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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】羽根駆動装置、撮像装置、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/02 20210101AFI20240919BHJP
   G03B 9/08 20210101ALI20240919BHJP
   G03B 9/26 20210101ALI20240919BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240919BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20240919BHJP
   G03B 11/04 20210101ALN20240919BHJP
【FI】
G03B9/02 C
G03B9/08 D
G03B9/26
G03B17/02
H04N23/52
G03B11/04 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020211603
(22)【出願日】2020-12-21
(65)【公開番号】P2022098197
(43)【公開日】2022-07-01
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】ニデックプレシジョン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109896
【弁理士】
【氏名又は名称】森 友宏
(72)【発明者】
【氏名】今井 謙三
【審査官】櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-5926(JP,A)
【文献】特開2020-154150(JP,A)
【文献】特開平10-254022(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062367(WO,A1)
【文献】特開2013-156292(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0192337(US,A1)
【文献】特開2009-109647(JP,A)
【文献】特開昭56-60423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/00-9/54、17/02
H04N 23/50-23/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に延びる支軸を有するベース部材と、
開口が形成されたカバー部材であって、前記ベース部材の前側を覆うように設けられるカバー部材と、
前記ベース部材と前記カバー部材との間に形成される羽根室の内部に配置される羽根部材と、
前記開口を塞ぐ閉位置と前記開口を開放する開位置との間で前記羽根部材を移動させるアクチュエータであって、前記羽根部材に連結されるレバー部材を含むアクチュエータと
を備え、
前記アクチュエータの前記レバー部材は、
前記ベース部材の前記支軸を中心として回転可能なレバー本体と、
前記レバー本体と前記羽根部材とを連結する連結部と、
前記レバー本体から前方に前記羽根部材を超えて突出し、前記カバー部材の後面対面する少なくとも1つの突出部と
を含む、
羽根駆動装置。
【請求項2】
前記レバー部材の前記少なくとも1つの突出部は、前記ベース部材の前記支軸の周囲に周方向に沿って円弧状に形成される、請求項1に記載の羽根駆動装置。
【請求項3】
前記羽根部材には、前記レバー部材の前記少なくとも1つの突出部との衝突を避けるための逃げ部が形成される、請求項1又は2に記載の羽根駆動装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、
前記ベース部材の前記支軸に回転可能に取り付けられ、前記レバー部材に取り付けられるロータマグネットと、
前記ロータマグネットに磁気的作用を与えられる位置に配置されるヨークと、
前記ヨークの一部の周囲に巻回されるコイルと
をさらに含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の羽根駆動装置。
【請求項5】
前記レバー部材及び前記ロータマグネットは、前記ベース部材の前方に配置され、
前記コイル及び前記ヨークは、前記ベース部材の後方に配置される、
請求項4に記載の羽根駆動装置。
【請求項6】
前記レバー部材、前記ロータマグネット、前記コイル、及び前記ヨークは、前記ベース部材の前方に配置される、請求項4に記載の羽根駆動装置。
【請求項7】
前記ベース部材の周縁部に沿って延びるフレキシブルプリント基板であって、前記アクチュエータと電気的に接続される配線を内部に備えたフレキシブルプリント基板をさらに備え、
前記ベース部材は、外周面に形成された複数の係合部を含み、
前記カバー部材は、前記ベース部材の前記複数の係合部に係合可能なフック部であって、前記ベース部材の前記複数の係合部に係合した際に前記フレキシブルプリント基板の外側に位置する延長部を有するフック部を含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の羽根駆動装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の羽根駆動装置と、
前記羽根駆動装置の前記カバー部材の前記開口を通って入射する光を受光する撮像素子と
を備える、撮像装置。
【請求項9】
請求項8に記載の撮像装置を備える、電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根駆動装置、撮像装置、及び電子機器に係り、特に羽根部材により開口を開閉可能な羽根駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンやタブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、防犯カメラ、スマートスピーカ、ドローンをはじめとして様々な電子機器にカメラが組み込まれている。このような電子機器に組み込まれるカメラは、レンズ開口を開閉又は調整するための羽根部材を駆動する羽根駆動装置(例えば、シャッタ、バリア、絞りなど)を備えていることが一般的である(例えば、特許文献1参照)。最近では、電子機器の小型化が進むにつれ、このようなカメラ内の羽根駆動装置をできる限り小型化するとともに部品点数をできる限り少なくすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-189513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、部品点数を減らすとともに小型化が可能な羽根駆動装置、撮像装置、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、部品点数を減らすとともに小型化が可能な羽根駆動装置が提供される。この羽根駆動装置は、前方に延びる支軸を有するベース部材と、開口が形成されたカバー部材と、上記ベース部材と上記カバー部材との間に形成される羽根室の内部に配置される羽根部材と、上記開口を塞ぐ閉位置と上記開口を開放する開位置との間で上記羽根部材を移動させるアクチュエータとを備える。上記カバー部材は、上記ベース部材の前側を覆うように設けられる。上記アクチュエータは、上記羽根部材に連結されるレバー部材を含む。上記アクチュエータの上記レバー部材は、上記ベース部材の上記支軸を中心として回転可能なレバー本体と、上記レバー本体と上記羽根部材とを連結する連結部と、上記レバー本体から前方に上記羽根部材を超えて突出し、上記カバー部材の後面対面する少なくとも1つの突出部とを含む。
【0006】
本発明の第2の態様によれば、部品点数を減らすとともに小型化が可能な撮像装置が提供される。この撮像装置は、上述した羽根駆動装置と、上記羽根駆動装置の上記カバー部材の上記開口を通って入射する光を受光する撮像素子とを備える。
【0007】
本発明の第3の態様によれば、部品点数を減らすとともに小型化が可能な電子機器が提供される。この電子機器は、上述した撮像装置を備えた電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態における羽根駆動装置を示す斜視図である。
図2図2は、図1の羽根駆動装置の前方分解斜視図である。
図3図3は、図1の羽根駆動装置の後方分解斜視図である。
図4A図4Aは、図1の羽根駆動装置における羽根部材及びレバーユニットの動作を説明する模式図であり、羽根部材が開位置に位置している状態を示している。
図4B図4Bは、図1の羽根駆動装置における羽根部材及びレバーユニットの動作を説明する模式図であり、羽根部材が閉位置に位置している状態を示している。
図5図5は、図1の羽根駆動装置の縦断面図である。
図6図6は、本発明の他の実施形態における羽根駆動装置の縦断面図である。
図7図7は、図1の羽根駆動装置に従来の基板押さえを適用した例を示す後方斜視図である。
図8図8は、本発明の他の実施形態における羽根駆動装置の背面図である。
図9図9は、本発明の他の実施形態における羽根部材及びレバーユニットの動作を説明する模式図である。
図10図10は、本発明に係る羽根駆動装置が組み込まれた電子機器の一例としてのスマートフォンを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る羽根駆動装置の実施形態について図1から図10を参照して詳細に説明する。図1から図10において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。また、図1から図10においては、各構成要素の縮尺や寸法が誇張されて示されている場合や一部の構成要素が省略されている場合がある。以下の説明では、特に言及がない場合には、「第1」や「第2」などの用語は、構成要素を互いに区別するために使用されているだけであり、特定の順位や順番を表すものではない。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態における羽根駆動装置1を示す斜視図、図2は、羽根駆動装置1の分解斜視図である。図1及び図2に示すように、羽根駆動装置1は、略矩形板状のベース部材10と、ベース部材10の後方に取り付けられるコイルユニット20と、ベース部材10の前面側を覆うカバー部材30と、カバー部材30とベース部材10との間に形成される羽根室の内部に配置される羽根部材40と、羽根部材40を駆動するためのレバーユニット50とを含んでいる。なお、本実施形態では、便宜的に、図1における+Z方向を「上」又は「上方」、-Z方向を「下」又は「下方」、+Y方向を「前」又は「前方」、-Y方向を「後」又は「後方」ということとする。
【0011】
ベース部材10には、Y方向に貫通する円形の開口11が形成されている。カバー部材30は、略矩形薄板状の部材であり、このカバー部材30にもベース部材10の開口11と略同径の円形の開口31が形成されている。ベース部材10の開口11とカバー部材30の開口31とは同軸上に位置している。羽根駆動装置1が撮像装置に組み込まれる場合には、カバー部材30の開口31及びベース部材10の開口11を通った光が撮像装置の撮像素子に入射するように構成される。例えば、羽根部材40は、撮像装置により撮影する光(可視光や赤外光など)を透過しない材料で形成される。
【0012】
ベース部材10は、カバー部材30との間で羽根室を規定する基面12と、基面12の上部及び下部からそれぞれ+Y方向に延びる縁部13A,13Bと、基面12から+Y方向に突出する円柱状のガイドポスト14~16とを備えている。基面12には、-Y方向に凹んだ凹部61が形成されており、この凹部61の上部には、凹部61よりもさらに-Y方向に凹んだ凹部62が形成されている。ベース部材10は、凹部62の底面から+Y方向に延びる支軸63を有している。
【0013】
図2に示すように、レバーユニット50は、ベース部材10の支軸63に回転可能に取り付けられる円筒状のロータマグネット51と、ロータマグネット51に取り付けられたレバー部材52とを含んでいる。ロータマグネット51は、周方向に沿って異なる磁極を有する磁石から構成されており、ベース部材10の凹部62に収容される。
【0014】
レバー部材52は、ロータマグネット51とともにベース部材10の支軸63を中心として回転可能なレバー本体53と、レバー本体53の端部から+Y方向に延びる円柱状の連結部54と、レバー本体53から+Y方向(前方)に突出する突出部55,56とを有している。突出部55は、ベース部材10の支軸63の周囲に周方向に沿って一定の長さで延びており、突出部56は、レバー本体53の中央部付近に形成されている。
【0015】
コイルユニット20は、磁性体からなるヨーク21と、コイルベース22と、ヨーク21及びコイルベース22の周囲に巻回されたコイル23とを含んでいる。本実施形態におけるヨーク21は、Y方向に薄い扁平状であり、2つのアーム部24A,24Bを含むU字形状を有している。コイル23は、一方のアーム部24Aの周囲に巻回されており、ベース部材10の周縁部に沿って延びるフレキシブルプリント基板71内の配線と電気的に接続されている。本実施形態では、コイルユニット20とレバーユニット50とによって、羽根部材40をX方向に移動させるアクチュエータが構成される。
【0016】
図3は、ベース部材10からコイルユニット20を取り外した状態の後方分解斜視図である。図3に示すように、ベース部材10の後面側には、コイルユニット20を収容するための凹部25が形成されている。このように、本実施形態では、羽根部材40を移動させるアクチュエータの構成要素のうち、ヨーク21、コイルベース22、及びコイル23を含むコイルユニット20はベース部材10の後方に配置されているが、ロータマグネット51及びレバー部材52を含むレバーユニット50はベース部材10の前方に配置されている。このとき、ベース部材10の凹部62に収容されているロータマグネット51が、ベース部材10の後方に配置されているヨーク21のアーム部24A,24Bの間に位置するようになっている。
【0017】
羽根部材40の上部と下部にはそれぞれX方向に延びるガイド溝41,42が形成されており、図示した例では、下側のガイド溝42の方が上側のガイド溝41よりも長くなっている。ガイド溝41にはベース部材10のガイドポスト14が収容され、ガイド溝42にはベース部材10のガイドポスト15,16が収容される。羽根部材40のガイド溝41のZ方向に沿った幅は、ベース部材10のガイドポスト14の外径よりもわずかに大きい程度であり、羽根部材40のガイド溝42のZ方向に沿った幅は、ベース部材10のガイドポスト15,16の外径よりもわずかに大きい程度となっている。これにより、ベース部材10のガイドポスト14~16は、Z方向において羽根部材40のガイド溝41,42に係合し、羽根部材40は、この係合によってガイド溝41,42が延びるX方向に移動できるようになっている。
【0018】
また、羽根部材40にはZ方向に延びる長孔43が形成されている。この長孔43にはレバー部材52の連結部54が収容されており、この連結部54によってレバー部材52のレバー本体53が羽根部材40に連結される。羽根部材40の長孔43のX方向に沿った幅は、レバー部材52の連結部54の外径よりもわずかに大きい程度となっている。これにより、レバー部材52の連結部54は、羽根部材40の長孔43とX方向において係合することとなる。したがって、レバー部材52がベース部材10の支軸63を中心として回転すると、レバー部材52の連結部54は、羽根部材40の長孔43内をZ方向に移動しつつ、X方向において長孔43と係合することにより羽根部材40をX方向に移動させる。
【0019】
図1及び図2に示すように、ベース部材10の上縁部13Aの上面は-Z方向にわずかに凹んだ2つの凹部18Aが形成されており、それぞれの凹部18Aには+Z方向に突出する上側係合部19Aが形成されている。同様に、図3に示すように、ベース部材10の下縁部13Bの下面は+Z方向にわずかに凹んだ2つの凹部18Bが形成されており、それぞれの凹部18Bには-Z方向に突出する下側係合部19Bが形成されている。
【0020】
図1から図3に示すように、カバー部材30は、上縁部から-Y方向に環状に延びる2つの上側フック部32Aと、下縁部から-Y方向に環状に延びる2つの下側フック部32Bとを有している。上側フック部32Aはベース部材10の上側係合部19Aに対応しており、下側フック部32Bはベース部材10の下側係合部19Bに対応している。上側フック部32A及び下側フック部32Bは、それぞれZ方向に弾性変形が可能となっている。環状の上側フック部32Aの内側には、ベース部材10の上側係合部19Aを収容する空間が形成されており、環状の下側フック部32Bの内側には、ベース部材10の下側係合部19Bを収容する空間が形成されている。図3に示すように、下側フック部32Bの-Y方向の端部は-Y方向に延びており延長部39を構成している。下側フック部32Bがベース部材10の下側係合部19Bに係合した状態では、延長部39はフレキシブルプリント基板71の外側に位置している。
【0021】
このような構成により、カバー部材30のフック部32A,32BをZ方向に弾性変形させてベース部材10の係合部19A,19Bを乗り越えさせることにより、ベース部材10の係合部19A,19Bがそれぞれカバー部材30のフック部32A,32Bに係合することになり、カバー部材30がベース部材10に固定される(図1及び図3参照)。
【0022】
羽根部材40のガイド溝41を通って+Y方向に延びるベース部材10のガイドポスト14は、カバー部材30に形成された円形窓34に収容される。同様に、羽根部材40のガイド溝42を通って+Y方向に延びるベース部材10のガイドポスト15,16は、カバー部材30に形成された円形窓35,36にそれぞれ収容される。また、羽根部材40の長孔43を通って+Y方向に延びるレバー部材52の連結部54は、カバー部材30に形成された円弧窓37の内部に収容される。
【0023】
図4A及び図4Bは、羽根部材40及びレバーユニット50の動作を説明する模式図である。上述したアクチュエータにおいて、フレキシブルプリント基板71内の配線を通してコイルユニット20のコイル23に電流を通電すると、ヨーク21のアーム部24A,24Bが互いに反対の磁極に着磁(磁化)し、アーム部24A,24Bの磁力による吸引によってレバーユニット50のロータマグネット51が回転するようになっている。
【0024】
例えば、コイルユニット20のコイル23に電流を一方向に通電すると、図4Aに示すようにロータマグネット51の磁極が、着磁(磁化)したヨーク21のアーム部24A,24Bに吸引されて、ロータマグネット51が反時計回りに回転する。これにより、レバー部材52はベース部材10の支軸63を中心として反時計回りに回転する。レバー部材52が支軸63を中心として反時計回りに回転すると、レバー部材52の連結部54と羽根部材40の長孔43との係合によって羽根部材40が+X方向に移動する。したがって、羽根部材40は、ベース部材10の開口11(及びカバー部材30の開口31)に重ならない位置に移動し、ベース部材10の開口11(及びカバー部材30の開口31)を開放する。このときの羽根部材40の位置を「開位置」ということとする。
【0025】
また、図4Aのときとは逆の方向の電流をコイルユニット20のコイル23に通電すると、ヨーク21のアーム部24A,24Bが図4Aのときとは反対の磁極に着磁(磁化)するため、図4Bに示すようにロータマグネット51の磁極がこれらのアーム部24A,24Bに吸引されて、ロータマグネット51が時計回りに回転する。これにより、レバー部材52はベース部材10の支軸63を中心として時計回りに回転する。レバー部材52が支軸63を中心として時計回りに回転すると、レバー部材52の連結部54と羽根部材40の長孔43との係合によって羽根部材40が-X方向に移動する。したがって、羽根部材40は、ベース部材10の開口11(及びカバー部材30の開口31)を塞ぐ位置に移動する。このときの羽根部材40の位置を「閉位置」ということとする。
【0026】
例えば、羽根駆動装置1がシャッタとして撮像装置に組み込まれている場合には、羽根部材40が図4Aに示す開位置に位置しているときは、羽根駆動装置1の外部からの光が、カバー部材30の開口31及びベース部材10の開口11を通って撮像装置の撮像素子に入射するため、撮像装置による撮影が可能となる。一方、羽根部材40が図4Bに示す閉位置に位置しているときは、羽根駆動装置1の外部からカバー部材30の開口31を通った光は羽根部材40に遮られる。
【0027】
図5は、羽根駆動装置1の縦断面図である。従来の羽根駆動装置においては、衝撃や振動が加わった際にレバーユニット50がベース部材10の凹部61,62から飛び出してしまわないように、レバーユニット50をベース部材10の凹部61,62内に保持しておくための保持板(仕切板)が羽根部材40とレバーユニット50との間に設けられるため、羽根駆動装置のY方向の厚さが保持板の厚さだけ大きくなる。これに対して、本実施形態の羽根駆動装置1は、このような保持板を必要とすることなく、レバーユニット50をベース部材10の凹部61,62内に保持することができるため、羽根駆動装置1のY方向の厚さを小さくすることができる。すなわち、本実施形態においては、図5に示すように、レバー部材52の突出部55,56がレバー本体53から+Y方向に羽根部材40を超えてカバー部材30側に突出しており、レバー部材52の突出部55,56がカバー部材30に対面している。このため、羽根駆動装置1に衝撃や振動が加わっても、レバー部材52の突出部55,56がカバー部材30に当接してレバー部材52のY方向への移動が抑制される。このため、保持板のような部材がなくても、レバーユニット50をベース部材10の凹部61,62内に保持することができる。
【0028】
このように、本実施形態によれば、従来必要とされていた保持板を必要とすることなく、レバーユニット50をベース部材10の凹部61,62内に保持することができる。したがって、羽根駆動装置1の部品点数を減らすことができるとともに、保持板の分だけ羽根駆動装置1の厚さを小さくすることができる。
【0029】
本実施形態のレバー部材52は2つの突出部55,56を有しているが、突出部の数は1つであっても、3つ以上であってもよい。この場合において、本実施形態の突出部55のように、レバーユニット50のY方向の移動を効果的に抑制する観点から、レバーユニット50の回転中心となるベース部材10の支軸63に近い箇所、すなわちベース部材10の支軸63の周囲に周方向に沿って突出部を形成することが好ましい。
【0030】
本実施形態のようにレバー部材52が突出部55,56を含んでいる場合には、レバー部材52の回転に伴って突出部55,56も移動するため、突出部55,56が羽根部材40に衝突するおそれが生じる。このため、羽根部材40の一部に切り欠きを形成して、突出部55,56との衝突を避けるための逃げ部45,46(図4A及び図4B参照)を羽根部材40に形成することが好ましい。
【0031】
上述したように、本実施形態では、羽根部材40を移動させるアクチュエータの構成要素のうちコイルユニット20はベース部材10の後方に配置され、レバーユニット50がベース部材10の前方に配置されており、コイルユニット20とレバーユニット50との間にベース部材10が位置している。したがって、羽根駆動装置1のY方向の厚さをさらに小さくするために、例えば、図6に示すように、レバーユニット50及びコイルユニット20の両方をベース部材10の前方に配置してもよい。図6に示す構造に対して図5に示すような構造とすれば、コイルユニット20のヨーク21がベース部材10とコイルベース22との間で保持されるため、コイルユニット20の安定性及び設計自由度をより高めることができる。
【0032】
図3に戻って、本実施形態においては、コイルユニット20のコイル23に電気的に接続される配線を含むフレキシブルプリント基板71が、ベース部材10の側面に沿って-Z方向に延び、さらに下縁部に沿って-Z方向に延びている。このようなフレキシブルプリント基板71は何らかの理由で弛んで羽根駆動装置1の外部に出てきてしまうことが考えられる。このようにフレキシブルプリント基板71が羽根駆動装置1の外部に出てしまうことを防止するためには、例えば図7に示すように、フレキシブルプリント基板71を保持するための基板押さえ571をベース部材10に形成し、フレキシブルプリント基板71の外側からフレキシブルプリント基板71を押さえることが考えられる。しかしながら、羽根駆動装置1のサイズを変えることなく基板押さえ571をベース部材10に形成しようとすると、基板押さえ571の分だけ他の部材(例えば図7に示すベース部材10の内壁110A)の寸法を小さくしなければならず、羽根駆動装置1の設計が困難になる。また、基板押さえ571に代えて両面テープや接着材などでフレキシブルプリント基板71を固定することも考えられるが、両面テープや接着材などの材料費の増加及び接着工程の追加による工賃の増加が生じる。
【0033】
本実施形態では、図3に示すように、カバー部材30の下側フック部32Bがベース部材10の下側係合部19Bに係合しているときに、下側フック部32Bの延長部39がフレキシブルプリント基板71の外側に位置するので、この下側フック部32Bの延長部39によってフレキシブルプリント基板71を保持することができ、フレキシブルプリント基板71が羽根駆動装置1の外部に出てしまうことを防止することができる。このような下側フック部32Bの延長部39は、図7に示すような基板押さえ571よりも薄く構成することができるので、羽根駆動装置1の小型化を阻害することもない。
【0034】
特に図8に示すようにアクチュエータを2つ備えた羽根駆動装置201などにこのような延長部39を設けることとすればより効果的である。図8に示す羽根駆動装置201は、2つのコイルユニット20A,20Bと、2つのレバーユニット(図示せず)と、これら2つのコイルユニット20A,20Bに接続されるフレキシブルプリント基板271とを含んでいる。コイルユニット20Aのコイル23は半田270Aによりフレキシブルプリント基板271内の回路と電気的に接続され、コイルユニット20Bのコイル23は半田270Bによりフレキシブルプリント基板271内の回路と電気的に接続される。このような構成では、フレキシブルプリント基板271は、2つのコイルユニット20A,20Bの間に跨がって接続される必要があるため、必然的にベース部材10の周縁部に沿って配置されることとなる。このため、羽根駆動装置201のサイズを大きくすることなくフレキシブルプリント基板271を保持するためには、上述した延長部39の構成を採用することが効果的である。
【0035】
上述した実施形態では、アクチュエータによって羽根部材40を一方向にスライドさせた例を説明したが、アクチュエータの形態はこれに限られるものではない。例えば、図9に示すようなレバーユニット350を備えたアクチュエータを用いて羽根部材340を支軸342周りに回転させてもよい。
【0036】
このレバーユニット350は、ベース部材10の支軸63に回転可能に取り付けられる円筒状のロータマグネット351と、ロータマグネット351に取り付けられたレバー部材352とを含んでおり、レバー部材352は、ロータマグネット351とともにベース部材10の支軸63を中心として回転可能なレバー本体353と、レバー本体353の端部から+Y方向に延びる円柱状の連結部354と、支軸63の周囲で+Y方向(前方)に突出する突出部355とを有している。レバー部材352の連結部354は、羽根部材340に形成された長孔343に挿通されており、この長孔343に係合している。このような構成によれば、ロータマグネット351の回転に伴い、レバー部材352がベース部材10の支軸63を中心として回転すると、レバー部材352の連結部354と羽根部材340の長孔343との係合によって、羽根部材340が支軸342を中心として回転し、ベース部材10の開口11(及びカバー部材30の開口31)を塞ぐ閉位置と開口11を開放する開位置との間で移動する。
【0037】
図10は、上述した実施形態で述べた羽根駆動装置1,201が組み込まれた電子機器の一例としてのスマートフォン400を示している。スマートフォン400の内部には上述した羽根駆動装置1,201を含む撮像装置401が組み込まれ、スマートフォン400の背面には撮像装置401のレンズに光を入射させるための窓403が形成されている。この場合においては、例えば、上述した羽根駆動装置1,201を撮像装置401用のシャッタ、バリア、絞りとして用いることができる。そして、羽根部材40としては、羽根駆動装置1の用途に合わせて、シャッタ羽根以外にフィルタ羽根、絞り羽根などが採用される。
【0038】
本発明に係る羽根駆動装置は、このようなスマートフォン400に限らず、例えばタブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートスピーカ、ドローン、監視カメラ、車載カメラなど各種の電子機器にも適用できるものである。
【0039】
また、上述した羽根駆動装置1,201は、ユーザが意図していないときにカメラによる撮影を遮断するためのシャッタ(カバー、蓋と呼ばれることもある。)としても用いることもできる。この場合には、羽根部材40,340は、開口11,31を通って撮像装置の撮像素子に入射する光のすべてを遮る必要はなく、撮像素子に入射する光の一部を遮るように羽根部材40,340を構成してもよい。例えば、撮像素子が撮影する光(可視光や赤外光など)に対する透過率の低い材料で羽根部材40,340を構成したり、羽根部材40,340に着色や凹凸、穿孔により模様(網目状や格子状の模様、同心円の模様など)を施したりすることにより、撮像素子に入射する光の一部を遮るようにしてもよい。この場合には、撮像素子により取得される画像や映像の一部が不鮮明又は不可視になるため、ユーザが意図しない画像や映像が取得されることを防止することができる。また、開口11,31を通って撮像素子に入射する光に対して所定の光学効果(モザイクフィルタ、散乱、乱反射など)を加えるように羽根部材40,340を構成してもよい。この場合においても、撮像素子により取得される画像や映像の一部が不鮮明又は不可視になるため、ユーザが意図しない画像や映像が取得されることを防止することができる。
【0040】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【0041】
以上述べたように、本発明の第1の態様によれば、部品点数を減らすとともに小型化が可能な羽根駆動装置が提供される。この羽根駆動装置は、前方に延びる支軸を有するベース部材と、開口が形成されたカバー部材と、上記ベース部材と上記カバー部材との間に形成される羽根室の内部に配置される羽根部材と、上記開口を塞ぐ閉位置と上記開口を開放する開位置との間で上記羽根部材を移動させるアクチュエータとを備える。上記カバー部材は、上記ベース部材の前側を覆うように設けられる。上記アクチュエータは、上記羽根部材に連結されるレバー部材を含む。上記アクチュエータの上記レバー部材は、上記ベース部材の上記支軸を中心として回転可能なレバー本体と、上記レバー本体と上記羽根部材とを連結する連結部と、上記レバー本体から前方に上記羽根部材を超えて突出し、上記カバー部材に対向する少なくとも1つの突出部とを含む。
【0042】
このような構成によれば、羽根駆動装置に衝撃や振動が加わってもレバー部材の突出部がカバー部材に当接してレバー部材の前後方向への移動が抑制されるため、レバー本体とカバー部材との間に保持板のような部材を設けなくても、レバー部材をベース部材とカバー部材との間に保持することができる。これにより、レバー部材をベース部材とカバー部材との間に保持するために従来必要とされていた保持板が不要となるため、羽根駆動装置の部品点数を減らすことができるとともに、保持板の分だけ羽根駆動装置の厚さを小さくすることができる。
【0043】
上記レバー部材の前後方向の移動を効果的に抑制する観点から、上記レバー部材の上記少なくとも1つの突出部は、上記ベース部材の上記支軸の周囲に周方向に沿って形成されることが好ましい。
【0044】
上記羽根部材には、上記レバー部材の上記少なくとも1つの突出部との衝突を避けるための逃げ部が形成されることが好ましい。
【0045】
上記アクチュエータは、上記ベース部材の上記支軸に回転可能に取り付けられ、上記レバー部材に取り付けられるロータマグネットと、上記ロータマグネットに磁気的作用を与えられる位置に配置されるヨークと、上記ヨークの一部の周囲に巻回されるコイルとをさらに含んでいてもよい。このようなアクチュエータを用いることで羽根開閉装置のサイズをコンパクトにすることができる。
【0046】
上記レバー部材及び上記ロータマグネットは、上記ベース部材の前方に配置され、上記コイル及び上記ヨークは、上記ベース部材の後方に配置されていてもよい。このように、レバー部材及びロータマグネットが配置されている側とは逆の側にコイル及びヨークを配置することで、ヨークをベース部とコイルベースなどの部材との間に保持することができるので、羽根駆動装置の安定性及び設計自由度を高めることができる。
【0047】
上記レバー部材、上記ロータマグネット、上記コイル、及び上記ヨークが、上記ベース部材の前方に配置されていてもよい。このように、レバー部材、ロータマグネット、コイル、及びヨークをベース部材の一方の側に配置することで、羽根駆動装置の前後方向の厚さをさらに小さくすることができる。
【0048】
上記羽根駆動装置は、上記ベース部材の周縁部に沿って延びるフレキシブルプリント基板をさらに備えていてもよい。このフレキシブルプリント基板は、上記アクチュエータと電気的に接続される配線を内部に備えていてもよい。この場合において、上記ベース部材は、外周面に形成された複数の係合部を含み、上記カバー部材は、上記ベース部材の上記複数の係合部に係合可能なフック部を含んでいてもよい。上記フック部は、上記ベース部材の上記複数の係合部に係合した際に上記フレキシブルプリント基板の外側に位置する延長部を有していてもよい。このような構成によれば、カバー部材のフック部がベース部材の係合部に係合しているときに、フック部の延長部がフレキシブルプリント基板の外側に位置するので、このフック部の延長部によってフレキシブルプリント基板を保持することができ、フレキシブルプリント基板が羽根駆動装置の外部に出てしまうことをコンパクトな構成で防止することができる。
【0049】
本発明の第2の態様によれば、部品点数を減らすとともに小型化が可能な撮像装置が提供される。この撮像装置は、上述した羽根駆動装置と、上記羽根駆動装置の上記カバー部材の上記開口を通って入射する光を受光する撮像素子とを備える。
【0050】
本発明の第3の態様によれば、部品点数を減らすとともに小型化が可能な電子機器が提供される。この電子機器は、上述した撮像装置を備えた電子機器が提供される。
【符号の説明】
【0051】
1,201 羽根駆動装置
10 ベース部材
11 開口
12 基面
14~16 ガイドポスト
19A 上側係合部
19B 下側係合部
20 コイルユニット
21 ヨーク
22 コイルベース
23 コイル
24A,24B アーム部
30 カバー部材
31 開口
32A,32B フック部
39 延長部
40,340 羽根部材
41,42 ガイド溝
43 長孔
45,46 逃げ部
50,350 レバーユニット
51,351 ロータマグネット
52,352 レバー部材
53,353 レバー本体
54,354 連結部
55,56,355 突出部
61,62 凹部
63 支軸
71,271 フレキシブルプリント基板
342 支軸
400 スマートフォン
401 撮像装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10