IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 矢崎総業株式会社の特許一覧

特許7557389視線検出装置、視線検出システム、及び視線検出方法
<>
  • 特許-視線検出装置、視線検出システム、及び視線検出方法 図1
  • 特許-視線検出装置、視線検出システム、及び視線検出方法 図2
  • 特許-視線検出装置、視線検出システム、及び視線検出方法 図3
  • 特許-視線検出装置、視線検出システム、及び視線検出方法 図4
  • 特許-視線検出装置、視線検出システム、及び視線検出方法 図5
  • 特許-視線検出装置、視線検出システム、及び視線検出方法 図6
  • 特許-視線検出装置、視線検出システム、及び視線検出方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】視線検出装置、視線検出システム、及び視線検出方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/20 20170101AFI20240919BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240919BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
G06T7/20 300B
G06T7/00 300F
G06T7/00 650Z
G08G1/16 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021021375
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022123912
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊東 祐介
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-276848(JP,A)
【文献】特開2004-234494(JP,A)
【文献】特開2009-265722(JP,A)
【文献】特開2010-157073(JP,A)
【文献】特開2012-011810(JP,A)
【文献】特開2019-159983(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203769(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/20
G06T 7/00
G08G 1/16
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の運転者の顔を撮影して前記運転者の顔を含む運転者画像を時系列で取得する画像取得部と、
前記運転者画像から前記運転者の顔を含む顔領域を検出し、前記顔領域内で前記運転者の眼を含む眼領域を検出する処理部と、
前記運転者に対して特定の動作を促す内容の報知を行う報知部と、を備え、
前記処理部は、
前記眼領域を検出した場合は、前記眼領域に基づく前記運転者の視線を検出して前記視線に関する視線情報を生成し、
前記運転者画像から前記顔領域を検出できなかった場合は、前記運転者の眼の存在が推定される推定眼部領域内で前記眼領域を検出し、
前記運転者画像における予め設定された位置に設定された前記推定眼部領域内で前記眼領域を検出できなかった場合は、前記報知部による前記報知を行い、
報知前の前記運転者画像に対する報知後の前記運転者画像において、変化した変化領域があるか否かを判定し、
前記変化領域があると判定した場合は、前記変化領域を含むように前記運転者画像における前記推定眼部領域の位置を更新し、更新後の推定眼部領域内で前記眼領域を検出する、
ことを特徴とする視線検出装置。
【請求項2】
前記処理部は、
報知前の前記運転者画像に対する報知後の前記運転者画像のヒストグラムを比較し、前記ヒストグラムにおいて輝度に差分がある領域を前記変化領域であると判定する、
請求項1に記載の視線検出装置。
【請求項3】
前記ヒストグラムにおける輝度の差分は、
前記運転者の両眼のうち、少なくとも片眼の開閉動作により生じたものである、
請求項2に記載の視線検出装置。
【請求項4】
前記処理部は、
前記運転者画像から前記顔領域を検出できず、かつ前記推定眼部領域内で前記眼領域を検出した場合、検出した前記眼領域が前記運転者の眼に対応するものか否かを判定し、前記運転者の眼に対応するものでないと判定したときは、前記推定眼部領域の位置を更新する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の視線検出装置。
【請求項5】
前記処理部は、
前記眼領域が前記運転者の眼に対応するものか否かを、前記推定眼部領域内の前記眼領域の高さ方向の位置が規定値以内か否かで判定する、
請求項4に記載の視線検出装置。
【請求項6】
前記処理部は、
検出した前記眼領域が前記運転者の眼に対応するものであると判定した場合、前記推定眼部領域内で検出された前記眼領域に基づいて前記視線を検出し、当該視線が前記運転者の眼に対応するものか否かを判定し、前記運転者の眼に対応するものでないと判定したときは、前記推定眼部領域の位置を更新する、
請求項4または5に記載の視線検出装置。
【請求項7】
前記処理部は、
前記視線が前記運転者の眼に対応するものか否かを、前記視線が交差し、かつ前記推定眼部領域内の前記眼領域の高さ方向の位置が規定値以内か否かで判定する、
請求項6に記載の視線検出装置。
【請求項8】
車両の運転者の顔を撮影して前記運転者の顔を含む運転者画像を時系列で取得する画像取得装置と、
前記運転者画像から前記運転者の顔を含む顔領域を検出し、前記顔領域内で前記運転者の眼を含む眼領域を検出する処理装置と、
前記運転者に対して特定の動作を促す内容の報知を行う報知装置と、を備え、
前記処理装置は、
前記眼領域を検出した場合は、前記眼領域に基づく前記運転者の視線を検出して前記視線に関する視線情報を生成し、
前記運転者画像から前記顔領域を検出できなかった場合は、前記運転者の眼の存在が推定される推定眼部領域内で前記眼領域を検出し、
前記運転者画像における予め設定された位置に設定された前記推定眼部領域内で前記眼領域を検出できなかった場合は、前記報知装置による前記報知を行い、
報知前の前記運転者画像に対する報知後の前記運転者画像において、変化した変化領域があるか否かを判定し、
前記変化領域があると判定した場合は、前記変化領域を含むように前記運転者画像における前記推定眼部領域の位置を更新し、更新後の推定眼部領域内で前記眼領域を検出する、
ことを特徴とする視線検出システム。
【請求項9】
画像取得部が、車両の運転者の顔を撮影して前記運転者の顔を含む運転者画像を時系列で取得する画像取得工程と、
処理部が、前記運転者画像から前記運転者の顔を含む顔領域を検出し、前記顔領域内で前記運転者の眼を含む眼領域を検出する処理工程と、
報知部が、前記運転者に対して特定の動作を促す内容の報知を行う報知工程と、を備え、
前記処理工程は、前記処理部が、
前記眼領域を検出した場合は、前記眼領域に基づく前記運転者の視線を検出して前記視線に関する視線情報を生成し、
前記運転者画像から前記顔領域を検出できなかった場合は、前記運転者の眼の存在が推定される推定眼部領域内で前記眼領域を検出し、
前記運転者画像における予め設定された位置に設定された前記推定眼部領域内で前記眼領域を検出できなかった場合は、前記報知工程による前記報知を行い、
報知前の前記運転者画像に対する報知後の前記運転者画像において、変化した変化領域があるか否かを判定し、
前記変化領域があると判定した場合は、前記変化領域を含むように前記運転者画像における前記推定眼部領域の位置を更新し、更新後の推定眼部領域内で前記眼領域を検出する、
ことを特徴とする視線検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視線検出装置、視線検出システム、及び視線検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の顔画像から視線検出を行なう場合、カメラにより取得した運転者画像を下処理した後、顔検出及び眼検出を行ってから視線を検出している。マスク等の遮蔽物により顔が適切に検出できない場合、眼が存在するであろう領域を推定することで、眼の誤検出を回避することが出来る(例えば、特許文献1-4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-276848号公報
【文献】特開2014-063281号公報
【文献】特開2018-163411号公報
【文献】特開2018-132974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転者画像内で実際の運転者の眼に対応する眼領域が、予め運転者画像内に設定された運転者の眼が存在するであろう推定眼領域とずれている場合、眼の位置を検出することができないことから、視線検出が困難になる。例えば、運転者画像内で実際の眼に対応する眼領域の位置が推定眼領域よりも下側にあった場合、運転者画像内の顔領域の中で最も眼らしい画像部分を検出するか、もしくは、それらが無い場合は未検出となる。そのため、運転者の視線検出を精度良く行う点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、運転者の視線検出を継続的に精度良く行うことができる視線検出装置、視線検出システム、及び視線検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る視線検出装置は、車両の運転者の顔を撮影して前記運転者の顔を含む運転者画像を時系列で取得する画像取得部と、前記運転者画像から前記運転者の顔を含む顔領域を検出し、前記顔領域内で前記運転者の眼を含む眼領域を検出する処理部と、前記運転者に対して特定の動作を促す内容の報知を行う報知部と、を備え、前記処理部は、前記眼領域を検出した場合は、前記眼領域に基づく前記運転者の視線を検出して前記視線に関する視線情報を生成し、前記運転者画像から前記顔領域を検出できなかった場合は、前記運転者の眼の存在が推定される推定眼部領域内で前記眼領域を検出し、前記運転者画像における予め設定された位置に設定された前記推定眼部領域内で前記眼領域を検出できなかった場合は、前記報知部による前記報知を行い、報知前の前記運転者画像に対する報知後の前記運転者画像において、変化した変化領域があるか否かを判定し、前記変化領域があると判定した場合は、前記変化領域を含むように前記運転者画像における前記推定眼部領域の位置を更新し、更新後の推定眼部領域内で前記眼領域を検出する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る視線検出装置、視線検出システム、及び視線検出方法は、運転者の視線検出を継続的に精度良く行うことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る視線検出装置の概略構成を示す模式図である。
図2図2は、実施形態に係る視線検出装置における視線検出方法の処理手順を示すフローチャート図(その1)である。
図3図3は、実施形態に係る視線検出装置における視線検出方法の処理手順を示すフローチャート図(その2)である。
図4図4は、実施形態に係る視線検出装置で扱われる運転者画像の一例を示す模式図である。
図5図5(A)は、運転者画像の推定眼部領域内で眼領域が検出できない状態の一例を示す模式図、図5(B)は、運転者画像の推定眼部領域外で運転者が閉眼した状態の一例を示す模式図、図5(C)は、運転者画像の推定眼部領域を更新した状態の一例を示す模式図である。
図6図6は、運転者画像における変化領域の有無の判定方法を説明するための模式図である。
図7図7(A)、図7(B)は、運転者画像にて設定された推定眼部領域の位置の更新を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る視線検出装置、視線検出システム、及び視線検出方法について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。以下の実施形態における構成要素には、いわゆる当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、以下の実施形態における構成要素は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0010】
[実施形態]
図1に示す本実施形態の視線検出装置1は、自動車等の車両2に搭載され、車両2に乗車した運転者20の視線を検出するものである。視線検出装置1は、カメラ12と、処理部13と、報知部14とを含んで構成される。
【0011】
カメラ12は、画像取得部または画像取得装置の一例であり、車両2の運転者20の顔21を撮影して運転者20の顔21を含む運転者画像30を時系列で取得するものである。カメラ12は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)型のイメージセンサ、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサ等を有するデジタルカメラで構成される。カメラ12は、車両2の車室10内の運転席に着座している運転者20の顔21を撮影するために、例えば運転席前方のメータユニット内、または、コラムカバー上部に設置される。カメラ12は、処理部13に電気的に接続されており、取得した運転者画像30に対応する映像信号を、当該運転者画像30の撮影時刻等を含む各種画像情報と共に、処理部13に出力する。
【0012】
処理部13は、処理装置の一例であり、カメラ12から入力された運転者画像30を画像処理し、運転者画像30から運転者20の顔21を含む矩形状の顔領域31を検出し、顔領域31内で運転者20の眼22,23を含む眼領域33を検出するものである。ここで眼領域33は、例えば黒目(瞳孔または虹彩)を含む。また、処理部13は、眼領域33を検出した場合、眼領域33に基づく運転者20の視線を検出して視線に関する視線情報を生成し、車載装置(例えば、運転者20の居眠り等を把握するための装置等)に出力する。視線情報は、例えば、運転者20の視線に対応する視線角度、撮影時刻等が含まれる。
【0013】
処理部13は、運転者画像30から顔領域31を検出できなかった場合、運転者20の眼22,23の存在が推定される推定眼部領域32内で眼領域33を検出する。推定眼部領域32は、例えば、アイレンジのうち、運転者が着座状態で所定割合(例えば、95%)の運転者の眼の位置が含まれる矩形状の領域である。または、推定眼部領域32は、運転者画像30において運転者20の眼が存在してほしい領域である。ここでアイレンジは、車両において運転者の両眼の位置の分布を統計的に表したものである。運転者20のアイポイントは、アイレンジ内に位置するものと想定される。推定眼部領域32は、運転者画像30における予め設定された位置に設定される。つまり、推定眼部領域32は、運転者画像30において、上記所定割合の運転者20の眼22,23の位置が含まれる領域である。
【0014】
処理部13は、例えば、視線検出装置1における各種処理機能を実現する処理回路(不図示)を有する。処理回路は、例えば、プロセッサによって実現される。プロセッサとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の回路を意味する。処理部13は、例えば、不図示の記憶回路(記憶部)から読み出したプログラムを実行することにより、各処理機能を実現する。また、処理部13は、複数の運転者画像30を、運転者画像30の撮影時刻に関連付けて記憶部に記憶することが可能であり、記憶部に記憶された運転者画像30を読み出して画像処理することができる。
【0015】
処理部13は、視線検出モードと、画像差分検出モードとを有する。視線検出モードは、上述したように、運転者画像30から顔領域31を検出し、顔領域31内で運転者20の眼22,23を含む眼領域33を検出するモードである。画像差分検出モードは、視線検出モードにて一定の条件を満たした場合に、報知部14による運転者20に対する報知により、運転者20に特定の動作を実行してもらうことで、推定眼部領域32を更新するモードである。ここで報知部14による運転者20に対する報知とは、運転者20に対して特定の動作を促す内容の報知である。この特定の動作には、運転者20の片眼(眼22または眼23)の開閉動作、口の開閉動作等が含まれる。また、特定の動作には、運転者20の顔の一部の動きが分かるものであれば、運転者20の片眼や口の開閉動作に限定されるものではない。運転者20に対して行う報知の内容は、安全運転を考慮して、運転者が車両2のハンドルから両手を話すことなく実行できるもの、画像差分モードにおける画像変化が検出できるものであることが好ましい。報知の内容としては、例えば、特定の動作が運転者20の片眼の開閉動作である場合、「ウィンクを数回行ってください」等である。運転者20以外に車両2に人が乗車している場合、「ドライバはウィンクを数回行ってください」としてもよい。または、安全な車両運行を考慮し、「安全を考慮しつつ短いウィンクを数回行ってください」としてもよい。または、「ドライバの視線が検出できません」と報知した後に、「ドライバはウィンクを数回行ってください」としてもよい。
【0016】
処理部13は、視線検出モードにて一定の条件を満たした場合に、視線検出モードと、画像差分検出モードとを切り替える。処理部13は、運転者画像30から顔領域31を検出できず、かつ、推定眼部領域32内で眼領域33を検出できなかった場合に、視線検出モードから画像差分検出モードに切り替える。また、処理部13は、運転者画像30から顔領域31を検出できず、かつ、推定眼部領域32内で検出された眼領域33に基づいて運転者20の視線を検出し、当該視線に対応する視線情報が運転者20の眼22,23に対応するものでなかった場合に視線検出モードから画像差分検出モードに切り替える。処理部13は、画像差分モードが終了した場合は、画像差分モードから視線検出モードに切り替える。具体的には、処理部13は、運転者画像30の所定位置に予め設定されていた推定眼部領域32の位置を更新した場合は、画像差分モードから視線検出モードに切り替える。処理部13は、報知部14に電気的に接続されており、報知部14に対して報知信号を出力する。
【0017】
報知部14は、報知装置の一例であり、運転者20に対して眼の動作を促す内容の報知を行うものである。報知部14は、例えば、運転席前方のインストルメントパネル内、または、運転席側のドアトリム内に配置される。報知部14は、例えば、スピーカ等の音声出力器であり、処理部13から入力した報知信号に基づいて音声を出力する。報知部14は、単独で構成されるが、車両2に搭載されたオーディオユニット内、メータユニット内、ナビゲーションシステム内の音声出力器を利用するものであってもよい。
【0018】
次に、視線検出装置1における視線検出方法の処理手順について図2を参照して説明する。図2に示す処理は、処理部13が記憶部から読みだしたプログラムを実行することにより、各ステップが順次行われる。
【0019】
ステップS10では、カメラ12は、車両2のエンジン等が始動すると、運転者20を撮影して映像信号を出力する。処理部13は、カメラ12から映像信号を1フレーム分取り込む。
【0020】
ステップS11では、処理部13は、顔検出処理を行う。具体的には、処理部13は、グレースケール化を含む、画像のデータ形式の変換(下処理)を行う。例えば、1フレーム内の画素位置毎に、輝度を「0~255」の範囲の階調で表す8ビットデータを、撮影時のフレーム内走査方向に合わせて縦方向及び横方向に並べた二次元(2D)配列の画像データを生成する。
【0021】
処理部13は、例えば「Viola-Jones法」を用いて顔検出を行い、1フレームの二次元画像データの中から顔を含む領域を顔領域31として抽出する。すなわち、顔の陰影差を特徴とし「Boosting」を用いた学習によって作成された検出器を使って顔の領域を抽出する。「Viola-Jones法」の技術は、例えば以下の文献に示されている。「P.viola and M.J.Jones,Rapid Object Detection Using a Boosted Cascade of Simple Features,IEEE CVPR(2001).」
【0022】
ステップS12では、処理部13は、ステップS11の顔検出処理で運転者画像30から顔領域31が検出されたか否かを判定する。顔領域31が検出された場合、ステップS13に進む。一方、顔領域31が検出されなかった場合、ステップS16に進む。
【0023】
ステップS13では、処理部13は、顔領域31の中から、例えば、上述したViola-Jones法を用いて眼領域33を検出する。処理部13は、例えば、眼球3Dモデルを用いるモデルベース手法によって視線を検出する場合、眼球中心を推定する。ここでは、検出した眼の矩形領域の中心座標を眼球中心と仮定する。例えば、目尻、目頭位置に基づき眼球中心を決定する方法や、顔の特徴点より骨格を推定し同時に眼球中心位置を算出する方法を利用することも想定される。
【0024】
ステップS14では、処理部13は、視線検出処理を行う。具体的には、処理部13は、検出した眼領域33に基づいて、運転者20の視線に対応する視線角度を算出し、当該視線角度に対して、必要に応じてデータの平均化、ノイズ除去等を行い、運転者20の視線に関する視線情報を生成する。
【0025】
ステップS15では、処理部13は、ステップS14(またはステップS18)で生成した視線情報を検出結果として出力して、本処理を終了する。
【0026】
一方、ステップS16では、処理部13は、予め設定された推定眼部領域32に対して眼検出処理を行う。具体的には、処理部13は、推定眼部領域32内で、例えば、上述したViola-Jones法を用いて眼領域33を検出する。
【0027】
ステップS17では、処理部13は、ステップS16で検出した眼領域33に基づいて、運転者画像30における眼領域33、すなわち両眼22,23の推定眼部領域32内の高さ方向の位置が規定値以内か否かを判定する。この判定の結果、両眼22,23の高さ方向の位置が規定値以内である場合は、ステップS18へ進む。一方、両眼22,23の高さ方向の位置が規定値以内でない場合は、図3のステップS20へ進む。このように、運転者画像30から顔領域31が検出できず、かつ、実際の眼22,23の位置と眼領域33の位置とが乖離していると、眼領域33の検出において、もっとも眼らしいものを検出したり、眼領域33の未検出となる。例えば、眼領域33の高さ方向の位置が規定値よりも離れている場合、もしくは未検出の場合は、実際の眼22,23の位置が眼領域33と乖離していると言える。
【0028】
ステップS18では、処理部13は、ステップS14における視線検出処理と同様に、ステップS16で検出された眼領域33に対して視線検出処理を行う。
【0029】
ステップS19では、処理部13は、ステップS18で検出された運転者20の視線が運転者20の眼22,23に対応するものか否かを判定する。具体的には、処理部13は、運転者20の視線に対応する視線情報に基づいて視線が交差し、検出された両眼22,23の推定眼部領域32内の高さ方向の位置が規定値以内であるか否かを判定する。この判定の結果、運転者20の視線が交差しており、検出された両眼22,23の推定眼部領域32内の高さ方向の位置が規定値以内である場合は、ステップS15へ進む。一方、運転者20の視線が交差しており、検出された両眼22,23の推定眼部領域32内の高さ方向の位置が規定値以内でない場合は、図3のステップS20へ進む。このように、両眼22,23の推定眼部領域32内の高さ方向の位置が規定値内にあったとしても眼でないものを検出していた場合、両眼22,23の視線方向は交差しない、もしくは規定値を超えた視線位置を示すこととなる。
【0030】
図3のステップS20では、処理部13は、画像差分検出モードに切り替えて、ステップS21~ステップS24を実行する。
【0031】
ステップS21では、処理部13は、報知部14に対して報知信号を出力し、上述したように、報知部14から運転者20に対して眼22,23の動作を促す内容の報知を行う。
【0032】
次に、ステップS22では、処理部13は、報知前の運転者画像30Aと報知後の運転者画像30B,30Cとを比較して画像変化を検出する。処理部13は、報知前の運転者画像30Aに対する報知後の運転者画像30B,30Cにおいて、変化した変化領域35を検出する。
【0033】
処理部13は、報知部14による報知時刻、運転者画像30の撮影時刻を参照し、例えば図5の(A)に示す報知時刻前の運転者画像30Aを読み出す。運転者画像30Aでは、眼領域33が推定眼部領域32外に存在している。処理部13は、図6に示すように、グレースケール化された運転者画像30Aの画像フレームにおいて、縦方向を数ピクセル単位(黒眼もしくは瞳孔と同等)に区切り、各範囲においてグレースケールヒストグラムを算出する。次に、処理部13は、報知時刻、撮影時刻に基づいて、例えば図5の(B)に示す報知時刻後の運転者画像30Bを読み出す。運転者画像30Bでは、一方の眼22が閉眼し、他方の眼23が開眼している。処理部13は、同様にして、グレースケール化された運転者画像30Bの画像フレームにおいて、縦方向を数ピクセル単位(黒眼もしくは瞳孔径と同等)に区切り、各範囲においてグレースケールヒストグラムを算出する。次に、処理部13は、報知時刻、撮影時刻に基づいて、例えば図5の(C)に示す報知時刻後で、かつ運転者画像30Bの撮影時刻後の運転者画像30Cを読み出す。運転者画像30Cでは、両眼22,23が開眼している。処理部13は、同様にして、グレースケール化された運転者画像30Cの画像フレームにおいて、縦方向を数ピクセル単位(黒眼もしくは瞳孔径と同等)に区切り、各範囲においてグレースケールヒストグラムを算出する。次に、処理部13は、運転者画像30A,30B,30Cのグレースケールヒストグラムを比較して、報知前後における画像の変化を検出する。運転者画像30における眼22,23が存在する範囲では、画像フレーム間で開眼時と閉眼時に黒眼もしくは瞳孔による低輝度スケール帯域の分布が変化するため、グレースケールヒストグラムにおいて輝度に差分がある領域を変化領域35として決定する。なお、本実施形態では、単に輝度の差分がある領域を変化領域としているが、輝度の差分が閾値以上ある領域を変化領域としてもよい。また、グレースケールヒストグラムにおける輝度の差分は、運転者20の両眼22,23のうち、少なくとも片眼の開閉動作により生じたものである。
【0034】
ステップS23では、処理部13は、報知前の運転者画像30Aに対する報知後の運転者画像30Bにおいて、変化した変化領域35があるか否かを判定する。変化領域35がある場合はステップS24へ進む。一方、変化領域35がない場合は、ステップS21へ戻り、報知部14から運転者20に対して眼22,23の動作を促す内容の報知を行う。なお、変化領域35が検出できず、報知部14による報知を繰り返す場合は、運転者20に対する報知の内容を異なるように構成してもよい。
【0035】
ステップS24では、処理部13は、図6に示すように、変化領域35を含むように運転者画像30における推定眼部領域32の位置を更新し、画像差分検出モードを終了して(ステップS25)、図2のステップS16以降の処理を行う。例えば、ステップS16では、処理部13は、図6に示すように、更新後の推定眼部領域32Aに対して眼検出処理を行う。具体的には、処理部13は、更新前の推定眼部領域32ではなく、更新後の推定眼部領域32A内で、例えばViola-Jones法を用いて眼領域33を検出する。
【0036】
以上説明した視線検出装置1は、処理部13が、運転者画像30における推定眼部領域32内で眼領域33を検出できなかった場合、報知部14により片眼の開閉動作を含む特定の動作を促す内容の報知を行う。処理部13は、報知前の運転者画像30Aに対する報知後の運転者画像30B,30Cにおいて、変化した変化領域35があると判定したときは、当該変化領域35を含むように推定眼部領域32の位置を更新し、更新後の推定眼部領域32A内で眼領域33を検出する。
【0037】
上記構成により、顔領域31を検出できず、予め設定された推定眼部領域32以外に眼領域33があったとしても、当該眼領域33を検出することができるので、視線を検出できず視線情報を生成できない状態があっても一時的なものとして、従来に比べて継続的に精度良く運転者の視線検出を行うことができる。また、図6の(A)、図6の(B)に示すように、顔21の一部を覆うマスク25などの遮蔽物を装着した運転者20の視線情報を容易に取得することが出来る。また、運転者20の姿勢が崩れたりした場合でも、運転者20に眼の動作を促す報知を与えることで、未検出の眼領域33を再度検出することが出来る。また、運転者20への報知に対する応答の可否を判定することができるので、例えば、運転者20の意識消失の検出をすることが出来る。また、特別な機器を使用することがないので、視線検出装置1を、例えば車載のドライバーモニタシステム等に搭載することが出来る。
【0038】
また、視線検出装置1は、処理部13が、運転者画像30から顔領域31を検出できず、かつ、推定眼部領域32内で検出された眼領域33に基づいて視線を検出した場合、当該視線に対応する視線情報が運転者20の眼22,23に対応するものでないときは、推定眼部領域32の位置を更新する。これにより、視線検出ができたとしても、それが実際の眼に基づくものでない場合があることから、誤った視線検出を抑制することができる。また、視線情報として取得したとしても、それが実際の眼22,23に対応するものでない場合に、視線情報として扱わないことから、精度が高い視線情報を取得することができる。
【0039】
また、視線検出装置1は、報知部14が、片眼の開閉動作を促す報知を行う。これにより、運転者20に対して運転時の安全に配慮した簡単な動作を行ってもらうことができる。
【0040】
また、本実施形態における視線検出方法は、処理部13が、処理工程にて、運転者画像30における推定眼部領域32内で眼領域33を検出できなかった場合、報知部14による報知を行う。処理部13は、処理工程にて、報知前の運転者画像30Aに対する報知後の運転者画像30B,30Cにおいて、変化した変化領域35があると判定したときは、当該変化領域35を含むように推定眼部領域32の位置を更新し、更新後の推定眼部領域32A内で眼領域33を検出する。これにより、上述した視線検出装置1により得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0041】
[変形例]
なお、上記実施形態では、本発明を視線検出装置1に適用した場合について説明したが、カメラ12と、処理部13に相当する処理装置と、報知部14に相当する報知装置とを備える視線検出システムに適用しても、上述した効果を得ることが可能である。
【0042】
また、本発明は、運転者20の身長が極端に高い、若しくは、低い場合に、顔21の一部が運転者画像30外にはみ出ることで正確に顔検出が行えないときでも、上述した効果を得ることが可能である。
【0043】
また、顔領域31の検出が出来ず、かつ眼領域33の検出及び視線検出ができない場合には、運転者20の姿勢崩れの他にも、右左折時や安全確認のための適切な行動の場合も含まれる。これらを検出しないようにするために、例えば、一定時間検出できなかった場合にのみ画像差分検出モードを実行するように構成してもよい。また、視線検出装置1を車載の地図情報やナビゲーション情報と連携させることで、運転者20の行動が適切な運転行動なのか、それとは無関係な検出エラーなのかを分けて判断することが出来る。
【0044】
上記実施形態では、報知部14は、運転者20に対して音声による報知を行っているが、これに限らず、車載のヘッドアップディスクプレイ等による視覚的な報知であっても、それら両方であってもよい。
【0045】
上記実施形態では、報知部14が、片眼の開閉動作を促す報知を行うが、これに限定されるものではない。例えば、両眼の開閉動作を促す報知を行うように構成してもよい。なお、両眼の開閉動作を促す場合、瞬きとの区別、及び運転時の安全に配慮したものであることが好ましい。
【0046】
また、上記実施形態及び変形例では、処理部13は、単一のプロセッサによって各処理機能が実現されるものとして説明したがこれに限らない。処理部13は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて各プロセッサがプログラムを実行することにより各処理機能が実現されてもよい。また、処理部13が有する処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、処理部13が有する処理機能は、その全部又は任意の一部をプログラムにて実現してもよく、また、ワイヤードロジック等によるハードウェアとして実現してもよい。
【0047】
また、上記実施形態及び変形例では、視線検出装置1は、自動車等の車両2に適用されているが、これに限定されず、例えば車両2以外の船舶や航空機等に適用してもよい。また、視線検出装置1は、カメラ12と、処理部13と、報知部14とに分かれているが、これに限定されず、一体で構成されていてもよい。
【0048】
以上で説明したプロセッサによって実行されるプログラムは、記憶回路等に予め組み込まれて提供される。なお、このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで、コンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 視線検出装置
2 車両
10 車室
12 カメラ
13 処理部
14 報知部
20 運転者
21 顔
22,23 眼
25 マスク
30,30A,30B,30C 運転者画像
31 顔領域
32,32A 推定眼部領域
33 眼領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7