(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】建材の建て起こし方法および装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/16 20060101AFI20240919BHJP
B66C 13/08 20060101ALN20240919BHJP
【FI】
E04G21/16
B66C13/08 R
(21)【出願番号】P 2021046987
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-05-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大谷 英夫
(72)【発明者】
【氏名】大竹 明朗
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-070069(JP,A)
【文献】特開平09-077500(JP,A)
【文献】特開平06-330634(JP,A)
【文献】特開2018-031177(JP,A)
【文献】特開2006-144234(JP,A)
【文献】特開平06-305677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/22
B66C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の脚部、および一対の前記脚部の間に横架された梁部を有する本体部と、前記梁部に設置された荷役手段と、を具備する荷役設備を用いた建材の建て起こし方法であって、
建材を荷台に載置した運搬車両が一対の前記脚部の間に進入し、
前記荷役手段から垂下した第1のワイヤの先端を前記建材の長手方向の一端に、揚重装置から垂下した第2のワイヤの先端を前記建材の長手方向の他端にそれぞれ連結し、
前記建材と前記荷台とを離間させ、
前記運搬車両が一対の前記脚部の間から退避し、
前記揚重装置によって前記第2のワイヤの先端を上昇させることで、前記建材を建て起し、
前記梁部は、前記第1のワイヤが挿通される開口部を有し、
前記荷役手段は、前記開口部の上に配置され、
前記荷役設備は、前記第1のワイヤの先端が平面視で前記開口部から前記梁部の短手方向に離れる場合に前記第1のワイヤの側面に曲面で接触する偏向装置を備えること、
を特徴とする建材の建て起こし方法。
【請求項2】
一対の脚部、および一対の前記脚部の間を横架する梁部を有する本体部と、前記梁部に設置された荷役手段と、を具備する荷役設備を有し、
前記荷役手段は、建材の長手方向の一端に先端を連結する第1のワイヤを有し、
前記梁部は、前記第1のワイヤが挿通される開口部を有し、
前記荷役手段は、前記開口部の上に配置され、
前記荷役設備は、前記第1のワイヤの先端が平面視で前記開口部から前記梁部の短手方向に離れる場合に前記第1のワイヤの側面に曲面で接触する偏向装置を備えること、
を特徴とする建材の建て起こし装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建材の建て起こし方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陸上風力発電所等の建設工事において、タワー部材等の長尺で重量の大きい建材の荷下し、および建て起こしを行う場合には、クレーン2台を用いて建材の一端と他端とをそれぞれ吊り上げる相吊りが標準となっている。しかし、クレーン2台により建材の相吊りを行おうとしても、狭隘な施工ヤードではクレーン2台を配置できない場合があり、また、クレーン2台を作業期間中常備しなければならない、という問題がある。
このような問題に対して、クレーン(揚重装置)の使用は1台にして建材を建て起こす方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この方法では、第1の支持部材30と、第2の支持部材31と、載置架台20とを備えた建て起こし装置10を用いる(特許文献1の要約参照)。第1の支持部材30は、一端30Aが固定部材34に回動可能に固定されている。第2の支持部材31は、一端31Aが第1の支持部材30の他端30Bに回動可能に接続され、他端31Bが水平方向に移動可能である。載置架台20は、第2の支持部材31の上部に沿うように設けられている。この方法では、建て起こし装置10の載置架台20上に建材1を載置し、載置架台20の上方を吊り上げ、第2の支持部材31を、他端31Bを中心に回動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、トレーラ等の運搬車両から建材の荷下ろし作業を行った後、荷下ろした建材を所定の架台に載置させておく工程が別途必要になる。また、第1の支持部材の一端を固定しておく必要があり、その都度、取り外し、再固定の作業を伴う。
本発明は、前記した課題を解決し、揚重装置の使用は1台にして建材の荷下ろしおよび建て起こしを効率的に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明は、一対の脚部、および一対の前記脚部の間に横架された梁部を有する本体部と、前記梁部に設置された荷役手段と、を具備する荷役設備と、1台の揚重装置と、を用いた建材の建て起こし方法である。この方法では、まず、建材を荷台に積載した運搬車両が一対の前記脚部の間に進入する。続いて、前記荷役手段から垂下した第1のワイヤの先端を前記建材の長手方向の一端に、前記揚重装置から垂下した第2のワイヤの先端を前記建材の長手方向の他端にそれぞれ連結する。続いて、前記建材と前記荷台とを離間させる。続いて、前記運搬車両が一対の前記脚部の間から退避する。そして、前記揚重装置によって前記第2のワイヤの先端を上昇させることで、前記建材を建て起こす。
この発明では、運搬車両の荷台に載置された建材の一端に荷役手段の第1のワイヤの先端を、当該建材の他端に揚重装置の第2のワイヤの先端をそれぞれ連結して、建材の建て起こしを行うことができる。したがって、クレーン等の揚重装置は、従来のように2台必要ではなく、揚重装置を1台用意すればよい。また、運搬車両から建材を荷下ろして所定の架台に載置させておく工程を別途設ける必要はない。つまり、運搬車両の荷台に載置された建材に対して、そのままの状態で荷下ろしおよび建て起こしの作業が可能となる。
このように、本発明によれば、揚重装置の使用は1台にして建材の荷下ろしおよび建て起こしを効率的に行うことができる。
【0006】
前記方法においては、前記荷役手段によって前記第1のワイヤの先端を上昇させるとともに前記揚重装置によって前記第2のワイヤの先端を上昇させることで、前記建材と前記荷台とを離間させることが好ましい。
この構成では、荷役手段および揚重装置によって建材を容易に地切りできるので、荷台を昇降可能な特殊な運搬車両を使用する必要がない。
前記方法においては、前記揚重装置によって前記第2のワイヤの先端を上昇させるに従って、前記荷役手段によって前記第1のワイヤの先端を下降させることで前記建材を建て起こすことが好ましい。
この構成では、建材と梁部との間隔を所定距離確保しつつ、建材を速やかに建て起こすことが可能となる。
【0007】
前記方法においては、前記第1のワイヤの先端を前記建材の長手方向の一端の上部に、前記第2のワイヤの先端を前記建材の長手方向の他端の中央部にそれぞれ連結することが好ましい。
この構成では、建材を、回転させることなく安定した姿勢を保ちつつ、建て起こすことが可能となる。
前記梁部は、前記第1のワイヤが挿通される開口部を有し、前記荷役手段は、前記開口部の上に配置されている。この場合、前記荷役設備は、前記第1のワイヤの先端が平面視で前記開口部から前記梁部の短手方向に離れる場合に前記第1のワイヤの側面に曲面で接触する偏向装置を備えている。
建材を建て起こす際に、揚重装置を使用して建材の他端を吊り上げると、第1のワイヤが梁部の短手方向に引っ張られ、開口部に挿通した第1のワイヤが曲げられることになるが、所定の曲率半径以下で曲げられた場合、所要の強度が得られない場合がある。しかし、偏向装置を備えることによって、強度低下を抑制しつつ第1のワイヤを曲げることができる。
【0008】
また、本発明は、一対の脚部、および一対の前記脚部の間に横架された梁部を有する本体部と、前記梁部に設置された荷役手段と、を具備する荷役設備を有する建材の建て起こし装置である。前記荷役手段は、建材の長手方向の一端に先端を連結する第1のワイヤを有する。前記梁部は、前記第1のワイヤが挿通される開口部を有し、前記荷役手段は、前記開口部の上に配置される。前記荷役設備は、前記第1のワイヤの先端が平面視で前記開口部から前記梁部の短手方向に離れる場合に前記第1のワイヤの側面に曲面で接触する偏向装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、揚重装置の使用は1台にして建材の荷下ろしおよび建て起こしを効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る建材の建て起こし装置を概略で示す側面図である。
【
図2】
図1に示される荷役設備を後方から見た概略で示す拡大図である。
【
図3】
図2に示される荷役設備に備えられた偏向装置を説明するための側面図である。
【
図4】
図3に示される偏向装置の周辺を示す拡大側面図である。
【
図5】
図4に示される偏向装置の拡大平面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る建材の建て起こし方法の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照して説明する。なお、以下に示す図面において、同一または同種の部材については、同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。また、部材のサイズ及び形状は、説明の便宜のため、変形または誇張して模式的に表す場合がある。
図1は、本発明の実施形態に係る建材の建て起こし装置(以下、単に「建て起こし装置」ともいう)100を概略で示す側面図である。
図2は、
図1に示される荷役設備10を後方から見た概略で示す拡大図である。
図2では、運搬車両95は省略した。
図3は、
図2に示される荷役設備10に備えられた偏向装置60を説明するための側面図である。なお、以下においては、説明の便宜上、建て起こし装置100における上下前後左右の各方向は、
図1~
図2に示す各方向に設定する。
建て起こし装置100は、風車のタワー部材等の長尺で重量の大きい建材90の荷下し、および建て起こしを行う際に使用される装置であり、荷役設備10を用いることによってクレーン等の揚重装置80の使用は1台にすることが可能である。
【0012】
図1、
図2に示すように、建て起こし装置100は、荷役設備10を有している。荷役設備10は、本体部20と、荷役手段50とを具備している。本体部20は、左右一対の脚部30,30と、左右一対の脚部30,30の間に横架された梁部40とを有している。荷役手段50は、梁部40に設置されている。
脚部30は、ベース部材31と、一対の支柱32,32と、上部水平部材33とを有している。ベース部材31は、前後方向に水平に延びており、基盤面97上に設置される。支柱32は、鉛直方向に延びており、前後方向に一対並んでベース部材31上に立設されている。上部水平部材33は、一対の支柱32,32の上部を繋ぐように前後方向に水平に配置されている。ベース部材31と支柱32とが交わる隅部には、下部補助部材34が斜めに配置される。梁部40は、左右方向に水平に延びており、左右一対の上部水平部材33,33の上に横架されるように配置されている。梁部40は、前後方向に並んで配置される一対の横梁41,41を有している。
本体部20を構成する部材としては、例えばH型鋼等の構造部材が使用され得る。なお、本体部20は、前記した構成に限定されるものではなく、一対の脚部30,30と、それらの間に横架された梁部40を備えるいわゆる門型を呈するものであればよい。
【0013】
荷役手段50は、建材90の長手方向の一端91に先端を連結する第1のワイヤ51を有している。荷役手段50は、ここでは、第1のワイヤ51を引き戻して先端52を上昇させたり(吊り上げ)、第1のワイヤ51を送り出して先端52を下降させたり(吊り下げ)できるジャッキ(例えばオックスジャッキ(株)製のダブルツインジャッキ(商品名)等)である。なお、荷役手段50は、これに限定されるものではなく、例えば、ウインチ等であってもよい。
梁部40は、第1のワイヤ51が挿通される開口部42(
図4参照)を有している。荷役手段50は、開口部42の上に配置されている。開口部42は、ここでは、一対の横梁41,41の間に形成されている。なお、梁部40が1本の部材で構成されて、開口部42は、梁部40の平面視で中央に形成された貫通孔であってもよい。
【0014】
図2、
図3に示すように、荷役設備10は、第1のワイヤ51の先端52が平面視で開口部42から梁部40の短手方向(ここでは前方向)に離れる場合に第1のワイヤ51の側面に曲面で接触する偏向装置60を備える。偏向装置60は、偏向装置受け部材70に取り付けられている。偏向装置受け部材70は、梁部40の下側において、左右の支柱32の間に架設されている。梁部40または偏向装置受け部材70と支柱32とが交わる隅部には、上部補助部材35が斜めに配置される。
【0015】
図4は、
図3に示される偏向装置60の周辺を示す拡大側面図である。
図5は、
図4に示される偏向装置60の拡大平面図である。
図4、
図5に示すように、偏向装置60は、第1のワイヤ51に接触する接触部61と、接触部61を支持する支持部62とを有している。支持部62は、偏向装置受け部材70の後面に固定されている。接触部61の後側の表面63は、ここでは円筒面の一部を呈しているが、楕円筒面等の他の凸状の曲面を呈していてもよい。また、接触部61の表面63に、フッ素樹脂等の低摩擦係数を有する被覆層が形成されてもよい。このようにすれば、第1のワイヤ51の摩耗を低減できる。また、接触部61の表面63に、第1のワイヤ51を案内する凹状の溝(図示省略)が形成されてもよい。このようにすれば、第1のワイヤ51を安定して引き戻したり送り出したりできる。
【0016】
次に、このように構成された建て起こし装置100を用いた建材90の建て起こし方法について、主に
図1、
図2、
図6を参照して説明する。
図6は、本発明の実施形態に係る建材の建て起こし方法の内容を示すフローチャートである。
まず、建材90を荷台96に載置したトレーラ等の運搬車両95が、一対の脚部30,30の間に進入する(ステップS1)。運搬車両95は、
図1では前を向いているが、後を向いていてもよい。なお、運搬車両95は、移動用動力部分が切り離されたものであってもよい。
【0017】
続いて、作業者は、第1のワイヤ51と第2のワイヤ81とを建材90に連結する(ステップS2)。具体的には、作業者は、荷役手段50から垂下した第1のワイヤ51の先端52を建材90の長手方向の一端91に連結する。ここで、第1のワイヤ51の先端52は、所定の治具(図示省略)を介して、荷台96に載置された状態における建材90の長手方向の一端91の上部93に連結される。また、作業者は、クレーン等の揚重装置80から垂下した第2のワイヤ81の先端82を建材90の長手方向の他端92に連結する。ここで、第2のワイヤ81の先端82は、二股に分岐しており、それぞれの先端に取り付けられた所定の治具(図示省略)を介して、建材90の長手方向の他端92の中央部94に連結される。他端92の中央部94は、建材90を横倒した状態での他端92における高さ方向および左右方向の中央部であり、第2のワイヤ81で建材90が吊り上げられた場合に、建材90が自重によって鉛直方向に向く吊り位置である。なお、第2のワイヤ81の先端82が一本である場合には、建材90の長手方向の他端92の上部に連結することが好ましい。
【0018】
続いて、建材90と荷台96とが離間させられる(ステップS3)。具体的には、荷役手段50によって第1のワイヤ51の先端52を上昇させるとともに揚重装置80によって第2のワイヤ81の先端82を上昇させることで、建材90が荷台96から浮かせられる。ここで、第2のワイヤ81を巻き戻す(巻き上げる)ことが、第2のワイヤ81の先端82を真上に上昇させられるので安定した動作を確保する観点から好ましい。なお、運搬車両95の荷台96が昇降可能である場合には、荷台96を下降させることで、建材90と荷台96とが離間させられてもよい。
続いて、荷台96が空になった運搬車両95が、一対の脚部30,30の間から退避する(ステップS4)。
【0019】
続いて、揚重装置80によって第2のワイヤ81の先端82を上昇させることで、建材90が建て起こされる(ステップS5)。ここで、第2のワイヤ81を巻き戻すこと、または揚重装置80のブーム83の先端を上方に起こすことで、第2のワイヤ81の先端82が上昇させられる(
図1の一点鎖線を参照)。この場合、揚重装置80によって第2のワイヤ81の先端82を上昇させるに従って、荷役手段50によって第1のワイヤ51の先端52を下降させることで、建材90を建て起こすことが好ましい(
図1の二点鎖線を参照)。
【0020】
前記したように、本実施形態に係る建材の建て起こし方法では、まず、建材90を荷台96に積載した運搬車両95が、一対の脚部30,30の間に進入する。続いて、荷役手段50から垂下した第1のワイヤ51の先端52を建材90の長手方向の一端91に、揚重装置80から垂下した第2のワイヤ81の先端82を建材90の長手方向の他端92にそれぞれ連結する。続いて、建材90と荷台96とを離間させる。続いて、運搬車両95が一対の脚部30,30の間から退避する。そして、揚重装置80によって第2のワイヤ81の先端82を上昇させることで、建材90を建て起こす。
本実施形態では、建材90の一端91に荷役手段50の第1のワイヤ51の先端52を、建材90の他端92に揚重装置80の第2のワイヤ81の先端82をそれぞれ連結して、建材90の建て起こしを行うことができる。したがって、クレーン等の揚重装置80は、従来のように2台必要ではなく、揚重装置80を1台用意すればよい。また、運搬車両95から建材90を荷下ろして所定の架台に載置させておく工程を別途設ける必要はない。つまり、運搬車両95の荷台96に載置された建材90に対して、そのままの状態で荷下ろしおよび建て起こしの作業が可能となる。
このように、本実施形態によれば、揚重装置80の使用は1台にして建材90の荷下ろしおよび建て起こしを効率的に行うことができる。
【0021】
また、本実施形態では、荷役手段50によって第1のワイヤ51の先端52を上昇させるとともに揚重装置80によって第2のワイヤ81の先端82を上昇させることで、建材90と荷台96とが離間させられる。この構成では、荷役手段50および揚重装置80によって建材90を容易に地切りできるので、荷台96を昇降可能な特殊な運搬車両を使用する必要がない。
また、本実施形態では、揚重装置80によって第2のワイヤ81の先端82を上昇させるに従って、荷役手段50によって第1のワイヤ51の先端52を下降させることで建材90が建て起こされる。この構成では、建材90と梁部40との間隔を所定距離確保しつつ、建材90を速やかに建て起こすことが可能となる。
【0022】
また、本実施形態では、第1のワイヤ51の先端52は建材90の長手方向の一端91の上部93に、第2のワイヤ81の先端82は建材90の長手方向の他端92の中央部94にそれぞれ連結される。この構成では、建材90を、回転させることなく安定した姿勢を保ちつつ、建て起こすことが可能となる。
【0023】
また、本実施形態では、梁部40は、第1のワイヤ51が挿通される開口部42を有し、荷役手段50は、開口部42の上に配置される。荷役設備10は、第1のワイヤ51の先端52が平面視で開口部42から梁部40の短手方向に離れる場合に第1のワイヤ51の側面に曲面で接触する偏向装置60を備えている。建材90を建て起こす際に、揚重装置80を使用して建材90の他端92を吊り上げると、第1のワイヤ51が梁部40の短手方向に引っ張られ、開口部42に挿通した第1のワイヤ51が曲げられることになるが、所定の曲率半径以下で曲げられた場合、所要の強度が得られない場合がある。しかし、偏向装置60を備えることによって、強度低下を抑制しつつ第1のワイヤ51を曲げることができる。
【0024】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、偏向装置60は滑車であってもよい。あるいは、荷役設備10は、偏向装置60を備える代わりに、第1のワイヤ51の送り出し方向が鉛直方向に対して傾斜するように荷役手段50が斜めに設置されてもよい。この場合、荷役手段50自体が斜めに設置されてもよいし、荷役手段50が梁部40や一対の支柱32,32とともに斜めに設置されてもよい。あるいは、荷役手段50が、左右方向に沿う軸体に固定されて、当該軸体の中心軸を中心として回転可能に構成されてもよい。
また、前記実施形態では、荷下し、および建て起こしを行う対象である建材90として、風車のタワー部材を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。本発明は、長尺で重量の大きい鉄骨柱等の他の建材の荷下し、および建て起こしにも適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
10 荷役設備
20 本体部
30 脚部
40 梁部
42 開口部
50 荷役手段
51 第1のワイヤ
52 先端
60 偏向装置
80 揚重装置
81 第2のワイヤ
82 先端
90 建材
91 一端
92 他端
93 上部
94 中央部
95 運搬車両
96 荷台
100 建て起こし装置