(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B41J 29/393 20060101AFI20240919BHJP
B41J 29/42 20060101ALI20240919BHJP
B65H 29/62 20060101ALI20240919BHJP
B65H 43/04 20060101ALI20240919BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
B41J29/393 101
B41J29/42 F
B65H29/62 Z
B65H43/04
G03G21/00 500
(21)【出願番号】P 2020203652
(22)【出願日】2020-12-08
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水主村 清治
(72)【発明者】
【氏名】松井 規明
(72)【発明者】
【氏名】横谷 貴司
(72)【発明者】
【氏名】町田 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】本橋 瞬
(72)【発明者】
【氏名】及川 敏史
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 正朗
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-119668(JP,A)
【文献】特開2015-031531(JP,A)
【文献】特開2019-084770(JP,A)
【文献】特開2017-039283(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0138765(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/393
B41J 29/42
G03G 21/00
B65H 43/04
B65H 29/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるシートに画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段によって画像が形成されたシートを検査して、当該シートが成果物不良であるか否かを判定する検査手段と、
前記画像形成手段により画像を形成された第1シートが成果物不良であると前記検査手段が判定した場合
、前記第1シートに対応する画像を前記第1シートとは別のシートに形成するリカバリ処理を実行する
制御手段と、
前記第1シートが成果物不良であると前記検査手段が判定した場合に、前記リカバリ処理の実行の前に前記画像形成手段の画像形成条件を調整する調整動作を実行することを選択するための第1の選択部と、前記調整動作を実行せずに前記リカバリ処理を実行することを選択するための第2の選択部と、を含む選択画面を表示する表示手段と、を備える
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項2】
前記検査手段は、シートが成果物不良である場合には当該成果物不良のタイプを判定し、
前記制御手段は、前記第1シートが成果物不良であると前記検査手段が判定し
、かつ、前記第1の選択部が選択された場合、当該成果物不良のタイプに応じた前記調整動作を実行することを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記画像形成手段により画像を形成されたシートが排出される第1排出部及び第2排出部を備え、
前記制御手段は、前記検査手段により成果物不良ではないと判定されたシートを前記第1排出部に排出し、前記検査手段により成果物不良であると判定されたシートを前記第2排出部に排出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1シートが成果物不良であると前記検査手段が判定した場合、前記画像形成手段による画像の形成を停止させ、前記第1シート、及び、前記第1シートに後続し、かつ、前記画像形成手段による画像の形成を停止させた際に既に前記画像形成手段によって画像が形成されている総ての第2シートを前記第2排出部に排出することを特徴とする請求項
3に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記表示手段は、前記総ての第2シートの内の成果物不良が生じている数が閾値以上である場合に前記選択画面を表示し、前記総ての第2シートの内の成果物不良が生じている数が前記閾値未満である場合は前記選択画面を表示しない、ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記成果物不良は、前記画像形成手段によってシートに形成された画像の不良と、シートの不良と、を含むことを特徴とする請求項1から
5のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記画像形成手段によって画像が形成されたシートを撮像して画像データを出力する撮像手段をさらに備え、
前記検査手段は、前記画像データに基づきシートが成果物不良であるか否かを判定することを特徴とする請求項1から
6のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項8】
搬送されるシートに画像を形成する画像形成手段と、
前記画像形成手段によって画像が形成されたシートについて、画像の形成位置ズレが発生したか否かを検査する検査手段と、
前記画像形成手段により画像を形成された第1シートに画像の形成位置ズレが発生していると前記検査手段が判定した場合、前記第1シートに対応する画像を前記第1シートとは別のシートに形成するリカバリ処理を実行する制御手段と、
前記第1シートに画像の形成位置ズレが発生していると前記検査手段が判定した場合に、前記リカバリ処理の実行の前に前記画像形成手段の画像形成位置を調整する調整動作を実行することを選択するための第1の選択部と、前記調整動作を実行せずに前記リカバリ処理を実行することを選択するための第2の選択部と、を含む選択画面を表示する表示手段と、を備える
ことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成果物不良が生じた場合にリカバリ処理を行う画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、成果物不良が生じた場合にリカバリ処理を行う画像形成装置を開示している。なお、成果物不良とは、形成された画像の画像不良と、搬送の際のシートの折れ等、シートに生じた不良とを含む。つまり、成果物不良とは、画像形成装置の出力である画像が形成されたシート、つまり、成果物に生じた任意の不良を意味する。また、リカバリ処理とは、成果物不良となったシートに形成された画像から画像形成を再開する処理を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、リカバリ処理を行っても、画像形成の再開後、再度、成果物不良が生じ得る。具体的には、成果物不良は、シートの折れ等の突発性の不良と、画素形成装置の温度上昇等により生じ得る継続性の不良とに分類され得る。一般的に、継続性の不良を抑えるためには、画像形成装置の調整動作を行う必要がある。これに対して突発性の不良は単発的に生じるため、画像形成装置の調整動作は不要である。したがって、継続性の不良が生じている場合、特許文献1の構成では、リカバリ処理を行っても、再度、成果物不良が生じる可能性が高く、画像形成に要する時間が長くなり得る。
【0005】
本発明は、成果物不良が生じた場合に画像形成に要する時間が長くなることを抑える技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によると、画像形成システムは、搬送されるシートに画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段によって画像が形成されたシートを検査して、当該シートが成果物不良であるか否かを判定する検査手段と、前記画像形成手段により画像を形成された第1シートが成果物不良であると前記検査手段が判定した場合、前記第1シートに対応する画像を前記第1シートとは別のシートに形成するリカバリ処理を実行する制御手段と、前記第1シートが成果物不良であると前記検査手段が判定した場合に、前記リカバリ処理の実行の前に前記画像形成手段の画像形成条件を調整する調整動作を実行することを選択するための第1の選択部と、前記調整動作を実行せずに前記リカバリ処理を実行することを選択するための第2の選択部と、を含む選択画面を表示する表示手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、成果物不良が生じた場合に画像形成に要する時間が長くなることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態による画像形成システムの構成図。
【
図4】一実施形態による現像ステーションの構成図。
【
図5】一実施形態によるプリントジョブの管理テーブルを示す図。
【
図10】一実施形態による制御部が実行する処理のフローチャート。
【
図11】一実施形態による制御部が実行する処理のフローチャート。
【
図15】一実施形態による制御部が実行する処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
本実施形態による画像形成システムは、成果物不良を検出すると、リカバリ処理を行う前に当該成果物不良の発生を抑えるための調整動作を実行し、調整動作の完了後にリカバリ処理を行う。これにより、成果物不良が生じても画像形成に要する時間が長くなることを抑える。なお、上述した様に、成果物不良が突発性の不良である場合、調整動作は基本的には不要である。したがって、本実施形態では、発生した成果物不良が、継続性の不良である否かを判定する処理を設け、継続性の不良と判定される場合にリカバリ処理を行う。しかしながら、成果物不良を検出すると、常にリカバリ処理を行う構成とすることもできる。以下、本実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施形態による画像形成システムを示している。
図1によると、画像形成装置100と、ホストコンピュータ101と、検査装置150は、ネットワーク105を介して相互に通信可能に構成される。ネットワーク105は、例えば、有線又は無線のLAN(ローカルエリアネットワーク)や、WAN(ワイドエリアネットワーク)であり得る。まず、画像形成装置100の制御部110について説明する。通信コントローラ111は、ネットワーク105を介する通信の制御を行う。不揮発メモリ112は、制御プログラム等、画像形成装置100の電源がオフとなっても記憶すべきプログラムやデータ等を格納する。CPU114は、制御プログラムを実行し、画像形成装置100の全体を制御する。なお、その際、CPU114は、RAM113をワークエリアとして使用する。HDD115は、画像データや各種設定データなどの大容量のデータを一時的あるいは長期的に格納する目的で使用される記憶デバイスである。通信ポート116は、検査装置150との通信処理を行う。制御部110の各機能ブロックは、システムバス117を介して互いに接続される。さらに、システムバス117は、操作パネル120及びプリンタエンジン130にも接続される。
【0012】
ホストコンピュータ101は、画像形成装置100に画像を形成させる場合、プリントジョブを作成して画像形成装置100の制御部110に送信する。制御部110は、ホストコンピュータ101からプリントジョブを受信すると、当該プリントジョブに従いプリンタエンジン130を制御してシートに画像を形成する。プリンタエンジン130がシートに画像を形成するための各部材(ハードウェア構成)については
図2及び
図3を用いて後述するが、当該部材は、撮像ユニット131を有している。撮像ユニット131は、画像形成されたシートを撮像し、撮像したシートの画像データを検査装置150に送信する。操作パネル120は、例えば、タッチパネルを有し、ユーザが画像形成装置100を操作するためのユーザインタフェースを提供する。なお、操作パネル120は、画像形成装置100の状態をユーザに表示する。
【0013】
なお、
図1において、撮像ユニット131は、画像データを、直接、検査装置150に送信する構成となっているが、画像データを、プリンタエンジン130及び通信ポート116を介して検査装置150に送信する構成であっても良い。また、撮像ユニット131は、プリンタエンジン130及び通信コントローラ111を介し、ネットワーク105経由で検査装置150に画像データを送信する構成とすることもできる。また、
図1において、制御部110は、通信ポート116を介して検査装置150と通信可能に構成されているが、通信ポート116を設けず、ネットワーク105のみを介して検査装置150と通信する構成とすることもできる。
【0014】
図2及び
図3は、画像形成装置100の構成図である。画像形成装置100は、シートに画像を形成する画像形成ユニット200(
図2)と、シートの搬送方向において画像形成ユニット200の下流側に設けられる撮像ユニット131と、スタッカ240と、フィニッシャ250(
図3)と、を備えている。
【0015】
まず、画像形成ユニット200について説明する。現像ステーション204Y、204M、204C及び204Kは、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナー像を形成して中間転写ベルト208に転写する。なお、各色のトナー像を重ねて中間転写ベルト208に転写することでフルカラーのトナー像を中間転写ベルト208に形成することができる。現像ステーション204Y、204M、204C及び204Kの構成は同様であり、その構成を
図4に示す。感光体2041は、画像形成時、図の反時計回り方向に回転駆動される。帯電ローラ2042は、感光体2041の表面を一様な電位に帯電させる。露光装置2043は、帯電され、回転される感光体2041を光で主走査方向に走査することで、感光体2041に静電潜像を形成する。なお、主走査方向とは感光体2041の回転軸と平行な方向である。また、感光体2041の周方向を副走査方向と呼ぶ。現像ローラ2044は、現像バイアス電圧を出力することで感光体2041の静電潜像にトナーを付着させ、これにより、感光体2041にトナー像を形成する。なお、トナーは、トナー容器2045から供給される。一次転写ローラ2045は、一次転写バイアス電圧を出力することで、感光体2041のトナー像を中間転写ベルト208に転写する。
【0016】
図2に戻り、中間転写ベルト208は、画像形成時、図の時計回り方向に回転駆動される。従って、中間転写ベルト208のトナー像は、二次転写ローラ209の対向位置に搬送される。二次転写ローラ209は、二次転写バイアス電圧を出力することにより、中間転写ベルト208のトナー像を、カセット201又はカセット202から搬送パス203に沿って搬送されてきたシートに転写する。トナー像の転写後、シートは定着ユニット211に搬送される。定着ユニット211は、シートを加熱・加圧することでトナー像をシートに定着させる。定着ユニット211によりトナー像が定着されたシートは位置214に向けて搬送される。なお、シートの種類によっては、定着ユニット213による更なる定着が必要であり、この様なシートは、定着ユニット213を介して位置214に搬送される。一方、定着ユニット213による更なる定着が不要なシートは、搬送パス212を介して位置214に搬送される。
【0017】
シートの片面のみに画像を形成する場合、シートは、位置214から位置215に搬送され、下流側の撮像ユニット131(
図3)に搬送される。一方、シートの両面に画像を形成する場合、シートは、位置214を介して反転パス216に搬送され、その後、搬送パス217を介して、再度、二次転写ローラ209の対向位置に搬送される。その後、両面に画像が形成されたシートは、位置215を介して撮像ユニット131に搬送される。以下の説明において、両面に画像を形成する場合に、最初に画像が形成されるシートの面を第1面と表記し、最後に画像が形成されるシートの面を第2面と表記する。片面のみに画像を形成する場合には、第1面に画像が形成され、第2面には画像が形成されない。
【0018】
図3に進み、撮像ユニット131に搬送されたシートは、搬送パス233を介してスタッカ240に搬送される。撮像ユニット131は、撮像部231及び232を有する。撮像部231は、シートの一方の面を撮像し、撮像部232は、シートの他方の面を撮像する。撮像部231及び232が撮像したシート面の画像データは、
図1に示す様に、検査装置150に送信される。検査装置150は、画像データに基づき、成果物不良、つまり、シートに形成された画像の画像不良や、シートのそのものに生じた不良を判定し、判定結果を画像形成装置100の制御部110にフィードバックする。
【0019】
スタッカ240は、排出トレイであるエスケープトレイ246を有する。エスケープトレイ246は、検査装置150によって成果物不良と判定されたシートの排出先となる。シートをエスケープトレイ246に出力する場合、シートは、搬送パス244及び搬送パス247を経由してエスケープトレイ246に排出される。また、スタッカ240は、多数のシートを積載可能なスタックトレイ241を有する。スタックトレイ241にシートを積載する場合、スタッカ240に搬送されたシートは、反転パス249に搬送された後、搬送パス244及び245を介してスタックトレイ241に排出される。一方、下流側のフィニッシャ250にシートを搬送する場合、当該シートは、搬送パス244及び搬送パス248を搬送される。
【0020】
フィニッシャ250は、ユーザの指定に応じて、ステープル処理、パンチ(穴あけ)処理、綴じ処理等を行う。フィニッシャ250での処理後、シートは、排紙トレイ251、排紙トレイ252及び中綴じ製本トレイ258のいずれかに排出される。
【0021】
図5は、制御部110が管理するプリントジョブの管理テーブルを示している。制御部110は、プリントジョブを受信した際、プリントジョブの内容に基づき管理テーブルのエントリ(行)を追加する。
図5のジョブIDフィールドには、プリントジョブを受けた際に制御部110が当該プリントジョブに割り当てた当該プリントジョブの識別子が格納される。シート番号フィールドには、各プリントジョブにおいて画像を形成するシートに対して画像の形成順に割り当てた番号が格納される。なお、制御部110は、管理テーブルのエントリを、シートの番号順(昇順)で追加する。カセットフィールドは、対応するシートが格納されているカセット201又はカセット202を示す情報が格納される。ページ番号フィールドには、画像のページ番号が格納される。例えば、両面印刷の場合には、第1面及び第2面のそれぞれにページ番号が割り当てられ、片面印刷の場合には、第1面のみにページ番号が割り当てられ、第2面のページ番号は"なし"になる。検査結果フィールドには、検査装置150で検査されたシートの検査結果が格納される。なお、プリントジョブを受信してエントリを追加した際の検査結果フィールドの初期値は"なし"である。そして、検査装置150によって成果物不良と判定されたシートの検査結果フィールドには"NG"が格納され、成果物不良と判定されなかったシートの検査結果フィールドには"OK"が格納される。ポインタ310は、次にカセット201又は202から給送するシートを示している。制御部110は、ポインタ310が示すエントリのシートを給送すると、ポインタ310が示すエントリを、次のエントリ(
図5では1つ下のエントリ)に進める。
【0022】
続いて、検査装置150が行う処理について説明する。検査装置150は、予め設定された検査情報に従い、画像形成装置100から送られてきた画像データを解析することで成果物不良が生じているか否かを判定する。以下では、検査の一例について説明する。
図6は、撮像ユニット131が撮像した画像を示している。なお、
図6(A)は、第1面の画像であり、
図6(B)は、第2面の画像を示している。
図6の参照符号410、421及び422は、検査情報が示す検査エリアである。検査装置150は、検査情報に従い検査エリア410内のバーコードを読み取れるか否かを判定する。バーコードを読み取ることができない場合、検査装置150は成果物不良と判定する。バーコードを読み取ることができた場合、検査装置150は、検査情報に従い検査エリア421及び検査エリア422それぞれの中にある数値(文字列)を画像認識により判定する。なお、画像形成装置100は、検査エリア421及び検査エリア422に同じ数値を印刷している。検査エリア421及び検査エリア422から画像認識により判定された数値が異なる場合、検査装置150は、成果物不良と判定する。これに対し、検査エリア410内のバーコードを読み取ることができ、かつ、検査エリア421及び検査エリア422内の数値が一致する場合、検査装置150は、成果物が正常と判定する。
【0023】
なお、
図6で説明した検査は一例であり、検査装置150は、様々なタイプの成果物不良を判定することができる。成果物不良のタイプの例は、例えば、シートにおける画像形成位置のズレ(形成位置ズレ)や、シートの重複、シート抜け、色ズレ、色味ズレ等である。なお、例えば、画像を形成するために使用した画像データと、撮像ユニット131で撮像したシートの画像データとを比較することで成果物不良を判定する場合、制御部110は、画像を形成するために使用した画像データも検査装置150に送信する。また、検査装置150は、1つのタイプの成果物不良のみならず、複数のタイプの成果物不良を個別に判定することもできる。各タイプの成果物不良を判定するために検査装置150が実行する処理の内容は、上述した様に、検査情報として予め検査装置150及び画像形成装置100に設定されている。
【0024】
図7は、形成位置ズレの成果物不良が生じたと検査装置150が判定した場合に、画像形成装置100が実行する形成位置調整動作で使用する調整用画像を示している。なお、
図7は、シートの第1面のみを示しているが、同じ画像がシートの第2面にも形成される。
図7に示す様に、調整用画像は、シートの所定の位置に形成される4つのマーク820を有する。本例においてマークは、
図7のD3~D10の長さがそれぞれ1cmとなる様に形成されているものとする。撮像ユニット131は、調整用画像が形成されたシートの第1面及び第2面を撮像し、撮像した画像データを検査装置150に送信する。検査装置150は、画像形成装置100から受信する画像データに基づき、搬送方向とは直交する方向のシートの長さD1と、搬送方向のシートの長さD2との2つの長さを判定する。さらに、検査装置150は、画像形成装置100から受信する画像データに基づきマーク820を判定し、シートの第1面における8つの長さD3~D10を判定する。さらに、検査装置150は、シートの第2面においても、第1面と同様に第2面に形成された4つのマークを判定して8つの長さを判定する。つまり、検査装置は、合計18個の長さを判定する。検査装置150は、判定した18個の長さを画像形成装置100に送信する。
【0025】
制御部110は、検査装置150から受信する18個の長さに基づき形成位置ズレを低減するための補正情報を求め、この補正情報をRAM113に格納する。以下では、補正情報と、当該補正情報に基づく形成位置ズレを低減するための画像データの変換について
図8及び
図9を用いて説明する。なお、
図8及び
図9において、太線の四角形の枠は、シートの辺を示している。また、
図8及び
図9においては左上の角を原点とし、図の左右方向をX方向とし、上下方向をY方向とする。なお、左から右に向かうにつれてXの値が増加し、上から下に向かうにつれてYの値が増加するものとする。X方向は、露光装置2043による走査方向(主走査方向)に対応する。また、Y方向は、副走査方向に対応する。
図8(A)は、検査装置150から受信するD1~D10の長さにより求められる4つの点C1~C4を示している。点C1の座標は(D3,D4)であり、点C2の座標は(D1-D7,D8)であり、点C3の座標は(D5,D2-D6)であり、点C4の座標は(D1-D9,D2-D10)である。
【0026】
まず、点C1と点C2とを結ぶ直線を点C1と点C3を結ぶ直線に対して直角にするための直角補正を行う。
図8(B)に示す様に、点C1と点C2を結ぶ直線の中央位置を基準にして、点C1~点C4のそれぞれが点C5~点C8となる様に主走査方向の各走査における画像の書き出し位置を求めることで直角補正を行う。続いて、点C7と点C8を結ぶ直線を点C5と点C7を結ぶ直線に対して直角にするための台形補正を行う。
図8(C)に示す様に、点C7と点C8を結ぶ直線の中央位置を基準にして、点C7及び点C8が、それぞれ、点C9及び点C10となるように副走査方向の倍率を求めることで台形補正を行う。続いて、
図8(D)に示す様に、主走査方向と副走査方向の画像の長さを理想的な長さにするために、画像の中心を基準にして点C5、点C6、点C9及び点C10が、それぞれ、点C11~点C14となるように倍率補正を行う。なお、本例において、長さD3~D10は1cmであるため、主走査方向と副走査方向の画像の理想的な長さは、それぞれ、D1及びD2より2cmだけ短い長さである。
【0027】
続いて、
図9(A)に示す様に、点C11を回転軸として、点C11と点C12を結ぶ直線がX方向と平行になる様に回転させ、点C12~点C14のそれぞれが点C15~点C17となるように斜行を補正する。最後に、点C11、点C15、点C16、点C17を結ぶ長方形の中心がシートの中心となる様に、書き出し位置を補正する。
【0028】
制御部110は、主走査方向の各走査における画像の書き出し位置や、副走査方向の倍率や、倍率補正の倍率や、斜行補正における回転角度等を補正情報としてRAM113に格納する。そして、画像形成時、制御部110は、補正情報に基づき画像形成条件を設定し、かつ、画像データの変換を行う。
【0029】
図10は、プリントジョブを受信した際に制御部110が実行する処理のフローチャートである。なお、
図10の例において、検査装置150は、画像の形成位置ズレを判定するものとする。また、上述した様に、プリントジョブの受信により制御部110は、
図5の管理テーブルにエントリを追加する。プリントジョブを受信した際に他のジョブの継続中でない場合、ポインタ310は、当該プリントジョブにおいて最初に画像を形成するシートに関するエントリの位置に移動される。制御部110は、S100で、ポインタ310が示す管理テーブルのエントリに対応するシートから画像の形成を開始する。上述した様に、制御部110は、撮像ユニット131に画像が形成されたシートを撮像させ、画像データを検査装置150に送信させる。そして、制御部110は、検査装置150から成果物不良が生じているかの判定結果を取得する。
【0030】
S101において、制御部110は、検査装置150からの判定結果に基づき成果物不良のシートが生じたかを判定する。成果物不良が生じていないと、制御部110は、S111で、プリントジョブによる総ての画像形成が終了したかを判定する。画像形成が終了していない場合、制御部110は、S101から処理を繰り返す。一方、画像形成が終了していると、制御部110は、
図10の処理を終了する。
【0031】
また、S101において、成果物不良が生じていると、制御部110は、S102において、ポインタ310を、成果物不良となったシートのエントリに移動させ、当該エントリの検査結果フィールドに"NG"を設定し、S103で画像形成を停止(中断)させる。なお、上述した様に、成果物不良となったシートは、エスケープトレイ246に排出される。続いて、制御部110は、S104でカウンタCを0に初期化し、S105において後続シートが存在するかを判定する。なお、本実施形態において後続シートとは、成果物不良が生じたシートに後続するシートであって、S102で画像形成を停止した際に、既にカセット201又は202から画像形成装置100に給送されているシート、或いは、既に画像が転写されたシートを意味する。
【0032】
後続シートが存在する場合、制御部110は、これら後続シートについても検査装置150に検査させて成果物不良が生じているか否かをS106で判定する。そして、成果物不良のシートが生じる度に、S107においてカウンタCを1だけ増加させる。なお、これらの後続シートは、成果物不良が生じているか否かに拘わらず、総てエスケープトレイ246に排出される。
【0033】
後続シートを総てエスケープトレイ246に排出すると、制御部110は、S108で、調整動作の開始条件が満たされたか否かを判定する。例えば、カウンタCの値が閾値以上であると、調整動作の開始条件が満たされる構成とすることができる。例えば、閾値は2とすることができる。カウンタCの値が閾値である2以上であることは、後続シートの2つ以上に成果物不良が生じたことを意味し、よって、これは、突発的な不良ではなく継続的な不良と判定できるためである。なお、後続シートの総数が閾値より1だけ少ない数以下であると、継続的な不良が生じていても、継続的な不良が生じていると判定されないことになる。したがって、後続シートの総数が閾値未満である場合にも、調整動作の開始条件が満たされる構成とすることができる。
【0034】
調整動作の開始条件が満たされていないと、制御部110は、突発性の不良であると判定し、S100から処理を繰り返す。一方、調整動作の開始条件が満たされた場合、制御部110は、S109において成果物不良の発生を抑えるため、形成位置ズレを抑えるための調整動作を実行する。例えば、
図7に示す調整画像を形成し、調整画像を形成したシートを撮像ユニット131で撮像して、当該シートの画像データを検査装置150に送信し、検査装置150からフィードバックされる情報に基づき補正情報を取得・更新する。その後、制御部110は、S110で、カウンタCを0に初期化し、S100から処理を繰り返す。なお、S102の処理により、ポインタ310は、成果物不良となったシートのエントリを示しているため、その後のS100においては、成果物不良となったシートに形成されていた画像から画像形成が再開される。
【0035】
以上、本実施形態では、成果物不良を検出すると、当該シートの後続シートも成果物不良であるか否かを判定し、この判定結果に基づき、継続性の不良であるか、突発的な不良であるかを判定する。そして、継続性の不良であると判定された場合には、調整動作を実行する。この構成により、リカバリ処理後に、再度、成果物不良が生じることを抑えて画像形成に要する時間が長くなることを防ぐ。また、継続性の不良であるか否かをユーザが判定する必要がないため、ユーザビリティを向上させることができる。さらに、突発的な不良と判定された場合には、不要な調整動作を実行しないため、画像形成に要する時間が長くなることを防ぐことができる。
【0036】
なお、
図10のフローチャートは、成果物不良を検出すると、S104からS108の処理により継続性の不良であるか突発的な不良であるかを判定し、継続性の不良であると判定される場合に調整動作を実行するものである。しかしながら、上述した様に、成果物不良を検出すると、常に調整動作を行う構成とすることもできる。この場合、
図10のフローチャートのS104~S108及びS110が省略され、S103の後、S109の処理を実行して、その後、S100から繰り返すフローチャートとなる。リカバリ処理の前に調整動作を実行することで、リカバリ処理の後に、再度、成果物不良が生じる可能性が低くなり、よって、画像形成に要する時間が長くなることを抑えることができる。
【0037】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態では、調整動作の開始条件が満たされると、制御部110は、調整動作を実行していた。しかしながら、成果物不良が、ユーザによるシートのセットミスや、元からあったシートの汚れによるものとユーザが判断できる場合、調整動作を行う必要はない。本実施形態では、調整動作の開始条件が満たされた場合において、調整動作を実際に実行するか否かをユーザに選択させることを可能にする。
【0038】
図11は、プリントジョブを受信した際に制御部110が実行する処理のフローチャートである。なお、
図10に示す第一実施形態のフローチャートと同様の処理ステップについては同じステップ番号を付与して説明を省略する。
【0039】
本実施形態において、制御部110は、S108で調整動作の開始条件が満たされると、S200において、調整動作を実行するか否かをユーザに選択させる選択画面を操作パネル120に表示し、S201で、ユーザ入力を判定する。
図12は、選択画面の一例を示している。ユーザが、例えば、
図12の"開始"をタッチすることにより調整動作の実行を許可すると、制御部110は、S109において調整動作を実行する。一方、ユーザが、例えば、
図12の"キャンセル"をタッチすることにより、調整動作の実行を許可しないと、制御部110は、S100から処理を繰り返す。
【0040】
以上、本実施形態では、調整動作の開始条件が満たされた場合、自動的に調整動作を開示するのではなく、ユーザに調整動作を実行するか否かを入力させる。この構成により、調整動作の開始条件が満たされたとしても、ユーザが突発的な不良と判定できる様な場合、調整動作は行われず、画像形成に要する時間が長くなることを防ぐことができる。
【0041】
なお、本実施形態でも、第一実施形態と同様に、
図11のS104~S108及びS110を省略することができる。つまり、成果物不良を検出すると、
図12の選択画面を表示し、ユーザが調整動作の実行を許可すると調整動作を実行し、ユーザが調整動作の実行を許可しないと調整動作を行わない構成とすることができる。
【0042】
<第三実施形態>
続いて、第三実施形態について第一実施形態及び第二実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態及び第二実施形態において、検査装置150は、成果物不良として形成位置ズレを判定し、調整動作の開始条件が満たされると、画像形成装置100は、形成位置の調整動作を行っていた。本実施形態では、色味、つまり、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの各階調の調整動作と、形成位置の調整動作を選択的に実行する。
【0043】
まず、階調の調整動作について説明する。階調の調整動作は、所定の最大濃度を得るための露光装置2043の発光輝度を決定する処理と、階調補正テーブルを作成する処理と、を含む。画像形成装置100は、所定の最大濃度を得るための露光装置2043の発光輝度を決定するために、
図13に示す最大濃度測定画像をシートに形成する。
図13によると、最大濃度測定画像は、5つの異なる発光輝度で感光体2041を走査することで形成した5つのパッチ画像を含んでいる。具体的には、最も小さい発光輝度をAとし、その他の4つの発光輝度を、A+α、A+2α、A+3α、A+4αとしている。撮像ユニット131は、最大濃度測定画像を形成したシートを撮像する。制御部110は、この撮像ユニット131が撮像した画像データに基づき各パッチ画像の濃度を判定する。そして、制御部110は、各パッチ画像の形成に使用した発光輝度と、各パッチ画像の濃度に基づき、最大濃度を得るための露光装置2043の発光輝度を決定する。なお、本実施形態では、露光装置2043の発光輝度を調整することで最大濃度を制御しているが、濃度に関する他のパラメータを調整することで最大濃度を制御する構成とすることができる。例えば、現像ローラ2044が出力する現像バイアス電圧によっても最大濃度を制御することができる。
【0044】
最大濃度とするための露光装置2043の発光輝度を決定した後、制御部110は、
図14に示す階調測定画像をシートに形成する。階調測定画像は、異なる濃度の複数のパッチ画像を含んでいる。
図14においては、階調数を10としているが、階調数は、10以外の数であっても良い。なお、同じ領域の各画素の画素値(画像データの値)は同じとする。撮像ユニット131は、階調測定画像を形成したシートを撮像する。制御部110は、この撮像ユニット131が撮像した画像データに基づき各パッチ画像の濃度を判定する。そして、制御部110は、各パッチ画像の画素値と、各パッチ画像の濃度に基づき、画素値と濃度との関係を理想的な状態に近づけるための画素値の補正データである階調補正テーブルを作成する。
【0045】
図15は、プリントジョブを受信した際に制御部110が実行する処理のフローチャートである。なお、
図10に示す第一実施形態のフローチャートと同様の処理ステップについては同じステップ番号を付与して説明を省略する。本実施形態において検査装置150は、成果物不良が画像形成位置のズレであるか、色味のズレであるかを判定し、判定結果、つまり、成果物不良のタイプを制御部110に通知する。したがって、S101において、制御部110は、成果物不良が生じたか否かに加えて、そのタイプについての情報も検査装置150から取得する。
【0046】
制御部110は、S103で画像形成を中断すると、S300において後続シートをエスケープトレイ246に排出する。そして、制御部110は、S301において、成果物不良として形成位置ズレが通知されているかを判定する。形成位置ズレが通知されていない場合、制御部110は、処理をS303に進める。一方、形成位置ズレが通知されている場合、制御部110は、S302において、第一実施形態のS109と同様に形成位置調整動作を実行して、処理をS303に進める。制御部110は、S303において、成果物不良として色味ズレが通知されているかを判定する。色味ズレが通知されていない場合、制御部110は、S100から処理を繰り返す。一方、色味ズレが通知されている場合、制御部110は、S304において、
図13及び
図14を用いて説明した階調調整動作を行い、S100から処理を繰り返す。
【0047】
以上、本実施形態では、検査装置150が検出した成果物不良のタイプに応じた調整動作を実行する。したがって、不要な調整動作は行われず、画像形成に要する時間が長くなることを防ぐと共に、ユーザビリティを向上させることができる。
【0048】
なお、上記各実施形態においては、検査装置150を画像形成装置100の外部装置としていたが、検査装置150を画像形成装置100の構成要素とすることもできる。つまり、検査装置150が実行する検査機能を画像形成装置100が実行する構成とすることもできる。また、第一実施形態及び第二実施形態と、第三実施形態とを組み合わせることもできる。例えば、第1タイプの成果物不良が発生すると、制御部100は、後続シートを検査し、閾値以上の後続シートに第1タイプの成果物不良が生じていると、第1タイプの成果物不良を抑えるための調整動作を実行する構成とすることができる。
【0049】
[その他の実施形態]
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0050】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0051】
200:画像形成ユニット、150:検査装置、110:制御部