各帯状部331(各中継電極33)のそれぞれのうちの各発熱部41Aに繋がる部分は、第2導体層302から露出する第1導体層301によって構成されている。つまり、各帯状部313(共通電極31)、各帯状部321(各個別電極32)、および、各帯状部331(各中継電極33)のそれぞれは、第1導体層301のみで構成された部分と、第1導体層301と第2導体層302とが積層された部分とを含む。この構成とは異なり、各発熱部41Aに繋がる当該部分は、第1導体層301上に第2導体層302が積層された構成であってもよい。つまり、各帯状部313(共通電極31)、各帯状部321(各個別電極32)、および、各帯状部331(各中継電極33)のそれぞれは、形成範囲のすべてにおいて、第1導体層301と第2導体層302とが積層されている。
【0031】
抵抗体層4は、ヘッド基板1に支持されており、
図5および
図6に示すように、絶縁層19を介してヘッド基板1に支持されている。抵抗体層4は、複数の発熱部41Aを有している。複数の発熱部41Aは、各々に選択的に通電されることにより、印刷媒体を局所的に加熱する。各発熱部41Aは、抵抗体層4のうち配線層3から露出した領域である。複数の発熱部41Aは、主走査方向xに沿って配列されており、主走査方向xにおいて互いに離間する。抵抗体層4は、副走査方向yにおける単位長さ当たりの抵抗値が配線層3よりも高抵抗な材料からなる。好ましくは、抵抗体層4の電気抵抗率は、10
-6Ωm以上である。抵抗体層4の構成材料としては、たとえばTaNが採用されるが、TaNの代わりに、TaSiO
2、TiON、PolySi、Ta
2O
5、RuO
2、RuTiOあるいはTaSiNなどを採用してもよい。抵抗体層4の形成方法は特に限定されないが、たとえばスパッタリング法やCVD法、めっきなどによって形成され、採用される構成材料により適宜選定される。たとえば、抵抗体層4の構成材料がTaNの場合、抵抗体層4はスパッタリング法により形成される。抵抗体層4は、厚さが一様に形成されており、当該厚さの一例を挙げると0.02μm以上0.1μm以下(好ましくは0.08μm程度)である。
【0032】
各発熱部41Aは、凸部13上に配置されている。
図6に示す例では、各発熱部41Aは、第1傾斜部131Bから頂部130に跨って形成されている。各発熱部41Aの副走査方向y上流側の端部は、頂部130上に位置し、各発熱部41Aの副走査方向y下流側の端部は、第1傾斜部131B上に位置する。各発熱部41Aは、凸部13上に配置されていれば、
図6に示す位置に限定されない。
【0033】
各発熱部41Aは、
図3に示すように、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bを含む。
【0034】
副走査中央部421は、厚さ方向z視において、副走査方向y中央に位置する。一対の副走査側方部422A,422Bは、厚さ方向z視において、副走査中央部421を挟んで配置されている。副走査側方部422Aは、副走査中央部421に対して副走査方向y上流側に位置する。副走査側方部422Aは、副走査方向y上流側の端部が帯状部313(共通電極31)または帯状部321(個別電極32)のいずれかに繋がり、副走査方向y下流側の端部が副走査中央部421に繋がる。副走査側方部422Bは、副走査中央部421に対して副走査方向y下流側に位置する。副走査側方部422Bは、副走査方向y上流側の端部が副走査中央部421に繋がり、副走査方向y下流側の端部が各帯状部331(中継電極33)に繋がる。副走査中央部421と一対の副走査側方部422A,422Bとの各境界は、
図3に示すように、主走査方向xに略平行する直線である。
【0035】
各発熱部41Aでは、上述の通り、副走査方向yに沿って電流が流れる。よって、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bは、各発熱部41Aに流れる電流の向きに沿って配置されている。つまり、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bは、帯状部321と帯状部331との間、または、帯状部313と帯状部331との間において、電気的に直列に接続された構成となる。このため、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bに流れる電流値は略同じとなり、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bのうち抵抗値が大きい部分において、発熱量が大きくなる。
【0036】
各発熱部41Aは、副走査中央部421の副走査方向単位抵抗値R11が、一対の副走査側方部422A,422Bの各々の副走査方向単位抵抗値R12よりも小さい。副走査中央部421の副走査方向単位抵抗値R11は、副走査中央部421の副走査方向yにおける単位長さ当たりの抵抗値であり、副走査中央部421全体の抵抗値を副走査中央部421の副走査方向yの寸法で除算することで算出される。副走査側方部422Aの副走査方向単位抵抗値R12は、副走査側方部422Aの副走査方向yにおける単位長さ当たりの抵抗値であり、副走査側方部422A全体の抵抗値を副走査側方部422Aの副走査方向yの寸法で除算することで算出される。副走査側方部422Bの副走査方向単位抵抗値R12は、副走査側方部422Bの副走査方向yにおける単位長さ当たりの抵抗値であり、副走査側方部422B全体の抵抗値を副走査側方部422Bの副走査方向yの寸法で除算することで算出される。
【0037】
図3に示す例では、各発熱部41Aは、副走査中央部421の一部が、一対の副走査側方部422A,422Bのそれぞれよりも主走査方向xの両側に突き出ている。このため、副走査中央部421の主走査方向xに沿う寸法は、一対の副走査側方部422A,422Bの主走査方向xに沿う各寸法よりも大きい。このことと、抵抗体層4の厚さが一様に形成されていることから、副走査中央部421の副走査方向yに直交する断面は、一対の副走査側方部422A,422Bの副走査方向yに直交する各断面よりも大きいことになる。電気抵抗値が導体の断面積に反比例することから、副走査中央部421の抵抗値が一対の副走査側方部422A,422Bの各抵抗値よりも小さくなる。これにより、副走査中央部421の副走査方向単位抵抗値R11が一対の副走査側方部422A,422Bの各々の副走査方向単位抵抗値R12よりも小さくなる。
【0038】
各発熱部41Aは、
図3に示すように、主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bを含む。
【0039】
主走査中央部431は、厚さ方向z視において、副走査方向y中央に位置する。一対の主走査側方部432A,432Bは、厚さ方向z視において、主走査中央部431を挟んで配置されている。主走査側方部432Aは、主走査中央部431に対して主走査方向xの一方側に位置し、当該主走査方向xの一方側から主走査中央部431に繋がる。主走査側方部432Bは、主走査中央部431に対して主走査方向xの他方側に位置し、当該主走査方向xの他方側から主走査中央部431に繋がる。主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bはそれぞれ、副走査方向y上流側の端部が帯状部313(共通電極31)または帯状部321(個別電極32)のいずれかに繋がり、副走査方向y下流側の端部が帯状部331(個別電極32)に繋がる。主走査中央部431と一対の主走査側方部432A,432Bとの各境界は、
図3に示すように、副走査方向yに略平行する直線である。
【0040】
各発熱部41Aでは、上述の通り、副走査方向yに沿って電流が流れる。よって、主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bは、各発熱部41Aに流れる電流の向きに直交する方向に沿って配置されている。つまり、主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bは、帯状部321と帯状部331との間、または、帯状部313と帯状部331との間において、電気的に並列に接続された構成となる。このため、主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bのそれぞれに印加される電圧値は略同じとなり、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bのうち抵抗値が小さい部分において、発熱量が大きくなる。
【0041】
各発熱部41Aは、主走査中央部431の主走査方向単位抵抗値R21が、一対の主走査側方部432A,432Bの各々の主走査方向単位抵抗値R22よりも大きい。主走査中央部431の主走査方向単位抵抗値R21は、主走査中央部431と帯状部331との主走査方向xにおける接触長当たりの抵抗値であり、主走査中央部431全体の抵抗値を、主走査中央部431と帯状部331との境界L21(
図3参照)の主走査方向xに沿う寸法で除算することで算出される。主走査中央部431の主走査方向単位抵抗値R21は、主走査中央部431と帯状部313(または帯状部321)との主走査方向xにおける接触長当たりの抵抗値としてもよい。この場合、主走査中央部431全体の抵抗値を、主走査中央部431と帯状部313(または帯状部321)との境界L11(
図3参照)の主走査方向xに沿う寸法で除算することで算出される。主走査側方部432Aの主走査方向単位抵抗値R22は、主走査側方部432Aと帯状部331との主走査方向xにおける接触長当たりの抵抗値であり、主走査側方部432A全体の抵抗値を、主走査側方部432Aと帯状部331との境界L221(
図3参照)の主走査方向xに沿う寸法で除算することで算出される。主走査側方部432Aの主走査方向単位抵抗値R22は、主走査側方部432Aと帯状部313(または帯状部321)との主走査方向xにおける接触長当たりの抵抗値としてもよい。この場合、主走査側方部432A全体の抵抗値を、主走査中央部431と帯状部313(または帯状部321)との境界L121(
図3参照)の主走査方向xに沿う寸法で除算することで算出される。主走査側方部432Bの主走査方向単位抵抗値R22は、主走査側方部432Bと帯状部331との主走査方向xにおける接触長当たりの抵抗値であり、主走査側方部432B全体の抵抗値を、主走査側方部432Bと帯状部331との境界L222(
図3参照)の主走査方向xに沿う寸法で除算することで算出される。主走査側方部432Bの主走査方向単位抵抗値R22は、主走査側方部432Bと帯状部313(または帯状部321)との主走査方向xにおける接触長当たりの抵抗値としてもよい。この場合、主走査側方部432B全体の抵抗値を、主走査中央部431と帯状部313(または帯状部321)との境界L122(
図3参照)の主走査方向xに沿う寸法で除算することで算出される。
【0042】
図3に示す例では、一対の主走査側方部432A,432Bのそれぞれにおいて、主走査方向xに沿う寸法が、帯状部331との境界L221,L222の主走査方向xに沿う寸法よりも大きい部分がある。なお、主走査中央部431においては、主走査方向xに沿う寸法が帯状部331との境界L21の主走査方向xに沿う寸法よりも大きい部分はない。一対の主走査側方部432A,432Bの各々にこのような部分があることで、一対の主走査側方部432A,432Bの各々の主走査方向単位抵抗値R22が、主走査中央部431の主走査方向単位抵抗値R21よりも小さくなる。つまり、主走査中央部431の主走査方向単位抵抗値R21が、一対の主走査側方部432A,432Bの各々の主走査方向単位抵抗値R22よりも大きくなる。
【0043】
図3に示す例では、主走査中央部431の副走査方向yに沿う寸法は、一対の主走査側方部432A,432Bの副走査方向yに沿う各寸法と略同じである。
【0044】
保護層2は、
図5および
図6に示すように、配線層3および抵抗体層4を覆っており、配線層3および抵抗体層4を保護する。保護層2は、絶縁性材料からなる。この絶縁性材料としては、たとえばSiN(窒化ケイ素)が採用されるが、SiNの代わりに、SiO
2(酸化ケイ素)、SiC(炭化ケイ素)、AlN(窒化アルミニウム)などが採用されてもよい。保護層2は、先述の絶縁性材料の単層または複数層によって構成される。保護層2の厚さは特に限定されないが、その一例を挙げると1.0μm以上10μm以下である。
【0045】
保護層2は、
図5に示すように、複数のパッド用開口21を有する。各パッド用開口21は、保護層2を厚さ方向zに貫通する。複数のパッド用開口21はそれぞれ、各個別電極32のボンディング部322を露出させている。図示された例示と異なり、複数のパッド用開口21に導電性材料を充填させてもよい。この場合、この導電性材料上にめっき層を形成してもよい。このめっき層の構成は特に限定されないが、一例を挙げると、導電性材料の表面からNi、Pd(パラジウム)、Auの順に積層されている。
【0046】
接続基板5は、
図1、
図2および
図4に示すように、ヘッド基板1に対して副走査方向y上流側に配置されている。接続基板5は、たとえばPCB基板であり、各ドライバIC7やコネクタ59(後述)が搭載される。接続基板5の形状などは特に限定されないが、本実施形態においては、主走査方向xを長手方向とする矩形状である。接続基板5は、
図4に示すように、第2主面51および第2裏面52を有する。第2主面51は、ヘッド基板1の第1主面11と同じ側を向く面であり、第2裏面52は、ヘッド基板1の第1裏面12と同じ側を向く面である。本実施形態においては、第2主面51は、第1主面11よりも厚さ方向z図中下方に位置する。
【0047】
接続基板5には、
図2に示すように、複数の制御電極55が形成されている。各制御電極55は、第2主面51に配置され、ドライバIC7よりも副走査方向y上流側に配置されている、各制御電極55は、副走査方向yに沿って伸びている。各制御電極55は、それぞれボンディングワイヤ61を介して、ドライバIC7の入力パッド71(後述)のいずれかに接続され、接続基板5の配線を介してコネクタ59に接続している。
【0048】
複数のドライバIC7はそれぞれ、複数の発熱部41Aを選択駆動するために、発熱させる発熱部41Aに個別に電流を流すためのものである。ドライバIC7の数は、発熱部41Aの個数に応じて、適宜変更される。各ドライバIC7の通電制御は、コネクタ59、接続基板5の配線および制御電極55を介して、サーマルプリントヘッドA1外から入力される指令信号に従う。各ドライバIC7は、接続基板5の第2主面51に搭載され、複数のボンディングワイヤ61を介して、複数の個別電極32および複数の制御電極55に接続されている。
【0049】
各ドライバIC7の上面には、
図2に示すように、複数の入力パッド71および複数の出力パッド72が配置されている。複数の入力パッド71は、各ドライバIC7を制御するための各主信号などが入力される端子である。複数の入力パッド71は、各ドライバIC7の上面のうち、副走査方向y上流側の端部寄りに配置されている。各入力パッド71は、各ボンディングワイヤ61を介して、各制御電極55に接続されている。複数の出力パッド72は、発熱部41Aを駆動する電流を流す端子である。複数の出力パッド72は、各ドライバIC7の上面のうち、副走査方向y下流側の端部寄りに配置されている。各出力パッド72は、各ボンディングワイヤ61を介して、各個別電極32のボンディング部322に接続されている。
【0050】
保護樹脂78は、複数のドライバIC7および複数のボンディングワイヤ61を覆う。保護樹脂78は、たとえば絶縁性樹脂からなりたとえば黒色である。保護樹脂78は、
図1および
図4に示すように、ヘッド基板1と接続基板5とに跨るように形成されている。
【0051】
コネクタ59は、サーマルプリントヘッドA1をサーマルプリンタPrに接続するために用いられる。コネクタ59は、接続基板5に取り付けられており、接続基板5の配線パターン(図示略)および制御電極55を介して、ドライバIC7の入力パッド71に接続されている。
【0052】
放熱部材8は、ヘッド基板1および接続基板5を支持しており、複数の発熱部41Aによって生じた熱の一部を、ヘッド基板1を介して外部へと放熱するためのものである。放熱部材8は、たとえばAl(アルミニウム)等の金属からなるブロック状の部材である。放熱部材8は、
図4に示すように、第1支持面81および第2支持面82を有する。第1支持面81および第2支持面82は、各々が厚さ方向z上側を向いている。第1支持面81は、第2支持面82よりも副走査方向y下流側に位置する。
図4に示すように、第1支持面81には、ヘッド基板1の第1裏面12が接合され、第2支持面82には、接続基板5の第2裏面52が接合されている。
【0053】
次に、サーマルプリントヘッドA1の製造方法について、説明する。
図7~
図14は、当該製造方法の一工程を示す断面図である。
【0054】
まず、
図7に示すように、基板材料1Kを用意する。基板材料1Kは、単結晶半導体からなり、たとえば、ほぼ円形のSiウェハの一部分である。1枚のSiウェハは複数の基板材料1Kを含む。以下の図では、Siウェハの一部分であって1個のサーマルプリントヘッドA1に対応する1個の基板材料1K(ヘッド基板1)を対象にして図示する場合がある。基板材料1Kの厚さ(言い換えればSiウェハの厚さ)は特に限定されないが、本実施形態においては、たとえば725μm程度である。基板材料1Kは、互いに反対側を向く第1主面11Kおよび第1裏面12Kを有する。第1主面11Kは、(100)面である。
【0055】
次いで、第1主面11Kを所定のマスク層で覆った後、たとえばKOH(水酸化カリウム)を用いた異方性エッチングを行う。この異方性エッチングで用いる薬剤は、KOHではなくTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を用いてもよいが、KOHを用いた方が、処理速度(エッチング速度)が速い。この異方性エッチングにより、
図8に示すように、基板材料1Kには、凸部13Kが形成される。凸部13Kは、第1主面11Kから突出しており、主走査方向xに長く伸びる。凸部13Kは、頂部130Kおよび一対の傾斜部132Kを有する。頂部130Kは、第1主面11Kと平行な面であり、第1主面11Kと同じ(100)面である。一対の傾斜部132Kは、頂部130Kの副走査方向y両側に位置しており、頂部130Kと第1主面11Kとの間に介在している。一対の傾斜部132Kはそれぞれ、頂部130Kおよび第1主面11Kに対して傾斜した平面である。一対の傾斜部132Kのそれぞれと、第1主面11Kおよび頂部130Kとがなす角度は、54.7度である。
【0056】
次いで、前記マスク層を除去した後に、たとえばTMAHを用いた異方性エッチングを行う。この異方性エッチングで用いる薬剤は、TMAHではなくKOHを用いてもよいが、TMAHを用いた方が、エッチングによって形成される面(たとえば後述の一対の第1傾斜部131A,131B)が平滑な面になる。この異方性エッチングにより、基板材料1Kが、
図9に示すように、第1主面11、第1裏面12および凸部13を有するヘッド基板1となる。凸部13は、頂部130、一対の第1傾斜部131A,131Bおよび一対の第2傾斜部132A,132Bを有する。頂部130は、頂部130Kであった部分であり、一対の第2傾斜部132A,132Bは、一対の傾斜部132Kであった部分である。一対の第1傾斜部131A,131Bは、頂部130Kと一対の傾斜部132Kとの境界がTMAHによりエッチングされた部分である。第1主面11に対する各第1傾斜部131A,131Bの角度α1(
図9参照)は、30.1度であり、第1主面11に対する各第2傾斜部132A,132Bの角度α2(
図9参照)は、54.7度である。
【0057】
次いで、
図10に示すように、絶縁層19を形成する。絶縁層19の形成は、たとえばCVDを用いて、TEOS(オルトケイ酸テトラエチル)を原料ガスとして形成されるSiO
2をヘッド基板1に堆積させることによって行う。絶縁層19の形成方法は、これに限定されない。
【0058】
次いで、
図11に示すように、抵抗体膜4Kを形成する。抵抗体膜4Kを形成する工程(抵抗体膜形成工程)では、たとえばスパッタリングによって絶縁層19上にTaNの薄膜を形成する。抵抗体膜4Kの形成方法は、これに限定されない。
【0059】
次いで、
図12および
図13に示すように、配線膜3Kを形成する。配線膜3Kを形成する工程(配線膜形成工程)では、
図12に示す第1導体膜301Kの形成と、
図13に示す第2導体膜302Kの形成との2つの工程がある。第1導体膜301Kを形成する工程(第1成膜工程)では、たとえば、スパッタリングによって抵抗体膜4K上に、Tiの薄膜を形成する。このとき、
図12に示すように、第1導体膜301Kは、抵抗体膜4Kの略全面を覆っている。第2導体膜302Kを形成する工程(第2成膜工程)では、たとえば、めっきやスパッタリングなどによって第1導体膜301K上に、Cuからなる層を形成する。このとき、第2導体膜302Kは、
図13に示すように、第1導体膜301Kの略全面を覆っている。
【0060】
次いで、
図14に示すように、第2導体膜302Kの部分的な除去、第1導体膜301Kの部分的な除去、および、抵抗体膜4Kの部分的な除去を順に行う。第1導体膜301Kを部分的に除去する工程(第1部分除去工程)、第2導体膜302Kを部分的に除去する工程(第2部分除去工程)および抵抗体膜4Kを部分的に除去する工程(抵抗体膜部分除去工程)はそれぞれ、たとえばエッチングにより行う。第1部分除去工程により第1導体層301が形成され、第2部分除去工程により第2導体層302が形成され、抵抗体膜部分除去工程により抵抗体層4が形成される。なお、抵抗体膜部分除去工程は、第1成膜工程(
図12参照)および第2成膜工程(
図13参照)の前に行われてもよい。形成された第1導体層301および第2導体層302は、共通電極31、複数の個別電極32および複数の中継電極33を有する配線層3を構成する。また、形成された抵抗体層4は、複数の発熱部41Aを有する。
【0061】
次いで、保護層2を形成する。保護層2の形成は、たとえばCVDを用いて絶縁層19、配線層3(第1導体層301および第2導体層302)および抵抗体層4上にSiNを堆積させることにより行われる。また、保護層2をエッチング等によって部分的に除去することにより、パッド用開口21を形成する。この後は、ダイシング装置などを使用して、1枚のSiウェハを複数個のヘッド基板1に個片化する。
【0062】
その後に、1個のヘッド基板1に対して組立工程が行われる。放熱部材8へのヘッド基板1および接続基板5の取付け、ドライバIC7の接続基板5への搭載、複数のボンディングワイヤ61のボンディング、および、保護樹脂78の形成などの工程を経ることにより、上述のサーマルプリントヘッドA1が製造される。
【0063】
サーマルプリントヘッドA1の作用および効果は、次の通りである。
【0064】
サーマルプリントヘッドA1は、複数の発熱部41Aを有する抵抗体層4を備えている。複数の発熱部41Aはそれぞれ、ヘッド基板1の厚さ方向(厚さ方向z)に見て、副走査方向yにおいて中央部に位置する副走査中央部421と、副走査方向yにおいて副走査中央部421を挟んで配置された一対の副走査側方部422A,422Bを含む。一対の副走査側方部422A,422Bは、副走査側方部422Aが第1電極部に繋がり、副走査側方部422Bが第2電極部に繋がっている。本実施形態では、第1電極部は、各帯状部321(各個別電極32)または各帯状部313(共通電極31)であり、第2電極部は、各帯状部331(各中継電極33)である。そして、副走査中央部421の副走査方向単位抵抗値R11が、一対の副走査側方部422A,422Bの各々の副走査方向単位抵抗値R12よりも小さい。各発熱部41Aにおいて、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bは、第1電極部と第2電極部との間において、電気的に直列に接続された構成である。したがって、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bに流れる電流が略同じ大きさとなることから、各副走査側方部422A,422Bよりも副走査方向単位抵抗値が小さい副走査中央部421において、発熱が抑制される。つまり、各発熱部41Aは、副走査方向yにおける中央部の発熱が抑制される。したがって、サーマルプリントヘッドA1は、各発熱部41Aの中央部分における熱集中を緩和できるので、各発熱部41Aの中央部分が必要以上に発熱することを防ぎ、印字効率を向上できる。
【0065】
サーマルプリントヘッドA1では、副走査中央部421が一対の副走査側方部422A,422Bよりも主走査方向xの両側にそれぞれ突き出ている。この構成によると、副走査中央部421の主走査方向xに沿う寸法を、一対の副走査側方部422A,422Bの主走査方向xに沿う各寸法よりも大きくできる。また、当該突き出た部分は、たとえば従来の平面視矩形状の発熱部(
図3の二点鎖線参照)において配線層3や抵抗体層4が形成されていなかった領域に形成されている。つまり、発熱部41Aは、従来の発熱部では、絶縁されていた領域に抵抗体層4の一部が配置されることになり、従来の発熱部と比較して、各主走査側方部432A,432Bの形成領域が大きくなる。これにより、各主走査側方部432A,432Bに流れる電流が増大される。上述の通り、主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bは、第1電極部と第2電極部との間において、電気的に並列に接続された構成である。したがって、各主走査側方部432A,432Bに流れる電流を増大させて、主走査中央部431に流れる電流を低減させることができる。つまり、各発熱部41Aは、主走査中央部431における発熱が抑制される。サーマルプリントヘッドA1は、各発熱部41Aの主走査方向x中央部分における熱集中を緩和できるので、印字効率を向上できる。
【0066】
サーマルプリントヘッドA1では、複数の発熱部41Aはそれぞれ、主走査方向xにおいて中央部に位置する主走査中央部431と、主走査方向xにおいて主走査中央部431を挟んで配置された一対の主走査側方部432A,432Bとを含む。主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bはそれぞれ、副走査方向y上流側の端部が第1電極部に繋がり、副走査方向yの下流側の端部が第2電極部に繋がる。本実施形態では、第1電極部は、各帯状部321(各個別電極32)または各帯状部313(共通電極31)であり、第2電極部は、各帯状部331(各中継電極33)である。そして、主走査中央部431の主走査方向単位抵抗値R21が、一対の主走査側方部432A,432Bの各々の主走査方向単位抵抗値R22よりも大きい。各発熱部41Aにおいて、主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bは、第1電極部と第2電極部との間において、電気的に並列に接続された構成である。したがって、主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bに印加される電圧が略同じ大きさとなることから、各主走査側方部432A,432Bよりも主走査方向単位抵抗値が大きい主走査中央部431において、発熱が抑制される。つまり、各発熱部41Aは、主走査方向xにおける中央部の発熱が抑制される。したがって、サーマルプリントヘッドA1は、各発熱部41Aの中央部分における熱集中を緩和できるので、各発熱部41Bの中央部分が必要以上に発熱することを防ぎ、印字効率を向上できる。
【0067】
サーマルプリントヘッドA1では、厚さ方向z視において、配線層3のうちの各発熱部41Aに接する部分は、第2導体層302から露出する第1導体層301である。第1導体層301は、副走査方向yに沿う単位長さ当たりの抵抗が、抵抗体層4(各発熱部41A)よりも低抵抗であり、かつ、第2導体層302よりも高抵抗である。第1導体層301、第2導体層302および抵抗体層4の各抵抗値が上記する関係であることから、第2導体層302から露出する第1導体層301における発熱量は、各発熱部41Aにおける発熱量よりも小さく、第1導体層301と第2導体層302とが積層された部分における発熱量よりも大きい。この構成によると、配線層3から各発熱部41Aに向けて、副走査方向yに温度勾配を緩和させることができる。
【0068】
図15は、第2実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA2を示している。
図15は、サーマルプリントヘッドA2を示す要部拡大平面図であり、
図3に対応する。サーマルプリントヘッドA2は、サーマルプリントヘッドA1と比較して、抵抗体層4が各発熱部41Aの代わりに各発熱部41Bを有している。
【0069】
各発熱部41Bは、各発熱部41Aと同様に、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bを含む。ただし、各発熱部41Bでは、
図15に示すように、副走査中央部421の主走査方向xに沿う寸法は、一対の副走査側方部422A,422Bの主走査方向xに沿う各寸法と略同じである。
【0070】
各発熱部41Bは、各発熱部41Aと同様に、主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bを含む。ただし、各発熱部41Bでは、
図15に示すように、厚さ方向z視において、一対の主走査側方部432A,432Bの各々と各帯状部331との境界L221,L222が、主走査中央部431と各帯状部331との境界L21よりも副走査方向yの上流側に位置する。また、
図15に示すように、厚さ方向z視において、一対の主走査側方部432A,432Bの各々と帯状部313または帯状部321との境界L121,L122が、主走査中央部431と帯状部313または帯状部321との境界L11よりも副走査方向yの下流側に位置する。このため、各発熱部41Bでは、主走査中央部431の副走査方向yに沿う寸法が、一対の主走査側方部432A,432Bの副走査方向yに沿う各寸法よりも大きい。
【0071】
各発熱部41Bは、主走査中央部431の主走査方向単位抵抗値R21が、一対の主走査側方部432A,432Bの各々の主走査方向単位抵抗値R22よりも大きい。
図15に示す例では、主走査中央部431の副走査方向yに沿う寸法が一対の主走査側方部432A,432Bの副走査方向yに沿う各寸法よりも大きい。電気抵抗値が導体の長さに比例することから、主走査中央部431と各主走査側方部432A,432Bとの主走査方向xに沿う寸法が同じ場合、主走査中央部431の抵抗値が一対の主走査側方部432A,432Bの各抵抗値よりも大きくなる。これにより、主走査中央部431の主走査方向単位抵抗値R21が一対の主走査側方部432A,432Bの各々の主走査方向単位抵抗値R22よりも大きくなる。
【0072】
サーマルプリントヘッドA2では、各発熱部41Bは、ヘッド基板1の厚さ方向(厚さ方向z)に見て、主走査方向xにおいて中央部に位置する主走査中央部431と、主走査方向xにおいて主走査中央部431を挟んで配置された一対の主走査側方部432A,432Bとを含む。主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bはそれぞれ、副走査方向y上流側の端部が第1電極部に繋がり、副走査方向yの下流側の端部が第2電極部に繋がる。本実施形態においても、第1電極部は、各帯状部321(各個別電極32)または各帯状部313(共通電極31)であり、第2電極部は、各帯状部331(各中継電極33)である。そして、主走査中央部431の主走査方向単位抵抗値R21が、一対の主走査側方部432A,432Bの各々の主走査方向単位抵抗値R22よりも大きい。各発熱部41Bにおいて、主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bは、第1電極部と第2電極部との間において、電気的に並列に接続された構成である。したがって、主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bに印加される電圧が略同じ大きさとなることから、各主走査側方部432A,432Bよりも主走査方向単位抵抗値が大きい主走査中央部431において、発熱が抑制される。つまり、各発熱部41Bは、主走査方向xにおける中央部の発熱が抑制される。したがって、サーマルプリントヘッドA2は、各発熱部41Bの中央部分における熱集中を緩和できるので、各発熱部41Bの中央部分が必要以上に発熱することを防ぎ、印字効率を向上できる。
【0073】
サーマルプリントヘッドA2では、主走査中央部431が一対の主走査側方部432A,432Bよりも副走査方向yの両側にそれぞれ突き出ている。この構成によると、主走査中央部431の副走査方向yに沿う寸法を、一対の主走査側方部432A,432Bの副走査方向yに沿う各寸法よりも大きくできる。また、当該突き出た部分は、たとえば従来の平面視矩形状の発熱部(
図15の二点鎖線参照)において配線層3が配置されていた領域に形成されている。つまり、発熱部41Bは、従来の発熱部において配線層3が形成された領域に抵抗体層4の一部が配置されることになり、従来の発熱部と比較して、各副走査側方部422A,422Bの形成領域が大きくなる。抵抗体層4は、配線層3(第1電極部および第2電極部)よりも抵抗値が大きいため、従来の発熱部よりも、各副走査側方部422A,422Bにおける抵抗値が大きくなる。上述の通り、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bは、第1電極部と第2電極部との間において、電気的に直列に接続された構成である。したがって、各副走査側方部422A,422Bの抵抗値を大きくすることで、各副走査側方部422A,422Bにおける発熱が増加する。サーマルプリントヘッドA2は、各発熱部41Bの副走査方向y中央部分における熱集中を緩和できるので、印字効率を向上できる。
【0074】
図16は、第3実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA3を示している。
図16は、サーマルプリントヘッドA3を示す要部拡大平面図であり、
図3に対応する。サーマルプリントヘッドA3は、サーマルプリントヘッドA1と比較して、抵抗体層4が各発熱部41Aの代わりに各発熱部41Cを有している。
【0075】
各発熱部41Cは、各発熱部41Aと同様に、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bを含む。各発熱部41Cは、
図16に示すように、各発熱部41Bと同様に、副走査中央部421の主走査方向xに沿う寸法は、一対の副走査側方部422A,422Bの主走査方向xに沿う各寸法と略同じである。
【0076】
各発熱部41Cは、各発熱部41Aと同様に、主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bを含む。各発熱部41Cは、
図16に示すように、各発熱部41Bと同様に、厚さ方向z視において、一対の主走査側方部432A,432Bの各々と各帯状部331との境界L221,L222が、主走査中央部431と各帯状部331との境界L21よりも副走査方向yの上流側に位置する。また、
図16に示すように、厚さ方向z視において、一対の主走査側方部432A,432Bの各々と帯状部313(または帯状部321)との境界L121,L122が、主走査中央部431と帯状部313(または帯状部321)との境界L11よりも副走査方向yの下流側に位置する。このため、各発熱部41Cでは、各発熱部41Bと同様に、主走査中央部431の副走査方向yに沿う寸法が、一対の主走査側方部432A,432Bの副走査方向yに沿う各寸法よりも大きい。
【0077】
サーマルプリントヘッドA3においては、サーマルプリントヘッドA2と同様の効果を奏することができる。
【0078】
図17および
図18は、第4実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA4を示している。
図17は、サーマルプリントヘッドA4を示す要部拡大平面図であり、
図3に対応する。
図18は、
図17のXVIII-XVIII線に沿う要部拡大断面図である。サーマルプリントヘッドA4は、サーマルプリントヘッドA1と比較して、抵抗体層4が各発熱部41Aの代わりに各発熱部41Dを有する。
【0079】
各発熱部41Dは、各発熱部41Aと同様に、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bを含む。ただし、各発熱部41Dは、各発熱部41Aと異なり、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bの主走査方向xに沿う各寸法は、略同じである。また、各発熱部41Dでは、
図17および
図18に示すように、各発熱部41Aと異なり、副走査中央部421上に被覆部45が形成されている。
【0080】
被覆部45は、
図17に示すように、厚さ方向z視において、副走査中央部421の主走査方向xの一方の端部から他方の端部まで繋がっている。被覆部45は、厚さ方向z視において主走査方向xに伸びる帯状である。
図17に示す例では、被覆部45は、副走査中央部421のうちの副走査方向yの中央部分を覆っている。被覆部45は、副走査方向yに沿う単位長さ当たりの抵抗値が、抵抗体層4よりも低い材料からなる。これにより、発熱部41Dにおいて、被覆部45で覆われた部分は、被覆部45で覆われていない部分よりも抵抗値が小さくなる。被覆部45の構成材料は、たとえば第1導体層301の構成材料と同じであり、一例ではTiである。被覆部45の構成材料は、第1導体層301の構成材料と同じでなくてもよく、たとえばTi上にCuが積層されたものであってもよい。被覆部45が第1導体層301と同じ材料である場合、上記第1部分除去工程において被覆部45が配置される領域の第1導体膜301Kを残すことで、被覆部45が形成される。
【0081】
各発熱部41Dでは、副走査中央部421上に被覆部45が形成されていることから、副走査中央部421のうち被覆部45で覆われた部分の抵抗値が低減される。これにより、各発熱部41Dでは、副走査中央部421の副走査方向単位抵抗値R11が、一対の副走査側方部422A,422Bの各々の副走査方向単位抵抗値R12よりも小さくなる。
【0082】
各発熱部41Dは、各発熱部41Aと同様に、主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bを含む。各発熱部41Dは、
図17に示すように、各発熱部41Aと同様に、主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bの副走査方向yに沿う各寸法は、略同じである。
【0083】
サーマルプリントヘッドA4においても、サーマルプリントヘッドA1と同様に、副走査中央部421の副走査方向単位抵抗値R11が一対の副走査側方部422A,422Bの各々の副走査方向単位抵抗値R12よりも小さい。よって、各副走査側方部422A,422Bよりも副走査方向単位抵抗値が小さい副走査中央部421において、発熱が抑制される。つまり、各発熱部41Dは、副走査方向yにおける中央部の発熱が抑制される。したがって、サーマルプリントヘッドA4は、サーマルプリントヘッドA1と同様に、各発熱部41Dの中央部分における熱集中を緩和できるので、印字効率を向上できる。
【0084】
図19および
図20は、第5実施形態にかかるサーマルプリントヘッドA5を示している。
図19は、サーマルプリントヘッドA5を示す要部拡大平面図であり、
図3に対応する。
図20は、
図19のXX-XX線に沿う要部拡大断面図である。サーマルプリントヘッドA5は、サーマルプリントヘッドA1と比較して、抵抗体層4が各発熱部41Aの代わりに各発熱部41Eを有する。
【0085】
各発熱部41Eは、各発熱部41Aと同様に、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bを含む。ただし、各発熱部41Eは、各発熱部41Aと異なり、副走査中央部421および一対の副走査側方部422A,422Bの主走査方向xに沿う各寸法は、略同じである。
【0086】
各発熱部41Eは、各発熱部41Aと同様に、主走査中央部431および一対の主走査側方部432A,432Bを含む。ただし、各発熱部41Eでは、
図19および
図20に示すように、主走査中央部431にスリット44が設けられている。
【0087】
スリット44は、厚さ方向z視において、副走査方向yに伸びており、各発熱部41Eの副走査方向y上流側の端部から副走査方向y下流側の端部まで繋がっている。
図19および
図20に示す例では、スリット44は、主走査中央部431のうちの主走査方向xの中央部分に形成されている。スリット44により、主走査中央部431は、
図19および
図20に示すように、主走査方向xに並ぶ一対の分離部441に分離されている。一対の分離部441は、厚さ方向z視において、主走査方向xに絶縁層19を挟んで配置されている。スリット44には、たとえば保護層2が充填される。スリット44は、たとえば上記抵抗体膜部分除去工程において形成される。
【0088】
各発熱部41Eでは、主走査中央部431にスリット44が形成されていることから、スリット44が形成されていない場合よりも、主走査中央部431の抵抗値が増大される。これは、スリット44によって、電流が流れる方向(副走査方向y)に直交する断面の面積が減少するからである。これにより、各発熱部41Eでは、主走査中央部431の主走査方向単位抵抗値R21が、一対の主走査側方部432A,432Bの各々の主走査方向単位抵抗値R22よりも大きくなる。なお、主走査中央部431の主走査方向単位抵抗値R21の算出に用いられる境界L21には、スリット44と帯状部331との境界部分も含まれ、また、当該算出に用いられる境界L11には、スリット44と帯状部321または帯状部313との境界部分も含まれる。
【0089】
サーマルプリントヘッドA5においても、サーマルプリントヘッドA2と同様に、主走査中央部431の主走査方向単位抵抗値R21が一対の主走査側方部432A,432Bの各々の主走査方向単位抵抗値R22よりも大きい。これにより、各主走査側方部432A,432Bよりも主走査方向単位抵抗値が大きい主走査中央部431において、発熱が抑制される。つまり、各発熱部41Eは、主走査方向xにおける中央部の発熱が抑制される。したがって、サーマルプリントヘッドA5は、サーマルプリントヘッドA2と同様に、各発熱部41Eの中央部分における熱集中を緩和できるので、印字効率を向上させることができる。
【0090】
第1実施形態ないし第5実施形態において例示した各発熱部41A~41Eの構成は、一例であって、これらに限定されない。たとえば、各発熱部41A~41Eの構成を適宜組み合わせた発熱部41(
図21~
図26参照)が形成されていてもよい。
図21~
図26は、当該変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図であって、
図3に対応する。以下に、
図21~
図26について説明する。
【0091】
図21に示す発熱部41は、第1実施形態にかかる発熱部41Aと第2実施形態にかかる発熱部41Bとを組み合わせた構成である。したがって、
図21に示す例では、各発熱部41は、各発熱部41Aと同様に副走査方向yにおける中央部の発熱が抑制されるとともに、各発熱部41Bと同様に主走査方向xにおける中央部の発熱が抑制される。
【0092】
図22に示す発熱部41は、第1実施形態にかかる発熱部41Aと第3実施形態にかかる発熱部41Cとを組み合わせた構成である。したがって、
図22に示す例では、各発熱部41は、各発熱部41Aと同様に副走査方向yにおける中央部の発熱が抑制されるとともに、各発熱部41Cと同様に主走査方向xにおける中央部の発熱が抑制される。
【0093】
図23に示す発熱部41は、第2実施形態にかかる発熱部41Bと第4実施形態にかかる発熱部41Dとを組み合わせた構成である。したがって、
図23に示す例では、各発熱部41は、各発熱部41Bと同様に主走査方向xにおける中央部の発熱が抑制されるとともに、各発熱部41Dと同様に副走査方向yにおける中央部の発熱が抑制される。
【0094】
図24に示す発熱部41は、第3実施形態にかかる発熱部41Cと第4実施形態にかかる発熱部41Dとを組み合わせた構成である。したがって、
図24に示す例では、各発熱部41は、各発熱部41Cと同様に主走査方向xにおける中央部の発熱が抑制されるとともに、各発熱部41Dと同様に副走査方向yにおける中央部の発熱が抑制される。
【0095】
図25に示す発熱部41は、第1実施形態にかかる発熱部41Aと第5実施形態にかかる発熱部41Eとを組み合わせた構成である。したがって、
図25に示す例では、各発熱部41は、各発熱部41Aと同様に副走査方向yにおける中央部の発熱が抑制されるとともに、各発熱部41Eと同様に主走査方向xにおける中央部の発熱が抑制される。
【0096】
図26に示す発熱部41は、第4実施形態にかかる発熱部41Dと第5実施形態にかかる発熱部41Eとを組み合わせた構成である。したがって、
図26に示す例では、各発熱部41は、各発熱部41Dと同様に副走査方向yにおける中央部の発熱が抑制されるとともに、各発熱部41Eと同様に主走査方向xにおける中央部の発熱が抑制される。
【0097】
第1実施形態および第5実施形態において、配線層3の構成は、上記した例に限定されず、たとえば
図27に示すように構成されていてもよい。
図27は、当該変形例にかかるサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図であって、
図2に対応する。本変形例では、
図27に示すように、抵抗体層4が複数の発熱部41Aを有する場合を示すが、複数の発熱部41Aの代わりに、複数の発熱部41,41B~41Eを有していてもよい。
【0098】
図27に示す変形例において、配線層3は、共通電極31および複数の個別電極32を有する。つまり、当該サーマルプリントヘッドの配線層3は、サーマルプリントヘッドA1の配線層3と比較して、複数の中継電極33を有していない。
【0099】
本変形例にかかる共通電極31は、
図27に示すように、複数の帯状部313、連結部314および迂回部315を含む。連結部314は、ヘッド基板1の副走査方向y下流側の端縁寄りに配置されている。連結部314は、主走査方向xに伸びる帯状である。複数の帯状部313はそれぞれ、連結部314から各発熱部41Aまで副走査方向yに伸びている。複数の帯状部313は、主走査方向xに等ピッチで配列されている。迂回部315は、連結部314の主走査方向xの一端から副走査方向yに伸びている。
【0100】
本変形例にかかる各発熱部41Aは、
図27に示すように、副走査方向yにおいて共通電極31の各帯状部313と各個別電極32の帯状部321とに挟まれている。各帯状部321は、副走査方向yの上流側から、各発熱部41Aに繋がり、各帯状部313は、副走査方向yの下流側から各発熱部41Aに繋がっている。
【0101】
図27に示すサーマルプリントヘッドにおいても、サーマルプリントヘッドA1と同様に、各発熱部41Aは、副走査中央部421と一対の副走査側方部422A,422Bとを含み、一対の副走査側方部422A,422Bは、副走査側方部422Aが第1電極部に繋がり、副走査側方部422Bが第2電極部に繋がっている。本変形例では、第1電極部は、各帯状部321(各個別電極32)であり、第2電極部は、各帯状部313(共通電極31)である。したがって、本変形例にかかるサーマルプリントヘッドは、サーマルプリントヘッドA1と同様に、各発熱部41Aの中央部分における熱集中を緩和できるので、各発熱部41Aの中央部分が必要以上に発熱することを防ぎ、印字効率を向上できる。
【0102】
第1実施形態ないし第5実施形態では、ヘッド基板1が凸部13を有する例を示したが、ヘッド基板1に凸部13が形成されていなくてもよい。つまり、第1主面11がヘッド基板1の全域にわたって平坦であってもよい。また、凸部13が一対の第1傾斜部131A,131Bを有する例を示したが、凸部13に一対の第1傾斜部131A,131Bが形成されていなくてもよい。つまり、凸部13において、一対の第2傾斜部132A,132Bが頂部130に繋がっていてもよい。
【0103】
本開示にかかるサーマルプリントヘッドは、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示のサーマルプリントヘッドの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。たとえば、本開示のサーマルプリントヘッドは、以下の付記に関する実施形態を含む。
〔付記1〕
基板と、
前記基板に支持され、かつ、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、
前記基板に支持され、かつ、前記複数の発熱部への通電経路を構成する配線層と、
を備えており、
前記配線層は、前記複数の発熱部の各々に副走査方向の一方から繋がる第1電極部と、各々が前記複数の発熱部の各々に副走査方向の他方から繋がる第2電極部と、を含み、
前記複数の発熱部の各々は、前記基板の厚さ方向に見て、副走査方向において中央部に位置する副走査中央部と、副走査方向において前記副走査中央部を挟んで配置された一対の副走査側方部と、を含み、
前記一対の副走査側方部は、一方が前記第1電極部に繋がり、他方が前記第2電極部に繋がっており、
前記副走査中央部の副走査方向単位抵抗値は、前記一対の副走査側方部の各々の副走査方向単位抵抗値よりも小さく、
前記副走査中央部の前記副走査方向単位抵抗値は、前記副走査中央部の副走査方向における単位長さ当たりの抵抗値であり、
前記一対の副走査側方部の各々の前記副走査方向単位抵抗値は、前記一対の副走査側方部の各々の副走査方向における単位長さ当たりの抵抗値である、ことを特徴とするサーマルプリントヘッド。
〔付記2〕
前記副走査中央部の主走査方向に沿う寸法は、前記一対の副走査側方部の主走査方向に沿う各寸法よりも大きい、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記3〕
前記副走査中央部は、前記一対の副走査側方部の各々よりも、主走査方向の両側に突き出ている、付記2に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記4〕
前記複数の発熱部の各々は、前記副走査中央部を覆う被覆部を含み、
前記被覆部は、前記抵抗体層よりも抵抗値が小さい、付記1ないし付記3のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記5〕
前記複数の発熱部の各々は、主走査方向において中央部に位置する主走査中央部と、主走査方向において前記主走査中央部を挟んで配置された一対の主走査側方部と、を含み、
前記主走査中央部および前記一対の主走査側方部はそれぞれ、前記第1電極部および前記第2電極部に繋がっており、
前記主走査中央部の主走査方向単位抵抗値は、前記一対の主走査側方部の各々の主走査方向単位抵抗値よりも大きく、
前記主走査中央部の前記主走査方向単位抵抗値は、前記主走査中央部と前記第1電極部または前記第2電極部のいずれか一方との主走査方向における接触長当たりの抵抗値であり、
前記一対の主走査側方部の各々の前記主走査方向単位抵抗値は、前記一対の主走査側方部の各々と前記第1電極部または前記第2電極部のいずれか一方との主走査方向における接触長当たりの抵抗値である、付記1ないし付記4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記6〕
前記主走査中央部の副走査方向に沿う寸法は、前記一対の主走査側方部の副走査方向に沿う各寸法よりも大きい、付記5に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記7〕
前記厚さ方向に見て、前記一対の主走査側方部の各々と前記第1電極部との境界は、前記主走査中央部と前記第1電極部との境界よりも、副走査方向の他方に位置する、付記6に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記8〕
前記厚さ方向に見て、前記一対の主走査側方部の各々と前記第2電極部との境界は、前記主走査中央部と前記第2電極部との境界よりも、副走査方向の一方に位置する、付記6または付記7のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記9〕
前記基板と前記抵抗体層との間に挟まれた絶縁層をさらに備える、付記5ないし付記8のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記10〕
前記主走査中央部には、前記厚さ方向に見て副走査方向の一方から他方に繋がるスリットが形成されており、
前記主走査中央部は、前記スリットにより主走査方向に分離された一対の分離部を含み、
前記一対の分離部は、前記厚さ方向に見て、主走査方向に前記絶縁層を挟んで配置されている、付記9に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記11〕
前記抵抗体層は、前記基板上に形成され、
前記配線層は、前記抵抗体層の一部を露出させつつ前記抵抗体層上に積層された第1導体層と、前記第1導体層の一部を露出させつつ前記第1導体層上に積層された第2導体層とを含み、
前記第2導体層は、副走査方向における単位長さ当たりの抵抗値が前記複数の発熱部の各々よりも小さく、
前記第1導体層は、副走査方向における単位長さ当たりの抵抗値が前記複数の発熱部の各々と前記第1導体層との間をとる、付記1ないし付記10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記12〕
前記第1導体層の構成材料は、Tiを含み、
前記第2導体層の構成材料は、Cuを含む、付記11に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記13〕
前記第1電極部および前記第2電極部はそれぞれ、前記第1導体層のうちの前記第2導体層から露出した部分が、前記厚さ方向に見て前記複数の発熱部の各々に繋がっている、付記11または付記12のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記14〕
前記基板は、前記厚さ方向の一方を向く主面と、前記主面から突き出し、かつ、主走査方向に伸びる凸部とを有し、
前記複数の発熱部の各々は、前記凸部の上に形成されている、付記1ないし付記13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記15〕
前記基板上に形成され、前記抵抗体層および前記配線層を覆う保護層をさらに備える、付記1ないし付記14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記16〕
前記基板は、単結晶半導体からなる、付記1ないし付記15のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記17〕
前記単結晶半導体は、Siである、付記16に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記18〕
基板と、
前記基板に支持され、かつ、主走査方向に配列された複数の発熱部を有する抵抗体層と、
前記基板に支持され、かつ、前記複数の発熱部への通電経路を構成する配線層と、
を備えており、
前記配線層は、前記複数の発熱部の各々に副走査方向の一方から繋がる第1電極部と、各々が前記複数の発熱部の各々に副走査方向の他方から繋がる第2電極部と、を含み、
前記複数の発熱部の各々は、前記基板の厚さ方向に見て、主走査方向において中央部に位置する主走査中央部と、主走査方向において前記主走査中央部を挟んで配置された一対の主走査側方部と、を含み、
前記主走査中央部および前記一対の主走査側方部はそれぞれ、前記第1電極部および前記第2電極部に繋がっており、
前記主走査中央部の主走査方向単位抵抗値は、前記一対の主走査側方部の各々の主走査方向単位抵抗値よりも大きく、
前記主走査中央部の前記主走査方向単位抵抗値は、前記主走査中央部と前記第1電極部または前記第2電極部のいずれか一方との主走査方向における接触長当たりの抵抗値であり、
前記一対の主走査側方部の各々の前記主走査方向単位抵抗値は、前記一対の主走査側方部の各々と前記第1電極部または前記第2電極部のいずれか一方との主走査方向における接触長当たりの抵抗値である、ことを特徴とするサーマルプリントヘッド。
【符号の説明】
【0104】
A1~A5:サーマルプリントヘッド
1 :ヘッド基板
11 :第1主面
12 :第1裏面
13 :凸部
130 :頂部
131A,131B:第1傾斜部
132A,132B:第2傾斜部
1K :基板材料
11K :第1主面
12K :第1裏面
13K :凸部
130K :頂部
132K :傾斜部
19 :絶縁層
2 :保護層
21 :パッド用開口
3 :配線層
301 :第1導体層
302 :第2導体層
31 :共通電極
311 :直行部
312 :分岐部
313 :帯状部
314 :連結部
315 :迂回部
32 :個別電極
321 :帯状部
322 :ボンディング部
33 :中継電極
331 :帯状部
332 :連結部
3K :配線膜
301K :第1導体膜
302K :第2導体膜
4 :抵抗体層
41,41A~41E:発熱部
421 :副走査中央部
422A,422B:副走査側方部
431 :主走査中央部
432A,432B:主走査側方部
44 :スリット
441 :分離部
45 :被覆部
4K :抵抗体膜
5 :接続基板
51 :第2主面
52 :第2裏面
55 :制御電極
59 :コネクタ
61 :ボンディングワイヤ
7 :ドライバIC
71 :入力パッド
72 :出力パッド
78 :保護樹脂
8 :放熱部材
81 :第1支持面
82 :第2支持面
91 :プラテンローラ
Pr :サーマルプリンタ