(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04014 20160101AFI20240919BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240919BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20240919BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20240919BHJP
【FI】
H01M8/04014
H01M8/04 J
H01M8/249
H01M8/12 101
(21)【出願番号】P 2020175553
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 俊之輔
(72)【発明者】
【氏名】辻 麻理恵
(72)【発明者】
【氏名】波多江 徹
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-071963(JP,A)
【文献】特開平06-176786(JP,A)
【文献】特許第5542332(JP,B2)
【文献】特開2014-071955(JP,A)
【文献】国際公開第2014/167764(WO,A1)
【文献】特表2016-524303(JP,A)
【文献】国際公開第2016/174738(WO,A1)
【文献】特開2006-031989(JP,A)
【文献】国際公開第2018/074443(WO,A1)
【文献】特開2004-103282(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0164051(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04014
H01M 8/04
H01M 8/249
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極の燃料ガスと空気極の酸化剤ガスにより発電し、前記燃料極からアノードオフガスが排出され、前記空気極からカソードオフガスが排出される燃料電池と、
前記アノードオフガスの少なくとも一部を前記燃料電池での発電に供するアノードオフガス再利用路と、
前記アノードオフガス再利用路を流れる前記アノードオフガスと水との熱交換により水を加熱するアノードオフ熱交換部と、前記カソードオフガスと水との熱交換により水を加熱するカソードオフ熱交換部を有し、水を気化させて水蒸気を前記燃料極へ向かう燃料ガスへ供給する、水蒸気供給部と、
前記アノードオフガス再利用路の前記アノードオフ熱交換部よりも下流に設けられた燃料再生部と、
原料ガスと前記燃料再生部で再生された再生燃料ガスを前記アノードオフガスで昇温させる原料熱交換部と、
を備え、
前記アノードオフガス再利用路は、前記燃料電池から送出されるアノードオフガスを前記原料熱交換部よりも上流側へ戻して前記燃料電池へ循環させる循環路を含む、
燃料電池システム。
【請求項2】
燃料極の燃料ガスと空気極の酸化剤ガスにより発電し、前記燃料極からアノードオフガスが排出され、前記空気極からカソードオフガスが排出される燃料電池と、
前記アノードオフガスの少なくとも一部を前記燃料電池での発電に供するアノードオフガス再利用路と、
前記アノードオフガス再利用路を流れる前記アノードオフガスと水との熱交換により水を加熱するアノードオフ熱交換部と、前記カソードオフガスと水との熱交換により水を加熱するカソードオフ熱交換部を有し、水を気化させて水蒸気を前記燃料極へ向かう燃料ガスへ供給する、水蒸気供給部と、
を備え、
前記燃料電池は、前記燃料ガスが供給されて発電する第1燃料電池と、前記第1燃料電池からのアノードオフガスが前記アノードオフガス再利用路経由で供給されて発電する第2燃料電池を含み、
前記アノードオフ熱交換部での熱交換が、前記第1燃料電池のアノードオフガスと改質水との熱交換で行われている、
燃料電池システム。
【請求項3】
前記水蒸気供給部において、前記水は、前記アノードオフ熱交換部で加熱された後に前記カソードオフ熱交換部で加熱される、
請求項1
または請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記アノードオフガス再利用路の前記アノードオフ熱交換部よりも上流側に設けられ、前記アノードオフガスと前記燃料極へ向かう燃料ガスとで熱交換を行う燃料熱交換部、
を備えた、請求項1または請求項2に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高温で作動する燃料電池システムにおいて、熱を有効利用することが行われている。例えば、特許文献1の燃料電池システムでは、アノードオフガスと燃料ガスとの間で熱交換を行うと共に、カソードオフガスと空気との間で熱交換を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、アノードオフガスを再利用して発電を行う高効率の燃料電池システムが開発されているが、当該燃料電池システムにおいては、発電効率を高めるために、発電時に発生する熱のさらなる有効利用が求められている。
【0005】
本発明は上記事実を考慮して成されたものであり、燃料電池システムにおいて、システム内で発生した熱を有効利用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る燃料電池システムは、燃料極の燃料ガスと空気極の酸化剤ガスにより発電し、前記燃料極からアノードオフガスが排出され、前記空気極からカソードオフガスが排出される燃料電池と、前記アノードオフガスの少なくとも一部を前記燃料電池での発電に供するアノードオフガス再利用路と、前記アノードオフガス再利用路を流れる前記アノードオフガスと水との熱交換により水を加熱するアノードオフ熱交換部と、前記カソードオフガスと水との熱交換により水を加熱するカソードオフ熱交換部を有し、水を気化させて水蒸気を前記燃料極へ向かう燃料ガスへ供給する、水蒸気供給部と、を備えている。
【0007】
請求項1に係る燃料電池システムは、気化した水蒸気を燃料極へ向かう燃料ガスへ供給する水蒸気供給部を有している。水蒸気供給部は、アノードオフ熱交換部とカソードオフ熱交換部を有している。アノードオフ熱交換部は、アノードオフ再利用路を流れるアノードオフガスと水とで熱交換を行う。カソードオフ熱交換部は、カソードオフガスと水とで熱交換を行う。
【0008】
このように、アノードオフガス、カソードオフガスの各々が、燃料極へ向かう水と熱交換し、水を気化することにより、アノードオフガス、カソードオフガスの熱を有効利用することができる。
【0009】
また、水蒸気供給部では、燃料ガスと混合される前の水がアノードオフガス、カソードオフガスと熱交換されるので、燃料ガスと混合された後と比較して、少ない熱量で効率的に水を気化させることができる。
【0010】
なお、ここでの燃料ガスは、燃料極へ向かうガスであり、改質後の燃料ガスだけでなく、改質前の原料ガスを含んでいる。
【0011】
請求項3に係る燃料電池システムは、前記水蒸気供給部において、前記水は、前記アノードオフ熱交換部で加熱された後に前記カソードオフ熱交換部で加熱される。
【0012】
請求項3に係る燃料電池システムでは、アノードオフガスと水とで熱交換を行った後にカソードオフガスと熱交換を行う。カソードオフガスは、アノードオフガスと比較して、流量の調整を行いやすい。したがって、アノードオフガスとの熱交換後の水の温度や気化状態等に応じて、カソードオフ熱交換部へ供給するカソードオフガスの流量を調整することができる。
【0013】
請求項4に係る燃料電池システムは、前記アノードオフガス再利用路の前記アノードオフ熱交換部よりも上流側に設けられ、前記アノードオフガスと前記燃料極へ向かう燃料ガスとで熱交換を行う燃料熱交換部、を備えている。
【0014】
請求項4に係る燃料電池システムによれば、アノードオフ熱交換部よりも上流側に設けられた燃料熱交換部で、アノードオフガスと燃料極へ向かう燃料ガスとで熱交換が行われるので、アノードオフガスの熱を有効利用することができる。
【0015】
請求項1に係る燃料電池システムは、前記アノードオフガス再利用路は、前記燃料電池から送出されるアノードオフガスを前記燃料電池へ循環させる循環路を含んでいる。
【0016】
請求項1に係る燃料電池システムによれば、アノードオフガスを循環させて発電に再利用することにより、発電効率を高めることができる。
【0017】
請求項2に係る燃料電池システムは、前記燃料電池は、前記燃料ガスが供給されて発電する第1燃料電池と、前記第1燃料電池からのアノードオフガスが前記アノードオフガス再利用路経由で供給されて発電する第2燃料電池を含んでいる。
【0018】
請求項2に係る燃料電池システムによれば、第1燃料電池からのアノードオフガスを第2燃料電池で発電に再利用することにより、発電効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る燃料電池システムによれば、燃料電池システムにおいて、システム内で発電時に発生する熱を、有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【
図2】第2実施形態に係る燃料電池システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して本発明の第1実施形態について詳細に説明する。
図1には、本発明の実施形態に係る燃料電池システム10Aの主要構成の概略が示されている。本発明の実施形態に係る燃料電池システム10Aは、主要な構成として、原料熱交換部12、改質部14、第1燃料電池セルスタック16、第2燃料電池セルスタック18、燃焼部20、燃料再生部22、原料ガス供給ブロワ24、ポンプ26、空気供給ブロワ28、アノードオフ熱交換部32、空気熱交換部34、カソードオフ熱交換部36、及び、再生燃料熱交換部37を備えている。本発明の水蒸気供給部は、アノードオフ熱交換部32及びカソードオフ熱交換部36を含んで構成されている。
【0022】
原料熱交換部12には、原料ガス供給管P1の一端が接続されており、原料ガス供給管P1から原料熱交換部12へ、原料ガスが供給される。原料熱交換部12では、後述する第1アノード16Aからのアノードオフガスにより原料ガスが加熱される。原料熱交換部12で加熱された原料ガスは、配管P3を経て改質部14へ供給される。
【0023】
ポンプ26は、水源(不図示)から改質用の水(液相)を水供給管P2Aへ送出する。ポンプ26により送出された水は、アノードオフ熱交換部32、カソードオフ熱交換部36を経て気化される。原料ガス供給管P1の下流端は、原料熱交換部12よりも上流側に合流されている。
【0024】
アノードオフ熱交換部32では、原料熱交換部12を経たアノードオフガスと水供給管P2から流入した水との間で熱交換が行われる。水は加熱され、アノードオフガスは冷却される。アノードオフ熱交換部32で加熱された水は、水供給管P2Bを経てカソードオフ熱交換部36へ流入する。カソードオフ熱交換部36では、後述する第1カソード16Bから排出されたカソードオフガス、及び第2カソード18Bから排出されたカソードオフガスの一部と、水供給管P2Bから流入した水との間で熱交換が行われる。水は加熱され、カソードオフガスは冷却される。アノードオフ熱交換部32及びカソードオフ熱交換部36で加熱された水は、気化されて水蒸気となり、水蒸気供給管P8を介して原料ガス供給管P1へ送られる。
【0025】
なお、本実施形態では、原料ガスとしてメタンを用いるが、改質が可能なガスであれば特に限定されず、炭化水素燃料を用いることができる。炭化水素燃料としては、天然ガス、LPガス(液化石油ガス)、石炭改質ガス、低級炭化水素ガスなどが例示される。低級炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン等の炭素数4以下の低級炭化水素が挙げられ、本実施形態で用いるメタンが好ましい。なお、炭化水素燃料としては、上述した低級炭化水素ガスを混合したものであってもよく、上述した低級炭化水素ガスは天然ガス、都市ガス、LPガス等のガスであってもよい。また、バイオガスを用いてもよい。
【0026】
改質部14では、原料ガスを改質し、水素及び一酸化炭素を含む燃料ガスを生成する。改質部14は、第1燃料電池セルスタック16の第1アノード(燃料極)16Aと接続されている。改質部14で生成された燃料ガスは、燃料ガス管P4を介して第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aに供給される。
【0027】
第1燃料電池セルスタック16は固体酸化物形の燃料電池セルスタックであり、複数の燃料電池セルを有している。第1燃料電池セルスタック16は本発明における燃料電池(第1燃料電池)の一例であり、本実施形態では、作動温度が650℃程度とされている。個々の燃料電池セルは、電解質層と、当該電解質層の表裏面にそれぞれ積層された第1アノード16A、及び第1カソード(空気極)16Bと、を有している。
【0028】
なお、第2燃料電池セルスタック18についての基本構成は、第1燃料電池セルスタック16と同様であり、第1アノード16Aに対応する第2アノード18A、及び第1カソード16Bに対応する第2カソード18Bを有している。
【0029】
空気供給管P5には空気供給ブロワ28が接続されており、空気供給ブロワ28から空気供給管P5へ空気が送出される。空気供給管P5には空気熱交換部34が設けられており、空気供給管P5は、空気熱交換部34よりも下流側で配管P5AとP5Bに分岐されている。配管P5Aは、第1燃料電池セルスタック16の第1カソード16Bに接続され、配管P5Bは、第2燃料電池セルスタック18の第2カソード18Bに接続されている。
【0030】
第1燃料電池セルスタック16の第1カソード16Bには、空気熱交換部34を経た空気が供給される。第1カソード16Bでは、下記(1)式に示すように、空気中の酸素と電子とが反応して酸素イオンが生成される。生成された酸素イオンは電解質層を通って第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aに到達する。
【0031】
(空気極反応)
1/2O2+2e- →O2- …(1)
【0032】
また、第1カソード16Bには、第1カソード16Bからカソードオフガスを送出するカソードオフガス管P11Aが接続されている。
【0033】
一方、第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aでは、下記(2)式及び(3)式に示すように、電解質層を通ってきた酸素イオンが燃料ガス中の水素及び一酸化炭素と反応し、水(水蒸気)及び二酸化炭素と電子が生成される。第1アノード16Aで生成された電子が第1アノード16Aから外部回路を通って第1カソード16Bに移動することで、各燃料電池セルにおいて発電される。また、各燃料電池セルは、発電時に発熱する。
【0034】
(燃料極反応)
H2 +O2- →H2O+2e- …(2)
CO+O2- →CO2+2e- …(3)
【0035】
第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aにはアノードオフガス管P7の一端が接続されており、アノードオフガス管P7には、第1アノード16Aからアノードオフガスが排出される。アノードオフガスには、未反応の水素、未反応の一酸化炭素、二酸化炭素及び水蒸気等が含まれている。
【0036】
なお、本発明の燃料電池としては、固体酸化物形の燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)に限られるものではなく、他の燃料電池、例えば溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)であってもよい。
【0037】
アノードオフガス管P7の他端は、燃料再生部22と接続されている。燃料再生部22は、アノードオフガスから、二酸化炭素、水の少なくとも一方を除去する。燃料再生部22としては、例えば、凝縮器、水蒸気分離膜、二酸化炭素分離膜、二酸化炭素吸収剤等を用いることができる。
【0038】
アノードオフガスは、アノードオフガス管P7に送出され、再生燃料熱交換部37、原料熱交換部12、アノードオフ熱交換部32を経て燃料再生部22へ供給される。
図1では、アノードオフガス管P7として、第1アノード16Aから再生燃料熱交換部37までの配管にP7Aを付し、再生燃料熱交換部37から原料熱交換部12までの配管にP7Bを付し、原料熱交換部12からアノードオフ熱交換部32までの配管にP7Cを付し、アノードオフ熱交換部32から燃料再生部22までの配管にP7Dを付している。再生燃料熱交換部37については後述する。原料熱交換部12では、原料ガス供給管P1から流入した原料ガス及び水蒸気と、第1アノード18Aからアノードオフガス管P7に送出されたアノードオフガスとで熱交換が行われる。熱交換により、原料ガス及び水蒸気が加熱され、アノードオフガスが冷却される。
【0039】
アノードオフ熱交換部32では、水供給管P2Aから流入した水と、原料熱交換部12を経たアノードオフガスとで熱交換が行われる。熱交換により、水が加熱され、アノードオフガスが冷却される。
【0040】
燃料再生部22では、アノードオフガスについて、二酸化炭素及び水の少なくとも一方の濃度が低減される。二酸化炭素及び水の少なくとも一方の濃度が低減されたアノードオフガスは、再生燃料ガスとして、再生燃料ガス管P9へ送出される。再生燃料ガス管P9は、第2燃料電池セルスタック18の第2アノード18Aと接続されており、再生燃料ガスは、再生燃料ガス管P9を経て、第2燃料電池セルスタック18の第2アノード18Aに供給される。
【0041】
再生燃料ガス管P9は、再生燃料熱交換部37を経由して第2アノード18Aと接続されている。再生燃料熱交換部37では、第1アノード16Aから送出されて原料熱交換部12へ至る前のアノードオフガスと、再生燃料ガスとの間で熱交換が行われる。再生燃料熱交換部37において、再生燃料ガスは加熱され、アノードオフガスは冷却される。
【0042】
本実施形態の燃料電池システム10Aは、第1燃料電池セルスタック16で使用された燃料であるアノードオフガスが再生されて、燃料ガスとして第2燃料電池セルスタック18で再利用される多段式の燃料電池システムとなっている。
【0043】
第2燃料電池セルスタック18の第2アノード18A及び第2カソード18Bでは、第1燃料電池セルスタック16と同様の反応により発電が行われる。
【0044】
第2アノード18Aには、アノードオフガス管P10の一端が接続され、アノードオフガス管P10の他端は燃焼部20に接続されている。第2アノード18Aから排出されたアノードオフガスは、アノードオフガス管P10を経て燃焼部20へ供給される。
【0045】
燃焼部20では、アノードオフガス管P10からのアノードオフガスが後述する燃焼用オフガス管P11Dからの空気と混合されて燃焼する。燃焼部20は、改質部14と隣接されており、改質部14へ供給される。
【0046】
第2カソード18Bには、カソードオフガス管P11Aの一端が接続され、第2カソード18Bからのカソードオフガスが送出される。カソードオフガス管P11Aとカソードオフガス管P11Bは合流し、分岐部B1で熱交換用オフガス管P11Cと燃焼用オフガス管P11Dに分岐されている。熱交換用オフガス管P11Cは、カソードオフ熱交換部36と接続され、燃焼用オフガス管P11Dは、燃焼部20と接続されている。
【0047】
第1カソード16B、第2カソード18Bから排出されたカソードオフガスは、分岐部B1で分岐され、分岐された一方は、熱交換用オフガス管P11Cを経てカソードオフ熱交換部36へ供給される。分岐された他方は、燃焼用オフガス管P11Dを経て燃焼部20へ供給される。
【0048】
燃焼部20からは、燃焼排ガスが送出される。燃焼排ガスは、燃焼排ガス管P12内を流通し、空気熱交換部34での熱交換を経て排出される。空気熱交換部34では、空気供給ブロワ28で送出された空気が空気供給管P5を経て空気熱交換部34へ流入し加熱される。燃焼排ガス管P12を経て流入した燃焼排ガスは冷却される。空気熱交換部34で加熱された空気は、第1カソード16B、第2カソード18Bへ供給される。
【0049】
次に、本実施形態の燃料電池システム10Aの動作について説明する。
【0050】
燃料電池システム10Aにおいては、ポンプ26によって改質用の水(液相)が水供給管P2Aへ送出され、原料ガス供給ブロワ24によって原料ガスが原料ガス供給管P1へ送出され、空気供給ブロワ28によって、空気が空気供給管P5へ送出される。
【0051】
水供給管P2Aへ送出された水は、アノードオフ熱交換部32で加熱され、続いてカソードオフ熱交換部36で加熱され、気化される。気化された水蒸気は、水蒸気供給管P8を介して原料ガス供給管P1へ送られる。
【0052】
原料ガス供給管P1へ送出された原料ガスは、水蒸気と混合されて混合原料ガスとなり、原料熱交換部12へ供給される。混合原料ガスは、原料熱交換部12において第1アノード16Aから送出されたアノードオフガスとの熱交換により加熱され、配管P3を経て改質部14へ供給される。改質部14では、混合原料ガスが改質反応により改質され、水素および一酸化炭素を含む燃料ガスが生成される。燃料ガスは燃料ガス管P4を介して第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aに供給される。
【0053】
空気供給管P5へ送出された空気は、空気熱交換部34で加熱され、第1燃料電池セルスタック16の第1カソード16B、及び、第2燃料電池セルスタック18の第2カソード18Bへ供給される。
【0054】
第1燃料電池セルスタック16では、前述の反応により発電が行われる。この発電に伴い燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aからは、アノードオフガスが排出される。また、第1カソード16Bからは、カソードオフガスが排出される。カソードオフガスは、カソードオフガス管P11Aへ送出される。
【0055】
第1アノード16Aから排出されたアノードオフガスは、アノードオフガス管P7に導かれ、再生燃料熱交換部37へ流入して冷却された後、原料熱交換部12へ流入して冷却され、更に、アノードオフ熱交換部32へ流入して冷却される。そして、燃料再生部22へ供給され、アノードオフガスから、二酸化炭素、水の少なくとも一方が除去され、再生燃料ガスが生成される。再生燃料ガスは、再生燃料ガス管P9へ送出され、再生燃料熱交換部37で加熱された後、第2燃料電池セルスタック18の第2アノード18Aへ供給される。
【0056】
第2燃料電池セルスタック18では、前述の反応により発電が行われる。第2アノード18Aからアノードオフガスが排出され、第2カソード18Bからカソードオフガスが排出される。第2アノード18Aから排出されたアノードオフガスは、アノードオフガス管P10を経て燃焼部20へ供給される。
【0057】
第2カソード18Bから排出されたカソードオフガスは、カソードオフガス管P11Bへ送出され、第1カソード16Bからカソードオフガス管P11Aへ送出されたカソードオフガスと合流した後、分岐部B1で分岐される。
【0058】
分岐部B1で分岐されたカソードオフガスの一方は、熱交換用オフガス管P11Cを経てカソードオフ熱交換部36へ供給される。カソードオフ熱交換部36では、熱交換により、水が加熱されて気化され、カソードオフガスが冷却される。
【0059】
分岐部B1で分岐されたカソードオフガスの他方は、燃焼用オフガス管P11Dを経て燃焼部20へ供給され、アノードオフガスの燃焼に供される。
【0060】
燃焼部20から排出された燃焼排ガスは、空気熱交換部34へ送出され、空気供給管P5からの空気との熱交換が行われる。空気熱交換部34では、空気が加熱され、燃焼排ガスが冷却される。空気熱交換部34で加熱された空気は、第1カソード16B、第2カソード18Bへ供給される。
【0061】
本実施形態の燃料電池システム10Aでは、アノードオフガス、カソードオフガスの各々が、第1アノード16Aへ向かう水と熱交換し、水を加熱して気化させるので、気化器を別に用意する必要がない。このように、アノードオフガス、カソードオフガスの熱を有効利用することができる。
【0062】
また、原料ガスと混合される前の水がアノードオフガス、カソードオフガスと熱交換されるので、燃料ガスと混合された後に熱交換する場合と比較して、少ない熱量で効率的に水を気化させることができる。
【0063】
また、本実施形態の燃料電池システム10Aでは、アノードオフガスで、再生燃料ガス、混合原料ガスを加熱するので、アノードオフガスの熱を有効利用することができる。
【0064】
また、本実施形態では、燃料再生部22で、アノードオフガス中の水及び二酸化炭素の少なくとも一方が除去されて再生燃料ガスが第2燃料電池セルスタック18での発電に供されるので、第2燃料電池セルスタック18での発電効率を高くすることができる。
【0065】
また、本実施形態では、燃焼部20においてアノードオフガス中の可燃成分を燃焼させることにより、改質部14における改質反応に必要な熱を得たり、空気の加熱に必要な熱を得たり、することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、水はアノードオフガスとの熱交換の後にカソードオフガスと熱交換したが、カソードオフガスとの熱交換の後にアノードオフガスと熱交換してもよい。カソードオフガスは、アノードオフガスと比較して、流量の調整を行いやすい。したがって、本実施形態の順番とすることにより、アノードオフガスとの熱交換後の水の温度や気化状態等に応じて、カソードオフガスの流量を調整することにより、カソードオフ熱交換部36へ必要とされる熱量のカソードオフガスを供給することができる。
【0067】
また、本実施形態では、原料熱交換部12、空気熱交換部34を設けたが、これらのいずれか、または両方を備えない構成にすることもできる。
【0068】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態では、第1実施形態と同様の部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0069】
図2には、本発明の第2実施形態に係る燃料電池システム10Bが示されている。燃料電池システム10Bは、第1実施形態で説明した燃料電池システム10Aと比較して、第2燃料電池セルスタック18を有していない点が異なっている。
【0070】
第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aにはアノードオフガス管P10の一端が接続されており、アノードオフガス管P10には、第1アノード16Aからアノードオフガスが排出される。アノードオフガス管P10は、分岐部B2で循環用オフガス管P10Aと燃焼用オフガス管P10Bに分岐されている。循環用オフガス管P10Aは、原料熱交換部12、アノードオフ熱交換部32を経て燃料再生部22と接続されている。燃焼用オフガス管P10Bは、燃焼部20と接続されている。
【0071】
燃料再生部22の下流側(出口側)には、再生燃料ガス管P9の一端が接続されており、再生燃料ガス管P9の他端は、原料熱交換部12よりも上流側で、原料ガス供給管P1に接続されている。燃料再生部22から再生燃料ガス管P9へ再生燃料ガスが送出される。再生燃料ガス管P9には、ガス供給ブロワ25が設けられており、再生燃料ガスを原料ガス供給管P1と合流させる。
【0072】
本実施形態の燃料電池システム10Bは、第1燃料電池セルスタック16で使用された燃料であるアノードオフガスが再生されて、再度燃料ガスとして第1燃料電池セルスタック16で再利用される循環式の燃料電池システムとなっている。
【0073】
第1カソード16Bには、カソードオフガス管P11Aの一端が接続されており、カソードオフガス管P11Aには、第1カソード16Bからカソードオフガスが排出される。カソードオフガス管P11は、分岐部B1で熱交換用オフガス管P11Cと燃焼用オフガス管P11Dに分岐されている。熱交換用オフガス管P11Cは、原料熱交換部12と接続され、燃焼用オフガス管P11Dは、燃焼部20と接続されている。
【0074】
次に、本実施形態の燃料電池システム10Bの動作について説明する。
【0075】
第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aから排出されたアノードオフガスは、分岐部B2で分流される。分流された一方は、循環用オフガス管P10Aへ送出され、原料熱交換部12、アノードオフ熱交換部32で冷却されて燃料再生部22へ供給される。分流された他方は、燃焼用オフガス管P10Bへ送出され、燃焼部20へ供給される。
【0076】
本実施形態の燃料電池システム10Bでも、アノードオフガス、カソードオフガスの各々が、第1アノード16Aへ向かう水と熱交換し、水を加熱して気化させるので、気化器を別に用意する必要がない。このように、アノードオフガス、カソードオフガスの熱を有効利用することができる。
【0077】
また、原料ガスと混合される前の水がアノードオフガス、カソードオフガスと熱交換されるので、燃料ガスと混合された後に熱交換する場合と比較して、少ない熱量で効率的に水を気化させることができる。
【0078】
また、本実施形態では、燃料再生部22で、アノードオフガス中の水及び二酸化炭素の少なくとも一方が除去されて再生燃料ガスが、再度、第1燃料電池セルスタック16での発電に供されるので、第1燃料電池セルスタック16での発電効率を高くすることができる。
【0079】
なお、第1、第2実施形態では、改質部14で原料ガスの改質が行われ、改質後の燃料ガスが第1燃料電池セルスタック16の第1アノード16Aへ供給される例について説明したが、原料ガスの改質は、第1アノード16Aで行われてもよい。すなわち、改質部14を備えず、原料ガス供給管P1を直接第1アノード16Aへ接続して、原料ガスを第1アノード16Aへ供給し、改質部を兼ねた第1アノード16Aで改質を行ってもよい。
また、改質水としては、燃料再生部22でアノードオフガスから除去した水を用いてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10A、10B 燃料電池システム
12 原料熱交換部(燃料熱交換部)
16 第1燃料電池セルスタック(燃料電池)
16A 第1アノード(燃料極)
16B 第1カソード(空気極)
18 第2燃料電池セルスタック(燃料電池)
18A 第2アノード(燃料極)
18B 第2カソード(空気極)
20 燃焼部
22 燃料再生部
32 アノードオフ熱交換部(水蒸気供給部)
34 空気熱交換部
36 カソードオフ熱交換部(水蒸気供給部)
P8 水蒸気供給管(水蒸気供給部)
P7 アノードオフガス管(アノードオフ再利用路)
P9 再生燃料ガス管(アノードオフ再利用路)
P10A 循環用オフガス管(アノードオフ再利用路)