(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】充填検出装置及び充填検出方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/02 20060101AFI20240919BHJP
E02D 5/34 20060101ALI20240919BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
E04G21/02 103Z
E02D5/34 Z
G01N27/416 341M
(21)【出願番号】P 2021017478
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】臺 哲義
(72)【発明者】
【氏名】松田 拓
(72)【発明者】
【氏名】峯 竜一郎
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-101823(JP,U)
【文献】特開2018-040681(JP,A)
【文献】特開2013-092511(JP,A)
【文献】特開2020-200625(JP,A)
【文献】国際公開第2018/055652(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/02
E02D 5/34
G01N 27/416
G01R 27/08
G01R 27/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線が被覆材によって被覆された一対の配線の先端端部が
前記配線の延設方向に沿った段差を有するように配置され、一方の配線には、電圧を印加する出力源が接続され、
前記一対の配線の他端がデータロガに接続されることを特徴とする充填検出装置。
【請求項2】
前記先端端部は、前記芯線が前記被覆材から周方向に剥き出しとならずに切断されていることを特徴とする請求項1に記載の充填検出装置。
【請求項3】
前記段差は、5から10mmであることを特徴とする請求項1または2に記載の充填検出装置。
【請求項4】
前記配線は、長尺の固定部材に固定され、
前記固定部材の長手方向の一端は保護部材が取り付けられ、他端は引上部材が取り付けられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の充填検出装置。
【請求項5】
データロガに他端が接続されるとともに、芯線が被覆材によって被覆された一対の配線の先端端部を
前記配線の延設方向に沿った段差を有するように配置する工程と、
前記一対の配線のうち、一方の配線に電圧を印加する出力源を接続する工程と、
前記先端端部を充填物が充填される型枠内に配置する工程と、
前記先端端部が充填物の充填を検出する工程とを有することを特徴とする充填検出方法。
【請求項6】
前記先端端部が所定の間隔で配置されることを特徴とする請求項5に記載の充填検出方法。
【請求項7】
前記配線は、長尺の固定部材に取り付けられ、
前記先端端部が充填物の充填を検出したのち、前記固定部材を引き抜く工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の充填検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレッシュコンクリートなどの充填物の打設の際に、型枠内の充填物の充填状態を管理する充填検出装置及び充填検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートなどの充填物を予め作製した型枠に打設して硬化させることで、壁などを構築することが行われている。充填物の充填が適切に行われていない場合には、壁に空隙ができてしまい、硬化後改めてフレッシュコンクリートを打ち足すこととなるが、硬化後のコンクリートに対して新たにフレッシュコンクリートを打設した場合には、これらが一体化せず、新たに打ち足した部分の剥離等を生じることとなる。この充填不足を回避するために、充填物の充填が適切に行われていることを確認することが行われている。
【0003】
このような充填状況の確認方法は、種々の方法が知られており、例えば、熟練者が木槌などで型枠を叩き、その打撃音を経験や勘で評価する方法や、充填物の充填を検出する充填検出装置を用いて充填の確認が行われている。
【0004】
この充填検出装置は、例えば、特許文献1や特許文献2に記載された充填検出装置が知られている。特許文献1に記載された充填判定装置は、セメント内に配置すると起電力が発生する異種材料の一対の電極に引き出し線を付して型枠内の所定の位置に配置し、引き出し線間に電圧計を接続し、電圧計で測定された電圧が所定値内に入ると、セメントが一対の電極間に充填していると判定している。
【0005】
このような充填検出装置によれば、コンクリートなどのアルカリ性充填物の打設個所の適当な位置に電極を配置することにより、コンクリートなどの充填物質の充填を確認し、完成品の品質を管理することができる。また、電極部を小さく安価にでき、引き出し線も細いので、電極部や引き出し線を埋め殺しすることができる。
【0006】
特許文献2に記載されたセメント組成物充填検出装置は、セメント組成物センサとして、交流電圧が印加される少なくとも二つの棒状電極と、当該棒状電極を略平行に支持する支持部と、を備え、当該セメント組成物センサの棒状電極に交流電圧を印加する印加手段と、交流電圧が印加された棒状電極間の抵抗値を測定する測定手段と、測定された抵抗値がセメント組成物に対応する所定値以下となったとき、検出信号を出力する検出手段と、検出信号に基づいて、抵抗値が所定値以下になったことを表示する表示手段とを備えている。
【0007】
このようなセメント組成物充填検出装置は、セメント組成物センサがセメント組成物を充填すべき閉塞空間に配置されており、これに交流電圧を印加して電気的にセメント組成物の有無を検出するので、奥まった閉塞空間においても、セメント組成物の有無を簡便に検出することができる。さらに、電極の形状が棒状であるので、セメント組成物との接触面積を大きくして接触抵抗を低減し、正確な検出を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平9-196890号公報
【文献】特開平9-228639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載された充填検出装置や特許文献2に記載されたセメント組成物充填検出装置は、電極や引き出し線などを用いて安価に構成できるが、打設高さが高い場合や打設長が長い場合には、測定点が多くなることから、使用する電極や引き出し線の使用量が多くなり、構造物の断面欠損や施工コストの抑制が難しいという問題があった。また、ブリーディング水を判断することができないセンサを用いた場合には、コンクリートの充填前に型枠を水洗いする際に、予め水がセンサに付着することで、誤検出となる可能性があるという問題があった。
【0010】
また、熟練者が木槌などを用いて打撃音を確認する方法では、確認者による差が大きいことや、充填されていると判断された場合であっても、実際は充填されていない場合があり得るという問題点があった。また、型枠にセパレータなどを用いない薄型の壁を施工する場合は、特殊型枠を使用するため、特殊型枠の厚みが増大することによって打撃音で判断することが難しく、特殊型枠の近傍に外部支保工が密に配置されているため、木槌などで叩くスペースが限られ、適切な打撃音検査を行うことができないという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、より安価かつ簡便な構成で充填検出装置を構成することができ、充填物の充填状況をリアルタイムで確認することができ、打設前の型枠の水洗いを行なった場合でも検出精度に影響のない充填検出装置及び充填検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る充填検出装置は、芯線が被覆材によって被覆された一対の配線の先端端部が前記配線の延設方向に沿った段差を有するように配置され、一方の配線には、電圧を印加する出力源が接続され、前記一対の配線の他端がデータロガに接続されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る充填検出装置において、前記先端端部は、前記芯線が前記被覆材から周方向に剥き出しとならずに切断されていると好適である。
【0014】
また、本発明に係る充填検出装置において、前記段差は、5から10mmであると好適である。
【0015】
また、本発明に係る充填検出装置において、前記配線は、長尺の固定部材に固定され、
前記固定部材の長手方向の一端は保護部材が取り付けられ、他端は引上部材が取り付けられると好適である。
【0016】
また、本発明に係る充填検出方法は、データロガに他端が接続されるとともに、芯線が被覆材によって被覆された一対の配線の先端端部を前記配線の延設方向に沿った段差を有するように配置する工程と、前記一対の配線のうち、一方の配線に電圧を印加する出力源を接続する工程と、前記先端端部を充填物が充填される型枠内に配置する工程と、前記先端端部が充填物の充填を検出する工程とを有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る充填検出方法において、前記先端端部が所定の間隔で配置されると好適である。
【0018】
また、本発明に係る充填検出方法において、前記配線は、長尺の固定部材に取り付けられ、前記先端端部が充填物の充填を検出したのち、前記固定部材を引き抜く工程を含むと好適である。
【0019】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る充填検出装置及び充填検出方法は、芯線が被覆材によって被覆された一対の配線の先端端部が段差を有するように配置され、一方の配線には、電圧を印加する出力源が接続され、前記一対の配線の他端がデータロガに接続されるので、容易に入手可能な材料を用いて構成することができるので、安価かつ構成が単純な充填検出装置及び充填検出方法とすることができる。
【0021】
また、本発明に係る充填検出装置位置及び充填検出方法は、熟練者による人力での確認作業を行わず、リアルタイムで充填状況を管理することができるので、打設する壁などが薄い場合や打設長が長い場合でも、型枠内の充填物の充填状況を精度良く検出することができる。
【0022】
さらに、本発明に係る充填検出装置及び充填検出方法によれば、打設前に型枠の水洗いを行なった場合でも、検出結果に影響を与えることがなく、誤検出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】本実施形態に係る充填検出装置の配線を示す図。
【
図4】本実施形態に係る充填検出方法に用いられる固定部材の正面図。
【
図5】本実施形態に係る充填検出方法の引き抜く工程の概要を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0025】
図1は、本実施形態に係る充填検出装置の概要図であり、
図2は、本実施形態に係る充填検出装置の配線を示す図であり、
図3は、本実施形態に係る充填検出装置の構成図であり、
図4は、本実施形態に係る充填検出方法に用いられる固定部材の正面図であり、
図5は、本実施形態に係る充填検出方法の引き抜く工程の概要を示す図であり、
図6は、本実施形態に係る充填検出方法のフロー図であり、
図7は、モックアップ充填試験の結果を示すグラフである。
【0026】
<充填検出装置の構成>
図1に示すように、本実施形態に係る充填検出装置10は、一対の配線20の先端端部が充填物1に接触可能に配置され、一方の配線には、電圧を印加する出力源30が接続され、一対の配線20の他端がデータロガ40に接続されている。充填物1は、砂や砂利、水などにセメントやアスファルトなどの糊状の物質を混ぜ合わせて凝固する前のフレッシュコンクリートであると好適であり、例えば、ブリーディング水の発生が少ない、またはブリーディング水の発生がなく、セメントなどの粉体量が多い配合のものが好適に用いられる。
【0027】
図2に示すように、一対の配線20は、芯線22が被覆材21によって被覆され、先端端部24が段差Dを有するように配置されている。また、一対の配線20は互いに固定材23によって固定されている。固定材23は、一対の配線20を束ねて固定することができれば、どのような形態の部材を用いても構わないが、例えば、接着テープなどが好適に用いられる。また、先端端部24は、芯線22が被覆材21から周方向に剥き出しとなることがないように、切断されている。
【0028】
また、段差Dは、一対の配線20の先端端部24の芯線22が互いに接触して短絡しないように所定の距離だけ離間しており、例えば、5mm以上離間していると好適であり、より好適には、10mm程度離間しているとよい。
【0029】
出力源30は、一方の配線に所定の電圧を印加することができれば、どのような形態の部材を用いても構わないが、例えば、直流5V1Aを出力することができるAC/DCコンバータなどが好適に用いられる。また、1.5Vの乾電池を直列に接続しても構わない。
【0030】
データロガ40は、一対の配線20間の電位差を測定することができれば、どのような装置を用いても構わないが、従来周知の電圧測定器が好適に用いられる。
【0031】
<充填検出装置の実施形態>
図3に示すように、壁などの施工現場に構築された型枠に充填物1を流し込み、当該充填物1が適切に充填されていることをリアルタイムで確認するために用いると好適である。型枠50は、従来周知の種々の型枠を用いることができる。
【0032】
型枠50には、複数組みの一対の配線20が配置されており、それぞれの先端端部24が高さ方向及び幅方向に所定の間隔を有するように格子状に配置されている。高さ方向の間隔及び幅方向の間隔は、打設高さ及び打設長並びに充填する充填物に応じて適宜設定することができるが、例えば、高さ5m、幅5mの壁を打設する場合には、高さ方向の間隔を500mm、幅方向の間隔を1000mmに設定すると好適である。
【0033】
また、複数組みの一対の配線20の他端はそれぞれデータロガ40に接続されている。このように型枠50に所定の間隔で先端端部24を配置することで、型枠50に充填物1を充填した際、先端端部24が充填物1に接触することで、一対の配線20間に電流が流れ電圧を測定することで、充填物1が先端端部24の位置まで充填できていることを確認することができる。この時、電圧の閾値は、出力源の電圧が5Vの場合は、4.0Vに設定されると好適である。閾値をこのように設定することで、充填物1の充填前に型枠50を水洗いし、先端端部24に水分が付着している場合でも、充填物1の充填を検出することができる。なお、各配線20の先端端部24の位置をデータロガ40の測定結果と合わせることができるように、各配線20の他端を色分けすることで、誤配線を防止しても構わない。
【0034】
データロガ40は、データロガ40で測定された結果を処理して画像処理を行う処理部41に接続されており、処理部41は、有線または無線通信によって表示端末42に処理結果を表示することができる。
【0035】
処理部41は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及び、RAM(Random Access Memory)とを有しており、処理部41は、CPUが、ROMやRAMなどに記憶された各種プログラムを読み出して実行する。処理部41は、パーソナルコンピュータなどの電子計算機が好適に用いられ、表示端末42は、液晶表示素子またはEL(Electro Luminescence)素子などによって構成されたディスプレイや、スマートフォンやタブレット端末が好適に用いられる。
【0036】
なお、先端端部24を有する複数組みの一対の配線20は、型枠50内に固定したまま充填物1を打設して打設後は、充填物1の内部に残し、埋め殺ししても構わない。この場合、埋め殺しされる部材は、配線20のみとなるので、電極やセンサを用いる場合と比べて、部材のコストを大幅に低減することができる。
【0037】
また、配線20の腐食による影響や断面欠損による強度低下を考慮して、充填物1の充填を確認したのち、配線20を引き上げながら充填作業を行なっても構わない。この場合、一対の配線20は、長尺の固定部材60に固定すると、固定部材60ごと配線20を引き抜くことができるので好適である。
【0038】
図4に示すように、固定部材60は、型枠50の高さよりも長尺な棒状部材であって、型枠の構築の際に用いられるセパレータなどが好適に用いられる。固定部材60の長手方向の一端(下端側)は、保護部材61が取り付けられている。保護部材61は、固定部材60を型枠50内に設置する際及び、充填物1から引き抜く際に、型枠50を損傷しないように取り付けられており、従来周知の袋ナットなどが好適に用いられる。
【0039】
また、固定部材60の他端(上端側)には、固定部材60が型枠50内に落下することを防止するため、及び先端端部24が充填物1の充填を確認したのち、固定部材60を引き抜くための引上部材62が取り付けられている。引上部材62は、上述した作用を奏する部材であれば、どのような部材を用いても構わないが、例えば、アイナットなどが好適に用いられる。
【0040】
固定部材60には、一対の配線20が取り付けられているが、固定部材60に取り付けられる一対の配線20は、2組取り付けられていると好適である。この時、互いの先端端部24d,24uの位置は、
図4に示すように、高さ方向に離間して配置されると好適である。
【0041】
このように固定部材60に二組の一対の配線20を取り付けることで、より確実に充填物1の充填を検出することができる。具体的には、
図5に示すように、(a)のように複数の固定部材60aから60eをそれぞれの固定部材60に取り付けた先端端部24d、24uが所定の間隔で高さ方向に配置されるように配置する。その後、型枠50に充填物1の充填を開始し、(b)に示すように、充填物1が先端部24d及び24uの両方に接触し、所定の電位差を測定した場合に固定部材60aの先端端部24d及び24uの位置まで充填物1の充填が完了したと判定して、固定部材60aを引き抜く。次に、固定部材60bの先端端部24d及び24uが充填を検出するまで、充填物1の充填を行い、充填を検出した場合に固定部材60bを引き抜く。これを(c)から(e)まで繰り返すことで、充填物1の充填を確認しながら、配線20の引き抜きを行うことができる。
【0042】
<充填検出方法>
次に、
図6を参照して本実施形態に係る充填検出方法について説明を行う。まず、
図2のように、一対の配線20を準備し、互いの先端端部24を段差Dを有するように配置して固定する(S101)。
【0043】
次に、一対の配線20の一方の配線に出力源30を取り付け、一対の配線20の他端をデータロガ40に接続する(S102)。この時、型枠50内に配置する先端端部24が複数ある場合には、先端端部24の位置とデータロガの検出とが対応するように、配線を行う。
【0044】
次に、配線20の先端端部24を型枠50内に所定の間隔で配置して固定する(S103)。この時、配線20を埋め殺さずに引き抜きながら充填を行う場合には、
図4に示すような固定部材60に配線20を固定して型枠50内に配置する。
【0045】
次に、型枠50へ充填物1の充填を開始する(S104)。この時、型枠50への充填物1の充填は、単一または複数の充填口から充填を行なっても構わない。充填物1の充填位置は、打設する打設長さに応じて適宜変更することができる。
【0046】
充填物1が先端端部24に接触し、データロガ40が電位差を検出すると、処理部41が充填物1が該当する先端端部24の位置まで充填されたことを検出する(S105)。この時、処理部41は、充填を検出したことを表示端末42に表示するので、充填状況をリアルタイムに把握することができる。
【0047】
次に、充填が検出された先端端部24に対応する固定部材60を引き上げて配線20を充填物1から引き抜く(S106)。この配線20の引き抜きは、充填物1に配線20を埋め殺す場合には、省略することができる。
【0048】
その後、全ての配線20で充填が検出されるまで、充填物1を充填しながら、充填の検出をくり返し(S107)、全ての配線20で充填が検出された場合に充填作業を終了する。
【0049】
<実施例>
上述した充填検出装置10及び充填検出方法では、先端端部24が充填物1に接触し、電位差が4.0Vとなった場合に充填を検出した場合について説明を行なったが、この閾値の妥当性について以下のモックアップ試験を行って確認した。
【0050】
モックアップ試験は、
図1に示すように、一対の配線20の一方に出力源として5Vの電圧が印加できるAC/DCコンバータを接続し、他端をデータロガに接続して行った。また、モックアップ試験に用いた配線は、一対の配線20を段差5mmに固定した実施例1、段差10mmに固定した実施例2及び、先端端部の被覆材を除去し芯線を剥き出しにして段差0mmに固定した比較例1を用い、それぞれの先端端部が気中、水中、先端に水が多く付着した状態、フレッシュコンクリート内のそれぞれの状態でどの程度電位差が生じるかを確認した。ここで、先端に水が多く付着した状態は、配線の先端に霧吹きなどで水を付着させ、型枠の水洗い後の状態の電位差を確認し、フレッシュコンクリート内に配置した状態は、充填物に先端端部が接触した状態の電位差を確認した。
【0051】
モックアップ試験の結果は以下の通りとなった。
【表1】
【0052】
表1に示すように、先端端部の電位差の閾値を4.0Vとすると、先端に水が多く付いた状態とフレッシュコンクリート内とを区別することができることが確認できた。また、モックアップ試験の結果より、先端端部の段差は、5mmよりも10mmの方が型枠の洗い水を誤認するリスクが低減できることが確認できた。
【0053】
次に、上述したモックアップ試験で用いた実施例2の配線を型枠に所定の間隔で固定し、電圧通電結果と、型枠の上方から、充填面をレーザ変位計で測定した変位計の結果を比較したモックアップ打設試験を行った。モックアップ打設試験は、幅方向の測定ピッチを500mmとし4点、高さ方向の測定ピッチを1000mmとし3点設定して測定を行った。また、レーザ変位計の測定位置は、幅方向に7点設定した。
【0054】
図7に示すように、電圧通電測定結果は、レーザ変位計の測定結果と相関が確認できた。なお、
図7において、真ん中部分における電圧通電測定の結果がレーザ変位計の測定結果よりも高く出ているが、これは、型枠の真ん中部分から充填物を落下させたため、打設場所から落下した充填物が配線に付着したことによるものである。また、3層目電圧通電測定において、左から2番目にレーザー変位計の測定結果との差異がみられるが、これは配線が固定部材から外れた事によるものと考えられる。
【0055】
このように、本実施形態に係る充填検出装置及び充填検出方法によれば、広く用いられている配線20のみで充填物1の充填を検出しながら充填物1の打設を行うことができるので、安価かつ構成が単純な充填検出装置及び充填検出方法とすることができる。
【0056】
また、本発明に係る充填検出装置位置及び充填検出方法は、熟練者による人力での確認作業を行わず、リアルタイムで充填状況を管理することができるので、打設する壁などが薄い場合や打設長が長い場合でも、型枠内の充填物の充填状況を精度良く検出することができる。
【0057】
さらに、本発明に係る充填検出装置及び充填検出方法によれば、打設前に型枠の水洗いを行なった場合でも、検出結果に影響を与えることがなく、誤検出を防止することができる。
【0058】
また、上述した本実施形態に係る充填検出装置は、固定部材60に二組の一対の配線20を取り付け、互いの先端端部24d及び24uの高さ方向の位置が異なるように配置して固定した場合について説明を行なったが、固定部材60に取り付ける一対の配線20の数はこれに限られず、例えば、1つまたは3組以上取り付けても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0059】
1 充填物、 10 充填検出装置、 20 配線、 21 被覆材、 22 芯線、 23 固定材、 24、24d、24u 先端端部、 30 出力源、 40 データロガ、 41 処理部、 42 表示端末、 50 型枠、 60 固定部材、 61 保護部材、 引上部材。