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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】クリップカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/122 20060101AFI20240919BHJP
   A61B 17/128 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
A61B17/122 100
A61B17/128 100
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020217215
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102474
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前久保 尚武
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-209775(JP,A)
【文献】特開2017-217206(JP,A)
【文献】特開2009-011769(JP,A)
【文献】特開2009-022777(JP,A)
【文献】特開2006-158668(JP,A)
【文献】特開2009-189706(JP,A)
【文献】特開2017-148182(JP,A)
【文献】特開2014-188345(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0112359(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0020531(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0271066(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0205836(US,A1)
【文献】国際公開第2006/062019(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/123137(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/122
A61B 17/128
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用のクリップと、先端側に連結部を有する線状物とを連結するためのクリップカートリッジであって、
クリップケースと、
前記クリップケース内に配置され、前記クリップが挿入される内腔を有するリングと、
前記クリップケース内に配置され、前記リングによって開閉するクリップであって、互いに対向している第1腕部と第2腕部を有し、対象物を挟持する先端と、前記線状物の前記連結部に連結される基端とを有するクリップと、を有し、
前記クリップケースはその外側表面に、前記線状物の前記連結部が挿入される挿入口を有し、
前記クリップケースはその内部に、前記リングが載置される第1載置面と、前記クリップが載置される第2載置面と、前記挿入口に連通し、前記線状物が挿通される挿通路とを有し、
前記第1載置面は、前記リングの中心軸が前記挿通路の延在方向に平行になるように前記リングを載置する面であり、
前記第2載置面は、前記第1載置面とは異なる面であり、
前記クリップケース内で、前記第1載置面は前記線状物の挿入方向において前記挿通路よりも奥側に位置しており、前記第2載置面は前記線状物の挿入方向において前記第1載置面よりも奥側に位置しており、
前記クリップケースを水平面に置いた状態で、前記クリップケースは前記水平面と垂直であって重力方向と平行な上下方向を有し、
前記第1載置面上に前記リングを載置し、前記第2載置面上に前記クリップを載置した載置状態前記上下方向において前記クリップの最下端が前記リングの最下端よりも低い位置にあり、
前記クリップケースはその内側表面に、前記挿通路の径方向の内方に向かって突出している外筒保持部を有し、前記外筒保持部は前記線状物の挿入方向において前記第1載置面よりも手前側に位置しているクリップカートリッジ。
【請求項2】
前記線状物は、外筒の内腔に配置されているものであり、
前記外筒保持部は、前記外筒の外表面を押圧するものである請求項1に記載のクリップカートリッジ。
【請求項3】
前記外筒保持部は、前記線状物の挿入方向において前記挿入口よりも奥側に設けられている請求項1または2に記載のクリップカートリッジ。
【請求項4】
前記挿通路は、前記挿通路の延在長さを二等分割することで規定される挿入口側区間と第1載置面側区間とを有し、前記外筒保持部は、前記挿入口側区間に設けられている請求項3に記載のクリップカートリッジ。
【請求項5】
前記外筒保持部は、前記挿通路の径方向における前記外筒保持部の高さが、前記第1載置面に近づくにつれて高くなる部分を有している請求項1~4のいずれか一項に記載のクリップカートリッジ。
【請求項6】
前記外筒保持部は、突出方向とは反対側に移動可能である請求項1~5のいずれか一項に記載のクリップカートリッジ。
【請求項7】
前記クリップケースは、前記第2載置面を有する第1ケース体と、前記第1ケース体を覆っている第2ケース体を有し、
前記外筒保持部が、前記第1ケース体の内側表面にある請求項1~6のいずれか一項に記載のクリップカートリッジ。
【請求項8】
前記第1ケース体には前記挿通路の延在方向に平行な第1方向に延在している弾性片が設けられており、
前記弾性片は前記第1方向において前記挿入口に近い第1端と、前記第1端と反対側の第2端を有し、
前記弾性片の前記第2端側が前記第1ケース体に固定され、前記弾性片の前記第1端側が前記第2端側を支点として弾性変形可能であり、
前記外筒保持部が前記弾性片の前記第1端側に設けられている請求項7に記載のクリップカートリッジ。
【請求項9】
前記第1載置面上に前記リングを載置し、前記第2載置面上に前記クリップを載置した載置状態において、前記外筒保持部の先端が、前記リングの最下端よりも高い位置にある請求項1~8のいずれか一項に記載のクリップカートリッジ。
【請求項10】
前記第1載置面上に前記リングを載置し、前記第2載置面上に前記クリップを載置した載置状態において、前記外筒保持部の先端が、前記リングの前記内腔の最下端よりも高い位置にある請求項1~9のいずれか一項に記載のクリップカートリッジ。
【請求項11】
記線状物は、外筒の内腔に配置されているものであり、
前記外筒保持部は、前記外筒の外表面を押圧可能なものであり、
前記クリップケースは、その内部であって前記挿通路と前記第1載置面の間に、前記外筒の遠位端が突き当たる壁を有している請求項1~10のいずれか一項に記載のクリップカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用のクリップと、先端側に連結部を有する線状物とを連結するためのクリップカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡を利用した処置では、患部等の処置対象組織を挟持するために医療用のクリップが用いられる。医療用のクリップは、ワイヤ等の線状物の先端側に取り付けられて、患者の体内に運ばれる。線状物と、線状物の先端側に取り付けられたクリップを備えたクリップ装置が内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネルに挿入されて、クリップが処置対象組織まで搬送されることによって、患者の体内でクリップによる施術が可能となる。クリップは1回の施術で複数個用いられることが多く、クリッピング操作の度にクリップ装置に新たなクリップを取り付ける必要がある。そこで、クリップの取り付けを効率よく行うために連結補助具としてクリップカートリッジが提案されている(例えば、特許文献1~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/121401号
【文献】特開2017-217206号公報
【文献】特開2017-148182号公報
【文献】特開2009-11769号公報
【文献】国際公開第2017/94455号
【文献】国際公開第2018/123137号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
手技時間の短縮による術者や患者の負担軽減のため、更に効率よく取り付けが可能なクリップカートリッジを提供することは有益である。そこで、本発明は、クリップの取り付けの効率化に資するクリップカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成し得た本発明のクリップカートリッジの一実施態様は、医療用のクリップと、先端側に連結部を有する線状物とを連結するためのクリップカートリッジであって、クリップケースと、クリップケース内に配置され、クリップが挿入される内腔を有するリングと、クリップケース内に配置され、リングによって開閉するクリップであって、互いに対向している第1腕部と第2腕部を有し、対象物を挟持する先端と、線状物の連結部に連結される基端とを有するクリップと、を有し、クリップケースはその外側表面に、線状物の連結部が挿入される挿入口を有し、クリップケースはその内部に、リングが載置される第1載置面と、クリップが載置される第2載置面と、挿入口に連通し、線状物が挿通される挿通路とを有し、第1載置面は、リングの中心軸が挿通路の延在方向に平行になるようにリングを載置する面であり、第2載置面は、第1載置面とは異なる面であり、クリップケース内で、第1載置面は挿通路よりも挿入口から遠い側に位置しており、第2載置面は第1載置面よりも挿入口から遠い側に位置しており、第1載置面上にリングを載置し、第2載置面上にクリップを載置した載置状態において、クリップの最下端がリングの最下端よりも低い位置にあり、クリップケースはその内側表面に、挿通路の径方向の内方に向かって突出している外筒保持部を有し、外筒保持部は第1載置面よりも挿入口に近い側に位置している点に要旨を有する。外筒保持部によってクリップケース内の第1載置面よりも挿入口側の一部が狭められる。挿通路に挿入される部材、例えば線状物や内腔に線状物が配置されている外筒が外筒保持部に接触しやすくなる。外筒保持部の接触による摩擦力で挿通路に挿入される部材の移動を規制することができる。その結果、クリップと線状物の連結の際に挿通路に挿入される部材がクリップケースから脱落しにくくなるため、連結を効率よく行うことができる。
【0006】
線状物は、外筒の内腔に配置されているものであり、外筒保持部は、外筒の外表面を押圧するものであることが好ましい。外筒保持部は、挿入口よりも第1載置面に近い側に設けられていることが好ましい。外筒保持部は、挿通路の延在長さを二等分割したときの挿入口に近い側に設けられていることが好ましい。外筒保持部は、挿通路の径方向における外筒保持部の高さが、第1載置面に近い側に向かって高くなる部分を有していることが好ましい。
【0007】
外筒保持部は、突出方向とは反対側に移動可能であることが好ましい。クリップケースは、第2載置面を有する第1ケース体と、第1ケース体を覆っている第2ケース体を有し、外筒保持部が、第1ケース体の内側表面にあることが好ましい。第1ケース体には挿通路の延在方向に平行な第1方向に延在している弾性片が設けられており、弾性片は第1方向において挿入口に近い第1端と、第1端と反対側の第2端を有し、弾性片の第2端側が第1ケース体に固定され、弾性片の第1端側が第2端側を支点として弾性変形可能であり、外筒保持部が弾性片の第1端側に設けられていることが好ましい。
【0008】
第1載置面上にリングを載置し、第2載置面上にクリップを載置した載置状態において、外筒保持部の先端がリングの最下端よりも高い位置にあることが好ましい。第1載置面上にリングを載置し、第2載置面上にクリップを載置した載置状態において、外筒保持部の先端がリングの内腔の最下端よりも高い位置にあることが好ましい。線状物は、外筒の内腔に配置されているものであり、外筒保持部は、外筒の外表面を押圧可能なものであり、クリップケースは、その内部であって挿通路と第1載置面の間に、外筒の遠位端が突き当たる壁を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
上記クリップカートリッジによれば、クリップと線状物の連結の際に挿通路に挿入される部材、例えば線状物や内腔に線状物が配置されている外筒がクリップケースから脱落しにくくなるため、連結を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るクリップカートリッジの分解斜視図である。
図2図1に示したクリップカートリッジの平面図である。
図3図1に示したクリップカートリッジの一部の断面を示す模式図である。
図4】本発明の一実施態様に係るクリップの側面図である。
図5】本発明の一実施態様に係る線状物の側面図(一部断面図)である。
図6】本発明の一実施態様に係るクリップと線状物の連結方法の一例を示す模式図である。
図7】本発明の一実施態様に係るクリップと線状物の連結方法の一例を示す模式図である。
図8】本発明の一実施態様に係るクリップと線状物の連結方法の一例を示す模式図である。
図9】本発明の一実施態様に係るクリップと線状物の連結方法の一例を示す模式図である。
図10】本発明の一実施態様に係るクリップと線状物の連結方法の一例を示す模式図である。
図11】本発明の一実施態様に係るクリップと線状物の連結方法の一例を示す模式図である。
図12】本発明の一実施態様に係るクリップと線状物の連結方法の一例を示す模式図である。
図13図3に示したクリップカートリッジの変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のクリップカートリッジの一実施態様は、医療用のクリップと、先端側に連結部を有する線状物とを連結するためのクリップカートリッジに関するものである。クリップカートリッジは、内視鏡下でクリップ装置を利用した処置を行う際に用いられる。詳細には、クリップを取り付けたクリップ装置を内視鏡の鉗子チャンネル内を通じてクリップを処置対象組織まで搬送することにより、患者の体内でクリップによる施術を行うことができる。
【0012】
クリップカートリッジは、クリップケースと、クリップケース内に配置され、クリップが挿入される内腔を有するリングと、クリップケース内に配置され、リングによって開閉するクリップであって、互いに対向している第1腕部と第2腕部を有し、対象物を挟持する先端と、線状物の連結部に連結される基端とを有するクリップと、を有し、クリップケースはその外側表面に、線状物の連結部が挿入される挿入口を有し、クリップケースはその内部に、リングが載置される第1載置面と、クリップが載置される第2載置面と、挿入口に連通し、線状物が挿通される挿通路とを有し、第1載置面は、リングの中心軸が挿通路の延在方向に平行になるようにリングを載置する面であり、第2載置面は第1載置面とは異なる面であり、クリップケース内で、第1載置面は挿通路よりも挿入口から遠い側に位置しており、第2載置面は第1載置面よりも挿入口から遠い側に位置しており、第1載置面上にリングを載置し、第2載置面上にクリップを載置した載置状態において、クリップの最下端がリングの最下端よりも低い位置にあり、クリップケースはその内側表面に、挿通路の径方向の内方に向かって突出している外筒保持部を有し、外筒保持部は第1載置面よりも挿入口に近い側に位置している点に要旨を有する。外筒保持部によってクリップケース内の第1載置面よりも挿入口側の一部が狭められる。挿通路に挿入される部材、例えば線状物や内腔に線状物が配置されている外筒が外筒保持部に接触しやすくなる。外筒保持部の接触による摩擦力で挿通路に挿入される部材の移動を規制することができる。その結果、クリップと線状物の連結の際に挿通路に挿入される部材がクリップケースから脱落しにくくなるため、連結を効率よく行うことができる。
【0013】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0014】
図1図13を参照して、クリップカートリッジ、クリップ装置およびクリップシステムの構成について説明する。図1は本発明の一実施形態に係るクリップカートリッジの分解斜視図である。図2図1に示したクリップカートリッジの平面図である。図3図1に示したクリップカートリッジの一部の断面を示す模式図である。図4は本発明の一実施態様に係るクリップの側面図である。図5は本発明の一実施態様に係る線状物の側面図(一部断面図)である。図6図12は本発明の一実施態様に係るクリップと線状物の連結方法の一例を示す模式図である。図13図3に示したクリップカートリッジの変形例を示す模式図である。なお、図1では、第2ケース体26に複数の接続ピン26Jが設けられ、接続ピン26Jがそれぞれ挿入される穴25Kが第1ケース体25に複数設けられていることを示した。図6図10図12では接続ピン26Jおよび穴25Kを省略して記載している。
【0015】
クリップカートリッジ1は、リング2と、クリップ5と、クリップケース10を備える。以下では、クリップカートリッジをカートリッジ、クリップケースをケースと称することがある。カートリッジ1について詳しく説明する前にクリップ装置およびクリップシステムについて説明する。クリップ装置は、少なくともクリップ5とリング2と線状物30とを含む。図5に示すように、線状物30は線状に形成されており、長手軸方向に先端30Aと基端(図示せず)を有している。線状物30はその先端30A側にクリップ5と連結される連結部32を有している。線状物30の先端30A側がカートリッジ1に挿入される。クリップシステムは、少なくともケース10と;クリップ5とリング2と線状物30を有するクリップ装置と;を含むものである。詳細は後述するがケース10の内部にクリップ5とリング2が収容される。例えば、図6図8に示すようにケース10内にクリップ装置の線状物30の先端30A側を挿入し、図9に示すように線状物30をリング2の内腔4に通した後、図10図11に示すように線状物30の連結部32にクリップ5を取り付けることができる。このような操作により、クリップ装置が使用可能になる。
【0016】
線状物30は一または複数の部材から構成することができる。連結部32は、線状物30と一体的に形成されていてもよい。図5に示すように、線状物30は、長尺な線状物本体31と、線状物本体31の先端側に取り付けられている連結部32と、を有していてもよい。
【0017】
線状物本体31は中実状であっても中空状であってもよい。線状物本体31は単線であっても、単線を撚り合わせた撚り線であってもよい。線状物本体31としては、例えばステンレス鋼、炭素鋼等の金属線材や、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の合成樹脂から形成された糸条を用いることができる。線状物本体31の表面はフッ素樹脂等の樹脂でコーティングされていてもよい。
【0018】
連結部32はクリップ5の基端5B側に連結できる限り、その形状は特に限定されない。連結部32は、球形状、長円球形状、半円球形状、半長円球形状、涙滴形状、多角形状、錐形状、錐台形状、柱形状、またはこれらを組み合わせた形状とすることができる。連結部32は線状物本体31よりも外径が大きくてもよい。連結部32が、クリップ5の基端5B側に好ましく設けられる被連結部9に連結することで、クリップ5と線状物30を固定することができる。クリップ5と、線状物30の連結形態は特に限定されず、図4に示すクリップ5の被連結部9を、線状物30の先端側に配置した2つの連結用の部材によって挟んで連結する形態や、図4に示すクリップ5の基端5B側の第1腕部6と第2腕部7が平行になっている部分で、線状物30の先端側の連結部32を挟んで連結する形態などが挙げられる。クリップカートリッジ1においてクリップ5と線状物30の連結には、クリップ5の幅方向zから線状物30がアプローチする形態を好ましく用いることができる。
【0019】
連結部32は、生体適合性を有する材料から構成されていればよく、例えばステンレス鋼、炭素鋼等の金属や、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、フッ素樹脂等の合成樹脂から構成することができる。
【0020】
線状物30はその少なくとも一部が内筒35内に配置されていることが好ましい。すなわち、クリップ装置はさらに内筒35を有し、内筒35の内腔に線状物30が配置されることが好ましい。線状物30にクリップ5を連結して使用する際、線状物30を内筒35の長手軸方向に対して近位側または遠位側に移動させることでクリップ5の開度を調整することができる。例えば、線状物30を内筒35に対して近位側に移動させるとリング2と内筒35とが接触し、リング2をクリップ5の先端5A側に移動させることでクリップ5を閉じることができる。
【0021】
内筒35は、体腔内の形状に沿って屈曲する可撓性と、処置対象組織まで確実に到達する剛性の両方を兼ね備えていることが望ましい。内筒35は、金属や合成樹脂によって形成されたコイル体、短筒状の関節駒を軸方向に複数連結して回動可能にした筒体、合成樹脂から形成された筒体、またはこれらの組み合わせから構成することができる。
【0022】
クリップ装置はさらに外筒36を有していてもよい。その場合、内筒35が外筒36の内腔362に配置される。線状物30にクリップ5を連結した状態で、クリップ5は外筒36から出し入れ自在に構成されていることが好ましい。外筒36内にクリップ5を収めることでクリップ5が外に露出せずに済む。また、クリップ5を対象組織の近くまで搬送する間には、外筒36内にクリップ5を収めることでクリップ5が鉗子チャンネルや病変以外の体内組織を傷付けることを抑制する。
【0023】
外筒36は、内筒35と同様に可撓性と剛性を備えていることが望ましい。外筒36は、合成樹脂から形成された筒体や、金属や合成樹脂によって形成されたコイル体、短筒状の関節駒を軸方向に複数連結して回動可能にした筒体、またはこれらの組み合わせから構成することができる。中でも、外筒36には合成樹脂から形成された筒体が好ましく用いられる。外筒36と内筒35との位置関係を確認しやすくするために、外筒36は透明または半透明な材料から構成してもよい。
【0024】
クリップ5は医療用であり、例えば内視鏡下の処置で病変部等の対象物の封止、カウンタートラクション、止血、縫縮、マーキングのために用いられる。クリップ5はケース10内に配置され、リング2によって開閉するものである。クリップ5は、対象物を挟持する先端5Aと、線状物30の連結部32に連結される基端5Bとを有する。クリップ5は基端5B側を支点として、リング2によって先端5A側が開閉可能に構成される。
【0025】
図4に示すように、クリップ5は互いに対向している第1腕部6と第2腕部7を有する。第1腕部6と第2腕部7はそれぞれ基端5Bから先端5Aに延びている。第1腕部6と第2腕部7は、先端5A側に向かって互いに離れるように延びている部分を有している。第1腕部6と第2腕部7は互いに基端5B側で接続されている。図4に第1腕部6と第2腕部7の接続部8が示されている。U字状やY字状に折り曲げられた1枚の細長い板の長手方向の第1側部が第1腕部6であり、長手方向の第2側部が第2腕部7でもよい。また、互いに対向配置されている2枚の細長い板の一方が第1腕部6であり、他方が第2腕部7でもよい。開閉方向yは、方向xに垂直な方向であり、図4に示す矢印yの方向である。第1腕部6と第2腕部7の開閉の軌跡は、例えば円弧など、方向y以外の方向成分を含んでいてもよい。
【0026】
クリップ5は、先端5Aから基端5Bに向かう方向xおよび開閉方向yに垂直な幅方向zを有していることが好ましい。図3に示すようにクリップ5は幅方向zに第1端51Cと第2端51Dを有していることが好ましい。
【0027】
クリップ5の基端5B側には被連結部9が設けられていることが好ましい。被連結部9が線状物30の連結部32に連結される。被連結部9の構造は特に限定されないが、例えば図4のように第1腕部6がその基端5B側に第2腕部7側に向かって突出している第1爪9Aを有し、第2腕部7がその基端5B側に第1腕部6側に向かって突出している第2爪9Bを有している構造とすることができる。第1爪9Aと第2爪9Bが連結部32に引っかかることでクリップ5と線状物30の連結後に線状物30がクリップ5から外れにくくなる。被連結部9の他の態様として、図4に示すクリップ5の基端5B側で第1腕部6と第2腕部7が平行になっている部分に線状物30の先端側の連結部32を挟んで連結する態様などが挙げられる。
【0028】
図面ではクリップ5の第1腕部6と第2腕部7が先端5Aから基端5Bに向かって一定の幅を有している例を示しているが、先端5Aから基端5Bに向かう方向xの位置によって腕部の幅が異なっていてもよい。クリップ5の幅を変えることで、クリップの把持力を調節したり、ケース10内でのリング2とクリップ5の鉛直方向の位置を調整することができる。
【0029】
図1および図3に示すように、リング2はケース10内に配置され、クリップ5が挿入される内腔4を有するものである。ケース10内ではリング2とクリップ5は離れて配置されている。クリップ5と線状物30との連結後に線状物30を手元側に引き出すと、リング2はクリップ5の周囲を囲むように配置される。リング2の外径は外筒36の内径よりも小さくなっている。これにより、外筒36内にクリップ5とリング2が収められる。
【0030】
リング2の中心軸3に垂直な断面の形状は特に限定されないが、例えば円形状、長円形状、多角形状であってもよい。リング2は切れ込みが入った断面C字の形状であってもよく、線材がらせん状に巻回されて形成されたコイル形状であってもよい。
【0031】
クリップ5やリング2は、高弾性と生体適合性を有する材料から構成することが好ましい。クリップ5やリング2は、例えばSUS301、SUS303、SUS304、SUS631等のステンレス鋼、Ni-Ti合金等から構成することができる。
【0032】
ケース10は、リング2とクリップ5を内部に収容するものである。ケース10はその外側表面に、線状物30の連結部32が挿入される挿入口11を有し、ケース10はその内部に、リング2が載置される第1載置面14と、クリップ5が載置される第2載置面16と、挿入口11に連通し、線状物30が挿通される挿通路12とを有している。第1載置面14は、リング2の中心軸3が挿通路12の延在方向uに平行になるようにリング2を載置する面であり、第2載置面16は第1載置面14とは異なる面である。ケース10内で、第1載置面14は挿通路12よりも挿入口11から遠い側に位置しており、第2載置面16は第1載置面14よりも挿入口11から遠い側に位置している。第1載置面14上にリング2を載置し、第2載置面16上にクリップ5を載置した載置状態において、クリップ5の最下端5Lがリング2の最下端2Lよりも低い位置にある。ケース10はその内側表面に、挿通路12の径方向vの内方に向かって突出している外筒保持部70を有し、外筒保持部70は第1載置面14よりも挿入口11に近い側に位置している。外筒保持部70によってケース10内の第1載置面14よりも挿入口11側の一部が狭められる。挿通路12に挿入される部材、例えば線状物30や内腔362に線状物30が配置されている外筒36が外筒保持部70に接触しやすくなる。外筒保持部70の接触による摩擦力で挿通路12に挿入される部材の移動を規制することができる。その結果、クリップ5と線状物30の連結の際に挿通路12に挿入される部材がケース10から脱落しにくくなるため、連結を効率よく行うことができる。
【0033】
カートリッジ1を用いたクリップ5と線状物30の連結方法について説明する。図3に示すように第1載置面14上にリング2を載置し、第2載置面16上にクリップ5を載置する。この載置状態で、図6に示すように線状物30の先端30Aを挿入口11から挿通路12に挿入する。詳細には、内腔362に線状物30が配置されている外筒36を挿入口11から挿通路12に挿入することが好ましい。線状物30を奥側(図6図8の矢印A側)に挿入していくと、図9に示すように線状物30が第1載置面14上に載置されたリング2の内腔4に通される。さらに線状物30を奥に挿入すると、線状物30の先端30Aが第2載置面16の位置に到達する。上記載置状態でクリップ5の最下端5Lがリング2の最下端2Lよりも低い位置にあるため、図9に示すように線状物30の先端30Aが第2載置面16の位置まで到達したときに線状物30の少なくとも一部がクリップ5よりも高い位置に配される。線状物30をクリップ5側(図9の矢印B側)へ押し込むことで、図10図11に示すようにクリップ5の第1腕部6と第2腕部7の幅方向zの一方側から第1腕部6と第2腕部7の間に線状物30を嵌めることができる。カートリッジ1によれば、クリップ5と線状物30を連結する際に、クリップ5の基端5Bから先端5Aに向かう方向に線状物30を動かしてクリップ5の被連結部9に連結部32を差し込む操作を行わなくてもよい。このことはクリップ5と線状物30の連結不良発生の抑制やクリップ5の基端5B側の変形の抑制に寄与する。なお、幅方向zの一方側とは、第2載置面16に接している側と反対側であり、図面では第2端5D側である。
【0034】
図示していないが、ケース10は、第2載置面16を有する第1ケース体25と、第1ケース体25を覆っている第2ケース体26と、を有し、第2ケース体26は、第1ケース体25側へ移動し且つ線状物30を押圧する押圧部を有していてもよい。押圧部を線状物30に接触させた状態で押圧部を第1ケース体25側へ移動させることで、線状物30にクリップ5を取り付けることができる。第2ケース体26が外側から押圧されると押圧部が線状物30に接触してもよい。第2ケース体26の内側に第1ケース体25側に向かって突出している突出部が設けられ、押圧部が突出部の先端部に設けられていてもよい。
【0035】
ケース10内でクリップ5と線状物30を連結した後は、線状物30を手元側に引くと、リング2はクリップ5の周囲を囲むように配置される。さらに線状物30を手元側に引くと外筒36内にクリップ5とリング2を収めることができる。外筒36と線状物30を手元側に引くことで、外筒36内にクリップ5とリング2が収められた状態でクリップ装置をケース10から抜き取ることができる。処置の際には、外筒36からクリップ5とリング2を露出させて使用する。
【0036】
図12に示すように、互いに連結されているクリップ5と線状物30を、挿入口11を介してケース10から引き出し可能であることが好ましい。クリップ5をケース10から取り外す際にケース10を分解する必要がなくなるため、クリップ5を線状物30に連結した後すぐに手技を行うことができる。
【0037】
ケース10はその内部にリング2とクリップ5を収容できる容器形状をしていればよい。ケース10の外形は例えば多面体であってもよい。多面体としては直方体形状が挙げられる。図1ではケース10の外形が偏平な直方体形状である例を示している。ケース10は一または複数の部材から構成することができる。
【0038】
ケース10は、第2載置面16を有する第1ケース体25と、第1ケース体25を覆っている第2ケース体26とを有していることが好ましい。クリップ5が第2載置面16から脱落しないように、ケース10は第1ケース体25から第2ケース体26に向かう方向に延びている壁25Aを有していることが好ましい。図1および図3から理解できるように第1ケース体25と第2ケース体26がそれぞれ凹形状を有する部分を有しており、これらケース体の凹形状部分が対向するように配置されることで、クリップ5を収容するクリップ収容部17が形成されていてもよい。また、第1ケース体25が板状に形成されており、第2ケース体26が板状の第1ケース体25を覆うように逆凹状に形成されていてもよい。第1ケース体25が凹状に形成され、第2ケース体26が板状に形成されていてもよい。
【0039】
挿入口11は挿通路12に連通している限り、ケース10の外側表面のどの部分に設けられていてもよい。ケース10が上面部10Aと下面部10Bと4つの側面部10C~10Fを有する直方体形状である場合、上面部10Aまたは4つの側面部10C~10Fのいずれかに挿入口11を設けることができる。挿入口11は挿通路12の入り口に相当してもよい。
【0040】
ケース10が、第1ケース体25と、第1ケース体25を覆っている第2ケース体26とを有している場合、図3に示すように挿入口11は第1ケース体25と第2ケース体26に跨がって設けられていてもよい。また、挿入口11が第1ケース体25と第2ケース体26のいずれか一方に設けられていてもよい。例えば、第2ケース体26に挿入口11が設けられていてもよい。これにより、ケース10内に線状物30を挿入したときに線状物30をクリップ5の幅方向zの一方側に近づけやすくなる。
【0041】
挿通路12は線状物30を挿入する通路であり、挿入口11と、第1載置面14を有するリング収容部15を繋ぐように形成される。挿通路12は、通常、挿入口11からリング収容部15まで真っ直ぐ延びるように形成される。挿通路12は例えばクリップ5の先端側に向かって低くなるように傾斜していてもよい。挿通路12の延在方向uは、挿入口11から第1載置面14を有するリング収容部15に至る方向に相当する。挿入口11と挿通路12は、外筒36を挿通可能な大きさを有していることが好ましい。
【0042】
第1載置面14は、リング2の少なくとも一部と接する部分を有する面である。第1載置面14では、リング2の中心軸3の方向が挿通路12の延在方向uに平行になるようにリング2が配置されている。挿通路12の延在方向uは、例えば挿通路12の長手軸中心の延在方向によって規定することができる。リング2の中心軸3の方向が挿通路12の延在方向uに平行になるとは、リング2の中心軸3の方向と挿通路12の延在方向uが実質的に平行になるものも含まれる。例えば、リング2の中心軸3の方向が挿通路12の延在方向uに対して±5度以内に傾斜しているものも含まれる。なお、カートリッジ1をリング2の中心軸3の方向から見たときに、リング2の中心軸3の方向と挿通路12の長手軸中心の延在方向が重ならなくてもよい。
【0043】
第1載置面14は単一の面から構成されていてもよく、複数の面から構成されていてもよい。第1載置面14は平面のみから構成されていてもよく、曲面のみから構成されていてもよく、平面と曲面の組み合わせによって構成されていてもよい。第1載置面14は、リング2の外周面に沿った形状を有していてもよい。
【0044】
ケース10が、第1ケース体25と、第1ケース体25を覆っている第2ケース体26とを有している場合、第1ケース体25は、第1載置面14を有していることが好ましい。第1載置面14は第1ケース体25の内側表面の一部であってもよい。例えば、図1のように第1ケース体25の内側表面に設けられている凸部25Bの表面の一部であってもよい。別の態様として、第1ケース体25がその内側にリング2を保持する保持部材(図示せず)を有しており、保持部材の表面の一部が第1載置面14であってもよい。
【0045】
第1載置面14よりも奥側にはクリップを収容するクリップ収容部17が設けられている。クリップ収容部17は第2載置面16を有している。第2載置面16は、クリップ5の少なくとも一部と接する部分を有する面である。第2載置面16では、クリップ5の第1腕部6と第2腕部7が開いた状態でクリップ5が載置される。クリップ5は、クリップ5の基端5B側が挿通路12側を向くように配置される。第2載置面16はクリップ5の基端5Bと接していてもよく、クリップ5の先端5Aと接していてもよく、先端5Aと基端5Bの両方と接していてもよい。
【0046】
第2載置面16は単一の面から構成されていてもよく、複数の面から構成されていてもよい。第2載置面16は平面のみから構成されていてもよく、曲面のみから構成されていてもよく、平面と曲面の組み合わせによって構成されていてもよい。第2載置面16はクリップ5の第1腕部6および第2腕部7の幅方向zの端縁に沿った形状を有していてもよい。
【0047】
クリップ5を載置した状態で、第2載置面16は水平面と平行であってもよく、第2載置面16がクリップ5の先端5A側または基端5B側に向かって低くなるように傾斜していてもよい。第2載置面16はリング2の中心軸3の方向と平行であってもよく、リング2の中心軸3の方向に対して傾斜していてもよい。なお、水平面とは重力方向nに垂直な水平方向mを含む面である。
【0048】
第2載置面16は第1載置面14とは異なる面である。これは載置状態で、第1載置面14と第2載置面16の高さが少なくとも一部で異なることを示している。第1載置面14と第2載置面16とは、段差などによって区切られた互いに異なる面であってもよく、少なくとも一部で高さが異なる第1載置面14と第2載置面16とがつながれて連続的な形状をなしていてもよい。
【0049】
図3に示すような載置状態では、第1載置面14にリング2が載置されてリング2の少なくとも一部が第1載置面14と接しており、かつ、第2載置面16にクリップ5が載置されてクリップ5の少なくとも一部が第2載置面16と接している。なお、リング2とクリップ5のいずれかが載置面と接していない状態は載置状態には含まれない。ケース10が第1ケース体25と第2ケース体26を有している場合、上記載置状態にするためには、第1ケース体25を第2ケース体26よりも鉛直方向の下側に配置すればよい。
【0050】
ケース10が、第1ケース体25と、第1ケース体25を覆っている第2ケース体26とを有している場合、第2載置面16は第1ケース体25の内側表面の一部であってもよい。別の態様として、第1ケース体25がその内側にクリップ5を支持する支持部材(図示せず)を有しており、支持部材の表面の一部が第2載置面16であってもよい。
【0051】
外筒保持部70はケース10の内側表面に設けられている。外筒保持部70は、挿通路12の径方向vの内方に向かって突出している。外筒保持部70は、挿通路12に挿入される部材39と接触する。挿通路12に挿通される部材39とは、例えば、線状物30や、図6図12のように線状物30が内腔362に配置されている外筒36であり、以下では単に部材39と称することがある。中でも、外筒保持部70は外筒36の外側表面である外表面361に接触することが好ましい。ケース10が、第1ケース体25、第2ケース体26のように2つのケース体からなる場合、一方のケース体に設けられた外筒保持部70は、他方のケース体に向かって突出している。
【0052】
図1図3ではケース10に単一の外筒保持部70が設けられているが、ケース10には複数の外筒保持部70が設けられていてもよい。図1図3のように外筒保持部70はケース10と一体的に形成されていてもよく、外筒保持部形成用の部品がケース10内に配置されることにより形成されていてもよい。
【0053】
外筒保持部70は、部材39と点接触、線接触、または面接触するが、中でも面接触することが好ましい。部材39の移動を過度に規制しないように、外筒保持部70は部材39の周方向の一部のみと接触することが好ましい。
【0054】
外筒保持部70は部材39を押圧するものであることが好ましい。これにより、外筒保持部70による摩擦力を大きくすることができるため、部材39の移動を適切に規制することができる。
【0055】
線状物30は外筒36の内腔362に配置されているものであり、外筒保持部70は外筒36の外表面361を押圧するものであることが好ましい。これにより外筒36の移動を適切に規制することができる。
【0056】
外筒36は、外筒36の先端が、外筒保持部70よりも第1載置面14側に位置するように移動可能であってもよい。外筒保持部70は、外筒36の外表面361を押圧するものであってもよい。外筒保持部70は、外筒36の先端にある開口端面37とは接触しなくてもよい。外筒36は、外筒36の先端が第1載置面14よりも挿入口11側に位置するように移動可能であってもよい。
【0057】
外筒保持部70の形状は特に限定されない。外筒保持部70は、球形状、長円球形状、半円球形状、半長円球形状、涙滴形状、多角形状、錐形状、錐台形状、柱形状、舌片形状、ブラシ形状、またはこれらを組み合わせた形状とすることができる。図1では、外筒保持部70は、挿通路12の奥側に向かって突出高さが大きくなるように配された三角柱形状である。外筒保持部70は塊状であってもよい。外筒保持部70は多面体であってもよい。
【0058】
外筒保持部70の形状は特に限定されないが、外筒保持部70は挿通路12の延在方向に延在していることが好ましい。これにより、部材39に外筒保持部70を広範囲で接触させやすくなる。外筒保持部70は挿通路12の周方向に延在していてもよい。外筒保持部70は挿通路12の長手軸中心周りにらせん状に延在していてもよい。また、外筒保持部70が、挿通路12に向かって突出するらせん状の部分であってもよい。
【0059】
外筒保持部70は挿通路12の径方向vに対応している高さ方向と、高さ方向および挿通路12の延在方向に垂直な幅方向を有している。外筒保持部70の幅は部材39の長手方向に垂直な方向の幅よりも大きいことが好ましい。これにより、外筒保持部70によって、外筒などの部材39を確実に押すことができる。外筒36の長手方向の断面は円形であることが多いため、その幅よりも外筒保持部70の幅が大きい方が、押したときに外筒36が逃げにくく、外筒を確実に保持することができる。外筒を保持することにより、部材39の移動を規制することができる。
【0060】
外筒保持部70の高さは特に限定されないが、外筒保持部70の先端71は、挿通路12の長手軸中心付近に位置していることが好ましい。部材39を、ケース10から脱落しないが移動は可能な程度に挿通路12内に配置することができる。外筒保持部70の高さとは挿通路12の径方向vにおける高さであり、ケース10内に部材39を挿入しない状態での高さである。外筒保持部70の高さが高すぎると、部材39の挿入が困難となり、その高さが低すぎると、外筒を保持することができない。外筒保持部70の高さは、用いる外筒の直径や挿通路12のサイズを考慮して決定すべきである。外筒保持部70が外筒36を保持する強さは、クリップ5を上側にしてカートリッジ1だけを持った場合に、外筒36、内筒35、線状物30を含む、クリップ5のアプライヤーがカートリッジ1から脱落しない程度であることが好ましい。
【0061】
外筒保持部70の高さは一定であってもよい。外筒保持部70の高さは挿通路12の延在方向の位置によって異なっていてもよい。外筒保持部70の高さは挿通路12の周方向の位置によって異なっていてもよい。
【0062】
図3に示すように、外筒保持部70は、挿通路12の径方向vにおける外筒保持部70の高さが、第1載置面14に近い側に向かって高くなる部分を有していることが好ましい。これにより、外筒保持部70が設けられていても挿通路12へ部材39を受け入れやすくなる。また、部材39を挿通路12の奥側へ挿入していくと外筒保持部70が外筒36に徐々に強めに接触するため、部材39の移動を規制しやすくなる。
【0063】
外筒保持部70は、第1載置面14よりも挿入口11に近い側に設けられている限り、ケース10内の位置は限定されない。外筒保持部70は、挿通路12に設けられていてもよく、挿入口11に設けられていてもよい。図3に示すように、外筒保持部70は、挿入口11よりも第1載置面14に近い側に設けられていることが好ましい。挿入口11へ部材39を挿入しやすくしつつ、部材39の移動を規制することができる。
【0064】
外筒保持部70は、挿通路12の延在長さを二等分割したときの挿入口11に近い側12Aに設けられていることが好ましい。外筒保持部70によって、挿入の早い段階で部材39の移動を規制することができる。
【0065】
外筒保持部70は、挿通路12の延在長さを二等分割したときの第1載置面14に近い側12Bに設けられていてもよい。挿通路12への部材39の挿入をスムーズに行いやすくしつつ、外筒保持部70によって部材39の移動を規制することができる。
【0066】
挿通路12に外筒保持部70が設けられている場合、外筒保持部70において挿通路12の長手軸中心に対して垂直な方向の断面積が最も小さくなっていることが好ましい。これにより、部材39の移動を適切に規制することができる。
【0067】
ケース10が第2載置面16を有する第1ケース体25と、第1ケース体25を覆っている第2ケース体26を有している場合、図3に示すように、外筒保持部70は第1ケース体25側に設けられていることが好ましく、外筒保持部70は第1ケース体25の内側表面にあることがより好ましい。部材39が第2ケース体26側に押し付けられやすくなるため、クリップ5よりも高い位置に部材39が配されやすくなる。
【0068】
ケース10が第2載置面16を有する第1ケース体25と、第1ケース体25を覆っている第2ケース体26を有している場合、図13に示すように、外筒保持部70は第2ケース体26側に設けられていてもよく、外筒保持部70は第2ケース体26の内側表面にあってもよい。部材39が第1ケース体25側に押し付けられやすくなるため、部材39のうち線状物30を、第1載置面14に好ましく載置されているリング2の内腔4に挿入しやすくなる。
【0069】
外筒保持部70は第1ケース体25の内側表面と第2ケース体26の内側表面にそれぞれ設けられていてもよい。
【0070】
外筒保持部70が突出方向に移動可能であってもよい。これにより、部材39が外筒保持部70と接触しやすくなるため、部材39の移動を適切に規制することができる。
【0071】
図7図10に示すように、外筒保持部70は、突出方向とは反対側に移動可能であることが好ましい。外筒保持部70が突出方向と反対側、つまり挿通路の径方向の外方に移動することで、部材39と外筒保持部70との間に働く摩擦力を適度な大きさにすることができる。
【0072】
ケース10が外側から押圧されることで外筒保持部70が突出方向に移動可能であってもよい。操作者がケース10を押圧することで、部材39と外筒保持部70の接触度合いを調整することができる。ケース10の押圧を解除すると、外筒保持部70は突出方向とは反対側に移動してもよい。このように操作者のタイミングで外筒保持部70を移動させることができれば、部材39の移動を適切に規制することができる。
【0073】
部材39と外筒保持部70との接触度合いの調整のため、外筒保持部70は挿通路12の延在方向uに移動可能であってもよい。また、外筒保持部70は挿通路12の周方向に移動可能であってもよい。
【0074】
ケース10が、第2載置面16を有する第1ケース体25と、第1ケース体25を覆っている第2ケース体26を有し、外筒保持部70が第1ケース体25の内側表面にある場合、第1ケース体25には挿通路12の延在方向uに平行な第1方向に延在している弾性片27が設けられており、弾性片27は第1方向において挿入口11に近い第1端27Aと、第1端27Aと反対側の第2端27Bを有し、弾性片27の第2端27B側が第1ケース体25に固定され、弾性片27の第1端27A側が第2端27B側を支点として弾性変形可能であり、外筒保持部70が弾性片27の第1端27A側に設けられていることが好ましい。このように弾性片27に外筒保持部70を設けることで、挿通路12に部材39を挿入したときに、弾性片27の弾性変形により外筒保持部70が常に部材39と接触するように構成することができる。
【0075】
弾性片27は、第2ケース体26の一部を切り欠いて形成することができる。
【0076】
ケース10が第1ケース体25と第2ケース体26を有している場合、図13に示すように第2ケース体26に挿通路12の延在方向uに平行な第1方向に延在している弾性片27が設けられていてもよい。
【0077】
図示していないが、弾性片27の第1端27Aが第1ケース体25に固定され、弾性片27の第2端27Bが第1端27A側を支点として弾性変形してもよい。また、弾性片27はクリップ5の開閉方向yに延在していてもよい。その場合、弾性片27の一端が第1ケース体25に固定され、他端が一端を支点として弾性変形することが好ましい。
【0078】
図3では、外筒保持部70が第2載置面16と同じ側に設けられている。第1載置面14上にリング2を載置し、第2載置面16上にクリップ5を載置した載置状態において、外筒保持部70の先端71がリング2の最下端2Lよりも高い位置にあることが好ましい。このように外筒保持部70の高さを設定することで、部材39に外筒保持部70を接触させやすくなる。
【0079】
図3に示すように、第1載置面14上にリング2を載置し、第2載置面16上にクリップ5を載置した載置状態において、外筒保持部70の先端71がリング2の内腔4の最下端4Lよりも高い位置にあることが好ましい。このように外筒保持部70の高さを設定することで、部材39に外筒保持部70を接触させやすくなる。
【0080】
図13では、外筒保持部70が第2載置面16とは反対側に設けられている。その場合、部材39に外筒保持部70を接触させやすくするために、第1載置面14上にリング2を載置し、第2載置面16上にクリップ5を載置した載置状態において、外筒保持部70の先端71がリング2の最上端2Mよりも低い位置にあってもよい。また、上記載置状態において、外筒保持部70の先端71がリング2の内腔4の最上端4Mよりも低い位置にあってもよい。
【0081】
第1載置面14上にリング2を載置し、第2載置面16上にクリップ5を載置した載置状態において、クリップ5とリング2の位置関係は特に限定されない。例えば、クリップ5の全体がリング2の最下端2Lよりも低い位置にあってもよく、クリップ5の少なくとも一部がリング2の最下端2Lより高い位置にあってもよい。上記載置状態で第2載置面16の最下端が第1載置面14の最下端よりも低い位置にあってもよい。上記載置状態において、リング2の中心軸3はクリップ5の基端5Bの最上端よりも高い位置にあってもよい。上記載置状態において、クリップ5の最上端が第1載置面14の最下端よりも低い位置にあってもよい。上記載置状態において、クリップ5の最上端が第1載置面14の最下端よりも高い位置にあり、かつ第2載置面16の最上端が第1載置面14の最下端よりも低い位置にあってもよい。上記載置状態において、リング2の最下端2Lがクリップ5の基端5Bの最上端よりも高い位置にあってもよい。上記載置状態において、リング2の最下端2Lがクリップ5の最上端よりも高い位置にあってもよい。上記載置状態において、クリップ5の最上端がリング2の内腔4の最下端4Lよりも高い位置にあってもよい。上記載置状態で、クリップ5の一部が第2載置面16と接していなくてもよい。上記載置状態において、挿通路12の延在方向uが水平面と平行であってもよく、挿通路12がクリップ5の先端5A側に向かって低くなるように傾斜していてもよい。
【0082】
図11に示すように、線状物30が外筒36の内腔362に配置されているものであり、外筒保持部70が外筒36の外表面361を押圧可能なものである場合、図1に示すようにケース10は、その内部であって挿通路12と第1載置面14の間に、外筒36の遠位端が突き当たる壁18を有していてもよい。外筒36が壁18に突き当たることで外筒36が第1載置面14まで到達せずに済み、外筒36がリング2と接触しにくくなる。このため、外筒36との接触による第1載置面14からのリング2の脱落を抑制することができる。
【0083】
壁18は、第1ケース体25に固定されていてもよく、第1ケース体25や第2ケース体26とは異なる部材に設けられていてもよい。
【0084】
壁18は、挿通路12の径方向vに延在していてもよい。壁18の高さは特に限定されず、外筒36の外径より小さくてもよく、外筒36の外径の2分の1より小さくてもよい。
【0085】
ケース10、外筒保持部70、壁18の構成材料は特に限定されないが、精密加工が容易となり、また中に収容するクリップ5とリング2を衛生的に保ち、クリップ5の損傷を防ぐ点から、合成樹脂から構成されることが好ましい。なお、第1ケース体25と第2ケース体26の少なくともいずれか一方が透明または半透明な材料から形成されていることが好ましい。操作者が目視で確認しながらクリップ5と線状物30の連結作業を行いやすくなる。
【符号の説明】
【0086】
1:クリップカートリッジ
2:リング、2L:リングの最下端、3:中心軸、4:内腔
5:クリップ、5A:先端、5B:基端、5C:幅方向の第1端、5D:幅方向の第2端、6:第1腕部、7:第2腕部、8:接続部、9:被連結部
10:クリップケース、11:挿入口、12:挿通路、14:第1載置面、16:第2載置面、18:壁、25:第1ケース体、26:第2ケース体
27:弾性片、27A:第1端、27B:第2端
30:線状物、31:線状物本体、32:連結部、35:内筒、36:外筒、361:外表面、362:内腔、39:挿通路に挿通される部材
70:外筒保持部、71:先端
u:挿通路の延在方向
v:挿通路の径方向
x:先端から基端へ向かう方向
y:開閉方向
z:幅方向
図1
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