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特許7557377三量体ポリペプチド複合体およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】三量体ポリペプチド複合体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240919BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20240919BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240919BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240919BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240919BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240919BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240919BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240919BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240919BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240919BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20240919BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20240919BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240919BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240919BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240919BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K16/30
C07K16/28
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K38/39
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 111
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2020567523
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2019064864
(87)【国際公開番号】W WO2019234187
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】18382401.0
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520469468
【氏名又は名称】レアダルティス、ソシエダッド リミターダ
【氏名又は名称原語表記】LEADARTIS, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】コンプテ グラウ、マルタ
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス バジナ、ルイス
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/049328(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/098005(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/156268(WO,A1)
【文献】M. J. Hinner, et al.,Journal for ImmunoTherapy of Cancer,2015年,Vol.3 (Suppl 2),P187
【文献】S. L. Harwood, et al.,ONCOIMMUNOLOGY,2018年,Vol.7, No.1:e1377874,p.1-14, Supplementary Information:p.1-7
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの単量体ポリペプチドを含む三量体ポリペプチド複合体であって、
各単量体ポリペプチドが、
i.XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXVIII)、XV型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXV)およびそれらの機能的に等価なバリアントからなる群から選択されるホモ三量体化ドメイン、
ii.TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニスト
を含み、
少なくとも1つの単量体ポリペプチドが、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域をさらに含む、
三量体ポリペプチド複合体。
【請求項2】
前記腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域が、前記ホモ三量体化ドメインに対してN末端またはC末端に位置する、請求項1に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項3】
a.前記腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域が、前記ホモ三量体化ドメインに対してN末端に位置する場合、前記TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニストが、前記ホモ三量体化ドメインに対してC末端に位置するか、または
b.前記腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域が、前記ホモ三量体化ドメインに対してC末端に位置する場合、前記TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニストが、前記ホモ三量体化ドメインに対してN末端に位置する、
請求項2に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項4】
前記TNFRファミリー共刺激受容体が、4-1BBである、請求項1~3のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項5】
前記TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニストが、アゴニスト抗体である、請求項1~4のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項6】
前記TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニスト抗体が、scFv、ナノボディ、または抗体ミメティックである、請求項5に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項7】
前記腫瘍関連抗原が、上皮成長因子受容体(EGFR)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項8】
EGFRに特異的に結合可能な領域が、抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項9】
抗EGFR抗体が、scFv、ナノボディ、または抗体ミメティックである、請求項8に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項10】
前記抗EGFR抗体が、EGA1ナノボディである、請求項9に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項11】
前記腫瘍関連抗原が、癌胎児性抗原(CEA)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項12】
CEAに特異的に結合可能な領域が、抗CEA抗体である、請求項1~6、11のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項13】
前記抗CEA抗体が、scFv、ナノボディ、または抗体ミメティックである、請求項12に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項14】
前記TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニスト、前記腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域、および/または前記ホモ三量体化ドメインが、直接連結されてなるか、またはスペーサーを介して連結されてなるかのいずれかである、請求項1~13のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項15】
前記スペーサーが、1~18残基を有するフレキシブルリンカーである、請求項14に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項16】
前記TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニストが、18残基長のリンカーを介して前記ホモ三量体化ドメインと連結されてなる、請求項1~15のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項17】
腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域が、16残基長のリンカーを介してホモ三量体化ドメインと連結されてなる、請求項1~16のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項18】
前記単量体ポリペプチドの少なくとも1つが、前記三量体ポリペプチドの検出および/または精製のために適切なタグをさらに含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項19】
前記単量体ポリペプチドが、三量体ポリペプチドの循環半減期を増加させる部分をさらに含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項20】
前記三量体ポリペプチドの循環半減期を増加させる部分が、アルブミン断片またはアルブミン結合部分である、請求項19に記載の三量体ポリペプチド複合体。
【請求項21】
請求項1~20のいずれかに記載の三量体ポリペプチド複合体の一部を形成する単量体ポリペプチドの少なくとも1つをコードするポリヌクレオチド。
【請求項22】
前記ポリペプチドをコードする配列に対して5’位にあり、かつ当該配列と同じオープンリーディングフレーム内にあるシグナル配列をコードする配列をさらに含む、請求項21に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
前記シグナル配列が、オンコスタチンMのシグナル配列である、請求項22に記載のポリヌクレオチド。
【請求項24】
請求項21~23のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項25】
請求項24に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項26】
請求項1~18のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体を生成するための方法であって、請求項19~21のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを有し、かつ発現する宿主細胞を含む培養物から前記三量体ポリペプチド複合体を単離する工程、および場合により前記三量体ポリペプチド複合体をさらなるプロセシングに付す工程を含む、方法。
【請求項27】
請求項1~20のいずれか一項に記載の三量体ポリペプチド複合体を含む医薬組成物。
【請求項28】
がんの治療のための、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記がんが、前記三量体ポリペプチド複合体中に存在する、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域によって特異的に認識される当該腫瘍関連抗原に対して陽性である、請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記がんが、結腸直腸がん、肺がん、乳がん、膵臓がん、腎臓がん、頭頸部がん、胃がん、食道がん、婦人科がん、前立腺がん、尿路上皮がん、神経がん、および血液がんである、請求項29に記載の医薬組成物。
【請求項31】
婦人科がんが、卵巣がん、子宮頸がんおよび子宮内膜がんからなる群から選択され、神経がんが、多形神経膠芽腫であり、そして血液がんが、急性骨髄性白血病である、請求項30に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん治療学の分野に関し、より具体的には、コラーゲンホモ三量体化ドメインによって形成される三量体ポリペプチド複合体である治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体(mAb)を使用する免疫応答の調節は、がん治療に対する前途有望なアプローチである。CTLA-4およびPD-1/PD-L1などのチェックポイント阻害剤に対して作られるアンタゴニストmAbは、臨床的に承認されており、共刺激受容体を標的にするアゴニストmAbは、臨床試験中である。CD40、OX40および4-1BBなどのTNF受容体スーパーファミリー(TNFRSF)の共刺激受容体は、特に興味深い。これらの中でも、4-1BBは、休止しているネイティブT細胞において構造的に発現されないが、活性化の際に獲得される。これは、処置の可能性のある有害な副作用を制限する。
【0003】
4-1BB(CD137、TNFRSF9)は、唯一の確認されたリガンド[4-1BB-リガンド(4-1BBL)、TNFSF9]を有し、これは、マクロファージ、活性化B細胞および樹状細胞において発現する。そのリガンドまたはアンタゴニスト抗体による4-1BBの会合は、T細胞増殖、サイトカイン産生および細胞溶解性エフェクター機能を促進し、プログラム細胞死からリンパ球を保護する。さらにまた、NK細胞における4-1BBの会合は、サイトカイン放出(IFNγを含む)および抗体依存性細胞傷害(ADCC)を増強する。実際に、4-1BBアゴニストmAbによるマウスの処置は、早くも1997年には、確立された低免疫原性腫瘍の腫瘍縮小を誘導することが見出された。それ以来、多くの蓄積された前臨床データは、単一薬剤および併用療法の両方として、がん免疫療法における4-1BBシグナル伝達の誘導を裏付ける。
【0004】
4-1BBアゴニストmAbの効果は、腫瘍を空間的に制限せず、したがって、末梢毒性は、4-1BB標的化治療のための治療ウィンドウを低減し得る。マウスにおいて、4-1BB mAbは、免疫関連異常、特に、肝臓、脾臓および骨髄の機能に影響を与える、CD8T細胞のポリクローナル活性化および炎症性サイトカインの分泌を引き起こすことが示されている。臨床研究において、抗4-1BB mAb(BMS-663513、ウレルマブ、ヒトIgG4)は、初期フェーズI治験において容認できる副作用を示したが、続くフェーズIIの治験は、2人の死亡者をもたらした、>10%の患者における重度の肝臓毒性を明らかにした。結果として、ウレルマブによる治験は打ち切られた。最近、単剤療法として、およびニボルマブとの併用として、ウレルマブによる用量漸増試験において、データが示された。低減された用量は、肝臓毒性を改善したが、許容される用量でのウレルマブの臨床活性は限定的であった。ウレルマブで処置された患者の総合的な安全性分析は、高トランスアミナーゼ血症とウレルマブの用量の間の強い関連を確認した。ウトミルマブ(ヒトIgG2)は、ウレルマブと比べて優れた安全性プロファイルを有する臨床試験中の別の抗4-1BB mAbであるが、4-1BBアゴニストとして効力が比較的低い。
【0005】
別の戦略は、4-1BBLに代わる、抗4-1BBオリゴヌクレオチドアプタマーの使用である。動物モデルにおいて、前立腺特異的膜抗原(PSMA)アプタマーとコンジュゲートした4-1BBアゴニストアプタマーの全身送達は、IgGに基づく4-1BBアゴニスト抗体と比較して、優れた治療効果をもたらした。リポソームの表面における抗4-1BB F(ab’)2断片およびIL-2のアンカリングが、全身毒性なく、有効な抗腫瘍免疫を誘導することも最近報告されている。
【0006】
現状では、4-1BBアゴニストmAbによる共刺激は、オフ腫瘍毒性によって阻止される別の実行可能な治療アプローチである。このため、腫瘍標的化処置について、重度の副作用なしに、有効な免疫刺激を可能にする新たな戦略を設計する必要がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の創作者らは、4-1BBアゴニストIgGを、二重特異性腫瘍標的化トリマーボディフォーマットに適合させた。この操作された抗体フォーマットは、XV型またはXVIII型コラーゲンに由来する小さなホモ三量体化領域との抗体由来結合ドメインの融合に基づいており、これは、トリマーボディと呼ばれる三量体抗体を生じる。この操作された抗体は、より強力な共刺激インビトロ活性を発揮し、単一特異性の非標的化抗体に関して、インビボで、増強された腫瘍ホーミング/標的化、および抗腫瘍活性を示した。加えて、IgGに基づく抗4-1BBアゴニスト抗体によるナイーブ免疫適格性マウスの処置は、肥大した炎症がある脾臓および肝臓によって評価される重度の毒性、肝臓、脾臓および膵臓における重度の炎症および線維症、ならびに全身の炎症性サイトカイン産生をもたらし、EGFRまたはCEA標的化4-1BBアゴニストトリマーボディによる処置は、これらの免疫関連副作用がなく、したがって、有効な(affective)治療アプローチとしてそれ自身を構成する。
【0008】
したがって、第1の態様において、本発明は、3つの単量体ポリペプチドを含む三量体ポリペプチド複合体であって、
各単量体が、
i.XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXVIII)、XV型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXV)およびそれらの機能的に等価なバリアントからなる群から選択されるホモ三量体化ドメイン、ならびに
ii.TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニスト
を含み、
少なくとも1つの単量体ポリペプチドが、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域をさらに含む、
三量体ポリペプチド複合体に関する。
【0009】
第2の態様において、本発明は、本発明により定義される三量体ポリペプチドの一部を形成する単量体ポリペプチドの少なくとも1つをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0010】
第3の態様において、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0011】
第4の態様において、本発明は、本発明のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0012】
第5の態様において、本発明は、本発明による三量体ポリペプチド複合体を生成するための方法であって、本発明によるポリヌクレオチドを有し、かつ発現する宿主細胞を含む培養物から前記三量体ポリペプチドを単離する工程、および場合により三量体ポリペプチドをさらなるプロセシングに付す工程を含む、方法に関する。
【0013】
第6の態様において、本発明は、本発明による三量体ポリペプチドを含む医薬組成物に関する。
【0014】
第8の態様において、本発明は、がんの処置における使用のための、本発明の三量体ポリペプチド複合体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】抗4-1BB IgGのドメイン構造(A)、ならびに単一特異性トリマーボディ(B)および二重特異性トリマーボディ(C)の遺伝子構造(左)およびドメイン構造(右)を示す模式図。すべての場合において、ID8抗体に由来する可変領域を濃灰色および淡灰色で表し(VおよびVで指定される)、抗EGFR VHH EGa1抗体を淡灰色で表し(VHHで示される)、構造ドメイン(TIE、TIE 18TIEまたは18TIE18)を淡灰色で表し、TIE構造ドメインを包含するリンカー領域も淡灰色で表す。1D8 scFvに基づくN末端トリマーボディ(1D8)遺伝子コンストラクト(B)は、オンコスタチンMに由来するシグナルペプチド(「S」により表される)を含有し、1D8 scFv遺伝子(V-V)は、マウスTIEXVIIIドメインに、直接連結したか、またはフレキシブルリンカーを介して連結した。二重特異性1D8N/CEGa1トリマーボディ(C)において、抗ヒトEGFR VHHは、フレキシブルリンカーを介して1D8N18のC末端に融合される。矢印は転写の方向を示す。His6-mycタグ(TIEドメインに対してC末端に位置するボックスにおいて「T」により表される)およびflag-strepタグ(シグナルペプチドに対してC末端に位置するボックスにおいて「T」により表される)は免疫検出のために付加された。
図2】抗4-1BBトリマーボディの特性評価。(A)バイオレイヤー干渉法によって得られた、1D8抗体についてのセンサーグラム(黒色曲線)およびフィッティング曲線。バイオセンサーをm4-1BBで固定化し、2および4nMの分析物抗体と会合させた。反復バイオセンサー(示さない)は、より高い同様の応答を示し、フィッティング曲線に寄与した。(B)FACSによって測定された、刺激されたマウスCD8aT細胞の細胞表面上の4-1BBへの結合。(C~E)抗4-1BB抗体の共刺激活性。マウスCD8aT細胞を、m4-1BBL、1D8N5、1D8N18または1D8 IgGの存在下、固定化抗CD3 mAbで刺激し、増殖(C)およびIFNγの分泌(D)を48時間後に測定し、細胞生存率(E)を72時間後に測定した。データを、抗CD3 mAbで刺激されたCD8aT細胞から得られた値に対する倍数変化として報告する。ラットIgG2aおよびMFE-23N18を対照として使用した。結果は、少なくとも3つの別々の実験の1つからの平均±SD(n=3)として表す。有意性を、独立Studentのt検定によって測定した;P≦0.05、**P≦0.01。(F)RICS分析を、1D8 IgGまたは1D8N18の添加の際に形成されるクラスターを含有する領域、およびクラスターが存在しない領域(それぞれ、挿入およびズームイン領域iiおよびi)で、生存HEK293m4-1BB-S細胞において行った。目的のRICS分析された領域を示す代表的な最大強度のプロジェクションマップ。ズームイン領域の値は、結合した抗体の拡散係数を示す。カラーのヒートマップは、青みがかったトーンがより低い強度、赤みがかったトーンがより高い強度を示す。(G)挿入図の右側に、統計分析を、5~7回の独立した生細胞実験および細胞あたり3~5個の異なる目的の領域(N-CR、非クラスター化領域;CR、クラスター化領域)から得られた箱ひげ図の形式で表す。
図3】EGFR標的化4-1BBアゴニストトリマーボディの特性評価。(A)1D8N/CEGa1(2および4nM)と固定化m4-1BBの相互作用、および1D8N/CEGa1(0.5および1nM)と固定化hEGFRの相互作用について、バイオレイヤー干渉法を使用して得られた、センサーグラム(黒色曲線)および1:1モデルに対するフィッティングの結果(赤色曲線)。会合および解離を、2時間にわたってそれぞれ測定した。(B)m4-1BBおよびhEGFRの両方への同時の結合は、1D8N/CEGa1について実証されたが、1D8N18については実証されなかった。バイオセンサーを、m4-1BBでコーティングし、その後、4nMの1D8N/CEGa1(黒色曲線)または1D8N18(青色曲線)を添加した。トリマーボディをm4-1BBと1時間会合させた後、バイオセンサーを、次いで、緩衝液のみ、または10nMのhEGFRを含有するウェルに移動させた。(C)FACSによって測定された、刺激されたマウスCD8aT細胞の細胞表面上の抗4-1BB抗体のm4-1BBへの結合。精製マウスCD8aT細胞を、固定化抗CD3 mAb、およびhEGFRまたはBSAで被覆し、1D8N18、1D8N/CEGa1または1D8 IgGの存在下、48時間刺激した。増殖をCell Titer-Glo発光アッセイで測定し(D)、IFNγ分泌をELISAによって決定した(E)。EGFR陰性の3T3細胞またはEGFR陽性の3T3hEGFR細胞を、抗-CD3 mAb、および1D8N18、1D8N/CEGa1または1D8 IgGの存在下、マウスCD8aT細胞と共培養し、IFNγ分泌を48時間後に分析し(F)、細胞生存率を72時間後に分析した(G)。データを、抗CD3 mAbで刺激された細胞から得られた値に対する倍数変化として表す。ラットIgG2aおよびMFE-23N18を陰性対照として使用した。結果は、少なくとも3つの別々の実験の1つからの平均±SD(n=3)として表す。有意性を、独立Studentのt検定によって測定した;P≦0.05、**P≦0.01、***P≦0.001。
図4】EGFR標的化4-1BBアゴニストトリマーボディの薬物動態学的性質および腫瘍イメージング。(A)CD1マウスにおける1D8N18または1D8N/CEGa1(1mg/Kg)の単回i.v.投与後の薬物動態研究。血液試料を異なる時点で収集し、血清をELISAによってトリマーボディ濃度について分析した。データを平均±SD(1時点あたりn=3)として表す。(B)PBS、または100μgのCF647-標識化3H3 IgG、または1D8N/CEGa1のi.v.注射24時間後のA431腫瘍保持ヌードマウスのインビボの蛍光イメージング。(C)腫瘍と正常組織(T/N)比を、すべての画像について計算した。目的の領域を、腫瘍および正常組織に描いて、ステラジアンあたり、平方センチメートルあたり、秒あたりの光子(p/s/cm/sr)として蛍光強度を測定した。有意性を、独立Studentのt検定によって測定した;***P≦0.001。
図5】1D8N/CEGa1トリマーボディで処置されたマウスにおける腫瘍縮小の誘導。BALB/cマウスに、s.c.でCT26hEGFR腫瘍細胞を接種した。(A)マウス(n=6/群)を、3回のi.p.用量(4mg/kg)の、ラットIgG2aアイソタイプ、1D8 IgG、MFE-23N18、1D8N18、1D8N/CEGa1、またはPBSで処置し、腫瘍成長について監視した。各処置群における個々のマウスについての腫瘍直径の成長曲線を表す。結果は、独立して行われた2回の実験の代表である。(B)マウス(n=5/群)を、PBS、3H3 IgGまたは1D8N/CEGa1(B)のいずれかの3回のi.p.用量で処置した。(C)1D8N/CEGa1トリマーボディ処置マウスの生存曲線。長期間の生存体に、完全な腫瘍拒絶後(B)、3H3 IgGまたは1D8N/CEGa1トリマーボディのi.p.注射の50日後に、CT26mock細胞(s.c.)で再負荷した。対照群として、腫瘍ナイーブマウスは、すべてのケースにおいて腫瘍を発生した。各処置群における個々のマウスについての腫瘍直径の成長曲線を表す。
図6】1D8N/CEGa1で処置されたマウスは、脾腫、肝腫大または組織炎症を発生しない。(A)PBS、3H3 IgGまたは1D8N/CEGa1で処置されたマウス(n=5/群)からの脾臓および肝臓の重量を示す。(B)PBS、3H3 IgGおよび1D8N/CEGa1で処置されたマウスの脾臓、肝臓、膵臓および肺からの代表的な組織スライドのヘマトキシリンおよびエオシン染色。倍率は、40倍(脾臓および肝臓)および200倍(乾燥、膵臓および肺)である。スケールバーを示す。(C)PBS(n=3)、3H3 IgG(n=5)または1D8N/CEGa1(n=4)で処置されたマウスの肝臓における単核細胞浸潤表面の定量化。(D)処置されたマウスからの血清を、処置の0、7および21日目に末梢血から収集し、INFγ、TNFαおよびIL-6のレベルを、ルミネックスアッセイ(1時点あたりn=3)によって測定した。すべての統計値を平均±SDとして表す。有意性を、独立Studentのt検定によって測定した;P≦0.05、**P≦0.01、***P≦0.001。
図7】(A)トランスフェクトされたHEK-293細胞から条件培地において分泌された1D8N18、1D8N5および1D8N0トリマーボディの存在を、ウエスタンブロット分析によって実証した。分子質量マーカーの泳動を示す(kDa)。(B)分泌された1D8N18、1D8N5、1D8N0およびMFE-23N18トリマーボディの機能性を、プラスチック固定化m4-1BBおよびヒトCEAに対するELISAによって実証した。
図8】(A)精製された1D8N18、1D8N5および1D8N0、ならびに1D8 IgGの還元SDS-PAGE。(B)m4-1BB-陰性のHEK293細胞およびm4-1BB-陽性のHEK293m4-1BB細胞におけるFACSによる1D8N18、1D8N5および1D8N0の機能的特性評価。1D8 IgGおよびMFE-23N18を対照として使用した。y軸は、細胞の数を示し、x軸は、対数尺度で表された蛍光の強度を表す。3つの独立した実験からの1つの代表的な実験を示す。(C)1D8 IgGは、活性化T細胞への1D8N5および1D8N18の結合を打ち負かす。CD3T細胞は、ゲート開閉し、CD137(4-1BB)への1D8N5、1D8N18および1D8 IgGの結合をFACSによって決定した。1D8 IgGとのプレインキュベーションによる1D8N5および1D8N18結合の妨害を示す。抗CD8 mAbによるT細胞染色も行って、CD4 T細胞およびCD8 T細胞の間を区別した。
図9】(A)還元および非還元条件の両方における精製組換えマウス4-1BBLのクーマシー染色SDS-PAGE。(B)FACSによるm4-1BBLの機能的特性評価。1D8N18を対照として使用した。y軸は、細胞の数を示し、x軸は、対数尺度で表された蛍光の強度を表す。3つの独立した実験からの1つの代表的な実験を示す。(C)固定化m4-1BBへの1D8N18トリマーボディの結合を遮断するm4-1BBLの機能的能力を、固定濃度のm4-1BBLおよび連続希釈の1D8N18との競合ELISAにおいて測定した。示されたデータを、全部で3つの実験からの1つの代表的な実験の平均±SDとして表す。
図10】CF488A標識化抗体の特性評価。(A)還元条件におけるCF488A標識化1D8 IgG、1D8N18およびm4-1BBLのクーマシー染色SDS-PAGE。(B)HEK293m4-1BB細胞におけるFACSによるCF488A標識化1D8 IgG、1D8N18およびm4-1BBLの機能的特性評価。y軸は、細胞の数を示し、x軸は、対数尺度で表された蛍光の強度を表す。3つの独立した実験からの1つの代表的な実験を示す。
図11】m4-1BBを発現するHEK-293細胞のFACS分析。元のHEK293m4-1BB細胞(選別前)の発現プロファイルを青線で示し、均一レベルの4-1BB (HEK293m4-1BB-S)を発現する選別されたHEK293細胞を黒線で示す。PEコンジュゲート化アイソタイプ対照抗体とともにインキュベートされた細胞を、灰色で塗りつぶされたヒストグラムとして示す。y軸は、細胞の数を示し、x軸は、対数尺度で表された蛍光の強度を表す。3つの独立した実験からの1つの代表的な実験を示す。
図12】細胞膜における受容体の拡散係数は、1D8N18トリマーボディ結合によるクラスター形成において、非常に低い。RICS分析は、100ng/mlの組換えm4-1BBL(A)、1D8 IgG(B)または1D8N18(C)のいずれかの添加の後、HEK-293m4-1BB-S細胞の細胞膜での分子移動度を示す。左から右へ:微分干渉コントラスト画像(DIC);調査された細胞膜領域の蛍光強度画像;2つの白色の四角で強調表示された領域を示す(iおよびii;i領域は、領域iiよりも少ないクラスター形成を示すか、クラスター形成を示さない)、全く同じ領域の平均強度の投影マップ;目的のiおよびiiのズームアウト領域;2D自己相関関数マップ、およびフィッティングから得られたそれぞれの拡散係数;得られたフィッティングの3D相関のフィット表面プロット。分析は、150を超えるフレームで行った(約5分、フレームあたり2秒)。基準の目的のために、ピクセルサイズは、80.4nmであり、フルフレーム画像は256×256ピクセルであり、ズームイン領域は64×64ピクセルである。
図13】1D8N18トリマーボディの構造的特性評価。(A)SEC-MALS。黒線はUV吸光度に相当し(左軸)、赤線は測定されたモル質量に相当する(右軸)。左から右へ、ピークは、六量体(総強度の16%)、未知のマイナー不純物(3%)および三量体(81%)に相当する。(B)セミ分取SECによる、1D8N18六量体および三量体の分離のSDS-PAGE分析。MWは分子量マーカーであり、IpTはカラムに注入された物質であり、数字はクロマトグラムの画分に相当する。(C)Bにおいて分析された1D8N18のSECクロマトグラムの画分14のSEC-MALS分析。左軸はUV吸光度に相当し、右軸は測定されたモル質量に相当する。三量体に相当するピークは、総強度の97%を占める。
図14】1D8N/CEGa1トリマーボディの構造的特性評価。(A)精製された1D8N18および1D8N/CEGa1の還元SDS-PAGE。(B)クロマトグラフィーピークの中央で測定された示された分子質量を有する1D8N/CEGa1のSEC-MALS分析。左軸はUV吸光度に相当し、右軸は測定されたモル質量に相当する。左から右へ、ピークは、六量体(総強度の16%)および三量体(84%)に相当する。(C)セミ分取SECによる、1D8N/CEGa1六量体および三量体の分離のSDS-PAGE分析。MWは分子量マーカーであり、IpTはカラムに注入された物質であり、数字はクロマトグラムの画分に相当する。(D)Bにおいて分析された1D8N/CEGa1のSECクロマトグラムの画分12のSEC-MALS分析。左軸はUV吸光度に相当し、右軸は測定されたモル質量に相当する。三量体に相当するピークは、総強度の97%を占める。円二色性スペクトル(E)、および218nmでの円二色性(dicroism)楕円率の変化によって測定された1D8N/CEGa1の(不可逆的)熱変性(F)。
図15】FACSによる1D8N/CEGa1トリマーボディの機能的特性評価。1D8 IgGおよびセツキシマブを対照として使用した。y軸は、細胞の相対数を示し、x軸は、対数尺度で表された蛍光の強度を表す。3つの独立した実験からの1つの代表的な実験を示す。
図16】EGFR媒介シグナル伝達に対する1D8N/CEGa1トリマーボディの効果。(A)A431細胞増殖の阻害。細胞を、示された用量の1D8N/CEGa1、1D8 IgG、セツキシマブ(陽性対照)またはリツキシマブ(陰性対照)で処置した。生存細胞を処置の72時間後に三反復で測定し、未処置対照に対してプロットした。結果を平均±SD(n=3)として表す。有意性を、独立Studentのt検定によって測定した;P≦0.05、**P≦0.01、***P≦0.001(緑色のアスタリスク、1D8N/CEGa1とリツキシマブの比較;赤色のアスタリスク、セツキシマブとリツキシマブの比較)。(B)EGFRリン酸化の阻害。細胞を、EGFまたはビヒクルによる5分間の刺激の4時間前に、50nMの各抗体とともにプレインキュベートした。EGFRのリン酸化状態をウエスタンブロットによって評価した。
図17】精製された1D8N18および1D8N/CEGa1トリマーボディの血清安定性。プラスチック固定されたm4-1BB(A)またはhEGFR(B)に対するELISAを、ヒト血清中における37℃での異なる時間のインキュベーションの後に行った。
図18】腫瘍局在化研究のための1D8N/CEGa1トリマーボディ標識化。(A)CF647標識化1D8N/CEGa1および3H3 IgGの還元条件におけるクーマシー染色されたSDS-PAGEゲル。(B)HEK293m4-1BBおよびA341細胞におけるFACSによるCF647標識化1D8N/CEGa1および3H3 IgGの機能的特性評価。y軸は、細胞の数を示し、x軸は、対数尺度で表された蛍光の強度を表す。3つの独立した実験からの1つの代表的な実験を示す。
図19】1D8N/CEGa1トリマーボディのインビボ有効性研究のための腫瘍モデルの検証。(A)CT26 EGFR発現細胞(CT26hEGFR)および空のベクターレトロウイルスで感染させたCT26(CT26mock)の表面への1D8N/CEGa1トリマーボディ結合のFACS分析。1D8 IgGおよびセツキシマブを対照として使用した。y軸は、細胞の数を示し、x軸は、対数尺度で表された蛍光の強度を表す。3つの独立した実験からの1つの代表的な実験を示す。(B)Cell Titer-Gloアッセイによる、CT26mock細胞に対するCT26hEGFRのインビトロ細胞増殖の比較分析。データは、3つの独立した実験の平均±SDを表し、初期値に対する倍数変化として示す。(C)30日まで監視された、CT26hEGFRに対するCT26mockのインビボ腫瘍成長比較。腫瘍体積(cm)を、1つの代表的な実験の平均±SD(n=5)として表す(D)。CT26hEGFR腫瘍を30日後に抽出し、機械的に解離させ、単一細胞懸濁液を、FACSによりEGFR発現について分析した。1頭の代表動物からの結果を示す(n=5)。(E)1D8N/CEGa1トリマーボディはCT26hEGFR増殖の阻害剤ではない。CT26hEGFR細胞を、等モル濃度の1D8N/CEGa1、セツキシマブおよびリツキシマブの存在下でインキュベートし、増殖に対するそれらの効果を、対照と比較したパーセンテージとして示す。データは平均±SD(n=5)を表す。
図20】3H3 IgGまたは1D8N/CEGa1トリマーボディの全身注射後の持続性の全身免疫媒介応答。長期間の生存体に、完全な腫瘍拒絶後、1D8N/CEGa1トリマーボディおよび3H3 IgGのi.p.注射の50日後に、1.5×10個のCT26mock細胞(s.c.)で再負荷した。対照群として、腫瘍ナイーブマウスは、すべてのケースにおいて腫瘍を発生した。各処置群における個々のマウスについての腫瘍直径の成長曲線を表す。
図21】コラーゲン線維形成に対する1D8N/CEGa1トリマーボディの効果。PBS、3H3 IgGまたは1D8N/CEGa1で処置されたマウスの肝臓および膵臓からの代表的な組織スライドのコラーゲン線維のシリウスレッド染色。倍率は、40倍、および200倍(肝臓)、ならびに100倍(膵臓)である。スケールバーを示す。
図22】コラーゲン線維形成に対する1D8N/CEGa1トリマーボディの効果。生理食塩水、3H3 IgGまたは1D8N/CEGa1で処置されたマウスの肝臓および膵臓からの代表的な組織スライドのマッソントリクローム染色。倍率は、40倍および100倍である。スケールバーを示す。
図23】二重特異性1D8N/CCEA.1トリマーボディ、ならびに単一特異性の1D8N18トリマーボディおよびCEA.1N17トリマーボディの遺伝子構造(左)およびドメイン構造(右)を示す模式図。1D8抗体に由来する可変領域(V-V)を、それぞれ、暗灰色および淡灰色で表し、抗CEA VHH CEA.1を淡灰色で表し(VHHで示される)、TIEXVIIIドメインを淡灰色で表し、それを包含するリンカー領域も灰色で表す(TIE1718TIEおよび17TIEで示される)。すべてのトリマーボディは、オンコスタチンM(Sで指定される白色ボックス)に由来するシグナルペプチド、およびHis6-mycタグ(Tで指定される暗灰色ボックス)を含有する。矢印は転写の方向を示す。
図24】分泌された1D8N/CCEA.1トリマーボディの特性評価。(A)非トランスフェクト(untx)またはトランスフェクトされたHEK-293細胞から条件培地において分泌されたトリマーボディの存在を、ウエスタンブロット分析によって実証した。分子質量マーカーの泳動距離を示す(kDa)。ブロットを抗c-myc mAbで展開し、続いて、IRDye800コンジュゲート化ヤギ抗マウスIgGとのインキュベーションを行った。分泌されたトリマーボディの機能性を、プラスチック固定化hCEAおよびm4-1BBに対するELISAによって実証した(B)。hCEAおよびm4-1BBへの同時結合を、hCEAの直接固定化、続いてトランスフェクトされたHEK293細胞からの100μlのニート上清、およびm4-1BBの添加によるデュアルELISAによって評価した(C)。一過性でトランスフェクトされたHEK293細胞からの100μlのニート上清を使用する、HEK293細胞およびHEK293m4-1BB細胞におけるフローサイトメトリー(D)。抗MHCクラスI mAbを対照として使用した。
図25】精製された1D8N/CCEA.1トリマーボディの構造的特性評価。(A)1D8N/CCEA.1の還元SDS-PAGE。試料を、SECカラムに注入し(I、0.3g/Lストックの575μL)、12.4mLで溶出させた(E;中心の300μL画分に存在する全タンパク質をロードする前に沈殿させた)。灰色の垂線は、レーンが異なるゲルに属することを示す。(B)クロマトグラフィーピークの中央で測定された示された分子質量を有する、SEC-MALSによる精製された1D8N/CCEA.1トリマーボディのオリゴマー分析。(C)1D8N/CCEA.1の円二色性スペクトル(平均残基楕円率)、および(D)218nmでの楕円率の変化によって測定された熱変性。
図26】精製された1D8N/CCEA.1トリマーボディの機能的特性評価。4または2nMでの固定化m4-1BBおよび1D8N/CCEA.1の間の相互作用からのバイオレイヤー干渉法(BLI)由来センサーグラム。実験応答を黒色でトレースし、フィッティング曲線は灰色である(A)。溶液中でm4-1BBおよびhCEAでコーティングされたバイオセンサーに対する1D8N/CCEA.1の二重特異性を実証するBLIセンサーブラム(BおよびC)。1D8N/CCEA.1、または1D8N18(矢印で示す試料)、または動態緩衝液のみ(矢印で示す試料)のいずれかとの会合後、バイオセンサーを、50nMのCEA(黒色および赤色)、または動態緩衝液のみ(青色および緑色)に移した。1D8N/CCEA.1は両方の抗原に結合するが、1D8N18はm4-1BBにのみ結合し、hCEAは、トリマーボディの非存在下で、m4-1BBでコーティングされたバイオセンサーと相互作用しなかった。
図27】1D8N/CCEA.1トリマーボディの機能的特性評価。精製された1D8N18または1D8N/CCEA.1トリマーボディとのインキュベーション後のHEK293細胞(A)およびHEK293m4-1BB細胞(B)のプラスチック固定化BSAまたはCEAへの接着。HEK293細胞およびHEK293m4-1BB細胞のプラスチック固定化ラミニン111(Lm111)への接着を対照として使用した(C)。データを、BSAに対する接着の倍数変化としてプロットする。抗4-1BB抗体の共刺激活性(DおよびE)。マウスCD8a+T細胞を、1D8 IgG、1D8N18または1D8N/CCEA.1の存在下、固定化抗CD3 mAbおよびhCEAまたはBSAで被覆し、増殖(D)およびIFN-γ分泌(E)を48時間後に決定した。すべての結果は、3つの独立した実験の1つの代表である。データは平均±SD(n=3)である、**P≦0.01、スチューデントのt検定。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、抗腫瘍免疫応答を刺激する三量体ポリペプチド複合体を開発した。
【0017】
三量体ポリペプチド複合体(TPC)
第1の態様において、本発明は、3つの単量体ポリペプチドを含む三量体ポリペプチド複合体であって、
各単量体が、
i.XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXVIII)、XV型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXV)およびそれらの機能的に等価なバリアントからなる群から選択されるホモ三量体化ドメイン、ならびに
ii.TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニスト
を含み、
少なくとも1つの単量体ポリペプチドが、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域をさらに含む、
三量体ポリペプチド複合体に関する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「三量体ポリペプチド複合体」または「TPC」という用語は、非共有結合的に結合した3つの単量体ポリペプチドの複合体を指す。各単量体ポリペプチドは、互いに、等しいか、または異なっていてもよい。好ましい実施形態において、TPCは、複合体の3つの単量体またはサブユニットが同一であることを意味するホモ三量体である。別の好ましい実施形態において、TPCは、複合体の3つの単量体またはサブユニットの少なくとも1つが、他の2つと異なることを意味するヘテロ三量体である。より好ましい実施形態において、TPCはホモ三量体である。
【0019】
ホモ三量体化ドメイン
本明細書で使用される場合、「ホモ三量体化ドメイン」という用語は、単量体の間の非共有結合的三量体化に関与する領域を指す。好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメインは、XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXVIII)、XV型コラーゲンホモ三量体化ドメイン(TIEXV)およびそれらの機能的に等価なバリアントからなる群から選択される。
【0020】
本明細書に開示されるように、XVIII型コラーゲンまたはXV型コラーゲンの単量体は、三量体化性が、天然コラーゲン分子の三量体化性と比べて維持される限り、互いに、等しいか、または異なっていてもよい。特定の実施形態において、単量体の少なくとも1つは、他の2つと異なる。好ましい実施形態において、3つの単量体は、互いに同じであり、好ましくは、XVIII型コラーゲンまたはXV型コラーゲンの3つの単量体は、互いに同じである。
【0021】
1つの実施形態において、XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメインは、配列番号1からなるか、または配列番号1を含む。別の実施形態において、XV型コラーゲンホモ三量体化ドメインは、配列番号2からなるか、または配列番号2を含む。別の実施形態において、XVIII型コラーゲンホモ三量体化ドメインは、配列番号12からなるか、または配列番号12を含む。
【0022】
本明細書で使用される「それらの機能的に等価なバリアント」は、天然に存在するXVIII型コラーゲンもしくはXV型コラーゲンのTIEXVIIIおよび/またはTIEXVの機能的に等価なバリアントを包含することを意図し、このバリアントは、任意の十分な程度に、天然のXVIII型コラーゲン分子またはXV型コラーゲン分子の三量体化性と比べて三量体化性に有害な影響を与えることなく、アミノ酸配列において修飾されている。前記修飾としては、他のアミノ酸に対する1つ以上のアミノ酸の保存的(または非保存的)置換、1つ以上のアミノ酸の挿入および/または欠失を含み、ただし、天然のXVIII型コラーゲンタンパク質またはXV型コラーゲンタンパク質の三量体化性は、実質的に維持され、すなわち、バリアントは、生理学的条件で同じ配列を有する他のペプチドと三量体を形成する能力(ability)(能力(capacity))を維持する。
【0023】
好ましくは、、TIEXVIIIおよび/またはTIEXVのバリアントは、(i)1つ以上のアミノ酸残基が保存的または非保存的アミノ酸残基(好ましくは、保存的アミノ酸残基)によって置換され、かつこのような置換アミノ酸は、遺伝コードによってコードされてもよく、コードされなくてもよい、ポリペプチド、(ii)1つ以上の修飾アミノ酸残基、例えば、置換基の結合によって修飾された残基が存在するポリペプチド、(iii)類似のmRNAの代替プロセシングから生じるポリペプチド、ならびに/または(iv)ポリペプチド断片である。断片は、元の配列のタンパク質分解性切断(多部位タンパク質分解を含む)により作成されるポリペプチドを含む。バリアントは、翻訳後に修飾されてもよく、または化学的に修飾されてもよい。このようなバリアントは、当業者に明らかであるはずである。
【0024】
当業者は、ヌクレオチド配列の同一性の値を、本発明のポリペプチドをコードする2つのヌクレオチド配列の対応する配列同一性を決定するために、コドン縮重、保存的アミノ酸置換およびリーディングフレームのポジショニングを考慮することによって、適切に調節することができることを認識する。
【0025】
本発明の文脈において、「保存的アミノ酸変化」および「保存的アミノ酸置換」は、本発明において同意語として使用される。「保存的アミノ酸置換」は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指し、タンパク質の機能を変えないサイレント変化をもたらす、類似の側鎖を有する別のアミノ酸による天然アミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸の置換を意味する。天然アミノ酸配列内のアミノ酸についての保存的置換は、天然に存在するアミノ酸が属する群の他のメンバーから選択することができる。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンが挙げられ;脂肪族-ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸の群としては、セリンおよびトレオニンが挙げられ;アミド含有側鎖を有するアミノ酸の群としては、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられ;芳香族側鎖を有するアミノ酸の群としては、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンが挙げられ;塩基性側鎖を有するアミノ酸の群としては、リジン、アルギニンおよびヒスチジンが挙げられ;硫黄含有側鎖を有するアミノ酸の群としては、システインおよびメチオニンが挙げられる。本発明のいくつかの実施形態において、好ましい保存的アミノ酸置換は、バリン-ロイシン、バリン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、アスパラギン酸-グルタミン酸、およびアスパラギン-グルタミンである。したがって、本発明は、TIEXVIIIおよび/またはTIEXVの機能的に等価なバリアントを指し、これは、1つ以上の保存的アミノ酸置換の結果として与えられる配列とともに、1つ以上のアミノ酸が異なるアミノ酸配列を有する。置換が、非修飾配列の機能と比べてその機能を変えない修飾ポリペプチドにおけるサイレント変化をもたらすように、ポリペプチド配列中の1つ以上のアミノ酸を、類似の電荷および極性を有する少なくとも1つの他のアミノ酸で置換することができることは、当技術分野において周知である。本発明は、前記のさらに提供されたポリペプチド配列が、TIEXVIIIおよび/またはTIEXVと同一または類似または同等の機能を有する限り、TIEXVIIIおよび/またはTIEXVによって与えられる配列と比べて、保存的置換もしくは非保存的置換の結果のいずれかとして、および/または配列の挿入もしくは欠失の結果のいずれかとして、1つ以上のアミノ酸が異なる任意のポリペプチド配列を指す。
【0026】
「コドン縮重」とは、コードされるポリペプチドのアミノ酸配列に影響を与えることなく、ヌクレオチド配列の変動を可能にする遺伝コードにおける相違を意味する。当業者は、所与のアミノ酸残基を特定するヌクレオチドコドンを使用する、特定の宿主細胞によって示されるコドンバイアスについて良く承知している。したがって、宿主細胞における遺伝子の異所性発現のために、そのコドン使用の頻度が、コドン使用表に記載の宿主細胞のコドン使用の頻度に近くなるような方法で、遺伝子を設計または合成することが望ましい。
【0027】
2つ以上のアミノ酸またはヌクレオチド配列の文脈における「同一性」、「同一」または「同一性パーセント」という用語は、配列同一性の部分として任意の保存的アミノ酸置換を考慮せずに、比較し、最大対応のために整列(必要により、ギャップを導入する)させた場合に、同じであるか、または同じであるアミノ酸またはヌクレオチド残基の特定のパーセンテージを有する、2つ以上の配列または部分配列を指す。同一性パーセントは、配列比較ソフトウェアもしくはアルゴリズムを使用するか、または目視検査によって測定することができる。アミノ酸またはヌクレオチド配列の整列を得るために使用することができるさまざまなアルゴリズムおよびソフトウェアは、当技術分野において公知である。
【0028】
配列同一性のパーセンテージは、比較ウィンドウにわたって2つの最適に整列された配列を比較することによって決定してもよい。整列された配列は、ポリヌクレオチド配列またはポリペプチド配列であり得る。2つの配列の最適な整列のために、比較ウィンドウ中のポリヌクレオチドまたはアミノ酸配列の部分は、参照配列(挿入または欠失を含まない)と比較して、挿入または欠失(すなわち、ギャップ)を含んでいてもよい。配列同一性のパーセンテージは、同一のヌクレオチド残基または同一のアミノ酸残基が、一致した位置の数を与える両方の比較配列中に出現する位置の数を決定し、次いで、一致した位置の数を、比較ウィンドウ中の位置の総数によって割り、結果に100をかけることによって計算して、配列同一性のパーセンテージが得られる。2つのポリペプチド配列または2つのポリヌクレオチド配列の間の配列同一性は、例えば、対比較のためのデフォルトパラメーターのセット(アミノ酸配列比較用:ギャップ作出ペナルティ=8、ギャップ伸長ペナルティ=2;ヌクレオチド配列比較用:ギャップ作出ペナルティ=50;ギャップ伸長ペナルティ=3)を使用し、NeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48:443-453,1970)の方法に基づくGenetics Computer Group,Inc.製のWISCONSIN PACKAGEバージョン10.0-UNIXにおけるギャッププログラムを使用することによって、あるいはBLOSUM62行列(Henikoff and Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:10915-10919,1992)および対比較のためのデフォルトパラメーターのセット(ギャップ作出コスト=11、ギャップ伸長コスト=1)を使用する、BLAST 2.2.1パッケージソフトウェア(Altschulら、Nucleic Acids Res.25:3389-3402)におけるTBLASTNプログラムを使用することによって、決定することができる。
【0029】
ポリペプチドの間の配列同一性のパーセンテージおよびそれらの対応する機能は、例えば、BLAST、FASTAおよびSmith-Watermanを含む、例えば、クエリ配列をタンパク質データベースと比較することが可能な検索アルゴリズムに基づくさまざまな相同性を使用して、決定し得る。BLASTXおよびBLASTPアルゴリズムを使用して、タンパク質の機能情報を提供し得る。数値は、機能割り当ての信頼性を評価するために調べられる。有用な測定値としては、「E値」(「hit_p」としても示される)、「同一性パーセント」、「クエリ適用範囲パーセント」および「ヒット適用範囲パーセント」が挙げられる。BLASTにおいて、E値または期待値は、データベース検索で偶然に生じると予想される、生の整列スコアSと同等またはそれよりも良好なスコアを有する異なる整列の数を表す。そのため、E値が低くなると、一致の重要性が高くなる。データベースのサイズが、E値計算における要素であるので、GenBankなどの公開データベースに対してBLAST検索を行うことによって得られるE値は、一般に、任意の所与のクエリ/エントリーの一致について経時的に増加する。したがって、ポリペプチドの機能予測の信頼性についての設定基準において、「高い」BLASTXの一致は、1E-30未満のトップBLASTXヒットのE値を有すると考えられ;中程度のBLASTXは、1E-30~1E-8のE値を有すると考えられ;低いBLASTXは、1E-8より高いE値を有すると考えられる。同一性パーセントは、BLASTアルゴリズムによって整列された配列の部分の長さに沿って存在する、同一で一致したアミノ酸残基のパーセンテージを指す。ポリペプチドの機能予測の信頼性についての設定基準において、「高い」BLASTXの一致は、少なくとも70%のトップBLASTXヒットについての同一性パーセントを有すると考えられ;中程度の同一性パーセントの値は、35~70%と考えられ;低い同一性パーセントは、35%未満と考えられる。タンパク質機能の割り当てにおいて特に興味深いのは、E値、同一性パーセント、クエリ適用範囲、およびヒット適用範囲の組み合わせの使用である。クエリ適用範囲は、BLAST整列において表されるクエリ配列のパーセントを指すが、ヒット適用範囲は、BLAST整列において表されるデータベースエントリーのパーセントを指す。本発明に機能的に適用されるポリペプチドを定義する目的のために、ポリペプチドの機能は、配列番号1、配列番号2または配列番号12などのタンパク質相同体の機能から推測され、ここで、本発明のポリペプチドは、(1)hit_p<1e-30、もしくは同一性%>35%、ならびにクエリ適用範囲>50%およびヒット適用範囲>50%をもたらすか、または(2)hit_p<1e-8、ならびにクエリ適用範囲>70%およびヒット適用範囲>70%をもたらすかのいずれ一方である。
【0030】
TIEXVIIIの機能的に等価なバリアントはまた、配列番号1または配列番号12の配列と、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0031】
TIEXVの機能的に等価なバリアントはまた、配列番号2の配列と、少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0032】
三量体を形成する機能的に等価なバリアントの能力は、当業者に公知の従来に方法によって決定することができる。例えば、単純な説明のために、三量体を形成する機能的に等価なバリアントの能力は、標準的なクロマトグラフィー技法を使用することによって決定することができる。したがって、評価されるバリアントは、適切な三量体化条件に置かれ、複合体は、最終的に形成される複合体(三量体)が変わらないような非変性条件下で標準的なクロマトグラフィーアッセイに付される。バリアントが適切に三量体化されると、複合体の分子サイズは、バリアントの単一分子の分子サイズよりも三倍重くなるだろう。複合体の分子サイズは、分析遠心分離、質量分析、サイズ排除クロマトグラフィー、沈降速度などのような標準的な方法を使用することによって明らかにすることができる。
【0033】
TIEXVIIIおよび/またはTIEXVは、任意の対象、好ましくは、マウス、ラット、サル、ヒトなどのような哺乳動物に由来し得る。好ましい実施形態において、TIEXVIIIは、ヒトに由来する。別の好ましい実施形態において、TIEXVは、ヒトに由来する。別の好ましい実施形態において、TIEXVIIIは、マウスXVIII型コラーゲンに由来する。別の好ましい実施形態において、TIEXVは、マウスXV型コラーゲンに由来する。より好ましい実施形態において、TIEXVIIIは、マウスXVIII型コラーゲンの小ホモ三量体化ドメインである。
【0034】
TIEXVIIIおよび/またはTIEXVは、他の三量体ポリペプチド複合体(TPC)の中で、機能的に活性な単一特異性および二重特異性の三価N末端TPC、三価C末端TPC、単一特異性および二重特異性の三価N/C末端TPC;ならびに単一特異性および二重特異性の六量体単鎖N/C末端TPCを生成させるために使用することができる。加えて、これは、リガンド結合ドメインとして単一ドメイン(VHH)抗体、または成長因子(例えば、VEGF)を有する、機能的に活性な単一特異性C末端TPCを生成させるために使用することができる。したがって、特異性および価数の異なる組み合わせを有する、単一特異性または多重特異性(例えば、二重特異性、三重特異性、四重特異性など)の多価(例えば、三価、四価、五価または六価)組換え分子を容易に作製することができる。特定の実施形態において、TIEXVIIIおよび/またはTIEXVは、単一特異性TPCを生成させるために使用される。好ましい実施形態において、TIEXVIIIおよび/またはTIEXVは、単一特異性またな二重特異性TPCを生成させるために使用される。
【0035】
TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニスト
本明細書で使用される場合、「TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニスト」という用語は、得られるTNFRファミリーの共刺激受容体に特異的に結合し、その刺激を誘導することができる任意の化学物質または分子を指す。
【0036】
「特異的結合」または「特異的に結合する」または「結合する」とは、他の抗原に対するよりも高い親和性を有する、TNFRファミリーのメンバー、または特定のTNFRファミリーメンバー内のエピトープに結合する分子を指す。典型的には、アゴニストは、結合についての平衡解離定数(K)が、約1×10-8M以下、例えば、約1×10-9M以下、約1×10-10M以下、約1×10-11M以下、または約1×10-12M以下であり、典型的には、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合についてのそのKよりも少なくとも100倍低いKを有する場合、「特異的に結合する」。Kは、標準的な手順を使用して測定され得る。TNFRファミリーの特定のメンバーまたは特定のTNFRスーパーファミリーメンバー内のエピトープに結合能力があるアゴニストは、しかしながら、他の関連する抗原、例えば、ヒトまたはサル、例えば、マカカ・ファシキュラリス(カニクイザル)、パン・トログロダイテス(チンパンジー)またはカリトリックス・ジャッカス(コモンマーモセット、マーモセット)などの他の種に由来する同じ抗原(ホモログ)に対する交差反応性を有し得る。単一特異性抗体は、1つの抗原または1つのエピトープのみに特異的に結合するが、二重特異性抗体は、2つの区別される抗原または2つの区別されるエピトープに特異的に結合する。
【0037】
本発明のTPCの部分を形成するTNFRファミリー共刺激受容体のアゴニストは、TNFRファミリーメンバーの天然リガンドによって誘導される、抗体が結合するTNFRファミリーメンバーの少なくとも1つの生物活性を誘導する能力を有する。例示的なアンタゴニスト活性としては、インビトロアッセイにおいてNFκB誘導プロモーターの制御下で発現する分泌型胚アルカリホスファターゼ(SEAP)の産生の誘導、樹状細胞(DC)における増加したCD80、CD83、CD86およびHLA-DRの表面発現によって評価されるDC分化の誘導、増加したB細胞増殖またはB細胞における増加したCD23、CD80、CD83、CD86およびHLA-DRの表面発現によって評価されるB細胞の活性化、抗原に以前に曝露された患者から単離されたPBMCによるインターフェロン-ガンマ(IFN-ガンマ)の産生によって評価される抗原特異的T細胞リコール応答の誘導、ならびにCD4またはCD8T細胞増殖の誘導が挙げられる。アゴニスト活性(例えば、アゴニズム)は、架橋依存性であってもよく、または抗体の架橋と独立していてもよい。
【0038】
本明細書で使用される場合、活性化免疫細胞に関する「共刺激する」という用語は、増殖またはエフェクター機能を誘導する、第2の非活性化受容体媒介シグナルまたは共刺激シグナルを提供する共刺激分子の能力を含む。例えば、共刺激シグナルは、例えば、T細胞受容体媒介シグナルを受信したT細胞において、サイトカイン分泌をもたらし得る。
【0039】
「TNFRファミリーメンバー」には、TNFRファミリーに属する受容体を含む。TNFRファミリーメンバーおよびそれらの対応するリガンドの典型的な例を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
この用語は、TNFRの天然に存在するバリアントを含む、表1に示される受容体を含む。TNFRは、典型的には、I型膜貫通タンパク質として発現し、それらの細胞外ドメインに1~6つのシステインリッチドメインを含有する。シグナル伝達は、TNFR三量体として起こる。
【0042】
TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニストは、TPCの、単量体ポリペプチドの1つ、単量体ポリペプチドの2つ、または3つの単量体ポリペプチドに存在し得る。好ましい実施形態において、3つの単量体ポリペプチドは、共刺激受容体のアゴニストを含む。
【0043】
好ましい実施形態において、単量体ポリペプチドの1つは、他の2つと異なる共刺激受容体のアゴニストを含む。別の好ましい実施形態において、3つの単量体ポリペプチドは、同じ共刺激受容体の異なるアゴニストを含む。より好ましい実施形態において、3つの単量体ポリペプチドは、共刺激受容体の同じアゴニストを含む。
【0044】
1つの実施形態において、TNFRファミリーメンバーのアゴニストは、アゴニスト抗体である。
【0045】
「抗体」は、広範な意味を意味し、マウス、ヒト、ヒト化およびキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗体断片、二重特異性また多特異性抗体、二量体、三量体または多量体抗体、一本鎖抗体、シングルドメイン抗体、抗体ミメティック、および必要な特異性の抗原結合部位を含む免疫グロブリン分子の任意の他の修飾構造を含む、免疫グロブリン分子を含む。「全長抗体分子」は、ジスルフィド結合によって相互連結された2つの重鎖(HC)および2つの軽鎖(LC)、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)で構成される。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)および重鎖定常領域(CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインで構成される)で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)および軽鎖定常領域(CL)で構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)が散在した、相補性決定領域(CDR)と称される、超可変性の領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、アミノからカルボキシル末端に以下の順序で配列された、3つのCDRおよび4つのFRセグメントで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4。
【0046】
「相補性決定領域(CDR)」は、抗体中の「抗原結合部位」である。CDRは、種々の用語を使用して定義され得る:(i)VH中に3つ(HCDR1、HCDR2、HCDR3)、およびVL中に3つ(LCDR1、LCDR2、LCDR3)の相補性決定領域(CDR)は、配列の多様性に基づく(Wuら(1970)J Exp Med 132:211-50)(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda,Md.,1991);(ii)VH中に3つ(H1、H2、H3)およびVL中に3つ(L1、L2、L3)の「超可変領域」、「HVR」または「HV」は、ChothiaおよびLesk(Chothiaら(1987)J Mol Biol 196:901-17)によって定義される、構造中で超可変性である抗体可変ドメインの領域を指す。International ImMunoGeneTics(IMGT)データベース(http://www_imgt_org)は、抗原結合部位の標準的な番号付けおよび定義を提供する。CDR、HVおよびIMGTの記述間の対応は、(Lefrancら(2003) Dev Comp Immunol 27:55-77)に記載されている。本明細書で使用される「CDR」、「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LCDR2」および「LCDR3」という用語は、本明細書に明示的に記載されていない限り、上記のKabat、ChothiaまたはIMGTに記載の方法にずれかによって定義されるCDRを含む。
【0047】
免疫グロブリンは、重鎖定常領域のアミノ酸配列に応じて、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの5つの主要なクラスに割り当てることができる。IgAおよびIgGは、さらに、アイソタイプのIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4として下位分類される。任意の脊椎動物種の抗体の軽鎖は、それらの定常領域のアミノ酸配列に基づいて、2つの明確に区別される種類、すなわち、カッパ(κ)およびラムダ(λ)の1つに割り当てることができる。
【0048】
「抗体断片」は、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2および3、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2および3、重鎖可変領域(VH)もしくは軽鎖可変領域(VL)などの重鎖ならびに/または軽鎖抗原結合部位を維持した、免疫グロブリン分子の部分を指す。抗体断片としては、周知のFab、F(ab’)2、FdおよびFv断片、ならびに1つのVHドメインまたは1つのVLドメインからなるシングルドメイン抗体(dAb)が挙げられる。VHおよびVLドメインは、合成リンカーを介して一緒に連結して、VHおよびVLドメインが別々の一本鎖抗体コンストラクトによって発現される場合において、VH/VLドメインが分子内または分子間で対形成して、一本鎖Fv(scFv)またはダイアボディなどの一価の抗原結合部位を形成する、さまざまな種類の一本鎖抗体設計を形成することができる。
【0049】
「モノクローナル抗体」は、抗体重鎖からのC末端リジンの除去などの可能性がある周知の変化、あるいはメチオニン酸化またはアスパラギンもしくはグルタミンアミド分解などのアミノ酸の翻訳後修飾(複数可)に起因する変化を除いて、各重鎖および各軽鎖における単一のアミノ酸組成を有する抗体集団を指す。モノクローナル抗体は、2つ以上の区別される抗原エピトープに特異的に結合する二重特異性または多重特異性モノクローナル抗体を除いて、典型的には、1つの抗原エピトープに特異的に結合する。モノクローナル抗体は、抗体集団内に異種グリコシル化を有していてもよい。モノクローナル抗体は、単一特異性もしくは多重特異性、または一価、二価もしくは多価であり得る。二重特異性抗体は、モノクローナル抗体という用語に含まれる。
【0050】
「ヒト化抗体」は、抗原結合部位が非ヒト種に由来し、可変領域フレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体を指す。ヒト化抗体は、フレームワークが、発現されたヒト免疫グロブリンまたはヒト免疫グロブリン生殖細胞系列の遺伝子配列の正確なコピーでなくてもよいように、フレームワーク中に置換を含んでいてもよい。
【0051】
「ヒト抗体」は、フレームワークおよび抗原結合部位の両方が、ヒト起源の配列に由来し、ヒト対象に投与される場合に最小の免疫応答を有するように最適化された、重鎖および軽鎖可変領域を有する抗体を指す。抗体が、定常領域または定常領域の部分を含有する場合、定常領域もヒト起源の配列に由来する。
【0052】
ヒト抗体は、抗体の可変領域が、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリンまたは再配列免疫グロブリン遺伝子を使用する系から得られる場合、ヒト起源の配列に「由来する」重鎖または軽鎖可変領域を含む。このような例示的な系は、ファージ上に提示されるヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリー、および本明細書に記載のヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するマウスまたはラットなどの遺伝子組換え非ヒト動物である。「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリンまたは再配列免疫グロブリン遺伝子と比較した場合に、抗体およびヒト免疫グロブリン遺伝子座、体細胞変異の導入、あるいはフレームワークもしくは抗原結合部位または両方への置換の意図的な導入を得るために使用される系の間の相違に起因して、異なるアミノ酸を含有していてもよい。典型的には、「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリンまたは再配列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と、アミノ酸配列において、少なくとも約80パーセント、81パーセント、82パーセント、83パーセント、84パーセント、85パーセント、86パーセント、87パーセント、88パーセント、89パーセント、90パーセント、91パーセント、92パーセント、93パーセント、94パーセント、95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセント、99パーセント、または100ーセント同一である。一部の場合において、「ヒト抗体」は、ヒトフレームワーク配列分析に由来するコンセンサスフレームワーク配列、またはファージ上に提示されたヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーに組み込まれる合成HCDR3を含有していてもよい。
【0053】
本発明によれば、共刺激受容体は、TNF受容体(TNFR)ファミリーの受容体である。特定の実施形態において、共刺激受容体は、休止しているネイティブT細胞において構造的に発現されないが、活性化の際に獲得される受容体である。そのような非限定的な例としては、CD40、OX40、CD27、CD30、GITRおよび4-1BBが挙げられる。好ましい実施形態において、各単量体ポリペプチド中の共刺激受容体は、CD40、OX40、CD27、CD30、GITRおよび4-1BBから選択される。より好ましい実施形態において、共刺激受容体は4-1BBである。
【0054】
実施形態において、TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニストは、アゴニスト抗体である。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、少なくとも1つの免疫グロブリン可変領域、例えば、免疫グロブリン可変ドメインを提供するアミノ酸配列、または免疫グロブリン可変ドメインの配列を含むタンパク質を指す。抗体は、例えば、可変重鎖(H)領域(本明細書において、VHと略す)および可変軽鎖(L)領域(本明細書において、VLと略す)を含み得る。典型的には、抗体は、2つの可変重鎖領域および2つの可変軽鎖領域を含む。「抗体」という用語は、抗原結合抗体断片(例えば、一本鎖抗体、ナノボディ(VHH)、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、Fv断片およびdAb断片)、ならびに全抗体、例えば、IgA、IgGタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4)、IgE、IgD、IgM(およびこれらのサブタイプ)のインタクトおよび/または全長免疫グロブリンを包含する。可変重鎖領域および可変軽鎖領域は、「フレームワーク領域」(FR)と称されるより保存的な領域と一緒に混合された、「相補性決定領域」(「CDR」)と称される超可変領域にさらに細分化することができる。FRおよびCDRの伸長は、正確に定義されている(Kabat,E.A.ら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、アメリカ合衆国保健福祉省、NIH Publication第91-3242;およびChothia,C.ら(1987)J.Mol.Biol.196:901-917を参照されたい)。Kabatの定義を本文書において使用する。各可変重鎖領域および可変軽鎖領域は、典型的には、3つのCDRおよび4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシル末端へ以下の順序で構築される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。抗体のVHまたはVL鎖は、さらに、重鎖もしくは軽鎖定常領域のすべてまたは部分を含んで、それにより、それぞれ、重鎖(HC)または軽鎖(LC)免疫グロブリンをそれぞれ形成することができる。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は、ジスルフィド架橋によって結合することができる。重鎖定常領域は、典型的には、3つの定常ドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。軽鎖定常領域は、典型的には、CLドメインを含む。可変重鎖領域および可変軽鎖領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、典型的には、免疫系(例えば、エフェクター細胞)のさまざまな細胞および従来の補体系の第1の成分(C1q)含む、宿主の組織または因子への抗体の結合を媒介する。抗体という用語は、重鎖および軽鎖によって形成される抗体、ならびに一本鎖抗体の両方を包含する。
【0055】
本明細書で使用される場合、「重鎖」または「HC」という用語は、全長重鎖およびその断片の両方を包含する。全長重鎖は、可変領域ドメインのVH、ならびに3つの定常領域ドメインのCH1、CH2およびCH3を含む。VHドメインは、ポリペプチドのアミノ末端側終端にあり、CH3ドメインは、カルボキシル末端側終端にある。
【0056】
本明細書で使用される場合、「軽鎖」という用語は、全長軽鎖およびその断片を包含する。全長軽鎖は、可変領域のドメインVL、および3つの定常領域ドメインのCLを含む。重鎖と同様に、可変軽鎖領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端側終端にある。
【0057】
本明細書で使用される場合、「一本鎖抗体」という用語は、遺伝的に融合した一本鎖分子として形成された、適切なペプチドリンカーの手段によって結合した可変軽鎖領域および可変重鎖領域を含有する遺伝子操作の手段によって改変された分子を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「ナノボディ」という用語は、単一の単量体の可変抗体ドメインからなる抗体断片である、単一ドメイン抗体(sdAb)を指す。全抗体と同様に、これは、特異的抗原に選択的に結合することが可能である。
【0059】
本明細書で使用される場合、「抗体ミメティック」という用語は、抗体のように、抗原に特異的に結合することができるが、必ずしも抗体に構造的に関連しない、任意の化合物を指す。「ミメティック」の化合物は、機能活性に必要な化合物の化学構造が、化合物の構造を模倣する他の化学構造と置き換えられた化合物を含む。ミメティックの例としては、ペプチド主鎖が、1つ以上のベンゾジアゼピン分子で置換されたペプチド化合物(例えば、James,G.L.ら(1993)Science 260:1937-1942を参照されたい)、または鎖の伸長もしくはヘテロ原子の組み込みを含む、天然のペプチド主鎖のアミド結合アイソスターおよび/もしくは修飾の使用によるペプチド二次構造を模倣するオリゴマーが挙げられ;その例としては、アザペプチド、オリゴカルバメート、オリゴ尿素、ベータ-ペプチド、ガンマ-ペプチド、オリゴ(フェニレンエチニレン)、ビニル性スルホノペプチド、ポリ-N-置換グリシン(ペプトイド)などが挙げられる。ペプチドミメティック化合物を調製するための方法は、当技術分野において周知であり、例えば、Quantitative Drug Design,C.A.Ramsden Gd.,17.2章,F.Choplin Pergamon Press(1992)に詳述されている。
【0060】
本明細書で使用される場合、抗体という用語は、異なる分子の性質、トポロジーまたはスキャフォールドに基づく免疫グロブリン以外の結合剤としての「非免疫グロブリン剤」も指す。スキャフォールドという用語は、通常、特定の標的に結合するために、タンパク質バリアントに異なる機能を付与する変化したアミノ酸または配列の挿入を有し得るタンパク質フレームワークを記載することを意味する。このような非免疫グロブリン剤の例は、当技術分野において周知であり、限定されないが、ペプチドアプタマー、核酸アプタマー、アフィボディ分子、アフィリン、アフィマー、アフィチン、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、DARPin、フィノマー、クニッツドメインペプチドモノボディなどが挙げられ、他のタンパク質スキャフォールドは、Binzら,2005(Nat.Biotech.23:1257-68)に概説されており、参照によって本明細書に含まれる。「ペプチドアプタマー」という用語は、タンパク質のスキャフォールドに両端で付着し、特異的な標的分子に結合する、短い可変ペプチドドメインを指す。可変ループの長さは、典型的には、10~20アミノ酸で構成され、スキャフォールドは、良好な溶解度および緻密性を有する任意のタンパク質であってもよい。「核酸アプタマー」または「DNAアプタマー」という用語は、本明細書で使用される場合、特定の分子標的に結合するための繰り返される選択のラウンドによって操作されたDNAの短いストランドを指す。
【0061】
本発明によれば、抗体は、「ヒト化」されて、ヒト個体における免疫原性を低減することができる。ヒト化抗体は、モノクローナル抗体療法の安全性および有効性を改善する。ヒト化の1つの一般的な方法は、任意の適切な動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター)においてモノクローナル抗体を産生させること、およびヒト定常領域を有する定常領域と置き換えることであり、この方法で操作された抗体は「キメラ」と称される。別の一般的な方法は、非ヒトV-FRをヒトV-FRで置き換える「CDRグラフト化」である。CDRグラフト化法において、CDR領域を除くすべての残基は、ヒト起源のものである。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体はヒト化されている。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体はキメラである。ある特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体はCDRグラフト化されている。ヒト化は、抗体の全体的な親和性を低下させ得るか、もしくはわずかに影響し得るか、またはヒト化後のそれらの標的に対する親和性も改善し得る。ある特定の実施形態において、ヒト化は、抗体に対する親和性を10%増加させる。ある特定の実施形態において、ヒト化は、抗体に対する親和性を25%増加させる。ある特定の実施形態において、ヒト化は、抗体に対する親和性を35%増加させる。ある特定の実施形態において、ヒト化は、抗体に対する親和性を50%増加させる。ある特定の実施形態において、ヒト化は、抗体に対する親和性を60%増加させる。ある特定の実施形態において、ヒト化は、抗体に対する親和性を75%増加させる。ある特定の実施形態において、ヒト化は、抗体に対する親和性を100%増加させる。親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して適切に測定される。
【0062】
好ましい実施形態において、共刺激受容体のアゴニスト抗体は、scFv、ナノボディまたは抗体ミメティックである。
【0063】
腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域
本発明によるTPCは、単一特異性であり得、すなわち、それらは、TNFRファミリー共刺激受容体に対する結合部位を含有するが、好ましくは、それらは、腫瘍細胞の表面に存在する腫瘍関連抗原に結合可能な1つ以上の分子も含有し得る。これは、TNFRファミリー共刺激受容体に結合し、これに対するアゴニスト効果を示す領域、および腫瘍関連抗原に結合する領域を含有する二重特異性抗体をもたらす。腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域を含有するTPC内の単量体の数は、1つ、2つ、または3つであり得ることが理解される。好ましい実施形態において、単量体ポリペプチドの1つは、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な分子を含む。別の好ましい実施形態において、単量体ポリペプチドの2つは、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な分子を含む。別の好ましい実施形態において、3つの単量体ポリペプチドは、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な分子を含む。
【0064】
「特異的に結合する」という用語は、TNFRファミリーメンバーのアゴニストに関して、上記で詳細に定義されており、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域に同様に適用される。
【0065】
本明細書で使用される場合、「腫瘍関連抗原」または「TAA」という用語は、患者のがんの状態または種類を適切な免疫療法製品またはレジメンと一致させることができる任意の抗原を意味する。TAAは、がん細胞それ自身によって発現され得るか、またはそれらは、腫瘍関連の新生血管もしくは他の間質などの腫瘍の非がん性成分と関連し得る。腫瘍細胞によって発現され、免疫エフェクター機構の標的として作用することが可能な腫瘍抗原の中には、タンパク質、一般的に、糖タンパク質、ペプチド、炭水化物および糖脂質が含まれる。腫瘍関連抗原の非限定的な例としては、AFP(アルファ(α)-フェトタンパク質)、AIM-2(黒色腫に存在しないインターフェロン-誘導タンパク質2)、ART-4(T細胞によって認識される腺癌抗原4)、BAGE(B抗原)、BCMA、CAMEL(黒色腫上のCTL-認識抗原)、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD123、CEA(癌胎児性抗原)、DAM(分化抗原黒色腫)、Ep-CAM(上皮細胞接着分子)、ErB3、FAP、gpA33、Her2、IGF-1R、MAGE(黒色腫抗原)、MART-1/Melan-A(T細胞によって認識される黒色腫抗原1/黒色腫抗原A)、MC1R(メラノコルチン1受容体)、MET、MUC-1、NY-ESO-1(ニューヨーク食道1)、OA1(眼白子症1型タンパク質)、P-カセリン、PD-L1、PSMA(前立腺特異的膜抗原)、SART-1、-2、-3(扁平上皮抗原拒絶腫瘍1、2、3)、サバイビン-2B(イントロン2-関連生存)、TRP(チロシナーゼ関連タンパク質)が挙げられる。抗原は、腫瘍細胞の表面で発現されてもよく、または抗原は、分泌され得る。好ましい実施形態において、抗原は細胞表面抗原である。可能性がある腫瘍抗原に対する患者における血清抗体の存在は、例えば、SEREX(組換え発現クローニングによる抗原の血清学的特定)を使用して、当業者によって決定することができ、それにより、標的抗原は、血清を腫瘍細胞に由来するcDNAライブラリーと反応させることによって、特定される。
【0066】
1つの実施形態において、TAAはEGFRである。
【0067】
別の実施形態において、TAAはCEAである。
【0068】
1つの実施形態において、TAAに特異的に結合可能な領域は、前記TAAに対するアゴニスト能力を有さない。
【0069】
1つの実施形態において、TAAに特異的に結合可能な領域は、抗体であり、より好ましくは、「一本鎖抗体」、ナノボディまたは「非免疫グロブリン剤」である。この用語は、TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニストの文脈において上記で定義されており、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域に同様に適用可能である。
【0070】
好ましい実施形態において、TAAに特異的に結合可能な分子は、ホモ三量体化ドメインに対してN末端またはC末端に位置する。
【0071】
好ましい実施形態において、TNFRファミリー共刺激受容体に特異的に結合可能な分子が、ホモ三量体化ドメインに対してN末端に位置する場合、その結果として、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な分子は、ホモ三量体化ドメインに対してC末端に位置する。別の好ましい実施形態において、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な分子が、ホモ三量体化ドメインに対してC末端に位置する場合、その結果として、抗原のTNFRファミリー共刺激受容体に特異的に結合可能な分子は、ホモ三量体化ドメインに対してN末端に位置する。
【0072】
好ましい実施形態において、腫瘍関連抗原は上皮成長因子受容体(EGFR)である。本明細書で使用される場合、「上皮成長因子受容体」または「EGFR」という用語は、上皮成長因子ファミリー(EGFファミリー)の細胞外タンパク質リガンドのメンバーに対する受容体である膜貫通タンパク質である。これは、シグナル伝達経路、ならびに細胞の成長および生存を調節し、EGF分子に対する親和性を示す、チロシンキナーゼを指す。受容体のErbBファミリーは、4つの密接に関連するサブタイプ:ErbB1(上皮成長因子受容体[EGFR])、ErbB2(HER2/neu)、ErbB3(HER3)、およびErbB4(HER4)、ならびにそれらのバリアント(例えば、Humphreyら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1990、87:4207-4211)におけるような欠失変異体EGFR)からなる。EGFRに結合することが可能な分子の非限定的な例としては、天然リガンドの上皮成長因子(EGF)、ベータセルリン(BTC)、ヘパリン結合EGF様成長因子(HB-EGF)、アンフィレグリン(AR)、エピレギュリン(EPR)、形質転換成長因子-α(TGF-α)およびエピジェン(EPG)が挙げられる。1つの実施形態において、EGFRに特異的に結合可能な分子は、アゴニスト能力を有さない。好ましい実施形態において、EGFRはヒトである。
【0073】
好ましい実施形態において、抗EGFR抗体は、scFv、ナノボディまたは抗体ミメティックである。
【0074】
別の好ましい実施形態において、抗EGFR抗体は、EGA1ナノボディである。より好ましい実施形態において、Ega1(VHH)ヌクレオチド配列は、配列番号3である。より好ましい実施形態において、Ega1(VHH)アミノ酸配列は、配列番号4である。より好ましい実施形態において、Ega1 CDR配列は、CDR1(配列番号5)、CDR2(配列番号6)およびCDR3(配列番号7)である。
【0075】
別の好ましい実施形態において、腫瘍関連抗原は、癌胎児性抗原(CEA)である。本明細書で使用される場合、CEACAM1、BGP1、BGPI、CD66a、BGPとしても公知の「癌胎児性抗原」または「CEA」という用語は、癌胎児性抗原関連細胞接着分子1を指す。前記タンパク質が分類されたヒト遺伝子は、Ensemblデータベースにおいて、受入番号ENSG00000079385で示される。
【0076】
ホモ三量体化ドメイン、TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニスト、および腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な最適な領域の間のリンカー領域
本発明によるTPCを形成する単量体ポリペプチドの異なるエレメントは、互いに直接連結されていてもよく、またはアミノ酸スペーサーもしくはリンカーを介して接続されていてもよい。
【0077】
1つの実施形態において、TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニスト、およびホモ三量体化体は、直接接続される。1つの実施形態において、ホモ三量体化体、および腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域は、直接接続される。別の実施形態において、TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニストは、ホモ三量体化体に直接接続され、ホモ三量体化ドメインは、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域に直接接続される。
【0078】
別の実施形態において、TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニスト、およびホモ三量体化ドメインは、アミノ酸リンカーまたはスペーサーにより接続される。1つの実施形態において、ホモ三量体化ドメイン、および腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域は、アミノ酸リンカーまたはスペーサーにより接続される。別の実施形態において、TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニストは、ホモ三量体化ドメインにアミノ酸リンカーを介して接続され、ホモ三量体化ドメインは、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域にアミノ酸リンカーによって接続される。
【0079】
本明細書に開示される場合、スペーサーは、適切な長さおよび特徴のペプチドを接続または連結する挿入物である。一般に、前記スペーサーは、前記ドメインの間のヒンジ領域としての機能を果たし、それらが、個々のドメインの三次元形式を維持しながら、互いに独立して動くことを可能にする。この意味において、好ましいスペーサーは、この動きを可能にする構造の延性または柔軟性によって特徴付けられるヒンジ領域であろう。スペーサーの長さは、変えることができ、典型的には、スペーサー中のアミノ酸の数は、100個以下のアミノ酸、好ましくは、50個以下のアミノ酸、より好ましくは、40個以下のアミノ酸、さらにより好ましくは、30個以下のアミノ酸、さらにいっそう好ましくは、20個以下のアミノ酸である。
【0080】
あるいは、適切なスペーサーは、マウスIgGの上部ヒンジ領域の10アミノ酸残基の配列に基づくことができ、これは、コイルドコイルの手段による二量体化抗体の生成のために使用されており(Pack P.およびPluckthun,A.,1992,Biochemistry 31:1579-1584)、本発明によればスペーサーペプチドとして有用であり得る。これはまた、ヒトIgG、または他のヒトIgサブクラス(IgG1、IgG2、IgG4、IgMおよびIgA)の上部ヒンジ領域の対応する配列であり得る。ヒトIgの配列は、人間において免疫原性であると予想されない。本発明において使用することができる追加のスペーサーは、アミノ酸配列GAP、AAAのペプチドを含む。
【0081】
特定の実施形態において、前記スペーサーは、構造柔軟性(すなわち、柔軟な連結ペプチドまたは「フレキシブルリンカー」)を有するペプチドであり、グリシン、セリン、アラニンおよびトレオニンからなる群から選択される2つ以上のアミノ酸を含む。別の特定の実施形態において、スペーサーは、アミノ酸残基、特に、GlyおよびSerの繰り返し、またはアミノ酸残基の任意の他の適切な繰り返しを含有するペプチドである。実際上、任意のフレキシブルリンカーを、本発明によるスペーサーとして使用することができる。
【0082】
好ましい実施形態において、スペーサーは、フレキシブルリンカーである。より好ましい実施形態において、フレキシブルリンカーは、1~18残基の間である。さらにより好ましい実施形態において、フレキシブルリンカーは、5、17または18残基、好ましくは、18残基である。
【0083】
好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメイン、およびTNFRファミリー共刺激受容体のアゴニストは、直接連結される。別の好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメイン、およびTNFRファミリー共刺激受容体のアゴニストは、フレキシブルリンカーを介して連結されてなる。より好ましい実施形態において、フレキシブルリンカーは、少なくとも1残基、少なくとも2残基、少なくとも3残基、少なくとも4残基、少なくとも5残基、少なくとも6残基、少なくとも7残基、少なくとも8残基、少なくとも9残基、少なくとも10残基、少なくとも11残基、少なくとも12残基、少なくとも13残基、少なくとも14残基、少なくとも15残基、少なくとも16残基、少なくとも17残基、または少なくとも18残基である。さらにより好ましい実施形態において、フレキシブルリンカーは、18残基長である。
【0084】
好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメイン、および腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域は、直接連結される。別の好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメイン、および腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域は、フレキシブルリンカーを介して連結されてなる。より好ましい実施形態において、フレキシブルリンカーは、少なくとも1残基、少なくとも2残基、少なくとも3残基、少なくとも4残基、少なくとも5残基、少なくとも6残基、少なくとも7残基、少なくとも8残基、少なくとも9残基、少なくとも10残基、少なくとも11残基、少なくとも12残基、少なくとも13残基、少なくとも14残基、少なくとも15残基、少なくとも16残基、少なくとも17残基、または少なくとも18残基である。さらにより好ましい実施形態において、フレキシブルリンカーは、16残基長である。
【0085】
好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメインは、TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニスト、または腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域のいずれかに直接連結されてなる。別の好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメインは、TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニスト、および腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域に直接連結されてなる。好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメインは、フレキシブルリンカーを介して、TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニスト、または腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域のいずれかに直接連結されてなる。別の好ましい実施形態において、ホモ三量体化ドメインは、フレキシブルリンカーを介して、TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニスト、および腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域に直接連結されてなる。
【0086】
より好ましい実施形態において、フレキシブルリンカーは、少なくとも1残基、少なくとも2残基、少なくとも3残基、少なくとも4残基、少なくとも5残基、少なくとも6残基、少なくとも7残基、少なくとも8残基、少なくとも9残基、少なくとも10残基、少なくとも11残基、少なくとも12残基、少なくとも13残基、少なくとも14残基、少なくとも15残基、少なくとも16残基、少なくとも17残基、または少なくとも18残基である。より好ましい実施形態において、フレキシブルリンカーは、17および/または18残基長である。さらにより好ましい実施形態において、TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニストは、18残基長のリンカーを介して、ホモ三量体化ドメインに連結されてなり、および/または腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な領域は、16残基長のリンカーを介して、ホモ三量体化ドメインに連結されてなる。
【0087】
好ましい実施形態において、18残基長のリンカーは、配列番号10である。別の好ましい実施形態において、16残基長のリンカーは、配列番号11である。
【0088】
好ましい実施形態において、TPCの少なくとも1つの単量体は、三量体ポリペプチドの検出および/または精製のために適切なタグをさらに含む。タグの非限定的な例としては、タグペプチドなどのアフィニティー精製タグが挙げられ;実例として、前記タグの非限定的な例としては、ポリヒスチジン[ポリ(His)]配列、得られた融合タンパク質を免疫アフィニティークロマトグラフィーによって精製するために使用され得る抗体によって認識される能力があるペプチド配列、例えば、熱ウイルスのヘマグルチニンに由来するエピトープ、c-mycタグ、Strepタグなどが挙げられる。別の好ましい実施形態において、TPCの単量体は、三量体ポリペプチドの検出および/または精製のために適切なタグをさらに含む。
【0089】
特定の実施形態において、3つの単量体ポリペプチドのそれぞれ1つは、1つのアフィニティー精製タグを含み、前記タグは、互いに異なり(例えば、アフィニティー精製タグ「a」、「b」および「c」、ここで、タグ「a」は物質Aに結合することによって認識され、タグ「b」は物質Bに結合することによって認識され、タグ「c」は物質Cに結合することによって認識される)、これは、対応する物質(A、BおよびC)に対して親和性を示す本発明のそのようなTPCのみの選択的回収を可能にするように設計された3工程のアフィニティー精製手順に付されされる。前記アフィニティー精製タグは、直列で直接融合することができ、あるいは、切断可能リンカー、すなわち、酵素的または化学的手段によって特異的に切断可能なアミノ酸配列を含有するペプチドセグメント(すなわち、認識/切断部位)を介して単量体ポリペプチドに融合することができる。特定の実施形態において、前記切断可能リンカーは、エンテロキナーゼ、Arg Cエンドプロテアーゼ、Glu Cエンドプロテアーゼ、Lys Cエンドプロテアーゼなどのプロテアーゼ、第Xa因子などによって切断可能なアミノ酸配列を含み、あるいは、別の特定の実施形態において、前記切断可能リンカーは、例えば、メチオニン残基を切断する臭化シアン、または任意の他の適切な化学試薬などの化学試薬によって切断可能なアミノ酸配列を含む。切断可能リンカーは、その後にアフィニティー精製タグの除去が望ましい場合に有用である。
【0090】
好ましい実施形態において、3つの単量体ポリペプチドは、同じアフィニティー精製タグを含む。タグは、単量体の任意の位置、特に、ホモ三量体化ドメインに対してC末端またはN末端に位置し得る。より好ましい実施形態において、タグは、TNFRファミリー共刺激受容体のアゴニストのN末端にある。より好ましい実施形態において、タグは、His6-mycタグまたはstrep-Flagタグである。より好ましい実施形態において、タグは、配列番号8のflapタグ、および/または配列番号9のStrepIIタグである。
【0091】
別の好ましい実施形態において、単量体は、三量体ポリペプチドの循環半減期を増加させる部分をさらに含む。本発明によれば、「半減期」は、身体中の化合物の濃度または量が、所与の濃度または量の半分に低減するために必要な期間である。所与の濃度または量は、半減期が「開始点」として選択された濃度または量から完全に独立しているので、観察された時間の間に観察された最大値、または投与の開始時に存在する濃度または量である必要はない。
【0092】
当業者に公知の治療的投薬について最適ではない半減期プロファイルを増加させるための非限定的な例としては、薬理学的に活性なペプチドまたはタンパク質の、生来長い半減期のタンパク質またはタンパク質ドメインとの遺伝子融合(例えば、Fc融合、トランスフェリン融合、またはアルブミン融合);薬理学的に活性なペプチドまたはタンパク質の、不活性なポリペプチド、例えば、XTEN(組換えPEGまたは「rPEG」としても公知)、ホモアミノ酸ポリマー(HAP;HAP化)、プロリン-アラニン-セリンポリマー(PAS;PAS化)またはエラスチン様ペプチド(ELP;ELP化)との遺伝子融合;薬理学的に活性なペプチドまたはタンパク質の、繰り返し化学部分、例えば、PEG(PEG化)またはヒアルロン酸の化学コンジュゲーションにより、流体力学的半径を増加させること;ポリシアル化により、薬理学的に活性なペプチドまたはタンパク質を融合する負電荷を著しく増加させること;あるいは、ヒトGG βサブユニットなどの天然タンパク質の半減期を延長することが公知の、負に荷電し、高シアル化されたペプチド(例えば、カルボキシ末端ペプチド[CTP;絨毛性ゴナドトロピン(CG)β鎖のもの])を目的の分子と融合すること;ペプチドまたはタンパク質結合ドメインの、生物活性タンパク質、HSA、ヒトIgGまたはトランスフェリンなどの通常長い半減期のタンパク質への付着を介して、非共有結合的に結合させること;ペプチドまたは低分子の、ヒトIgG、Fc部分またはHSAなどの長い半減期のタンパク質への化学的コンジュゲーションが挙げられる。
【0093】
好ましい実施形態において、半減期は、TPC循環半減期を増加させる任意の部分なしの三量体ポリペプチドと比べて、少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも6%、少なくとも7%、少なくとも8%、少なくとも9%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%増加され得る。
【0094】
TPCの循環半減期を増加させる役割を果たす部分は、TPCの単量体の1つ、TPCの単量体の2つ、または3つのTPC単量体に存在し得る。また、TPCの循環半減期を増加させる役割を果たす部分は、単量体のN末端、単量体のC末端、ホモ三量体化ドメインに対してN末端、またはホモ三量体化ドメインに対してC末端に存在し得る。
【0095】
別の好ましい実施形態において、三量体ポリペプチドの循環半減期を増加させる部分は、アルブミン断片またはアルブミン結合部分である。
【0096】
「結合部分」という用語は、異なるエピトープまたは抗原結合ドメインと独立して、抗原またはエピトープに特異的に結合するドメインを指す。結合部分は、ドメイン抗体(dAb)であってもよく、または非免疫グロブリンタンパク質スキャフォールド、例えば、CTLA-4、リポカリン、SpA、アドネクチン、アフィボディ、アビマー、GroEl、トランスフェリン、GroESおよびフィブロネクチンからなる群から選択されるスキャフォールドの誘導体であるドメインであってもよく、これは、天然リガンド以外のリガンドに結合する。好ましい実施形態において、部分は、血清アルブミンに結合する。
【0097】
ポリヌクレオチド、ベクターおよび宿主細胞
第2の態様において、本発明は、本発明による三量体ポリペプチドの一部を形成する単量体ポリペプチドの少なくとも1つをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0098】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド塩基を有する一本鎖または二本鎖ポリマーを指す。特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、リボヌクレオチド塩基を有する。好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド塩基を有する。より好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、本発明による三量体ポリペプチドの一部を形成する単量体ポリペプチドの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つをコードする。
【0099】
好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドは、ポリペプチドをコードする配列に対して5’位にあり、かつ当該配列と同じオープンリーディングフレーム内にあるシグナル配列をコードする配列をさらに含む。本明細書で使用される場合、「シグナル配列」または「シグナルペプチド」という用語は、細胞中で合成されたタンパク質を分泌経路に向かわせる、比較的短い長さ、一般に、5~30アミノ酸残基の間のペプチドを指す。シグナルペプチドは、通常、二次アルファヘリックス構造を採用する一連の疎水性アミノ酸を含有する。加えて、多くのペプチドは、タンパク質がその輸送のための適切なトポロジーを採用するのに寄与し得る、正に荷電した一連のアミノ酸を含む。シグナルペプチドは、そのカルボキシル末端にペプチダーゼによる認識のためのモチーフを有する傾向があり、これは、シグナルペプチドを加水分解して、遊離シグナルペプチドおよび成熟タンパク質の増加を与える能力がある。シグナルペプチドは、目的のタンパク質が適切な位置に達すると、切断され得る。任意のシグナルペプチドを本発明において使用することができる。好ましい実施形態において、シグナル配列は、オンコスタチンMのシグナル配列である。
【0100】
前に記載のすべての用語および実施形態は、本発明のこの態様に同様に適用可能である。
【0101】
第3の態様において、本発明は、本発明によるポリヌクレオチドを含むベクターに関する。
【0102】
本明細書で使用される場合、「ベクター」または「発現ベクター」という用語は、細胞、好ましくは、真核細胞において、少なくとも1つのポリヌクレオチドを発現するために使用される複製DNAコンストラクトを指す。発現ベクターの選択は、宿主の選択に依存する。各種の発現宿主/ベクターの組み合わせを用いることができる。真核宿主のために有用な発現ベクターとしては、例えば、SV40、ウシパピローマウイルス、アデノウイルスおよびサイトメガロウイルスに由来する発現制御配列を含むベクターが挙げられる。細菌宿主のために有用な発現ベクターとしては、pCR 1、pBR322、pMB9およびそれらの誘導体を含む大腸菌に由来するプラスミド、M13およびフィラメント状一本鎖DNAファージなどの幅広い宿主範囲のプラスミドなどの公知の細菌プラスミドが挙げられる。これらのベクターは、形質転換プロトコールの間に外因性DNAが組み込まれたクローンを最初に選択するために使用される選択マーカーを発現するための追加の独立したカセットを含有していてもよい。発現ベクターは、好ましくは、複製開始点を含有する。発現ベクターは、1つ以上の複数のクローニング部位を含有することもできる。
【0103】
発現ベクターはまた、細菌におけるベクター伝播のために必要な、原核生物における複製開始点を含有していてもよい。加えて、発現ベクターは、細菌のための選択遺伝子、例えば、抗生物質、例えば、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコールなどに対する耐性を付与するタンパク質をコードする遺伝子を含有することもできる。発現ベクターは、1つ以上の複数のクローニング部位を含有することもできる。複数のクローニング部位は、1つ以上の固有の制限酵素部位を含むポリヌクレオチド配列である。制限酵素部位の非限定的な例としては、EcoRI、SacI、KpnI、SmaI、XmaI、BamHI、XbaI、HincII、PstI、SphI、HindIII、AvaI、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0104】
本発明のベクターだけでなく、本発明の発現ベクターを調製するために必要なRNAまたはDNAコンストラクトにおいて発現するポリヌクレオチドもしくは複数のポリヌクレオチドは、一般的な実験マニュアル、例えば、「Molecular cloning: a laboratory manual」(Joseph Sambrook、David W. Russel編,2001,第3版,Cold Spring Harbor、ニューヨーク)または「Current protocols in molecular biology」(F.M.Ausubel,R.Brent,R.E.Kingston,D.D.Moore,J.A.Smith,J.G.SeidmanおよびK.Struhl編,第2巻,Greene Publishing Associates and Wiley Interscience,ニューヨーク,N.Y.,2006年9月にアップデート)に含まれる従来の分子生物学の方法の手段によって得ることができる。
【0105】
前に記載のすべての用語および実施形態は、本発明のこの態様に同様に適用可能である。
【0106】
別の態様において、本発明は、前に記載のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0107】
「宿主細胞」という用語は、それが、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫または将来の子孫を指すように使用される。ある特定の改変は、変異または環境的影響のいずれかに起因して後続の世代において生じ得るので、そのような子孫は、実際には、親細胞と同一でなくてもよいが、依然として本明細書で使用される用語の範囲内に含まれる。宿主細胞は、任意の原核細胞(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、酵母、昆虫または植物細胞)であり得、これは、本発明の核酸を適切な発現ベクターに挿入すること、適切な宿主細胞をベクターで形質転換すること、および本発明のTPCを構成する単量体ポリペプチドのポリペプチド部分の発現を可能にする条件下で宿主細胞を培養することを含む、従来の遺伝子工学技法によって調製することができる。本発明の核酸は、誘導プロモーターまたは構成的プロモーターであり得る適切なプロモーターの制御下に置かれ得る。発現系に応じて、ポリペプチドは、宿主細胞の、細胞外相、ペリプラズム、または細胞質から回収され得る。
【0108】
適切なベクター系および宿主細胞は、当業者に利用可能な大量の文献および材料によって証拠付けられるように、当技術分野において周知である。本発明は、ベクターの構築および宿主細胞における本発明の核酸の使用にも関するので、以下に、本発明のこの態様を実施する際のそのような使用および特定の考慮事項に関する一般的な議論を提供する。
【0109】
一般に、原核動物は、本発明の核酸の最初のクローニング、および本発明のベクターの構築のために好ましい。例えば、下記のより具体的な開示で言及される特定の株に加えて、例として、大腸菌K12株294(ATCC番号31446)、大腸菌B、および大腸菌X 1776(ATCC番号31537)などの株に言及し得る。当然ながら、これらの例は、限定するよりもむしろ、説明すること意図する。
【0110】
原核生物は、効率の良い精製およびタンパク質の再フォールディング戦略が利用可能であるので、発現のために利用することもできる。前述の株、ならびに大腸菌W3110(F-、ラムダ-、原栄養株、ATCC番号273325)、バチルス・サブチルスなどの桿菌、またはサルモネラ・ティフィムリウムもしくはセラチア・マルセッセンスなどの他の腸内細菌、およびさまざまなシュードモナス種を使用し得る。
【0111】
一般に、レプリコン、および宿主細胞に適合する種に由来する制御配列を含有するプラスミドベクターは、これらの宿主との関連において使用される。ベクターは、通常、複製部位、および形質転換細胞において表現型の選択を提供可能なマーキング配列を運ぶ。例えば、大腸菌は、典型的には、大腸菌種に由来するプラスミドのpBR322を使用して形質転換される。pBR322プラスミドは、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性についての遺伝子を含有し、これにより、形質転換細胞を特定するための容易な手段を提供する。pBR322プラスミド、または他の微生物プラスミドもしくはファージもまた、発現のために微生物によって使用され得るプロモーターを含有しなければならないか、または含有するように改変されなければならない。
【0112】
組換えDNA構築において最も一般的に使用されるこれらのプロモーターとしては、B-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトースプロモーター系、ならびにトリプトファン(trp)プロモーター系(EP36776)が挙げられる。これらは最も一般的に使用されるが、他の微生物プロモーターが発見および利用されており、それらのヌクレオチド配列に関する詳細は公開されており、当業者であれば、それらをプラスミドベクターと機能的にライゲートすることが可能である。原核生物に由来するある特定の遺伝子は、それら自身のプロモーター配列から大腸菌において効率良く発現することができ、人工的な手段による別のプロモーターの追加についての必要性を排除する。
【0113】
原核生物に加えて、酵母培養物などの真核微生物を使用することもできる。真核微生物の中で、サッカロミセス・セレビシアエ、または一般的なパン酵母が、最も一般的に使用されるが、多くの他の株も一般に利用可能である。サッカロミセスにおける発現のために、例えば、プラスミドYRp7が、一般的に使用される。このプラスミドは、既にtrp1遺伝子を含有しており、これは、トリプトファン中で成長する能力が欠如した酵母の突然変異株、例えば、ATCC番号44076またはPEP4-1(Jones、1977、Genetics、85:23-33)のための選択マーカーを提供する。酵母宿主細胞ゲノムの特徴としてtrp1の損傷の存在は、その結果、トリプトファンの非存在下での成長により形質転換体を検出するための有効な環境を提供する。
【0114】
酵母ベクターにおける適切なプロモーティング配列は、3-ホスホグリセレートキナーゼ、またはエノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルベートデカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-ホスフェートイソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルベートキナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、およびグルコキナーゼなどの他の糖分解酵素のためのプロモーターを含む。適切な発現プラスミドの構築において、これらの遺伝子に関連する終止配列はまた、発現する所望の配列の発現ベクターの3’とライゲートさせて、mRNAのポリアデニル化および終止を提供する。
【0115】
成長条件によって制御される転写の追加の利点を有する他のプロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ-2、イソチトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、および前述のグリセルアルデヒド-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、ならびにマルトースおよびラクトースの利用に関与する酵素のためのプロモーター領域である。酵母と適合するプロモーター、複製開始点および終止配列を含有する任意のプラスミドベクターが適切である。
【0116】
微生物に加えて、多細胞生物に由来する細胞の培養物を宿主として使用することもできる。原則として、任意のそのような細胞培養は、脊椎動物または無脊椎動物の培養物に由来するかにかかわらず、実行可能である。しかしながら、脊椎動物細胞における関心が最も高く、培養(組織培養)における脊椎動物の増殖は、近年、日常的な手順になっている。そのような有用な宿主細胞株の例は、VEROおよびHeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株、ならびにW138、BHK、COS-7、ヒト胚腎臓(HEK)293、およびMDCK細胞株である。加えて、バキュロウイルス-昆虫細胞発現系は、組換えタンパク質および抗体を産生するために広く使用される。
【0117】
このような細胞のための発現ベクターは、通常、(必要により)複製開始点、発現する遺伝子の前方に位置するプロモーターを、任意の必要なリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、および転写終結配列とともに含む。
【0118】
哺乳動物細胞における使用のために、発現ベクターにおける制御機能は、しばしば、ウイルス性材料によって提供され、例えば、一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス(CMV)、および最も頻繁にはシミアンウイルス40(SV40)に由来する。SV40ウイルスの初期および後期のプロモーターは、両方とも、SV40ウイルスの複製開始点も含有する断片としてウイルスから容易に得られるので、特に有用である。HindIII部位からウイルスの複製開始点に位置するBglI部位に向かって伸長したおよそ250bpの配列が含まれるならば、より小さいか、またはより大きいSV40断片を使用することもできる。さらに、そのような制御配列が宿主細胞系に適合するならば、所望の遺伝子配列に通常関連するプロモーターまたは制御配列を利用することも可能であり、しばしば望ましい。
【0119】
複製開始点は、例えば、SV40または他のウイルス(例えば、ポリオーマ、アデノなど)に由来し得る外因性の起源を含むベクターの構築によって提供されてもよく、または宿主細胞の染色体複製機構によって提供されてもよい。ベクターが宿主細胞の染色体に統合される場合、後者は、多くの場合、十分である。
【0120】
本発明のTPCを構築する単量体ポリペプチドの生成の際に、例えば、ポリペプチドに非タンパク質性機能を導入することによって、材料を適切な再フォールディング条件に付すことによって(例えば、国際公開第94/18227号において示唆された一般に適用可能な戦略を使用することによって)、または単量体の望ましくないペプチド部分(例えば、最終製品中で望ましくない発現増強ペプチド断片)を切断することによって、ポリペプチドをさらに処理する必要がある場合がある。
【0121】
上記の議論の観点で、本発明の前記TPC、または本発明のTPCを構築する前記単量体ポリペプチドを組換え的に生成するための方法は、宿主細胞または細胞株において本発明の核酸を有し、および/または複製可能なベクターであるので、本発明の一部でもある。本発明によれば、発現ベクターは、例えば、ウイルス、プラスミド、コスミド、ミニ染色体またはファージであり得る。
【0122】
本発明の別の態様は、本発明の核酸を有し、かつ複製可能な、上記に記載の方法において有用な形質転換細胞(すなわち、本発明の宿主細胞)であり、宿主細胞は、細菌、酵母、もしくは原生動物などの微生物、または真菌、昆虫細胞、植物細胞、もしくは哺乳動物細胞などの多細胞生物に由来する細胞であり得る。細胞はまた、トランスフェクトされていてもよい。
【0123】
本発明のさらに別の態様は、本発明のTPCまたはそのポリペプチド部分を構築する単量体ポリペプチドを産生する安定な細胞株、好ましくは、本発明の核酸を有し、かつ発現する細胞株に関する。特に、哺乳動物細胞株のHEKおよびCHOに由来する細胞が興味深い。
【0124】
前に記載のすべての用語および実施形態は、本発明のこの態様に同様に適用可能である。
【0125】
三量体ポリペプチドを生成するための方法
別の態様において、本発明は、本発明による三量体ポリペプチドを生成するための方法であって、本発明によるポリヌクレオチドを有し、かつ発現する宿主細胞を含む培養物から前記三量体ポリペプチドを単離する工程、および場合により三量体ポリペプチドをさらなるプロセシングに付す工程を含む、方法に関する。
【0126】
本発明のTPCは、例えば、組換えタンパク質産生の技法に基づく、当技術分野において一般的に公知の方法によって調製され得る。そのため、本発明は、本発明のTPCを調製する方法であって、本発明のTPCの少なくとも1つの単量体ポリペプチドをコードする核酸断片を有し、かつ発現する宿主細胞を含む培養物から本発明のTPCを単離する工程、および場合により本発明のTPCをさらなるプロセシングに付す工程を含む、方法にも関する。
【0127】
本発明のTPCがホモ三量体である場合、前記ホモ三量体を組換え的に生成するための方法は、本発明の核酸を適切な発現ベクターに挿入すること、適切な宿主細胞をベクターで形質転換すること、および本発明による単量体ポリペプチドおよびその三量化体の発現を可能にする条件下で宿主細胞を培養することを含む。本発明のTPCがヘテロ三量体である場合、前記ヘテロ三量体は、(i)他の2つの単量体ポリペプチドと異なる1つの単量体ポリペプチドのみであって、この2つの単量体ポリペプチドは互いに同一である、あるいは(ii)3つの異なる単量体ポリペプチドを含み得る。
【0128】
前に記載のすべての用語および実施形態は、本発明のこの態様に同様に適用可能である。
【0129】
医薬組成物
別の態様において、本発明は、本発明による三量体ポリペプチドを含む医薬組成物に関する。
【0130】
本発明によるTPCは、TPCがその目的に対して適切な医薬剤形で対象に投与され、少なくとも1つの薬学的に許容されるビヒクルを含むように、対象へのその投与のために適切なビヒクルを含有する医薬組成物の一部であり得る。したがって、特定の実施形態において、TPCは、有効成分としてのTPCに加えて、少なくとも1つのビヒクル、好ましくは、薬学的に許容されるビヒクルを含む、医薬組成物の一部である。「ビヒクル」という用語は、一般に、有効成分が投与される、任意の希釈剤または賦形剤を含む。好ましくは、前記ビヒクルは、対象へのそれらの投与のための薬学的に許容されるビヒクルであり、すなわち、これは、規制機関、例えば、欧州医薬品庁(EMA)、米国食品医薬品局(FDA)などによって承認されたビヒクル(例えば、賦形剤)であるか、または動物、より特に、人間における使用のために一般に認められた薬局方(例えば、欧州薬局方、米国薬局方など)に含まれている。
【0131】
TPCは、投与のために、任意の適切な媒体に溶解することができる。有効成分が溶解、懸濁され得るか、またはそれらがエマルジョンを形成し得る、媒体の非限定的な実例としては、水、エタノール、水-エタノールまたは水-プロピレングリコール混合物など、ピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などのような、石油由来油、動物油、植物油、または合成油を含む油、アセトン、メチルアルコール、エチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジエチルエステル、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、ジメチルスルホキシド(DMSO)などの有機溶媒が挙げられる。
【0132】
同様に、使用の直前に、経口または非経口投与用の液体形態の調製物に変換されることを意図する医薬組成物の固体形態の調製物が含まれる。この種類の液体形態としては、溶液、懸濁液およびエマルジョンが挙げられる。有効成分の異なる医薬剤形、使用されるビヒクル、およびその製造方法の概説は、例えば、Tratado de Farmacia Galenica,C.Fauli i Trillo,Luzan 5,S.A.de Ediciones,1993およびRemington’s Pharmaceutical Sciences(A.R.Gennaro編)、第20版、Williams & Wilkins PA,USA(2000)において見出すことができる。
【0133】
非限定的な様式において、TPCための投与経路としては、とりわけ、経口、胃腸、経鼻または舌下経路などの非侵襲的な薬理学的投与経路、および非経口経路などの侵襲的な投与経路が挙げられる。特定の実施形態において、TPCは、非経口経路(例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、髄腔内など)により、医薬剤形で投与される。「非経口経路による投与」は、注射による目的の化合物の投与からなる投与経路として理解され、したがって、注射器および針の使用を必要とする。針が到達する組織により、異なる種類の非経口穿刺:筋肉内(化合物は筋肉組織に注射される)、静脈内(化合物は静脈に注射される)、皮下(皮下に注射される)、および皮内(皮膚の層間に注射される)がある。髄腔内経路は、薬物が脊髄の周囲の空間(髄腔内空間)に投与されるように、血液脳関門を十分に透過しない薬物を中枢神経系に投与するために使用される。好ましい実施形態において、投与は、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下または髄腔内投与である。
【0134】
TPCの治療的使用
別の態様において、本発明によるTPCは、がんの処置のために使用される。本明細書で使用される場合、「処置」という用語は、患ったがんに対する感受性を、終わらせる、改善する、または低減する目的を有する任意の種類の治療を指す。したがって、「処置」、「処置する」およびそれらの同等の用語は、薬理学的または生理学的に望ましい効果を得ることを指し、人間を含む哺乳動物におけるがんの任意の処置を包含する。効果は、障害および/またはそれに帰する有害作用の完全または部分的な予防を提供するという点で、予防的であり得る。言い換えれば、「処置」には、(1)疾患を阻害すること、例えば、その進行を止めること、(2)患者がもはや疾患もしくはその症状に苦しむことなく、例えば、失われた、非存在、もしくは欠陥のある機能の回復または修復により、疾患またはその症状の退行を引き起こすように、または効果がないプロセスを刺激するように、障害、または少なくともそれらに関連する症状を妨げること、または終わらせること、あるいは(3)疾患またはそれらに関連する症状を軽減、緩和、または改善することであって、軽減が、独立して、炎症、疼痛、呼吸困難、もしくは運動不能などのパラメーターまたは症状の大きさにおける少なくとも低減を指す広い意味で使用される、を含む。
【0135】
本明細書に開示されるように、「がん」および「腫瘍」という用語は、未調節の細胞成長によって特徴付けられる哺乳動物における生理学的状態に関する。がんの例としては、限定されるものではないが、副腎、骨、脳、乳房、気管支、結腸および/または直腸、胆嚢、消化管、頭頸部、腎臓、喉頭、肝臓、肺、神経組織、膵臓、前立腺、副甲状腺、皮膚、胃、および甲状腺のがんが挙げられる。がんの他の例としては、腺がん、腺腫、基底細胞がん、子宮頸部異形成および上皮内がん、ユーイング肉腫、扁平上皮がん、巨細胞腫、多形神経膠芽腫(glioblastoma multiforma)、毛様細胞腫瘍、腸神経節神経腫、過形成性角膜神経腫瘍、膵島細胞がん、カポジ肉腫、平滑筋腫、白血病、リンパ腫、悪性カルチノイド、悪性黒色腫、悪性高カルシウム血症、マルファン体質腫瘍、髄様がん、転移性皮膚がん、粘膜神経腫、骨髄異形成症候群(myelodisplastic syndrome)、骨髄腫、菌状息肉腫、神経芽細胞腫、骨肉腫、骨原性および他の肉腫、卵巣腫瘍、褐色細胞腫、真性赤血球増加症(polycythermia vera)、原発性脳腫瘍、小細胞肺腫瘍、潰瘍性および乳頭型の両方の扁平上皮がん、セミノーマ、軟部肉腫、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、腎細胞腫瘍または腎細胞がん、細網肉腫(veticulum cell sarcoma)およびウィルムス腫瘍が挙げられる。がんの例としては、星状細胞腫、消化管間質腫瘍(GIST)、神経膠腫または神経膠芽腫、腎細胞がん(RCC)、肝細胞がん(HCC)および膵臓神経内分泌がんも挙げられる。
【0136】
本発明による三量体ポリペプチド複合体は、限定されないが、乳房、心臓、肺、小腸、結腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭部、頸部、卵巣、前立腺、脳、膵臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、精巣および肝臓の腫瘍などの任意のがんまたは腫瘍の処置のために有用である。
【0137】
さまざまな実施形態において、処置される患者のがんは、転移性がん、あるいはファーストライン、セカンドラインもしくはサードライン処置に対して難治性である難治性および/または再発性がんである。別の実施形態において、処置は、ファーストライン、セカンドラインもしくはサードライン処置である。本明細書で使用される場合、「ファーストライン」または「セカンドライン」または「サードライン」という語句は、患者が受ける処置の順序を指す。ファーストライン処置レジメンは、最初に与えられる処置であるが、セカンドラインまたはサードライン処置は、それぞれ、ファーストライン治療後、またはセカンドライン処置後に与えられる。したがって、ファーストライン処置は、疾患または状態に対する最初の処置である。がんを有する患者において、一次処置は、手術、化学療法、放射線療法、またはこれらの治療の組み合わせであり得る。ファーストライン処置はまた、当業者に、一次治療または一次処置と称される。典型的には、患者は、患者がファーストライン治療に対して、陽性の臨床応答を示さなかったか、もしくは亜臨床応答のみを示したか、またはファーストライン処置を停止したので、その後、化学療法レジメンが与えられる。この文脈において、「化学療法」は、古典的な細胞傷害性化学療法だけでなく、分子標的療法および免疫療法も包含するその最も広い意味で使用される。
【0138】
好ましい実施形態において、がんは、三量体ポリペプチド中に存在する、腫瘍関連抗原に特異的に結合可能な分子によって特異的に認識される腫瘍関連抗原に対して陽性である。より好ましい実施形態において、がんは、EGFR陽性である。
【0139】
「陽性」という用語は、TAAを指すために本明細書で使用される場合、腫瘍またはがん中のTAAの「量」もしくは「レベル」が、非陽性腫瘍または正常細胞において観察されるものよりも高いことを示す。発現レベルは、当業者に公知の方法によって、また本明細書に開示の方法によって、測定することができる。「発現のレベル」または「発現レベル」という用語は、一般に、生体試料中のバイオマーカーの量を指す。「発現」は、一般に、情報(例えば、遺伝子がコードする情報および/またはエピジェネティックな情報)が、細胞中に存在し、作動する構造に変換されるプロセスを指す。したがって、本明細書で使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドへの転写、ポリペプチドへの翻訳、またはさらなるポリヌクレオチドおよび/もしくはポリペプチドの修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)を指し得る。転写されたポリペプチド、翻訳されたポリペプチド、またはポリヌクレオチドおよび/もしくはポリペプチド修飾(例えば、ポリペプチドの翻訳後修飾)の断片も、それらが選択的スプライシングまたは分解された転写物によって生じた転写物が起源であるか、または、例えば、タンパク質分解によるポリペプチドの翻訳後プロセシングが起源であるかに関わらず、発現していると見なされるべきである。「発現遺伝子」には、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写され、次いで、ポリペプチドに翻訳されるもの、およびRNAに転写されるが、ポリペプチドに翻訳されないもの(例えば、トランスファーRNAおよびリボソームRNA)も含む。
【0140】
「増加した発現」、「増加した発現レベル」、「増加したレベル」、「上昇した発現」、「上昇した発現レベル」または「上昇したレベル」は、対照、例えば、疾患もしくは障害(例えば、がん)、内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)、または患者の群/集団からの試料中のバイオマーカーの発現レベルの中央値を有さない個体もしくは複数の個体と比べて、個体におけるバイオマーカーの増加した発現または増加したレベルを指すために互換可能に使用される。
【0141】
より好ましい実施形態において、がんは、結腸直腸がん、肺がん、乳がん、膵臓がん、腎臓がん、頭頸部がん、胃がん、食道がん、婦人科がん、前立腺がん、尿路上皮がん、神経がん、および血液がんである。別の好ましい実施形態において、婦人科がんは、卵巣がん、子宮頸がんおよび/または子宮内膜がんであり、神経がんは、多形神経膠芽腫であり、血液がんは、急性骨髄性白血病である。
【0142】
前に記載のすべての用語および実施形態は、本発明のこの態様に同様に適用可能である。
【0143】
本発明は、単なる例示と見なされるべき以下の実施例によって記載し、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0144】
材料および方法
抗体および試薬
使用したモノクローナル抗体(mAbs)は以下を含んでいた。マウスIgG抗c-myc(クローン9E10、Abcam、ケンブリッジ;英国)、マウスIgG抗FLAG(クローンM2、Sigma-Aldrich、セントルイス、MO、米国)、マウスIgG抗His6(クローンBMG-His-1、Roche Life Science、ペンツベルク、ドイツ)、マウスIgG抗Strep(クローンStrepタグII)(IBA Lifesciences、ゲッティンゲン、ドイツ)、ハムスターIgG抗マウスCD3(クローン145-2C11、Immunostep、サラマンカ、スペイン)、ビオチンコンジュゲート化ハムスターIgG抗マウスCD3(クローン145-2C11、Biolegend、サンディエゴ、CA、米国)、ラットIgG2a抗マウス4-1BB(クローン3H3、BioXCell、NH、米国)、ラットIgG2a抗マウス4-1BB(クローン1D8)およびラットIgG2aアイソタイプ対照はM.Jure-Kunkel博士(Bristol-Myers Squibb、Lawrenceville、NJ、米国)から快く提供された、ウサギIgG抗ヒト蛍光体-EGFR(Tyr1068)(クローンD7A5、Cell Signaling Technology Inc.、ライデン、オランダ)、ウサギIgG抗c-myc(クローンA-14、Santa Cruz Biotechnology、ダラス、TX、米国)、ならびにマウスIgG抗β-アクチン(クローン8226、Abcam)。キメラマウス/ヒトIgG抗ヒトEGFRのセツキシマブは、Merck KGaA(ダルムシュタット、ドイツ)から、マウス/ヒトIgG抗ヒトCD20のリツキシマブは、F.Hoffmann-La Roche Ltd.(バーゼル、スイス)から購入した。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)コンジュゲート化ラットIgG2a抗マウスCD8(クローン53-6.7)、アロフィコシアニン(APC)コンジュゲート化ラットIgG抗マウスCD4(クローンGK1.5)は、BD Pharmingen(BD Biosciences、サンノゼ、CA、米国)からであった。使用したフィコエリトリン(PE)コンジュゲート化mAbsは、BD PharmingenからのラットIgG2a抗マウスCD4(クローンRM4-5)、およびBiolegendからのハムスターIgG抗マウスCD137(クローン17B5)であった。使用したポリクローナル抗体は以下を含んでいた:西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート化ヤギ抗マウスIgG(Fc特異的、Sigma-Aldrich)、PEコンジュゲート化ヤギ抗マウスIgG F(ab’)断片(Fc特異的、Jackson Immuno Research、Ely、英国)、PEコンジュゲート化ヤギ抗ヒトIgG F(ab’)断片(H&L)、およびPEコンジュゲート化ヤギ抗ラットIgG F(ab’)断片(H&L)(Abcam)、DyLight800コンジュゲート化ヤギ抗マウスIgG(H&L)(Rockland Immunochemicals、リメリック、PA、米国)、IRDye800コンジュゲート化ロバ抗ウサギIgG(H&L)、およびIRDye700コンジュゲート化ロバ抗マウスIgG(H&L)(LI-COR Biosciences、リンカン、NE、米国)。Alexa 647コンジュゲート化ロバ抗ラットIgG(H+L)、およびロバ抗ウサギIgG(H+L)は、Molecular Probes(Thermo Fisher Scientific、ウォルサム、MA、米国)からであった。組換えマウスTNFSF9(4-1BBL)は、BioLegendからであり、マウス4-1BB:hFcキメラ(m4-1BB)は、R&D Systems(ミネアポリス、MN、米国)からであり、ヒトEGFR:hFcキメラ(hEGFR)は、Abcamからであった。ウシ血清アルブミン(BSA)は、Sigma-Aldrichからであった。
【0145】
細胞および培養条件
HEK293(ヒト胚腎臓上皮細胞、CRL-1573)、NIH/3T3(マウス胚線維芽細胞、CRL-1658)、およびA431(ヒト扁平上皮がん、CRL-1555)細胞は、DMEM完全培地(DCM)と称する、10%の熱失活ウシ胎仔血清(FBS)(Sigma-Aldrich)、2mMのL-グルタミン、100U/mlのペニシリンおよび100μg/mlのストレプトマイシン(Thermo Fisher Scientific)で補充されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Lonza、ウォーカーズビル、MD、米国)中で成長させた。すべての細胞株は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ロックビル、MD、米国)から入手した。m4-1BBを発現するHEK293細胞(HEK239m4-1BB)は、500μg/mlのG418(Thermo Fisher Scientific)で補充されたDCM中で培養した。ヒトEGFRを発現するマウスNIH/3T3細胞(3T3hEGFR)は、A.Villalobo博士(IIBm、CSIC-UAM、マドリード、スペイン)により快く提供された。ヒトEGFRを発現するp-BABE-puro-hEGFRに感染したか(CT26hEGFR)、または空のベクターレトロウイルスに感染した(CT26mock)、マウスCT26細胞(結腸がん細胞、CRL-2638)は、M.Rescigno博士(実験腫瘍学部、欧州腫瘍学研究所、ミラノ、イタリア)により快く提供された。すべての細胞株はDCM中で培養した。細胞株は、Mycoplasma Plus TMプライマーセット(Stratagene、シーダークリーク、TX、米国)を使用するPCRによって、マイコプラズマ混入の非存在について、日常的にスクリーニングした。
【0146】
マウス
C57BL/6、BALB/c、Hsd:ICR(CD-1)およびHsd:athymic Nude-Foxn1 nu雌性マウスは、Harlan Iberica(Envigo、バルセロナ、スペイン)から購入した。動物は、必要な場合、20~22℃の一定温度、相対湿度(45~65%)で、明/暗の一日のサイクル(12時間)の下、無菌条件下で飼育した。触診を、必要な場合、層流フード内で行い、滅菌水および餌を自由に摂取させた。動物のプロトコールは、参加機関のそれぞれの動物実験の倫理委員会によって承認された:Instituto Investigacion Sanitaria Puerta de Hierro-Segovia de Arana(Hospital Universitario Puerta de Hierro Majadahonda、マドリード、スペイン)、Intituto de Investigaciones Biomedicas「Alberto Sols」(IIBm)(CSIC-UAM、マドリード)およびLaboratory Animal Applied Research Platform(Parc Cientific、バルセロナ、スペイン)。手順は、マドリード自治政府環境問題評議会の動物福祉課(PROEX番号66/14、430/15、264/16)によって、およびカタロニア当局の倫理委員会(手順番号9912)によって、さらに承認された。
【0147】
発現ベクターの構築
1D8 scFvをコードするDNA断片を、プライマーSfiI-1D8-FwおよびNotI-1D8-Rvを用いてPCR増幅し、ClaI/BamHI制限酵素部位を合成的に導入した。ClaI/NotI PCR断片を、ClaI/NotIの消化された主鎖pCR3.1-L36-NC1にライゲートして、pCR3.1-1D8-TIE発現ベクターをもたらした。プラスミドspCR3.1-1D8-TIEおよびpCR3.1-1D8-TIEを得るために、直接、または5量体のフレキシブルリンカーによって、マウスTIEXVIIIドメインのN末端に融合された、1D8scFv遺伝子をコードする2つの合成遺伝子を、Geneart AG(レーゲンスブルク、ドイツ)により合成し、PstI/XbaIとして、ベクターpCR3.1-1D8-TIE18にサブクローニングした。二重特異性トリマーボディ発現ベクターを作成するために、プラスミドpCR3.1-EGa1-TIEからの抗EGFR EGa1 VHH遺伝子を含有するBamHI/XbaI DNA断片を、プラスミドpCR3.1-1D8-TIE18のBamHI/XbaIの消化された主鎖にライゲートして、pCR3.1-1D8N18-TIE-C18EGa1-myc/His発現ベクターを得た。N-末端Flag-StrepIIタグを前に記載されたプラスミドに導入するために、pCR3.1-FLAG-StrepII-1D8-TIE18-iRGDからのHindIII/NotI切断DNA断片を、プラスミドpCR3.1-1D8N18-TIE-C18EGa1-myc/HisのHindIII/NotIの消化された主鎖にライゲートして、pCR3.1-FLAG-StrepII-1D8N18C18EGa1-myc/His発現ベクターを得た。C-末端myc/Hisタグ配列を、プライマーLEGA-1およびStop-XbaI-Revの対を用いるPCRによって除去して、最終ベクターのpCR3.1-FLAG-StrepII-1D8N18C18EGa1を作成した。配列を、プライマーFw-CMVおよびRv-BGHを使用して、検証した。
【0148】
プラスミドpCR3.1-1D8N5TIEC18CEA.1を構築するために、ヒトTIEXVIIIドメインのN末端に5量体リンカーによって、CEA特異的CEA.1 VHH遺伝子に18量体リンカーによって、融合された1D8scFv遺伝子のC末端部分をコードする合成遺伝子を、Geneart AG(レーゲンスブルク、ドイツ)により合成し、PstI/XbaIとして、ベクターpCR3.1-1D8N18にサブクローニングした。CEA特異的CEA.1 VHHに基づくN末端トリマーボディCEA.1N17をコードするベクターpCR3.1-CEA.1-TIEN17は前に記載されている。配列を、プライマーFwCMV(5’-CGCAAATGGGCGGTAGGCGTG-3’)(配列番号3)およびRvBGH(5’-TAGAAGGCACAGTCGAGG-3)(配列番号14)を使用して、検証した。
【0149】
組換え抗体の発現および精製
HEK293細胞を、リン酸カルシウム沈殿法によって、適切な発現ベクターでトランスフェクトし、500μg/mLのG418を有するDCM中で選択して、安定な細胞株のHEK293-1D8N0、HEK293-1D8N5、HEK293-1D8N18およびHEK293-1D8N/CEGa1を作成した。トランスフェクトされた細胞の上清を、ELISAおよびウエスタンブロットによって、タンパク質発現について分析した。安定的にトランスフェクトされたHEK293-1D8N0、HEK293-1D8N5およびHEK293-1D8N18細胞からの条件培地を、PBS(pH7.4)に対して透析し、AKTA Prime プラスシステム(GE Healthcare)を使用して、HisTrap HPの1mLのカラム(GE Healthcare、ウプサラ、スウェーデン)にロードした。別法では、HEK293-1D8N/CEGa1細胞からの条件培地を収集し、(Twin-)Strepタグ精製システム(IBA Lifesciences)を使用して精製した。精製抗体を、PBS+150mMのNaCl(pH7.0)に対して4℃で終夜透析し、還元条件下でSDS-PAGEによって分析し、4℃で保管した。精製抗体を、製造者の説明書(Thermo Fisher Scientific)に従って、Pierce’sリムルスアメボサイト溶解物(LAL)発色エンドトキシン定量キットによって、エンドトキシンレベルについて試験した。
【0150】
ウエスタンブロッティング
タンパク質試料を、10~20%のトリス-グリシンゲルにおいて、還元条件下で分離し、ニトロセルロース膜(Thermo Fisher Scientific)上に移し、抗c-mycまたは抗FLAG mAbのいずれかを用いて探索し、続いて、DyLight800コンジュゲート化ヤギ抗マウスIgGとともにインキュベーションした。タンパク質バンドの可視化および定量分析を、Odyssey(登録商標)赤外イメージングシステム(LI-COR Biosciences、リンカン、NE、米国)を用いて行った。
【0151】
ELISA
m4-1BB(3μg/ml)またはhEGFR(5μg/ml)の両方を、Maxisorp ELISAプレート(NUNC Brand Products、ロスキレ、デンマーク)上に、4℃で終夜固定化した。洗浄、および200μgのPBS-5%のBSAによるブロッキングの後、100μlの条件培地、または1μg/mlの精製タンパク質溶液を添加し、室温で1時間インキュベートした。ウェルを、PBS0.05%のTween-20で3回洗浄し、100μlの抗c-myc mAbまたは抗FLAG mAbを、室温での1時間のインキュベーションのために添加した。プレートを上記に記載のようにして洗浄し、100μlのHRPコンジュゲート化ヤギ抗マウスIgGを各ウェルに添加した。その後、プレートを、洗浄し、OPD(Sigma-Aldrich)を使用して展開した。競合ELISAのために、m4-1BB(3μg/ml)を、4℃で終夜固定化した。洗浄およびブロッキングの後、組換えm4-1BBLを、所望の濃度で、ウェルに1時間添加した。その後、精製抗体溶液を、ブロッキング緩衝液に連続希釈し、ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。標準的な洗浄工程の後、抗FLAG mAb溶液を1時間添加した。洗浄の後、HRPコンジュゲート化ヤギ抗マウスIgGを、添加し、OPDを使用して展開した。
【0152】
フローサイトメトリー
m4-1BB(HEK293m4-1BB)またはhEGFR(3T3hEGFRおよびCT26hEGFR)を発現する細胞へのm4-1BBL、1D8N0、1D8N5、1D8N18、および1D8N/CEGa1の結合をフローサイトメトリーによって分析した。簡潔には、2.5×10個の細胞を、精製抗体とともに氷上で1時間インキュベートし、洗浄し、抗His、抗c-mycまたは抗FLAG mAbとともに氷上で30分間インキュベートし、PEコンジュゲート化ヤギF(ab’)抗マウスIgG抗体を用いて検出した。1D8 IgGおよびセツキシマブを、適切な希釈のPEコンジュゲート化ヤギF(ab’)抗マウスIgGおよびPEコンジュゲート化ヤギF(ab’)抗ヒトIgGをそれぞれ使用するFACS研究において、対照として使用した。野生型HEK293細胞、NIH/3T3細胞およびCT26mock細胞を、陰性対照として使用した。試料を、MACSQuant Analyzer 10フローサイトメーター(Miltenyi Biotec GmbH、ベルギッシュグラートバハ、ドイツ)を用いて分析し、データを、FCS Express V3ソフトウェア(De Novo Software、グレンデール、CA、米国)を使用して評価した。マウスCD8aT細胞を、脾臓から単離し、Stem Cell Technologies(グルノーブル、フランス)からのEasySep(商標)マウスCD8aT細胞単離キットを使用して精製した。マウスCD8aT細胞を、5μg/mlのコンカナバリン-A(Sigma-Aldrich)により、48時間活性化した。その後、単一細胞懸濁液を、50μg/mLのヒトγ-グロブリン(Grifols International、バルセロナ、スペイン)とともに10分間プレインキュベートし、10個細胞のアリコートを、異なる表面マーカーに特異的な抗マウスAPCコンジュゲート化抗体、FITCコンジュゲート化抗体およびPEコンジュゲート化抗体の組み合わせとともに20分間インキュベートした。比較研究(1D8 IgG対1D8N5または1D8N18)のために、コンカナバリン-A活性化マウスT細胞(2×10個細胞/条件)をヒトγ-グロブリンを用いて5分間ブロッキングした。次いで、試料を、10μg/mlの1D8 IgGとともに氷上で20分間インキュベートし、その後、PBSで洗浄した一方、他の試料は氷上で未処理のままにした。次いで、細胞を、2μg/mlの1D8 IgG、1D8N18、1D8N5またはラットIgG2aいずれかとともに氷上で20分間インキュベートし、洗浄した。次に、mycタグ化1D8N18または1D8N5とともにインキュベートされた細胞、および1つの未処理対照試料を、ウサギIgG抗c-myc mAbとともに氷上で20分間インキュベートし、その後、洗浄した。最後に、細胞を、FITCコンジュゲート化ラットIgG2a抗マウスCD8 mAbと一緒に、Alexa 647-標識化ロバ抗ラットIgGまたはロバ抗ウサギIgGのいずれかとともに氷上で20分間インキュベートした。試料を、FACSDiva(登録商標)およびCellQuest(登録商標)ソフトウェア(BD Biosciences)を使用して、FACSCanto IIおよびFACSortフローサイトメーター(BD Biosciences)を用いて分析した。高レベルの4-1BBを均質に発現するHEK細胞(HEK293m4-1BB-S)の集団を作成するために、HEK293m4-1BB細胞を、PE抗マウスCD137 nAbで染色し、FACSAria II(BD Bioscience)を使用して選別した。
【0153】
質量分析
2μlのタンパク質試料を、ZipTip(登録商標)C4マイクロカラム(Merck Millipore、ビルリカ、MA、米国)を使用して脱塩し、GroundSteel massive 384標的(Bruker Daltonics、ビルリカ、MA、米国)上の0.5μlのSA(シナピン酸、[70:30]アセトニトリル:トリフルオロ酢酸0.1%中10mg/ml)マトリックスで溶出させた。Autoflex III MALDI-TOF/TOF分光計(Bruker Daltonics)を、線形モードで、以下の設定で使用した:5000-40000Thウィンドウ、線形ポジティブモード、イオン源1:20kV、イオン源2:18.5kV、レンズ:9kV、120n秒のパルスイオン抽出、最大で1000Mrまでの高ゲーティングイオン抑制。質量の較正を、タンパク質1標準較正混合物(Bruker Daltonics)を用いて、外部で実施した。データ取得、ピークのピーキングおよびその後のスペクトル分析を、FlexControl 3.0およびFlexAnalysis 3.0ソフトウェア(Bruker Daltonics)を使用して行った。
【0154】
サイズ排除クロマトグラフィー-マルチアングルレーザー光散乱(SEC-MALS)
静的光散乱実験を、DAWN-HELEOS光散乱検出器、およびOptilab rEX示差屈折率検出器(Wyatt Technology、サンタバーバラ、CA、米国)にインラインで接続されたSuperdex 200 Increase 10/300 GLカラム(GE Healthcare)を使用して、室温で行った。カラムは、8.6mLの排除体積を有し、吸光度(凝集タンパク質なし)は、いずれの注入においても観察されなかった。カラムを、ランニング緩衝液(PBS+150mMのNaCl、0.1μmでろ過)を用いて平衡化し、SEC-MALSシステムを、同じ緩衝液中の1g/LのBSAの試料を用いて較正した。次いで、ランニング緩衝液中1g/Lの2つの抗体1D8N18および1D8N/CEGa1の100μLの試料を、0.5mL/分の流速で、カラムに注入した。データの取得および分析を、ASTRA ソフトウェア(Wyatt Technology)を使用して行った。報告されたモル質量は、クロマトグラフィーピークの中央に相当する。SECによる単量体種の分離後、SEC-MALSシステムにおける2回目の注入を、0.26g/Lで行った。同じまたは同様の条件下での1g/LでのBSA試料における多数の測定値に基づいて、モル質量における実験誤差は、およそ5%であると推定した。
【0155】
円偏光二色性
円偏光二色性測定を、Jasco J-810分光偏光計(JASCO、東京、日本)を用いて行った。スペクトルを、0.2cm光路長の石英キュベットを使用して、PBS中0.2g/Lのタンパク質試料について、25℃で記録した。10~95℃の熱変性曲線を、同じタンパク質試料およびキュベットにおいて、1℃/分の速度で温度を上昇させ、218nmでの楕円率の変化を測定することによって、記録した。
【0156】
小角X線散乱(SAXS)
SAXS実験を、beamline B21のダイヤモンド光源(ジドコット、英国)で行った。タンパク質を、濃縮し、データ収集前に4℃で調製した。3および6mg/mLの濃度の1D8N18および1D8N/CEGa1の40μlの試料を、50mMのTris pH7.5+150mMのNaClで構成されたランニング緩衝液を使用して、インラインのAgilent 1200 HPLCシステムを介して、Shodex Kw-403カラムに、4℃で送った。連続的に溶出する試料を、1ÅのX線波長、および3.9mの試料と検出器(Pilatus 2M)の距離を使用して、10秒の取得ブロック中で300秒間、曝露した。データは、0.032<q<3.695Å-1の運動量移動範囲をカバーした。試料の溶出直前に記録されたフレームを、タンパク質散乱プロファイルから減算した。Scatterソフトウェアパッケージ(www.bioisis.net)を使用して、データ、緩衝液の減算、拡大縮小、統合、および試料の可能性がある放射線障害のチェックを分析した。3mg/mLの1D8N18に対応するデータセットは、凝集に起因して、さらに分析できなかった。R値を、非常に小さい角度のq<1.3/Rgと仮定するギニエ近似を用いて計算した。最大粒子分布Dmax、および距離分布を、GNOMによる散乱パターンから計算し、形状の推定を、DAMMIF/DAMMINを用いて行い、すべてのこれらのプログラムは、ATSASパッケージに含まれていた。インタラクティブで作成されたPDBに基づくモデルを、プログラムRaptorX(22814390)を用いて得たテンプレートに基づいて、2つの抗体について作製した。このモデルの実空間の散乱プロファイルを、プログラムFoXSを用いてコンピューターで計算した。
【0157】
バイオレイヤー干渉法を使用する動態測定
固定化m4-1BB、ならびに分析物の1D8 IgG、1D8N18、1D8N5および1D8N0の間の相互作用のアビディティーを、Octet RED96システム(Fortebio、メンローパーク、CA、米国)で調べた。マウス4-1BBを、AR2Gバイオセンサー(Fortebio)上に、従来のアミン反応性カップリングによって固定化した。固定化を、pH6の10mMの酢酸緩衝液中の10μg/mLのm4-1BBを使用して、20分にわたって、1.8±0.4nmのシグナルまで行った。各抗体の動態実験は、4つの非再生m4-1BBでコーティングされたバイオセンサーを使用し、この2つは、動態緩衝液(PBS+0.1%のBSAおよび0.05%のTween 20)中の4nMの抗体と会合させ、2つは、2nMで会合させた。会合を1時間行い、続いて、分析物を含まない動態緩衝液中で3時間解離させた。取得したセンサーグラムを、Octet Data分析ソフトウェアを使用して、1:1モデルに包括的にフィットさせた。動態実験を、1000rpmで振とうしながら、37℃で行った。固定化hEGFRおよび分析物の1D8N/CEGa1の間の相互作用のアビディティーを同様に調べた。hEGFRを、pH5の10mMの酢酸緩衝液中の3μg/mLのhEGFRを使用して、アミン反応性カップリングによって固定化した。会合および解離を、両方とも、2時間測定した。タンデムでその抗原の両方に結合する1D8N/CEGa1の能力を実証するために、m4-1BBを、先に記載したようにしてAR2Gバイオセンサー上に固定化し、次いで、4nMの1D8N/CEGa1または1D8N18を、それぞれ2つのバイオセンサーと、1時間会合させた。バイオセンサーを、一時的に、動態緩衝液に10分間移動させ、その後、各抗体をロードした1つのバイオセンサーを、10nMのhEGFRに1時間移動させた一方、他のバイオセンサーは、動態緩衝液中のままであった。最後に、すべてのバイオセンサーを、動態緩衝液に1時間移動させた。
【0158】
溶液中のバイオセンサー固定化m4-1BBおよびhCEAに同時に結合する1D8N/CCEA.1の能力を、Octet RED96システム(Fortebio、メンローパーク、CA、米国)において、バイオレイヤー干渉法(BLI)を使用して調べた。AR2Gバイオセンサー(Fortebio)を、s-NHSおよびEDCを使用して活性化し、次いで、pH6の10mMの酢酸ナトリウム中の10μg/mLのm4-1BBを用いて20分間コーティングし、続いて、エタノールアミンでクエンチした。動態緩衝液(0.1%のBSAおよび0.05%のTween20を有するPBS)中での10分の平衡化後、コーティングされたバイオセンサーを、4nMの1D8N18、1D8N/CCEA.1を含有する動態緩衝液中、または動態緩衝液のみ中で、1時間インキュベートした。次いで、バイオセンサーを、動態緩衝液中の50nMのhCEAの溶液、または動態緩衝液に2時間移し、続いて、動態緩衝液中で1時間最終インキュベーションした。生センサーデータをエクスポートし、Savitky-Golayフィルタリングによって整えた。同様に、m4-1BBおよびトリマーボディの間の相互作用の動態を、m4-1BBコーティングバイオセンサーを使用し、動態緩衝液中の2または4nMの1D8N/CCEA.1とともに1時間インキュベートし、次いで、動態緩衝液中での解離を3時間監視することによって調べた。データは、Octet分析ソフトウェアを使用して、1:1結合モデルにフィットさせた。
【0159】
細胞接着アッセイ
96ウェルのマイクロタイタープレート(Corning Costar、Cambridge、MA、米国)を、Engelbreth-Holm-Swarmマウス腫瘍(Sigma-Aldrich)から抽出された(2μg/wウェル)hCEAまたは(1μg/ウェル)ラミニン-111(Lm111)を用いて、4℃で終夜コーティングした。洗浄、および200μgの3%のPBS-DMEMによる37℃で1時間のブロッキングの後、適切な希釈の精製1D8N18または1D8N/CCEA.1を、4℃で1時間添加した。洗浄の後、5×10個のHEK293細胞またはHEK239m4-1BB細胞を、ウェルごとに、無血清培地にロードし、加湿された5%CO雰囲気において、37℃で30分間インキュベートした。洗浄の後、100μlの基質のCellTiter-Glo(Promega、マディソン、WI、米国)をウェルごとに添加し、生物発光を、Tecan Infinite F200プレート読み取り発光光度計(Tecan Group Ltd.、チューリッヒ、スイス)を使用して測定した。結果は、少なくとも3つの別々の実験の1つからの平均±SD(n=3)として表す。データを、BSAに対する接着の倍数変化として報告する。
【0160】
血清安定性
精製1D8N18および1D8N/CEGa1を、ヒト血清中、37℃で少なくとも7日間インキュベートした。0時間での試料の結合活性を、結合活性の減衰パーセンテージに対応する時間を計算するために、100%として設定した。
【0161】
T細胞共刺激アッセイ
ヤギ抗ハムスターIgGを、96ウェルプレート(5μg/ml)に終夜プレコーティングし、RPMI完全培地(RCM)と称する、熱不活性化10%のFBS、2mMのL-グルタミン、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシンおよび50μMの2-2-メルカプトエタノール(Thermo Fisher Scientific)で補充された200μlのRPMI(Lonza)を用いてブロッキングした後、抗マウスCD3 mAb(1μg/ml)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、RCM中の精製マウスCD8aT細胞(2.5×10個/ウェル)、および示された濃度の精製抗体を添加した。対照として、精製マウスCD8aT細胞を単独で、固定化抗CD3 mAbとともに培養した。48時間後、上清を収集し、サイトカイン放出(IFNγ)について、製造者の指示(Diaclone、ブザンソン、フランス)により行ったELISAによってアッセイした。細胞増殖を、CellTiter-Glo発光アッセイ(Promega、マディソン、米国)を使用して、48時間後に評価した。生物発光を、Tecan Infinite F200プレート読み取り発光光度計(Tecan Trading AG、スイス)を使用して測定した。結果は、少なくとも3つの別々の実験の1つからの平均±SDとして表す。データを、抗CD3で刺激された細胞から得られた値に対するx倍の変化の共刺激として報告する。
【0162】
抗原特異的T細胞共刺激アッセイ
精製hEGFRを用いる研究のために、96ウェルプレートを、ヤギ抗ハムスターIgG(5μg/ml)およびhEGFR(5μg/ウェル)を用いて4℃で終夜プレコーティングした。200μlのRCMによるブロッキングの後、抗マウスCD3 mAb(1μg/ml)を添加し、37℃で1時間インキュベートした後、精製マウスCD8aT細胞(2.5×10個/ウェル)および精製共刺激抗体を指示された濃度で添加した。対照として、CD8aT細胞を単独で、共刺激抗体の非存在下で培養した。細胞を用いる共刺激研究のために、野生型NIH/3T3または3T3hEGFR標的細胞を、96ウェルプレートに終夜播種した(2.5×10個/ウェル)。翌日、標的細胞を、指示された濃度の精製抗体とともに氷上で30分間プレインキュベートした。精製マウスCD8aT細胞を、ストレプトアビジン(Sigma-Aldrich)で架橋され、10:1のエフェクター/ターゲット比(E/T)で添加された、ビオチンコンジュゲート化抗マウスCD3 mAb(100ng/ml)(1:5モル比)で活性化した。対照として、マウスCD8aT細胞を単独で、プラスチック固定化抗CD3 mAbとともに培養した。両方のアッセイを、IFNγ分泌および細胞増殖について、前に記載されたようにして、48時間後に分析した。結果は、少なくとも3つの別々の実験の1つからの平均±SDとして表す。
【0163】
ヤギ抗ハムスターIgG(Jackson ImmunoResearch)およびhCEAを、96ウェルプレートに、4℃で終夜プレコーティングした(5μg/ml)。ブロッキングの後、1μg/mlの抗CD3e mAb(クローン145-2C11;Immunostep、サラマンカ、スペイン)を添加し、37℃で1時間インキュベートした。C57BL/6マウスの脾臓由来の精製CD8a+T細胞(CD8a+T細胞単離キット、マウス、Miltenyi Biotec,GmbH)を、6.67nMで精製抗体を有する、完全RPMI+50μMの2-メルカプトエタノールに添加した(2×10個ウェル)。対照として、精製マウスCD8a+T細胞を単独で、固定化抗CD3e mAbとともに培養した。72時間後、細胞増殖を、Tecan Infinite F200プレート読み取り発光光度計を使用して、CellTiter-Glo発光アッセイ(Promega)で評価し、上清を収集し、ELISA(Diaclone、ブザンソン、フランス)によって、IFNγ分泌についてアッセイした。結果は、少なくとも3つの別々の実験の1つからの平均±SD(n=3)として表す。データを、抗CD3eで刺激された細胞から得られた値に対する倍数変化の共刺激として報告する。
【0164】
生存率アッセイ
生存率アッセイのために、精製マウスCD8aT細胞(10個/ウェル)を、上記に記載のようにして、異なる刺激を伴なって、96ウェルプレートで培養した。24、48および72時間で、細胞を収集し、冷PBSで2回洗浄し、次いで、アネキシンV結合緩衝液(Immunostep)に再懸濁させ、FITCコンジュゲート化アネキシンV(Immunostep)および7-アミノアクチノマイシンD(7-AAD)(BD Biosciences)とともに室温で、15分間、暗所でインキュベートした。次いで、試料を、MACSQuant Analyzer 10フローサイトメーターで分析した。データは、少なくとも3つの独立した実験の代表であり、値は、平均±SDとして表す。
【0165】
EGFR媒介細胞増殖の阻害
A431細胞(2×10個/ウェル)を、96ウェルプレートにおいて、DCMに播種した。24時間後、培地を、等モル濃度(0.19~50nM)の精製抗体:セツキシマブ、リツキシマブ、1D8N/CEGa1または1D8 IgGを含有する、1%のFCSで補充されたDMEMによって交換した。次いで、細胞を72時間インキュベートし、生存率を、CellTiter-Glo発光アッセイを使用して評価した。生物発光を、Tecan Infinite F200プレート読み取り発光光度計を使用して測定した。実験を三反復で行った。
【0166】
EGFRシグナル伝達の阻害
A431細胞を、抗体処理の前に、24時間、DCM中で維持し、細胞を、1%のFCSで補充されたDMEM中、終夜欠乏させた。成長因子の刺激の前に、細胞を、等モル濃度(0.1μM)のセツキシマブ、リツキシマブ、1D8N/CEGa1または1D8 IgGの存在下、無血清DMEM中で4時間インキュベートし、続いて、25ng/mLのヒトEGF(Miltenyi Biotec GmbH)とともに5分間インキュベーションした。刺激後、細胞を、氷上で10分間、Laemmli溶解緩衝液(Bio-Rad、ヘラクレス、CA、米国)に溶解し、擦過することにより収集した。試料を、4~12%のトリス-グリシンゲル上で、還元条件下で分離し、iBlotドライブロッティングシステム(Thermo Fisher Scientific)を使用して、ニトロセルロース膜に移した。膜を、ウサギ抗ヒト蛍光体-EGFR(Tyr1068)mAb(クローンD7A5)とともに終夜インキュベートし、続いて、IRDye800コンジュゲート化ロバ抗ウサギ抗体とともにインキュベーションした。同時に、抗β-アクチンマウスmAbを、ローディング対照として添加し、続いて、IRDye700コンジュゲート化ロバ抗マウスIgGを添加した。タンパク質バンドの可視化および定量分析を、Odyssey赤外イメージングシステムを用いて行った。
【0167】
抗体標識化
製造者の推奨に従って(Biotium、フリーモント、CA、米国)、精製1D8 IgG、1D8N18および4-1BBLを、Mix-n-Stain CF488A抗体標識キットを用いて標識し、精製3H3 IgGおよび1D8N/CEGa1を、Mix-n-Stain CF647抗体標識キットを用いて標識した。標識の程度(DOL)を、標識化抗体の吸収スペクトルから決定した(それぞれ、CF488AおよびCF647で標識されたタンパク質の場合において、1.5/1および2.7/1の色素/タンパク質)(Implen NanoPhotometer、ミュンヘン、ドイツ)。CF488AおよびCF647で標識された抗体の機能性を、フローサイトメトリーによって検証し、構造的完全性を、非還元条件下、SDS-PAGEによって分析した。
【0168】
生細胞受容体クラスター形成イメージングおよび分子拡散定量化
HEK293m4-1BB-S細胞を、35mmのポリ-L-リジンのプレコーティングされたディッシュに、50%コンフルエンスで蒔き、終夜培養した後、ディッシュを、600μlのDCMを有する、直径35mmのチャンバー(Ibidi GmbH、マーチンズビル、ドイツ)に組み立て、37℃および5%CO条件下、Leica SP8 3X SMD顕微鏡(Leica Microsystems、ウェッツラー、ドイツ)上にセットした。使用した励起波長は、2~5%の非常に低い出力で、白色光レーザー(NKT Photonics A/S、ビアケレズ、デンマーク)からの488nmであり、検出は、500~550nmであった。CF488A標識化1D8 IgG、1D8N18または4-1BBLを、100ng/mlの最終濃度で細胞に即座に添加し、ラスターイメージング相関分光法(RICS)を行った。顕微鏡の点広がり関数、すなわち、蛍光色素が内外に拡散する焦点体積の特性評価を、記載されているようにして、2μg/mLの可溶性精製EGFP(Biovision、ミルピタス、CA、米国)を用いて行った。RICSについて記録された一連の画像は、80nmのピクセルサイズを有する256×256ピクセルであり、2μ秒のドウェル時間を用いた。RICS分析および拡散係数の定量化を、SIM FCS 4ソフトウェア(G-SOFT Inc.、シャンペーン、IL、米国)を用いて行った。時系列からのすべての時間の追跡を、著しい光退色に起因する可能性がある不自然な結果を回避するために注意深く観察し、これは、そうしなければ拡散係数の定量化に影響を与えるだろう。これらの手段によって、分析にバイアスをかける場合があるトレンド除去アルゴリズムの利用を回避した。RICS分析を、10の移動平均(バックグラウンド減算)を使用して行って、細胞の動きおよび通過する動きの遅い粒子から生じる、可能性のある不自然な結果を廃棄した。得られた2D自己相関マップをフィッティングさせて、3Dで表される拡散表面マップを得た。同じ細胞内の目的の異なる領域(ROI)の分析のために、対応する領域を、64×64ピクセルの正方形の領域を用いて描いた。選択した領域を、受容体のクラスター形成の存在または非存在の場所として定義した。統計学的目的のために、各条件を、最低5つの異なる細胞において研究し、各細胞において、最低3つの異なるROIを分析した。蛍光の明度およびコントラスト、ならびに微分干渉コントラストを、ImageJソフトウェアを用いて最適化した(https://imagej.nih.gov/ij/)。拡散値は、OriginPro(OriginLab、ノーサンプトン、MA、米国)を使用して、箱ひげ図で表した。
【0169】
薬物動態研究
雌性CD-1マウス(n=24/群)は、1D8N18または1D8N/CEGa1(1mg/kg)の単回静脈内(i.v.)用量を受けた。群あたり3頭のマウスからの血液試料を、投与後の異なる時点(5、15、30分および1、3、6、24、48時間)で収集した。血清を、遠心分離(5000rpm、4℃で10分)後に得、-20℃で保管した。血清を、上記に記載のようにして、固定化m4-1BBに対するELISAによって、抗体濃度について分析した。薬物動態パラメーターを、Prismソフトウェア(GraphPad Software、サンディエゴ、CA、米国)を使用して計算した。
【0170】
腫瘍保持マウスにおける分子イメージング
ヒトEGFR発現A431細胞(1×10個)を、6週齢の雌性Hsd:athymicNude-Foxn1nuマウスの背側腔に、105μlのDMEM+42%のマトリゲル(BD Biosciences)中、皮下(s.c.)に移植した。腫瘍成長を、キャリパーを用いて腫瘍の直径を測定することによって、週に2回監視し、腫瘍体積を、式:体積=(D×d2/2)(式中、Dは腫瘍の長軸であり、dは扁長楕円の最短である)により計算した。動物の体重を、アッセイに沿って監視した。腫瘍体積が約0.180cmに達した時に、マウスを、異なる処置群(n=3/群)に無作為に割り当て、100μlのPBSまたは、100μlのPBS中のCF647標識化抗体溶液(1mg/ml)を、尾静脈に注射した。マウスを、麻酔(2.5%のイソフルレン)下、24時間で、IVISスペクトルCTインビボイメージングシステム(Xenogen)(ウォルサム、MA、米国)の下で指示された波長で撮像し、Living Image 3.2ソフトウェア(PerkinElmer、ウォルサム、MA、米国)を使用して分析した。蛍光画像を、腫瘍内の代表的な区域から、および周囲の領域(正常組織)から、3つのROIを特定することによって分析した。腫瘍と正常組織(T/N)比を、特定されたROIの平均値で割ることによって計算した。すべての画像の蛍光強度は、ステラジアンあたり、平方センチメートルあたり、秒あたりの光子(p/s/cm/sr)として報告する。
【0171】
治療研究
CT26hEGFR腫瘍細胞(動物あたり1.5×10個)を、6週齢の雌性BALB/cマウスの背側腔に、100μlのPBS+30%のマトリゲル中、s.c.移植した。腫瘍成長を、週に3回のキャリパー測定によって監視し、腫瘍がおよそ0.4cmの直径に達した時に(通常、7~10日)、マウスを、異なる処置群(n=5または6/群)に無作為に割り当て、PBS、抗4-1BB抗体(1D8 IgG、3H3 IgG、1D8N18、1D8N/CEGa1)または対照抗体(ラットIgG2aアイソタイプのMFE-23N18)を4mg/Kgで、1日おきに3回のi.p.注射で処置した。腫瘍サイズが1.5cmの任意の寸法の直径に達した時、腫瘍が潰瘍化した時、またはマウスの苦痛の任意の兆候があった時に、マウスを安楽死させた。持続性の全身免疫媒介応答を研究するために、生存マウス(n=5)を、3H3IgGまたは1D8N/CEGa1による処置の50日後に、反対側の左脇腹にCT26mock細胞(1.5×10個)で再負荷した。腫瘍成長を、週に3回のキャリパー測定によって監視した。治癒マウスおよびナイーブマウスを、原発腫瘍または再負荷腫瘍のいずれかが任意の寸法で1.5cmの直径に達するか、または潰瘍化した後に、マウスを安楽死させない限り、再接種後さらに85日間追跡した。
【0172】
毒性研究
肝臓毒性の分析のために、3月齢の雌性C57BL/6マウスは、3週間、3H3 IgGまたは1D8N/CEGa1(6mg/kg)のi.p.用量を毎週受けた。マウスを、麻酔し、0、7、14および21日目に出血させた。マウス血清を得るために、血液を、BD microtainer SSTチューブ(BD Biosciences)中でインキュベートし、続いて遠心分離した。血清を、使用まで-20℃で保管した。抗体の最後の用量の1週間後に、マウスを安楽死させ、肝臓、脾臓、肺および膵臓を、外科的に取り出し、重量測定し、10%のパラホルムアルデヒドで48時間固定した。次いで、固定組織を洗浄し、パラフィンに包埋した。組織切片(5μm)を、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)、またはコラーゲン染色のためのシリウスレッド(Sigma-Aldrich)を用いて、染色した。肝臓中のリンパ球浸潤を、ImageJソフトウェアを使用して定量化した。
【0173】
ルミネックスアッセイ
血液を、指示された日に、眼窩後出血を介して処置されたマウスから収集し、血清試料中の炎症性サイトカイン(IFNγ、IL-6、TNFα)のレベルを、Luminex Milliplex磁気ビーズキット(Merck Millipore、ビルリカ、MA、米国)を使用するルミネックスアッセイによって決定した。
【0174】
統計分析
すべての実験は、三反復で行い、統計分析は、Prismソフトウェア(GraphPad Software)を使用して行った。有意差(P値)を、P≦0.05、**P≦0.01、***P≦0.001を有する正規分布と仮定する、両側の独立Studentのt検定を適用することによって識別した。値は、平均±SDとして示す。生存曲線を、カプランマイヤーの方法を使用して作出し、2つ以上の生存曲線を、ログランク検定を使用して分析した。
【0175】
結果
4-1BBアゴニストトリマーボディの設計
ラットIgG2aに由来するscFvの抗4-1BB 1D8 mAb(Shuford WW,J.Exp.Med.1997;186:47-55)(図1A)を使用して、1D8 scFvに基づくN末端トリマーボディ(1D8)のパネルを設計した。3つの候補は、1D8 scFvを、1D8N0は、リンカーを有さないが、1D8N5および1D8N18は、それぞれ、5残基長および18残基長のリンカーを有する、マウスXVIII型コラーゲン由来ホモ三量体化(TIEXVIII)ドメインに連結する可変の長さのフレキシブルリンカーを用いて作成した(図1B)。すべての3つのコンストラクトを、抗CEA MFE-23scFvに基づいて、ベンチマークのN末端トリマーボディであるMFE-23N18と同様のレベルで、トランスフェクトされたHEK293細胞によって発現させた(Cuesta AMら,PLoS.One.2009;4:e5381)。還元条件下のウエスタンブロット分析において、1D8トリマーボディは、それらのアミノ酸配列から計算された分子量(リンカー長の増加の順序で、34.4、34.7および36.8kDa)と一致した移動パターンを有する一本鎖型分子であった(図7A)。加えて、それらは、ELISAによって決定されるように、プラスチック上に固定化されたヒトFc(m4-1BB)との融合において、マウス4-1BBを特異的に認識した(図7B)。
【0176】
3つの4-1BB特異的トリマーボディを、安定にトランスフェクトされたHEK293細胞において産生させ、およそ1mg/Lの条件培地の収率で、IMACによって精製した(図8A)。次いで、それらの結合動態を、BLIを使用して研究した。すべての1D8抗体は、バイオセンサー上に固定化されたm4-1BBに対して、低ピコモル範囲のKを示したが、1D8トリマーボディは、親の1D8 mAbの速度のおよそ半分の速度で解離することを見出した(図2A)。これは、1D8トリマーボディが、実際は、機能的に三価であり、したがって、二価1D8 IgGよりも高い機能的親和性を有することを示す。さらに、1D8N18、1D8N5および1D8N0は、極めて類似する動態速度定数を示し、リンカーの長さの変動が、1D8 scFvを構造的に損なわないか、または抗原へのそのアクセスを立体的に妨げないことを示す。細胞状況において4-1BBを検出する1D8トリマーボディの能力を、フローサイトメトリーによって研究した。すべての1D8トリマーボディは、それらの細胞表面でマウス4-1BBを発現するようにトランスフェクトされたHEK293細胞(HEK293m4-1BB)に結合したが、トランスフェクトされていないHEK293細胞に結合しなかった(図8B)。1D8N0のHEK293m4-1BB細胞への結合は、1D8N5および1D8N18の結合よりも効率が低かった(図8B)。1D8N5、1D8N18および1D8 IgGはすべて、活性化されたマウスCD8T細胞に結合したが、未刺激のT細胞に結合しなかった(図2B)。1D8N5および1D8N18の結合は、1D8 IgGによって競合的に阻害された(図8C)。これらの結果は、1D8トリマーボディが、内因性マウス4-1BBに結合する能力を維持していることを示す。
【0177】
次に、1D8Nトリマーボディの共刺激能力を、最適以下の用量の抗CD3 mAbの存在下におけるマウスCD8aT細胞の増殖、IFNγ分泌および生存率に対するそれらの効果を試験することによって、調べた。1D8 IgGおよび1D8N18は、増殖およびIFNγを互いに同様に増加させ、1D8N5および1D8N0よりも有意に強力であった(図2CおよびD)。72時間後、1D8 IgGおよび1D8N18で刺激されたCD8T細胞の統計学的に有意に増加した生存率が観察された。さらに、1D8N18は、1D8 IgGよりも有意に強力であった(図2E)。組換え可溶性マウス4-1BBL(m4-1BBL)は、本質的に不活性であった(図2C~2E)。m4-1BBLは、還元条件においておよそ40kDaで、非還元条件においておよそ70kDaで移動し、三量体に対応する(図9A)。細胞表面上で発現したm4-1BBへの結合は、1D8N18よりも効率が低く(図9B)、競合ELISAは、m4-1BBLおよび1D8N18がm4-1BBの異なる領域を認識することを実証した(図9C)。次に、受容体の同種の発現を示す生存HEK293m4-1BB-S細胞において、細胞表面m4-1BBおよびCF488A標識化m4-1BBL、1D8 IgGまたは1D8N18図10)の間の相互作用の時空間分布および動力学を調べた(図11)。RICSを用いて、受容体のクラスター形成、および結合の際のその分子移動度を観察し、定量化した。m4-1BBLが受容体のクラスター形成を誘導しないが、むしろ受容体の細胞質への内部移行(≒70μm/秒)を誘導することが観察された(図12A)。対照的に、1D8 IgGおよび1D8N18は両方ともクラスター形成を誘導し、結合の際に細胞膜での横方向の移動度を、それぞれ≒1.5~0.35、および≒1.0~0.15μm/秒に著しく低減する(図2F、ならびに12BおよびC)。1D8N18は、より大きく、より多数の膜クラスターを形成し、これは、その結果、横方向の拡散をより高い程度で妨げ、これは、より効果的で広範囲の架橋を示す(図2G)。
【0178】
1D8N18は、1D8 IgG、1D8N5および1D8N0よりもインビトロでのT細胞の共刺激において優れていたので、その後の研究においてそれに重点を置くことを選択した。SEC-MALSを使用して、1D8N18のオリゴマー状態を調べた。それは、シグナル配列なしの1D8N18の予測された110.1kDaに近い、112kDaの質量を有する主要な対称のピークとして溶出した(図13A)(MALDIによる質量分析はその非存在を確認した)。SDS-PAGEによって見られるように、2つの少量のピークも検出され、最も小さいものはタンパク質不純物であった(図13B)。他のピークは、SDS-PAGEにおいて1D8N18として移動するが、244kDaのネイティブ質量を有し、おそらく三量体-二量体に相当する。2つの種は、SECによって分離することができるが、主要なピークの再注入は、別の少量の三量体-二量体ピークを与え(図13C)、三量体種が優勢である平衡を示す(1.0および0.26 g/Lで、それぞれ、85および97%)。
【0179】
EGFR標的化4-1BBアゴニストトリマーボディの設計
その後、二重特異性トリマーボディを、抗ヒトEGFRシングルドメイン抗体(VHH;クローンEGa1)(Schmitz KRら,Structure.2013;21:1214-1224)を17残基長のリンカーを介して1D8N18のC末端に融合させることによって作製し、1D8N/CEGa1トリマーボディを与えた(図1C)。コンストラクトは、1D8 scFvのN末端でstrep-Flagタグを用いて設計した。1D8N/CEGa1を、安定にトランスフェクトされたHEK293細胞(5mg/L)において産生させ、続いてStrep-Tactinアフィニティークロマトグラフィーを行った。精製タンパク質の還元条件下でのSDS-PAGE分析は、そのアミノ酸配列から計算されたものと一致する55.6kDaの分子質量を有する単一バンドを明らかにした(シグナル配列なしで52.9kDa;図14A)。精製1D8N/CEGa1のオリゴマー状態を、SEC-MALS測定によって調べた。試料は、シグナル配列なしの三量体の計算された質量(158.7kDa)に近い、160kDaの質量を有する主要な対称のピーク、および309kDaの質量を有する少量のピークとして溶出し(図14B)、これは、SDS-PAGEによって、1D8N/CEGa1から区別できない(図14C)。これらの結果は、再び、1D8N18について見られるように、三量体の二量体の少量の集団の形成を示す。2つのオリゴマー種は、SECによって分離することができ、三量体の単離された主要なピークの再注入は、三量体-二量体の溶出体積で非常に小さなピークのみを与える(図14D)。1D8N/CEGa1は、CDおよび共同熱変性研究において、1D8N18と非常に類似して行った(図14E~F)。SAXSは、1D8N/CEGa1が、1D8N18について見られる、同じ三量体化TIEXVIIIのコアを含有することを示した。
【0180】
1D8N/CEGa1の機能性をBLIによって実証した。1D8N/CEGa1トリマーボディは、固定化m4-1BBとのその相互作用において、1D8トリマーボディと非常に類似した動態速度定数を有する(図3A)。固定化ヒトEGFR-Fcキメラ(hEGFR)への1D8N/CEGa1の結合動態もBLIによって調べ、相互作用が、低ピコモルのKを有することも見出した(図3A)。EGa1VHHおよびEGa1由来のN-トリマーボディ(EGa1)の動態の以前の比較は、EGa1 VHHについての低ナノモルのK、およびEGa1についての低ピコモルのKを示した。これらの動態は、容易に区別でき、1D8N/CEGa1は、EGa1と同等の動態を示し、それが三価でhEGFRに結合することを示す。1D8N/CEGa1が、固定化m4-1BBおよびhEGFRと同時に結合可能であることを見出した(図3B)。これは、1D8N/CEGa1の二重特異性をさらに実証し、hEGFRおよびm-4-1BBとの相互作用の間の立体障害の欠如を示す。細胞表面タンパク質としてその抗原を検出する1D8N/CEGa1の能力を、フローサイトメトリーによって研究した。1D8N/CEGa1トリマーボディは、HEK293(EGFR+)、HEK293m4-1BB細胞、およびヒトEGFRを発現するマウス3T3細胞(3T3hEGFR)に結合したが、野生型3T3細胞に結合しなかった(図15)。さらに、1D8N/CEGa1は、1D8N18と同程度に効率良く、活性化されたマウスCD8aT細胞に結合した(図3C)。1D8N/CEGa1の多価結合をさらに評価するために、A431細胞における増殖およびEGFRリン酸化を阻害するその能力を研究した。1D8N/CEGa1およびEGF競合阻害剤のセツキシマブは、用量依存的な様式で、A431の増殖(図16A)およびEGFRリン酸化(図16B)を阻害したが、抗ヒトCD20のリツキシマブも1D8 IgGも阻害しなかった。
【0181】
次に、1D8N/CEGa1が、1D8N18について見られるベースライン共刺激能力を維持しているか否か、およびこれが、EGa1のEGFRへの結合によって提供される架橋によって改善されたか否かを決定した。CD8aT細胞を、プラスチック固定化hEGFRの存在または非存在下、溶液中で、固定化抗CD3 mAbおよび共刺激剤のパネルで刺激した。1D8N/CEGa1は、hEGFRの非存在下で1D8N18と同様の共刺激効果を有していたが、これは、hEGFRが含まれている場合に、大幅に増強された(図3DおよびE)。次いで、この効果を、EGFR陰性およびEGFR陽性の標的細胞を使用する共培養アッセイによって確認した。IFNγレベルは、非標的化1D8分子と比較して、CD8aT細胞が1D8N/CEGa1の存在下で3T3hEGFRとともに培養された場合に、有意に高かった(図3F)。次に、細胞生存率に対するEGFR標的化4-1BB共刺激の効果を調べた(図3G)。72時間後、1D8 IgGおよび1D8N18で共刺激された細胞と比較して、プラスチック固定化hEGFRの存在下、1D8N/CEGa1で共刺激されたCD8aT細胞の統計学的に有意に増加した生存率が観察された(図3G)。
【0182】
インビボでEGFR陽性腫瘍において選択的に蓄積されたEGFR標的化4-1BBアゴニストトリマーボディ
最初に、1D8N18および1D8N/CEGa1の血清安定性を研究し、4-1BBまたはEGFR結合活性の有意な喪失は、37℃で、マウス血清中で7日後に検出されなかった(図17AおよびB)。次いで、薬物動態研究を、1D8N18または1D8N/CEGa1の単回静脈内注射を受けたCD1マウスにおいて行った。活性タンパク質の血漿中濃度を、固定化m4-1BBを用いるELISAによって決定した。1D8N/CEGa1は、1D8N18と比較して、1.3時間に対して16.15時間の循環半減期で、延長された循環を示した(図4A)。インビボイメージングのために、1D8N/CEGa1および抗4-1BB3H3 mAb(Shuford WWら)をCF647で標識した。CF647標識化抗体は、非コンジュゲート化抗体と同様の移動パターンを実証し、同族の抗原を発現する細胞に特異的に結合した(図18AおよびB)。右脇腹に皮下移植されたA431ヒト腫瘍異種移植片を保持する胸腺欠損ヌードマウスに、CF647標識化抗体を尾静脈に静脈内注射し、24時間後に撮像した(図4B)。1D8N/CEGa1は、3H3 IgG(1.293±0.05812)のものと比較して、4.85±0.1266の腫瘍と正常組織(T/N)比で高い腫瘍局在を示し、これは、特定の腫瘍の蓄積がほとんどないことに対応する(図4C)。
【0183】
EGFR標的化4-1BBアゴニストトリマーボディはIgGに基づく4-1BBアゴニストと同様の抗腫瘍活性を実証した
免疫適合マウスにおけるEGFR標的化4-1BBアゴニストトリマーボディの抗腫瘍効果を研究するために、ヒトEGFRをコードするレトロウイルスに感染させたマウスCT26結腸直腸がん(H-2d)細胞(CT26hEGFR)を使用した(図19A)。CT26hEGFR細胞および空のベクターレトロウイルスに感染させたCT26mock細胞のBALB/cマウスにおけるインビトロの細胞増殖速度、およびインビボの取り込み速度、および成長曲線は類似しており(図19BおよびC)、hEGFRの発現が、CT26腫瘍細胞の低い免疫原性を有意に変えなかったことを示唆する。さらに、3週齢の皮下腫瘍からエクスビボで単離されたCT26hEGFR細胞は、有意なレベルの表面hEGFRを発現した(図19D)。CT26hEGFR細胞におけるEGFR経路の機能性を解明するために、それらの増殖を阻害するセツキシマブおよび1D8N/CEGa1の能力を研究した。図19Eに示すように、セツキシマブも1D8N/CEGa1も、CT26hEGFR増殖に対して有意な効果を有さなかった。したがって、1D8N/CEGa1の可能性がある治療効果は、EGa1媒介抗増殖効果に寄与しない。
【0184】
確立されたCT26hEGFR腫瘍(平均直径0.4cm)を保持するマウスにおける精製1D8N/CEGa1の腹腔内注射(2日間隔で3回)は、2つの別々の実験において、10頭のマウスのうち8頭のマウス(80%)において腫瘍縮小を誘導した(図5AおよびB)。IgGに基づく4-1BBアゴニスト抗体の1D8(図5A)または3H3(図5B)による処置は、CT26hEGFR腫瘍を保持する11頭のマウスのうち10頭のマウス(91%)において、完全縮小をもたらした。PBS、対照抗体(アイソタイプのラットIgG2aおよびMFE-23N18)および1D8N18で処置されたすべてのマウスを、腫瘍細胞移植後4~5週間以内に犠牲にした(図5AおよびB)。IgGに基づく4-1BBアゴニストmAb処置によって治癒したマウスが、持続性の腫瘍特異的免疫を有することが十分に確立される。EGFR標的化4-1BBアゴニストトリマーボディが同様の効果を生じ得るか否かを調べるために、3H3 IgGまたは1D8N/CEGa1(図5B)での処置により移植されたCT26hEGFR腫瘍を拒絶したマウスに、CT26mock細胞で3か月後に再負荷した。3H3 IgGおよび1D8N/CEGa1治癒マウスは、CT26mock腫瘍細胞による再負荷に対して耐性であったが、年齢を一致させたナイーブマウスでは耐性ではなく(図5Cおよび20)、トリマーボディ媒介EGFR標的化4-1BB共刺激が、hEGFRを発現しないCT26腫瘍に対する長期間の防御免疫記憶を誘導することができることを示す。
【0185】
EGFR標的化4-1BBアゴニストトリマーボディで処置されたマウスはIgGに基づく4-1BBアゴニストで観察された免疫学的障害を欠く
同様の条件下、1D8N/CEGa1の毒性プロファイルを3H3 IgGと直接比較した。マウスに、週に1回、3週間、PBS、3H3 IgGまたは1D8N/CEGa1(6mg/kg)でi.p.注射し、1週間後に安楽死させた。図6Aに示すように、3H3 IgGによる処置は、重量によって実証されるように、脾臓および肝臓の全体的な肥大をもたらした。対照的に、1D8N/CEGa1による処置は、脾腫または肝腫大をもたらさなかった(図6A)。3H3 IgGで処置されたマウスの脾臓の組織学的研究は、前に記載されているように(Niu Lら、J.Immunol.2007;178:4194-4213)、未定義のゾーンを有する拡大した卵胞、および髄外造血の明確な証拠を伴なう構造の変化を明らかにした(図6B)。対照的に、1D8N/CEGa1で処置されたマウスの脾臓は、正常の組織学を示した(図6B)。また、前の結果(Niu Lら)を確認すると、3H3 IgGによる処置は、肝臓において有意な単核細胞浸潤を引き起こし、中膜の肥厚を伴なう門脈周囲の腱板を形成し、微小血管系に関連する浸潤病巣も形成したが、1D8N/CEGa1で処置されたマウスにおいて、有意な浸潤は観察されなかった(図6B)。実際に、浸潤した単核細胞の表面は、3H3 IgGで処置されたマウスの肝臓の8%を占めたが、1D8N/CEGa1で処置されマウスでは0.6%、PBSで処置されたマウスでは0.25%しか示さなかった(図6C)。加えて、シリウスレッド(図21)またはマッソントリクローム(図22)によるコラーゲン線維の染色は、3H3IgG処置が、線維症の初期段階を示す、門脈コラーゲン線維の沈着および混乱を引き起こしたが、1D8N/CEGa1では引き起こさなかったことを示した。単核細胞浸潤は、肺においても見られ、3H3 IgGで処置されたマウスの膵臓において、門脈周囲の腱板を形成した。膵臓浸潤は、脈管構造から放射状に伸び、隣接する介在導管まで伸びていた(図6B)。3H3 IgGで処置されたマウスの膵臓の浸潤領域に突出したコラーゲン沈着が観察され、線維症を示す。対照的に、これらの特徴は、1D8N/CEGa1で処置されたマウスにおいて観察されなかった(図21および22)。次いで、血清中の炎症誘導性サイトカインのレベルに対する3H3IgGおよび1D8N/CEGa1による処置の効果を比較した。図6Dに示すように、3H3 IgG処置は、特に21日目に明らかな、INFγ、TNFαおよびIL6の有意な上昇を引き起こした。対照的に、1D8N/CEGa1は、PBS処置動物と同等の、最小限または検出不能のレベルの炎症性サイトカインを誘導した。
【0186】
CEA標的化4-1BBアゴニストトリマーボディの設計および発現
CEA標的化4-1BB-アゴニストトリマーボディを作成するために、抗ヒトCEAシングルドメイン抗体(VHH;CEA.1)を、17残基長のリンカーを介して、1D8N5のC末端に融合して、1D8N/CCEA.1トリマーボディを与えた(図23a)。
【0187】
1D8N5は、1D8 scFvが、5残基長のリンカーによってマウスXVIII型コラーゲン由来ホモ三量化(TIEXVIII)ドメインに連結されたコンパクトなscFvに基づくN末端トリマーボディである。コンストラクトを、CEA.1 VHHのC末端でc-mycおよびHisタグを用いて設計した。コンストラクトは、1D8N18と同様のレベルで、トランスフェクトされたHEK293細胞によって分泌されたが、VHHに基づくN末端トリマーボディCEA.1N17よりも低レベルであった(図24a)。1D8N18は、18残基長のリンカーを有するscFvに基づくN末端トリマーボディであり(図23b)、CEA.1N17は、17残基長のリンカーを有するVHHに基づくN末端トリマーボディである(図23c)。ELISA分析は、1D8N18が、ヒトFc(m4-1BB)を有する融合体においてマウス4-1BBを特異的に認識し、CEA.1N17が、ヒトCEA(hCEA)を特異的に認識した一方、1D8N/CCEA.1が、両方の抗原との特異的な結合を示したことを実証した(図24b)。さらに、1D8N/CCEA.1でトランスフェクトされたHEK293細胞からの条件培地をhCEAでコーティングされたウェルに添加した場合、洗浄の後、CEA結合トリマーボディは、可溶性m4-1BBを捕捉することが可能であった(図24c)。細胞状況においてm4-1BBを検出する能力を、フローサイトメトリーによって研究した。1D8N18および1D8N/CCEA.1は、それらの細胞表面でマウス4-1BBを発現するようにトランスフェクトされたHEK293細胞(HEK293m4-1BB)に結合したが、トランスフェクトされていないHEK293細胞に結合しなかった。CEA.1N17について、結合は検出されなかった(図24d)。
【0188】
CEA標的化4-1BBアゴニストトリマーボディの構造的特性評価
1D8N/CCEA.1を、安定にトランスフェクトされたHEK293細胞において産生させ、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーによって条件培地から精製し、還元SDS-PAGEによって決定された高純度でタンパク質を得た(図25a)。質量分析は、50.4kDaの分子量を示し、これは、シグナル配列のプロセシング後のプロモーターについて予想される重量である(データは示さない)。SEC-MALSクロマトグラム(図25b)は、ピークの中央で143kDaのモル質量を有する12.6mLで溶出する主要なピークを示し、これは、溶液中の三量体の形成を示す(151.2kDaの計算質量を有する)。クロマトグラフィーは、カラムの排除体積である8.7mLで溶出する凝集物質のわずかな割合も示す。218nmに最小値を有する円偏光二色性スペクトルは、主にβシートの二次構造と一致し、これは、およそ50℃まで安定である(図25c~d)。熱変性は、大きなペレットがキュベット中で観察されたので、不可逆的である。
【0189】
CEA標的化4-1BBアゴニストトリマーボディの機能的特性評価
二重特異性1D8N/CCEA.1の結合動態は、m4-1BBでコーティングされたバイオセンサーを使用して、バイオレイヤー干渉法(BLI)によって調べた(図25a)。図26aに示すように、1D8N/CCEA.1は、低ナノモル濃度でのm4-1BBへの飽和結合、および極めて遅い解離(5%未満の解離が3時間にわたって観察されたので、相互作用半減期>40時間を有する)を示し、これは、m4-1BB結合トリマーボディについて前に報告された結合挙動と一致した。我々はまた、BLIを使用して、m4-1BBおよびhCEAの両方への1D8N/CCEA.1の同時結合を実証した。1D8N/CCEA.1および1D8N18は両方とも、センサー固定化m4-1BBと会合することが可能であり、1D8N/CCEA.1は、溶液中でhCEAへのその後の結合を示した(図26bおよびc)。重要なことには、これは、いずれかの抗原への結合が、他の抗原への結合を立体的に阻害しないことを示し、これは、1D8N/CCEA.1がT細胞および腫瘍細胞の架橋に関与するのを防ぐだろう。
【0190】
1D8N/CCEA.1トリマーボディの多価および多重特異性をさらに評価するために、細胞接着アッセイ(図27aおよびb)を行った。図27bに示すように、HEK293m4-1BB細胞を、1D8N/CCEA.1とのインキュベーション後に、CEAでコーティングされたウェルに接着させた。また、1D8N/CCEA.1は、4-1BB陽性細胞の接着を支持するにあたり、ラミニンよりも効率的であった(図27c)。HEK293m4-1BB細胞の接着は、BSAおよびCEAでコーティングされたウェルへの野生型HEK293細胞の接着が検出されなかったので、特異的であった(図27a)。さらに、1D8N18とプレインキュベートされた、BSAおよびCEAでコーティングされたウェルは、4-1BB陽性および4-1BB陰性細胞の任意の有意な細胞接着を支持しなかった(図27aおよびb)。
【0191】
次いで、1D8N/CCEA.1が、1D8N18について見られるベースライン共刺激能力を維持しているか否か、およびこれが、CEA.1のhCEAへの結合によって提供される架橋によって改善されたか否かを決定した。マウスCD8a+T細胞を、プラスチック固定化hEGFRの存在または非存在下、溶液中で、固定化抗CD3 mAb、ならびに共刺激抗体の1D8 IgG、1D8N18および1D8N/CCEA.1で刺激した。1D8N/CCEA.1は、hCEAの非存在下で1D8N18と同様の共刺激効果を有していたが、hCEAを含む場合、増殖(P=0.003)およびIFNγレベル(P=0.090)が大幅に増強された(図27cおよびd)。
図1
図2
図3ABC
図3DEFG
図4
図5
図6AB
図6CD
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24ABC
図24D
図25
図26
図27
【配列表】
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