(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】気体供給体、気体供給体ユニット、および、廃水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/06 20230101AFI20240919BHJP
【FI】
C02F3/06
(21)【出願番号】P 2021061087
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】奥野 健太
(72)【発明者】
【氏名】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】松島 加奈
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-511303(JP,A)
【文献】特開2017-087139(JP,A)
【文献】特開平05-269483(JP,A)
【文献】特開2020-151625(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0166380(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/02- 3/10
C02F 3/14- 3/26
C02F 3/28- 3/34
C02F 3/00
C02F 7/00
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物の働きを利用して廃水を浄化する廃水処理装置にて使用される気体供給体であって、
外部を廃水に浸漬され、内部に気体が供給されるシート積層体と、
前記シート積層体の内部の空間を分割する気体送出層と、
前記シート積層体の内部に配置され、前記シート積層体の内部の空間に気体を供給する送気部と、
を含み、
前記送気部は、
気体供給源からの気体を供給する送気元部と、
前記送気元部からの気体を前記気体送出層で分割された空間に供給する分配部と、
前記分配部と前記気体送出層の間にあって、前記気体送出層で分割された空間に供給される気体を制限するための絞り部と、
を含む、
気体供給体。
【請求項2】
前記気体送出層で分割される空間内での気体の供給は、下から上に向かって行われる、
請求項1に記載の気体供給体。
【請求項3】
前記分配部は、内径最小部(A)が1~200mmである、
請求項1または2に記載の気体供給体。
【請求項4】
前記絞り部は、絞り幅(B)が0.01~8mmである、
請求項1~3のいずれか1項に記載の気体供給体。
【請求項5】
前記分配部の内径最小部(A)と、前記絞り部の絞り幅(B)の比(B/A)が、0.0001以上0.6以下である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の気体供給体。
【請求項6】
気体供給体全体への気体の供給が達成される条件において、前記気体供給体の有効面積当たりの酸素含有気体供給速度(g/m
2/day)(C)と前記気体送出層での圧力損失(kPa)(D)の比(C/D)が、210以下である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の気体供給体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の気体供給体を複数備える、
供給体ユニット。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の気体供給体、もしくは、請求項7に記載の供給体ユニット、を含む
廃水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
好気性微生物の働きを活用して水中の有機物を分解して廃水を浄化する廃水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
好気性微生物廃水処理装置は有機性廃水の処理方法として広く利用されている。一方、散気管を用いた曝気は酸素溶解効率が低く、散気管にかかる水圧以上の圧力での曝気を必要とする為、ブロワの電力費がかかる。
【0003】
気体を透過し液体を透過しない気体供給体に微生物を付着させて廃水処理を行う、廃水処理装置が検討されている。この装置では送気にかかる圧力を抑えることが出来る為、電力費削減が可能である。当該気体供給体の例が特許文献1,2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3743771号公報
【文献】特許第4680504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特に中空糸型MABRでは、水圧により気体供給空間が潰れて閉塞しないように高い供給圧が必要な場合や、気体供給空間での圧力損失により高い供給圧が必要な場合がある。その為、高圧での気体供給が可能である圧縮機やブロワが使用されているが、消費エネルギーが大きいという課題がある。一方、消費エネルギーを小さくするために気体供給空間での圧力損失を低減させた場合では、気体供給空間の体積が大きくなり、気体供給体全体への均一な酸素供給が達成されず、処理効率が低下するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点の気体供給体は、微生物の働きを利用して廃水を浄化する廃水処理装置にて使用されるものであって、
外部を廃水に浸漬され、内部に気体が供給されるシート積層体と、
前記シート積層体の内部の空間を分割する気体送出層と、
前記シート積層体の内部に配置され、前記シート積層体の内部の空間に気体を供給する送気部と、
を含み、
前記送気部は、
気体供給源からの気体を供給する送気元部と、
前記送気元部からの気体を前記気体送出層で分割された空間に供給する分配部と、
前記分配部と前記気体送出層の間にあって、前記気体送出層で分割された空間に供給される気体を制限するための絞り部と、を含む。
【0007】
第2観点の気体供給体は、第1観点の気体供給体であって、前記気体送出層で分割される空間内での気体の供給は、下から上に向かって行われる。
【0008】
第3観点の気体供給体は、第1観点または第2観点の気体供給体であって、前記分配部は、内径最小部(A)が1~200mmである。
【0009】
第4観点の気体供給体は、第1観点~第3観点のいずれかの気体供給体であって、前記絞り部は、絞り幅(B)が0.01~8mmである。
【0010】
第5観点の気体供給体は、第1観点~第4観点のいずれかの気体供給体であって、前記分配部の内径最小部(A)と、前記絞り部の絞り幅(B)の比(B/A)が、0.0001以上0.6以下である。
【0011】
第6観点の気体供給体は、第1観点~第5観点のいずれかの気体供給体であって、気体供給体全体への気体の供給が達成される条件において、前記気体供給体の有効面積当たりの酸素含有気体供給速度(g/m2/day)(C)と前記気体送出層での圧力損失(kPa)(D)の比(C/D)が、210以下である。
【0012】
第7観点の気体供給体ユニットは、第1観点~第6観点のいずれかの気体供給体を複数備える。
【0013】
第8観点の廃水処理装置は、第1観点~第6観点のいずれかの気体供給体、もしくは、第7観点の供給体ユニット、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明の気体供給体・供給体ユニット・装置では、低圧での酸素供給が可能であるため、小さい消費エネルギーでの運転が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の廃水処理装置100の鉛直断面図である。
【
図2】第1実施形態の廃水処理装置100の水平断面図である。
【
図3】第1実施形態の廃水処理装置100の鉛直断面図である。
図1と直交する断面を示す。
【
図4】第1実施形態の気体供給体10の鉛直断面図である。
【
図5】第1実施形態の気体供給体10を構成する気体送出層12を示す斜視図である。
【
図6】第1実施形態の廃水処理装置100の廃水処理槽51内の廃水中に浸漬された気体供給体10のシート積層体21の表面に形成される微生物集合体、および微生物による少なくとも1つの有機物質または窒素源の分解について説明する模式図である。
【
図7】実施例1の気体送出層12、送気部60aの鉛直断面図である。
【
図8】実施例2の気体送出層12、送気部60bの鉛直断面図である。
【
図9】比較例1の気体送出層12、送気部60cの鉛直断面図である。
【
図10】比較例2の気体送出層12、送気部60dの鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係るシート積層体や、当該シート積層体を備える気体供給体や、気体供給体が配置された廃水処理装置について、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態1に係る廃水処理装置100を示す鉛直断面図である。
図2は、廃水処理装置100を示す水平断面図である。
図3は、廃水処理装置100を示す鉛直断面図であり、
図1と直交する断面を示す。
【0018】
(廃水処理装置100)
本実施形態の廃水処理装置100は、廃水Wに含まれる好気性微生物の働きを利用して、廃水W中の少なくとも1つの有機物または窒素源を分解して廃水Wの浄化処理を行う。
図1~
図3に示すように、廃水処理装置100は、廃水処理槽51と、供給体ユニット52と、気体供給源53(
図1参照)と、を備えている。
【0019】
(廃水処理槽51)
図1~
図3に示すように、廃水処理槽51は、廃水Wが貯留される有底の容器であって、互いに対向する側面に流入口51aと流出口51bとが設けられている。
【0020】
本実施形態では、流入口51aと流出口51bとが常時開放されている。廃水Wは、流入口51aから、流入口51aに対向する位置に配置された流出口51bに向かって、連続的、もしくは、断続的に供給される(
図3の矢印は、廃水Wの流れを示している)。
【0021】
廃水処理槽51の容積については、特に限定されないが、例えば、1m3以上10,000m3以下の容積であればよい。
【0022】
(供給体ユニット52)
図1に示すように、供給体ユニット52は、気体供給体10がユニット化されたものであり、廃水処理槽51の内部に配置される。図示例では、供給体ユニット52は、平行に配列された複数の気体供給体10によって構成されている。供給体ユニット52は、使用時において、各気体供給体10の上端部分を除いた部分が廃水W中に浸漬されるように配置される。
【0023】
(気体供給体10)
供給体ユニット52を構成する各気体供給体10とは、廃水処理槽51の廃水W中に浸漬された状態で、気体供給源53から供給された気体を、廃水W中に供給する構造体である。気体供給体10を介して廃水W中に供給される気体としては、廃水W中の好気性微生物の活性化を促すために、酸素を含む気体であることが好ましい。具体的には、空気であってもよいし、純酸素であってもよい。図示の例では、気体供給源53からの気体が開口21bに供給されるようになっており、気体供給源53として送気装置等を用いることができる。なお製造コストを安価に抑える観点から、気体供給源53を使用せずに、開口21bから大気中の空気をそのまま気体供給体10に取り入れてもよい。
【0024】
図2や
図3に示すように、各気体供給体10は、平板状の部材であって、上下方向(深さ方向)と横方向(水平方向)とに沿って面が展開されるように配置されている。これにより、廃水Wとの接触面積が効率的に確保される。また、流入口51aと流出口51bとを結ぶ直線に対して、各気体供給体10の側面が平行になるように各気体供給体10が配置されることで、流入口51aから廃水処理槽51内に供給される廃水Wは、流出口51bに向けて円滑に流れる。なお、供給体ユニット52を構成する気体供給体10の数は、必ずしも複数である必要はなく、単数であってもよい。
【0025】
気体供給体10の間隔を、「気体供給体10の厚みを含まない、隣り合う2つの気体供給体10の外面の間の間隔」と定義すると、気体供給体10の間隔は、5mm以上200mm以下であることが好ましい。気体供給体10の間隔が5mm未満である場合には、シート積層体21上に増殖する微生物によって目詰まりを起こす虞がある。気体供給体10の間隔が200mmを超える場合には、廃水との接触効率が悪くなり、廃水処理性能が向上しにくくなる可能性がある。なお上記問題を確実に回避するために、気体供給体10の間隔を15mm以上50mm以下とすることがより好ましい。
【0026】
図4は、気体供給体10の鉛直断面図を示し、さらに90°回転した方向の鉛直断面図が
図3に示される。気体供給体10は、シート積層体21と、気体送出層12と、送気部60と、を備えている。シート積層体21は、外部を廃水に浸漬され、内部に気体が供給される。気体送出層12は、シート積層体21内部に配置され、内部の空間を分割する。送気部60は、シート積層体21の袋の内部に配置されている。送気部60は、気体供給源53から供給された気体を、シート積層体21(気体送出層12)の内部の空間に供給する。
【0027】
シート積層体21によって構成される袋の中に、気体送出層12および送気部60が配置される。前記袋は、2枚のシート積層体21,21を重ね合わせて、これらシート積層体21,21の3方の端部を接着したものであり、上端部(気体送出層12における気体供給側の端部)に開口21b(
図4参照)を有している。そして開口21bから気体送出層12および送気部60が袋の内部に挿入されることで、気体送出層12および送気部60はシート積層体21によって覆われている。なお開口21bの位置あるいは形状は限定されず、例えば各端部(袋の上辺、底辺、横辺(縦のライン)も含む)の一部が開口とされてもよい。
【0028】
(送気部60)
送気部60は、気体供給源53から供給された気体を、シート積層体21(気体送出層12)の内部の空間に供給する。送気部60は、
図3、4に示すように、送気元部61と、分配部62と、絞り部63とを有する。
【0029】
送気元部61は、シート積層体21の袋の内部で、シート積層体21と気体送出層12との側部に鉛直に配置される。送気元部61は、気体供給源53からの気体を分配部62に供給する。送気元部61は、送気管であってもよい。送気管の本数や口径は特に限定されないが、気体供給体10間の間隔を確保する為に、200mm以下の口径が望ましい。また、送気管の本数や口径は気体流量に対して圧力損失が5kPa以下となるように設けられるのが望ましい。
【0030】
分配部62は、送気元部61の先端に接続されている。分配部62は、シート積層体21で構成された袋の内部であって、気体送出層12より下の、気体送出層12とシート積層体21の間の隙間に配置される。つまり、分配部62は、略水平に配置される。分配部62は、送気元部61から送られた気体を、気体送出層12で分割された空間に供給する。
【0031】
絞り部63は、分配部62と気体送出層12との間に配置される。絞り部63は、分配部62から、気体送出層12で分割された空間に供給される空気を制限する。
【0032】
本実施形態においては、気体供給源53からの気体は、送気元部61を上から下に流れる。次に、シート積層体21の袋の下部の分配部62を水平に流れる。次に、分配部62から絞り部63を経由して、気体送出層12で分割された空間を下から上に、気体流路Sの方向に流れる。気体流路Sを流れる気体は、気体送出層12側面の気体通過孔13から気体送出層12を通過して、廃液中の微生物に供給される。
【0033】
分配部62は、均一に空気を分配する観点から1mm以上、気体供給体10間の間隔を確保する観点から200mm以下、の口径が望ましい。より好ましくは30mm以下の口径が望ましい。
【0034】
絞り部63の絞り幅Bは、寸法安定性の観点から0.01mm以上、均一に気体流路Sに送気する観点から8mm以下であることが望ましい。なお、分配部62と絞り部63は一体構造をしていても良い。絞り部63は、気体送出層12と一体に構成されたものであってもよい。
【0035】
なお、上記では、分配部62および絞り部63が、シート積層体21の袋の内部かつ底部に配置されている場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。気体供給体10が、分配部62と絞り部63を備え、分配部62が気体送出層12で分割された空間に気体を分配し、絞り部63が分配部から気体送出層12で分割された空間へ向かう気体を制限していればよい。変形例としては、次のような形態である。
【0036】
変形例では、送気元部61は、気体供給源53からの気体を気体送出層12の上部に供給する。分配部62、絞り部63は、気体送出層12の上側にほぼ水平に配置されている。分配部62、絞り部63を通過した気体は、気体送出層12で分割された各空間において、上から下へ流れる。そして、その気体は、気体送出層12側面の気体通過孔13から気体送出層12を通過して、廃液中の微生物に供給される。
【0037】
(気体送出層12)
図5は、気体送出層12を示す斜視図である。気体送出層12は、中空板状部材であり、紙、樹脂、金属のいずれかから形成される。気体送出層12とは、第1端側から供給された気体を第1方向に沿って送出する気体流路Sを有する構造体である。
【0038】
より具体的には
図5に示すように、気体送出層12は、複数の芯材12aと、表ライナ12bと、裏ライナ12cと、を有している。気体送出層12の表裏面は、板状の部材である表ライナ12bや裏ライナ12cによって構成される。
【0039】
複数の芯材12aは、それぞれ第1方向に延びるものであって、第1方向と直交する方向に所定の間隔をあけて配列される。これら複数の芯材12aが表ライナ12bと裏ライナ12cとの間に挟み込まれることで、表ライナ12bと裏ライナ12cとの間の空間に、芯材12aによって区画された複数の気体流路Sが形成される。
【0040】
また各芯材12aは、表ライナ12bおよび裏ライナ12c側から押圧された際に、表ライナ12bと裏ライナ12cとの間の空間が縮小しないように支持する支持部として機能する。
図1~
図3に示すように気体供給体10が廃水W中に浸漬された状態では、芯材12aは、気体流路Sの断面積が水圧によって縮小しないように、表ライナ12bと裏ライナ12cとの間の空間を保持する。これにより、気体送出層12(気体流路S)における気体送出量を十分に確保できる。
【0041】
表ライナ12bおよび裏ライナ12cには、それぞれ複数の気体通過孔13が形成されている。気体通過孔13は、表ライナ12bおよび裏ライナ12cに形成された貫通孔であり、当該気体通過孔13が気体流路Sとシート積層体21とを連通させることで、気体流路Sを流れる気体は、シート積層体21を介して液体中に供給される。
【0042】
なお例えば、気体通過孔13は、気体送出層12の成形時に形成される。或いは気体送出層12の成形後に表ライナ12bや裏ライナ12cの加工が行われることで、気体通過孔13が形成されてもよい。表ライナや裏ライナには多孔性シートが用いられてもよい。また、十分な気体供給性能が得られれば、気体送出層に多孔性シートを用いてもよい。
【0043】
気体送出層12を構成する各部材の素材としては、紙、セラミック、アルミニウム、鉄、プラスチック(ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、メチルセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂及びポリビニルブチラール樹脂)等が挙げられる。
【0044】
なお強度面が優れることから、気体送出層12の素材は、紙、アルミニウム、鉄、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、塩ビ樹脂、ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0045】
また材料コストを安価に抑える観点では、気体送出層12の素材として、例えば、紙、ポリオレフィン、ポリスチレン、塩ビ、ポリエステル等の樹脂、アルミニウム等の金属等を使用することが好ましい。また、気体流路Sが第1方向(
図5中の2点差線参照)に延びるように形成された段ボールを気体送出層12として使用することでも、気体送出層12の材料コストを安価に抑えることができる。
【0046】
当該気体送出層12の気体透過孔を形成する孔形状は、円形状、多角形状(ハニカム構造を含む)など様々な形状の孔形状とすることができる。孔形状は特に限定は無いが、多角形状が好ましく、具体的には長方形もしくは正方形が好ましい。
【0047】
好気性微生物の活性を維持するために、気体送出層12の内部における酸素濃度を維持することが好ましく、この方法として、純酸素を所定量供給することで、酸素濃度を一定に維持することが挙げられる。当該純酸素を供給する方法としては、例えば、動力を用いた送気等が考えられる。
【0048】
ここで、気体送出層12内に形成される気体流路Sの上下方向(浸漬時の深さ方向)における長さは、例えば、0.2m以上、好ましくは0.8m以上であってよいし、3.7m以上であってもよい。また、当該長さは、例えば、6m以下、好ましくは4m以下であってよい。気体流路Sの上下方向に直交する横方向の長さは、例えば、0.2m以上、好ましくは0.4m以上であってよく、例えば、3.6m以下、好ましくは1.8m以下であってよい。
【0049】
ここで、気体流路Sの上下方向の長さが上記下限値以上であることは、気体流路Sの維持を容易かつ気体流路Sの換気を容易にして廃水処理能を向上させる点で好ましく、上記上限値以下であることは、気体流路Sの換気による廃水処理能向上効果をより良好に得る点、および設置容易性の点などで好ましい。
【0050】
また、気体流路Sの横方向の長さが上記下限値以上であることは、廃水Wとの接触面積を効率的に確保して廃水処理効率を向上させる点で好ましく、上記上限値以下であることは、気体供給体10全体の強度維持容易性および供給体ユニット52の設置容易性の点などで好ましい。
【0051】
気体流路Sの長さLsに対する廃水Wへの接水長さLwの割合は、例えば、80%以上、95%以下であればよい(長さLs,Lwについては
図1参照)。上記長さLsに対する接水長さLwの割合が上記下限値以上であることは、気体流路Sから供給される酸素量を良好に確保し廃水処理効率を向上させる点で好ましい。上記長さLsに対する接水長さLwの割合が上記上限値以下であることは、気体流路Sへの廃水Wの侵入を防ぐ点で好ましい。
【0052】
あるいは、気体流路Sへの廃水Wの侵入を防ぐ点では、廃水Wの水面が気体供給体10(シート積層体21)の開口21bから2cm以上離間するように接水長さLwが設定されてもよい。
【0053】
(シート積層体21)
シート積層体21は、最外側層が液体(廃水)に接触するように液体中(廃水中)に浸漬された状態で、内側(気体送出層12側)に供給される酸素を外側へ透過させることで、酸素を液体中(廃水中)に供給する。当該シート積層体21は、気体供給体10が廃水処理槽51内に浸漬された状態において、内側(気体送出層12)から外側(廃水W)へ空気を透過させ、かつ外側(廃水W)から内側(気体送出層12)へ廃水を透過させない特性を有する。これにより、廃水W中の好気性微生物は、
図6に示すように、継続的に空気(酸素)が供給されるシート積層体21の表面21aに集まってくる。よって、シート積層体21の表面21aに微生物が付着して、バイオフィルム214が形成される。そして、廃水Wに含まれるか、もしくは表面21aに保持されている微生物の働きによって、水中に溶解、もしくは分散している微小個体状の有機物、もしくは窒素化合物が分解されて、廃水が浄化される。
【0054】
具体的には
図4に示すように、シート積層体21は、基材211と、気体透過性無孔層212と、微生物支持層213とを含む。図示の例では、シート積層体21は、微生物支持層213、基材211、気体透過性無孔層212の順に積層されており、基材211が気体透過性無孔層212で覆われるとともに、廃水Wに接触する最外側層が微生物支持層213によって構成されている。なお図示の例とは異なり、シート積層体21は、基材211、気体透過性無孔層212、微生物支持層213の順に積層されたものであってもよい(図示の例とは逆に、基材211が、気体透過性無孔層212の内側に位置してもよい)。このようにしても、基材211を気体透過性無孔層212で覆い、廃水Wに接触する最外側層を微生物支持層213によって構成できる。
【0055】
(基材211)
基材211は、熱可塑性樹脂から形成される微多孔膜である。前記微多孔膜とは、微細な貫通孔を多数設けた膜である。基材211の素材として、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリメチルペンテン、ポリテトラフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデンを含めたフッ素樹脂、ポリブタジエン、ポリ(ジメチルシロキサン)を含めたシリコーンベースのポリマー、およびこれらの材料のコポリマーから選ばれるポリマー材料を含む等を含んでもよい。
【0056】
微多孔膜である基材211の製造方法は、特に限定されないが、例えば、相分離法、延伸開孔法、溶解再結晶法、粉末焼結法、発泡法、溶剤抽出のいずれかによって、基材211を製造できる。また基材211は、自己組織化ハニカム微多孔膜であってもよい。
【0057】
基材211の厚みは、10um~500umであることが好ましく、50um~200umであることがより好ましい。基材211の厚さは、JIS1913:2010一般不織布試験方法6.1厚さの測定方法で測定される値である。
【0058】
基材211の細孔径は、気体透過性無孔層の欠陥を防止する観点から、0.01um~50umであることが好ましく、高い強度と気体透過性を保持する観点から、0.1um~30umであることがより好ましい。前記細孔径は、表面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、その観察像から以下に示す方法により求めた細孔径である。観察倍率は、観察する対象物の細孔径が適切に算出できる倍率であれば、任意の倍率で観察することができる。
(細孔径を求める方法)
SEM観察で得られた像について、2値化処理を行い、画像解析的に、細孔径を算出する。算出の際には、細孔径は楕円近似を行い、楕円の長軸の長さを細孔径として、その平均値を評価する。
【0059】
或いは、基材211の細孔径は、毛管凝縮法による細孔径分布測定(パームポロシメトリ)から求められる平均細孔径であると定義される。パームポロシメトリでは、試料にかける気体の測定圧力を徐々に増加させていく際に測定される気体の透過流量から、大気圧と測定圧力との差圧と、気体透過流量との関係を求める、細孔径を求めるには、試料を表面張力が既知の湿潤液に浸漬した後の湿潤サンプルにて測定されるウェットカーブと、乾燥した資料で測定されるドライカーブを求める。それぞれ、所定の圧力範囲で徐々に圧力を増加させていくことにより、試料内の貫通細孔径に関する情報を得ることができる。平均細孔径はウェットカーブと、ドライカーブの1/2の傾きの曲線(ハーフドライカーブ)が交わる点Xを求め、これを方程式、d=2860×γ/DPに代入して求める。前記方程式において、dは平均細孔径(mm)、γは湿潤液の表面張力(dynes/cm)、DPは点Xにおける大気圧と気体圧力との差圧(Pa)である。測定は、Porous Materials社製、パームポロメーター(CFP-1500-AEC)を用いることができる。試験条件としては例えば、試験温度は室温(20℃±5℃)、湿潤液はGalwick(表面張力15.7dynes/cm)、加圧気体は圧縮空気、用いる試料の直径は33mm、供給圧力最大値は250psi、差圧の上昇速度は4psi/分で測定することができる。湿潤サンプル作成の際には、サンプルが浸漬されている湿潤液をデシケータに入れ、脱気することでサンプルを十分に湿潤させることができる。
【0060】
(気体透過性無孔層212)
気体透過性無孔層212とは、前記基材の孔より径の小さい細孔径の孔を有するか、もしくは、孔の径を検出できず、かつ、気体を透過可能な層である。気体透過性無孔層212の細孔径は、基材211の細孔径と同様の方法で測定できる。
【0061】
気体透過性無孔層212を透過する前記気体としては、酸素、二酸化炭素、窒素、水素、メタノール、エタノール等のアルコール類や有機溶剤、もしくはそれらの混合ガスが挙げられる。微生物を効果的に育成、活動させる観点から、前記気体は、酸素か、酸素を含む混合ガスであることが好ましい。気体透過性はJIS K 7126に定めた方法で測定できる。
【0062】
気体透過性無孔層212は、熱可塑性樹脂でもよく、熱硬化性樹脂でもよい。当該熱硬化性樹脂は、熱硬化する樹脂であってもよく、紫外線の照射で硬化する樹脂であってもよい。また、有機過酸化物架橋、付加反応架橋、縮合架橋により硬化する樹脂であってもよい。
【0063】
気体透過性無孔層212の素材としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンポリテトラフルオロエチレン、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂および、これらの材料のコポリマーから選ばれる熱硬化性ポリマーを含んでもよい。また、(Si-O-Si)n(n=整数)のシロキサン骨格を有するポリ(ジメチルシロキサン)などのシリコーンベースのシリコーン樹脂を用いることができる。これらの中でも、特に、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂を用いることが好ましい。
【0064】
上記のポリウレタン樹脂としては、「アサフレックス 825」(旭化成社製)、「ペレセン 2363-80A」、「ペレセン 2363-80AE」、「ペレセン 2363-90A」、「ペレセン 2363-90AE」、(以上、ダウ・ケミカル社製)、「ハイムレンY-237NS」(大日精化工業社製)を用いることができる。
【0065】
シリコーン系樹脂やシリコーンポリマー、またはそれらを得るためのシリコーン系樹脂組成物の配合、組成は特に限定されない。シリコーン系樹脂組成物に用いられるモノマーは1官能基、2官能基、3官能基、4官能基のいずれでもよく、単独で用いても、2種類以上を用いてもよい。モノマーとしてハロゲン化アルキルシラン、不飽和気含有シラン、アミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシラン等を用いてもよい。用いられるモノマーとしては、例えば次の化学式で表されるモノマーが挙げられる。HSiCl3、SiCl4、MeSiHCl2、Me3SiCl、MeSiCl3、Me2SiCl2、Me2HSiCl、PhSiCl3、Ph2SiCl2、MePhSiCl2、Ph2MeSiCl、CH2=CHSiCl3、Me(CH2=CH)SiCl2、Me2(CH2=CH)SiCl、(CF3CH2CH2)MeSiCl2、(CF3CH2CH2)SiCl3、CH18H37SiCl3(化学式中で「=」は二重結合を、「Me」はメチル基を、「Ph」はフェニル基を表す)。前記モノマーは単独で用いても、2種類以上を用いてもよい。他の有機基としては、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ベンジル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基等のアラルキル基等を用いてもよい。これらの中でも、メチル基、フェニル基またはこれら両者の組み合わせが好ましい。メチル基、フェニル基またはこれら両者の組み合わせである成分は、合成が容易であり、化学的安定性が良好であるからである。また、特に耐溶剤性が良好なポリオルガノシロキサンを用いようとする場合には、更にメチル基、フェニル基またはこれら両者の組み合わせと3,3,3-トリフルオロプロピル基との組み合わせであることが好ましい。また、前記シリコーン系樹脂組成物には、オルガノアルコキシシランが含まれていてもよい。オルガノアルコキシシランとしては、例えば次の化学式で表される化合物が挙げられ、単独で用いても2種類以上を用いてもよい。Me3SiOCH3、Me2Si(OCH3)2、MeSi(OCH3)3、Si(OCH3)4、Me(C2H5)Si(OCH3)2、C2H5Si(OCH3)3、C10H21Si(OCH3)3、PhSi(OCH3)3、Ph2Si(OCH3)2、MeSiOC2H5、Me2Si(OC2H5)2、Si(OC2H5)4、C2H5Si(OC2H5)3、PhSi(OC2H5)3、Ph2Si(OC2H5)2。
さらに、前記シリコーン系樹脂組成物には、オルガノシラノールが含まれていてもよい。オルガノシラノールとしては、例えば次の化学式で表される化合物が挙げられ、単独で用いても2種類以上を用いてもよい。Me3SiOH、Me2Si(OH)2、MePhSi(OH)2、(C2H5)3SiOH、Ph2Si(OH)2、Ph3SiOH。
【0066】
シリコーン系樹脂に用いられるシリコーンポリマーを得るための反応方法としては例えば、クロロシランの加水分解、環状ジメチルシロキサンオリゴマーの開環重合等の過程を経てもよい。用いるポリマーとしては例えば、ジメチル系ポリマー、メチルビニル系ポリマー、メチルフェニルビニル系ポリマー、メチルフロロアルキル系ポリマー当が挙げられる。
【0067】
シリコーンポリマーを硬化させる方法、すなわち反応(加硫)させてシリコーン系樹脂を得る方法は特に限定されない。加熱加硫、室温加硫でもよい。反応前の状態として、ミラブル型シリコーン系樹脂組成物、液状ゴム型シリコーン系樹脂組成物のどちらを用いてもよい。ミラブル型シリコーン系樹脂組成物に使用されるポリマーは重合度が4000~10000程度のポリマーが好適に使用される。また、1液型でも2液型でもよい。反応方法としては例えば、シラノール基(Si-OH)間の脱水縮合反応、シラノール基と加水分解性基間の縮合反応、メチルシリル基(Si-CH3)、ビニルシリル基(Si-CH=CH2)の有機過酸化物による反応、ビニルシリル基とヒドロシリル基(Si-H)との付加反応、紫外線による反応、電子線による反応等を用いてもよい。
【0068】
(シラノール基間の脱水縮合反応)
触媒としてはオクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄、またはコバルト、スズなどの有機酸塩、あるいはアミン系の触媒を使用してもよく、加熱によって反応を進行させてもよい。
【0069】
(シラノール基と加水分解性基間の縮合反応)
触媒として、酸、アルカリ、有機スズ化合物や有機チタン化合物などを添加してもよい。加水分解性基としては、アルコキシ基、アセトキシ基、オキシム基、アミノキシ基、プロペノキシ基などを用いてもよい。
【0070】
(メチルシリル基、ビニルシリル基の有機過酸化物による反応)
反応を促進する過酸化物硬化剤として、有機過酸化物やアシル系有機過酸化物、アルキル系有機過酸化物等を添加してもよい。アシル系有機過酸化物としては例えば、p-メチルベンゾイルパーオキサイド等を用いてもよい。アルキル系有機過酸化物としては例えば、2,5ジメチル-2,5ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンやジクミルパーオキサイド等を用いてもよい。反応温度は例えば120℃以上であり、また、2次加硫(ポストキュア)を行ってもよい。添加する過酸化物硬化剤の添加量は樹脂の固形分に対して0.1~10質量%が好適である。
【0071】
(アルケニル基とヒドロシリル基との付加反応)
アルケニル基は例えばビニル基が好適に用いられる。反応温度は常温でもよく、加温してもよい。また、反応は開放系で実施してもよく、密閉系で実施してもよい。アルケニル基とヒドロシリル基との付加反応に用いる組成物を得る過程では、窒素、リン、硫黄などを含む有機化合物、スズ、鉛などの金属のイオン性化合物、アセチレン等不飽和基を有する化合物、アルコール、水、カルボン酸を除去する添加剤を加えてもよいし、除去する工程を用いてもよい。
【0072】
アルケニル基とヒドロシリル基との付加反応を用いる場合、ビニル基を有するポリシロキサンやハイドロジェンポリシロキサンが好適に用いられる。
【0073】
ビニル基を有するポリシロキサンは、粘度が23℃において1~100000mPa・sの直鎖状のポリシロキサンが好適に用いられる。前記ポリシロキサンは1分子中にビニル基を1個以上含む。ビニル基を有するポリシロキサンの具体例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらのポリシロキサンは、一種単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
ハイドロジェンポリシロキサンは粘度が23℃において1~100000mPa・sの直鎖状ポリシロキサンが好適に用いられる。ハイドロジェンポリシロキサンは1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を1個以上含む。ハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、23℃における粘度が1~100000mPa・sである限り、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジフェニルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0075】
アルケニル基とヒドロシリル基との付加反応に用いる樹脂組成物は、アルケニル基に対するケイ素原子に結合した水素原子のモル比は0.01~20モルが好適であり1~2モルがさらに好適である。
【0076】
反応触媒としては例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の白金族金属を用いて、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサンまたはアセチレン化合物との配位化合物等の白金化合物、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の白金族金属化合物等を用いることができる。また、シリコーンオイルとの相溶性が必要であることから、塩化白金酸をシリコーン変性した白金化合物が好適に用いられる。触媒を用いる場合、固形分質量から求められる添加量は0.01ppm~10000ppmが好適であり、0.1ppmから1000ppmがさらに好適である。
【0077】
ヒドロシリル基の合計量は、全シリコーン系樹脂組成物中のケイ素原子に結合したアルケニル基1モル当たり、通常、0.01~20モルであり、好ましくは0.1~10モルである。該合計量が、前記範囲の下限未満であると、得られるシリコーン系樹脂組成物が十分に硬化しにくくなる傾向があり、前記範囲の上限を超えると、得られるシリコーン系樹脂組成物の硬化物の機械的特性および耐熱特性が低下しやすくなる傾向がある。
【0078】
反応制御剤はシリコーン系樹脂を調合ないし基材に塗工などの加工を施す際に、硬化前に増粘やゲル化をおこさないようにするために添加するものである。反応制御剤としては、アルケニル基を複数個有する低分子量のポリシロキサンや、アセチレンアルコール系の化合物等が用いられる。
【0079】
(紫外線による反応)
紫外線硬化型シリコーン系樹脂としては、ラジカル反応タイプ(アクリル型、メルカプト型)、ラジカル反応/縮合反応併用タイプ(メルカプト/イソプロペノキシ型、アクリル/アルコキシ型)、紫外線活性な白金触媒を使用した付加反応タイプを用いてよい。
【0080】
アクリル型ラジカル反応タイプではシロキサンに気都合したアクリル基を有する有機基を光増感剤の存在下でラジカル重合反応させる。
【0081】
メルカプト型ラジカル反応タイプでは、シロキサンに結合したメルカプト基を有する有機基とビニル基を有するポリシロキサンを光増感剤の存在下でラジカル付加反応させる。
【0082】
紫外線活性な白金触媒を使用した付加反応タイプに用いられる触媒としては、(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金錯体やビスアセチルアセトナト白金(II)錯体等が用いられ、365nmを中心とした光源で硬化させることが好適である。
【0083】
光硬化反応に用いられる主な官能基として、アクリル基、エポキシ基を用いてもよい。紫外線による反応に用いる組成物には光開始剤を用いてもよい。
【0084】
(シリコーン系樹脂に粘着性(接着性)を付与する方法)
シリコーン系樹脂に粘着性(接着性)を付与する方法としては例えば、粘着性を付与するシリコーンポリマーを添加する方法が好適に用いられる。粘着性を付与するシリコーンポリマーとしては例えば、MQレジンが好適に用いられる。MQレジンとは1官能基のモノマー(M単位)と4官能基のモノマー(Q単位)から合成された3次元構造をもつポリマーである。前記3次元構造を持つポリマーの分子量は好ましくは10~100000であり、より好ましくは100~10000である。各官能基のモノマーの有機基としては、メチル基を用いるのが好適であるが、付加反応型のシリコーン系樹脂の場合、アルケニル基を用いることが好適である。シリコーン系樹脂に対するMQレジンの含有量はシリコーン系樹脂の強度と粘着性を両立する観点から、好ましくは固形分換算で10~99質量%であり、より好ましくは20~80質量%である。本発明においては、粘着性を付与するシリコーンポリマーを得る際に、適宜、2官能基のモノマー(D単位)、3官能基のモノマー(T単位)を添加してもよく、他の官能基を有するモノマーやオリゴマーを添加してもよい。
【0085】
MQレジンはQ単位の縮合物の末端をM単位で封止した構造が好適に用いられる。Q単位に対するM単位のモル比は粘着性とシリコーン系樹脂の強度を両立する観点から0.4~1.2が好適であり、0.6~0.9がさらに好適である。
【0086】
シリコーンモノマーからシリコーンポリマー、シリコーン系樹脂を得る過程で添加剤を加えてもよい。添加剤としては例えば、補強剤(乾式シリカ、湿式シリカ等シリカ充填剤等)、分散剤、接着助剤(シランカップリング剤等)、接着促進剤(有機金属化合物等)、反応制御剤、増量剤(結晶性シリカ、炭酸カルシウム、タルク等)、耐熱向上剤(酸化鉄、参加セリウム、酸化チタン等)、難燃剤(酸化チタン、カーボン等)、熱伝導性充填剤、導電剤、表面処理剤、顔料、染料、または希土類、チタン、ジルコン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル等の金属酸化物、水酸化物、炭酸塩、脂肪酸塩が挙げられる。
【0087】
シリカ充填剤としては例えば、公知の微粉末シリカを用いることができる。親水性の微粉末シリカであっても疎水性の微粉末シリカであってもよい。親水性の微粉末シリカとしては、例えば、沈降シリカ等の湿式シリカ、シリカキセロゲル、ヒュームドシリカ等の乾式シリカが挙げられる。疎水性の微粉末シリカとしては、例えば、親水性の微粉末シリカの表面を疎水化処理して得られる微粉末シリカが挙げられる。疎水化処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン等のオルガノシラザン;メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン等のハロゲン化シラン;該ハロゲン化シランのハロゲン原子がメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基で置換されたオルガノアルコキシシラン等が挙げられる。疎水化処理方法としては、例えば、親水性の微粉末シリカを疎水化処理剤により150~200℃、特に150~180℃で2~4時間程度加熱処理する方法が挙げられる。このようにして親水性の微粉末シリカの表面を予め疎水化処理して得た疎水性の微粉末シリカを本発明接着剤に配合してもよいし、また、本発明接着剤中に親水性の微粉末シリカとともに疎水化処理剤を配合することにより、本発明接着剤を調製する段階で該親水性の微粉末シリカの表面が疎水化処理されるようにしてもよい。
【0088】
シリカ充填剤の具体例としては、アエロジル(登録商標)50、130、200および300(商品名、日本アエロジル社製)、キャボシル(登録商標)MS-5およびMS-7(商品名、キャボット社製)、レオロジルQS-102および103(商品名、トクヤマ社製)、ニプシルLP(商品名、日本シリカ社製)等の親水性の微粉末シリカ;アエロジル(登録商標)R-812,R-812S、R-972およびR-974(商品名、デグッサ社製)、レオロジルMT-10(商品名、トクヤマ社製)、ニプシルSSシリーズ(商品名、日本シリカ社製)等の疎水性の微粉末シリカが挙げられる。
【0089】
微粉末シリカを用いる場合、配合量は、通常、固形分換算で1~50質量%である。前記配合量が、1質量%未満ではシリカ充填剤による強度付与効果が不充分となりやすく、50質量%を超えると、得られるシリコーン樹脂組成物は、著しく流動性に欠けたものとなりやすく、作業性が劣ったものとなりやすい。
【0090】
接着促進剤としては例えばチタンの有機酸塩で代表される有機チタン化合物を用いることができる。接着促進剤はシリコーン系樹脂組成物の硬化を更に促進し、その接着性を更に向上させるための触媒として用いることができる。接着促進剤は、一種単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0091】
接着促進剤としては、例えば、チタンキレート化合物、アルコキシチタンまたはこれらの組み合わせが挙げられる。チタンキレート化合物の具体例としては、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセタト)チタン、ジブトキシビス(メチルアセトアセタト)チタン等が挙げられる。アルコキシチタンの具体例としては、テトラエチルチタネート、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート等が挙げられる。アルコキシチタン中のアルコキシ基は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0092】
接着促進剤の配合量は、固形分換算で0.01~10質量%が好適であり、0.1~5質量%がさらに好適である。該配合量が、前記範囲の下限未満であると、接着性向上効果が現れにくい場合があり、前記範囲の上限を超えると、得られる接着剤の表面硬化が速すぎる場合がある。
【0093】
シランカップリング剤は、ケイ素原子に結合したアルコキシ基と、金属や各種合成樹脂などの被着体と化学結合する反応基を1つの分子内に有する化合物であり、前記ケイ素原子に結合したアルコキシ基の代わりにアルケニル基や水素原子を有する化合物を用いてもよい。前記被着体と化学結合する反応基としては、エポキシ基やアクリル基を用いてもよい。
【0094】
シリコーン系樹脂を塗布する際には、塗布前の被塗布材にプライマーを塗布してもよい。前記プライマーとしては、縮合硬化型、付加硬化型等のシリコーン系樹脂を用いることができる。プライマーの塗工量としては0.1~1.2g/m2が好適である。
【0095】
シリコーン系樹脂としては例えば、「SYLGRAD186」、「DOWSIL3-6512」、「SYLGRAD527」、「DOWSILX3-6211」、「SYLGRAD3-6636」、「DOWSIL SE1880」、「DOWSIL SE960」、「DOWSIL781 Acetoxy Silicone」、「DOW CORNING SE9187」、「DOWSIL Q1-4010」、「SYLGRAD 1-4128」、「DOWSIL 3140 RTV Coating」、「DOWSIL HC2100」、「SIL-OFF Q2-7785」、「シラシール3FW」、「シラシールDC738RTV」、「DC3145」、及び「DC3140」(以上、ダウコーニング社製)、「ELASTOSIL RT707W」、「ELASTOSIL EL4300」「ELASTOSIL M4400」、「ELASTOSIL M8012」、「SILRES BS CREME C」、「SILRES BS 1001」、「SILRES BS 290」、「ELASTSIL 912」、「ELASTSIL E43N」、「ELASTOSIL N9111」、「ELASTOSIL N199」、「SEMICOSIL 987GR」、「ELASTOSIL RT772」、「ELASTOSIL RT745」、「ELASTOSIL LR3003/05」、「ELASTOSIL LR3343/40」、「ELASTOSIL LR3370/40」、「ELASTOSIL LR3374/50BR」、「ELASTOSIL EL1301」、「ELASTOSIL EL 4406」、「ELASTOSIL EL3530」、「ELASTOSIL EL 7152」、「ELASTOSIL R401/10OH」「SILPUREN 21XXシリーズ」(旭化成ワッカーシリコーン社製)、「KE-3423」、「KE-347」、「KE-3479」、「KE―1830」、「KE-1820」、「KE-1056」、「KE-1800T」、「KE-66」、「KE-1031」、「KE-12」、「KE-1300T」、「SD4584PSA」、「KS-847T」、「KF-2005」、「KNS-3002」、「KR-100」、「KR-101-10」、「KR-130」、「KR-3600」、「KR-3704」、「KR-3700」、「KR―3701」、「X-40-3237」、「X-40-3291-1」、「X-40-3240」、「シーラント45」、「シーラントマスター300」、「シーラント72」、「KE-42」、「シーラント70」、「KE-931-U」、「KE-9511-U」、「KE-541-U」、「KE-153-U」、「KE-361-U」、「KE-1950-10」、「KEG-2000-40」、「KE-2019-40」、「KE-2090-50」、「KE-2096-60」(信越化学工業社製)等を用いることができる。シリコーン系樹脂にはさらに、触媒を添加してもよい。触媒としては、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄、コバルト、錫などの有機酸塩、アミン系の触媒を用いることができる。また、有機錫化合物、有機チタン化合物、白金化合物も用いることができる。触媒としては、例えば、「CAT-PL-50T」(信越化学社製)、「NC-25」(東レ・ダウコーニング社製)を用いることができる。また、塗布の際には、トルエンやキシレン、もしくは、アルコール類等の溶剤を添加してもよい。プライマーとしては「プライマーAQ-1」「プライマーC」、「プライマーMT」、「プライマーT」、「プライマーD」、「プライマーA-10」、「プライマーR-3」、「プライマーA-20」(信越化学工業社製)等を用いることができる。
【0096】
気体透過性無孔層を形成する方法は、特に限定されず、リバースロールコーター、正回転ロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、ロッドコーター、スロットオリフィスコーター、エアドクタコーター、キスコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スプレーコーター、スピンコーター、押出コーター、ホットメルトコーター等を用いて多孔質基材に積層させることにより、気体透過性無孔層を製造できる。また、粉体コーティング、電着コーティング等の方法でも気体透過性無孔層を製造できる。基材を気体透過性無孔層の原料液に浸漬することでコーティングしてもよい。基材はシート状でも中空糸状でもよい。塗布の前工程において、プライマー塗布、コロナ処理等の前処理を行ってもよい。
【0097】
気体透過性無孔層212の目付量は、10g/m2以上、500g/m2以下であることが好ましく、20g/m2以上200g/m2以下であることがより好ましい。気体透過性無孔層212の目付量は、気体透過性無孔層212が積層される前の基材の目付量E(g/m2)と、気体透過性無孔層が積層された後の気体透過性無孔層212と基材の目付量F(g/m2)の差、D(g/m2)として下以下の関係式(1)により求められる。
【0098】
D=F-E (1)
【0099】
気体透過性無孔層212や基材の目付量はJIS1913:2010一般不織布試験方法6.2単位面積当たりの質量で測定される値である。
【0100】
気体透過性無孔層212の厚みは、10um以上、500um以下であることが好ましく、20um以上200um以下であることがより好ましい。上記の気体透過性無孔層212の厚さはJIS1913:2010一般不織布試験方法6.1厚さの測定方法で測定される値である。
【0101】
(微生物支持層213)
微生物支持層213は、その表面もしくは内部に微生物を保持する層であり、内部に微生物が生育可能な空間を有し、水中の有機物が通過可能である。微生物支持層213の素材としては、例えば、メッシュ、織布、不織布、発泡体、又は微多孔膜等の多孔性シートが挙げられる。多孔性シートの素材は、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、メチルセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、パラ系およびメタ系アラミド、ポリアリレート、炭素繊維、ガラス繊維、アルミニウム繊維、スチール繊維、セラミック等が挙げられる。微生物付着性と加工性を考慮すると、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、炭素繊維が好ましい。
【0102】
微生物支持層213の目付量は2g/m2以上、500g/ m2以下であることが好ましく、10g/ m2以上200g/m2以下であることがより好ましい。微生物支持層213の目付量はJIS1913:2010一般不織布試験方法6.2単位面積当たりの質量で測定される値である。微生物支持層213の目付量が2g/m2以上であることにより、表面に凹凸が生じるため微生物支持層213に微生物が保持しやすくなるという効果を得ることができる。また、微生物支持層213の目付量が500g/m2以下であることにより、微生物支持層213の内部に微生物が育成可能な空間が生じるため微生物が保持しやすくなり、前記空間により酸素を微生物に供給しやすくなるという効果を得ることができる。
【0103】
微生物支持層213の厚みは、5um以上、2000um以下であることが好ましく、20um以上500um以下であることがより好ましい。微生物支持層213の厚さはJIS1913:2010一般不織布試験方法6.1厚さの測定方法で測定される値である。
【0104】
なお、基材211の表面処理によって微生物支持層213が形成されてもよい。このようにすれば、上記の表面処理で基材211表面の粗さと膜電位を上げられるので、微生物付着性が向上する。例えば上記の表面処理として、グリシジルメタクリレートをグラフト重合し、さらに、ジエチルアミン、もしくは、亜硫酸ナトリウムを反応させることが行われ得る。或いは上記の表面処理として、グリシジルメタクリレートをグラフト重合した後に、アンモニア、もしくは、エチルアミンを反応させることが行われてもよい。
【0105】
(気体供給体10の製造方法)
本実施形態の気体供給体10の製造方法は、たとえば、WO2019/189552号に説明されているので、ここでは説明を省略する。
【0106】
本実施形態の廃水処理装置100によれば、気体供給源53からの気体が、気体流路Sを流れて、気体通過孔13を通過し、当該気体通過孔13を通過する気体がシート積層体21を介して廃水W中に供給される。これにより、廃水W中の微生物に酸素が供給されるので微生物が活性化し、微生物の活動により廃水W中の有機物または窒素源を効率よく分解して廃水を浄化できる。
【0107】
そして本実施形態のシート積層体21によれば、微多孔膜である基材211や気体透過性無孔層212が含まれることで、廃水処理装置100の浄化性能を維持できる。
【0108】
つまり、基材211が平滑性の高い微多孔膜であることから、気体透過性無孔層212に欠陥を生じさせることなく、気体透過性無孔層212で基材211を覆うことができる。そしてこのことから、基材211を覆う気体透過性無孔層212が薄くとも防水性が得られる。したがってシート積層体21の透気性を損なうことなく、シート積層体21の防水性を高めることができる。さらに気体透過性無孔層212で基材211を覆うことで、基材211(微多孔膜)の孔が親水化することを防止できる。このため、シート積層体21は、防水性を長期に亘って維持できる。以上のことから、本実施形態のシート積層体21で気体送出層12を覆えば、気体送出層12側へ液体が透過してくることなく、気体送出層12側からシート積層体21を介して、廃水W中に気体を透過させて供給できる。このため廃水処理装置100の浄化性能が維持される。また本実施形態によれば、シート積層体21から形成される袋の中に気体送出層12を挿入することで、シート積層体21で気体送出層12を覆った状態を容易に実現できる。
【0109】
さらに本実施形態のシート積層体21によれば、微生物支持層213が含まれることで、廃水処理装置100の浄化性能を高めることができる。
【0110】
つまり、シート積層体21に微生物支持層213が含まれることで、微生物が微生物支持層213に付着する。このため、微生物に対して十分な量の気体を継続的に供給できるので、確実に微生物が継続的に活性化する。このため廃水処理装置100の浄化性能を高めることができる。
【0111】
さらに本実施形態によれば、シート積層体21が、微生物支持層213、基材211、気体透過性無孔層212の順に積層されていることで、廃水Wに接触するシート積層体21の最外側層を、微生物支持層213によって構成できる。このため、確実に微生物支持層213に微生物を付着させることができるので、確実に微生物を活性化できる。したがって確実に廃水処理装置100の浄化性能を高めることができる。特に廃水W中に含まれる微生物が好気性微生物である場合には、気体がシート積層体21を介して廃水W中に供給されることで、好気性微生物がシート積層体21に集まる。このため、多くの微生物が微生物支持層213に付着するので、廃水処理装置100の浄化性能が顕著に高まる。
【0112】
なおシート積層体21は、下記の(酸素供給試験)に示す方法で得られる酸素供給速度Q(g-O2/m2/day)が25g/m2/day以上であることが好ましく、26g/m2/day以上であることがより好ましく、27g/m2/day以上であることがさらに好ましい。酸素供給速度Qの上限値としては、例えば60g/m2/dayとすることが好ましい。
【0113】
(酸素供給性能試験)
一辺の長さが7cmである立方体状を呈し、1つの鉛直側面が膜によって構成されている密閉槽の内部に、イオン交換水を入れた後、23~27℃の環境下で、スターラーの回転子の回転により前記イオン交換水を攪拌しながら、前記密閉槽の内部における酸素濃度を連続的に測定する。イオン交換水は、亜硫酸ナトリウムが100mg/Lの濃度で添加され、塩化コバルトが1.5mg/L以上の濃度で添加されたものである。スターラーとして小池精密機器製作所社製の「HE-20GB」を使用でき、回転数はHIGHレンジにて目盛7に設定される。酸素供給性能の評価は、23℃から27℃の環境下で行い、測定した酸素濃度の時系列データから、時間t(h)に対する酸素不足量の常用対数Y=log10(Cs-C)との相関から近似直線を求め、当該近似直線の時間tに対するYの傾きZを求める。Csは測定温度Tにおける液相の飽和酸素濃度、Cは測定時間tにおける液相の酸素濃度測定値である。傾きZから、酸素供給速度Q(g-O2/m2/day)が、下記式(2)に従い算出される。
【0114】
【0115】
以下は、有機性の被処理水を好気性生物処理する方法についての説明であり、特に酸素透過膜(酸素溶解膜、防水性透気性シート、防水性酸素透過性フィルム、透気シート、防水透気シート等と同義)を用いて反応槽内の被処理水(廃水、排水とも言う)、もしくは、酸素溶解膜表面に存在する微生物やバイオフィルムに酸素を溶解させるようにした生物処理方法に関する(以下、酸素溶解膜を含む槽をMABR槽と呼ぶ。また、MABR槽を用いた廃水処理方式をMABR方式と呼ぶ)、廃水処理の方法、廃水処理装置、廃水処理システム、廃水処理装置の運転方法や制御方法等を開示するものである。下記に開示した廃水処理装置システム、廃水処理装置の運転方法や制御方法は、本発明に限定されるものではなく、MABR方式の廃水処理において、広く適用可能な例である。したがって、下記に示す例において、特に記載のない限り、被処理水の組成や性状、被処理水に含まれる特定の組成物の処理方法、処理水量、酸素溶解膜の素材、酸素溶解膜の形式(平板型、中空糸型、スパイラル型等)、酸素溶解膜構造体の構成・構造、廃水と酸素溶解膜との接触方法(酸素溶解膜構造体の内部に被処理水を保持するか、同外部に被処理水が存在するか)、酸素溶解膜の設置方法、栄養塩の添加、水温やORP、pH等の調整、酸素溶解膜への酸素(空気)の供給方式や供給手順や方法、酸素溶解膜を含む槽の容積や設置方法、その他の廃水処理方法、酸素透過膜への有機物面積負荷、酸素透過膜を含む槽への有機物容積負荷、被処理水のモニタリング等は特に限定されず、特に記載のない限り、下記に開示した例のすべてに適用することができる。
【0116】
被処理水に含まれる組成物としては、例えば、有機物(BOD、COD、TOC、TOD等で表される成分、脂質、タンパク質、多糖類、アミノ酸、単糖類、高級脂肪酸、炭水化物、有機化合物(鎖式又は環式の飽和炭化水素又は不飽和炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素等の炭化水素類;アルコール系化合物;エーテル系化合物;アミン系化合物;ハロゲン系化合物;アルデヒド系化合物;ケトン系化合物;カルボン酸系化合物;エステル系化合物;アミド系化合物;酸クロライド系化合物;ニトロ系化合物;スルホ系化合物等))、アンモニア、アンモニウム化合物、亜硝酸化合物、硝酸化合物、有機リン化合物、チラウム、シマジン、チオベンカルブ、ジオキサン、塩素化炭化水素、ベンゼン、クロロフィルa、ノルマルヘキサン抽出物、油分、重金属類(銅、亜鉛、溶解性鉄、溶解性マンガン、クロム、六価クロム、カドミウム、鉛、ひ素、水銀、アルキル水銀(金属有機化合物)、セレン)、ホウ素及びその化合物、フッ素及びその化合物、シアン化合物、フェノール類、ダイオキシン類、内分泌攪乱物質、農薬、ポリ塩化ビフェニル、トリクロロエチレンなど低沸点有機ハロゲン化合物、ジオキサン、固形分(SS、MLSS、VSSなど)が挙げられる。
【0117】
栄養塩としては例えば、窒素化合物、リン化合物等が挙げられる。
【0118】
その他の廃水処理方法としては例えば、沈降分離、沈砂池、沈殿池、傾斜板により沈降促進した沈殿分離方法、凝集分離(硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第二鉄、塩化第一鉄、ポリ硫酸鉄等を凝集剤として使用)、浮上分離、油水分離装置、加圧浮上分離装置、清澄ろ過、砂ろ過、多層ろ過、上向流ろ過、凝集ろ過、pH調整、化学的酸化・還元(次亜酸化、オゾン酸化、フェントン酸化、化学還元)、活性炭吸着、撹拌槽吸着、固定層吸着、移動層吸着、イオン交換、膜分離(精密ろ過、限外ろ過、ナノろ過、逆浸透、拡散透析膜)、電気透析、汚泥の脱水(ろ過助剤使用、凝集剤使用、水洗、熱処理、凍結・融解、真空ろ過、加圧ろ過、加圧ロール脱水、スクリュープレス、遠心脱水、多重円盤型脱水)、汚泥焼却(流動焼却炉、立形多段炉、横形回転炉、階段式ストーカー炉)、標準活性汚泥法、モディファイドエアレーション法、長時間エアレーション法、プラグフロー法、ステップエアレーション法、完全混合法、接触酸化法、オキシデーションディッチ法、回分式活性汚泥法、酸素活性汚泥法、深層・超深層曝気法、膜分離活性汚泥法、散水ろ床法、接触曝気法、好気ろ床法、担体添加法(結合固定化法、包括固定化法)、嫌気ろ床法、嫌気流動床法、上向流式嫌気汚泥床、EGSB法、二相発酵システム、循環式硝化脱窒法、HAP法、MAP法、生物安定池法、曝気式ラグーン、スクリーン、水酸化物法、共沈法、置換法、硫化物法、フェライト法、鉄粉法、亜硫酸塩還元法、鉄(II)塩還元法、電解還元、吸着法、生物還元法、難溶性塩凝集沈殿法(フッ化カルシウム法、水酸化物共沈法)、アルカリ塩素法、電解酸化法、難溶性錯化合物沈殿法、酸分解燃焼法、煮詰高温焼却法、湿式加熱分解法、アンモニアストリッピング法、不連続点塩素処理法、揮散法、晶析、酸析、塩析、ストリッピング、加水分解、副産物・有価物回収工程等が挙げられる。また、上記に例示される廃水処理方法を実施する複数の槽を含む廃水処理装置において、任意の槽から槽内容物を引き抜き、別の任意の槽に添加、返送するようにしてもよい。
【0119】
生物処理に利用される生物としては例えば、細菌類(Zoogloea属、Beggiatoa属、Sphaerotilus属、Thiothrix属、Nocardia属、アルカリゲネス属、シュウドモナス属、バチルス属、アエロバクター属、フラボバクテリウム属)、藍藻類(Microcystis属、Phormidium属、Coelosphaerium属、Oscillatoria属、Anabaena属)、緑藻類(Chlamydomonas属、Dictyosphaerium属、Scenedesmus属、Closterium属)、珪藻類(Melosira属、Cyclotella属、Fragilaria属、Synedra属、Cymbella属)、菌類(Fusarium属、Zoophagus属、Mucor属、Saprolegnia属、Rhodotorula属、Leptomitus属、Trichoderma属、Geotricum属、Sepedomium属、Ascoidea属、Trichosporon属、Phona属、Pythium属、Arthrobotorys属)、原生動物としては、例えば、繊毛虫類(裸口目、毛口目、吸管虫目、膜口目、緑毛目、異毛目、下毛目)、鞭毛虫類(原鞭毛虫目、ユーグレナ目)、肉質虫類(太陽虫目、アメーバ目、有殻アメーバ目)、後生動物としては例えば、扁形動物、袋形動物、軟体動物、環形動物、緩歩動物、節足動物等が挙げられる。
【0120】
酸素透過膜への有機物面積負荷としては、例えば、3~2000gCODCr/m2/day、もしくは、2~1500gBOD/m2/dayが好適である。酸素透過膜を含む槽への有機物容積負荷は0.1~20kgCODCr/m3/day、又は0.1~15kgBOD/m3/dayが好適である。
【0121】
被処理水のモニタリングの対象となる手法としては、例えば、水温、pH、ORP(酸化還元電位)、BOD、COD(CODCr、CODMn)、TOC、TOD、硝酸性窒素、亜硝酸性窒素、アンモニア性窒素、全窒素、リン、クロロフィルa、ノルマルヘキサン抽出物、油分、重金属類(銅、亜鉛、溶解性鉄、溶解性マンガン、クロム、六価クロム、カドミウム、鉛、ひ素、水銀、アルキル水銀(金属有機化合物)、シアン)、フェノール類、ダイオキシン類、内分泌攪乱物質、農薬、ポリ塩化ビフェニル、トリクロロエチレンなどの低沸点有機ハロゲン化合物、電気伝導度、塩濃度、DO、固形分濃度(SS、MLSS、VSSなど)、濁度、透視度、透明度、異臭味物質、生体毒性物質、大腸菌群、O157、クリプトスポリジウム、微生物の活性度、微生物の菌叢、内部に存在する微生物の遺伝子指標、微生物由来のタンパク質濃度等が挙げられる。モニタリングする場所はMABR槽内でもよいし、MABR槽の流入経路、流出経路、又は、MABR槽を含む一連の廃水処理装置における任意の場所でよい。
【0122】
以下に、酸素透過膜を用いた廃水処理の方法、廃水処理装置、廃水処理システム、廃水処理装置の運転方法や制御方法等の具体例を説明する。
【0123】
(固液分離の方法)
下記に示すMABR方式と組み合わされる固液分離は、固液分離の効率化に効果的である。効率化とは、例えば、固液分離性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0124】
固液分離を効率よく行うために、MABRを設置した槽に傾斜板を設置したり、酸素透過膜自体を傾斜版として用いたり、酸素透過膜の裏側を傾斜板にしたりすることができる。
【0125】
生物処理水中の汚泥を酸素透過膜を含む生物処理槽内で固液分離するために、生物処理槽の排水出口側に仕切板を設けて該生物処理槽内を生物処理室と該排水出口側の上向流流路とに区画し、該生物処理室からの生物処理水を該上向流流路にLV0.01~10m/hで上向流通水してもよい。また、該上向流流路の上部の排水出口から上澄水を槽外に排出する生物処理方法を用いることができる。さらに、該仕切板に沿って該生物処理室内に区画板を設けてもよい。これにより、該仕切板と区画板との間に、上部及び下部がいずれも該生物処理室に連通した循環流路を形成することができる。これにより、生物処理室内の生物処理水の一部を該仕切板と区画板との間の循環流路に前記上向流流路におけるLVよりも大きいLVにて上向流通水することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。前記の方法は特に、固液分離を効率よく行うため、もしくは、汚泥および微小動物を安定して維持することができ、また、発生汚泥量を大幅に減量化することができる。また、高負荷運転による処理効率の向上と、処理水質の安定化を図るためにも効果的である。
【0126】
導入される1~20ppmの微量有機物含有水をMABR方式で生物処理を行い、TOC成分を分解し、表面から水が流通可能な連続空間を備え、該連続空間中に微生物を保持すると共に、合成樹脂製の連続気泡構造を有するスポンジ体からなる微生物の担体と、微生物を保持した上記担体を流動化し、且つ微生物に必要酸素を供給する曝気手段と、上記担体の大きさより小さい開口を有し、処理水に混ざって担体が排出するのを阻止する担体流出防止材を設けた生物処理槽と、上記生物処理槽から排出される処理水から微生物を分離すると共に、上記生物処理槽内の流動化により生じた上記担体の微粉を捕捉するマイクロフィルター装置又は限外濾過装置とを有することを特徴とする超純水製造装置におけるTOC成分除去装置。前記の方法は特に、超純水を製造すべき微量有機物含有水のTOC成分が増加しても、TOC成分を確実に資化、分解し、超純水を製造するために効果的である。
【0127】
BOD成分を含む有機性排水をMABR方式により生物処理する反応槽と、前記反応槽で得られた処理水を膜によって汚泥と分離する分離機構と、を有する排水処理装置であって、前記反応槽は、無酸素生物処理槽と、生物処理に必要な酸素が供給される第1生物処理槽及び第2生物処理槽と、を含み、前記有機性排水は前記第1生物処理槽に連続的に流入され、前記第1生物処理槽及び前記第2生物処理槽で生物処理され、前記第2生物処理槽内において、槽内に設置された膜により、処理水と汚泥とが分離され、前記第2生物処理槽内の汚泥の少なくとも一部は前記無酸素生物処理槽へ返送され、前記無酸素生物処理槽内の汚泥の少なくとも一部は、少なくとも前記第1生物処理槽に供給され、前記第1生物処理槽のMLSS負荷は、前記第2生物処理槽のMLSS負荷より高く、前記第1生物処理槽及び前記第2生物処理槽における下記式(3)の値が1未満であることを特徴とする排水処理装置。
(第1生物処理槽の汚泥保持量×滞留時間)/(第2生物処理槽の汚泥保持量×滞留時
間) (3)
前記の装置は、特に連続式の膜分離活性汚泥法において汚泥のろ過性を高めるために効
果的である。
【0128】
排水流入口と処理水流出口が設けられた槽内に、生物汚泥と酸素透過膜を収容した生物処理槽を用いて、排水を生物処理する排水処理方法であって、前記排水流入口からの前記排水の導入及び前記処理水流出口からの処理水の排出が停止された状態で、前記生物処理槽内の排水を撹拌して、前記生物汚泥により前記排水を生物処理する生物処理工程と、前記生物処理槽内の排水の撹拌を停止してから前記生物処理槽内に前記生物汚泥のスラッジブランケットが形成されるまでの間に、前記排水流入口からの前記排水の導入を開始すると共に、前記処理水流出口からの前記処理水の排出を開始する排水導入処理水排出工程と、を備え、前記生物処理工程及び前記排水導入処理水排出工程を順次繰り返し行うことを特徴とする排水処理方法。前記の方法は特に、沈降性の高い生物汚泥を得ることが可能な排水処理方法として効果的である。
【0129】
(窒素成分除去の方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、廃水処理の効率化に効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。特に、窒素成分除去の効率化に効果的である。
【0130】
被処理液を受入れて生物学的に硝化を行う酸素透過膜を含むプラグフロー型の硝化槽と、この硝化槽の一端部から被処理液の一部を供給する第一の給液装置と、この第一の給液装置から供給する被処理液のpHを5~9.7に調整する第一のpH調整装置と、前記プラグフロー型の硝化槽の中間部から被処理液の他の一部を供給する第二の給液装置と、この第二の給液装置から供給する被処理液のpHを6.5~11.5に調整する第二のpH調整装置とを備えていることを特徴とする硝化装置。前記の装置は特に、プラグフロー型の硝化槽を用いて生物学的に硝化する際、被処理液のpH、NH4
+濃度またはアルカリ度などが変動する場合でも、硝化槽内のpHを硝化細菌の活性が高くなる範囲に維持するために効果的である。酸素透過膜表面にスポンジ等の微生物担体を保持することがさらに効果的である。
【0131】
酸素透過膜から供給される酸素を用いてアナモックス細菌によりアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素を反応させて脱窒する窒素含有液の処理方法。前記の方法は特に、多量のアナモックス細菌を保持し、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素を効率よく反応させて脱窒することができ、発生する窒素ガスを効率よく分離して脱窒を継続することために効果的である。酸素透過膜の表面にスポンジ等の担体を設置することがさらに効果的である。
【0132】
酸素透過膜を含む反応槽中に散気管を境界にして浮上担体からなる無酸素ゾ―ンと好気ゾーンとをに設け、廃水の原水と処理水の循環水を混合して前記無酸素ゾーンに流入させ、無酸素ゾーンで前記原水中の有機体を利用して脱窒素反応をおこし、好気ゾーンで散管からの酸素を利用して硝化反応をおこし、もって廃水中の脱窒素処理を行う有機廃水の処理方法において、散気管から注入する空気量、もしくは酸素透過膜へ供給する空気量を流入する原水の量に応じて制御することを特徴とする有機廃水の処理方法。前記の方法は特に、反応槽中に散気管を境界にして浮上担体からなる無酸素ゾ―ンと好気ゾーンとを上下方向に設け、廃水の原水と処理水の循環水を混合して前記無酸素ゾーンに流入させ、無酸素ゾーンで前記原水中の有機体を利用して脱窒素反応をおこし、好気ゾーンで散気管からの酸素を利用して硝化反応をおこし、もって廃水中の脱窒素処理を行う有機廃水の処理方法において、下水の流入量が変動すると脱窒反応が充分に起らなくなり、その結果として窒素が充分に除去されないという課題の解決に効果的である。
【0133】
有機性廃水と微生物汚泥とを無酸素性状態で混合して、微生物汚泥の粒状化を促進させる無酸素処理工程と、前記無酸素処理工程において得られた有機性廃水と微生物汚泥との混合液に酸素を供給する酸素供給工程と、前記酸素供給工程を経た混合液中の汚泥を沈殿処理する沈殿処理工程と、を備える廃水処理方法において、前記無酸素処理工程における有機性廃水と微生物汚泥との混合液のORPを、-100mV以下に保つ生物学的廃水処理方法において、さらに前記酸素供給工程では、気体供給体を用いて酸素が供給されてもよい。
【0134】
原水を上向流で濾過する濾層と、気体を供給して前記濾層の下方に気泡を発生させ、該気泡を前記濾層を通じて浮上させることによって前記濾層を浄化する散気装置とを備え、前記散気装置は、前記濾層よりも下方に配された給気用本管と、該給気用本管から分岐した複数の分岐管とを有し、前記分岐管は、前記給気用本管に接続された接続部と、前記濾層の下方に気泡を発生させるべく前記接続部を通じて給気用本管から導入された気体を放出する開口部とを備え、且つ、前記分岐管は、前記接続部から前記開口部までの間に気体の流通方向が下向きから上向きへとターンするターン部を有し、少なくとも前記ターン部において互いに着脱自在な一方と他方とに分割可能である水処理設備において、少なくともその一部に気体供給体を有していてもよい。また、前記気体供給体下部に給気用本管と、該給気用本管から分岐した複数の分岐管とを有していてもよく、具体的には、前記分岐管は、前記給気用本管に接続された接続部と、前記濾層の下方に気泡を発生させるべく前記接続部を通じて給気用本管から導入された気体を放出する開口部とを備え、且つ、前記分岐管は、前記接続部から前記開口部までの間に気体の流通方向が下向きから上向きへとターンするターン部を有し、少なくとも前記ターン部において互いに着脱自在な一方と他方とに分割可能であってもよい。
【0135】
酸素透過膜を含む生物反応槽において、下部から原水を流入させ、生物反応槽の上部から下部に返流させる流路を有する生物反応槽を含む廃水処理装置。前記の装置は特に、窒素処理に関わる微生物相の維持や処理性能の向上、維持、安定化に効果的である。
【0136】
A2O法において、好気槽にMABR方式を用いた廃水処理装置。前記の装置は特に、窒素処理に関わる微生物相や処理性能の向上、維持、安定化に効果的である。また、A2O法の任意の槽において発生した汚泥の一部を引抜き、A2O法の任意の槽に投入することも効果的である。
【0137】
生物担体粒子の流動床を形成した、酸素透過膜を含む生物処理槽と、この生物処理槽に上向流速を与えるように液を循環する循環系路と、この循環系路に設けられた循環ポンプと、前記循環系路の循環水量を間欠的に変える手段とを備え、前記流動床を通常は低展開率で運転するとともに、間欠的に高展開率で運転するようにしたことを特徴とする有機性廃棄物の生物処理装置。前記の装置は特に、窒素処理に関わる微生物相の維持や処理性能の向上、維持、安定化に効果的である。
【0138】
MABR方式を用いて被処理水中の窒素成分を硝酸または亜硝酸に硝化させた後、硝酸及び亜硝酸を含む排水に水素供与体を添加する水素供与体添加手段と、前記水素供与体が添加された前記排水を嫌気的に生物処理する脱窒槽と、前記排水中の前記硝酸及び前記亜硝酸濃度を測定する紫外線吸光度法式センサと、前記排水中の前記硝酸濃度を測定するイオン電極法式センサと、前記紫外線吸光度法式センサにより測定された前記硝酸及び前記亜硝酸濃度と、前記イオン電極法式センサにより測定された前記硝酸濃度とにより求められる前記排水中の硝酸濃度及び亜硝酸濃度に基づいて、前記水素供与体添加手段により前記排水中に添加される前記水素供与体の添加量を制御する制御部と、を備えることを特徴とする硝酸及び亜硝酸を含む排水の処理装置。前記の装置は特に、被処理水中の硝酸濃度及び亜硝酸濃度を迅速に測定することが可能とし、窒素処理に関わる微生物相の維持や処理性能の向上、維持、安定化に効果的である。
【0139】
MABR方式を用いたアンモニア性窒素の亜硝酸化の後に、アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝酸性窒素を電子受容体として反応させて窒素ガスを生成させる独立栄養性の脱窒微生物汚泥を、アンモニア性窒素および亜硝酸性窒素を含む液中で、連続気泡を有する比重0.8~1.5、連続気泡の孔径5~5000μm、空隙率10~90%、比表面積500~10000m2/m3、粒径0.1~2cmの粒状担体を投入して処理を行うことにより、前記粒状担体の内部に前記脱窒微生物汚泥を入り込ませて付着させ、三次元的に担持させた担持汚泥と、アンモニア性窒素および亜硝酸性窒素を含む被処理液とを、脱窒槽に保持し嫌気状態で接触させて反応させる方法であって、前記被処理液のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の割合はモル比でアンモニア性窒素1に対して亜硝酸性窒素0.5~2、被処理液中のアンモニア性窒素および亜硝酸性窒素の濃度はそれぞれ5~1000mg/l、5~200mg/lであり、前記脱窒槽に保持される担体の量は、槽内液中に投入する担体の量として10~75容量%であることを特徴とする脱窒方法。前記の方法は特に、独立栄養性の微生物を大量に保持できるとともに、汚泥量あたりの脱窒活性を高めることができ、しかも溶存酸素等の阻害性物質に対する耐性を高めることができ、これにより小型の装置で効率よく脱窒を行うことができ、新設の装置の立ち上げも容易であり、また厳密な酸素除去も不要になる脱窒方法および装置を得るために効果的である。前記粒状担体と同様の性状の担体を酸素透過膜の表面に担持、もしくは積層させてもよい。
【0140】
アンモニア性窒素を含有する原水を脱窒槽に導入し、該脱窒槽内の、アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝酸性窒素を電子受容体とする脱窒微生物の作用により、亜硝酸性窒素の存在下に脱窒する方法において、該脱窒槽に炭酸ガスを供給することにより、該脱窒槽内のpHを制御して脱窒を行い、前記亜硝酸性窒素はMABR方式を用いたアンモニア性窒素の処理により得て、前記亜硝酸性窒素はMABR方式を用いたアンモニア性窒素の処理により得ることを特徴とする脱窒方法。前記の方法は特に、アンモニア性窒素を含有する原水を、アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝酸性窒素を電子受容体とする脱窒微生物の作用により、亜硝酸性窒素の存在下に脱窒する処理に当たり、pH調整用の酸を用いることなく、厳密な添加制御を行うことなく、容易に好適なpH範囲に調整するために効果的である。
【0141】
アンモニア性窒素含有排水を、アンモニア酸化細菌を保持している曝気槽兼MABR槽に導入して曝気することにより亜硝酸型硝化処理する方法において、酸素を含有する第1のガスを酸素透過膜を用いて供給し、実質的に酸素を含有しないか或いは該第1のガスよりも酸素分圧の低い第2のガスとを曝気する方法であって、 該第1のガスを、必要とする曝気槽内DO濃度が得られる程度に供給し、不足する攪拌力を第2のガスの曝気風量により補うことで、該曝気槽内の溶存酸素濃度を0.5mg/L以下に制御することを特徴とする排水の処理方法。前記の方法は特に、排水を好気性細菌を保持している曝気槽に導入して曝気することにより酸化処理する方法において、曝気槽内の設定DO濃度が低い場合であっても、曝気による十分な槽内撹拌作用を得た上で曝気槽内のDO濃度を任意に制御可能とするために効果的である。
【0142】
アンモニア性窒素を電子供与体とし、亜硝酸性窒素を電子受容体として反応させて窒素ガスを生成させる独立栄養性の脱窒微生物汚泥を、アンモニア性窒素および亜硝酸性窒素を含む液中で、連続気泡を有する比重0.8~1.5、連続気泡の孔径5~5000μm、空隙率10~90%、比表面積500~10000m2/m3、粒径0.1~2cmの粒状担体を投入して処理を行うことにより、前記粒状担体の内部に前記脱窒微生物汚泥を入り込ませて付着させ、三次元的に担持させた担持汚泥と、アンモニア性窒素および亜硝酸性窒素を含む被処理液とを、脱窒槽に保持し嫌気状態で接触させて反応させる方法であって、前記被処理液のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素の割合はモル比でアンモニア性窒素1に対して亜硝酸性窒素0.5~2、被処理液中のアンモニア性窒素および亜硝酸性窒素の濃度はそれぞれ5~1000mg/l、5~200mg/lであり、 前記脱窒槽に保持される担体の量は、槽内液中に投入する担体の量として10~75容量%であり、前記亜硝酸性窒素はMABR方式を用いたアンモニア性窒素の処理により得るうことを特徴とする脱窒方法。前記の方法は特に、独立栄養性の微生物を大量に保持できるとともに、汚泥量あたりの脱窒活性を高めることができ、しかも溶存酸素等の阻害性物質に対する耐性を高めることができ、これにより小型の装置で効率よく脱窒を行うことができ、新設の装置の立ち上げも容易であり、また厳密な酸素除去も不要になる脱窒方法として効果的である。前記粒状担体と同様の性状の担体を酸素透過膜の表面に担持、もしくは積層させてもよい。
【0143】
窒素およびカルシウムを含有する排水を、排水中のカルシウム濃度を100mg/L以下まで低減させた後に独立栄養性細菌と接触させて少なくとも排水中のアンモニウムイオンの一部を亜硝酸イオンまで酸化するアンモニア酸化工程、および、アンモニウムイオンと亜硝酸イオンを含む排水を、無機炭素を供給した状態で独立栄養性のANAMMOX細菌と接触させて脱窒を行う脱窒工程を含む窒素含有排水の処理方法であって、酸素透過膜より供給される酸素を用いて好気性条件下で前記アンモニア酸化工程を行い、嫌気性条件下で前記脱窒工程を行い、前記アンモニア酸化工程において、pH調整のために炭酸イオンもしくは炭酸水素イオンを供給することを特徴とする、窒素含有排水の処理方法。前記の方法は特に、カルシウムおよび窒素を含有した排水を処理するに際し、排水中に残留しているカルシウム成分による不具合を除去し、安定した窒素処理を行うことができるようにした、窒素含有排水の処理方法を得るために効果的である。
【0144】
MABR方式を用いた有機性窒素やアンモニア性窒素の処理において、酸素透過膜への酸素を含有する気体の供給量を断続的に停止することにより、硝化脱窒を行う廃水処理装置。前記の装置は、小さい設置面積や槽容積で硝化脱窒を行うために効果的である。
【0145】
MABR方式を用いた有機性窒素やアンモニア性窒素の処理において、MABR槽内の被処理水における硝酸濃度、もしくは亜硝酸濃度を測定し、測定値から酸素透過膜への酸素を含有する気体の供給量をフィードバック制御することにより、硝化脱窒を行う廃水処理装置。前記の装置は特に、硝化脱窒に関連する微生物相を維持し、硝化脱窒性能を向上、維持、安定化するために効果的である。
【0146】
硝酸若しくは亜硝酸を含む被処理水が流入する脱窒反応槽に、水素供与体を間欠添加して、前記硝酸若しくは前記亜硝酸を窒素ガスに還元する窒素含有水の生物処理方法であって、前記反応槽に流入する被処理水中の硝酸若しくは亜硝酸の濃度と前記反応槽に流入する被処理水量との積から求められる硝酸若しくは亜硝酸量の増加又は減少に応じて、以下の式(B)を満たすように、水素供与体添加速度(v)、単位時間当たりに必要な水素供与体の添加量(X)、前記反応槽の総容量/前記反応槽に流入する水流量で求められる水理学的滞留時間(T)、前記水理学的滞留時間(T)を水素供与体の添加及び停止からなる間欠添加1サイクル当たりの時間で除した水素供与体の間欠添加サイクル数(N)、添加する水素供与体の濃度(M)、前記間欠添加1サイクル当たりの時間に対する水素供与体添加時間の割合(D)、及び前記間欠添加1サイクル当たりの時間における水素供与体供給停止時間(ST)を設定することを特徴とする窒素含有水の生物処理方法。前記硝酸若しくは亜硝酸は、前記脱窒反応槽とは別に設置したMABR槽からの排出水であってもよく、脱窒反応槽の後段に設置したMABR槽からの返送水であってもよく、前記脱窒反応槽の前段に設置したMABR槽の排出水であってもよい。また、脱窒反応槽に酸素透過膜を設置することで、有機性窒素、アンモニア性窒素の酸化により硝酸若しくは亜硝酸を得てもよい。前記の方法は特に、被処理水中の窒素濃度や流量等が変動しても、安定な処理水質を確保することができる窒素含有水の処理方法及び処理装置を提供するために効果的である。
v=X・T・(100-D)/(N・ST・D・M) (4)
【0147】
原水中のアンモニア性窒素を、硝化槽を用いてグラニュール法で硝化菌により生物学的に亜硝酸性窒素または硝酸性窒素へ硝化する硝化処理方法であって、酸素透過膜を用いて酸素を供給し、前記硝化槽へ無機炭素として二酸化炭素ガスを気体状態で供給し、前記硝化槽へ流入する1日あたり単位槽体積あたりの前記アンモニア性窒素の前記亜硝酸性窒素または前記硝酸性窒素への転換負荷が、0.5kg-N/m3/day以上であることを特徴とする硝化処理方法。前記の方法は特に、原水中のアンモニア性窒素の硝化処理に必要な無機炭素を安価で簡便に供給することができる硝化処理方法を得るために効果的である。
【0148】
(MABR槽内の廃水組成物や添加物を均一化する方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、MABR槽内を均一化することで廃水処理の効率化に効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0149】
酸素透過膜の構造体を動力を用いて動かすことで槽内を均一化することが可能である。動力源としては例えば、エアシリンダーや振動モーターを用いることができるし、それら動力源を偏心カム等を用いて往復運動に変換して酸素透過膜の構造体に伝えてもよい。
【0150】
被処理水の流入経路を工夫することで槽内を撹拌することができる。例えば、サイフォンの原理を用いて被処理水の流速を上げ、その流れを用いて槽内を撹拌することができる。また、導水板を用いて槽内が均一に撹拌されるように流れを制御してもよいし、酸素透過膜に被処理水の流れが接触するようにしてもよい。また、被処理水の出口にマニホールドやヘッダを接続することで、槽内が均一に撹拌されるように流れを制御してもよいし、酸素透過膜に被処理水の流れが接触するようにしてもよい。
【0151】
ステップ流入を用いることで槽内の処理対象の有機物の濃度を均一化させることもできる。
【0152】
MABR方式の生物処理装置において、該槽体内周面の上部にのみ邪魔板を設けた生物処理装置であって、該邪魔板は上下方向に延在すると共に、該槽体内周面から求心方向に延出し、該邪魔板の求心方向の幅tは該槽体の直径D1の5~20%であり、該邪魔板の水面位以下の上下長さH2は該槽体の水深H1の5~20%であり、前記回転翼の上縁の、前記槽体底面からの高さH3は前記槽体の水深H1の50~70%であり、該回転翼の下縁の、該槽体底面からの高さH5は該槽体の水深H1の30~50%であることを特徴とするMABR方式の生物処理装置。前記の装置を用いることで特に、被処理水の流動性が良好であり、生物処理効率が高いMABR方式の生物処理装置を効果的に得ることができる。
【0153】
動力を用いた撹拌では、廃水を撹拌する装置として、エアの上向流を用いたエアリフト、翼を持つ撹拌機、水中ポンプ、ポンプを槽外に設置し、配管をMABR槽に設置したもの等を用いることができる。
【0154】
MABR槽と活性汚泥法や流動担体法に用いられる曝気槽を組み合わせた生物処理装置で、曝気槽で得られる上向流により、MABR槽と曝気槽の被処理水を循環、撹拌する生物処理装置。もしくは、有機性排水を多段に設けられた生物処理槽で生物処理する装置であって、第一段の生物処理槽において、分散菌による有機物の分解により分散菌の増加した第一生物処理水を生成させ、後段のMABR槽である第二生物処理槽において、第二生物処理水を生成させる有機性排水の生物処理装置において、第一生物処理槽及び第二生物処理槽は同一形状及び同一大きさの塔体を有しており、塔体の高さが1~11mであり、最終段の生物処理槽から生物処理液が循環導入される膜分離槽を備えたことを特徴とする有機性排水の生物処理装置を構築することが可能である。なお、第一生物処理槽と第二生物処理槽は順序を逆にして設置してもよい。前記の装置を用いることで特に、施工が容易であると共に、高所作業の低減及び省スペース化を図ることができる有機性排水の生物処理装置を効果的に得ることができる。
【0155】
排水を生物処理槽に収容し、前記生物処理槽内に気体供給体を設置することで排水処理を行う方法において、前記生物処理槽内の排水の粘度を10mPa・s以下に設定してもよい。また、前記生物処理槽では、曝気を行って撹拌や生物処理の促進を行ってもよい。
【0156】
有機物を含む被処理水を膜分離する膜分離部と、前記膜分離部の上流側に配され、前記被処理水中のバイオポリマー濃度を所定閾値以下となるように調整する前処理部と、を備え、前記前処理部は、膜分離前の前記被処理水中のバイオポリマー濃度を測定するバイオポリマー濃度測定部と、前記バイオポリマー濃度測定部によって測定された前記バイオポリマー濃度が所定閾値以上になったときに、ファウリングを抑制するようにファウリング抑制物質を膜分離前の前記被処理水に添加するファウリング抑制物質添加部と、前記バイオポリマー濃度測定部および前記ファウリング抑制物質添加部よりも上流側に、水質浄化作用を有する微生物を生育させた濾材を有し、かつ該濾材を用いて膜分離前の前記被処理水を濾過する生物接触濾過部と、を備え、前記所定閾値は、9μg/L以上100μg/L以下の範囲のいずれかの値に設定されている、水処理設備において、気体供給体が用いられてもよい。また、有機物を含む被処理水を膜分離する膜分離工程と、前記膜分離工程前に、前記被処理水中のバイオポリマー濃度を所定閾値以下となるように調整する前処理工程と、を備え、前記前処理工程は、水質浄化作用を有する微生物を生育させた濾材を用いて前記被処理水を濾過し、濾過された前記被処理水中のバイオポリマー濃度を測定し、測定されたバイオポリマー濃度が所定閾値以上の場合に、前記被処理水にファウリング抑制物質を添加して、前記膜分離工程で膜分離する被処理水とし、測定されたバイオポリマー濃度が所定閾値未満の場合に、前記被処理水にファウリング抑制物質を添加せずに、前記膜分離工程で膜分離する被処理水とし、前記所定閾値は、9μg/L以上100μg/L以下の範囲のいずれかの値に設定されている水処理方法において、気体供給体が用いられてもよい。
【0157】
生物処理槽と該生物処理槽の処理水を膜分離する浸漬型膜分離装置が備えられた膜分離槽とが一体化された水処理装置であって、前記反応槽と前記膜分離槽とは下端部が開放された第一仕切によって仕切られており、前記反応槽は上端部及び下端部が開放された第二仕切によって、下部に第一散気装置を設置した前段領域と、前記膜分離槽に前記第一仕切を介して隣接する後段領域とに分けられ、前記前段領域から前記膜分離槽に近づくほど高さが増すように底面が傾斜していることを特徴とする水処理装置。前記生物処理槽において、少なくともその一部に気体供給体を用いてもよい。
【0158】
槽内を均一化する方法として、酸素透過膜を保持する槽に、1時間~30日毎に原水を上向流と下向流に交互に切換えて通水する方法を用いることもできる。
【0159】
槽内を撹拌する時期として、酸素透過膜表面にバイオフィルムが付きすぎた場合のみ、循環ポンプを作動させ、バイオフィルムをはがすようにする廃水処理装置を運転することもできる。また、1時間~30日毎に1分~1日の間だけ循環ポンプを作動させ、バイオフィルムの付きすぎを防止するように廃水処理装置を運転することもできる。
生物処理槽の運転方法であって、前記生物処理槽は、水平な底面を有するか、上向き又は下向きに凸状であり、端部と中心部とを結ぶ直線が水平線となす角度が0.3度以上60度以下である底面を有する円筒形もしくは多角形であって、中心部には被処理液を撹拌するスクリュー式又はインペラ式の撹拌装置が設けられており、底面中央部には堆積物引き抜き管が配置されており、前記運転方法は、通常運転と堆積物引き抜き運転を交互に行い、通常運転時には、前記スクリュー式又はインペラ式の撹拌装置を回転させることによって、生物処理槽中央には底面に向かって下降流が発生し、生物処理槽側面には水面に向かって上昇流が発生しており、堆積物引き抜き運転時には、前記スクリュー式又はインペラ式の撹拌装置を通常運転時と逆回転させることによって、生物処理槽中央には水面に向かって上昇流が発生し、生物処理槽側面には底面に向かって下向流が発生しており、前記堆積物引き抜き管から底面中央部に集めた堆積物を生物処理槽外へと排出することを特徴とする、運転方法において、気体供給体を用いて生物処理を行ってもよい。
【0160】
(MABR槽と他の廃水処理装置を組み合わせる方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、MABR方式と他の廃水処理方式組み合わせることで廃水処理の効率化に効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0161】
MABR槽を直列に接続することで、効率よく処理水中の有機物濃度を低減することができ
る。
【0162】
好気性の第一生物処理槽に有機性排水を通水し、該第一生物処理槽からの第一生物処理水を、好気性の第二生物処理槽に導入する有機性排水の生物処理方法。具体的には、全体のBOD容積負荷を0.5~5kg/m3/dayとし、 第一生物処理槽のBOD容積負荷を1kg/m3/day以上として、第一生物処理槽において、有機性排水中の有機成分の10~90%を除去し、第一生物処理水中の分散菌由来SSの、第二生物処理槽内の担体に対する負荷(以下、分散菌担体負荷という)を8kg-SS/m3-担体/day以下とすることが好ましい。また、第一生物処理槽と
第二生物処理槽の少なくとも1つはMABR槽であり、第二生物処理槽には汚泥を捕食する微小動物が含まれていることが好ましい。前記の方法を用いることで特に、第一生物処理槽から流出する菌が適切に捕食され、安定した生物処理を行うことができる有機性排水の生物処理方法を効果的に得ることができる。
【0163】
全生物処理槽の負荷を、CODCr容積負荷1.0kg/m3/day以上又はBOD容積負荷0.5kg/m3/day以上として、好気条件下に生物処理を行う有機性排水の生物処理方法であって、該好気性生物処理槽を二段以上の多段に設け、第一生物処理槽に有機性排水を導入して細菌により生物処理し、該第一生物処理槽からの分散状態の細菌を含む第一生物処理水を第二生物処理槽以降の生物処理槽に通水して生物処理し、該第二生物処理槽以降の生物処理槽の処理水を沈殿槽で固液分離し、分離汚泥の一部を該第二生物処理槽以降の生物処理槽に返送する有機性排水の生物処理方法において、該第二生物処理槽以降の生物処理槽に微小動物を保持する担体もしくは酸素透過膜を設けること、及び前記第二生物処理槽以降の生物処理槽内に設けられた担体は、合成樹脂発泡体よりなる、一辺の長さが100~400cmで、それと直交する辺の長さが5~200cmで、厚さが0.5~5cmのシート状であり、該担体の少なくとも一部が該生物処理槽に直接または固定具を介して鉛直方向に固定された担体であり、第一生物処理槽と第二生物処理槽の少なくともどちらか一方に酸素透過膜を含むことを特徴とする有機性排水の生物処理方法。前記の方法を用いることで特に、微小動物の捕食作用を利用した多段活性汚泥法により、CODCr容積負荷1.0kg/m3/day以上又はBOD容積負荷0.5kg/m3/day以上の高負荷処理を行うに当たり、濾過捕食型の微小動物を積極的に優先させると共に処理水質悪化を引き起こす凝集体捕食型の微小動物の増殖を抑制し、処理効率、処理水質の向上及び汚泥の減容化の効果が得られる。
【0164】
MABR槽より前段の任意の位置に、夾雑物や固形物を除去するためのスクリーンを用いることにより、処理水質の向上と夾雑物や固形物による酸素透過膜の破損を防止する効果が得られる。
【0165】
MABR槽より後段の任意の位置に、凝集沈殿装置及び凝集沈殿槽を用いることで、良好な処理水質を得ることが可能である。
【0166】
またMABR槽より後段の任意の位置に活性炭を充填した槽を設置し、被処理水を通水させ
ることでも良好な処理水質を得ることができる。
【0167】
2槽以上の生物処理槽を直列に接続し、第1生物処理槽に有機性排水を通水し、細菌により生物処理し、第1生物処理槽からの分散状態の細菌を含む第1処理水を第2生物処理槽に導入し、生物処理すると共にこの第2生物処理槽に微小動物を存在させる生物処理方法において、第1生物処理槽の溶存酸素濃度を0.5mg/L以下に制御し、該第1および第2生物処理槽にそれぞれ担体を存在させるようにした方法であって、該第1生物処理槽をMABR槽もしくは担体充填率40%以下の流動床もしくは酸素透過膜と充填率40%以下の担体を含む槽とし、該第2生物処理槽をMABR槽もしくは担体充填率10%以上の流動床もしくは酸素透過膜と充填率10%以下の担体を含む槽とし、第2生物処理槽の処理水を固液分離処理する有機性排水の生物処理方法であって、第1生物処理槽において排水BODの30%以上を分解することを特徴とする有機性排水の生物処理方法。前記の方法を用いることで特に、微小動物の補食作用を利用した多段活性汚泥法における汚泥減量効果を効果的に安定させることができる。
【0168】
有機性排水中のBODを高負荷処理して菌体に変換する第1の生物処理工程と、変換された菌体と該菌体を捕食する微小動物と共存させる第2の生物処理工程とを有する有機性排水の生物処理方法において、基準となる前記有機性排水中のBODの70%以上100%未満が菌体に変換されるに要する前記第1の生物処理工程における水理学的滞留時間(HRT)を求めて、この値を基準HRTとし、前記第1の生物処理工程におけるHRTが該基準HRTの0.75~1.5倍の範囲となるように、該第1の生物処理工程に導入される前記有機性排水に液体を添加し、第1と第2の生物処理工程の少なくとも1つがMABR方式であることを特徴とする有機性排水の生物処理方法。前記の方法を用いることで特に、微小動物の捕食作用を利用した多段法において、安定した処理水質を維持した上でより一層の処理効率の向上と余剰汚泥発生量の低減を効果的に実現することができる。
【0169】
生物難分解性有機物及び生物易分解性有機物を含有する有機排水の処理方法であって、2つ以上の工程から構成されており、前記工程が、生物処理、オゾン処理、逆浸透膜処理、生物活性炭処理のいずれかであり、少なくとも1つの工程がMABR方式である有機排水の処理方法。具体的には前記有機排水をMABR方式により生物処理する第1処理工程と、前記生物難分解性有機物の少なくとも一部をオゾン処理によって分解して分解物を得る第2処理工程と、前記分解物に対して逆浸透膜処理を行う第3処理工程と、生物処理を行う第4処理工程とを含み、前記第4処理工程における生物処理がMABR処理もしくは生物活性炭を用いて行われ、前記生物難分解性有機物が界面活性剤であることが好ましい。前記の方法を用いることで特に、生物難分解性有機物が含まれる有機排水を効果的に処理でき、得られる処理水中のTOC濃度を十分に低減できる有機排水の処理装置を効果的に得ることができる。
微生物と反応して検知用物質を生成する試薬が含まれた被処理水を、逆浸透膜によって膜分離させつつ、膜分離後の濃縮水における試薬の濃度と検知用物質の濃度との比を算出し、該比の算出値から、逆浸透膜に付着した微生物の活性程度を推定する推定工程を備え、前記推定工程は、時間間隔を空けてそれぞれ測定した試薬の濃度と検知用物質の濃度との各比たる各算出値を算出する算出工程と、算出工程で時間間隔ごとに算出された順序が連続する複数の算出値が、あらかじめ設定した変動幅の範囲に入った場合に、変動幅の範囲内の複数の算出値から、算出値を代表する代表値を決める決定工程と、を有し、前記推定工程では、前記代表値に基づいて逆浸透膜に付着した微生物の活性程度を推定する、微生物活性の推定方法において、少なくともその一部に気体供給体を用いてもよい。また、前記推定方法を用いた水処理方法、水処理設備において、少なくともその一部に気体供給体が用いられてもよい。
【0170】
逆浸透膜装置を用いたろ過処理によって海水を淡水化するように構成されてなる海水淡水化装置であって、有機性廃水を気体供給体によって生物処理して得られる生物処理水を希釈水として海水に混合し、該混合により得られた混合水を前記逆浸透膜装置に供給してろ過処理する混合水処理部を備えてなることを特徴とする海水淡水化装置の少なくともその一部に気体供給体が用いられてもよい。
【0171】
生物学的処理を行なった後、逆浸透膜処理にて浸出水等の排水を処理する排水の処理方法において、前記生物学的処理には脱窒処理工程を含み、且つ前記逆浸透膜処理を行なう逆浸透膜の洗浄液として硝酸を用い、逆浸透膜洗浄後の硝酸を含む洗浄廃液を前記脱窒処理工程に返送し、又は脱窒処理工程の前段側に返送することを特徴とする排水の処理方法において、少なくともその一部に気体供給体を用いてもよい。
【0172】
MABR槽の蓋に生じた結露水がMABR槽の被処理水に落下しないことが効果的である。例えば、蓋に傾斜をつけること、もしくは、蓋を二重構造にすることで、蓋の結露水が落下しないようにすること、結露防止用の換気装置を用いることが効果的である。結露防止用の換気装置は、装置の気体空間に湿度計を設置し、湿度に応じて換気装置を運転したり、換気量を制御することが好適である。
【0173】
MABR槽において、流入する被処理水の水量と有機物濃度に応じて、酸素透過膜に供給する酸素を含有する気体の流量を制御することを特徴とする生物処理槽の運転方法。前記の方法を用いることで特に、最低限の気体流量で運転できるので、省エネルギー効果が大きくなる。
【0174】
(有機物負荷の変動に対応する方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、被処理水の有機物濃度や水量の変動に対して、廃水処理を効率化するため効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0175】
生物処理装置を並列に設置し、負荷変動に応じて各生物処理装置への分配量を制御し、前記生物処理装置の少なくとも1つがMABR方式である廃水処理装置の運転方法。
【0176】
流量調整槽と生物反応槽を少なくとも含み、前記流量調整槽が前記生物反応槽より上流側に設置されており、生物処理により有機物除去が可能であり、前記生物反応槽と前記流量調整槽の少なくとも一方がMABR槽である、廃水処理装置。前記廃水処理装置において、被処理水の水量や有機物濃度に応じて、生物反応槽に流入する被処理水の量を制御することが好適である。
【0177】
有機性排水に窒素またはリンを含む栄養物質の量が適正量になるように栄養剤を添加してMABR方式で好気性生物処理を行う有機性排水の生物処理装置において、処理対象排水の有機物濃度を測定する有機物濃度測定手段と、測定された有機物濃度が所定値未満の場合に有機物に対する栄養物質の量がほぼ理論的適正量となるように栄養剤を添加し、測定された有機物濃度が所定値以上の高濃度である場合には有機物濃度に対する栄養物質の量が前記理論的な適正量より少なくなるように栄養剤を添加する栄養剤添加制御手段と、を有することを特徴とする有機性排水の生物処理装置。前記装置において、前記有機物濃度の所定値は、BODとして2000mg/Lであり、前記理論的な適正量より少ない量とは、BODを100とした場合に、窒素が3以下、リンが0.7以下であることが好適である。前記の装置を用いることで特に、高濃度有機性排水を効率的に処理することができる。
【0178】
有機性廃水を処理する廃水処理方法であって、有機物を含有する被処理液を、並列に配置された複数の生物処理槽に供給し、前記複数の生物処理槽のうち、ある一つの槽の有機物負荷が、他槽の有機物負荷よりも20%以上50%以下の範囲で高くなるように設定し、前記一つの槽の処理水質が悪化して、生物処理槽の運転管理基準値を満たさなくなった場合、前記他槽の少なくとも一部の槽の被処理液を前記一つの槽へと供給し、前記一つの槽の廃水処理状態が生物処理槽の運転管理基準値を満たすようになった場合、前記他槽の少なくとも一部の槽からの被処理液の前記一つの槽への供給を停止する、ことを特徴とする、有機物処理方法において、少なくともその一部に気体供給体を用いてもよい。
【0179】
有機物含有水をMABR方式により処理する生物処理装置において、リンを欠乏させることにより集積される貧栄養細菌によって、該有機物含有水を生物処理することを特徴とする、有機物含有水の処理方法。前記処理装置において、膜ろ過を組み合わせることが好適である。また、前記装置が有機物濃度と前記装置に流入する被処理水の流量を測定する手段を有し、リンを少なくとも含む栄養塩を生物処理装置に添加する手段を有し、有機物濃度と被処理水の流量に応じて栄養塩の添加量を制御することが好適である。前記の方法を用いることで特に、有機物濃度と有機物含有水の生物処理、もしくは膜処理において、殺菌剤を用いることなく、膜面のスライム、それによるバイオファウリングを効果的に防止して、長期に亘り安定かつ効率的な処理を行うことができる。
【0180】
(有機物を高濃度に含む被処理水を処理する方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、有機物を高濃度に含む被処理水を処理する場合において、廃水処理を効率化するため効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0181】
MABR方式より前段の任意の位置に、有機物濃度の高い濃厚有機性廃水を混合し、混合液を高温好気性発酵もしくは嫌気消化させる発酵槽を有することを特徴とする廃水処理装置。具体的には、濃厚有機性廃水がし尿系廃水、活性汚泥法から発生する余剰汚泥、工場廃水(食品工場、化学工場、エレクトロニクス分野の加工工場等)であることが好適であり、甜菜糖ピークカット廃水、焼ちゅうもろみ廃水、酵母製造廃水、廃糖密廃水または大豆加工廃水であることがさらに好適である。また、混合液がC0Dcr10000以上であることが好適である。前記の装置を用いることで特に、濃厚有機性廃水を効率よく処理することが可能となる。
家畜糞尿、し尿等の有機性廃液を処理する処理方法であって、有機性廃液を固液分離した後、分離された分離液を脱窒及び硝化処理する際に気体供給体を用いて硝化脱窒を行っても良い。
【0182】
有機性排水を嫌気槽で嫌気性生物処理する嫌気性生物処理工程と、その後少なくとも1段の好気槽で好気性生物処理する好気性生物処理工程とを有し、該好気性生物処理工程では、第1好気槽において好気性細菌により生物処理して分散性細菌を生成し、前記嫌気性生物処理工程では、前記好気性生物処理工程全体のCODcr容積負荷が10kg/m3/day以下、かつ溶解性CODcr容積負荷が5kg/m3/day以下となるように嫌気処理し、第1好気処理水SSの第2好気槽の担体への負荷が15kg-SS/m3-担体/day以下となるように第1好気槽で好気性処理し、生物処理工程の少なくとも1つに酸素透過膜を含むことを特徴とする有機性排水の生物処理方法。前記の方法では、該第1好気槽からの分散性細菌を含む第1好気処理水を、担体を有した第2好気槽に導入し、該第2好気槽において、原生動物又は後生動物に該細菌を捕食させることが好ましい。前記の方法を用いることで特に、有機性排水を嫌気処理した後、好気処理することで、嫌気処理由来の難凝集性SSを効果的に削減することができる。さらに、嫌気処理した後に好気処理し、次いで第2好気槽において原生動物や後生動物に細菌を捕食させる有機性排水の生物処理方法及び装置において、第2好気槽において原生動物や後生動物を優占化させることで、嫌気処理由来の難凝集性SSをさらに効果的に削減することができる。
【0183】
(汚泥を低減する方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、生物処理から発生する余剰汚泥や、沈殿、凝集沈殿、加圧浮上、膜分離、ろ過等の固液分離工程で発生する汚泥を低減することで廃水処理を効率化するために効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0184】
セレン含有排水中に存在するセレン酸化物を嫌気性生物処理によりSeに還元して不溶化し、除去する生物学的処理手段を備えた排水処理装置において、前記生物学的処理手段が、MABR方式、好気性処理、嫌気性処理を含む生物処理を順次行う複数の生物処理工程を有することを特徴とするセレン含有排水の処理装置。前記セレン酸化物は好ましくはSeO3
2-及び/又はSeO4
2-である。前記の装置を用いることで特に、セレン含有排水中に存在するセレン酸化物を嫌気性生物処理により単体セレンに還元して不溶化する場合において、セレン酸化物の還元反応の効率向上及び安定化を図る上で効果的である。
【0185】
有機物を含有する排水を嫌気性下でメタン発酵する嫌気性生物処理工程を含む生物処理方法であって、ゲル状の担体の存在下で、水温50℃未満、好ましくは35℃未満で嫌気性生物処理を行う生物処理工程を含み、前記嫌気性生物処理工程、もしくは、その前後の工程において、酸素透過膜が用いられることを特徴とする生物処理方法。前記の方法を用いることで特に、有機物を含有する排水を嫌気性下で、低水温の条件においても高負荷で安定してメタン発酵する嫌気性生物処理方法が効果的に得られる。
【0186】
油分を含む有機性廃棄物をメタン生成菌で生物処理する生物処理槽を有する処理部を備えており、前記処理部は、前記生物処理槽内の収容水を固液分離することにより、前記収容水よりも含水率が高い分離水、及び、前記収容水よりも含水率が低い濃縮物を得る固液分離部と、前記収容水を前記生物処理槽から前記固液分離部に移送する収容水移送部と、前記分離水を前記生物処理槽に移送する分離水移送部とをさらに有する、廃棄物処理装置において、少なくともその一部に気体供給体を用いてもよい。
【0187】
多糖類を含むバイオマスと、反すう動物由来のルーメン微生物と、メタン発酵処理を経たメタン発酵残渣から固液分離によって分離されたメタン発酵分離液、及び、エタノール発酵処理を経たエタノール発酵残渣から固液分離によって分離されたエタノール発酵分離液の少なくとも一方とを混合した被処理物において、前記多糖類から発酵成分を生成させる前処理工程と、前記発酵成分を含む被処理物の少なくとも一部に対してメタン発酵処理を施すメタン発酵工程と、を備える、バイオマス処理方法において、少なくともその一部に気体供給体を用いてもよい。また、有機性排水を活性汚泥によって生物処理する第1処理工程と、反すう動物由来のルーメン微生物によって多糖類から生成させた発酵成分に対してメタン発酵処理を施す第2処理工程と、を備え、前記第2処理工程は、前記多糖類を含むバイオマスと、前記ルーメン微生物と、前記メタン発酵処理を経たメタン発酵残渣から固液分離によって分離されたメタン発酵分離液、及び、エタノール発酵処理を経たエタノール発酵残渣から固液分離によって分離されたエタノール発酵分離液の少なくとも一方と、を混合した被処理物において、前記発酵成分を生成させる前処理工程と、前記発酵成分を含む被処理物の少なくとも一部に対して前記メタン発酵処理を施すメタン発酵工程と、を有し、前記第1処理工程の前記生物処理に伴って生じた余剰汚泥の一部に対して、前記第2処理工程の前記メタン発酵処理を施す、排水処理方法において、少なくともその一部に気体供給体を用いてもよい。さらに、有機性排水を活性汚泥によって生物処理する第1処理部と、反すう動物由来のルーメン微生物によって多糖類から生成させた発酵成分に対してメタン発酵処理を施す第2処理部と、を備え、前記第2処理部は、前記多糖類を含むバイオマスと、前記ルーメン微生物と、前記メタン発酵処理を経たメタン発酵残渣から固液分離によって分離されたメタン発酵分離液、及び、エタノール発酵処理を経たエタノール発酵残渣から固液分離によって分離されたエタノール発酵分離液の少なくとも一方と、を混合した被処理物において、前記発酵成分を生成させる前処理部と、前記発酵成分を含む被処理物の少なくとも一部に対して前記メタン発酵処理を施すメタン発酵部と、を有し、前記第1処理部の前記生物処理に伴って生じた余剰汚泥の一部を前記メタン発酵部に供給して、供給された前記余剰汚泥に対して前記メタン発酵部において前記メタン発酵処理を施すように構成されている、排水処理設備の少なくとも一部に気体供給体が用いられてもよい。
【0188】
二段以上の多段に設けられた好気性生物処理槽の、BOD容積負荷が1kg/m3/day以上の第一生物処理槽に有機性排水を導入し、一過式で通水して細菌により生物処理して有機成分の30~99%、好ましくは70~95%を分解して菌体に変換し、第一生物処理槽からの分散状態の細菌を含む第一生物処理水を、溶解性BOD汚泥負荷が0.25~0.50kg-BOD/kg-MLSS/dayの第二生物処理槽以降の生物処理槽に通水して生物処理する有機性排水の生物処理方法において、該第二生物処理槽以降の生物処理槽に微小動物を保持する担体を充填率0.5~40%で設けると共に、該第二生物処理槽以降の生物処理槽内の汚泥の一部を引き抜いて無酸素槽で処理した後該第二生物処理槽以降の生物処理槽に返送し、少なくとも1つの生物処理槽の酸素透過膜を含むことを特徴とする有機性排水の生物処理方法。担体としてはポリウレタンフォームよりなる固定床板状担体が好ましい。前記の方法を用いることで特に微小動物の捕食作用を利用した多段活性汚泥法において、濾過捕食型の微小動物を優先させて、処理効率の向上及び汚泥の減容化と共に、処理水質の向上を効果的に実現することができる。
【0189】
(生物処理装置の立ち上げ方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、廃水処理を効率化するために効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0190】
有機性排水を流動床式反応槽により嫌気条件で生物処理する有機性排水の処理工程であって、前記生物処理を立ち上げる際には、前記反応槽内に、非嫌気性もしくは嫌気性の微生物が生物膜となって付着している担体を投入することを特徴とする有機性排水の処理工程を含み、その他にMABR槽を含むことを特徴とする有機性廃水の処理方法。もしくは、有機性排水をMABR槽により生物処理する有機性排水の処理工程であって、前記生物処理を立ち上げる際には、前記MABR槽内に、非嫌気性もしくは嫌気性の微生物が生物膜となって付着している担体もしくは酸素透過膜を投入することを特徴とする有機性排水の処理工程を含む、有機性廃水の処理方法。これらの方法を用いることで特に、生物処理の立ち上げ期間の長期化を抑制することが可能な有機性排水の処理方法を提供することができる。
【0191】
有機物を含有する排水をMABR方式で処理する排水処理方法であって、担体を生物反応槽内に存在させながら運転することを特徴とする排水処理方法。前記の方法を用いることで特に、酸素透過膜の閉塞を抑制した安定運転を可能とする排水処理方法および排水処理装置を効果的に得ることができる。担体は密度35kg/m3以上のスポンジ状であることが好ましい。
【0192】
有機性窒素もしくはアンモニア等の窒素源の含有水を硝化槽に通水して窒素源を分解する方法において、該硝化槽内に、メタン菌グラニュールを核として、アンモニア性窒素を電子供与体とし亜硝酸性窒素を電子受容体として脱窒反応を行う脱窒細菌を自己造粒させた一次生物膜体を保持し、該硝化槽内にて、該一次生物膜体の表面をアンモニア酸化細菌で覆った生物膜二重構造体を生成させ、酸素透過膜を含むことを特徴とする窒素源含有水の処理方法。前記の方法を用いることで特に、アンモニア含有水の硝化脱窒処理に、ANAMMOX菌を有効に利用して処理コストの大幅な低減を図った上で、高水質の処理水を安定に得ることができる。また、酸素透過膜に前記一次生物膜体を保持することが好ましい。
硝化脱窒を同一槽内で行う水処理プロセスの処理性能を管理する水処理管理方法であって、前記水処理プロセスは、複数の種類の細菌を用いて、水処理槽に供給される被処理水から窒素成分を除去するものであり、アンモニア酸化細菌、亜硝酸酸化細菌、硝酸還元細菌、亜硝酸還元細菌及び亜酸化窒素還元細菌からなる群について、単一の細菌の数と全窒素負荷との関係に基づいて、決定係数が最も高い細菌を処理性能の指標となる指標細菌として選択する選択工程と、前記水処理槽内の指標細菌の数を測定する測定工程と、前記水処理槽内に所定数以上の指標細菌を保持する保持工程とを含むことを特徴とする水処理管理方法において、少なくともその一部に気体供給体を用いてもよい。
【0193】
有機物含有排水を流入させる流入工程と、前記有機物含有排水中の処理対象物質を微生物汚泥により生物学的に処理する生物処理工程と、前記微生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記生物学的に処理した生物処理水を排出させる排出工程とを有する運転サイクルを繰り返して行って微生物を育成もしくはグラニュールを形成する半回分式反応槽を用いた廃水処理装置の運転方法であって、前記運転サイクルは、第1汚泥負荷で前記生物処理工程を行う第1運転サイクルと、前記第1運転サイクル後に、第2汚泥負荷で前記生物処理工程を行う第2運転サイクルと、を有し、前記第1汚泥負荷は、前記第1運転サイクルの生物処理工程終了時における前記半回分式反応槽内の溶解性BOD濃度が閾値以下まで低下しないように設定される汚泥負荷であり、前記第2汚泥負荷は、前記第2運転サイクルの生物処理工程終了時における前記半回分式反応槽内の溶解性BOD濃度が閾値以下となるように設定される汚泥負荷であることを特徴とする廃水処理装置の運転方法。前記の方法を用いることで特に、微生物の育成もしくはグラニュールの形成を効果的に実施することができる。
【0194】
有機物含有排水を流入させる流入工程と、前記有機物含有排水中の処理対象物質を微生物汚泥により生物学的に処理する生物処理工程と、前記微生物汚泥を沈降させる沈降工程と、前記生物学的に処理した生物処理水を排出させる排出工程とを繰り返して行って微生物の育成、もしくは、グラニュールの形成を行う半回分式反応槽を用いた微生物の育成、もしくは、グラニュールの形成方法であって、前記生物処理工程では、前記半回分子反応槽内のpHをモニタリングし、該モニタリングしたpHに関する情報に基づいて、前記生物処理工程の時間を調整し、前記生物処理工程の内部に酸素透過膜を含むことを特徴とする微生物の育成、もしくはグラニュールの形成方法。前記の方法を用いることで特に、有機物含有排水のBOD濃度が変動しても、良好なグラニュールを形成することが可能な微生物の育成方法、もしくは、グラニュールの形成方法、またその装置を提供することができる。
【0195】
窒素含有排水を硝化反応槽内で好気的に生物処理する硝化工程と、前記排水を脱窒反応槽内で嫌気的に生物処理する脱窒工程と、前記硝化工程及び前記脱窒工程から排出される排水を生物汚泥と処理水とに分離する固液分離工程と、分離された汚泥を前記硝化工程又は前記脱窒工程へ返送する汚泥返送工程と、を有する排水の処理方法であって、生物処理立ち上げ時に、前記硝化工程において前記排水に硝化能力を有するグラニュールを投入する工程を有するとともに、前記脱窒工程において前記排水にグラニュール化していない脱窒汚泥のみを投入する工程を有し、前記汚泥返送工程による汚泥の返送を行いながら、前記脱窒工程における脱窒処理を継続することで、前記硝化能力を有するグラニュールと前記脱窒反応槽内の脱窒菌とにより、硝化能力と脱窒能力を有する硝化脱窒グラニュールを作成する工程を含み、硝化工程、脱窒工程、固液分離工程が行われる各槽のうちの少なくとも1つに酸素透過膜を含むことを特徴とする排水の処理方法。酸素透過膜は少なくとも硝化工程に含まれることが好ましい。硝化工程、脱窒工程、固液分離工程の各工程は、各工程のうち2つ以上の任意の組合せで同一の槽内において実施されてもよい。前記の方法を用いることで特に、生物汚泥を用いて硝化処理及び脱窒処理を行う排水処理において、汚泥の沈降性を改善し、処理速度(負荷)を向上させることができる排水の処理方法及び処理装置を効果的に提供することができる。
【0196】
有機性廃水を生物学的に処理する方法であって、有機性廃水を気体供給体を用いて硝化及び脱窒処理した後、硝化及び脱窒処理により発生した汚泥を可溶化することを特徴とする有機性廃水の処理方法では効果的な有機性廃水処理が可能となる。
【0197】
酸素透過膜、もしくは、微生物を保持する担体を収容し、有機物含有水を処理する生物処理槽と、前記担体の肥大化が確認された際に、前記生物処理槽に鉄塩を添加する鉄塩添加手段と、を備え、前記鉄塩添加手段は、前記担体の肥大化確認後の前記担体に付着している生物汚泥のMLVSS/MLSS(%)が10%ポイント以上低下するように、前記生物処理槽に前記鉄塩を添加することを特徴とする生物処理装置。前記生物処理槽は酸素透過膜を含む流動床式生物処理槽であることが好ましい。前記の装置を用いることで特に、担体の肥大化を改善することが可能な生物処理装置及び生物処理方法を効果的に提供することができる。
【0198】
有機物および鉄イオンを0.1mg-Fe/L以上含有する原水を反応槽の下部から連続的に導入して前記反応槽中の微生物と接触させる、好気性グラニュールの形成方法であって、前記原水のC/N比を7以下となるように調整して前記反応槽に導入し、前記反応槽において、好気性条件下、硝化菌の共存下で前記グラニュールを形成することを特徴とする好気性グラニュールの形成方法。前記の方法を用いることで特に、連続通水式で好気性条件下において安定的にグラニュールを形成することが可能な好気性グラニュールの形成方法を効果的に提供することができる。
【0199】
好気性グラニュールを含有する処理槽に、消化汚泥脱離液と初沈生汚泥の濃縮脱水分離液とを供給する供給工程と、前記消化汚泥脱離液の窒素濃度と前記初沈生汚泥の濃縮脱水分離液の炭素濃度とをそれぞれ測定する濃度測定工程と、前記炭素濃度/前記窒素濃度が所定範囲の値になるように、前記初沈生汚泥の濃縮脱水分離液の供給量を制御する制御工程と、を有したことを特徴とする消化汚泥脱離液の処理方法において、少なくともその一部に気体供給体を用いてもよい。また、好気性グラニュールを含有する処理槽と、前記処理槽に消化汚泥脱離液と初沈生汚泥の濃縮脱水分離液とを供給する供給路と、前記消化汚泥脱離液の窒素濃度と前記初沈生汚泥の濃縮脱水分離液の炭素濃度とをそれぞれ測定する濃度測定手段と、前記炭素濃度/前記窒素濃度が所定範囲の値になるように、前記初沈生汚泥の濃縮脱水分離液の供給量を制御する制御手段と、を有したことを特徴とする消化汚泥脱離液の処理装置において、少なくともその一部に気体供給体を用いてもよい。
【0200】
(酸素透過膜の洗浄方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、酸素透過膜に付着したバイオフィルムやゴミ、夾雑物、SS等を取り除き、廃水処理を効率化するために効果的である。効率化とは例えば、廃
処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0201】
長期間の使用により酸素透過膜の表面に過剰なバイオフィルムや固形物等の付着物が付着し、処理性能の低下が発生した場合、酸素透過膜の洗浄が必要である。洗浄の際は、酸素透過膜をユニットごと被処理水中から引き上げ、付着物を取り除くことが効果的である。
【0202】
好気性微生物をその表面に着生させた酸素透過膜、もしくは、充填材を充填し(以下、充填材層と呼ぶ)、当該充填材層の下部あるいは上部からBOD成分を含む被処理水を流入し、BOD成分を除去する方法において、断面積がほぼ等しい複数の室に分割した槽であって、分割した複数の室の合計の処理流量と、一つの室の洗浄流量とがほぼ等しくなるように槽を分割するとともに、各室の下部あるいは上部に被処理水供給管と空気供給管をそれぞれ設けたことを特徴とするBOD成分を除去する方法。
【0203】
表面に好気性微生物を着生させた酸素透過膜を充填し、当該酸素透過膜層に有機物を含む原水と酸素を含む気体とを流入させて生物学的処理によって原水中の有機物を除去するMABR槽と、当該MABR槽の処理水中に含まれる濁質を沈殿分離によって除去する沈殿分離槽と、当該沈殿分離槽内の上澄水を当該槽内から直接抜き出すとともに抜き出した上澄水を前記MABR槽の下部に供給する洗浄ポンプとを備えてなり、前記MABR槽内の酸素透過膜層が目詰りした際に、前記洗浄ポンプにより沈殿分離槽内の上澄水を抜き出してMABR槽の下部に供給することによって前記酸素透過膜層の洗浄を行い、かつ当該洗浄時にMABR槽から排出される洗浄排水の全量を、前記沈殿分離槽内に直接導入して処理する構成としたことを特徴とする好気性生物処理装置。
【0204】
処理槽内に生物膜を付着した酸素透過膜による酸素透過膜層を設け、該酸素透過膜層に原水を下向流で通水して原水中のBOD等を生物膜の微生物により処理する生物処理装置における酸素透過膜の洗浄方法において、槽内底部からの水抜きと、槽底への洗浄空気の供給を同時に行ない、槽内で次第に下降する液面を洗浄空気により乱し、酸素透過膜に付着した生物膜の剥離を行なうことを特徴とする生物処理装置における酸素透過膜の洗浄方法。
【0205】
(省スペースを目的とした酸素透過膜の使用方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、MABR槽の槽容積や設置スペースを小さくすることを目的としたMABR槽の例であり、廃水処理を効率化するために効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0206】
MABR槽において、酸素透過膜が槽の上部に設置されており、下部に空間がある場合、MABR槽の下部に水流を発生させ、被処理水を撹拌することで被処理水と酸素透過膜との接触効率が向上する。前記の方法を用いることで特に、設置スペースの低減や廃水処理の効率の向上を効果的に実現することができる。水流を起こす方法としては、水中撹拌機を設置することが好ましい。別の例として、例えば、被処理水の流入口側のように負荷量が大きい部位の酸素透過膜においては鉛直方向の長さが長い酸素透過膜を設置し、負荷量が小さい側に鉛直方向の長さが短い酸素透過膜を設置することで酸素透過膜の数量を減らすことができ、コスト低減や設置の手間の軽減が可能となる。なお、負荷量が大きい部位と負荷量が小さい部位とはそれぞれ別のMABR槽であってもよい。
【0207】
沈殿槽に酸素透過膜を設置し、被処理水の流入部に潜り堰を設け、被処理水の流出部に越流堰を設けることを特徴とする、MABR槽。前記の槽を用いることで特に、沈殿槽でも有機物の処理ができるため、廃水処理装置全体としての処理の効率化が可能となる。酸素透過膜は被処理水の流下方向の水流を妨げないように設置することが好ましい。具体的には、酸素透過膜を流下方向と平行に設置することが好ましい。また、廃水処理装置が最初沈殿槽と最終沈殿槽を有する場合には、負荷が大きい最初沈殿池に設置した方が好ましいが、両方の沈殿池に酸素透過膜を設置することもできる。
【0208】
流量調整槽に酸素透過膜を設置した流量調整槽。前記の槽を用いることで、流量調整槽の好気化を図ることができ、また、流量調整槽から発生する臭気の抑制や汚泥の低減が可能となり、同時に、散気装置に空気を供給するための、ブロワーの電力も不要になり省エネルギーになる。さらに、散気装置を用いる場合は、流量調整槽の水位が低い場合には、ばっ気効率が悪くなるが、酸素透過膜を用いることで水位の影響が軽減でき、ばっ気装置と比較して、効果的に前記の効果が得られる。
【0209】
反応槽内に、気体供給体ユニットを上下方向に複数段収納するケーシングを浸漬設置して生物処理を行う装置において、前記上下方向に複数段に浸漬設置した気体供給体ユニット間に補助散気装置を設置してなることを特徴とする生物処理装置では効果的な散気が可能となる。
【0210】
気体供給体の下端部側において気泡を発生させる散気機構がさらに備えられている気体供給体であって、該気体供給体下部固定部材が、気体貯留室と、該気体貯留室から前記固定部の上面側にいたる気泡通路とをさらに備えており、前記気体貯留室に気体が貯留され、該貯留された前記気体が前記気泡通路を通って浮上されて前記固定部の上側に気泡が発生される前記散気機構が備えられていることを特徴とする気体供給体であれば効果的な散気を行うことが出来る。
【0211】
気体供給体の下端部側において気泡を発生させるための散気部材が備えられている気体供給体であって、散気部材が、気体供給体の下端部側に配されその上面側に散気孔が開口された中空体を有し、該中空体に接続された管体から前記中空体に気体が供給されて前記散気孔から気泡を発生させ得るように構成されており、前記散気孔が前記下部固定部材の固定部の上側において上向きに開口されていることを特徴とする気体供給体であれば効果的な散気を行うことが出来る。
【0212】
気体供給体に散気し得る散気機構を備えた水中に浸漬して用いられる気体供給体であって、前記散気機構が上部固定部材及び下部固定部材に両端部側が固定されて前記上部固定部材及び前記下部固定部材の間に延設された管状体を備え、該管状体の周面に管内の気体を前記気体供給体へ散気可能な散気孔が形成されていることを特徴とする気体供給体であれば効果的な散気を行うことが出来る。
【0213】
被処理水を生物処理槽に収容させた状態で、散気装置から前記処理槽内水中に気泡を放出させて散気を実施することにより、前記気泡の放出方向に前記槽内水を流動させて生物処理槽内に循環流を形成させつつ生物処理を実施する生物処理方法であって、前記循環流の流動方向に気泡を放出させて散気を実施する循環流工程を実施し、生物処理槽内に形成されている循環流に対向する方向への気泡の放出により該循環流とは異なる方向に槽内水を流動させて新たなる循環流を形成させる循環流変更工程を前記循環流工程後に実施することを特徴とする生物処理方法において、少なくともその一部に気体供給体を用いてもよい。前記散気装置は、処理槽の内において底面に設置されていても良いし、側面に設置されていても良い。また、環状に設置されても良い。さらに、前記散気装置は、移動可能状態となるように構成されていても良い。
【0214】
原水中の有機物を分解する生物処理槽と、該生物処理槽の生物処理水中から汚泥を沈殿除去する最終沈殿槽と、を備える有機性廃水処理施設において、前記生物処理槽の溶存酸素濃度が1mg/L以下となるように曝気量を調節し、最終沈殿槽から流出する汚泥量を減少させることを特徴とする、有機性廃水処理施設の運転方法。前記生物処理槽において、少なくともその一部に気体供給体を用いてもよい。
【0215】
(その他の適用方法)
下記に示すMABR方式の適用例は、廃水処理を効率化するために効果的である。効率化とは例えば、廃水処理性能の向上、維持、安定化等を意味する。
【0216】
担体の存在下で、有機性排水を生物処理する生物処理工程と、懸濁物質含有排水を汚泥と処理水とに固液分離する固液分離工程と、前記汚泥を可溶化処理する可溶化処理工程と、前記可溶化処理した可溶化汚泥を前記生物処理工程に供給する可溶化汚泥供給工程と、を備え、前記生物処理工程、もしくは、可溶化処理工程において、酸素透過膜を用いることを特徴とする有機性排水の処理方法。前記の方法を用いることで特に、余剰汚泥の減量化が可能な有機性排水の処理方法及び処理装置を効果的に提供することができる。
【0217】
グリセリン含有廃液を、オーランチオキトリウム属に属し、炭素数14以上の脂肪酸を生産しうる微生物(以下「オーランチオキトリウム属微生物」と称す。)で処理した後固液分離する一次処理工程と、該一次処理工程の処理水中に残留する有機物を除去する二次処理工程とを有し、一次処理工程と二次処理工程の少なくともいずれか一方に酸素透過膜を用いることを特徴とするグリセリン含有廃液の処理方法。前記の方法を用いることで特に、バイオディーゼル製造工程で副生する粗グリセリン等のグリセリン含有廃液を処理する方法及び装置であって、有価物生産型の処理方法と処理装置を効果的に提供することができる。
【0218】
有機物およびヒドロキシルアミンまたはその塩が含まれている排水に3価の鉄塩を、ヒドロキシルアミンを酸化するための理論量と同量から2倍の量を添加混合して反応させ、排水中のヒドロキシアミンを酸化し3価の鉄を2価の鉄に還元する鉄塩反応手段と、鉄塩が添加混合されヒドロキシルアミンと反応された後の排水に過酸化水素を添加混合して還元された2価の鉄を利用したフェントン酸化反応により有機物を分解する過酸化水素反応手段と、過酸化水素が添加混合された後の排水をMABR槽により生物処理する生物処理手段と、を有することを特徴とする排水処理装置。前記の装置を用いることで特に、還元剤および難分解性有機物を含む排水を効率的に処理することが可能となる。
【0219】
ノルマルヘキサン抽出物質に対するカルシウムの濃度比が0.02以上である油脂含有排水をMABR槽を用いて生物処理する油脂含有排水の生物処理方法であって、前記油脂含有排水中の前記カルシウムに対して鉄の濃度比が0.1以上となるように、前記油脂含有排水に鉄塩を添加することを特徴とする油脂含有排水の生物処理方法。前記の方法を用いることで特に、油脂含有排水中の油脂を分解すると共に、オイルボールの発生を抑制することが可能な油脂含有排水の生物処理方法及び生物処理装置を効果的に提供することができる。
【0220】
油脂含有排水を好気性生物処理する第1処理槽及び第2処理槽を少なくとも有する処理槽ユニットと、前記第1処理槽に鉄塩を供給する鉄塩供給手段と、を備え、前記鉄塩供給手段は、油脂含有排水単位体積当たりの鉄の総量が、同じ油脂含有排水単位体積当たりのノルマルヘキサン抽出物質の負荷量に対する鉄の重量比で1.0×10-3以上となるように、前記第1処理槽に鉄塩を供給し、第1処理槽及び第2処理槽の少なくともいずれか一方がMABR槽であることを特徴とする油脂含有排水の生物処理装置。前記装置を用いることで特に、油脂含有排水中の油脂を効率的に生物処理することができる油脂含有排水の生物処理装置及び生物処理方法を効果的に提供することができる。
【0221】
スポンジ担体の存在下で、油脂含有排水を生物処理する生物処理工程を有し、前記スポンジ担体は、セル数が8~20個/25mmの範囲であり、前記生物処理工程がMABR方式であることを特徴とする油脂含有排水の生物処理方法。前記の方法を用いることで特に、油脂含有排水中の油脂を安定して生物処理することができる油脂含有排水の生物処理方法及び生物処理装置を効果的に提供することができる。前記スポンジ担体はMABR方式の生物処理槽に含まれる酸素透過膜の表面に担持されていてもよい。
【0222】
揮発性有機塩素化合物で汚染された汚染土壌及び前記汚染土壌を流れる汚染地下水を微生物によって浄化処理する汚染土壌及び汚染地下水の浄化方法であって、前記汚染土壌を流れる汚染地下水に設けられた井戸内に、酸素透過膜と細孔を有する担体と前記微生物の栄養剤を添加することを特徴とする汚染土壌及び汚染地下水の浄化方法。前記方法を用いることで特に、汚染物質である揮発性有機塩素化合物を効率的に分解することができる汚染土壌及び汚染地下水の浄化方法、浄化促進材、及びその製造方法を効果的に提供することが可能となる。
【0223】
浮遊物質を含有する被処理水と凝集剤とを混合することにより凝集水を得る凝集部と、前記凝集水から沈殿分離によって分離水と沈殿物とを得る槽と、前記槽内に配される気体供給体と、前記槽内に配され、前記分離水に散気する散気部と、前記槽内を、前記凝集水から沈殿分離によって前記分離水及び前記沈殿物が得られる沈殿領域と、前記散気部が前記分離水に散気する散気領域とに区画する仕切り板とを備えており、前記下板は、水平に対して傾斜しており、該下板に沿って流下する前記浮遊物質を前記散気領域から前記沈殿領域に排出する排出部を備える、水処理装置として、気体供給体を用いてもよい。
【0224】
活性汚泥を生物的に凝集させて凝集汚泥体を生成する生物凝集手段により生成された凝集汚泥体及び廃水を混合して混合水を生成し該混合水を生物処理して汚泥含有生物処理水を得る生物処理部と、膜濾過を行う膜ユニットを有して前記汚泥含有生物処理水から膜濾過によって透過水たる浄化処理水を得る浄化処理水生成部とを備え、前記生物凝集手段は、気体供給体により前記活性汚泥を凝集させ前記気体供給体から前記凝集汚泥体を分離させて生成するものであることを特徴とする膜分離活性汚泥処理装置は効果的な生物処理を可能にする。
【0225】
流動床式焼却炉及び当該流動床式焼却炉における廃棄物の焼却により発生する排ガスを処理する排ガス処理設備を備えた焼却プラントの当該排ガス処理設備において前記排ガスを処理するための方法であって、集塵部において排ガス中に含まれる飛灰を回収しつつ当該排ガスを減温部へ流出させる集塵工程と、前記集塵工程にて回収された飛灰を含む前記減温部よりも排ガスの流れ方向における上流側に存在する飛灰のみを洗浄部に供給する飛灰供給工程と、前記焼却プラントにおいて発生したプラント排水を前記洗浄部に供給するプラント排水供給工程と、前記洗浄部において前記飛灰供給工程にて供給した飛灰を洗浄し、当該飛灰中の塩化物を洗浄水と供給された前記プラント排水との混合水に溶かすことにより、洗浄灰と塩化物を含む洗浄排水とを生成する洗浄工程と、前記洗浄工程にて生成した洗浄排水を前記減温部に供給することにより、前記減温部において排ガスを冷却し当該洗浄排水を蒸発させる減温工程と、前記洗浄排水供給工程にて蒸発させた洗浄排水の塩化物を含む飛灰をフィルタ部にて回収する塩化物回収工程と、を含む流動床式焼却炉の排ガスの処理方法であり、少なくとも前記工程の一部に気体供給体を用いてもよい。
【0226】
排水中で微細藻類を培養する第一処理工程と、該第一処理工程にて前記微細藻類を培養した後の第一処理水を含む排水を処理する第二処理工程とを備えた排水処理方法において、前記第二処理工程は気体供給体を含んでいてもよく、気体供給体で酸素を供給し、好気処理を行ってもよい。
【0227】
(実施例)
以下、実施例について、説明する。
(実施例1)
実施例1の気体供給体10は、分配部62aの形が第1実施形態の
図4の分配部62と異なる点を除き、第1実施形態の気体供給体10と同じである。第1実施形態の
図4の分配部62の断面が円弧状であるのに対して、実施例1の分配部62aの断面は長方形状である。
実施例1の気体供給体10は、幅1m、長さ4m、有効面積8m
2(両面)である。
実施例1の送気元部61は、φ4*6mmのポリエチレンチューブ2本である。分配部62aは、幅Aが3mmの樹脂製部材である。絞り部63aは、絞り幅Bが0.5mmの樹脂製部材である。気体送出層12の中空板状部材は、第1方向への長さが4m、第1方向と鉛直方向への長さが1mの樹脂製中空板状部材である。
【0228】
(実施例2)
実施例2の気体供給体10は、絞り部63bの構成と、気体送出層12の幅とを除き、実施例1の気体供給体10と構成は同じである。
図8に示すように、実施例2においては、気体送出層12と絞り部63bは、一体である。言い換えると、絞り部63bは、気体送出層12の端部である。つまり、実施例2では、気体送出層12の幅を狭くすることにより、分配部62bからの気体の流れを制限している。分配部62bは、幅Aが5mmである。絞り部63bの絞り幅Bは、2.7mmである。分配部62bおよび絞り部63bは、樹脂製である。
【0229】
(比較例1)
比較例1の気体供給体10は、
図9に示すように、絞り部が無い点と、分配部62cの幅とを除き、実施例1の気体供給体10と構成は同じである。比較例1の分配部62cおよび気体送出層12は、樹脂製である。分配部62cの幅Aは、0.8mmである。絞り部の幅を
図9に示すように気体送出層12の幅Bとすると、2.7mmである。
【0230】
(比較例2)
比較例2の気体供給体10は、
図10に示すように、絞り部が無い点と、分配部62dの幅とを除き、実施例1の気体供給体10と構成は同じである。比較例2の分配部62dは、比較例1の分配部62cと同様に幅が狭いが、幅の狭い方向が両者で異なっている。比較例2の分配部62dおよび気体送出層12は、樹脂製である。分配部62dの幅Aは、2mmである。絞り部の幅を
図10に示すように気体送出層12の幅Bとすると、9mmである。
【0231】
(分配部62内径最小部の長さAの測定方法)
分配部62内径最小部の長さAは、定規、もしくはノギスを用いて測定した。最小部とは、真円の場合は直径、楕円の場合は短線、長方形の場合は短辺、を指す。
【0232】
(絞り部63絞り幅の長さBの測定方法)
絞り部63絞り幅の長さBは、定規、ノギス、もしくはマイクロメーターを用いて測定した。直接測定が困難な場合、厚み既知のシートを絞り部63に挿入し、寸法が一致したシートの厚みを絞り幅とした。
【0233】
(気体供給体10の有効面積あたりの酸素含有気体供給速度の測定方法)
気体供給体10の有効面積あたりの酸素含有気体供給速度は、気体送出層12へ供給される酸素含有気体の流量から算出される。酸素含有気体の流量はマスフローメーターを用いて測定した。本試験では、酸素含有気体として酸素含有割合21%の空気を用いた。
【0234】
(気体供給体10での圧力損失の測定方法)
気体供給体10の入口、即ち、送気部60開始点に圧力計を設置し、圧力を測定した。本試験では、気体供給体10の出口は大気圧開放されている為、0kPaとした。
【0235】
(気体供給体10全体への送気割合の確認方法)
気体送出層12の気体出口にガスリークチェッカーを塗布し、気体が供給されているかを目視で判定した。全気体出口数に対する、気体が供給されている気体供給出口の百分率を気体供給体10全体への送気割合(%)として算出した。なお、より詳細な方法として、風量計を各気体送出層12の気体出口に設置し、供給流量を測定しても良い。
【0236】
以上の実施例1,2および比較例1,2に関する測定結果を以下の表1にまとめる。
【0237】
【表1】
表1から理解されるように、絞り部63を有する実施例1,2の気体供給体10は、気体供給体全体への送気割合が100%であるのに対して、絞り部63を有さない比較例1,2の気体供給体10は、気体供給体全体への送気割合が10~15%しかない。つまり、実施例1,2の気体供給体10は、気体送出層12で分割された空間に、適切に気体が分配されているのに対して、比較例1,2の気体供給体10は、気体送出層12で分割された空間に、適切に気体が分配されていないことがわかる。
【符号の説明】
【0238】
10 気体供給体
12 気体送気層
21 防水透気膜
51 廃水処理槽
52 供給体ユニット
53 気体供給源
60 送気部
61 送気元部
62 分配部
63 絞り部
65 気体供給路となる空間
100 廃水処理装置
S 気体流路