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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20240919BHJP
   B60T 8/1755 20060101ALI20240919BHJP
   B60W 40/11 20120101ALI20240919BHJP
   B60W 40/112 20120101ALI20240919BHJP
   B60W 40/13 20120101ALI20240919BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B60W30/02
B60T8/1755 Z
B60W40/11
B60W40/112
B60W40/13
B66F9/24 J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020179919
(22)【出願日】2020-10-27
(65)【公開番号】P2022070707
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徳祥
(72)【発明者】
【氏名】服部 義和
(72)【発明者】
【氏名】天野 真輝
(72)【発明者】
【氏名】服部 達哉
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-514480(JP,A)
【文献】特開2014-051108(JP,A)
【文献】特開2004-058960(JP,A)
【文献】特開2015-003686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/02
B60W 40/13
B60W 40/11
B60W 40/112
B60T 8/1755
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載物を積載可能な車両の運動状態を検出する運動状態検出部と、
前記車両の各輪についての輪荷重を取得する輪荷重取得部と、
前記車両に積載された前記積載物の積載状態を取得する積載取得部と、
前記取得された前記積載状態に応じて、各輪の輪荷重に関する閾値、及び左右輪の輪荷重の差に関する閾値を変更する閾値変更部と、
前記取得された各輪についての輪荷重の、前記閾値との比較結果、前記左右輪の輪荷重の差の、前記閾値との比較結果、及び前記検出された前記運動状態に基づいて、前記車両の各輪の輪荷重の低下を抑制する転倒防止制御を行う制御部と、
を含み、
前記制御部は、前記左右輪の輪荷重の差の、前記閾値との比較結果に応じて、複数種類の転倒防止制御の何れかを用いて、前記転倒防止制御を行う車両制御装置。
【請求項2】
前記運動状態検出部は、前記運動状態として、前記車両のピッチ角速度及びロール角速度を検出し、
前記複数種類の転倒防止制御は、前記ピッチ角速度に基づく前記車両の左右輪の制動力又は駆動力の制御、並びに前記ロール角速度に基づく前記車両の駆動輪の制動力又は駆動力の制御を含む請求項記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記積載取得部は、前記車両が停止状態における各輪についての輪荷重、及び前記左右輪の輪荷重の差を、前記積載物の積載状態として取得する請求項1又は2記載の車両制御装置。
【請求項4】
積載物を積載可能な車両の運動状態を検出する運動状態検出部と、
前記車両の各輪についての輪荷重を取得する輪荷重取得部と、
前記車両に積載された前記積載物の積載状態を取得する積載取得部と、
前記取得された前記積載状態に応じて、各輪の輪荷重に関する閾値、及び左右輪の輪荷重の差に関する閾値を変更する閾値変更部と、
前記取得された各輪についての輪荷重の、前記閾値との比較結果、前記左右輪の輪荷重の差の、前記閾値との比較結果、及び前記検出された前記運動状態に基づいて、前記車両の各輪の輪荷重の低下を抑制する転倒防止制御を行う制御部と、
を含み、
前記運動状態検出部は、前記運動状態として、前記車両のピッチ角速度、ロール角速度、及び前後加速度を検出し、
前記各輪の輪荷重に関する閾値は、各輪についての、転倒防止制御の開始を判断するための開始判断閾値、及び各輪についての、転倒防止制御の終了を判断するための終了判断閾値を含み、
前記制御部は、少なくとも1つの輪についての輪荷重が、前記輪の前記輪荷重についての開始判断閾値未満であり、かつ、前記左右輪の輪荷重の差の絶対値が、前記左右輪の輪荷重の差についての閾値より大きい場合には、前記ロール角速度に基づく前記車両の駆動輪の制動力又は駆動力の制御量を算出し、
少なくとも1つの輪についての輪荷重が、前記輪荷重についての開始判断閾値未満であり、かつ、前記左右輪の輪荷重の差の絶対値が、前記左右輪の輪荷重の差についての閾値以下である場合には、前記ピッチ角速度に基づく前記車両の駆動輪の制動力又は駆動力の制御量を算出し、
ドライバ操作に基づく前記車両の駆動輪の制動力又は駆動力の制御量と、前記算出された前記制御量との和に基づいて、前記車両の駆動輪の制動力又は駆動力を制御し、
全ての輪の各々についての輪荷重が、前記輪の前記輪荷重についての終了判断閾値より大きくなると、前記制御量の算出を停止する車両制御装置。
【請求項5】
コンピュータを、
積載物を積載可能な車両の運動状態を検出する運動状態検出部、
前記車両の各輪についての輪荷重を取得する輪荷重取得部、
前記車両に積載された前記積載物の積載状態を取得する積載取得部、
前記取得された前記積載状態に応じて、各輪の輪荷重に関する閾値、及び左右輪の輪荷重の差に関する閾値を変更する閾値変更部、及び
前記取得された各輪についての輪荷重の、前記閾値との比較結果、前記左右輪の輪荷重の差の、前記閾値との比較結果、及び前記検出された前記運動状態に基づいて、前記車両の各輪の輪荷重の低下を抑制する転倒防止制御を行う制御部
として機能させるための車両制御プログラムであって、
前記制御部は、前記左右輪の輪荷重の差の、前記閾値との比較結果に応じて、複数種類の転倒防止制御の何れかを用いて、前記転倒防止制御を行う車両制御プログラム。
【請求項6】
コンピュータを、
積載物を積載可能な車両の運動状態を検出する運動状態検出部、
前記車両の各輪についての輪荷重を取得する輪荷重取得部、
前記車両に積載された前記積載物の積載状態を取得する積載取得部、
前記取得された前記積載状態に応じて、各輪の輪荷重に関する閾値、及び左右輪の輪荷重の差に関する閾値を変更する閾値変更部、及び
前記取得された各輪についての輪荷重の、前記閾値との比較結果、前記左右輪の輪荷重の差の、前記閾値との比較結果、及び前記検出された前記運動状態に基づいて、前記車両の各輪の輪荷重の低下を抑制する転倒防止制御を行う制御部
として機能させるための車両制御プログラムであって、
前記運動状態検出部は、前記運動状態として、前記車両のピッチ角速度、ロール角速度、及び前後加速度を検出し、
前記各輪の輪荷重に関する閾値は、各輪についての、転倒防止制御の開始を判断するための開始判断閾値、及び各輪についての、転倒防止制御の終了を判断するための終了判断閾値を含み、
前記制御部は、少なくとも1つの輪についての輪荷重が、前記輪の前記輪荷重についての開始判断閾値未満であり、かつ、前記左右輪の輪荷重の差の絶対値が、前記左右輪の輪荷重の差についての閾値より大きい場合には、前記ロール角速度に基づく前記車両の駆動輪の制動力又は駆動力の制御量を算出し、
少なくとも1つの輪についての輪荷重が、前記輪荷重についての開始判断閾値未満であり、かつ、前記左右輪の輪荷重の差の絶対値が、前記左右輪の輪荷重の差についての閾値以下である場合には、前記ピッチ角速度に基づく前記車両の駆動輪の制動力又は駆動力の制御量を算出し、
ドライバ操作に基づく前記車両の駆動輪の制動力又は駆動力の制御量と、前記算出された前記制御量との和に基づいて、前記車両の駆動輪の制動力又は駆動力を制御し、
全ての輪の各々についての輪荷重が、前記輪の前記輪荷重についての終了判断閾値より大きくなると、前記制御量の算出を停止する車両制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置及び車両制御プログラムに係り、特に、積載物を積載可能な車両の転倒防止制御を行う車両制御装置及び車両制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1には、車両のロールレートあるいは横加速度に基づき車両のロール状態を検出し、ロール状態が大きくなったら旋回外輪に制動力を付与して横転を防止する技術が開示されている。
【0003】
特許文献2には、車両質量、重心高、車速に応じて横転限界舵角を決め、この舵角に至らないよう舵角抑制を行い、横転を防止する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4228864号公報
【文献】特開2011-110952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、車両の旋回方向の外輪側のみに制動力を与えるため、大きなヨーモーメントが必要な場合、タイヤ発生力限界に至り、十分な横転制御ができない、という問題がある。
【0006】
上記特許文献2では、操舵制限の制御では横転防止しか対応できず、前後転倒に対応できない、という問題がある。
【0007】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたもので、積載物の積載状態に応じて適切に転倒防止制御を行うことができる車両制御装置及び車両制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために本発明に係る車両制御装置は、積載物を積載可能な車両の運動状態を検出する運動状態検出部と、前記車両の各輪についての輪荷重を取得する輪荷重取得部と、前記車両に積載された前記積載物の積載状態を取得する積載取得部と、前記取得された前記積載状態に応じて、各輪の輪荷重に関する閾値、及び左右輪の輪荷重の差に関する閾値を変更する閾値変更部と、前記取得された各輪についての輪荷重の、前記閾値との比較結果、前記左右輪の輪荷重の差の、前記閾値との比較結果、及び前記検出された前記運動状態に基づいて、前記車両の各輪の輪荷重の低下を抑制する転倒防止制御を行う制御部と、を含んで構成されている。
【0009】
また、本発明に係る車両制御プログラムは、コンピュータを、積載物を積載可能な車両の運動状態を検出する運動状態検出部、前記車両の各輪についての輪荷重を取得する輪荷重取得部、前記車両に積載された前記積載物の積載状態を取得する積載取得部、前記取得された前記積載状態に応じて、各輪の輪荷重に関する閾値、及び左右輪の輪荷重の差に関する閾値を変更する閾値変更部、及び前記取得された各輪についての輪荷重の、前記閾値との比較結果、前記左右輪の輪荷重の差の、前記閾値との比較結果、及び前記検出された前記運動状態に基づいて、前記車両の各輪の輪荷重の低下を抑制する転倒防止制御を行う制御部として機能させるためのプログラムである。
【0010】
本発明によれば、運動状態検出部によって、積載物を積載可能な車両の運動状態を検出する。輪荷重取得部によって、前記車両の各輪についての輪荷重を取得する。積載取得部によって、前記車両に積載された前記積載物の積載状態を取得する。
【0011】
そして、閾値変更部によって、前記取得された前記積載状態に応じて、各輪の輪荷重に関する閾値、及び左右輪の輪荷重の差に関する閾値を変更する。制御部によって、前記取得された各輪についての輪荷重の、前記閾値との比較結果、前記左右輪の輪荷重の差の、前記閾値との比較結果、及び前記検出された前記運動状態に基づいて、前記車両の各輪の輪荷重の低下を抑制する転倒防止制御を行う。
【0012】
このように、積載物の積載状態に応じて、各輪の輪荷重に関する閾値、及び左右輪の輪荷重の差に関する閾値を変更し、前記取得された各輪についての輪荷重の、前記閾値との比較結果、前記左右輪の輪荷重の差の、前記閾値との比較結果、及び前記検出された前記運動状態に基づいて、前記車両の各輪の輪荷重の低下を抑制する転倒防止制御を行うことにより、積載物の積載状態に応じて適切に転倒防止制御を行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明の車両制御装置及び車両制御プログラムによれば、積載物の積載状態に応じて適切に転倒防止制御を行うことができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係るフォークリフトの構成を示す側面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る車両制御装置の構成を示す概略図である。
図3】本発明の実施の形態に係る車両制御装置の制駆動力制御部の構成を示すブロック図である。
図4】(A)積載荷重と輪荷重との関係を示すグラフ、(B)リフト高さと輪荷重との関係を示すグラフ、及び(C)積載位置と輪荷重との関係を示すグラフである。
図5】(A)積載物の積載位置が中央である場合の上面図、及び(B)積載物の積載位置が左寄りである場合の上面図である。
図6】ロール角速度フィードバック制御量演算部による処理を説明するための図である。
図7】制駆動力算出部による処理を説明するための図である。
図8】制駆動力算出部による処理を説明するための図である。
図9】制駆動力算出部による処理を説明するための図である。
図10】ピッチ角速度フィードバック制御量演算部による処理を説明するための図である。
図11】制駆動力算出部による処理を説明するための図である。
図12】本発明の実施の形態に係る車両制御装置における転倒防止制御処理ルーチンの内容を示すフローチャートである。
図13】本発明の実施の形態に係る車両制御装置における転倒防止制御を用いた場合の実験結果を示すグラフである。
図14】従来技術の減速制御を用いた場合の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態では、フォークリフトに搭載され、かつ、転倒防止制御を行う車両制御装置に本発明を適用した場合を例に説明する。
【0016】
<車両制御装置の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る車両制御装置を備えた車両としてフォークリフトを示す側面図である。図1において、本実施の形態に係るフォークリフト1は、カウンター式のフォークリフトである。フォークリフト1は、走行装置2と、この走行装置2の前側に配置され、積載物の揚げ降ろしを行う荷役装置3とを具備している。
【0017】
走行装置2は、車体4と、この車体4の前部に配置された1対の駆動輪である前輪5と、車体4の後部に配置された1対の操舵輪である後輪6と、前輪5を回転させる走行モータ(図示省略)とを有している。
【0018】
荷役装置3は、車体4の前端部に連結されている。荷役装置3は、車体4の前端部に立設されたマスト11と、このマスト11にリフトブラケット12を介して取り付けられ、積載物が積載される1対のフォーク13と、このフォーク13を昇降させるリフトシリンダ14と、マスト11を傾動させるティルトシリンダ15とを有している。フォークリフト1は、図1(A)、(B)に示すように、重量の異なる積載物を、様々なリフト高さで持ち上げることができる。また、フォークリフト1は、重量の異なる積載物を、フォーク13の前後方向の異なる位置で持ち上げることができる。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係る車両制御装置の構成を示すブロック図である。図2において、車両制御装置10は、フォークリフト1に搭載されている。車両制御装置10は、操作検出部20と、運動状態検出部22と、コンピュータ24と、制駆動力発生部26とを備えている。
【0020】
コンピュータ24は、CPUと、RAMと、後述する転倒防止制御処理ルーチンを実行するためのプログラムや各種データを記憶したROMと、を含むコンピュータで構成することが出来る。コンピュータ24は、機能的には図2に示すように、操作制駆動力取得部30、輪荷重取得部32、及び制駆動力制御部34を備えている。
【0021】
操作検出部20は、ドライバの操舵、アクセル、ブレーキ(含回生)の各操作量を検出する。
【0022】
運動状態検出部22は、IMU(Integrated Measurement Unit)を用いて、車両の運動状態として、少なくともロール角速度P、ピッチ角速度Q、及び前後加速度Gを検出する。
【0023】
操作制駆動力取得部30は、ドライバ操作に基づく前記車両の駆動輪の制動力及び駆動力の制御量FDRV(i)を取得する。具体的には、ドライバの操舵、アクセル、ブレーキ(含回生)の各操作量に基づき決定される左右輪の制動力又は駆動力の制御量FDRV(i)を取得する。ただし、添え字iは、各輪(前右輪、前左輪、後右輪、後左輪)の識別子である。
【0024】
輪荷重取得部32は、フォークリフト1の各輪についての輪荷重を検出する。輪荷重の検出方法は、運動状態検出部22の検出値と、重心位置、車両質量、慣性等の車両諸元とに基づいて推定する方法、あるいはロードセルを用いた計測する方法等である。
【0025】
制駆動力制御部34は、フォークリフト1の各輪の輪荷重の低下を抑制する転倒防止制御を行う。
【0026】
具体的には、図3に示すように、制駆動力制御部34は、積載取得部40、制御パラメータ変更部42、閾値変更部44、閾値記憶部46、第1閾値比較部48、制御選択部50、第2閾値比較部52、ロール角速度フィードバック制御部54、ピッチ角速度フィードバック制御部56、制御量切換部58、及び制駆動力指令値設定部60を備えている。なお、制御選択部50、第2閾値比較部52、ロール角速度フィードバック制御部54、ピッチ角速度フィードバック制御部56、制御量切換部58、及び制駆動力指令値設定部60が、制御部の一例である。
【0027】
積載取得部40は、フォークリフト1が停止状態における各輪についての輪荷重、及び左右輪の輪荷重の差を、積載物の積載状態として取得する。
【0028】
制御パラメータ変更部42は、積載取得部40によって取得した積載状態に応じ、後述するロール角速度フィードバック制御量演算部70、制駆動力算出部74、及びピッチ角速度フィードバック制御量演算部80の制御ゲイン等を含む制御パラメータを変更する。
【0029】
閾値変更部44は、積載取得部40によって取得した積載状態に応じて、各輪の輪荷重に関する第1閾値及び第2閾値、前輪の左右輪の輪荷重の差に関する第3閾値、及び後輪の左右輪の輪荷重の差に関する第4閾値を変更する。
【0030】
ここで、第1閾値は、各輪についての転倒防止制御の開始を判断するための開始判断閾値であり、第2閾値は、各輪についての転倒防止制御の終了を判断するための終了判断閾値である。第2閾値は第1閾値よりも大きな値に設定される。
【0031】
転倒防止制御では、積載状態に応じて変わる輪荷重に関する第1閾値~第4閾値の設定が重要である。その説明のため、積載荷重、リフト高さ、フォーク左右積載位置の違いによる輪荷重の違いを図4に示す。図4は3輪フォークリフトの荷重計測例である。
【0032】
図4(A)では、積載荷重と、前右輪(FR輪)、前左輪(FL輪)、及び後輪の輪荷重との関係を示している。図4(A)では、リフト高さが、図4(B)のリフト高さ「A」であり、積載位置が、図5(A)に示すように中央位置である場合の例を示している。
【0033】
図4(B)では、リフト高さと、前右輪(FR輪)、前左輪(FL輪)、及び後輪の輪荷重との関係を示している。図4(B)では、積載荷重が、図4(A)の積載荷重「b」であり、積載位置が、図5(A)に示すように中央位置である場合の例を示している。
【0034】
図4(C)では、フォーク積載位置(図5(A)、(B)参照)と、前左輪(FL輪)の輪荷重との関係を示している。図4(C)では、積載荷重が、図4(A)の積載荷重「b」であり、リフト高さが、図4(B)に示すようにリフト高さ「C」である場合の例を示している。
【0035】
上記図4(A)~図4(C)に示すように、積載状態に応じて各輪荷重が大きく変わることがわかる。
【0036】
そこで、閾値変更部44は、積載取得部40によって走行停止状態で検出した各輪荷重に応じて各閾値を変更する。例えば、閾値変更部44は、各輪荷重検出値の30%を各輪の第1閾値に設定し、各輪荷重検出値の40%を各輪の第2閾値に設定し、第3閾値、第4閾値を、前輪の左右輪荷重と後輪の左右輪荷重との平均の30%に設定する。
【0037】
閾値記憶部46は、変更後の各輪の第1閾値、各輪の第2閾値、第3閾値、及び第4閾値を記憶している。
【0038】
第1閾値比較部48は、各輪について、輪荷重検出値と第1閾値とを比較し、少なくとも1つの輪荷重検出値が第1閾値未満であるか否かを判定する。少なくとも1つの輪荷重検出値が第1閾値未満であれば、制御選択部50により、転倒防止制御が開始される。
【0039】
制御選択部50は、第1閾値比較部48により、少なくとも1つの輪荷重検出値が第1閾値未満であると判定されると、前輪の左右輪の輪荷重の差の、第3閾値との比較結果、又は後輪の左右輪の輪荷重の差の、第4閾値との比較結果に応じて、複数種類の転倒防止制御の何れかを選択し、選択された転倒防止制御を開始する。
【0040】
具体的には、少なくとも1つの輪荷重検出値が、第1閾値未満であり、かつ、第1閾値未満となる輪荷重検出値が、前輪のものであり、かつ、前輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第3閾値より大きい場合には、ロール挙動による輪荷重低下と判断し、ロール角速度に基づいて車両の駆動輪の制動力又は駆動力を制御する転倒防止制御を開始する。
【0041】
また、少なくとも1つの輪荷重検出値が、第1閾値未満であり、かつ、第1閾値未満となる輪荷重検出値が、前輪のものであり、かつ、前輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第3閾値以下である場合には、ピッチ挙動による輪荷重低下と判断し、ピッチ角速度に基づいて車両の駆動輪の制動力又は駆動力を制御する転倒防止制御を開始する。
【0042】
また、少なくとも1つの輪荷重検出値が、第1閾値未満であり、かつ、第1閾値未満となる輪荷重検出値が、後輪のものであり、かつ、後輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第4閾値より大きい場合には、ロール挙動による輪荷重低下と判断し、ロール角速度に基づいて車両の駆動輪の制動力又は駆動力を制御する転倒防止制御を開始する。
【0043】
また、少なくとも1つの輪荷重検出値が、第1閾値未満であり、かつ、第1閾値未満となる輪荷重検出値が、後輪のものであり、かつ、後輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第4閾値以下である場合には、ピッチ挙動による輪荷重低下と判断し、ピッチ角速度に基づいて車両の駆動輪の制動力又は駆動力を制御する転倒防止制御を開始する。
【0044】
第2閾値比較部52は、各輪について、輪荷重検出値と第2閾値とを比較し、全ての輪荷重検出値が第2閾値より大きいか否かを判定する。全ての輪荷重検出値が第2閾値より大きい場合には、転倒防止制御を終了する。
【0045】
ロール角速度フィードバック制御部54は、ロール角速度に基づいて駆動輪の制動力又は駆動力を制御する際の制御量を算出する。
【0046】
具体的には、ロール角速度フィードバック制御部54は、ロール角速度フィードバック制御量演算部70、制駆動力算出部72、制駆動力算出部74、及び制駆動力算出部76を備えている。
【0047】
ロール角速度フィードバック制御量演算部70は、図6に示すように、ロール角速度の目標値「0deg/s」と、運動状態検出部22によって検出されたロール角速度Pに基づいて、PID(Proportional-Integral-Differential)制御により、ヨーモーメント制御量YMを算出する。
【0048】
制駆動力算出部72は、図7に示すように、算出したヨーモーメント制御量YMが得られるよう前輪の左右輪の制動力又は駆動力の制御量FROL(i)を求める。図7のDirは前進、後進を示すフラグで前進は’+1’、後進は’-1’、Trは前輪トレッドベースである。
【0049】
制駆動力算出部74は、図8に示すように、前後加速度の目標値「0」と、運動状態検出部22によって検出された前後加速度Gとに基づいて、PID制御により、前輪の左右輪の制動力又は駆動力の制御量FDB(i)を求める。このとき、前輪側の荷重低下であれば制動力の制御量を求め、後輪側の荷重低下であれば正の駆動力の制御量もしくは制動力の制御量を求める。また、左右輪とも同じ制御量とする。
【0050】
なお、図9に示すように、運動状態検出部22によって検出された前後加速度Gから、前後加速度Gxと制動力又は駆動力Fとの関係を表すテーブルを用いて、前輪の左右輪の制動力又は駆動力の制御量FDB(i)を求めるようにしてもよい。
【0051】
制駆動力算出部76は、前輪の左右輪の各々について、制動力又は駆動力の制御量FROL(i)と制動力又は駆動力の制御量FDB(i)との和を、制動力又は駆動力の制御量FR(i)を算出する。
【0052】
ピッチ角速度フィードバック制御部56は、ピッチ角速度に基づいて車両の左右輪の制動力又は駆動力を制御する際の制御量を算出する。
【0053】
具体的には、ピッチ角速度フィードバック制御部56は、ピッチ角速度フィードバック制御量演算部80及び制駆動力算出部82を備えている。
【0054】
ピッチ角速度フィードバック制御量演算部80は、図10に示すように、ピッチ角速度の目標値「0deg/s」と、運動状態検出部22によって検出されたピッチ角速度Qに基づいて、PID制御により、ピッチモーメント制御量PMを算出する。
【0055】
制駆動力算出部82は、図11に示すように、算出したピッチモーメント制御量PMが得られるよう前輪の左右輪の制動力又は駆動力の制御量FP(i)を求める。図11のDirは前進、後進を示すフラグで前進は’+1’、後進は’-1’、hは重心高である。ここで、制動力又は駆動力により車両にヨー挙動を生じないよう左右輪で同じ制御量FP(i)を求める。
【0056】
制御量切換部58は、ロール角速度に基づいて車両の駆動輪の制動力又は駆動力を制御する転倒防止制御を開始した場合には、ロール角速度フィードバック制御部54により得られた制動力又は駆動力の制御量F(i)を出力する。
【0057】
また、制御量切換部58は、ピッチ角速度に基づいて車両の駆動輪の制動力又は駆動力を制御する転倒防止制御を開始した場合には、ピッチ角速度フィードバック制御部56により得られた制動力又は駆動力の制御量F(i)を出力する。
【0058】
また、制御量切換部58は、転倒防止制御を終了した場合には、制御量「F(i)=0」を出力する。
【0059】
制駆動力指令値設定部60は、操作制駆動力取得部30によって取得された制動力又は駆動力の制御量FDRV(i)に、制御量切換部58によって出力された制動力又は駆動力の制御量F(i)を足した値を、左右輪の制動力又は駆動力の指令値Fx(i)として設定する。制駆動力発生部26により、駆動輪の左右輪の制動力又は駆動力の指令値Fx(i)を発生させる。
【0060】
<車両制御装置の作用>
次に、本実施の形態に係る車両制御装置10の作用について説明する。
【0061】
車両制御装置10を搭載したフォークリフト1のフォーク13に積載物が積載された状態で、フォークリフト1の電源がオンされると、コンピュータ24において、図12に示す転倒防止制御処理ルーチンが実行される。ここでは、フォークリフト1が前輪駆動である場合を例に説明する。
【0062】
まず、ステップS100において、フォークリフト1が停止状態であるか否かを判定し、フォークリフト1が停止状態であると判定されると、ステップS102へ進み、フォークリフト1が停止状態でないと判定されると、ステップS106へ進む。
【0063】
ステップS102において、輪荷重取得部32は、各輪の輪荷重を検出する。積載取得部40は、フォークリフト1が停止状態における各輪についての輪荷重、及び左右輪の輪荷重の差を、積載物の積載状態として取得する。
【0064】
ステップS104において、閾値変更部44は、積載取得部40によって取得した積載状態に応じて、各輪の輪荷重に関する第1閾値及び第2閾値、前輪の左右輪の輪荷重の差に関する第3閾値、及び後輪の左右輪の輪荷重の差に関する第4閾値を変更する。
【0065】
ステップS106において、操作制駆動力取得部30は、操作検出部20によって検出したドライバ操作に基づいて、駆動輪の制動力及び駆動力の制御量FDRV(i)を取得する。
【0066】
ステップS108において、運動状態検出部22は、IMUを用いて、フォークリフト1の運動状態として、ロール角速度P、ピッチ角速度Q、及び前後加速度Gを検出する。
【0067】
ステップS110において、輪荷重取得部32は、フォークリフト1の各輪についての輪荷重を検出する。
【0068】
ステップS112において、第2閾値比較部52は、各輪について、輪荷重検出値と第2閾値とを比較し、全ての輪荷重検出値が第2閾値より大きいか否かを判定する。全ての輪荷重検出値が第2閾値より大きい場合には、転倒防止制御を終了すると判断し、ステップS134へ移行する。一方、少なくとも1つの輪荷重検出値が第2閾値以下である場合には、ステップS114へ移行する。
【0069】
ステップS114において、第1閾値比較部48は、各輪について、輪荷重検出値と第1閾値とを比較し、少なくとも1つの輪荷重検出値が第1閾値未満であるか否かを判定する。少なくとも1つの輪荷重検出値が第1閾値未満であれば、転倒防止制御を開始すると判断し、ステップS116へ移行する。一方、全ての輪荷重検出値が第1閾値以上であれば、ステップS132へ移行する。
【0070】
ステップS116において、転倒防止制御が開始されたことを示すフラグFLAGに1を設定する。
【0071】
ステップS118において、第1閾値未満となる輪荷重検出値が、前輪のものであるか否かを判定する。第1閾値未満となる輪荷重検出値が、前輪のものである場合には、ステップS120へ移行する。一方、第1閾値未満となる輪荷重検出値が、後輪のものである場合には、ステップS122へ移行する。
【0072】
ステップS120において、前輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第3閾値より大きいか否かを判定する。前輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第3閾値より大きい場合には、ロール挙動による輪荷重低下と判断し、ステップS124へ移行する。一方、前輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第3閾値以下である場合には、ピッチ挙動による輪荷重低下と判断し、ステップS130へ移行する。
【0073】
ステップS122において、後輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第4閾値より大きいか否かを判定する。後輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第4閾値より大きい場合には、ロール挙動による輪荷重低下と判断し、ステップS124へ移行する。一方、後輪の左右輪の輪荷重の差の絶対値が、第4閾値以下である場合には、ピッチ挙動による輪荷重低下と判断し、ステップS130へ移行する。
【0074】
ステップS124において、ロール角速度フィードバック制御量演算部70は、ロール角速度の目標値「0deg/s」と、運動状態検出部22によって検出されたロール角速度Pとに基づいて、PID制御により、ヨーモーメント制御量YMを算出する。そして、制駆動力算出部72は、算出したヨーモーメント制御量YMが得られるよう前輪の左右輪の制動力又は駆動力の制御量FROL(i)を求める。
【0075】
ステップS126において、制駆動力算出部74は、前後加速度の目標値「0」と、運動状態検出部22によって検出された前後加速度Gに基づいて、PID制御により、前輪の左右輪の制動力又は駆動力の制御量FDB(i)を求める。
【0076】
ステップS128において、制駆動力算出部76は、前輪の左右輪の各々について、制動力又は駆動力の制御量FROL(i)と制動力又は駆動力の制御量FDB(i)との和を、制動力又は駆動力の制御量F(i)として算出する。
【0077】
ステップS130において、ピッチ角速度フィードバック制御量演算部80は、ピッチ角速度の目標値「0deg/s」と、運動状態検出部22によって検出されたピッチ角速度Qとに基づいて、PID制御により、ピッチモーメント制御量PMを算出する。そして、制駆動力算出部82は、算出したピッチモーメント制御量PMが得られるよう前輪の左右輪の制動力又は駆動力の制御量F(i)を求める。
【0078】
ステップS132において、FLAG=1であるか否かを判定する。FLAG=1である場合には、転倒防止制御が開始されていると判断し、ステップS118へ移行する。一方、FLAG=1でない場合には、転倒防止制御が開始されていないと判断し、ステップS134へ移行する。
【0079】
ステップS134において、転倒防止制御を終了するためにFLAG=0に設定し、ステップS136において、制御量切換部58は、制御量「F(i)=0」を出力する。
【0080】
ステップS138において、制駆動力指令値設定部60は、操作制駆動力取得部30によって取得された制動力又は駆動力の制御量FDRV(i)に、上記ステップS128、S130、又はS136で得られた制動力又は駆動力の制御量F(i)を足した値を、左右輪の制動力又は駆動力の指令値Fx(i)として設定する。制駆動力発生部26により、駆動輪の左右輪の制動力又は駆動力の指令値Fx(i)を発生させる。そして、ステップS106へ戻る。
【0081】
<実験例>
図13に、前進、旋回時の制御性検討結果の1例として、3輪フォークリフトを対象に、上記の実施の形態で説明したロール角速度フィードバック制御部54による転倒防止制御(ロール制御+減速制御)による効果を、転倒防止制御なしと比較する。図14では、従来の制御(制駆動力算出部74の減速制御のみ)と制御なしとの比較も示している。図13図14ともに、減速制御での減速量(制動力の制御量)は同じとした。上記の実施の形態で説明したロール角速度フィードバック制御部54による転倒防止制御により、ロール角速度と前後加速度とが低減され、前左輪(FL輪)の荷重低下が従来制御よりも抑えられていることが分かる。
【0082】
以上説明したように、本実施の形態に係る車両制御装置によれば、フォークリフトにおける積載物の積載状態に応じて、各輪の輪荷重に関する閾値、及び左右輪の輪荷重の差に関する閾値を変更し、取得された各輪についての輪荷重の、閾値との比較結果、左右輪の輪荷重の差の、閾値との比較結果、及び検出された運動状態に基づいて、フォークリフトの各輪の輪荷重の低下を抑制する転倒防止制御を行うことにより、積載物の積載状態に応じて適切に転倒防止制御を行うことができる。
【0083】
また、フォークリフトの積載状態に応じた車両の横転、前後転倒防止が可能となり、安全性が向上する。また、横転防止制御は、従来法よりもタイヤ発生力をより有効に使用でき、効果の高い制御が可能となる。
【0084】
また、積載状態に応じて輪荷重が変わるが、それに応じて第1閾値~第4閾値を変更することで、フォークリフトの運動状態に適した横転、前後転倒防止の制御が可能となり、安全性が向上する。
【0085】
また、フォークリフトの横転はロール角増大によることから、ロール角速度を0近傍に抑えることで横転防止に効果を得る。さらに荷重低下輪が前輪の場合は制動力印加時の車両ピッチ正回転により前輪荷重を増加させ、荷重低下輪が後輪の場合は正の駆動力もしくは制動力印加時の車両ピッチ負回転により後輪荷重を増加させることで横転が抑制できる。
【0086】
また、フォークリフトの前後転倒はピッチ角増大によることから、ピッチ角速度を0近傍に抑えることで前後転倒が抑制できる。
【0087】
また、ロール、ピッチ制御はどの輪の荷重が減少し、かつ左右輪の荷重差の絶対値が第3閾値、第4閾値以上かどうかをみることで、制御系の切り替えが可能となる。
【0088】
また、ロール制御時、制動力だけでなく反対側の輪に駆動力を与えることで、制動力のみの場合と比べ、2倍のヨーモーメントが得られる。
【0089】
また、ロール角速度を0近傍に抑える制御量を求め、それを左右輪で制動力、駆動力に変換することにより、適切に転倒防止制御を行うことができる。また、ロール角増大時の横転傾向にある際、前輪、後輪の荷重低下に応じて左右両輪均等に、制動力あるいは正の駆動力を与え荷重移動を発生させて輪荷重低下を抑制することにより、適切に前後転倒防止制御を行うことができる。
【0090】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0091】
例えば、フォークリフトを制御対象とする場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、積載物を積載可能な車両であれば、フォークリフト以外を対象としてもよい。例えば、積載物の積載状態に応じて車両重量が変動するトラック、トレーラ、バスに搭載される車両制御装置に、本発明を適用してもよい。
【0092】
また、積載状態に応じて、ロール角速度に基づく転倒防止制御と、ピッチ角速度に基づく転倒防止制御とを含む複数種類の転倒防止制御を切り替えて、転倒防止制御を行う場合を例に説明したが、ロール角速度に基づく転倒防止制御と、ピッチ角速度に基づく転倒防止制御との何れかのみを行うようにしてもよい。例えば、前後転倒の可能性が低い車両に対しては、ロール角速度に基づく転倒防止制御のみを行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 フォークリフト
2 走行装置
3 荷役装置
10 車両制御装置
13 フォーク
20 操作検出部
22 運動状態検出部
24 コンピュータ
26 制駆動力発生部
30 操作制駆動力取得部
32 輪荷重取得部
34 制駆動力制御部
40 積載取得部
42 制御パラメータ変更部
44 閾値変更部
46 閾値記憶部
48 第1閾値比較部
50 制御選択部
52 第2閾値比較部
54 ロール角速度フィードバック制御部
56 ピッチ角速度フィードバック制御部
58 制御量切換部
60 制駆動力指令値設定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14