(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】マルチモーダル放射線治療計画の最適化を容易にするための方法及び対応する放射線治療システム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
A61N5/10 P
A61N5/10 G
(21)【出願番号】P 2020566661
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2019063676
(87)【国際公開番号】W WO2019228997
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-19
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522454806
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ボクランツ,ラスムス
(72)【発明者】
【氏名】フレデリクソン,アルビン
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン,シェール
(72)【発明者】
【氏名】エングウォール,エリック
(72)【発明者】
【氏名】トラネウス,エリック
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/053648(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0033044(US,A1)
【文献】特表2018-502655(JP,A)
【文献】国際公開第2016/188754(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0090549(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画の最適化を容易にする放射線治療システム(100)であって、前記放射線治療システムは、
少なくとも1つのプロセッサ(110)と、
前記少なくとも1つのプロセッサ(110)によって実行可能な命令を備える少なくとも1つのメモリ(120)であって、これにより、前記放射線治療システム(100)が、
前記光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療のための候補ビームタイプのセットに関係した情報を取得することであって、前記候補ビームタイプのセットの各候補ビームタイプは、1つ以上のビームタイプパラメータを含むことと、
前記候補ビームタイプのセットを選択基準と比較して、前記候補ビームタイプからのビームタイプのサブセットを確立することであって、前記選択基準は、前記光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画におけるその後の使用のためのビームタイプの前記サブセットとして限られた数のビームタイプのみが適格であるという要件を課すことと、
前記ビームタイプの確立されたサブセットのみを使用して、前記光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を生成することと、
を行うように動作する、メモリと、
を備える、放射線治療システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのメモリ(120)が、前記少なくとも1つのプロセッサ(110)によって実行可能な命令を備え、これにより、前記放射線治療システム(100)が、
前記生成された光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を適用して、光子治療装置と電子治療装置からの線量投与を同時に最適化するように動作する、請求項
1に記載の放射線治療システム(100)。
【請求項3】
ビームタイプパラメータが、ビームモダリティ、ビーム軌道、単位時間あたりの線量、関心体積までの距離、関心体積上又は関心体積内のビーム位置、マルチリーフコリメータ、ジョー、ウェッジ、ブロック、散乱箔、補償器、カットアウト、及びボーラスなどのビームモディファイア、並びにマシン特徴のうちの1つ以上を含む、請求項
1又は2に記載の放射線治療システム(100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのメモリ(120)が、前記少なくとも1つのプロセッサ(110)によって実行可能な命令を備え、これにより、前記放射線治療システム(100)が、
スキャナ(130)によって、前記光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を用いて治療される関心体積の画像を取得し、
前記取得した画像を画像データに変換し、
前記画像データを評価し、
前記画像データの評価に基づいて前記選択基準を決定する、
ように動作する、請求項
1~3のいずれか一項に記載の放射線治療システム(100)。
【請求項5】
前記1つ以上のプロセッサ(110)に、
光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療のための候補ビームタイプのセットに関係した情報を取得することであって、前記候補ビームタイプのセットの各候補ビームタイプは、1つ以上のビームタイプパラメータを含むことと、
前記候補ビームタイプのセットを選択基準と比較して、前記候補ビームタイプからのビームタイプのサブセットを確立することであって、前記選択基準は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画におけるその後の使用のためのビームタイプのサブセットとして限られた数のビームタイプのみが適格であるという要件を課すことと、
前記ビームタイプの確立されたサブセットのみを使用して、前記光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を生成することと、
を行わせるための1つ以上の命令シーケンス(310)をその上に格納している、コンピュータ可読媒体(300)。
【請求項6】
前記1つ以上のプロセッサ(110)に、前記生成された光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を適用して光子治療装置と電子治療装置からの線量投与を同時に最適化することを行わせるための、1つ以上の命令シーケンスを格納している、請求項
5に記載のコンピュータ可読媒体(300)。
【請求項7】
ビームタイプパラメータが、ビームモダリティ、ビーム軌道、単位時間あたりの線量、関心体積までの距離、関心体積上又は関心体積内のビーム位置、マルチリーフコリメータ、ジョー、ウェッジ、ブロック、散乱箔、補償器、カットアウト、及びボーラスなどのビームモディファイア、並びにマシン特徴のうちの1つ以上を含む、請求項
5又は6に記載のコンピュータ可読媒体(300)。
【請求項8】
前記1つ以上のプロセッサ(110)に、
前記光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を用いて治療される関心体積の取得された画像を表す画像データを評価することと、
前記取得された画像データの評価に基づいて前記選択基準を決定することと、
を行わせるための1つ以上の命令シーケンスをその上に格納している、請求項
5~7のいずれか一項に記載のコンピュータ可読媒体(300)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、放射線治療の分野に関する。より詳細には、本開示は一般に、マルチモーダル放射線療法治療計画、特に、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画を容易にするための方法及び放射線治療システムに関する。したがって、理解されるように、本明細書で説明される種々の態様及び実施形態は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画の最適化手順及びシステムでの特定の有用性を見出す。
【背景技術】
【0002】
外部ビーム放射線療法の最適化アルゴリズムは以前から存在していた。しかしながら、がん治療センターでは、計画作成プロセスに常に最新の多様な放射線モダリティを組み込んでいる。例えば、がん治療部位には、光子ベースのビーム療法と電子ベースのビーム療法を、がん患者のための1つの処方に組み合わせる場合がある。このような組み合わせ療法は、通常、モダリティのタイプごとに患者に与えられる線量を最適化するのに別個のアルゴリズムを使用する。最適化レジームはすべての治療タイプを同時に含んでいるわけではないため、これらのアルゴリズムは本質的に不十分な場合がある。
【0003】
従来の放射線治療計画作成アルゴリズムでは、ユーザにより定義された目的を満足させるために、放射線ビームの形状とウェイトのセットの作成が試みられることがある。これらの目的は、例えば、標的がん部位及び/又は周囲臓器への最小線量、最大線量、均一線量などを含み得る。これらの放射線治療計画作成アルゴリズムは、通常、一度に1つだけの治療モダリティを使用する。しかしながら、前述のように、より一層多くのがんセンターが様々な治療モダリティを利用できるようになっている。現在、放射線の光子を送達する放射線治療装置と、電子を送達する他の放射線治療装置が存在する。放射線治療計画作成システムの当業者の間で知られているように、それぞれに独自の長所と短所があり、それぞれに適切な線量最適化プログラムが存在するが、このようなプログラムは、通常、これらのモダリティのうちの1つのみの線量を排他的に最適化する。
【0004】
WO2018/053648A1は、EP18175043.1で引用されている。WO2018/053648A1は、一般に、複数のモダリティに基づく治療計画作成に関係している。
【発明の概要】
【0005】
本明細書で開示される種々の態様及び実施形態は、上記の考慮事項及び他の考慮事項を考慮してなされている。
【0006】
がん治療のための放射線治療技術の進歩にもかかわらず、本開示は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画作成のための単一の組み合わされた最適化技術の使用を容易にする放射線治療システム及び方法が依然として必要とされており、その必要性はまだ満たされていないと認識している。複数のモダリティに一般に焦点をあてているWO2018/053648A1とは対照的に、本開示は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画作成に排他的に焦点をあてている。
【0007】
したがって、上記を考慮して、本開示の全体を通して説明される態様及び実施形態の一般的な目的は、上記の欠点のうちの1つ以上を克服する解決策を提供することである。より具体的には、種々の態様及び実施形態は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画を容易にするという目的に対処する。
【0008】
上記で特定された一般的な目的は、付属の独立請求項によって対処されている。有利な実施形態は、付属の従属請求項で定義される。
【0009】
第1の態様によれば、本開示は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画の最適化を容易にする方法を提示する。光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療のための候補ビームタイプのセットに関係した情報が得られる。候補ビームタイプのセットの各候補ビームタイプは、1つ以上のビームタイプパラメータを含み得る。さらに、候補ビームタイプのセットが選択基準と比較され、候補ビームタイプからのビームタイプのサブセットが確立される。またさらに、ビームタイプの確立されたサブセットのみを使用して、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画が生成或いは作成される。
【0010】
有利な実施形態において、この方法はさらに、生成された光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を適用して、光子治療装置と電子治療装置からの線量投与を同時に最適化することを含む。いくつかの実施形態において、光子治療装置と電子治療装置は、別個のデバイスであり得る。すなわち、光子治療装置と電子治療装置は、互いに別個であり、区別され得る。しかしながら、代替的な好ましい実施形態において、光子治療装置と電子治療装置は、1つの単一の装置に実装される。その場合、単一の装置を光子・電子治療装置と呼ぶことがある。
【0011】
いくつかの実施形態において、上記の選択基準は、ビームタイプの確立されたサブセットのみを使用する光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画におけるその後の使用のためのビームタイプのサブセットとして限られた数のビームタイプのみが適格であるという要件を課す。
【0012】
さらに、前述のビームタイプパラメータは、ビームエネルギー、ビームモダリティ、ビーム軌道、単位時間あたりの線量、関心体積までの距離、関心体積上又は関心体積内のビーム位置、マルチリーフコリメータ、ジョー、ウェッジ、ブロック、散乱箔、補償器、カットアウト、及びボーラスなどのビームモディファイア、並びにマシン特徴のうちの1つ以上を含み得る。
【0013】
有利な実施形態において、この方法はさらに、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を用いて治療される関心体積の画像を(例えば、スキャナによって)取得することと、取得した画像を画像データに変換することと、画像データを評価することを含み得る。前述の選択基準は、画像データの評価に基づいて決定或いは確立され得る。
【0014】
第2の態様によれば、本開示は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画の最適化を容易にする放射線治療システムを提示する。放射線治療システムは、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのメモリを備える。少なくとも1つのメモリは、少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令を備え、これにより、放射線治療システムは、i)光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療のための候補ビームタイプのセットに関係した情報を取得し、候補ビームタイプのセットの各候補ビームタイプは、1つ以上のビームタイプパラメータを含み、ii)候補ビームタイプのセットを選択基準と比較して、候補ビームタイプからのビームタイプのサブセットを確立し、iii)ビームタイプの確立されたサブセットのみを使用して、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を生成或いは作成するように動作する。
【0015】
有利には、少なくとも1つのメモリはまた、少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令を備えることができ、これにより、放射線治療システムは、生成された光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を適用して、光子治療装置と電子治療装置からの線量投与を同時に最適化するように動作する。すなわち、光子治療装置と電子治療装置は、互いに別個であり、区別され得る。しかしながら、代替的な好ましい実施形態において、光子治療装置と電子治療装置は、1つの単一の装置に実装される。その場合、単一の装置を光子・電子治療装置と呼ぶことがある。
【0016】
いくつかの実施形態において、前述の選択基準は、ビームタイプの確立されたサブセットのみを使用する光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画におけるその後の使用のためのビームタイプのサブセットとして限られた数のビームタイプのみが適格であるという要件を課す。
【0017】
上記のビームタイプパラメータは、ビームモダリティ、ビーム軌道、単位時間あたりの線量、関心体積までの距離、関心体積上又は関心体積内のビーム位置、マルチリーフコリメータ、ジョー、ウェッジ、ブロック、散乱箔、補償器、カットアウト、及びボーラスなどのビームモディファイア、並びにマシン特徴のうちの1つ以上を含み得る。
【0018】
加えて、いくつかの実施形態において、少なくとも1つのメモリは、少なくとも1つのプロセッサによって実行可能な命令を備えることができ、これにより、放射線治療システムは、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を用いて治療される関心体積の画像を(例えば、スキャナによって)取得し、取得した画像を画像データに変換し、画像データを評価し、画像データの評価に基づいて前記選択基準を決定するように動作する。
【0019】
第3の態様によれば、本開示は、少なくとも1つのプロセッサで実行されるときに少なくとも1つのプロセッサに前述の第1の態様に係る方法を実行させる命令を備えるコンピュータプログラムを提示する。
【0020】
第3の態様に係るコンピュータプログラムを備えるキャリアも随意的に提供され得る。キャリアは、例えば、電気信号、光信号、無線信号、又はコンピュータ可読記憶媒体であり得る。
【0021】
例えば、コンピュータ可読媒体は、1つ以上のプロセッサに、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療のための候補ビームタイプのセットに関係した情報を取得することであって、候補ビームタイプのセットの各候補ビームタイプは、1つ以上のビームタイプパラメータを含む、情報を取得することと、候補ビームタイプのセットを選択基準と比較して、候補ビームタイプからのビームタイプのサブセットを確立することと、ビームタイプの確立されたサブセットのみを使用して、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を生成或いは作成することと、を行わせるための、1つ以上の命令シーケンスを格納し得る。
【0022】
有利には、コンピュータ可読媒体はさらに、1つ以上のプロセッサに、生成された光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を適用して光子治療装置と電子治療装置からの線量投与を同時に最適化することを行わせるための、1つ以上の命令シーケンスを格納し得る。
【0023】
上記の選択基準は、ビームタイプの確立されたサブセットのみを使用する光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画におけるその後の使用のためのビームタイプのサブセットとして限られた数のビームタイプのみが適格であるという要件を課し得る。
【0024】
前述のビームタイプパラメータは、例えば、ビームモダリティ、ビーム軌道、単位時間あたりの線量、関心体積までの距離、関心体積上又は関心体積内のビーム位置、マルチリーフコリメータ、ジョー、ウェッジ、ブロック、散乱箔、補償器、カットアウト、及びボーラスなどのビームモディファイア、並びにマシン特徴のうちの1つ以上を含み得る。
【0025】
加えて、いくつかの有利な実施形態において、コンピュータ可読媒体は、1つ以上のプロセッサに、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を用いて治療される関心体積の取得された画像を表す画像データを評価することと、取得された画像データの評価に基づいて前記選択基準を決定することと、を行わせるための、1つ以上の命令シーケンスを格納し得る。
【0026】
本開示で提示される態様及び実施形態は、がん治療のための光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を生成或いは作成するときに、候補ビームタイプのより大きいセットからのビームタイプの適正なサブセットの特定を有利に用いることができるという認識に基づいている。1つの可能な利点は、患者への放射線量をより一層調整できることである。言い換えれば、線量投与の精度(光子対電子)を向上させることが可能となる。加えて又は代替的に、合計放射線量が最小にされ得る又は少なくとも低減され得る。
【0027】
これらの及び他の態様、特徴、及び利点は、添付図を参照してなされる種々の実施形態の以下の説明から明白及び明瞭であることになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画の最適化を容易にすることができる放射線治療システムを概略的に例示する。
【
図2】放射線治療システムによって行われる又は放射線治療システムで実施される方法の流れ図を概略的に例示する。
【
図3】一態様に係るコンピュータプログラムを格納したキャリアを概略的に例示する。
【
図4】異なる平滑化パラメータでの近似階段関数を例示する。
【
図5】異なる平滑化パラメータでの別の近似階段関数を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで本発明は、以下にさらに詳しく説明されることになる。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載された実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が十分且つ完全となり、本発明の範囲が当業者に十分に伝わるように、単なる例として提供される。説明の全体を通して、同様の参照番号は、同様の要素又は方法ステップを指す。
【0030】
本明細書で開示される態様及び実施形態は、がん治療のために用いられる光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療での光子の送達と電子の送達との両方の最適化又は少なくとも改善を可能にする単一の最適化ルーチンに関係する。これにより、光子と電子の組み合わせを用いる腫瘍治療が容易になる。本明細書で提示される態様及び実施形態は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を生成するときに、候補ビームタイプのより大きいセットからのビームタイプの適正なサブセットの特定を有利に用いることができるという認識に基づいている。1つの可能な利点は、患者への放射線量をより一層調整できることである。言い換えれば、線量投与の精度(光子対電子)を向上させることが可能となる。加えて又は代替的に、合計放射線量が最小にされ得る又は少なくとも低減され得る。
【0031】
したがって、一般に、本開示は、光子療法と電子療法との組み合わせの治療計画作成中に候補ビームタイプのより大きいセットからビームタイプのサブセットを選択することを提案する。以下の詳細な説明への単なる導入として、本発明の後述する態様及び実施形態への文脈を提供するために、治療計画作成を最初に簡単に議論する。電子及び光子の照射中に、放射線照射野の形状は、通常、1つ以上の治療装置(例えば、光子治療装置及び電子治療装置)によって制御される。例えば、放射線照射野の形状は、治療ヘッド(マルチリーフコリメータ(MLC)及びジョーなど)に一体化された電動コリメータ装置、又はアプリケータ又はカットアウト(主に電子)などのアクセサリ装置によって制御される場合がある。別のタイプのアクセサリ装置はウェッジであり、これは治療照射野のフルエンスプロファイルを制御するのに用いられる場合がある。患者に対する照射野の配向は、例えば、ガントリ、カウチ、及び/又は治療ヘッドの回転によって決定或いは確立される場合がある。治療は、いくつかの小部分で施される場合があり、各治療小部分は、一連のビームで構成される。ビームは、一連の制御点として指定される場合があり、各制御点は、照射野整形装置の所与の構成と、特定の累積モニタ単位(MU)レベルでの照射野の配向を定義する。例えば、電動コリメータ装置の構成は、制御点間で、及び、患者に対する照射野の配向に応じて、変更される場合がある。累積MUの読取値は、照射がオフに切り替えられている間の照射野の形状又は照射野の配向の変化を表すために制御点間で不変であり得る。ビームエネルギーは、又はモダリティさえも、治療ハードウェアによってサポートされている場合、原則として1つのビーム内で変更することができるが、このような変更は、一般に、現在の標準ではない。したがって、一般的に言えば、各ビームは、別個のモダリティ(光子又は電子)と一定のビームエネルギーを有すると想定される場合が多い。以下、「ビームタイプ」という用語は、モダリティ、ビームエネルギー、アクセサリ装置のセットなどの選択された構成を指すのに用いられる。一連の制御点としてのビームの説明には、特別なケースとしての変調外部ビーム放射線療法のためのすべての標準的な送達技術、すなわち、ステップアンドシュート強度変調放射線療法(IMRT)、スライディングウィンドウIMRT、強度変調回転放射線療法(VMAT)、3D原体放射線治療、又はコンフォーマルアーク療法が含まれることを理解されたい。ハイブリッドIMRT-VMATなどの、これらの送達技術のハイブリッド変形も含まれる。光子治療と電子治療の組み合わせの治療計画は、以下交換可能に、放射線治療システム(
図1参照)と呼ばれる、治療計画作成システム(TPS)において作成及び評価され得る。放射線治療システムは、例えば、(例えば、コンピュータ断層撮影(CT)スキャナを使用して)取得した画像に基づいて患者体積内の計画線量分布を決定或いは計算するように構成され得る。場合によっては、線量決定又は計算の中間ステップは、ビームの制御点に基づく各ビームのエネルギーフルエンス分布の計算である。放射線治療システムは、例えば、制御点又はフルエンスのいずれかを変数として用いて治療計画を最適化或いは生成し得る。これらの2つのタイプの最適化を、それぞれ、直接マシンパラメータ最適化(DMPO)及びフルエンスマップ最適化(FMO)と呼ぶこともある。必ずしもそうとは限らないが一般的に、治療計画は、FMOの後にDMPOが続く、2つのフェーズで生成或いは作成される。
【0032】
ここで図面を参照すると、
図1は、本発明の態様及び実施形態が適用され得る例示的なシステム100を示す。システム100は、放射線治療システムと呼ぶこともある。システム100は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画の最適化を容易にするように構成される。したがって、システム100は、その放射線治療計画が光子ビーム放射線治療と電子ビーム放射線治療の組み合わせを採用する、マルチモーダル放射線療法の最適化を容易にするように構成される。
【0033】
光子ビーム及び電子ビーム治療の最適化に関する既存の技術では、ユーザ又はオペレータが治療を組み合わせることを望む場合、通常、各モダリティ(すなわち、光子又は電子)に基づいて放射線治療計画を別々に作成する必要がある。したがって、ユーザ又はオペレータは、一度に1つの送達オプション(すなわち、光子又は電子)の治療を最適化或いは計画することを余儀なくされる。対照的に、
図1に例示したシステムは、光子ビーム放射線治療と電子ビーム放射線治療との両方の組み合わせを採用するマルチモーダル放射線治療計画作成のための単一の組み合わされた最適化技術の使用を容易にする。
【0034】
図1を引き続き参照すると、システム100は、(一つ又は複数の)プロセッサ110又は(一つ又は複数の)コントローラを備える。(一つ又は複数の)プロセッサ100は、1つ又はいくつかのメモリ120に通信可能に接続される。メモリ120のうちの1つ以上は、(一つ又は複数の)プロセッサ110によって実行可能な命令を備えることができ、これにより、システム100は、本開示の全体を通して説明される種々の機能及び/又は方法を実行するように動作する。
【0035】
(一つ又は複数の)プロセッサ110はまた、ユーザインターフェース(UI)140に通信可能に接続され得る。ユーザ又はオペレータ(図示せず)は、例えば、システム100の動作を制御するために、UI140と対話し、操作することができる。したがって、この目的のために、UI140は、ユーザ入力を受信するためのUI入力デバイスを備え得る。加えて又は代替的に、UI140は、ユーザに情報を出力するためのUI出力デバイスを備え得る。いくつかの実施形態において、UI140は、タッチセンシティブUIとして実装され得る。例えば、UIは、UI入力デバイスとUI出力デバイスとの両方の機能を適切に組み込んだタッチセンシティブディスプレイを備え得る。
【0036】
(一つ又は複数の)プロセッサ110はまた、マルチモーダル放射線治療モジュール150に通信可能に接続される。さらに、一つ又は複数のメモリは、(一つ又は複数の)プロセッサによって実行可能な命令を備えることができ、これにより、システム10は、生成された光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を適用して、光子治療装置152と電子治療装置154からの線量投与を同時に最適化するように動作する。この目的のために、放射線治療モジュール150は、光子治療装置152と電子治療装置154を備え得る。
図1に例示したように、光子治療装置152と電子治療装置154は、有利には、1つの単一の装置に実装され、光子療法と電子療法とを組み合わせることができる。しかしながら、光子治療装置152と電子治療装置154は、代替的に別個の装置として提供することもできると考えられることを理解されたい。
【0037】
光子治療装置152と電子治療装置154は、光子ビーム放射線と電子ビーム放射線を採用する組み合わされた又はデュアル放射線治療計画を使用して患者を治療するのに用いることができる。この目的のために、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療のための候補ビームタイプのセットに関係した情報124が、一つ又は複数のメモリ120のうちの一つのメモリに格納され得る。候補ビームタイプのセットの各候補ビームタイプはまた、1つ以上のビームタイプパラメータを含み得る又はそれらと関連付けられ得る。ビームタイプパラメータは、限定を伴うことなく、ビームエネルギー、ビームモダリティ、ビーム軌道、単位時間あたりの線量、関心体積までの距離、関心体積上又は関心体積内のビーム位置、MLC、ジョー、ウェッジ、ブロック、散乱箔、補償器、カットアウト、及びボーラスなどのビームモディファイア、並びにマシン特徴を含み得る。また、オプティマイザモジュール122が、一つ又は複数のメモリ120のうちの一つのメモリに格納され得る。オプティマイザモジュール122は、少なくとも1つの選択基準を含み得る。本明細書で後述するように、候補ビームタイプのセットを選択基準と比較して、候補ビームタイプからのビームタイプのサブセットを確立することができる。有利には、必ずしもそうとは限らないが、上記の選択基準は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画におけるその後の使用のためのビームタイプのサブセットとして限られた数のビームタイプのみが適格であるという要件を課す。加えて、オプティマイザモジュール122は、ビームタイプの確立されたサブセットのみを使用して、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を最適化或いは生成することができる。
【0038】
有利な実施形態において、システム100は、スキャナ130をさらに含む。スキャナ130は、CTスキャナ又は他の診断スキャナであり得る。スキャナ130は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を用いて治療される関心体積の画像を取得するべく患者をスキャンするように構成される。いくつかの実施形態において、取得した画像は、一つ又は複数のメモリ120のうちの一つのメモリに診断画像データとして格納され得る画像データに変換することができる。以下でさらに詳細に説明するように、画像データの評価に基づいて前述の選択基準の決定を有利に行うことができる。
【0039】
上記を考慮して、放射線治療システム100は、ビームタイプの確立されたサブセットのみを使用して、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を生成するように構成され得ることが理解されるであろう。いくつかの態様及び実施形態は、がん治療のための光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を生成或いは作成するときに、候補ビームタイプのより大きいセットからのビームタイプの適正なサブセットの特定を有利に用いることができるという認識に基づいている。1つの可能な利点は、患者への放射線量をより一層調整できることである。言い換えれば、線量投与の精度(光子対電子)を向上させることが可能となる。加えて又は代替的に、合計放射線量が最小にされ得る又は少なくとも低減され得る。これにより、最適化が改善され、その結果、がん治療が改善され得る。
図1の放射線治療システム100の独特の性質により、ユーザ又はオペレータは、従来の技術では成し得ない、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画の最適化を行うことができる。
【0040】
本明細書で前述したように、放射線治療技術の進歩にもかかわらず、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するいくつかの既存のマルチモーダル放射線治療計画は不十分な場合がある。したがって、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用する改善されたマルチモーダル放射線治療計画のまだ満たされていない必要性に対処するために、一態様によれば、本開示はまた、
図2の流れ図に概略的に例示される方法を提案する。
【0041】
したがって、
図2は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画の最適化を容易にするための方法の流れ図を概略的に示す。言い換えれば、
図2は、がんの光子治療と電子治療との組み合わせに特定の有用性を見出す方法を提案する。
【0042】
この方法は、有利には、必ずしもそうとは限らないが、
図1に示された放射線治療システム100によって行われる或いは実施される。
【0043】
アクション210:候補ビームタイプのセットに関係した情報が得られる。候補ビームタイプのセットは、通常、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療に有用である或いは有用性が見出される候補ビームタイプのセットである。候補ビームタイプのセットの各候補ビームタイプは、1つ以上のビームタイプパラメータを含み得る。ビームタイプパラメータは、ビームエネルギー、ビームモダリティ、ビーム軌道、単位時間あたりの線量、関心体積までの距離、関心体積上又は関心体積内のビーム位置、MLC、ジョー、ウェッジ、ブロック、散乱箔、補償器、カットアウト、及びボーラスなどのビームモディファイア、並びにマシン特徴のうちの1つ以上を含み得る。
【0044】
アクション220:随意的に、選択基準が決定或いは確立される。例えば、画像が取得される220A。取得される画像は、通常、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を用いて治療される関心体積の画像である。この画像は、例えば、スキャナによって取得され得る。したがって、取得した画像はスキャンした画像と呼んでもよい。取得した画像に基づいて、画像データを生成或いは作成することができる。言い換えれば、取得した画像が画像データに変換される220B。したがって、この画像データは、以前に取得した画像を表すデータを含む。したがって、画像データは、スキャンした画像を表すデータを含み得る。したがって、理解されるように、画像データは、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を用いて治療される前記関心体積の画像を表すデータを含む。その後、画像データが評価され220C、この評価に基づいて、前記選択基準を決定220或いは確立することができる。評価中に、画像データは、例えば、治療されるべき腫瘍などの患者の標的及び/又は回避されるべき放射線感受性の高い組織及び/又は線量投与に悪影響を及ぼすことがある骨などの高密度組織の位置、サイズ、形状などを特定するべくセグメント化することができる。
【0045】
アクション230:候補ビームタイプのセットが選択基準と比較され、候補ビームタイプからのビームタイプのサブセットが確立される。選択は、随意的に、アクション220で決定される。代替的に、選択基準は、事前定義された選択基準であり得る。例えば、事前定義された選択基準は、ユーザ、例えば、
図1に例示したシステム100のユーザ又はオペレータによって決定或いは確立され得る。
【0046】
有利には、選択基準は、ビームタイプの確立されたサブセットのみを使用する光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画におけるその後の使用のためのビームタイプのサブセットとして限られた数のビームタイプのみが適格であるという要件を課す。
【0047】
アクション250:アクション230での比較に基づいて、候補ビームタイプからのビームタイプのサブセットを確立或いは決定することができる。例えば、候補ビームタイプが選択基準を満たす場合又はとき、この候補ビームタイプが、決定される、或いはより狭い、より限られたビームタイプのセットに適格であると結論づけられる。したがって、理解されるように、この例示的な実施形態によれば、選択基準を満たす候補ビームタイプは、ビームタイプのサブセットを表す又は形成するように選択或いは決定される。
【0048】
アクション260:ビームタイプの確立されたサブセットのみを使用して、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画が生成される、或いは作成又は形成される。
【0049】
アクション270:生成された光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を適用して、光子治療装置と電子治療装置からの線量投与が同時に最適化される。例えば、カバレッジ領域、線量(光子対電子)、及び/又は他の送達パラメータを最適化或いは調整することが可能である。
【0050】
したがって、上記の議論から分かるように、本開示は、選択基準を満たす特定の特徴を有する候補ビームタイプのみがビームタイプのサブセットを表す又は形成するように前述の選択基準を評価及びテストすることが可能であることを認識する。
【0051】
本開示は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画の最適化を容易にする方法を提案する。候補ビームタイプのより大きいセットからの適正なビームタイプのサブセットのみを用いることにより、マルチモーダル放射線治療計画のその後の生成又は作成における精度の向上及び/又は信頼性の増加が可能となる。精度の向上及び/又は信頼性の増加は、最適化の改善、したがって、がん治療の改善につながる可能性がある。
【0052】
ここで
図3に移り、別の態様を簡単に説明する。
図3は、この例ではデータディスク300の形態の、コンピュータ可読媒体の例を示す。一実施形態では、データディスク300は、磁気データストレージディスクである。データディスク300は、
図1に例示したシステム100などの装置のメモリ120にロードすることができる命令310を保持するように構成される。装置100のプロセッサ110によって前記命令が実行されると、装置100は、例えば
図2に関連して本開示で開示される方法のいずれか1つに係る方法又は手順を実行することになる。データディスク300は、読み出し装置(図示せず)に又は読み出し装置内に接続され、命令をプロセッサ110にロードするために読み出し装置によって読み出されるように構成される。1つの(又はいくつかの)データディスク300と組み合わせた読み出し装置の1つのこのような例は、ハードドライブである。コンピュータ可読媒体は、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、フラッシュメモリ、又は一般的に用いられる他のメモリ技術などの他の媒体とすることもできることに留意されたい。このような実施形態では、データディスク300は、有形のコンピュータ可読媒体の一種である。命令は、代替的に、無線(又は有線)インターフェースを介して(例えばインターネットを介して)装置100のプロセッサ110に命令をロードするためにコンピュータデータ読み出し装置に送信されるコンピュータ可読信号(図示せず)での命令とすることによって、コンピュータ可読媒体上のコンピュータコード化データを読み出すことができるコンピュータ又は他の装置100などのコンピュータデータ読み出し装置にダウンロードされ得る。このような実施形態では、コンピュータ可読信号は、無形のコンピュータ可読媒体の一種である。
【0053】
種々の詳細な最適化の例
本開示でこれまでに説明した態様及び実施形態から理解されるように、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画は、有利には、ビームタイプの確立されたサブセットのみを使用することによって生成或いは作成される。したがって、本開示は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画の最適化を容易にする方法を提案する。候補ビームタイプのより大きいセットからの適正なビームタイプのサブセットのみを用いることにより、マルチモーダル放射線治療計画のその後の生成又は作成における精度の向上及び/又は信頼性の増加が可能となる。精度の向上及び/又は信頼性の増加は、最適化の改善、したがって、がん治療の改善につながる可能性がある。
【0054】
以下では、治療計画の最適化の特定の例をもう少し詳細に説明する。しかしながら、治療計画の最適化は、多くの異なる形態で実施するべく縮小されてよく、本明細書に記載された例に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの例は、本開示が当業者にとってより一層十分且つ完全となるように単なる例として提供される。
【0055】
いくつかの態様によれば、治療計画の最適化は、次のように数学的問題として定式化することができる:
cj(x)≦0,j=1,...,mという条件で、
f(x)を最小にする (1)
ここで、最適化変数のベクトルxは、最適化されるべきビームパラメータを表し、目的関数fは、通常は値が小さいほどより良いと定義される計画の品質の尺度であり、制約関数c1,...,cmは、最適化された計画に対する譲れない要件を表す関数である。制約関数は、関数の値が正でない場合に要件が満たされると定義される。
【0056】
ベクトルxは、例えば次のように、各ビームタイプのすべての最適化変数を単一のベクトルに連結したものである:
【数1】
ここで、各サブベクトルx
(b)は、b番目のビームタイプの最適化変数を定義する。例として、ベクトルx
(b)は、通常、DMPOフェーズ中に、ビームタイプbのすべての制御点にわたるMLCリーフ位置のベクトルλ
(b)と、ビームタイプbのすべての制御点にわたるMUのベクトルμ
(b)を連結したものであり、例えば、
【数2】
である。
【0057】
ベクトルx(b)は、同様に、FMOフェーズ中にビームタイプbのビクセルフルエンスを連結したものである。一部のビームに関連するビクセルは、一般に、ビーム中心軸に垂直な平面内の表面要素である。
【0058】
変数のベクトルxはまた、患者に対するビームの配向を制御するパラメータなどの他のタイプの治療計画パラメータを表す要素を含み得る。
【0059】
目的関数fは、次のように、項の和である:
【数3】
ここで、各構成関数f
iは、患者体積の所与のサブ領域に関する治療計画の品質の特定の態様の尺度である。構成関数f
iは、例えば、標的構造の処方線量からの逸脱にペナルティを課すこと又は健康な臓器の特定の許容レベルを超える線量にペナルティを課すことなどが可能である。典型的な制約関数c
jは、健康な臓器への線量の上限又は標的構造への線量の下限などの計画線量に要件を課す関数、又は代替的に、送達方法の特定の物理的又は機械的制限を反映する関数のいずれかである。後者のタイプの制約の例は、ビクセル強度又は制御点MUに対する非負制約、MLCリーフ位置に境界を課すという制約、及び例えば2つの対向するMLCリーフ間の重なりを禁止するという制約である。理解されるように、これは単なる例であり、最適化問題は別様に定式化することもでき、例えば、マシン制約を目的関数に含めることもできる。
【0060】
問題の定式化
本開示は、治療計画の一部である異なるビームタイプの数に制限を課すことによって光子・電子治療計画の複雑さを制御する必要性が満たされていないと認識している。このような制限は、(1)に係る問題に制約関数c
jを用いることとして表現され、ここで、xは、候補ビームタイプのセットのパラメータを表す。複雑さを制限する制約関数c
jは、候補ビームタイプごとに関数y
bを導入することによって数学的に定式化され、b番目の候補ビームタイプが選択される場合にy
b(x
(b))が正になり、それ以外の場合はゼロになるように定義される。DMPO中のy
bの有効な定義の例は、ユークリッドノルムが用いられる場合に、ビームタイプbに関連する制御点MUの特定のノルムとすることができ、例えば、
【数4】
である。関数y
bは、FMO中のビームレット強度に関して同様に定義される。
【0061】
関数y
1,...,y
Bにより、選択されたビームタイプの数に上限B
maxを課す制約関数c
jを次のように定式化することができる:
【数5】
ここで、θは、階段関数
【数6】
である。
【0062】
最適化に影響を与えるためには、B
maxは、利用可能なビームタイプの数Bよりも小さくなければならないことを理解されたい。同様の制約は、ビームタイプのサブセットに関しても定義され、例えば、
【数7】
であり、ここで、Iは、{1,...,B}の特定のサブセットである。
【0063】
複雑さを制限する制約(3)は、例えば次のように、目的関数のペナルティ項に緩和することができる:
【数8】
ここで、ペナルティは、制約違反の大きさと共に二乗のオーダーで増加するように定義される。
【0064】
アルゴリズムの例
連続最適化問題への緩和:
複雑さを制限する制約(3)又はペナルティ(5)は、階段関数(4)が不連続であるため最適化に適さない場合がある。この問題の解決策は、厳密な階段関数θを、滑らかであるが近似的な階段関数
【数9】
に置き換えることである。最適化に適している可能性がある近似階段関数の例は、双曲線正接、すなわち、
【数10】
であり、ここで、正のスカラーεは、
【数11】
がθにどれだけ近づくかを制御する。
図4参照。別の例は、誤差関数、すなわち、
【数12】
である。
図5参照。
【0065】
(3)又は(5)を滑らかな連続関数に再定式化すると、最適化問題(1)が連続非線形問題に有利に変換される。このような問題を解くために、例えば、内点法又は逐次二次計画法などの勾配ベースの最適化法、若しくは焼きなまし法又は遺伝的アルゴリズムなどの導関数不要の最適化法といったいくつかの異なるよく知られた方法を用いることができる。
【0066】
滑らかにされた階段関数
【数13】
に関する最適化は、オリジナルの要件c
j(x)≦0を正確に満たす解xを常にもたらすわけではない。したがって、やや実行不可能な解を実行可能な解に変換するサブルーチンが有益な場合がある。(2)に係る例での関数y
1,...,y
Bが、すべてのbについてy
b(0)=0を満たす場合、一連の添数i
1,...,i
Bが得られるようにy
1(x
(1)),...,y
B(x
(B))を昇順でソートすることによって実行不可能性を打ち消すことができる。次いで、ベクトルx
(i1),...,x
(iB)が、実行可能性が得られるまで一度に1つずつゼロに切り捨てられる。この手順は、ビームタイプの所望の最大数B
maxよりも大きい中間上限
【数14】
に関して解を実行可能にするのに用いられることを理解されたい。
【0067】
複雑さを制限する制約の滑らかな定式化と、実行不可能性の補正ルーチンは、B個の可能な候補から多くともB
maxのビームタイプを選択するための以下のアルゴリズムに組み合わせることができる:
1.特定の最初のx、ε、及び
【数15】
を選択する
2.特定の非線形最適化法を用いて(1)に関して最適化する
3.最適化された解xを制約
【数16】
に関して実行可能にする
4.ε及び
【数17】
を更新する
5.特定の終了基準が満たされるまでアクション又はステップ2~4を繰り返す。
【0068】
使用できる終了基準の例は、許されるビームタイプの最大数Bmaxに関する実行可能性が得られていること、又は繰返しの最大数が行われていることである。
【0069】
(5)に係る滑らかなペナルティを最小にするためのアルゴリズムは、同様の様態で構築される。
【0070】
網羅的な列挙:
候補ビームタイプの数B又は許されるビームタイプの最大数B
maxが小さい又は比較的小さい場合に、網羅的な列挙によってビームタイプの最適なサブセットの選択が計算上実行可能である。例えば、単一の光子エネルギーを用いる場合、アクセサリ装置を選択する必要はなく、治療マシンは、7つの電子エネルギーをサポートし、そのうち2つを選択する必要があり、その場合、
【数18】
の電子エネルギーの異なる実行可能なペアが存在する。
【0071】
電子エネルギーの特定のペアが選択され、残りの電子エネルギーに対応する変数が破棄される、(1)の対応する21の異なる例は、独立して解かれる。最適化された解を最後に比較して、電子エネルギーの最適なペアを特定することができる。異なる問題例は、好ましくは並行して解かれる。
【0072】
貪欲法:
「連続最適化問題への緩和」のセクションで概説したアルゴリズムは、すべての可能なビームタイプで始まり、現在の解xへの寄与が最小のビームタイプを順次に破棄する、リバース貪欲アルゴリズムに簡略化され得る。この簡略化は、複雑さを制限する制約が最適化ステップ(上記の「連続最適化問題への緩和」のセクションのステップ2)で考慮されていない場合に得られる。
【0073】
ビームタイプはまた、選択されたビームタイプの空のセットで開始し、現在の解を最も改善させるビームタイプに基づいてタイプを反復的に追加する、フォワード貪欲アルゴリズムを用いて選択され得る。網羅的な列挙によって、まだ選択されていない最良のビームタイプを特定することができる。
【0074】
本明細書で説明した例から分かるように、本開示は、光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療を採用するマルチモーダル放射線治療計画の最適化を容易にする必要性があり、その必要性はまだ満たされていないという概念に基づいている。本開示は、治療のために選択される1つ以上のビームタイプパラメータに関係した少なくとも1つの複雑さ要件が考慮される、光子治療と電子治療との組み合わせの治療計画の最適化を提案する。これに関しての「複雑さ」は、使用する異なるビームタイプの数に関係するものとして理解されるべきであり、ビームタイプは、本開示の全体を通して説明されるように、治療エネルギー、散乱箔、及び/又はボーラスなどの選択である。ビームエネルギー、散乱箔、及び/又はボーラスの変更には時間がかかることがあるため、計画の複雑さを低くすることが望ましい場合がある。複雑さ要件は、例えば、治療に使用する異なるビームタイプの数を制限することがある。したがって、本開示は、ビームタイプの総数に対する制約として定式化される複雑さ要件に焦点をあてている。より洗練された手段を用いることもできる。例えば、異なるビームタイプに、異なる時間コストと考慮される時間コストの総和を割り当てることもできる。個々の光子エネルギー及び/又は電子エネルギーの数に対する制約と組み合わせて、ビームエネルギーの総数に対する制約などの複数の複雑さ要件を並行して用いることもできる。選択されたエネルギーの最大数に対する制約は、最適化の定式化の目的関数のペナルティ項に緩和することができる。明示的な制約の代わりに選択されるエネルギーの数を最小にすることは、計画の品質とエネルギーの数との間のトレードオフを制御するのに有用であり得る。例えば、最初に、すべて又は実質的にすべての可能なエネルギーを用いる治療計画を作成し、次いで、計画線量分布の大きすぎる変化を防ぐ制約に従って選択されるエネルギーの数を最小にする第2の最適化問題を解くこともできる。光子及び電子制御点の最適化と組み合わせた候補ビームタイプのより大きいセットからのビームタイプのサブセットの選択は、混合整数最適化問題につながる可能性がある。
【0075】
本開示は、治療のために選択される1つ以上のビームタイプパラメータに関係した少なくとも1つの複雑さ要件が考慮される、光子治療と電子治療の組み合わせの治療計画の最適化を提案した。ビームタイプパラメータは、例えば、ビームエネルギー、ビームモダリティ、ビーム軌道、単位時間あたりの線量、関心体積までの距離、関心体積上又は関心体積内のビーム位置、MLC、ジョー、ウェッジ、ブロック、散乱箔、補償器、カットアウト、及びボーラスなどのビームモディファイア、並びにマシン特徴のうちの1つ又はいくつかに関係し得る。本開示の全体を通して説明される例の利点は、光子治療と電子治療との組み合わせの光子成分と電子成分が同時に最適化され得ることである。
【0076】
本開示で提示される態様及び実施形態は、がん治療のための光子ビームと電子ビームを組み合わせた放射線治療計画を生成或いは作成するときに、候補ビームタイプのより大きいセットからのビームタイプの適正なサブセットの特定を有利に用いることができるという認識に基づいている。1つの可能な利点は、患者への放射線量をより一層調整できることである。言い換えれば、線量投与の精度(光子対電子)を向上させることが可能となる。加えて又は代替的に、合計放射線量が最小にされ得る又は少なくとも低減され得る。これは、最適化の改善、その結果、がん治療の改善につながる可能性がある。
【0077】
上記の詳細な説明では、限定ではなく解説する目的のために、本開示で説明される種々の態様及び実施形態の十分な理解をもたらすべく具体的な詳細が示されている。場合によっては、本明細書で開示される実施形態の説明を不必要な詳細で不明瞭にしないように、周知のデバイス、コンポーネント、回路、及び方法の詳細な説明は省略されている。本明細書で開示される原理、態様、及び実施形態、並びにその具体例を列挙する本明細書のすべての文は、それらの構造的均等物と機能的均等物の両方を包含することを意図している。加えて、このような均等物は、現在公知の均等物と将来開発される均等物の両方、すなわち、構造に関係なく同じ機能を果たす、開発される任意の要素を含むことが意図される。したがって、例えば、本明細書のブロック図は、説明した実施形態の原理を具体化する例示的な回路又は他の機能ユニットの概念図を表すことができることが理解されるであろう。同様に、流れ図などは、コンピュータ可読媒体で実質的に表され、したがってコンピュータ又はプロセッサが明示的に示されているか否かにかかわらずこのようなコンピュータ又はプロセッサによって実行され得る、種々のプロセスを表すことが理解されるであろう。機能ブロックを含む種々の要素の機能は、回路ハードウェア、及び/又は上記のコンピュータ可読媒体に格納されたコード化された命令の形態でソフトウェアを実行することができるハードウェアなどの、ハードウェアの使用を通じて提供され得る。したがって、このような機能及び例示された機能ブロックは、ハードウェアで実装されるか及び/又はコンピュータで実装されるかのいずれかであり、したがってマシンで実装されると理解されるべきである。ハードウェア実装に関して、機能ブロックは、限定を伴うことなく、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、縮小命令セットプロセッサ、(一つ又は複数の)特定用途向け集積回路[ASIC]及び/又は(一つ又は複数の)フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)を含むがこれらに限定されないハードウェア(例えば、デジタル又はアナログ)回路、及びこのような機能を果たすことができる状態マシン(適切な場合)を含む又は包含し得る。コンピュータ実装に関して、コンピュータは、一般に、1つ以上のプロセッサ又は1つ以上のコントローラを備えると理解される。コンピュータ又はプロセッサ又はコントローラによって提供されるとき、機能は、単一の専用コンピュータ又はプロセッサ又はコントローラによって、単一の共有コンピュータ又はプロセッサ又はコントローラによって、又はその一部が共有又は分散され得る複数の個々のコンピュータ又はプロセッサ又はコントローラによって提供され得る。さらに、「プロセッサ」又は「コントローラ」という用語の使用はまた、上記に列挙した例示的なハードウェアなどの、このような機能を果たす及び/又はソフトウェアを実行することができる他のハードウェアを指すと解釈されてよい。
【0078】
上記の説明及び関連する図面で提示された教示の利益を有する当業者は、説明した実施形態の修正及び他の変形を思いつくであろう。したがって、実施形態は、本開示で説明された特定の例示的な実施形態に限定されず、修正及び他の変形が本開示の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。さらに、本明細書で特定の用語が用いられる場合があるが、それらは一般的な説明の意味でのみ用いられ、限定する目的で用いられない。したがって、当業者は、付属の請求項の範囲内に依然として入る、説明した実施形態への多くの変形を認識するであろう。本明細書で用いられる場合の「備える」又は「含む」という用語は、他の要素又はステップの存在を排除するものではない。さらに、個々の特徴が異なる請求項に含まれる場合があるが、これらは有利に組み合わせることができる可能性があり、異なる請求項の包含は、特徴の組み合わせが実行可能ではない及び/又は有利ではないことを意味しない。加えて、単数形での言及は複数形を除外しない。