(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】免疫増強剤としてのウロリチンA
(51)【国際特許分類】
A61K 31/37 20060101AFI20240919BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20240919BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20240919BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240919BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240919BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20240919BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240919BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20240919BHJP
A61K 39/25 20060101ALI20240919BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20240919BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240919BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240919BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20240919BHJP
A23L 33/10 20160101ALN20240919BHJP
【FI】
A61K31/37
A61K39/145
A61K39/12
A61P43/00 105
A61P37/04
A61P31/18
A61P1/16
A61P31/06
A61K39/25
A61K39/02
A61K39/00 H
A61P7/06
A61P17/14
A23L33/10
(21)【出願番号】P 2020561032
(86)(22)【出願日】2019-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2019061093
(87)【国際公開番号】W WO2019211294
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-05-02
(32)【優先日】2018-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2018-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512018265
【氏名又は名称】アマゼンティス エスアー
【氏名又は名称原語表記】AMAZENTIS SA
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】リンシュ,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】シング,アヌラーグ
(72)【発明者】
【氏名】ダミーコ,ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー,ペネロペ
(72)【発明者】
【氏名】ブランコ-ボーズ,ウィリアム
【審査官】清野 千秋
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-523362(JP,A)
【文献】Biochim Biophys Acta.,2018年,1862(1),pp.61-70
【文献】Trends Mol Med.,2016年,22(8),pp.671-686
【文献】Nat Med.,2014年,20(5),pp.503-510
【文献】Cell,2008年,132,pp.27-42
【文献】IUBMB Life,2018年,70(3),pp.207-214
【文献】Immunity,2015年,43,pp.331-342
【文献】PNAS,2005年,102(22),pp.7922-7927
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/37
A61K 39/145
A61K 39/12
A61P 43/00
A61P 37/04
A61P 31/18
A61P 1/16
A61P 31/06
A61K 39/25
A61K 39/02
A61K 39/00
A61P 7/06
A61P 17/14
A23L 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウロリチンAまたはその塩を有効成分として含む、ヒトまたは動物の対象における抗原に対する免疫応答を上昇、増
強または強化するため
に使用される組成物であって、前記ウロリチンAまたはその塩が250mg/日~1000mg/日の範囲内の用量で投与される、組成物。
【請求項2】
前記対象における免疫機能および/または免疫の健康を改善するための、請求項
1に記載の
組成物。
【請求項3】
前記免疫応答が、前記対象のワクチン接種に対する応答である、請求項1
または2に記載の
組成物。
【請求項4】
増強された免疫応答が、抗体セロコンバージョンの改善を含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項5】
前記増強された免疫応答が、免疫細胞の応答の改善を含む、請求項
4に記載の
組成物。
【請求項6】
前記免疫細胞が、CD4 T細胞、CD8 T細胞、樹状細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞およびB細胞の1つ以上から選択される、請求項
5に記載の
組成物。
【請求項7】
前記ワクチン接種が、病原性細菌または病原性ウイルスまたは癌に対するものである、請求項
3~6のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項8】
前記ワクチン接種が、インフルエンザ、水痘、ジフテリア、髄膜炎菌、はしか、おたふく風邪、百日咳、肺炎球菌、ポリオ、風疹、破傷風、結核、腸チフスおよび/または黄熱に対するものである、請求項
7に記載の
組成物。
【請求項9】
前記ワクチン接種が、インフルエンザに対するものである、請求項
8に記載の
組成物。
【請求項10】
インフルエンザウイルス株が、H1N1、H3N2およびBから選択される、請求項
9記載の
組成物。
【請求項11】
ワクチンが、弱毒化ウイルスを含む、請求項
3~10のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項12】
前記ワクチン接種の前記対象が、高齢者または子供である、請求項
3~11のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項13】
前記高齢者が、60歳以上である、請求項
12に記載の
組成物。
【請求項14】
前記対象が、免疫不全状態である、請求項1~
13のいずれか一項に記載の
組成物。
【請求項15】
前記免疫不全状態の対象が、HIV、肝炎および結核に感染しているか、または感染のリスクがある、請求項
14に記載の
組成物。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれかに記載の
組成物を含む、免疫増強剤。
【請求項17】
1つ以上の追加の免疫増強剤成分をさらに含む、請求項
16に記載の免疫増強剤。
【請求項18】
請求項1~
15のいずれかに記載の
組成物を、1つ以上の追加の免疫増強剤成分と混合することを含む、請求項
17に記載の免疫増強剤を調製する方法。
【請求項19】
(i)請求項1~
15のいずれかに記載の
組成物と、
(ii)1つ以上の追加の免疫増強剤成分と、
(iii)任意選択でワクチンと、を含むキット。
【請求項20】
(i)請求項1~
15のいずれかに記載の
組成物と、
(ii)ワクチンと、
(iii)任意選択で1つ以上の追加の免疫増強剤成分と、を含むキット。
【請求項21】
a)免疫増強剤として請求項1~
15のいずれかに記載の
組成物を投与することと、
b)ワクチンを投与することと、
を含むワクチン接種の方法に用いるための請求項1~
15のいずれかに記載の
組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原に対する免疫応答の上昇、および/または抗原に対する免疫応答の増強、調節、もしくは強化に使用するための化合物に関する。特にウロリチンの使用。本発明はまた、ウロリチンを含む免疫増強剤、そのような免疫増強剤を使用する方法、およびそのような免疫増強剤の調製のためのプロセスに関する。本発明はまた、幹細胞機能の調節、例えば幹細胞数の増加、幹細胞再生の促進、および幹細胞分化の促進のための方法におけるウロリチンの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスは、急性の自己解決状態から、狂犬病、はしか、下痢性疾患、肝炎、ポリオ、口唇ヘルペス、HIV、エボラ、ジカおよびインフルエンザなどの急性の致命的な疾患に至るまで、幅広いヒト疾患を引き起こす。これらの微細な粒子は、典型的には人と人との接触または汚染された表面への接触によって容易に広がる。体内に入ると、ウイルスは細胞に入り、すばやく繁殖する。効果的な抗ウイルス薬は、多くのヒトウイルス性疾患のほんの一部にしか存在しない。多くの場合、ウイルス性の病気の処置には、体の免疫系が感染を取り除くまで症状を緩和することが含まれる。
【0003】
インフルエンザは医療サービスに大きな負担をかけ、高齢者、非常に幼い子供、および慢性疾患を有する人々に重大な罹患率および死亡率をもたらす。世界保健機関は、季節性インフルエンザが世界中で毎年25万~50万人の死亡を引き起こしていると推定している。インフルエンザに関連しないウイルス性気道感染症もまた人間によく見られる病気であり、同様に医療サービスに重大な健康上の負担をもたらす[非特許文献1]。
【0004】
細菌性疾患もまた、重大な健康上の負担をもたらす。疾患の負担が最も高い細菌性疾患の1つは、細菌である結核菌により引き起こされる結核であり、主にサハラ以南のアフリカで年間約200万人が死亡している。病原性細菌は、連鎖球菌およびシュードモナスなどの細菌によって引き起こされ得る肺炎、ならびに赤痢菌、カンピロバクターおよびサルモネラ菌などの細菌によって引き起こされ得る食品媒介性疾患など、他の世界的に重要な疾患の原因となる。病原性細菌はまた、破傷風、腸チフス、ジフテリア、梅毒およびハンセン病などの感染症を引き起こす。病原性細菌は、発展途上国における高い乳児死亡率の原因でもある。
【0005】
原因となる病原体の不活化または弱毒化された形態でのワクチン接種は、宿主に細胞性(T細胞-サイトカインおよび記憶)および体液性(B細胞-抗体)免疫応答を構築して、病原体への曝露の有害な負荷を相殺する。世界的な予防接種戦略の代表的な例は、インフルエンザワクチンによる予防接種に関連する。毎年、インフルエンザウイルスの様々な株に曝される可能性があり、上気道感染症(インフルエンザ)の発生、また進行した場合には生命を脅かす肺炎さえももたらし、毎年、その年最も流行している株に対するインフルエンザワクチンで免疫される機会がある。研究によると、加齢により免疫機能および健康状態が低下している65歳以上の高齢者は、インフルエンザ株への曝露に最も敏感であり、強力な免疫系を有する健康な成人集団(18~49歳)の10%未満に対し、米国の高齢者集団だけで発生率が30%を超えていることが示されている(非特許文献2)。
【0006】
インフルエンザワクチン接種は有効であるが、季節による有効率は、使用するワクチンおよびアジュバントの種類、ワクチン接種者の年齢、ならびにその季節の優勢株の毒性に依存するため、効果的とは言えない。米国の全人口の平均では、有効率は10~60%の間で変動し、高齢者はワクチン接種による利益は高いが、免疫機能状態が低いため、平均よりも有効率が低くなっている(非特許文献3および非特許文献4)。
【0007】
加齢は、免疫老化および加齢に伴う炎症に関連する(非特許文献5;非特許文献6)。加齢による免疫機能および健康の低下に伴い、感染性病原体および疾患の影響を受けるリスクが高まり、高齢者の死亡率および罹患率が高くなる。高齢者人口は、2030年までに世界人口の25%超を占めると予想されており(非特許文献7)、免疫機能の維持またはその低下の予防は、この人口の良好な生活の質を維持するための鍵である。さらに、免疫機能の低下は、インフルエンザなどの疾患を発症するリスクが最も高い集団でのワクチン接種に応答する効率の低下につながる。
【0008】
加齢は、生物の自己複製幹細胞の加齢および幹細胞数の減少に一部起因していると考えられている。この幹細胞の加齢は、DNA損傷などの内因性イベント、および幹細胞ニッチまたは幹細胞を支援する保護された環境の変化などの外因性イベントが原因であると考えられている。様々なニッチが年齢と共に低下することが示されており、したがって静止状態の幹細胞集団に対する加齢の有意な影響がない場合でも、幹細胞の機能性は、幹細胞およびその子孫の機能を調整する局所的ニッチからの信号の低下に起因して影響され得る。
【0009】
幹細胞機能の低下は、自己複製および分化した子孫の生成のコア幹細胞特性の根底にある一般的な分子プロセスの低下を指す(非特許文献8)。幹細胞機能、自己複製および幹細胞数のこの低下は、虚弱、アテローム性動脈硬化症、2型糖尿病などの加齢関連状態に影響すると考えられている(非特許文献9)。幹細胞における加齢の役割は、造血系で最もよく研究されており、幹細胞はほぼ均一に単離され得、それらの機能は検証済みのアッセイを使用して研究され得る。
【0010】
造血系は、血液中に見られる全ての細胞成分で構成される(
図1A)。造血系の細胞は一定の更新を必要とし、約10
11~10
12の新しい血液細胞が平均的なヒトにおける定常状態細胞レベルを維持するために毎日産生されることが必要である。これらの細胞の産生は、造血系の器官、脾臓および骨髄で生じ、全ての異なる系統は多能性前駆細胞(MPP)から得られる。血球系を維持する多能性前駆細胞(MPP)の集団は、それ自体が造血幹細胞(HSC)によって維持される(
図1B)。これらの細胞は、細胞表面での様々なタンパク質の発現によって識別され得る。
図1Bに示されるように、HSCおよび様々なMPP前駆細胞型は、細胞表面タンパク質の様々な組み合わせを有し、これらの細胞表面タンパク質に対する様々な抗体を使用することで、これらの様々な細胞が識別および分離され得る。HSCは、循環頻度が低く、より定期的に循環するMPP集団を維持することができる幹細胞である。HSC集団の低頻度の循環は、これらの細胞をDNA損傷から保護し、生物の寿命の間それらを維持するのに役立つ。それらの枯渇およびそれを支えるHSCニッチの劣化は、加齢において重要であると考えられている。
【0011】
骨髄移植では、宿主の血球系を再構成するために使用されるドナーHSCの年齢が、移植の成功に重要な役割を果たす。加齢HSCは、骨髄を生着および再構成する能力が損なわれていることが示されている(非特許文献10)。
【0012】
加齢の間の免疫反応の欠陥は、一般に、特に免疫系が不足している集団、例えば高齢者および免疫系がまだ発達中の子供などにおいて、新しい免疫増強剤が高レベルで必要とされていることを示す。本特許の主題である式(I)の化合物は、そのような免疫増強剤として役立ち得る。
【0013】
ウロリチンは天然の腸内代謝物であり、ザクロ、ベリーおよびクルミなどのある特定の果物およびナッツに大量に見られる食物前駆体(エラジタンニンなど)にさらされると、宿主の腸内細菌叢により生成される。腸内でのウロリチン産生は、大きなヒト個体間変動を示し、これは結腸微生物叢の違いと関連している[非特許文献11]。いくつかの研究は、これらのポリフェノールが豊富な果物の消費による健康上の利点を示しているが、おそらくはその生物学的効力に大きく影響する異なる代謝物プロファイルをもたらす個人間の腸内細菌叢の大きな変動のために、これらの研究間の結果は一貫していない。これは、最適な食事介入を設計する上で別の大きな課題を提起し、ポリフェノールが豊富な果物の消費の健康面を調査する研究の解釈を制限する。[例えば、非特許文献12および非特許文献13を参照されたい]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【文献】Fendrick et al (2003) Arch.Intern.Med.163(4), 487-94
【文献】CDC、2011~2012 https://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6122a4.htm
【文献】N Engl J Med.2007 Oct 4; 357(14):1373-81
【文献】Interim Estimates of 2017-18 Seasonal Influenza Vaccine Effectiveness - United States, February 2018.MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2018 Feb 16; 67(6):180-185
【文献】Aging Clin Exp Res.2009 Jun;21(3):201-9
【文献】Front Immunol.2018 Jan 10;8:1960. doi: 10.3389/fimmu.2017.01960
【文献】国連経済社会局、人口課(2015).World Population Ageing 2015 (ST/ESA/SER.A/390)
【文献】D. Melton, in Essentials of Stem Cell Biology (Third Edition).(Academic Press, Boston, 2014), pp.7-17
【文献】Sharpless, 2007 Nat Rev Mol Cell Biol 2007 Sep; 8(9):703-13
【文献】Stem Cells Transl Med.2015 Feb;4(2):186-94
【文献】Garcia-Villalba et al (2013) J.Agric.Food Chem., 2013, 61, 8797-8806
【文献】Tomas-Barberan FA et al (2014) J Agric Food Chem.62(28):6535-8
【文献】Gonzalez-Sarrias et al (2017) Mol Nutr Food Res.61(5). doi: 10.1002/mnfr.201600830
【発明の概要】
【0015】
本発明の第1の態様によれば、ヒトまたは動物の対象における(i)抗原に対する免疫応答の上昇、および/または(ii)抗原に対する免疫応答の増強、調節、もしくは強化に使用するための、式(I)
【化1】
(式中、
A、B、C、D、W、X、Y、およびZは、それぞれ独立して、HおよびOHから選択される)
の化合物またはその塩が提供される。
【0016】
ウロリチンAなどのウロリチンは、驚くべきことに、免疫細胞および抗体(体液性)応答を改善することにより免疫機能および健康を増進すると考えられている。ウロリチンAなどのウロリチンは、免疫系の最適な機能を維持し、追加の介入としてワクチン接種前に特に高齢者または子供などの感受性の高い集団で現在のワクチンの有効性を実質的医増進するために使用され得る。
【0017】
本発明のさらなる態様によれば、(i)抗原に対する免疫応答の上昇、および/または(ii)抗原に対する免疫応答の増強、調節、もしくは強化のための医薬の製造における、式(I)の化合物の使用が提供される。
【0018】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の対象における(i)抗原に対する免疫応答の上昇、および/または(ii)抗原に対する免疫応答の増強、調節、もしくは強化の方法であって、有効量の式(I)の化合物を投与することを含む方法が提供される。
【0019】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の対象における(i)抗原に対する免疫応答の上昇、および/または(ii)抗原に対する免疫応答の増強、調節、もしくは強化の方法であって、免疫増強剤としての有効量の式(I)の化合物を投与することを含む方法が提供される。
【0020】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の対象における免疫機能および/または免疫の健康を改善する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0021】
本発明のさらなる態様によれば、免疫増強剤として投与された場合にヒトまたは動物の対象における免疫機能および/または免疫の健康を改善する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0022】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の対象における免疫機能および/または免疫の健康を改善する方法で使用するための医薬の製造における、式(I)の化合物の使用が提供される。
【0023】
本発明のさらなる態様によれば、有効量の式(I)の化合物の投与を含む、免疫機能および/または免疫の健康を改善する方法が提供される。
【0024】
本発明のさらなる態様によれば、免疫系を増進するための方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0025】
本発明のさらなる態様によれば、免疫系を増進するための医薬の製造における式(I)の化合物の使用が提供される。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、有効量の式(I)の化合物の投与を含む免疫系を増進する方法が提供される。
【0027】
本発明のさらなる態様によれば、免疫系を調節するための方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0028】
本発明のさらなる態様によれば、免疫系を調節するための医薬の製造における式(I)の化合物の使用が提供される。
【0029】
本発明のさらなる態様によれば、有効量の式(I)の化合物を投与することを含む免疫系を調節する方法が提供される。
【0030】
一実施形態において、免疫系を調節することは、免疫応答を増強することを含む。別の実施形態において、免疫系を調節することは、炎症反応を調節することを含む。さらなる実施形態において、免疫応答を調節することは、免疫応答を増強すること、および炎症反応を調節することを含む。
【0031】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の対象における免疫不全を処置する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0032】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の対象における免疫不全を処置する方法で使用するための医薬の製造における式(I)の化合物の使用が提供される。
【0033】
本発明のさらなる態様によれば、有効量の式(I)の化合物をヒトまたは動物の対象に投与することを含む、免疫機能および/または免疫の健康を改善する方法が提供される。
【0034】
加齢に伴う炎症は、加齢および加齢に関連する疾患の発生率に影響し、炎症誘発性状態の慢性的な進行性の増加である。炎症は、病原体感染または様々な種類の組織損傷に直面している宿主系によって引き起こされる一連の複雑な応答イベントである。一般的な状態では、感染および組織損傷の炎症誘発性因子が排除されると炎症反応が消失し、次いで、炎症の解消と呼ばれる、非常に活発でよく調整されたバランスの取れた状態に変化する。しかしながら、加齢の間などの一部の状況では、炎症は抗感染および組織損傷修復の定常状態に移行できず、代わりに炎症は継続し、非解消性の炎症状態に移行する。
【0035】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の対象における加齢に伴う炎症を処置する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の対象における加齢に伴う炎症を予防、低減、または遅延させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0036】
本発明のさらなる態様によれば、加齢に伴う炎症を処置する方法における式(I)の化合物の使用が提供される。本発明のさらなる態様によれば、加齢に伴う炎症を予防、低減、または遅延させる方法における式(I)の化合物が提供される。
【0037】
本発明のさらなる態様によれば、有効量の式(I)の化合物をヒトまたは動物の対象に投与することを含む、加齢に伴う炎症を処置する方法が提供される。本発明のさらなる態様によれば、有効量の式(I)の化合物をヒトまたは動物の対象に投与することを含む、加齢に伴う炎症を予防、低減、または遅延させる方法が提供される。
【0038】
インターロイキン12(IL12)に対するインターロイキン10(IL10)の比率を測定することは、細胞の炎症性表現型の有用な評価基準であり、より高いIL10/IL12比率は、より抗炎症性の表現型を示す。したがって、本発明のさらなる態様によれば、式(I)の化合物を使用してIL10/IL12比を増加させる方法が提供される。
【0039】
本発明の化合物はまた、ベーチェット病などの炎症性障害の処置に有用であると考えられている。したがって、本発明のさらなる態様によれば、ベーチェット病を処置する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0040】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の対象における免疫老化を処置する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0041】
本発明のさらなる態様によれば、免疫老化を処置する方法における式(I)の化合物の使用が提供される。
【0042】
本発明のさらなる態様によれば、有効量の式(I)の化合物をヒトまたは動物の対象に投与することを含む、免疫老化を処置する方法が提供される。
【0043】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の対象における幹細胞の老化を予防、低減、または遅延させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0044】
本発明のさらなる態様によれば、幹細胞の老化を予防、低減、または遅延させる方法における式(I)の化合物の使用が提供される。
【0045】
本発明のさらなる態様によれば、有効量の式(I)の化合物をヒトまたは動物の対象に投与することを含む、幹細胞の老化を予防、低減、または遅延させる方法が提供される。
【0046】
免疫老化は、免疫系の細胞に分化する造血幹細胞の老化に起因し得、したがって、本発明のさらなる態様によれば、人間または動物の対象における幹細胞の加齢、特に造血幹細胞の加齢を処置する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0047】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物対象における幹細胞の加齢、特に造血幹細胞の加齢を処置する方法で使用するための医薬の製造における式(I)の化合物の使用が提供される。
【0048】
本発明のさらなる態様によれば、有効量の式(I)の化合物をヒトまたは動物の対象に投与することを含む、幹細胞の加齢、特に造血幹細胞の加齢を処置する方法が提供される。
【0049】
本発明のさらなる態様によれば、CD34陰性造血幹細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0050】
本発明のさらなる態様によれば、CD34陰性造血幹細胞およびCD34陽性、CD48陰性造血前駆細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0051】
本発明のさらなる態様によれば、CD34陽性造血前駆細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0052】
本発明のさらなる態様によれば、CD34陽性、CD48陰性造血前駆細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0053】
本発明のさらなる態様によれば、CD48陽性造血前駆細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0054】
本発明のさらなる態様によれば、CD48陽性、CD150陽性造血前駆細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0055】
本発明のさらなる態様によれば、CD150陰性造血前駆細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0056】
本発明のさらなる態様によれば、CD150陰性、CD135陰性造血前駆細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0057】
本発明のさらなる態様によれば、CD135陽性造血前駆細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0058】
本発明のさらなる態様によれば、CD34陽性、CD48陽性造血前駆細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0059】
本発明のさらなる態様によれば、CD48陽性、CD150陰性造血前駆細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0060】
式(I)の化合物は、造血幹細胞に加えて、幹細胞自体に影響を与えると考えられている。したがって、本発明のさらなる態様によれば、幹細胞機能を調節する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。幹細胞機能の調節は、
(i)幹細胞の再生の促進;
(ii)幹細胞数の増加の促進;
(iii)幹細胞の加齢の予防、逆転、もしくは遅延;
(iv)幹細胞の老化の予防、逆転、もしくは遅延;および/または
(v)幹細胞の分化の促進を含む。
【0061】
本発明のさらなる態様によれば、インビボ、インビトロ、またはエクスビボのいずれかで、幹細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0062】
本発明のさらなる態様によれば、その後の再生治療のために患者に戻る前に、幹細胞のエクスビボ増殖において使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0063】
本発明のさらなる態様によれば、エクスビボでの幹細胞の増殖に続いて産生される細胞が提供される。
【0064】
幹細胞の例には、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS)、胚性幹細胞、および成体幹細胞が含まれる。幹細胞のさらなる例には、造血幹細胞、筋幹細胞、皮膚幹細胞、肝臓幹細胞、神経幹細胞、メラノサイト幹細胞、毛包幹細胞、間葉系幹細胞、脂肪由来幹細胞、辺縁幹細胞(角膜幹細胞)、心臓幹細胞、腸幹細胞、上皮幹細胞、自己幹細胞および同種幹細胞が含まれる。
【0065】
本発明のさらなる態様によれば、
-幹細胞の再生を支援する方法;
-幹細胞の再生の最適化を補助する方法;
-幹細胞の再生を促進する方法;
-幹細胞の再生を刺激する方法;
-幹細胞機能を支援する方法;
-幹細胞機能の最適化を補助する方法;および/または
-幹細胞機能を促進する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0066】
本発明のさらなる態様によれば、
-幹細胞の再生を支援する方法;
-幹細胞の再生の最適化を補助する方法;
-幹細胞の再生を促進する方法;
-幹細胞を増進する方法;および/または
-幹細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0067】
本発明のさらなる態様によれば、幹細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。一実施形態において、幹細胞の数は、少なくとも約5%、例えば、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、または少なくとも約25%増加する。
【0068】
幹細胞は一般に静止状態にあり、細胞周期で停止して、必要に応じて増殖して新しい幹細胞を生成し、再び増殖する必要があるまで静止状態に戻ることができる。加齢の間、幹細胞は老化状態に入り、細胞周期に再び入ることができなくなる。幹細胞が老化状態になるのを防ぎ、活発で健康な幹細胞集団を維持するために、支援が必要になる場合がある。したがって、本発明のさらなる態様によれば、幹細胞を支持する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。本発明のさらなる態様によれば、幹細胞の老化を予防および/または阻害する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0069】
加齢造血幹細胞で報告されている変化には、リンパ球に分化する能力の低下、骨髄系細胞に分化する能力の増加、細胞周期阻害剤p16INKaの発現の増加、および造血幹細胞前駆細胞を再増殖させる能力の低下が含まれる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物対象における幹細胞の加齢を処置する方法で使用するための式(I)の化合物が提供され、処置は、リンパ球に分化する能力を改善すること、骨髄系細胞に分化する能力を低下させること、細胞周期阻害剤であるp16INKaの発現を低下させること、および造血幹細胞前駆細胞を再増殖させる能力を改善することのより多くのうちの1つ以上を達成することを含む。
【0070】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物対象における幹細胞老化を処置する方法で使用するための薬剤の製造における式(I)の化合物の使用が提供され、処置は、リンパ球に分化する能力を改善すること、骨髄系細胞に分化する能力低下させること、細胞周期阻害剤であるp16INKaの発現を低下させること、および造血幹細胞前駆細胞を再増殖させる能力を改善することのより多くのうちの1つ以上を含む。
【0071】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物対象における幹細胞老化を処置する方法で使用するための式(I)の化合物が提供され、処置は、リンパ球に分化する能力を改善すること、骨髄系に分化する能力を低下させること、細胞周期阻害剤であるp16INKaの発現を低下させること、および造血幹細胞前駆細胞を再増殖させる能力の改善することのより多くのうちの1つ以上を含み、方法は、ヒトまたは動物に有効量の式(I)の化合物を投与することを含む。
【0072】
免疫老化中に観察される変化には、自然免疫系の機能障害、B細胞の発達障害、胸腺退縮、T細胞出力の低下、T細胞多様性の低下も含まれる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の対象における免疫老化を処置する方法で使用するための式(I)の化合物が提供され、処置は、自然免疫系の変化を逆転、低減、または停止すること、B細胞発達の障害を逆転、低減または停止すること、胸腺退縮を逆転、低減または停止すること、T細胞出力の低減を逆転、低減または停止すること、T細胞多様性の低減を逆転、低減または停止することを含む。
【0073】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の対象における免疫老化を処置する方法で使用するための薬剤の製造における式(I)の化合物の使用が提供され、処置は、自然免疫系の変化を逆転、低減、または停止すること、B細胞発達の障害を逆転、低減または停止すること、胸腺退縮を逆転、低減または停止すること、T細胞出力の低減を逆転、低減または停止すること、およびT細胞多様性の低減を逆転、低減または停止することを含む。
【0074】
本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物対象における免疫老化を処置する方法が提供され、処置は、自然免疫系の変化を逆転、低減または停止すること、B細胞発達の障害を逆転、低減または停止すること、胸腺退縮を逆転、低減または停止すること、T細胞出力の低減を逆転、低減または停止すること、およびT細胞多様性の低減を逆転、低減または停止することを含み、方法は、有効量の式(I)の化合物をヒトまたは動物の対象に投与することを含む。
【0075】
免疫系の1つの重要な役割は、外部感染と戦うことであり、ワクチン接種はこのための重要なツールである。免疫不全状態の対象および高齢の対象では、免疫応答が一般的に低下し、ワクチン接種に対する応答が損なわれ、ワクチン接種の有効性が低下し、対象は一般にインフルエンザにかかりやすくなる。本発明の別の態様によれば、ヒトまたは動物の対象における(i)抗原に対する免疫応答を高める、および/または(ii)抗原に対する免疫応答を増強、調節、もしくは強化する際に使用するための式(I)の化合物が提供され、対象は、高齢者または免疫不全状態の対象である。
【0076】
本発明の別の態様によれば、ヒトまたは動物の対象における(i)抗原に対する免疫応答を高める、および/または(ii)抗原に対する免疫応答を増強、調節、もしくは強化する際に使用するための式(I)の化合物が提供され、免疫応答はワクチンに対するものである。
【0077】
免疫応答はいくつかの成分を含み、式(I)の化合物はこれらの成分の1つ以上で利益を示すことが期待される。これらには以下が含まれる:
(i)抗体価の改善;
(ii)例えば、CD4 T細胞、CD8 T細胞、樹状細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー(NK)細胞および/もしくはB細胞における免疫細胞の応答の改善、および/または
(iii)サイトカイン応答の改善。
【0078】
一実施形態において、抗体価の改善は、少なくとも5%、例えば少なくとも10%、例えば少なくとも15%または20%、例えば少なくとも25%または30%であろう。
【0079】
さらなる実施形態において、セロコンバージョン率の改善は、5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上または20%以上、例えば25%以上または30%以上であろう。
【0080】
別の実施形態において、セロプロテクション率の改善は、5%以上、例えば10%以上、例えば15%以上または20%以上、例えば25%以上または30%以上であろう。
【0081】
別の実施形態において、ピーク抗体価は、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、または少なくとも5倍高いであろう。
【0082】
本発明のさらなる態様によれば、対象動物におけるワクチン投与に応答して抗体価を増加させる方法において使用するための式(I)の化合物が提供され、方法は、前記動物を有効量の式(I)の化合物で処理することを含む。
【0083】
ワクチン接種は、人間または動物の対象に病気を引き起こす病原性細菌または病原性ウイルスに対して行うことができる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、ヒトまたは動物の対象において(i)抗原に対する免疫応答を高めること、および/または(ii)抗原に対する免疫応答を増強、調節、もしくは強化することにおいて使用するための式(I)の化合物が提供され、免疫応答は、インフルエンザ、水痘、ジフテリア、髄膜炎菌、はしか、おたふく風邪、百日咳、肺炎球菌、ポリオ、風疹、破傷風、結核、ジカ、エボラ、腸チフスおよび/または黄熱に対するワクチンに対するものである。
【0084】
本発明のさらなる態様によれば、
a)免疫増強剤として式(I)の化合物を投与することと;
b)ワクチンを投与することとを含むワクチン接種の方法が提供される。
【0085】
本発明のさらなる態様によれば、
a)免疫増強剤としてウロリチンを投与することと;
b)ワクチンを投与することとを含むワクチン接種の方法が提供される。
【0086】
誤解を避けるために、式(I)の化合物およびウロリチンは、ワクチンと共にいずれかの順序で投与され得るか、またはそれらが同時に投与され得る。
【0087】
特に好ましいワクチンは、インフルエンザウイルスに対するものである。インフルエンザウイルスは、インフルエンザA、インフルエンザB、インフルエンザC、およびインフルエンザDのいくつかの型で生じる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、ワクチン接種がインフルエンザA、インフルエンザB、インフルエンザCまたはインフルエンザDに対するものである本発明の方法または使用が提供される。本発明の一態様において、ワクチン接種はインフルエンザAに対するものである。本発明のさらなる態様において、ワクチン接種はインフルエンザBに対するものである。
【0088】
インフルエンザAは、いくつかの亜種(血清型)として生じる。本発明のさらなる態様において、ワクチン接種がインフルエンザAに対するものであり、血清型がH1N1、H2N2、H3N2、H5N1、H7N7、H1N2、H9N2、H7N2、H7N3、H10N7および/またはH7N9、特にH1N1および/またはH3N2である本発明の方法または使用が提供される。
【0089】
本発明の一態様において、式(I)の化合物は、本発明の方法または使用においてワクチンと同時に投与される。別の態様において、式(I)の化合物は、本発明の使用または方法においてワクチンの前に投与され、任意選択でワクチン接種後に投与が継続される。式(I)の化合物は、ワクチンの数週間または数日前、例えば1~12週間前、例えば1~8週間または1~4週間前に投与され得る。あるいは、式(1)の化合物は、ワクチン投与の約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、または約6週間前に投与され得る。
【0090】
ワクチンは、ワクチンが免疫応答を惹起することができる任意の形態で対象に送達され得る。投与経路の例には、非経口、皮下、皮内、経口、鼻腔内、舌下、吸入によるもの、局所、直腸内、口腔内、および膣内が含まれる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、ワクチン接種が、非経口、皮下、皮内、経口、鼻腔内、舌下、吸入を介するもの、局所、直腸内、口腔内、および膣内の経路のうちの1つ以上を介して投与される本発明の方法または使用が提供される。
【0091】
本発明の方法および使用において使用される場合、式(I)の化合物は、高齢の対象および小児において特に効果的であると考えられている。したがって、本発明のさらなる態様によれば、対象が小児、年配者、または高齢者である本発明の方法または使用が提供される。
【0092】
年配者は、50歳超、例えば55歳超、例えば60歳超、例えば50歳~65歳であってもよい。
【0093】
高齢患者は、65歳超、例えば70歳超、例えば75歳超、例えば80歳超、例えば65~80歳、例えば65~90歳、例えば90~100歳、例えば100歳超の年齢であってもよい。
【0094】
小児は、出生から約18歳まで、例えば、出生から約1歳まで、例えば、出生から約10歳まで、例えば、出生から4歳~5歳までの年齢であってもよい。
【0095】
式(I)の化合物は、本発明の方法および使用において使用される場合、免疫不全状態の対象、例えば、HIV、肝炎および結核に感染した、または感染のリスクがある免疫不全状態の対象において特に有効であると考えられる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、対象が免疫不全状態の対象、例えば、HIV、肝炎、および/または結核に感染した対象である本発明の方法または使用が提供される。
【0096】
式(I)の化合物は、特にワクチン接種に応答して、抗原に対する免疫応答を増強し、したがって、免疫増強剤として作用する。式(I)の化合物は、免疫応答をさらに増強するために、1つ以上1つ以上の追加の免疫増強剤成分と共に使用することができる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、式(I)の化合物および1つ以上の追加の免疫増強剤成分を含む免疫増強剤組成物が提供される。そのような組成物は、ワクチン接種の前に投与されることを意図した組成物、および式(I)の化合物が最初に投与され、1つ以上の追加の免疫増強剤成分が一定期間後に投与される組成物を含む。免疫増強剤の投与は、ワクチン接種時に停止するか、またはワクチン接種と同時におよびその後に送達することができる。期間は、数時間から数週間までさまざまである。
【0097】
式(I)の化合物は、1つ以上の追加の免疫増強剤成分の有無にかかわらず、ワクチンを用いた処置プロトコルで投与することができる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、以下を含む処置プロトコルが提供される。
(i)式(I)の化合物;
(ii)ワクチン;および
(iii)任意選択で1つ以上の免疫増強剤成分。
【0098】
本発明のさらなる態様によれば、ワクチンが、不活化もしくは弱毒化された微生物またはそれに由来するタンパク質もしくはペプチド抗原を含む処置プロトコルが提供される。不活化または弱毒化された微生物は、不活化もしくは弱毒化されたウイルスまたは不活化もしくは弱毒化された細菌から選択される。誤解を避けるために、タンパク質またはペプチド抗原は、活性または弱毒化されていないウイルスまたは細菌に由来してもよい。
【0099】
処置プロトコルにおいて、式(I)の化合物は、以下のように、いくつかの方法で投与され得る:
-一次予防:ワクチン接種の前に式(I)の化合物を与えて、免疫系を刺激/感作し、ワクチン接種の準備を整える;および/または
-二次予防:式(I)の化合物をワクチン接種/免疫感作(免疫増強剤として-例えば、皮下ワクチン接種を並行して行う錠剤としての経口投与)と共に与え、免疫応答を増進する;および/または
-三次予防:ワクチン接種/インフルエンザの反応が始まった後に式(I)の化合物を与え、インフルエンザ発症の症状を緩和もしくは管理する。
【0100】
本発明のさらなる態様によれば、ワクチンは、インフルエンザ、水痘、ジフテリア、髄膜炎菌、はしか、おたふく風邪、百日咳、肺炎球菌、ポリオ、風疹、破傷風、結核、エボラ、腸チフスおよび/もしくは黄熱病の1つ以上から選択される不活化もしくは弱毒化微生物もしくは抗原、またはそれらに由来するタンパク質、サブユニット、もしくはペプチドである。好ましくは、インフルエンザまたはそれに由来するタンパク質、サブユニットもしくはペプチドである。
【0101】
機能的な造血幹細胞の数を増加させることは、造血系の全体的な更新に有益であり、免疫機能の改善;照射後または骨髄移植後などの骨髄不全の発生率の低下;および貧血の処置をもたらす。これは、癌(白血病およびリンパ腫など)の処置に使用される化学療法処置の細胞毒性効果からの回復の改善、化学療法処置の結果としての骨髄抑制の処置および/または予防、ならびに骨髄移植の改善および移植関連の死亡率の低下に使用され得る。したがって、本発明のさらなる態様によれば、機能的造血幹細胞の数を増加させる方法で使用するための、例えば、
(i)患者の処置および/もしくはドナーでの骨髄採取の前に;
(ii)照射後および/もしくは骨髄移植後の処置において;
(iii)化学療法処置の細胞毒性効果の処置において;ならびに/または
(iv)化学療法処置の結果としての骨髄抑制の処置および/もしくは予防において使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0102】
本発明のさらなる態様によれば、
(i)患者の処置および/もしくはドナーでの骨髄採取の前に;
(ii)照射後および/もしくは骨髄移植後の処置において;
(iii)化学療法処置の細胞毒性効果の処置において;ならびに/または
(iv)化学療法処置の結果としての骨髄抑制の処置および/もしくは予防において使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0103】
造血幹細胞は、新しい赤血球の供給源でもある。したがって、本発明のさらなる態様によれば、貧血の予防および/または処置に使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0104】
式(I)の化合物はまた、例えば癌の処置において、照射により処置されている患者に使用することができる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、患者における照射処置中の免疫増強剤としての式(I)の化合物の使用が提供される。式(I)の化合物は、処置中の免疫系への損傷を制限するために、照射前または照射中に免疫系を増強するために使用され得る。あるいは、またはさらには、免疫系の回復を増強するために、照射後に式(I)の化合物を使用することができる。
【0105】
式(I)の化合物は、その後の移植のために骨髄細胞を採取する前、および/または骨髄の再増殖を増強するために骨髄細胞を患者に移植して戻した後、骨髄細胞移植中の免疫増強剤として使用することができる。式(I)の化合物は、癌処置のための細胞毒性化学療法などの免疫抑制療法の後に患者に戻る前に、骨髄細胞の増殖においてエクスビボで使用され得る。
【0106】
式(I)の化合物は、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、および活性化T細胞を含む、癌免疫療法に使用される免疫細胞の数および機能を増加させるために、エクスビボまたはインビボで使用され得る。
【0107】
式(I)の化合物は、その後の癌免疫療法のために患者に戻る前に、CAR-T、TCR-Tまたは他の操作されたT細胞の増殖においてエクスビボで使用され得る(Kershaw, M. H., Westwood, J.A., & Darcy, P. K. Gene-engineered T cells for cancer therapy.Nature Reviews Cancer, 2013)。
【0108】
式(I)の化合物は、軟骨再生のために患者に戻る前に、間葉系幹細胞の数および機能を増加させるためにエクスビボで使用され得る。
【0109】
式(I)の化合物は、皮膚移植のために患者に戻る前に、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS)、胚性幹細胞、および成体幹細胞のケラチノサイトへの分化を刺激するために使用され得る。
【0110】
本発明のさらなる態様によれば、化学療法の細胞毒性効果を予防および/または処置する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。本発明のさらなる態様によれば、骨髄抑制、例えば細胞毒性化学療法後の骨髄抑制を予防および/または処置するための方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0111】
神経幹細胞(NSC)の消耗は、加齢中の嗅覚低下に関与しているとされている。したがって、さらなる態様によれば、嗅覚低下、例えば、加齢中の嗅覚低下を処置する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0112】
本発明のさらなる態様によれば、内耳毛前駆細胞の増殖を促進する方法における式(I)の化合物が提供される。
【0113】
さらに、NSCは発作に反応して増殖するように刺激され、NSCの増殖が脳の損傷またはニューロンの喪失を修復するための神経新生の増加につながることを示唆している。したがって、本発明のさらなる態様によれば、脳の修復を促進する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。本発明のさらなる態様によれば、式(I)の化合物またはニューロンの喪失を予防、阻害、もしくは遅延させる方法における使用が提供される。本発明のさらなる態様によれば、発作を予防および/または処置する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0114】
機能的な神経幹細胞の数を増加させると、神経新生が促進され、適応学習などの学習を支援することができる。したがって、本発明のさらなる態様によれば、神経発生を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。本発明のさらなる態様によれば、学習、例えば適応学習を支援する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0115】
メラノサイト幹細胞機能の低下および/またはメラノサイト幹細胞の数の減少は、加齢中の髪の白髪化に関係している。したがって、本発明のさらなる態様によれば、髪の色の喪失または髪の白髪化、例えば、加齢中の髪の色の喪失または髪の白髪化を予防、阻害または遅延させる方法における、式(I)の化合物が提供される。
【0116】
毛包幹細胞機能の低下および/または毛包幹細胞の数の減少は、体毛の喪失および禿頭症に関与し得る。したがって、本発明のさらなる態様によれば、(i)体毛の喪失および/もしくは禿頭症を予防、阻害、もしくは遅延させる、(ii)発毛を促進および/もしくは改善する;ならびに/または(iii)移植後の発毛を促進および/もしくは改善する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0117】
本発明のさらなる態様によれば、毛包幹細胞の再生、および/または毛包幹細胞の更新速度を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0118】
本発明のさらなる態様によれば、毛包幹細胞の分化の方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0119】
本発明のさらなる態様によれば、発毛を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。発毛速度は、毛幹の形成速度、または毛幹を形成する活性を有する毛包の形成速度によって測定することができる。いくつかの実施形態において、効果は、毛幹の太さの変化を含み得る。
【0120】
本発明のさらなる態様によれば、毛包数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。一実施形態において、式(I)の化合物は、数週間から数か月の期間にわたって、毛包数(または毛包単位)の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%の増加を促進する。例えば、数週間から数か月の期間にわたって、毛包数(または毛包単位)が少なくとも10%増加する。例えば、数週間から数か月の期間にわたって、毛包数(または毛包単位)が50%(またはそれ以上)増加する。
【0121】
本発明のさらなる態様によれば、脱毛を減少させるための式(I)の化合物が提供される。一実施形態において、数週間から数か月の期間にわたって、脱毛が少なくとも5%、10%、15%、20%、25%減少する。例えば、数週間から数か月の期間にわたって、脱毛が少なくとも10%減少する。例えば、数週間から数か月の期間にわたって、脱毛が50%(またはそれ以上)減少する。
【0122】
本発明のさらなる態様によれば、毛包幹細胞の成長および/または発毛の増加から利益を得るであろう病状、例えば円形脱毛症、アンドロゲン性脱毛症、男性型脱毛症および化学療法誘発性脱毛症で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0123】
本発明のさらなる態様によれば、男性型脱毛症を処置する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0124】
本発明のさらなる態様によれば、脱毛症を処置する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0125】
本発明のさらなる態様によれば、既存の毛髪を改善するための式(I)の化合物が提供される。既存の毛髪を改善することは、毛髪の太さを増やすことを含む。
【0126】
本発明のさらなる態様によれば、(i)体毛の喪失および/もしくは禿頭症を予防、阻害、もしくは遅延させるため;(ii)発毛を促進および/もしくは改善するため;ならびに/または(iii)移植後の発毛を促進および/もしくは改善するための、式(I)の化合物を含む組成物が提供され、組成物はトニック、ローション、セラム、シャンプー、コンディショナー、スプレー、ゲル、またはクリームであることを特徴とするである。さらなる実施形態において、式(I)の化合物またはその塩は、0.01μM~100mM、0.01μM~10mM、0.01μM~1mM、0.01μM~100μM、0.1μM~500μM、0.1μM~100μM、または1μM~50μMの範囲内の濃度で組成物中に存在する。
【0127】
膵島のベータ細胞の更新速度が低下すると、加齢中の2型糖尿病の可能性が増加する。したがって、本発明のさらなる態様によれば、膵島におけるベータ細胞の更新速度の低下を予防、阻害、遅延、および/または逆転させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。本発明のさらなる態様によれば、膵島におけるベータ細胞の更新速度を増加させるために使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0128】
筋幹細胞の数および機能が低下すると、損傷後の筋肉の再生能力が低下する。したがって、本発明のさらなる態様によれば、筋幹細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0129】
本発明のさらなる態様によれば、筋肉の再生能力を促進する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0130】
本発明のさらなる態様によれば、筋幹細胞の再生能力を促進する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0131】
本発明のさらなる態様によれば、例えば、損傷または手術後の筋肉再生を促進および/または改善する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0132】
本発明のさらなる態様によれば、年配または高齢の患者において、例えば傷害または手術後の筋肉再生を促進および/または改善する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0133】
本発明のさらなる態様によれば、運動後の筋肉再生を促進および/または改善する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0134】
本発明のさらなる態様によれば、筋幹細胞数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0135】
筋幹細胞への影響は、FACS(蛍光活性化セルソーティング)によって特定され得る。筋幹細胞集団を選択し、筋幹細胞の本発明の有益な影響を観察する手法の2つの例は、以下のマーカーの組み合わせの使用を採用することである:
1.CD31陰性、CD45陰性、SCA陰性、VCAM陽性筋幹細胞
2.CD31陰性、CD45陰性、CD11b陰性、SCA陰性、インテグリンα7陽性、CD34陽性筋幹細胞。
【0136】
本発明のさらなる態様によれば、CD31陰性、CD45陰性、SCA陰性、VCAM陽性筋幹細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0137】
本発明のさらなる態様によれば、CD31陰性、CD45陰性、CD11b陰性、SCA陰性、インテグリンα7陽性、CD34陽性筋幹細胞の数を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0138】
本発明のさらなる態様によれば、損傷後の筋肉再生を促進する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。本発明のさらなる態様によれば、筋肉の再生能力を増加させる方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。本発明のさらなる態様によれば、損傷後の筋肉治癒の方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。式(I)の化合物は、その後の筋肉再生療法のために患者に戻る前に、筋幹細胞の増殖においてエクスビボで使用され得る。したがって、本発明のさらなる態様によれば、筋幹細胞増殖の方法、例えば筋幹細胞増殖のエクスビボ法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0139】
式(I)の化合物はまた、幹細胞を、前駆細胞などのより成熟した表現型、および筋肉細胞、毛髪細胞、造血細胞および神経細胞などの最終分化細胞に分化させる役割を有すると考えられている。理論的原理に束縛されることなく、これは他の分化誘導因子の補助因子として作用することによると考えられている。
【0140】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、幹細胞、例えば多能性幹細胞の分化を誘導する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。本発明のさらなる態様によれば、前駆細胞の分化を誘導する方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【0141】
式(I)の化合物が分化を促進する細胞の例には、多能性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS)、胚性幹細胞、および成体幹細胞が含まれる。細胞のさらなる例には、造血幹細胞、筋幹細胞、皮膚幹細胞、肝臓幹細胞、神経幹細胞、メラノサイト幹細胞、毛包幹細胞、間葉系幹細胞、脂肪由来幹細胞、辺縁幹細胞(角膜幹細胞)、心臓幹細胞、腸幹細胞、上皮幹細胞、自己幹細胞および同種幹細胞が含まれる。
【0142】
本発明のさらなる態様によれば、
a)式(I)の化合物と;
b)1つ以上の分化誘導因子とを含む組成物が提供される。
【0143】
分化誘導因子の例には、成長分化因子、レチノイン酸などのレチノイド、酪酸ナトリウムなどのブチレート、アクチビン、線維芽細胞成長因子(塩基性FGFなど)、トランスフォーミング成長因子(TGF-βなど)、ミオスタチン、インスリン成長因子1、血管内皮成長因子A、骨形態形成タンパク質、インターロイキン3、インターロイキン6、幹細胞因子、表皮成長因子、コロニーシミュレーション因子(colony simulating factor)(GM-CSFおよびM-CSFなど)ならびにグルカゴン様ペプチド1型が含まれる。
【0144】
フリードライヒ運動失調症は、フラタキシンと呼ばれる重要なタンパク質を産生する9番染色体上の遺伝子(FXN)に影響を与える常染色体劣性疾患である。フラタキシンはミトコンドリアでの役割を有し、式(I)の化合物がこの生化学的病変の影響を軽減する役割を果たしていると考えられている。本発明のさらなる態様によれば、フリードライヒ運動失調症の処置のための式(I)の化合物が提供される。
【0145】
本発明のさらなる態様によれば、それを必要とする患者または対象において本発明の方法で使用するための式(I)の化合物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【
図1】造血系を説明する図であり、A)は、造血幹細胞に由来する全ての異なる血液細胞系統を示し、B)は、前駆細胞の異なる亜集団を定義するために利用され得る細胞表面マーカー、および全骨髄に対する各集団の相対的な寄与(%BM)を説明している。ヒトにおいて、HSC(Lin
-CD34
+CD38
-CD45RA
-CD90
+CD49
+)およびMPP(Lin
-CD34
+CD38
-CD45RA
-CD90
-CD49f
-)の両方に対してヒトタンパク質マーカーの同様のセットが特定されている。造血幹細胞(HSC)は最も静止した状態の細胞であり、様々な多能性前駆細胞(MPPS)の源である。
【
図2】フローサイトメトリーで分析された、加齢C57BL/6Jマウスから単離された骨髄細胞のプロットのセットを示す図である。プロットは、前駆細胞であるLSK(c-Kit+、Lin-、Sca 1+)細胞を含む集団を選択するために使用されるゲーティング戦略の例を示している。この特定の例では、ウロリチンA処理により、前駆細胞の集団が大幅に増加し、対照マウスの系統陰性細胞の3.16%から、ウロリチンAで処理された加齢マウスの5.27%となる。
【
図3】異なる前駆細胞集団を選択するために使用されるゲーティング戦略、およびこれらの異なる造血前駆細胞集団に対するウロリチンA処理の効果を示す図である。細胞のLSK(c-Kit+、Lin-、Sca 1+)集団に存在する様々な前駆細胞集団が、CD150、CD48、CD34、およびCD135の発現に基づいて分離された。ウロリチンA処理により、最もコミットされていない前駆細胞(HSC+MPP1)であるLSK細胞の%が53.1%から61.7%に増加するこのHSC+MPP1前駆細胞の増加した集団は、HSC細胞が73.8%(未処理)から81.7%(ウロリチンA)にさらに濃縮されている。
【
図4】最も原始的な造血幹細胞集団に対するウロリチンAの効果を示す図である。加齢動物におけるウロリチンA処理は、全細胞の%および細胞数の両方として、最も原始的な前駆造血幹細胞(HSC)集団の増加をもたらした。総幹細胞数の増加は統計的に有意であり、p<0.05である。
【
図5】インフルエンザワクチン接種に応じた抗体価に対するウロリチンAの効果を評価するための第2相臨床試験のデザインを示す図である。
【
図6】炎症誘発性サイトカインと抗炎症性サイトカインに対するウロリチンAの効果を示している。加齢動物におけるウロリチンA処理は、IL-12(p40)比よりもIL-10の有意な増加をもたらした(p<0.05)。
【発明を実施するための形態】
【0147】
「約」という用語は、関連する値の±20%、例えば関連する値の±15%、例えば関連する値の±10%または関連する値の±5%の許容誤差を指す。
【0148】
「免疫増強剤」という用語は、特定のワクチン抗原と組み合わせて使用された場合に抗原特異的免疫応答を加速、延長、もしくは増強するように作用する任意の物質、および/または個人が感染症もしくは癌に対する免疫反応をより良好に備えることができるように免疫の健康を改善する任意の物質を指す。
【0149】
「抗原」という用語は、対象によって非自己として認識された場合に免疫応答を誘引するタンパク質、サブユニット、ペプチドまたは他の化合物を指す。そのような免疫応答は、侵入する病原体、毒素、またはアレルゲンに対する応答を動員するための先天的および/または適応的メカニズムを介し得る。抗原は、一般に、病原性細菌または病原性ウイルスなどの病原性生物に由来し得る。抗原はまた、悪性細胞に由来し得る。
【0150】
「免疫細胞」という用語は、細菌およびウイルスなどの微生物による感染に対する対象の防御に関与する任意の細胞を指す。この用語はまた、癌細胞に対する対象の防御に関与する任意の細胞に関連する。免疫細胞には、好中球およびマクロファージなどの食細胞、細胞毒性ナチュラルキラー(NK)細胞、顆粒球、マクロファージ、樹状細胞、記憶細胞、B細胞およびマクロファージを含むT細胞サブセットが含まれる。
【0151】
「炎症」という用語は、加齢プロセスに伴う慢性的な軽度の炎症を指す。
【0152】
「免疫不全」という用語は、感染病および/または癌と戦う免疫系の能力が損なわれているか、または完全に欠如している状態を指す。任意の種類の免疫不全を患っている人が、免疫不全であると言われる。
【0153】
「免疫老化」という用語は、自然な年齢の増加によってもたらされる免疫系の段階的な悪化を指す。これは、感染に反応する宿主の能力、および特にワクチン接種による長期的な免疫記憶の発達の両方を指す。
【0154】
「塩」という用語は、任意の薬学的に許容される塩または薬学的に許容されない塩を指す。薬学的に許容される塩のみが対象への投与に適しているが、薬学的に許容されない塩は、薬学的に許容される塩の形成における中間体として使用され得る。
【0155】
「セロコンバージョン」という用語は、本明細書で使用される場合、ワクチン接種後、例えば一般的なインフルエンザ株(H1N1、H3N2、B型)のワクチン接種後に、ワクチン接種後の抗体レベルがワクチン接種前に測定された抗体レベルの例えば少なくとも2倍から少なくとも4倍に等しい、個人がワクチン接種された免疫原に対する血清抗体の量の個人における増加を指す。
【0156】
「セロプロテクション」という用語は、本明細書で使用される場合、個人がワクチン接種された免疫原に対する血清抗体の、感染性因子に対する防御を付与する防御閾値以上の量の個人における抗体の存在を指す。
【0157】
幹細胞の老化という用語は、生存能力および代謝活動が継続しているにもかかわらず、安定した不可逆的な(治療的介入なしの)増殖能力の喪失を指す。
【0158】
「対象」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患を有する、または疾患を有するリスクのある個人、例えばヒト、ウシ、ネコ、イヌ、ロバ、ブタ、ウマ、マウス、ラットなど、特にヒトを指す。対象は、本発明による処置を必要とする患者であってもよい。「対象」という用語は、爬虫類などの非哺乳類対象を含み得る。
【0159】
「胸腺退縮」という用語は、年齢と共に胸腺が収縮し、その結果、胸腺の構造が変化し、組織量が減少することを意味する。
【0160】
「ワクチン」という用語は、本明細書で使用される場合、疾患、特にウイルス性または細菌性疾患に対する保護を付与するための、動物またはヒト対象へのインビボ投与用の免疫原性組成物を指す。「ワクチン」という用語はまた、抗癌ワクチンも指す。
【0161】
本開示は、有益な健康効果を提供する式(I)の化合物、すなわちウロリチンAなどのウロリチンの投与が関与する組成物および方法を提供する。
【0162】
式(I)の化合物およびその塩
ウロリチンは、エラジタンニンおよびエラグ酸に対する、ヒトを含む哺乳動物の腸内微生物叢の作用により生成される代謝産物である。エラジタンニンおよびエラグ酸は、ザクロ、ナッツおよびベリーなどの食品に一般に見られる化合物である。エラジタンニンは、腸自体への吸収は最小限である。ウロリチンは、上記の代表的な構造(I)を有する化合物のクラスである。いくつかの特に一般的なウロリチンの構造は、構造(I)を参照して、以下の表1に記載される。
【表1】
実際には、商業規模の製品の場合、ウロリチンを合成することが便利である。合成の経路は、例えば、WO2014/004902およびWO2015/100213に記載されている。
【0163】
構造(I)による任意の構造のウロリチンは、本開示の方法に使用され得る。
【0164】
本開示の使用および方法の一態様において、適切な化合物は、A、C、DおよびZがHおよびOHから独立して選択され、B、W、XおよびYが全てHであり、好ましくはA、C、DおよびZの少なくとも1つがOHである式(I)の化合物である。
【0165】
特に適切な化合物は、天然に存在するウロリチンである。したがって、Zは、好ましくはOHであり、W、X、およびYは好ましくは全て、Hである。W、X、およびYが全てHであり、AおよびBが両方Hであり、C、D、およびZが全てOHである場合、化合物は、ウロリチンCである。W、X、およびYが全てHであり、A、B、およびCが全てHであり、DおよびZが両方OHである場合、化合物は、ウロリチンAである。好ましくは、本開示の方法で使用されるウロリチンは、ウロリチンA、ウロリチンB、ウロリチンC、またはウロリチンDである。最も好ましくは、使用されるウロリチンは、ウロリチンAである。
【0166】
一実施形態によれば、式(I)の化合物がウロリチンAである本発明の方法が提供される。
【0167】
一実施形態によれば、式(I)の化合物がウロリチンBである本発明の方法が提供される。
【0168】
一実施形態によれば、式(I)の化合物がウロリチンCである本発明の方法が提供される。
【0169】
一実施形態によれば、式(I)の化合物がウロリチンDである本発明の方法が提供される。
【化2】
【0170】
式(I)の化合物に適用される薬学的に許容される塩という用語は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応なしにヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適し、合理的な利益/リスク比に見合った遊離塩基化合物の非毒性有機または無機酸付加塩を定義する。本発明による適切な塩は、有機または無機塩基を用いて形成されたものを含む。薬学的に許容される塩基塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばカリウムおよびナトリウムの塩、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムおよびマグネシウムの塩、ならびに有機塩基との塩、例えばジシクロヘキシルアミン、N-メチル-D-グルコミン、モルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ-、ジ-もしくはトリ-低級アルキルアミン、例えばエチル-、tert-ブチル-、ジエチル-、ジイソプロピル-、トリエチル-、トリブチル-もしくはジメチル-プロピルアミン、またはモノ-、ジ-もしくはトリヒドロキシ低級アルキルアミン、例えばモノ-、ジ-もしくはトリエタノールアミンが含まれる。
【0171】
これらの塩は、水和形態または実質的に無水の形態のいずれかで存在し得る。式(I)の化合物の結晶形態もまた、本発明の使用または方法での使用が企図される。
【0172】
投与/投薬計画
本開示の方法は、ワクチン接種前の2~16週間の期間、1日あたり1.7~6.0ミリモル、例えばワクチン接種前の2~16週間の期間、1日あたり1.7~2.7ミリモル、またはワクチン接種前の2~16週間の期間、1日あたり2.8~6.0ミリモルの範囲内の1日量で、式(I)の化合物またはその塩を対象に経口投与することを含む。以下で考察されるように、250mg~1000mgの範囲内のウロリチンA(約1.1~4.4mmolに相当)が好ましいの投与は、これは、2000mgのはるかに高い投薬量と比較して、驚くほど良好な薬物動態プロファイルをもたらす。一実施形態において、用量は250mg/日であり、代替の実施形態において、用量は500mg/日であり、別の実施形態において、用量は1000mg/日である。
【0173】
さらなる実施形態において、投与用量は、
-250mgを1日1回もしくは2回;
-500mgを1日1回もしくは2回;
-750mgを1日1回もしくは2回;
-1000mgを1日1回もしくは2回;
-1250mgを1日1回もしくは2回;または
-1500mgを1日1回もしくは2回から選択される。
【0174】
本開示の方法は、式(I)の化合物もしくはその塩、または化合物もしくは塩を含む組成物の毎日の投与を伴う。いくつかの実施形態において、化合物または組成物は、1日当たり1回投与され、すなわち、化合物または組成物は、24時間の期間当たり少なくとも1回投与されることになる。他の実施形態において、化合物、または化合物を含む組成物は、1日当たり複数回、例えば1日当たり2回、または1日当たり3回もしくは4回投与される。そのような場合、1日投与量は、それらの複数回用量に分割される。一実施形態において、投与は1日1回であり、第2の実施形態において、投与は1日2回であり、第3の実施形態において、投与は1日3回である。
【0175】
本開示の方法は、式(I)の化合物もしくはその塩、または化合物もしくは塩を含む組成物の、2~16週間の期間の毎日の投与を必要とする。いくつかの実施形態において、方法は、さらにより長い期間にわたる、例えば少なくとも2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、12週間、4か月、6か月、または少なくとも1年間毎日の、式(I)の化合物またはその塩の投与を伴い得る。いくつかの実施形態において、方法は、最大3か月、最大6か月、最大1年、最大2年、または最大5年の期間にわたって毎日、化合物またはその塩を投与することを含む。いくつかの実施形態において、方法は、21日~5年、21日~2年、21日~1年、21日~6か月、21日~12週間、28日~5年、28日~2年、28日~1年、28日~6か月、28日~4か月、28日~12週間、6週間~2年、6週間~1年、8週間~1年、または8週間~6か月の範囲の期間にわたって毎日、化合物または塩を投与することを含む。
【0176】
本開示の方法は、1日当たり0.7mmolから1日当たり2.7mmolまで、または1日2回0.7mmolから1日2回2.7mmolまでの量の式(I)の化合物またはその塩の毎日の投与を必要とする。いくつかの実施形態において、投与される量は、2.0~2.5mmolの範囲内である。いくつかの実施形態において、投与される量は、約1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2,5、2.6、または2.7mmolである。他の実施形態において、投与される量は、約2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、または6.0mmolである。いくつかの好ましい実施形態において、方法は、1日当たり約2.2mmolまたは1日2回2.2mmolの式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンAの)の投与を伴う。投与される化合物の正確な重量は、使用される化合物の分子量に依存する。例えば、ウロリチンAは、228g/molの分子量を有し(2.20mmolが501.6mgであるように)、ウロリチンBは、212g/molの分子量を有する(2.20mmolが466.4mgであるように)。
【0177】
さらなる実施形態において、本開示の方法は、1日当たり2.8mmol~1日当たりまたは1日2回6.0mmolまでの量の式(I)の化合物またはその塩の毎日の投与を必要とする。いくつかの実施形態において、投与される量は、4.0~4.8mmolの範囲内である。いくつかの実施形態において、投与される量は、約2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、または6.0mmolである。いくつかの好ましい実施形態において、方法は、1日当たりまたは1日2回約4.4mmolの式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)の投与を伴う。投与される化合物の正確な重量は、使用される化合物の分子量に依存する。例えば、ウロリチンAは、228g/molの分子量を有し(4.40mmolが1003.2mgであるように)、ウロリチンBは、212g/molの分子量を有する(4.40mmolが932.8mgであるように)。
【0178】
いくつかの実施形態において、方法は、400~600mg/日、または1日2回400~600mgの範囲内の量でのウロリチンAの投与を伴う。好ましい実施形態において、方法は、1日当たり、または1日2回450~550mgの範囲内、より好ましくは約500mgのウロリチンAの投与を伴う。
【0179】
他の実施形態において、方法は、700~1300mg/日の範囲で1日2回、または750~1250mg/日の範囲、または800~1200mg/日の範囲、または850~1150mg/日の範囲、または900~1100mg/日の範囲で1日2回の量のウロリチンAの投与を伴う。好ましい実施形態において、方法は、950~1150mg/日または1日2回の範囲、より好ましくは約1000mg/日または1日2回の量のウロリチンAの投与を伴う。
【0180】
いくつかの好ましい実施形態において、方法は、4.5~8.5mg/kg/日など、4.5~11mg/kg/日の範囲の量でウロリチンAを対象に投与することを伴う。別の実施形態において、方法は、5~9mg/kg/日の範囲の量でウロリチンAを対象に投与することを伴う。別の実施形態において、方法は、6.0~8mg/kg/日の範囲の量でウロリチンAを対象に投与することを伴う。
【0181】
他の好ましい実施形態において、方法は、9~18mg/kg/日、例えば9~17mg/kg/日の範囲の量でウロリチンAを対象に投与することを伴う。別の実施形態において、方法は、10~17mg/kg/日の範囲の量でウロリチンAを対象に投与することを伴う。別の実施形態において、方法は、11~16mg/kg/日の範囲の量でウロリチンAを対象に投与することを伴う。
【0182】
500mgの用量および1000mgの用量を組み合わせた投薬計画が有利な場合がある。例えば、1000mgの第1の用量および数時間後の500mgの第2の用量を組み合わせた1日2回の投薬計画である。前記500mgの用量は、1000mgの用量の6~18時間後、例えば1000mgの用量の8~12時間後であってもよい。例えば、1000mgの用量の約12時間後である。したがって、本発明のさらなる態様によれば、1000mgの第1の用量、続いて500mgの第2の用量を含む1日2回の投薬計画を含む式(I)の化合物による疾患の処置が提供され、2つの用量は6~18時間の間隔がある。
【0183】
式(I)の化合物もしくはその塩、または塩の化合物を含有する組成物は、任意の好適な時間に投与されてもよく、例えば、睡眠後の朝または夕方に投与されてもよい。いくつかの実施形態において、方法は、毎日ほぼ同じ時間(複数可)に、例えば、所与の時点から15、30、60、または120分以内に実施されることが好ましい場合がある。
【0184】
免疫増強剤
免疫増強剤は、抗原のみによって惹起されるものと比較して、外来抗原に対する免疫応答の強度および/または持続時間を増加させる任意の化合物または組成物である。したがって、免疫増強剤の重要な機能的特徴には、標的抗原に対する適切な免疫応答を増強する能力、広範な適用における長期の安全性、および異なる抗原/疾患の適用との使用における柔軟性が含まれる。
【0185】
式(I)の化合物は、1つ以上の追加の免疫増強剤と共に投与され得る。
【0186】
本発明のさらなる代替の実施形態において、前記免疫増強剤は、CpGオリゴヌクレオチド、フラジェリン、モノホスホリルリピドA、ポリ1:Cおよびそれらの誘導体などのTLRアゴニストである。
【0187】
本発明のさらなる実施形態において、前記免疫増強剤は、ムラミルジペプチド(MDP)および/またはトレハロースジコリネミコレート(TDM)などの細菌細胞壁誘導体である。
【0188】
本発明の別の実施形態において、前記免疫増強剤は、ヒト対象での使用に適したアルミニウムベースの免疫増強剤である。
【0189】
免疫増強剤(免疫賦活剤または免疫調節剤)は、ワクチン抗原に対する免疫応答を改善するために長い間使用されてきた。ワクチン製剤への免疫増強剤の組み込みは、ワクチン抗原に対する特定の免疫応答を増強、加速、および延長することを目的としている。免疫増強剤の利点には、より弱い抗原の免疫原性の増強、免疫の成功に必要な抗原量の低減、必要な追加免疫の頻度の減少、ならびに高齢者および免疫不全状態のワクチンにおける免疫応答の改善が含まれる。選択的に、免疫増強剤を使用して、例えば免疫グロブリンクラスおよび細胞毒性またはヘルパーTリンパ球応答の誘導に関して、所望の免疫応答を最適化することもできる。さらに、ある特定の免疫増強剤を使用して、粘膜表面での抗体応答を促進することができる。水酸化アルミニウムおよびリン酸アルミニウムまたはリン酸カルシウムは、ヒトのワクチンに日常的に使用されている。さらに最近では、IRIV(免疫刺激性の再構成インフルエンザビロソーム)に組み込まれた抗原、およびエマルジョンベースの免疫増強剤MF59を含むワクチンが各国で認可されている。免疫増強剤は、それらの起源、作用機序、および物理的または化学的特性に従って分類することができる。最も一般的に説明されている免疫増強剤クラスは、ゲルタイプ、微生物、オイルエマルジョンおよび乳化剤ベース、粒子状、合成、ならびにサイトカインである。最終的なワクチン製品には、複数種の免疫増強剤が含まれていてもよい。それらは、ワクチンに存在する単一の抗原または全ての抗原と一緒に組み合わされてもよく、または各免疫増強剤が1つの特定の抗原と組み合わされてもよい。現在使用または開発されている免疫増強剤の起源および性質は非常に多様である。例えば、アルミニウムベースの免疫増強剤は単純な無機化合物からなる、PLGは高分子炭水化物であり、ビロソームは異種のウイルス粒子に由来し得、MDPは細菌の細胞壁に由来し、サポニンは植物起源、例えばQS-21であり、スクアレンはサメの肝臓に由来し、組換え内因性免疫調節剤は組換え細菌、酵母または哺乳動物細胞に由来する。ヒトへの使用には反応性が高すぎる鉱油エマルジョンなど、獣医用ワクチンに認可された免疫増強剤がいくつかある。同様に、完全フロイント免疫増強剤は、知られている最も強力な免疫増強剤の1つであるが、ヒトへの使用には適していない。
【0190】
組成物
本開示の方法は、好ましくは、式(I)の化合物またはその塩の経口投与を伴う。式(I)の化合物またはその塩を含有する任意の好適な経口組成物が使用され得る。したがって、式(I)の化合物を含有し、経口投与に適した様々な組成物の使用が想定される。したがって、いくつかの実施形態において、式(I)の化合物またはその塩は、式(I)の化合物またはその塩と、経口投与に適した1つ以上の賦形剤とを含有する経口組成物の形態で投与される。経口組成物は、ピル、錠剤、カプセル、カプレット、ドロップ、トローチ、顆粒、懸濁液用粉末、経口溶液、経口懸濁液、経口エマルジョン、シロップなどの形態を有する組成物を含み得る。
【0191】
式(I)の化合物を含有する組成物は、意図する用途に適した任意の物理的形態をとってもよく、例えば、それらは、固体(例えばバー)、半固体(例えばソフトゲル)、または液体(エマルジョンを含む)の形態であってもよい。場合によっては、組成物は、粘性流体またはペーストの形態であってもよい。組成物が、例えばバーである場合、それは、任意の好適なタイプであってもよく、それは、スナックバーの調製のために従来使用される成分を含有してもよい。半固体形態は、同様に、当該技術分野における従来の賦形剤を含有してもよい。賦形剤は、例えば、組成物が許容できる味、魅力的な外観、および良好な貯蔵安定性を有するように、所望の硬度、貯蔵期限、および味を提供することができる。半固体形態は、ペーストの形態であってもよい。組成物がソフトゲルである場合、例えば、シェルを有するカプセルで提供されてもよい。シェルは、従来のタイプのものであってもよく、例えば、軟質ゼラチンベースのシェルであってもよい。一例として、組成物は、硬質カプセルタイプのシェルの内部に提供されてもよい。液体組成物は、それぞれ経口摂取用の薬剤、食事補助食品、または飲料の形態であってもよい。液体製剤は、溶液、エマルジョン、スラリー、または他の半液体であってもよい。液体組成物中の賦形剤は、例えば、組成物が許容できる味、魅力的な外観、および良好な貯蔵安定性を有するように、貯蔵期限、外観、味、および食感を提供することができる。ある特定の希釈レベルでは、活性成分の均一な懸濁を維持するために、対象が飲み物を飲む前にそれを振る必要がある場合がある。
【0192】
いくつかの好ましい実施形態において、方法は、微粉化形態の式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)の投与を含む。微粉化により、式(I)の化合物は、より迅速に分散または溶解することが可能になる。微粉化は、当該技術分野において構築されている方法によって達成され得、例えば圧縮力粉砕、ハンマー粉砕、ユニバーサルもしくはピン粉砕、またはジェット粉砕(例えばスパイラルジェット粉砕または流動床ジェット粉砕)が使用されてもよい。ジェット粉砕が特に適している。微粉化化合物が使用される場合、好ましくは、化合物は、100μm未満のD50サイズを有し、すなわち、化合物の50質量%は、100μm未満の粒径サイズを有する。より好ましくは、化合物は、75μm未満、例えば50μm未満、例えば25μm未満、例えば20μm未満、例えば10μm未満のD50サイズを有する。より好ましくは、化合物は、0.5~50μm、例えば0.5~20μm、例えば0.5~10μm、例えば1.0~10μm、例えば1.5~7.5μm、例えば2.8~5.5μmの範囲のD50を有する。好ましくは、化合物は、100μm未満のD90サイズを有する。より好ましくは、化合物は、75μm未満、例えば50μm未満、例えば25μm未満、例えば20μm未満、例えば15μm未満のD90サイズを有する。化合物は、好ましくは、5~100μm、例えば5~50μm、例えば5~20μm、例えば7.5~15μm、例えば8.2~16.0μmの範囲のD90を有する。好ましくは、化合物は、0.5~1.0μmの範囲のD10を有する。好ましくは、式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)は、8.2~16.0μmの範囲のD90、2.8~5.5μmの範囲のD50、およびが0.5~1.0μmの範囲のD10を有する。
【0193】
さらなる実施形態において、式(I)の化合物またはその塩は、以下のうちの1つから選択されるサイズ分布を有する:
(i)0.5~50μmの範囲内のD50サイズおよび5~100μmの範囲内のD90サイズ、
(ii)化合物は、8.2~16.0μmの範囲内のD90サイズ、2.8~5.5μmの範囲内のD50サイズおよび0.5~1.0μmの範囲内のD10サイズを有する;
(iii)式(I)の化合物は、0.5~20μmの範囲内のD50サイズおよび5~50μmの範囲内のD90サイズを有する;
(iv)式(I)の化合物は、50μm未満のD50サイズおよび75μm未満のD90サイズを有する;
(v)式(I)の化合物は、25μm未満のD50サイズおよび50μm未満のD90サイズを有する;
(iv) 式(I)の化合物は、10μm未満のD50サイズおよび20μm未満のD90サイズを有する;
(v) 式(I)の化合物は、10μm未満のD50サイズおよび15μm未満のD90サイズを有する;または
(vi) 式(I)の化合物は、10μmのD50サイズおよび20μmのD90サイズを有する。
【0194】
式(I)の化合物またはその塩と中鎖トリグリセリドとを含む組成物
いくつかの好ましい実施形態において、式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)は、a)中鎖トリグリセリドと、b)式(I)の化合物またはその塩と、を含む組成物の形態で投与される。それらの実施形態において、好ましくは、式(I)の化合物(例えばウロリチンA)は、微粉化形態である。
【0195】
好適な中鎖トリグリセリドおよび賦形剤を選択することによって、組成物の物理的形態は、問題の製品の要件に合わせられ得る。例えば、いくつかの実施形態において、組成物は、医薬組成物であってもよい。いくつかの実施形態において、組成物は、栄養組成物であってもよい。
【0196】
多くの場合、式(I)の化合物と中鎖トリグリセリドとを含む組成物は、粘性の液体またはペーストの稠度を有し、対象の一般的な食事に対する1回限りの補助食品(例えば、バー、ゲル、もしくはソフトゲルカプセル、ハードカプセル中の、または飲み物に希釈される)として提供され得るか、あるいは,それは食事の一部または全体として提供され得る。
【0197】
本開示の方法が中鎖トリグリセリドを含む組成物の使用を伴う場合、中鎖トリグリセリドは、典型的には、組成物の少なくとも1%w/w、例えば少なくとも5%w/w、例えば少なくとも10%w/w、例えば少なくとも15%w/wを構成する。中鎖トリグリセリドは、好ましくは、組成物の20%w/w以上、例えば組成物の重量で25重量%w/w以上、例えば重量で30%w/w以上を構成する。例えば、中鎖トリグリセリドは、組成物の1~40%w/w、組成物の2~40%w/w、組成物の5~40%w/w、組成物の10~40%w/w、組成物の1~99%w/w、組成物の5~99%w/w、組成物の10~99%w/w、組成物の20~99%w/w、組成物の5~90%w/w、組成物の10~90%w/w、例えば組成物の20~90%w/w、組成物の20~80%w/w、例えば組成物の30~80%w/w、例えば組成物の30~70%w/w、例えば組成物の30~60%w/w、例えば組成物の30~50%w/w、例えば組成物の30~40%w/w、例えば組成物の30~35%w/wを構成してもよい。例えば、中鎖トリグリセリドは、組成物の40~70%w/w、例えば組成物の50~70%w/w、例えば組成物の55~65%w/wを構成してもよい。
【0198】
そのような組成物において、式(I)の化合物は、典型的には、組成物の0.1~80%w/w、例えば0.1~60%w/w、例えば0.25~50%w/wを構成する。例えば、式(I)の化合物は、組成物の0.5~50%w/wを構成してもよい。組成物が食事の一部または全体として提供される場合、式(I)の化合物は、例えば組成物の0.25~5%w/w、例えば組成物の0.3~3%w/wを構成してもよい。組成物が対象の一般的な食事に対する1回限りの補助食品として提供される場合、ウロリチンは、典型的には、組成物の20~80%w/w、例えば組成物の20~40%w/w、例えば25~35%を構成する。例えば、ウロリチンは、組成物の26~34%w/w、例えば組成物の28~33%w/w、例えば組成物の29~32%w/w、例えば組成物の29~31%w/wを構成してもよい。
【0199】
そのような組成物において、中鎖トリグリセリド構成成分対式(I)の化合物の重量比は、一般に、0.01:1~100:1、例えば0.5:1~100:1、例えば0.5:1~50:1、例えば0.5:1~5:1、または例えば、1:1~75:1、例えば1:1~50:1、例えば1:1~20:1、例えば1:1~10:1、例えば1:1~2.5:1、例えば1:1~2:1、例えば1:1~1.5:1の範囲である。重量比は、0.01:1~10:1、例えば0.1:1~10:1、または0.01:1~5:1、例えば0.01:1~0.1:1の比であってもよい。
【0200】
いくつかの好ましい実施形態において、本開示の方法は、式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)と1つ以上の中鎖トリグリセリドとを含む、フィリングを含むソフトゲルカプセルの投与を伴う。それらの実施形態において、好ましくは、式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)は、微粉化される。ソフトゲルカプセルが使用される実施形態において、シェル構成成分は、従来の成分を使用して製造されてもよい。
【0201】
中鎖トリグリセリドは、式CH2(OR1)-CH(OR2)-CH2(OR3)(式中、R1、R2、およびR3が中鎖脂肪酸基である)の、一般に式-C(=O)(CH2)nCH3(式中、nは4~10、例えば6~8の範囲である)の化合物である。中鎖脂肪酸は、6~12個の炭素原子の脂肪族尾部を有する脂肪酸である。脂肪族末端は、主に飽和している。特定の中鎖脂肪酸は、カプロン酸(ヘキサン酸、C6:0)、カプリル酸(オクタン酸、C8:0)、カプリン酸(デカン酸、C10:0)およびラウリン酸(ドデカン酸、C12:0)を含む。ミリスチン酸(テトラデカン酸、C14:0)もまた少量存在し得る。最も一般的に使用される中鎖トリグリセリドは、一般に、カプリル酸およびカプリン酸のトリグリセリドの混合物を有し、95%以上の飽和脂肪酸を含有する。本開示の方法で使用される好ましい組成物中に存在する中鎖トリグリセリド構成成分は、均質な単一の中鎖トリグリリド化合物タイプからなってもよく、より一般的には、中鎖トリグリセリド構成成分は、2つ以上の異なる中鎖トリグリリド化合物の混合物である。
【0202】
欧州薬局方は、中鎖トリグリセリドを、Cocos nucifera L.(ココナッツ)の胚乳の硬く乾燥した画分またはElaeis guineenis Jacq.(アフリカのアブラヤシ)の乾燥胚乳から抽出された固定油として説明している。European PharmacopoeiaおよびUSPNFの両方は、特定の脂肪酸の存在が以下の通りであることを必要とする中鎖トリグリセリドの仕様を有する:カプロン酸(C6)≦2.0%以下、カプリル酸(C8)50.0~80.0%、カプリン酸(C10)20.0~50.0%、ラウリン酸(C12)≦3.0%以下、およびミリスチン酸(C14)≦1%以下。
【0203】
好ましい組成物中で使用するための中鎖トリグリセリドは、以下の比率で存在する脂肪酸鎖とトリグリセリドとの混合物を含む:C6≦ 5%以下、C8 50~70%、C10 30~50%、およびC12≦ 12%以下、例えばC6≦ 0.5%以下、C8 55~65%、C10 35~45%、およびC12≦1.5%以下。
【0204】
好ましい組成物で使用される中鎖トリグリセリドは、任意の既知の、または他の好適な供給源に由来し得る。
【0205】
本開示の方法で使用される組成物は、有利には、1つ以上のリン脂質を含み得る。特に好ましいリン脂質は、ホスファチジルコリンである。ホスファチジルコリンによってもたらされる利点は、少なくとも部分的には、それらの両親媒性の特性によるものであり得、例えば、乳化剤としての特性によるものであり得る。
【0206】
特に有用なリン脂質源、特にホスファチジルコリンは、レシチンであり、本開示の方法で使用される組成物は、有利にレシチンを含む。レシチンは、組成物中に存在する場合、典型的には、組成物の少なくとも0.5%w/w、好ましくは組成物の少なくとも1%w/wを構成する。レシチンは、好ましくは、組成物の10%w/w以上、例えば組成物の重量で20%w/w以上、例えば重量で30%w/w以上を構成する。例えば、レシチンは、組成物の0.5~80%w/w、例えば組成物の1~80%w/w、例えば20~80%w/w、例えば40~80%w/w、あるいは例えば0.5~75%w/w、例えば組成物の1~40%w/w、例えば組成物の30~40%w/w、例えば組成物の30~35%w/w、例えば組成の30~75%w/wを構成してもよい。あるいは、レシチンは、組成物の0.5~5%w/w、例えば組成物の1~5%w/w、例えば組成物の1~3%w/w、例えば0.5~2%w/w、例えば組成物の1~2%w/wを構成してもよい。レシチン(存在する場合)とウロリチンとの間の重量比は、一般に、0.02:1~3:1、例えば0.03:1~1.2:1、例えば1:1~1.2:1、例えば1.1:1~1.2:1の範囲である。
【0207】
「レシチン」は、リン酸、コリン、脂肪酸、グリセロール、糖脂質、トリグリセリド、ならびにリン脂質(例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、およびホスファチジルイノシトール)を含む、動物および植物組織中に発生する脂肪物質の任意の群を示す。大豆およびヒマワリから得られる市販のレシチンは、リン脂質ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルエタノールアミン、およびホスファチジン酸を含む。レシチンは、ヘキサン、エタノール、アセトン、石油エーテル、もしくはベンゼンなどの非極性溶媒中のその供給源からの化学的抽出によって、または機械的抽出によって得られ得る。特に、レシチンは、大豆、卵、牛乳、菜種、綿実、およびヒマワリなどの供給源からの抽出によって得られ得る。食用製剤に使用するための市販のレシチンは、容易に購入され得る。
【0208】
本明細書に記載の組成物に使用され得る市販のレシチンは、典型的には、以下の主要構成成分を含有する:33~35%の大豆油、20~21%のイノシトールホスファチド、19~21%のホスファチジルコリン、8~20%のホスファチジルエタノールアミン、5~11%の他のリン脂質、5%の遊離炭水化物、2~5%のステロール、および1%の水分。
【0209】
本明細書に記載の組成物に使用され得る市販のレシチンは、例えば、レシチン中に最低5%w/wのホスファチジルコリンを有し、例えば、レシチン中に最低10%w/wのホスファチジルコリンを有し、例えば、レシチン中に最低15%w/wのホスファチジルコリンを有し、例えば、レシチン中に最低20%w/wのホスファチジルコリンを有し、例えば、レシチン中に最低25%w/wのホスファチジルコリンを有し、例えば、レシチン中に最低30%w/wのホスファチジルコリンを有し、例えば、レシチン中に最低32%w/wのホスファチジルコリンを有し、例えば、レシチン中に最低40%w/wのホスファチジルコリンを有し、ホスファチジルコリンで富化されてもよい。
【0210】
レシチンはまた、それらの特性を調整するために以下のプロセスのうちの1つ以上によって修飾されてもよい。修正された比の異なるリン脂質を有するレシチンを製造するための特定のリン脂質のアルコール抽出;油を除去し、粉末状または顆粒状のリン脂質ブレンドを得るためのアセトン抽出;担体としてのタンパク質上への噴霧乾燥;フレーク状または粉末製品を製造するための高融点モノ-およびジ-グリセリドなどの合成乳化剤による噴霧冷却;酵素作用による修飾(ホスホリパーゼ、一般的には特にホスホリパーゼA2)、特に顕著な乳化挙動を伴うレシチンを製造するための部分加水分解;酸およびアルカリによる脂肪酸基の加水分解;アセチル化;ならびに脂肪酸鎖およびアミノ基のヒドロキシル化。
【0211】
いくつかの実施形態において、方法は、式(I)の化合物またはその塩と、中鎖トリグリセリドと、乳化剤(例えば、レシチン)とを含む組成物の投与を含む。
【0212】
式(I)の化合物またはその塩を含有する医薬組成物は、例えば、追加の薬学的に活性な化合物を含み得る。
【0213】
組成物中の追加の構成成分は、対象に健康上の利益は提供しないが、代わりに組成物を何らかの他の方法で、例えば、上述されているようにその味、食感、または貯蔵期限を改善する化合物であってもよい。したがって、組成物は、乳化剤、着色剤、防腐剤、ガム、硬化剤、増粘剤、甘味料、および香料から選択される1つ以上の化合物をさらに含有してもよい。
【0214】
適切な乳化剤、着色剤、防腐剤、ガム、硬化剤、および増粘剤は、エマルジョンおよび他の半液体製造の技術分野において周知である。乳化剤は、ホスファチジルコリン、レシチン、ポリソルベート60またはポリソルベート80(Tween-60およびTween-80)などのポリソルベート、ならびにグリセロールモノステアレート(GMS)のうちの1つ以上を含み得る。グリセロールモノステアレートは、グリセリルモノステアレートとしても既知である。
【0215】
安定剤が本明細書に記載の組成物中に使用されてもよい。多くの組成物は、追加の安定剤を必要としない安定した懸濁液である。安定した懸濁液は、経時的に相分離を受けないものである。ある特定の組成物については、安定性は、追加の安定剤を含むことによって改善され得る。本発明の組成物での使用に好適な安定剤としては、グリセロールモノステアレート(GMS)、二酸化ケイ素、および植物性ショートニングが挙げられる。例示的な安定剤は、GMSであり、本発明の好ましい組成物は、GMSを含有する。その特性により、GMSは、例えばレシチンに見られるようなリン脂質の優れた溶媒にもなる。GMSは、2つの多形体で存在し、α型は、分散性かつ泡状であり、乳化剤または防腐剤として有用である。β型は、ワックスマトリクスに適している。α型は、50℃で加熱するとβ型に変換される。
【0216】
GMSは、2つの別々のグレード、40~55パーセントのモノグリセリドおよび90パーセントのモノグリセリドに分類される。European Pharmacopoeiaによって定義されている40~55パーセントのモノグリセリドは、GMSを、ある量のジ-およびトリ-グリセロールと合わせたモノアシルグリセロール、主にモノステアロイルグリセロールの混合物として記載している。特に、40~55グレードは、40~55%のモノアシルグリセロール、30~45%のジアシルグリセロール、および5~15%のトリアシルグリセロールを含む。99パーセントグレードは、90%以上のモノグリセリドを含む。市販のGMS製品中のモノグリセリドは、可変比率のグリセリルモノステアレートとグリセリルモノパルミテートの混合物である。European Pharmacopoeiaは、混合物中のステアリン酸エステルの比率に応じて、グリセリルモノステアレート40~55を3つのタイプにさらに分割する。タイプ1は、40.0~60.0%のステアリン酸を含み、パルミチン酸とステアリン酸の合計は、90%以下である。≦タイプ2は、60.0~80.0%のステアリン酸を含み、パルミチン酸とステアリン酸の合計は、90%以下である。≦タイプ3は、90.0~99.0%のステアリン酸を含み、パルミチン酸とステアリン酸の合計は、96%以下である。≦GMSの任意の形態が組成物中で使用され得る。
【0217】
いくつかの実施形態において、方法は、中鎖トリグリセリドと、式(I)の化合物またはその塩(例えばウロリチンA)と、安定剤、例えばグリセロールモノステアレートとを含む組成物の投与を含む。いくつかの実施形態において、方法は、乳化剤と安定剤とを含む組成物の投与を伴う。
【0218】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)のナトリウムカルシウム塩などの金属キレート剤または金属イオン封鎖剤も使用され得る。本発明の製剤に含まれ得る他の構成成分としては、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、植物性ショートニング、および蜜蝋が挙げられ得る。
【0219】
香料は、本明細書に記載の方法に使用される組成物において有益であり得る。液体または半液体組成物において、例えば、果実ソースまたはピューレを含むことによって、果実フレーバが提供され得る。典型的な香料としては、ストロベリー、ラズベリー、ブルーベリー、アプリコット、ザクロ、ピーチ、パイナップル、レモン、オレンジ、およびアップルが挙げられる。一般に、果実香料は、果実抽出物、フルーツジャムまたはフルーツピューレを、甘味料、デンプン、安定剤、天然および/または人工フレーバ、着色剤、防腐剤、水、ならびにクエン酸またはpHを制御するのに好適な他の酸の組み合わせのいずれかと共に含む。
【0220】
本明細書に記載の方法に使用される単位用量組成物は、好ましくは、250mgまたは500mgの式(I)の化合物、例えば250mgまたは500mgのウロリチンAを含有する。単位用量は、例えば、25g~150gの範囲の重量のスナックバーの形態、単回用量(例えば、50~500mL、100~300mL、例えば250mL~500mL)を保持するのに十分なボトルまたはパウチなどの容器内で提供される飲料の形態であってもよい。好ましいさらなる代替例では、単位用量は、例えば、250mgのウロリチンAを含有するソフトゲルカプセルの形態である。
【0221】
代表的な組成物が以下の表に示される。
【表2】
本発明はさらに、式(I)の化合物およびワクチン、ならびに任意選択で1つ以上の追加の免疫増強剤および/または1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。一実施形態において、組成物の成分は別々に提供される。別の実施形態において、成分は混合して提供される。別の実施形態において、ワクチンは、1つ以上1つ以上の追加の免疫増強剤と混合して、式(I)の化合物とは別に提供される。別の実施形態において、ワクチンは、式(I)の化合物と混合して提供され、1つ以上の追加の免疫増強剤が別々に提供される。別の実施形態において、ワクチンは、1つ以上の追加の免疫増強剤と混合して提供され、式(I)の化合物は、別個に提供される。
【0222】
医薬組成物は、部品のキットの形態をとってもよく、そのキットは、使用説明書および/または単位剤形の複数の異なる成分と共に本発明の組成物を含み得る。したがって、本発明の一実施形態において、抗原に対する免疫応答を誘導するためのキットであって、
-式(I)の化合物を含む第1の成分と;
-追加の免疫増強剤を含む第2の成分と;
-任意選択で、1つ以上さらなる免疫増強剤を含む1つ以上のさらなる成分とを含むキットが提供される。
【0223】
本発明のさらなる実施形態において、抗原に対する免疫応答を誘導するためのキットであって、
-式(I)の化合物を含む第1の成分と;
-ワクチンを含む第2の成分と;
-任意選択で、1つ以上のさらなる免疫増強剤を含む1つ以上のさらなる成分とを含むキットが提供される。
【0224】
本発明のさらなる実施形態において、抗原に対する免疫応答を誘導するためのキットであって、
-式(I)の化合物を含む第1の成分と;
-ワクチンを含む第2の成分と;
-追加の免疫増強剤を含む第3の成分と;
-任意選択で、1つ以上のさらなる免疫増強剤を含む1つ以上のさらなる成分とを含むキットが提供される。
【0225】
本発明のそのようなキットには、成分の投与の順序および間隔を説明するための指示が任意選択で提供される。一実施形態において、成分は同時に投与される。別の実施形態において、成分は、各成分の間に1日以上または1週間以上を置いて連続して投与される。
【0226】
一実施形態において、本発明のキットは、ワクチンおよび式(I)の化合物、ならびに任意選択で別個に提供される1つ以上のさらなる免疫増強剤を含む。別の実施形態において、本発明のキットは、ワクチンと式(I)の化合物との混合物、および任意選択で1つ以上のさらなる免疫増強剤を含む。
【実施例】
【0227】
ここで、以下の非限定的な例に関して本発明を説明する。
【0228】
実施例1:ウロリチンAの調製
ウロリチンA(4)は、2-ブロモ-5-メトキシ安息香酸1およびレゾルシノール2から開始する2つのステップで調製した。純粋な化合物が淡黄色の粉末として得られた。
【化3】
【0229】
ステップ1:
水(120mL)中の2-ブロモ-5-メトキシ安息香酸1(27.6g;119mmol;1.0当量)、レゾルシノール2(26.3g;239mmol;2.0当量)および水酸化ナトリウム(10.5g;263mmol;2.2当量)の混合物を、1時間還流加熱した。次いで、硫酸銅の5%水溶液(50mLの水中3.88gのCuSO4・5H2O;15.5mmol;0.1当量)を添加し、混合物をさらに30分間還流した。混合物を室温まで冷却し、固体をブフナーフィルタで濾過した。残留物を冷水で洗浄して淡赤色の固体を得、これを熱MeOHで磨砕した。懸濁液を4℃で一晩放置した。得られた沈殿物を濾過し、冷MeOHで洗浄して、表題化合物3を淡褐色固体として得た。
【0230】
ステップ2:
無水ジクロロメタン(100mL)中の3の懸濁液(10.0g、41mmol;1.0当量)に、無水ジクロロメタン中の三臭化ホウ素の1M溶液(110mLの無水ジクロロメタン中の11.93mLの純BBr3;124mmol;3.0当量)を0℃で滴下により添加した。混合物を0℃で1時間放置し、次いで室温まで温めた。溶液をその温度で17時間撹拌した。次いで、混合物に氷を十分に加えた。黄色い沈殿物を濾過し、冷水で洗浄して黄色の固体を得、これを酢酸中で3時間還流加熱した。熱い溶液を迅速に濾過し、沈殿物を酢酸で洗浄し、次いでジエチルエーテルで洗浄して、表題化合物4を黄色い固体として得た。1Hおよび13C NMRは4の構造に一致した。
【0231】
実施例2:ウロリチンAの剤形
ウロリチンAを、以下の構成成分を含むソフトゲルカプセルに製剤化した。
【表3】
【表4】
【0232】
実施例3:幹細胞集団に対するウロリチンAの効果
ウロリチンA処理が幹細胞集団に何らかの影響を及ぼしたかどうかを判断するために、標準的なげっ歯類食、またはマウスに送達される50mg/kg/日の投薬量に達するように食物と混合したウロリチンAを含む混合食を与えた加齢C57BL/6Jマウスから、造血幹細胞(HSC)および多能性前駆細胞(MPP)を単離した。マウスは16ヶ月齢からウロリチンAでの処理が開始され、34週間の処理を受けた。処理期間の終わりにマウスを致死させ、大腿骨および脛骨から骨髄を採取した。筋肉および結合組織を除去した後に骨から細胞を抽出した後、単一細胞懸濁液を作成した。
【0233】
造血系の異なる前駆細胞に対するウロリチンA処理の効果を決定するために、フローサイトメトリーを使用して各前駆細胞型の数およびパーセンテージを決定した。フローサイトメトリーにより、細胞表面でのタンパク質発現のパターンが異なる細胞の選択と定量化が可能となった。標識モノクローナル抗体を使用して、細胞表面タンパク質の発現に基づいて様々な前駆細胞集団を特定することができた。前駆細胞集団を含む未分化細胞を単離するために、骨髄細胞を、より分化した細胞型に特異的な細胞表面タンパク質に対するモノクローナル抗体のカクテルで染色した。系統マーカーとしても知られるこれらのタンパク質に対する抗体は、CD3e(17A2)、CD4(GK1.5)、CD8a(53.6.7)、CD11b(M1/70)、CD19(1D3)、Gr1(RB6.8C5)、Ter119およびNK1.1(PK136)は、Alexa647に結合した[AlexaFluor 647色素は、蛍光顕微鏡などでラベルとして使用される明るい遠赤外蛍光色素である]。様々な系統の前駆細胞集団を識別するために、単離された骨髄細胞を、以下のラベルを含む以下の前駆細胞表面タンパク質マーカーに対するモノクローナル抗体で染色した:CD34(RAM34)-FITC;CD135(Flt3 A2F10)-PE;CD48(HM48.1)-ビオチン+PEテキサスレッドストレプトアビジン;CD117(ckit 2B8)PerCp-Cy5.5;Sca1(D7)-PE-Cy7。染色された細胞の細胞分析は、Becton Dickson Flowサイトメーター(Franklin Lake、NJ、USA)で行い、収集されたデータは、Flowjo(商標)ソフトウェア(単一細胞フローサイトメトリー分析用の分析プラットフォーム)を使用して分析した。ウロリチンA処理を受けた3匹のマウスおよび6匹の対照未処理マウスから骨髄を単離した。
【0234】
単離された骨髄細胞に存在する造血前駆細胞の異なる集団を同定するために、単離された骨髄細胞を、それらの細胞表面マーカーの組み合わせに基づいて選択した。いわゆるゲーティング戦略が採用され、細胞表面タンパク質発現のパターンに基づいて特定の細胞集団が選択(ゲーティング)され、次にこのサブ選択された集団がその細胞表面タンパク質発現についてさらに検査される。
図2および
図3は、検査した全ての試料で採用されたゲーティング戦略の例を示す。上記の分化細胞(系統マーカー)に見られる細胞表面タンパク質が陰性である細胞を選択することにより、コミットされていない前駆細胞を調査した(
図2B)。この系統陰性細胞の集団から、細胞表面マーカーであるCD117(c-kit)およびSca1に対して陽性に染色された細胞を選択した。系統陰性、CD117およびSca1陽性細胞(LKS細胞)のこの亜集団は、前駆幹細胞を含む(
図2C)。
図2Cは、ウロリチンA処理を受けた加齢動物では、系統陰性細胞に存在するLKS前駆細胞の集団が、対照処理加齢マウスの3.16%からウロリチンAで処理された加齢マウスの5.27%に実質的に増加していることを示す。
【0235】
LKS細胞は、静止レベルの減少と共にHSC(LT-HSC)、MPP1(ST-HSC)、MPP2、およびMPP3またはLMPPの4つの異なる前駆細胞型にさらに分類され得る(
図1B)。最も静止していてコミットされていない細胞は、HSC細胞である。LKS細胞内のこれらの細胞集団を区別するために、CD150およびCD48の発現について細胞を検査した。最も原始的な静止細胞集団であるHSC+MPP1は、CD150の細胞表面マーカーに対して陽性であり、細胞表面マーカーCD48に対して陰性である。
図3(グラフの最初のセット)に示すように、この例では、ウロリチンA処理により、この集団が有意に増加し、処理動物ではLKS細胞の61.7%がHSC+MPP1細胞であるのに対し、未処理動物では53.1%であった。これは、未処理マウス(n=5)と比較した場合、ウロリチンA(n=3)で処理された全ての動物に当てはまることが分かり、この前駆細胞集団の増加は統計的に有意であった(表2)。HSC+MPP1前駆細胞は、全ての異なる血球系統集団を再構成することができる幹細胞である。HSC+MPP1前駆細胞は、細胞周期に入る頻度がより少なく幹細胞集団の維持に役立つ長期更新集団(HSCまたはLT-HSC)、およびより頻繁に循環し血球系統の維持に関与する別の集団MPP1またはST-HSCの2つの異なる型の造血幹細胞にさらに細分化され得る。これらの2つの集団は、HSC+MPP1細胞を選択(ゲーティング)し、これらの細胞の細胞表面マーカーCD34の発現を調べることで識別され得る。最も原始的な幹細胞集団であるHSCまたはLT-HSCは、CD34を発現しない(
図1B)。
図3(グラフの2番目のセット)に示すように、ウロリチンA処理により、加齢動物のHSCであるHSC+MPP1細胞の%が73.8%から81.7%に増加する。重要なことに、最も原始的な幹細胞集団のこの増加は、
図4に示すように、全骨髄細胞の%および細胞数の両方として、後肢に存在するHSCの最終的な総数のさらに顕著な増加をもたらし、ウロリチンAで処理された加齢動物では、処置されなかった加齢動物に対してHSC細胞数が有意に増加している。
【表5】
【0236】
実施例4:ウロリチンA投与後のワクチン接種に応答する抗体価の改善を評価するための前臨床実験
実験概要
成体雌BALB/cを実験群に無作為に割り当て、1週間順応させる。0日目から、以下のスケジュールに従って動物に食物混合物を投与する。0、14、および28日目に、PR8抗原による筋肉内(i.m.)負荷を実行する。0日目から、動物を非特異的な臨床徴候について毎日監視する。0日目から、動物の体重を週に3回測定する。28日目に、血液試料を採取して血球凝集抑制アッセイ(HAI)を実行し、抗体分析用に血清を分離するために処理する(PR8を標的とする全IgG)。
【0237】
42日目に、脾臓を切除し、単一細胞懸濁液に処理し、T細胞増殖アッセイのために播種する。細胞を、PR8(抗原)の存在下または非存在下で一晩または陽性対照と共に3回インキュベートする。ビヒクル(下記の表の群1)で処理されたマウスの脾臓(体内の免疫細胞の全身貯蔵)から採取されたエクスビボ免疫細胞を、UA/ビヒクルあり、またはなしで24時間刺激し、細胞増殖を調べた。細胞増殖は、免疫応答の増強を評価するためのこのインビトロアッセイの主要な計測値であり、トリチウム化チミジンの取り込みによって定量化される。細胞培養上清は、マルチプレックスによるサイトカインの分析用に保存する。
【表6】
【0238】
実施例5:ウロリチンA投与後のインフルエンザワクチン接種に応答する抗体価の改善を評価するための第2相臨床試験
インフルエンザワクチン接種に応答する高齢者の抗体価に対するウロリチンAの効果を評価するために、第2相試験を行う。プロトコルの概要を
図2に示す。
【0239】
患者は、以下の主要な選択基準で試験に採用される。
1)65~90歳
2)両方の性別(男性および女性)
3)18.5~30kg/m2のボディマス指数(BMI);および
4)インフォームドコンセントを示し、試験およびその訪問を終了する能力。
【0240】
患者は、次の主な除外基準で採用される。
1)現在の試験期間中に、ワクチンまたは薬物を調査する別の臨床試験への参加が計画されている。
2)試験期間の4週間前に任意のワクチンを受けている。
3)試験ワクチン接種期間の前6ヶ月以内にインフルエンザワクチンを受けている。
4)先天性または後天性の免疫不全が知られているもしくは疑われる、または過去1年以内に抗がん化学療法もしくは放射線療法などの免疫抑制療法を受けている。
5)卵、ニワトリタンパク質、またはワクチン成分のいずれかに対する全身性過敏症。
6)現在のアルコールまたは薬物中毒。
7)治験責任医師の意見において試験の実施または完了を妨げる可能性のある段階にある慢性疾患。
8)聴覚障害または視覚障害に罹患している。
9)重度の認知障害(MMSE<18)または大うつ病と診断されている。
10)進行性神経変性神経疾患:例えばアルツハイマー病。
11)過去6週間の入院。
12)筋肉内ワクチン接種に禁忌である、自己申告による血小板減少症、
13)治験責任医師の判断により筋肉内ワクチン接種に禁忌である出血性疾患、またはワクチン接種の3週間前の抗凝固剤の投与。
【0241】
臨床試験プロトコル
ワクチン接種反応を改善するための加齢中の免疫の健康の増進におけるUAの役割を、二重盲検、無作為化、およびプラセボ対照臨床試験で評価する。この試験の主な結果は、プラセボ処置群でワクチン接種された者と比較して、UAで処理された高齢者群における主要なインフルエンザ株(H1N1、H3N2、およびB型)のワクチン接種後の抗体の幾何平均力価(GMT)において、統計的に高い倍率変化/セロコンバージョンを示すことである。健康な高齢者を、上記の選択基準および除外基準に基づいてスクリーニングし、プラセボ群(n=45~75の対象)またはウロリチンAを受けた活性群(n=45~75の対象)のいずれかに不作為化する。プラセボおよびウロリチンAは、例えばソフトゲルの形態である。対象は、無作為化後、合計4週間介入を受ける。プラセボまたは活性処理のいずれかによる4週間の介入の後、全ての対象をワクチン接種前の抗体価および免疫健康状態について血清中で評価する。その後、対象をインフルエンザワクチンで負荷し、インフルエンザワクチン接種に対する抗体価を、これらの時点で採取された血清中で3週間および6週間目に再度評価する。臨床試験のデザインは、
図1に示すように実行される。
【0242】
臨床試験のエンドポイント
臨床試験の主要エンドポイントは、プラセボをUA処理と比較したセロコンバージョンのワクチン接種後の倍率変化(すなわち、3つの主要な毒性インフルエンザ株H1N1、H3N2、およびB型に対する血球凝集抑制(HAI)tによって評価された抗体反応の幾何平均力価)である。プラセボ群と比較したUA処理の予想されるセロコンバージョン変化は、例えば、15~30%のセロコンバージョンの範囲内となり得るプラセボ処理高齢者群と比較して、40~60%の範囲内となり得る。主要なインフルエンザ株の幾何平均力価は、例えば、プラセボ介入と比較して、UA処理高齢者対象において1.5~2倍高くなり得る。
【0243】
主要な副次的エンドポイントには、セロプロテクション(インフルエンザからの保護の発生率)および細胞T細胞記憶応答(サイトカイン、T細胞記憶)が含まれる。
【0244】
実施例6:ウロリチンA投与後の抗炎症プロファイルの改善を評価するための前臨床実験
ウロリチンAを、AIN-93G Growing Rodent Diet(Research Diet、New Brunswick、NJ、USA)に、50mg/kg/日の用量に相当する0.5g/食物kgの濃度で混合する。UAあり、またはなしのペレットを22か月齢の雄C57BL/6Jマウス(Janvier、Saint Berthevin、フランス)に6週間与える。合計32匹のマウスを個別に飼育し、運動能力に応じて群当たり16匹の動物に無作為化する。実験中に自然死した動物は計算から除外される。これらの基準は、実験を開始する前に確立した。動物を一晩絶食した後6週間の処理後に安楽死させてから、大静脈によって血液試料を採取する。血液試料を1,500xgで15分間遠心分離し、血漿上清を清浄なチューブに移す。MILLIPLEX MAPマウスサイトカイン/ケモカイン磁気ビーズパネル(MCYTOMAG-70K)を使用して、血漿をサイトカインについて分析する。
【0245】
図6は、インターロイキン-10(IL-10)、IL-12(p40)としても知られるインターロイキン-12サブユニットベータ、およびIL-10/IL-12(p40)の比率の結果を示す。IL-10は重要な抗炎症性サイトカインである(Fiorentino DF, et al., IL-10 inhibits cytokine production by activated macrophages.J Immunol.1991 Dec 1;147(11):3815-22;Fiorentino DF et al., IL-10 acts on the antigen-presenting cell to inhibit cytokine production by Th1 cells.J Immunol.1991 May 15;146(10):3444-51)。インターロイキン-12(IL-12)は、Tリンパ球および休止ナチュラルキラー細胞の細胞毒性活性を増強する強力な炎症誘発性サイトカインである。
図6に示すように、IL-12(p40)に対するIL-10の比率が有意に増加している。この結果は、加齢マウスでのUA処理が、サイトカインプロファイルをより抗炎症性の表現型にシフトすることにより、いわゆる加齢に伴う炎症を低減できることを示している(Daniela Frasca and Bonnie B. Blomberg.Inflammageing decreases adaptive and innate immune responses in mice and humans.Biogerontology.2016;Franceschi C et al., Inflammageing: a new immune-metabolic viewpoint for age-related diseases.Nature Reviews Endocrinology 2018)。
【0246】
例7:ウロリチンAによる毛髪再生の改善を評価するための前臨床実験
毛髪は、幹細胞の絶え間ない更新およびそれらのさらなる分化のために非常に増殖性の組織である毛包で形成される。これらの動的メカニズムは非常に高い生体エネルギー能力を必要とし、したがってこのプロセス中、特に分化段階中のミトコンドリアの役割を示す証拠が増えている(Kloepper, J.E. et al.J.Invest.Dermatol.135, 679-689 (2015))。ヒトの毛包に由来するヒト幹細胞は、エネルギー生成のために主に好気性解糖に依存している(Kealey, Williams R, P. M. Ski.Pharmacol.7, 41-46 (1994))が、分化すると、それらはミトコンドリア機能に完全に依存する酸化的リン酸化(OXPHOS)に切り替わる(Tang, Y. et al.PeerJ 4, e1821 (2016); Hamanaka, R. B. et al.Sci.Signal.6, (2014))。
【0247】
この試験では、C57BL6/J雄3か月齢のマウスを使用する。休止期の背部皮膚毛を注意深く脱毛する。毛相の特定に関する詳細については、Muller-Rover, S. et al. A comprehensive guide for the accurate classification of murine hair follicles in distinct hair cycle stages.J.Invest.Dermatol.117, 3-15 (2001)を参照されたい。動物を無作為に3つの異なる実験群に割り当てる。脱毛の1日後、100μlのプラセボ対照、UA濃度1およびUA濃度2を対象領域に毎日適用する(適切なUA製剤は事前に決定される)。発毛の程度を定量化するために、マウスの背中の領域を毎日撮像し、NIH ImageJソフトウェア(https://imagej.nih.gov/ij/)でさらに分析する。この領域の色素沈着のレベルを、マウスの皮膚の背景色を考慮して測定する。処理の0、7、15および30日後にマウスを致死させる。皮膚を採取し、Optimal Cutting Temperature(OCT)化合物を含むクライオモールドに入れ、さらに組織学的分析を行うために-80°Cで凍結する。
【0248】
毛包再生の周期を分析するために、クリオスタットを使用して凍結皮膚切片を縦方向に切片化し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色する。オリンパス顕微鏡で画像を取得する。毛周期を定量化するために、各マウスの個々の毛包をガイドラインに基づいて分類する(Muller-Rover, S. et al.A comprehensive guide for the accurate classification of murine hair follicles in distinct hair cycle stages.J.Invest.Dermatol.117, 3-15 (2001))。特定の成長期の毛包のパーセンテージを各群で計算する。同じ領域の毛包を、各マウスの切片でカウントする。さらに、同じ領域の毛包の総数を定量化する。
【0249】
実施例8a:筋幹細胞の数を増加させるウロリチンAの能力のインビボ試験。
筋幹細胞数を増加させるUAの能力を試験するために、筋萎縮、筋ジストロフィーおよびその他の神経筋変性障害のモデル、例えば以下の表でより詳細に説明されるモデルを含むがこれらに限定されない筋変性のマウスモデルを使用する。
【表7】
UAあり、またはなしの標準食を10mpk/日から250mpk/日の範囲の用量でマウスに与える。状態ごとの動物の数および処置期間は、使用するモデルによって異なる。実験の最後に、マウスを安楽死させ、筋肉を採取して、II型コラゲナーゼ(Sigma)およびコラゲナーゼ/ディスパーゼ(Roche)で消化する。次いで、筋肉スラリーを細胞ストレーナーで濾過し、単離した細胞を洗浄し、MuSC(筋幹細胞)マーカーCD31(1:800、eBioscience、eFluor450コンジュゲート);CD45(1:200、eBioscience、eFluor450コンジュゲート);Sca-1(1:1000、eBioscience、PE-Cy7コンジュゲート);およびVCAM-1(1:200、MBL)を含む抗体で、4℃で40分間染色する。二次染色はヨウ化プロピジウム(PI、Sigma)で行う。染色された細胞を、FACSAria II機器(BD Biosciences)を使用して分析および分類する。筋幹細胞は、CD31陰性、CD45陰性、SCA陰性、VCAM陽性の筋幹細胞として定義される。破片および死んだ細胞は、前方散乱、側方散乱およびPIゲーティングによって除外される。
【0250】
実施例8b:老齢マウスの筋幹細胞の数を増加させるためのウロリチンAのインビボ試験
中年および老齢の雄C57BL/6マウスに、UAを含むまたは含まない標準固形飼料のペレットを与え、実施例8aに記載のように筋幹細胞数の評価を行う。
【0251】
実施例8c:筋幹細胞の数を増やすためのウロリチンAのエクスビボ試験
C57BL/10ScSn-DmdmdxJマウスおよび20月齢の雄C57BL/6マウスからの筋肉を分離し、洗浄し、コラゲナーゼ溶液中で消化する。ガラスピペットを使用して単一の筋線維を遊離し、DMSOまたはUA(5μM~100μMの範囲の最終濃度)で様々な時間枠で処理し、筋幹細胞マーカーで染色する。顕微鏡画像を共焦点顕微鏡によって取得し、ImageJソフトウェアを使用して筋線維当たりの筋幹細胞の数を決定する。
【0252】
実施例9:内毛前駆細胞の数を増加させるためのウロリチンAのエクスビボ試験
新生児マウス(生後1~3日)の蝸牛をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)で切除し、コルチ器官(感覚上皮)を血管条(イオン輸送上皮)および蝸牛軸(神経組織)から分離する。次いで、コルチ器官をCell Recovery Solution(Corning)で1時間処理して、蝸牛上皮をその下の間葉から分離する。次いで、上皮を採取し、TrypLE(Life Technologies)で37°Cで15~20分間処理する。機械的粉砕によって得られた単一細胞を濾過し(40mm)、3D培養のためにMatrigel(Corning)ドームに懸濁する。細胞を、Glutamax(GIBCO)、N2、B27(Invitrogen)、EGF(50ng/mL;Chemicon)、bFGF(50ng/mL;Chemicon)、IGF-1(50ng/mL;Chemicon)、およびDMSOまたはUAを添加したDMEMおよびF12の無血清1:1混合液に浸す。培地は一日おきに交換した。
【0253】
幹細胞コロニーを分化させるために、増殖培地を除去し、コロニーを3D培養に残す。Glutamax(GIBCO)、N2、およびB27(Invitrogen)およびDMSOまたはUAを添加したDMEMおよびF12の無血清1:1混合物を使用して、分化に対する化合物の効果を試験する。
【0254】
内毛前駆細胞の増殖に対するUAの影響を評価するために、Lgr5に陽性の細胞を、複数の条件の培地中10日後に定量化する。細胞コロニーは、TrypLE(GIBCO)を使用して単一の細胞に解離させる。血球計で細胞カウントを行う。次いで、細胞をヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、フローサイトメーターを使用してLgr5の発現について分析する。
【0255】
毛髪細胞の産生を定量化し、UAが内毛前駆細胞の分化に与える影響を評価するために、分化処理の0日目および10日目にAtoh1陽性の細胞を定量化する。細胞コロニーをCellRecovery Solution(Corning)中でインキュベートして、コロニーをMatrigelから遊離させ、TrypLEを使用して単一細胞に解離させる。Atoh1+細胞の総数およびパーセンテージをFACSによって定量化する。
【0256】
実施例10.UAは神経幹細胞の増殖および分化を誘導する。
いくつかの中枢神経系(CNS)疾患は、脳の特定の領域でのニューロンの喪失を特徴としているため、損傷した領域に機能的なニューロンを再配置するための治療戦略を特定することに関心が高まっている。1つの魅力的なアプローチは、神経幹細胞(NSC)の使用である。NSCは、自己複製し、ニューロン、星状細胞および希突起膠細胞に分化する能力を有する未分化細胞である。これらの細胞は、CNSの発達中、成人の脳の維持にとって重要な役割を果たす。NCSは哺乳類の胚脳から分離することができ、成熟したニューロンへの増殖および分化を調節する戦略の研究を可能にする(Marsh, S. E.& Blurton-Jones, M. Neurochem.Int. 106, 94-100 (2017))。
【0257】
増殖アッセイ:NSCの増殖および分化に対するUAの影響を評価するために、胚性ラットNSCを使用する。ラットNSCを、標準的な手順に従って分離する(Zhenxian Han, Qian Xu, Changfu Li, H. Z. Genesis 55, (2017))。Sprague-Dawley妊娠ラットを、妊娠16日目にイソフルランの過剰摂取後に安楽死させ、ラットの胚性脳を採取する。皮質を除去し、ハンクス培地(カルシウムおよびマグネシウム不含)中で機械的に解離させ、次いで1000rpmで10分間遠心分離する。次いで、ペレットをデュベルコの改良イーグル培地(DMEM)に再懸濁する。N2、EGF/BFGF(10ng/mL)、およびPDGF/NT3(5ng/mL)を添加したDMEM/F12中で培養を維持する。NSC細胞を、96ウェルプレートフォーマットで30000細胞/ウェルの密度で播種する。
【0258】
増殖アッセイ:NSC増殖に対するUAの効果をテストするために、ニューロスフェア形成アッセイを使用する。細胞を培養培地に播種し、決定された処理の後、増殖細胞を特異的に標識するKi-67抗体でニューロスフェアを染色する。オリンパス顕微鏡を使用して画像を取得し、Ki-67陽性細胞の数を盲検方式で定量化する。
【0259】
分化アッセイ:ニューロンへのNSC分化に対するUAの効果をアッセイするために、細胞を6ウェルプレートに播種する。UA処理後、細胞をニューロンマーカーTuj-1に対する抗体で染色し、続いて二次抗体を添加する。オリンパス顕微鏡を使用して画像を取得し、Tuj-1陽性細胞の数を盲検方式で定量化する。