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特許7557364自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セット、自動車の外板および内板の塗膜ならびに自動車の外板および内板の塗膜の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セット、自動車の外板および内板の塗膜ならびに自動車の外板および内板の塗膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240919BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240919BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20240919BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/62
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020219533
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022104361
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 友
(72)【発明者】
【氏名】藤原 真一
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-358329(JP,A)
【文献】特開2005-137952(JP,A)
【文献】特開2006-272249(JP,A)
【文献】特開2008-086957(JP,A)
【文献】特開2003-093966(JP,A)
【文献】特開2002-205006(JP,A)
【文献】国際公開第2015/099150(WO,A1)
【文献】特開2012-170909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 201/00
C09D 7/61
C09D 7/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットであって、
前記外板の塗膜は、前記外板側から順に隣接して、第1ベース塗膜(BO1)および第2ベース塗膜を含む複層塗膜であり、
前記内板の塗膜は、ベース塗膜として第1ベース塗膜(BI1)のみを含み、
前記共用塗料組成物セットは、前記第1ベース塗膜(BO1)および前記第1ベース塗膜(BI1)を形成する第1ベース塗料組成物と、前記第2ベース塗膜を形成する第2ベース塗料組成物とを含み、
前記第1ベース塗料組成物は、樹脂成分と、硬化剤と、平均粒径が20μm~25μmである第1鱗片状光輝顔料と、を含み、
前記第2ベース塗料組成物は、樹脂成分と、硬化剤と、平均粒径が17μm~19μmである第2鱗片状光輝顔料と、を含み、
前記第1鱗片状光輝顔料の量は、前記第1ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.10~2.5質量部であり、
前記第2鱗片状光輝顔料の量は、前記第2ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.5~5.0質量部である、自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セット。
【請求項2】
自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットであって、
前記外板の塗膜は、前記外板側から順に隣接して、第1ベース塗膜(BO1)および第2ベース塗膜を含む複層塗膜であり、
前記内板の塗膜は、ベース塗膜として第1ベース塗膜(BI1)のみを含み、
前記共用塗料組成物セットは、前記第1ベース塗膜(BO1)および前記第1ベース塗膜(BI1)を形成する第1ベース塗料組成物と、前記第2ベース塗膜を形成する第2ベース塗料組成物とを含み、
前記第1ベース塗料組成物は、樹脂成分と、硬化剤と、平均粒径が15μm~25μmである第1鱗片状光輝顔料と、を含み、
前記第2ベース塗料組成物は、樹脂成分と、硬化剤と、平均粒径が15μm~25μmである第2鱗片状光輝顔料と、を含み、
前記第1鱗片状光輝顔料は、1種であり、
前記第2鱗片状光輝顔料は、2種以上であり、
前記第1鱗片状光輝顔料の量は、前記第1ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.10~2.5質量部であり、
前記第2鱗片状光輝顔料の量は、前記第2ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.5~5.0質量部である、自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セット。
【請求項3】
自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットであって、
前記外板の塗膜は、前記外板側から順に隣接して、第1ベース塗膜(BO1)および第2ベース塗膜を含む複層塗膜であり、
前記内板の塗膜は、ベース塗膜として第1ベース塗膜(BI1)のみを含み、
前記共用塗料組成物セットは、前記第1ベース塗膜(BO1)および前記第1ベース塗膜(BI1)を形成する第1ベース塗料組成物と、前記第2ベース塗膜を形成する第2ベース塗料組成物とを含み、
前記第1ベース塗料組成物は、樹脂成分と、硬化剤と、平均粒径が15μm~25μmである第1鱗片状光輝顔料と、を含み、
前記第2ベース塗料組成物は、樹脂成分と、硬化剤と、平均粒径が15μm~25μmである第2鱗片状光輝顔料と、を含み、
前記第1鱗片状光輝顔料の量は、前記第1ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.10~1.8質量部であり、
前記第2鱗片状光輝顔料の量は、前記第2ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して2.0~5.0質量部である、自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セット。
【請求項4】
前記第2鱗片状光輝顔料では、ガラス基材が金属酸化物で被覆されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セット。
【請求項5】
前記第1ベース塗膜(BO1)の乾燥膜厚が8μmであり、前記第2ベース塗膜の乾燥膜厚が10μmである場合の前記複層塗膜の視野角110°でのL110値が2未満であり、かつ、粒子感G値が3.5より大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載の自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セット。
【請求項6】
自動車の外板および内板の塗膜であって、
前記外板の塗膜は、請求項1~のいずれか一項に記載の自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットを用いた複層塗膜を含み、
前記複層塗膜は、前記外板側から順に隣接して、第1ベース塗膜(BO1)および第2ベース塗膜を含み、
前記内板の塗膜は、ベース塗膜として、請求項1~のいずれか一項に記載の自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットの第1ベース塗料組成物を用いた第1ベース塗膜(BI1)のみを含む、自動車の外板および内板の塗膜。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットを準備する工程と、
前記外板の表面側に前記第1ベース塗料組成物を塗装して、未硬化の第1ベース塗膜(BO1)を形成する工程と、
前記未硬化の第1ベース塗膜(BO1)上に前記第2ベース塗料組成物を塗装して、未硬化の第2ベース塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第1ベース塗膜(BO1)と前記未硬化の第2ベース塗膜を硬化させて、前記外板の複層塗膜を形成する工程と、
前記内板の表面側に前記第1ベース塗料組成物を塗装して、未硬化の第1ベース塗膜(BI1)を形成する工程と、
前記未硬化の第1ベース塗膜(BI1)を硬化させて、第1ベース塗膜(BI1)を形成する工程と、を備え、
前記内板の塗膜は、ベース塗膜として前記第1ベース塗膜(BI1)のみを含む、自動車の外板および内板の塗膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セット、自動車の外板および内板の塗膜ならびに自動車の外板および内板の塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の表面には、複数の塗膜が形成される。これら複数の塗膜は、自動車の車体を保護すると同時に自動車に優れた意匠性を付与する。
【0003】
自動車の表面のうち、車体外側の外板における複数の塗膜としては、例えば、外板側から順に、下塗り塗膜、中塗り塗膜および上塗り塗膜が挙げられる。これらの塗膜のうち、特に自動車の意匠性を大きく左右するのは、最も観察者側の表面に位置する上塗り塗膜である。また、上塗り塗膜は、車体表面側からベース塗膜とクリヤー塗膜とからなる場合がある。
【0004】
さらに、ベース塗膜は、車体表面側から第1ベース塗膜と第2ベース塗膜とからなる場合もある(例えば、特許文献1および2参照)。一般的に、第1ベース塗膜は、下地の塗膜(例えば、中塗り塗膜)の色を目立ちにくくする下地隠蔽性を有し、第2ベース塗膜は、意匠性を有する。
【0005】
近年は、消費者に光輝感を有する自動車が好まれるため、外板のベース塗膜、特に第2ベース塗膜に光輝感を生じさせる鱗片状の光輝顔料を配合する場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2015-099150号
【文献】特開2020-099888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自動車の表面のうち、車体内側の内板では、外板と塗膜構成が異なる場合もある。例えば、内板では、外板と異なり高い耐チッピング性(石跳ねによる傷防止性)が必須ではないため、中塗り塗膜がない場合もある。また、内板は高い耐候性を要しないのでクリヤー塗膜がない場合もある。
【0008】
従来、外板塗膜に第1ベース塗膜と第2ベース塗膜とを用いる場合、内板塗膜には外板の第1ベース塗膜用の塗料と同じ塗料を用いたり、内板専用塗料を用いる場合がある。これは内板塗装では所定時間内に塗装作業を完了する必要があり、外板塗膜と同じ塗膜構成を用いることができないためである。しかしながら、(1)内板塗膜に外板の第1ベース塗膜用の塗料と同じ塗料を用いる場合、内板と外板との色相差が生じやすく、内板のベース塗膜上に付着した外板のベース塗膜用の塗料がスジ(以下、「ダストスジ」という)を形成しやすい。一方、(2)内板塗膜に内板専用塗料を用いる場合、塗装ラインでその内板専用塗料用の配管の新設を要する、または、内板専用塗料を用いた塗り面積が少なく、内板専用塗料が小バッチ生産となることから割高なコストとなることが多い。
【0009】
ところで、自動車の上塗り塗膜を形成する工程では、塗装される車体には、まだ窓ガラスおよびシール部材(例えば、ウェザーストリップおよびドアアウトサイドシールなど)が取り付けられていない。そして、通常、上塗り塗膜を形成する工程では、まず内板にベース塗膜用の塗料を塗装する。次に、外板にベース塗膜用の塗料を塗装する。外板を塗装するとき、自動車のドアを完全に閉めると、開閉するドアの縁部分およびそのドアの縁部分と接する車体部分が擦れたり、ドアを開けるためにドアのロック部分に触れて操作することでベース塗膜の塗料が取れる不具合が生ずることがある。そのため、この外板を塗装するとき、ドアを完全に閉めずにわずかに開けた状態、すなわち、センターピラー部分およびリヤピラー部分などに隙間がある状態で外板のベース塗膜用の塗料を塗装する。
【0010】
そして、外板のベース塗膜用の塗料を塗装するときに、窓部分および隙間部分から外板のベース塗膜用の塗料が車体内部に入り込み、内板のベース塗膜上に付着することがある。上述のように外板の塗膜構成と内板の塗膜構成が異なる場合、ダストスジとなって内板のベース塗膜に色相の違和感を生じさせてしまうことがあった。また、ダストスジが発生するとダストスジを解消するために内板にベース塗膜用の塗料を再度塗り直すなどの工程も必要になる不具合もある。光輝顔料は光輝感が高いため、ダストスジは、ベース塗膜に光輝顔料が含まれる場合に特に目立ちやすくなる。
【0011】
そこで、本発明は、自動車の外板と内板の塗膜の形成時に外板と内板のベース塗膜に共用することができ、かつ、内板のベース塗膜上のダストスジを軽減することができる共用塗料組成物セットを提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明は、内板のベース塗膜上のダストスジが軽減され、優れた意匠性を有する自動車の外板および内板の塗膜を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、内板のベース塗膜上のダストスジを軽減し、優れた意匠性を有する自動車の外板および内板の塗膜の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る共用塗料組成物セットは、自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットであって、
前記外板の塗膜は、前記外板側から順に隣接して、第1ベース塗膜(BO1)および第2ベース塗膜を含む複層塗膜であり、
前記内板の塗膜は、ベース塗膜として第1ベース塗膜(BI1)のみを含み、
前記共用塗料組成物セットは、前記第1ベース塗膜(BO1)および前記第1ベース塗膜(BI1)を形成する第1ベース塗料組成物と、前記第2ベース塗膜を形成する第2ベース塗料組成物とを含み、
前記第1ベース塗料組成物は、樹脂成分と、硬化剤と、平均粒径が15μm~25μmである第1鱗片状光輝顔料とを含み、
前記第2ベース塗料組成物は、樹脂成分と、硬化剤と、平均粒径が15μm~25μmである第2鱗片状光輝顔料とを含み、
前記第1鱗片状光輝顔料の量は、前記第1ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.10~2.5質量部であり、
前記第2鱗片状光輝顔料の量は、前記第2ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.5~5.0質量部である、自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットである。これによって、自動車の外板と内板の塗膜の形成時に外板と内板のベース塗膜に共用することができ、かつ、内板のベース塗膜上のダストスジを軽減することができる。
【0015】
本発明に係る自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットの一実施形態では、前記第2鱗片状光輝顔料では、ガラス基材が金属酸化物で被覆されている。
【0016】
本発明に係る自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットの一実施形態では、前記第1ベース塗膜(BO1)の乾燥膜厚が8μmであり、前記第2ベース塗膜の乾燥膜厚が10μmである場合の前記複層塗膜の視野角110°でのL110値が2未満であり、かつ、粒子感G値が3.5より大きい。
【0017】
本発明に係る自動車の外板および内板の塗膜は、前記外板の塗膜が、上記いずれかに記載の自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットを用いた複層塗膜を含み、
前記複層塗膜は、前記外板側から順に隣接して、第1ベース塗膜(BO1)および第2ベース塗膜を含み、
前記内板の塗膜は、ベース塗膜として、上記いずれかに記載の自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットの第1ベース塗料組成物を用いた第1ベース塗膜(BI1)のみを含む、自動車の外板および内板の塗膜である。これによって、内板のベース塗膜上のダストスジが軽減され、外板および内板の塗膜は優れた意匠性を有する。
【0018】
本発明に係る自動車の外板および内板の塗膜の形成方法は、上記いずれかに記載の自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットを準備する工程と、
前記外板の表面側に前記第1ベース塗料組成物を塗装して、未硬化の第1ベース塗膜(BO1)を形成する工程と、
前記未硬化の第1ベース塗膜(BO1)上に前記第2ベース塗料組成物を塗装して、未硬化の第2ベース塗膜を形成する工程と、
前記未硬化の第1ベース塗膜(BO1)と前記未硬化の第2ベース塗膜を硬化させて、前記外板の複層塗膜を形成する工程と、
前記内板の表面側に前記第1ベース塗料組成物を塗装して、未硬化の第1ベース塗膜(BI1)を形成する工程と、
前記未硬化の第1ベース塗膜(BI1)を硬化させて、第1ベース塗膜(BI1)を形成する工程と、を備え、
前記内板の塗膜は、ベース塗膜として前記第1ベース塗膜(BI1)のみを含む、自動車の外板および内板の塗膜の形成方法である。これによって、内板のベース塗膜上のダストスジを軽減し、優れた意匠性を有する外板および内板の塗膜を形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、自動車の外板と内板の塗膜の形成時に外板と内板のベース塗膜に共用することができ、かつ、内板のベース塗膜上のダストスジを軽減することができる塗料組成物セットを提供することができる。また、本発明によれば、内板のベース塗膜上のダストスジが軽減され、優れた意匠性を有する自動車の外板および内板の塗膜を提供することができる。また、本発明によれば、内板のベース塗膜上のダストスジを軽減し、優れた意匠性を有する自動車の外板および内板の塗膜の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明に係る自動車の外板の塗膜の層構成の一例を示した模式図である。
図2図2は、本発明に係る自動車の内板の塗膜の層構成の一例を示した模式図である。
図3図3は、本発明に係る自動車の内板の塗膜の層構成の別の一例を示した模式図である。
図4図4は、本発明に係る自動車の内板の塗膜の層構成の別の一例を示した模式図である。
図5図5は、本発明に係る自動車の内板の塗膜の層構成の別の一例を示した模式図である。
図6図6は、実施例での外板の塗装方法を模式的に示した斜視図である。
図7図7は、実施例18の内板の塗膜の写真である。
図8図8は、比較例2の内板の塗膜の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0022】
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0023】
本発明において、塗料と塗料組成物は相互互換的に用いることができる。
【0024】
数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、0.5~5.0質量部は、0.5質量部以上5.0質量部以下の範囲を意味する。
【0025】
本明細書において、第1ベース塗膜(BO1)、第2ベース塗膜および第1ベース塗膜(BI1)をまとめて「ベース塗膜」ということがある。また、ベース塗膜用の塗料を単に「ベース塗料」ということがある。
【0026】
本明細書において、第1ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対する第1鱗片状光輝顔料の量(質量部)を、「顔料質量濃度」または「PWC」ということがある。本明細書において、第2ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対する第2鱗片状光輝顔料の量(質量部)を、「顔料質量濃度」または「PWC」ということがある。
【0027】
本発明では、鱗片状光輝顔料の平均粒径は、日機装社のマイクロトラック粒度分布測定装置(商品名「MT3300」)を用いてレーザー回折散乱法によって測定した体積基準粒度分布のメジアン径を指す。
【0028】
本発明では、塗料組成物中の含有量が最も多い分散媒が、水であるものを水性塗料組成物という。本発明では、塗料組成物中の含有量が最も多い分散媒が、溶剤であるものを溶剤系塗料組成物という。
【0029】
本明細書において、不揮発分を「固形分」ということがある。
【0030】
添付の図面は、本発明の理解を容易にすることを優先した模式図であるため、図中の各塗膜の縮尺は正確ではない。
【0031】
本発明において、第2ベース塗膜の波長360~700nmの領域での光線透過率の平均値は、実施例に記載の方法により測定する。
【0032】
本発明において、塗膜の視野角110°での明度L110値は、実施例に記載の方法により測定する。視野角は、入射角45°(塗膜の法線方向から45°の角度)から入射した光の正反射光から、入射方向側への角度を指す。したがって、視野角110°は、入射角45°から入射した光の正反射光から、入射方向側へ110°の角度を指す。
【0033】
本発明において、塗膜の粒子感G値は、実施例に記載の方法により測定する。
【0034】
(共用塗料組成物セット)
本発明に係る共用塗料組成物セットは、自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットであって、
前記外板の塗膜は、前記外板側から順に隣接して、第1ベース塗膜(BO1)および第2ベース塗膜を含む複層塗膜であり、
前記内板の塗膜は、ベース塗膜として第1ベース塗膜(BI1)のみを含み、
前記共用塗料組成物セットは、前記第1ベース塗膜(BO1)および前記第1ベース塗膜(BI1)を形成する第1ベース塗料組成物と、前記第2ベース塗膜を形成する第2ベース塗料組成物とを含み、
前記第1ベース塗料組成物は、樹脂成分と、硬化剤と、平均粒径が15μm~25μmである第1鱗片状光輝顔料と、を含み、
前記第2ベース塗料組成物は、樹脂成分と、硬化剤と、平均粒径が15μm~25μmである第2鱗片状光輝顔料と、を含み、
前記第1鱗片状光輝顔料の量は、前記第1ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.10~2.5質量部であり、
前記第2鱗片状光輝顔料の量は、前記第2ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.5~5.0質量部である、自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットである。
【0035】
以下、本発明に係る共用塗料組成物セットの必須要素である第1ベース塗料組成物と第2ベース塗料組成物について説明する。
【0036】
(第1ベース塗料組成物)
第1ベース塗料組成物は、外板の第1ベース塗膜(BO1)および内板の第1ベース塗膜(BI1)を形成する。第1ベース塗料組成物は、樹脂成分と、硬化剤と、平均粒径が15μm~25μmである第1鱗片状光輝顔料とを含み、第1鱗片状光輝顔料の量は、第1ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.10~2.5質量部である。
【0037】
以下、第1ベース塗料組成物の必須成分である樹脂成分と、硬化剤と、平均粒径が15μm~25μmである第1鱗片状光輝顔料について説明する。
【0038】
・樹脂成分
樹脂成分としては、従来公知のベース塗料の樹脂成分を用いることができる。樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。また、樹脂成分として、例えば、特許文献1に記載のアクリルエマルション樹脂、ポリエーテルポリオール、ウレタンエマルション樹脂などの塗膜形成性樹脂;特許文献2に記載の水分散性樹脂などを用いてもよい。
【0039】
樹脂成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。第1ベース塗料組成物の樹脂成分は、後述する第2ベース塗料組成物の樹脂成分と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
第1ベース塗料組成物中の樹脂成分の量は、適宜調節すればよいが、例えば、第1ベース塗料組成物の樹脂成分と硬化剤の合計固形分100質量部に対して40~90質量部であり、60~80質量部が好ましい。
【0041】
・硬化剤
硬化剤は、従来公知のベース塗料の硬化剤を用いることができる。硬化剤としては、例えば、特許文献1に記載のアミノ樹脂、ブロックイソシアネートなどが挙げられる。
【0042】
第1ベース塗料組成物中の硬化剤の量は、適宜調節すればよいが、例えば、第1ベース塗料組成物の樹脂成分と硬化剤の合計固形分100質量部に対して10~60質量部であり、20~40質量部が好ましい。
【0043】
硬化剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。第1ベース塗料組成物の硬化剤は、後述する第2ベース塗料組成物の硬化剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
・第1鱗片状光輝顔料
第1鱗片状光輝顔料は、平均粒径が15μm~25μmである従来公知の鱗片状光輝顔料を用いることができる。鱗片状光輝顔料としては、例えば、アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウムなどの金属;これらの合金;干渉マイカ、ホワイトマイカ、グラファイト、ガラスフレーク、アルミナフレークなどの光輝顔料;これらの金属、合金、干渉マイカ、ホワイトマイカ、グラファイト、ガラスフレークまたはアルミナフレークが、金属酸化物(例えば、酸化チタン、二酸化チタン、酸化鉄)もしくは金属(例えば、金、銀)で被覆された鱗片状光輝顔料が挙げられる。この他、例えば、特開2016-221473号公報に記載のアルミナフレーク顔料(a);金属基材またはガラスフレーク基材が金属酸化物もしくは金属で被覆された鱗片状光輝顔料;金属基材またはガラスフレーク基材の表面に着色顔料が化学吸着した鱗片状光輝顔料;アルミニウム基材の表面に酸化アルミニウム層を形成したアルミニウム顔料;アルミニウム固溶板状酸化鉄顔料;干渉マイカ、グラファイトまたはシリカフレークの表面が二酸化チタンで被覆された鱗片状光輝顔料;板状酸化鉄顔料などが挙げられる。好ましい鱗片状光輝顔料は、ガラス基材が金属酸化物で被覆された鱗片状光輝顔料、アルミニウムフレークである。
【0045】
一実施形態では、第1鱗片状光輝顔料は、アルミニウムフレークである。
【0046】
第1鱗片状光輝顔料は、無色と有色のいずれでもよいし、これらの組合せでもよい。有色の色としては、例えば、グレー、シルバー、黒、赤、黄、緑、青などが挙げられる。一実施形態では、第1鱗片状光輝顔料は、グレーおよびシルバーからなる群より選択される1種以上である。別の実施形態では、第1鱗片状光輝顔料および第2鱗片状光輝顔料は、グレー、シルバーおよび黒色からなる群より選択される1種以上である。
【0047】
第1鱗片状光輝顔料および後述する第2鱗片状光輝顔料の平均粒径は、それぞれ、15μm~25μmである。どちらか一方の鱗片状光輝顔料の平均粒径が15μm未満または25μmより大きい場合、内板のベース塗膜上のダストスジを軽減することができない。一実施形態では、第1鱗片状光輝顔料の平均粒径は、15μm以上、16μm以上、17μm以上、18μm以上、19μm以上、20μm以上、21μm以上、22μm以上、23μm以上または24μm以上である。別の実施形態では、第1鱗片状光輝顔料の平均粒径は、25μm以下、24μm以下、23μm以下、22μm以下、21μm以下、20μm以下、19μm以下、18μm以下、17μm以下または16μm以下である。
【0048】
第1鱗片状光輝顔料および後述する第2鱗片状光輝顔料は、市販品を用いてもよい。鱗片状光輝顔料の市販品としては、例えば、日本板硝子社製のST1018シリーズ、ST1025シリーズ、GT1020シリーズなどのメタシャイン(登録商標)シリーズ;東洋アルミニウム社製の76シリーズ、TCRシリーズ、54シリーズなどの商品名「アルペースト(登録商標)」シリーズ;旭化成社製の商品名「アルミペースト」のGXシリーズ、ECKART社製の商品名「B001」などの商品名「LUXAN」シリーズなどが挙げられる。第1鱗片状光輝顔料の市販品は、特に、東洋アルミニウム社製の76シリーズ、TCRシリーズ、54シリーズなどの商品名「アルペースト(登録商標)」シリーズ;旭化成社製の商品名「アルミペースト」のGXシリーズなどが好ましい。
【0049】
第1鱗片状光輝顔料は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。第1鱗片状光輝顔料は、後述する第2鱗片状光輝顔料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0050】
第1ベース塗料組成物中の第1鱗片状光輝顔料の量は、第1ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.10~2.5質量部であり、後述する第2ベース塗料組成物中の第2鱗片状光輝顔料の量は、第2ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.5~5.0質量部である。第2鱗片状光輝顔料のPWCが、0.5~5.0質量部であっても、第1鱗片状光輝顔料のPWCが、0.10質量部未満の場合、センターピラーでのダストスジが顕著となり、第1鱗片状光輝顔料のPWCが、2.5質量部より大きい場合、色の深みが低下する。
【0051】
一実施形態では、第1鱗片状光輝顔料のPWCは、0.10質量部以上、0.15質量部以上、0.20質量部以上、0.25質量部以上、0.30質量部以上、0.35質量部以上、0.40質量部以上、0.45質量部以上、0.50質量部以上、0.60質量部以上、0.70質量部以上、0.80質量部以上、0.90質量部以上、1.0質量部以上、1.2質量部以上、1.4質量部以上、1.5質量部以上、1.6質量部以上、1.8質量部以上、2.0質量部以上、2.1質量部以上、2.2質量部以上、2.3質量部以上または2.4質量部以上である。別の実施形態では、第1鱗片状光輝顔料のPWCは、2.5質量部以下、2.4質量部以下、2.3質量部以下、2.2質量部以下、2.1質量部以下、2.0質量部以下、1.8質量部以下、1.6質量部以下、1.5質量部以下、1.4質量部以下、1.2質量部以下、1.0質量部以下、0.90質量部以下、0.80質量部以下、0.70質量部以下、0.60質量部以下、0.50質量部以下、0.45質量部以下、0.40質量部以下、0.35質量部以下、0.30質量部以下、0.25質量部以下、0.20質量部以下または0.15質量部以下である。
【0052】
・その他の成分
第1ベース塗料組成物は、樹脂成分、硬化剤および第1鱗片状光輝顔料の他に、体質顔料、着色顔料、水、有機溶剤、腐食防止剤、表面調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤などの公知のベース塗料の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分はそれぞれ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
第1ベース塗料組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、平均粒径が15μm~25μmである第1鱗片状光輝顔料以外の光輝顔料を含んでいてもよい。第1ベース塗料組成物が、第1鱗片状光輝顔料と他の光輝顔料を含む場合、第1鱗片状光輝顔料と他の光輝顔料の合計100質量部に対する第1鱗片状光輝顔料の量は、50質量部以上、70質量部以上、90質量部以上、95質量部以上または99質量部以上である。一実施形態では、第1ベース塗料組成物は、光輝顔料として第1鱗片状光輝顔料のみを含む。
【0054】
第1ベース塗料組成物は、水性塗料組成物または溶剤系塗料組成物のいずれでもよい。一実施形態では、第1ベース塗料組成物および第2ベース塗料組成物は、水性塗料組成物である。
【0055】
第1ベース塗料組成物における塗料固形分の合計量としては、適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、塗料固形分の合計量は、第1ベース塗料組成物100質量部に対して、5~50質量部であり、好ましくは、10~30質量部である。
【0056】
・第1ベース塗料組成物の調製方法
第1ベース塗料組成物の調製方法は、上述した樹脂成分、硬化剤および第1鱗片状光輝顔料を含み、第1鱗片状光輝顔料のPWCが0.10~2.5質量部であれば、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、樹脂成分、硬化剤および第1鱗片状光輝顔料をニーダーまたはロールを用いて、混練し、分散することによって第1ベース塗料組成物を調製することができる。
【0057】
(第2ベース塗料組成物)
第2ベース塗料組成物は、外板の第2ベース塗膜を形成する。第2ベース塗料組成物は、内板には使用しない。第2ベース塗料組成物は、樹脂成分と、硬化剤と、平均粒径が15μm~25μmである第2鱗片状光輝顔料とを含み、第2鱗片状光輝顔料の量は、第2ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.5~5.0質量部である。
【0058】
以下、第2ベース塗料組成物の必須成分である樹脂成分と、硬化剤と、平均粒径が15μm~25μmである第2鱗片状光輝顔料について説明する。
【0059】
・樹脂成分
樹脂成分としては、従来公知のベース塗料の樹脂成分を用いることができる。樹脂成分の例としては、上記第1ベース塗料組成物で挙げた樹脂成分と同様である。
【0060】
樹脂成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
第2ベース塗料組成物中の樹脂成分の量は、適宜調節すればよいが、例えば、第2ベース塗料組成物の樹脂成分と硬化剤の合計固形分100質量部に対して40~90質量部であり、60~80質量部が好ましい。
【0062】
・硬化剤
硬化剤としては、従来公知のベース塗料の硬化剤を用いることができる。硬化剤の例としては、上記第1ベース塗料組成物で挙げた硬化剤と同様である。
【0063】
第2ベース塗料組成物中の硬化剤の量は、適宜調節すればよいが、例えば、第2ベース塗料組成物の樹脂成分と硬化剤の合計固形分100質量部に対して10~60質量部であり、20~40質量部が好ましい。
【0064】
硬化剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
・第2鱗片状光輝顔料
第2鱗片状光輝顔料は、平均粒径が15μm~25μmである従来公知の鱗片状光輝顔料を用いることができる。鱗片状光輝顔料としては、上記第1ベース塗料組成物で挙げた第1鱗片状光輝顔料と同様である。
【0066】
本発明に係る自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットの一実施形態では、前記第2鱗片状光輝顔料では、ガラス基材が金属酸化物で被覆されている。
【0067】
第2鱗片状光輝顔料の市販品は、第1鱗片状光輝顔料で例示したとおりであるが、特に、日本板硝子社製のST1018シリーズ、ST1025シリーズ、GT1020シリーズなどのメタシャイン(登録商標)シリーズ;ECKART社製の商品名「B001」などの商品名「LUXAN」シリーズなどが好ましい。
【0068】
一実施形態では、第2鱗片状光輝顔料の平均粒径は、15μm以上、16μm以上、17μm以上、18μm以上、19μm以上、20μm以上、21μm以上、22μm以上、23μm以上または24μm以上である。別の実施形態では、第2鱗片状光輝顔料の平均粒径は、25μm以下、24μm以下、23μm以下、22μm以下、21μm以下、20μm以下、19μm以下、18μm以下、17μm以下または16μm以下である。
【0069】
第2鱗片状光輝顔料は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
第2ベース塗料組成物中の第2鱗片状光輝顔料の量は、第2ベース塗料組成物の全固形分100質量部に対して0.5~5.0質量部である。第1鱗片状光輝顔料のPWCが、0.10~2.5質量部であっても、第2鱗片状光輝顔料のPWCが、0.5質量部未満の場合、優れた光輝感が得られず、第2鱗片状光輝顔料のPWCが、5.0質量部より大きい場合、ツヤびけなどの外観の不具合が生じやすくなる。
【0071】
一実施形態では、第2鱗片状光輝顔料のPWCは、0.5質量部以上、1.0質量部以上、1.5質量部以上、2.0質量部以上、2.1質量部以上、2.2質量部以上、2.3質量部以上、2.4質量部以上、2.5質量部以上、2.6質量部以上、2.7質量部以上、2.8質量部以上、2.9質量部以上、3.0質量部以上、3.5質量部以上、4.0質量部以上または4.5質量部以上である。別の実施形態では、第2鱗片状光輝顔料のPWCは、5.0質量部以下、4.5質量部以下、4.0質量部以下、3.5質量部以下、3.0質量部以下、2.9質量部以下、2.8質量部以下、2.7質量部以下、2.6質量部以下、2.5質量部以下、2.4質量部以下、2.3質量部以下、2.2質量部以下、2.1質量部以下、2.0質量部以下、1.5質量部以下または1.0質量部以下である。
【0072】
・その他の成分
第2ベース塗料組成物は、樹脂成分、硬化剤および第2鱗片状光輝顔料の他に、体質顔料、着色顔料、水、有機溶剤、表面調整剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤などの公知のベース塗料の成分を含んでいてもよい。これらその他の成分はそれぞれ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
第2ベース塗料組成物は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、平均粒径が15μm~25μmである第2鱗片状光輝顔料以外の光輝顔料を含んでいてもよい。第2ベース塗料組成物が、第2鱗片状光輝顔料と他の光輝顔料を含む場合、第2鱗片状光輝顔料と他の光輝顔料の合計100質量部に対する第2鱗片状光輝顔料の量は、50質量部以上、70質量部以上、90質量部以上、95質量部以上または99質量部以上である。一実施形態では、第2ベース塗料組成物は、光輝顔料として第2鱗片状光輝顔料のみを含む。
【0074】
第2ベース塗料組成物は、水性塗料組成物または溶剤系塗料組成物のいずれでもよい。
【0075】
第2ベース塗料組成物における塗料固形分の合計量としては、適宜調節すればよく、特に限定されない。例えば、塗料固形分の合計量は、第2ベース塗料組成物100質量部に対して、5~50質量部であり、好ましくは、10~30質量部である。
【0076】
・第2ベース塗料組成物の調製方法
第2ベース塗料組成物の調製方法は、上述した樹脂成分、硬化剤および第2鱗片状光輝顔料を含み、第2鱗片状光輝顔料のPWCが0.5~5.0質量部であれば、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、第1ベース塗料組成物の調製方法で説明した手段を用いることができる。
【0077】
一実施形態では、乾燥膜厚が10μmである場合の第2ベース塗膜単独の波長360~700nmの領域での光線透過率の平均値が5~20%である。
【0078】
本発明に係る自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットの一実施形態では、前記第1ベース塗膜(BO1)の乾燥膜厚が8μmであり、前記第2ベース塗膜の乾燥膜厚が10μmである場合の前記複層塗膜の視野角110°でのL110値が2未満であり、かつ、粒子感G値が3.5より大きい。
【0079】
(自動車の外板および内板の塗膜)
本発明に係る自動車の外板および内板の塗膜は、前記外板の塗膜が、上記いずれかに記載の自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットを用いた複層塗膜を含み、
前記複層塗膜は、前記外板側から順に隣接して、第1ベース塗膜(BO1)および第2ベース塗膜を含み、
前記内板の塗膜は、ベース塗膜として、上記いずれかに記載の自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットの第1ベース塗料組成物を用いた第1ベース塗膜(BI1)のみを含む、自動車の外板および内板の塗膜である。
【0080】
図1は、本発明に係る自動車の外板の塗膜の層構成の一例を示した模式図である。図1では、外板1の表面に外板側から順に隣接して、下塗り塗膜2、中塗り塗膜3、第1ベース塗膜(BO1)4、第2ベース塗膜5およびクリヤー塗膜6からなる複層塗膜が形成されている。
【0081】
図2は、本発明に係る自動車の内板の塗膜の層構成の一例を示した模式図である。図2では、内板7の表面に内板側から順に隣接して、下塗り塗膜2、中塗り塗膜3、第1ベース塗膜(BI1)8およびクリヤー塗膜6が形成されている。
【0082】
図3は、本発明に係る自動車の内板の塗膜の層構成の別の一例を示した模式図である。図3では、内板の表面に内板側から順に隣接して、下塗り塗膜、第1ベース塗膜(BI1)およびクリヤー塗膜が形成されている。
【0083】
図4は、本発明に係る自動車の内板の塗膜の層構成の別の一例を示した模式図である。図4では、内板の表面に内板側から順に隣接して、下塗り塗膜、中塗り塗膜および第1ベース塗膜(BI1)が形成されている。
【0084】
図5は、本発明に係る自動車の内板の塗膜の層構成の別の一例を示した模式図である。図5では、内板の表面に内板側から順に隣接して、下塗り塗膜および第1ベース塗膜(BI1)が形成されている。
【0085】
・外板の複層塗膜
本発明に係る自動車の外板の複層塗膜は、外板側から順に隣接して、第1ベース塗膜(BO1)および第2ベース塗膜を含む。以下、本発明に係る自動車の外板の複層塗膜の必須要素である第1ベース塗膜(BO1)および第2ベース塗膜について例示説明する。
【0086】
・第1ベース塗膜(BO1)
第1ベース塗膜(BO1)は、上記自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットの第1ベース塗料組成物を用いて形成されたベース塗膜である。
【0087】
第1ベース塗膜(BO1)の乾燥膜厚は、適宜調節すればよく、例えば、2~20μmであり、6~14μmが好ましい。第1ベース塗膜(BO1)と第1ベース塗膜(BI1)の乾燥膜厚は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0088】
・第2ベース塗膜
第2ベース塗膜は、上記自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットの第2ベース塗料組成物を用いて形成されたベース塗膜であり、第1ベース塗膜(BO1)よりも観察者側に位置する。
【0089】
第2ベース塗膜の乾燥膜厚は、適宜調節すればよく、例えば、2~20μmであり、6~14μmが好ましい。
【0090】
第2ベース塗膜の透明性は、適宜調節すればよく、例えば、乾燥膜厚が10μmである場合の第2ベース塗膜単独の波長360~700nmの領域での光線透過率の平均値は、5~20%である。光線透過率の平均値が5%以上であると、第2ベース塗膜の透明性が高くなり、外板の第1ベース塗膜のシェード方向での色の深みを高めることができる。光線透過率の平均値が20%以下であると、第2ベース塗膜の輝度と下地隠蔽性を高めることができる。一実施形態では、乾燥膜厚が10μmである場合の第2ベース塗膜単独の波長360~700nmの領域での光線透過率の平均値は、5%以上、10%以上または15%以上である。別の実施形態では、乾燥膜厚が10μmである場合の第2ベース塗膜単独の波長360~700nmの領域での光線透過率の平均値は、20%以下、15%以下または10%以下である。
【0091】
外板の複層塗膜のシェード方向での色の深みを高める観点から、外板の第1ベース塗膜(BO1)の乾燥膜厚が8μmであり、第2ベース塗膜の乾燥膜厚が10μmである場合の複層塗膜の視野角110°でのL110値は、例えば、2.6以下であり、2未満が好ましい。一実施形態では、外板の第1ベース塗膜(BO1)の乾燥膜厚が8μmであり、第2ベース塗膜の乾燥膜厚が10μmである場合の複層塗膜のL110値は、2.6以下、2.0以下、1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下または1.1以下である。別の実施形態では、外板の第1ベース塗膜(BO1)の乾燥膜厚が8μmであり、第2ベース塗膜の乾燥膜厚が10μmである場合の複層塗膜のL110値は、1.0以上、1.1以上、1.2以上、1.3上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上または1.9以上である。
【0092】
本発明において、塗膜の輝度は、粒子感G値で表すことができる。G値が高いほど、塗膜の輝度が高いことを表す。外板の複層塗膜の輝度感を高める観点から、外板の第1ベース塗膜(BO1)の乾燥膜厚が8μmであり、第2ベース塗膜の乾燥膜厚が10μmである場合の複層塗膜のG値は、例えば、3.5以上であり、4.5以上が好ましい。一実施形態では、外板の第1ベース塗膜(BO1)の乾燥膜厚が8μmであり、第2ベース塗膜の乾燥膜厚が10μmである場合の複層塗膜のG値は、3.5以上、4.0以上、4.5以上、4.9以上、5.0以上、5.1以上、5.2以上、5.3以上、5.4以上または5.5以上である。別の実施形態では、外板の第1ベース塗膜(BO1)の乾燥膜厚が8μmであり、第2ベース塗膜の乾燥膜厚が10μmである場合の複層塗膜のG値は、6.0以下、5.5以下、5.4以下、5.3以下、5.2以下、5.1以下、5.0以下、4.9以下、4.5以下または4.0以下である。
【0093】
本発明に係る自動車の外板および内板の塗膜の一実施形態では、第1ベース塗膜(BO1)の乾燥膜厚が8μmであり、第2ベース塗膜の乾燥膜厚が10μmである場合の複層塗膜の視野角110°でのL110値が2未満であり、かつ、粒子感G値が3.5より大きい。自動車の外板および内板の塗膜の別の実施形態では、第1ベース塗膜(BO1)の乾燥膜厚が8μmであり、第2ベース塗膜の乾燥膜厚が10μmである場合の複層塗膜のL110値が1.0~1.9であり、かつ、粒子感G値が4.0~5.5である。
【0094】
・外板のその他の塗膜
外板の塗膜は、上記第1ベース塗膜(BO1)と第2ベース塗膜に加えて、下塗り塗膜、中塗り塗膜およびクリヤー塗膜を含んでいてもよい。さらに、中塗り塗膜と下塗り塗膜の間に、特開2009-102452号公報に記載のチッピングプライマー塗膜を含んでいてもよい。一実施形態では、自動車の外板の塗膜は、外板側から順に隣接して、下塗り塗膜、中塗り塗膜、第1ベース塗膜(BO1)、第2ベース塗膜およびクリヤー塗膜を含む。
【0095】
下塗り塗膜、中塗り塗膜およびクリヤー塗膜の材料は、それぞれ、従来公知の自動車の外板の下塗り塗膜、中塗り塗膜およびクリヤー塗膜の材料を用いてもよい。下塗り塗膜、中塗り塗膜およびクリヤー塗膜の膜厚は、それぞれ、従来公知の自動車の外板の下塗り塗膜、中塗り塗膜およびクリヤー塗膜の膜厚としてもよい。
【0096】
・内板の塗膜
本発明に係る自動車の内板の塗膜は、ベース塗膜として、上記いずれかに記載の自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットの第1ベース塗料組成物を用いた第1ベース塗膜(BI1)のみを含む。以下、本発明に係る自動車の内板の塗膜の必須要素である第1ベース塗膜(BI1)について例示説明する。
【0097】
・第1ベース塗膜(BI1)
第1ベース塗膜(BI1)は、上記自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットの第1ベース塗料組成物を用いて形成されたベース塗膜である。内板のベース塗膜は、第1ベース塗膜(BI1)のみである。
【0098】
第1ベース塗膜(BI1)の乾燥膜厚は、適宜調節すればよく、例えば、5~20μmであり、7~15μmが好ましい。
【0099】
・内板のその他の塗膜
内板の塗膜は、上記第1ベース塗膜(BI1)に加えて、下塗り塗膜を含んでいてもよく、図2~4に示したように、中塗り塗膜およびクリヤー塗膜のうち1種または2種をさらに含んでいてもよい。
【0100】
下塗り塗膜、中塗り塗膜およびクリヤー塗膜の材料は、それぞれ、従来公知の自動車の内板の下塗り塗膜、中塗り塗膜およびクリヤー塗膜の材料を用いてもよい。下塗り塗膜、中塗り塗膜およびクリヤー塗膜の膜厚は、それぞれ、従来公知の自動車の内板の下塗り塗膜、中塗り塗膜およびクリヤー塗膜の膜厚としてもよい。
【0101】
(自動車の外板および内板の塗膜の形成方法)
本発明に係る自動車の外板および内板の塗膜の形成方法は、上記いずれかに記載の自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットを準備する工程(以下、「工程A」ということがある)と、
前記外板の表面側に前記第1ベース塗料組成物を塗装して、未硬化の第1ベース塗膜(BO1)を形成する工程(以下、「工程B」ということがある)と、
前記未硬化の第1ベース塗膜(BO1)上に前記第2ベース塗料組成物を塗装して、未硬化の第2ベース塗膜を形成する工程(以下、「工程C」ということがある)と、
前記未硬化の第1ベース塗膜(BO1)と前記未硬化の第2ベース塗膜を硬化させて、前記外板の複層塗膜を形成する工程(以下、「工程D」ということがある)と、
前記内板の表面側に前記第1ベース塗料組成物を塗装して、未硬化の第1ベース塗膜(BI1)を形成する工程(以下、「工程E」ということがある)と、
前記未硬化の第1ベース塗膜(BI1)を硬化させて、第1ベース塗膜(BI1)を形成する工程(以下、「工程F」ということがある)と、を備え、
前記内板の塗膜は、ベース塗膜として前記第1ベース塗膜(BI1)のみを含む、自動車の外板および内板の塗膜の形成方法である。
【0102】
以下、本発明に係る自動車の外板および内板の塗膜の形成方法の各工程A~Fを例示説明する。
【0103】
・工程A
工程Aでは、上述した自動車の外板および内板の塗膜を形成するための共用塗料組成物セットを準備する。
【0104】
・工程B
工程Bでは、外板の表面側に第1ベース塗料組成物を塗装して、未硬化の第1ベース塗膜(BO1)を形成する。
【0105】
第1ベース塗料組成物を塗装する方法は特に限定されず、従来公知の自動車の外板のベース塗料の塗装方法を用いることができる。第1ベース塗料組成物を塗装する方法は、例えば、スプレー塗装、回転霧化静電塗装などが挙げられる。
【0106】
工程Bで第1ベース塗料組成物を塗装する外板の対象は、通常、中塗り塗膜である。
【0107】
未硬化の第1ベース塗膜(BO1)の膜厚は特に限定されず、所望の乾燥膜厚に応じて適宜調節すればよい。
【0108】
・工程C
工程Cでは、未硬化の第1ベース塗膜(BO1)上に第2ベース塗料組成物を塗装して、未硬化の第2ベース塗膜を形成する。
【0109】
第2ベース塗料組成物を塗装する方法は特に限定されず、従来公知の自動車の外板のベース塗料の塗装方法を用いることができる。第2ベース塗料組成物を塗装する方法は、例えば、スプレー塗装、回転霧化静電塗装などが挙げられる。工程Bの第1ベース塗料組成物を塗装する方法と、工程Cの第2ベース塗料組成物を塗装する方法は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0110】
未硬化の第2ベース塗膜の膜厚は特に限定されず、所望の乾燥膜厚に応じて適宜調節すればよい。
【0111】
・工程D
工程Dでは、未硬化の第1ベース塗膜(BO1)と未硬化の第2ベース塗膜を硬化させて、外板の複層塗膜を形成する。硬化方法は、例えば、加熱硬化が挙げられる。加熱硬化の条件は、例えば、温度120~160℃、10~30分とすることができる。
【0112】
工程Dは、未硬化の第1ベース塗膜(BO1)と未硬化の第2ベース塗膜を硬化させて、外板の複層塗膜を形成しさえすればよく、これら2層に加えて、未硬化の第2ベース塗膜上に形成された未硬化のクリヤー塗膜を一緒に硬化させてもよい。
【0113】
・工程E
工程Eでは、内板の表面側に第1ベース塗料組成物を塗装して、未硬化の第1ベース塗膜(BI1)を形成する。
【0114】
第1ベース塗料組成物を塗装する方法は特に限定されず、従来公知の自動車の内板のベース塗料の塗装方法を用いることができる。第1ベース塗料組成物を塗装する方法は、例えば、スプレー塗装などが挙げられる。
【0115】
工程Eで第1ベース塗料組成物を塗装する内板の対象は、内板の塗膜の構成に応じて適宜選択することができる。第1ベース塗料組成物を塗装する内板の対象は、例えば、図2~5に示したように、中塗り塗膜または下塗り塗膜である。
【0116】
未硬化の第1ベース塗膜(BI1)の膜厚は特に限定されず、所望の乾燥膜厚に応じて適宜調節すればよい。
【0117】
・工程F
工程Fでは、未硬化の第1ベース塗膜(BI1)を硬化させて、第1ベース塗膜(BI1)を形成する。硬化方法は、例えば、加熱硬化が挙げられる。加熱硬化の条件は、例えば、温度120~160℃、10~30分とすることができる。
【0118】
本発明に係る自動車の外板および内板の塗膜の形成方法では、内板の塗膜は、ベース塗膜として前記第1ベース塗膜(BI1)のみを含む。したがって、内板の表面側に第2ベース塗料組成物または他のベース塗料を塗装する工程を含まない。
【0119】
本発明に係る自動車の外板および内板の塗膜の形成方法では、工程A~Fのうち、工程Aの順序が1番目であること、工程Cが工程Bの後であることおよび工程Fが工程Eの後であること以外は、工程の順序は特に限定されない。上述したように、通常、自動車の塗装では内板側を外板側よりも先に塗装し、内板の塗膜と外板の塗膜を同時に硬化させる、すなわち、工程Eが工程B、C、DおよびFよりも先であるが、車種または製造工程などに応じて、例えば、工程B、CおよびDを行い、その後に工程EおよびFを行ってもよいし、工程EとBを同時に行ってもよい(例えば、車体の左半分で工程Eを行いながら、車体の右半分で工程Bを行う)。外板側を先に塗装し、次に内板側を塗装する場合でも、上述したように、この時点では、車体に窓およびシール部材が取り付けられていないため、例えば、車室内のダッシュパネル部分を塗装する際にフロント部分からボンネットなどに第1ベース塗料組成物が付着し得る。そのような場合でも、本発明の共用塗料組成物セットは、第1および第2ベース塗料組成物が所定の平均粒径の鱗片状光輝顔料をそれぞれ、所定量で含むため、ダストスジが軽減される。
【0120】
一実施形態では、工程Eを行い、次いで、工程Bを行い、次いで、工程Cを行い、次いで工程FおよびDを行う。
【0121】
本発明に係る自動車の外板および内板の塗膜の形成方法では、工程A~F以外に、従来公知の自動車の外板および内板の塗膜の形成工程を含んでいてもよい。例えば、自動車の外板および内板に下塗り塗膜を形成する工程、外板側または内板側に中塗り塗膜を形成する工程、クリヤー塗料を外板の未硬化の第2ベース塗膜上に塗装して、未硬化のクリヤー塗膜を形成する工程、未硬化のクリヤー塗膜を硬化させてクリヤー塗膜を形成する工程などが挙げられる。
【実施例
【0122】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0123】
実施例で用いた塗料組成物の各成分の詳細は以下のとおりである。
樹脂成分1:アクリルエマルション樹脂、平均粒径150nm、不揮発分20%、固形分酸価20mgKOH/g、水酸基価40mgKOH/g、特開2014-147918号公報の段落[0123]の製造例6の方法で調製した
樹脂成分2:水溶性アクリル樹脂、不揮発分30.0%、固形分酸価40mgKOH/g、水酸基価50mgKOH/g、特開2014-147918号公報の段落[0125]の製造例8の方法で調製した
樹脂成分3:三洋化成工業社製の商品名「プライムポールPX-1000」、2官能ポリエーテルポリオール、数平均分子量400、水酸基価278mgKOH/g、1級/2級水酸基価比=63/37、不揮発分100%
樹脂成分4:アビシア社製の商品名「ネオレッツR-9603」、ポリカーポネート系ウレタンエマルション樹脂、不揮発分33%
第三級アミン(中和剤):ジメチルエタノールアミン10質量%水溶液
硬化剤:三井化学社製の商品名「サイメル204」、混合アルキル化型メラミン樹脂、不揮発分100%
第1鱗片状光輝顔料:東洋アルミニウム社製の商品名「アルペースト(登録商標)06-0672」、シルバー色、平均粒径17μm、表1では「1番」と表記
第1および第2鱗片状光輝顔料:東洋アルミニウム社製の商品名「アルペースト(登録商標)93-0647」、シルバー色、平均粒径20μm、表1では「2番」と表記
第1鱗片状光輝顔料:東洋アルミニウム社製の商品名「TCR(登録商標)-2020」、シルバー色、平均粒径23μm、表1では「3番」と表記
第2鱗片状光輝顔料:金属酸化物で被覆されたガラスフレーク、日本板硝子社製の商品名「メタシャイン(登録商標)ST1018RSJ3」、無色、平均粒径18μm、表1では「4番」と表記
鱗片状光輝顔料:東洋アルミニウム社製の商品名「アルミニウムペースト 01-0651」、シルバー色、平均粒径9μm、表1では「5番」と表記
鱗片状光輝顔料:旭化成社製の商品名「旭化成アルミペースト CP-310」、シルバー色、平均粒径12μm、表1では「6番」と表記
鱗片状光輝顔料:上記第2光輝顔料の4番を粉砕および分級して得た、平均粒径12μm、表1では「7番」と表記
着色顔料1(非光輝顔料):CABOT社製の商品名「EMPEROR-2000ブラック」、黒色、表1では「着色1番」と表記
着色顔料2(非光輝顔料):三陽色素社製の商品名「シアニンブルー G-314」、青色、表1では「着色2番」と表記
着色顔料3(非光輝顔料):クラリアント社製の商品名「バイオレット RL-NF」、菫色、表1では「着色3番」と表記
光輝顔料の腐食防止剤:ラウリルアシッドフォスフェート
クリヤー塗料:日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製の商品名「マックフローO-1810クリヤー」、酸エポキシ硬化型アクリル樹脂系塗料
【0124】
実施例で用いたその他の材料および装置の詳細は以下のとおりである。
鋼板:リン酸亜鉛処理したSPCC-SD鋼板、寸法20cm×30cm×厚さ0.8cm
分光光度計:日立社製の商品名「U-3310」
多角度分光測色計:X-rite社製の商品名「MA68 II」
多角度測色器:BYK社製の商品名「BYK-mac i」
【0125】
(実施例1~18および比較例1~9)
・第1ベース塗料組成物の調製
表1に示す配合(PWC)の鱗片状光輝顔料と着色顔料に加えて、以下の量の樹脂成分、硬化剤、第三級アミンおよび腐食防止剤を配合し、均一に分散して第1ベース塗料組成物を得た。
樹脂成分1:200質量部(不揮発分40質量部)
樹脂成分2:16.7質量部(不揮発分5質量部)
樹脂成分3:10質量部(不揮発分10質量部)
樹脂成分4:5質量部(不揮発分1.65質量部)
硬化剤:15.2質量部(不揮発分15.2質量部)
第三級アミン:40質量部(濃度10質量%)
腐食防止剤:0.2質量部(不揮発分0.1質量部)
【0126】
・第2ベース塗料組成物の調製
表1に示す配合(PWC)の鱗片状光輝顔料と着色顔料に加えて、第1ベース塗料組成物と同量の樹脂成分、硬化剤、第三級アミンおよび腐食防止剤を配合し、均一に分散して第2ベース塗料組成物を得た。
【0127】
・外板の準備
自動車の外板を想定したリン酸亜鉛処理した鋼板に、特許文献1の実施例1と同様に、カチオン電着塗料と中塗り塗料を順に塗装し、下塗り塗膜と中塗り塗膜が形成された外板を準備した。
【0128】
・内板の準備
自動車の内板を想定したリン酸亜鉛処理した鋼板に、特許文献1の実施例1と同様に、カチオン電着塗料を塗装し、下塗り塗膜が形成された内板を準備した。
【0129】
・内板の塗装
内板の下塗り塗膜上に、実施例1の第1ベース塗料組成物をスプレーガンで乾燥膜厚10μmとなるように塗装して、未硬化の第1ベース塗膜(BI1)を形成した。
【0130】
・外板の塗装
次いで、図6に示すように、未硬化の第1ベース塗膜(BI1)を形成した内板7から、高さ25mmの位置にフロントドアを想定した外板9と、高さ10mmの位置にリアドアを想定した外板10を幅10mmの隙間を開けて配置した。次いで、標準的なロボット塗装の条件で図6の外板9の左端から外板10の右端まで外板に第1ベース塗料組成物と第2ベース塗料組成物を順に、それぞれ乾燥膜厚8μm、10μmとなるように塗装して、未硬化の第1ベース塗膜(BO1)と未硬化の第2ベース塗膜を形成した。次いで、内板7と外板9および10を温度80℃で3分間プレヒートした。次いで、プレヒートした未硬化の第1ベース塗膜(BI1)上にクリヤー塗料を乾燥膜厚15μmとなるように、および未硬化の第2ベース塗膜上にクリヤー塗料を乾燥膜厚30μmとなるように塗装して内板と外板の未硬化のクリヤー塗膜を形成した。次いで、内板7と外板9および10を温度140℃で30分間焼き付けして、内板7に第1ベース塗膜(BI1)8とクリヤー塗膜を形成し、外板9および10に第1ベース塗膜(BO1)4と第2ベース塗膜5とクリヤー塗膜を形成した。
【0131】
・第2ベース塗膜単独の塗膜の形成
上記内板および外板とは別に、ポリプロピレン基材に第2ベース塗料組成物を乾燥膜厚10μmとなるように塗装し、温度140℃で30分間焼き付けして、第2ベース塗膜のみを形成した。
【0132】
ダストスジの評価
得られた各実施例および比較例の内板の塗装表面を目視で確認し、以下の基準でダストスジを評価した。評価結果を表1に合わせて示す。評価AおよびBが合格である。また、実施例18と比較例2の内板の塗膜の写真をそれぞれ、図7図8に示す。
A:ダストスジによる違和感がない
B:観察角度によってダストスジによる違和感が生じるが許容範囲
C:観察角度によってダストスジが認識され、違和感を感じる
D:ダストスジが容易に認識され、違和感を強く感じる
【0133】
意匠性の評価
得られた各実施例および比較例の外板に対して、色の深みと、粒子感G値を以下のように測定し、外板の複層塗膜の意匠性を評価した。色の深みと粒子感G値の測定は、塗膜の焼き付け後に外板を標準温度まで冷却した後に行った。
【0134】
・シェード方向の色の深み
多角度分光測色計を用いて、外板の複層塗膜のL110値を測定した。評価結果を表1に合わせて示す。L110値が低いほどシェード方向の色の深み(黒の塗膜の場合は漆黒性)が高いことを示す。
【0135】
・輝度
多角度測色器を用いて、外板の複層塗膜の粒子感G値を測定した。評価結果を表1に合わせて示す。G値が高いほど輝度が高いことを示す。
【0136】
光線透過率の測定
単独で形成した第2ベース塗膜をプロピレン基材から剥離し、その剥離した第2ベース塗膜に対して、分光光度計を用いて波長360~700nmにおいて、波長10nmごとに光線透過率を測定し、その平均値を求めた。結果を表1に合わせて示す。
【0137】
【表1】
表1中、顔料の量は、PWCを表す。
【0138】
表1に示すように、実施例では、自動車の外板と内板の塗膜の形成時に外板と内板のベース塗膜に共用することができ、かつ、内板のベース塗膜上のダストスジを軽減することができた。また、内板のベース塗膜上のダストスジが軽減され、優れた意匠性を有する自動車の外板および内板の塗膜を形成することができた。
【0139】
図7の実施例18の内板の塗膜の写真では、塗膜全体が高い漆黒性を有している。一方、図8の比較例2の内板の塗膜の写真では、塗膜の中央の縦方向で白っぽいダストスジが観察された。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明によれば、自動車の外板と内板の塗膜の形成時に外板と内板のベース塗膜に共用することができ、かつ、内板のベース塗膜上のダストスジを軽減することができる塗料組成物セットを提供することができる。また、本発明によれば、内板のベース塗膜上のダストスジが軽減され、優れた意匠性を有する自動車の外板および内板の塗膜を提供することができる。また、本発明によれば、内板のベース塗膜上のダストスジを軽減し、優れた意匠性を有する自動車の外板および内板の塗膜の形成方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0141】
1:外板
2:下塗り塗膜
3:中塗り塗膜
4:第1ベース塗膜(BO1)
5:第2ベース塗膜
6:クリヤー塗膜
7:内板
8:第1ベース塗膜(BI1)
9:フロントドアを想定した外板
10:リアドアを想定した外板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8