(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】水切装置
(51)【国際特許分類】
B22D 11/124 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
B22D11/124 H
B22D11/124 J
(21)【出願番号】P 2021039265
(22)【出願日】2021-03-11
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】川口 浩志
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】実公昭45-021700(JP,Y1)
【文献】特公昭44-025041(JP,B1)
【文献】実開昭59-073064(JP,U)
【文献】特開2003-164949(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 11/00-11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造設備に設けられ、水切対象物の水切りを行う水切装置であって、
土台部と、
前記土台部に対して移動可能に設けられ、前記水切対象物を囲うように配置可能な水切部材と、
前記土台部に対して前記水切部材を駆動させ、前記水切対象物と前記水切部材との間に隙間を設けるように前記水切部材を前記水切対象物に追従させる駆動機構と、
前記水切部材の前記水切対象物側の端部から前記水切対象物に向かって斜め上向きに圧縮ガスを噴出する噴出部と、
を備
え、
前記水切部材は、
水切部材本体部と、
前記水切部材本体部の前記水切対象物側の端部から前記水切対象物に向かって斜め上向きに延びるように設けられたガス増速部と、
を備え、
前記噴出部は、前記ガス増速部よりも下側の位置から、前記水切対象物と前記ガス増速部との隙間に向かって前記圧縮ガスを噴出するように配置される、
水切装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水切装置であって、
前記駆動機構は、前記水切対象物が前記水切部材に到達するまでは、前記水切部材を閉状態とし、
前記駆動機構は、前記水切対象物が前記水切部材に到達したとき、前記水切部材を開状態とし、前記水切対象物を囲うように前記水切部材を配置させる、
水切装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水切装置であって、
前記土台部に対して前記水切対象物が移動する方向である送り方向から見たとき、前記水切部材に囲われる前記水切対象物の断面は、長方形であり、
前記水切部材は、前記水切対象物の前記断面の4辺と対向可能に4つ設けられ、
前記駆動機構は、3つの前記水切部材を駆動させる、
水切装置。
【請求項4】
請求項3に記載の水切装置であって、
前記土台部に対する前記水切部材の位置を制御する第1制御部を備え、
前記第1制御部は、前記水切対象物の前記断面の長辺の寸法に関する情報と、前記水切対象物の前記送り方向への移動に関する情報と、に基づいて、前記水切部材に囲まれる位置での前記水切対象物の前記断面の長辺の寸法である予測幅寸法を予測し、
前記第1制御部は、前記予測幅寸法に基づいて、前記水切対象物の前記断面の短辺に対向する前記水切部材の位置を制御する、
水切装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の水切装置であって、
前記土台部に対する前記水切部材の位置を制御する第2制御部を備え、
前記第2制御部は、前記水切対象物の前記断面の短辺の寸法に関する情報と、前記水切対象物の前記送り方向への移動に関する情報と、に基づいて、前記水切部材に囲まれる位置での前記水切対象物の前記断面の短辺の寸法である予測厚さ寸法を予測し、
前記第2制御部は、前記予測厚さ寸法に基づいて、前記水切対象物の前記断面の長辺に対向する前記水切部材の位置を制御する、
水切装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の水切装置であって、
前記水切部材と前記水切対象物との隙間の大きさを検出する隙間検出部と、
前記隙間検出部に検出された隙間の大きさに基づいて、前記土台部に対する前記水切部材の位置を制御する第3制御部と、
を備える、
水切装置。
【請求項7】
請求項
1~6のいずれか1項に記載の水切装置であって、
前記噴出部は、前記水切部材と前記水切対象物とが対向する領域に前記圧縮ガスを噴出し、前記水切部材と前記水切対象物とが対向しない領域への前記圧縮ガスの噴出を停止することが可能である、
水切装置。
【請求項8】
請求項
1~
7のいずれか1項に記載の水切装置であって、
前記水切部材の内部に設けられ、前記圧縮ガスが通るガス通路を備える、
水切装置。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の水切装置であって、
前記水切部材の上面は、前記水切対象物から離れるほど下側に配置されるように水平方向に対して傾斜する水切部材傾斜面を備える、
水切装置。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の水切装置であって、
前記土台部に固定され、前記土台部に対して前記水切部材を連続的に移動可能に支持し、前記土台部に対する前記水切部材の移動方向に延びるように設けられる軌条を備える、
水切装置。
【請求項11】
請求項
10に記載の水切装置であって、
前記軌条および前記水切部材は、前記土台部よりも上側に配置され、
前記土台部に対して前記水切対象物が移動する方向である送り方向から見たとき、前記水切部材に囲われる前記水切対象物の断面は、長方形であり、
前記水切対象物の前記断面は、2つの長辺と、2つの短辺と、を備え、
前記水切部材は、
前記長辺を構成する面に対向可能であり前記駆動機構に駆動させられる長辺側水切部材と、
前記短辺を構成する面に対向可能であり前記駆動機構に駆動させられる2つの短辺側水切部材と、
を備え、
前記短辺側水切部材は、前記長辺側水切部材と上下方向に重なるように配置される、
水切装置。
【請求項12】
請求項
11に記載の水切装置であって、
前記短辺側水切部材は、前記長辺側水切部材よりも上側に配置され、前記長辺側水切部材を支持する前記軌条よりも上側に配置され、
前記短辺側水切部材を支持する前記軌条は、前記長辺側水切部材の可動範囲よりも前記短辺が延びる方向における外側に配置される、
水切装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造設備に設けられ、水切対象物の水切りを行う水切装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1などに、従来の水切装置が記載されている(同文献の請求項1および
図5などを参照)。同文献に記載の技術では、水切対象物(同文献では鋳片)の寸法が変わっても、水切対象物から水を除去できるようにすることが図られている(同文献の段落0006などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献に記載の水切装置では、水切部材(同文献における水切手段)が、水切対象物に接触する。そのため、水切手段が破損するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、水切対象物の位置や寸法が変化しても水切り性能を維持することができるとともに、水切部材の破損を抑制することができる、水切装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
水切装置は、連続鋳造設備に設けられ、水切対象物の水切りを行う。水切装置は、土台部と、水切部材と、駆動機構と、を備える。前記水切部材は、前記土台部に対して移動可能に設けられ、前記水切対象物を囲うように配置可能である。前記駆動機構は、前記土台部に対して前記水切部材を駆動させ、前記水切対象物と前記水切部材との間に隙間を設けるように前記水切部材を前記水切対象物に追従させる。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、水切対象物の位置や寸法が変化しても水切り性能を維持することができるとともに、水切部材の破損を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1に示す水切装置20を上側Z1から見た図であり、水切対象物21の幅が最小、厚さが最大の状態を示す図である。
【
図3】
図2のF3-F3矢視図であり、水切装置20を右側Y1から見た図である。
【
図4】
図2に示すチャンバ31などを上側Z1から見た図である。
【
図5】
図2に示す水切部材60などを上側Z1から見た図である。
【
図6】
図5のF6矢視図であり、水切部材60などを前側X1から見た図である。
【
図7】
図5のF7矢視図であり、水切部材60などを後側X2から見た図である。
【
図8】
図5のF8矢視図であり、水切部材60などを右側Y1から見た図である。
【
図10】
図7に示す軌条50およびローラ70などを後側X2から見た図である。
【
図11】
図2相当図であり、水切対象物21の幅が最大、厚さが最小の状態を示す図である。
【
図12】
図11に示す軌条50および水切部材60などを上側Z1から見た図である。
【
図13】
図2相当図であり、水切部材60が全閉である状態を示す図である。
【
図14】
図13に示す軌条50および水切部材60などを上側Z1から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1~
図14を参照して、
図1に示す水切装置20を備える連続鋳造設備1について説明する。
【0010】
連続鋳造設備1は、連続的に鋳片21bを得るための設備である。連続鋳造設備1は、水平面に対して垂直(または略垂直、以下同様)に鋳片21bを送り出す設備(垂直型)でもよい。連続鋳造設備1は、水平面に対して垂直に鋳片21bを送り出した後、鋳片21bが水平方向に延びるように鋳片21bを曲げる設備(垂直曲げ型または湾曲型)でもよい。鋳片21bは、例えば鉄鋼である。連続鋳造設備1は、タンディッシュ11と、鋳型13と、ロール15と、水噴出装置17と、水切装置20と、を備える。
【0011】
タンディッシュ11は、溶けた金属が入れられる容器である。鋳型13は、タンディッシュ11から溶けた金属が流し込まれる型である。鋳型13は、金属が通ることが可能な、上下方向Zに貫通した内部空間(貫通孔)を備える。「上下方向Z」などの方向の詳細は後述する。鋳型13の内部で、溶けていた金属の外周部が凝固する。鋳型13の内部空間の寸法は、可変である(後述)。ロール15は、ダミーバ21a、および鋳型13から送り出された鋳片21bをガイドする。ロール15は、鋳型13から鋳片21bを引き抜いてもよい。ロール15は、円柱状または円筒状の部材である。ロール15は、鋳型13よりも下側Z2に配置される。ロール15は、複数設けられる。複数のロール15は、鋳型13を前後方向Xに挟むように配置され、上下方向Z(引出方向)に並ぶように配置される(ロールセグメントを構成する)。水噴出装置17は、鋳片21bの表面に水を掛け、鋳片21bを冷却する。例えば、水噴出装置17は、上下方向Zに並ぶロール15の間などに配置される。
【0012】
(連続鋳造設備1の作動の概要)
連続鋳造設備1による連続鋳造の開始時には、ダミーバ21aが、鋳型13内(さらに詳しくは鋳型13の内部空間)に入れられる。この状態で、溶けた金属が、タンディッシュ11から、ダミーバ21aより上側Z1の鋳型13内に注入される。次に、ダミーバ21aおよび鋳片21bが、鋳型13から下側Z2に引き抜かれる。その後、鋳片21bが、鋳型13から連続的に下側Z2に送り出される。このとき、ダミーバ21aが、ロール15の間を通る(ロール15にガイドされる)。また、鋳片21bが、ロール15の間を通りながら(ロール15にガイドされながら)、水噴出装置17から水を掛けられ、冷却される。ダミーバ21a、および水を掛けられた鋳片21bが、水切装置20を通り、水切装置20に水切りされる。一般的にはダミーバ21aを冷却する必要はないので、ダミーバ21aに水が掛けられる必要はない。一方、鋳片21bに掛けられた水がダミーバ21aの表面に流下するので、鋳片21bの表面だけでなく、ダミーバ21aの表面での水切りが必要になる。
【0013】
水切装置20は、水切対象物21の水切りを行う装置である。水切装置20は、水噴出装置17よりも下側Z2に配置される。水切装置20は、チャンバ31と、
図6に示す前側水切部材支柱41と、軌条支柱43と、
図5に示す軌条50と、水切部材60と、ローラ70と、
図2に示す駆動機構80と、
図1に示す制御装置90と、を備える。
【0014】
水切対象物21は、水切装置20による水切りの対象となる物である。水切対象物21は、鋳片21bおよびダミーバ21aの少なくともいずれかである。ここで、後述するチャンバ土台部31a(土台部)に対して水切対象物21が移動する方向を、「送り方向」(具体的には上側Z1から下側Z2に向かう向き)とする。
図2に示すように、水切部材60に囲われる水切対象物21の断面であって、送り方向から見た断面を、断面21cとする。
【0015】
断面21cの形状は、上下方向Zから見た鋳型13の内部空間の形状(図示なし)と略同じである。断面21cは、例えば多角形であり、例えば四角形であり、例えば長方形である。例えば、断面21cは、正方形でない長方形であり、2つの長辺(左右方向Yに延びる辺)と、2つの短辺(前後方向Xに延びる辺)と、を備える長方形である。この場合、鋳片21bは、板状などであり、スラブなどである。断面21cの左右方向Yにおける寸法を、断面21cの「幅」とする(水切対象物21についても同様)。断面21cの前後方向Xにおける寸法を、断面21cの「厚さ」とする(水切対象物21についても同様)。断面21cの幅および厚さの少なくともいずれかは、鋳造中に変化する場合がある。
図2に、断面21cの厚さが最大であり、断面21cの幅が最小である状態を示す。
図11に、断面21cの厚さが最小であり、断面21cの幅が最大である状態を示す。断面21cの形状には、
図2に示す状態と
図11に示す状態との間の状態(中間サイズ)が存在する(図示なし)。なお、
図2に示す断面21cは、多角形以外の形状でもよく、四角形以外の多角形でもよく、長方形以外の四角形でもよく、正方形でもよい。以下では、断面21cが、正方形でない長方形である場合について説明する。
図5に示すように、水切対象物21は、水切対象物前面21x1と、水切対象物後面21x2と、水切対象物右面21y1と、水切対象物左面21y2と、を備える。
【0016】
水切対象物前面21x1は、水切対象物21の前側X1の面である。チャンバ土台部31aに対する水切対象物前面21x1の位置は、鋳造中に変化しない、またはほぼ変化しない(以下の「変化しない」には、ほぼ変化しないことが含まれる)。水切対象物前面21x1は、基準となる面(基準側表面)である。なお、変形例として、チャンバ土台部31aに対する水切対象物前面21x1の位置は、鋳造中に変化してもよい。
【0017】
水切対象物後面21x2は、水切対象物21の後側X2の面(反基準側表面)である。鋳型13(
図1参照)の内部空間の寸法が鋳造中に変化すると、チャンバ土台部31aに対する水切対象物後面21x2の位置は、変化する(水切対象物右面21y1および水切対象物左面21y2も同様)。
【0018】
水切対象物右面21y1は、水切対象物21の右側Y1の面である。水切対象物左面21y2は、水切対象物21の左側Y2の面である。水切対象物右面21y1と水切対象物左面21y2との左右方向Yにおける中心の位置(ストランド中心Sc(
図6参照))は、通常、鋳造中に変化しない。チャンバ土台部31aに対する、水切対象物右面21y1の位置と、水切対象物左面21y2の位置とは、連動する。なお、水切対象物右面21y1と水切対象物左面21y2とは、互いに独立して移動してもよい。
【0019】
(方向の定義)
図1に示すように、上下方向Zは、水切対象物21の長手方向に延びる中心軸が延びる方向であって、水切部材60に囲まれた位置での水切対象物21の中心軸が延びる方向である。上下方向Zは、例えば鉛直方向(または略鉛直方向)である。上下方向Zにおいて、チャンバ土台部31aに対して水切対象物21が移動する方向(送り方向)を下側Z2とし、その逆側を上側Z1とする。
図5に示すように、前後方向Xは、複数の水切部材60のうち、ある水切部材60(例えば後側水切部材60B)の移動方向である。上下方向Zと前後方向Xとは、例えば直交し、略直交してもよく、交差してもよい。水切対象物21の断面21cが正方形でない長方形の場合、前後方向Xは、断面21cの短辺が延びる方向である。前後方向Xにおいて、水切部材60に囲まれた領域を狭くする方向に後側水切部材60Bが移動するときの、後側水切部材60Bの移動の向き(
図5、
図12参照)を、前側X1とする。前後方向Xにおける前側X1とは反対側を、後側X2とする。上下方向Zおよび前後方向Xのそれぞれに直交する方向を左右方向Yとする。左右方向Yは、上下方向Zおよび前後方向Xのそれぞれに、略直交する方向、または交差する方向でもよい。左右方向Yにおいて、前側X1を向いたときの右を右側Y1とし、右側Y1とは反対側を左側Y2とする。
【0020】
チャンバ31は、
図1に示すように、水切部材60を収容する容器である。チャンバ31は、ロール15を収容してもよく、水噴出装置17を収容してもよい。チャンバ31は、チャンバ土台部31aと、
図2に示すチャンバ開口31bと、チャンバフェンス31c(
図3参照)と、チャンバ壁31dと、を備える。
【0021】
チャンバ土台部31a(土台部)は、軌条50および水切部材60を下側Z2から支持する土台である。チャンバ土台部31aは、チャンバ31の下側Z2部分(底部)である(
図1参照)。なお、軌条50および水切部材60を下側Z2から支持する土台部が、チャンバ31とは別に設けられてもよい。例えば、チャンバ土台部31aは、水平方向または略水平方向に延びるように設けられる板状などである。チャンバ土台部31aは、前後方向Xおよび左右方向Yに延びるように設けられる。チャンバ土台部31aは、水平方向に対して傾斜することが好ましい(
図1参照)。この傾斜が設けられる場合、水蒸気爆発を抑制することができる(詳細は後述する水切部材傾斜面60Bb(
図9参照)の説明を参照)。
【0022】
チャンバ開口31bは、水切対象物21が通ることが可能な開口(貫通孔)である。チャンバ開口31bは、チャンバ土台部31aに設けられる。例えば、チャンバ開口31bは、上下方向Zから見て長方形などである。チャンバ開口31bの位置および大きさは、水切対象物21の幅および厚さの少なくともいずれかが最大のときでも、水切対象物21がチャンバ開口31bを通過できるように設定される。チャンバ開口31bの位置および大きさは、水切対象物21の曲がりや蛇行を許容する程度の、水切対象物21との隙間を確保できるように設定される。
【0023】
チャンバフェンス31cは、
図3に示すように、チャンバ土台部31a上の水がチャンバ開口31bから溢れ出ることを抑制する。チャンバフェンス31cは、チャンバ土台部31aから上側Z1に突出する。
図4に示すように、チャンバフェンス31cは、チャンバ開口31bの周囲の全周に設けられる。
【0024】
チャンバ壁31dは、
図1に示すように、チャンバ土台部31aから上側Z1に延びるように設けられ、チャンバ31の側面である。
図2に示すように、チャンバ壁31dは、水切部材60および軌条50を、前後方向Xおよび左右方向Yから囲う。
【0025】
前側水切部材支柱41は、
図6に示すように、チャンバ土台部31aに対して前側水切部材60A(長辺側水切部材)(後述)を支持する支柱である。前側水切部材支柱41は、チャンバ土台部31aに立てられ、チャンバ土台部31aから上側Z1に延びるように設けられる(軌条支柱43も同様)。前側水切部材支柱41は、複数(
図6に示す例では3つ)設けられる。複数の前側水切部材支柱41は、前側水切部材60Aを架け渡すように、前側水切部材60Aを支持する。前側水切部材支柱41は、前側水切部材60Aとチャンバ土台部31aとの間に空間S41が設けられるように配置される。空間S41があることにより、チャンバ土台部31aの水流が前側水切部材支柱41に遮られることが抑制される(下記の空間S43も同様)。また、空間S41があることにより、チャンバ土台部31aに堆積物(例えばスケール)が溜まることが抑制される(下記の空間S43も同様)。
【0026】
軌条支柱43は、チャンバ土台部31aに対して軌条50を支持する支柱である。軌条支柱43は、チャンバ土台部31aに立てられ、チャンバ土台部31aから上側Z1に延びるように設けられる。軌条支柱43は、複数設けられる。軌条50は複数設けられるところ、それぞれの軌条50は、複数(
図6に示す例では2つ)の支柱に支持される。複数の軌条支柱43は、軌条50を架け渡すように、軌条50を支持する。軌条支柱43は、チャンバ土台部31aと軌条50との間に空間S43が設けられるように配置される。
【0027】
軌条50は、
図5に示すように、チャンバ土台部31aに対して水切部材60を連続的に移動可能に支持する。軌条50は、チャンバ土台部31aに対する水切部材60の移動方向に延びるように設けられる(後述)。軌条50は、チャンバ土台部31aに固定される。軌条50は、チャンバ土台部31aよりも上側Z1に配置され、チャンバ土台部31aに下側Z2から支持される。軌条50は、軌条支柱43(
図6参照)を介してチャンバ土台部31aに固定される。軌条50は、チャンバ土台部31aに対して固定された水切部材60(具体的には前側水切部材60A)を介してチャンバ土台部31aに固定されてもよい。なお、軌条50は、チャンバ土台部31aとは異なる、図示しない土台部から吊り下げられてもよい。ただし、通常、水切部材60よりも上側Z1に、
図1に示すロール15およびロール15を支持するスタンドなどが配置される。そのため、
図5に示す軌条50を上側Z1から支持するための土台部の配置スペースを確保することは困難である。そのため、軌条50は、チャンバ土台部31aに下側Z2から支持されることが好ましい。軌条50は、後用軌条50Bと、右用軌条50Cと、左用軌条50Dと、を備える。
【0028】
後用軌条50Bは、後側水切部材60Bを前後方向Xに移動可能に支持する。
図4に示すように、後用軌条50Bは、チャンバ開口31bよりも右側Y1、およびチャンバ開口31bよりも左側Y2に配置される。なお、
図4では、軌条50の位置を二点鎖線で示した。後用軌条50Bは、後用第1軌条50B1(第1軌条)と、後用第2軌条50B2(第2軌条)と、を備える。
【0029】
後用第1軌条50B1(第1軌条)は、チャンバ開口31bよりも、左右方向Yの一方側(例えば右側Y1)に配置される。後用第1軌条50B1は、前後方向Xに延びるように設けられ、例えば棒状である(後用第2軌条50B2も同様)。
図10に示すように、後用第1軌条50B1が延びる方向(すなわち前後方向X)から見たとき、後用第1軌条50B1の断面は、円形または略円形である。後用第1軌条50B1は、上側Z1に凸の形状である突出部50B1a(凸状部)を備える。突出部50B1aがあることにより、後用第1軌条50B1上の堆積物(例えばスケール)が落下しやすいので、後用第1軌条50B1上に堆積物が溜まることが抑制される。突出部50B1aは、第1ローラ71の左右方向Yへの移動を制限する(後述)。
【0030】
後用第2軌条50B2(第2軌条)は、
図4に示すように、チャンバ開口31bに対して、後用第1軌条50B1が設けられる側とは反対側(例えば左側Y2)に配置される。後用第2軌条50B2は、「軌条対向方向」の間隔を後用第1軌条50B1との間にあけて配置される。後用軌条50Bにおける「軌条対向方向」は、チャンバ土台部31aに対する後側水切部材60Bの移動方向に交差する水平方向である。後用軌条50Bにおける「軌条対向方向」は、後用第1軌条50B1と後用第2軌条50B2とが対向する方向であり、具体的には左右方向Yである。
図10に示すように、後用第2軌条50B2が延びる方向(すなわち前後方向X)から見たとき、後用第2軌条50B2の断面は、略円形である。後用第2軌条50B2は、突出部50B2aと、平面部50B2bと、を備える。
【0031】
突出部50B2aは、後用第2軌条50B2のうち上側Z1に凸の形状の部分である。突出部50B2aがあることにより、後用第2軌条50B2上の堆積物(例えばスケール)が落下しやすいので、後用第2軌条50B2上に堆積物が溜まることが抑制される。
【0032】
平面部50B2bは、後用第2軌条50B2のうち水平方向(または略水平方向)に延びる部分である。平面部50B2bは、第2ローラ72の軌条対向方向(具体的には左右方向Y)への移動を許容する(後述)。平面部50B2bは、後用第2軌条50B2の上側Z1部分に設けられる。
【0033】
右用軌条50Cは、
図5に示すように、右側水切部材60C(短辺側水切部材)を左右方向Yに移動可能に支持する。
図4に示すように、右用軌条50Cは、チャンバ開口31bよりも前側X1および後側X2に配置される。右用軌条50Cは、右用第1軌条50C1(第1軌条)と、右用第2軌条50C2(第2軌条)と、を備える。
【0034】
右用第1軌条50C1(第1軌条)は、チャンバ開口31bよりも、前後方向Xの一方側(例えば後側X2)に配置される。右用第1軌条50C1は、左右方向Yに延びるように設けられ、例えば棒状である(右用第2軌条50C2も同様)。例えば、
図8に示すように、右用第1軌条50C1は、後用軌条50Bよりも上側Z1に配置され、前側水切部材60Aよりも上側Z1に配置される。右用第1軌条50C1の位置の詳細は後述する。右用第1軌条50C1が延びる方向(すなわち左右方向Y)から見たときの右用第1軌条50C1の断面は、
図10に示す、前後方向Xから見た後用第1軌条50B1の断面と同様に構成される。具体的には、右用第1軌条50C1(
図8参照)は、後用第1軌条50B1の突出部50B1aと同様の突出部(凸状部)を備える。
【0035】
右用第2軌条50C2(第2軌条)は、
図4に示すように、チャンバ開口31bに対して、右用第1軌条50C1が設けられる側とは反対側(例えば前側X1)に配置される。右用第2軌条50C2は、「軌条対向方向」の間隔を右用第1軌条50C1との間にあけて配置される。右用軌条50Cにおける「軌条対向方向」は、右用第1軌条50C1と右用第2軌条50C2とが対向する方向であり、具体的には前後方向Xである。
図8に示すように、右用第2軌条50C2が延びる方向(すなわち左右方向Y)から見たときの右用第2軌条50C2の断面は、
図10に示す、前後方向Xから見た後用第2軌条50B2の断面と同様に構成される。具体的には、右用第2軌条50C2(
図8参照)は、後用第2軌条50B2の突出部50B2aおよび平面部50B2bと同様の、突出部および平面部を備える。
【0036】
左用軌条50Dは、
図5に示すように、左側水切部材60D(短辺側水切部材)を左右方向Yに移動可能に支持する。左用軌条50Dは、右用軌条50Cと左右方向Yに対称(または略対称)に構成される。左用軌条50Dは、左用第1軌条50D1(第1軌条)と、左用第2軌条50D2(第2軌条)と、を備える。
図4に示すように、左用第1軌条50D1(第1軌条)は、チャンバ開口31bよりも前後方向Xの一方側(例えば後側X2)に配置される。左用第2軌条50D2(第2軌条)は、チャンバ開口31bに対して、左用第1軌条50D1が設けられる側とは反対側(例えば前側X1)に配置される。
【0037】
水切部材60は、
図1に示すように、水切部材60よりも下側Z2に水が落下するのを抑制するための部材である。水切部材60は、チャンバ土台部31aよりも上側Z1に配置される。水切部材60は、チャンバ土台部31aと上下方向Zに対向するように配置される。水切部材60は、チャンバ土台部31aに対して移動可能に設けられる。
図5に示すように、水切部材60は、軌条50に対して移動可能に設けられ、軌条50にガイドされる(
図5および
図12を参照)。ここで、
図1に示す水切対象物21が水切部材60に到達していない状態を「水切対象物21の到達前」とする。さらに詳しくは、「水切対象物21の到達前」は、水切対象物21が水切部材60よりも上側Z1に配置され、かつ、水切対象物21の下側Z2端部と水切部材60との上下方向Zにおける距離が「所定距離」を超えている状態である。水切対象物21の下側Z2端部と水切部材60との上下方向Zにおける距離が「所定距離」以下の状態、もしくは、水切対象物21が水切部材60に対して同じ高さまたは下側Z2に配置されている状態を「水切対象物21の到達後」とする。
【0038】
この水切部材60は、水切対象物21の到達前には、
図2に示すチャンバ開口31bから水が落下するのを抑制するように配置される。具体的には、水切対象物21の到達前には、水切部材60は、チャンバ開口31bを遮蔽するように配置される(遮蔽部材として機能する)(
図14参照)。
【0039】
この水切部材60は、水切対象物21の到達後には、水切対象物21の水切りを行う。水切部材60は、水切対象物21の到達後には、水切対象物21の表面に付いた水が水切部材60よりも下側Z2に落ちるのを抑制する。水切部材60は、水切対象物21の到達後には、水切対象物21の周囲(空中)の水が、水切部材60よりも下側Z2に落ちるのを抑制する。具体的には、水切部材60は、水切対象物21の到達後には、水切対象物21を囲うように配置される。以下では、主に、水切対象物21の到達後であって、水切部材60が水切対象物21を囲っている状態について説明する。
図5に示すように、水切部材60は、水切対象物21に対向する。水切部材60は、水切対象物21に接近して配置され、水切対象物21との間に隙間をあけて配置される。水切部材60は、水切対象物21の断面21cの4辺と対向可能に4つ設けられる。水切部材60は、前側水切部材60Aと、後側水切部材60Bと、右側水切部材60Cと、左側水切部材60Dと、を備える。
【0040】
前側水切部材60A(長辺側水切部材)は、断面21cの長辺を構成する面に対向可能であり、具体的には水切対象物前面21x1に対向可能である。前側水切部材60Aは、水切対象物前面21x1と前後方向Xに対向し、水切対象物前面21x1との間に隙間をあけて配置される。前側水切部材60Aの後側X2の端部は、水切対象物前面21x1に沿うように配置され、さらに詳しくは、水切対象物前面21x1と平行または略平行に配置される。
【0041】
この前側水切部材60Aは、上下方向Zから見て長方形である(後側水切部材60B、右側水切部材60C、および左側水切部材60Dも同様)。上下方向Zから見たとき、前側水切部材60Aの長辺は左右方向Yであり、前側水切部材60Aの短辺は前後方向Xである(後側水切部材60Bについても同様)。前側水切部材60Aは、板状または略板状である(後側水切部材60B、右側水切部材60C、および左側水切部材60Dも同様)。上記のように、チャンバ土台部31aに対する水切対象物前面21x1の位置は、鋳造中に変化しない。そのため、前側水切部材60Aは、チャンバ土台部31aに対して固定(固設)される。なお、チャンバ土台部31aに対する水切対象物前面21x1の位置が鋳造中に変化する場合は、前側水切部材60Aは、チャンバ土台部31aに対して可動でもよい。この前側水切部材60Aの構造は、後述する後側水切部材60Bの構造と同様であり、例えば後側水切部材60Bと前後方向Xに対称または略対称である。
【0042】
後側水切部材60B(長辺側水切部材)は、断面21cの長辺を構成する面のうち前側水切部材60Aが対向する面とは反対側の面に対向可能であり、具体的には、水切対象物後面21x2に対向可能である。後側水切部材60Bは、水切対象物後面21x2と前後方向Xに対向し、水切対象物後面21x2との間に隙間をあけて配置される。後側水切部材60Bの前側X1の端部は、水切対象物後面21x2に沿うように配置され、さらに詳しくは、水切対象物後面21x2と平行または略平行に配置される。
【0043】
この後側水切部材60Bは、後用軌条50Bに支持される。
図7に示すように、後側水切部材60Bは、後用軌条50Bに下側Z2から支持される。後側水切部材60Bは、後用軌条50Bの横(同じ高さレベルまたは略同じ高さレベル)に配置される。さらに詳しくは、後側水切部材60Bの下側Z2端部は、後用軌条50Bの上側Z1端部よりも下側Z2に配置され、後側水切部材60Bの上側Z1端部は、後用軌条50Bの下側Z2端部よりも上側Z1に配置される。なお、後側水切部材60Bは、後用軌条50Bの横に配置されなくてもよく、例えば後用軌条50Bよりも上側Z1にのみ配置されてもよい。この場合、後側水切部材60Bは、前後方向Xから見て門型などでもよく、さらに詳しくは、後用第1軌条50B1および後用第2軌条50B2のそれぞれから上側Z1に延びる部分と、これらの部分同士をつなぐ部分と、を備えてもよい。
【0044】
この後側水切部材60Bは、
図5に示すチャンバ土台部31aに対して可動である。後側水切部材60Bの移動は、後用軌条50Bにガイドされる(後述)。後側水切部材60Bは、前後方向X(水切対象物21の断面21cの厚さ方向)に可動である。後側水切部材60Bは、水切対象物21が到達前であるか到達後であるかに応じて位置を変え、断面21cの厚さに応じて位置を変える。
図2および
図5に、断面21cの厚さが最大の状態であって、後側水切部材60Bの可動範囲のうち最も後側X2に後側水切部材60Bが配置された状態(全開状態)を示す。
図8において実線で示す後側水切部材60Bは、全開状態の後側水切部材60Bである。
図11および
図12に、断面21cの厚さが最小のときの後側水切部材60Bの状態を示す。
図8に、断面21c(
図12参照)の厚さが最小のときの後側水切部材60B-1を示す。
図13および
図14に、水切対象物21(
図5参照)が到達前の状態であって、後側水切部材60Bの可動範囲のうち最も前側X1に後側水切部材60Bが配置された状態(全閉状態)を示す。
図8に、全閉状態の後側水切部材60B-2を示す。全閉状態の後側水切部材60B-2の前側X1端部は、前側水切部材60Aとの間にわずかな隙間があくように配置されてもよく、前側水切部材60Aと上下方向Zに重なってもよく、前側水切部材60Aと接触してもよい。
【0045】
この後側水切部材60Bは、
図9に示すように、水切部材本体部60Baと、水切部材傾斜面60Bbと、ガス増速部60Bcと、噴出部60Bdと、ガス通路60Beと、を備える(
図8に示す前側水切部材60Aも同様)。
【0046】
水切部材本体部60Baは、
図9に示すように、後側水切部材60Bの本体部分であり、上下方向Zから見て長方形状などの部材である。
【0047】
水切部材傾斜面60Bbは、水切部材60(ここでは後側水切部材60B)の上面(上側Z1の面)の水を、水切対象物21から離れる向きに流す。水切部材傾斜面60Bbは、後側水切部材60Bの上側Z1の面に設けられる。水切部材傾斜面60Bbは、水切対象物21から離れるほど下側Z2に配置されるように、水平方向に対して傾斜する。具体的には、水切部材傾斜面60Bbは、後側X2ほど下側Z2に配置されるように水平方向に対して傾斜する(後側X2に向かって下る勾配を有する)。
図5に示す水切部材傾斜面60Bbは、水切部材傾斜面60Bbの左右方向Yの中央部から右側Y1および左側Y2のそれぞれに向かって下る勾配を有してもよい(
図8に示す右側水切部材60Cの形状を参照)。
図9に示すように、後側水切部材60Bの上面に水切部材傾斜面60Bbが設けられるので、後側水切部材60Bの上面の水が水切対象物21から離れる向き(例えば後側X2など)に流れ、後側水切部材60Bの上面に水が溜まることが抑制される。よって、鋳片21b(
図1参照)のブレークアウト時の水蒸気爆発が抑制される。ブレークアウトは、鋳片21bの外周部の固体の金属が破れ、鋳片21bから内部の溶融金属が流出することである。後側水切部材60Bに水切部材傾斜面60Bbが設けられるので、後側水切部材60Bの上面の水が水切対象物21から離れる向き(例えば後側X2など)に流れ、後側水切部材60Bと水切対象物21との隙間に水が流入(逆流)することが抑制される。
【0048】
ガス増速部60Bcは、噴出部60Bdからの圧縮ガスGの風速を増し、水切り性能を向上させるための部材である。ガス増速部60Bcは、水切対象物21と対向するように配置され、水切対象物21に近接するように配置され、水切対象物21との間にわずかな隙間をあけて配置される。後述するように、噴出部60Bdから、水切対象物21とガス増速部60Bcとの隙間に向けて圧縮ガスGが噴出される。この隙間をガスが通過する際に、ガスの風速が増し、水を効率よく吹き飛ばすことができるように、ガス増速部60Bcが配置される。具体的には、ガス増速部60Bcは、ガス増速部60Bcと水切対象物21との水平方向(具体的には前後方向X)における間隔が、上側Z1に向かって徐々に狭くなるように配置される。ガス増速部60Bcは、水切部材本体部60Baの上面に取り付けられる。ガス増速部60Bcは、水切部材本体部60Baのうち水切対象物21側(具体的には前側X1)の端部から、水切対象物21に向かって斜め上向きに延びるように設けられる。上記「斜め上向き」の「上向き」は、鉛直上向きであり、例えば上側Z1である(以下の「斜め上向き」も同様)。ガス増速部60Bcは、前側X1ほど上側Z1に配置されるように、水平方向に対して傾斜して配置される。ガス増速部60Bcは、例えば板状である。例えば、ガス増速部60Bcは、下側Z2かつ水切対象物21側(ここでは前側X1)に凸の形状を有する。左右方向Yから見たとき、ガス増速部60Bcは、例えば曲線状部分を有し、例えば湾曲する部分を有し、例えば弧状の部分を有する。左右方向Yから見たとき、ガス増速部60Bcは、直線状でもよい。
【0049】
噴出部60Bdは、水を吹き飛ばすための圧縮ガスGを噴出する。噴出部60Bdから噴出される圧縮ガスGは、水切対象物21の表面に沿って流下する水を吹き飛ばす。この圧縮ガスGは、水切部材60と水切対象物21との隙間から落下しようとする水を吹き飛ばす。この圧縮ガスGは、空気でもよく、空気以外のガスでもよい。噴出部60Bdは、水切部材60の水切対象物21側(具体的には前側X1)の端部に配置される。噴出部60Bdは、ガス増速部60Bcよりも下側Z2に配置される。噴出部60Bdは、水切対象物21に向かって(具体的には前側X1に向かって)、斜め上向きに圧縮ガスGを噴出する噴出口を備える。噴出部60Bdは、水切対象物21とガス増速部60Bcとの隙間に向かって圧縮ガスGを噴出するように構成される。噴出部60Bdは、水切対象物21(具体的には水切対象物後面21x2)と対向するように配置される。
図5に示すように、噴出部60Bdは、水切対象物後面21x2に沿うように配置され、水切対象物後面21x2と平行または略平行に延びるように配置され、具体的には左右方向Yに延びるように配置される。なお、
図5では、説明の便宜上、ガス増速部60Bc(
図9参照)に相当する部分に噴出部60Bdの符号を付した。また、水切部材60と水切対象物21との隙間が十分小さい場合は、噴出部60Bdが設けられなくても、水切対象物21の水切りを行うことができる。
【0050】
この噴出部60Bdは、水切対象物後面21x2に沿う方向(具体的には左右方向Y)に、複数の噴出ゾーンに分けられる。噴出部60Bdが圧縮ガスG(
図9参照)を噴出するか否かが、水切対象物21の寸法に応じて、噴出ゾーンごとに切り替えられる。これにより、圧縮ガスGの消費量が削減され、ガスを圧縮するためのエネルギーが削減される。
図5に示す例では、噴出部60Bdは、第1噴出ゾーンZB1と、第2噴出ゾーンZB2と、第3噴出ゾーンZB3と、に分けられる(3つの噴出ゾーンに分けられる)。第1噴出ゾーンZB1は、左右方向Y中央の噴出ゾーンである。第2噴出ゾーンZB2は、第1噴出ゾーンZB1よりも右側Y1の噴出ゾーンである。第3噴出ゾーンZB3は、第1噴出ゾーンZB1よりも左側Y2の噴出ゾーンである。
【0051】
この噴出部60Bdは、後側水切部材60Bと水切対象物21とが対向する領域に、圧縮ガスG(
図9参照)を噴出する。噴出部60Bdは、水切部材60と水切対象物21とが対向しない領域への圧縮ガスGの噴出を停止することが可能である。具体的には、
図5に示す例では、水切対象物21の断面21cの幅が最小である。この場合、第1噴出ゾーンZB1の噴出部60Bdが、圧縮ガスGを噴出し、第2噴出ゾーンZB2および第3噴出ゾーンZB3の噴出部60Bdが、圧縮ガスGの噴出を停止する。
図12に示す例では、断面21cの幅が最大である。この場合、第1噴出ゾーンZB1、第2噴出ゾーンZB2、および第3噴出ゾーンZB3のそれぞれの噴出部60Bdが、圧縮ガスGを噴出する。断面21cの幅が最小から最大の間の幅(中間幅)の場合、この例では、第1噴出ゾーンZB1、第2噴出ゾーンZB2、および第3噴出ゾーンZB3のそれぞれの噴出部60Bdが、圧縮ガスGを噴出する。噴出ゾーンの数が3よりも多い場合には、断面21cの幅が広くなるにしたがって、圧縮ガスGを噴出する噴出ゾーンを広くしてもよい。
図14に示すように、水切対象物21(
図5参照)の到達前は、第1噴出ゾーンZB1、第2噴出ゾーンZB2、および第3噴出ゾーンZB3の噴出部60Bdが、圧縮ガスGの噴出を停止してもよい。なお、前側水切部材60Aにも、後側水切部材60Bと同様の複数の噴出ゾーンがある。
【0052】
ガス通路60Beは、
図9に示すように、圧縮ガスGが通る通路である。ガス通路60Beは、後側水切部材60B(水切部材60)の内部に設けられる。さらに詳しくは、ガス通路60Beは、水切部材本体部60Baの内部の空間である。ガス通路60Beが後側水切部材60Bの内部に設けられることにより、ガス通路60Beの配置スペースを容易に確保でき、水切装置20(
図1参照)を狭小空間に配置しやすくなる。ガス通路60Beが後側水切部材60Bの内部に設けられることにより、後側水切部材60Bが圧縮ガスGにより冷却され、後側水切部材60Bの熱変形が抑制される。なお、ガス通路60Beは、後側水切部材60Bの外部に配置されてもよい。
【0053】
右側水切部材60C(短辺側水切部材)は、
図5に示すように、断面21cの短辺を構成する面に対向可能であり、さらに詳しくは水切対象物右面21y1に対向可能である。右側水切部材60Cは、水切対象物右面21y1と左右方向Yに対向し、水切対象物右面21y1との間に隙間をあけて配置される。右側水切部材60Cの左側Y2の端部は、水切対象物右面21y1に沿うように配置され、さらに詳しくは、水切対象物右面21y1と平行または略平行に配置される。
【0054】
この右側水切部材60Cは、長辺側水切部材(具体的には前側水切部材60Aおよび後側水切部材60B)と上下方向Zに重なるように(積層するように)配置される。
図8に示すように、右側水切部材60Cは、前側水切部材60Aおよび後側水切部材60Bと接触することなく、前側水切部材60Aおよび後側水切部材60Bよりも上側Z1に配置される。なお、右側水切部材60Cは、前側水切部材60Aおよび後側水切部材60Bよりも下側Z2に配置されてもよい。
図5に示すように、右側水切部材60Cは、上下方向Zから見て長方形であり、右側水切部材60Cの長辺は前後方向Xであり、右側水切部材60Cの短辺は左右方向Yである(左側水切部材60Dについても同様)。右側水切部材60Cの前後方向Xの長さは、後側水切部材60Bが全開状態のときの、前側水切部材60Aの前側X1端部から後側水切部材60Bの後側X2端部までの前後方向Xにおける距離よりも長い。
図2に示すように、右側水切部材60Cの左右方向Yの長さは、断面21cの幅が最も狭い状態のときの、水切対象物右面21y1(
図5参照)からチャンバ開口31bの右側Y1の端までの左右方向Yにおける距離よりも長い。この場合、右側水切部材60Cが、チャンバ開口31bのうち水切対象物21よりも右側Y1の部分を塞ぐことができる。例えば
図5に示す例では、右側水切部材60Cの左右方向Yの長さは、例えば断面21cの幅が最も狭い状態のときの、水切対象物右面21y1から後側水切部材60Bの右側Y1の端までの左右方向Yにおける距離よりも短い。変形例として、右側水切部材60Cと左側水切部材60Dとが、左右方向Yに閉じられることで水切部材60が全閉状態になってもよい(図示なし)。この変形例の場合は、右側水切部材60Cの左右方向Yの長さは、右側水切部材60Cと左側水切部材60Dとでチャンバ開口31bを塞ぐことが可能な長さに設定され、具体的には例えば、チャンバ開口31bの左右方向Yの長さの半分よりも長く設定される。
【0055】
この右側水切部材60Cは、右用軌条50Cに支持される。
図8に示すように、右側水切部材60Cは、右用軌条50Cに下側Z2から支持される。後側水切部材60Bが後用軌条50Bの横に配置されても横に配置されなくてもよいのと同様に、右側水切部材60Cは、右用軌条50Cの横に配置されても横に配置されなくてもよい。
【0056】
この右側水切部材60Cは、
図5に示すチャンバ土台部31aに対して可動である。右側水切部材60Cの移動は、右用軌条50Cにガイドされる(後述)。右側水切部材60Cは、左右方向Y(水切対象物21の断面21cの幅方向)に可動である。右側水切部材60Cは、断面21cの幅に応じて位置を変える。
図2および
図5に、断面21cの幅が最小の状態(幅最小状態)であって、右側水切部材60Cの可動範囲のうち最も左側Y2に右側水切部材60Cが配置された状態を示す。
図7において実線で示す右側水切部材60Cは、断面21cが幅最小状態のときの右側水切部材60Cである。
図11および
図12に、断面21cの幅が最大の状態(幅最大状態)であって、右側水切部材60Cの可動範囲のうち最も右側Y1に右側水切部材60Cが配置された状態(全開状態)を示す。
図7に、全開状態のときの右側水切部材60C-1を二点鎖線で示す。この例では、
図14に示すように、水切対象物21(
図2参照)が到達前の状態のとき、前側水切部材60Aと後側水切部材60Bとが、チャンバ開口31b(
図2参照)を遮蔽する。そのため、水切対象物21が到達前の状態のとき、右側水切部材60Cは、どの位置に配置されてもよい。なお、水切対象物21が到達前の状態のとき、右側水切部材60Cと左側水切部材60Dとが、チャンバ開口31bを遮蔽してもよい。
【0057】
この右側水切部材60Cは、後側水切部材60B(
図9参照)と同様に、
図7に示すように、水切部材本体部60Caと、水切部材傾斜面60Cbと、ガス増速部60Ccと、噴出部60Cdと、ガス通路(図示なし)と、を備える。これらの要素について、後側水切部材60B(
図9参照)との相違点を説明する。
【0058】
水切部材傾斜面60Cbは、例えば、右側Y1ほど下側Z2に配置されるように、水平方向に対して傾斜する(右側Y1に向かって下る勾配を有する)。
図8に示すように、水切部材傾斜面60Cbは、前側X1および後側X2のそれぞれに向かって下る勾配を有する。
図7に示すように、ガス増速部60Ccは、左側Y2ほど上側Z1に配置されるように、水平方向に対して傾斜して配置される。
【0059】
噴出部60Cdは、左側Y2に向かって、斜め上向きに圧縮ガスGを噴出するように構成される(
図9に示す噴出部60Bdを参照)。
図5に示すように、噴出部60Cdは、水切対象物右面21y1に沿う方向(具体的には前後方向X)に、複数の噴出ゾーンに分けられる。
図5に示す例では、噴出部60Cdは、第1噴出ゾーンZC1と、第2噴出ゾーンZC2と、に分けられる(2つの噴出ゾーンに分けられる)。第2噴出ゾーンZC2は、第1噴出ゾーンZC1よりも後側X2の噴出ゾーンである。
図5に示す例では、水切対象物21の断面21cの厚さが最大である。この場合、第1噴出ゾーンZC1および第2噴出ゾーンZC2の噴出部60Cdが、圧縮ガスG(
図9参照)を噴出する。
図12に示す例では、断面21cの厚さが最小である。この場合、第1噴出ゾーンZC1の噴出部60Cd(
図5参照)が圧縮ガスGを噴出し、第2噴出ゾーンZC2の噴出部60Cd(
図5参照)が圧縮ガスGの噴出を停止する。噴出ゾーンの数が2よりも多い場合には、断面21cの厚さが広くなるにしたがって、圧縮ガスGを噴出する噴出ゾーンを広くしてもよい。
図14に示すように、水切対象物21(
図5参照)の到達前は、第1噴出ゾーンZC1および第2噴出ゾーンZC2の噴出部60Cdが圧縮ガスGの噴出を停止してもよい。
【0060】
左側水切部材60D(短辺側水切部材)は、
図5に示すように、断面21cの短辺を構成する面のうち右側水切部材60Cが対向する面とは反対側の面に対向可能である。具体的には、左側水切部材60Dは、水切対象物左面21y2に対向可能である。左側水切部材60Dは、水切対象物左面21y2と左右方向Yに対向し、水切対象物左面21y2との間に隙間をあけて配置される。左側水切部材60Dの右側Y1の端部は、水切対象物左面21y2に沿うように配置され、さらに詳しくは、水切対象物左面21y2と平行または略平行に配置される。左側水切部材60Dは、右側水切部材60Cと同様に構成され、右側水切部材60Cと左右方向Yに対称または略対称に構成される。
【0061】
(水切部材60および軌条50の配置)
水切部材60の構成要素(前側水切部材60A、後側水切部材60Bなど)、軌条50の構成要素(後用軌条50Bなど)、および軌条50を支えるもの(具体的には軌条支柱43(
図7参照))が、互いに干渉しないように配置される必要がある。これらは、互いに干渉しなければ、どのように配置されてもよい。
【0062】
[配置例1]上記のように、軌条50は、土台部(具体的にはチャンバ土台部31a)に下側Z2から支持されても、土台部に上側Z1から支持されてもよい。[配置例1a]軌条50よりも上側Z1に土台部を配置するスペースを確保することは困難であるため、軌条50は、土台部(具体的にはチャンバ土台部31a)に下側Z2から支持されることが好ましい。下記の[配置例3a]~[配置例3c]では、軌条50がチャンバ土台部31aに下側Z2から支持される場合について説明する。
【0063】
[配置例2]上下方向Zから見たときに、軌条50どうしが交差してもよく、交差しなくてもよい。[配置例2a]上下方向Zから見たときに、軌条50どうしが交差しない場合、軌条50どうしが交差する場合に比べ、軌条50を短くすることができ、軌条50の配置スペースを小さくすることができる。よって、上下方向Zから見たときに、軌条50どうしが交差しないことが好ましい。
【0064】
[配置例3]長辺側水切部材(例えば後側水切部材60B)と短辺側水切部材(例えば右側水切部材60C)とは、上下方向Zに重なるように、上下方向Zに間隔をあけて配置される。このとき、短辺側水切部材(右側水切部材60Cおよび左側水切部材60D)が、長辺側水切部材(後側水切部材60B)に対して、上側Z1に配置される場合(下記[配置例3a])と、下側Z2に配置される場合(下記[配置例3b])と、が考えられる。ここでは、短辺側水切部材の例として右側水切部材60Cについて説明する。
【0065】
[配置例3a]右側水切部材60Cが、後側水切部材60Bよりも下側Z2に配置される場合について検討する。この場合、後用第1軌条50B1を支持する軌条支柱43(
図7参照)および後用第1軌条50B1と、右側水切部材60Cと、が干渉しないことが必要である。そのために、全開状態のときの右側水切部材60C(
図12参照)よりも右側Y1(左右方向Y外側)に、後用第1軌条50B1を支持する軌条支柱43(
図7参照)および後用第1軌条50B1が配置される必要がある。すると、後側水切部材60Bの右側Y1の端の位置を、全開状態のときの右側水切部材60Cの右側Y1の端よりも右側Y1の位置にする必要がある。そのため、後側水切部材60Bの左右方向Yの長さが、長くなる。
【0066】
[配置例3b]右側水切部材60Cが、後側水切部材60Bよりも上側Z1に配置される場合について検討する。この例では、右側水切部材60Cは、後用第1軌条50B1を支持する軌条支柱43(
図7参照)、後用第1軌条50B1、および後側水切部材60Bのそれぞれよりも上側Z1に配置される。この場合、右側水切部材60Cが、後用第1軌条50B1を支持する軌条支柱43(
図7参照)、後用第1軌条50B1、および後側水切部材60Bのそれぞれに干渉することなく(これらの上側Z1を超えるように)移動することができる。その結果、上記[配置例3a]の場合に比べ、後側水切部材60Bの左右方向Yの長さを、短くすることができる。
【0067】
[配置例3c]右側水切部材60Cは、前側水切部材60Aよりも上側Z1に配置されてもよい。この場合、右側水切部材60Cは、前側水切部材60Aに干渉することなく移動することができる。
【0068】
[配置例4]右用第1軌条50C1(短辺側水切部材を支持する軌条50)は、例えば次のように配置される。
【0069】
[配置例4a]右用第1軌条50C1は、上下方向Zから見たときに、後側水切部材60Bと重ならないように配置されることが好ましい。具体的には、右用第1軌条50C1は、後側水切部材60Bの可動範囲よりも、断面21cの短辺が延びる方向における外側(前後方向X外側、具体的には後側X2)に配置される。さらに具体的には、右用第1軌条50C1は、後側水切部材60Bが最も後側X2に配置されたときの後側水切部材60Bの位置よりも、後側X2に配置される。
【0070】
[配置例4b]右用第1軌条50C1は、後用第1軌条50B1よりも、断面21cの短辺が延びる方向における外側(前後方向X外側、具体的には後側X2)に配置される。[配置例4c]左用第1軌条50D1の配置は、右用第1軌条50C1の配置と、左右方向Yに対称または略対称である。
【0071】
[配置例4d]右用第2軌条50C2は、上下方向Zから見たときに前側水切部材60Aと重ならないように配置される。例えば、右用第2軌条50C2は、前側水切部材60Aよりも前側X1に配置される。なお、右用第2軌条50C2は、上下方向Zから見たときに前側水切部材60Aと重なるように配置されてもよい。[配置例4e]左用第2軌条50D2の配置は、右用第2軌条50C2の配置と、左右方向Yに対称または略対称である。
【0072】
ローラ70は、軌条50に対して水切部材60を滑らかに移動させる。ローラ70は、軌条50に沿って転がり、軌条50が延びる方向に転がり、軌条50に対する水切部材60の移動方向に転がる。具体的には例えば、後側水切部材60Bに取り付けられるローラ70は、後用軌条50Bに沿って前後方向Xに転がる。ローラ70は、水切部材60に取り付けられ、さらに詳しくは、後側水切部材60B、右側水切部材60C、および左側水切部材60Dのそれぞれに取り付けられる。以下では、主に後側水切部材60Bに取り付けられたローラ70ついて説明する。ローラ70は、後側水切部材60Bの移動方向に直交する水平方向(具体的には左右方向Y)における、後側水切部材60Bの両端部に設けられる。ローラ70は、後側水切部材60Bの右側Y1端部に複数(この例では2つ)設けられ、後側水切部材60Bの左側Y2端部に複数(この例では2つ)設けられる。後側水切部材60Bの右側Y1端部に設けられる複数のローラ70は、水切部材60の移動方向(具体的には前後方向X)に間隔をあけて配置される。ローラ70は、第1ローラ71と、第2ローラ72と、を備える。
【0073】
第1ローラ71は、第1軌条を転がる。具体的には、後側水切部材60Bに取り付けられた第1ローラ71は、
図10に示すように、後用第1軌条50B1の上側Z1の面(例えば突出部50B1a)を転がり、後用第1軌条50B1に沿って移動する(転動する)。第1ローラ71は、後側水切部材60Bから軌条対向方向の外側に突出するように設けられ、後側水切部材60Bに片持ち支持される。具体的には、第1ローラ71は、後側水切部材60Bから左右方向Yの外側の一方側(例えば右側Y1)に突出するように設けられる。
【0074】
この第1ローラ71および後用第1軌条50B1は、後用第1軌条50B1に対する第1ローラ71の軌条対向方向(具体的には左右方向Y)への移動を制限するように構成される。第1ローラ71および後用第1軌条50B1は、後側水切部材60Bの左右方向Yへの位置決めを行うように構成される。具体的には、第1ローラ71は、凹状部71aを備える。
【0075】
凹状部71aは、第1軌条(具体的には後用第1軌条50B1)の突出部50B1a(凸状部)が入り込む部分である。凹状部71aを有する第1ローラ71は、例えば鼓状である。さらに詳しくは、凹状部71aを有する第1ローラ71は、左右方向Yに延びる軸を中心とした鼓状である。凹状部71aは、第1ローラ71の左右方向Yにおける中央部から、第1ローラ71の左右方向Yにおける外側(右側Y1および左側Y2)に向かって、第1ローラ71の直径が大きくなるように構成された部分である。
【0076】
なお、後用第1軌条50B1に対する第1ローラ71の左右方向Yへの移動を制限する構成は、上記の凹状部71aおよび突出部50B1a(凸状部)でなくてもよい。例えば、第1ローラ71に凸状部が設けられ、後用第1軌条50B1に凹状部が設けられてもよい。例えば、後用第1軌条50B1の右側Y1の面に接するローラ70と、後用第1軌条50B1の左側Y2の面に接するローラ70と、が設けられてもよい(図示なし)。この場合、複数のローラ70は、後用第1軌条50B1を左右方向Yから挟むように(各ローラ70の回転軸が上下方向Zに延びるように)配置されてもよい。複数のローラ70は、前後方向Xから見て例えばV字状となるように(各ローラ70の回転軸が上下方向Zに対して傾斜するように)配置されてもよい。
【0077】
第2ローラ72は、第2軌条を転がる。具体的には、後側水切部材60Bに取り付けられた第2ローラ72は、後用第2軌条50B2の上側Z1の面(例えば平面部50B2b)を転がり、後用第2軌条50B2に沿って移動する(転動する)。第2ローラ72は、水切部材60から軌条対向方向の外側に突出するように設けられ、後側水切部材60Bに片持ち支持される。具体的には、第2ローラ72は、後側水切部材60Bから、左右方向Yの外側であって第1ローラ71が設けられる側とは反対側(例えば左側Y2)に突出するように設けられる。
【0078】
この第2ローラ72および後用第2軌条50B2は、水切部材60の熱膨張を許容でき、水切部材60の走行不良を抑制できるように構成されることが好ましい。さらに詳しくは、後側水切部材60Bは、鋳片21b(
図1参照)からの熱輻射により軌条対向方向(具体的には左右方向Y)に熱膨張する。そのため、後用第2軌条50B2に対する第2ローラ72の左右方向Yへの移動が制限されていると、例えば第2ローラ72が後用第2軌条50B2に押し付けられることなどにより、第2ローラ72が転がりにくくなる場合がある。すると、後側水切部材60Bが前後方向Xにスムーズに移動しにくくなる(こじれる、走行不良となる)。第2ローラ72および後用第2軌条50B2は、このような後側水切部材60Bの熱膨張による走行不良を抑制できるように構成されることが好ましい。具体的には、第2ローラ72および後用第2軌条50B2は、後用第2軌条50B2に対する第2ローラ72の軌条対向方向(具体的には左右方向Y)への移動を許容するように構成される。さらに具体的には、上記のように後用第2軌条50B2は、平面部50B2bを備える。また、第2ローラ72は、軌条対向方向(具体的には左右方向Y)に延びる軸を中心とする円柱状または円筒状(フラットローラ)である。
【0079】
なお、後用第2軌条50B2に対する第2ローラ72の左右方向Yへの移動を許容する構成は、フラットローラである第2ローラ72、および平面部50B2bでなくてもよい。例えば、後用第2軌条50B2の平面部50B2bが左右方向Yに十分広ければ、第2ローラ72がフラットローラでなくても、後用第2軌条50B2に対する第2ローラ72の左右方向Yへの移動が許容される場合がある。例えば、後用第2軌条50B2が平面部50B2bを備えていなくても、第2ローラ72がフラットローラであれば、後用第2軌条50B2に対する第2ローラ72の左右方向Yへの移動が許容される場合がある。具体的には例えば、後用第2軌条50B2の上側Z1部分が、後用第1軌条50B1の突出部50B1aと同様の形状でも、第2ローラ72がフラットローラであれば、後用第2軌条50B2に対する第2ローラ72の左右方向Yへの移動が許容される場合がある。この場合、後用第2軌条50B2と第2ローラ72とが前後方向Xから見て点接触になるが、後側水切部材60Bが軽量であれば、後用第2軌条50B2に対する第2ローラ72の左右方向Yへの移動が許容される。
【0080】
駆動機構80は、
図2に示すように、チャンバ土台部31aに対して水切部材60を駆動させる。駆動機構80は、水切部材60の可動範囲内の任意の位置に、段階的ではなく連続的に、水切部材60を移動させる。駆動機構80は、水切対象物21と水切部材60との間に隙間を設けるように、水切部材60を水切対象物21に追従させる。さらに詳しくは、駆動機構80は、水切対象物21と水切部材60との間の隙間の大きさが所定範囲内になるように、水切部材60を水切対象物21に追従させる。駆動機構80は、後側水切部材60B、右側水切部材60C、および左側水切部材60D(3つの水切部材60)を駆動させる。駆動機構80は、後用駆動機構81と、左右用駆動機構85と、を備える。
【0081】
後用駆動機構81は、後側水切部材60Bを駆動させる。後用駆動機構81は、複数(
図2に示す例では2つ)設けられる。例えば、後側水切部材60Bの右側Y1部分に接続される後用駆動機構81と、後側水切部材60Bの左側Y2部分に接続される後用駆動機構81と、が設けられる。なお、後用駆動機構81は、1つのみ設けられてもよい。後用駆動機構81は、後用駆動部82(駆動部)と、後用駆動伝達部83(駆動伝達部)と、を備える。
【0082】
後用駆動部82(駆動部)は、水切部材60(さらに詳しくは後側水切部材60B)を駆動させるアクチュエータである。後用駆動部82は、良好な環境に配置されることが好ましく、メンテナンスしやすい位置に配置されることが好ましい。ここで、
図1に示すように、チャンバ31の内部は、鋳片21bからの熱輻射を受ける環境であり、水が飛散している環境である。そこで、
図2に示すように、後用駆動部82は、チャンバ31の外に配置される。後用駆動部82は、チャンバ31よりも後側X2に配置されてもよく、前側X1に配置されてもよく、右側Y1に配置されてもよく、左側Y2に配置されてもよい。例えば、
図1に示す1つのタンディッシュ11に対して、1つの鋳型13が設けられ、1本の鋳片21bが送り出される場合(ストランドが1つの場合)がある。この場合は、通常、
図2に示す後用駆動部82を配置可能なスペースが、チャンバ31よりも前側X1、後側X2、右側Y1、および左側Y2に存在する。一方、
図1に示す1つのタンディッシュ11に対して、複数の鋳型13が設けられ、複数本の鋳片21bが送り出される場合(多ストランドの場合)がある。この場合、1つのストランドの横(例えば右側Y1および左側Y2の少なくともいずれか)に、隣接するストランドが存在する。この場合は、通常、
図2に示す後用駆動部82を配置可能なスペースが、チャンバ31よりも前側X1および後側X2にあり、チャンバ31よりも右側Y1および左側Y2の少なくとも一方にはない。後用駆動部82は、例えば伸縮シリンダである。後用駆動部82は、電動シリンダでもよく、油圧シリンダでもよい。後用駆動部82は、例えば前後方向Xに伸縮駆動する。
【0083】
後用駆動伝達部83(駆動伝達部)は、後用駆動部82の駆動力を水切部材60(さらに詳しくは後側水切部材60B)に伝達する。後用駆動伝達部83は、後用駆動部82と後側水切部材60Bとに接続される。後用駆動伝達部83は、後用ロッド83a(ロッド)と、後用ロッドガイド83bと、を備える。
【0084】
後用ロッド83aは、後用駆動部82と後側水切部材60Bとに接続される。後用ロッド83aは、棒状の部材である。後用ロッド83aは、例えばチェーンなどの複雑な機構に比べ、簡素であり、メンテナンスが容易であり、チャンバ31内の劣悪な環境に耐えることができる。後用ロッド83aは、チャンバ31を貫通するように配置される。さらに詳しくは、後用ロッド83aは、チャンバ壁31dを前後方向Xに貫通するように配置される。例えば、後用ロッド83aの長手方向は、前後方向Xである。後用駆動伝達部83の後側X2端部は、後用駆動部82に接続される。後用駆動伝達部83の前側X1端部は、後側水切部材60Bに接続される。
【0085】
後用ロッドガイド83bは、後用ロッド83aを支持する。後用ロッドガイド83bは、後用ロッド83aを移動させようとする方向(例えば前後方向X)に移動自在に後用ロッド83aを支持する。後用ロッドガイド83bは、後用ロッド83aを移動させようとする方向とは異なる方向への後用ロッド83aの移動を制限する(動きを拘束する)。具体的には、
図3に示すように、後用ロッドガイド83bは、後用ロッド83aを下側Z2から支持することにより、後用ロッド83aの下側Z2への移動を制限する。例えば、後用ロッドガイド83bは、前後方向Xに回転可能(左右方向Yに延びる回転軸を中心に回転可能)なローラ部材を備える。
【0086】
なお、
図2に示す後用駆動伝達部83は、後用駆動部82から後側水切部材60Bに駆動力を伝達できればどのように構成されてもよい(左右用駆動伝達部87も同様)。例えば、後用駆動伝達部83の構成は、後用駆動伝達部83の配置スペースや、後用駆動部82と後側水切部材60Bとの相対位置などに応じて、様々に変形可能である。
【0087】
左右用駆動機構85は、右側水切部材60Cおよび左側水切部材60Dを駆動させる。通常、水切対象物21の左右方向Yにおける中心(または略中心)は、ストランド中心Sc(
図6参照)に位置し、鋳造中に変化しない。そこで、左右用駆動機構85は、右側水切部材60Cと左側水切部材60Dとを連動させ、右側水切部材60Cと左側水切部材60Dとの左右方向Yの中心位置を変えないように構成される。なお、左右用駆動機構85は、右側水切部材60Cと左側水切部材60Dとを独立させて駆動してもよい。以下では、左右用駆動機構85が、右側水切部材60Cと左側水切部材60Dとを連動させる場合について説明する。左右用駆動機構85は、左右用駆動部86(駆動部)と、左右用駆動伝達部87(駆動伝達部)と、を備える。
【0088】
左右用駆動部86は、後用駆動部82とほぼ同様に構成される。左右用駆動部86について、後用駆動部82との相違点を説明する。左右用駆動部86は、右側水切部材60Cおよび左側水切部材60Dを駆動させるアクチュエータである。右側水切部材60Cを駆動させるアクチュエータと、左側水切部材60Dを駆動させるアクチュエータとが、1つの左右用駆動部86で兼用される(左右用駆動伝達部87についても同様)。この場合、駆動機構80の構成を簡素にすることができる。
【0089】
左右用駆動伝達部87は、後用駆動伝達部83とほぼ同様に構成される。左右用駆動伝達部87について、後用駆動伝達部83との相違点を説明する。左右用駆動伝達部87は、左右用駆動部86と、右側水切部材60Cおよび左側水切部材60Dと、に接続される。左右用駆動伝達部87は、左右用ロッド87a(ロッド)と、左右用ロッドガイド87bと、を備える。
【0090】
左右用ロッド87aは、左右用駆動部86と右側水切部材60Cとに接続され、左右用駆動部86と左側水切部材60Dとに接続される。左右用ロッド87aは、分岐した形状を有し、例えば上下方向Zから見てY字状などである。左右用ロッド87aは、駆動部側ロッド87a1と、ロッド分岐部87a2と、水切部材側ロッド87a3と、ロッド長調整部87a4と、を備える。
【0091】
駆動部側ロッド87a1は、左右用駆動部86に接続される。駆動部側ロッド87a1は、チャンバ31(さらに詳しくはチャンバ壁31d)を貫通するように配置される。例えば、駆動部側ロッド87a1の長手方向は、前後方向Xである。
【0092】
ロッド分岐部87a2は、左右用駆動部86から駆動部側ロッド87a1に伝わる駆動力を、左右の水切部材側ロッド87a3・87a3に伝える(振り分ける)。例えば、ロッド分岐部87a2は、駆動部側ロッド87a1の前側X1端部に接続される。
【0093】
水切部材側ロッド87a3は、ロッド分岐部87a2と水切部材60とに接続される。水切部材側ロッド87a3は、左右方向Yのそれぞれに1本ずつ(合計2本)設けられる。左右の水切部材側ロッド87a3・87a3のそれぞれは、ロッド分岐部87a2に接続される。さらに詳しくは、水切部材側ロッド87a3・87a3のそれぞれの後側X2端部は、ロッド分岐部87a2に回転可能に接続される。右側Y1の水切部材側ロッド87a3は、右側水切部材60Cに接続(さらに詳しくは回転可能に接続)される。左側Y2の水切部材側ロッド87a3は、左側水切部材60Dに接続(さらに詳しくは回転可能に接続)される。水切部材側ロッド87a3は、チャンバ31内に配置される。右側Y1の水切部材側ロッド87a3は、前側X1ほど右側Y1に配置されるように、前後方向Xに対して傾斜するように配置される。左側Y2の水切部材側ロッド87a3は、前側X1ほど左側Y2に配置されるように、前後方向Xに対して傾斜するように配置される。左右用駆動部86が前後方向Xに駆動すると、左右の水切部材側ロッド87a3・87a3が、ストランド中心Sc(
図6参照)を中心として、左右方向Yに対称または略対称に連動する。
【0094】
ロッド長調整部87a4は、左右の水切部材側ロッド87a3・87a3の移動が、左右方向Yにできるだけ対称になるように調整するためのものである。ロッド長調整部87a4は、水切部材側ロッド87a3の長さを調整するためのものである。ロッド長調整部87a4は、左右の水切部材側ロッド87a3・87a3の少なくとも一方に設けられ、
図2に示す例では両方に設けられる。例えば、ロッド長調整部87a4は、ターンバックルなどである。ロッド長調整部87a4が棒状の場合、ロッド長調整部87a4は、左右用ロッド87aに含まれてもよい。なお、2本の後用ロッド83aの少なくとも一方の長さが、ロッド長調整部87a4と同様の部材により調整されてもよい。
【0095】
左右用ロッドガイド87bは、左右用ロッド87aを支持し、具体的には駆動部側ロッド87a1を支持する。左右用ロッドガイド87bは、駆動部側ロッド87a1を移動させようとする方向(例えば前後方向X)に移動自在に駆動部側ロッド87a1を支持する。左右用ロッドガイド87bは、駆動部側ロッド87a1を移動させようとする方向とは異なる方向への駆動部側ロッド87a1の移動を制限する(動きを拘束する)。具体的には例えば、左右用ロッドガイド87bは、複数(
図2では4つ)のガイドローラ87b1を備える。ガイドローラ87b1は、前後方向Xに回転可能である。ガイドローラ87b1の回転軸が延びる方向は、上下方向Zである。例えば、複数のガイドローラ87b1は、駆動部側ロッド87a1の左右方向Yへの移動を制限し、具体的には駆動部側ロッド87a1を左右方向Yから挟むように配置される。
【0096】
制御装置90は、
図1に示す水切対象物21の状態に基づいて、水切部材60の位置を制御する。例えば、制御装置90は、鋳型情報検出部91と、送り量検出部93と、隙間検出部95と、制御部97(第1制御部、第2制御部、第3制御部)と、を備える。
【0097】
鋳型情報検出部91は、水切対象物21の寸法の予測に用いられる(詳細は後述)。送り量検出部93は、チャンバ土台部31aに対する水切対象物21の上下方向Zにおける位置を検出する。送り量検出部93は、鋳型13からの水切対象物21の送り量(引抜量)を検出する。
【0098】
隙間検出部95は、水切部材60と水切対象物21との隙間の大きさを検出する。例えば、隙間検出部95は、水切部材60に取り付けられ、非接触で水切対象物21までの距離を検出するものなどである。例えば、隙間検出部95は、水切部材60および水切対象物21から離れた位置から隙間の情報(例えば画像情報など)を検出するものでもよい。なお、鋳型情報検出部91および送り量検出部93に基づいて隙間の大きさの予測(後述)が行われる場合は、隙間検出部95は設けられなくてもよい。
【0099】
制御部97(第1制御部、第2制御部、第3制御部)は、水切対象物21と水切部材60との隙間の大きさが所定範囲内になるように、チャンバ土台部31aに対する水切部材60の位置を制御する。制御部97は、水切対象物21の予測寸法(予測幅寸法および予測厚さ寸法)に基づいて、水切部材60の位置を制御してもよい(詳細は後述)。制御部97は、隙間検出部95の検出結果に基づいて、水切部材60の位置を制御してもよい(詳細は後述)。制御部97は、水切対象物21の予測寸法および隙間検出部95の検出結果に基づいて、水切部材60の位置を制御してもよい。制御部97は、駆動機構80を制御することにより、水切部材60の位置を制御する(詳細は後述)。
【0100】
(作動)
水切装置20は、以下のように作動するように構成される。
【0101】
(水切対象物21の到達前)
駆動機構80は、水切対象物21の到達前(詳細は上記)には、水切部材60を全閉状態とする。この作動の詳細は次の通りである。送り量検出部93が、水切対象物21の送り量を検出し、検出値を制御部97に出力する。制御部97が、水切対象物21の送り量から、「水切対象物21の到達前」であるか「水切対象物21の到達後」であるかを判定する。制御部97が「水切対象物21の到達前」であると判定した場合、水切部材60を全閉状態とするように、制御部97が駆動機構80を制御する。すると、
図13に示すように、水切部材60が、全閉状態になる。具体的には例えば、前側水切部材60Aと後側水切部材60Bとが、前後方向Xに閉じられる。例えば、右側水切部材60Cと左側水切部材60Dとが、左右方向Yに閉じられてもよい。水切部材60が全閉状態になることで、チャンバ開口31b(
図2参照)が塞がれる。よって、水切部材60よりも上側Z1の水が、チャンバ開口31bから流下することが防がれる、または抑制される。この例では、チャンバ開口31bを塞ぐ部材として、水切対象物21を水切りするための水切部材60が用いられる。よって、チャンバ開口31bを塞ぐための水切部材60とは別体の部材、およびこの別体の部材を駆動するための装置は不要である。
【0102】
(水切対象物21の到達後)
図1に示す駆動機構80は、水切対象物21が水切部材60に到達したとき、水切部材60を開状態とし、水切対象物21を囲うように水切部材60を配置させる。この作動の詳細は、次の通りである。水切対象物21の下側Z2端部と水切部材60との上下方向Zにおける距離が所定距離以下になると、「水切対象物21の到達後」であると制御部97が判定する。この場合、制御部97が、水切部材60を開くように駆動機構80を制御する。この制御により、
図2に示す後側水切部材60Bが、後側X2に移動する。また、水切対象物21の幅によっては、右側水切部材60Cが左右方向Yに移動し、左側水切部材60Dが左右方向Yに移動する場合がある。そして、水切対象物21を囲うように水切部材60が配置されるように、
図1に示す制御部97が駆動機構80を制御する。また、水切対象物21と水切部材60との間の隙間の大きさが所定範囲内になるように、制御部97が駆動機構80を制御する。
【0103】
水切対象物21がさらに下側Z2に移動すると、水切対象物21の下側Z2端部が、水切部材60に囲まれた領域(空間)を通過し、チャンバ開口31bを通り、水切装置20よりも下側Z2に移動する。
【0104】
(追従動作)
水切装置20の作動中に、チャンバ土台部31aに対する水切対象物21の面(例えば水切対象物右面21y1など)の位置が変化する場合がある。この変化が生じる理由の例は、次の通りである。ダミーバ21aの寸法は、部位によって異なる。例えば、ダミーバ本体21a1とダミーバヘッド21a2とでは、厚さが異なる。また、ダミーバ21aと鋳片21bとでは、厚さが異なる。また、連続鋳造設備1の連続鋳造中に、鋳型13の寸法が変えられる(漸増または漸減される)ことで、鋳片21bの寸法が漸増または漸減する場合がある。具体的には例えば、鋳型13の短辺銅板が左右方向Yにスライドさせられると、鋳片21bの幅が変わる。鋳片21bの厚さは、連続鋳造中に変えられることは通常はないが、連続鋳造中に変えられてもよい。連続鋳造中に、鋳片21bが左右方向Yに蛇行する場合や、鋳片21bが前後方向Xに曲がる場合には、チャンバ土台部31aに対する鋳片21bの面の位置が変化する場合がある。
【0105】
チャンバ土台部31aに対する水切対象物21の面の位置が変化したとき、駆動機構80は、水切部材60を水切対象物21に追従させる。さらに詳しくは、駆動機構80は、チャンバ土台部31aに対して水切部材60を駆動させ、水切対象物21と水切部材60との間に隙間を設けるように、水切部材60を水切対象物21に追従させる。チャンバ土台部31aに対する水切対象物21の面の位置が変化しても、水切対象物21と水切部材60との隙間の大きさが所定範囲内に収まり続けるように、制御部97が、駆動機構80を制御する。これにより、水切装置20による水切り性能が維持される。このとき、水切部材60が、水切対象物21にできるだけ近づけられることで、水切り性能がより向上する。水切対象物21との間に隙間があけられるように水切部材60の位置が制御されるので、水切部材60が水切対象物21に接触することが抑制され、水切部材60が破損(摩耗を含む)することが抑制され、水切部材60の交換の頻度を抑制することができる。
【0106】
制御部97は、駆動機構80を制御することで、水切部材60の位置を制御する。この制御では、
図2に示すチャンバ土台部31aに対する(軌条50に対する)水切部材60の位置が検出される必要がある。例えば、水切部材60の位置は、駆動機構80に関する情報から検出されてもよい。具体的には例えば、後用駆動部82(または左右用駆動部86)が伸縮シリンダである場合、水切部材60の位置は、後用駆動部82の伸縮量から検出されてもよい。後用駆動部82の伸縮量は、差動トランスなどの直線型の検出器により検出されてもよい。後用駆動部82が電動シリンダである場合、電動機の回転数から後用駆動部82の伸縮量が検出されてもよく、送りねじ軸の回転数から後用駆動部82の伸縮量が検出されてもよい。水切部材60の位置は、後用ロッド83a(または左右用ロッド87a)の位置の情報から、検出されてもよい。例えば、後用ロッド83aの位置は、差動トランスなどの直線型の検出器により検出されてもよい。
【0107】
(水切対象物21の寸法の予測)
水切部材60の周辺は、高温であり、水が飛び散る環境であるため、水切部材60に囲まれた水切対象物21の寸法を直接的に検出することは困難であることが想定される。
図1に示す隙間検出部95を設けることは、通常は困難である。そこで、制御部97は、鋳型13の寸法に関する情報と、水切対象物21の送り量に基づいて、水切部材60に囲まれた部分を通る水切対象物21の寸法を予測する。そして、制御部97は、予測した水切対象物21の寸法に基づいて、水切部材60の位置を遂次制御する。
【0108】
水切対象物21の寸法の予測は、例えば次のように行われる。制御部97は、水切対象物21の寸法に関する情報と、水切対象物21の送り方向(具体的には下側Z2)への移動に関する情報と、に基づいて、
図2に示す水切部材60に囲まれる位置での水切対象物21の断面21cの寸法(予測寸法)を予測(算出)する。制御部97が予測する寸法には、予測幅寸法と、予測厚さ寸法と、がある。
【0109】
(予測幅寸法)
予測幅寸法は、水切部材60に囲まれる位置での水切対象物21の、上下方向Zから見た断面21cの長辺の寸法(具体的には左右方向Yの寸法)である。制御部97(
図1参照)は、水切対象物21の断面21cの長辺の寸法に関する情報(幅情報)と、水切対象物21の送り方向(具体的には下側Z2)への移動に関する情報(送り量情報)と、に基づいて予測幅寸法を予測する。制御部97(
図1参照)は、予測幅寸法に基づいて、水切対象物21の断面21cの短辺に対向する水切部材60(具体的には右側水切部材60Cおよび左側水切部材60D)の位置を制御する。
【0110】
[幅情報の例1]水切部材60に囲まれる位置での水切対象物21がダミーバ21a(
図1参照)である場合、幅情報(水切対象物21の断面21cの長辺の寸法に関する情報)は、例えば、
図1に示すダミーバ21aの幅の既知の情報である。上記のように、ダミーバ21aの幅は、ダミーバ21aの部位によって異なる。そのため、ダミーバ21aの部位別の幅の情報が、制御部97に予め(連続鋳造の開始前に)設定される。
【0111】
[幅情報の例2]
図2に示す水切部材60に囲まれる位置での水切対象物21が鋳片21b(
図1参照)である場合、幅情報は、例えば次の通りである。[幅情報の例2a]幅情報は、例えば、
図1に示す鋳型13の寸法である。鋳型13の寸法は、鋳型情報検出部91に検出される。鋳型情報検出部91は、例えば鋳型13の短辺銅板の位置の情報を検出する。[幅情報の例2b]ダミーバ21aの幅と鋳片21bの幅との関係が予め決まっている場合がある。この場合、幅情報は、ダミーバ21aの幅に基づいて決定された、鋳片21bの幅(既知の幅)でもよい。
【0112】
[送り量情報の例]水切対象物21の送り方向(下側Z2)への移動に関する情報(送り量情報)は、送り量検出部93に検出される。送り量検出部93は、例えば、水切対象物21の移動に伴って回転するロール15の回転数から送り量情報を検出してもよい。
【0113】
(予測厚さ寸法)
予測厚さ寸法は、
図2に示す水切部材60に囲まれる位置での水切対象物21の、上下方向Zから見た断面21cの短辺の寸法(具体的には前後方向Xの寸法)である。制御部97(
図1参照)は、水切対象物21の断面21cの短辺の寸法に関する情報(厚さ情報)と、水切対象物21の送り方向(具体的には下側Z2)への移動に関する情報と、に基づいて、予測厚さ寸法を予測する。制御部97(
図1参照)は、予測厚さ寸法に基づいて、水切対象物21の断面21cの長辺に対向する水切部材60(具体的には後側水切部材60B)の位置を制御する。厚さ情報は、上記の幅寸法と同様に設定や検出される。なお、通常、鋳片21bの厚さは、固定値(鋳造中に変化しない値)である。そのため、厚さ情報は、既知の固定値でもよい。
【0114】
(隙間の大きさを直接検出する場合)
図1に示す隙間検出部95が設けられる場合は、制御部97は、隙間検出部95に検出された隙間の大きさに基づいて、水切部材60と水切対象物21との隙間の大きさが所定範囲内に収まるように、水切部材60の位置を制御してもよい。
【0115】
(第1の発明の効果)
図1に示す水切装置20による効果は、以下の通りである。水切装置20は、連続鋳造設備1に設けられ、水切対象物21の水切りを行う。水切装置20は、チャンバ土台部31a(土台部)と、水切部材60と、駆動機構80と、を備える。
図2に示すように、水切部材60は、チャンバ土台部31aに対して移動可能に設けられ、水切対象物21を囲うように配置可能である。
【0116】
[構成1]駆動機構80は、チャンバ土台部31aに対して水切部材60を駆動させ、水切対象物21と水切部材60との間に隙間を設けるように水切部材60を水切対象物21に追従させる。
【0117】
上記[構成1]では、チャンバ土台部31aに対する水切対象物21の位置や寸法が変化しても、水切対象物21と水切部材60との間に隙間が設けられるように、水切部材60が水切対象物21に追従する。よって、チャンバ土台部31aに対する水切対象物21の位置や寸法が変化しても、水切部材60による水切り性能を維持することができる。その結果、例えば水切対象物21の寸法を変化させる際に、変化後の寸法に応じて水切部材60を交換する必要はない。また、チャンバ土台部31aに対する水切対象物21の位置や寸法が変化しても、水切対象物21と水切部材60との間に隙間が設けられた状態が維持され、水切部材60の水切対象物21への接触を抑制することができる。よって、水切部材60の破損を抑制することができる。
【0118】
(第2の発明の効果)
[構成2]駆動機構80は、水切対象物21が水切部材60に到達するまでは、水切部材60を閉状態とする(
図13参照)。駆動機構80は、水切対象物21が水切部材60に到達したとき、水切部材60を開状態とし、水切対象物21を囲うように水切部材60を配置させる。
【0119】
上記[構成2]では、水切対象物21が水切部材60に到達するまでは、水切部材60が閉状態とされる(
図13参照)。よって、水切対象物21の通路(具体的にはチャンバ開口31b)からの水の流下を抑制することができる。上記[構成2]では、水切部材60が、水切対象物21の通路(具体的にはチャンバ開口31b)の遮蔽と、水切対象物21の水切りと、に兼用される。よって、水切装置20は、水切部材60とは別の、水切対象物21の通路を遮蔽する部材を備える必要がない。また、水切装置20は、水切部材60とは別の、水切対象物21の通路を遮蔽する部材を駆動するための装置を備える必要がない。
【0120】
(第3の発明の効果)
チャンバ土台部31aに対して水切対象物21が移動する方向である送り方向(上側Z1から下側Z2に向かう方向)から見たとき、水切部材60に囲われる水切対象物21の断面は、長方形である。
【0121】
[構成3]水切部材60は、水切対象物21の断面21cの4辺と対向可能に4つ設けられる。駆動機構80は、3つの水切部材60を駆動させる。
【0122】
上記[構成3]により、水切部材60が、長方形の断面21cを有する水切対象物21の水切りを確実に行うことができる。なお、チャンバ土台部31aに対する水切対象物21の断面の1辺の位置が変化しない場合は、駆動機構80は、3つのみの水切部材60(具体的には後側水切部材60B、右側水切部材60C、および左側水切部材60D)を駆動させればよい。
【0123】
(第4の発明の効果)
[構成4]水切装置20は、チャンバ土台部31aに対する水切部材60の位置を制御する制御部97(
図1参照)(第1制御部)を備える。制御部97は、水切対象物21の断面21cの長辺の寸法に関する情報(幅情報)と、水切対象物21の送り方向への移動に関する情報(送り量情報)と、に基づいて、予測幅寸法を予測する。予測幅寸法は、水切部材60に囲まれる位置での水切対象物21の断面21cの長辺の寸法である。制御部97(
図1参照)は、予測幅寸法に基づいて、水切対象物21の断面21cの短辺に対向する水切部材60(右側水切部材60Cおよび左側水切部材60D)の位置を制御する。
【0124】
上記[構成4]により、制御部97(
図1参照)が予測した断面21cの長辺の寸法に応じて、断面21cの短辺に対向する水切部材60の位置が制御される。よって、
図5に示す断面21cの短辺を構成する面(水切対象物右面21y1および水切対象物左面21y2)と水切部材60との隙間の大きさを、制御部97(
図1参照)が精度良く制御することができる。
【0125】
(第5の発明の効果)
[構成5]
図2に示す水切装置20は、チャンバ土台部31aに対する水切部材60の位置を制御する制御部97(
図1参照)(第2制御部)を備える。制御部97は、水切対象物21の断面21cの短辺の寸法に関する情報(厚さ情報)と、水切対象物21の送り方向への移動に関する情報(送り量情報)と、に基づいて、予測厚さ寸法を予測する。予測厚さ寸法は、水切部材60に囲まれる位置での水切対象物21の断面21cの短辺の寸法である。制御部97(
図1参照)は、予測厚さ寸法に基づいて、水切対象物21の断面21cの長辺に対向する水切部材60の位置を制御する。
【0126】
上記[構成5]により、制御部97(
図1参照)が予測した断面21cの短辺の寸法に応じて、断面21cの長辺に対向する水切部材60の位置が制御される。よって、
図5に示す断面21cの長辺を構成する面(水切対象物後面21x2)と水切部材60との隙間の大きさを、制御部97(
図1参照)が精度良く制御することができる。
【0127】
(第6の発明の効果)
[構成6]
図1に示すように、水切装置20は、隙間検出部95と、制御部97(第3制御部)と、を備える。隙間検出部95は、水切部材60と水切対象物21との隙間の大きさを検出する。制御部97は、隙間検出部95に検出された隙間の大きさに基づいて、チャンバ土台部31aに対する水切部材60の位置を制御する。
【0128】
上記[構成6]により、隙間検出部95に実際に検出された隙間の大きさに基づいて、水切部材60と水切対象物21との隙間の大きさを、制御部97が精度良く制御することができる。
【0129】
(第7の発明の効果)
[構成7]水切装置20は、
図9に示すように、噴出部60Bdを備える。噴出部60Bdは、水切部材60の水切対象物21側の端部から水切対象物21に向かって斜め上向きに圧縮ガスGを噴出する。
【0130】
上記[構成7]により、噴出部60Bdから噴出された圧縮ガスGが、水切部材60と水切対象物21との隙間から落下しようとする水を吹き飛ばすことができる。また、噴出部60Bdから噴出された圧縮ガスGが、水切対象物21の表面に沿って流下する水を吹き飛ばすことができる。よって、圧縮ガスGを水切対象物21に向かって斜め上向きに噴出する噴出部60Bdが設けられない場合に比べ、水切装置20による水切り性能を向上させることができる。
【0131】
(第8の発明の効果)
[構成8]
図5に示す噴出部60Bdは、水切部材60と水切対象物21とが対向する領域に圧縮ガスG(
図9参照)を噴出し、水切部材60と水切対象物21とが対向しない領域への圧縮ガスGの噴出を停止することが可能である。
【0132】
上記[構成8]では、水切部材60と水切対象物21とが対向しない領域への圧縮ガスGの噴出を停止することで、圧縮ガスGの消費量を削減することができ、圧縮ガスGを生成する装置(例えば圧縮機など)の消費エネルギーを削減することができる。
【0133】
(第9の発明の効果)
[構成9]
図9に示すように、水切部材60は、水切部材本体部60Baと、ガス増速部60Bcと、を備える。ガス増速部60Bcは、水切部材本体部60Baの水切対象物21側の端部から水切対象物21に向かって斜め上向きに延びるように設けられる。噴出部60Bdは、ガス増速部60Bcよりも下側Z2の位置から、水切対象物21とガス増速部60Bcとの隙間に向かって圧縮ガスGを噴出するように配置される。
【0134】
上記[構成9]および上記[構成6]により、噴出部60Bdが噴出した圧縮ガスGは、ガス増速部60Bcに沿うように流れるとともに、水切対象物21とガス増速部60Bcとの隙間を通る。このとき、水切対象物21とガス増速部60Bcとの隙間が徐々に狭くなり、圧縮ガスGの流速が増加する。よって、圧縮ガスGが、水切部材60と水切対象物21との隙間から落下しようとする水を、より吹き飛ばすことができる。また、圧縮ガスGが、水切対象物21の表面に沿って流下する水を、より吹き飛ばすことができる。よって、水切装置20の水切り性能を、より向上させることができる。
【0135】
(第10の発明の効果)
[構成10]水切装置20は、圧縮ガスGが通るガス通路60Beを備える。ガス通路60Beは、水切部材60の内部に設けられる。
【0136】
上記[構成10]では、ガス通路60Beは、水切部材60の内部に設けられるので、ガス通路60Beのスペースを容易に確保することができる。また、ガス通路60Beと水切部材60とが別々に設けられる場合に比べ、ガス通路60Beおよび水切部材60を小型化でき、水切装置20(
図1参照)を小型化することができる。よって、水切装置20を狭小空間に容易に設置することができる。また、ガス通路60Beを通る圧縮ガスGにより、水切部材60が内部から冷却されるので、水切対象物21からの輻射熱による水切部材60の熱変形を抑制することができる。
【0137】
(第11の発明の効果)
[構成11]水切部材60の上面は、水切部材傾斜面60Bbを備える。水切部材傾斜面60Bbは、水切対象物21から離れるほど下側Z2に配置されるように水平方向に対して傾斜する。
【0138】
上記[構成11]により、次の効果が得られる。水切対象物21が鋳片21b(
図1参照)の場合、鋳片21bのブレークアウトの際に、水切部材60の上面の水溜まりに溶融金属が接触し、水蒸気爆発が起こる場合がある。一方、上記[構成11]の水切部材傾斜面60Bbにより、水切部材60の上面での水溜まりを抑制することができる。その結果、ブレークアウトの際の水蒸気爆発を抑制することができる。また、上記[構成11]の水切部材傾斜面60Bbにより、水切部材60の上面の水が、水切対象物21から離れる向きに誘導される。よって、水切部材60の上面の水が、水切部材60と水切対象物21との隙間に流入(逆流)することを抑制することができる。
【0139】
(第12の発明の効果)
[構成12]
図5に示すように、水切装置20は、軌条50を備える。軌条50は、チャンバ土台部31aに固定され、チャンバ土台部31aに対して水切部材60を連続的に移動可能に支持し、チャンバ土台部31aに対する水切部材60の移動方向に延びるように設けられる。
【0140】
上記[構成12]の軌条50により、簡易な構成で、チャンバ土台部31aに対して水切部材60を連続的に移動可能に支持することができる。
【0141】
(第13の発明の効果)
軌条50および水切部材60は、チャンバ土台部31aよりも上側Z1に配置される。チャンバ土台部31aに対して水切対象物21が移動する方向である送り方向(上側Z1から下側Z2に向かう向き)から見たとき、水切部材60に囲われる水切対象物21の断面は、長方形である。水切対象物21の断面21cは、2つの長辺と、2つの短辺と、を備える。水切部材60は、長辺側水切部材(後側水切部材60B)と、2つの短辺側水切部材(右側水切部材60Cおよび左側水切部材60D)と、を備える。長辺側水切部材(後側水切部材60B)は、断面21cの長辺を構成する面(水切対象物後面21x2)に対向可能であり、駆動機構80(
図2参照)に駆動させられる。2つの短辺側水切部材(右側水切部材60Cおよび左側水切部材60D)は、断面21cの短辺を構成する面(水切対象物右面21y1および水切対象物左面21y2)に対向可能であり、駆動機構80(
図2参照)に駆動させられる。
【0142】
[構成13]短辺側水切部材(右側水切部材60Cおよび左側水切部材60D)は、長辺側水切部材(後側水切部材60B)と上下方向Zに重なるように配置される。
【0143】
上記[構成13]により、短辺側水切部材(右側水切部材60Cおよび左側水切部材60D)と長辺側水切部材(後側水切部材60B)とが、互いに干渉することなく移動することができる。その結果、様々な寸法の断面21cで水切りを行うことができる。
【0144】
(第14の発明の効果)
[構成14-1]短辺側水切部材(右側水切部材60Cおよび左側水切部材60D)は、長辺側水切部材(後側水切部材60B)よりも上側Z1に配置される。短辺側水切部材(右側水切部材60Cおよび左側水切部材60D)は、長辺側水切部材(後側水切部材60B)を支持する軌条50(後用軌条50B)よりも上側Z1に配置される。
【0145】
[構成14-2]短辺側水切部材を支持する軌条(右用軌条50Cおよび左用軌条50D)は、長辺側水切部材(後側水切部材60B)の可動範囲よりも、短辺が延びる方向における外側(前後方向Xの外側、例えば後側X2)に配置される。
【0146】
上記[構成14-1]により、次の効果が得られる。短辺側水切部材(右側水切部材60Cおよび左側水切部材60D)が、長辺側水切部材(後側水切部材60B)および長辺側水切部材を支持する軌条50(後用軌条50B)よりも、上側Z1の空間を移動することができる。よって、長辺側水切部材(後側水切部材60B)を短く構成することができる(詳細は上記[配置例3a]および[配置例3b]の説明を参照)。その結果、断面21cの長辺が延びる方向(具体的には左右方向Y)における水切装置20の寸法を小さくすることができる。
【0147】
上記[構成14-2]により、次の効果が得られる。長辺側水切部材(後側水切部材60B)が移動したとき、短辺側水切部材を支持する軌条(右用軌条50Cおよび左用軌条50D)と、長辺側水切部材(後側水切部材60B)と、が干渉することがない。
【0148】
(第15の発明の効果)
[構成15]
図7に示すように、上記[構成12]を備える水切装置20は、複数の軌条支柱43を備える。複数の軌条支柱43は、チャンバ土台部31aから上側Z1に延びるように設けられる。軌条50は、複数の軌条支柱43に架け渡されるように配置される。
【0149】
上記[構成15]により、チャンバ土台部31aと軌条50との間に空間S43を設けることができる。よって、チャンバ土台部31a上の水が軌条50で堰き止められることを抑制することができる。その結果、水に含まれる堆積物(例えばスケール)がチャンバ土台部31aに溜まることを抑制することができる。
【0150】
(第16の発明の効果)
[構成16-1]上記[構成12]を備える水切装置20は、ローラ70を備える。ローラ70は、水切部材60に取り付けられ、軌条50に沿って転がる。軌条50は、第1軌条(例えば後用第1軌条50B1)と、第2軌条(例えば後用第2軌条50B2)と、を備える。後用第2軌条50B2は、軌条対向方向(例えば左右方向Y)の間隔を後用第1軌条50B1との間にあけて配置される。軌条対向方向(例えば左右方向Y)は、チャンバ土台部31aに対する水切部材60(例えば後側水切部材60B)の移動方向に交差する水平方向である。ローラ70は、後用第1軌条50B1を転がる第1ローラ71と、後用第2軌条50B2を転がる第2ローラ72と、を備える。
【0151】
[構成16-2]
図10に示すように、後用第1軌条50B1および第1ローラ71は、後用第1軌条50B1に対する第1ローラ71の軌条対向方向(ここでは左右方向Y)への移動を制限するように構成される。
【0152】
[構成16-3]後用第2軌条50B2および第2ローラ72は、後用第2軌条50B2に対する第2ローラ72の軌条対向方向(ここでは左右方向Y)への移動を許容するように構成される。
【0153】
上記[構成16-2]では、後用第1軌条50B1に対する第1ローラ71の左右方向Yへの移動が制限される。そのため、軌条対向方向(左右方向Y)における後側水切部材60Bの寸法が大きくなるように後側水切部材60Bが熱変形したときに、後用第2軌条50B2に対して第2ローラ72が軌条対向方向(左右方向Y)に移動しようとする。このとき、後用第2軌条50B2に対する第2ローラ72の軌条対向方向(左右方向Y)への移動が許容されなければ、後用第2軌条50B2と第2ローラ72とがこじれる。具体的には、第2ローラ72の転がりがスムーズでなくなる、または、第2ローラ72が転がることが不可能になる。さらに、後用第2軌条50B2に対して第2ローラ72が軌条対向方向(左右方向Y)に移動しようとすると、後用第1軌条50B1および第1ローラ71に反力が生じ、後用第1軌条50B1および第1ローラ71もこじれる。一方、上記[構成16-3]では、後用第2軌条50B2に対する第2ローラ72の軌条対向方向(左右方向Y)への移動が許容される。よって、後側水切部材60Bが熱変形した場合でも、後用第2軌条50B2と第2ローラ72とがこじれることを抑制することができる。
【0154】
(第17の発明の効果)
[構成17]上記[構成16-1]、[構成16-2]、および[構成16-3]を備える水切装置20では、第1軌条(例えば後用第1軌条50B1)および第1ローラ71の一方は、上下方向Zに凹む形状である凹状部71aを備える。後用第1軌条50B1および第1ローラ71のうち凹状部71aを備える方とは異なる方は、凹状部71aにはまる突出部50B1a(凸状部)を備える。
【0155】
上記[構成17]により、後用第1軌条50B1に対する軌条対向方向(左右方向Y)への移動の制限を、1つの第1ローラ71で行うことができる。よって、第1ローラ71の数(部品数)を抑制することができる。
【0156】
(第18の発明の効果)
[構成18]上記[構成12]を備える水切装置20では、軌条50は、上側Z1に凸の形状である凸状部(突出部50B1aおよび突出部50B2aの少なくともいずれか)を備える。
【0157】
上記[構成18]により、軌条50の上側Z1の面から、堆積物(例えばスケールなど)が落下しやすくなる。よって、軌条50の上側Z1の面に堆積物が溜まることを抑制することができる。
【0158】
(第19の発明の効果)
[構成19]
図2に示すように、水切装置20は、水切部材60を収容するチャンバ31を備える。駆動機構80は、後用駆動部82(駆動部)と、後用駆動伝達部83(駆動伝達部)と、を備える。後用駆動部82は、チャンバ31の外に配置される。後用駆動伝達部83は、後用駆動部82の駆動力を水切部材60(後側水切部材60B)に伝達する。
【0159】
上記[構成19]により、次の効果が得られる。チャンバ31は、水切部材60を収容するものであるため、チャンバ31内は、水切対象物21からの熱により高温であり、除水前および後の水が存在する劣悪な環境である。上記[構成19]では、後用駆動部82が、チャンバ31の外に配置される。よって、後用駆動部82を、チャンバ31内よりも良好な環境で作動させることができる。また、後用駆動部82のメンテナンスを、チャンバ31内よりも良好な環境で容易に行うことができる。
【0160】
(第20の発明の効果)
[構成20]上記[構成19]を備える水切装置20では、後用駆動伝達部83(駆動伝達部)は、チャンバ31を貫通するように配置された後用ロッド83a(ロッド)を備える。
【0161】
上記[構成20]により、例えばチェーンなどの複雑な機構のみを後用駆動伝達部83が備える場合に比べ、後用駆動伝達部83を簡易な構成にすることができる。また、後用駆動伝達部83を、チャンバ31内の劣悪な環境に耐えやすい構成にすることができる。
【0162】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、上記実施形態の各構成要素の配置や形状が変更されてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、構成要素どうしの固定や連結などは、直接的でも間接的でもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。
【符号の説明】
【0163】
1 連続鋳造設備
20 水切装置
21 水切対象物
21c 断面
31 チャンバ
31a チャンバ土台部(土台部)
43 軌条支柱
50 軌条
50B1 後用第1軌条(第1軌条)
50B1a 凸状部(突出部)
50B2a 凸状部
50B2 後用第2軌条(第2軌条)
50C1 右用第1軌条(第1軌条)
50C2 右用第2軌条(第2軌条)
60 水切部材
60B 後側水切部材(長辺側水切部材)
60Ba、60Ca 水切部材本体部
60Bb、60Cb 水切部材傾斜面
60Bc、60Cc ガス増速部
60Bd、60Cd 噴出部
60Be ガス通路
60C 右側水切部材(短辺側水切部材)
60D 左側水切部材(短辺側水切部材)
70 ローラ
71 第1ローラ
71a 凹状部
72 第2ローラ
80 駆動機構
82 後用駆動部(駆動部)
83 後用駆動伝達部(駆動伝達部)
83a 後用ロッド(ロッド)
86 左右用駆動部(駆動部)
87 左右用駆動伝達部(駆動伝達部)
87a 左右用ロッド(ロッド)
95 隙間検出部
97 制御部(第1制御部、第2制御部、第3制御部)
G 圧縮ガス