(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】壁材引寄せ治具および壁材引寄せ方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/18 20060101AFI20240919BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20240919BHJP
E04F 21/18 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
E04G21/18 C
E04B2/56 642B
E04F21/18 C
E04F21/18 D
(21)【出願番号】P 2020193465
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】前川 敏晴
(72)【発明者】
【氏名】木内 智子
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-129923(JP,A)
【文献】特開平08-158657(JP,A)
【文献】実開平03-052079(JP,U)
【文献】米国特許第8287221(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/22
E04B 1/38- 1/61
E04B 2/56- 2/70
E04F 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に設けられる壁材を引寄せるための壁材引寄せ治具であって、
前記構造物
の梁材に支持され作業者が把持して操作する棒状の引き寄せ棒と、
前記壁材に固定される固定部と、
前記固定部を前記引き寄せ棒に接続する接続部材と、を備え、
前記引き寄せ棒は、長さ方向の一方の端部が前記構造物
の梁材に回転自在
かつ着脱自在に支持され、前記一方の端部を支点として前記長さ方向の他方の端部側が変位可能に構成されている壁材引寄せ治具。
【請求項2】
前記接続部材は、前記固定部と前記引き寄せ棒との接続長さを調整可能に構成されている請求項1に記載の壁材引寄せ治具。
【請求項3】
前記構造物
の梁材に設置され、前記引き寄せ棒の前記一方の端部が
着脱自在に挿入される孔部が形成されて、前記引き寄せ棒の前記一方の端部を支持可能な支持部を有する請求項1又は2に記載の壁材引寄せ治具。
【請求項4】
前記引き寄せ棒は、前記長さ方向の中間部に前記接続部材が接続される接続部を有し、
前記接続部よりも前記長さ方向の他方の端部側に前記作業者が把持する把持部を有する請求項1~3のいずれか一項に記載の壁材引寄せ治具。
【請求項5】
前記接続部材は、複数のリングが繋がって構成されるチェーンである請求項1~4のいずれか一項に記載の壁材引寄せ治具。
【請求項6】
前記引き寄せ棒は、前記長さ方向の中間部に前記接続部材が接続される接続部を有し、
前記接続部は、フック状に形成され、前記リングを引っ掛け可能に構成されている請求項5に記載の壁材引寄せ治具。
【請求項7】
構造物に設けられる壁材を壁材引寄せ治具を使用して引寄せる壁材引寄せ方法であって、
前記壁材引寄せ治具は、
前記構造物の梁材に支持され作業者が把持して操作する棒状の引き寄せ棒と、
前記壁材に固定される固定部と、
前記固定部を前記引き寄せ棒に接続する接続部材と、を備え、
前記引き寄せ棒は、長さ方向の一方の端部が前記構造物の梁材に回転自在に支持され、前記一方の端部を支点として前記長さ方向の他方の端部側が変位可能に構成され、
前記引き寄せ棒を前記構造物
の梁材に支持させる構造物設置ステップと、
前記固定部を前記壁材に固定する壁材固定ステップと、
前記引き寄せ棒の前記長さ方向の他方の端部側を把持して、前記引き寄せ棒の前記長さ方向の一方の端部を支点として
前記引き寄せ棒を前記壁材の幅方向に倒すようにして前記壁材を引寄せる引寄せステップと、
を備える壁材引寄せ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁材引寄せ治具および壁材引寄せ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外壁材などの壁材を設置場所に設置し、位置調整の際にその面に沿った幅方向に引寄せる場合には、作業員が壁材を幅方向に押したり、壁材の枠に形成された孔部にバールを挿し込み、てこの原理で壁材を幅方向に移動させたりしている。特許文献1には、壁材に取り付けられて壁材を引寄せるための装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
壁材が大型となると、引寄せに大きな力が必要となるため、作業員が壁材を押して引寄せることが困難となることがある。また、バールや引寄せ用の装置を使用する場合にも、壁材に確実に力を加える必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、引寄せに必要な力を壁材に確実に加えることができる壁材引寄せ治具および壁材引寄せ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る壁材引寄せ治具は、構造物に設けられる壁材を引寄せるための壁材引寄せ治具であって、前記構造物の梁材に支持され作業者が把持して操作する棒状の引き寄せ棒と、前記壁材に固定される固定部と、前記固定部を前記引き寄せ棒に接続する接続部材と、を備え、前記引き寄せ棒は、長さ方向の一方の端部が前記構造物の梁材に回転自在かつ着脱自在に支持され、前記一方の端部を支点として前記長さ方向の他方の端部側が変位可能に構成されている。
【0007】
本発明に係る壁材引寄せ方法は、構造物に設けられる壁材を壁材引寄せ治具を使用して引寄せる壁材引寄せ方法であって、前記壁材引寄せ治具は、前記構造物の梁材に支持され作業者が把持して操作する棒状の引き寄せ棒と、前記壁材に固定される固定部と、前記固定部を前記引き寄せ棒に接続する接続部材と、を備え、前記引き寄せ棒は、長さ方向の一方の端部が前記構造物の梁材に回転自在に支持され、前記一方の端部を支点として前記長さ方向の他方の端部側が変位可能に構成され、前記引き寄せ棒を前記構造物の梁材に支持させる構造物設置ステップと、前記固定部を前記壁材に固定する壁材固定ステップと、前記引き寄せ棒の前記長さ方向の他方の端部側を把持して、前記引き寄せ棒の前記長さ方向の一方の端部を支点として前記引き寄せ棒を前記壁材の幅方向に倒すようにして前記壁材を引寄せる引寄せステップと、を備える。
【0008】
本発明では、壁固定部材を壁材に固定し、引き寄せ棒の一方の端部を支点とし、他方の端部側を、壁材を引寄せたい所望の方向へ移動させることにより、てこの原理で接続部材を介して壁固定部に力が加わり、壁材を所望の方向へ移動させて、引寄せることができる。このように、本発明に係る壁材引寄せ治具は、引寄せに必要な力を壁材に確実に加えることができる。
また、壁材引寄せ治具は、簡便な構造であるため、設置や操作を容易に行うことができるとともに、製作や管理を容易に行うことができる。
【0009】
また、本発明に係る壁材引寄せ治具では、前記接続部材は、前記固定部と前記引き寄せ棒との接続長さを調整可能に構成されていてもよい。
このような構成とすることにより、壁材に対する引き寄せ棒の位置が限定されないため、引き寄せ棒の設置位置と固定部の取付位置との間隔が異なる場合でも、共通の壁材引寄せ治具を使用することができる。
【0010】
また、本発明に係る壁材引寄せ治具では、前記構造物の梁材に設置され、前記引き寄せ棒の前記一方の端部が着脱自在に挿入される孔部が形成されて、前記引き寄せ棒の前記一方の端部を支持可能な支持部を有していてもよい。
このような構成とすることにより、引き寄せ棒の一方の端部を、壁材を引き寄せる際に定点に位置させることができる。これにより、引き寄せ棒の一方の端部が移動することが無く、壁材を安定した状態で効率よく引寄せることができる。
【0011】
また、本発明に係る壁材引寄せ治具では、前記引き寄せ棒は、前記長さ方向の中間部に前記接続部材が接続される接続部を有し、前記接続部よりも前記長さ方向の他方端部側に前記作業者が把持する把持部を有していてもよい。
このような構成とすることにより、引き寄せ棒の一方の端部がてこの原理における支点、把持部がてこの原理における力点となり、接続部がてこの原理における作用点となる。力点から支点までの距離よりも、作用点から支点までの距離のほうが短くなるため、作用点の接続部に接続される壁固定部を介して壁材に効率的に力を加えることができる。
【0012】
また、本発明に係る壁材引寄せ治具では、前記接続部材は、複数のリングが繋がって構成されるチェーンであってもよい。
このような構成とすることにより、リングの数を調整することにより、接続部材の長さを調整することができる。
【0013】
また、本発明に係る壁材引寄せ治具では、前記引き寄せ棒は、前記長さ方向の中間部に前記接続部材が接続される接続部を有し、前記接続部は、フック状に形成され、前記リングを引っ掛け可能に構成されていてもよい。
このような構成とすることにより、必要となる接続部材の長さに合わせて接続部に引っ掛けるリングを選択することにより、接続部材の長さを容易に調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、引寄せに必要な力を壁材に確実に加えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態による壁材引寄せ治具の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態による壁材引寄せ治具および壁材引寄せ方法について、
図1-
図4に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態による壁材引寄せ治具1は、建物11(構造物)の外壁材(以下、壁材12とする)を設置する際に、壁材12の壁面に沿った水平方向(以下、幅方向とする)に移動させて引寄せる際に使用される。ここで、幅方向に直交する水平方向)、すなわち壁材12の壁面に直交する方向を室内外方向とする。図面では、幅方向を矢印Aの方向で示し、室内外方向を矢印Bの方向で示している。
図2では、左側が室内外方向の室外側となり、右側が室内外方向の室内側となる。
図2に示すように、壁材12は、梁材13に接合された壁受金物14の上に設置される。梁材13は、H形鋼やI形鋼などの鉄骨梁である。梁材13は、幅方向に延びている。壁受金物14は、長尺の部材で、梁材13の長さ方向(幅方向)に延びる向きに配置される。梁材13の上には、床材15(
図1参照)が設置される。
【0017】
図1および
図2に示すように、壁材12は、下枠材121と、下枠材121に固定された面材122と、を有している。下枠材121は、面材122の下端部近傍と接合される。下枠材121は、面材122に接合される接合部123と、面材122の室内側の面から突出する突出部124と、を有している。突出部124は、平板状に形成され、板面が水平面となる向きに配置される。突出部124には、上下方向に貫通する孔部125(
図1参照)が幅方向に間隔をあけて形成されている。
【0018】
壁受金物14は、梁材13の上フランジ131に重なって固定される固定板部141と、固定板部141から上方に突出する背板部142と、を有している。
固定板部141は、平板状に形成され、板面が水平となる向きで上フランジ131の上に接合されている。固定板部141は、室内側の部分が上フランジ131の鉛直方向の上側に位置し、室外側の部分が上フランジ131よりも室外側に突出している。固定板部141は、上フランジ131とボルト接合されている。固定板部141と上フランジ131とを接合するボルト143は、例えば、300mmピッチで長さ方向に間隔をあけて配置されている。ボルト143は、頭部145が下側、ネジ部146が上側となる向きとなっている。ボルト143のネジ部146の先端側で、ナット147が取り付けられている部分は、固定板部141の上面よりも上に突出している。これらの固定板部141の上面よりも上方に突出しているボルト143のネジ部の先端側、およびこれに取り付けられるナット147をボルト上端部分144とする。
【0019】
背板部142は、断面形状がL字形の部材である。背板部142は、L字形を形成する平板状の第1片142aおよび第2片142bを有している。第1片142aは、板面が水平となる向きで固定板部の上面に接合されている。第2片142bは、第1片142aの室外側の縁部から上側に突出している。第2片142bは、板面が室内外方向を向く鉛直面となっている。
背板部142は、固定板部の室内外方向の中間部の上に配置され、梁材13の上フランジ131の室外側の縁部よりも室外側に位置している。すなわち、背板部142は、ボルト143よりも室外側において固定板部141から上方に突出している。壁受金物14の背板部142および固定板部141の背板部142よりも室外側の部分には、水切り16が取り付けられている。
【0020】
壁材12は、背板部142の室外側に設置され、固定板部141の背板部142よりも室外側の部分の上に水切り16を介して載置されている。壁材12の室内側の面における下縁部近傍は、背板部142の第2片142bの室外側の面に水切り16を介して接触している。
【0021】
図1および
図3に示すように、壁材引寄せ治具1は、引き寄せ棒2と、固定部3と、接続部材4と、支持プレート5(支持部)と、を有している。
支持プレート5は、鋼板などで板面が長方形となる平板状に形成されている。支持プレート5には、ボルト上端部分144が挿通可能な第1孔部51と、引き寄せ棒2の端部(棒状部21の支持端部24)が回転自在に挿通可能な第2孔部52(孔部)と、が形成されている。第1孔部51および第2孔部52は、いずれも支持プレート5を貫通している。本実施形態では、1つの支持プレート5に、2つの第1孔部51および1つの第2孔部52が形成されている。
図1、
図3および
図4に示すように、支持プレート5は、板面が水平面となる向きで固定板部141(
図1、
図3参照)の上に設置され、第1孔部51に固定板部141の上面から上方に突出するボルト上端部分144が挿入される。支持プレート5における板面の4辺のうちの1つの辺に対応する縁部53が、壁受金物14の固定板部141と背板部142との接続部に沿って配置される(
図1参照)。
【0022】
図1および
図3に示すように、引き寄せ棒2は、棒状の棒状部21と、棒状部21に接続された接続部22と、棒状部21に接続された環状部23と、を有している。
棒状部21は、鋼製で、直線状に延びる棒状に形成されている。棒状部21は、長さ方向の一方の端部近傍以外は、径が均等な丸棒状に形成されている。棒状部21の長さ方向の一方の端部近傍は、端部に向かって漸次細くなる先細りの形状となっている。棒状部21の一方の端部は、支持プレート5の第2孔部52に挿通可能な径に形成されている。棒状部21は、一方の端部が支持プレート5の第2孔部52に挿入されて、支持プレート5に支持される。棒状部21の長さ方向の一方の端部を支持端部24とする。
【0023】
接続部22は、棒状部21の長さ方向の中間部に接続されている。接続部22は、フック状に形成され、接続部材4を引っ掛け可能に構成されている。
環状部23は、棒状部21の長さ方向の他方の端部26(支持端部24と反対側の端部)に接続されている。環状部23は、環状に形成されている。環状部23は、引き寄せ棒2を不使用時に、壁など引掛けられるように設けられている。
棒状部21における接続部22と環状部23との間の部分(接続部22よりも他方の端部側の部分)は、壁材12の引寄せを行う作業者が把持する把持部25となっている。
固定部3は、鋼製でC字形状に形成されている。固定部3は、壁材12の下枠材121の突出部124の孔部125に引っ掛け可能に構成されている。固定部3は、接続部材4と接続される。
【0024】
接続部材4は、所定の長さのチェーンである。接続部材4のチェーンは、複数のリング41が繋がっている。接続部材4は、一方の端部に位置するリング42が引き寄せ棒2の棒状部21に接続され、他方の端部に位置するリング43が固定部3に接続されている。接続部材4の複数のリング41は、それぞれ引き寄せ棒2の接続部22に引っ掛け可能となっている。接続部材4の複数のリング41のうちのどのリング41を接続部22に引っ掛けるかによって、接続部材4における接続部22(棒状部21)から固定部3までの長さを調整することができる。
【0025】
壁材引寄せ治具1を使用した壁材引寄せ方法について説明する。
まず、引き寄せ棒2を梁材13に支持させる構造物設置ステップを行う。構造物設置ステップでは、支持プレート5を梁材13の上の固定板部141の上に設置する。支持プレート5は、引き寄せ対象となる壁材12に対して、壁材12を引き寄せる側に設置する。支持プレート5の第1孔部51に固定板部141の上面から上方に突出するボルト上端部分144を挿入し、支持プレート5の縁部を壁受金物14の固定板部141と背板部142との接続部に沿って配置する。支持プレート5の室外側の縁部は、背板部142の室内側の面と接触する。引き寄せ棒2の棒状部21の支持端部24を支持プレート5の第2孔部52に挿入する。支持端部24は、支持プレート5の下側の上フランジ131の上面と接触する。引き寄せ棒2は、支持端部24の位置は固定されるが、支持端部24を中心に回転自在に梁材13に支持される。
【0026】
続いて、固定部3を壁材12に固定する壁材固定ステップを行う。固定ステップでは、固定部3を、壁材12の下枠材121の突出部124の孔部125に引っ掛ける。そして、引き寄せ棒2を支持端部24が下側、環状部23が上側となる姿勢に立たせた状態とする。この状態で、接続部材4の弛みが無くなるように、接続部材4の複数のリング41のうちの1つを接続部22に引っ掛ける。なお、固定部3を壁材12の孔部125に引っ掛ける工程は、構造物設置ステップの引き寄せ棒2の支持端部24を支持プレート5の第2孔部52に挿入する前に行ってもよい。
【0027】
続いて、壁材を引寄せる引寄せステップを行う。引寄せステップでは、
図4に示すように、引き寄せ棒2の把持部25を把持して、支持端部24を支点として幅方向に向かって倒す。これにより、接続部材4が幅方向に引っ張られ、壁材12が幅方向に引寄せられる。
【0028】
次に、上述した本発明の実施形態による壁材引寄せ治具1および壁材引寄せ方法の作用・効果について図面を用いて説明する。
本発明の実施形態による壁材引寄せ治具1および壁材引寄せ方法では、固定部3を壁材12に固定し、引き寄せ棒2の一方の端部となる支持端部24を支点とし、他方の端部側を、壁材12を引寄せたい所望の方向(幅方向)へ移動させることにより、てこの原理で接続部材4を介して固定部3に力が加わり、壁材12を所望の方向へ移動させて、引寄せることができる。このように、本実施形態による壁材引寄せ治具1では、引寄せに必要な力を壁材12に確実に加えることができる。
また、壁材引寄せ治具1は、簡便な構造であるため、設置や操作を容易に行うことができるとともに、製作や管理を容易に行うことができる。
【0029】
また、本発明の実施形態による壁材引寄せ治具1では、接続部材4は、固定部3と引き寄せ棒2との接続長さを調整可能に構成されている。
このような構成とすることにより、壁材12に対する引き寄せ棒2の位置が限定されないため、引き寄せ棒2の設置位置と固定部3の取付位置との間隔が異なる場合でも、共通の壁材引寄せ治具1を使用することができる。
【0030】
また、本発明の実施形態による壁材引寄せ治具1では、梁材13(構造物)に設置され、引き寄せ棒2の一方の端部が挿入される第2孔部52が形成されて、引き寄せ棒2の支持端部24を支持可能な支持プレート5を有している。
このような構成とすることにより、引き寄せ棒2の一方の端部を、壁材12を引き寄せる際に定点に位置させることができる。これにより、引き寄せ棒2の一方の端部が移動することが無く、壁材12を安定した状態で効率よく引寄せることができる。
【0031】
更に、支持プレート5は、第1孔部51に固定板部141の上面から上方に突出するボルト上端部分144が挿入され、壁受金物14の背板部142と接触している。このため、引き寄せ棒2に力を加えた際に、支持プレート5に支持プレート5が移動するような力が作用したとしても、支持プレート5がボルト上端部分144または背板部142と接触して移動することが防止される。これにより、支持端部24の位置がずれることが無く、安定した状態で壁材12を引き寄せすることができる。
【0032】
また、本発明の実施形態による壁材引寄せ治具1では、引き寄せ棒2は、長さ方向の中間部に接続部材4のリング41が引っ掛けられる接続部22を有し、接続部22よりも長さ方向の他方側に作業者が把持する把持部25を有している。
このような構成とすることにより、引き寄せ棒2の支持端部24がてこの原理における支点、把持部25がてこの原理における力点となり、接続部22がてこの原理における作用点となる。力点から支点までの距離よりも、作用点から支点までの距離のほうが短くなるため、作用点の接続部22に接続される固定部3を介して壁材12に効率的に力を加えることができる。
【0033】
また、本発明の実施形態による壁材引寄せ治具1では、接続部材4は、複数のリング41が繋がって構成されるチェーンである。
このような構成とすることにより、リング41の数を調整することにより、接続部材4の長さを調整することができる。
【0034】
また、本発明の実施形態による壁材引寄せ治具1では、引き寄せ棒2は、長さ方向の中間部に接続部材4が接続される接続部22を有し、接続部22は、フック状に形成され、リング41を引っ掛け可能に構成されている。
このような構成とすることにより、必要となる接続部材4の長さに合わせて接続部22に引っ掛けるリング41を選択することにより、接続部材4の長さを容易に調整することができる。
【0035】
以上、本発明による壁材引寄せ治具および壁材引寄せ方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態による壁材引寄せ治具1で引寄せを行う壁材12は、外壁材であるが、建物の内部の壁材であってもよい。
また、上記の実施形態では、接続部材4は、複数のリング41が繋がって構成されるチェーンであるが、チェーン以外のロープなどであってもよい。
また、上記の実施形態では、接続部22は、フック状に形成され、リング41を引っ掛け可能に構成されているが、接続部材4を接続可能な形態であれば、フック状でなくてもよい。
また、上記の実施形態では、接続部材4は、固定部3と引き寄せ棒2との接続長さを調整可能に構成されているが、固定部3と引き寄せ棒2との接続長さが固定されていてもよい。また、固定部3の形状や、固定部3が壁材12に固定される形態は上記以外であってもよい。
【0036】
また、上記の実施形態では、引き寄せ棒2は支持プレート5に支持されているが、梁材13や壁受金物14など、建物11の部材に直接支持されていてもよい。この場合、梁材13や壁受金物14などの建物11の部材に支持端部24を挿入可能な孔部が設けられていてもよい。
また、上記の実施形態では、第2孔部52が支持プレート5を貫通しているが、支持端部24が挿入可能な凹部であってもよい。
また、上記の実施形態では、支持プレート5にボルト上端部分144が挿入される第1孔部51が形成されているが、ボルト上端部分144が挿入されない場合には、第1孔部51が設けられていなくてもよい。また、第1孔部51には、ボルト上端部分144以外の凸部が挿入されてもよい。また、1つの支持プレート5に形成される第1孔部51の数や位置は適宜設定されてよい。
【0037】
また、上記の実施形態では、引き寄せ棒2は、長さ方向の中間部に接続部材4が接続される接続部22を有し、接続部22よりも長さ方向の他方側に作業者が把持する把持部25を有している。これに対し、引き寄せ棒2の棒状部21における把持部25や接続部材4の配置は、適宜設定されてよい。
また、上記の実施形態では、引き寄せ棒2の棒状部21の他方の端部には、環状部23が接続されているが、環状部23が接続されていなくてもよい。また、棒状部21に環状部23が接続される場合は、棒状部21に対する環状部23の位置は適宜設定されてよい。
【符号の説明】
【0038】
1 壁材引寄せ治具
2 引き寄せ棒
3 固定部
4 接続部材
5 支持プレート(支持部)
11 建物(構造物)
12 壁材
22 接続部
24 支持端部(一方の端部)
25 把持部
41,42,43 リング
52 第2孔部(孔部)