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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】改質中空粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20240919BHJP
   C09C 1/28 20060101ALI20240919BHJP
   C09C 3/06 20060101ALI20240919BHJP
   G02B 1/115 20150101ALN20240919BHJP
【FI】
C01B33/18 C
C09C1/28
C09C3/06
G02B1/115
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020202046
(22)【出願日】2020-12-04
(65)【公開番号】P2022089560
(43)【公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二神 渉
(72)【発明者】
【氏名】林 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
【審査官】磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/148097(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/221406(WO,A1)
【文献】特開2018-123043(JP,A)
【文献】特開2009-143754(JP,A)
【文献】国際公開第2019/098257(WO,A1)
【文献】特開2012-136363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/18
C09C 1/28
C09C 3/06
G02B 1/115
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機酸化物を含む外殻の内側に空洞を有する粒子であって、
前記外殻の密度が1.85×10kg/m以上、
前記粒子の一次粒子径の平均値(D)が20~1000nm、
前記粒子の動的光散乱法で測定した平均粒子径(D)と、前記一次粒子径の平均値(D)との比(D/D)が1.0~1.8
前記粒子の 29 Si-NMRスペクトル法における化学シフト-78~-88ppmに現れるピークの面積(Q )と、化学シフト-88~-98ppmに現れるピークの面積(Q )と、化学シフト-98~-108ppmに現れるピークの面積(Q )と、化学シフト-108~-117ppmに現れるピークの面積(Q )において、比((Q +Q )/(Q +Q +Q +Q ))が0.05~0.50、比((Q +Q +Q )/Q )が0.05~1.00、
前記粒子の炭素含有量が、0.50質量%以下であることを特徴とする改質中空粒子。
【請求項2】
前記粒子の一次粒子径の平均値(D )が20~110nmであることを特徴とする請求項1に記載の改質中空粒子。
【請求項3】
前記粒子の窒素吸着法による細孔容積が、1.0cm /g未満であることを特徴とする請求項1に記載の改質中空粒子。
【請求項4】
無機酸化物を外殻に含む中空粒子の分散液を準備する第一工程と、
前記中空粒子を無機化合物で被覆する第二工程と、
被覆後の中空粒子を300~1200℃で焼成する第三工程と、
焼成後の中空粒子を溶媒に懸濁して、前記無機化合物を除去する第四工程と、を順に備え、
前記第四工程で得られた粒子の外殻の密度が、前記第一工程の中空粒子の外殻の密度よりも0.10×10kg/m以上高いことを特徴とする改質中空粒子の製造方法。
【請求項5】
前記第一工程の中空粒子が、珪素を含むことを特徴とする請求項4に記載の改質中空粒子の製造方法。
【請求項6】
前記無機化合物の組成比が、MOx分率(=MOx/(SiO+MOx))として0.05~0.67(但し、MOxは珪素以外の無機元素を酸化物として表した時の質量百分率、SiOは珪素を酸化物(SiO)として表した時の質量百分率を示し、両者の合計を100質量%とする)であることを特徴とする請求項4に記載の改質中空粒子の製造方法。
【請求項7】
前記無機化合物の被覆量が、無機酸化物中空粒子の固形分100質量部に対して、固形分として10質量部以上であることを特徴とする請求項4に記載の改質中空粒子の製造方法。
【請求項8】
無機化合物中のアルカリ金属含有量が、前記無機化合物を酸化物として表したものに対して、酸化物として10質量%未満であることを特徴とする請求項4に記載の改質中空粒子の製造方法。
【請求項9】
前記溶媒が、酸性水溶液であることを特徴とする請求項4に記載の改質中空粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緻密な外殻を有する中空粒子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス、プラスチック等で形成されたシートやレンズ等の基材表面の反射を防止するために、その表面に反射防止膜が形成されている。例えば、コート法、蒸着法、CVD法等によって、フッ素樹脂、フッ化マグネシウムのような低屈折率な物質の被膜をガラスやプラスチックの基材表面に形成することが行われている。しかしながら、これらの方法は、コスト的に高価である。そこで、シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる、屈折率1.36~1.44の複合酸化物コロイド粒子を含む塗布液を基材表面に塗布して、反射防止膜を形成することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、多孔性の中空粒子の製造方法が知られている(例えば、特許文献2、3参照)。中空粒子は、中実粒子に比べて屈折率が低く、中空粒子を用いて形成された透明被膜は、屈折率が低く反射防止性能に優れている。
【0004】
ところで、粒子の分散液は、一旦乾燥すると二次凝集を起こしてしまう。凝集した粒子を、溶媒や樹脂等へ一次粒子の状態で再分散させることは困難である。これは、ナノサイズの粒子のように、粒子径が小さいものほど顕著になる。そこで、再分散性向上のために、ポリアクリル酸やポリビニルピロリドンといった高分子、及び界面活性剤で粒子を表面処理したり(例えば、特許文献4参照)、ポリシルセスキオキサンを粒子に含有させる処理をしたり(例えば、特許文献5参照)することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-133105号公報
【文献】特開2001-233611号公報
【文献】特開2013-226539号公報
【文献】特開2004-043892号公報
【文献】特開2014-185051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
中空粒子は、外殻の内側に空洞を有するため、中実粒子に比べて低屈折率であるものの強度は低い。このため、これを反射防止膜に使用した場合、反射防止能は向上するものの、膜の硬度や強度(耐擦傷性)が低下するおそれがある。そこで、粒子(外殻)を緻密化させて、十分な硬度及び強度を実現させる必要がある。この緻密化の方法としては、例えば、粒子を焼成することが挙げられる。
【0007】
しかしながら、中空粒子の分散液は、上述のように、乾燥するだけで粒子が凝集してしまうおそれがある。また、中空粒子に特許文献4又は特許文献5のような処理をしても、焼成(例えば300℃以上)すると粒子が凝集してしまい、溶媒等へ再分散することは困難である。凝集粒子が多いと、塗布液中及び被膜中に単分散できず、被膜の平坦化が実現できない。このため、被膜の耐擦傷性の低下や、ヘイズの上昇が起きてしまう。凝集粒子を再分散させるためには、ビーズミル等を用いて機械的に分散することも可能であるが、粒子が破壊されて、元の中空粒子の形状が保てないおそれがある。また、粒子の「割れ」が多いと、遠心分離等を行わないと粒子の均一性が得られず、収率が著しく低下するおそれや屈折率が上昇するおそれがある。このような課題は、ナノサイズの中空粒子で顕著である。
【0008】
そのため、従来の中空粒子よりも粒子(外殻)を緻密化させ、十分な硬度と強度とを有する中空粒子が要求されている。
【0009】
また、この粒子には、溶媒中あるいは樹脂中で分散性が高いことが要求されている。
【0010】
更に、この粒子を使用した透明被膜(反射防止膜)付基材には、粒子の凝集が抑制されていて、十分な硬度と強度、及び低い屈折率を有することが要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような課題を解決するため、以下のような「改質中空粒子」を見出した。この粒子は、無機酸化物を含む外殻の内側に空洞を有し、外殻の密度が1.85×10kg/m以上、一次粒子径の平均値(D)が20~1000nm、動的光散乱法で測定した平均粒子径(D)と一次粒子径の平均値(D)との比(D/D)が1.0~1.8である。
【0012】
この粒子は、無機酸化物を含む緻密な外殻の内側に空洞を有し、十分な硬度と強度、及び高い分散性を有する。このような粒子を含む塗布液によれば、高い硬度(鉛筆硬度)と高い強度(耐擦傷性)とを有する透明被膜が得られる。
【0013】
この改質中空粒子を得るために、以下のような製造方法を見出した。
【0014】
まず、無機酸化物を外殻に含む中空粒子の分散液を準備する(第一工程)。次に、この中空粒子を無機化合物によって被覆する(第二工程)。次に、この無機化合物で被覆された中空粒子を300~1200℃で焼成する(第三工程)。次に、この無機化合物で被覆された中空粒子の焼成品を溶媒に懸濁して、粒子に被覆させた無機化合物を除去して、改質中空粒子を得る(第四工程)。
【0015】
この改質中空粒子の外殻の密度は、第一工程の中空粒子の外殻の密度よりも0.10×10kg/m以上高く、外殻が緻密化されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粒子によれば、反射率が低く、基材との密着性に優れ、高い硬度と強度とを有する被膜を作製可能な塗布液が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る改質中空粒子は、無機酸化物を含む外殻と、その外殻の内側に空洞を有している(以下、この本発明に係る改質中空粒子を単に「粒子」ということがある)。粒子の一次粒子径の平均値(D)は20~1000nmである。ここで、SEM像の画像処理により得られた粒子面積に相当する円の直径(円相当径)を一次粒子径とした。更に、動的光散乱法で測定した平均粒子径(D)と、一次粒子径の平均値(D)との比(D/D)が1.0~1.8の範囲にある。
【0018】
一次粒子径の平均値(D)が、20~1000nmの範囲にあると、粒子が安定して存在することができる。また、塗布液中や被膜中でも分散性が良く、高い透明性と硬度及び強度を持つ被膜が得られる。この平均値(D)は、好ましくは20~800nmである。特に、この粒子を反射防止膜に使用する場合は、20~110nmが好ましい。
【0019】
動的光散乱法で測定した平均粒子径(D)と、一次粒子径の平均値(D)との比(D/D)が、1.0~1.8の範囲であることは、凝集粒子の割合が少ないことを表している。そのため、溶媒中あるいはマトリックス形成成分中で粒子の分散性が高い。また、被膜付基材にした場合、高い透明性が得られる。比(D/D)が1.0未満であると、その粒子を得ること自体が困難である。逆に、1.8を超えると、この粒子を被膜付基材に使用した場合、凝集粒子の割合が多くなるため、ヘイズが上昇するおそれがある。比(D/D)は、好ましくは1.0~1.6、より好ましくは1.0~1.4である。
【0020】
また、外殻の密度は1.85×10kg/m以上である。密度が1.85×10kg/m未満であると、粒子を被膜付基材に使用した場合、反射防止能や、被膜の強度及び鉛筆硬度が不十分となるおそれがある。粒子の外殻の密度は、好ましくは1.90×10kg/m以上、より好ましくは2.10×10kg/m以上である。
【0021】
外殻の密度(ρs)は、下記式(1)で求められる外殻の屈折率(n)を用いて、式(2)により得られる。式(2)は、Grandstone-Daleの式から導かれる。
【0022】
【数1】
【0023】
【数2】
【0024】
ここで、式(2)の無機酸化物の密度(ρ)及び屈折率(n)には、外殻を構成する物質に応じた値を用いる。例えば、外殻の構成物質が、シリカ(SiO)の場合は各々2.2×10kg/m及び1.46として粒子の外殻の密度(ρs)を求めることができる。同様に、アルミナ(γ-Al)の場合は3.6×10kg/m及び1.70、ジルコニア(ZrO)の場合は5.7×10kg/m及び2.13、チタニア(アナターゼ型TiO)の場合は5.3×10kg/m及び2.52、チタニア(ルチル型TiO)の場合は4.2×10kg/m及び2.72、酸化亜鉛(ZnO)の場合は5.6×10kg/m及び2.1、酸化スズ(SnO)の場合は7.0×10kg/m及び2.0、酸化アンチモン(Sb)の場合は3.8×10kg/m及び1.67、として粒子の外殻の密度(ρs)を求めることができる。また、外殻の構成物質が、無機酸化物の混合物、あるいは無機複合酸化物の場合は、その構成成分、及びその割合に応じた密度及び屈折率を用いて求めることができる。なお、本出願における屈折率とは、波長550nmにおける屈折率を意味する。
【0025】
更に、粒子の炭素含有量は、0.50質量%以下が好ましい。粒子に含有される炭素は、有機珪素化合物、金属塩、還元剤、pH調整剤、洗浄液、溶媒等の有機化合物に由来する。これには、粒子の製造のために、意図的に添加されたものの他、原料等に不可避的に存在するものも含まれる。有機化合物が含まれていると外殻の硬度や強度が弱いため、十分な硬度や強度の透明被膜が得られないおそれがある。このような有機物に由来する炭素含有量は、後述のように、C(カーボン)量を分析することで求めることができる。炭素含有量は、より好ましくは0.30質量%以下、更に好ましくは0.10質量%以下、特に好ましくは0.05質量%以下である。
【0026】
更に、粒子の29Si-NMRスペクトル法における化学シフト-78~-88ppmに現れるピークの面積Qと、化学シフト-88~-98ppmに現れるピークの面積Qと、化学シフト-98~-108ppmに現れるピークの面積Qと、化学シフト-108~-117ppmに現れるピークの面積Qにおいて、比((Q+Q)/ΣQ)が0.05~0.50、比((Q+Q+Q)/Q)が0.05~1.00であることが好ましい。ここで、ΣQ=Q+Q+Q+Qである。
【0027】
このQに帰属するピークはSi原子に1つの(-OSi)基と3つの(-OH)基が結合したもの、Qに帰属するピークはSi原子に2つの(-OSi)基と2つの(-OH)基が結合したもの、Qに帰属するピークはSi原子に3つの(-OSi)基と1つの(-OH)基が結合したもの、Qに帰属するピークはSi原子に4つの(-OSi)基が結合したものである。
【0028】
ここで、比((Q+Q)/ΣQ)、及び、比((Q+Q+Q)/Q)がこの範囲にあれば、詳細な理由は不明であるが、粒子が緻密で、十分な硬度や強度の透明被膜が得られる。比((Q+Q)/ΣQ)は、より好ましくは0.08~0.50、更に好ましくは0.10~0.40である。また、比((Q+Q+Q)/Q)は、より好ましくは0.10~1.00、更に好ましくは0.20~0.90である。
【0029】
粒子の屈折率nは、1.07~1.35が好ましい。屈折率がこの範囲にあると、透明な被膜が得られる。屈折率は、より好ましくは1.07~1.30、更に好ましくは1.07~1.28である。
【0030】
外殻の屈折率nは、1.36以上が好ましい。屈折率nが1.36以上であると、外殻は緻密である。屈折率nの上限は、特に設定されないが、例えば1.46である。屈折率nは、式(1)に示すように、粒子の一次粒子径の平均値D、外殻の内側の空洞の径の平均値D、粒子の屈折率n、及び空洞の屈折率nから求められる。空洞の屈折率nは、空洞内部の状態によって異なる。例えば、空洞内部が気体であると、屈折率は1.00となる。また、空洞内部が液体であれば、その液体の屈折率となる。これにより、透明で、十分な硬度や強度を有する被膜が得られる。ここで、屈折率nが1.36未満であると、被膜の硬度が不十分になるおそれがある。屈折率nは、より好ましくは1.37以上、更に好ましくは1.40以上である。
【0031】
外殻の平均厚みは、3~50nmが好ましい。これにより、外殻の構造が安定して維持できるため、粒子として安定して存在することができる。また、高い透明性、硬度及び強度を持つ被膜が得られる。ここで、平均厚みが3nm未満の薄い外殻の場合、粒子の構造が維持できないおそれがある。逆に、50nmを超えると、外殻の屈折率が高くなりすぎるおそれがある。平均厚みは、より好ましくは5~30nm、更に好ましくは7~25nmである。
【0032】
粒子のN吸着法による細孔容積は、1.0cm/g未満が好ましい。細孔容積がこの範囲にあると、粒子の外殻が緻密である。ここで、細孔容積が1.0cm/gよりも大きいと、外殻は疎(多孔質)であるため、外殻の硬度や強度が弱いおそれがある。また、外殻の構造が維持できないおそれもある。更に、粒子を被膜付基材に使用した場合、十分な硬度や強度が得られないおそれがある。細孔容積は、より好ましくは0.8cm/g未満、更に好ましくは0.5cm/g未満、最も好ましくは0.0cm/gである。
【0033】
なお、粒子の形状は、特に限定されない。例えば、球状、楕球体(ラグビーボール)状、繭状、金平糖状、鎖状、サイコロ状などが挙げられる。中でも、球状粒子は、分散性が高く、被膜中で均一に分散できるため好ましい。
【0034】
外殻内側の空洞は、粒子外形に沿った形状が好ましい。すなわち、外殻の厚みが均一であるほど好ましい。外殻の厚みにもよるが、粒子に応力が加わった場合でも、十分な硬度や強度を得ることができる。
【0035】
また、空洞は実質的に一つの空間で構成されることが好ましい。中空粒子の中には、複数の中空粒子が合着して「外殻の内側に複数の空間を有する粒子」が存在することがある。屈折率が低く透明な被膜を得るには、このような粒子が少ない方が良い。すなわち、「外殻の内側に複数の空間を有する粒子」を粒子全体の50%未満にすることが好ましい。より好ましくは20%未満、更に好ましくは10%未満、特に好ましくは5%未満、最も好ましくは0%である。
【0036】
粒子中に占める空洞の割合は、10~85%が好ましい。空洞の割合が10%未満だと、屈折率が高くなりすぎるおそれがある。逆に、85%を超えると、十分な硬度や強度が得られないおそれや、中空構造を保持することが困難となるおそれがある。空洞の割合は、より好ましくは18~80%、更に好ましくは30~70%である。
【0037】
外殻を構成する物質は、珪素を含む酸化物が好ましい。珪素を含む酸化物としては、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、亜鉛、スズ、及びアンチモンの少なくとも一つの元素と珪素とを含む酸化物、及びシリカが挙げられる。これらの無機酸化物は、単独でも、混合物でも、複合酸化物でも構わない。
【0038】
粒子中の珪素分の含有量は、珪素分をシリカとして表した時、90質量%以上が好ましい。これにより、粒子とマトリックス形成成分との相溶性が向上する。このため、透明被膜中に粒子が高分散でき、被膜の強度や硬度が向上する。この珪素分の含有量は、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0039】
粒子の不純分であるアルカリ金属及びアルカリ土類金属に属する元素の各々の含有量は、当該元素を酸化物で表した時、粒子に対して、1ppm以下が好ましい。これにより、粒子の合着が少なくなるため、粒子が塗布液中や被膜中で均一に分散され、透明な被膜が得られる。また、塗布液の性能においても安定性が高くなり、被膜の性能においても膜硬度の上昇や、透明性が高くなる。ここで、各々の含有量が1ppmよりも多いと、粒子同士が固着する割合が増え、十分な膜の硬度が得られなかったり、透明性が不十分になったりするおそれがある。含有量は、より好ましくは0.1ppm以下である。なお、アルカリ金属とは、Li、Na、K、Rb、Cs、Frを、アルカリ土類金属とは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raを表す。
【0040】
また、粒子の不純分である、粒子の構成に寄与していないFe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、及びZrの各々の含有量は、0.1ppm未満が好ましく、Cu、Ni、及びCrの各々の含有量は、1ppb未満が好ましく、U、及びThの各々の含有量は0.3ppb未満が好ましい。これら不純分の含有量がこの範囲であれば、透明な被膜が得られる。これら不純分の含有量が多くなると、分散液が着色し、透明な被膜が得られないおそれがある。また、高純度が要求される高集積なロジックやメモリー等の半導体回路や光センサー等に使用する場合は、金属元素が回路の絶縁不良を起こしたり、回路を短絡させたり、光透過率が低下する。これによって、絶縁膜の誘電率低下や、金属配線のインピーダンスの増大、応答速度の遅れ、消費電力の増大等が起こるおそれがある。特に、U、Thの場合は、放射能を発生するため、微量でも存在した場合、放射能による半導体の誤作動を引き起こすため好ましくない。
【0041】
このような不純分の含有量が少ない粒子を得るには、粒子を調製する際の装置の材質をこれらの元素を含まず、かつ耐薬品性が高いものにすることが好ましい。具体的には、テフロン(登録商標)、FRP、カーボンファイバー等のプラスチック、無アルカリガラス等が好ましい。また、使用する原料については、蒸留・イオン交換・フィルター除去で精製することが好ましい。
【0042】
高純度な粒子を得る方法としては、上述のように、予め、不純分の少ない原料を準備したり、粒子調製用の装置からの混入を抑えたりする方法がある。そのような対策を十分にとらずに調製された粒子から不純分を低減することも可能である。不純分の低減方法として、イオン交換、限外濾過等、公知の方法を用いることができる。
【0043】
本発明の粒子を、有機溶媒や有機樹脂等の有機物に分散させることもできる。その場合、有機珪素化合物を使用して、粒子を表面処理することが好ましい。有機珪素化合物として、下記式(3)に示す有機珪素化合物(nは1~3)を用いることが好ましい。ここで、nが0の有機珪素化合物を用いる場合は、有機珪素化合物の部分加水分解物を用いることが好ましい。
【0044】
-SiX4-n ・・・式(3)
(但し、式中、Rは炭素数1~10の非置換又は置換炭化水素基で、互いに同一であっても異なっていてもよい。置換基としては、エポキシ基、アルコキシ基、ビニル基、(メタ)アクリロイロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミノ基、フェニルアミノ基が挙げられる。Xは炭素数1~4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、水素原子であり、nは0~3の整数を示す。)
【0045】
この有機珪素化合物としては、具体的に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3-トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシトリプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロルシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン等が挙げられる。
【0046】
粒子の表面処理は、粒子のアルコール分散液を準備して、これに所定量の式(3)に示す有機珪素化合物と水とを加えて、有機珪素化合物を加水分解して行う。この加水分解には、必要に応じて、加水分解用触媒として酸又はアルカリを使用する。また、必要に応じて、表面処理前と表面処理後の少なくとも一方で、イオン交換、限外濾過等によって、不純分を低減させても良い。
【0047】
有機珪素化合物は、粒子100質量部に対し、R-SiO(4-n)/2(固形分)として、0.1~100質量部存在することが好ましい。有機珪素化合物で粒子が表面処理されていれば、マトリックス形成成分との相溶性が向上する。
【0048】
ここで、有機珪素化合物量が0.1質量部未満であると、その添加効果は十分に得られない。むしろ、粒子の分散性が不十分となり、得られる透明被膜にヘイズが発生するおそれがある。有機珪素化合物量が100質量部よりも多くても、粒子の分散性が更に向上する訳ではない。その上、マトリックスと結合するサイトが増えるので、基材との密着性が不十分となるおそれがある。有機珪素化合物量は、より好ましくは概ね2~80質量部、更に好ましくは3~50質量部である。
【0049】
[改質中空粒子の製造方法]
以下、本発明に係る改質中空粒子の製造方法を説明する。まず、無機酸化物を外殻に含む中空粒子の分散液を準備する(第一工程)。この中空粒子を無機化合物で被覆する(第二工程)。次に、この被覆後の中空粒子を焼成する(第三工程)。焼成によって、粒子(外殻)の細孔容積が減少し、外殻が緻密になる。次に、この焼成粒子を溶媒へ懸濁して、被覆した無機化合物を除去する(第四工程)。無機化合物を除去することにより、溶媒への分散性が高い粒子が得られる。
【0050】
このようにして製造された改質中空粒子は、凝集が抑制されていて、十分な硬度と強度とを有する。この改質中空粒子の外殻の密度は、第一工程の中空粒子の外殻の密度よりも0.1×10kg/m以上高い。以下に、各工程について述べる。
【0051】
[第一工程]
本工程で出発物質として準備する「無機酸化物を外殻に含む中空粒子」とは、無機酸化物からなる外殻の内側に、空洞を有する粒子である。以下、この、出発物質を単に「中空粒子」と表すことがある。
【0052】
この中空粒子は、上述の方法で改質中空粒子が製造でき、得られた改質中空粒子を被膜付基材が製造可能な塗布液に使用できれば特に限定されない。例えば、従来公知の方法で製造されたものでもよい。中空粒子は以下に説明する特性を除いて、前述の改質中空粒子と同様の特性を備えている。
【0053】
中空粒子中の珪素分の含有量は、珪素分をシリカとして表した時、80質量%以上が好ましい。これにより、後述する焼成工程や、被覆した無機化合物を除去する工程においても粒子自体の組成が損なわれ難い。この珪素分の含有量は、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0054】
必要に応じて、前述の式(3)に示すnが0~3の有機珪素化合物で中空粒子を被覆してもよい。
【0055】
有機珪素化合物の被覆量は、中空粒子100質量部に対し、R-SiO(4-n)/2(固形分)として、500質量部以下が好ましい。有機珪素化合物で被覆されていれば、中空粒子の外殻構造を保持しやすくなる。逆に言えば、中空粒子の外殻構造が保持できていれば、有機珪素化合物による被覆は必要としない。ここで、有機珪素化合物の被覆量が500質量部を超えると、粒子の外殻が厚くなり、屈折率が高くなりすぎるおそれがある。
【0056】
中空粒子中のアルカリ金属の含有量は、アルカリ金属を酸化物として表した場合、中空粒子に対して、5質量%未満が好ましい。なお、アルカリ金属とは、Li、Na、K、Rb、Cs、Frを表す。ここで、アルカリ金属の含有量が5質量%以上の場合、後述の被覆させる無機化合物の種類や被覆量、アルカリ金属の含有量、及び焼成の際の温度にもよるが、中空粒子の融点を降下させて無機化合物と固着するおそれや、中空粒子自身が固着するおそれがある。アルカリ金属含有量は、より好ましくは1質量%未満、更に好ましくは0.1質量%未満である。
【0057】
中空粒子中のアルカリ土類金属の含有量は、アルカリ土類金属を酸化物として表した場合、中空粒子に対して、1質量%未満が好ましい。なお、アルカリ土類金属とは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raを表す。ここで、アルカリ土類金属の含有量が1質量%以上の場合、後述の被覆させる無機化合物の種類や被覆量、アルカリ土類金属含有量、及び焼成の際の温度にもよるが、中空粒子の融点を降下させて無機化合物と固着するおそれや、無機酸化物中空粒子自身が固着するおそれがある。アルカリ土類金属含有量は、より好ましくは0.1質量%未満、更に好ましくは0.05質量%未満である。
【0058】
中空粒子の分散液の分散媒及び濃度は、液中で中空粒子が凝集や沈殿を生じることなく安定して分散していれば特に限定されない。
【0059】
分散媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセチルアセトンが挙げられる。中でも分散安定性の点で水が好ましい。
【0060】
分散液の濃度としては、固形分として0.01~40質量%が好ましい。ここで、分散液の濃度が0.01質量%未満だと、後述の無機化合物が被覆する効率が低下するおそれがある。また、焼成工程に供するための分散媒除去に時間がかかるおそれがある。逆に、40質量%を超えると、無機化合物の被覆の際に被覆のムラが生じたり、分散液の安定性が低下したりするおそれがある。分散液の濃度は、より好ましくは0.1~30質量%、更に好ましくは1~20質量%である。
【0061】
[第二工程]
中空粒子の分散液に、珪素を含む化合物の溶液と、アルカリ可溶の珪素以外の無機元素の化合物の水溶液とを添加することにより、中空粒子を無機化合物で被覆する。このとき、MOx分率(=MOx/(SiO+MOx))が0.05~0.67になるように添加することが好ましい。ここで、MOxは、珪素以外の無機元素の化合物を酸化物として表した時の質量百分率を、SiOは珪素を酸化物(SiO)として表した時の質量百分率を示す。なお、両者の合計を100質量%とする。
【0062】
MOx分率が0.05未満だと、単分散状態の改質中空粒子を得ることが困難となる。逆に、0.67を超えると、被覆層を形成することが困難となる。MOx分率は、より好ましくは0.15~0.45、更に好ましくは0.20~0.40である。
【0063】
本工程で、珪素を含む化合物の溶液と、珪素以外の無機元素の化合物の水溶液を連続的に添加しても断続的に添加してもよいが、両者を同時に添加することが好ましい。ここで、珪素を含む化合物の溶液とは、珪酸塩の溶液、酸性珪酸液、有機珪素化合物の溶液から選ばれる少なくとも一つである。
【0064】
珪酸塩としては、アルカリ金属珪酸塩、有機塩基の珪酸塩及びアンモニウム珪酸塩の少なくとも1種を含む珪酸塩が好ましい。アルカリ金属珪酸塩としては、例えば、珪酸ナトリウム(水ガラス)や珪酸カリウムが挙げられる。有機塩基としては、例えば、テトラエチルアンモニウム塩などの第4級アンモニウム塩や、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。アンモニウム珪酸塩及び有機塩基の珪酸塩には、アンモニウムシリケート、第4級アンモニウムシリケート、アミンシリケートといった珪酸塩が挙げられる。この他にも、珪酸液にアンモニア、第4級アンモニウム水酸化物、及びアミン化合物などを添加したアルカリ性溶液でもよい。
【0065】
酸性珪酸液としては、珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂で処理すること等によって、アルカリを除去して得られる珪酸液を用いることができる。特に、pH2~pH4で、液中の珪素分をSiOとして換算した濃度(以下、この「SiO換算濃度」を単に「SiO濃度」と表すことがある。)が約7質量%以下の酸性珪酸液が好ましい。
【0066】
有機珪素化合物としては、前述の式(3)の有機珪素化合物が好ましい。ところで、式(3)の有機珪素化合物において、nが0~3の化合物は親水性に乏しい。このため、予め、加水分解して、反応系に均一に混合できるようにすることが好ましい。加水分解には、周知の方法を採用できる。加水分解用触媒として、アルカリ金属の水酸化物、アンモニア水、アミン等の塩基性のものを用いた場合、加水分解後にこれらの塩基性触媒を除去して、酸性溶液にして用いることもできる。また、有機酸や無機酸などの酸性触媒を用いて加水分解物を調製した場合、加水分解後にイオン交換等によって酸性触媒を除去することが好ましい。なお、得られた有機珪素化合物の加水分解物は、水溶液の形態で使用することが望ましい。ここで、水溶液とは、加水分解物がゲルとして白濁した状態になく、透明性を有している状態を意味する。
【0067】
珪素以外の無機元素の化合物を酸化物(MOx)として表すと、この酸化物は、Al、B、TiO、ZrO、SnO、CeO、P、Sb、MoO、ZnO、及びWOを少なくとも1種含んでいる。また、珪素以外の無機元素の複合酸化物としては、例えば、TiO-Al、TiO-ZrOが挙げられる。中でも、Alは、シリカアルミナ(SiO-Al)として、被覆量の制御及び除去が容易であるので好適に使用できる。なお、アルカリ金属の酸化物、及びアルカリ土類金属の酸化物については、MOxとしては取り扱わない。
【0068】
このような珪素以外の無機元素の酸化物(MOx)の原料としては、アルカリ可溶の無機化合物や有機金属化合物が好ましい。
【0069】
アルカリ可溶の無機化合物としては、例えば、珪素以外の無機元素の酸化物を構成する金属又は非金属のオキソ酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、第4級アンモニウム塩を挙げられる。具体的には、アルミン酸ナトリウム、四硼酸ナトリウム、炭酸ジルコニルアンモニウム、アンチモン酸カリウム、スズ酸カリウム、アルミノ珪酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、硝酸セリウムアンモニウム、燐酸ナトリウム等が好適である。
【0070】
有機金属化合物としては、下記式(4)の有機金属化合物が好ましい。
【0071】
-MXa-n ・・・式(4)
但し、式中、MはAl、Fe、Ti、Zr、Sn、Ce、P、Sb、Mo、Zn、B、Wから選ばれる金属元素、Rは炭素数1~10の非置換又は置換炭化水素基で、互いに同一であっても異なっていてもよい。置換基としては、エポキシ基、アルコキシ基、(メタ)アクリロイロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミノ基、フェニルアミノ基が挙げられる。Xは炭素数1~4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、水素原子であり、aは2~5の整数、nは0~4の整数を示す。
【0072】
この有機金属化合物としては、具体的に、アルミニウムトリメトキシド、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリ-n-プロポキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ-n-ブトキシド、モノメトキシアルミニウムジエトキシド、モノエトキシアルミニウムジイソプロポキシド、モノイソプロポキシアルミニウムジ-sec-ブトキシド、ジメトキシアルミニウムモノエトキシド、ジエトキシアルミニウムモノイソプロポキシド、アルミニウムエチルアセトアセテートジメトキシド、アルミニウムエチルアセトアセテートジエトキシド、アルミニウムエチルアセトアセテートジイソプロポキシド、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロポキシド、メチルアルミニウムジメトキシド、メチルアルミニウムジエトキシド、メチルアルミニウムジイソプロポキシド、エチルアルミニウムジイソプロポキシド、ジメトキシアルミニウムクロリド、ジエトキシアルミニウムクロリド、ジイソプロポキシアルミニウムクロリド、ジイソプロポキシアルミニウムプロミド、ジメトキシアルミニウムヒドロキシド、ジイソプロポキシアルミニウムヒドロキシド、トリメトキシ鉄、トリエトキシ鉄、トリイソプロポキシ鉄、ジメトキシメチル鉄、ジエトキシイソプロピル鉄、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラn-プロポキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、トリメトキシメチルチタン、トリメトキシエチルチタン、トリメトキシプロピルチタン類、トリメトキシアリルチタン類、トリメトキシフェニルチタン類、トリメトキシ(アセチルアセテート)チタン、トリエトキシメチルチタン、トリエトキシエチルチタン、トリエトキシプロピルチタン類、トリメトキシビニルチタン、トリエトキシフェニルチタン類、トリプロポキシメチルチタン類、トリプロポキシエチルチタン類、トリプロポキシブチルチタン類、トリプロポキシフェニルチタン類、トリブトキシメチルチタン類、トリブトキシ(アセチルアセトナート)チタン類、ジメトキシジメチルチタン、ジメトキジジエチルチタン、ジメトキシジプロピルチタン類、ジメトキシジブチルチタン類、ジメトキシジ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシジメチルチタン、ジエトキシジエチルチタン、ジエトキシジプロピルチタン類、ジプロポキシジメチルチタン類、ジプロポキシジエチルチタン類、ジブトキシジメチルチタン類、ジブトキシジエチルチタン類、ジブトキシジ(アセチルアセトナート)チタン類、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、イソプロポキシ(2-エチルエキサンジオラート)チタン、ジ-n-ブトキシビス(トリエタノールアミナト)チタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジコニウム、テトラブトキシジルコニウム、トリメトキシメチルジルコニウム、トリメトキシエチルジルコニウム、トリメトキシプロピルジルコニウム類、トリメトキシブチルジルコニウム類、トリメトキシアリルジルコニウム類、トリメトキシフェニルジルコニウム、トリメトキシ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシメチルジルコニウム、トリエトキシエチルジルコニウム、トリエトキシプロピルジルコニウム類、トリエトキシビニルジルコニウム類、トリエトキシフェニルジルコニウム、トリプロポキシメチルジルコニウム類、トリプロポキシプロピルジルコニウム類、トリブトキシメチルジルコニウム類、ジメトキシジメチルジルコニウム、ジメトキシジエチルジルコニウム、ジメトキシジプロピルジルコニウム類、ジメトキシジフェニルジルコニウム、ジメトキシジ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシジメチルジルコニウム、ジエトキシジエチルジルコニウム、ジエトキシジプロピルジルコニウム類、ジプロポキシジメチルジルコニウム類、ジプロポキシジプロピルジルコニウム類、ジブトキシジメチルジルコニウム、ジブトキシジブチルジルコニウム類、テトラメトキシスズ、テトラエトキシスズ、テトライソプロポキシスズ、テトラブトキシスズ類、トリメトキシメチルスズ、トリメトキシエチルスズ、トリメトキシイソプロピルスズ、トリメトキシブチルスズ類、トリエトキシメチルスズ、トリエトキシイソプロピルスズ、トリイソプロポキシメチルスズ、トリイソプロポキシブチルスズ類、トリイソプロポキシフェニルスズ、ジメトキシジメチルスズ、ジメトキシジイソプロピルスズ、ジエトキシジエチルスズ、ジエトキシジブチルスズ類等が挙げられる。また、上記化合物群と同様に、セリウム、リン、アンチモン、モリブデン、亜鉛、ホウ素、及びタングステンのいずれかと、メトキシ基、エトキシ基、及びイソプロポキシル基のいずれかと、を有する金属アルコキシド等が挙げられる。
【0073】
本工程において、溶液添加の際の反応系は、アルカリ性雰囲気下であることが好ましい。すなわち、第一工程の中空粒子の分散液をアルカリ触媒等により、予めアルカリ性にしておいても良いし、アルカリ触媒を他の溶液とともに添加しても良いし、両者を併用して行っても良い。この反応系のpHは、8以上が好ましい。pHが8未満だと、被覆が十分でないおそれがある。pHは、より好ましくは8.5以上、更に好ましくは9以上である。pHの上限は、無機酸化物中空粒子自身が溶解されなければ限定されないが、例えば13.5程度である。pHの上限は、より好ましくは13以下、更に好ましくは12.5以下である。
【0074】
ここで、アルカリ触媒としては、アンモニア、アミン、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、第4級アンモニウム化合物、及びアミン系カップリング剤等の塩基性を示す化合物が挙げられる。
【0075】
また、この被覆工程における反応温度等の条件については、中空粒子に無機化合物が被覆でき、後の工程でこの無機化合物が除去できれば特に限定されない。ただし、設備能力や製造コストを鑑みた場合、常圧下、常温から溶媒の沸点未満の温度下で製造することが好ましい。例えば、溶媒が水の場合、反応温度は、好ましくは100℃未満、より好ましくは30~98℃である。また、溶液の添加時間は、好ましくは10~2900分、より好ましくは30~100分である。
【0076】
以下、この、無機化合物で被覆された中空粒子を単に「被覆中空粒子」と表すことがある。この被覆中空粒子は、必要に応じて、限外濾過膜やイオン交換樹脂等で洗浄して、アルカリ触媒等を除去してもよい。
【0077】
無機化合物の被覆量は、中空粒子の固形分100質量部に対し、固形分として10質量部以上が好ましい。なお、この被覆量は、被覆前後の粒子の分散液を所定量分取し、これを120℃で乾燥して得られる固形分量の差によって求められる。
【0078】
ここで、被覆量が10質量部未満だと、単分散状態の改質中空粒子を得ることが困難となる。逆に、被覆量が多い程、単分散状態の改質中空粒子が得られやすくなる。ただし、過剰な被覆量は、被覆の際の効率や、後述の第四工程での被覆物の除去効率が低下する原因となり、ひいては改質中空粒子の製造効率が低下する原因となる。このため、被覆量の上限は特にないが、例えば、500質量部程度である。被覆量は、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。
【0079】
無機化合物の被覆の厚みの平均値は、3nm以上が好ましい。ここで、平均被覆厚が3nm未満だと、単分散状態の改質中空粒子を得ることが困難となる。逆に、被覆の厚みが大きい程、単分散状態の改質中空粒子が得られやすくなる。ただし、過剰な被覆厚は、被覆の際の効率や、後述の第四工程での被覆物の除去効率が低下する原因となり、ひいては改質中空粒子の製造効率が低下する原因となる。このため、被覆厚の上限は特にないが、例えば、50nm程度である。平均被覆厚は、より好ましくは5nm以上、更に好ましくは8nm以上である。
【0080】
中空粒子は、以下に挙げる無機化合物のうち、少なくとも1種の無機化合物で被覆される。例えば、シリカアルミナ、シリカ酸化硼素、シリカチタニア、シリカジルコニア、シリカ酸化スズ、シリカ酸化セリウム、シリカ酸化リン、シリカ酸化アンチモン、シリカ酸化モリブデン、シリカ酸化亜鉛、シリカ酸化タングステン、シリカチタニアアルミナ、シリカチタニアジルコニア等が挙げられる。中でも、シリカアルミナは、後述の第三工程での焼成後に、粒子の形状が維持されやすいため好適である。
【0081】
これら無機化合物の組成は、前述の中空粒子に被覆できること、後述の第三工程の焼成によって中空粒子が緻密化できること、その後の第四工程にて、溶媒に懸濁して除去され、所望する改質中空粒子が得られることに適していることが望まれる。具体的には、前述のように、MOx分率(=MOx/(SiO+MOx))が0.05~0.67が好ましい。これは、詳細な理由は不明であるが、MOx分率がこの範囲にあれば、被覆された無機化合物が比較的多孔質なためか、焼成による中空粒子の緻密化、及び中空粒子からの除去が容易に行われると考えている。また、MOx分率がこの範囲にあれば、被覆のために添加した無機化合物のMOx分率との整合性も良く、被覆された無機化合物のMOx分率は、添加した無機化合物のMOx分率に概ね準ずる。なお、被覆された無機化合物の組成は、被覆前後の粒子の化学分析値の差によって求められる。
【0082】
無機化合物は、上述のように、中空粒子に被覆した後、焼成され、溶媒に懸濁して除去される。このため、焼成された無機化合物は、溶媒への高い分散性または溶解性を有することが好ましい。
【0083】
この無機化合物中のアルカリ金属の含有量は、アルカリ金属を酸化物として表した場合、この無機化合物を酸化物として表したものに対して、10質量%未満が好ましい。なお、アルカリ金属とは、Li、Na、K、Rb、Cs、Frを表す。
【0084】
ここで、アルカリ金属の含有量が10質量%以上の場合、無機化合物の種類や被覆量、アルカリ金属の含有量、及び後述の第三工程での焼成温度にもよるが、無機化合物の融点を降下させて、無機化合物と中空粒子とが固着したり、無機化合物自身が固着したりして、無機化合物を除去することが困難となるおそれがある。アルカリ金属含有量は、より好ましくは8質量%未満、更に好ましくは3質量%未満である。
【0085】
また、この無機化合物中のアルカリ土類金属の含有量は、アルカリ土類金属を酸化物として表した場合、この無機化合物を酸化物として表したものに対して、3質量%未満が好ましい。なお、アルカリ土類金属とは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raを表す。
【0086】
ここで、アルカリ土類金属の含有量が3質量%以上の場合、無機化合物の種類や被覆量、アルカリ土類金属の含有量、及び後述の第三工程での焼成温度にもよるが、無機化合物の融点を降下させて、無機化合物自身と中空粒子とが固着したり、無機化合物自身が固着したりして、無機化合物を除去することが困難となるおそれがある。アルカリ土類金属含有量は、より好ましくは1質量%未満、更に好ましくは0.1質量%未満である。
【0087】
[第三工程]
次に、被覆中空粒子を、300~1200℃で焼成する。この範囲で焼成することにより、粒子(外殻)を緻密化させる。これにより、粒子の細孔容積が減少し、粒子外殻の密度が高くなる。焼成温度が300℃未満であると、中空粒子の緻密化が十分に行われないおそれがある。逆に、1200℃を超えると、中空粒子自身や、被覆された無機化合物と中空粒子とが強く凝集して、中空粒子として再分散することが困難となる。このため、改質中空粒子として所望する分散安定性が得られないおそれや、中空粒子としての形状が保てないおそれがある。
【0088】
ところで、粒子(外殻)が緻密化されていることは、簡便的に、次のようにして判断できる。
【0089】
まず、被覆中空粒子と、この被覆無機化合物に相当する無機化合物とを、各々、第三工程と同様の条件下で焼成する。この両者の密度差によって、中空粒子焼成品相当の密度が求められる。これと、出発物質である第一工程の中空粒子との密度の差を求めることで緻密化が判断できる。
【0090】
この密度は、上記の焼成品を各々、乳鉢で解砕した後、全自動ピクノメーター(例えば、カンタクローム・インスツルメンツ製 Ultrapyc1200e)を使用して、気体置換法により求めることができる。また、第一工程の中空粒子については、その分散液を常温減圧下で溶媒を除去して、120℃で乾燥させたものを乳鉢で解砕した後、同様に測定して求める。ただし、より精度よく密度差を求めるには、第一工程の中空粒子自身と、被覆した無機化合物を後述の第四工程にて除去した改質中空粒子自身とを比較することが好ましい。
【0091】
粒子の細孔容積の減少についても、簡便的に上記の方法と同様にして、N吸着法による細孔容積の差を求めることで判断できる。ただし、こちらも、より精度よく細孔容積の差を求めるには、第一工程の中空粒子自身と、後述の第四工程にて被覆した無機化合物を除去した改質中空粒子自身とを比較することが好ましい。
【0092】
以下、この、焼成された被覆中空粒子を単に「焼成中空粒子」と表すことがある。
【0093】
ところで、この焼成工程では、中空粒子が無機化合物で被覆された状態で焼成される。そのため、その焼成温度、中空粒子の材質、及び中空粒子に被覆した無機化合物の材質にもよるが、上述のような固着の防止、及び中空粒子の形状を維持するために、焼成温度は、中空粒子の融点よりも低く、更には中空粒子に被覆した無機化合物の融点よりも低いことが好ましい。焼成温度は、好ましくは400~1000℃、より好ましくは500~800℃である。
【0094】
この焼成工程における焼成条件については、中空粒子が緻密化でき、後の工程で、被覆した無機化合物が除去できれば特に限定されない。ただし、焼成に供する際は、焼成の効率や安全性の確保から、被覆中空粒子は、予め、分散媒を除去、更には乾燥しておくことが望ましい。また、焼成設備についても特に限定されないが、熱を均一にかけるために、流動焼成炉やロータリーキルン等を使用することが好ましい。
【0095】
[第四工程]
次に、第三工程で得られた焼成中空粒子を溶媒に懸濁して、被覆した無機化合物を除去し、粒子を再分散させる。これによって、改質中空粒子が得られる。
【0096】
懸濁に使用する溶媒種は、被覆した無機化合物を除去でき、改質中空粒子を分散できれば特に限定されないが、水又は酸性水溶液が好ましい。酸性水溶液を使用すると、酸によって無機化合物が溶解され、効率的に除去できる。酸としては、従来公知の無機酸及び有機酸が使用可能である。中でも、無機化合物を除去する上で作業性が高いため塩酸が好ましい。
【0097】
酸性水溶液のpHは、4以下が好ましい。ここで、pHが4よりも大きいと、酸による無機化合物の溶解が効率よく発揮できないおそれがある。pHの下限は特にないが、例えば0.0である。pHが極端に低いと、シリカの表面電位が低下するため、再分散後に改質中空粒子の分散安定性を保つことができず、凝集することがある。また、酸を除去するための洗浄効率が低くなるおそれがある。pHは、より好ましくは3未満、更に好ましくは2未満である。
【0098】
懸濁に使用する溶媒の量は、被覆した無機化合物を除去でき、改質中空粒子を分散できれば特に限定されないが、好ましくは、焼成中空粒子の質量の10倍量以上、より好ましくは100倍量以上である。
【0099】
被覆した無機化合物は、懸濁液を加温して行うと効果的に除去できる。その温度としては、溶媒の沸点未満で行うことが好ましい。
【0100】
また、除去効率を上げるために、懸濁液を撹拌したり、循環させたりしても良く、両者を併用しても良い。更には、超音波等を使用しても良い。
【0101】
改質中空粒子と無機化合物との分離は、遠心分離や限外濾過等、公知の方法で分離できる。例えば、上述のように、酸によって溶解された被覆無機化合物を含む改質中空粒子の分散液は、限外濾過等の公知の洗浄方法により洗浄することができる。洗浄によって、溶解した無機化合物の元素を除去し、分散安定性の高い改質無機酸化物中空粒子の分散液が得られる。
【0102】
また、この分散液は、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の少なくとも一方と接触させることによっても、溶解した無機化合物の元素あるいはアルカリ金属イオン等を除去できる。なお、洗浄する際は、加温して行うと効果的に洗浄することができる。
【0103】
上述の製造方法によって得られる改質中空粒子は、第一工程で用いた原料としての中空粒子よりも、外殻の密度が、0.10×10kg/m以上大きくなる。この外殻の密度の差は、好ましくは0.20×10kg/m以上、より好ましくは0.30×10kg/m以上である。なお、中空粒子の外殻の密度(ρs)は、改質中空粒子の場合と同様に、前述の式(1)で求められる外殻の屈折率(n)を用いて、Grandstone-Daleの式から求められる式(2)から得られる。
【0104】
[被膜形成用塗布液]
本発明の粒子は、被膜形成用の塗布液に適用できる。この塗布液は、粒子とマトリックス形成成分と有機溶媒とを含む。これ以外に、重合開始剤、レベリング剤、界面活性剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0105】
次に、この塗布液に含まれる主要成分について説明する。
【0106】
塗布液中の粒子の濃度は、含まれる粒子やマトリックス形成成分等の固形分の合計量に対して、固形分として5~95質量%が好ましい。
【0107】
ここで、粒子の濃度が5質量%未満であると、被膜の屈折率が十分に低減できないおそれがある。逆に、95質量%より多いと、被膜にクラックが発生するおそれ、基材との密着性が不十分となるおそれ、硬度や強度、透明性、ヘイズ等が悪化するおそれがある。この粒子の濃度は、より好ましくは10~85質量%、更に好ましくは20~70質量%である。
【0108】
マトリックス形成成分としては、有機樹脂系マトリックス形成成分が好適である。例えば、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等のマトリックスを形成する成分が挙げられる。
【0109】
紫外線硬化性樹脂としては、(メタ)アクリル酸系樹脂、γ‐グリシルオキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニル系樹脂等がある。
【0110】
熱硬化性樹脂としては、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂等がある。
【0111】
熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴム等がある。
【0112】
これらの樹脂は、2種以上の共重合体や変性体でもよく、組み合わせて使用してもよい。また、これらの樹脂は、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂であってもよい。
【0113】
これらの樹脂を形成する成分は、粒子の分散性、塗膜の容易さから、モノマーやオリゴマーが好ましい。
【0114】
塗布液中のマトリックス形成成分の濃度は、含まれる粒子やマトリックス形成成分等の固形分の合計量に対して、固形分として5~95質量%が好ましい。
【0115】
ここで、マトリックス形成成分の濃度が5質量%未満であると、被膜化が困難である。また、被膜が得られたとしても、被膜にクラックが発生するおそれ、基材との密着性が不十分となるおそれ、硬度や強度、透明性、ヘイズ等が悪化するおそれがある。逆に、95質量%よりも多いと、粒子の量が少ないため、屈折率が十分に低減できないおそれがある。このマトリックス形成成分の濃度は、より好ましくは15~90質量%、更に好ましくは30~80質量%である。
【0116】
有機溶媒としては、粒子を均一に分散でき、マトリックス形成成分や重合開始剤等の添加剤を溶解あるいは分散できるものが用いられる。中でも、親水性溶媒や極性溶媒が好ましい。親水性溶媒としては、例えば、アルコール類、エステル類、グリコール類、エーテル類等が挙げられる。極性溶媒としては、例えば、エステル類、ケトン類等が挙げられる。
【0117】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等がある。
【0118】
エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3-メトキシブチル、酢酸2-エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールモノアセテート等がある。
【0119】
グリコール類としては、エチレングリコール、ヘキシレングリコール等がある。
【0120】
エーテル類としては、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等がある。
【0121】
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン等がある。
【0122】
極性溶媒としては、他に、炭酸ジメチル、トルエン等がある。
【0123】
これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0124】
添加剤としては、反射防止膜形成に従来使用可能なものが任意に使用できる。例えば、マトリックス形成成分の重合促進や造膜性を向上させるために、重合開始剤、レベリング剤等が使用される。
【0125】
重合開始剤としては、例えば、ビス(2、4、6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2、6-ジメトキシベンゾイル)2、4、4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシメチル-2-メチルフェニル-プロパン-1-ケトン、2、2-ジメトキシ-1、2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0126】
レベリング剤としては、例えば、アクリル系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤、アクリルシリコーン系レベリング剤等が挙げられる。これらのレベリング剤にはフッ素基を有するものが好ましく使用される。
【0127】
これらの添加剤の塗布液中の濃度は、被膜化した際に固形分として含まれるものは、便宜上、マトリックス形成成分として計上し、被膜化後はマトリックスとして計上する。
【0128】
塗布液の固形分濃度(塗布液に対する、粒子の固形分とマトリックス形成成分の固形分とを合計した固形分の割合)は、0.1~60質量%が好ましい。
【0129】
ここで、塗布液の固形分濃度が0.1質量%未満であると、塗料の濃縮安定性が低いため、塗工が困難となり、均一な被膜が得られ難いおそれがある。また、ヘイズあるいは外観が悪くなるため、生産性、製造信頼性等が低下するおそれがある。逆に、60質量%より高いと、塗布液の安定性が悪くなるおそれがある。また、塗布液の粘度が高くなるため、塗工性が低下するおそれがある。更に、被膜のヘイズが高くなって、表面粗さが大きくなり、強度が不十分となるおそれがある。塗布液の固形分濃度は、より好ましくは1~50質量%である。
【0130】
[被膜付基材の製造方法]
上述の塗布液を用いて、被膜を基材に形成する。得られる被膜は、視認性の観点から、透明であることが好ましい。
【0131】
具体的には、基材上に塗布液を塗布した後、乾燥及び紫外線照射を行い、基材上に被膜を形成する。塗布液の塗布方法としては、基材に被膜を形成できるものであれば特に制限されない。例えば、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、スリットコーター印刷法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法が採用できる。乾燥は、例えば、50~150℃程度に加熱し、溶媒を蒸発させて除去する。その後、紫外線を照射し、樹脂成分の重合を促進させて被膜の硬度化を図る。被膜は、主にマトリックス(樹脂)成分と粒子とで形成される。
【0132】
被膜では、塗布液中の粒子とマトリックス形成成分の固形分の割合が、そのまま被膜中の粒子成分とマトリックスの割合となる。上述のように、塗布液中の添加剤の内、固形分として残存するものはマトリックスとして計上する。
【0133】
被膜の膜厚は、用途に応じて適宜選択できる。例えば、反射防止膜であれば、80~350nmが好ましい。
【0134】
ここで、膜厚が80nm未満であると、膜の強度、耐擦傷性が不十分となる場合がある。また、膜が薄すぎて十分な反射防止性能が得られないことがある。逆に、膜厚が350nmより厚いと、反射防止性能が低下する場合がある。また、収縮が非常に大きい場合には、クラックが発生するおそれもある。この膜厚は、より好ましくは85~220nm、更に好ましくは90~110nmである。
【0135】
ところで、平均粒子径が大きな粒子は、被膜の膜厚よりも大きいために、完全に包まれない場合がある。本発明の粒子は、上述のような反射防止膜以外にも、透明性や、高い硬度と強度とを備えるため、半導体の実装用途やハードコート用途にも適用できる。
【0136】
被膜の屈折率は、1.10~1.45が好ましい。
【0137】
ここで、被膜の屈折率が1.10未満のものは得ることが困難である。逆に、屈折率が1.45を越えると基材の屈折率あるいは必要に応じて形成される被膜の下層に形成される他の膜の屈折率によっても異なるが反射防止性能が不十分となることがある。この被膜の屈折率は、より好ましくは1.15~1.35である。
【0138】
被膜付基材の光透過率は、85.0%以上が好ましい。
【0139】
ここで、光透過率が85.0%未満であると、表示装置等において画像の鮮明度が不十分となるおそれがある。この光透過率は、より好ましくは90.0%以上である。
【0140】
また、被膜付基材のヘイズは、好ましくは3%以下、より好ましくは0.3%以下である。
【0141】
また、被膜付基材の反射率は、好ましくは2.5%以下、より好ましくは1.5%以下である。
【0142】
被膜の強度(耐擦傷性)は、#0000のスチールウールを用い、荷重1500g/cmにて摺動させて評価する。この摺動回数が少なくとも100回の時点で膜表面に筋状の傷が認められないことが好ましく、500回の時点で傷が認められないことがより好ましく、1000回の時点で傷が認められないことが更に好ましい。
【0143】
被膜の鉛筆硬度は、2H以上が好ましい。
【0144】
ここで、2H未満では、反射防止膜として硬度が不十分である。この鉛筆硬度は、より好ましくは3H以上、更に好ましくは4H以上である。
【0145】
基材は、公知のものが使用可能である。例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)等の透明な樹脂基材が好ましい。これらの基材は、上述の塗布液によって形成される透明被膜との密着性が優れ、硬度、強度等に優れた被膜付基材を得ることができる。このため、薄い基材に好適に用いられる。基材の厚みに特に制限はないが、好ましくは10~100μm、より好ましくは20~80μmである。
【0146】
また、このような基材上に、他の被膜が形成された被膜付基材を用いこともできる。他の被膜としては、例えば、従来公知のプライマー膜、ハードコート膜、高屈折率膜、導電性膜等が挙げられる。
【0147】
以下、本発明の実施例を説明する。なお、被膜形成用塗布液については、有機珪素化合物で表面処理された粒子の使用を例示する。
【0148】
[実施例1]
〈中空粒子(1)の分散液の準備(第一工程)〉
本実施例1の出発物質である「無機酸化物を外殻に含む中空粒子」(1)は、上述の特許文献2の実施例3を参考に製造したものである。
【0149】
まず、シリカゾル(日揮触媒化成(株)製 Cataloid SI-550、平均粒子径5nm、SiO濃度20質量%)15gと純水985gとを混合し、80℃に加温した。この混合液のpHは10.5であった。
【0150】
この混合液に、珪酸ナトリウム水溶液(SiO濃度1.17質量%)12.9kgと、液中のアルミニウム分をAlとして換算した濃度(以下、この「Al換算濃度」を単に「Al濃度」と表すことがある。)が0.83質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液12.9kgとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは、添加直後、12.5に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して、固形分濃度20質量%のシリカアルミナ核粒子の分散液を得た。
【0151】
この核粒子の分散液500gに純水1720gを加えて98℃に加温した。この温度を保持しながら、珪酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得た珪酸液(SiO濃度3.5質量%)2.1kgを添加して、シリカアルミナ粒子の分散液を得た。これを限外濾過膜で洗浄して、固形分濃度を13質量%に調整した。
【0152】
このシリカアルミナ粒子の分散液500gに純水1125gを加え、これに、濃度35.5質量%の濃塩酸を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。
【0153】
次に、これに、pH3.0の塩酸水溶液10kgと純水5kgとを加えながら、溶解したアルミニウム塩を限外濾過膜で分離、洗浄した。次いで、限外濾過膜を用いて、溶媒をエタノールに置換して、固形分濃度20質量%の第1のシリカ層を形成したシリカ系中空粒子の分散液を得た。
【0154】
このシリカ系中空粒子の分散液1500gと、純水500g、エタノール1750g、及び濃度28質量%のアンモニア水626gとを混合した。この混合液を35℃に加温した後、テトラエトキシシラン(SiO濃度28質量%)73gを添加し、第1のシリカ被覆層を形成したシリカ系中空粒子の表面をテトラエトキシシランの加水分解重縮合物で被覆して、第2のシリカ層を形成した。
【0155】
次に、これに純水1000gを加えて、エバポレーターで固形分濃度を5質量%まで濃縮した。次いで、濃度15質量%のアンモニア水を加えてpH10.0とした。これを、オートクレーブで180℃、2時間加熱して、中空粒子(1)すなわち無機酸化物(シリカ)を外殻に含む中空粒子(1)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、5質量%であった。この粒子は、球状で、一次粒子径の平均値は75nm、外殻の厚みは10nmであった。また、この粒子の屈折率は1.23であり、外殻の密度は1.82×10kg/mであった。
【0156】
〈中空粒子の無機化合物による被覆(第二工程)〉
中空粒子(1)の分散液5.0kgに、濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを12.3に調整した。次に、これを98℃に加温し、珪酸液(SiO濃度3.5質量%)5.6kgと、アルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度1.0質量%)9.6kgとを同時に、60分かけて添加した。その間、反応液の温度を98℃に保持した。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して、シリカアルミナで被覆された被覆中空粒子(1)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0157】
〈被覆中空粒子の焼成(第三工程)〉
被覆中空粒子(1)の分散液1.0kgを110℃で24時間かけて乾燥させた後、800℃で6時間焼成を行い、被覆中空粒子(1)の焼成粉(焼成中空粒子(1))を得た。
【0158】
〈被覆無機化合物の除去(第四工程)〉
50℃に加温したpH3.0の塩酸水溶液10kgに、焼成中空粒子(1)100gを加え、この温度を保ちながら3時間撹拌して、被覆無機化合物の除去を行った。次いで、限外濾過膜を用いて、pH3.0の塩酸水溶液40kgと純水40kgとを加えながら、溶解した無機化合物を分離、除去した。得られた水分散液の内1000gを陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、次いで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換した。その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換し、更に洗浄を行って、本願発明の改質中空粒子(1)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、10質量%であった。
【0159】
中空粒子(1)、被覆中空粒子(1)、及び改質中空粒子(1)について、以下の方法で測定した。
【0160】
改質中空粒子(1)の各製造工程における特徴を表1に示す(以下の実施例も同様。なお、比較例については表2に示す)。また、改質中空粒子(1)の性状を表3に示す(以下の実施例も同様。なお、比較例については表4に示す)。
【0161】
粒子の物性を画像解析法により測定した。
【0162】
具体的には、まず、粒子の分散液を0.01質量%に希釈した後、電子顕微鏡用銅セルのコロジオン膜上で乾燥させた。次に、これを電解放出型透過電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製 HF5000)にて、倍率100万倍で写真撮影した。得られた写真投影図(SEM像、TEM写真)の任意の1000個の粒子について、以下の方法(1)~(5)にて測定した。
【0163】
(1)一次粒子径の平均値(D
SEM像の画像処理から粒子の面積を求め、その面積から円相当径を求めた。その円相当径の平均値を一次粒子径の平均値とした。
【0164】
(2)空洞径、空洞割合
TEM写真から粒子の外殻内側の空洞の面積を求め、その面積から円相当径を求め、これを空洞径とした。また、この空洞径の平均値をDとした。
【0165】
同様に、上記の粒子の円相当径及び空洞径から、粒子体積に対する空洞体積の割合を求め、その平均を粒子に占める空洞の割合とした。
【0166】
(3)被覆厚
TEM写真から被覆中空粒子(1)の外殻外側の被覆部の厚みを求め、その平均値を被覆厚とした。
【0167】
(4)粒子形状
SEM像から粒子の短径、長径の比率を求めた。ここで、長径/短径の比の平均値が1.2未満であれば球状とした。
【0168】
(5)空洞形状、空洞が一つである粒子割合
TEM写真から粒子の外殻内側の空洞の短径、長径の比率を求めた。ここで、長径/短径の比の平均値が1.2未満であれば球状とした。また、粒子内の空洞の個数を測定し、その割合を求めた。
【0169】
(6)粒子の屈折率(n
中空粒子(1)又は改質中空粒子(1)の分散液をエバポレーターに採り分散媒を蒸発させた。次に、これを120℃で乾燥し、粉末とした。ガラス板上に、屈折率が既知の標準屈折液を2、3滴滴下し、これに上記粉末を混合した。この操作を種々の標準屈折液で行い、混合液が透明になった時の標準屈折液の屈折率を粒子の屈折率とした。
【0170】
(7)粒子の外殻の密度(ρs)
前述の方法で求めた、粒子の一次粒子径の平均値(D)、外殻内側の空洞径の平均値(D)、粒子の屈折率(n)を用いて、前述の式(1)にて粒子の外殻屈折率(ns)を求め、前述の式(2)により粒子の外殻の密度(ρs)を求めた。
【0171】
(8)動的光散乱法による平均粒子径(D
動的光散乱粒度分布測定装置(Particle Sizing Systems製 NICOMP N3000)を使用して、動的光散乱粒子径を測定した。
【0172】
具体的には、改質中空粒子(1)の水分散液0.3gに、pH11.0の水酸化ナトリウム水溶液を加えて10gに希釈し、上記粒子径測定装置を用いて平均粒子径を測定した。
【0173】
この値と、上述の一次粒子径の平均値(D)を用いて、比(D/D)を求めた。
【0174】
(9)炭素含有量
粒子(1)中の炭素含有量は、粒子(1)の分散液を120 ℃ で乾燥して、400℃で焼成したものを炭素硫黄分析装置(HORIBA製 EMIA-320V)を用いて測定した。
【0175】
(10)29Si-NMRによるQ1、Q2、Q3、Q4及びその比率
専用ガラスセルに粒子(1)のMIBK分散液を入れ、基準物質としてテトラメチルシランを5質量%添加し、NMR装置( 日本電子(株)製 JNM-EX270型、解析ソフト 日本電子(株)製Excalibur) にて測定した。より具体的には、シングルパルスノンデカップリング法にて、29Si-NMRスペクトル法における化学シフト-78~-88ppmに現れるピークの面積(Q)と、化学シフト-88~-98ppmに現れるピークの面積(Q)と、化学シフト-98~-108ppmに現れるピークの面積(Q)と、化学シフト-108~-117ppmに現れるピークの面積(Q)において、比((Q+Q)/ΣQ)、比((Q+Q+Q)/Q)を求めた。
【0176】
(11)N吸着法による細孔容積
中空粒子(1)又は改質中空粒子(1)の分散液をエバポレーターにて乾燥させ、105℃で乾燥させた。その粉体1gをセルに取り、窒素吸着装置(マイクロトラック・ベル(株)製 BELSORP-miniII)を用いて窒素を吸着させ、細孔容積を測定した。
【0177】
(12)シリカ含有量
粒子の分散液を120℃で12時間乾燥した。これを蛍光X線分析装置((株)日立ハイテクサイエンス製 EA600VX)を使用して、シリカ(SiO)の含有量を求めた。
【0178】
(13)アルカリ金属、その他元素の含有量
粒子中のアルカリ金属の含有量、Fe、Ti、Zn、Pd、Ag、Mn、Co、Mo、Sn、Al、Zrの含有量、Cu、Ni、Crの含有量、及びU、Thの含有量、については、粒子をフッ酸で溶解し、加熱してフッ酸を除去した後、必要に応じて純水を加え、得られた溶液についてIC P 誘導結合プラズマ発光分光質量分析装置((株)島津製作所製 ICPM-8500)を用いて測定した。
【0179】
〈被覆形成用塗布液の製造〉
改質中空粒子(1)の水分散液を、限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換して、固形分濃度10質量%の粒子(1)のエタノール分散液を得た。
【0180】
次いで、この粒子(1)のエタノール分散液100gに3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)3gを添加し、30℃で24時間、加熱処理を行った。その後、エバポレーターにて溶媒をメチルイソブチルケトン(MIBK)に置換し、固形分濃度5質量%の粒子(1)のMIBK分散液を得た。
【0181】
この粒子(1)のMIBK分散液42gに、マトリックス形成成分として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製 DPE-6A、固形分濃度100質量%)1.26g、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(新中村化学(株)製 A-HD-N、固形分濃度100質量%)0.14g、撥水化材用反応性シリコンオイル(信越化学(株)製 X-22-174DX、固形分濃度100質量%)0.06g、シリコーン変性ポリウレタンアクリレート(日本合成化学工業(株)製 紫光UT-4314、固形分濃度30質量%)0.44g及び光重合開始剤(IGM Resins B.V.製 Omnirad TPO、固形分濃度100質量%)0.1gと、有機溶媒として、イソプロピルアルコール50g、メチルイソブチルケトン9g及びイソプロピルグリコール11gとを混合して、固形分濃度3質量%の被膜形成用塗布液(1)を得た。
【0182】
〈反射防止用透明被膜付基材の製造〉
ハードコート塗料(日揮触媒化成(株)製 ELCOM HP-1004)を、TACフィルム(パナック(株)製 FT-PB80UL-M、厚さ 80μm、屈折率 1.51)にバーコーター法(#18)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した。その後、300mJ/cmの紫外線を照射して硬化させてハードコート膜を作製した。ハードコート膜の膜厚は8μmであった。
【0183】
次に、被膜形成用塗布液をバーコーター法(#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した。その後、N雰囲気下で400mJ/cmの紫外線を照射して硬化させて反射防止用透明被膜付基材(1)を得た。
【0184】
反射防止用透明被膜付基材を以下の項目について測定した。結果を表5に示す(以下の実施例も同様。なお、比較例については表6に示す)。
【0185】
(14)膜厚、屈折率、反射率
エリプソメーター(ULVAC社製、EMS-1)を使用して、反射防止用透明被膜付基材の膜厚、膜屈折率、波長550nmの光線の反射率を測定した。
【0186】
(15)全光線透過率、ヘイズ
ヘーズメーター(スガ試験機(株)製)を使用して、反射防止用透明被膜付基材の全光線透過率、ヘイズを測定した。
【0187】
(16)密着性
反射防止用透明被膜付基材の表面に、ナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作った。これにセロファンテープを接着し、次いで、セロファンテープを剥離した時に被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の3段階に分類することによって密着性を評価した。
残存升目の数90個以上 :◎
残存升目の数85~89個:○
残存升目の数84個以下 :△
【0188】
(17)耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重1500g/cmで100回摺動した。摺動後の膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価した。
評価基準;
筋状の傷が認められない :◎
筋状の傷が僅かに認められる:○
筋状の傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0189】
(18)鉛筆硬度
鉛筆硬度は、JIS K 5400に準じて、鉛筆硬度試験器で測定した。即ち、透明被膜表面に対して45度の角度に鉛筆をセットし、所定の荷重を負荷して一定速度で引っ張り、傷の有無を観察した。
【0190】
[実施例2]
〈第一工程〉
シリカアルミナゾル(日揮触媒化成(株)製 Cataloid USBB-120、平均粒子径25nm、固形分濃度20質量%)30gと純水1.97gとを混合し、98℃に加温した。これに、濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、混合液のpHを11.0に調整した。
【0191】
この混合液に、珪酸ナトリウム水溶液(SiO濃度3.0質量%)1.45kgと、アルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度1.0質量%)1.45kgとを同時に添加した。次いで、これに、珪酸ナトリウム水溶液(SiO濃度3.0質量%)3.98kgと、アルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度1.0質量%)1.33kgとを同時に添加した。その間、反応液の温度を98℃に保持した。反応液のpHは、添加直後、12.0に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。
【0192】
次に、これを限外濾過膜で洗浄して、固形分濃度を13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し、シリカアルミナ粒子の分散液を得た。
【0193】
このシリカアルミナ粒子の分散液500gに純水1125gを加え、これに、濃度35.5質量%の濃塩酸を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。
【0194】
次に、これに、pH3.0の塩酸水溶液10kgと純水5kgとを加えながら、溶解したアルミニウム塩を限外濾過膜で分離、洗浄して、固形分濃度5質量%のシリカ系中空粒子の分散液を得た。次いで、濃度15質量%のアンモニア水を加えてpH10.0とした。これを、オートクレーブで150℃、3時間加熱処理して、中空粒子(2)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、5質量%であった。この粒子は、球状で、一次粒子径の平均値は75nm、外殻の厚みは10nmであった。また、この粒子の屈折率は1.21であり、外殻の密度は1.75×10kg/mであった。
【0195】
〈第二工程〉
第一工程で得られた中空粒子(2)の分散液を使用し、珪酸液とアルミン酸ナトリウム水溶液とを90分かけて添加した。これ以外は実施例1と同様にして、シリカアルミナで被覆された被覆中空粒子(2)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0196】
〈第三工程〉
被覆中空粒子(2)の分散液を使用して、実施例1と同様に焼成中空粒子(2)を得た。
【0197】
〈第四工程〉
焼成中空粒子(2)を使用して、実施例1と同様に改質中空粒子(2)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、10質量%であった。
【0198】
〈透明被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材の製造〉
次に、この改質中空粒子(2)の水分散液を使用して、実施例1と同様に被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0199】
[実施例3]
第三工程にて、被覆中空粒子(2)の分散液を使用し、330℃で6時間焼成したこと以外は実施例1と同様にして、焼成中空粒子(3)を得た。
【0200】
その後の工程は、焼成中空粒子(3)を使用して、実施例1と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子の水分散液、被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0201】
[実施例4]
第三工程にて、被覆中空粒子(2)の分散液を使用し、1180℃で6時間焼成したこと以外は実施例1と同様にして、焼成中空粒子(4)を得た。
【0202】
その後の工程は、焼成中空粒子(4)を使用して、実施例1と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子の水分散液、被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0203】
[実施例5]
第二工程にて、中空粒子(2)の分散液4.0kgを使用し、珪酸液の量を3.0kg、アルミン酸ナトリウム水溶液の量を0.6kgとして、これらを30分かけて添加したこと以外は実施例1と同様にして、シリカアルミナで被覆された被覆中空粒子(5)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0204】
第三工程では、被覆中空粒子(5)の分散液を使用し、500℃で3時間焼成したこと以外は実施例1と同様にして、焼成中空粒子(5)を得た。
【0205】
その後の工程は、焼成中空粒子(5)を使用して、実施例1と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子の水分散液、被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0206】
[実施例6]
第二工程にて、中空粒子(2)の分散液1.0kgを使用し、珪酸液の量を2.3kg、アルミン酸ナトリウム水溶液の量を16.2kgとして、これらを90分かけて添加したこと以外は実施例1と同様にして、シリカアルミナで被覆された被覆中空粒子(6)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0207】
第三工程では、被覆中空粒子(6)の分散液を使用し、900℃で10時間焼成したこと以外は実施例1と同様にして、焼成中空粒子(6)を得た。
【0208】
第四工程では、50℃に加温したpH1.0の塩酸水溶液40kgに、焼成中空粒子(6)100gを加え、この温度を保ちながら3時間撹拌して、被覆無機化合物の除去を行った。次いで、限外濾過膜を用いて、pH1.0の塩酸水溶液160kgと純水160kgとを加えながら、溶解した無機化合物を分離、除去した。以降、実施例1と同様にイオン交換及び洗浄を行って、固形分濃度10質量%の改質中空粒子(6)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、10質量%であった。
【0209】
その後の工程は、粒子(6)の水分散液を使用して、実施例1と同様に被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0210】
[実施例7]
第二工程にて、中空粒子(2)の分散液1.0kgを使用し、珪酸液の量を0.54kg、アルミン酸ナトリウム水溶液の量を0.93kgとして、これらを90分かけて添加したこと以外は実施例1と同様にして、シリカアルミナで被覆された被覆中空粒子(7)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0211】
第三工程では、被覆中空粒子(7)の分散液を使用し、500℃で3時間焼成したこと以外は実施例1と同様にして、焼成中空粒子(7)を得た。
【0212】
その後の工程は、焼成中空粒子(7)を使用して、実施例1と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子の水分散液、被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0213】
[実施例8]
第二工程にて、中空粒子(2)の分散液1.0kgを使用し、珪酸液の量を4.62kg、アルミン酸ナトリウム水溶液の量を7.97kgとして、これらを2900分かけて添加したこと以外は実施例1と同様にして、シリカアルミナで被覆された被覆中空粒子(8)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0214】
第三工程では、被覆中空粒子(8)の分散液を使用し、900℃で10時間焼成したこと以外は実施例1と同様にして、焼成中空粒子(8)を得た。
【0215】
その後の工程は、焼成中空粒子(8)を使用して、実施例6と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子の水分散液、被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0216】
[実施例9]
第二工程にて、中空粒子(2)の分散液を使用し、珪酸液の代わりに珪酸ナトリウム水溶液(SiO濃度3.5質量%)を使用して、これとアルミン酸ナトリウム水溶液とを90分かけて添加したこと以外は実施例1と同様にした。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄した。その後、NaOとして10質量%の水酸化ナトリウム水溶液0.56kgを添加して、シリカアルミナで被覆された被覆中空粒子(9)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0217】
第三工程では、被覆中空粒子(9)の分散液を使用し、1180℃で6時間焼成したこと以外は実施例1と同様にして、焼成中空粒子(9)を得た。
【0218】
その後の工程は、焼成中空粒子(9)を使用して、実施例1と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子の水分散液、被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0219】
[実施例10]
第一工程にて、オートクレーブでの加熱処理を250℃で19時間行ったこと以外は実施例2と同様にして、中空粒子(10)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、5質量%であった。この粒子の一次粒子径の平均値は75nm、外殻の厚みは10nmであった。また、この粒子の屈折率は1.22であり、外殻の密度は1.82×10kg/mであった。
【0220】
その後の工程は、中空粒子(10)の分散液を使用して、実施例1と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子の水分散液、被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0221】
[実施例11]
〈第一工程〉
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製 Cataloid SI-550、平均粒子径5nm、SiO濃度20質量%)25gと純水980gとを混合し、80℃に加温した。これに、濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、混合液のpHを9.0に調整した。
【0222】
この混合液に、珪酸ナトリウム水溶液(SiO濃度3.0質量%)3.25kgと、アルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度1.0質量%)3.25kgとを同時に添加した。次いで、これに、珪酸ナトリウム水溶液(SiO濃度3.0質量%)14.7kgと、アルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度1.0質量%)4.9kgとを同時に添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。反応液のpHは、添加直後、11.0に上昇し、その後、殆ど変化しなかった。
【0223】
次に、これを限外濾過膜で洗浄して、固形分濃度を13質量%に調整した。その後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し、シリカアルミナ粒子の分散液を得た。
【0224】
このシリカアルミナ粒子の分散液500gに純水1125gを加え、これに、濃度35.5質量%の濃塩酸を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。
【0225】
次に、これに、pH3.0の塩酸水溶液10kgと純水5kgとを加えながら、溶解したアルミニウム塩を限外濾過膜で分離、洗浄して、固形分濃度5質量%のシリカ系中空粒子の分散液を得た。次いで、濃度15質量%のアンモニア水を加えてpH10.0とした。これを、オートクレーブで200℃、3時間加熱処理して、中空粒子(11)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、5質量%であった。この粒子は、球状で、一次粒子径の平均値は20nm、外殻の厚みは5nmであった。また、この粒子の屈折率は1.21であり、外殻の密度は1.75×10kg/mであった。
【0226】
〈第二工程〉
中空粒子(11)の分散液5.0kgに、濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを11.5に調整した。次にこれを80℃に加温し、珪酸液(SiO濃度3.5質量%)4.44kgとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度1.0質量%)7.66kgとを同時に、60分かけて添加した。その間、反応液の温度を80℃に保持した。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して、シリカアルミナで被覆された被覆中空粒子(11)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0227】
第三工程では、被覆中空粒子(11)の分散液を使用し、500℃で6時間焼成したこと以外は実施例1と同様にして、焼成中空粒子(11)を得た。
【0228】
その後の工程は、焼成中空粒子(11)を使用して、実施例1と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子の水分散液、被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0229】
[実施例12]
〈第一工程〉
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製 Cataloid SI-50、平均粒子径25nm、SiO濃度48質量%)21gと純水979gとを混合し、98℃に加温した。これに、濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを12.5に調整した。
【0230】
この混合液に、珪酸ナトリウム水溶液(SiO濃度0.75質量%)31.8kgと、アルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度0.25質量%)31.8kgとを同時に添加した。次いで、これに、珪酸ナトリウム水溶液(SiO濃度3.0質量%)10.5kgと、アルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度1.0質量%)3.5kgとを同時に添加した。その間、反応液の温度を98℃に保持した。反応液のpHは、添加直後、11.5に下降し、その後、殆ど変化しなかった。
【0231】
次に、これを限外濾過膜で洗浄して、固形分濃度を25質量%にした。その後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し、シリカアルミナ粒子の分散液を得た。
【0232】
このシリカアルミナ粒子の分散液500gに純水1125gを加え、これに、濃度35.5質量%の濃塩酸を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。
【0233】
次に、これに、pH3.0の塩酸水溶液30kgと純水5kgとを加えながら、溶解したアルミニウム塩を限外濾過膜で分離、洗浄して、固形分濃度5質量%のシリカ系中空粒子の分散液を得た。次いで、濃度15質量%のアンモニア水を加えてpH10.0とした。これを、オートクレーブで195℃、48時間加熱処理して、中空粒子(12)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、5質量%であった。この粒子は、球状で、一次粒子径の平均値は100nm、外殻の厚みは8nmであった。また、この粒子の屈折率は1.15であり、外殻の密度は1.77×10kg/mであった。
【0234】
〈第二工程〉
中空粒子(12)の分散液5.0kgに、濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを12.3に調整した。次にこれを98℃に加温し、珪酸液(SiO濃度3.5質量%)4.8kgとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度1.0質量%)8.3kgとを同時に、180分かけて添加した。その間、反応液の温度を98℃に保持した。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して、シリカアルミナで被覆された被覆中空粒子(12)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0235】
その後の工程は、被覆中空粒子(12)の分散液を使用して、実施例1と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子(12)の水分散液を得た。
〈被覆形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材の製造〉
粒子(12)の水分散液を使用して、実施例1と同様に固形分濃度5質量%の粒子(12)のMIBK分散液を得た。
【0236】
粒子(12)のMIBK分散液を33g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを1.67g、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートを0.19g、メチルイソブチルケトンを17.6g使用したこと以外は実施例1と同様にして、固形分濃度3質量%の被膜形成用塗布液(12)を得た。
【0237】
その後、被膜形成用塗布液(12)を使用して、実施例1と同様に反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0238】
[実施例13]
〈第一工程〉
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製 Cataloid SI-80P、平均粒子径80nm、SiO濃度40質量%)25gと純水80gとを混合し、98℃に加温した。これに、濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを12.5に調整した。
【0239】
この混合液に、珪酸ナトリウム水溶液(SiO濃度15質量%)76kgと、アルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度5.0質量%)76kgとを同時に添加した。次いで、これに、珪酸ナトリウム水溶液(SiO濃度3.0質量%)95.2kgと、アルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度1.0質量%)31.7kgとを同時に添加した。その間、反応液の温度を98℃に保持した。反応液のpHは、12.5から殆ど変化しなかった。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、これを限外濾過膜で洗浄して、固形分濃度を13質量%にした後、目開き10μmのカプセルフィルターで濾過し、シリカアルミナ粒子の分散液を得た。
【0240】
このシリカアルミナ粒子の分散液500gに純水1125gを加え、これに、濃度35.5質量%の濃塩酸を滴下してpH0.5とし、脱アルミニウム処理を行った。
【0241】
次に、これに、pH3.0の塩酸水溶液30kgと純水20kgとを加えながら、溶解したアルミニウム塩を限外濾過膜で分離、洗浄して、固形分濃度5質量%のシリカ系中空粒子の分散液を得た。次いで、濃度15質量%のアンモニア水を加えてpH10.0とした。これを、オートクレーブで200℃、3時間加熱処理して、中空粒子(13)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、5質量%であった。この粒子は、球状で、一次粒子径の平均値は1000nm、外殻の厚みは30nmであった。また、この粒子の屈折率は1.07であり、外殻の密度は1.77×10kg/mであった。
【0242】
〈第二工程〉
中空粒子(13)の分散液1.0kgに、濃度1質量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pHを12.3に調整した。次にこれを98℃に加温し、珪酸液(SiO濃度0.3質量%)2.13kgとアルミン酸ナトリウム水溶液(Al濃度0.1質量%)3.15kgとを同時に、90分かけて添加した。その間、反応液の温度を98℃に保持した。添加終了後、反応液を室温まで冷却し、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度20質量%の被覆中空粒子(13)の分散液を得た。
【0243】
その後の工程は、被覆中空粒子(13)の分散液を使用して、実施例1と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子(13)の水分散液を製造し、各特性を評価した。
【0244】
ここで、得られた改質中空粒子(13)の平均粒子径は、検討している被膜付基材の膜厚に比べて大きいものであった。このため、反射防止膜とした時の性能評価において、他の実施例の粒子と横並びに比較するには妥当性に欠けると考えた。このため、ここでは、敢えて被膜形成用塗布液及び被膜付基材の製造は行わなかった。
【0245】
[実施例14]
〈第一工程〉
実施例1と同様にして、固形分濃度を13質量%に調整したシリカアルミナ粒子の分散液を得た。
【0246】
このシリカアルミナ粒子の分散液500gに純水1125gを加え、これに、濃度35.5質量%の濃塩酸を滴下してpH0.3とし、脱アルミニウム処理を行った。
【0247】
次に、これに、pH3.0の塩酸水溶液50kgと純水50kgとを加えながら、溶解したアルミニウム塩を限外濾過膜で分離、洗浄した。この脱アルミニウム処理と、限外濾過膜による洗浄とを合計3回繰り返し、固形分濃度5質量%のシリカ系中空粒子の分散液を得た。
【0248】
次いで、濃度15質量%のアンモニア水を加えてpH10.0とした。これを、オートクレーブで150℃、3時間加熱処理して、中空粒子(14)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、5質量%であった。この粒子は、球状で、一次粒子径の平均値は75nm、外殻の厚みは10nmであった。また、この粒子の屈折率は1.21であり、外殻の密度は1.74×10kg/mであった。
【0249】
〈第二工程〉
中空粒子(14)の分散液を使用し、珪酸液とアルミン酸ナトリウム水溶液とを90分かけて添加したこと以外は実施例1と同様にして、シリカアルミナで被覆された被覆中空粒子(14)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0250】
〈第三工程〉
被覆中空粒子(14)の分散液を使用したこと以外は実施例1と同様にして、焼成中空粒子(14)を得た。
【0251】
〈第四工程〉
50℃に加温したpH1.0の塩酸水溶液10kgに、焼成中空粒子(14)100gを加え、この温度を保ちながら3時間撹拌して、被覆無機化合物の除去を行った。次いで、限外濾過膜を用いて、pH3.0の塩酸水溶液100kgと純水100kgとを加えながら、溶解した無機化合物を分離、除去した。これに、濃度35.5質量%の濃塩酸を滴下してpH0.3とし、撹拌した。次いで、限外濾過膜を用いて、pH3.0の塩酸水溶液50kgと純水50kgとを加えながら、溶解したアルミニウム塩等の無機化合物を更に分離、除去した。得られた水分散液の内1000gを陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、次いで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換した。その後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 ダイヤイオンSK1B)400gを用い、80℃で10時間イオン交換し、更に洗浄を行って、改質中空粒子(14)の水分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、10質量%であった。
【0252】
〈透明被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材の製造〉
粒子(14)の水分散液を使用して、実施例1と同様に被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0253】
[実施例15]
濃度2.1質量%の臭化セチルトリメチルアンモニウム水溶液2.4kgをセパラブルフラスコに入れて窒素ガスを封入し、80℃に加温した。これに、スチレン18gを加えて10分撹拌した後、濃度10質量%の2.2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩水溶液10gを加えて4時間撹拌した。次に、これを限外濾過膜で洗浄して、固形分濃度10質量%のポリスチレン粒子の分散液を得た。
【0254】
この分散液100gに、純水350g、エタノール450g、及び濃度28質量%のアンモニア水100gを混合した。この混合液を35℃に加温した後、テトラエトキシシラン(SiO濃度28質量%)41gを加え、3時間撹拌して、ポリスチレン粒子の表面をテトラエトキシシランの加水分解重縮合物で被覆した。
【0255】
次に、これに純水1000gを加えて、エバポレーターで固形分濃度を5質量%まで濃縮した後、n-オクタン281gとn-オクチルジメチルシリルクロリド7.9gとを加え、撹拌した。次いで、オートクレーブにこの溶液を移し、400℃、圧力6.8MPaで1時間加熱処理して脱コアを行った後、限外濾過膜を用いて洗浄した。次いで、濃度15質量%のアンモニア水を加えてpH10.0とした。これを、オートクレーブで195℃、48時間加熱処理して、中空粒子(15)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、5質量%であった。この粒子は、球状で、平均粒子径は102nm、外殻の厚みは13nmであった。また、この粒子の屈折率は1.22であり、外殻の密度は1.79×10kg/mであった。
【0256】
その後の工程は、中空粒子(15)の分散液を使用して、実施例14と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子(15)の水分散液を製造した。
【0257】
その後、粒子(15)の水分散液を使用して、実施例12と同様に被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0258】
[比較例1]
透明被膜形成用塗布液の製造において、固形分濃度を10質量%に調整した中空粒子(2)の分散液を使用して、実施例1と同様に透明被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0259】
[比較例2]
第三工程にて、被覆中空粒子(1)の分散液の代わりに中空粒子(2)の分散液を使用して、実施例1と同様に焼成中空粒子(R2)を得た。
【0260】
第四工程では、焼成中空粒子(R2)を使用して、実施例1と同様に被覆無機化合物の除去を試みた。しかしながら、粒子は再分散せず、沈降したままであった。このため、被膜形成用塗布液及び被膜付基材の製造は行わなかった。
【0261】
[比較例3]
比較例2と同様にして、焼成中空粒子(R2)を得た。
【0262】
その後、第四工程は実施せず、この焼成中空粒子100gを純水10kgに加え、ビーズミルを用いて粒子の分散を試みた。このビーズミル処理品を電子顕微鏡写真にて画像解析したところ、中空粒子の外殻が破壊され、粒子が割れた状態であり、中空粒子としての形状を維持している粒子の個数割合は10%未満であった。このため、被膜形成用塗布液及び被膜付基材の製造は行わなかった。
【0263】
[比較例4]
第三工程にて、被覆中空粒子(2)の分散液を使用し、250℃で6時間焼成したこと以外は実施例1と同様にして、焼成中空粒子(R4)を得た。
【0264】
その後の工程は、焼成中空粒子(R4)を使用して、実施例1と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子の水分散液、被膜形成用塗布液、反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0265】
[比較例5]
第三工程にて、被覆中空粒子(CP2)の分散液を使用し、1280℃で6時間焼成したこと以外は実施例1と同様にして、焼成中空粒子(R5)を得た。
【0266】
第四工程では、焼成中空粒子(R5)を使用して、実施例1と同様に被覆無機化合物の除去を試みた。しかしながら、粒子は再分散せず、沈降したままであった。このため、被膜形成用塗布液及び被膜付基材の製造は行わなかった。
【0267】
[比較例6]
実施例2と同様にして、焼成中空粒子(2)を得た。
【0268】
その後、第四工程は実施せず、この焼成中空粒子100gを純水10kgに加え、ビーズミルを用いて粒子の分散を試みた。このビーズミル処理品を電子顕微鏡写真にて画像解析したところ、中空粒子の外殻が破壊され、粒子が割れた状態であり、中空粒子としての形状を維持している粒子の個数割合は10%未満であった。このため、被膜形成用塗布液及び被膜付基材の製造は行わなかった。
【0269】
[比較例7]
第二工程にて、中空粒子(2)の分散液4.0kgを使用し、珪酸液の量を6.5kg、アルミン酸ナトリウム水溶液の量を0.7kgとして、これらを90分かけて添加したこと以外は実施例1と同様にして、シリカアルミナで被覆された被覆中空粒子(R7)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0270】
その後の工程は、被覆中空粒子(R7)の分散液を使用して、実施例1と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子の水分散液、被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0271】
[比較例8]
第二工程にて、中空粒子(2)の分散液4.0kgを使用し、珪酸液の量を2.0kg、アルミン酸ナトリウム水溶液の量を16.3kgとして、これらを90分かけて添加したこと以外は実施例1と同様にして、シリカアルミナで被覆された被覆中空粒子(R8)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0272】
その後の工程は、被覆中空粒子(R8)の分散液を使用して、実施例1と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子の水分散液、被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0273】
[比較例9]
第二工程にて、中空粒子(2)の分散液5.0kgを使用し、珪酸液の量を0.4kg、アルミン酸ナトリウム水溶液の量を0.7kgとして、これらを30分かけて添加したこと以外は実施例1と同様にして、シリカアルミナで被覆された被覆中空粒子(R9)の分散液を得た。この分散液の固形分濃度は、20質量%であった。
【0274】
その後の工程は、被覆中空粒子(R9)の分散液を使用して、実施例1と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子の水分散液、被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0275】
[比較例10]
第三工程にて、230℃で6時間焼成したこと以外は実施例1と同様にして、焼成中空粒子(R10)を得た。
【0276】
その後の工程は、焼成中空粒子(R10)を使用して、実施例1と同様に固形分濃度10質量%の改質中空粒子の水分散液、被膜形成用塗布液、及び反射防止用透明被膜付基材を製造し、各特性を評価した。
【0277】
【表1】
【0278】
【表2】
【0279】
【表3】
【0280】
【表4】
【0281】
【表5】
【0282】
【表6】