(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】ベチバーの根の抽出物を含む化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9794 20170101AFI20240919BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240919BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20240919BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20240919BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20240919BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
A61K8/9794
A61Q19/00
A61K8/36
A61K8/49
A61K8/35
A61Q19/08
(21)【出願番号】P 2020548671
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(86)【国際出願番号】 EP2019056008
(87)【国際公開番号】W WO2019175094
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-02
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スキャンドレラ,アマンディン
(72)【発明者】
【氏名】ランバート,キャロル
(72)【発明者】
【氏名】レイノー,ローマン
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-061918(JP,A)
【文献】特開2011-236174(JP,A)
【文献】Biolarvicidal of Vetiver Oil and Ethanol Extract of Vetiver Root Distillation Waste (Vetiveria zizanoides) Effectiveness toward Aedes aegypti,Culex sp., and Anopheles sundaicus,Journal of Essential Oil Bearing Plants,2013年12月,https://www.researchgate.net/publication/261655891_Biolarvicidal_of_Vetiver_Oil_and_Ethanol_Extract_of_Vetiver_Root_Distillation_Waste_Vetiveria_zizanoides_Effectiveness_toward_Aedes_aegypti_Culex_sp_and_Anopheles_sundaicus
【文献】Extraction of vetiver essential oil by ethanol-modified supercritical carbon dioxide,Chemical Engineering Journal,2010年11月15日,Vol.165 Issue 1,pp.26-34,https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1385894710007692
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体および少なくとも1種の有効な化粧品成分を含む化粧品組成物であって、ここで第1の有効な化粧品成分が、
水蒸気蒸留によって前もって処理されたベチバーの根の
水性抽出物を含む、前記組成物。
【請求項2】
化粧品組成物が、スキンケア組成物である、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項3】
水蒸気蒸留によって前もって処理されたベチバーの根を
水で抽出することを含む、有効な化粧品成分を調製する方法。
【請求項4】
以下のステップを含む、請求項4に記載の方法:
(i)
水蒸気蒸留によって前もって処理されたベチバーの根を提供する;および
(ii)
当該ベチバーの根を
、水を使用して抽出する。
【請求項5】
水蒸気蒸留によって前もって処理されたベチバーの根からの水性抽出
物の、スキンケアにおける使用。
【請求項6】
請求項1
または2に記載の化粧品組成物をヒトの皮膚に適用することによって、皮脂生成を刺激する、皮脂抗微生物を刺激する、脂質生成を刺激する、脂肪細胞の体積増加を活性化させる、皮膚の水和を改善する、皮膚の弾力性を引き上げる、皮膚の疲労を低減する、唇周辺のしわを低減する、皮膚を再度ふっくらさせる、および/またはフレグランスの持続性を増強する方法。
【請求項7】
水蒸気蒸留によって前もって処理されたベチバーの根の
水性抽出物が、以下からなる群から選択される化学物質を含む、
【化1】
請求項1
または2に記載の化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベチバーの根の抽出物を含む化粧品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ベチバー(Vetiveria zizanioides、またChrysopogon zizanioides、Andropogon squarrosus、またはAndropogon muricatus)は、インド原産のイネ科ファミリーの多年生の矮生草である。
ベチバーは主に、典型的には水蒸気蒸留によって、その根から蒸留される芳香性のエッセンシャルオイルのために栽培される。世界的規模の生産は、1年あたり約250トンと推定される。その優れた定着特性に起因して、ベチバーは、香料において幅広く使用される。それは、西洋全域の香料の90%において含有される。インドネシア、中国、ハイチは、主要な生産国である。
【0003】
ベチバーのエッセンシャルオイルは、100を超える同定された構成成分、例えば、安息香酸、フルフロール、ベチベン、ベチベニルベチベナート、テルピネン-4-オール、5-エピプレジザン、クシメン、α-ムウロレン、クシモン、カラコネン、β-フムレン、α-ロングピネン、γ-セリネン、δ-セリネン、δ-カジネン、バレンセン、カラレン、α-グルジュネン、α-アモルフェン、エピジザナール、3-エピジザノール、クシモール、イソ-クシモール、バレレノール、β-ベチボン、α-ベチボン、およびベチバズレンなどを含有する複合油である。
【0004】
油は、黄褐色であり、および、やや粘度が高い。その匂いは、奥行きがある、甘い、ウッディ、スモーキー、土のような、アンバー、およびバルサムとして説明される。根は、掘り出され、洗浄され、および次いで乾燥される。蒸留の前に、根は、刻まれ、水中に浸される。蒸留プロセスは、24時間まで取り得る。蒸留後、消耗された(exhausted)根は、大抵廃棄される。
【発明の概要】
【0005】
消耗されたベチバーの根に価値を付与することが、本発明の目的である。
これは、本発明の化粧品組成物および方法によって達成される。
第1の側面において、本発明は、担体および少なくとも1種の有効な化粧品成分を含む化粧品組成物であって、ここで第1の有効な化粧品成分が、ベチバーの根の抽出物を含む、前記組成物を提供する。
【0006】
蒸留によって得られるエッセンシャルオイルとは対照的に、ベチバーの根の抽出物は、ベチバーの根を溶媒を用いて抽出することによって得られる。
本発明のベチバーの根の抽出物は、完全に天然であり、および匂いがない。
驚くべきことに、本発明のベチバーの根の抽出物は、優れたスキンケア特性を保有し、および皮膚における脂質合成を再活性化させることができることが見出された。
とりわけ、アンドロゲン性および非アンドロゲン性脂腺細胞モデルの両方における皮脂分泌を刺激することができる(下記参照)。さらに、再構築されたヒト表皮上の脂質の新しい合成を増加させること、および皮膚の外植片のモデル上の表皮の構造を改善することが見出された。これらの所見は、プロテオーム研究によって裏付けられている(下記参照)。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、最適化された抽出プロセスのフローチャートを示す。
【0008】
したがって、具体的な態様において、本発明の化粧品組成物は、スキンケア組成物、とりわけアンチエイジング組成物である。この目標に向けて、担体は、皮膚科学的に許容し得る担体であるべきである。
具体的に好適な抽出物は、ベチバーの根の水性抽出物である。したがって、本発明の好ましい態様において、第1の有効な化粧品成分は、ベチバーの根の水性抽出物を含む。
水性抽出物は、ベチバーの根を純粋な水を用いて抽出することによって得られてもよい。任意に、水は添加剤を、例としてpHを調整するための添加剤を含有してもよい。
【0009】
驚くべきことに、消耗されたベチバーの根の抽出物でさえも、上に記載の有利な効果を有する有効な化粧品成分を提供したことが見出された。したがって、本発明の具体的な態様において、第1の有効な化粧品成分は、消耗されたベチバーの根の抽出物を含む。
本出願を通してずっと、用語「消耗されたベチバーの根」は、水蒸気蒸留によって前もって処理されたベチバーの根を指す。よって、それは、エッセンシャルオイルが除去された後の根の残留物を指す。
具体的な態様において、本発明は、消耗されたベチバーの根の水性抽出物に関する。これは、「廃棄」物に付加価値を付与することを可能にする。
【0010】
さらなる態様において、本発明は、ベチバーの根を抽出することを含む、有効な化粧品成分を調製する方法に関する。
抽出することによって、ベチバーの根が溶媒または溶媒の混合物を用いて処理されることを意味する。溶媒(単数または複数)はまた、添加剤を含有してもよい。実例として、ベチバーの根は、水抽出、酸抽出、酵素抽出、超音波促進された(ultrasound assisted)水抽出、加圧水抽出またはエタノール抽出にさらされてもよい。
好ましくは、ベチバーの根は、抽出に先立ち、とりわけ切断および/または粉砕においてより小片へ小さくされる。
【0011】
ベチバーの根はまた、抽出に先立ち、洗浄されてもよい。根を、とりわけ水で洗浄することが、抽出物の減少された着色につながったことが見出された。
任意に1以上の添加剤を含有する、水を用いた抽出が、最良の結果を提供することが見出された。
好適な添加剤は、これらに限定されないが、酸、塩基、緩衝剤、塩および/または共溶媒を包含する。とりわけ、抽出溶媒のpHは、酸(例として、H2SO4またはクエン酸)または塩基(例として、NaOH)の添加によって調整されてもよい。
純粋な水(根と共に、pHほぼ7.48)の使用、または本質的に純粋な水の使用が、具体的に有利であることが見出された。
したがって、具体的な態様において、抽出は、純粋な水を使用して実施される。
【0012】
抽出は、室温にてまたは高温にて、例として、約40℃、約60℃、または約80℃の温度にて実施されてもよい。約60℃の温度が具体的に有利であることが見出された。
ベチバーの根の抽出物は、例えば、濾過(例として、KDS15フィルター上)、活性炭処理(charcoal treatment)および/または殺菌濾過によって精製されてもよい。
ベチバーの根の抽出物はまた、濃縮されてもよい。濃縮の間抽出物の可溶性を改善するために、濃縮に先立ち、1,3-プロパンジオールを抽出物へ添加することもまた可能である。
【0013】
具体的な態様において、本発明の方法は、(i)消耗されたベチバーの根を提供する;および(ii)消耗されたベチバーの根を抽出するステップを含む。
図1は、最適化された抽出プロセスのフローチャートを示す。それは、以下のステップを含む:
(i)水蒸気蒸留され、乾燥されたベチバーの根を提供する;
(ii)ベチバーの根を水で洗浄し、それらを乾燥させ、およびそれらを粉砕する;
(iii)ベチバーの根を、攪拌下、4時間、60℃の温度にて、水を用いて抽出する;
(iv)抽出物をスピン乾燥させる、および濾過;
(v)1,3-プロパンジオール(濾過物/12の量)を添加する;
(vi)12の濃縮係数による蒸発による濃縮;
(vii)濾過;および
(viii)乾燥物含量を0.7%へ調整する。
【0014】
このプロセスによって得られた抽出物は、典型的には、約150~約250mg/l、とりわけ約250±20mg/lのジザン酸(zozanoic acid)含量;約6.5~約7.5、とりわけ約7.0±0.2のpH;およびガードナー色数(Gardner Color Scale)に関する約7.8~約9.1、とりわけ約8.5±0.3の値を有する。ジザン酸における色、pH、収率および乾燥物収率は安定的であることが見出された。
【0015】
分析目的のために、2つのバッチが、以下の手順に従って調製された:
- 2000gの水中、75gの洗浄された根の60℃、8hの抽出
- 濾過
- 5回の濃縮(FCM12プロパンジオールと同様)
- 濾過
- 殺菌濾過
- 凍結乾燥。
【0016】
1.5318gの抽出物を遠心分離クロマトグラフィーにおいて分画するために、二相系MTBE/アセトニトリル/水(4/1/5;v/v)が使用された。溶離が、流速20ml/minおよび1200rpmの回転で、昇順モードで実施された。
上相が70分間固定相を介してくみ上げられた。画分9~70が回収された。押出が降順モードにおいて確認され、画分71~78に対応する。
画分がTLCプロファイルにおける類似性に従って13グループにおいてプールされた。TLCが、Machery nagelシリカゲル逆相および酢酸エチル/トルエン/酢酸/ギ酸(20/80/11/11)の溶媒を用いて実施された。
【0017】
13グループが
1Hおよび
13C NMRにおいて分析され、2D実験が記録された(HSQC、HMBC、COSY)。
よって、以下の物質が、消耗されたベチバーの根の水性抽出物において同定されている:
【化1】
【0018】
【0019】
よって、本発明はまた、(1)~(20)から選択される2以上の物質の混合物、とりわけこれらの物質の少なくとも5の、より具体的にこれらの物質の少なくとも10の、および最も具体的に物質(1)から(20)のすべての混合物を提供する。
【0020】
本発明の抽出物の1つの重要な構成要素は、これまでに報告されている構造(1)を有するセスキテルペンである、ジザン酸である。他の代謝体、実例として、オプロパノン(6)、ソラネリアノンA(8)、ベチベリアニン(vetiverianine)B(10)、バレンセン-11,12-ジオール(12)、イソバレンセン酸(13)、およびトイヘテノン(15)のいくつかもまたこれまでに記載されている。
一方で、物質(2)、(3)、(4)、(5)、(7)、(9)、(11)、および(14)は、以前に記載されていない。
【0021】
したがって、さらなる側面において、本発明はまた、以下からなる群から選択される化学物質にも関する。
【化3】
【0022】
驚くべきことに、ジザン酸の水における可溶性は、本発明の抽出物中に存在する他の物質によって改善されることが見出された。
本発明の化粧品組成物は、下に示されるだろうとおり、優れたスキンケア特性を表した。
【0023】
皮膚脂質は、皮膚の水和、柔軟性およびバリア機能の維持において基本の役割を果たす。それらは、以下の3つのタイプの細胞によってほとんど生成される:
- 皮脂腺に位置付けられる脂腺細胞は、トリグリセリド、ワックスエステル、スクアレン、および遊離脂肪酸から主に構成される、皮脂、脂質薄膜を生成する。皮脂は、皮膚の脱水からの保護、その柔軟性の維持を保証し、およびまたその酸性のpHおよびその抗微生物の脂質(AML)によって皮脂マイクロフローラを保護する。
- 角化細胞は、それらの分化の間に脂質、例えば、セラミドおよびコレステロール誘導体などを蓄積し、それは角質層の皮膚角化膜をさらに構築するだろう。このプロセスは、皮膚バリア機能の保存における重要なステップであり、およびまた皮膚脱水を阻止する。
- 皮下脂肪に存在する脂肪細胞は、エネルギー貯蔵、機械的保護および熱調節のための他のタイプのトリグリセリドを生成する。それらは、機械的な補助を請け合うことによって、皮膚体積、弾力性およびはり(firmness)における重要な役割を果たす。
【0024】
角質層全体の崩壊は、脂質の欠乏から始まり、加齢と共に、全体の-30%の減少を伴う。脂腺細胞によって生成される脂質はまた、10年毎にほぼ25%の皮脂生成の段階的な減少と共に影響を及ぼされる。これは、皮膚の水和の喪失をもたらす。
一方で、加齢時の顔面脂肪の喪失は、脂肪細胞のより低い分化、および減少された脂肪貯蔵に関連し、より低いはりおよび弾力性、たるみおよびしわの発現をもたらす。
【0025】
本発明のベチバーの根の抽出物は、皮膚における3つの主要な脂質供給源に作用し、皮脂生成、角質化および脂肪を貯蔵する脂肪細胞の容量を改善する。プラセボに対する3つの臨床試験は、消費者利益を浮き彫りにした:
1.皮膚の水和の改善
2.皮膚の疲労の減少および、具体的には唇周辺のエリアにおける、しわの低減
3.フレグランスを増強する特性
【0026】
ex vivo調査研究において、本発明のベチバーの根の抽出物は、脂質生成を増加させ、およびよって皮膚バリア機能を改善することが見出された(下の例3を参照)。
本発明のベチバーの根の抽出物はまた、皮脂の量および質を引き上げる(下の例4を参照)。
脂質生成の再活性化(in vitro/ex vivo)および皮膚バリアタンパク質の再活性化(ex vivo)もまた観察された(下の例5および例6参照)。これは、バリア機能の再構築を確認するものである。
【0027】
本発明のベチバーの根の抽出物はまた、皮膚脂肪細胞の分化およびサイズを引き上げることも見出された(下の例7を参照)。
臨床の試験において、目に見える皮膚の疲労の低減および唇周辺のしわの減少が観察された(下の例8を参照)。
本発明の組成物はまた、皮膚組成物および水和の利益になることも見出された(下の例9を参照)。
本発明の組成物はさらに、フレグランスの引き上げ利益を保有することも見出された(下の例10を参照)。
【0028】
よって、要するに、本発明の組成物は、皮脂生成の刺激、皮脂抗微生物の刺激、脂質生成、脂肪細胞の体積増加の活性化、皮膚の水和、皮膚弾力性ブースター、皮膚の疲労低減、唇周辺のしわ低減、皮膚を再度ふっくらさせる、およびフレグランスの持続性の増強を提供する。
したがって、本発明の組成物は、乾燥皮膚のための血清、抗老化の唇周辺の血清、抗老化のナイトクリームおよびデイクリーム、抗疲労エッセンス、皮膚強化(tonifying)マスク、抗座瘡クリーム、およびフレグランスの持続性を増加させるためのボディローションにおいて使用されてもよい。
【0029】
さらなる側面において、本発明は、ベチバーの根からの抽出物のスキンケアにおける使用に関する。これは、上に記載のベチバーの根の抽出物の肯定的な効果を利用することを可能にする。
具体的な態様において、消耗されたベチバーの根からの水性抽出物および/または抽出物が使用される。
ベチバーの根の抽出物は、抗老化製品において具体的に有利に使用される。
【0030】
さらなる態様において、本発明は、本発明の化粧品組成物をヒトの皮膚へ適用することによって、皮脂生成を刺激する、皮脂の抗微生物を刺激する、脂質生成を刺激する、脂肪細胞の体積増加を活性化させる、皮膚の水和を改善する、皮膚の弾力性を引き上げる、皮膚の疲労を低減する、唇周辺のしわを低減する、皮膚を再度ふっくらさせる、および/またはフレグランスの持続性を増強する方法に関する。
【0031】
本発明は、以下の非限定例を用いてさらに説明される:
例1:in vitroおよびex vivo研究のためのベチバーの根の抽出物の調製
ハイチ産の消耗されたvetiveria zizanioidesの根(75g)を水(2000g)中に懸濁した。抽出を、4h、60℃にて、攪拌下で実施した。pHを抽出の間監視し、約7.4~約7.8で変化させた。
濾過後、溶液を、0.7%の最終的な乾燥物含量になるまで、水の除去によって濃縮した。生成物は、典型的には、無臭の透明な暗黄色から琥珀色の液体であり、約7.7~7.8のpHを有する。この抽出物を、典型的には、in vitroおよびex vivo研究のために用いる。
これに続く例において記載した研究のために、1%、2%および3%の抽出物を夫々含有する水性溶液を調製した。
【0032】
例2:in vitro研究のためのベチバーの根の抽出物の調製
ハイチ産の消耗されたvetiveria zizanioidesの根(75g)を水(2000g)中に懸濁した。抽出を、4h、60℃にて、攪拌下で実施した。pHを抽出の間監視し、約7.4~約7.8で変化させた。
濾過後、1,3-プロパンジオールを溶液へ添加し、その結果得られる混合物を、0.7%の最終的な乾燥物含量になるまで、水の除去によって濃縮した。生成物は、典型的には、無臭の透明な暗黄色から琥珀色の液体であり、約6.5~約7.5のpHを有する。この抽出物を、典型的には、in vivo研究のために使用する。
これに続く例において記載した研究のために、2%のベチバー抽出物を夫々含有する水性溶液を調製した。
【0033】
【0034】
【0035】
例3:バリア機能のための脂質生成の増加(ex vivo)
プロテオーム分析を、例1の抽出物からの1%溶液を6日間毎日適用した3人のドナー(54歳、56歳および69歳女性)のヒトの皮膚の外植片について、LC-MS/MSによって実施した。結果を以下の表に示す:
【表3】
【0036】
これらの結果によって、例1の抽出物によって、脂質生成、脂質輸送および表皮分化を対象とする複数の経路に関与する完全な一連のタンパク質の発現が刺激されることが示された。組成物によって、皮膚の脂質代謝のモジュレーションを介して表皮性のバリアが改善された。
【0037】
例4:皮脂の量および質の引き上げ
a)脂腺細胞の刺激(in vitro)
脂腺細胞を例1からの抽出物からの1%溶液を用いて4時間プレインキュベートした。次いで、脂質合成ミックス(ビタミンC、ビタミンD3、インスリンおよびカルシウム)を、インキュベーションの別の7日間添加した。3日後に処理を再開した。次いで、脂質含量を、Bodipy(登録商標)蛍光標識を使用して評価した(脂質を緑色において目に見えるようにした)。
結果を、
図2に示す。例1の抽出物によって、脂質合成ミックスのみと比べて、31%までの皮脂脂質蓄積の増加を伴う、有意な脂腺細胞の刺激が示された。
【0038】
b)抗微生物の脂質(AML)含量の増加(in vitro)
脂腺細胞を、3D培養で培養し、例1の抽出物からの1%溶液を用いて7日間全身において処理した。次いで、遊離脂肪酸の含量を、GC/MSによって評価し、AML中のそれらの含量を分析した。
結果を、
図3に示す。例1の抽出物によって、処理なしのものと比較して、皮脂中の抗微生物の脂質(ラウリン酸およびサピエン酸)の含量が、+23%まで有意に増加されたことを見出した。
【0039】
同じ実験手順を、脂質合成ミックスの刺激なしで繰り返した。ベチバーの根の抽出物によって、他のあらゆる脂質合成刺激なしで、抗微生物の脂質の生成を脂腺細胞モデルへ誘導できることを見出した(
図4)。
とりわけ、ベチバーの根の抽出物によって、共に重要なAMLと考えられるラウリン酸(+42%)およびサピエン酸(+43%)の生成が有意に誘導された。
【0040】
例5:バリア機能の再構築(in vitro):脂質生成の再活性化(in vitro/ex vivo)
a)セラミドおよびそれらの前駆体の合成
再構築したヒト表皮(RHE)を、例1の抽出物からの1%溶液を用いて7日間インキュベートした。
次いで、RHE中に含有させた脂質を抽出し、薄層クロマトグラフィーおよび濃度測定分析によって研究し、RHE中のセラミド前駆体の量を評価した。
【0041】
【0042】
例1の抽出物によって、未処理のRHEと比較して、表皮中のセラミドおよびそれらの様々な前駆体の生成が、+42%まで有意に増加されることを見出した。よって、ベチバーの抽出物は、RHE中の特定の脂質の新しい合成を刺激する能力を有する。
【0043】
b)セラミド輸送の刺激
正常なヒトの角化細胞(NHEK)を、例1の抽出物からの1%溶液を用いて5日間刺激した。次いで、セラミド輸送タンパク質(CERT)を免疫蛍光によって定量した。
結果を、
図5に示す。例1の抽出物によって、未処理のNHEKと比較して、CERTの発現が、+124.5%まで有意に増加され、表皮中の脂質のより良好な輸送が可能になることを見出した。
【0044】
c)脂質含量の引き上げ
69歳のドナーからの皮膚の外植片を、例1の抽出物からの1%溶液を用いて6日間局所的に処理した。皮膚からの中性脂質を、LipidTOX(商標)を使用して染色した。免疫染色を顕微鏡観察(緑色蛍光)によって定量し、角質化の刺激を評価した。
結果を、
図6に示す。脂質生成および輸送の引き上げの結果として、例1の抽出物によって、未処理の試料と比較して、角化膜中の脂質含量が、+30%まで有意に増加されることを見出した。
【0045】
例6:バリア機能の再構築(in vitro):皮膚バリアタンパク質の再活性化(ex vivo)
例1の抽出物からの1%溶液を6日間毎日適用した3人のドナー(54歳、56歳および69歳女性)からのヒトの皮膚の外植片を、角化膜の3つの特徴的なタンパク質であるデルモカイン、インボルクリンおよびロリクリンの定量化のために、LC-MS/MSを使用するプロテオームによって評価した。
結果を、
図7に示す。例1の抽出物によって、角質層の3つの主要なタンパク質の発現が、平均において+53%~+239%まで有意に増加されることを見出した。よって、ベチバーの抽出物は、これらのタンパク質の発現を再活性化させる、皮膚の角化膜をより密集させることによって表皮性のバリアの改善に明確な影響を有する。
【0046】
例7:皮膚脂肪細胞の分化およびサイズの引き上げ
a)脂肪細胞の分化の改善(in vitro)
前脂肪細胞を、例1の抽出物からの3%溶液を用いて13日間培養した。次いで、脂質液滴、脂肪細胞分化のマーカーを、AdipoRed(商標)(蛍光の脂質プローブ)を使用して標識して、分化を定量した。
例1の抽出物によって、未処理の試料と比較して、脂肪細胞の分化が、+3413%までの効果を伴い、有意に増加されることを見出した。
【0047】
b)脂肪細胞の体積の増加(ex vivo)
完全な皮膚の外植片(表皮、真皮および皮下組織)を、例1からの3%溶液を用いて処理した。D0、D1、D4およびD6に、生成物を局所的に適用した。D8に、外植片を顕微鏡分析のために染色した。次いで、脂肪細胞のサイズの決定を、画像分析によって、それらの当量の環状の直径を測定することによって実施した。
例1の抽出物によって、顕微鏡によって観察されるとおり、皮下組織における脂肪細胞の平均サイズが有意に増加されることを見出した。
【0048】
例1の抽出物の使用後、脂肪細胞の集団におけるシフトを観察し得ることもまた注目に値する:
- in vitroで観察した分化のブーストが反映され、「小さい」脂肪細胞(20~60μm)の数が、+26%まで増加される(前脂肪細胞からの新しい小さな脂肪細胞の発現)
- 平均サイズの増加およびより良好な脂肪貯蔵容量の結果として、「大きい」脂肪細胞(100~140μm)の数が、+189%まで増加される(存在する脂肪細胞における脂質の蓄積)
【0049】
老化の間、脂肪組織の体積の喪失は、脂肪組織機能の変更、例えば、脂肪細胞サイズの低減および前脂肪細胞のダイナミクスにおける変化などの結果である。これらの2つの研究によって実証されるとおり、ベチバーの抽出物は、体積の再定義に有益な影響を有し、前脂肪細胞の分化を再活性化させることによって、および、成熟した脂肪細胞における脂質生成を刺激することによって「再度ふっくらさせる」作用因子(agent)として作用する。
【0050】
例8:目に見える皮膚の疲労の低減および唇周辺のしわの減少(臨床試験)
二重盲式臨床試験を、たるんだ顔およびしわをもつ21人のボランティア(52歳~69歳の、平均60歳の女性)の2つのグループに実施した。プラセボまたは例2の抽出物からの2%溶液がボランティアの顔に56日間、1日2度(朝および夜)適用された。
【0051】
a)弾力性/はりおよび抗疲労効果の改善
D0、D28およびD56に、皮膚の生体力学特性を、粘弾性のバランスのおよび疲労効果の夫々代表的なパラメータであるR6およびR9に焦点を当てて、頬骨のキュトメトリー(cutometry)によって測定した。D0、D28およびD56に、ボランティアの顔が、立体画像と合わされた特許された投影ユニットであるAEVA HE(登録商標)を使用し得て分析された。
結果を、
図8に示す。例2の抽出物によって、プラセボに対して、老化したボランティアの皮膚の生体力学特性の、+11.2%の弾力性における回復および-17.8%の皮膚の疲労減少を伴う、時間進行性の回復および有意な回復が可能になる。これらの結果はまた、ボランティアの3D顔画像で明確に目に見える(
図9)。
【0052】
b)唇周辺のしわの平滑
D0およびD56に、具体的な焦点をボランティアの唇周辺のしわに当てて、AEVA HE(登録商標)を使用してそれらを定量した。
結果を、
図10に示す。例2の抽出物の毎日の適用によって、2ヶ月において、プラセボに対して100%のボランティアについて、唇周辺のしわの-18%
***の平均的な低減を伴う、有意な効果が可能になる。
***p<0.001 スチューデントt検定
【0053】
c)皮膚利益の自己評価
全てのボランティアに、D56に彼らの皮膚に対する例2の抽出物の利益を評価するように依頼した:
76%のボランティアが、彼らの皮膚をより水和したと感じた。
72%のボランティアが、彼らの皮膚をより心地よくかつ快適にしたと感じた。
71%のボランティアが、彼らの皮膚に栄養を与えたと感じた。
【0054】
例9:皮膚組成物および水和利益(臨床試験)
二重盲式臨床評価を、乾燥した脚(コルネオメトリー(corneometry)値<35)をもつ20人のボランティア(50歳~70歳の、平均63歳の女性)に実施した。例2の抽出物からの2%溶液またはプラセボが、ボランティアの脚に1日2度(朝および夜)、28日間適用された。
【0055】
a)脂質組織の改善
D0およびD28に、ラマン分光法を使用して、皮膚における脂質状態の質を評価した。
結果を、
図11に示す。例2の抽出物によって、皮膚における脂質組織の+21%までの有意な改善が示され、したがってそれらの緊密性、および最終的にバリア機能が増加された。
【0056】
b)皮膚の水和の増加
D0およびD28に、皮膚の水和をコルネオメトリーによって分析した。
結果を、
図12に示す。例2の抽出物によって、乾燥皮膚をもつボランティアに、皮膚の水和の+7.3%までの有意な増加が示された。
【0057】
例10:フレグランスの引き上げ利益(臨床試験)
フレグランスの持続性を評価するために、臨床試験を20人の女性ボランティアに実施した。プラセボクリームがボランティアの前腕に、例2の抽出物からの2%溶液が他の前腕に1ヶ月間、1日2度適用された。次いで、最終日に、ファインフレグランス(Tom Ford Neroli Portofino)を彼らの前腕の両方に適用した。
【0058】
a)持続性の自己評価
ボランティアに、ファインフレグランスの嗅覚的な強度を、彼らの皮膚に適用後2時間および4時間にランク付けするよう依頼した。
ボランティアによって、プラセボを用いて処理した前腕上のフレグランス強度の有意な減少が観察されたが、一方で例2の抽出物を用いて処理したものによってフレグランスの適用の2hおよび4h後のフレグランス強度が維持された。
比較結果を、
図13に示す。例2の抽出物によって、適用後のフレグランスの嗅覚的な強度時間が+25%までの有意に増加されることによって、フレグランスの持続性の引き上げ効果が実証される。
【0059】
b)熟練したフレグランス評価者の意見
例2の抽出物の利益をフレグランスの引き上げ特性の観点から確認するために、熟練したフレグランス評価者に、ボランティアの2本の前腕間の嗅覚的な特性の観点からの違いを評価するように依頼した。
評価者によって、例2の抽出物によって、フレグランスの中心およびベースノートが経時的に強調され、したがってフレグランスの官能性としての機能がより引き上げられるという結論に至った。
【0060】
例11:皮脂生成に対する影響(臨床試験)
二重盲式およびプラセボ制御した臨床評価を、30人の女性ボランティア(63歳~70歳、平均年齢67±2)に実行した。ボランティアによって、彼らの顔の皮脂の低いレベルが表された。すべてのボランティアによって、研究の開始日に、彼らのインフォームドコンセント署名日が与えられた。
ボランティアによって、例2の抽出物からの2%溶液が彼らの顔の一方の側に、プラセボが他方の側に、1日に2度(朝および夜)、28日間適用された。D0およびD28に、額および頬上の皮脂生成を、Sebumeter(登録商標)(ex Courage-Khazaka Electronic)を使用して分析した。
【0061】
結果
ベチバーの抽出物によって、額および頬上の適用の28日後の、皮脂生成の、夫々+99%および+78%を伴う、有意な増加が誘導されることを見出した。
詳細な結果は、以下のとおりである:
【表5】
【0062】
したがって、2%でのベチバーの抽出物によって、そうでなければ年老いた人々において劇的に低減する皮脂生成を再活性化させることができる。
【0063】
例12:消耗されたベチバーの抽出物の分析
抽出物調製
消耗されたベチバーの根を、6hの間の60℃での水を用いた抽出(1000gの水あたり37.5g)の前に、洗浄し、乾燥させ、粉砕し、これに続き、濾過および濃縮することによって、500gの水性抽出物が得られた。水性抽出物を、酢酸エチルを用いて3回抽出した(水性抽出物対合計の酢酸エチルの比率=1:6)。酢酸エチル抽出物を蒸発させることによって、2.081gの黄色油が得られた。
【0064】
遠心分離クロマトグラフィー(CPC)による分画
酢酸エチル抽出物を、303mLのカラムおよび2相溶媒系(nヘキサン/EtOAc/メタノール/水(10/8/10/8、v/v))を使用して、CPC器機FCPE300(登録商標)(Rousselet Robatel Kromaton)上で分画した。
CPCクロマトグラムを、254、280、300、および360nmで観察した。20mLの画分を、全体の実験にわたって回収し、それらの薄層クロマトグラフィープロファイルに従ってあわせた。
【0065】
主要な代謝体のNMR分析および同定
CPC画分を、TXIクライオプローブを備えたBruker Avance AVIII-600 分光計(Karlsruhe、ドイツ)で、298Kでの13C NMRによって分析し、Chrysopogon zizanoides種においてこれまでに報告されている代謝体と比較した。追加の2D NMR実験(HSQC、HMBC、およびCOSY)を推定的に同定した化合物を含有する画分に対して実施することによって、データベースが提案した分子構造がデレプリケーション(Dereplication)プロセスの最後に確認された。また、必要な場合、第2のCPC分画を実施した。
【0066】
【0067】
【0068】
上の代謝体のうち、ジザン酸(1)、オプロパノン(6)、ソラネリアノンA(8)、ベチベリアニンB(10)、バレンセン-11,12-ジオール(12)、イソバレンセン酸(13)、およびトイヘテノン(15)は、これまでに記載された。
物質(2)、(3)、(4)、(5)、(7)、(9)、(11)、および(14)は、他方、前に記載されていない。