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特許7557339ブロックポリイソシアネート組成物、一液型コーティング組成物、塗膜及び塗装物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ブロックポリイソシアネート組成物、一液型コーティング組成物、塗膜及び塗装物品
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/22 20060101AFI20240919BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20240919BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20240919BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240919BHJP
【FI】
C08G18/22
C08G18/80 070
C09D175/04
C09D7/63
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020180314
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071387
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】篠宮 希絵
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 美紗
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-251373(JP,A)
【文献】特開平10-060083(JP,A)
【文献】特開平10-077327(JP,A)
【文献】特開2014-080569(JP,A)
【文献】特開平10-237154(JP,A)
【文献】国際公開第2015/087932(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/093466(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/22
C08G 18/80
C09D 175/04
C09D 7/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートとブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートと、
下記一般式(I)で表される金属触媒と、
を含む、ブロックポリイソシアネート組成物であって、
前記ブロック剤が、窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物を含む、ブロックポリイソシアネート組成物。
【化1】
(一般式(I)中、M11は2価以上の金属を示し、n11は2以上4以下の整数を示し、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキル基又はアルコキシ基を示す。破線は配位結合を示す。)
【請求項2】
ポリイソシアネートと親水性化合物とブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートと、
下記一般式(I)で表される金属触媒と、
を含む、ブロックポリイソシアネート組成物であって、
前記ブロック剤が、窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物を含む、ブロックポリイソシアネート組成物。
【化2】
(一般式(I)中、M11は2価以上の金属を示し、n11は2以上4以下の整数を示し、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキル基又はアルコキシ基を示す。破線は配位結合を示す。)
【請求項3】
前記M11がジルコニウム、アルミニウム、鉄、又は亜鉛である、請求項1又は2に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
前記M11がジルコニウムである、請求項1~3のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物と、多価活性水素化合物と、を含む、一液型コーティング組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の一液型コーティング組成物を硬化させてなる、塗膜。
【請求項7】
請求項6に記載の塗膜を備える、塗装物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックポリイソシアネート組成物、一液型コーティング組成物、塗膜及び塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン樹脂塗料は非常に優れた耐摩耗性、耐薬品性及び耐汚染性を有している。特に、脂肪族ジイソシアネート又は脂環族ジイソシアネートから得られたポリイソシアネートを用いたポリウレタン樹脂塗料はさらに耐候性が優れ、その需要は増加する傾向にある。
【0003】
しかしながら、一般にポリウレタン樹脂塗料は二液性であるため、その使用には極めて不便であった。即ち、通常のポリウレタン樹脂塗料はポリオール及びポリイソシアネートの二成分からなり、ポリオール及びポリイソシアネートを別々に貯蔵し、塗装時に両者を混合する必要がある。また、一旦両者を混合すると塗料は短時間でゲル化し使用できなくなるという課題を有する。ポリウレタン樹脂塗料はこのような課題を有するため、自動車塗装又は弱電気塗装のようなライン塗装を行う分野において、自動塗装に用いることを極めて困難にしている。
【0004】
また、イソシアネートは水と容易に反応するため、電着塗料のような水系塗料での使用は不可能である。更に、イソシアネートを含む塗料を用いた場合には、作業終了時の塗装機及び塗装槽の洗浄等を充分に行う必要があるため、作業能率は著しく低下する。上述の課題を改善するために、従来から、活性なイソシアネート基をすべてブロック剤で封鎖したブロックポリイソシアネートを用いることが提案されている。このブロックポリイソシアネートは、常温ではポリオールと反応しない。しかしながら、加熱することによりブロック剤が解離し、活性なイソシアネート基が再生されてポリオールと反応し架橋反応が起こるので、上述の課題を改善することができる。従って、数多くのブロック剤の検討がなされおり、例えばフェノール、メチルエチルケトオキシム等が代表的なブロック剤として挙げられる。
【0005】
しかしながら、これらのブロック剤を用いたブロックポリイソシアネートを用いた場合には、一般に140℃以上の高い焼付け温度が必要である。高温での焼付けを必要とすることは、エネルギー的に不利であるばかりでなく、基材の耐熱性を必要とし、その用途が限定される要因となる。
【0006】
一方、140℃以下の焼付け温度で架橋塗膜を形成することが可能なブロックポリイソシアネート組成物としては、例えば、ピラゾール系化合物をブロック剤として使用したブロックポリイソシアネート組成物(例えば、特許文献1参照)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第0159117号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年、地球環境保護の観点や、耐熱性の低いプラスチックへの適応が強く求められており、100℃より低い温度で硬化するブロックポリイソシアネート組成物が切望されている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、塗膜としたときの低温硬化性が良好なブロックポリイソシアネート組成物、並びに、前記ブロックポリイソシアネート組成物を用いた一液型コーティング組成物、塗膜及び塗装物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) ポリイソシアネートとブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートと、
下記一般式(I)で表される金属触媒と、
を含む、ブロックポリイソシアネート組成物であって、
前記ブロック剤が、窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物を含む、ブロックポリイソシアネート組成物。
【0011】
【化1】
【0012】
(一般式(I)中、M11は2価以上の金属を示し、n11は2以上4以下の整数を示し、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキル基又はアルコキシ基を示す。破線は配位結合を示す。)
【0013】
(2) ポリイソシアネートと親水性化合物とブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートと、
下記一般式(I)で表される金属触媒と、
を含む、ブロックポリイソシアネート組成物であって、
前記ブロック剤が、窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物を含む、ブロックポリイソシアネート組成物。
【0014】
【化2】
【0015】
(一般式(I)中、M11は2価以上の金属を示し、n11は2以上4以下の整数を示し、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキル基又はアルコキシ基を示す。破線は配位結合を示す。)
【0016】
(3) 前記M11がジルコニウム、アルミニウム、鉄、又は亜鉛である、(1)又は(2)に記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(4) 前記M11がジルコニウムである、(1)~(3)のいずれか一つに記載のブロックポリイソシアネート組成物。
(5) (1)~(4)のいずれか一項に記載のブロックポリイソシアネート組成物と、多価活性水素化合物と、を含む、一液型コーティング組成物。
(6) (5)に記載の一液型コーティング組成物を硬化させてなる、塗膜。
(7) (6)に記載の塗膜を備える、塗装物品。
【発明の効果】
【0017】
上記態様のブロックポリイソシアネート組成物によれば、塗膜としたときの低温硬化性が良好なブロックポリイソシアネート組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0019】
なお、本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上のヒドロキシ基(-OH)を有する化合物を意味する。
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有する単量体化合物(以下、「イソシアネートモノマー」と略記する)が複数結合した反応物を意味する。
【0020】
≪ブロックポリイソシアネート組成物≫
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートとブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートと、
下記一般式(I)で表される金属触媒と、
を含む、ブロックポリイソシアネート組成物であって、
前記ブロック剤が、窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物を含む。
【0021】
或いは、別の実施形態において、ブロックポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートと親水性化合物とブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートと、
下記一般式(I)で表される金属触媒と、
を含む、ブロックポリイソシアネート組成物であって、
前記ブロック剤が、窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物を含む。
【0022】
【化3】
【0023】
(一般式(I)中、M11は2価以上の金属を示し、n11は2以上4以下の整数を示し、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキル基又はアルコキシ基を示す。破線は配位結合を示す。)
【0024】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、上記構成を有することで、塗膜としたときの80℃程度の低温での硬化性が良好となる。
【0025】
以下、本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物の構成成分について、詳細を説明する。
【0026】
<ブロックポリイソシアネート>
ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートとブロック剤とから誘導される。すなわち、ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートとブロック剤との反応物であり、ポリイソシアネートのイソシアネート基の少なくとも一部(好ましくは全部)がブロック剤によりブロック化されている。
【0027】
或いは、ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートと親水性化合物とブロック剤とから誘導される。すなわち、ブロックポリイソシアネートは、ポリイソシアネートと親水性化合物とブロック剤との反応物である。ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部がブロック剤によりブロック化されており、且つ、ポリイソシアネートの一部のイソシアネート基と親水性化合物の官能基とが結合を形成し、親水性基が導入されている。
【0028】
[ポリイソシアネート]
ポリイソシアネートは、イソシアネートモノマーを複数反応させて得られる反応物である。
【0029】
イソシアネートモノマーとしては、炭素数4以上30以下のものが好ましい。前記イソシアネートモノマーとして具体的には、例えば、以下のものが例示される。これらイソシアネートモノマーは1種単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(1)ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(以下、「MDI」と称する場合がある)、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(以下、「TDI」と称する場合がある)、キシリレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(以下、「TMXDI」と称する場合がある)等の芳香族ジイソシアネート;
(2)1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と称する場合がある)、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソイシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート(以下、「MPDI」と称する場合がある)、リジンジイソシアネート(以下、「LDI」と称する場合がある)等の脂肪族ジイソシアネート;
(3)イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と称する場合がある)、1,3-ビス(ジイソシアネートメチル) シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアネートノルボルナン、ジ(イソシアネートメチル)ノルボルナン等の脂環族ジイソシアネート:
(4)4-イソシアネートメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(以下、「NTI」と称する場合がある)、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート(以下、「HTI」と称する場合がある)、ビス(2-イソシアナトエチル)2-イソシアナトグルタレート(以下、「GTI」と称する場合がある)、リジントリイソシアネート(以下、「LTI」と称する場合がある)等のトリイソシアネート。
【0030】
中でも、得られる塗膜の耐候性がより良好となることから、前記イソシアネートモノマーとしては、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種類以上のジイソシアネートであることが好ましい。また、前記イソシアネートモノマーとしては、工業的入手の容易さから、HDI又はIPDIであることがより好ましい。
【0031】
前記イソシアネートモノマーとしては、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートのいずれかを単独で用いてもよく、或いは、それらを組み合わせて用いてもよい。中でも、脂肪族ジイソシアネートを単独で用いる、又は、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを組み合わせて用いることが好ましく、HDIを単独で用いる、又は、HDI及びIPDIを組み合わせて用いることがより好ましい。脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを組み合わせて用いることで、塗膜としたときの強靭性及び弾性をより向上させることができる。
【0032】
ポリイソシアネートにおいて、脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートを組み合わせて用いた場合には、脂環族ジイソシアネートに由来する構造単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量比は、50/50以上95/5以下が好ましく、60/40以上90/10以下がより好ましく、70/30以上80/20以下がさらに好ましい。
脂環族ジイソシアネートに由来する構造単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量比が上記下限値以上であることで、塗膜としたときの可とう性が低下することをより効果的に抑制することができる。一方で、上記上限値以下であることで、塗膜としたときの硬度をより向上させることができる。
【0033】
脂環族ジイソシアネートに由来する構造単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量比は、以下の方法を用いて算出することができる。まず、反応後の未反応ジイソシアネート質量とガスクロマトグラフ測定により得られたこの未反応ジイソシアネート中の脂肪族ジイソシアネート濃度及び脂環族ジイソシアネート濃度とから、未反応脂肪族ジイソシアネートの質量及び未反応脂環族ジイソシアネートの質量を算出する。次いで、仕込んだ脂肪族ジイソシアネートの質量及び脂環族ジイソシアネートの質量から、上記算出した未反応脂肪族ジイソシアネートの質量及び未反応脂環族ジイソシアネートの質量をそれぞれ差し引いた後、得られた差をそれぞれ脂肪族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量、脂環族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量とする。次いで、脂肪族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量を脂環族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量で除することで、脂環族ジイソシアネートに由来する構造単位に対する脂肪族ジイソシアネートに由来する構造単位の質量比が得られる。
【0034】
上記イソシアネートモノマーから誘導されるポリイソシアネートとして具体的には、例えば、以下の(1)~(8)に示すものが挙げられ、これらに限定されない。
(1)2つのイソシアネート基を環化二量化して得られるウレトジオン構造を有するポリイソシアネート化合物。
(2)3つのイソシアネート基を環化三量化して得られるイソシアヌレート構造及びイミノオキサジアジンジオン構造を有するポリイソシアネート化合物。
(3)3つのイソシアネート基と1つの水分子とを反応させて得られるビウレット構造を有するポリイソシアネート化合物。
(4)2つのイソシアネート基と1分子の二酸化炭素とを反応させて得られるオキサダイアジントリオン構造を有するポリイソシアネート化合物。
(5)1つのイソシアネート基と1つの水酸基とを反応させて得られるウレタン基を複数有するポリイソシアネート化合物。
(6)2つのイソシアネート基と1つの水酸基とを反応させて得られるアロファネート構造を有するポリイソシアネート化合物。
(7)1つのイソシアネート基と1つのカルボキシ基とを反応させて得られるアシル尿素基を有するポリイソシアネート化合物。
(8)1つのイソシアネート基と1つの1級又は2級アミンとを反応させて得られる尿素構造を有するポリイソシアネート化合物。
【0035】
すなわち、ポリイソシアネートとしては、上記イソシアネートモノマーから誘導されるポリイソシアネートの他に、さらに、複数のイソシアネートモノマーと、上記イソシアネートモノマー以外の化合物(例えば、アルコール、水、アミン等)とを反応させて得られる反応物であるポリイソシアネートを含む。
【0036】
(ポリイソシアネートの製造方法)
ポリイソシアネートの製造方法について、以下に詳細を説明する。
ポリイソシアネートは、例えば、アロファネート基を形成するアロファネート化反応、ウレトジオン基を形成するウレトジオン化反応、イミノオキサジアジンジオン基を形成するイミノオキサジアジンジオン化反応、イソシアヌレート基を形成するイソシアヌレート化反応、ウレタン基を形成するウレタン化反応、及び、ビウレット基を形成するビウレット化反応を、過剰のイソシアネートモノマー存在下で一度に製造して、反応終了後に、未反応のイソシアネートモノマーを除去して得ることができる。すなわち、上記反応により得られるポリイソシアネートは、上述のイソシアネートモノマーが複数結合したものであり、且つ、アロファネート基、ウレトジオン基、イミノオキサジアジンジオン基、イソシアヌレート基、ウレタン基及びビウレット基からなる群より選択される1種類以上を有する反応物である。
また、上記の反応を別々に行ない、それぞれ得たポリイソシアネートを特定比率で混合してもよい。
製造の簡便さからは、上記反応を一度に行いポリイソシアネートを得ることが好ましく、各官能基のモル比を自由に調整する観点からは、別々に製造した後に混合することが好ましい。
【0037】
(1)アロファネート基含有ポリイソシアネートの製造方法
アロファネート基含有ポリイソシアネートは、イソシアネートモノマーにアルコールを添加し、アロファネート化反応触媒を用いることにより得られる。
アロファネート基の形成に用いられるアルコールは、炭素、水素及び酸素のみで形成されるアルコールが好ましい。
前記アルコールとして具体的には、以下に限定されるものではないが、例えば、モノアルコール、ジアルコール等が挙げられる。これらアルコールは1種のみを単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール等が挙げられる。
ジアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチルヘキサンジオール等が挙げられる。
中でも、アルコールとしては、モノアルコールが好ましく、分子量200以下のモノアルコールがより好ましい。
【0038】
アロファネート化反応触媒としては、以下に限定されないが、例えば、錫、鉛、亜鉛、ビスマス、ジルコニウム、ジルコニル等のアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。
錫のアルキルカルボン酸塩(有機錫化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸錫、ジブチル錫ジラウレート等が挙げられる。
鉛のアルキルカルボン酸塩(有機鉛化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸鉛等が挙げられる。
亜鉛のアルキルカルボン酸塩(有機亜鉛化合物)としては、例えば、2-エチルヘキサン酸亜鉛等が挙げられる。
ビスマスのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ビスマス等が挙げられる。
ジルコニウムのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ジルコニウム等が挙げられる。
ジルコニルのアルキルカルボン酸塩としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ジルコニル等が挙げられる。
これら触媒は、1種を単独又は2種以上を併用することができる。
【0039】
また、後述するイソシアヌレート化反応触媒もアロファネート化反応触媒となり得る。後述するイソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応を行う場合は、イソシアヌレート型ポリイソシアネートも当然のことながら生成する。
中でも、アロファネート化反応触媒として、後述するイソシアヌレート化反応触媒を用いて、アロファネート化反応とイソシアヌレート化反応とを行うことが経済的生産上、好ましい。
【0040】
上述したアロファネート化反応触媒の使用量の下限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、10質量ppmであることが好ましく、20質量ppmであることがより好ましく、40質量ppmであることがさらに好ましく、80質量ppmであることが特に好ましい。
上述したアロファネート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、1000質量ppmであることが好ましく、800質量ppmであることがより好ましく、600質量ppmであることがさらに好ましく、500質量ppmであることが特に好ましい。
すなわち、上述したアロファネート化反応触媒の使用量は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、10質量ppm以上1000質量ppm以下であることが好ましく、20質量ppm以上800質量ppm以下であることがより好ましく、40質量ppm以上600質量ppm以下であることがさらに好ましく、80質量ppm以上500質量ppm以下であることが特に好ましい。
【0041】
また、アロファネート化反応温度の下限値としては、40℃であることが好ましく、60℃であることがより好ましく、80℃であることがさらに好ましく、100℃であることが特に好ましい。
また、アロファネート化反応温度の上限値としては、180℃であることが好ましく、160℃であることがより好ましく、140℃であることがさらに好ましい。
すなわち、アロファネート化反応温度としては、40℃以上180℃以下であることが好ましく、60℃以上160℃以下であることがより好ましく、80℃以上140℃以下であることがさらに好ましく、100℃以上140℃以下であることが特に好ましい。
アロファネート化反応温度が上記下限値以上であることによって、反応速度をより向上させることが可能である。アロファネート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0042】
(2)ウレトジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからウレトジオン基を有するポリイソシアネート含有ポリイソシアネートを誘導する場合は、例えば、イソシアネートモノマーを、ウレトジオン化反応触媒を用いて、又は、熱により、多量化することによって製造することができる。
ウレトジオン化反応触媒としては、特に限定されないが、例えば、例えば、トリアルキルホスフィン、トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィン、シクロアルキルホスフィン等の第3ホスフィン、ルイス酸等が挙げられる。
トリアルキルホスフィンとしては、例えば、トリ-n-ブチルホスフィン、トリ-n-オクチルホスフィン等が挙げられる。
トリス(ジアルキルアミノ)ホスフィンとしては、例えば、トリス-(ジメチルアミノ)ホスフィン等が挙げられる。
シクロアルキルホスフィンとしては、例えば、シクロヘキシル-ジ-n-ヘキシルホスフィン等が挙げられる。
ルイス酸としては、例えば、三フッ化ホウ素、酸塩化亜鉛等が挙げられる。
【0043】
ウレトジオン化反応触媒の多くは、同時にイソシアヌレート化反応も促進しうる。
ウレトジオン化反応触媒を用いる場合には、所望の収率となった時点で、リン酸、パラトルエンスルホン酸メチル等のウレトジオン化反応触媒の失活剤を添加してウレトジオン化反応を停止することが好ましい。
【0044】
また、ウレトジオン化反応触媒を用いることなく、上記脂肪族ジイソシアネート及び上記脂環族ジイソシアネートからなる群より選ばれる1種以上のジイソシアネートを加熱してウレトジオン基を有するポリイソシアネートを得る場合、その加熱温度は、120℃以上が好ましく、150℃以上170℃以下がより好ましい。また、加熱時間は1時間以上4時間以下が好ましい。
【0045】
(3)イミノオキサジアジンジオン基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからイミノオキサジアジンジオン基含有ポリイソシアネートを誘導する場合は、通常、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒を用いる。
イミノオキサジアジンジオン化触媒としては、例えば、以下の1)又は2)に示すもの等が挙げられる。
1)一般式M[Fn]、又は、一般式M[Fn(HF)m]で表される(ポリ)フッ化水素。
(式中、m及びnは、m/n>0の関係を満たす整数である。Mはn荷電カチオン(混合物)又は合計でn価の1個以上のラジカルである。)
2)一般式R1-CR’2-C(O)O-、又は、一般式R2=CR’-C(O)O-で表される化合物と、第4級アンモニウムカチオン、又は、第4級ホスホニウムカチオンとからなる化合物。
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、直鎖状、分岐鎖状又は環状の、飽和又は不飽和の炭素数1以上30以下のパーフルオロアルキル基である。複数あるR’はそれぞれ独立に水素原子、並びに、ヘテロ原子を含んでもよい炭素数1以上20以下のアルキル基及びアリール基からなる群から選択されるものである。)
【0046】
1)の化合物((ポリ)フッ化水素)として具体的には、例えば、テトラメチルアンモニウムフルオリド水和物、テトラエチルアンモニウムフルオリド等が挙げられる。
2)の化合物として具体的には、例えば、3,3,3-トリフルオロカルボン酸、4,4,4,3,3-ペンタフルオロブタン酸、5,5,5,4,4,3,3-ヘプタフルオロペンタン酸、3,3-ジフルオロプロパ-2-エン酸等が挙げられる。
【0047】
中でも、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒としては、入手容易性の観点からは、1)が好ましく、安全性の観点からは、2)が好ましい。
【0048】
イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量の下限値は、特に限定されないが、反応性の観点から、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、質量比で、5ppmが好ましく、10ppmがより好ましく、20ppmがさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量の上限値は、生成物の着色及び変色の抑制や反応制御の観点から、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、質量比で、5000ppmが好ましく、2000ppmがより好ましく、500ppmがさらに好ましい。
すなわち、イミノオキサジアジンジオン化触媒の使用量は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、質量比で、5ppm以上5000ppm以下であることが好ましく、10ppm以上2000ppm以下がより好ましく、20ppm以上500ppm以下がさらに好ましい。
【0049】
イミノオキサジアジンジオン化の反応温度の下限値は、特に限定されないが、反応速度の観点から、40℃が好ましく、50℃がより好ましく、60℃がさらに好ましい。
イミノオキサジアジンジオン化の反応温度の上限値は、生成物の着色及び変色の抑制の観点から、150℃が好ましく、120℃がより好ましく、110℃がさらに好ましい。
すなわち、イミノオキサジアジンジオン化の反応温度は、40℃以上150℃以下が好ましく、50℃以上120℃以下がより好ましく、60℃以上110℃以下がさらに好ましい。
【0050】
イミノオキサジアジンジオン化反応が所望のイミノオキサジアジンジオン基含有量に達した時点で、イミノオキサジアジンジオン化反応を停止させることができる。イミノオキサジアジンジオン化反応は、例えば、酸性化合物を反応液に添加することで、停止することができる。酸性化合物としては、例えば、リン酸、酸性リン酸エステル、硫酸、塩酸、スルホン酸化合物等が挙げられる。これにより、イミノオキサジアジンジオン化反応触媒を中和させる、又は、熱分解若しくは化学分解等により不活性化させる。反応停止後、必要があれば、ろ過を行う。
【0051】
(4)イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを誘導するための触媒としては、一般的に使用されるイソシアヌレート化反応触媒が挙げられる。
【0052】
イソシアヌレート化反応触媒としては、特に限定されないが、一般に塩基性を有するものであることが好ましい。イソシアヌレート化反応触媒として具体的には、例えば、以下に示すもの等が挙げられる。
(1)テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記テトラアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
(2)ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム等のアリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記アリールトリアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
(3)トリメチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシエチルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、及び、前記ヒドロキシアルキルアンモニウムの酢酸塩、プロピオン酸塩、オクチル酸塩、カプリン酸塩、ミリスチン酸塩、安息香酸塩等の有機弱酸塩。
(4)酢酸、プロピオン酸、カプロン酸、オクチル酸、カプリン酸、ミリスチン酸等のアルキルカルボン酸の錫、亜鉛、鉛等の金属塩。
(5)ナトリウム、カリウム等の金属アルコラート。
(6)ヘキサメチレンジシラザン等のアミノシリル基含有化合物。
(7)マンニッヒ塩基類。
(8)第3級アミン類とエポキシ化合物との混合物。
(9)トリブチルホスフィン等の燐系化合物。
【0053】
中でも、不要な副生成物を生じさせにくい観点からは、イソシアヌレート化反応触媒としては、4級アンモニウムのハイドロオキサイド又は有機弱酸塩であることが好ましく、テトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、テトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩、アリールトリアルキルアンモニウムのハイドロオキサイド、又は、アリールトリアルキルアンモニウムの有機弱酸塩であることがより好ましい。
【0054】
上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の上限値は、仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対して、1000質量ppmであることが好ましく、500質量ppmであることがより好ましく、100質量ppmであることがさらに好ましい。
一方、上述したイソシアヌレート化反応触媒の使用量の下限値は、特別な限定はないが、例えば、10質量ppmであってもよい。
【0055】
イソシアヌレート化反応温度としては、50℃以上120℃以下であることが好ましく、60℃以上90℃以下であることがより好ましい。イソシアヌレート化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0056】
所望の転化率(仕込んだイソシアネートモノマーの質量に対する、イソシアヌレート化反応で生成したポリイソシアネートの質量の割合)になった時点で、イソシアヌレート化反応を、酸性化合物(例えば、リン酸、酸性リン酸エステル等)の添加によって停止する。
【0057】
なお、ポリイソシアネートを得るためには、反応の進行を初期で停止する必要がある。しかしながら、イソシアヌレート化反応は、初期の反応速度が非常に速いため、反応の進行を初期で停止することに困難が伴い、反応条件、特に触媒の添加量及び添加方法は慎重に選択する必要がある。例えば、触媒の一定時間毎の分割添加方法等が好適なものとして推奨される。
【0058】
したがって、ポリイソシアネートを得るためのイソシアヌレート化反応の転化率は、10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、15質量%以上55質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。
イソシアヌレート化反応の転化率が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートを含むブロックポリイソシアネート組成物をより低粘度とすることができる。また、イソシアヌレート化反応の転化率が上記下限値以上であることによって、反応停止操作をより容易に行うことができる。
【0059】
また、イソシアヌレート基を含有するポリイソシアネートを誘導する際に、上記イソシアネートモノマー以外に1価以上6価以下のアルコールを用いることができる。
使用することのできる1価以上6価以下のアルコールとしては、例えば、非重合性アルコール、重合性アルコールが挙げられる。
【0060】
非重合性アルコールとしては、例えば、モノアルコール類、ジオール類、トリオール類、テトラオール類等の多価アルコールが挙げられる。
モノアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、n-ノナノール、2-エチルブタノール、2,2-ジメチルヘキサノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチルシクロヘキサノール等が挙げられる。
ジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2-エチル-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-デカンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
トリオール類としては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
テトラオール類としては、例えば、ペンタエリトリトール等が挙げられる。
【0061】
重合性アルコールとしては、特に限定されないが、例えば、重合性アルコールの水酸基平均数は、3以上8以下が好ましく、3以上6以下がより好ましく、3以上5以下がさらに好ましく、3又は4が特に好ましい。
重合性アルコールとして具体的には、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等、アクリルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類等が挙げられる。
【0062】
ポリエステルポリオールは、例えば、二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる。
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0063】
ポリエステルポリオールの具体的な製造方法としては、例えば、上記の成分を混合し、約160℃以上220℃以下程度で加熱することによって、縮合反応を行うことができる。又は、例えば、ε-カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトンポリオール類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。
上述の製造方法で得られたポリエステルポリオールは、得られる塗膜の耐候性及び耐黄変性等の観点から、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、及びこれらから得られる化合物等を用いて変性させることが好ましい。
【0064】
ポリエーテルポリオールは、例えば、以下の(1)~(3)のいずれかの方法等を用いて得ることができる。
(1)触媒を使用して、アルキレンオキシドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダム又はブロック付加して、ポリエーテルポリオール類を得る方法。
前記触媒としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等の水酸化物、強塩基性触媒、複合金属シアン化合物錯体等が挙げられる。強塩基性触媒としては、例えば、アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる、複合金属シアン化合物錯体としては、例えば、金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。
(2)ポリアミン化合物にアルキレンオキシドを反応させて、ポリエーテルポリオール類を得る方法。
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、(1)で例示されたものと同様のものが挙げられる。
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体としてアクリルアミド等を重合して、いわゆるポリマーポリオール類を得る方法。
【0065】
前記多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、以下の(i)~(vi)に示すものが挙げられる。
(i)ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等;
(ii)エリトリトール、D-トレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物;
(iii)アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類;
(iv)トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類;
(v)ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類;
(vi)スタキオース等の四糖類。
【0066】
アクリルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物とを共重合したものが挙げられる。
【0067】
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。
【0068】
水酸基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、不飽和アミド、ビニル系単量体、加水分解性シリル基を有するビニル系単量体が挙げられる。
アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
不飽和アミドとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等が挙げられる。
ビニル系単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するビニル系単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0069】
ポリオレフィンポリオール類としては、例えば、末端水酸基化ポリブタジエン及びその水素添加物等が挙げられる。
【0070】
中でも、重合性アルコールとしては、ポリエステルポリオールが好ましく、ε-カプロラクトンを低分子量のポリオールを用いて開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオールがより好ましい。
【0071】
(5)ウレタン基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからウレタン基を含有するポリイソシアネートを誘導する場合は、例えば、過剰のイソシアネートモノマーと、アルコールと、を混合し、必要に応じてウレタン化反応触媒を添加することで製造することができる。
【0072】
前記アルコールとしては、上記「イソシアヌレート基含有ポリイソシアネートの製造方法」において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0073】
ウレタン化反応触媒としては、特に限定されないが、例えば、スズ系化合物、亜鉛系化合物、アミン系化合物等が挙げられる。
【0074】
ウレタン化反応温度としては、50℃以上160℃以下であることが好ましく、60℃以上120℃以下であることより好ましい。
ウレタン化反応温度が上記上限値以下であることによって、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0075】
また、ウレタン化反応時間としては、30分以上4時間以下であることが好ましく、1時間以上3時間以下であることがより好ましく、1時間以上2時間以下であることがさらに好ましい。
【0076】
アルコールの水酸基のモル量に対するイソシアネートモノマーのイソシアネート基のモル量の比は、2/1以上50/1以下が好ましい。当該モル比が上記下限値以上であることによって、ポリイソシアネートをより低粘度とすることができる。当該モル比が上記上限値以下であることによって、ウレタン基含有ポリイソシアネートの収率をより高められる。
【0077】
(6)ビウレット基含有ポリイソシアネートの製造方法
イソシアネートモノマーからビウレット基を含有するポリイソシアネートを誘導するためのビウレット化剤としては、特に限定されないが、例えば、水、1価の第3級アルコール、蟻酸、有機第1モノアミン、有機第1ジアミン等が挙げられる。
【0078】
ビウレット化剤1モルに対して、イソシアネート基を6モル以上とすることが好ましく、10モル以上とすることがより好ましく、10モル以上80モル以下とすることがさらに好ましい。ビウレット化剤1モルに対するイソシアネート基のモル量が上記下限値以上であれば、ポリイソシアネートが十分に低粘度になり、上記上限値以下であれば、塗料組成物にした際に、硬化性がより向上する。
【0079】
また、ビウレット化反応の際に溶剤を用いてもよい。溶剤は、イソシアネートモノマーと水等のビウレット化剤を溶解し、反応条件下で均一相を形成させるものであればよい。
【0080】
前記溶剤として具体的には、例えば、エチレングリコール系溶剤、リン酸系溶剤等が挙げられる。
【0081】
エチレングリコール系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールメチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、エチレングリコールエチル-n-プロピルエーテル、エチレングリコールエチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールエチル-n-ブチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピル-n-ブチルエーテル、エチレングリコールイソプロピル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチル-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールエチル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコール-n-プロピル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピル-n-ブチルエーテル等が挙げられる。
【0082】
リン酸系溶剤としては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル等が挙げられる。
【0083】
これらの溶剤は単独又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
中でも、エチレングリコール系溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート又はジエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
また、リン酸系溶剤としては、リン酸トリメチル又はリン酸トリエチルが好ましい。
【0085】
ビウレット化反応温度としては、70℃以上200℃以下が好ましく、90℃以上180℃以下がより好ましい。上記上限値以下であることで、ポリイソシアネートの着色等をより効果的に防止できる傾向にある。
【0086】
上述したアロファネート化反応、ウレトジオン化反応、イミノオキサジアジンジオン化反応、イソシアヌレート化反応、ウレタン化反応、及び、ビウレット化反応は、それぞれ逐次行ってもよく、そのいくつかを並行して行ってもよい。
【0087】
また、イソシアネートモノマーと重合性アルコールとから誘導されるポリイソシアネートを製造する場合には、例えば、イソシアネートモノマーのイソシアネート基と、ポリオールの水酸基とを反応させることで、当該ポリイソシアネートが得られる。
【0088】
ポリオールの水酸基に対するジイソシアネートのイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は3/1以上30/1以下が好ましく、10/1以上20/1以下がより好ましい。NCO/OHが上記下限値以上であることで、得られるポリイソシアネートの粘度が上昇しすぎることを効果的に抑制することができる。一方、NCO/OHが上記上限値以下であることで、得られるポリイソシアネートの生産性が低下することを効果的に抑制することができる。
【0089】
反応温度は、50℃以上200℃以下が好ましく、50℃以上150℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応がより効率的に進み、一方、上記上限値以下であることで、得られるポリイソシアネートの着色等の好ましくない副反応をより効果的に抑制することができる。反応時間は、0.5時間以上5時間以下の範囲が好ましい。
【0090】
ジイソシアネートのイソシアネート基と、ポリオールの水酸基との反応後、又は、反応と同時に、上述したアロファネート化反応、ウレトジオン化反応、イミノオキサジアジンジオン化反応、イソシアヌレート化反応、ウレタン化反応、及び、ビウレット化反応からなる群より選ばれる少なくとも1種の反応を行うことができ、中でも、イソシアヌレート化反応を行うことが好ましい。イソシアヌレート化反応を行うことで、塗膜としたときの硬度をより向上させることができる。
【0091】
上記各種反応終了後の反応液から、未反応イソシアネートモノマーを薄膜蒸留、抽出等により除去し、ポリイソシアネートを得ることができる。
【0092】
また、得られたポリイソシアネートに対して、例えば、貯蔵時の着色を抑制する目的で、酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加してもよい。
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-p―クレゾール等のヒンダードフェノール等が挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン等が挙げられる。これら酸化防止剤や紫外線吸収剤は、1種を単独又は2種以上を併用してもよい。これらの添加量は、ポリイソシアネートの質量に対して、10質量ppm以上500質量ppm以下であることが好ましい。
【0093】
[ブロック剤]
本実施形態のブロック剤は、窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物を含む。
窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物としては、例えば、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール、3,5-ジメチル-1,2,4-トリアゾール等のトリアゾール系ブロック剤、1H-1,2,3,4-テトラゾール等のテトラゾール系ブロック剤が挙げられる。
【0094】
本実施形態のブロック剤は、窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物とは異なる化合物からなるブロック剤を併用しても良い。
ブロック剤として有効なものであれば特に限定されないが、例えば、(1)アルコール系化合物、(2)アルキルフェノール系化合物、(3)フェノール系化合物、(4)活性メチレン系化合物、(5)メルカプタン系化合物、(6)酸アミド系化合物、(7)酸イミド系化合物、(8)イミダゾール系化合物、(9)尿素系化合物、(10)オキシム系化合物、(11)アミン系化合物、(12)イミド系化合物、(13)重亜硫酸塩、(14)ピラゾール系化合物、(15)ピリジン系化合物、(16)グアニジン系化合物、(17)イミダゾリン系化合物、(18)ピリミジン系化合物等が挙げられる。ブロック剤としてより具体的には、以下に示すもの等が挙げられる。これらブロック剤は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0095】
(1)アルコール系化合物:メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトカシエタノール、2-ブトキシエタノール等のアルコール類。
(2)アルキルフェノール系化合物:炭素原子数4以上のアルキル基を置換基として有するモノ及びジアルキルフェノール類。アルキルフェノール系化合物として具体的には、例えば、n-プロピルフェノール、iso-プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類;ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-tert-ブチルフェノール、ジ-sec-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類。
(3)フェノール系化合物:フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等。
(4)活性メチレン系化合物。
(5)メルカプタン系化合物:ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等。
(6)酸アミド系化合物:アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等。
(7)酸イミド系化合物:コハク酸イミド、マレイン酸イミド等。
(8)イミダゾール系化合物:イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、4 -メチルイミダゾール、ベンズイミダゾール等。
(9)尿素系化合物:尿素、チオ尿素、エチレン尿素等。
(10)オキシム系化合物:ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等。
(11)アミン系化合物:ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジーn-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等。
(12)イミン系化合物:エチレンイミン、ポリエチレンイミン等。
(13)重亜硫酸塩化合物:重亜硫酸ソーダ等。
(14)ピラゾール系化合物:ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等。
(15)ピリジン系化合物:2-(メチルアミノ)ピリジン、4-ヒドロキシピリジン、2-ヒドロキシピリジン等。
(16)グアニジン系化合物:、3 , 3 - ジメチルグアニジ、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン等。
(17)イミダゾリン系化合物:2 - メチルイミダゾリン、2 - フェニルイミダゾリン等。
(18)ピリミジン系化合物:2 - メチル- 1 , 4 , 5 , 6 - テトラヒドロピリミジン等。
【0096】
窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物の含有量は、ブロック剤の総質量に対して、1質量%以上95質量%以下が好ましく、10質量%以上90質量%がより好ましく、20質量%以上80質量%以下がさらに好ましく、23質量%以上70質量%以下が特に好ましく、25質量%以上50質量%以下が最も好ましい。
窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物の含有量が上記上限値以下であることで、結晶性及び塗液への相溶性をより良好なものとすることができる。
【0097】
[親水性化合物]
親水性化合物は、親水性基を有する化合物であり、1つのイソシアネート基と反応するために、ポリイソシアネートが有するイソシアネート基と反応するための活性水素基を、親水性化合物1分子に対して、1つ以上有することが好ましい。活性水素基として、具体的には、水酸基、メルカプト基、カルボン酸基、アミノ基、チオール基が挙げられる。
【0098】
親水性基としては、ノニオン性親水性基、カチオン性親水性基、アニオン性親水性基が挙げられる。これら親水性基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。中でも、親水性基としては、入手容易性及び配合物との電気的な相互作用を受けにくいという観点で、ノニオン性親水性基が好ましい。
【0099】
(ノニオン性親水性基を有する親水性化合物)
ノニオン性親水性基を有する親水性化合物(以下、「ノニオン性親水性化合物」と称する場合がある)として、具体的には、モノアルコール、アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物が挙げられる。モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等が挙げられる。アルコールの水酸基にエチレンオキサイドを付加した化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらノニオン性親水性化合物は、イソシアネート基と反応する活性水素基も有する。
中でも、ノニオン性親水性化合物としては、少ない使用量でブロックポリイソシアネート組成物の水分散性を向上できることから、モノアルコールの水酸基にアルキレンオキサイドを付加したポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好ましく、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテルがより好ましい。
【0100】
エチレンオキサイドを付加した化合物のエチレンオキサイドの付加数としては、4以上30以下が好ましく、4以上20以下がより好ましい。エチレンオキサイドの付加数が上記下限値以上であることで、ブロックポリイソシアネート組成物に水分散性をより効果的に付与できる傾向にあり、エチレンオキサイドの付加数が上記上限値以下であることで、低温貯蔵時にブロックポリイソシアネート組成物の析出物がより発生しにくい傾向にある。
【0101】
ポリイソシアネートに付加されるノニオン性親水性基の量(以下、「ノニオン性親水性基の含有量」と称する場合がある)の下限値は、ブロックポリイソシアネート組成物の水分散安定性の観点から、ブロックポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、1質量%が好ましく、3質量%がより好ましく、4質量%がさらに好ましく、4.5質量%が特に好ましい。
また、ノニオン性親水性基の含有量の上限値は、得られる塗膜の耐水性の観点から、ブロックポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、30質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましく、8質量%が特に好ましい。
すなわち、ノニオン性親水性基の含有量の上限値は、ブロックポリイソシアネート組成物の固形分の質量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上20質量%以下がより好ましく、4質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、4.5質量%以上8質量%以下が特に好ましい。
ノニオン性親水性基の含有量が上記範囲内であることにより、ブロックポリイソシアネート組成物がより水に分散し、得られる塗膜の耐水性が向上する傾向にある。
【0102】
(カチオン性親水性基を有する親水性化合物)
カチオン性親水性基を有する親水性化合物(以下、「カチオン性親水性化合物」と称する場合がある)として、具体的には、カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられる。また、グリシジル基等の活性水素基を有する化合物と、スルフィド、ホスフィン等のカチオン性親水性基を有する化合物を併せて、親水性化合物としてもよい。この場合は、予め、イソシアネート基を有する化合物と活性水素基を有する化合物を反応させ、グリシジル基等の官能基を付加し、その後、スルフィド、ホスフィン等の化合物を反応させる。製造の容易性の観点からは、カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物が好ましい。
【0103】
カチオン性親水性基と活性水素基とを併せて有する化合物として、具体的には、例えば、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等が挙げられる。また、これらの化合物を用いて付加された三級アミノ基は、例えば、硫酸ジメチル、硫酸ジエチルで四級化することもできる。
【0104】
カチオン性親水性化合物とポリイソシアネートとの反応は、溶剤の存在下で反応させることができる。この場合の溶剤は、活性水素基を含まないものが好ましく、具体的には、例えば、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0105】
ポリイソシアネートに付加されたカチオン性親水性基は、アニオン性基を有する化合物で中和されることが好ましい。このアニオン性基として、具体的には、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基等が挙げられる。
カルボキシ基を有する化合物として、具体的には、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸等が挙げられる。
スルホン酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、エタンスルホン酸等が挙げられる。
燐酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、燐酸、酸性燐酸エステル等が挙げられる。
ハロゲン基を有する化合物として、具体的には、例えば、塩酸等が挙げられる。
硫酸基を有する化合物として、具体的には、例えば、硫酸等が挙げられる。
中でも、アニオン性基を有する化合物としては、カルボキシ基を有する化合物が好ましく、酢酸、プロピオン酸又は酪酸がより好ましい。
【0106】
(アニオン性親水性基を有する親水性化合物)
アニオン性親水性基として、具体的には、カルボキシ基、スルホン酸基、燐酸基、ハロゲン基、硫酸基が挙げられる。
【0107】
アニオン性親水性基を有する親水性化合物(以下、「アニオン性親水性化合物」と称する場合がある)として、具体的には、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物が挙げられ、より具体的には、例えば、モノヒドロキシカルボン酸、ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物が挙げられる。
【0108】
モノヒドロキシカルボン酸としては、例えば、1-ヒドロキシ酢酸、3-ヒドロキシプロパン酸、12-ヒドロキシ-9-オクタデカン酸、ヒドロキシピバル酸(ヒドロキシピバリン酸)、乳酸等が挙げられる。
【0109】
ポリヒドロキシカルボン酸のカルボキシ基をアニオン性基として有する化合物としては、例えば、ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、ジヒドロキシコハク酸、ジメチロールプロピオン酸等が挙げられる。
【0110】
また、スルホン酸基と活性水素基とを併せて有する化合物も挙げられ、より具体的には、例えば、イセチオン酸等が挙げられる。
【0111】
中でも、アニオン性基と活性水素基とを併せて有する化合物としては、ヒドロキシピバル酸又はジメチロールプロピオン酸が好ましい。
【0112】
ポリイソシアネートに付加されたアニオン性親水性基は、塩基性物質であるアミン系化合物で中和することが好ましい。
アミン系化合物として、具体的には、例えば、アンモニア、水溶性アミノ化合物等が挙げられる。
水溶性アミノ化合物として、具体的には、例えば、モノエタノールアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、モルホリン等が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミンも挙げられ、これらを用いることもできる。これらのアミン系化合物は1種類単独又は2種類以上を併用することができる。
【0113】
<金属触媒>
金属触媒は、下記一般式(I)で表される化合物(以下、「化合物(I)」と称する場合がある)である。
【0114】
【化4】
【0115】
(一般式(I)中、M11は2価以上の金属を示し、n11は2以上4以下の整数を示し、R11及びR12は、それぞれ独立にアルキル基又はアルコキシ基を示す。破線は配位結合を示す。)
【0116】
[M11
11は2以上の金属であればよく、例えば、マグネシウム、亜鉛、ニッケル、鉛、コバルト、カルシウム、ベリリウム、バナジウム、マンガン、ガリウム、イリジウム、白金、スズ、モリブデン、クロム、アルミニウム、鉄、インジウム、ジルコニウム、チタン等が挙げられる。これらの中でも、低温硬化性の観点から、ジルコニウム、アルミニウム、鉄、又は亜鉛が好ましく、ジルコニウムが特に好ましい。
【0117】
また、M11には、上記一般式(I)中の配位子(β-ケトエステル基)以外の有機基や、酸素、ハロゲン、水等が結合していてもよい。有機基としては、特に限定はないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等のアルコキシ基;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸プロピル、アセト酢酸ブチル等のβ-ケトエステル基等が挙げられる。
【0118】
[n11]
n11は、2以上4以下の整数であり、3以上4以下の整数であることが好ましい。
【0119】
[R11及びR12
11及びR12は、それぞれ独立にアルキル基又はアルコキシ基である。
11及びR12の炭素数は、特に限定されないが、1個以上18個以下が好ましく、1個以上10個以下がより好ましく、1個以上5個以下がさらに好ましい。
【0120】
11及びR12におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0121】
11及びR12におけるアルコキシ基としては、上記M11において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0122】
好ましい金属触媒(化合物(I))としては、例えば、トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウム(III)、トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(III)、テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)ジルコニウム(IV)等が挙げられる。
これら金属触媒を1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0123】
金属触媒は、ブロックポリイソシアネート組成物中の有効イソシアネート基のモル数に対して、金属のモル数を0.0001倍以上1.0倍以下含有することが好ましく、0.001倍以上0.5倍以下含有することがより好ましく、0.005倍以上0.3倍以下含有することがさらに好ましく、0.008倍以上0.1倍以下含有することが特に好ましく、0.01倍以上0.05倍以下含有することが最も好ましい。
金属触媒の含有量が上記下限値以上であることで、ブロックポリイソシアネート組成物を主剤と反応させる際に、ウレタン結合形成反応(ウレタン化)の選択性をより向上させることができる。一方で、上記上限値以下であることで、コストをより抑えることができる。
【0124】
<その他成分>
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物は、硬化剤、本実施形態の金属触媒以外の硬化促進剤、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤及び界面活性剤からなる群より選ばれる1種以上を更に含むことができる。中でも、界面活性剤を更に含むことが好ましい。
【0125】
前記硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ基含有化合物又は樹脂、カルボキシ基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂、ヒドラジド化合物等が挙げられる。
【0126】
前記硬化促進剤としては、塩基性化合物であってもよく、ルイス酸性化合物であってもよい。
前記塩基性化合物としては、例えば、金属ヒドロキシド、金属アルコキシド、カルボン酸金属塩、オニウム塩の水酸化物、オニウムカルボキシレート、オニウム塩のハロゲン化物、活性メチレン化合物の金属塩、活性メチレン化合物のオニウム塩、アミノシラン類、アミン類、ホスフィン類等が挙げられる。前記オニウム塩としては、アンモニウム塩、ホスホニウム塩又はスルホニウム塩が好適である。
前記ルイス酸性化合物としては、例えば、有機スズ化合物、有機亜鉛化合物、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等が挙げられる。
【0127】
上記硬化促進剤は、そのまま使用しても良いが、例えば、界面活性剤により形成されたミセルに内包された状態や、ゼラチン、カラギーナン、又は、ウレタンやウレア等の膜に内包された状態で使用しても良い。
【0128】
酸化防止剤及び光安定剤としては、例えば、燐酸若しくは亜燐酸の脂肪族、芳香族又はアルキル基置換芳香族エステルや次亜燐酸誘導体;フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスホン酸、ポリホスホネート、ジアルキルペンタエリスリトールジホスファイト、ジアルキルビスフェノールAジホスファイト等のリン化合物;フェノール系誘導体(特に、ヒンダードフェノール化合物);チオエーテル系化合物、ジチオ酸塩系化合物、メルカプトベンズイミダゾール系化合物、チオカルバニリド系化合物、チオジプロピオン酸エステル等のイオウを含む化合物;スズマレート、ジブチルスズモノオキシド等のスズ系化合物等が挙げられる。これらを単独で含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0129】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、フェノール類、クレゾール類、カテコール類、ベンゾキノン類等が挙げられる。重合禁止剤として具体的には、例えば、ベンゾキノン、p-ベンゾキノン、p-トルキノン、p-キシロキノン、ナフトキノン、2,6-ジクロロキノン、ハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、カテコール、p-tert-ブチルカテコール、2,5-ジ-tert-ブチルハイドロキノン、モノメチルハイドロキノン、p-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等が挙げられる。これらを単独で含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0130】
界面活性剤としては、例えば、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0131】
<ブロックポリイソシアネート組成物の製造方法>
ブロックポリイソシアネート組成物が、ブロックポリイソシアネートがポリイソシアネートとブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートである場合には、例えばポリイソシアネートと上記ブロック剤とを反応させて得られる。
ポリイソシアネートとブロック剤とのブロック化反応は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができ、ブロックポリイソシアネートが得られる。
【0132】
ポリイソシアネートと、ブロック剤との混合比率は、一液型コーティング組成物の貯蔵安定性の観点から、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基を1とした場合におけるブロック剤に含まれる活性水素基のモル比が、0.5以上3.0以下であることが好ましく、0.8以上2.0以下であることがより好ましく、1以上1.5以下であることがさらに好ましい。
【0133】
反応工程において、反応温度や反応時間は、反応の進行に応じて適宜決められる。反応温度は0℃以上150℃以下であることが好ましく、反応時間は0.5時間以上24時間以下であることが好ましい。
2種類のブロック剤によるブロック化反応を行う際は、同時に行ってもよく、一方のブロック剤で先にブロックした後に残った遊離イソシアネート基を他方のブロック剤でブロックしてもよい。
【0134】
また、反応において、必要に応じて、既知の通常の触媒を使用してもよい。前記触媒としては、特に限定されないが、例えば、以下の(1)~(6)に示すもの等が挙げられる。以下に示す触媒は単独又は混合して使用してもよい。
(1)オクタン酸スズ、2-エチル-1-ヘキサン酸スズ、エチルカプロン酸スズ、ラウリン酸スズ、パルミチン酸スズ、ジブチルスズオキシド、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジマレート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート等の有機スズ化合物;
(2)塩化亜鉛、オクタン酸亜鉛、2-エチル-1-ヘキサン酸亜鉛、2-エチルカプロン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、アセチルアセトン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物;
(3)有機チタン化合物;
(4)有機ジルコニウム化合物;
(5)トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン等の三級アミン類;
(6)トリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等のジアミン類。
【0135】
なお、反応の終了は、例えば、赤外分光分析法等を用いて、イソシアネート基の消失又は減少を確認することによって、判断することができる。
【0136】
また、溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いればよい。
溶剤を用いる場合、ブロックポリイソシアネート組成物100質量部に対するポリイソシアネート及びブロック剤に由来する固形分の含有量は、通常は、10質量部以上95質量部以下であってよく、20質量部以上80質量部以下であることが好ましく、30質量部以上70質量部以下であることがより好ましい。
【0137】
或いは、ブロックポリイソシアネート組成物に含まれるブロックポリイソシアネートがポリイソシアネートと親水性化合物とブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートである場合には、例えば、ポリイソシアネートと親水性化合物とブロック剤とを反応させて得られる。
【0138】
ポリイソシアネートのイソシアネート基と親水性化合物との反応、及び、ポリイソシアネートとブロック剤との反応を同時に行うこともでき、又は、あらかじめどちらかの反応を行った後に、2つ目の反応を行うこともできる。中でも、イソシアネート基と親水性化合物との反応を先に行い、親水性化合物により変性されたポリイソシアネート(以下、「変性ポリイソシアネート」と称する場合がある)を得た後、得られた変性ポリイソシアネートとブロック剤との反応を行うことが好ましい。
【0139】
ポリイソシアネートと親水性化合物との反応は、有機金属塩、3級アミン系化合物、アルカリ金属のアルコラートを触媒として用いてもよい。前記有機金属塩を構成する金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。前記アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム等が挙げられる。
【0140】
ポリイソシアネートと親水性化合物との反応温度は、-20℃以上150℃以下が好ましく、30℃以上100℃以下がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であることで、反応性をより高くできる傾向にある。また、反応温度が上記上限値以下であることで、副反応をより効果的に抑制できる傾向にある。
【0141】
親水性化合物が未反応状態で残存しないよう、完全にポリイソシアネートと反応させることが好ましい。未反応状態で残存しないことにより、本実施形態のブロックイソシアネート組成物の水分散安定性、及び、一液型コーティング組成物としたときの硬化性の低下をより効果的に抑制する傾向にある。
【0142】
ポリイソシアネート又は変性ポリイソシアネートとブロック剤とのブロック化反応は、溶剤の存在の有無に関わらず行うことができ、ブロックポリイソシアネートが得られる。
【0143】
なお、ブロック化反応は、上述のブロックポリイソシアネートがポリイソシアネートとブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートである場合の製造方法で例示した反応で行うことができる。
【0144】
また、水、溶剤を用いる場合、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いればよい。
【0145】
溶剤を用いる場合、ブロックポリイソシアネート組成物100質量部に対するポリイソシアネート及びブロック剤に由来する固形分の含有量は、通常は、10質量部以上95質量部以下であってよく、20質量部以上80質量部以下であることが好ましく、30質量部以上70質量部以下であることがより好ましい。
【0146】
水を用いる場合、所定量を分割、又は、滴下して添加することが好ましい。分割する場合、所定量の4分割以上8分割以下とすることが好ましい。また、水に対するブロックポリイソシアネート濃度が55質量%以上では50℃以上、45質量%以上55質量%未満では45℃以上50℃以下、45質量%未満では50℃未満の液温に保持することが好ましい。
水を一括で添加した場合や、液温が80℃以上、20℃未満になることで、ブロックポリイソシアネートの水分散体の平均粒子径(平均分散粒子径)が、大きくなり、沈殿や分離の発生等、水分散体の安定性が低下する場合がある。そのため、このようにして得られた水分散体組成物のブロックポリイソシアネート濃度は、10質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
【0147】
上記いずれのブロックポリイソシアネート組成物の製造方法においても、金属触媒の添加は、ブロック化反応の前後、どちらで添加してもよいが、金属触媒の変質を抑制するために、ブロック化反応後に100℃以下に温度を下げて添加することが好ましい。
【0148】
≪一液型コーティング組成物≫
本実施例の一液型コーティング組成物は、上記ブロックポリイソシアネート組成物と、多価活性水素化合物と、を含む。
【0149】
本実施形態の一液型コーティング組成物は、上記ブロックポリイソシアネート組成物を硬化剤成分として含むことで、低温硬化性に優れる塗膜が得られる。
【0150】
本実施形態の一液型コーティング組成物の構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0151】
<多価活性水素化合物>
多価活性水素化合物としては、特に限定されないが、例えば、ポリオール、ポリアミン、アルカノールアミン等が挙げられる。これらの多価活性水素化合物を、1種単独で含んでいてもよく、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。中でも、多価活性水素化合物としては、ポリオールであることが好ましい。
【0152】
[ポリオール]
ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素ポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等が挙げられる。これらポリオールを、1種を単独で含んでいてもよく、2種以上組み合わせて含んでいてもよい。
中でも、ポリオールとしては、ポリエステルポリオール又はアクリルポリオールが好ましい。
【0153】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールは、例えば、二塩基酸の単独又は2種類以上の混合物と、多価アルコールの単独又は2種類以上の混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる。
【0154】
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0155】
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0156】
又は、例えば、ε-カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して得られるようなポリカプロラクトン類等もポリエステルポリオールとして用いることができる。
【0157】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、以下(1)~(3)に示すもの等が挙げられる。
(1)触媒を使用して、アルキレンオキシドの単独又は混合物を、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、ランダム又はブロック付加して、得られるポリエーテルポリオール類。
前記触媒としては、例えば、水酸化物(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、強塩基性触媒(アルコラート、アルキルアミン等)、複合金属シアン化合物錯体(金属ポルフィリン、ヘキサシアノコバルト酸亜鉛錯体等)等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。
(2)ポリアミン化合物にアルキレンオキシドを反応させて、得られるポリエーテルポリオール類。
前記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン類等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、(1)で例示されたものと同様のものが挙げられる。
(3)(1)又は(2)で得られたポリエーテルポリオール類を媒体として、アクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類。
【0158】
前記多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、以下の(i)~(vi)に示すものが挙げられる。
(i)ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等。
(ii)エリトリトール、D-トレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物。
(iii)アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類。
(iv)トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等の二糖類。
(v)ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等の三糖類。
(vi)スタキオース等の四糖類。
【0159】
(アクリルポリオール)
アクリルポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独又は混合物と、を共重合させることにより得られるものが挙げられる。
【0160】
前記ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、アクリル酸ヒドロキシエチル又はメタクリル酸ヒドロキシエチルであることが好ましい。
【0161】
上記単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、例えば、以下の(1)~(6)に示すもの等が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
(1)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル。
(2)メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル等のメタクリル酸エステル。
(3)アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸。
(4)アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミド等の不飽和アミド。
(5)メタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等のビニル系単量体。
(6)ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するビニル系単量体。
【0162】
(ポリオレフィンポリオール)
ポリオレフィンポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。
【0163】
ポリオールの統計的1分子が持つ水酸基数(以下、「水酸基平均数」と称する場合がある)は2以上であることが好ましい。ポリオールの水酸基平均数が2以上であることによって、本実施形態の一液型コーティング組成物を硬化させて得られる塗膜の架橋密度の低下をより抑制することができる傾向にある。
【0164】
(フッ素ポリオール)
本明細書において、「フッ素ポリオール」とは、分子内にフッ素を含むポリオールを意味する。フッ素ポリオールとして具体的には、例えば、特開昭57-34107号公報(参考文献1)、特開昭61-275311号公報(参考文献2)等で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
【0165】
(ポリカーボネートポリオール)
ポリカーボネートポリオール類としては、特に限定されないが、例えば、以下の(1)~(4)に示すもの等が挙げられる。
(1)ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;
(2)エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;
(3)ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート;
(4)上記(1)~(3)等の低分子カーボネート化合物を縮重合して得られるもの。
【0166】
(ポリウレタンポリオール)
ポリウレタンポリオールとしては、特に限定されないが、例えば、常法によりカルボキシ基を含有しないポリオールとイソシアネート成分とを反応させることにより得ることができる。
前記カルボキシ基を含有しないポリオールとしては、例えば低分子量のものとして、エチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。また、例えば高分子量のものとして、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0167】
[ポリオールの水酸基価]
ポリオールの樹脂あたりの水酸基価は、特に限定されないが、10mgKOH/樹脂g以上300mgKOH/樹脂g以下であることが好ましい。
樹脂あたりの水酸基価が上記下限値以上であることによって、架橋密度が減少することを抑制し、目的とする物性をより十分に達成することができる傾向にある。樹脂あたりの水酸基価が上記上限値以下であることによって、架橋密度が過度に増大することを抑制し、本実施形態の一液型コーティング組成物を硬化させて得られる塗膜の機械的物性をより向上させることができる傾向にある。
なお、ポリオールの水酸基価は、JIS K1557に準拠して測定することができる。
【0168】
[ポリアミン]
ポリアミンとしては、特に限定されないが、一級アミン基又は二級アミン基を1分子中に2個以上有するものが好ましく、一級アミン基又は二級アミン基を1分子中に3個以上有するものがより好ましい。
ポリアミンとして具体的には、例えば、以下の(1)~(3)に示すもの等が挙げられる。
(1)エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、イソホロンジアミン等のジアミン類;
(2)ビスヘキサメチレントリアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタメチレンヘキサミン、テトラプロピレンペンタミン等の3個以上のアミノ基を有する鎖状ポリアミン類;
(3)1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロオクタデカン、1,4,7,10-テトラアザシクロデカン、1,4,8,12-テトラアザシクロペンタデカン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン等の環状ポリアミン類。
【0169】
[アルカノールアミン]
本明細書において、「アルカノールアミン」とは、1分子中に、アミノ基と水酸基とを有する化合物を意味する。
アルカノールアミンとして具体的には、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N-(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、モノ-、ジ-(n-又はイソ-)プロパノールアミン、エチレングリコール-ビス-プロピルアミン、ネオペンタノールアミン、メチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0170】
<その他樹脂成分>
上記実施形態の一液型コーティング組成物は、必要に応じて、既存のメラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等のその他樹脂成分を更に含むことができる。
【0171】
<その他添加剤>
上記実施形態の一液型コーティング組成物がカルボキシ基を有するポリオールを含有する場合には、硬化剤成分として、オキサゾリン基含有化合物、カルボジイミド基含有化合物等のその他硬化剤を更に含むことができる。これらの化合物を1種単独で含んでもよく、2種以上組み合わせて含んでもよい。
【0172】
上記実施形態の一液型コーティング組成物がカルボニル基を有するポリオールを含有する場合には、硬化剤成分として、ヒドラジド基含有化合物、セミカルバジド基含有化合物等のその他硬化剤を更に含むことができる。これらの化合物を1種単独で含んでもよく、2種以上組み合わせて含んでもよい。
【0173】
上記実施形態の一液型コーティング組成物は、必要に応じて、その他硬化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤(光安定剤)、顔料、金属粉顔料、レオロジーコントロール剤、硬化促進剤、界面活性剤等のその他添加剤をさらに含んでもよい。
その他硬化剤、酸化防止剤、光安定剤、硬化促進剤、界面活性剤は、上述のブロックポリイソシアネート組成物において例示されたものと同様のものが挙げられる。
【0174】
<一液型コーティング組成物の製造方法>
上記実施形態の一液型コーティング組成物は、上記ブロックポリイソシアネート組成物及び多価活性水素化合物と、必要に応じて、硬化促進剤、その他樹脂成分及びその他添加剤等とを、公知の方法を用いて、混合することで得られる。
【0175】
例えば水系ベースの一液型コーティング組成物の場合には、多価活性水素化合物又はその水分散体若しくは水溶物に、必要に応じて、ウレタン化触媒、多価活性水素化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、カルボン酸金属塩、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等の添加剤を加える。次いで、上記ブロックポリイソシアネート組成物若しくは上記ブロックポリイソシアネート又はその水分散体を硬化剤として添加し、必要に応じて、水や溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、攪拌機器により強制攪拌することによって、水系一液型コーティング組成物を得ることができる。
【0176】
溶剤ベースの一液型コーティング組成物を製造する場合には、まず、多価活性水素化合物又はその溶剤希釈物に、必要に応じて、ウレタン化触媒、多価活性水素化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、カルボン酸金属塩、硬化触媒、溶剤、顔料類(体質顔料、着色顔料、メタリック顔料等)、紫外線吸収剤、光安定剤、ラジカル安定剤、焼付工程時の着色を抑える黄変防止剤、塗面調整剤、流動調整剤、顔料分散剤、消泡剤、増粘剤、造膜助剤等の添加剤を加える。次いで、上記ブロックポリイソシアネート組成物若しくは上記ポリイソシアネートを硬化剤として添加し、必要に応じて、溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、手攪拌又はマゼラー等の攪拌機器を用いて攪拌することによって、溶剤ベースの塗料組成物を得ることができる。
【0177】
<用途>
本実施形態の一液型コーティング組成物は、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装、ベル塗装、浸漬、ローラー塗装、刷毛塗装等によって、鋼板や表面処理鋼板等の金属、プラスチック、無機材料等のセラミック、ガラス、コンクリートに対して、プライマー、中塗り又は上塗りとして好適に使用される。
本実施形態の一液型コーティング組成物は、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車塗装部、プラスチック塗装部等に、美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性、密着性等を付与するために好適に用いられる。
また、本実施形態の一液型コーティング組成物は、接着剤、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤等としても有用である。
【0178】
≪塗膜≫
本実施形態の塗膜は、上記実施形態の一液型コーティング組成物を硬化させてなる。本実施形態の塗膜は、外観に優れる。
【0179】
本実施形態の塗膜は、上記実施形態の一液型コーティング組成物を、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いて塗装し、常温乾燥又は焼付け工程を経て、硬化させることで得られる。
【0180】
上記一液型コーティング組成物を硬化させて得られる塗膜は、ブロック化反応前のポリイソアネート由来のイソシアネート基とポリオール由来の水酸基とから形成されるウレタン結合を有する。そのため、上記一液型コーティング組成物から形成された本実施形態の塗膜は、一般的なウレタン架橋塗膜の特徴である耐薬品性、耐熱性、耐水性等に優れる傾向にある。
【0181】
≪塗装物品≫
本実施形態の塗装物品は、上記実施形態の塗膜を備える。本実施形態の塗装物品は、上記実施形態の塗膜を備えることで、低温硬化性に優れる。
【0182】
本実施形態の塗装物品は、耐薬品性、耐熱性、耐水性等に優れる上記塗膜を備えており、さらに、美粧性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性、密着性等が付与されている。
【実施例
【0183】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0184】
以下、実施例によって本実施形態を更に詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
各種物性の測定及び各種評価の方法について以下に説明する。なお、特に明記しない場合は、「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を各々意味する。
【0185】
<測定方法及び評価方法>
[物性1]
(ポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)含有率)
三角フラスコにポリイソシアネート1g以上3g以下程度を精秤した(Wg)。次いで、トルエン20mLを添加し、ポリイソシアネートを溶解した。次いで、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液10mLを添加し、混合後、15分間室温放置した。次いで、イソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。次いで、この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。得られた滴定値をV2mLとした。次いで、同様の操作をポリイソシアネートなしで行い、得られた滴定値をV1mlとした。次いで、下記式からポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO)含有率を算出した。
【0186】
NCO含有率(質量%) = (V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
【0187】
[物性2]
(ブロックポリイソシアネート組成物の固形分及びポリイソシアネートの固形分)
ブロックポリイソシアネート組成物の固形分及びポリイソシアネートの固形分は、次のように求めた。
まず、底直径38mmのアルミ皿を精秤した。次いで、アルミ皿上に約1g乗せた状態で、ブロックポリイソシアネート組成物又はポリイソシアネートを精秤した(W1)。次いで、ブロックポリイソシアネート組成物又はポリイソシアネートを均一厚さに調整した。次いで、アルミ皿に乗せた状態のブロックポリイソシアネート組成物又はポリイソシアネートを105℃のオーブンで1時間保持した。次いで、アルミ皿が室温になった後、アルミ皿に残存したブロックポリイソシアネート組成物又はポリイソシアネートを精秤した(W2)。次いで、下記式からブロックポリイソシアネート組成物の固形分又はポリイソシアネートの固形分を算出した。
【0188】
ブロックポリイソシアネート組成物の固形分又はポリイソシアネートの固形分[質量%]
= W2/W1×100
【0189】
[物性3]
(ブロックポリイソシアネート組成物の有効イソシアネート基(NCO)含有率)
ブロックポリイソシアネート組成物の有効イソシアネート基(NCO)含有率は、次のように求めた。
なお、ここでいう「有効イソシアネート基(NCO)含有率」とは、ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート組成物中に存在する架橋反応に関与しうるブロックイソシアネート基量を定量化したものであって、イソシアネート基の質量%で表したものである。
有効NCO含有率は、下記式により算出した。下記式において、「NCO%」及び「ポリイソシアネートの固形分」は、それぞれ上述の物性1及び物性2で算出された値を用いた。なお、試料が溶剤等で希釈されている場合は、希釈された状態での値を算出した。
【0190】
有効NCO含有率[質量%]
=[(ポリイソシアネートの固形分[質量%])×{(ブロック化反応に使用したポリイソシアネートの質量)×NCO%}]/(ブロック化反応後のブロックポリイソシアネート組成物の質量)
【0191】
[評価]
(低温硬化性及び反応選択性)
100mLガラス瓶に実施例及び比較例で製造された各ブロックポリイソシアネート組成物とメトキシポリエチレングリコール(商品名「MPG130」、エチレンオキサイド繰り返し単位数9.0個、日本乳化剤株式会社製)を水酸基に対するイソシアネート基のモル比が1.0となるように入れ、さらに、希釈溶剤としてN,N-ジメチルホルムアミドを固形分60質量%になるように添加し、混合した。次いで、底直径38mmのアルミ皿に混合液を乗せ、均一になるように厚さに調整した。混合液の載ったアルミ皿を80℃のオーブンで30分間保持した。
加熱後の液を、アセトニトリルに500質量ppm程度に希釈し、その後、フィルターでろ過した後、液体クロマトグラフで測定した。
ブロックポリイソシアネートの3量体のブロック部分全てがMPG130に付加されたウレタン3量体の有無を確認した。なお、測定条件は、以下に示すとおりである。
【0192】
(測定条件)
LC装置:Waters社製、UPLC
カラム:Waters社製、ACQUITY UPLC
BEH-C18 1.7μm(2.1mmI.D.×50mm)
カラム温度:40℃
検出方法:PDA 200nm~800nm
流速:0.3mL/min
移動相:A=水(0.1v/v%ギ酸含有)、
B=アセトニトリル(0.1v/v%ギ酸含有)
グラジェント条件:以下の表1に示す。
注入量:1μL
MS装置:Bruker社製、micrOTOF
イオン化:ESI+
スキャンレンジ:m/z 300~3000
【0193】
【表1】
【0194】
低温硬化性及び反応選択性の評価基準は以下のとおりである。
【0195】
(低温硬化性の評価基準)
○:ウレタン化反応物のピークがある場合
×:ウレタン化反応物のピークがない場合
【0196】
(反応選択性の評価基準)
○:ウレタン3量体のピークがある場合
×:ウレタン3量体のピークがない場合
【0197】
<ポリイソシアネートの合成>
[合成例1]
(ポリイソシアネートP-1の合成)
温度計、攪拌羽根及び還流冷却管を取り付けた四ツ口フラスコに、窒素気流下で、HDI:1000質量部、及び、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール:2質量部を仕込み、撹拌しながら、反応器内温度を70℃に保持した。これにテトラメチルアンモニウムヒドロキサイドを加え、収率が40質量%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、未反応のHDIを薄膜蒸留装置により除去して、NCO含有率が21.8質量%のポリイソシアネートP-1を得た。
【0198】
[実施例1]
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a1の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、合成例1で得られたポリイソシアネートP-1:100質量部に、1,2,4-トリアゾール:37.4質量部を徐々に添加し、100℃以上110℃以下の温度条件下で、3時間撹拌して反応を行った。次に、100℃以下に反応液を冷ました後、テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)ジルコニウム(以下、「Zr(acac)4」と略記する場合がある)(東京化成製):5.1質量部、及び、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF):83.6質量部を添加し、均一になるまで攪拌しブロックポリイソシアネート組成物BL-a1を得た。
【0199】
[実施例2]
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a2の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管を取り付けた四ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、合成例1で得られたポリイソシアネートP-1:100質量部、及び、メトキシポリエチレングリコール(MPG-081、エチレンオキサイド繰り返し単位:15個、日本乳化剤株式会社製):35.7質量部を仕込み、120℃に加熱撹拌しながら2時間保持した。次いで、反応液を110℃以下程度まで冷却し、1,2,4-トリアゾール:33.7質量部を徐々に添加し、100℃以上110℃以下の温度条件下で、3時間撹拌して反応を行った。次に、100℃以下に反応液を冷ました後、Zr(acac)4:4.5質量部、及び、DMF:105.7質量部を添加し、均一になるまで攪拌しブロックポリイソシアネート組成物BL-a2を得た。
【0200】
[実施例3~7及び比較例1~2]
(ブロックポリイソシアネート組成物BL-a3~BL-a7及びBL-b1~BL-b2の製造)
表2~表3に示す組成及び配合量とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、各ブロックポリイソシアネート組成物を製造した。
なお、表2~表3において、各略称は以下の化合物を示す。
【0201】
(金属触媒)
Zr(acac)4:テトラキス(2,4-ペンタンジオナト)ジルコニウム(東京化成製)
Al(acac)3:トリス(2,4-ペンタンジオナト)アルミニウム(東京化成製)
Fe(acac)3:トリス(2,4-ペンタンジオナト)鉄(東京化成製)
【0202】
【表2】
【0203】
【表3】
【0204】
ポリイソシアネート及び1,2,4-トリアゾールを含むブロック剤から誘導されたブロックポリイソシアネート、又は、ポリイソシアネート、MPG-081及び1,2,4-トリアゾールを含むブロック剤から誘導されたブロックポリイソシアネートと、特定の構造を有する金属触媒を含むブロックポリイソシアネート組成物BL-a1~BL-a7(実施例1~7)では、低温硬化性が良好であった。
また、金属触媒の含有量が異なるブロックポリイソシアネート組成物BL-a3及びBL-a6(実施例3及び6)の比較において、金属触媒の含有量が増加することで、反応選択性により優れる傾向がみられた。
【0205】
一方で、ポリイソシアネート及び窒素を3つ以上含有する複素環を有する化合物を含まないブロック剤から誘導されたブロックポリイソシアネートと、特定の構造を有する金属触媒を含むブロックポリイソシアネート組成物BL-b1~BL-b2(比較例1及び2)では、低温硬化性及び反応選択性がいずれも不良であった。
【産業上の利用可能性】
【0206】
本実施形態のブロックポリイソシアネート組成物によれば、塗膜としたときの低温硬化性が良好なブロックポリイソシアネート組成物を提供することができる。