(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240919BHJP
H01L 21/673 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 648A
H01L21/68 T
(21)【出願番号】P 2020197880
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】墨 周武
【審査官】鈴木 孝章
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-157746(JP,A)
【文献】特開2019-67863(JP,A)
【文献】特開2020-170873(JP,A)
【文献】特表2018-530919(JP,A)
【文献】特開2019-91772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平姿勢の基板の下面を支持する平板状の支持トレイと、
前記基板を支持する前記支持トレイを収容可能な処理空間および前記処理空間に連通し前記支持トレイを通過させるための開口が側方に設けられた容器本体と、
前記支持トレイを保持しながら前記開口を閉塞可能に設けられる蓋部と、
前記蓋部を前記容器本体に対して相対的に鉛直方向に移動させることにより、前記支持トレイに支持された基板の前記鉛直方向における前記処理空間に対する相対位置を調整する鉛直移動機構と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記鉛直移動機構は、前記鉛直方向において、前記支持トレイに支持された基板の上面と前記容器本体との間に形成される第1隙間が前記支持トレイの下面と前記容器本体との間に形成される第2隙間よりも広くなるように、前記相対位置を調整する基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記鉛直移動機構は、前記第1隙間と前記第2隙間との合計値に対する前記第1隙間の比率が65%以上75%以下である基板処理装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記容器本体は、中央部に前記開口が設けられる被閉塞面を有し、
前記鉛直移動機構は、前記容器本体のうち前記被閉塞面を除く外周面に接続されて前記容器本体を昇降させる第1昇降部材を有する基板処理装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記蓋部は、前記容器本体と対向して前記開口を閉塞可能な閉塞面を有するとともに、前記閉塞面で前記支持トレイを保持し、
前記鉛直移動機構は、前記蓋部のうち前記閉塞面を除く外周面に接続されて前記蓋部を昇降させる第2昇降部材を有する基板処理装置。
【請求項6】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記容器本体に対して前記蓋部を水平方向に前進させることにより前記蓋部に保持される前記支持トレイを前記処理空間に挿入するとともに前記蓋部で前記開口を閉塞させ、前記容器本体に対して前記蓋部を水平方向に後退させることにより前記蓋部に保持される前記支持トレイを前記処理空間から引き出す水平移動機構と、
前記容器本体と、前記水平移動機構により前進された前記蓋部との間で前記開口を取り囲むように配置されるシール部材と、をさらに備え、
前記容器本体は、中央部に前記開口が設けられる被閉塞面を有し、
前記蓋部は、前記被閉塞面と対向して前記開口を閉塞可能な閉塞面を有するとともに、前記閉塞面の中央部で前記支持トレイを保持し、
前記シール部材は、前記被閉塞面の周縁部に取り付けられ、前記水平移動機構により前進してきた前記蓋部と密接して前記処理空間を密閉する基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記容器本体に対し
て前記蓋部を水平方向に前進させることにより前記蓋部に保持される前記支持トレイを前記処理空間に挿入するとともに前記蓋部で前記開口を閉塞させ、前記容器本体に対して前記蓋部を水平方向に後退させることにより前記蓋部に保持される前記支持トレイを前記処理空間から引き出す水平移動機構と、
前記容器本体と、前記水平移動機構により前進された前記蓋部との間で前記開口を取り囲むように配置されるシール部材と、をさらに備え、
前記容器本体は、中央部に前記開口が設けられる被閉塞面を有し、
前記蓋部は、前記被閉塞面と対向して前記開口を閉塞可能な閉塞面を有するとともに、前記閉塞面の中央部で前記支持トレイを保持し、
前記シール部材は、前記閉塞面の周縁部に取り付けられ、前記水平移動機構により前記蓋部と一体的に前進して前記被閉塞面の周縁部と密接して前記処理空間を密閉する基板処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記処理空間に処理流体を供給する流体供給部をさらに備え、
前記容器本体には、
前記処理空間に前記処理流体を導入するための導入口として、平面視において前記基板の一端部よりも外側で、前記処理空間のうち前記基板よりも上方の空間に臨んで開口する第1導入口と、
前記一端部よりも外側で、前記処理空間のうち前記支持トレイよりも下方の空間に臨んで開口する第2導入口と、
が設けられる基板処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
平面視において前記基板の一端部よりも外側から前記処理空間に処理流体を供給する流体供給部をさらに備え、
前記容器本体には、
前記処理空間から前記処理流体を排出するための排出口として、平面視において前記基板の前記一端部とは反対側の他端部よりも外側で、前記処理空間のうち前記支持トレイよりも上方の空間に臨んで開口する第1排出口と、
前記他端部よりも外側で、前記処理空間のうち前記支持トレイよりも下方の空間に臨んで開口する第2排出口と、
が設けられる基板処理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の基板処理装置であって、
前記第1排出口から排出される前記処理流体の流量と、前記第2排出口から排出される前記処理流体の流量とを測定する測定部をさらに備え、
前記鉛直移動機構は、前記測定部による測定結果に基づき、前記蓋部を前記容器本体に対して相対的に鉛直方向に移動させる基板処理装置。
【請求項11】
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記処理空間に超臨界処理用の処理流体を供給する流体供給部をさらに備える基板処理装置。
【請求項12】
水平姿勢の基板の下面を支持する平板状の支持トレイを保持した蓋部を水平方向に移動させることで、容器本体の開口を介して前記支持トレイを前記容器本体の処理空間に収容するとともに前記蓋部により前記開口を閉塞させる第1工程と、
前記蓋部により前記開口を閉塞された前記容器本体の前記処理空間内で処理流体によって前記基板を処理する第2工程と、
前記第1工程に先立って、前記蓋部を前記容器本体に対して相対的に鉛直方向に移動させることにより、前記支持トレイに支持された基板の前記鉛直方向における前記処理空間に対する相対位置を調整する第3工程と、
を備えることを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器本体の処理空間に基板を収容しながら処理空間に処理流体を供給して基板を処理する基板処理技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板、表示装置用ガラス基板等の各種基板の処理工程には、基板を各種の処理流体によって処理するものが含まれる。このような処理は、処理流体の効率的な利用や外部への散逸防止を目的として、気密性の処理容器内で行われる場合がある。この場合、処理容器には、基板の搬入・搬出のための開口部および基板を水平姿勢で収容する処理空間を有する容器本体と、該開口部を閉塞して内部空間の気密性を確保するための蓋部とが設けられる。例えば特許文献1に記載の処理装置では、処理対象となる基板(ウエハ)が、蓋体と一体化された平板状のホルダーに載置された状態で処理容器(本発明の「容器本体」に相当)の処理領域(本発明の「処理空間」に相当)内に搬入される。そして、基板の一の側方から基板の他の側方に向けて、基板の上面に層流が形成されるように超臨界流体が供給される。これにより、基板の上面に形成された微細パターンの上方を超臨界流体の層流が通過する。その通過時に、微細パターン間に保持された処理液が攪拌され、処理液と超臨界流体との置換が効率よく行われる。また、処理流体が基板の上面を一方向に向けて流れるため、基板から除去されたパーティクルの基板への再付着が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このように構成された装置では、処理空間が、基板およびホルダーの包絡外形よりも僅かに大きく形成されるように設計されている。つまり、鉛直方向において処理空間に収容された基板の上面と、当該基板の上面に対向する処理空間の天井面との隙間は数mm以下に制限されている。このため、処理流体の使用量を低減し処理効率を向上させることが可能である。その反面、鉛直方向において上記隙間が最適値よりも僅かに下回るだけでも、基板の上面に供給される処理流体の流量や流速が大幅に低下する。その結果、上記置換が不完全となり、基板処理の品質低下を招くことがあった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板を水平姿勢で処理空間に収容して処理する基板処理技術において、上記処理の品質を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の一の態様は、基板処理装置であって、水平姿勢の基板の下面を支持する平板状の支持トレイと、基板を支持する支持トレイを収容可能な処理空間および処理空間に連通し支持トレイを通過させるための開口が側方に設けられた容器本体と、支持トレイを保持しながら開口を閉塞可能に設けられる蓋部と、蓋部を容器本体に対して相対的に鉛直方向に移動させることにより、支持トレイに支持された基板の鉛直方向における処理空間に対する相対位置を調整する鉛直移動機構と、を備えることを特徴としている。
【0007】
また、この発明の他の態様は、基板処理方法であって、水平姿勢の基板の下面を支持する平板状の支持トレイを保持した蓋部を水平方向に移動させることで、容器本体の開口を介して支持トレイを容器本体の処理空間に収容するとともに蓋部により開口を閉塞させる第1工程と、蓋部により開口を閉塞された容器本体の処理空間内で処理流体によって基板を処理する第2工程と、第1工程に先立って、蓋部を容器本体に対して相対的に鉛直方向に移動させることにより、支持トレイに支持された基板の鉛直方向における処理空間に対する相対位置を調整する第3工程と、を備えることを特徴としている。
【0008】
これらの発明において、支持トレイを保持する蓋部と、処理空間を有する容器本体とが鉛直方向に相対移動される。これにより、鉛直方向において、支持トレイで支持される基板の処理空間に対する相対位置が調整される。そして、当該基板は処理空間内で基板処理される。
【発明の効果】
【0009】
上記のように、本発明では、蓋部を容器本体に対して相対的に鉛直方向に移動して基板の鉛直方向における処理空間に対する相対位置を調整しているので、当該処理空間での基板処理の品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の第1実施形態の概略構成を示す図である。
【
図3】処理空間における処理流体の流れを模式的に示す図である。
【
図4】第1実施形態で実行される高さ調整工程を示すフローチャートおよび動作模式図である。
【
図5】
図1の基板処理装置を含む基板処理システムにより実行される処理の一部を示すフローチャートおよび動作模式図である。
【
図6】本発明に係る基板処理装置の第2実施形態における鉛直移動機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明に係る基板処理装置の一実施形態の概略構成を示す図である。
図2は処理ユニットの主要部を示す斜視図である。
図3は処理空間における処理流体の流れを模式的に示す図である。この基板処理装置1は、例えば半導体基板のような各種基板の表面を超臨界流体を用いて処理するための装置である。以下の各図における方向を統一的に示すために、
図1に示すようにXYZ直交座標系を設定する。ここで、XY平面は水平面であり、Z方向は鉛直方向を表す。より具体的には、(-Z)方向が鉛直下向きを表す。
【0012】
本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として円盤状の半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。また基板の形状についても各種のものを適用可能である。
【0013】
基板処理装置1は、処理ユニット10、移載ユニット30、供給ユニット50および制御ユニット90を備えている。処理ユニット10は、超臨界乾燥処理の実行主体となるものである。移載ユニット30は、図示しない外部の搬送装置により搬送されてくる未処理基板Sを受け取って処理ユニット10に搬入し、また処理後の基板Sを処理ユニット10から外部の搬送装置に受け渡す。供給ユニット50は、処理に必要な化学物質、動力およびエネルギー等を、処理ユニット10および移載ユニット30に供給する。
【0014】
制御ユニット90は、これら装置の各部を制御して所定の処理を実現する。この目的のために、制御ユニット90は、各種の制御プログラムを実行するCPU91、処理データを一時的に記憶するメモリ92、CPU91が実行する制御プログラムを記憶するストレージ93、およびユーザや外部装置と情報交換を行うためのインターフェース94などを備えている。後述する装置の動作は、CPU91が予めストレージ93に書き込まれた制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
【0015】
処理ユニット10は、
図1に示すように、台座11の上に昇降アクチュエータ20を介して処理チャンバ12が取り付けられた構造を有している。この昇降アクチュエータ20は、例えばペトリ皿高さ自動調整機構などに多用されているものであり、なお、本実施形態では、サーボモータを駆動源として用いている。この昇降アクチュエータ20は、処理チャンバ12の下面全体に接続された状態で、供給ユニット50のチャンバ昇降制御部57によって昇降制御される。チャンバ昇降制御部57は制御ユニット90からの制御指令に応じて作動し、鉛直方向Zにおける処理チャンバ12の位置、いわゆる高さ位置を制御する機能を有している。なお、処理チャンバ12の高さ位置制御については、後で詳述する。
【0016】
処理チャンバ12は、いくつかの金属ブロックの組み合わせにより構成され、その内部が空洞となって処理空間SPを構成している。処理対象の基板Sは処理空間SP内に搬入されて処理を受ける。処理チャンバ12の(-Y)側側面127の中央部には、X方向に細長く延びるスリット状の開口121が形成されており、開口121を介して処理空間SPと外部空間とが連通している。
【0017】
処理チャンバ12の(-Y)側には、開口121を閉塞するように蓋部材13が設けられている。この蓋部材13は、(+Y)方向側に閉塞面131を有している。この閉塞面131は処理チャンバ12の(-Y)側側面127と対向しながら蓋部材13の(+Y)方向への移動に伴って処理チャンバ12に移動する。そして、閉塞面131が(-Y)側側面127に設けられた開口121を閉塞する。これによって、気密性の処理容器が構成され、内部の処理空間SPで基板Sに対する高圧下での処理が可能となる。このように、本実施形態では、(-Y)側側面127および閉塞面131がそれぞれ本発明の「被閉塞面」および「閉塞面」の一例に相当している。なお、以下においては、処理チャンバ12の(-Y)側側面127を「被閉塞面127」と称する。
【0018】
また、蓋部材13の閉塞面131の中央部には平板状の支持トレイ15が水平姿勢で取り付けられ、閉塞面131で保持されている。この支持トレイ15の上面は基板Sを載置可能な支持面となっている。蓋部材13は図示を省略する支持機構により、Y方向に水平移動自在に支持されている。
【0019】
蓋部材13は、供給ユニット50に設けられた進退機構52により、処理チャンバ12に対してY方向に進退移動可能となっている。具体的には、進退機構52は、例えばリニアモータ、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダ等の直動機構を有しており、このような直動機構が蓋部材13をY方向に移動させる。進退機構52は制御ユニット90からの制御指令に応じて動作する。
【0020】
蓋部材13が(-Y)方向に後退することにより処理チャンバ12から離間する。これにより、
図1中の点線で示すように支持トレイ15が処理空間SPから開口121を介して外部へ引き出され、支持トレイ15へのアクセスが可能となる。すなわち、支持トレイ15への基板Sの載置、および支持トレイ15に載置されている基板Sの取り出しが可能となる。一方、蓋部材13が(+Y)方向に前進することにより、支持トレイ15は処理空間SP内へ収容される。支持トレイ15に基板Sが載置されている場合、基板Sは支持トレイ15とともに処理空間SPに搬入される。
【0021】
蓋部材13が(+Y)方向に前進して閉塞面131が開口121を塞ぐことにより、処理空間SPが密閉される。蓋部材13の閉塞面131と処理チャンバ12の被閉塞面127との間にはシール部材122が設けられ、処理空間SPの気密状態が保持される。シール部材122は例えばゴム製であり、本実施形態では、処理チャンバ12の被閉塞面127において開口121を取り囲むように被閉塞面127の周縁部に設けられた溝部(図示省略)に取り付けられている。したがって、蓋部材13の水平方向Yへの移動にかかわらずシール部材122は処理チャンバ12に固定配置されている。なお、シール部材122の固定位置はこれに限定されるものではなく、蓋部材13の閉塞面131にシール部材122を固定してもよい。この場合、シール部材122は蓋部材13とともに(+Y)方向に移動して処理チャンバ12の被閉塞面127と密接してシール機能を果たす。
【0022】
また、図示しないロック機構により、蓋部材13は処理チャンバ12に対して固定される。このように、この実施形態では、蓋部材13は、開口121を閉塞して処理空間SPを密閉する閉塞状態(実線)と、開口121から大きく離間して基板Sの出し入れが可能となる離間状態(点線)との間で切り替えられる。そして、閉塞状態では、閉塞面131と被閉塞面127との間にシール部材122が介在し、気密性が確保される。
【0023】
こうして処理空間SPの気密状態が確保された状態で、処理空間SP内で基板Sに対する処理が実行される。この実施形態では、供給ユニット50に設けられた流体供給部55から、処理流体として、超臨界処理に利用可能な物質の処理流体、例えば二酸化炭素を気体、液体または超臨界の状態で処理ユニット10に供給する。二酸化炭素は比較的低温、低圧で超臨界状態となり、また基板処理に多用される有機溶剤をよく溶かす性質を有するという点で、超臨界乾燥処理に好適な化学物質である。二酸化炭素が超臨界状態となる臨界点は、気圧(臨界圧力)が7.38MPa、温度(臨界温度)が31.1℃である。
【0024】
処理流体は処理空間SPに充填され、処理空間SP内が適当な温度および圧力に到達すると、処理空間SPは超臨界状態の処理流体で満たされる。こうして基板Sが処理チャンバ12内で超臨界流体により処理される。供給ユニット50には流体回収部53が設けられており、処理後の流体は流体回収部53により回収される。流体供給部55および流体回収部53の各部は制御ユニット90により制御され、
図3に示す流れで処理流体を処理容器内で流通させる。すなわち、同図に示すように、処理流体を供給する流体供給部55は、処理空間SPの(+Y)側、つまり処理空間SPから見て開口121とは反対側に設けられた導入流路123,124に接続されている。より具体的には、処理空間SPに収容された基板Sの(+Y)側端部よりもさらに(+Y)側において、処理チャンバ12に第1導入流路123、第2導入流路124が形成されている。
【0025】
第1導入流路123はバルブ171を有する配管172により流体供給部55に接続されている。バルブ171が開成されることにより、流体供給部55からの処理流体が第1導入流路123に流れ込む。第1導入流路123は流体の流通方向を最終的に水平方向Yにして、処理空間SPの(+Y)側端部において処理空間SPに臨んで開口する第1導入口123aから処理流体を吐出する。
【0026】
一方、第2導入流路124はバルブ173を有する配管174により流体供給部55に接続されている。バルブ173が開成されることにより、流体供給部55からの処理流体が第2導入流路124に流れ込む。第2導入流路124は流体の流通方向を最終的に水平方向Yにして、処理空間SPの(+Y)側端部において処理空間SPに臨んで開口する第2導入口124aから処理流体を吐出する。
【0027】
第1導入口123aは、処理空間SP内で保持される基板Sよりも上方の処理空間SPに臨んで開口している。一方、第2導入口124aは、処理空間SP内で保持される基板Sよりも下方、より厳密には基板Sを支持する支持トレイ15よりも下方の処理空間SPに臨んで開口している。第1導入口123aおよび第2導入口124aは、一定の開口幅をもってX方向に細長く延びるスリット状の開口であり、X方向においては基板Sの端部よりも外側まで延びている。したがって、第1導入口123aおよび第2導入口124aからそれぞれ吐出される処理流体は、上下方向(Z方向)に薄く、かつX方向には基板Sの幅よりも広い薄層状で(-Y)方向に向かう流れとして、処理空間SPに導入される。なお、最終的に第1導入口123a、第2導入口124aから吐出される処理流体の方向が概ね水平方向Yとなっていればよく、途中の流路形状は図示のものに限定されない。
【0028】
基板Sの周囲を超臨界流体で満たすという処理の目的からは、処理空間SPが超臨界流体で満たされるまで処理流体の排出を行わないという選択肢もあり得る。しかしながら、このようにすると処理空間SP内で処理流体が滞留し、処理空間SP内に存在する不純物が基板Sに付着し基板Sを汚染するおそれがある。これを防止するためには、超臨界状態においても処理流体の排出を行い、基板Sに常時清浄な処理流体が供給されるようにすることが望ましい。
【0029】
このために、処理空間SPの(-Y)側端部近傍には、処理流体を排出するための第1排出流路125および第2排出流路126が設けられている。具体的には、処理空間SPに収容される基板Sよりも(-Y)側の処理空間SPの天井面SPaに第1排出口125aが開口しており、これに連通する第1排出流路125が、バルブ175を有する配管176を介して流体回収部53に接続されている。バルブ175が開成されることにより、処理空間SP内の処理流体が第1排出流路125を介して流体回収部53へ排出される。
【0030】
一方、処理空間SPに収容される基板Sの(-Y)側端部よりもさらに(-Y)側の処理空間SPの底面SPbに第2排出口126aが開口しており、これに連通する第2排出流路126が、バルブ177を有する配管178を介して流体回収部53に接続されている。バルブ177が開成されることにより、処理空間SP内の処理流体が第2排出流路126を介して流体回収部53へ排出される。
【0031】
第1排出口125aおよび第2排出口126aは、一定の開口幅をもってX方向に細長く延びるスリット状の開口であり、X方向においては基板Sの端部よりも外側まで延びている。Y方向においては、基板Sの(-Y)側端部よりもさらに(-Y)側で開口している。また、これらの配設位置の近傍では、処理空間SPは支持トレイ15により上下方向にほぼ分断されている。したがって、基板Sの上方を流れる処理流体は第1排出口125aから排出される一方、基板Sの下方を流れる処理流体は第2排出口126aから排出されることになる。
【0032】
第1導入流路123に供給される処理流体の流量と、第1排出流路125から排出される処理流体の流量とが等しくなるように、バルブ171,175の開度調整が行われる。同様に、第2導入流路124に供給される処理流体の流量と、第2排出流路126から排出される処理流体の流量とが等しくなるように、バルブ173,177の開度調整が行われる。
【0033】
これらの構成により、流体供給部55から第1導入流路123を介して導入される処理流体は、第1導入口123aからほぼ水平方向Yに吐出され、基板Sの上面に沿って流れて最終的に第1排出口125aから外部へ排出されて、最終的に流体回収部53に回収される。一方、流体供給部55から第2導入流路124を介して導入される処理流体は、第2導入口124aからほぼ水平方向Yに吐出され、支持トレイ15の下面に沿って流れて最終的に第2排出口126aから外部へ排出されて、最終的に流体回収部53に回収される。つまり、処理空間SP内では、基板Sの上方および支持トレイ15の下方のそれぞれに、(-Y)方向に向かう処理流体の層流が形成されると期待される。
図3に示す白抜き矢印は、このような処理流体の流れを模式的に示したものである。
【0034】
このように、処理空間SP、特に基板Sの上方の空間において一方向に向かう処理流体の層流を形成することで、基板Sの周囲で乱流が生じるのを防止することができる。そのため、仮に基板Sの表面に液体が付着していたとしても、これが超臨界状態の処理流体に溶け込み下流側へ流されることで、乾燥後の基板Sに残留することは回避される。また、汚染源となる不純物が発生しやすい開口121が基板Sよりも下流側となるように処理流体の流通方向を設定することで、開口121まわりで発生した不純物が乱流によって上流側へ運ばれ基板Sに付着することが回避される。これにより、基板Sを汚染することなく良好に乾燥させることが可能である。
【0035】
超臨界状態の処理流体が処理チャンバ12内で冷やされて相変化するのを防止するため、処理チャンバ12内部には適宜の熱源が設けられることが好ましい。特に基板Sの周辺で意図せぬ相変化が生じるのを防止するために、この実施形態では、
図1および
図3に示すように、支持トレイ15にヒーター153が内蔵されている。ヒーター153は供給ユニット50の温度制御部56によって温度制御されている。また、温度制御部56は制御ユニット90からの制御指令に応じて作動し、流体供給部55から供給される処理流体の温度を制御する機能も有している。
【0036】
処理空間SPは、支持トレイ15およびこれに支持される基板Sを受け入れ可能な形状および容積を有している。すなわち、処理空間SPは、水平方向Xには支持トレイ15の幅よりも広く、鉛直方向には支持トレイ15と基板Sとを合わせた高さよりも大きい矩形の断面形状と、支持トレイ15を受け入れ可能な奥行きとを有している。このように処理空間SPは支持トレイ15および基板Sを受け入れるだけの形状および容積を有しているが、支持トレイ15および基板Sと、処理空間SPの内壁面との間の隙間は僅かである。したがって、処理空間SPを充填するために必要な処理流体の量は比較的少なくて済む。
【0037】
移載ユニット30は、
図1に示すように、外部の搬送装置と支持トレイ15との間における基板Sの受け渡しを担う。この目的のために、移載ユニット30は、本体31と、昇降部材33と、ベース部材35と、複数のリフトピン37とを備えている。昇降部材33はZ方向に延びる柱状の部材であり、図示しない支持機構により、Z方向に移動自在に支持されている。昇降部材33の上部には略水平の上面を有するベース部材35が取り付けられており、ベース部材35の上面から上向きに、複数のリフトピン37が立設されている。リフトピン37の各々は、その上端部が基板Sの下面に当接することで基板Sを下方から水平姿勢に支持する。基板Sを水平姿勢で安定的に支持するために、上端部の高さが互いに等しい3以上のリフトピン37が設けられることが望ましい。
【0038】
昇降部材33は、供給ユニット50に設けられたリフト昇降機構51により昇降移動可能となっている。具体的には、リフト昇降機構51は、例えばリニアモータ、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダ等の直動機構を有しており、このような直動機構が昇降部材33をZ方向に移動させる。リフト昇降機構51は制御ユニット90からの制御指令に応じて動作する。
【0039】
昇降部材33の昇降によりベース部材35が上下動し、これと一体的に複数のリフトピン37が上下動する。これにより、移載ユニット30と支持トレイ15との間での基板Sの受け渡しが実現される。
【0040】
蓋部材13が(-Y)方向に移動した離間状態にあるとき、
図2に示すように、支持トレイ15は処理チャンバ12から外部空間へ引き出された状態となる。このときの支持トレイ15の下方に、リフトピン37を有するベース部材35が配置されている。支持トレイ15のうちリフトピン37の直上に相当する位置には、リフトピン37の直径よりも大径の貫通孔152が穿設されている。
【0041】
ベース部材35が上昇すると、リフトピン37の上端は貫通孔152を通して支持トレイ15の支持面151よりも上方に到達する。この状態で、外部の搬送装置のハンドHにより支持され搬送されてくる基板Sがリフトピン37に受け渡される。ハンドHの退避後にリフトピン37が下降することにより、基板Sはリフトピン37から支持トレイ15へ受け渡される。基板Sの搬出は、上記と逆の手順により行うことができる。
【0042】
なお、
図1中の符号54は処理チャンバ12の高さ位置、つまり鉛直方向Zにおける処理チャンバ12の位置を計測する高さセンサである。この高さセンサ54による計測結果は制御ユニット90に送られる。そして、制御ユニット90は当該計測結果に基づいて次に説明する高さ調整工程を実行する。
【0043】
図4は第1実施形態で実行される高さ調整工程を示すフローチャートおよび動作模式図である。この高さ調整工程は、基板処理装置1の組立完了時、メンテナンス時や処理対象となる基板Sの種類や処理内容などが変更された時などのタイミングで実行される。また、高さ調整工程の実行は、制御ユニット90のCPU91が上記制御プログラムを実行し装置各部に以下に説明する動作を行わせることにより実現される。
【0044】
高さ調整工程では、最初に、制御ユニット90からの制御指令に応じて進退機構52が蓋部材13を(-Y)方向に移動させる。これにより、蓋部材13と一緒に支持トレイ15が処理チャンバ12の外側に引き出されて処理空間SPから退避する(ステップS11)。そして、次のステップS12で、高さセンサ54が処理チャンバ12の高さ位置、つまりチャンバ高さを計測する。ここで、蓋部材13および支持トレイ15は予め設計された高さ位置で水平移動し、処理空間SPも予め設定された寸法で処理チャンバ12に設けられている。そこで、CPU91は、それらの高さ位置に関する設計値、高さセンサ54の計測結果、処理空間SPの各種寸法(同図中の符号Wは鉛直方向Zにおける幅)および基板Sの厚みに基づき、
図4の右上段に示すように、上方隙間CLaおよび下方隙間CLbを算出する(ステップS13)。ここで、「上方隙間CLa」とは、鉛直方向Zにおける支持トレイ15に支持される基板Sの上面Saと処理空間SPの天井面SPaとの間隔を意味している。また、「下方隙間CLb」とは、鉛直方向Zにおける支持トレイ15の下面15bと処理空間SPの底面SPbとの間隔を意味している。
【0045】
ここで、上方隙間CLaは、基板Sの上面Saに供給される処理流体の鉛直方向Zの幅であり、これが狭まると、基板処理の品質低下を招くおそれがある。つまり、上方隙間CLaが適正値を下回ると、基板Sの上面Saに供給される処理流体の流量や流速が大幅に低下する。その結果、上記置換が不完全となり、処理不良が発生することがある。また、支持トレイ15にはヒーター153が内蔵されているため、支持トレイ15の熱変形は不可避である。したがって、下方隙間CLbが0.5mmよりも狭まると、支持トレイ15が、処理チャンバ12に対してY方向に進退する際に、処理空間SPの底面SPbに接触する可能性があり、実使用上においては下方隙間CLbを1mm以上に調整するのが好適である。また、基板Sの処理効率を高めるという観点から、上方隙間CLaを下方隙間CLbよりも広げるのが望ましく、上方隙間CLaと下方隙間CLbとの合計値に対する上方隙間CLaの比率が65%ないし75%の範囲内となるように調整するのが好適である。
【0046】
そこで、本実施形態では、65%ないし75%の範囲を上記比率の適正範囲として定義し、CPU91がステップS13で算出された上方隙間CLaおよび下方隙間CLbに基づいて上記比率が適正範囲内に収まっているか否かを判定する(ステップS14)。例えば
図4の右下段に示すように、上記比率(=100×CLa/(CLa+CLb))が適正範囲内に収まっていると判定すると、CPU91はそのまま高さ調整工程を終了する。
【0047】
一方、例えば
図4の右上段に示すように、上記比率が適正範囲から外れていると判定すると、CPU91は処理空間SPに対する支持トレイ15の相対高さ位置を補正した(ステップS15、S16)後で、高さ調整工程を終了する。すなわち、CPU91は、上記比率を適正範囲内に入れるために必要な処理チャンバ12の鉛直方向Zにおける変位量を補正移動量として算出する(ステップS15)。そして、CPU91は当該補正移動量に対応した制御指令をチャンバ昇降制御部57に与える。これを受け取ったチャンバ昇降制御部57が昇降アクチュエータ20を制御して処理チャンバ12を鉛直方向Zに補正移動量だけ移動させる。例えば
図4の右上段に示すように上記比率が50%を下回っている場合、昇降アクチュエータ20により処理チャンバ12が(+Z)方向に移動される。
【0048】
このような高さ調整工程が本発明の「第3工程」の一例に相当し、高さ調整工程によって支持トレイ15に支持される基板Sの鉛直方向Zにおける処理空間SPに対する相対位置は常に適正範囲に調整される。そして、このように調整された状態で
図5に示す一連の処理が実行される。
【0049】
図5は、
図1の基板処理装置を含む基板処理システムにより実行される処理の一部を示すフローチャートおよび動作模式図である。この基板処理装置1は、前工程において洗浄液により洗浄された基板Sを乾燥させる目的に使用される。具体的には以下の通りである。前工程で基板Sが洗浄液により洗浄された後(ステップS21)、イソプロピルアルコール(IPA)による液膜が表面に形成された状態で(ステップS22)、基板処理装置1に搬送されてくる(ステップS23)。
【0050】
例えば基板Sの上面Saに微細パターンが形成されている場合、基板Sに残留付着している液体の表面張力によってパターンの倒壊が生じるおそれがある。また、不完全な乾燥によって基板Sの上面Saにウォーターマークが残留する場合がある。また、基板S表面が外気に触れることで酸化等の変質を生じる場合がある。このような問題を未然に回避するために、基板Sの上面Sa(パターン形成面)を液体または固体の表面層で覆った状態で搬送することがある。
【0051】
例えば洗浄液が水を主成分とするものである場合には、これより表面張力が低く、かつ基板に対する腐食性が低い液体、例えばIPAやアセトン等の有機溶剤により液膜を形成した状態で搬送が実行される。すなわち、基板Sは水平状態に支持され、かつその上面に液膜が形成された状態で、基板処理装置1に搬送されてくる。
【0052】
基板Sは、パターン形成面を上面Saにして、しかも該上面Saが薄い液膜に覆われた状態で支持トレイ15に載置される(ステップS24)。支持トレイ15および蓋部材13が一体的に(+Y)方向に前進すると、基板Sを支持する支持トレイ15が処理チャンバ12内の処理空間SPに収容されるとともに、開口121が蓋部材13の閉塞面131により閉塞される(ステップS25)。このとき、
図5の右側図面に示すように、支持トレイ15に支持された基板Sの鉛直方向Zにおける処理空間SPに対する相対位置は調整されており、常に上記比率(=100×CLa/(CLa+CLb))は適正範囲内に収まっている。つまり、支持トレイ15の熱変形量よりも十分に広い下方隙間CLbを確保しつつ、上方隙間CLaが下方隙間CLbよりも十分に広くなっている。したがって、基板Sの上面Saに供給される処理流体の流量や流速を次に説明する超臨界乾燥処理(ステップS26)に適した値とすることができる。このように、ステップS25、S26がそれぞれ本発明の「第1工程」および「第2工程」の一例に相当している。
【0053】
支持トレイ15とともに基板Sが搬入され密閉された処理空間SPでは、超臨界乾燥処理が実行されるが、その内容は以下の通りである。外部から液膜が形成された基板Sが処理チャンバ12に搬入されると、まず処理流体が気相状態で処理空間SPに導入される。処理空間SP内を排気しつつ気相の処理流体を送り込むことで、処理空間SPの雰囲気が処理流体により置換される。なお、本実施形態では、処理流体として二酸化炭素(CO2)が用いられる事例を説明するが、処理流体の種類はこれに限定されない。
【0054】
液相状態の処理流体が処理空間SPに導入される。液状の二酸化炭素は基板S上の液膜を構成する液体(有機溶剤;例えばIPA)をよく溶かし、基板Sの上面から遊離させる。処理空間SP内の液体を排出することで、基板Sに残留するIPAを排出することができる。次に、超臨界状態の処理流体が処理空間SPに導入される。処理チャンバ12の外部で予め超臨界状態とされた処理流体が導入されてもよく、また液状の処理流体で満たされた処理チャンバ12内の温度および圧力を臨界点以上とすることにより、処理流体を超臨界状態に至らせる態様でもよい。
【0055】
その後、処理チャンバ12内が温度を維持しつつ減圧されることにより、超臨界流体は液相を介することなく気化して排出される。これにより基板Sは乾燥状態となる。この間、基板Sのパターン形成面が液相と気相との界面に曝されることがないので、液体の表面張力に起因するパターン倒壊の発生が防止される。また、超臨界流体は表面張力が極めて低いため、表面に微細なパターンが形成された基板であってもパターン内部まで処理流体がよく回り込む。このため、パターン内部に残留する液体等を効率よく置換することができる。このようにして基板Sが良好に乾燥される。
【0056】
そして、処理後の基板Sは後工程へ払い出される(ステップS27)。すなわち、蓋部材13が(-Y)方向へ移動することで支持トレイ15が処理チャンバ12から外部へ引き出され、移載ユニット30を介して外部の搬送装置へ基板Sが受け渡される。このとき、基板Sは乾燥した状態となっている。なお、後工程の内容は任意である。
【0057】
以上のように、上記第1実施形態では、支持トレイ15を(+Y)方向に前進させて処理対象となる基板Sを処理空間SPに格納する(第1工程)のに先立って、
図4に示す高さ調整工程(第3工程)を実行している。このため、鉛直方向Zにおいて、支持トレイ15で支持される基板Sは処理空間SPに対して超臨界乾燥処理に適した位置に位置決めされる。つまり、支持トレイ15を処理空間SPの底面SPbと接触しない程度の下方隙間CLbを確保しつつ、上方隙間CLaを下方隙間CLbよりも十分に広げている。その上で処理流体を処理空間SPに供給して超臨界乾燥処理を実行している。その結果、処理空間SPでの処理の品質を高めることができる。
【0058】
また、上記第1実施形態では、高さ調整工程では、シール部材122が取り付けられた被閉塞面127に対して蓋部材13を(-Y)方向に後退させた(ステップS11)後で処理チャンバ12を鉛直方向Zに昇降させている(ステップS16)。したがって、シール部材122に対してダメージを与えることなく、鉛直方向Zにおける基板Sに対する処理空間SPの相対位置を調整することができる。なお、シール部材122の取付を被閉塞面127ではなく、蓋部材13の閉塞面131としてもよく、この場合、シール部材122を閉塞面131に取り付けたまま蓋部材13を(-Y)方向に後退させた後で処理チャンバ12を鉛直方向Zに昇降させるのが望ましい。
【0059】
さらに、上記第1実施形態では、処理チャンバ12の外側面のうち(-Z)方向を向いた下面に昇降アクチュエータ20を接続し、処理チャンバ12を外側から昇降させている。したがって、処理空間SPを清浄に保ちながら当該処理空間SPに対して基板Sを超臨界乾燥処理に適した位置に位置決めすることができる。なお、昇降アクチュエータ20を接続する箇所については、処理チャンバ12の外側面のうち被閉塞面127以外であれば、任意である。
【0060】
以上説明したように、第1実施形態の基板処理装置1においては、処理チャンバ12および蓋部材13がそれぞれ本発明の「容器本体」および「蓋部」の一例に相当している。また、昇降アクチュエータ20が本発明の「鉛直移動機構」および「第1昇降部材」の一例に相当している。また、進退機構52が本発明の「水平移動機構」の一例に相当している。また、上方隙間CLaおよび下方隙間CLbがそれぞれ本発明の「第1隙間」および「第2隙間」の一例に相当している。
【0061】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、昇降アクチュエータ20が処理チャンバ12全体と接続されているため、処理チャンバ12は水平姿勢のまま鉛直方向Zに昇降するのみである。これに対し、
図6に示すように、昇降アクチュエータ20を複数の昇降部材21~24で構成するとともにチャンバ昇降制御部57により昇降部材21~24を個々に制御するように構成してもよい(第2実施形態)。この第2実施形態では、
図6に示すように、処理チャンバ12の下面の四隅に対応して昇降部材21~24が台座11上に固定されている。このため、例えば基板Sが若干傾斜した姿勢で処理空間SPに挿入された場合、その基板Sの傾斜方向および傾斜量に応じて昇降部材21~24による鉛直方向Zにおける処理チャンバ12の昇降量をそれぞれ制御することが可能である。このような個別制御によって、基板Sの傾きや撓みなどが発生している場合であっても、処理空間SPに対して基板Sを超臨界乾燥処理に適した位置に位置決めするだけなく、常に処理空間SPを基板Sとほぼ平行に位置決めすることができる。これによって、基板Sの上面全体にわたって上方隙間CLaを均一に調整することができる。その結果、処理流体による超臨界乾燥処理を基板Sの上面全体に対して均質に施すことができる。
【0062】
また、上記実施形態では、処理チャンバ12の外周面のうち被閉塞面127を除く外周面に鉛直移動機構(昇降アクチュエータ20)を接続している。しかしながら、これに代えて、またはこれに加えて蓋部材13の外周面のうち閉塞面131を除く外周面に昇降アクチュエータなどの第2昇降部材を含む鉛直移動機構を接続し蓋部材13を鉛直方向Zに昇降させてもよい。これにより、処理空間SPに対して基板Sを超臨界乾燥処理に適した位置に位置決めすることができる。
【0063】
また、上記実施形態では、高さセンサ54による計測結果(処理チャンバ12の高さ位置)に基づいて高さ調整工程を実行している。しかしながら、これに代えて、またはこれに加えて処理流体の排出流量に基づいて高さ調整工程を実行してもよい。例えば、第1排出口125aから排出される処理流体の流量と、第2排出口126aから排出される処理流体の流量とを測定する測定部を設け、当該測定部による測定結果に基づき、蓋部材13を処理チャンバ12に対して相対的に鉛直方向Zに移動させるもよい。
【0064】
さらに、上記実施形態では、超臨界処理用の処理流体として二酸化炭素を、また液膜を形成するための液体としてIPAを用いている。しかしながら、これは単なる例示であり、用いられる化学物質はこれらに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
この発明は、容器本体の処理空間に基板を収容しながら処理空間に処理流体を供給して基板を処理する基板処理技術全般に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1…基板処理装置
10…処理ユニット
12…処理チャンバ(容器本体)
13…蓋部材(蓋部)
15…支持トレイ
15b…(支持トレイ15の)下面
20…昇降アクチュエータ(鉛直移動機構)
21~24…昇降部材(鉛直移動機構)
52…進退機構(水平移動機構)
54…高さセンサ
55…流体供給部
121…(容器本体の)開口
122…シール部材
123…第1導入流路
123a…第1導入口
124…第2導入流路
124a…第2導入口
125…第1排出流路
125a…第1排出口
126…第2排出流路
126a…第2排出口
127…(容器本体の)被閉塞面
131…(蓋部の)閉塞面
CLa…上方隙間(第1隙間)
CLb…下方隙間(第2隙間)
S…基板
Sa…(基板Sの)上面
SP…処理空間
SPa…(処理空間SPの)天井面
SPb…(処理空間SPの)底面
Z…鉛直方向